説明

高周波音響液体ジェット記録ヘッド

【課題】寿命の長い駆動部と寿命の短い噴射部を離合自在に構成して駆動部に対し噴射部を交換可能な構成にした高周波音響液体ジェット記録ヘッドを提供する。
【解決手段】駆動部12の超高周波発生部25は駆動制御部24を介して共通電極21と個別電極23間に超高周波電圧を供給する。超高周波電圧を印加された薄層22は超音波を出射し、駆動部12の基材B19、噴射部11の第2の音響整合層18、基材A17、第1の音響整合層16、を伝播して液室15に達し、ノズル孔13から液滴26を噴射させる。駆動部12と噴射部11は離合自在に合体し、ノズル孔13の重度の目詰まり等の回復不能な障害が起きたときは駆動部12に対し噴射部11を交換することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、寿命の長い駆動部と寿命の短い噴射部を離合自在に構成して、寿命の長い駆動部に対し寿命の短い噴射部を交換可能な構成にした高周波音響液体ジェット記録ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット方式の画像記録装置(プリンタ)として、駆動部として発熱素子を用いるサーマル式インクジェットプリンタや、駆動部として圧電素子を用いるピエゾ式インクジェットプリンタが広く用いられてきた。
【0003】
サーマル式インクジェットプリンタは、発熱素子による膜沸騰を利用し、発熱素子の発熱面に発生するバブルの発泡力が、記録ヘッドに内包されて発熱素子面に接触しているインクを押し上げ、記録ヘッドのノズル口にメニスカスを形成しているインク液面よりインク滴を外部の紙面に向けて噴射させて、紙面に所望の画像を記録するものである。
【0004】
このサーマル式インクジェットプリンタの特徴は、バブルの膨張力が発熱素子面に接触するインク層に伝播させ得ることが必須条件である。すなわち、駆動部である発熱素子とインクは不可分な構成であることがわかる。
【0005】
また、ピエゾ式インクジェットプリンタは、振動膜としてのダイアフラム層に強力に接着されたピエゾ振動子が振動し、その機械的振動押圧力を薄層のダイアフラム層を介してインク層に伝播させ、そのインク層を、ダイアフラム層に対向して形成されているノズル部より、インク滴として外部の紙面に向けて噴射させて、紙面に所望の画像を記録するものである。
【0006】
このピエゾ式インクジェットプリンタの特徴も、その駆動素子であるピエゾ振動子はダイアフラム層と密着して接着されていなければならず、インク層もダイアフラム層に直接接していなければ、インク層にダイアフラム層の押圧力が伝達されないから、結果として、インク層と駆動部とは不可分に構成されていることがわかる。
【0007】
一方、近年に至り、超音波をインク滴噴射の駆動力とするインクジェットプリンタが各種提案されている。例えば、個別の記録ドットごとのノズルやインク流路の隔壁を必要としないスリット型のインク噴射部を有する超音波音響ジェット方式のライン型インクジェットプリンタが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
この方式のインクジェットプリンタは、いわゆるノズルレスの方式であるため、記録ヘッドをシリアル型からラインヘッド化する上で大きな障害となっていた目詰まりの防止と復旧に対して有効であるとされている。
【0009】
また、例えば、超音波音響の駆動力を、より効率よくインク中に放射できるように、圧電体基板とインク層との間に、インクの音響インピーダンスより大きい音響インピーダンスを有する整合層を設けた構成が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0010】
また、同じくスリット型のインク噴射部を有するものでは、複数の圧電素子の超音波印加タイミングに時間差をつけ、あたかも音響レンズのように主走査方向の所望の位置で超音波を重ね合わせて収束させることによりインク面からインク滴を噴射させる方法が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【0011】
この特許文献3の技術は、所望の解像度よりも低解像度なアレイ素子の重ね合わせ収束を利用して所望の解像度を得ることができるため、実装駆動素子数を従来のインクジェット方式のノズル数と同数の駆動素子よりも大幅に削減できるという利点を有している。
【特許文献1】US4308547号公報
【特許文献2】特開平05−084908号公報
【特許文献3】特開平11−091094号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、従来のサーマル式やピエゾ式のインクジェットプリンタでは、その記録ヘッドのインク滴を噴射する噴射部であるノズル部のノズル孔は、インクの固結による目詰まりが起こりやすい。
【0013】
そして、このノズル部の寿命は、発熱素子又は圧電素子からなるヘッド駆動部やこのヘッド駆動部を駆動制御する回路からなる駆動部・制御回路部の寿命に較べると、格段に短い。
【0014】
したがって、ノズル部のノズル孔にインクの固着などの回復不能な障害が発生した場合、出来れば駆動部・制御回路部からノズル部のみを切り離して廃棄し、新品と交換するのが経済的で好ましいといえる。
【0015】
ところが、従来のインクジェットヘッドの構造は、インク供給部、ノズル部、インク滴駆動のための発熱素子部または圧電素子部、さらに各素子の駆動回路部が、MEMS(Micro Electro Mechanical System )製造技術を活用しても非常に難易度の高い製造法による一体構造であった。
【0016】
そのため、ノズル部で、インクの固着などの障害が頻繁に発生してノズル部が使用不可となった場合、製造原価の高価な駆動部・制御回路部もノズル部と一体構造のため、障害のあるノズル部だけでなく、駆動部・制御回路部も含めた記録ヘッド全体を廃棄することになり、経済的な損失が大きく、大きな問題となっていた。
【0017】
上記の一体構造を無視して、仮に、ノズル部だけをその一体構成部より分離させ、交換できるようにしようとすると、従来のサーマル式やピエゾ式のインクジェットプリンタの記録ヘッドの構成では、ノズル部と駆動部との間に在るインク層が空気中に露呈されることとなり、インクの気化凝着、汚染などが生じ、実際にはノズル部のみの交換は不可能な構成であった。
【0018】
また、サーマル式やピエゾ式とは異なる方式の前述した特許文献1〜3に示される超音波音響方式によるインクジェットプリンタにおいても、上記のノズル部に代わるインク滴噴射部と駆動部・制御回路部とは一体構成であり、噴射部と駆動部・制御回路部とを切り離すことは全く考えられていない。
【0019】
これは、インク滴の噴射部がスリットであることにも起因すると考えられる。しかし、噴射部がスリットであれば、目詰まりが全く起きないかといえば、スリットといえども副走査方向の開口幅は狭いので、やはり目詰まりは起きると考えなければならない。
【0020】
いずれにしても、ノズル孔又はスリットを有するインク滴の噴射部(ノズル部も含む、以下同様)は、程度の差こそあれ、インクの固着などの回復不能な障害が発生すると考えられる。
【0021】
この噴射部の障害発生と記録ヘッド全体を廃棄・交換する問題は、インクジェットプリンタの記録ヘッドが、シリアル型からライン型へと大型化された場合、より大きな問題となり、結果的にインクジェットプリンタの記録ヘッドのライン型化における信頼性の確保が困難となるものであった。
【0022】
本発明の課題は、上記従来の実情に鑑み、寿命の長い駆動部と寿命の短い噴射部を離合自在に構成して、寿命の長い駆動部に対し寿命の短い噴射部を交換可能な構成にした高周波音響液体ジェット記録ヘッドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の高周波液体ジェット記録ヘッドは、少なくとも、超音波により記録ヘッドの液滴噴射を駆動する超音波出射部と該超音波出射部の超音波出射を駆動制御する制御回路部とが一体に構成された駆動部と、該駆動部と離合自在に構成され、液体供給部から供給される所望の液体を保持する液体保持室を備え、該液体保持室の一面に複数の液滴噴射位置を有する噴射開口部を備え、上記駆動部の超音波伝播下流側に合体して上記駆動部に密着接合されたとき、該駆動部からの超音波出射により上記噴射開口部の任意の噴射位置から上記液体の液滴を噴射する噴射部と、を備えて構成される。
