説明

高品質化粧料

【課題】本発明は、プラセンタエキスが本来持つ効能(特に美白効果、保湿効果、抗酸化効果)を著しく向上させ、かつ安全性の高い化粧料を新たに開発することを課題とするものである。
【解決手段】プラセンタ・ハトムギをリポソームに封入した化粧料によって上記課題を解決した。その製法の1例は次のとおりである。
リン脂質及び/又は糖脂質からなる脂質膜成分を溶媒にとかし、これに水溶性プラセンタキスとハトムギ粉末を含む水相を加えて攪拌し、更に加熱し、攪拌した後、分散させて微細リポソームを形成せしめ、平均粒径が100nm以下のリポソームを分離、回収して、プラセンタ・ハトムギ封入リポソームを得る。これを化粧料原料として用い、各種化粧料を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高品質化粧料、特にプラセンタとハトムギを有効成分とするリポソーム化粧料に関するものである。特に、本発明は、プラセンタ及びハトムギ抽出物をリポソームに封入することよりなる新規な化粧料に関する。更に詳細には、プラセンタとハトムギエキスを併せ、リポソームに封入し使用することによる、プラセンタ単独で有していた効能、特に美白、保湿、抗酸化効果を著しく向上させるとともに、安全性の高い化粧料に関する。そのうえ、本発明は薬効にすぐれているだけでなく、使い心地がよく、肌の奥まで浸透しているという感覚を与える化粧料に関するものである。特に皮膚化粧料においては、薬効はもとより、使い心地(化粧料使用感)も重要な性質、ファクターである。
【背景技術】
【0002】
従来より化粧水、乳液等の化粧料に対して、皮膚の黒化や色素沈着によるしみ、そばかす等を改善するための美白効果、また、しみやたるみの予防のための保湿効果や抗酸化効果を付与させることが行われており、種々の原料が化粧料に配合されている。
【0003】
一例として、美白剤としてはアスコルビン酸誘導体、グルタチオン、ハイドロキノン等、保湿剤としてはコラーゲン、ヒアルロン酸、セラミド等、抗酸化剤としてはビタミンEなどが原料として挙げられる(特許文献1)。
【0004】
しかしながら、これらの原料は単一の美容効果のみを有するものであり、複数の美容効果を単一の化粧品等に付与させる場合には、種々の異なる効果を有する原料を化粧料等に配合する必要があり、製造過程の処方の煩雑さが問題とされているとともに、複数の原料を同時に使用することにより、個々の原料が有していた効果が阻害される可能性も示唆されている。
【0005】
このような問題点を解決できる原料として、プラセンタエキス(胎盤抽出物)が注目されている。プラセンタは古来より漢方薬として用いられており、近年ではプラセンタから有効成分を抽出したプラセンタエキスが医薬分野及び美容分野において広く用いられており、特に美容の分野においては、注射、点滴により直接血管に導入する方法や、皮膚外用剤として、またはイオン導入による経皮摂取による方法が、あるいはサプリメントや健康食品として経口で摂取することにより用いられている。
【0006】
そのようにして摂取されたプラセンタエキスは、内分泌調整作用、強肝・解毒作用、免疫賦活作用、自律神経作用、血行促進・造血作用の効果を有し、更に美容的な側面としては、新陳代謝の促進、抗炎症作用による肌荒れ等の改善、抗酸化作用による美白効果、更に肌の老化を回復させると言った、非常に多くの機能を有しており、単独で用いることでこれらの効果を得ることができるため、美容化粧料の原料としては極めて有用である。
【0007】
しかしながら、プラセンタエキスは上記の通り非常に多くの機能を有しているものの、それぞれの効果としては他の成分に劣るという問題点があり、例えばプラセンタエキスの美白効果に着目した場合、プラセンタエキスを有効成分とした化粧料は、前述のアスコルビン酸誘導体を有効成分とした化粧料と比較して効果が充分ではない。更には、直接血管中に導入する注射や点滴とは異なり、プラセンタエキスの経皮摂取はその効果を十分に発揮できるほどの効率を獲得していないという点も問題点として挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−267817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題点を解決すべくプラセンタエキスの持つ効能、特に美白、保湿、抗酸化効果について、その効能を著しく向上させ、それでいて安全性が高く、処方も容易に行えることを特徴とする化粧料を提供することを目的としている。また、本発明は、化粧料、特に皮膚化粧料を対象とすることから、使用感の向上、経皮吸収力の向上も目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的を達成するためになされたものである。しかしながら、プラセンタエキスは各種成分を含む複雑な天然物由来成分であるため、これに他の成分を配合するとプラセンタエキス本来の作用が低減したり、場合によっては消失してしまうことすら多々発生する。
【0011】
本発明者らは、この点を考慮しながら、各方面から慎重な検討を行い、広範なスクリーニングを行った結果、全く予期せざることに、ハトムギエキスを配合したところ、プラセンタエキスが本来有している各種効果(各種の薬理作用)はいささかも損なわれることがないばかりでなく、ハトムギエキスが有する効果(薬理作用)も更に奏されるという従来未知しかもきわめて有用な新知見を得た。
【0012】
しかしながら、本発明者らは、上記有用新知見に満足することなく更に研究を続けた結果、プラセンタエキスとハトムギとをリポソームに内包させたところ、使用感の向上という化粧品には是非とも必要な効果(性質、作用)が得られることも更に見出した。
【0013】
