説明

高圧放電灯点灯装置、照明器具

【課題】高圧放電灯8までの配線部82の延長による始動用高電圧の低下の検出と補正を容易且つ安価に、また正確に行える高圧放電灯点灯装置を提供する。
【解決手段】始動パルス発生回路7は、コンデンサC1とトランスT1の1次巻線N1とスイッチング素子Q7の直列接続からなるトランス1次巻線回路と、トランスT1の1次巻線N1に発生する電圧を昇圧して高圧放電灯8に高圧パルスを印加するトランス2次巻線回路と、トランスT1に発生する高圧パルスの電圧レベルを検出するトランス巻線N3とを備え、トランス巻線N3には始動パルス発生回路7にて発生した始動パルス電圧のピーク値と相関関係のあるパルス幅を検出するパルス幅検出回路16を接続し、このパルス幅検出回路16により間接的に始動パルス電圧のピーク値を検出し、制御回路9により始動パルス発生回路7を制御することで始動パルス電圧を所望の値に調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は始動時の高圧パルス電圧のピーク値を調整する手段を具備する高圧放電灯点灯装置及びこれを用いた照明器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高圧放電灯はコンパクトな形状で高ワットの大光束を得ることができ、点光源に近く配光制御が容易であるので、白熱ランプやハロゲンランプの代替として最近使用されるようになってきた。一般に高圧放電灯は始動するのに数kVの高圧パルス電圧が必要とされており、従来例としての代表的な回路構成を図14に示す。
【0003】
Eは直流電源、4は降圧チョッパ回路、6は極性反転回路、7は始動パルス発生回路、T1は高圧パルストランスである。降圧チョッパ回路4はスイッチング素子Q2、ダイオードD2、インダクタL3、平滑コンデンサC4から構成されており、その構成及び動作はごく一般的なものであるので、説明は省略する。また、極性反転回路6はスイッチング素子Q3〜Q6のフルブリッジ回路から構成され、始動パルス発生回路7および高圧放電灯8に数十〜数百Hzの矩形波を印加するものである。
【0004】
始動パルス発生回路7は、高圧放電灯8と直列に2次巻線N2を接続されたトランスT1と、その1次巻線N1にパルス電流を流すためのコンデンサC1と、その充電抵抗Rcと、コンデンサC1を放電させるためのスイッチング素子Q7を備えている。そのパルス発生動作については周知であり、例えば極性反転回路6のスイッチング素子Q3,Q6がオン、スイッチング素子Q4,Q5がオフのときは、コンデンサC4からスイッチング素子Q3、トランスT1の1次巻線N1、充電用の抵抗Rc、コンデンサC1、スイッチング素子Q6を介してコンデンサC1に充電電流が流れて、コンデンサC1はスイッチング素子Q7側が+となるように充電される。その後、極性反転回路6のスイッチング素子Q3,Q6がオフ、スイッチング素子Q4,Q5がオンになると、コンデンサC4の電圧とコンデンサC1の電圧を加算した高い電圧がスイッチング素子Q7に印加され、スイッチング素子Q7のブレークオーバー電圧を超えることでコンデンサC1の電荷がスイッチング素子Q7を介して急峻に放電され、その急峻な放電電流が高圧パルストランスT1の1次巻線N1に流れるためにパルス電圧が発生し、そのパルス電圧をトランスT1によって昇圧した高圧パルス電圧が2次巻線N2に発生し、高圧放電灯8を絶縁破壊する。一般に高圧放電灯8は、始動パルス電圧が3〜5kVと規定されている。
【0005】
高圧放電灯点灯装置は、出力配線長(管灯長)が長くなると出力容量の増大によって始動パルス電圧が減衰するため、ランプの始動パルス電圧が規定値を下回り、ランプが始動できない課題がある。これを回避するために出力配線長が長い状態でも3〜5kVを出力する高圧放電灯点灯装置にすればよいが、この場合、出力配線長が短い状態ではパルス電圧が5kV以上となり、配線やソケット等でリークする恐れがある。