【0024】
上記液体供給部は、例えば、上記噴射部と離合自在に構成され、上記噴射部に合体配置されたとき、該噴射部に上記液体を供給するように構成される。
【0025】
また、上記噴射部は、例えば、上記噴射開口部の少なくとも副走査方向の中心と、上記記録ヘッド駆動・回路部の上記超音波出射部の中心との所定範囲の不一致を許容するように構成することができる。
【0026】
また、上記超音波出射部は、例えば、アレイ状に配置された複数の超音波発信素子を備え、該超音波発信素子により収束超音波を出射するように構成してもよい。
【0027】
この場合、上記収束超音波は、例えば、上記超音波発信素子ごとに備えられた凹面型音響レンズによる収束超音波であってもよい。そして、上記凹面型音響レンズは、例えば、上記超音波発信素子の超音波伝播下流側に配置される上記超音波発信素子の共通電極にプレス加工等により形成されているように構成することができる。
【0028】
また、上記収束超音波は、例えば、複数の上記超音波発信素子による時分割の遅延駆動走査による収束超音波で構成してもよい。
【0029】
また、上記噴射部と上記記録ヘッド駆動・回路部との密着接合部は、例えば、それぞれの内部を外部から遮断する隔壁材で構成され、該隔壁材はそれぞれ超音波伝搬に適する超音波伝搬材料で且つ音響インピーダンスの近い材料で構成されることが好ましい。
【0030】
また、上記記録ヘッド駆動・回路部は、例えば、上記超音波出射部の超音波伝播下流側に、アレイ状に配置された超音波遮断素子を更に備え、上記超音波出射部の駆動と上記超音波遮断素子の駆動との組み合わせにより、上記噴射部の上記噴射開口部からの上記液滴噴射位置を制御するように構成してもよい。
【0031】
この場合、上記超音波遮断素子は、例えば、膜気泡を発生する発熱素子で構成してもよい。
【0032】
また、上記噴射部の上記噴射開口部は、例えば、上記記録ヘッド駆動・回路部のアレイ状に配置された複数の超音波発信素子に対向する位置に形成され、上記収容部の内部において開口部を他の開口部から隔てる隔壁を持たない状態で一列に並んだ複数のノズル孔又は一本のスリットを最小単位として形成されている。
【0033】
また、上記記録ヘッド駆動・回路部は、上記液体の上記液滴を上記噴射部から噴射させる噴射用と、上記噴射部に混入した混入物を清掃する清掃用の、二種類の超音波発信モードを有するように構成してもよい。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、少なくとも寿命の長い駆動部と寿命の短い噴射部を離合自在に構成するので、寿命の長い駆動部に対し寿命の短い噴射部の交換が可能となり、これにより、経時的な使用費用の廉価な高周波音響液体ジェット記録ヘッドを提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。本発明は、高周波音響液体ジェット記録ヘッドに関するものであるので、先ず、高周波音響液体ジェット記録ヘッドの基本構造について説明する。
【0036】
図1は、高周波音響液体ジェット記録ヘッドの基本構造を示す断面図である。図1に示すように、高周波音響液体ジェット記録ヘッド1は、圧電体基板2とノズルプレート3が、液室4を挟んで対向配置されている。
【0037】
液室4には、外部から液体が供給される。液体は、通常のインクジェット用のインクでもよいが、本発明で以降説明される高周波音響液体ジェット記録ヘッドは、文字用プリンタではなく、より広い分野の印刷を行うことを目的としている。
【0038】
例えば薬剤袋、商品包装部材のバーコード等の印刷のほか、電極等の印刷も目的としており、このような電極等の印刷では、インクではなく粘度の高い液体が用いられることになる。
【0039】
上記のノズルプレート3には、複数のノズル孔5が所定の方向に所定の間隔で形成されている。同図の例では、図の紙面奥行き方向に所定の間隔で一列に並んだノズル孔5の列が、二列形成されている状態を示している。
【0040】
これに対して、圧電体基板2には、不図示の駆動回路に接続されている個別電極6と共通電極7が、圧電体基板2を表裏から挟んで配置されている。個別電極6は、ノズル孔5と同じ数だけノズル孔5に対向する位置に配置されている。共通電極7は、ノズル孔5の列に対向する位置に、図の紙面奥行き方向に延在して2本配置されている。
【0041】
不図示の駆動回路からの制御のもとに、個別電極6に駆動電圧が印加されると、駆動電圧が印加された個別電極6に対応する部分の圧電体基板2が高周波振動し、超音波を射出して、液室4内の個別電極6とノズル孔5の間にある液層の上面を押圧し、ノズル孔5から液滴8として外部に噴射させる。
【0042】
ところで、図1に示した基本構成では、従来型のインクジェットプリンタの構成と同様に全てが一体型であるので、ノズル孔5が回復不能な目詰まりを起こしたからといって、噴射部を構成するノズルプレート3のみを交換することはできないが、以下に説明する本発明の高周波音響液体ジェット記録ヘッドでは、噴射部のみを交換することができる。
【0043】
(実施形態1)
図2(a) 〜(d) は、実施形態1における高周波音響液体ジェット記録ヘッド(以下、単に記録ヘッドという)を示す図である。同図(a) は記録ヘッド10の上面図を示し、同図(b) 〜(d) は同図(a) のA−A´断面一部拡大矢視図を示している。
【0044】
また、同図(b) は噴射部11の断面図を示し、同図(c) は駆動部12の断面図を示し、同図(d) は噴射部11と駆動部12が合体して一体となり、全体が稼動可能状態となった断面図を示している。
【0045】
同図(a) 〜(d) に示すように、噴射部11は、複数のノズル孔13を一列に形成されているノズル板14、その下に形成されている液室15、液室15の底一面に配設された第1の音響整合層16、その下の基材A17、その下面一面に配設された第2の音響整合層18とで構成されている。
【0046】
尚、上記のノズル板14に一列に形成された複数のノズル孔13は、これに限ることなく、ノズル孔13の直径と同寸法幅の一直線のスリットであってもよい。
【0047】
また、基材A17は、噴射部11の全体構成を支えて、その形状を保つための板部材であり、材質としては、例えばガラス、アルミニューム、合成樹脂、エボナイト等を用いることができる。
【0048】
一方、駆動部12は、基材B19、その下面に配設された共通電極21、酸化亜鉛(ZnO)の薄層22、その薄層22の下面の上記ノズル孔13の位置に対応する位置に配置された個別電極23、及び個別電極23を選択的に駆動する駆動制御部24を備えている。
【0049】
更に駆動部12には、超高周波発生部25が設けられている。上記の共通電極21から引き出された配線は直接超高周波発生部25に接続され、他方、個別電極23から引き出された配線は、駆動制御部24を介して超高周波発生部25に接続されている。超高周波発生部25は、上記の配線及び駆動制御部24を介して、共通電極21と個別電極23間に超高周波電圧を供給する。
【0050】
上記の基材B19は、駆動部12の全体構成を支えて、その形状を保つための板部材であり、材質としては、基材A17と同様に、例えばガラス、アルミニューム、合成樹脂、エボナイト等を用いることができる。
【0051】
いずれにしても、基材B19には、基材A17と同質(音響インピーダンスが同一)のものを用いるようにするのが、音響エネルギーの損失が無いので得策である。
【0052】
これらと噴射部11と駆動部12が合体して、同図(d) に示すように、記録ヘッド10として一体となると、全体が稼動可能状態となる。
【0053】
すなわち、同図(d) に示すように、例えば、駆動制御部24nの駆動スイッチが入って個別電極23nが駆動されると、個別電極23nの配置部分の圧電体であるZnOの薄層22が超音波を発生する。
【0054】
発生した超音波は、基材B19を伝播し、第2の音響整合層18を通じて基材A17に入り込み、さらに第1の音響整合層16を通じて液室15内に伝播し、その音響放射圧により微小な液滴26をノズル孔13nより噴射させる。