しかもその際、プラセンタエキスとハトムギは、個々にリポソームに封入させ、これを混合するよりも、両者をリポソームに封入させた場合の方が使用感が更に向上するという全く予期せざる著効が奏されることをはじめて見出した。
【0014】
本発明は、これらの有用新知見に基づき、更に研究の結果、遂に達成されたものであって、プラセンタおよびハトムギを封入したリポソームを含む化粧料(化粧品、皮膚外用剤)を基本的な技術思想とする。
【0015】
本発明の実施様態を例示すれば次のとおりである。
【0016】
(1)リン脂質及び/又は糖脂質からなる脂質膜成分と溶媒とを混合、攪拌し、得られた液体に水溶性プラセンタエキスとハトムギ粉末とを含む水相を添加して攪拌し、得られた液体を加熱し、攪拌した後、分散させて微細なリポソームを形成せしめ、室温まで冷却した後あるいは冷却することなく、篩を用いて平均粒径が100nm以下のリポソームを分離、回収して、プラセンタ・ハトムギ封入リポソーム液を得、このようにして調製したプラセンタ・ハトムギ封入リポソームを用いて化粧料を製造すること、を特徴とする経皮吸収力の向上、使用感の向上、使い心地の向上の少なくともひとつの作用効果を奏する化粧料の製造方法。
(2)水溶性プラセンタエキスとして胎盤抽出エキスを使用すること、を特徴とする(1)に記載の方法。
(3)ハトムギ粉末として、ハトムギの殻を剥ぎあるいは殻を剥ぐことなくそのまま粗粉砕したものに水を加え、プロテアーゼ活性を持つ酵素とα‐アミラーゼ活性を持つ酵素とを加えて処理し、得られた処理物(ハトムギエキス)、又は、これを粉末化したもの(ハトムギエキス粉末)を使用すること、を特徴とする(1)又は(2)に記載の方法。
(4)平均粒径が75nm以下で可及的に小さく、例えば10〜60nm、好ましくは15〜50nm、更に好ましくは20〜30nmのリポソームを使用すること、を特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の方法。
(5)化粧料が皮膚化粧料であること、を特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の方法。
(6)化粧料が美白効果、保湿効果、抗酸化効果の少なくともひとつの効果を有すること、を特徴とする(1)〜(5)のいずれか1項に記載の方法。
【0017】
(7)(1)〜(6)のいずれか1項の方法によって製造してなる、プラセンタ及びハトムギを封入したリポソームを含む化粧料。
(8)美白効果、保湿効果、抗酸化効果の少なくともひとつの効果を有し、更に、経皮吸収力の向上、使用感の向上、使い心地の向上の少なくともひとつの効果を有する(7)に記載の化粧料。
(9)化粧料が、化粧水、美容液、乳液、クリーム、パック、マスク、入浴剤、洗浄剤、分散液、軟膏、液剤、エアゾール、貼布剤の少なくともひとつであること、を特徴とする(7)又は(8)に記載の化粧料。
(10)(6)〜(9)のいずれか1項に記載の化粧料を皮膚に局部的及び/又は全身的に施すこと、を特徴とする非治療的な心地よい化粧方法(非治療用で美容的なしかも心地よいトリートメント方法)。
但し、心地よいとは下記(a)〜(c)の少なくともひとつをいう。
(a)経皮吸収力(しみ込み感)の向上
(b)使用感の向上
(c)使い心地の向上
(11)(6)〜(9)のいずれか1項に記載の化粧料を皮膚に局部的及び/又は全身的に施すことにより、皮膚に対して美白、保湿、抗酸化の少なくともひとつの作用効果を及ぼす(奏する)こと、を特徴とする(10)に記載の非治療的な心地よい化粧方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、プラセンタとハトムギを封入したリポソームを含有してなることを特徴とする化粧料に関するものである。プラセンタエキスは、美白効果等のすぐれた効果を有するものであるが、天然物由来でありしかも各種成分を多数含む複雑な原料であるため、その効果(薬効)を高める目的で他の成分(原料)を配合(併用)とプラセンタが本来有する効果が低減したり場合によっては打ち消されて消失してしまうことも充分に予測されるところである。
【0019】
しかるに、本発明によれば、ハトムギエキスを配合(併用)することにより、プラセンタが有する効果が損なわれることなくそのまま奏されるだけでなく更にその効果が高められ、しかもシットリ感や肌の荒れの軽減等の効果が奏されるという予測をはるかに超えた著効が奏される。
【0020】
したがって本発明によれば、後記するところからも明らかなように、すぐれた美白効果、保湿効果、抗酸化効果が奏されるばかりでなく、その詳細なメカニズムは今後の研究にまたねばならないが、有効成分(プラセンタ、ハトムギ)をリポソームに封入することとも相まって、経皮吸収力の向上、使用感の向上、使い心地の向上といった、化粧品、特に皮膚化粧品に特有な効果も奏される。化粧料においては、美白効果等の薬理効果が重要であることは多言を要しないが、使い心地のよさ、シットリ感といった官能的な効果もきわめて重要である。本発明は、薬理的効果、官能的効果にそれぞれすぐれているだけでなく、これら双方の効果が同時に達成される点でもきわめてすぐれている。
【0021】
そのうえ更に、本発明によって奏される効果は、プラセンタを封入したリポソームとハトムギを封入したリポソームを混合した場合よりも、プラセンタとハトムギとの混合物を封入したリポソームの方が、特に官能的効果にすぐれている点でも極めて特徴的である。すなわち本発明によれば、上記薬理効果に加え、経皮吸収力が向上して化粧品のしみ込み感が向上し、心地よい使用感が得られ、肌がプリッとしてツヤツヤし、ファンデーションがなめらかであり、しかも皮膚刺激がないという著効が奏される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】各成分単用及び併用した場合のチロシナーゼ活性阻害を示す。
