説明

高周波フィルタ回路

【課題】妨害信号を減衰させ、2つの異なる周波数帯域の放送信号を通過させることが可能な高周波フィルタ回路を提供すること。
【解決手段】上側帯域及び下側帯域の2つの帯域を有する放送信号を通過させて後段の放送信号受信回路に供給する高周波フィルタ回路(1)であって、上側帯域及び下側帯域の放送信号が入力される入力端子(11)と、入力端子(11)に接続され、上側帯域の放送信号を通過させる伝送特性を有し、下側帯域の入力インピーダンスがハイインピーダンスに設定された第1のフィルタ部と、入力端子(11)に接続され、下側帯域の放送信号を通過させる伝送特性を有し、上側帯域の入力インピーダンスがハイインピーダンスに設定された第2のフィルタ部と、を具備することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの異なる周波数帯域の放送信号を取り出す高周波フィルタ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、470MHz〜770MHz(710MHz)の周波数帯域を用いる地上デジタルテレビジョン放送を受信可能なチューナ搭載型の携帯電話機が登場している。また、アナログ停波による空き周波数帯域(207.5MHz〜222MHz)を用いた携帯端末向けマルチメディア放送の開始が予定されており、今後、携帯端末向けマルチメディア放送を受信可能な携帯電話機の需要が予想される。
【0003】
携帯電話機のような携帯端末は、小型化の観点から、地上デジタルテレビジョン放送を受信可能なチューナと携帯端末向けマルチメディア放送を受信可能なチューナとを一体にした受信モジュールの搭載が要望されている。また、これらの放送信号を受信するアンテナとして2つの周波数帯域を共に受信可能な共用アンテナの搭載を求められる。上述したような共用アンテナを用いる受信モジュールは、各周波数帯域の放送に対応した受信回路を備えており、各受信回路には受信放送信号を分岐した対応する周波数帯域の放送信号が入力される。このような受信モジュールでは、放送信号の良好な受信環境を実現するために、携帯電話周波数のような妨害信号を減衰させる専用のノッチフィルタを、受信モジュールの前段に設ける必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−301223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、受信モジュールの前段に専用のノッチフィルタを設けることなく妨害信号を減衰でき、部品点数の削減及び小型化が容易な高周波フィルタ回路の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の高周波フィルタ回路は、上側帯域及び下側帯域の2つの帯域を有する放送信号を通過させて後段の放送信号受信回路に供給する高周波フィルタ回路であって、前記上側帯域及び前記下側帯域の放送信号が入力される入力端子と、前記入力端子に接続され、前記上側帯域の放送信号を通過させる伝送特性を有し、前記下側帯域の入力インピーダンスがハイインピーダンスに設定された第1のフィルタ部と、前記入力端子に接続され、前記下側帯域の放送信号を通過させる伝送特性を有し、前記上側帯域の入力インピーダンスがハイインピーダンスに設定された第2のフィルタ部と、を具備することを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、上側帯域の放送信号を通過させる伝送特性を有し、下側帯域の入力インピーダンスがハイインピーダンスに設定された第1のフィルタ部により、下側帯域の放送信号を減衰させることなく、上側帯域の放送信号を通過させることができ、例えば上側帯域よりも高域側に現れる妨害信号の通過は阻止されるので、妨害信号を減衰できる。また、下側帯域の放送信号を通過させる伝送特性を有し、上側帯域の入力インピーダンスがハイインピーダンスに設定された第2のフィルタ部により、上側帯域の放送信号を減衰させることなく、下側帯域の放送信号を通過させることができる。
【0008】
本発明の高周波フィルタ回路において、前記第1のフィルタ部は、前記上側帯域の高域側に隣接する特定周波数を減衰させるノッチフィルタ機能を有しても良い。