【0006】
この課題を解決した例として、特開2007−52977号が挙げられる。図15にその回路構成を示す。始動パルス発生回路は、高圧放電灯8の始動時のみ動作し、高圧パルス電圧を発生する。始動パルス発生回路は、トランスT1、外部制御信号によりオン/オフ可能なスイッチング素子Q7、コンデンサC1、スイッチング素子Q7の過電流保護用のインダクタL1を有する。また、トランスT1の3次巻線N3、電圧分圧回路11およびパルス検出回路12で高圧パルス電圧のピーク値を検出し、その検出値をフィードバックして制御回路9により始動用高電圧を所定値に維持することが提案されている。
【特許文献1】特開2007−52977号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の技術では始動用の高電圧をフィードバックに望ましい電圧にまで低減させなければならず、低減させるために電圧分圧回路等の回路構成が必要になり、点灯装置の大型化、コストアップにつながってしまう。また、電圧分圧回路の部品のばらつき・温度特性等の誤差要因が存在することにより、始動用高電圧のピーク値が正確に検出できないという課題がある。さらに始動用高電圧のピーク値は発生のタイミングが様々であるため、検出のタイミングによっては正確なピーク値を検出するのが困難であった。
【0008】
本発明は、上記のような問題を解消するためになされたものであり、高圧放電灯までの配線を延長して使用する際に始動用高電圧が低下した場合の検出及び補正を容易且つ安価に、また正確に行える高圧放電灯点灯装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、上記の課題を解決するために、図1に示すように、高圧放電灯8に矩形波交流電力を供給する矩形波出力回路(電力変換回路Bとフルブリッジ回路Q3〜Q6)と、高圧放電灯8を点灯させるために必要な始動用高電圧を発生させる始動パルス発生回路7と、この始動パルス発生回路7を制御する制御回路9とを備えた高圧放電灯点灯装置において、前記始動パルス発生回路7は、少なくともコンデンサC1とトランスT1の1次巻線N1とスイッチング素子Q7の直列接続からなるトランス1次巻線回路と、前記トランスT1の1次巻線N1に発生する電圧を昇圧して高圧放電灯8に高圧パルスを印加するトランス2次巻線回路と、前記トランスT1に発生する高圧パルスの電圧レベルを検出するトランス巻線N3とを備え、前記トランス巻線N3には始動パルス発生回路7にて発生した始動パルス電圧のピーク値に相当する値を検出することができる始動パルス相当値検出回路16を接続し、この始動パルス相当値検出回路16により間接的に始動パルス電圧のピーク値を検出し、前記制御回路9により始動パルス発生回路7を制御することで始動パルス電圧を所望の値に調整することを特徴とするものである。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、始動パルス相当値検出回路は始動用高電圧波形のパルス幅を検出するパルス幅検出回路16であることを特徴とする(図1、図3)。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1の発明において、始動パルス相当値検出回路は始動用高電圧波形の傾きを検出するパルス傾き検出回路17であることを特徴とする(図8、図9)。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1の発明において、始動パルス相当値検出回路は少なくとも1つ以上の基準値レベルを持ち、始動用高電圧波形と前記基準値レベルとを比較するパルスレベル検出回路18であることを特徴とする(図10、図11)。
【0013】
請求項5の発明は、請求項1〜4の発明において、管灯長が少なくとも2m以上であることを特徴とする(図13)。
【0014】