【0055】
このように、駆動部12と噴射部11を離合自在に構成したことによって、噴射部11のノズル孔13に強固な目詰りが発生し、通常のノズルクリーニング機構でも目詰りが回復不可能な場合は、噴射部11の交換が可能な構成になっているので、高価で超寿命の駆動部を再利用することが可能となって経済性が向上する。
【0056】
ここで薄層22の超音波の透過率を調べるために、基材A17及び基材B19の材質を種々に変えて、基材A17及び基材B19の材質の違いによる超音波の透過率を計算すると、その計算結果のグラフは、特には図示しないが、音響整合層(第1の音響整合層16及び第2の音響整合層18)の厚さLが超音波の波長λの半波長「λ×1/2」の整数倍であるとき、音響整合層の材質に係らず、基材A17から基材B19へ超音波が無損失で透過することが判明する。
【0057】
しかし、音響整合層の音響インピーダンスの値が基板A及び基板Bの音響インピーダンスの値から離れるに従い、低損失で透過する音響整合層の厚さが小さくなるため、音響整合層の材質としては、出来るだけ基板A及び基板Bの音響インピーダンスに近い音響インピーダンスを有する材料を選択する必要がある。
【0058】
また、更に条件を変えて計算してみると、音響整合層の厚さが超音波の半波長の整数倍であるときだけでなく、音響整合層の厚さが超音波の1/4波長の奇数倍であるときも、超音波が無損失で透過していることが判明する。
【0059】
この場合にも、音響整合層の厚さの誤差を補償するために、音響整合層の音響インピーダンスは「√((基材1の音響インピーダンス)×(基材2の音響インピーダンス))」に近いものを選択するようにする。
【0060】
また、本例では、音響整合層の材質、特に第2の音響整合層18の材質には、緩やかな粘着性を持たせて、駆動部12との合体接合を保持する機能も持たせるようにしている。
【0061】
尚、図2では1列のノズル孔13(一直線のスリットでもよい)のみの、つまり単色用の記録ヘッド10を示したが、図2の記録ヘッド10を3個又は4個連設してフルカラーの記録ヘッドを作製することもできる。
【0062】
図3(a),(b) はフルカラー記録を行うために噴射部に4色用4列のスリットをもつ記録ヘッドを示す図である。同図(a) は噴射部27と駆動部28が合体して記録ヘッド29として一体となった状態を示し、同図(b) は、噴射部27と駆動部28が分離した状態を示している。
【0063】
この記録ヘッド29は、フルカラーインクジェットプリンタの例を示しており、噴射部27において使用される液体は、4色のインクである。図3(a) に示す噴射部27に設けられている4列のスリットは、例えば、図の左側から右側へ、イエローインク用スリット31、マゼンタインク用スリット32、シアンインク用スリット33、及びブラックインク用スリット34である。
【0064】
それぞれの色用のスリットを有する噴射部の個々の構成は、図2に示した構成と同様であり、これに対する駆動部の構成も図2に示した構成と同様である。
【0065】
このように、記録ヘッドがインクジェットプリンタに適用され、更に、フルカラーインクジェットプリンタに適用される場合においても、噴射部と駆動部は離合自在であり、寿命の長い駆動部に対して、寿命の短い噴射部を交換自在に構成することができる。
【0066】
このような噴射部と駆動部の離合自在な構成は、本例において、超音波の透過・伝幡条件として、音響インビーダンス(音速×密度)を整合させることにより、超音波が液体・固体内をスムーズに伝播する特性を利用しているからである。
【0067】
このようにインクジェットプリンタの構成において、記録ヘッドの噴射部と駆動部を分離型構成とすることにより、記録ヘッドの寿命を決定していたノズル部の、インク目詰まり障書の発生に対して、従来は高価な又は長寿命な駆動部も、ノズル部と一体構成のため廃棄・交換せざるを得なかった経済的に致命的な欠陥を、本方式により、障害のあるノズル部のみを分離・交換するだけで、記録ヘッドの再利用が可能となる。
【0068】
特に、スリットでなくノズル孔を有する構成の高解像度の記録ヘッドや上記のような多色用の記録ヘッドになると、ノズル孔の数が非常に多くなり、それに応じて、ノズル孔の目詰りの確率も高くなる。
【0069】
また、記録ヘッドの製作コストもそれに応じて高くなる。本発明のように、噴射部であるノズル部のみの交換が出来ることは、高価で超寿命の駆動部を再利用することが可能となるので経済的に非常に有利になる。
【0070】
また、サーマル型やピエゾ型のインクジェットプリンタでは、ノズル内のインクとアクチュエータの連成系の固有振動数に同期(共振)させてインクを吐出するため、1ドットごとに(ノズル1個ごとに)インク室が必要である。
【0071】
しかし、超音波の場合は指向性の鋭い高周波超音波を用いることにより、必ずしも1ドットごとにインク室を設ける必要はない。
【0072】
複数ドットで1つのインク室を共用する、あるいは1つの記録ヘッドで1つのインク室であっても何ら支障はない。これにより、記録ヘッドの微細加工が緩和され、ノズル部が製造し易くなる。
【0073】
(実施形態2)
上述した例は、噴射部と駆動部が離合自在である構成を示し、噴射部と液体供給部との関係については説明しなかったが、噴射部と液体供給部も、離合自在な構成とすることができる。これを、実施形態2として以下に説明する。
【0074】
図4(a) は、実施形態2における記録ヘッドの断面図、図4(b) は、ノズル孔付き液体室を有する噴射部を駆動部から分離した図、図4(c) は各部の構成がわかるように同図(a),(b) を分解して示した斜視図である。
【0075】
同図(a),(b),(c) に示すように、本例の記録ヘッド35では、先ず、駆動部36は、基材37の上に個別電極38を形成し、その上にZnOなどから成る圧電体の薄層39、さらにその上に共通電極41を形成している。
【0076】
そして、同図(a) に示すように、共通電極41は配線で接地回路に接続され、個別電極38は、駆動制御部44を介して超高周波発生部45に接続されている。
【0077】
尚、上記の圧電体の薄層39の材質は、酸化亜鉛(ZnO)と限ることなく、例えば、酸化チタン(TiO)等であってもよい。
【0078】
図4(c) の破線で囲んで示す共通電極41と個別電極38が交差する位置で共通電極41と個別電極38で挟まれている圧電体の薄層39の部分46が、圧電活性部46であり、ここから超音波が出射される。
【0079】
また、上記の圧電体の薄層39の両側には、高さ調整部材42(同図(c) には図示を省略)が配置され、この高さ調整部材42と圧電体の薄層39の上に音響整合剤層43が設けられている。
【0080】
一方、噴射部47は、ノズル孔48の付いた筐体49から成る液室50を備え、液室50の下部には底板51を備えている。ノズル孔48は、筐体49の底板51と液室50を介して圧電活性部46に対向する位置に形成されている。
【0081】
図4(c) に示すように、ノズル孔48は、二列に形成されている。これらのノズル孔48は、その間隔の1/2間隔を、他の列に対して列方向にずらして形成されている。これにより、主走査方向(図4(c) の左斜め下から右斜め上方向)の解像度を2倍にすることができる。
【0082】
この液室50の中には、不図示の液タンクから導かれた液が充填される。液室50は、図4(c) では長手方向両端が開口している如くに示されているが、実際には、一方の端部は筐体49の端部によって塞がれており、他方の端部に液タンクが離合自在に連結されるようになっている。
【0083】
以上の構造において、圧電活性部46で発生した超音波は、音響整合剤層43、底板51を伝播し、液室50内に放射される。そして、液表面に到達した音響放射圧により、同図(a) に示すように、液表面からノズル孔48を介して液滴52を外部に飛翔させる。
【0084】
ここで、音響整合剤層43は、基材37や、液室50の底板51の音響インピーダンスを考慮して、これらの音響インピーダンスと近い音響インピーダンスを有する材料が選択される。
【0085】
また、上記の構造において、図4(b) に示したように、音響整合剤層43の部分で、噴射部47と駆動部36が分離可能となる構造にする。
