説明

高分子分散型液晶組成物、及びそれを用いた高分子分散型液晶素子

【課題】フィルム基板との密着性に優れ、且つ曲げた場合でも白濁性を維持し、低電圧で駆動可能な高分子分散型液晶素子、及びそれに用いる液晶組成物を提供する。
【解決手段】第1成分として、一般式(I−1)


で表される化合物を少なくとも1種含有し、第2成分として、特定なアクリレート系又はアクリルアミド系化合物を少なくとも1種含有し、第3成分として、非重合性液晶化合物を少なくとも1種含有し、第4成分として、光重合開始剤を少なくとも1種含有する高分子分散型液晶組成物、及び該高分子分散型液晶表示素子用組成物を用いた調光用フィルム及び該調光用フィルムを2枚のガラス基板で挟んだ調光ガラス。これらはフィルム基板との密着性に優れ、曲げた状態でも白濁性を維持し、且つ低電圧動作が可能である点において有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高分子分散型液晶素子に有用な組成物、及びこれを用いた高分子分散型液晶素子に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子分散型液晶素子は、偏光板を必要としないため、従来の偏光板を用いた、TN、STN、IPS又はVAモードの液晶表示素子に比べ、明るい表示が実現できるメリットがあり、素子の構成も単純であることから、調光ガラス等の光シャッター用途、時計等セグメント表示用途に応用されている。高分子分散型液晶素子は高分子により液晶分子の配向が乱された状態から、電圧の印加し液晶化合物を一方向に配向させる状態に変化させることにより、光の散乱及び透過を制御するモードである。散乱時には白濁し、透過時には透明になっている。
【0003】
この高分子分散型液晶素子には、いくつかの種類があり、例えば、NCAPと呼ばれるタイプ(特許文献1)、PDLCと呼ばれるタイプ(特許文献2、特許文献3)、PNLCと呼ばれるタイプ(特許文献4)等が提案されている。この高分子分散型液晶素子を調光ガラスのような大面積を必要とする用途に用いる場合は、一般的に初めからガラス基板で挟むのではなく、一旦プラスチックフィルム間に挟んだ調光フィルムを作製し、その調光フィルムを合わせガラスで挟む方法を用いる場合が多い。
【0004】
このような大面積の調光フィルムを作製する場合は、これまでは塗布、乾燥、張り合わせ工程のみで作製でき、UV照射工程を必要としないNCAPタイプのもので作製されていた。しかし、NCAPタイプでは、均一な粒径を有する液晶ドロップレットを、均一な状態に塗布することが難しく、歩留まりが悪い状態が続いていた。
【0005】
一方、PDLC、及びPNLCタイプのものは、これまでは表示素子や光学シャッター等の光学部材への応用が中心であったが、近年、非特許文献1に見られるように、大面積の調光フィルムの作製が実現されている。NCAP方式と異なり、均一な状態に作製することが容易であり、低コストでの作製が可能である。
【0006】
しかしながら、従来の高分子分散型液晶用組成物を用いると、フィルム基板との密着性が悪く、すぐ剥がれてしまう問題があった。この問題は古くからの課題であり、特許文献5、及び特許文献6に改善策が記載されているが、これだけでは十分ではなかった。
【0007】
また、フィルム基板で作製できれば、ガラス基板とは異なり湾曲した状態にすることが可能になるが、従来の材料で作製した調光フィルムは湾曲させると、その応力によって液晶材料が配向してしまい散乱性が弱くなり、白濁性を維持できないという問題もあった。この問題に対しては特許文献7に片側基板から調光層形成材料を剥離させるという手法が記載されているが、基板との密着性はほとんどなくなってしまうため、課題の根本的解決には至っていない。
【0008】
特許文献8には、本願請求項1記載の第1成分、第3成分、第5成分を含有する例が比較例として記載されているが、駆動電圧が130v以上と高く、また、密着性、及び湾曲させたときの白濁維持性についてはなんら述べられていない。
【0009】
更に、上記密着性と湾曲させたときでも白濁性を維持する特性を両立し、且つ低電圧で駆動できる高分子分散型液晶用組成物、及びそれを用いた素子は今までなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】US4435047号公報
【特許文献2】US4688900号公報
【特許文献3】US4834509号公報
【特許文献4】US5304323号公報
【特許文献5】特開平2−310520号公報
【特許文献6】特開平2−309320号公報
【特許文献7】特開2009−69706号公報
【特許文献8】特開平6−248251号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】月刊ディスプレイ 2004年3月号(P78)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、フィルム基板との密着性に優れ、且つ曲げた場合でも白濁性を維持し、低電圧で駆動可能な高分子分散型液晶素子、及びそれに用いる液晶組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記課題を解決するために、種々のモノマー、オリゴマー化合物と液晶組成物との組み合わせを検討した結果、課題を解決するに至った。
【0014】
すなわち、第1成分として、一般式(I−1)
【0015】
【化1】

【0016】
(式中、Xは水素原子、又はメチル基を表し、Zは単結合、メチレン基、エチレン基、又はプロピレン基表すが、Z中の一つ以上のメチレン基は酸素原子が相互に直接結合しないものとして、互いに独立して酸素原子、−COO−、−OCO−、−CO−で置換されていても良く、Aは一般式(I−2)〜(I−5)
【0017】
【化2】

【0018】
で表される置換基を表すが、一般式(I−2)〜(I−5)中の1つ以上のメチレン基は、互いに独立して酸素原子、硫黄原子、−CO−で置換されていても良く、一つ以上の−CH−CH−結合は、−CH=CH−結合に置換されていても良い。)で表される化合物を少なくとも1種含有し、
第2成分として、一般式(II−1)、及び一般式(II−2)
【0019】
【化3】

【0020】
(式中、Xは水素原子、又はメチル基を表し、Zは単結合、炭素数1〜24までのアルキレン基を表すが、該アルキレン基中1つ以上のメチレン基は互いに独立して酸素原子、−CO−、−COO−、−OCO−で置換されていても良く、
、及びRは、水素原子、又は炭素原子数1〜12までのアルキル基を表すが、該アルキレン基中1つ以上のメチレン基は互いに独立して酸素原子、−CO−、−COO−、−OCO−で置換されていても良く、
は環状基が1〜3個の環式化合物基を表すが、Zと直接結合する環状基の結合原子は窒素原子ではなく、
は水素原子、又は炭素数1〜24までのアルキル基を表すが、該アルキル基中の1つ以上のメチレン基は互いに独立して酸素原子、−CO−、−COO−、−OCO−、又は一般式(II−3)
【0021】
【化4】