請求項6の発明は、請求項1〜5のいずれかの高圧放電灯点灯装置を備える照明器具である(図12)。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、パルス電圧のピーク値を間接的に検出することにより精度の高い電圧低減回路は必要なく、安価な回路構成とすることができる。また回路構成が簡素化されることにより、検出回路部品のばらつきや温度特性等の影響が少なくなり、正確な検出が可能となると共に、より精度の高いパルス電圧の安定性が得られることとなる。
【0016】
請求項2の発明によれば、パルス電圧のピーク値に相当する検出値を得るために、比較的低い電圧領域でのパルス幅を検出するだけで良いため、検出回路としてマイコン等の高精度の計測手段を用いることができる。
【0017】
請求項3の発明によれば、パルス電圧のピーク値に相当する検出値を得るために、比較的低い電圧領域での電圧波形の傾きを検出するだけで良いため、検出回路としてマイコン等の高精度の計測手段を用いることができる。
【0018】
請求項4の発明によれば、パルス電圧のピーク値に相当する検出値を得るために、多段階の基準電圧レベルとの大小関係を比較するだけで良いため、検出回路の構成を簡単化できる。
【0019】
請求項5,6の発明によれば、施工性が高まったり、安定器の一括設置が可能となり、安定器の一括点検が可能となる等の利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
(実施形態1)
本発明の実施形態1の回路図を図1に示す。商用交流電源1は電力変換回路Bにより所定の直流電圧に変換される。電力変換回路Bは、例えば、商用交流電源1を整流する全波整流器と、その整流出力を昇圧する昇圧チョッパ回路と、昇圧チョッパ回路の出力を降圧する降圧チョッパ回路とから構成されている。電力変換回路Bの出力電圧はコンデンサC4に充電されて、スイッチング素子Q3〜Q6よりなるフルブリッジ回路に印加される。このフルブリッジ回路は、スイッチング素子Q3,Q4の直列回路と、スイッチング素子Q5,Q6の直列回路を並列接続したものであり、スイッチング素子Q3,Q6がオンの期間と、スイッチング素子Q4,Q5がオンの期間とが低周波で交番することにより、コンデンサC4の電圧を低周波の矩形波電圧に変換して負荷回路に供給するものである。
【0021】
負荷回路は始動パルス発生回路7と高圧放電灯8よりなる。スイッチング素子Q3,Q4の接続点にはパルストランスT1の1次巻線N1と2次巻線N2の各一端が接続されている。パルストランスT1の2次巻線N2の他端は所定長さの配線部82を介して高圧放電灯8の一端に接続されており、高圧放電灯8の他端は所定長さの配線部82を介してスイッチング素子Q5,Q6の接続点に接続されている。スイッチング素子Q5,Q6の接続点にはコンデンサC1の一端が接続されており、コンデンサC1の他端とパルストランスT1の1次巻線N1の他端との間には、スイッチング素子Q7と抵抗Rcの並列回路が接続されている。パルストランスT1の3次巻線N3は一端を接地され、他端の電圧をパルス幅検出回路16により監視されている。
【0022】
次に図1の回路の動作を説明する。図1の回路図では、電源を投入すると電力変換回路Bが動作を開始する。電力変換回路Bは、内部の整流回路により商用交流電源1を整流し、内部の昇・降圧チョッパー回路により所定の直流電圧を出力する。最初にスイッチング素子Q3,Q6が同時にONすることによりトランスT1の1次巻線N1、充電抵抗Rcを介してコンデンサC1が充電される。その後、スイッチング素子Q3,Q6はOFFとなり、次にスイッチング素子Q4,Q5が同時にONされることによりコンデンサC1に充電された電圧とコンデンサC4の電圧が足された電圧がスイッチング素子Q7に印加されることになる。その後、所定のタイミングでスイッチング素子Q7をONさせることにより、コンデンサC1、スイッチング素子Q7、1次巻線N1に電流が流れ、1次巻線N1にパルス電圧が誘起される。1次巻線N1と2次巻線N2の巻数比により2次巻線N2に更に高電圧が発生する。この高電圧が高圧放電灯8を点灯するために必要な始動用パルス電圧となる。
