説明

高圧ガス充填・出力システム

【課題】 充填時に高圧ガスが出力ラインを逆流してフィルタに捕捉されたコンタミがタンク側へと戻ることを抑える高圧ガス充填・出力システムを提供する。
【解決手段】 高圧ガス充填・出力システム1は、出力ライン21と充填ライン22とを備えている。出力ライン21は、高圧ガスが充填される高圧タンク2と外部接続ポート20とに接続され、充填ライン22は、高圧タンク2に接続され、出力ライン21と合流している。充填ライン22には、高圧タンク2内へと流れる高圧ガスの流れを許容し、高圧タンク2から流出する高圧ガスの流れを阻止する充填側逆止弁15が介在している。また、出力ライン21には、高圧タンク2側から順に出力側フィルタ13と、電磁弁14と、出力側逆止弁15とが介在している。電磁弁14は、出力ライン21を開閉可能に構成されており、出力側逆止弁15は、高圧タンク2から流れる高圧ガスの流れを許容し、高圧タンク2に流入する高圧ガスの流れを阻止するようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧ガスをタンクに充填し、またタンク内に充填された高圧ガスを出力するための高圧ガス充填・出力システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池自動車やガスエンジン自動車では、圧縮水素や圧縮天然ガス等の燃料ガスが使用されており、燃料ガスが高圧タンクに貯蔵されるようになっている。高圧タンクには、高圧ガス充填・出力システムが設けられており、この高圧ガス充填・出力システムによって燃料ガスが高圧タンクに充填され、また充填した燃料ガスが燃料電池スタックやガスエンジンに出力されるようになっている。このような高圧ガス充填・出力システムとして、例えば特許文献1のようなシステムが知られている。
【0003】
特許文献1に記載のシステムは、高圧タンクに接続されている出力ラインと充填ラインとを備えている。出力ラインには、高圧タンク側から順に出力側フィルタ及び電磁弁が介在しており、また充填ラインには、高圧タンク側から順に逆止弁及び充填側フィルタが介在している。また、特許文献1に記載のシステムでは、これら出力ラインと充填ラインとが合流しており、外部接続ポートが1つになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−168165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のシステムでは、電磁弁によって出力ラインを開くと、高圧タンク内の高圧ガスが出力ラインを通って外部接続ポートから出力される。また、電磁弁によって出力ラインを閉じた状態で外部接続ポートから高圧ガスが注入されると、高圧ガスが充填ラインを通って高圧タンク内に充填されるようになっている。しかし、充填する際、外部接続ポートから入れられた高圧ガスは、充填ラインだけでなく出力ラインにも流れる。これにより、電磁弁の合流点側の圧力がタンク側の圧力より高くなり、出力ラインが強制的に開かれて充填ガスが出力ラインをタンク側へと逆流する。そうすると、高圧ガスの出力時に出力側フィルタで捕捉したコンタミが高圧ガスタンク側へと離脱してフィルタエレメントを損傷させることがある。また、フィルタエレメントを損傷させることで、新たなコンタミが発生する。
【0006】
そこで本発明は、充填時に高圧ガスが出力ラインを逆流することを防ぎ、またフィルタに捕捉されたコンタミ(異物)がタンク側へと戻ることを抑えることができる高圧ガス充填・出力システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の高圧ガス充填・出力システムは、高圧ガスが充填されるタンクと外部接続ポートとに接続される出力ラインと、前記タンクに接続され、前記出力ラインと合流している充填ラインと、前記充填ラインに介在し、前記タンク内へと流入する高圧ガスの流れを許容し、前記タンクから流出する高圧ガスの流れを阻止する充填側逆止弁と、前記出力ラインにおいて前記充填ラインとの合流点より前記タンク側に介在し、高圧ガスに含まれる異物を捕捉するフィルタと、前記出力ラインにおいて前記充填ラインとの合流点と前記フィルタとの間に介在し、前記出力ラインを開閉する開閉弁と、前記出力ラインにおいて前記合流点と前記フィルタとの間に介在し、前記タンクから流出する高圧ガスの流れを許容し、前記タンク内に流入する高圧ガスの流れを阻止する出力側逆止弁とを備えるものである。
【0008】