【図2】各成分単用及び併用した場合のDPPHラジカル消去活性を示す。
【図3】粒度分布計測機で測定したリポソームの粒子径を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を詳細に説明するが、以下の記載は本発明の好適な具体例のひとつであって、本発明はこれらの記載に限定されるものではない。
【0024】
本発明の有効成分は、プラセンタ及びハトムギである。プラセンタとしては、ヒト、ブタ、ヒツジ、ウシ、ウマ等の哺乳類全般に由来するプラセンタ、又は、大豆、アロエベラ、カッコン等の植物に由来するいわゆる植物性プラセンタ等から適宜選択されるが、好適には胎盤抽出物(胎盤抽出エキス、プラセンタエキス、プラセンタ溶液、水溶性プラセンタエキス等ということもある)を使用する。胎盤抽出物としては、市販品を適宜使用可能である。
【0025】
ハトムギとしては、イネ科植物に属するハトムギの実の処理物が使用され、例えばハトムギ粉末の使用が好適である。
【0026】
ハトムギ粉末としては、ハトムギの実の殻を剥ぎあるいは殻を剥ぐことなくそのまま粗粉砕したものに重量比で2〜10倍の水を加え、プロテアーゼ活性を持つ酵素とα‐アミラーゼ活性を持つ酵素とを加えて処理し、得られた処理物(ハトムギエキス)、又は、これを粉末化したもの(ハトムギエキス粉末)を使用することができる。
【0027】
ハトムギは、殻を剥ぎあるいはからを剥ぐことなく粗粉砕し、加水した後、85℃〜90℃以上(例えば95〜100℃)に加熱し、5〜90分、好ましくは10〜50分、例えば20〜40分放置する。次いで、40〜65℃、好ましくは50〜60℃に冷却し、プロテアーゼ活性を有する酵素及びα‐アミラーゼ活性を有する酵素を同時に又はそれぞれ別個に加えて反応させる。酵素の種類や濃度にもよるが、反応時間(処理時間)は通常、約30〜90分とするのが好適である。
【0028】
反応終了後、例えば80〜100℃に加熱して、酵素を失活させる。次に残渣を除去し、加熱殺菌し(例えば80〜100℃)、得られた液体をハトムギ処理物(ハトムギエキス)とする。このハトムギエキスには添加物を加えることなくそのままスプレードライやフリーズドライ等の乾燥手段を適用して粉末(ハトムギエキス粉末)を得る。なお、ハトムギエキスは、必要に応じて濃縮したりあるいは逆に希釈したりしてもよい。いずれにしろ、本発明においては、ハトムギエキス、ハトムギエキス粉末を総称してハトムギ粉末ということとし、両者を併用したりそれぞれを単用したりする。
【0029】
プロテアーゼ活性を持つ酵素としては、蛋白質分解酵素が広く使用され、例えば、エンドペプチダーゼ、エキソペプチダーゼ、アミノペプチダーゼ、ジペプチダーゼ、カルボキシペプチダーゼ等が1種又は2種以上使用される。α‐アミラーゼ活性を持つ酵素としては、澱粉分解酵素が広く使用され、例えば、α‐アミラーゼ、β‐アミラーゼ、グルコアミラーゼ等が1種または2種以上使用される。
【0030】
ハトムギ粉末は、例えば次のようにして製造する。
1tのハトムギ(実の部分)を用意し、殻を除去した後に粗粉砕し(ヨクイニン等のように精白したものよりも未精白のものの方が好適である。例えば、K、Mg、P、Fe、Zn、Cu、ビタミンB、同B等成分含量において、未精白のものの方が遥かに高い。)、粗粉砕したハトムギの4倍量の水を加え、100℃に加熱し30分放置する。次に冷却水にて55℃に調整し、適量の水に溶解したプロテアーゼとα‐アミラーゼをそれぞれ9.4g、640g加えて1時間反応させる。その後、90℃に加熱し、酵素を失活させる。残渣を除去し、90℃にて加熱殺菌後の液体をハトムギエキスとして得る。該ハトムギエキスを添加物を加えずにスプレードライして粉末化し、ハトムギエキス粉末を得る。
【0031】
リポソームの調製は、例えば次のようにして行う。先ず、脂質膜成分(リン脂質及び/又は糖脂質)と必要に応じて親油性の薬効成分を加えて攪拌、溶解させる。また、必要に応じてリン脂質等の溶解性を高めるために化粧品等に許容される溶媒を使用することもできる。続いて、プラセンタ及びハトムギを含む水相を連続的に添加、攪拌し、分散させて微細なリポソームを形成させる。
【0032】
このようにして得た、プラセンタエキス及びハトムギの混合物は、常法によってリポソームに封入され、方法としては、機械的振動法、超音波処理法、逆相蒸発法、凍結乾燥法、加温法、多価アルコール法、メカノケミカル法、脂質溶解法および噴霧乾燥法等を一例として挙げることができるが、これらの方法に限定されるものではない。また、これらの方法を用いて製造されたリポソームの形状としては、単一リポソーム及び多重膜リポソームのいずれかに限定されない。更には、リポソームを適宜フィルターに通じて適切な粒径のものを分離・選択することも可能であるが、平均粒径が200nm以下、好ましくは150〜100nm以下、更に好ましくは75nm以下で可及的に小さく、例えば10〜60nm、好ましくは15〜50nm、更に好ましくは20〜30nm(例えば25nm)とするのがよい。
【0033】
本発明のリポソームとしては、一般的にリポソームとして知られているものであればよく、特に皮膚に塗布して問題の無いリポソームが挙げられ、これらを単独で、もしくは公知のリポソーム原料を用いて新たにリポソームを設計し、形成しても良い。更に好適にはリン脂質を使用するが、リン脂質としては天然リン脂質、合成リン脂質を含めた一般にリン脂質として知られるものであれば使用可能である。例えば、大豆、卵黄由来のレシチン、リゾレシチン、あるいは、これらの水素添加物、水酸化物等の誘導体が例示される。なお、その際、構成リン脂質は、特に限定されず、また、構成脂肪酸も特に限定されることはなく、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸のいずれでもよい。
【0034】
使用するリン脂質としては、具体的にはホスファチジルコリン(レシチン)、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴミエリン、ホスファチジン酸等が挙げられ、さらに具体的な例としては、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジミリストリルホスファチジルコリン(DMPC)、ジオレイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジステアロイルホスファチジルセリン(DSPS)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ジパルミトイルホスファチジルイノシトール(DPPI)、ジステアロイルホスファチジルイノシトール(DSPI)、ジパルミトイルホスファチジン酸(DPPA)、ジステアロイルホスファチジン酸(DSPA)などを挙げることができる。添加する量はリポソーム原料全体の0.1〜20(w/w)%、好適には0.5〜10(w/w)%とすることにより、リポソームを問題なく獲得することができる。
【0035】
具体的に糖脂質としては、ジガラクトシルジグリセリド、ガラクトシルジグリセリド硫酸エステル等のグリセロ脂質、ガラクトシルセラミド、ガラクトシルセラミド硫酸エステル、ラクトシルセラミド、ガングリオシドG6、ガングリオシドG4等のスフィンゴ糖脂質等が好適に使用できる。
【0036】
脂質膜成分の溶解性を向上せしめるため、溶媒を使用するのが好ましい。溶媒としては、低級アルコール、グリコール、グリコールエーテル、グリコールエステル、炭酸アルキルの一種又は2種以上を使用するのが好ましい。
【0037】
好ましい低級アルコールとしては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等が挙げられ、安全性の面から、エタノールが特に望ましい。
【0038】
好ましいグリコール、グリコールエーテル、グリコールエステルとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3‐ブタンジオール、エチルカービトール、ブチルカービトール、ジエチレングリコールジエチルエーテル、これらグリコール類のアルキルエステル等が挙げられる。
【0039】
好ましい炭酸アルキルとしては、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート等の炭酸アルキルが例示される。
【0040】
本発明のリポソームには、親水性薬効成分、及び/又は、親油性薬効成分を内包させることで、化粧料、皮膚外用剤に好適に使用できる。好適な薬効成分としては、抗酸化剤、抗菌剤、抗炎症剤、血行促進剤、美白剤、肌荒れ防止剤、老化防止剤、保湿剤、ホルモン剤、ビタミン類、色素、およびタンパク質類が挙げられる。また、化粧料や皮膚外用剤の製剤に常用される補助剤も適宜使用可能である。
【0041】
好適な抗酸化剤としては、トコフェロール類、天然ビタミンE類及びそれらの脂肪酸エステル類、BHT、BHA、ヒドロキシアニソール、t‐ブチルハイドロキノン、ノルジヒドログアヤレチン、没食子酸アルキルエステル類、チオジプロピオン酸ジラウリル、トリルビグアナイド、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、エリソルビン酸およびその塩類、L‐アスコルビン酸およびその塩類、脂肪酸アスコルビル類、茶エキス、リンゴエキス等のカテキン類、カテキン誘導体類、およびポリフェノール類等が挙げられる。また、チオタイン、グルタチオン、チオタウリン、ヒポタウリン等の還元性基を有するアミノ酸も好ましい。
【0042】
好適な抗菌剤としては、安息香酸、ウンデシレン酸、サリチル酸、ソルビン酸、デヒドロ酢酸、バラオキシ安息香酸アルキルエステル等の有機酸およびその塩類や誘導体類、イソプロピルメチルフェノール、クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、フェノール、クレゾール、チモール、トリクロサン等のフェノール類、ヒノキチオール、ヒバオイル、茶エキス、リンゴエキス、植物抽出物質類、カテキン類、カテキン誘導体類、およびポリフェノール類等が挙げられる。また、クロラミンT、ジンクピリチオン等も好ましい。
【0043】
好適な抗炎症剤としては、ε‐アミノカプロン酸、トラネキサム酸、トラネキサム酸アルキルエステル、グリチルリチン酸、グリチルリチン酸アルキルエステル、グリチルレチン酸、グリチルレチン酸アルキルエステル、塩化リゾチーム、グアイアズレン、ヒドロコルチゾン、シソエキス、イチョウエキス、海藻エキス等の植物抽出物等が挙げられる。
【0044】
好適な血行促進剤としては、イチョウエキス、センブリエキス、セリコサイド、マロニエエキス等の植物抽出物、トコフェロール類、およびビタミンEとその誘導体、γ‐オリザノール等が挙げられる。
【0045】
好適な美白剤としては、L‐アスコルビン酸、L‐アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸リン酸エステルナトリウム、アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム、アスコルビン酸硫酸エステルナトリウム、アスコルビン酸グリセリル(ポリグリセリル)エーテル類、アスコルビン酸グリセリル(ポリグリセリル)エステル類、アスコルビン酸グルコシド(グリコシド)類、アスコルビン酸アルキルエステル類、アスコルビン酸アルキルエーテル類等のビタミンC類およびその誘導体、コウジ酸、アルプチン、イオウ等が挙げられる。