【0022】
(Rは、水素原子、又は炭素原子数1〜12までのアルキル基を表すが、該アルキレン基中1つ以上のメチレン基は互いに独立して酸素原子、−CO−、−COO−、−OCO−で置換されていても良い。)
で置換されていても良く、且つ直鎖であっても分岐していても良く、
nは0又は1、mは0、1、2又は3を表すが、mが2又は3を表す場合に複数存在するZは同一であっても異なっていても良い。)で表される化合物群から選ばれる少なくとも1種の重合性化合物を含有し
第3成分として、非重合性液晶化合物を少なくとも1種含有し、
第4成分として、光重合開始剤を少なくとも1種含有する高分子分散型液晶組成物を提供し、該高分子分散型液晶表示素子用組成物を用いた調光用フィルム及び該調光用フィルムを2枚のガラス基板で挟んだ調光ガラスを提供する。
【発明の効果】
【0023】
本発明の高分子分散型液晶素子用組成物、及び高分子分散型液晶素子により、フィルム基板との密着性に優れ、曲げた状態でも白濁性を維持し、且つ低電圧動作が可能である高分子分散型液晶素子を得ることができた。特に、調光用フィルムに有用な組成物、及び素子である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に本発明の一例について説明する。
【0025】
第一成分は、一般式(I−1)
【0026】
【化5】

【0027】
(式中、Xは水素原子、又はメチル基を表し、Zは単結合、メチレン基、エチレン基、又はプロピレン基表すが、Z中の一つ以上のメチレン基は酸素原子が相互に直接結合しないものとして、互いに独立して酸素原子、−COO−、−OCO−、−CO−で置換されていても良く、Aは一般式(I−2)〜(I−5)
【0028】
【化6】

【0029】
で表される置換基を表すが、一般式(I−2)〜(I−5)中の1つ以上のメチレン基は、互いに独立して酸素原子、硫黄原子、−CO−で置換されていても良く、一つ以上の−CH−CH−結合は、−CH=CH−結合に置換されていても良い。)で表される化合物である。これら化合物を添加した重合体は可撓性に優れる材料であり、曲げに対しては強いが伸び率はそれほど大きくないため、曲げた状態でも液晶組成物に応力がかかりにくく、結果として曲げた状態でも白濁性を維持できる。また、窒素原子の存在で基板への密着性の向上も併せて達成できる。
【0030】
この中でも、Aが一般式(I−2)(一般式(I−2)中の1つ以上のメチレン基は、互いに独立して酸素原子、硫黄原子、−CO−で置換されていても良い)であることが好ましく、Zのスペーサー基は短い方がより好ましく、単結合であることが更により好ましく、式(V−1)で表される化合物であることが最も好ましい。
【0031】
【化7】

【0032】
モノマー組成物として、一般式(I−1)の化合物に加えて、一般式(II−1)、及び一般式(II−2)で表される化合物群から少なくとも1種類以上を加えることで、より低電圧駆動が可能となる。
【0033】
【化8】

【0034】
(式中、Xは水素原子、又はメチル基を表し、Zは単結合、炭素数1〜24までのアルキレン基を表すが、該アルキレン基中1つ以上のメチレン基は互いに独立して酸素原子、−CO−、−COO−、−OCO−で置換されていても良く、
、及びRは、水素原子、又は炭素原子数1〜12までのアルキル基を表すが、該アルキレン基中1つ以上のメチレン基は互いに独立して酸素原子、−CO−、−COO−、−OCO−で置換されていても良く、
は環状基が1〜3個の環式化合物基を表すが、Zと直接結合する環状基の結合原子は窒素原子ではなく、
は水素原子、又は炭素数1〜24までのアルキル基を表すが、該アルキル基中の1つ以上のメチレン基は互いに独立して酸素原子、−CO−、−COO−、−OCO−、又は一般式(II−3)
【0035】
【化9】

【0036】
(式中、Rは、水素原子、又は炭素原子数1〜12までのアルキル基を表すが、該アルキレン基中1つ以上のメチレン基は互いに独立して酸素原子、−CO−、−COO−、−OCO−で置換されていても良い。)
で置換されていても良く、且つ直鎖であっても分岐していても良く、
nは0又は1、mは0、1、2又は3を表すが、mが2又は3を表す場合に複数存在するZは同一であっても異なっていても良い。)
このとき、低電圧駆動と密着性向上の中でより密着性向上に重きを置く場合は、一般式(II−1)、及び一般式(II−2)で表される化合物群の中でも、一般式(II−4)、
【0037】
【化10】

【0038】
(式中、Xは水素原子、又はメチル基を表し、Zは単結合、炭素数1〜6までのアルキレン基を表すが、該アルキレン基中1つ以上の炭素原子は酸素原子、−CO−、−COO−、−OCO−で置換されていても良く、Aは環状基が1〜2個の環式化合物基であり、
は水素原子、又は炭素数1〜9までのアルキル基を表し、該アルキル基中1つ以上のメチレン基はお互いに独立して酸素原子、−CO−、−COO−、−OCO−で置換されていても良く、且つ直鎖であっても分岐していても良く、
pは0、1、2、又は3を表すが、pが2又は3を表す場合に複数存在するZは同一であっても異なっていても良い。)である化合物が好ましく、
が、式(III−1)〜(III−10)、
【0039】
【化11】

【0040】
(式(III−1)〜(III−10)中の1つ以上のメチレン基は、互いに独立して酸素原子、−NH−、硫黄原子、−CO−で置換されていても良い、ただし、Zと直接結合する環状基の結合原子は窒素原子ではない。)で表される置換基であることが、更に好ましい。
【0041】
より具体的には、下記の一般式(VII−1)から(VII−21)で表される化合物が好ましい。
【0042】
【化12】