【0086】
この場合、音響整合剤層43の材質には緩やかな粘着性を持たせ、噴射部47との接合を保持する機能も持たせるようにする。
【0087】
このように、実施形態2においても、駆動部と噴射部を分離可能な構成にすることによって、強固な目詰まりが発生し、通常のノズルクリーニング機構でも回復不可能な場合はノズル孔付き液室からなる噴射部47を交換可能な構成にする。
【0088】
尚、上記の音響放射圧をPRとすると、その音響放射圧PRは次式で表される。
PR=(1+R^2)/(ρC^2)・(1/T)∫の0からT{p(t) }^2dt・・・(1)
ここで、p(t) は液表面における音圧、Rは液中から空気中への音圧反射率、ρは液密度、Cは液中の音速である。
【0089】
尚、音圧は音源の周波数に比例するが、上記の音響放射圧PRは、上記の式(1)より周波数の2乗に比例していることが分かる。
【0090】
また、音響波は高周波になるほど直進性が良いことが知られている。よって、より高い高周波の音響波を用いることにより、小さい音源からでも直進性の良い強力な音響放射圧を得ることができる。
【0091】
したがって、従来例で用いられているような音響レンズを用いない本例の構成であっても、微小な液滴を液面から飛翔させることが可能となる。
【0092】
図5(a) は比較のため実施形態2の記録ヘッドをその長手方向の断面図で再掲した図であり、同図(b),(c) は実施形態2の変形例を示す図である。
【0093】
尚、同図(b) は、同図(a) の記録ヘッド35に対応する変形例の記録ヘッドの断面図を示し、同図(c) は、同図(b) に示す変形例の音響レンズの配置のみ取り出して示す平面図である。
【0094】
また、図5(a) に再掲する実施形態2の記録ヘッド35は、図4(a) を横方向から見た断面図である。また、図5(a),(b),(c) には図4(a),(b),(c) と同一の構成又は機能部分には図4(a),(b),(c) と同一の番号を付与して示している。
【0095】
ところで、前述した実施形態1及び2では、超高周波の超音波は直進性に優れているため、液滴を方向安定性良くノズル孔から飛翔させるには、図5(a) に一点鎖線53で示すように、圧電活性部46(図4(c) 参照)の中心とノズル孔48の中心を一致させる必要があった。
【0096】
そのために、ラインヘッドのように長い記録ヘッドを構成する場合には、特に圧電活性部とノズル孔それぞれの位置精度を正確に管理する必要があり製造に困難を伴うことが予想される。本変形例は、上記のように予想される困難性を予め解消するものである。
【0097】
図5(b),(c) に示す変形例において、液室50の底板51の上には、ノズル孔54と圧電活性部46に対応する位置に、音響レンズ55が形成されている。但し、この本変形例の場合は、ノズル孔54と圧電活性部46を、音響レンズ55よりも大きく形成し、それぞれの位置合わせ精度の条件を援和している。
【0098】
図5(b) は、位置合わせ精度の条件が援和されていることを示すため、位置ずれを強調して示している。
【0099】
すなわち、同図(b) に示す例では、音響レンズ55の中心位置55aに対し、ノズル孔54の中心位置54aは右側にやや位置ずれしており、これとは逆に、圧電活性部46の中心位置46aは左側にやや位置ずれしていて、それぞれの中心線が全て一致していない場合の例を図示している。
【0100】
圧電活性部46の大きさは所望の解像度の範囲内で、且つ隣接素子とのクロストークの起きない範囲で大きくする。そして、音響レンズ55は、圧電活性部46より小さい形状とする。さらに、ノズル孔54は、記録ヘッドの向きに関係なく、液の漏れ出さない範囲で大きくする。
【0101】
このようにノズル孔54を大きくしても、音響レンズ55による集束超音波で液滴の生成・飛翔を行わせるので、印字性能には影響しない。
【0102】
また、各部をこのような構成にするとともに、平面超音波では液滴の生成・飛翔が出来ず、超音波を集束させて液面に照射したときのみ液滴の生成・飛翔が可能になるように超音波出力強度を調整する。
【0103】
そうすることにより、音響レンズ55の位置が圧電活性部46の範囲内で前後左右に位置ずれが有っても、安定的に液滴を生成・飛翔させることが可能になる。
【0104】
本変形例によれば、駆動部と噴射部の位置合わせ精度が緩和され、記録ヘッドの製造が容易になる。また、液滴の吐出口の構造は、ノズル孔54である必要はなく、記録ヘッドの長手方向に延在する一直線のスリットであっても良いことは前述した。
【0105】
この場合は、液滴の吐出口であるスリットと、音響レンズや圧電活性部との記録ヘッド長手方向の位置合わせは不要になる。
【0106】
尚、本例のような噴射部と駆動部が着脱方式の場合において、液滴の吐出口のある筐体49の上面壁は、液室50に充填される液体の上面を規制するためのものであり、吐出口の開口の大きさが液体のメニスカスによって液漏れしない形状で有りさえすれば、吐出口の形状はノズル孔でもスリットでも良いものである。
【0107】
ただし、ノズル孔のほうが、スリットである場合よりも、筐体上面壁の丈夫さを補強することができることはいうまでも無い。
【0108】
(実施形態3)
ところで、前述した先行技術の説明の項で、スリット型のインク噴射部を有し、複数の圧電素子の超音波印加タイミングに時間差をつけて主走査方向の所望の位置で超音波を重ね合わせて収束させ、インク滴を噴射させる技術があることを説明した。
【0109】
この技術を更にやや詳しく説明すると、収束超音波の形成を円形振動子を使わずに軸方向(X方向)と副走査方向(Y方向)とでそれぞれ異なる方式を使い、X方向にアレイ状に配設された振動子に個々に高周波振動させ、その位相をずらすことにより、個々の振動子から発生する個々の超音波の合成波として液面に収束超音波を導くものである。
【0110】
本発明でも、これから述べる実施形態3以降では、上記同様の収束超音波からの液滴飛翔技術を採用する。そして、液滴の吐出口をスリット構造とし、XY収束制御技術を使うことにより適正な液滴の噴射を達成させている。
【0111】
尚、この実施形態3以降では、カラー記録を行う場合でも、それぞれの色ごとの構成及び処理は同様となるので、単色構造のもので説明する。
【0112】
図6(a) は、実施形態3における記録ヘッドの構成を記録媒体と共に示す図であり、同図(b) は、その噴射部と駆動部を分離した状態を示す図である。
【0113】
同図(a) に示すように、本例の記録ヘッド56は、記録媒体搬送部57により吸着されて搬送される記録媒体58に対向して、所定の距離だけ離間した位置に配置される。
【0114】
記録ヘッド56は、図の上部より、液滴59を飛翔させるスリット61を有する筐体上面壁62と、この筐体上面壁62と筐体側底面壁63により囲繞された液室64からなる噴射部65を備えている。
【0115】
そして、その下部位置に駆動部70を備えている。駆動部70は、上部隔壁材66、側部隔壁材67、及び下部隔壁材68で囲繞された超音波伝播液室69を備え、超音波伝播液室69には超音波伝播液材71が充填されている。
【0116】
この超音波伝播液室69のほぼ中央に凹面型の音響レンズ72が配置され、その下方に超音波発生素子73が、音響レンズ72の下部凸状に対向して配置される。超音波発生素子73は、配線74及び75を介してUS(ultrasound)駆動部76に接続されている。
【0117】
超音波発生素子73には、記録信号に同期して、US駆動部76から超音波パルス77が印加される。これにより、図6(a) に示すように、収束された超音波78が液室64の液層に照射され、その音響力で、液滴59が飛翔する。
【0118】
超音波78の伝達条件で、超音波伝播液材71が最適化されるためには、種々の項目があるが、重要な項目は音響インピーダンス値(密度×音速)が他部材と同レベルの材質で構成されることである。
【0119】
従って、本例では、超音波発生素子73に対向する音響レンズ72、超音波伝播液材71、各隔壁66、67、68、及び液室64の液体までの音響インピーダンスは、同レベルとなるよう条件選択されている。
【0120】
尚、アレイ状に配置された本例の超音波発生素子73の遅延駆動操作の実施例は、前述した従来例に詳細に記述されている。