【0046】
また、油溶性甘草エキス、クワエキス、シャクヤクエキス、トウキエキス、ワレモコウエキス、マロニエ樹皮エキス、カミツレエキス等の植物抽出物、更には、リノール酸、リノレン酸、乳酸、トラネキサム酸等も好ましい。
【0047】
好適な肌荒れ防止剤、保湿剤としては、グリセリン、プロピレングリコール、1,3‐ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール等の多価アルコール、トレハロース、マルトース等の糖類、ヒアルロン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、キチン・キトサン等の生体高分子、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、ヒドロキシプロリン等のアミノ酸類、乳酸ナトリウム、尿素、スフィンゴ脂質、セラミド類、コレステロールおよびその脂肪酸エステルやポリオキシエチレン付加物等の誘導体が挙げられる。また、スクワラン、スクワレン等の炭化水素油、ククイナッツ油、ボラジ油、ローズヒップ油等のグリセライド類も好適に使用できる。
【0048】
好適な老化防止剤としては、前述した抗酸化剤、保湿剤、血行促進剤、肌荒れ防止剤が挙げられる。また、α‐ヒドロキシ酸、ビタミンAおよびその誘導体、ビタミンAアルコールおよびその誘導体が好適に使用できる。
【0049】
好適なホルモン剤としては、コルチコステロン、アンドステロン、ハイドロコルチゾン、β‐エストランジオール等のステロイドホルモン、プロスタグランジン等が挙げられる。
【0050】
好適なビタミン類としては、ビタミンA群、ビタミンB群、ビタミンC群、ビタミンE群、ビタミンK群より任意に選択された1種又は2種以上が使用可能であり、フラボノイド、カロチノイド、キノン、ポルフィリン等の色素も使用可能である。
【0051】
リポソームに封入されるプラセンタエキスとハトムギエキスの濃度は適宜決定することが可能であるが、好ましくはプラセンタエキスの濃度を全リポソーム原料の5〜50(w/w)%かつハトムギエキス粉末を1〜30(w/w)%溶解させ、更に好ましくはプラセンタエキス20〜40(w/w)%にハトムギエキス粉末を1〜25(w/w)%溶解させる。
【0052】
本発明のリポソームは、そのままで、また既存の製剤に混合することで、化粧料や皮膚外用剤として使用することができる。既存の製剤に混合する場合は、製剤の最終段階で混合しても良く、製剤の途中、例えば、水相を添加する際に、混合しても良い。混合条件やその他の条件は、通常の化粧料や皮膚外用剤を製造する条件がそのまま適用できる。これらの各種製剤は、主剤(リポソーム)に賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑択剤、溶解補助剤、懸濁剤その他化粧料や皮膚外用剤の製剤技術分野において通常使用される既知の補助剤を用いて製剤化することができる。また、既述したようにリポソームの調製に使用できる抗菌剤等の薬効成分を適宜配合することができる。
【0053】
本発明による薬効成分を内包したリポソームは、既存の製剤に混合してもリポソームが安定に保たれ、薬効成分の安定性が損なわれることがない。
【0054】
本発明において、化粧料とは化粧品、化粧用組成物、皮膚外用剤の少なくともひとつを指し、一般に許容されるものであれば特に限定されないが、例えば具体的には次のものが包含される:化粧水、美容液、乳液、クリーム、パック、マスク、入浴剤、洗浄剤、分散液、軟膏、液剤、エアゾール、貼布剤。
【実施例】
【0055】
以下、本発明の試験例及び実施例について述べるが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0056】
(試験例1:美白効果向上試験)
シミや肌の黒化の原因となる黒褐色メラニンは、チロシンというアミノ酸にチロシナーゼという酵素が作用することにより生成される。そのため、白く透き通った肌を保つためには、チロシナーゼの活性を阻害しなくてはならない。本発明で用いるプラセンタ及びハトムギの混合溶液の美白効果を立証するために行った実験の詳細を下記に記す。
【0057】
(1)実験
試験サンプルとして、水溶性プラセンタエキスとしては、プラセンタ抽出溶液((株)ニチレイバイオサイエンス製品)を用い、ハトムギ粉末としては、既述した方法にしたがってハトムギエキスを製造しこれを更にスプレードライして粉末化したハトムギエキス粉末を使用した。なお、これらをそれぞれプラセンタ溶液、ハトムギエキス末ということもある。
【0058】
試験は、マッシュルーム由来チロシナーゼ(シグマ)が、ドーパクロムを生成する反応初速度の0.1秒単位の吸光度測定値をカイネティクスソフトにより算出し、検体であるプラセンタ溶液、ハトムギエキス末およびそれらを混合したものを添加した場合の反応初速度と比較することにより、チロシナーゼ活性阻害率を求めた。チロシナーゼ活性阻害率は5回測定した平均値より算出した。
【0059】
実験手順は、以下のとおりである。40μLの3mM L‐DOPA(和光純薬)、20μLの0.2Mリン酸緩衝液 (pH6.5)および40μLの水(コントロール)もしくはそれぞれ検体(25(v/v))%プラセンタ溶液、1mg(2.5wt%)ハトムギエキス末もしくは25%プラセンタ溶液+1mgハトムギエキス末)を混合し、37℃で10分間静置後、20 μLの300unit/mLチロシナーゼ溶液を添加し、475nmの吸光度変化を計算区間2〜5秒で測定した。結果を下記にまとめる。
【0060】
(2)結果