【0043】
(式中Xは水素原子、又はメチル基を表す。)
構造式(VII−1)から(VII−21)の中でも、(VII−4)、(VII−6)、(VII−7)、(VII−13)、(VII−15)、(VII−17)がより好ましい。
【0044】
一方、密着性よりも低電圧駆動を重視するのであれば、一般式(II−1)の化合物の中でも、一般式(II−5)
【0045】
【化13】

【0046】
(式中、Xは水素原子、又はメチル基を表し、
は、炭素原子数1〜24までのアルキル基を表すが、該アルキル基中1つ以上のメチレン基はお互い独立に酸素原子、−CO−、−COO−、−OCO−、又は一般式(II−6)
【0047】
【化14】

【0048】
(式中、Rは、水素原子、又は炭素原子数1〜12までのアルキル基を表すが、該アルキレン基中1つ以上のメチレン基は互いに独立して酸素原子、−CO−、−COO−、−OCO−で置換されていても良い。)
で置換されていても良く、且つ直鎖であっても分岐していても良い。)、又は一般式(II−2)で表される化合物であることが好ましい。
【0049】
具体的には、以下の化合物が好ましい。
【0050】
イソアミル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル−ジグリコール(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアクリルアミド。
【0051】
このうち、より低電圧駆動をするためには、Aがアルキルタイプのアクリレート化合物が好ましく、低電圧と密着性のバランスをとるには、Aのアルキル基中1つ以上のメチレン基が一般式(II−6)に置換されている化合物が好ましい。
【0052】
密着性と低電圧駆動のバランスを取るため、一般式(II−4)と一般式(II−5)の化合物を併用することも可能である。
【0053】
第3成分である、非重合性の液晶化合物は、1種又は2種以上の組成物として使用することが出来、それらはネマチック相を呈することが好ましく、
一般式(VIII−1)
【0054】
【化15】

【0055】
(式中、Gは炭素原子数1から10までのアルキル基を表し、該アルキル基中の非隣接の1つ又は2つのCH基は酸素原子、−COO−、−OCO−で置き換えられていてもよく、また一つ以上のメチレン基は−CH=CH−によって置き換えられていてもよく、
は、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、CF基、OCF基、OCHF基、NCS基、又は炭素原子数1〜10のアルキル基を表し、該アルキル基中の非隣接の1つ又は2つのCH基は酸素原子、−COO−、−OCO−で置き換えられていてもよく、また一つ以上のメチレン基は−CH=CH−によって置き換えられていてもよく、
、及びGは、それぞれ独立して、単結合、−COO−、−OCO−、−CH−CH−、−CH=CH−、−CFO−、−OCF−、又は−C≡C−を表し、Gが複数個存在する場合は、同じであっても異なっていても良く、
、B、及びBは、それぞれ独立して、1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキセニル基、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル基、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ピラジン−2,5−ジイル基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、2,6−ナフチレン基を表し、該1,4−フェニレン基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、2,6−ナフチレン基は非置換であるか又は置換基として1個又は2個以上のフッ素原子、塩素原子、CF基、OCF基又はCH基を有していても良く、Bが複数個存在する場合は、同じであっても異なっていても良く、
tは0、1又は2である。)
で表される化合物の単体又は組成物であることが好ましく、ネマチック相を呈する液晶組成物であることが更に好ましい。
【0056】
本発明の高分子分散型液晶組成物を用いた高分子分散型液晶素子は、大型の調光用に用いられることを想定しているため、液晶組成物には光・熱安定性が求められる。そのため、Gは、炭素原子数1から10までのアルキル基、(該アルキル基中の非隣接の1つ又は2つのCH基は酸素原子、−COO−、−OCO−で置き換えられていてもよい。)が好ましく、
は、フッ素原子、シアノ基、OCF基、又は炭素原子数1〜10のアルキル基(該アルキル基中の非隣接の1つ又は2つのCH基は酸素原子、−COO−、−OCO−で置き換えられていてもよい。)であることが好ましく、
、及びGは、それぞれ独立して、単結合、−COO−、−OCO−、−CH−CH−、−CFO−、又は−OCF−(Gが複数個存在する場合は、同じであっても異なっていても良い)であることが好ましく、
、B、及びBは、それぞれ独立して、1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基(該1,4−フェニレン基は非置換であるか又は置換基として1個又は2個以上のフッ素原子、又はCHを有していても良く、Bが複数個存在する場合は、同じであっても異なっていても良い。)であることが好ましい。
【0057】
第4成分である、光重合開始剤としては、330nm以上に光吸収域を有する化合物が好ましく、具体的には以下の化合物が好ましい。
【0058】
ジフェニル−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フォスフィンオキシド、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシーシクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、ベンゾフェノン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチル−ベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)、ベンゾフェノン、メチルベンゾイルフォーメート、オリゴ{2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン、2,4,6トリメチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2−エトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−(1−メチルエトキシ)−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−イソブトキシ−2−フェニルアセトフェノン。
【0059】
特にこの中でも、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンがより好ましい。
【0060】
更に、熱安定性、機械的強度等を増すために、第5成分として、多官能(メタ)アクリレートを添加し、ポリマーに架橋構造を導入することもできる。
【0061】
多官能(メタ)アクリレートの中でも、2官能アクリレートが好ましい。更に、基板との密着性を重視するには、ウレタン系、又はポリエステル系アクリレートオリゴマーであることが好ましく、ウレタンアクリレートオリゴマーであることが更により好ましい。ウレタンアクリレートオリゴマーにはポリエステル系、ポリエーテル系などがあるが、ポリエーテル系の方が好ましい。分子量としては下限値として2000が好ましく、5000がより好ましく、7000が更により好ましく、上限値として30000が好ましく、20000がより好ましく、15000が更により好ましい。これは、あまり分子量が小さいと硬化収縮のため密着性が悪化してしまう。逆にあまり分子量が大きいと架橋間距離が長くなるため、隙間が大きくなり、液晶化合物を取り込みやすくなる。すなわち高温下での環境に放置すると、ポリマーが液晶を吸収してしまい、特性が大きく変化してしまう。また、高分子分散型液晶組成物は、通常液晶化合物の組成物と非液晶化合物(又は組成物)の混合物になるが、非液晶化合物を液晶組成物中に添加することで、液晶組成物のネマチック−アイソトロピック転移点(Tni)が低下することになる。一般に高分子分散型液晶組成物はこのTni以上の均一状態の温度で取り扱いをするため、Tniは低い方が好ましく、Tniを15〜20℃にすることが好ましい。この非液晶化合物を液晶中に添加するとこによるTniの低下度合いは、用いる非液晶化合物の分子量に大きく左右され、分子量が小さいほど低下度合いは大きくなる。そのため、分子量が小さい方がより高い液晶組成物を用いることができ、より高い動作温度域を有する高分子分散型液晶素子を得ることができる。この観点からも、分子量があまりに大きいと、作製された高分子分散型液晶素子の動作温度範囲が狭くなってしまい好ましくない。
【0062】
高分子分散型液晶に用いる液晶化合物の組成物の屈折率異方性(Δn)は一般に高い方が好ましく、Δnは0.16以上が好ましく、0.18以上がより好ましく、0.20以上が更により好ましく、0.22以上が最も好ましい。これらのΔnを持つ液晶組成物の常光屈折率(no)は通常1.50〜1.54程度である。高分子分散型液晶素子に電圧を印加し、透明状態とした場合、この液晶組成物のnoとネットワーク構造を形成しているポリマーの屈折率(np)がほぼ一致していると、高い透明性を得ることができる。しかし、モノマー及びオリゴマーがUV照射等によってポリマー化する際に、一部の液晶組成物を抱き込んだ形で硬化するため、実際のポリマーの屈折率は純粋なものよりも高くなる。そのため、モノマー及びオリゴマーの屈折率は1.5より低い方が好ましく、1.48以下がより好ましく、1.47以下が更により好ましい。
【0063】
より密着性を重視した組成のためには、一般式(VI−1)
【0064】
【化16】