【0009】
この構成によれば、第1のフィルタ部に含まれるノッチフィルタ機能によって所定周波数帯域の信号を急峻に減衰させることができるため、第1の周波数帯域に近接する周波数帯域の妨害信号が存在する場合でも、妨害信号を減衰させることができる。
【0010】
本発明の高周波フィルタ回路において、前記第2のフィルタ部は、前記入力端子に接続され前記下側帯域よりも高域を阻止帯域とするローパスフィルタと、当該ローパスフィルタの後段に接続され前記下側帯域よりも低域を阻止帯域とするハイパスフィルタと、からなっても良い。
【0011】
本発明の高周波フィルタ回路において、前記第2のフィルタ部は、前記入力端子に接続され前記下側帯域よりも高域を阻止帯域とするローパスフィルタからなっても良い。
【0012】
本発明の高周波フィルタ回路において、前記第2のフィルタ部は、前記入力端子に一端が接続されたインダクタと、前記インダクタの他端に接続され前記下側帯域よりも低域を阻止帯域とするハイパスフィルタと、前記ハイパスフィルタの後段に接続され前記下側帯域よりも高域を阻止帯域とするローパスフィルタと、からなっても良い。
【0013】
本発明の高周波フィルタ回路において、前記第1のフィルタ部は、前記上側帯域の高域側に隣接する特定周波数を減衰させると共に前記上側帯域の放送信号を通過させるバンドパス型ノッチSAWフィルタで構成されても良い。
【0014】
本発明の高周波フィルタ回路において、前記第1のフィルタ部は、前記バンドパス型ノッチSAWフィルタの後段に接続されると共に前記上側帯域の高域側を阻止帯域とするローパスフィルタを有しても良い。
【0015】
本発明の高周波フィルタ回路において、前記第2のフィルタ部の前記ハイパスフィルタは、前記入力端子とグランドとの間に設けられ、かつ前記入力端子を接地するインダクタを含んでも良い。
【0016】
この構成によれば、ハイパスフィルタのインダクタにより入力端子が接地されるため、インダクタを介して静電気を放電可能である。このため、高周波フィルタ回路に接続される受信回路などの静電気破壊を防止することができる。
【0017】
本発明の高周波フィルタ回路において、前記第1のフィルタ部は、前記上側帯域の高域側に隣接する特定周波数を減衰させるノッチフィルタ機能を有し、前記ノッチフィルタ機能で減衰させる特定周波数は、携帯電話機向けの周波数帯域であっても良い。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、受信モジュールの前段に専用のノッチフィルタを設けることなく妨害信号を減衰でき、部品点数の削減及び小型化が容易な高周波フィルタ回路が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施の形態1に係る高周波フィルタ回路の構成例を示す回路ブロック図である。
【図2】実施の形態2に係る高周波フィルタ回路の具体的回路構成例を示す回路図である。
【図3】第1の周波数帯域の信号経路に用いられるバンドパスフィルタの特性の例を示すグラフである。
【図4】第1の周波数帯域の信号経路に用いられるローパスフィルタの特性の例を示すグラフである。
【図5】第2の周波数帯域の信号経路に用いられるローパスフィルタの特性の例を示すグラフである。
【図6】第2の周波数帯域の信号経路に用いられるハイパスフィルタの特性の例を示すグラフである。
【図7】実施の形態1に係る高周波フィルタ回路の第1の周波数帯域側の伝送特性を示す特性図である。
【図8】実施の形態1に係る高周波フィルタ回路の第2の周波数帯域側の伝送特性を示す特性図である。
【図9】実施の形態2に係る高周波フィルタ回路の別の構成例を示す回路ブロック図である。
【図10】実施の形態2に係る高周波フィルタ回路の別の具体的回路構成例を示す回路図である。
【図11】実施の形態2に係る高周波フィルタ回路の第1の周波数帯域側の伝送特性を示す特性図である。
【図12】実施の形態2に係る高周波フィルタ回路の第2の周波数帯域側の伝送特性を示す特性図である。
【図13】比較例に係る高周波フィルタ回路の構成例を示す回路ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の一実施の形態に係る高周波フィルタ回路の構成について説明する。
【0021】