【0121】
上記の記録ヘッド56もまた、図6(b) に示すように、噴射部65と駆動部70は、分離可能に構成されている。すなわち、噴射部65と駆動部70は、図6(a),(b) に示すように離合自在に構成されている。
【0122】
そして、図6(a),(b) に示すように、それぞれの筐体内部には、外気とは遮断された音響伝播部材71、液室64の液体が配設されている。
【0123】
このように、記録動作時は、噴射部65と駆動部70は、音響伝達条件のもとに密接接合されており、非記録時または噴射部65の交換を必要とされた時には、その接合箇所を図示しない解除機構を介し、容易に分離解除できるように構成されている。
【0124】
そして、図6(b) のように分離されても、汚染又は凝集の危険のある液体及び超音波伝播液材は、筐体内に密封されており、例えばノズル孔やスリット等の吐出口を有する噴射部65のみを交換させることが可能となっている。
【0125】
尚、フルカラー記録を行う場合は、4列の各色毎のスリットをもつ記録ヘッドが構成される(図3を参照)。そして、4列の各色毎のスリットに対応する超音波素子群は、カラー記録信号同期で、パルス駆動され、フルカラー記録が実現される。
【0126】
(実施形態3の変形例)
次に、図6に示した下部隔壁材68の領域に配設される音響レンズの変形例について述べる。
ところで、一般に、音響液ジェット方式では液滴を飛翔させるに十分な駆動力を確保するために超音波を液滴の噴射口に集束させる必要がある。音響波の集束には通常音響レンズが使用される。
【0127】
また、従来は、記録ヘッドの基材としてガラスなどのセラミックスを使用している。このため全体構造が平面的であるため、音響レンズとしては、凹面レンズに比べて作製が容易であるという理由で、微細加工技術を用いたフレネルレンズが多く用いられている。
【0128】
しかし、フレネルレンズは、凹面レンズに比べて集束効率が低い欠点がある。さらに、作製に微細加工技術を必要としているため、ライン型プリンタヘッドのような大型の記録ヘッドを作製しようとするときには困難を伴うものであった。
【0129】
また、表面のフレネル輪帯理論に基づく微細な凹凸部には気泡が残留しやすいという欠点があり、気泡が残留した箇所ではその表面で音波が強く反射されてしまい、結果として液滴の飛翔効率が著しく低下して、液滴の不吐出を起こしてしまうという問題も残されている。
【0130】
特に、空の液保持室内に液体を充填する際に、気泡の混入およびフレネルレンズ表面での気泡の残留が発生しやすく、その気泡の除去は非常に困難である。
【0131】
本実施形態3の変形例では、凹面型の音響レンズを容易に作製することができる。
図7(a) 〜(d) は、実施形態3の変形例における凹面型の音響レンズの作製方法とその形状の例を示す図である。同図(a) は音響レンズの平面図を示し、同図(b) はそのB−B´断面矢視図、同図(c) は同図(b) の底面図、同図(d) は同図(b) の側面図である。
【0132】
なお、図7(a) 〜(d) は、図6の構成で、図4(c) のようにノズル列が2列になっている場合の下部隔壁材68の部分の変形例である。
【0133】
図7(a) 〜(d) は、図6の下部隔壁材68の基材として金属を使用している。この金属面にプレス加工などにより音響レンズとしての凹面レンズを形成する。下部隔壁材68の基材が金属であるので、プレス加工などによる凹面レンズの作製は容易である。
【0134】
これを詳しく説明すると、まず、板圧0.1〜0.2m程度の金属板81にプレス加工により凹面を形成する。このとき、凹面の開口直径を80μm、凹面の深さを14μmとすると図7(b),(d) に示すように平凹型の形状の凹面レンズ82となる。
【0135】
この凹面レンズ82の焦点距離は50μmとなるため、この凹面レンズ82を84.6μm間隔で1列に配置すると解像度が300dpiで、液層厚を50μmとしたライン型記録ヘッドを構成することが可能になる。
【0136】
また、300dpiの凹面レンズ素子ピッチを1列の構成でなく、図7のように、半ピッチづらして2列配列とすることにより、600dpiの密度にすることもできる。同様に、素子ピッチのづれ量を調整し、多列構成としてさらに解像度を上げることも可能である。
【0137】
このように凹面レンズ82を形成後、凹面レンズ82側に、特には図示しないが、音響整合層を形成する。この音響整合層は、超音波伝播液材71(図6参照)と基材の金属板81との絶縁膜も兼ねる。
【0138】
更に凹面レンズ82側の反対側に、圧電体膜83を形成し、さらに、その上に個別電極84を形成する。また、また、金属板81を圧電素子の共通電極として使用する。
【0139】
この構成で、金属板81と個別電極84の間に高周波電圧を印加すると、金属板81と個別電極84とに挟まれた部分の圧電体膜83が励振されて、超音波が放射され、凹面レンズ82により収束される。
【0140】
このように、本変形例によれば、記録ヘッド基材に金属を採用するので、超音波の集束効率を上げるための凹面レンズを容易に形成することができる。また、基材の金属を接地用の共通電極としているため、各素子は電気的にシールドされた形になり、電気的に安定した動作が可能になる。
【0141】
(実施形態4)
図8(a) 〜(d) は、本実施形態の噴射部・駆動部分離型の実施形態4における記録ヘッドの構成を示す図である。
【0142】
図8(a) は本例の記録ヘッド85における記録休止時または噴射部交換時の状態を記録媒体搬送部57及び記録媒体85とともに示しており、同図(b) はその記録ヘッド85の平面図、同図(c) は記録ヘッド85の記録動作中の状態を示し、同図(d) はその平面図を示している。
【0143】
なお、同図も単色構造の記録ヘッドとして示しているが、3個又は4個連設してフルカラー用の記録ヘッドとして構成することが容易であることは、実施形態3でも述べたとおりである。
【0144】
また、本例においても、実施形態3で述べたように、X方向にアレイ状に配設された振動子(圧電体、超音波発生素子)に個々に高周波振動させ、その位相をずらすことにより、個々の振動子から発生する個々の超音波の合成波として液面に収束超音波を導く液滴飛翔技術を採用する。また、液滴の吐出口をスリット構造としている。
【0145】
また、図8(a) 〜(d) には、図6(a),(b) と同一の構成又は機能部分には図6(a),(b) と同一の番号を付与して示している。図8(a) 〜(d) において、先ず、図6(a),(b) と異なる構成について説明する。
【0146】
図8(a) 〜(d) に示す記録ヘッド85において、駆動部70の上部隔壁部材66の内面(図では下面)中央にアレイ状の発熱素子86が配設されている。また、図6では音響レンズがあった位置にはアレイ状に形成された凹面状の超音波発生素子87が配置され、図6ではその下方にあった平面型の超音波発生素子73は取り除かれている。
【0147】
また、図6のUS駆動部は機能が追加されて、US・Heater駆動部88となっている。発熱素子86が配設されている上部隔壁材66及び超音波発生素子87が配置されている下部隔壁材68は、側部隔壁材67と共に金属材であり、発熱素子86又は超音波発生素子87に対する共通電極を構成し、配線89を介してUS・Heater駆動部88の接地ポートに接続されている。
【0148】
そして、発熱素子86には配線91を介してヒータ駆動パルス92が選択的に印加され、超音波発生素子87には配線93を介してUS駆動パルス94が選択的に印加される。
【0149】
上記の構成において、記録動作時には、破線95で示す噴射部65の筐体側底面壁63の下面と駆動部70の上部隔壁材66の上面は、音響伝達条件のもとに密接接合されている。そして、非記録時または噴射部65の交換が必要とされたときは、その接合箇所を図示しない解除機構を介し、容易に分離解除できるように構成されている。
【0150】
本構成において、液滴飛翔のOFF時の動作を説明する。図8(a) に示すように、US・Heater駆動部88より、それぞれ駆動パルス94がON状態で印加されると、超音波発生素子87より所望の超音波が出射され、超音波伝播液室69の超音波伝播液材71を介して発熱素子86へ伝達される。