本発明に従えば、開閉弁により出力ラインを開くと、タンクに充填された高圧ガスがフィルタ及び出力側逆止弁を通り、外部接続ポートを介して出力することができる。この際、高圧ガスがフィルタを通っているので、タンク内の高圧ガスに含まれる異物をフィルタによって捕捉させることができる。
【0009】
また、本発明では、外部接続ポートに高圧ガスを注入すると、注入された高圧ガスを充填側逆止弁を通ってタンクに導くことができ、高圧タンクにガスを充填することができる。他方、出力ラインでは、タンク内への逆流する高圧ガスの流れが出力側逆止弁により止められているので、高圧ガスが出力ラインを逆流してフィルタに達することを防ぐことができる。これにより、出力時にフィルタに捕捉された異物がタンク側へと戻ることを抑えることができる。
【0010】
上記発明において、前記出力側逆止弁は、前記出力ラインにおいて前記開閉弁と前記合流点との間に位置していることが好ましい。
【0011】
上記構成に従えば、充填時に高圧ガスが開閉弁に逆流することを防ぐことができる。これにより、充填する高圧ガスによって開閉弁の出力側が高圧になり、開閉弁が開動作することを防ぐことができ、開閉弁の耐用年数を向上させることができる。
【0012】
上記発明において、前記出力側逆止弁は、前記開閉弁に組み込まれていることが好ましい。
【0013】
上記構成に従えば、高圧ガス充填・出力システム全体の小形化を図ることができる。また、開閉弁と出力側逆止弁との間の通路を短くすることができる。これにより、出力ラインの圧力損失を低減することができ、また開閉弁の開閉動作に対する出力側逆止弁の応答性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、充填する際に高圧ガスが出力ラインを逆流し、フィルタに捕捉されたコンタミ(異物)がタンク側へと戻ることを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態に係る高圧ガス充填・出力システムの構成を示す回路図である。
【図2】図1の高圧ガス充填・出力システムに備わる双方向クローズ形電磁弁装置を示す断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る高圧ガス充填・出力システムの構成を示す回路図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係る高圧ガス充填・出力システムの構成を示す回路図である。
【図5】本発明の第4実施形態に係る高圧ガス充填・出力システムの構成を示す回路図である。
【図6】本発明の第5実施形態に係る高圧ガス充填・出力システムの構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、前述する図面を参照しながら、本発明の第1乃至5実施形態に係る高圧ガス充填・出力システム(以下、単に「システム」ともいう)1,1A〜1Dについて説明する。なお、実施形態における上下等の方向の概念は、説明の便宜上使用するものであって、システム1,1A〜1Dに関して、それらの構成の配置及び向き等をその方向に限定することを示唆するものではない。また、以下に説明するシステム1,1A〜1Dは、本発明の一実施形態に過ぎず、本発明は実施の形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除、変更が可能である。
【0017】
[第1実施形態]
システム1は、例えば圧縮天然ガス自動車、水素ガス自動車、及び燃料電池車等の車両に備わっている。圧縮天然ガス自動車及び水素ガス自動車は、ガスエンジンを有しており、このガスエンジンにて燃料ガス(圧縮天然ガス(CNG)や水素ガス等)を燃焼することによって駆動力を得て駆動輪を動かすようになっている。また、燃料電池自動車は、燃料電池スタックを有しており、この燃料電池スタックでは、燃料ガスを消費して発電し、発電した電力をモータに与えて駆動力を発生させるようになっている。ガスエンジンや燃料電池スタック等のように燃料ガスを消費して駆動力を発生させる燃料ガス消費器(図示せず)は、システム1を介して高圧タンク2に接続されている。高圧タンク2は、例えば35〜70MPa、又はそれ以上の高圧の燃料ガスを貯蔵することができるようになっており、システム1は、高圧タンク2に高圧ガスを充填し、またそこに貯蔵されている燃料ガスを燃料ガス消費器に出力するようになっている。以下では、システム1の構成について説明する。
【0018】
<高圧ガス充填・出力システム>