【0023】
パルストランスT1の3次巻線N3には2次巻線N2に発生した高電圧を検出するための検出電圧(2次巻線N2と3次巻線N3の巻数比分)が発生する。パルス幅を検出するパルス幅検出回路16は、3次巻線N3に発生した検出電圧の立ち上がりゼロクロスを検出し、その後、検出電圧の立ち下がりのゼロクロスを検出したときまでの経過時間をカウントできるタイマー回路を搭載したマイコンなどで構成できる。したがって、パルス幅検出回路16はパルス電圧の振幅の高低については厳密に計測できる必要は無く、部品定数のばらつきに起因する検出値のばらつきを回避しやすい。
【0024】
図2にパルス電圧ピーク値と管灯長との関係を示す。一般的に管灯長が延長されるにつれてパルス電圧のピーク値は低下する。図3にパルス電圧ピーク値とパルス電圧ゼロ値幅との関係を示す。パルス電圧ピーク値が下がるにつれてパルス電圧のゼロ値幅は長くなっていることが確認できる。図4〜図7に管灯長を延長した際の実際のパルス電圧ピーク値とパルス幅を測定した波形を示す。パルス幅検出回路16は、図4〜図7の波形図に例示するように、パルス電圧が上昇を開始した時点からパルス幅のカウントを開始し、パルス電圧が実質的にゼロ電圧に戻った時点でパルス幅のカウントを終了する機能を備えている。パルス幅検出回路16は検出されたパルス電圧のゼロ値幅を判定し、その判定結果に応じて制御回路9によりスイッチング素子Q7のONタイミングやON時インピーダンスを制御する。
【0025】
ここで、フルブリッジ回路の極性反転後、スイッチング素子Q7がONするタイミングを遅くすればコンデンサC1の電圧が抵抗Rcを介する緩やかな放電により少し減衰してからパルス電圧を発生させることになるので、パルス電圧のピーク値を低く制御することができる。逆に、フルブリッジ回路の極性反転後、速やかにスイッチング素子Q7がONすればコンデンサC1の電圧が減衰する前にパルス電圧を発生させることになるので、パルス電圧のピーク値を高く制御することができる。
【0026】
このスイッチング素子Q7のONタイミングの制御に代えて、あるいはONタイミングの制御と共に、スイッチング素子Q7のON時のインピーダンスを可変とすれば、さらに精度良くパルス電圧のピーク値を可変制御することができる。例えば、スイッチング素子Q7のON時のインピーダンスを高くすれば、ピーク値が低く幅の広いパルス電圧が発生し、インピーダンスを低くすれば、ピーク値が高く幅の狭いパルス電圧が発生する。
【0027】
パルス電圧のピーク値を可変制御する手段はこれらに限定されるものではなく、パルス幅検出回路16の検出結果を電力変換回路BにフィードバックしてコンデンサC4の電圧を可変としても良い。あるいは、フルブリッジ回路のスイッチング素子Q3〜Q6の極性反転までの時間を可変制御することにより、コンデンサC1の充電電圧を可変としても良い。
【0028】
【表1】

【0029】
【表2】

【0030】
図2の管灯長とパルス電圧の関係を表で示すと表1のようになる。ここで、パルス電圧の検出値については2次巻線N2との巻数比により降圧された3次巻線N3の検出電圧よりも元々のパルス電圧の方が高圧放電灯8の絶縁破壊電圧との関係が分かりやすいため降圧前のパルス電圧にて表記する。また、図3のパルス電圧とパルス幅の関係を表で示すと表2のようになる。実際にはパルス幅は3次巻線N3の検出電圧のゼロ値幅を検出することになる。
【0031】
仮に始動用パルス電圧が高圧放電灯8の絶縁破壊特性より4.0kV以上必要だとした場合、パルス幅検出回路16により検出したパルス電圧のゼロ値幅が図3のグラフより1.75μsec以上の場合はパルス電圧のピーク値は不十分であり、高圧放電灯8は始動・点灯しないことになる。よって、スイッチング素子Q7のONタイミングあるいはON時インピーダンスを制御回路9にて可変制御し、パルス電圧のゼロ値幅が1.75μsec以下となるように制御する。