【0151】
同時にヒータ駆動パルス92が発熱素子86に印加されているので、発熱素子86の面上には瞬時に又は予め面発泡気泡が膜状に発生しており、伝播してきた超音波を反射する。
【0152】
超音波の伝達条件で、伝播材が最適化されるためには種々の項目があるが、重要な項目は音響インピーダンス値(密度×音速)が同レベルの材質で構成されることである。
【0153】
従って、本実施形態でも超音波発生素子87に接触する超音波伝播液材71、発熱素子86、発熱素子86を保持する上部隔壁材66、液室64の液体までの音響インピーダンスは同レベルとなるよう条件選択されている。
【0154】
一般に、接触する二種類の物質間で音響インピーダンスの値が桁違いに異なると、その接触界面で超音波は反射されてしまうことは、よく知られている。そして、液体に比較して空気はその音響インピーダンス値が桁違いに小さいことは周知である。
本実施形態は、この音響インピーダンスの性能を応用したものであり、OFF時の制御として、超音波の伝達経路に桁違いの音響インピーダンス値を有する部材(ここでは気泡)を瞬時に形成するものである。
【0155】
本例は、超音波の伝達を遮断する膜気泡からなる超音波シャッタを、超音波発生素子87と液室64の中間部に配設し、この超音波シャッタのON/OFF制御によって、伝搬収束超音波の伝達路を遮断・開放することで、液滴の生成・飛翔を制御することにある。
【0156】
図8(b) は、スリット上部より見たときのそれぞれの部材の配置と動作を説明する図である(同図(a) も参照)。尚、同図(a),(b) は、OFF時の制御を説明する図である。すなわち、複数の超音波発生素子87はアレイ状に記録ヘッド85の軸方向(X方向、主走査方向)に配設されており、前述した遅延駆動走査により収束超音波を出射している。
【0157】
しかし、破線で示すように、発熱素子86の部分で、ヒータ駆動パルス92を印加されて膜気泡が発生しているので、収束超音波はその気泡膜面より上には透過できず、反射され、スリット61の液面には到達していない。
【0158】
図8(c) は、本実施形態における動作において、ON時の動作、すなわち収束超音波により液面より高解像度な液滴が飛翔するプロセスを説明する図である。
【0159】
図中、US駆動パルス94がON、ヒータ駆動パルス92がOFFの選択時は、発熱素子86の部分に膜気泡は形成されていないので、超音波発生素子87より出射された収束超音波は伝播途中にその伝播を妨げるような、音響インピーダンス値の異なる部材又は部位が存在しないので、伝播は効果的に伝達される。
【0160】
したがって、スリット61近傍に到達した収束超音波はその強力な音響圧により液面部で液滴59を発生させるとともに、その加速力で、対向位置にある記録媒体58の面へその液滴59を飛翔させ、記録を行なうことが可能となる。
【0161】
図8(d) はその動作を上方より観察したときの状態を示している。選択領域では発熱素子86がOFFのため気泡のない窓が形成されており、収束超音波が液面に形成されていることを示している。
【0162】
この窓の領域は、選択領域近傍の領域で、超音波が液面に到達する領域のみ開放すればよく、結果として、発熱素子86の配設密度は超音波発生素子87の配設密度よりも低くてよく、実装密度としては容易な寸法・間隔となる。
【0163】
本例では、超音波発生素子87の解像度は200dpi、発熱素子86の解像度は75dpiの実装で、記録密度600dpiを達成している。
【0164】
尚、本例では、超音波シャッタ機能を発熱素子の発熱による膜気泡を用いたが、超音波を遮断できるシャッタ機能をもつものならばなんでもよい。たとえば、ER流体を素子ごとに電界駆動し、粘度を急激に高粘度化し、超音波を遮断するようにしてもよい。
【0165】
(実施形態5)
ところで、上述した実施形態1〜4では、基本的に記録ヘッドの液噴射口が上方向を向いているものとして説明したが、実際の装置に記録ヘッドを配設する場合、記録媒体(用紙)に対して上方から下方に向けて液滴を噴射する場合もある。
【0166】
その場合、液噴射口(例えばノズル孔)から気泡が入り込んで音響の伝播に不具合を生じさせることがある。本例はそのような不具合を解決する記録ヘッドの構成に係わる発明である。
【0167】
尚、液体内の気泡を除去する方法としては、例えば、特開平08−085202号公報に示すように、液量内の適当な部分に気泡滞留用の凸凹部を設けその近傍に脱気穴を設けるようにした技術が開示されている。
【0168】
しかし、この気泡除去技術は、単に液室内の適当な部分に気泡滞留用の凸凹部を設けその近傍に脱気穴を設ける構成しか開示されていないため、確実に液体内から気泡を除去して該気泡の影響を受け難くすることが難しいという問題がある。
【0169】
また、特開2003−088784号公報では、定在波を用いた気泡の除去を開示しているが、超音波停止状態で超音波出射面に気泡が付着した場合では、超音波が出射されないことと、超音波出射面が定在波の腹となるため付着した気泡は移動しないという問題がある。
【0170】
図9(a),(b) は、実施形態5における記録ヘッドの構成を説明する図である。尚、図9(a) において、記録ヘッド96は、実施形態1〜4の場合と同様に、噴射部と駆動部とが分離型であるが、噴射部と駆動部の分離型については、実施形態1〜4で十分に説明してきたので、ここでは、あたかも噴射部と駆動部が一体型であるかのように記録ヘッドの構成を簡略に示している。
【0171】
図9(a) に示す記録ヘッド96は、基材97と、圧電体98と、筐体側壁部101と、噴射板102とを備えている。噴射板102には、短手方向ほぼ中央部に、長手方向に沿って延在する液滴噴射用の噴射口103が形成されている。噴射口103は、一列に並んで配置されたノズル孔でもよく、一本一直線のスリットであってもよい。
【0172】
基材97と、筐体側壁部101と、噴射板102とで囲繞されて液室104が構成されている。液室104には不図示の液体供給部から供給される記録用の液体が充填されている。
【0173】
圧電体98は、例えばZnOやPZT等から成る圧電材で構成され、基材97の下面中央部に保持され、基材97の長手方向に延在して配置され、アルミや金等の金属からなる不図示の電極で挟まれている。
【0174】
電極は、不図示の配線により、これも不図示の高周波駆動回路に接続されており、高周波駆動回路から高周波電圧が印加される。
【0175】
上記の圧電体98として、例えば、250Mhzの高周波で共振するZnO膜を使用した場合、その膜厚はおよそ13μm程度であり、上記のように基材97の長手方向に延在する圧電体98に対し駆動電極側を分割することにより、所望の範囲の電極振働により超音波105を発生する。
【0176】
発生した超音波105は、液体で満たされた液室104を伝播する。液体は基材97と噴射板102により、その厚さhを所定の値に規制されている。上記のように液室104を伝播した超音波の放射圧により、液体が液滴化され、液滴がスリット103から記録媒体106に向けて飛翔する。
【0177】
このとき電極の中心(例えば円形の電極の場合)は、スリット103の幅の中心、噴射口がノズル孔であればノズル孔の中心と合致するように配置されている。
【0178】
上記の超音波が250MHzの高周波超音波の場合、その直進性により液厚が100μm程度であれば、音響レンズ等の集束装置を使用することなく、噴射口から液滴を飛翔させることができる。
【0179】
しかし、このように下向きに液滴を飛翔させる記録ヘッドにおいては、スリット又はノズル孔から成る噴射口から気泡107が入り込み易い。そして、入り込んだ気泡107が液中を上方(重力反対方向)へ上昇して、圧電体98に付着する場合がある。
【0180】
このような気泡107が液中に存在すると、超音波は気泡107により反射されて噴射口位置での放射圧が減少し、この放射圧の減少による液飛翔特性の変動や飛翔方向の変動等の問題が発生する。
【0181】
(実施形態5の実施例1)
そこで、本例では、図9(b) に示すように、記録ヘッド96を、圧電体98の中心を中心にして角度θだけ回転した状態にする。そのときθを、
π/2>θ>Tan^1・r/h ・・・(1)
を満たすようにする。
【0182】