(実施の形態1)
図1は、本発明の一実施の形態に係る高周波フィルタ回路の構成例を示す回路ブロック図である。図1に示される高周波フィルタ回路1は、入力端子11から受信放送信号(RF信号)が導入され、第1の出力端子12から第1の周波数帯域の放送信号が出力され、第2の出力端子13から第2の周波数帯域の放送信号が出力される。第1の周波数帯域は、地上デジタルテレビジョン放送(以下、第1の放送)に割り振られた470MHz〜770MHz(710MHz)の周波数帯域(上側帯域)であり、第2の周波数帯域は、携帯端末向けマルチメディア放送(以下、第2の放送)に割り当てられた207.5MHz〜222MHzの周波数帯域(下側帯域)である。
【0022】
高周波フィルタ回路1の入力端子11と第1の出力端子12との間には、第1の周波数帯域よりも低域側及び高域側を阻止帯域とし、第2の周波数帯域の信号に対して高インピーダンスを示すバンドパスフィルタ14と、第1の周波数帯域よりも高域側を阻止帯域とするローパスフィルタ15とを含む第1のフィルタ部を備える。入力端子11と第2の出力端子13との間には、第2の周波数帯域よりも高域側を阻止帯域とし、第1の周波数帯域の信号に対して高インピーダンスを示すローパスフィルタ16と、第2の周波数帯域よりも低域側を阻止帯域とするハイパスフィルタ17とを含む第2のフィルタ部を備える。
【0023】
バンドパスフィルタ14は、第1の周波数帯域以外の周波数帯域の信号、特に、第2の周波数帯域の信号に対して高インピーダンスになっている。また、バンドパスフィルタ14は、携帯電話機向けの周波数帯域(800MHz帯)の信号を急峻に減衰させるノッチフィルタとしての機能を有している。バンドパスフィルタ14は、第2の周波数帯域の放送信号に対して高インピーダンスであるため、第2の周波数帯域の放送信号はバンドパスフィルタ14で阻止されて低ロスでローパスフィルタ16へ伝搬する。また、バンドパスフィルタ14がノッチフィルタとして機能することにより、第1の周波数帯域の放送信号を低ロスで透過させると共に、妨害信号である携帯電話機向け周波数帯域の信号を十分に減衰させることができる。これにより、第2の周波数帯域の放送信号をローパスフィルタ16へ導き、第1の周波数帯域の放送信号を通過させると共に第1の周波数帯域と近接する周波数帯域の妨害信号は十分に減衰させることができる。このようなバンドパスフィルタ14としては、例えば、バンドパス型ノッチSAWフィルタを用いることができる。
【0024】
ローパスフィルタ16は、第2の周波数帯域よりも高域側の周波数帯域である第1の周波数帯域の信号に対して高インピーダンスになっている。ローパスフィルタ16は、第1の周波数帯域の放送信号に対して高インピーダンスであるため、第1の周波数帯域の放送信号がローパスフィルタ16側へ流れるのを抑制し、ロスなくバンドパスフィルタ14へ流すことができるように作用する。これにより、第1の周波数帯域の放送信号をバンドパスフィルタ14へロスなく供給することができると共に、第2の周波数帯域の放送信号を通過させ、第2の周波数帯域よりも高域側の信号を十分に減衰させることができる。
【0025】
ローパスフィルタ15は、第1の周波数帯域より高い周波数帯域を阻止帯域とする伝送特性を有し、第1の周波数帯域の信号を第1の出力端子12側に出力する。ハイパスフィルタ17は、第2の周波数帯域より低い周波数帯域を阻止帯域とする伝送特性を有し、第2の周波数帯域の信号を第2の出力端子13側に出力する。ローパスフィルタ15又はハイパスフィルタ17は用途や仕様に応じて省略しても良い。
【0026】
図2は、図1に示される高周波フィルタ回路1の具体的な回路構成例を示す回路図である。
【0027】
図2に示されるように、ローパスフィルタ15は、バンドパスフィルタ14と第1の出力端子12との間に直列に接続されたインダクタ151及び152と、インダクタ151及び152の接続ノードに一端が接続されたインダクタ153と、インダクタ153の他端とグランドとの間に接続されたキャパシタ154と、を備える。ローパスフィルタ16の具体的構成も、ローパスフィルタ15の具体的構成と同様である。すなわち、ローパスフィルタ16は、入力端子11とハイパスフィルタ17との間に直列に接続されたインダクタ161及び162と、インダクタ161及び162の接続ノードに一端が接続されたインダクタ163と、インダクタ163の他端とグランドとの間に接続されたキャパシタ164と、を備える。