【0032】
ここで制御した値は次回のパルス発生時にも適用されるように制御回路9にて保持すると良い。制御回路9がEEPROM内蔵のマイコンで構成されている場合、EEPROMに記憶させておくことにより制御回路9にて保持することができる。
【0033】
パルス電圧のゼロ値幅を1.75μsec以下となるように制御した結果、図3の相関関係よりパルス電圧のピーク値を4.0kV以上確保でき、高圧放電灯8を始動・点灯させることが可能になる。
【0034】
なお、図1では検出巻線をパルストランスT1の3次巻線N3としているが、これは検出用の独立したトランスを用いても良い。例えば、パルストランスT1の1次巻線N1または2次巻線N2と並列に、あるいは高圧放電灯8への一対の配線部82の根元部分に検出用の独立したトランスを設けても構わない。
【0035】
本実施形態によれば、パルス電圧のピーク値に相当する検出値を得るために、低い電圧領域での電圧波形のゼロ値幅を検出するだけで良いため、高い電圧領域のパルス電圧成分については例えばツェナーダイオード等の電圧保護素子によりクランプしても良く、検出回路としてマイコン等の高精度の計測手段を用いることができる利点がある。
【0036】
(実施形態2)
本発明の実施形態2の回路図を図8に示す。本実施形態では、図1のパルス幅検出回路16に代えて、高圧放電灯8を点灯させるために必要なパルス電圧の傾きを検出するパルス傾き検出回路17を備えている。パルス電圧の傾きを検出するパルス傾き検出回路17とは、まず、パルス電圧の立ち上がりゼロクロスを検出し、その後、タイマー回路により一定時間経過後(ここでいう一定時間とは少なくともパルス電圧波形が立ち上がりゼロクロスからピークに至るまで)の電圧を検出する(すなわちdv/dtを検出する)ことができるマイコンなどで構成できる。その他の構成及び動作については実施形態1と同様である。
【0037】
図9にパルス電圧のピーク値とパルス電圧の上昇時の傾きとの関係を示す。パルス電圧のピーク値が下がるとパルス電圧の傾きは緩くなっていることが確認できる。図4〜図7に管灯長を延長した際の実際のパルス電圧のピーク値(kV)とゼロ値幅(μs)と傾き(V/ns)を測定した波形を示す。波形図そのものは実施形態1と同じである。
【0038】
配線部82の延長が無い時(管灯長0m)では、図4に示すように、パルス電圧のピーク値4.72kV、ゼロ値幅1.58μs、傾き12.94V/nsである。管灯長1mでは、図5に示すように、パルス電圧のピーク値4.32kV、ゼロ値幅1.66μs、傾き9.60V/nsである。管灯長3mでは、図6に示すように、パルス電圧のピーク値3.92kV、ゼロ値幅1.76μs、傾き7.17V/nsである。管灯長5mでは、図7に示すように、パルス電圧のピーク値3.28kV、ゼロ値幅1.96μs、傾き5.23V/nsである。パルス電圧のピーク値とパルス電圧の上昇時の傾きの関係を表に示すと、表3のようになる。
【0039】
【表3】

【0040】
仮に始動用パルス電圧が高圧放電灯8の絶縁破壊特性より4.0kV以上必要だとした場合、パルス傾き検出回路17により検出したパルス電圧の傾きが図9のグラフより8V/ns以下の場合は不十分であり、高圧放電灯8は始動・点灯しないことになる。そこで、パルス電圧の傾きが8V/ns以上となるように制御回路9によりスイッチング素子Q7のONタイミング等を制御する。ここで制御した値は次回のパルス発生時にも適用されるように制御回路9にて保持すると良い。
【0041】
パルス電圧の傾きを8V/ns以上に制御した結果、図9の相関関係よりパルス電圧のピーク値を4.0kV以上確保でき、高圧放電灯8を始動させることが可能となる。
【0042】