【0065】
で表される基を有する化合物を添加することが好ましい。具体的には下記の化合物を添加することが好ましい。
【0066】
【化17】

【0067】
(式中X、X、及びXはそれぞれ独立して水素原子、又はメチル基を表し、q、r、及びsは1から4を表す。)
一般式(VI−1)で表される基を有する化合物の添加量としては、下限値として0.001質量%であることが好ましく、0.005質量%であることがより好ましく、0.01質量%でることが更により好ましく、上限値として2質量%であることが好ましく、0.5質量%であることがより好ましく、0.2質量%でることが更により好ましい。
【0068】
本発明の高分子分散型液晶組成物中の液晶組成物濃度としては、ポリマーネットワーク構造、又は液晶ドロップレット構造の大きさの観点、及び高分子分散型液晶組成物のTniの観点から、下限値として55質量%であることが好ましく、70質量%がより好ましく、上限値として90質量%であることが好ましく、80質量%がより好ましく、非液晶性組成物の濃度は下限値として10質量%が好ましく、20質量%であることがより好ましく、上限値として45質量%が好ましく、30質量%であることがより好ましい。これは、あまり液晶組成物濃度が高いと、高分子分散型液晶組成物のTniを室温以下にするためには、液晶組成物のTniを低めに設定しなければならず、結果として動作温度範囲が狭くなってしまうためであり、更に液晶組成物濃度があまりに高いと、ポリマーネットワーク構造、又は液晶ドロップレット構造の大きさ大きくなり、結果として光散乱性能が低下してしまうためである。また、あまりに液晶組成物濃度が低いと、ポリマーネットワーク構造、又は液晶ドロップレット構造の大きさが小さくなりすぎて、駆動電圧が高くなってしまうためである。
【0069】
また、各成分の比率は、第1成分を2〜40質量%、第2成分を0.5〜30質量%、第3成分を55〜90質量%、第4成分を0.005〜2質量%含有することが好ましく、第1成分を5〜30質量%、第2成分を1〜20質量%、第3成分を65〜85質量%、第4成分を0.05〜1質量%含有することがより好ましく、第1成分を7〜20質量%、第2成分を1〜10質量%、第3成分を70〜80質量%、第4成分を0.05〜1質量%含有することが更により好ましい。
【0070】
第5成分を添加する場合は、第1成分を2〜40質量%、第2成分を0.5〜30質量%、第3成分を55〜90質量%、第4成分を0.005〜2質量%、第5成分を0.5〜20質量%含有することが好ましく、第1成分を5〜30質量%、第2成分を1〜20質量%、第3成分を65〜85質量%、第4成分を0.05〜1質量%、第5成分を3〜15質量%含有することがより好ましく、第1成分を7〜20質量%、第2成分を1〜10質量%、第3成分を70〜80質量%、第4成分を0.05〜1質量%、第5成分を5〜12質量%含有することが更により好ましい。
【0071】
また、第1〜第5成分以外にも必要であれば、他の成分を含有することも当然可能であり、着色のため色素等を入れることもできる。
【0072】
次に、この高分子分散型液晶組成物を用いた調光フィルムについて説明する。
【0073】
少なくとも一方が透明の2枚の基板間に、本発明の高分子分散型液晶組成物を狭持した後、熱、又は活性エネルギー線を照射することによって重合性化合物を重合させ、液晶組成物との相分離を誘発させることにより、液晶組成物と透明性高分子物質からなる調光層が形成されることによって調光フィルムが得られる。2枚の基板としては、ガラスであっても良いが、プラスチックフィルムであることが好ましく、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PES(芳香族ポリエーテルスルフォン)、PMMA(アクリル樹脂)、PC(ポリカーボネート)、脂環式ポリオレフィン樹脂、環状オレフィン系樹脂、PAR(ポリアリレート)、PEEK(芳香族ポリエーテルケトン)等が好ましい。一般的に駆動のため表面には透明電極が付いていることが好ましい。また、重合する手段としては、紫外線照射で行うことが好ましい。またガラス基板表面にはポリイミド、SiO等によるコーティングを施すこともできる。
【0074】
2枚の基板間には、周知の液晶デバイスと同様、間隔保持用のスペーサーを介在させることができる。基板間の厚み、すなわち調光層の厚みは、2から50μmが好ましく、5から20μmがより好ましい。スペーサーは事前に基板上に散布しても良いが、高分子分散型液晶組成物中にあらかじめ混入しておき、高分子分散型液晶組成物と同時に基板上に塗布しても良い。
【0075】
2枚の基板間に高分子分散型液晶組成物を狭持させるに方法は、通常の真空注入法でも良いが、ODF法等滴下又は塗布で行うことが好ましい。この滴下又は塗布から重合性組成物が重合するまで間、高分子分散型液晶組成物は均一なアイソトロピック状態であることが好ましい。
【0076】
滴下又は塗布を行い場合、2枚の基板で高分子分散型液晶組成物を挟みこむ方法としては、2枚の基板をラミネーター等で挟み込む方法で行うことができる。
【0077】
重合性組成物を重合させる方法としては、紫外線照射が好適である。紫外線を発生させるランプとしては、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ等を用いることができる。また、照射する紫外線の波長としては、高分子分散型液晶組成物に含有されている光重合開始剤の吸収波長領域であり、且つ含有されている液晶組成物の吸収波長域でない波長領域の紫外線を照射することが好ましく、具体的には、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプを使用して330nm以下の紫外線をカットして使用することが好ましい。また、単一波長を照射できるUV−LEDランプを用いることも好ましい。
【0078】
照射する紫外線の強度は、目的とする調光層を得るため適宜調整することができるが、1から200mw/cmが好ましく、5から50mw/cmがより好ましい。紫外線を照射する時間は照射する紫外線強度により適宜選択されるが、10から300秒が好ましい。
【0079】
また、紫外線照射の時の温度は、調光層の特性を決める重要な要素となるが、高分子分散型液晶組成物のアイソトロピック−ネマティック転移点(Tni)よりわずかに高い温度が好ましく、具体的にはTni+0.1から3.0℃が好ましい。
【0080】
上述の手法、又はそれ以外の手法で作製された、高分子分散型液晶素子内の調光層は、液晶化合物の組成物が透明性高分子物質でカプセル状に閉じ込められた構造、液晶化合物の組成物の連続相中に透明性高分子物質の3次元ネットワーク構造が形成された構造、又は両者が混在した構造等を有しているが、液晶化合物の組成物の連続相中に透明性高分子物質の3次元ネットワーク構造が形成された構造であることが好ましく、紫外線照射によって、液晶化合物の組成物の連続相中に透明性高分子物質の3次元ネットワーク構造が形成された構造がより好ましい。
【0081】
ネットワーク構造の平均空隙間隔は高分子分散型液晶表示素子の特性に大きく影響し、平均空隙間隔としては、下限値として0.1μmが好ましく、0.2μmがより好ましく、0.3μmが最も好ましく、上限値として2μmが好ましく、1μmがより好ましく、0.7μmが最も好ましい。
【0082】
このようにして作製された調光用フィルムは、この状態のままで、プロジェクターのスクリーン用途等に用いることもできるが、2枚のガラス基板ではさんで、調光ガラスとして用いることもできる。
【実施例】
【0083】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例及び比較例の組成物における「%」は『質量%』を意味する。
【0084】
実施例中の高分子分散型液晶表示素子は以下の方法で作製した。
【0085】
液晶組成物、重合性化合物、光重合開始剤からなる高分子分散型液晶組成物に15μmのスペーサーを入れ、ITO付きPETフィルムに塗布し、もう一枚のフィルムと張り合わせた。この時、高分子分散型液晶組成物が常に均一状態となるよう、温度をコントロールした。高分子分散型液晶組成物のアイソトロピック−ネマチック転移点(Tni)より1から2℃高い温度にコントロールし、紫外線カットフィルターとして、10mm厚の青板ガラスを用いて照射強度が10mw/cmとなるように調整された高圧水銀ランプを60秒間照射して、高分子分散型液晶素子を得た。
【0086】
実施例中に示される液晶化合物の組成物、高分子分散型液晶組成物の特性の略号、及び意味は以下の通りである。
【0087】
Tni(LC) :液晶組成物のネマチック相−等方性液体相転移温度(℃)
Δn :液晶組成物の25℃における屈折率異方性
Tni(PNM) :高分子分散型液晶組成物のネマチック相−等方性液体相転移温度(℃)
T0 :セル厚15μm、25℃において、何もない(空気)の時の光量を100%とした場合の高分子分散型液晶素子の電圧OFF時の透過率(%)
V90 :セル厚15μm、25℃において、電圧無印加時の高分子分散型液晶素子の光透過率(T0)を0%とし、印加電圧を増加させていき光透過率がほとんど変化しなくなった時の光透過率(T100)を100%とした時、光透過率が90%となる印加電圧値。(V)
評価方法は以下の通りである。
【0088】
転移点測定には、メトラートレド社製の温度コントロールシステムFP−80、及びホットステージFP82を用いた。
【0089】
V90、及びT0測定には、大塚電子社製のLCD評価システムLCD−5200を用い、Bレンズ、アパーチャーSの条件にて測定した。
【0090】
密着性評価には、エーアンドディー社製の引張試験機テンシロンRTG−1210を用い、サンプルの幅25mm、引張速度300mm/分、23℃雰囲気下、ITO付きPETフィルムで挟んだ片側を180°方向に引き剥がした時の平均強度を求めた。
【0091】
湾曲させた場合の、白濁性維持については、作製した調光フィルムを曲げて、目視観察により評価した。
(実施例1)
液晶組成物(A)が74%、ウレタンアクリレートオリゴマーであるUN−6300(根上工業社製、分子量13000)が7.72%、モルフォリンアクリレートであるACMO(興人社製)が14.41%、オキセタンアクリレートであるOXE−10(大阪有機社製)が3.61%、光重合開始剤イルガキュア651(チバジャパン社製)が0.26%からなる高分子分散型液晶組成物を調合し、前述の手法で高分子分散型液晶素子である調光フィルムを得た。用いた液晶組成物の転移点とΔn、高分子分散型液晶組成物の転移点、及び得られた調光フィルムの特性を表1に示す。
【0092】
【化18】