システム1は、図1に示すように、バルブブロック11を備えており、このバルブブロック11には、充填側逆止弁12と、出力側フィルタ13と、電磁弁14と、出力側逆止弁15とが形成されている。バルブブロック11は、高圧タンク2の開口部に螺合されており、そこには高圧ガスを充填するための充填口と燃料ガス消費器とに繋がる外部接続ポート20が形成されている。また、バルブブロック11の内部には、この外部接続ポート20と高圧タンク2内とを繋ぐ出力ライン21が形成され、更にこの出力ライン21とは別に充填ライン22がバルブブロック11の内部に形成されている。充填ライン22の一端は、高圧タンク2内と接続され、また他端が出力ライン21に合流している。これにより、充填ライン22は、出力ライン21を介して外部接続ポート20に接続されている。
【0019】
このように構成される充填ライン22には、充填側逆止弁12が介在している。充填側逆止弁12は、充填ライン22と出力ライン21との合流点23から充填ライン22を通って高圧タンク2に流れる高圧ガスの流れを許容し、その逆方向、つまり高圧タンク2から充填ライン22を通って合流点23に流れる高圧ガスの流れを阻止するようになっている。他方、出力ライン21には、合流点23より高圧タンク2側に出力側フィルタ13が介在している。
【0020】
出力側フィルタ13は、スポンジ状又は網目状に構成されており、高圧ガスに含まれるコンタミを捕捉するようになっている。なお、この出力側フィルタ13と同様に、合流点23から充填ライン22を通って高圧タンク2に流れる高圧ガスに含まれるコンタミを捕捉するための充填側フィルタを合流点23と充填側逆止弁12との間に設けてもよい。また、出力ライン21において、出力側フィルタ13と合流点23との間には、電磁弁14が介在している。
【0021】
電磁弁14は、電流(又は電圧)の印加の有無に応じて出力ライン21を開閉するようになっている。この電磁弁14には、出力側逆止弁15が一体的に組み付けられている。出力側逆止弁15は、高圧タンク2から出力ライン21を通って外部接続ポート20に流れる高圧ガスの流れを許容し、その逆方向、つまり外部接続ポート20から出力ライン21を通って高圧タンク2に流れる高圧ガスの流れを阻止するようになっている。この出力側逆止弁15は、電磁弁14と共に双方向ノーマルクローズ形電磁弁装置(以下、単に「弁装置」ともいう)16を構成している。このように電磁弁14に出力側逆止弁15を一体的に組み付けて弁装置16を構成することで、システム1の小形化を図ることができる。また、電磁弁14と出力側逆止弁15とを繋ぐ通路(後述する弁孔32aに相当)を短くすることができ、出力ライン21の圧力損失を低減し、また電磁弁14の開閉動作に対する出力側逆止弁15の応答性を向上させることができる。以下では、弁装置16の構成について、図2を参照しながら説明する。
【0022】
<双方向ノーマルクローズ形電磁弁装置>
弁装置16は、ハウジング31と、シート部材32と、主弁体33と、パイロット弁体34と、電磁ソレノイド35と、逆止用弁体36と、逆止弁側ばね部材37とを備えている。弁装置16では、ハウジング31と、シート部材32と、主弁体33と、パイロット弁体34と、電磁ソレノイド35によって電磁弁14が構成され、ハウジング31と、シート部材32と、逆止用弁体36と、逆止弁側ばね部材37によって出力側逆止弁15が構成されている。つまり、出力側逆止弁15は、シート部材32を電磁弁14と共用することで電磁弁14に組みつけられている。以下では、まず、電磁弁14の構成及び動作について説明する。
【0023】
<電磁弁>
電磁弁14に備わるハウジング31は、バルブブロック11の一部であり、流入ポート31aと流出ポート31bとが形成されている。流入ポート31aは、高圧タンク2内に繋がり、また流出ポート31bは、合流点23を介して外部接続ポート20に繋がっている。また、ハウジング31には、軸線L1に沿って延在する弁体孔31cが形成されており、2つのポート31a,31bは、流入通路31d及び流出通路31eを介して弁体孔31cに夫々繋がっている。
【0024】
弁体孔31cは、大略断面円形状に形成されており、この弁体孔31cを規定するハウジング31の内周部の中間部分には、シート部材32がシールされた状態で嵌合されている。また、前記中間部分には、段差31fが形成されており、この段差31fにより弁体孔31cの開口側部分(図2の上側部分)の孔径がその底側部分(図2の下側部分)の孔径に比べて大きくなっている。シート部材32は、この段差31fの上側に位置してその下端を段差31fに当接させて支持させている。このように支持されているシート部材32は、大略円筒状になっており、その軸線に沿って延在する弁孔32aを有している。シート部材32の一端部には、弁孔32aの一方の開口を外囲する円環状の突起片41が形成されており、この突起片41に対向するように弁体孔31cのシート部材32より上側に主弁体33が挿入されている。
