説明

高保全性リニアアクチュエータおよびその動作方法

【課題】高保全性リニアアクチュエータおよびその動作方法を提供する。
【解決手段】リニアアクチュエータ1は、互いに対して滑動可能な第1のケーシング部分2および第2のケーシング部分3を備える。ケーシング部分2、3の内部には、ねじ山付きのロッド4をそれぞれ駆動することができる第1の電動機6および第2の電動機16が設けられる。一方の電動機がジャム発生状態になっても他方がロッド4を駆動することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リニアアクチュエータおよびその動作方法に関し、詳細には、航空機での使用に適するリニアアクチュエータおよびその動作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セーフティクリティカルシステムまたは装置におけるセーフティクリティカル機構の作動は、高いレベルの信頼性を達成する必要がある。航空機において、例えば着陸装置ならびに/またはフラップおよび補助翼などを動かすのに、その信頼性ゆえに油圧アクチュエータが使用されることは一般的に知られている。油圧システムの故障は、通常、作動油の漏れによって引き起こされ、システムが機能しなくなり、ジャミング(jamming)なしに自由可動状態になる。油圧作動着陸装置の場合、これによって、システムの故障にもかかわらず着陸のために装置を下げることが可能になる。
【0003】
電気機械式アクチュエータの利用は有利である。というのもそれらは軽量であり、航空機に簡単に組み込むことができ、航空機内の電力分配システムを使用して電力供給を受けることができるからである。しかし、電動機には、それが機能しなくなっていきジャム発生状態になりバックアップシステムの有効化を妨げてしまう重大な異常停止故障モードがある。
【0004】
航空機の安全規則では、故障が破滅的結末につながる恐れがある装置のアイテムについて、個々の故障に対する高保全性および抗堪性(invulnerability)が求められる。着陸装置のアクチュエータは、この基準を満たさなければならず、ジャムに対する弱さが電気作動使用の妨げとなっている。
【0005】
既知の故障耐性リニアアクチュエータは、2つの別個のアクチュエータを必要とし、それぞれが分離装置を有し、万一ジャムが発生した場合には、そうなったアクチュエータが係合解除されて他のアクチュエータが使用可能になる。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、第1のケーシング部分および第2のケーシング部分を含むケーシングを備える航空機用リニアアクチュエータであって、第1のケーシング部分および第2のケーシング部分が、互いに対して伸長可能かつ収縮可能であり、それらのケーシング部分の内部に連結される1つまたは複数の伝動要素を駆動するように互いに独立して動作可能な第1の駆動手段および第2の駆動手段が内部に配置される、リニアアクチュエータを提供する。
【0007】
アクチュエータは、その制御および電源入力は別として、自給式であり、すなわちその構成要素全てがケーシング部分内に収納されている。それによって、アクチュエータは、特に周囲からの侵入に対してしっかり密封可能になり、したがってアクチュエータおよびその内部構成要素の寿命が向上する。アクチュエータは、さらに、少数の部品しかなく、したがってシンプルで信頼性の高い軽量構造が実現する。
【0008】
駆動手段は、伝動要素または諸要素と同心であってよい。大きな作動力が必要な場合、減速歯車装置を駆動手段と伝動要素の間に挿置することができる。
【0009】
一実施形態では、ケーシング部分は、実質的に一定の断面積を有する。したがって、有利には、本発明によるリニアアクチュエータには損傷を受けやすい突出部分がない。
【0010】
有利には、本発明によるアクチュエータは、万一駆動手段のどちらかの故障または歯車アセンブリのジャミングの場合でも、継続的に動作可能である。さらに、歯車アセンブリによって分離クラッチを使用しなくて済むようになり、それによってアクチュエータの重量および寸法が低減し、信頼性が上がる。
【0011】
次に、添付の概略図を参照して、ほんの一例として本発明の実施形態を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態によるアクチュエータの断面図である。
【図2】本発明の第2の実施形態によるアクチュエータの断面図である。
【図3】アクチュエータの第2の実施形態のさらに他の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、第1のケーシング部分2および第2のケーシング部分3を含むケーシングを備えるリニアアクチュエータ1を示す。ケーシング部分2、3は、部分的に重なる領域9を有し、そこにおいて互いに対して滑動することができる。第1のケーシング部分2の内部には、第1の駆動手段が設けられる。第1の駆動手段は、ケーシング部分2に固定される固定子6およびローラねじ5に固定される回転子7を含む電動機を備える。ローラねじ5は、ケーシング部分2内に軸受で支承される。動作に際しては、電動機がローラねじ5を回転させ、それによってねじ山付きのロッドを備える伝動要素4が直線的に動かされる。伝動要素4の運動によって、ケーシング部分2、3が互いに対して滑動するようになる。ケーシングの各端部は、スプラインすなわちキー8を有し、そこに伝動要素4がスプライン結合すなわちキー固定され、それによって万一一方の駆動手段にジャムが発生してもケーシング部分2とケーシング部分3の間の相対運動が可能になる。第2のケーシング部分3内には、第2の駆動手段が設けられる。第2の駆動手段は、ローラねじ15を駆動してねじ山付きのロッド4を動かす固定子16および回転子17を含む電動機を備える。万一第1の駆動手段および第2の駆動手段のうちの一方に故障またはジャムが発生した場合、他方の駆動手段がアクチュエータを駆動することができる。したがって、アクチュエータは、個々の故障の影響を受けない。アクチュエータは、対称であり、それは端部取り付け部におけるねじり荷重防止の助けとなる。