【0093】
(実施例2)
液晶組成物(A)が74%、UN−6300が7.72%、ACMOが14.40%、OXE−10が3.60%、イルガキュア651が0.25%、2−メタクリロイロキシエチルアシッドフォスフェートであるライトエステルP−2M(共栄社製)が0.03%からなる高分子分散型液晶組成物を調合し、前述の手法で高分子分散型液晶素子である調光フィルムを得た。用いた液晶組成物の転移点とΔn、高分子分散型液晶組成物の転移点、及び得られた調光フィルムの特性を表1に示す。
(実施例3)
液晶組成物(C)が74%、UN−7600が7.72%、ACMOが13.63%、OXE−10が4.37%、イルガキュア651が0.26%、ライトエステルP−2Mが0.02%からなる高分子分散型液晶組成物を調合し、前述の手法で高分子分散型液晶素子である調光フィルムを得た。用いた液晶組成物の転移点とΔn、高分子分散型液晶組成物の転移点、及び得られた調光フィルムの特性を表1に示す。
【0094】
【化19】

【0095】
(実施例4)
液晶組成物(D)が74%、UN−6300が7.72%、ACMOが14.40%、OXE−10が3.60%、イルガキュア651が0.25%、ライトエステルP−2Mが0.03%からなる高分子分散型液晶組成物を調合し、前述の手法で高分子分散型液晶素子である調光フィルムを得た。用いた液晶組成物の転移点とΔn、高分子分散型液晶組成物の転移点、及び得られた調光フィルムの特性を表1に示す。
【0096】
【化20】

【0097】
(実施例5)
液晶組成物(A)が74%、UN−6300が7.72%、ACMOが15.43%、ラウリルアクリレートであるLA(共栄社製)が2.57%、イルガキュア651が0.26%、ライトエステルP−2Mが0.02%からなる高分子分散型液晶組成物を調合し、前述の手法で高分子分散型液晶素子である調光フィルムを得た。用いた液晶組成物の転移点とΔn、高分子分散型液晶組成物の転移点、及び得られた調光フィルムの特性を表1に示す。
(実施例6)
液晶組成物(A)が74%、UN−6300が7.72%、ACMOが13.63%、LAが4.37%、イルガキュア651が0.26%、ライトエステルP−2Mが0.02%からなる高分子分散型液晶組成物を調合し、前述の手法で高分子分散型液晶素子である調光フィルムを得た。用いた液晶組成物の転移点とΔn、高分子分散型液晶組成物の転移点、及び得られた調光フィルムの特性を表1に示す。
(実施例7)
液晶組成物(A)が74%、UN−6300が7.72%、ACMOが15.43%、イソオクチルアクリレートであるSR440(サートマー社製)が2.57%、イルガキュア651が0.26%、ライトエステルP−2Mが0.02%からなる高分子分散型液晶組成物を調合し、前述の手法で高分子分散型液晶素子である調光フィルムを得た。用いた液晶組成物の転移点とΔn、高分子分散型液晶組成物の転移点、及び得られた調光フィルムの特性を表1に示す。
(実施例8)
液晶組成物(A)が74%、UN−6300が7.72%、ACMOが14.40%、3,3,5−トリメチルシクロヘキサンアクリレートであるCD420(サートマー社製)が3.60%、イルガキュア651が0.26%、ライトエステルP−2Mが0.02%からなる高分子分散型液晶組成物を調合し、前述の手法で高分子分散型液晶素子である調光フィルムを得た。用いた液晶組成物の転移点とΔn、高分子分散型液晶組成物の転移点、及び得られた調光フィルムの特性を表1に示す。
(実施例9)
液晶組成物(A)が74%、UN−6300が7.72%、ACMOが14.40%、環状トリメチロールプロパンフォルマルアクリレートであるSR531(サートマー社製)が3.60%、イルガキュア651が0.26%、ライトエステルP−2Mが0.02%からなる高分子分散型液晶組成物を調合し、前述の手法で高分子分散型液晶素子である調光フィルムを得た。用いた液晶組成物の転移点とΔn、高分子分散型液晶組成物の転移点、及び得られた調光フィルムの特性を表1に示す。
(実施例10)
液晶組成物(A)が74%、UN−6300が7.72%、ACMOが14.40%、2フェノキシエチルアクリレートであるSR339A(サートマー社製)が3.60%、イルガキュア651が0.26%、ライトエステルP−2Mが0.02%からなる高分子分散型液晶組成物を調合し、前述の手法で高分子分散型液晶素子である調光フィルムを得た。用いた液晶組成物の転移点とΔn、高分子分散型液晶組成物の転移点、及び得られた調光フィルムの特性を表1に示す。
(実施例11)
液晶組成物(A)が74%、UN−6300が7.72%、ACMOが14.40%、テトラヒドロフルフリルアクリレートであるSR285(サートマー社製)が3.60%、イルガキュア651が0.26%、ライトエステルP−2Mが0.02%からなる高分子分散型液晶組成物を調合し、前述の手法で高分子分散型液晶素子である調光フィルムを得た。用いた液晶組成物の転移点とΔn、高分子分散型液晶組成物の転移点、及び得られた調光フィルムの特性を表1に示す。
(実施例12)