図1の結果からも明らかなように、25%プラセンタ溶液および1mgハトムギエキス末のチロシナーゼ阻害率はそれぞれ25.3%と14.4%であった。一方、25%プラセンタ溶液+1mgハトムギエキス末のチロシナーゼ阻害率は最も強いチロシナーゼ阻害率を示し、その値は39.7%であった。プラセンタ溶液とハトムギエキス混合溶液は、それぞれ単体サンプルより強いチロシナーゼ阻害率を示し、混合することの有効性が示された。しかしその際、各主成分を多様に含み、期限(由来)を全く異にして(動物由来のプラセンタに対して植物由来のハトムギ)、両者間に格別の親和性や関連性のないこれらの成分を混合すれば互いに干渉し合ってそれぞれ単体サンプルの有する効果すらも奏されないと予測されたところ、全く予測に反して、両者は全く干渉しないことが確認された。この点からしても本発明は当業者の予測をはるかにこえたものということができる。
【0061】
(試験例2:保湿効果向上試験)
皮膚中の角質層に点在するNMF(Natural Moisturing Factor)は、皮膚の保湿能を保つ上で重要な働きを持ち、これらが不足すると角質層のうるおいが失われ、角質層の重なりが乱れて肌荒れや乾燥などの原因となる。NMFの主成分は、アミノ酸類、乳酸、 尿素、クエン酸塩などで、いずれも水分をかかえこむ力があり、プラセンタエキスやハトムギはこれらを豊富に含むものである。したがって、このような観点から、プラセンタエキスとハトムギを混合した溶液は単独でそれらを配合した溶液より極めて高い保湿能をもつと期待できるものである。
【0062】
(試験例3:抗酸化活性向上試験)
紫外線の照射などにより、体内で活性酸素が発生すると過酸化脂質が生成され、皮膚の老化やしわの原因となる。過酸化脂質などの生成を防ぐ効果(抗酸化活性)を調べる方法として、安定なラジカルDPPH(1,1‐ジフェニル‐2‐ピクリルヒドラジル)を用いたDPPH‐VIS法がある。DPPHはそれ自体が安定な紫色のラジカルであり、抗酸化物質(水素供与体)が存在すると水素を奪って非ラジカル体に変化し、見かけ上紫色が次第に退色する。
プラセンタエキス及びハトムギの抗酸化活性を検討するために、プラセンタ溶液((株)ニチレイバイオサイエンス製品)および既述したハトムギエキス末を用いて下記の実験を行った。
【0063】
(1)実験
200μLの200μM DPPH溶液と100μLの0.2M MES(2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸)緩衝液を混合した。その混合溶液にプラセンタ溶液、ハトムギエキス水溶液およびプラセンタ溶液にハトムギエキス末を溶解したものをそれぞれの濃度で添加し、20分後の520nmの吸光度を測定し、ラジカル消去による退色活性をTrolox相当量として表示した。試料は3点分析した平均値とした。
【0064】
(2)結果
図2(DPPHラジカル消去活性(Trolox相当))の結果からも明らかなように、プラセンタ溶液100μLは22.7μMのTroloxと同等のラジカル消去活性を示した。ハトムギエキスは23.6μM Trolox等量/mgであった。一方、プラセンタ溶液にハトムギエキスを溶解したサンプルが最も強いラジカル消去活性を示し、その値は43.7μM Trolox等量/mgであった(図2)。プラセンタ溶液とハトムギエキス混合によって、それぞれ単体サンプルより強いラジカル消去活性を示し、混合することの有効性が示された。しかもその際、複雑な成分を各種含有するプラセンタとハトムギエキスを併用すれば、相互に干渉作用が生じてラジカル消去活性が低減したり消失したりすることが充分に予測されるところ、本発明においてはこれら両者を混合してもこのような不利益は生じないことが確認され、本発明によって予測をはるかにこえた顕著な効果が奏されることがはじめて立証された。
【0065】
(試験例4:経皮吸収力向上試験)
本発明で用いたリポソームを粒度分布計測機で測定したところ、リポソームの直径は平均25nmであることがわかった(図3)。皮膚の細胞間距離は250nmとされており、本発明で用いたリポソームは、皮膚の細胞間距離に比べて小さく、皮膚の深部まで吸収されるのに十分に小さいサイズである。このことから、リポソームにプラセンタエキスを封入することでプラセンタエキスの経皮吸収が増大し、プラセンタの効能が劇的に向上すると期待できる。さらに、リポソームそれ自身も皮膚に吸収されると保湿剤として働くことが知られており、化粧品の原料として用いるのに優れていると言える。
【0066】
(実施例1:リポソームの製造)
水素添加大豆レシチン2〜15%、1,3‐ブチレングリコール2〜7%、パラオキシ安息香酸メチル0.1〜0.4%、ジヒドロコレス‐30(商品名:日光ケミカルズ株式会社)0.2〜0.9%(配合する場合)、水溶性プラセンタエキス5〜50%、ハトムギ粉末(既述の方法で製造したハトムギエキスを粉末化したもの)0.5〜30%、精製水残余(上記%はいずれも(w/w)%)の配合にて、プラセンタ・ハトムギ封入リポソームを製造した。
【0067】
その1例として、下記表1の配合にてプラセンタ・ハトムギ封入リポソームを製造した。
【0068】
【表1】

【0069】
まず、水素添加レシチン、1,3‐ブチレングリコール、パラオキシ安息香酸メチルを上記配合比率にて秤量し、室温にて十分に攪拌、分散させる。その後に残りの原料を秤量、添加し、更に攪拌させる。
十分に攪拌されたら、溶液を80℃程度(77〜83℃)まで加熱し、ホモミキサー(特殊機化工業株式会社製TK HOMOMIXER MARK II)にて30分程攪拌し、溶液をマイクロフルイダイザー(みづほ工業株式会社製M−110−E/H)にて分散させ、冷却し、篩分けして微細且つ均質な粒径(平均粒径25nm)を有するプラセンタ・ハトムギ封入リポソーム溶液を得た。
【0070】
(実施例2:化粧水の製造)
実施例1に記載のプラセンタ及びハトムギを封入したリポソームを用い、表2の配合により、美白作用、保湿作用、抗酸化作用に優れた化粧水を得た。