【0025】
主弁体33は、大略有底円筒状に形成されており、その底部を突起片41に着座させて弁孔32aを塞ぐ閉位置と、突起片41から離れて弁孔32aを開く開位置との間で軸線方向に移動可能にハウジング31内に設けられている。また、主弁体33は、その底部側の外周部が開口端側の外周部より小径になっており、その外周部とハウジング31の内周部との間には、円環状の弁空間43が形成されている。この弁空間43は、流入通路31dと繋がっており、また主弁体33が開位置に位置する際、突起片41と主弁体33の底部との間に形成されるオリフィス(図示せず)を介して弁孔32aと繋がるようになっている。なお、弁孔32a、弁空間43、及び流入通路31dによって弁通路38の電磁弁側部分が構成されている。
【0026】
また、主弁体33の基端側部分の外周部には、その軸線方向に延在する溝(図示せず)が形成されており、この溝によって弁空間43が主弁体33内にある内孔33bに繋がっている。更に、主弁体33の底部には、連通路33aが形成されている。連通路33aは、主弁体33の内外を連通するように主弁体33の軸線に沿って延在しており、この連通路33aによって、主弁体33が閉位置に位置する際であっても主弁体33の内孔33bが弁孔32aに接続できるようになっている。また、主弁体33の内孔33bには、パイロット弁体34の先端側部分が軸線方向に相対移動可能に挿入されている。
【0027】
パイロット弁体34は、大略円筒状に形成されており、その先端にテーパ部34aを有している。テーパ部34aは、主弁体33に向かって突起するテーパ状になっており、連通路33aの内側の開口(つまり、上側の開口)の周りに形成されている座部33cに着座して連通路33aを閉じるようになっている。また、パイロット弁体34の先端側部分には、その半径方向に延在する貫通孔34bが形成されており、この貫通孔34bには、連結ピン44が挿通されている。連結ピン44は、パイロット弁体34の半径方向に延在しており、その両端部が主弁体33に嵌合されて固定されている。これにより、主弁体33とパイロット弁体34とは、連結ピン44によって連結されている。
【0028】
また、連結ピン44は、貫通孔34bよりも小径に形成されており、パイロット弁体34は、主弁体33に対して軸線方向に相対移動することができるようになっている。これにより、パイロット弁体34が主弁体33に対して上側に相対移動して、テーパ部34aが座部33cから離脱して連通路33aが開くようになっている。このように構成されているパイロット弁体34の残余部は、先端側部分より大径に形成されており、その基端側部分がハウジング31からとび出ている。そして、このとび出た基端側部分の外周部には、電磁ソレノイド35が外装されている。
【0029】
電磁ソレノイド35は、パイロット弁体34に励磁力(駆動力)を与えて、パイロット弁体34を開位置方向(図2の上方向)に引張るようになっており、ハウジング31に固定されている。更に詳細に説明すると、電磁ソレノイド35は、ソレノイドケース51と、ボビン52と、コイル線53と、ガイド部材54と、固定磁極55とを備えている。ソレノイドケース51は、大略円筒状に形成されており、その一方の開口が弁体孔31cに繋がるようにハウジング31に固定されている。また、ソレノイドケース51の両側の開口部には、その半径方向内方に延在する内向きフランジ51a,51bが周方向全周にわたって形成されている。この内向きフランジ51a,51bの間には、大略円筒状のコイル収納空間51cが形成されており、このコイル収納空間51cにボビン52が収納されている。ボビン52は、大略円筒状に形成されており、その外周面には、コイル線53が巻き付けられている。コイル線53は、図示しない制御器に電気的に接続されている。また、ボビン52の内周部には、パイロット弁体34の基端部分が内挿されており、このパイロット弁体34の基端部分とボビン52の内周部との間には、ガイド部材54が介在している。
【0030】