液晶組成物(A)が74%、UN−6300が7.72%、ACMOが14.40%、OXE−10が2.83%、LAが0.77%、イルガキュア651が0.26%、ライトエステルP−2Mが0.02%からなる高分子分散型液晶組成物を調合し、前述の手法で高分子分散型液晶素子である調光フィルムを得た。用いた液晶組成物の転移点とΔn、高分子分散型液晶組成物の転移点、及び得られた調光フィルムの特性を表1に示す。
(実施例13)
液晶組成物(A)が74%、UN−6300が7.72%、ACMOが14.40%、アダマンチルアクリレートであるEtADA(大阪有機社製)が3.60%、イルガキュア651が0.26%、ライトエステルP−2Mが0.02%からなる高分子分散型液晶組成物を調合し、前述の手法で高分子分散型液晶素子である調光フィルムを得た。用いた液晶組成物の転移点とΔn、高分子分散型液晶組成物の転移点、及び得られた調光フィルムの特性を表1に示す。
(実施例14)
液晶組成物(A)が74%、UN−6300が7.72%、ACMOが14.40%、ジアキソラン骨格をもつアクリレートであるMEDOL10(大阪有機社製)が3.60%、イルガキュア651が0.26%、ライトエステルP−2Mが0.02%からなる高分子分散型液晶組成物を調合し、前述の手法で高分子分散型液晶素子である調光フィルムを得た。用いた液晶組成物の転移点とΔn、高分子分散型液晶組成物の転移点、及び得られた調光フィルムの特性を表1に示す。
(実施例15)
液晶組成物(A)が74%、UN−6300が7.72%、ACMOが14.40%、ジアキソラン骨格をもつアクリレートであるCHDOL10(大阪有機社製)が3.60%、イルガキュア651が0.26%、ライトエステルP−2Mが0.02%からなる高分子分散型液晶組成物を調合し、前述の手法で高分子分散型液晶素子である調光フィルムを得た。用いた液晶組成物の転移点とΔn、高分子分散型液晶組成物の転移点、及び得られた調光フィルムの特性を表1に示す。
(実施例16)
液晶組成物(A)が74%、UN−6300が7.72%、ACMOが14.40%、ジメチルアミノエチルアクリレートであるDMAEA(興人社製)が3.60%、イルガキュア651が0.26%、ライトエステルP−2Mが0.02%からなる高分子分散型液晶組成物を調合し、前述の手法で高分子分散型液晶素子である調光フィルムを得た。用いた液晶組成物の転移点とΔn、高分子分散型液晶組成物の転移点、及び得られた調光フィルムの特性を表1に示す。
(実施例17)
液晶組成物(A)が74%、UN−6300が7.72%、ACMOが14.40%、ジエチルアクリルアミドであるDEAA(興人社製)が3.60%、イルガキュア651が0.26%、ライトエステルP−2Mが0.02%からなる高分子分散型液晶組成物を調合し、前述の手法で高分子分散型液晶素子である調光フィルムを得た。用いた液晶組成物の転移点とΔn、高分子分散型液晶組成物の転移点、及び得られた調光フィルムの特性を表1に示す。
(実施例18)
液晶組成物(A)が74%、UN−6300が7.72%、ACMOが14.40%、オキセタンメタクリレートであるOXE−30(大阪有機社製)が3.60%、イルガキュア651が0.26%、ライトエステルP−2Mが0.02%からなる高分子分散型液晶組成物を調合し、前述の手法で高分子分散型液晶素子である調光フィルムを得た。用いた液晶組成物の転移点とΔn、高分子分散型液晶組成物の転移点、及び得られた調光フィルムの特性を表1に示す。
(実施例19)
液晶組成物(A)が50%、UN−6300が14.84%、ACMOが29.64%、OXE−10が4.95%、イルガキュア651が0.52%、ライトエステルP−2Mが0.05%からなる高分子分散型液晶組成物を調合し、前述の手法で高分子分散型液晶素子である調光フィルムを得た。用いた液晶組成物の転移点とΔn、高分子分散型液晶組成物の転移点、及び得られた調光フィルムの特性を表1に示す。
(比較例1)
液晶組成物(A)が74%、UN−6300が7.64%、OXE−10が17.83%、イルガキュア651が0.51%、ライトエステルP−2Mが0.02%からなる高分子分散型液晶組成物を調合し、前述の手法で高分子分散型液晶素子である調光フィルムを得た。用いた液晶組成物の転移点とΔn、高分子分散型液晶組成物の転移点、及び得られた調光フィルムの特性を表1に示す。
(比較例2)
液晶組成物(A)が80%、ACMOが19.78%、イルガキュア651が0.20%、ライトエステルP−2Mが0.02%からなる高分子分散型液晶組成物を調合し、前述の手法で高分子分散型液晶素子である調光フィルムを得た。用いた液晶組成物の転移点とΔn、高分子分散型液晶組成物の転移点、及び得られた調光フィルムの特性を表1に示す。
(比較例3)
液晶組成物(E)が75%、HX−620(日本化薬社製)が11.03%、ポリプロピレングリコールアクリレートであるAPG−200(新中村化学社製)3.68%、SR440が9.80%、イルガキュア651が0.49%からなる高分子分散型液晶組成物を調合し、前述の手法で高分子分散型液晶素子である調光フィルムを得た。用いた液晶組成物の転移点とΔn、高分子分散型液晶組成物の転移点、及び得られた調光フィルムの特性を表1に示す。
【0098】
【化21】