【0028】
ハイパスフィルタ17は、ローパスフィルタ16と第2の出力端子13との間に並列に接続されたキャパシタ171及びインダクタ172と、インダクタ172のアンテナ側となる一端とグランドとの間に接続されたインダクタ173と、インダクタ172の他端とグランドとの間に接続されたインダクタ174と、を備える。
【0029】
なお、各フィルタは上述の具体的構成に限定されない。例えばハイパスフィルタ17は、図2に示されるような、インダクタ173及び174を介して接地電圧と接続された構成(π型)でなくともかまわない。ただし、ハイパスフィルタ17を、インダクタ173及び174を介してグランドと接続された構成とすることにより、高周波フィルタ回路の入力端子11側で生じた静電気を放電させることができる。これにより、第1の出力端子12や第2の出力端子13に接続される受信回路などの静電気破壊を防止できる。このため、ハイパスフィルタ17を、インダクタ173及び174を介してグランドと接続された構成とすることは好ましい。
【0030】
図3は、図1及び図2に示されるバンドパスフィルタ14の伝送特性(周波数(GHz)−減衰量(dB)特性)の例を示す特性図である。図3は、縦軸が減衰量、横軸が周波数を示している。図3から、第1の周波数帯域(470MHz〜770MHz(710MHz))の減衰はほとんどないのに対して、それ以外の周波数帯域において大きく減衰していることが分かる。特に、830MHz〜845MHzの800MHz帯において、急峻な減衰が見られる。これは、バンドパスフィルタ14が800MHz帯の信号を減衰極とするノッチフィルタ機能を備えているためである。このようなノッチフィルタ機能を備えることで、所望信号(ここでは、470MHz〜770MHz(710MHz)の信号)に近接する周波数帯域の妨害信号(800MHz帯の信号)を適切に減衰させることができる。
【0031】
図4は、図1及び図2に示されるローパスフィルタ15の周波数特性の例を示すグラフである。図4において、縦軸が減衰量(dB)、横軸が周波数(GHz)を示している。図4から、第1の周波数帯域(470MHz〜770MHz(710MHz))より高い周波数帯域では大きく減衰している。
【0032】
図5は、図1及び図2に示されるローパスフィルタ16の周波数特性を示す特性図である。図5において、縦軸が減衰量(dB)、横軸が周波数(GHz)を示している。図5から、第2の周波数帯域(207.5MHz〜222MHz)より高い周波数帯域では大きく減衰している。
【0033】
図6は、図1及び図2に示されるハイパスフィルタ17の周波数特性を示す特性図である。図6において、縦軸が減衰量(dB)、横軸が周波数(GHz)を示している。図6から、第2の周波数帯域(207.5MHz〜222MHz)より低い周波数帯域では大きく減衰している。
【0034】
図7及び図8は、図3〜図6に示される特性のフィルタを含んで構成された高周波フィルタ回路1の全体の伝送特性を示す特性図である。図7は、バンドパスフィルタ14及びローパスフィルタ15からなる第1のフィルタ部の伝送特性を示している。図8は、ローパスフィルタ16及びハイパスフィルタ17からなる第2のフィルタ部の伝送特性を示している。
【0035】
以上のように本実施の形態によれば、第1の周波数帯域の放送信号を通過させる伝送特性を有し、第2の周波数帯域の入力インピーダンスがハイインピーダンスに設定された第1のフィルタ部と、第2の周波数帯域の放送信号を通過させる伝送特性を有し、第1の周波数帯域の入力インピーダンスがハイインピーダンスに設定された第2のフィルタ部とにより妨害信号を減衰させることができる。また、第1のフィルタ部は第2の周波数帯域の入力インピーダンスがハイインピーダンスに設定され、第2のフィルタ部は第1の周波数帯域の入力インピーダンスがハイインピーダンスに設定されているため、部品点数を削減しても受信放送信号を分岐できる。このように、本実施の形態によって妨害信号を減衰でき、部品点数の削減及び小型化が容易な高周波フィルタ回路を提供することができる。また、回路構成や製造コスト、静電気破壊防止などの観点から有利な効果を得ることができる。