本実施形態によれば、パルス電圧のピーク値に相当する検出値を得るために、低い電圧領域でのパルス電圧波形の傾きを検出するだけで良いため、高い電圧領域のパルス電圧成分については例えばツェナーダイオード等の電圧保護素子によりクランプしても良く、検出回路としてマイコン等の高精度の計測手段を用いることができる利点がある。
【0043】
(実施形態3)
本発明の実施形態3の回路図を図10に示す。本実施形態では、図1のパルス幅検出回路16に代えて、高圧放電灯8を点灯させるために必要なパルス電圧のレベルを検出するパルスレベル検出回路18を備えている。パルスレベル検出回路18は、図11に示すように、複数段階の基準レベルを備え、3次巻線N3に発生したパルス電圧が設定された基準レベルのいずれかを超えた時点で対応する検出回路にトリガが入り、トリガされた検出回路はHi信号を出力するように構成されている。表4に示すように、各検出回路から出力されるHi信号のパターンに応じてパルス電圧の補正値を決定する。その他の構成及び動作については実施形態1と同様である。
【0044】
【表4】

【0045】
図11にパルス電圧ピーク値と基準レベルとの関係を示す。図中の実線で示すA波形(ピーク値4.2kV)、一点鎖線で示すB波形(ピーク値3.7kV)、破線で示すC波形(ピーク値3.2kV)について、複数の基準レベル(4.0kV、3.5kV、3.0kV)との比較結果に基づいた補正値の具体例を表4に示す。
【0046】
仮に始動用高電圧が高圧放電灯8の絶縁破壊特性より4.0kV以上必要だとした場合、表4のパターン2、3のような状態が検出されれば、パルス電圧は不足しており、高圧放電灯を点灯させることができないため、表4に基いた補正値が加算されるようにスイッチング素子Q7のONタイミング等を制御回路9にて制御する。
【0047】
具体的には、パルスレベル検出回路18に図11の基準レベル1、2、3を設定しておく。基準レベルの数及び設定値は任意でよい。例えば、パルス電圧として図11のA波形が観測された場合には、基準レベル1、2、3を全て越えるので、表4に示すように、各検出回路の出力がHiとなる。この場合、高圧放電灯8が必要とするパルス電圧のピーク値が確保できているとみなし、補正は行なわない。
【0048】
次に、パルス電圧として図11のB波形が観測された場合には、基準レベル2、3に対応する検出回路の出力がHiとなり、基準レベル1に対応する検出回路の出力はLowとなる。この場合、高圧放電灯8が必要とするパルス電圧のピーク値が確保できていないとみなす。但し、基準レベル2に対応する検出回路の出力がHiになっていることにより3.5kV以上は確保できているため、補正する値は+500Vとする。
【0049】
次に、パルス電圧として図11のC波形が観測された場合には、基準レベル3に対応する検出回路の出力がHiとなり、基準レベル1、2に対応する検出回路の出力はLowとなる。この場合も高圧放電灯8が必要とするパルス電圧のピーク値が確保できていないとみなす。但し、基準レベル3に対応する検出回路の出力がHiになっていることにより3.0kV以上は確保できているため、補正する値は+1000Vとする。
【0050】
このような多段階の基準レベルとの比較によるレベル検出により不足分を補うようにパルス電圧のピーク値を補正することにより、高圧放電灯8が必要とするパルス電圧のピーク値を確保できることになる。当然、基準レベルの設定を細分化することによりパルス電圧の補正も細分化される。
【0051】
ここで制御した値は次回のパルス発生時にも適用されるように制御回路9にて保持すると良い。
【0052】
なお、図10のパルスレベル検出回路18はパルス電圧の高さ(振幅)だけでなく、パルス電圧のゼロ値幅やパルス傾きなど、直接もしくは間接的にパルス電圧の高さを検出する場合の検出手段として用いてもよい。
【0053】