【0099】
(比較例4)
液晶組成物(A)が78%、UN−6300が6.47%、ACMOが15.08%、イルガキュア651が0.43%、ライトエステルP−2Mが0.02%からなる高分子分散型液晶組成物を調合し、前述の手法で高分子分散型液晶素子である調光フィルムを得た。用いた液晶組成物の転移点とΔn、高分子分散型液晶組成物の転移点、及び得られた調光フィルムの特性を表1に示す。
(比較例5)
液晶組成物(B)が74%、UN−6300が7.64%、ACMOが17.82%、イルガキュア651が0.51%、ライトエステルP−2Mが0.03%からなる高分子分散型液晶組成物を調合し、前述の手法で高分子分散型液晶素子である調光フィルムを得た。用いた液晶組成物の転移点とΔn、高分子分散型液晶組成物の転移点、及び得られた調光フィルムの特性を表1に示す。
【0100】
【化22】

【0101】
【表1】

【0102】
実施例1、2、3、4と比較例4,5を比較すると、第2成分を含有する実施例の方が駆動電圧は低くなっていることがわかり、実施例1、2、3と比較例1、3を比較すると、第1成分を含有しない比較例1、3は密着性が悪く、湾曲した場合透明状態になってしまうことがわかる。また、重合性組成物が第1成分のみで構成されている比較例2は他の実施例に比べて、駆動電圧が非常に高くなってしまうことがわかる。
【0103】
実施例1は比較例1〜3と比較すると密着性が改善していることがわかる。これに更に第6成分を添加した実施例2は密着性がより向上していることがわかる。実施例5、6、7、12は第2成分の化合物として、アルキルタイプのアクリレートを使用することにより駆動電圧を低くすることが出来ている。特に実施例12は第2成分として、環状構造を持つ化合物と、アルキルタイプのアクリレートを併用しているため、低電圧駆動と密着性が両立できている。また実施例2、8、9、10、11、13、14、15,16,17,18を見ると、第2成分を変えても同様の効果が得られることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1成分として、一般式(I−1)
【化1】