ガイド部材54は、大略円筒状の部材である。ガイド部材54の一端側は、ソレノイドケース51の一方の開口部からとび出して弁体孔31cまで延在しており、その中に挿入されているパイロット弁体34は、このガイド部材54内を軸線方向に移動できるようになっている。また、ソレノイドケース51の他方の開口部には、固定磁極55が嵌挿されている。固定磁極55は、磁性材料から成る大略円板状の部材であり、ソレノイドケース51の他方の開口を塞ぐように他方の開口部に固定されている。この固定磁極55は、パイロット弁体34の基端と対向しており、パイロット弁体34と固定磁極55との間には、電磁弁側ばね部材56が介在している。電磁弁側ばね部材56は、パイロット弁体34を介して主弁体33を閉位置方向に付勢している。
【0031】
このように構成される電磁弁14は、制御器によりコイル線53に電流を印加すると、パイロット弁体34が励磁されて固定磁極55に吸引され、上側(つまり、固定磁極55側)に移動する。即ち、コイル線53に電流を印加することで、電磁弁側ばね部材56の付勢力に抗した励磁力を発生させて、パイロット弁体34を固定磁極55側に移動する。この際、主弁体33の内孔33bの内圧に対して弁孔32aの内圧が低く、主弁体33は圧力により突起片41に押し付けられているため、主弁体33に対して相対移動可能なパイロット弁体34だけが固定磁極55側へと移動する。移動することで、パイロット弁体34のテーパ部34aが座部33cから離れて連通路33aが開く。これにより、弁空間43、主弁体33の外周部の溝、主弁体33の内孔33b及び連通路33aを介して流入通路31dと弁孔32aとが繋がり、弁孔32aに高圧タンク2からの高圧ガスが導かれてそこの内圧が上昇する。
【0032】
パイロット弁体34が固定磁極55側に更に移動すると、パイロット弁体34が連結ピン44に当り、この連結ピン44を介して主弁体33を開位置方向へと引張る。この際、弁孔32aの内圧が上昇してるため、小さな励磁力により主弁体33を引張ることができる。開位置方向に引張られることで、主弁体33が突起片41から離れて弁孔32aの一方の開口が開かれる、つまり弁通路38の電磁弁側部分が開かれる。これにより、流入ポート31aを介して高圧タンク2から導かれている高圧ガスが流入通路31d及び弁空間43を通って弁孔32aへと流れる。
【0033】
他方、コイル線53に印加する電流を止めると、電磁弁側ばね部材56によって付勢されているため、パイロット弁体34が下側(つまり、シート部材32側)に移動し、それに伴って主弁体33が閉位置方向に移動する。やがて主弁体33が突起片41に着座し、またパイロット弁体34が座部33cに着座し、弁孔32aの一方の開口及び連通路33aが閉じられる。つまり、弁通路38の電磁弁側部分が閉じられる。このように、弁孔32aの一方の開口は、電磁ソレノイド35への電流の印加の有無に応じて開閉されるようになっている。このように開閉される一方の開口とは反対側にある弁孔32aの他方の開口付近には、出力側逆止弁15が設けられており、この出力側逆止弁15の逆止用弁体36によって弁孔32aの他方の開口を塞ぐことができるようになっている。以下では、出力側逆止弁15の構成及び動作について詳述する。
【0034】
<出力側逆止弁>
出力側逆止弁15の逆止用弁体36は、大略的に有底筒状になっており、底部の側面部分がテーパ状になっている。弁孔32aの他方の開口の周りには、弁座32bが形成されており、逆止用弁体36の底部36aは、その側面部分を弁座32bに着座させて弁孔32aの他方の開口を塞ぐ遮断位置と弁座32bから離れて弁孔32aを開く許容位置との間を移動できるように弁体孔31cに挿入されてハウジング31内に設けられている。
【0035】
また、逆止用弁体36の底部側部分は、開口端側の部分より小径に形成されており、底部側部分の周りには、円筒状の弁空間61が形成されている。この弁空間61は、逆止用弁体36が許容位置に位置する際に弁孔32aに繋がるようになっている。また、弁空間61は、逆止用弁体36内部に形成される連通路62に繋がっており、この連通路62は、逆止用弁体36の内孔36bに繋がっている。内孔36bは、弁体孔31cを介して流出通路31eに繋がっている。つまり、弁空間61は、連通路62及び内孔36bを介して流出通路31eに繋がっており、弁孔32aと、弁空間61と、連通路62と、内孔36bと、流出通路31eとによって弁通路38の逆止弁側部分が構成されている。また、逆止用弁体36の内孔36bには、逆止弁側ばね部材37が収容されており、この逆止弁側ばね部材37は、逆止用弁体36を遮断位置に向かって付勢している。
【0036】