図9(b) において、噴射口103から気泡107が進入してくると、液室104のように液流のない閉空向では、気泡107は、矢印bで示すように重力の反対方向へ移動していく。
【0183】
このとき、圧電体98の中心から斜め上方向にある端部までの距離rと、液室104の厚さhと、上記の回転角θが、式(1)を満たしていると、矢印b方向へ移動した気泡107は、圧電体98を挟む電極に接触しないため電極に付着することなく、このため安定した超音波の出射を可能にする。
【0184】
尚、関係式が「θ≦Tan^1・r/h」の場合は、気泡107は圧電体98方向へ移動し、電極へ接触することになる。それであると、気泡107が電極に付着する恐れがあり、気泡107が電極に付着すると、超音波反射を生じて音場の乱れを生じ、液滴飛翔を不安定にしてしまう。
【0185】
このように、実施形態5の実施例1によれば、記録ヘッドに「π/2>θ>Tan^-1・r/h」を満たす角度θだけ回転した角度で配置したことにより、液滴照射時に液滴噴射口から進入してきた気泡が超音波照射素子に付着し次回の超音波音場が乱れることを防止することができる。
【0186】
(実施形態5の実施例2)
先ず、本例の記録ヘッド96においては、液滴飛翔時には高周波超音波のバースト波を使用して液滴を飛翔させる。
【0187】
図10(a) は、実施形態5の実施例2において液滴飛翔時に高周波超音波のバースト波を使用して液滴を飛翔させる具体例を示す図であり、同図(b) は数回のバースト波照射による放射圧で気泡を除去する例を示す図である。
【0188】
図10(a) に示すように、液滴飛翔では例えば250MHzの超音波を50μsでl回の液滴飛翔を行い、飛翔間隔が1msとすると250MHzの超音波を50μsのバーストで1KHzで照射することになる。
【0189】
本例では、気泡が超音波照射部に付着しないような構造を示している。このような構造で、仮に気泡が超音波照射部(電極部)に付着した場合には、液滴飛翔のための超音波照射によるエネルギーによる液滴飛翔は不安定になるが、付着した気泡は付着力が弱ければそのエネルギーにより付着面から離れ、超音波照射面から遠ざかっていくことになる(図10(b) 参照)。
【0190】
尚、気泡の付着力が強く、1回または数回のバースト照射による放射圧では除去できない場合の気泡の除去方法が必要となってくる。
【0191】
超音波照射により、気泡には放射圧が作用するが、気泡の固有振動数に応じた周期で連続的に放射圧を作用させることにより、強固な付着力の気泡であっても付着面から離脱させて、図10(b) のように気泡を移動させていくことが可能になる。
【0192】
図11(a) は、実施形態5の実施例2において圧電体への駆動信号を二種類用意して二種類の超高周波照射モードで気泡除去を制御する機能ブロック図であり、同図(b) はその処理方法を示すフローチャートである。
【0193】
本例の記録ヘッドは、図11(a) に示すように、高周波信号生成部108と、バースト信号生成部109と、これら2つの生成部の機能に基づいて圧電部110の駆動信号を生成する駆動信号生成部111と、モード切替部112を有する。モード切替部112は、バースト信号生成部109のバースト設定を、液滴飛翔と気泡排除の大きくは2通りに設定する機龍構造をもっている。
【0194】
上記の機能において、モード切替部112は、図11(b) に示すように、超音波照射時に(ステップS1)、事前に設定されたテーブル等を参照して液滴飛翔モードであるか否かを判定する(ステップS2)。
【0195】
そして、液滴飛翔モードの場合には(S2がYes)、液滴飛翔バースト設定を実施し(ステップS3)、そうでない場合には(S2がNo)、気泡排除バースト制御設定を実施する(ステップS4)。この設定に基づいて、バースト信号生成部109はバースト信号を生成する(ステップS5)。
【0196】
気泡が超音波照射面(電極部)に付着するのは、超音波照射時でない場合である。超音波照射時は気泡に対し超音波照射方向(電極の反対方向)に放射圧が絶えず作用するため、電極部へ気泡が接近することはない。
【0197】
したがって、液滴飛翔時でないときに、気泡の排除処理を実行すれば絶えず安定した液滴飛翔が確保可能であることになる。
【0198】
ここでは、超音波出射面に付着した気泡の排除を代表的に記述しているが、もちろん噴射口に付着した気泡、液体等の固着粒子、その他固形物であってもそれぞれの固有振動数を持つため、図11(a),(b) に示す機能・構造を備えるときは、超音波が照射される付着壁面から気泡等の除去が可能である。
【0199】
このように、本例では、液滴飛翔用バースト設定モードと気泡排除用バースト設定モードの二種類のバースト設定モードを備え、これら二種類のバースト設定モードの切替機能により、二種類バースト設定モードのいずれかを設定できるようにしたことにより、記録ヘッド内部に進入して超音波発生素子に付着した気泡を効率よく除去することができる。
【0200】
(実施形態5の実施例3)
図12は、実施形態5の実施例3としての気泡の半径と固有周波数とバースト周波数の関係を示すテーブルである。
【0201】
ところで、気泡や固形物の固有振動数は、その質量をmとしたとき「ω∝√(1/m)」の関係がある。気泡の大きさで考えた場合、気泡を球とみなすと、その半径rの3/2乗に反比例することになる。
【0202】
図12は、半径と固有振動数の関係と、それに適したバースト周波数の関係を示すグラフである。同図は、横軸に気泡の半径を示し、縦軸に気泡の固有周波数を示している。また、黒四角のプロットは半径と固有振動数の関係を示し、丸印のプロットはバースト周波数を示している。
【0203】
同図により、小径の気泡の場合は、径の違いにより、大きく固有振動数が異なり、大径の気泡の場合は、径の違いによっては、さほど固有振動数は変わらないことがわかる。
【0204】
図11(a),(b) に示した構成において、実際に気泡排除モードでバーストを照射する場合、全ての周波数を照射することは多くの時間を必要とする。
物体に周期的な外力ω0 を加えたときの運動は固有振動数をω、外力をlとした場合に、振幅xは
、「x=(l/(−ω0^2 +ω^2)」で表されることが知られている。これは、振動数ω0 の周期的な力を受けて、振動数ω0 の周期的な運動が引き起こされることを表している。固有振動数との振動数の差がある場合には、与える外力により振動を確保できる。
【0205】
照射可能な周波数範囲を均等に例えば5等分割するように周波数を選択し、照射周波数が250MHzの場合、最高周波数となる1サイクルのバースト照射(on:4ns/off:4ns)では125MHzとなり、5等分割した周波数は25MHz、50MHz、75MHz、100MHz、125MHzとなる。これを気泡排除バースト周波数テーブルAとして設定する。
【0206】
次に、例えば気泡排除バースト周波数テーブルAの2倍の10等分するように固有振動数を均等に分け10個の周波数を選択し、気泡排除バースト周波数テーブルBとして設定する。
【0207】
通常の気泡除去モードでは気泡排除バースト周波数テーブルAを使用する。気泡排除バースト周波数テーブルAを使った気泡除去モードで除去しきれない場合は気泡排除バースト周波数テーブルBを使用した気泡除去モードを実行する。
【0208】
こうすることにより平均の固有振動数との差が半分になり、振幅の種類を増やし気泡除去により大きな効果をもたらすことができる。
【0209】
もちろん照射圧力を増やしても、気泡振幅を大きくすることは可能である。図12に見られるように低周波では大きな気泡の除去に効果があるため、テーブルAに25KHz、50KHz、2.5MHz等の低周波を追加することも気泡除去に効果的であることが容易に期待できる。
【0210】
このように、本例によれば、通常の噴射駆動を行うバースト周波数テーブル(例えばテーブルA)と、気泡や固形物排除時に駆動する、より強力なバースト周波数テーブル(例えばテーブルB)を備え、バースト周波数テーブルAに対しバースト周波数テーブルBの周波数間隔が半分になるように設定する。
【0211】
これにより、通常時の気泡除去モードを、より高速に実現でき、かつ所望するときには、より強力な気泡排除を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0212】