(式中、Xは水素原子、又はメチル基を表し、Zは単結合、メチレン基、エチレン基、又はプロピレン基表すが、Z中の一つ以上のメチレン基は酸素原子が相互に直接結合しないものとして、互いに独立して酸素原子、−COO−、−OCO−、−CO−で置換されていても良く、Aは一般式(I−2)〜(I−5)
【化2】

で表される置換基を表すが、一般式(I−2)〜(I−5)中の1つ以上のメチレン基は、互いに独立して酸素原子、硫黄原子、−CO−で置換されていても良く、一つ以上の−CH−CH−結合は、−CH=CH−結合に置換されていても良い。)で表される化合物を少なくとも1種含有し、
第2成分として、一般式(II−1)、及び一般式(II−2)
【化3】

(式中、Xは水素原子、又はメチル基を表し、Zは単結合、炭素数1〜24までのアルキレン基を表すが、該アルキレン基中1つ以上のメチレン基は互いに独立して酸素原子、−CO−、−COO−、−OCO−で置換されていても良く、
、及びRは、水素原子、又は炭素原子数1〜12までのアルキル基を表すが、該アルキレン基中1つ以上のメチレン基は互いに独立して酸素原子、−CO−、−COO−、−OCO−で置換されていても良く、
は環状基が1〜3個の環式化合物基を表すが、Zと直接結合する環状基の結合原子は窒素原子ではなく、
は水素原子、又は炭素数1〜24までのアルキル基を表すが、該アルキル基中の1つ以上のメチレン基は互いに独立して酸素原子、−CO−、−COO−、−OCO−、又は一般式(II−3)
【化4】

(Rは、水素原子、又は炭素原子数1〜12までのアルキル基を表すが、該アルキレン基中1つ以上のメチレン基は互いに独立して酸素原子、−CO−、−COO−、−OCO−で置換されていても良い。)
で置換されていても良く、且つ直鎖であっても分岐していても良く、
nは0又は1、mは0、1、2又は3を表すが、mが2又は3を表す場合に複数存在するZは同一であっても異なっていても良い。)で表される化合物群から選ばれる少なくとも1種の重合性化合物を含有し
第3成分として、非重合性液晶化合物を少なくとも1種含有し、
第4成分として、光重合開始剤を少なくとも1種含有する高分子分散型液晶組成物。
【請求項2】
第5成分として、多官能のアクリレートモノマー化合物、又は多官能のアクリレートオリゴマー化合物を含有する請求項1記載の高分子分散型液晶組成物。
【請求項3】
第5成分である多官能のアクリレートモノマー化合物、又は多官能のアクリレートオリゴマー化合物が、ウレタン系、又はポリエステル系(メタ)アクリレートオリゴマーであることを特徴とする、請求項2記載の高分子分散型液晶組成物。
【請求項4】
第2成分である一般式(II−1)で表される化合物において、Zは単結合、炭素原子数1、2、又は3のアルキレン基を表し、該アルキレン基中の1つ以上のメチレン基が互いに独立して酸素原子、−CO−、−COO−、−OCO−で置換されていても良く
は、一般式(III−1)〜(III−10)
【化5】

(該一般式(III−1)〜(III−10)中の1つ以上のメチレン基は、互いに独立して酸素原子、窒素原子、硫黄原子、−CO−で置換されていても良い、ただし、Zと直接結合する環状基の結合原子は窒素原子ではない。)を表し、
は水素原子、又は炭素原子数1〜9までのアルキル基を表すが、該アルキル基中の1つ以上のメチレン基は、互いに独立して酸素原子、−CO−、−COO−、−OCO−で置換されていても良く、
nは1であり、mは0、1、2、又は3を表す。)
ことを特徴とする、請求項1、2又は3記載の高分子分散型液晶組成物。
【請求項5】
第5成分であるウレタン系、又はポリエステル系アクリレートオリゴマーの分子量が5000〜30000であることを特徴とする、請求項3又は4記載の高分子分散型液晶組成物。
【請求項6】
第1成分が、一般式(IV−1)
【化6】

(一般式(IV−1)中の一つ以上のメチレン基は、互いに独立して酸素原子、硫黄原子、又は−CO−で置換されていても良い。)
で表される化合物であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の高分子分散型液晶組成物。
【請求項7】
第1成分が、構造式(V−1)
【化7】

であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の高分子分散型液晶組成物。
【請求項8】
請求項1、及び2記載の高分子分散型液晶組成物に加えて、第6成分として一般式(VI−1)
【化8】

で表される基を持つ、(メタ)アクリレート化合物を0.001〜2質量%含有する、請求項1〜7記載の高分子分散型液晶組成物。
【請求項9】
液晶組成物がネマチック液晶組成物であることを特徴とする、請求項1〜8記載の高分子分散型液晶組成物。
【請求項10】
第3成分を55〜90質量%含有することを特徴とする、請求項1〜9記載の高分子分散型液晶組成物。
【請求項11】
第1成分を2〜40質量%、第2成分を0.5〜30質量%、第3成分を55〜90質量%、第4成分を0.005〜2質量%含有することを特徴とする、請求項1〜9記載の高分子分散型液晶組成物。
【請求項12】
第1成分を2〜40質量%、第2成分を0.5〜30質量%、第3成分を55〜90質量%、第4成分を0.005〜2質量%、第5成分を0.5〜30質量%含有することを特徴とする、請求項2〜9記載の高分子分散型液晶組成物。
【請求項13】
請求項1〜12記載の高分子分散型液晶表示素子用組成物を用いた調光用フィルム。
【請求項14】
電極層を有する少なくとも一方が透明な2枚の基板と、この基板間に支持された調光層を有し、該調光層が請求項1〜12記載の組成物に紫外線を照射することによって得られた調光用フィルム。
【請求項15】
電極層を有する透明な2枚のプラスチック基板と、この基板間に支持された調光層を有し、該調光層が請求項1〜12記載の組成物に紫外線を照射することによって得られた調光用フィルムであり、該調光用フィルムを2枚のガラス基板で挟んだ調光ガラス。

【公開番号】特開2011−26526(P2011−26526A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−176419(P2009−176419)
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】