【0014】
アクチュエータの第1の端部10は、フレームの一部などの航空機構造に取り付け可能であり、一方、第2の端部11は、例えば着陸装置である作動される物体に連結可能である。
【0015】
図2は、本発明の第2の実施形態を示しており、そこにおいて同様の部分は図1と同じ参照番号によって示されている。アクチュエータ21は、互いに滑動可能に連結される第1のケーシング部分2および第2のケーシング部分3を備える。伝動要素は、小歯車25、26によって駆動される歯板22、23を備える。小歯車は、図3に示される、ケーシングの外部にあるそれぞれの電動機27、28に連結される。しかし、本発明によれば、電動機は、ケーシング内部に設けられてもよい。遊び歯車24、27は、各歯板22、23に隣接して配置され、歯板を支持し、歯板と小歯車の間の良好な駆動係合を確実にする。万一歯板もしくは小歯車のうちの一方および/または電動機のうちの一方に影響を及ぼすジャムが発生した場合、それでもなおアクチュエータは他方によって機能することができる。
【0016】
本発明において、特許請求の範囲を逸脱することなく電動機と伝動要素の間の他のタイプの連結を使用することができる。例えば、ローラねじ、ボールねじ、親ねじならびに歯板および小歯車構成は全て使用可能である。作動の独立性は、他のかたちの電磁作動または液圧応用機械を用いて達成されてもよい。
【0017】
通常動作では、第1の駆動手段および第2の駆動手段は交互に使用され、それによって各駆動手段の機能性がそれぞれの交互使用により証明される。あるいは、第1の駆動手段および第2の駆動手段の両方が同時に動作すると、各駆動手段によってもたらされる作動速度は合計され、それによって望むならアクチュエータは倍の速度で動作可能になる。
【符号の説明】
【0018】
1 リニアアクチュエータ
2 第1のケーシング部分
3 第2のケーシング部分
4 伝動要素、ロッド
5 ローラねじ
6 固定子、第1の電動機
7 回転子
8 キー
9 領域
10 第1の端部
11 第2の端部
15 ローラねじ
16 固定子、第2の電動機
17 回転子
21 アクチュエータ
22 歯板
23 歯板
24 遊び歯車
25 小歯車
26 小歯車
27 遊び歯車、電動機
28 電動機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のケーシング部分と第2のケーシング部分を含むケーシングを備える航空機用リニアアクチュエータであって、前記第1のケーシング部分および前記第2のケーシング部分が、互いに対して伸長可能かつ収縮可能であり、前記ケーシング部分の内部に連結される1つまたは複数の伝動要素を駆動するように互いに独立して動作可能な第1の駆動手段および第2の駆動手段が内部に配置される、リニアアクチュエータ。
【請求項2】
前記第1の駆動手段および前記第2の駆動手段が、電動機を備える、請求項1記載のリニアアクチュエータ。
【請求項3】
前記ケーシング部分が実質的に一定の断面積を有する、請求項1または2記載のリニアアクチュエータ。
【請求項4】
前記伝動要素が、ねじ山付きのロッドを備える、前記請求項のいずれかに記載のリニアアクチュエータ。
【請求項5】
前記駆動手段が、ローラねじを介して前記ねじ山付きのロッドを駆動する、前記請求項のいずれかに記載のリニアアクチュエータ。
【請求項6】
前記ねじ山付きのロッドが、前記第1のケーシング部分および前記第2のケーシング部分のそれぞれの内部にスプライン結合される、前記請求項のいずれかに記載のリニアアクチュエータ。
【請求項7】
前記伝動要素が、小歯車を介して駆動される歯板を備える、請求項1乃至3のいずれかに記載のリニアアクチュエータ。
【請求項8】
前記駆動手段が前記伝動要素と同心である、前記請求項のいずれかに記載のリニアアクチュエータ。
【請求項9】
前記第1の駆動手段および前記第2の駆動手段を前記アクチュエータの使用ごとに交互に使用するステップを含む、前記請求項のいずれかによるリニアアクチュエータの動作方法。
【請求項10】
実質的に添付の図面を参照して本明細書で説明したようなリニアアクチュエータ。
【請求項11】
実質的に添付の図面を参照して本明細書で説明したようなリニアアクチュエータの動作方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−257448(P2012−257448A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−114095(P2012−114095)
【出願日】平成24年5月18日(2012.5.18)
【出願人】(509133300)ジーイー・アビエイション・システムズ・リミテッド (28)
【氏名又は名称原語表記】GE AVIATION SYSTEMS LIMITED
【Fターム(参考)】