【0036】
なお、本実施の形態は、他の実施の形態の構成と組み合わせて実施することができる。
【0037】
(実施の形態2)
次に、本発明の他の実施の形態について説明する。図9は、他の実施の形態に係る高周波フィルタ回路の構成例を示す回路ブロック図である。図1に示される高周波フィルタ回路1と同一部分には同一の符号を付している。図9に示される高周波フィルタ回路2は、図1に示される高周波フィルタ回路1と同様、第1の周波数帯域の放送信号と、第2の周波数帯域の放送信号とが入力される入力端子11と、第1の周波数帯域の放送信号が出力される第1の出力端子12と、第2の周波数帯域の放送信号が出力される第2の出力端子13とを備える。
【0038】
第1の周波数帯域を伝送帯域とする第1のフィルタ部は、第1の周波数帯域よりも低域側及び高域側を阻止帯域とし、第2の周波数帯域の信号に対して高インピーダンスを示すバンドパスフィルタ14と、第1の周波数帯域よりも高域側を阻止帯域とするローパスフィルタ15とを備える。
【0039】
第2の周波数帯域を伝送帯域とする第2のフィルタ部は、図1に示される高周波フィルタ回路1と比較して、ローパスフィルタ16とハイパスフィルタ17との接続順序が逆になるように配置されている。入力端子11とハイパスフィルタ17との間に、第1の周波数帯域の信号に対して高インピーダンスを示すインダクタ18を接続している。すなわち、入力端子11と第2の出力端子13との間には、第1の周波数帯域に対して高インピーダンスのインダクタ18と、第2の周波数帯域よりも低域側を阻止帯域とするハイパスフィルタ17と、第2の周波数帯域よりも高域側を阻止帯域とするローパスフィルタ16とを備える。
【0040】
図10は、図9に示される高周波フィルタ回路2の具体的な回路構成例を示す回路図である。
【0041】
図10に示されるように、ローパスフィルタ15は、バンドパスフィルタ14と第1の出力端子12との間に直列に接続されたインダクタ151及び152と、インダクタ151及び152の接続ノードに接続されたインダクタ153と、インダクタ153とグランドとの間に接続されたキャパシタ154と、を備える。また、ローパスフィルタ16は、ハイパスフィルタ17と第2の出力端子13との間に直列に接続されたインダクタ161及び162と、インダクタ161及び162の接続ノードに接続されたインダクタ163と、インダクタ163とグランドとの間に接続されたキャパシタ164と、を備える。
【0042】
インダクタ18は、第1の周波数帯域の信号に対して高インピーダンスなインダクタである。このインダクタ18により、後段に配置されるハイパスフィルタ17への第1の周波数帯域の信号の伝搬を阻止でき、第1の周波数帯域の信号をロスなくバンドパスフィルタ14へ入力できる。
【0043】
ハイパスフィルタ17は、インダクタ18とローパスフィルタ16との間に並列に接続されたキャパシタ171及びインダクタ172と、キャパシタ171及びインダクタ172の一端と接地電圧との間に接続されたインダクタ173と、キャパシタ171及びインダクタ172の他端とグランドとの間に接続されたインダクタ174と、を備える。
【0044】
なお、各フィルタは上述の具体的構成に限定されない。第1の出力端子12や第2の出力端子13に接続される受信回路などの静電気破壊を防止するという観点からは、ハイパスフィルタ17を、インダクタ173及び174を介して接地電圧と接続された構成とすることが好ましい。また、インダクタ18は、後段に配置されるハイパスフィルタ17への第1の周波数帯域の信号の伝搬を阻止できる抵抗素子などに代えても良い。
【0045】
図11及び図12は、図9及び図10に示される高周波フィルタ回路2の周波数(GHz)−減衰量(dB)特性を示すグラフである。図11は、第1の出力端子12側の減衰特性を示している。図12は、第2の出力端子13側の減衰特性を示している。また、図11及び図12は、縦軸が減衰量を、横軸が周波数を示している。図11及び図12から、図9及び図10に示される高周波フィルタ回路2も、所望の周波数帯域の信号を通過させ、他の周波数帯域の信号を減衰させることが分かる。
【0046】
本実施の形態に係る高周波フィルタ2でも、高周波フィルタ回路1と同様の効果を得られる。本実施の形態は、他の実施の形態の構成と組み合わせて実施することができる。