このように構成されている出力側逆止弁15は、逆止弁側ばね部材37の付勢力に抗する作用力をシート部材32の弁孔32aに導かれる高圧ガス(弁通路38の上流側のガス)から受けるようになっている。そのため、弁孔32aの内圧が上昇して前記作用力が逆止弁側ばね部材37の付勢力より大きくなると、逆止用弁体36が弁座32bから離れて許容位置に移動して弁孔32aの他方の開口が開く、つまり弁通路38の逆止弁側部分が開く。これにより、弁孔32aに導かれた高圧ガスが弁空間61及び内孔36bを通って流出通路31eに導かれる。つまり、電磁弁14に電流を印加することで弁通路38全体が開かれ、高圧タンク2の高圧ガスが弁通路38を通って外部接続ポート20に導かれる。
【0037】
また、高圧ガスを充填する際、高圧ガスが外部接続ポート20から流出通路31eに導かれて内孔36bの内圧が弁孔32aの内圧より高くなる。この内孔36bの内圧は、遮断位置に向かう方向の作用力を逆止用弁体36に与えており、内孔36bの内圧が弁孔32aの内圧より高くなると、逆止用弁体36が遮断位置に移動し、弁座32bに着座して弁孔32aを閉じるようになっている。それ故、充填時に流出通路31eに導かれた高圧ガスが弁孔32aへ逆流することを防ぐことができ、逆流した高圧ガスが更に主弁体33を開位置へと押して弁通路38を開いて流入ポート31aに逆流するということを防ぐことができる。つまり、充填時に高圧ガスが出力ライン21を逆流することを防ぐことができる。
【0038】
このように弁装置16は、電磁ソレノイド35に電流が印加されていないノーマル状態において流入ポート31aから流出ポート31bへの方向及び流出ポート31bから流入ポート31aへの方向の双方向の流れを阻止することができる。他方、電磁ソレノイド35に電流が印加されると、弁装置16は、流入ポート31aから流出ポート31bへの方向の流れを許容し、流出ポート31bから流入ポート31aへの方向の逆流を阻止するようになっている。このような弁装置16を用いたシステム1では、以下のように動作する。
【0039】
<高圧ガス充填・出力システムの動作について>
システム1では、制御器が電磁弁14に電流を印加することで弁装置16の弁通路38が開かれる。これにより、出力ライン21における弁装置16の前後が繋がり、出力ライン21が開く。出力ライン21が開くことで高圧タンク2に貯蔵された高圧ガスは、出力側フィルタ13を通って外部接続ポート20に導かれ、更にこの外部接続ポート20を介して燃料消費器へと出力されて燃料消費器で消費される。このように、高圧ガスを出力側フィルタ13に通すことで高圧ガスに含まれるコンタミを捕捉し、コンタミが燃料消費器まで達することを防ぐことができる。なお、充填ライン22には充填側逆止弁12が介在しているので、充填ライン22から高圧ガスが出力されないようになっている。
【0040】
他方、充填口に高圧ガスが供給されると、その高圧ガスが外部接続ポート20を介して充填ライン22及び出力ライン21に導かれる。充填ライン22に導かれた高圧ガスは、充填側逆止弁12を作動させて充填ライン22を開き、高圧タンク2に流れる。これにより、高圧タンク2に高圧ガスが充填される。他方、出力ライン21に導かれる高圧ガスは、出力側逆止弁15の流出ポート31bに導かれ、逆止用弁体36を遮断位置に保持する。これにより、電磁弁14の手前で弁通路38を閉じることができ、充填時に高圧ガスが電磁弁14に逆流することを防ぐことができる。つまり、充填時に電磁弁14の出力側である弁孔32aが高圧になって主弁体33を強制的に移動させられることを防ぐことができ、電磁弁14の耐用年数を向上させることができる。
【0041】
また、弁通路38が閉じられることにより出力ライン21が閉じられ、出力ライン21を高圧タンク2の方へと逆流する高圧ガスの流れを阻止することができる。これにより、高圧ガスが出力ライン21を逆流して出力側フィルタ13に達し、出力側フィルタ13に捕捉されたコンタミが脱落してタンク側へと戻ることを抑えることができる。これにより、捕捉されたコンタミの脱落によって出力側フィルタ13が損傷して更なるコンタミが生じることや、脱落して新たに生じたコンタミによって高圧タンク2が損傷することを抑えることができる。
【0042】
[第2実施形態]
第2実施形態のシステム1Aは、第1実施形態のシステム1と構成が類似している。そこで、第2実施形態のシステム1における構成については、異なる点だけを説明し、同一の点の説明については省略する。以下に説明する第3乃至第5実施形態のシステム1B〜1Dについても同様である。
【0043】