【0071】
【表2】

【0072】
(実施例3:美容液の製造)
実施例1に記載のプラセンタ及びハトムギを封入したリポソームを用い、表3の配合により、美白作用、保湿作用、抗酸化作用に優れた美容液を得た。
【0073】
【表3】

【0074】
(実施例4:ジェルクリームの製造)
実施例1に記載のプラセンタ及びハトムギを封入したリポソームを用い、表4の配合により、美白作用、保湿作用、抗酸化作用に優れたジェルクリームを得た。
【0075】
【表4】

【0076】
(実施例5:乳液の製造)
実施例1に記載のプラセンタ及びハトムギを封入したリポソームを用い、表5の配合により、美白作用、保湿作用、抗酸化作用に優れた乳液を得た。なお、以下において、PCAソーダはピロリドンカルボン酸ソーダを指す。
【0077】
【表5】

【0078】
(実施例6:官能試験)
本発明に係る化粧料のパネルテストを行い、各種比較化粧料とも比較を行って、本発明に係る化粧料が官能的にも卓越していることを確認した。
【0079】
(イ)試験方法
実施例5によって製造した乳液(乳液Aとする)、乳液Aにおいてプラセンタ・ハトムギ封入リポソーム液を、プラセンタ封入リポソーム液、ハトムギ封入リポソーム液、プラセンタ封入リポソーム液とハトムギ封入リポソーム液の等量混合物にかえた3種の乳液をそれぞれ乳液B、C、Dとし、これらのサンプルについてパネルテストを行った。なお、コントロールとしてプラセンタ及びハトムギを共に含まない乳液を乳液Eとして試験に供した。
【0080】
比較例である乳液B、C、Dの配合をそれぞれ、下記表6,7,8に示す。ただし、以下に記載の『プラセンタ封入リポソーム』『ハトムギ封入リポソーム』はそれぞれ実施例1の配合において、プラセンタを40(w/w)%用いてハトムギを含有しない、もしくはハトムギを1(w/w)%用いてプラセンタを含有しないで製造したリポソームを指す。
【0081】
【表6】

【0082】
【表7】

【0083】
【表8】

【0084】
25〜58歳(平均年齢38.1歳)の女性10名を対象として官能試験を行った。被験者には1日朝晩の2回、左腕洗浄後に上記A〜Dに加え更に、リポソームを全く含有しない対照乳液を適量塗布した。10日後に、下記の評価4項目について、乳液Eを5点として各人持点10点にて採点を行い、100点満点で評価した。その結果を下記表9,10に示す。
【0085】
(1)肌がしっとりする
(2)肌がなめらかになる
(3)肌へ乳液の浸透性が良いと感じる
(4)乳液を塗った感覚が長持ちする
【0086】
(ハ)結果
上記パネルテストで行われた結果を下記表9,10に示す。
【0087】
【表9】

【0088】
【表10】

【0089】
(ニ)結果(まとめ)
上記の結果をまとめて、下記表11に示す。
【0090】
【表11】

【0091】
なお上記表では80点以上を☆、70〜79点を◎、60〜69点を○、50〜59点を△として表記している。
【0092】
官能試験の結果、いずれの項目においても乳液Aの効果が最も高く、更に(4)の『乳液を塗った感覚が持続するか』という項目に関しては更に、プラセンタ封入リポソームとハトムギ封入リポソームを混合したのみの乳液(乳液D)では、それぞれ単独で用いた乳液(乳液BおよびC)と比較して効果が同程度であることが確認されたが、それにも関わらず乳液Aは乳液B,C,Dのいずれと比較しても高い効果を奏した。特に、非常に近似した配合からなる乳液A,Dにおいては、すべての項目において乳液Aが乳液Dに比して1ランクずつ評価が高くなっており、本発明に係る乳液Aが官能面からも総合的にすぐれた化粧料であることが立証された。
【0093】
このように、本発明に関わるプラセンタ・ハトムギ封入リポソームを有効成分とする乳液によると、10日間の使用後において、従来品及び従来品の混合物と比較して肌がよりしっとりとすると共になめらかになると感じ、また乳液の肌への浸透性がより優れているとの著効が認められた。
【0094】
(ホ)使用感の向上
上記結果から明らかなように、本発明によれば、すぐれた薬効のほか、経皮吸収力、使用感、使い心地、シットリ感が向上するといった官能上の著効も奏される。これらの効果は、化粧品、特に皮膚化粧品にとっては、特有なものであって非常に重要な効果であることから、本発明は極めて顕著な効果、特に皮膚化粧料にとってきわめて顕著な効果を奏するものということができる。
【0095】
そのうえ、本発明によれば、プラセンタ封入リポソームとハトムギ封入リポソームをそれぞれ別個に混合した場合に比して(乳液D)、本発明に係るプラセンタとハトムギを同時に封入したリポソームを使用した場合(乳液A)の方がはるかにすぐれた効果を示している。その詳細なメカニズムは今後の研究にまたねばならないが、同じ原料を使用していながらリポソームに封入する態様の相違によって効果が大きく相違してくる点でも本発明はきわめて特異的、特徴的である。
【0096】
本発明は、上記したほか、更に次のような特徴、効果を有する。
【0097】
(安全性)
プラセンタエキス、ハトムギともに天然成分であるため、人体に対して安全である。特に、ハトムギは既述のような製法にしたがって製造することができ、品質、安全性ともに高く評価できる。
【0098】
(処方の簡便化)
通常、化粧品に美白効果、保湿効果、抗酸化活性効果を付与させるためには、複数の原料を配合する必要がある。しかし、本発明は、プラセンタエキス、ハトムギはこれらの効果を網羅しているので、その他の原料を添加する必要がない。よって、簡便に化粧品を作成できる。
【0099】
しかも更に本発明によれば、すぐれた薬効(薬理効果)のほか、「使い心地がよい」という化粧料、特に皮膚化粧料として必要な独特にして且つ重要な著効を奏する点でも特徴的である。
【0100】