【0047】
(比較例)
図13は、高周波フィルタ回路の比較例を示す回路ブロック図である。高周波フィルタ回路3の入力端子31にはローパスフィルタ34が接続されている。また、ローパスフィルタ34の第1の出力端子32側には、ハイパスフィルタ35とローパスフィルタ36とを有し、第2の出力端子33側には、ローパスフィルタ37とハイパスフィルタ38とを有する。
【0048】
図13に示される高周波フィルタ回路3は、ローパスフィルタ34の後段のハイパスフィルタ35及びローパスフィルタ37によって、第1の周波数帯域の信号と第2の周波数帯域の信号とを分波している。このため、ハイパスフィルタ35及びローパスフィルタ37の回路構成が制限され、ローパスフィルタ37とローパスフィルタ37の後段に接続されるハイパスフィルタ38との接続関係も固定されることになる。また、後段とのマッチング回路や回路安定性向上のための回路は個別設計が必要になる。
【0049】
本実施の形態に係る高周波フィルタ回路1,2は、バンドパスフィルタ14とローパスフィルタ16とを用いて第1の周波数帯域の信号と第2の周波数帯域の信号とを分波しているため、上述した高周波フィルタ回路3と比較して回路構成の自由度が高くなる。例えば、高周波フィルタ回路として、図1(及び図2)に係る高周波フィルタ回路1と図9(及び図10)に係る高周波フィルタ回路2とを選択可能である。これにより、マッチング回路の選択肢が増え、後段との回路マッチングが容易になる。このように、実施の形態に係る高周波フィルタ回路は、回路安定性向上の観点から選択肢が多くなるため好ましい。
【0050】
また、実施の形態に係る高周波フィルタ回路は、高周波フィルタ回路3のようにローパスフィルタ34を用いていないため、部品点数を削減することができる。これにより、高周波フィルタ回路3と比較して小型化することが可能である。また、高周波フィルタ回路3と比較して低コストに製造できる。
【0051】
さらに、高周波フィルタ回路においてπ型のハイパスフィルタ17を用いる場合、ハイパスフィルタ17がインダクタ173及び174を介してグランドと接続されるため、高周波フィルタ回路の入力端子11側で生じた静電気を接地電圧側に放電させることができる(図2又は図10参照)。このため、別途、静電気放電用の素子を配置しなくとも、後段に接続される受信回路などの静電気破壊を防止できる。
【0052】
以上のように、実施の形態に係る高周波フィルタ回路1,2は、第1の周波数帯域の放送信号を通過させる伝送特性を有し、第2の周波数帯域の入力インピーダンスがハイインピーダンスに設定された第1のフィルタ部と、第2の周波数帯域の放送信号を通過させる伝送特性を有し、第1の周波数帯域の入力インピーダンスがハイインピーダンスに設定された第2のフィルタ部とにより妨害信号を減衰させることができる。また、第1のフィルタ部は第2の周波数帯域の入力インピーダンスがハイインピーダンスに設定され、第2のフィルタ部は第1の周波数帯域の入力インピーダンスがハイインピーダンスに設定されているため、部品点数を削減しても受信放送信号を分岐できる。このように、本実施の形態によって妨害信号を減衰でき、部品点数の削減及び小型化が容易な高周波フィルタ回路を提供することができる。また、回路構成や製造コスト、静電気破壊防止などの観点から有利な効果を得ることができる。
【0053】
なお、本発明は上記実施の形態の記載に限定されず、その効果が発揮される態様で適宜変更して実施することができる。例えば、高周波フィルタ回路を構成する各種フィルタの構成は、発明の効果が発揮される範囲内において適宜変更できる。また、各種フィルタを構成するインダクタ、キャパシタなどの素子の特性は、目的とする特性に応じて設定可能である。
【0054】
また、高周波フィルタ回路の通過周波数帯域は、上述した第1の周波数帯域(470MHz〜710MH(770MHz))や第2の周波数帯域(207.5MHz〜222MHz)に限定されない。他の周波数帯域の放送を受信させる場合には、目的とする通過周波数特性が得られるように、高周波フィルタ回路を構成する各種フィルタの特性を変更すればよい。
【0055】