第2実施形態のシステム1Aでは、電磁弁14より合流点23側に位置する出力側逆止弁15Aが電磁弁14に組みつけられておらず、シート部材32を共用することなく別々にバルブブロック11Aに設けられている。このように構成されている第2実施形態のシステム1Aは、第1実施形態のシステム1と同様の作用効果を奏する。
【0044】
[第3実施形態]
第3実施形態のシステム1Bでは、外部接続ポート20Bが燃料消費器だけに接続され、この外部接続ポート20Bとは別に充填口に接続される充填口接続ポート70がバルブブロック11Bに形成されている。この充填口接続ポート70は、充填ライン22Bと接続されており、充填口に供給された高圧ガスは、充填口接続ポート70を介して充填ライン22B及び出力ライン21へと導かれるようになっている。このように構成されている第2実施形態のシステム1Bは、第1実施形態のシステム1と同様の作用効果を奏する。
【0045】
[第4実施形態]
第4実施形態のシステム1Cでは、第3実施形態のシステム1Bと同様に充填口接続ポート70がバルブブロック11Cに形成され、充填口接続ポート70が充填ライン22Cに接続されている。更に、システム1Cでは、第2実施形態のシステム1Aと同様、電磁弁14より合流点23側に位置する出力側逆止弁15Cが電磁弁14に組み付けられておらず、シート部材32を共用することなく別々にバルブブロック11Aに設けられている。このように構成されている第4実施形態のシステム1Cは、第1実施形態のシステム1と同様の作用効果を奏する。
【0046】
[第5実施形態]
第5実施形態のシステム1Dでは、第2実施形態のシステム1Aと同様に出力側逆止弁15Dが電磁弁14に組み付けられていない。また、出力側逆止弁15Dは、バルブブロック11Dにおいて電磁弁14と出力側フィルタ13との間に設けられており、充填時に主弁体33を開いて弁通路38を逆流する高圧ガスの流れを流入ポート31aより出力側フィルタ13側にて阻止するようになっている。これによっても出力ライン21Dを高圧タンク2側へと逆流する高圧ガスの流れを阻止することができる。このように構成されている第5実施形態のシステム1Dは、第1実施形態のシステム1と同様の作用効果を奏する。
【0047】
[その他の実施形態]
第1乃至第5実施形態のシステム1では、電磁ソレノイド35によって弁体33を駆動させる電磁弁14が採用されているが、弁体33を駆動させるアクチュエータは電磁ソレノイド35に限られない。例えば、フォースモータであってもよく、また電圧を印加すると駆動力を発生する圧電アクチュエータであってもよく、弁体33をその軸線方向に直動可能なアクチュエータであればよい。
【符号の説明】
【0048】
1,1A〜1D システム
2 高圧タンク(タンク)
12 充填側逆止弁
13 出力側フィルタ(フィルタ)
14 電磁弁(開閉弁)
15,15A,15C,15D 出力側逆止弁
16 弁装置
20,20B 外部接続ポート
21,21D 出力ライン
22,22B,22C 充填ライン
23 合流点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧ガスが充填されるタンクと外部接続ポートとに接続される出力ラインと、
前記タンクに接続され、前記出力ラインと合流している充填ラインと、
前記充填ラインに介在し、前記タンク内へと流入する高圧ガスの流れを許容し、前記タンクから流出する高圧ガスの流れを阻止する充填側逆止弁と、
前記出力ラインにおいて前記充填ラインとの合流点より前記タンク側に介在し、高圧ガスに含まれる異物を捕捉するフィルタと、
前記出力ラインにおいて前記充填ラインとの合流点と前記フィルタとの間に介在し、前記出力ラインを開閉する開閉弁と、
前記出力ラインにおいて前記合流点と前記フィルタとの間に介在し、前記タンクから流出する高圧ガスの流れを許容し、前記タンク内に流入する高圧ガスの流れを阻止する出力側逆止弁とを備える、高圧ガス充填・出力システム。
【請求項2】
前記出力側逆止弁は、前記出力ラインにおいて前記開閉弁と前記合流点との間に位置している、請求項1に記載の高圧ガス充填・出力システム。
【請求項3】
前記出力側逆止弁は、前記開閉弁に組み込まれている、請求項2に記載の高圧ガス充填・出力システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−53659(P2013−53659A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191808(P2011−191808)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】