したがって、本発明は、化粧料、その製造方法のほか、実際に化粧料(化粧品、非医療用の皮膚外用剤)を使用した場合に、使い心地が向上したり、心地よく化粧ができるといった官能面での著効も併せ奏されるものである。このような官能面での使用効果は、化粧品に特有なものであって、化粧品にとっては薬効と同様に重要なものである。
【0101】
このような重要性に鑑み、本発明は非治療用の化粧方法(トリートメント方法、化粧処置方法)も提供するものであって、いかに例示される。
【0102】
(例1)
本発明に係るプラセンタ・ハトムギ封入リポソームを含有する化粧料を皮膚に局部的及び/又は全身的に施すこと、を特徴とする非治療的な心地よい化粧方法。
但し、心地よいとは下記(a)〜(c)の少なくともひとつをいう。
(a)経皮吸収力(しみ込み感)の向上
(b)使用感の向上
(c)使い心地の向上
【0103】
(例2)
本発明に係るプラセンタ・ハトムギ封入リポソームを含有する化粧料を皮膚に対して局部的及び/又は全身的に施すことにより、皮膚に対して美白、保湿、抗酸化の少なくともひとつの作用効果を及ぼすこと、を特徴とする上記例1に記載の非治療的な心地よい化粧方法。
【0104】
本発明を要約すれば大略次の通りである。すなわち、本発明は、プラセンタエキスが本来持つ効能(特に美白効果、保湿効果、抗酸化効果)を著しく向上させ、かつ安全性の高い化粧料を新たに開発することを課題とするものである。
【0105】
そして、プラセンタ・ハトムギをリポソームに封入した化粧料によって上記課題を解決した。その製造の1例は次のとおりである。
リン脂質及び/又は糖脂質を含む脂質膜成分を溶媒にとかし、これに水溶性プラセンタキスとハトムギ粉末を含む水相を加えて攪拌し、更に加熱し、攪拌した後、分散させて微細リポソームを形成せしめ、平均粒径が100nm以下(例えば20〜25nm)のリポソームを分離、回収して、プラセンタ・ハトムギ封入リポソームを得る。これをそのまま化粧料として使用するか、あるいは化粧料原料として用い、各種化粧料を製造する。本発明に係る化粧料は、上記した効能のほか、使い心地のよさといった化粧料にとって非常に重要な官能的特徴も併用する点で、きわめて特徴的である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン脂質及び/又は糖脂質からなる脂質膜成分と溶媒とを混合、攪拌し、得られた液体に水溶性プラセンタエキスとハトムギ粉末とを含む水相を添加して攪拌し、得られた液体を加熱し、攪拌した後、分散させて微細なリポソームを形成せしめ、室温まで冷却した後あるいは冷却することなく、篩を用いて平均粒径が100nm以下のリポソームを分離、回収して、プラセンタ・ハトムギ封入リポソーム液を得、このようにして調製したプラセンタ・ハトムギ封入リポソームを用いて化粧料を製造すること、を特徴とする経皮吸収力の向上、使用感の向上、使い心地の向上の少なくともひとつの作用効果を奏する化粧料の製造方法。
【請求項2】
水溶性プラセンタエキスとして胎盤抽出エキスを使用すること、を特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ハトムギ粉末として、ハトムギの殻を剥ぎあるいは殻を剥ぐことなくそのまま粗粉砕したものに水を加え、プロテアーゼ活性を持つ酵素とα‐アミラーゼ活性を持つ酵素とを加えて処理し、得られた処理物(ハトムギエキス)、又は、これを粉末化したもの(ハトムギエキス粉末)を使用すること、を特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
平均粒径が15〜50nmのリポソームを使用すること、を特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
化粧料が皮膚化粧料であること、を特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
化粧料が美白効果、保湿効果、抗酸化効果の少なくともひとつの効果を有すること、を特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項の方法によって製造してなる、プラセンタ及びハトムギを封入したリポソームを含む化粧料。
【請求項8】
美白効果、保湿効果、抗酸化効果の少なくともひとつの効果を有し、更に、経皮吸収力の向上、使用感の向上、使い心地の向上の少なくともひとつの効果を有する請求項7に記載の化粧料。
【請求項9】
化粧料が、化粧水、美容液、乳液、クリーム、パック、マスク、入浴剤、洗浄剤、分散液、軟膏、液剤、エアゾール、貼布剤の少なくともひとつであること、を特徴とする請求項7又は8に記載の化粧料。
【請求項10】
請求項6〜9のいずれか1項に記載の化粧料を皮膚に局部的及び/又は全身的に施すこと、を特徴とする非治療的な心地よい化粧方法。
但し、心地よいとは下記(a)〜(c)の少なくともひとつをいう。
(a)経皮吸収力の向上
(b)使用感の向上
(c)使い心地の向上
【請求項11】
請求項6〜9のいずれか1項に記載の化粧料を皮膚に局部的及び/又は全身的に施すことにより、皮膚に対して美白、保湿、抗酸化の少なくともひとつの作用効果を及ぼすこと、を特徴とする請求項10に記載の非治療的な心地よい化粧方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−180193(P2010−180193A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−27695(P2009−27695)
【出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【出願人】(398029533)株式会社ファイン (9)
【Fターム(参考)】