その他、本発明は、本発明の範囲を逸脱しないで適宜変更して実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の高周波フィルタ回路は、例えば、携帯電話機における地上デジタルテレビジョン放送及び携帯端末向けマルチメディア放送の受信に有用である。
【符号の説明】
【0057】
1、2、3 高周波フィルタ回路
11、31 入力端子
12、32 第1の出力端子
13、33 第2の出力端子
14 バンドパスフィルタ
15、16、34、36、37 ローパスフィルタ
17、35、38 ハイパスフィルタ
18 インダクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上側帯域及び下側帯域の2つの帯域を有する放送信号を通過させて後段の放送信号受信回路に供給する高周波フィルタ回路であって、
前記上側帯域及び前記下側帯域の放送信号が入力される入力端子と、
前記入力端子に接続され、前記上側帯域の放送信号を通過させる伝送特性を有し、前記下側帯域の入力インピーダンスがハイインピーダンスに設定された第1のフィルタ部と、
前記入力端子に接続され、前記下側帯域の放送信号を通過させる伝送特性を有し、前記上側帯域の入力インピーダンスがハイインピーダンスに設定された第2のフィルタ部と、
を具備することを特徴とする高周波フィルタ回路。
【請求項2】
前記第1のフィルタ部は、前記上側帯域の高域側に隣接する特定周波数を減衰させるノッチフィルタ機能を有することを特徴とする請求項1に記載の高周波フィルタ回路。
【請求項3】
前記第2のフィルタ部は、前記入力端子に接続され前記下側帯域よりも高域を阻止帯域とするローパスフィルタと、当該ローパスフィルタの後段に接続され前記下側帯域よりも低域を阻止帯域とするハイパスフィルタと、からなることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の高周波フィルタ回路。
【請求項4】
前記第2のフィルタ部は、前記入力端子に接続され前記下側帯域よりも高域を阻止帯域とするローパスフィルタからなることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の高周波フィルタ回路。
【請求項5】
前記第2のフィルタ部は、前記入力端子に一端が接続されたインダクタと、前記インダクタの他端に接続され前記下側帯域よりも低域を阻止帯域とするハイパスフィルタと、前記ハイパスフィルタの後段に接続され前記下側帯域よりも高域を阻止帯域とするローパスフィルタと、からなることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の高周波フィルタ回路。
【請求項6】
前記第1のフィルタ部は、前記上側帯域の高域側に隣接する特定周波数を減衰させると共に前記上側帯域の放送信号を通過させるバンドパス型ノッチSAWフィルタで構成されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の高周波フィルタ回路。
【請求項7】
前記第1のフィルタ部は、前記バンドパス型ノッチSAWフィルタの後段に接続されると共に前記上側帯域の高域側を阻止帯域とするローパスフィルタを有することを特徴とする請求項6記載の高周波フィルタ回路。
【請求項8】
前記第2のフィルタ部の前記ハイパスフィルタは、前記入力端子とグランドとの間に設けられ、かつ前記入力端子を接地するインダクタを含むことを特徴とする請求項3又は請求項5に記載の高周波フィルタ回路。
【請求項9】
前記第1のフィルタ部は、前記上側帯域の高域側に隣接する特定周波数を減衰させるノッチフィルタ機能を有し、前記ノッチフィルタ機能で減衰させる特定周波数は、携帯電話機向けの周波数帯域であることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載の高周波フィルタ回路。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−186773(P2012−186773A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−50332(P2011−50332)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】