【図1】高周波音響液体ジェット記録ヘッドの基本構造を示す断面図である。
【図2】(a) 〜(d) は実施形態1における高周波音響液体ジェット記録ヘッドを示す図である。
【図3】(a),(b) は実施形態1においてフルカラー記録を行うために噴射部に4色用4列のスリットをもつ記録ヘッドを示す図である。
【図4】(a) は実施形態2における記録ヘッドの断面図、(b) は噴射部を駆動部から分離した図、(c) は各部の構成がわかるように(a),(b) を分解して示した斜視図である。
【図5】(a) は比較のため実施形態2の記録ヘッドをその長手方向の断面図で再掲した図、(b),(c) は実施形態2の変形例を示す図である。
【図6】(a) は実施形態3における記録ヘッドの構成を記録媒体と共に示す図、(b) はその噴射部と駆動部を分離した状態を示す図である。
【図7】(a) 〜(d) は実施形態3の変形例における凹面型の音響レンズの作製方法とその形状の例を示す図である。
【図8】(a) 〜(d) は実施形態4における記録ヘッドの分離型噴射部駆動部の構成を示す図である。
【図9】(a),(b) は実施形態5における記録ヘッドの構成を説明する図である。
【図10】(a) は実施形態5の実施例1において液滴飛翔時に高周波超音波のバースト波を使用して液滴を飛翔させる具体例を示す図、(b) は数回のバースト波照射による放射圧で気泡を除去する例を示す図である。
【図11】(a) は実施形態5の実施例2において圧電体への駆動信号を二種類用意して二種類の超高周波照射モードで気泡除去を制御する機能ブロック図、(b) はその処理方法を示すフローチャートである。
【図12】実施形態5の実施例3としての気泡の半径と固有周波数とバースト周波数の関係を示すテーブルである。
【符号の説明】
【0213】
1 基本形の高周波音響液体ジェット記録ヘッド
2 圧電体基板
3 ノズルプレート
4 液室
5 ノズル孔
6 個別電極
7 共通電極
8 液滴
10 高周波音響液体ジェット記録ヘッド
11 噴射部
12 駆動部
13 ノズル孔
14 ノズル板
15 液室
16 第1の音響整合層
17 基材A
18 第2の音響整合層
19 基材B
21 共通電極
22 薄層
23 個別電極
24 駆動制御部
25 超高周波発生部
26 液滴
27 噴射部
28 駆動部
29 記録ヘッド
31 イエローインク用スリット
32 マゼンタインク用スリット
33 シアンインク用スリット
34 ブラックインク用スリット
35 記録ヘッド
36 駆動部
37 基材
38 個別電極
39 圧電体の薄層
41 共通電極
42 高さ調整部材
43 音響整合剤層
44 駆動制御部
45 超高周波発生部
46 圧電活性部
46a 圧電活性部中心位置
47 噴射部
48 ノズル孔
49 筐体
50 液室
51 底板
52 液滴
54 ノズル孔
54a ノズル孔中心位置
55 音響レンズ
55a 音響レンズ中心位置
56 記録ヘッド
57 記録媒体搬送部
58 記録媒体
59 液滴
61 スリット
62 筐体上面壁
63 筐体側底面壁
64 液室
65 噴射部
66 上部隔壁材
67 側部隔壁材
68 下部隔壁材
69 超音波伝播液室
70 駆動部
71 超音波伝播液材
72 音響レンズ
73 超音波発生素子
74、75 配線
76 US駆動部
77 超音波パルス
78 超音波
81 凹面レンズ
82 凹面レンズ
83 圧電体膜
84 個別電極
85 記録ヘッド
86 発熱素子
87 超音波発生素子
88 US・Heater駆動部
89、91、93 配線
92 ヒータ駆動パルス
94 US駆動パルス
96 記録ヘッド
97 基材
98 圧電体
101 筐体囲繞部
102 噴射板
103 噴射口
104 液室
105 超音波
106 記録媒体
107 気泡
108 高周波信号生成部
109 バースト信号生成部
110 圧電部
111 駆動信号生成部
112 モード切替部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、
超音波により記録ヘッドの液滴噴射を駆動する超音波出射部と、該超音波出射部の超音波出射を駆動制御する制御回路部とが一体に構成された駆動部と、
該駆動部と離合自在に構成され、液体供給部から供給される所望の液体を保持する液体保持室を備え、該液体保持室の一面に複数の液滴噴射位置を有する噴射開口部を備え、前記駆動部の超音波伝播下流側に合体して前記駆動部に密着接合されたとき、該駆動部からの超音波出射により前記噴射開口部の任意の噴射位置から前記液体の液滴を噴射する噴射部と、
を備えたことを特徴とする高周波液体ジェット記録ヘッド。
【請求項2】
前記液体供給部は、前記噴射部と離合自在に構成され、前記噴射部に合体配置されたとき、該噴射部に前記液体を供給する、ことを特徴とする請求項1記載の高周波液体ジェット記録ヘッド。
【請求項3】
前記噴射部は、前記噴射開口部の少なくとも副走査方向の中心と、前記駆動部の前記超音波発信素子の中心との所定範囲の不一致を許容する、ことを特徴とする請求項1記載の高周波液体ジェット記録ヘッド。
【請求項4】
前記超音波出射部は、アレイ状に配置された複数の超音波発信素子を備え、該超音波発信素子により収束超音波を出射する、ことを特徴とする請求項1記載の高周波液体ジェット記録ヘッド。
【請求項5】
前記収束超音波は、前記超音波発信素子ごとに備えられた凹面型音響レンズによる収束超音波である、ことを特徴とする請求項4記載の高周波液体ジェット記録ヘッド。
【請求項6】
前記凹面型音響レンズは、前記超音波発信素子の超音波伝播下流側に配置される前記超音波発信素子の共通電極にプレス加工等により形成されている、ことを特徴とする請求項5記載の高周波液体ジェット記録ヘッド。
【請求項7】
前記収束超音波は、複数の前記超音波発信素子による時分割の遅延駆動走査による収束超音波である、ことを特徴とする請求項4記載の高周波液体ジェット記録ヘッド。
【請求項8】
前記噴射部と前記記録ヘッド駆動・回路部との密着接合部は、それぞれの内部を外部から遮断する隔壁材で構成され、該隔壁材はそれぞれ超音波伝搬に適する超音波伝搬材料で且つ音響インピーダンスの近い材料で構成される、ことを特徴とする請求項1記載の高周波液体ジェット記録ヘッド。
【請求項9】
前記記録ヘッド駆動・回路部は、前記超音波出射部の超音波伝播下流側に、アレイ状に配置された超音波遮断素子を更に備え、前記超音波出射部の駆動と前記超音波遮断素子の駆動との組み合わせにより、前記噴射部の前記噴射開口部からの前記液滴噴射位置を制御する、ことを特徴とする請求項1記載の高周波液体ジェット記録ヘッド。
【請求項10】
前記超音波遮断素子は、膜気泡を発生する発熱素子である、ことを特徴とする請求項9記載の高周波液体ジェット記録ヘッド。
【請求項11】
前記噴射部の前記噴射開口部は、前記記録ヘッド駆動・回路部のアレイ状に配置された複数の超音波発信素子に対向する位置に形成され、前記収容部の内部において開口部を他の開口部から隔てる隔壁を持たない状態で一列に並んだ複数のノズル孔又は一本のスリットを最小単位として形成されている、ことを特徴とする請求項1記載の高周波液体ジェット記録ヘッド。
【請求項12】
前記記録ヘッド駆動・回路部は、前記液体の前記液滴を前記噴射部から噴射させる噴射用と、前記噴射部に混入した混入物を清掃する清掃用の、二種類の超音波発信モードを有する、ことを特徴とする請求項1記載の高周波液体ジェット記録ヘッド。

【図1】
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【図11】
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【図12】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−78469(P2009−78469A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−249844(P2007−249844)
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】