以上の各実施形態においては、高圧放電灯8に矩形波電力を供給する矩形波出力回路として、スイッチング素子Q3〜Q6のフルブリッジ回路よりなる極性反転回路と、この極性反転回路に所定の直流電圧を供給する電力変換回路Bの組み合わせを用いたが、極性反転回路の構成はフルブリッジ回路に代えてハーフブリッジ回路を用いても構わない。また、フルブリッジ回路またはハーフブリッジ回路の極性反転用のスイッチング素子を電力変換用のスイッチング素子として兼用することにより、電力変換回路と極性反転用のブリッジ回路とを一体化しても構わない。
【0054】
(実施形態4)
図12は本発明の高圧放電灯点灯装置を用いた照明器具の構成例を示す。図中、8は高圧放電灯、81は高圧放電灯を装着した灯体、82は配線部、83は点灯装置の回路を格納した安定器である。これらの照明器具を複数組み合わせて照明システムを構築しても良い。これらの点灯装置として前述の実施形態1〜3のいずれかの高圧放電灯点灯装置を用いることで、始動パルスのピーク値を適正化でき、配線部82が長くても始動可能となる。
【0055】
図13は本発明によるパルス電圧のピーク値の補正の概要を示す。図中、◆は補正無しの場合、□は実施形態1または2によるパルス電圧のゼロ値幅または電圧傾きの検出による補正有りの場合、▲は実施形態3による多段階の基準レベルとの比較結果に基づく補正有りの場合の特性を示している。実施形態3では、管灯長が1mでは補正無し、3mでは+500V、5mでは+1kVの補正を付与している。
【0056】
出力線長を延長しても始動パルス電圧の減衰しない本発明の高圧放電灯点灯装置を搭載することで、配線部82を例えば1m〜5mの範囲で延長することが可能となり、施工性が高まったり、安定器83の一括設置が可能となり、電源線の引き回し距離が短くできたり、安定器83の一括点検が可能となる等の利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施形態1の回路図である。
【図2】本発明の実施形態1のパルス電圧と管灯長の関係を示す動作説明図である。
【図3】本発明の実施形態1のパルス電圧とパルス幅の関係を示す動作説明図である。
【図4】本発明の実施形態1,2の管灯長0m時の始動パルス電圧の波形図である。
【図5】本発明の実施形態1,2の管灯長1m時の始動パルス電圧の波形図である。
【図6】本発明の実施形態1,2の管灯長3m時の始動パルス電圧の波形図である。
【図7】本発明の実施形態1,2の管灯長5m時の始動パルス電圧の波形図である。
【図8】本発明の実施形態2の回路図である。
【図9】本発明の実施形態2のパルス電圧と傾きの関係を示す動作説明図である。
【図10】本発明の実施形態3の回路図である。
【図11】本発明の実施形態3の動作説明図である。
【図12】本発明の実施形態4の照明器具の概略構成図である。
【図13】本発明の実施形態4の照明器具の動作説明図である。
【図14】従来例1の回路図である。
【図15】従来例2の回路図である。
【符号の説明】
【0058】
B 電力変換回路
T1 トランス
N1 1次巻線
N2 2次巻線
N3 検出巻線
7 始動パルス発生回路
8 高圧放電灯
9 制御回路
16 パルス幅検出回路
17 パルス傾き検出回路
18 パルスレベル検出回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧放電灯に矩形波交流電力を供給する矩形波出力回路と、高圧放電灯を点灯させるために必要な始動用高電圧を発生させる始動パルス発生回路と、この始動パルス発生回路を制御する制御回路とを備えた高圧放電灯点灯装置において、前記始動パルス発生回路は、少なくともコンデンサとトランスの1次巻線とスイッチング素子の直列接続からなるトランス1次巻線回路と、前記トランスの1次巻線に発生する電圧を昇圧して高圧放電灯に高圧パルスを印加するトランス2次巻線回路と、前記トランスに発生する高圧パルスの電圧レベルを検出するトランス巻線とを備え、前記トランス巻線には始動パルス発生回路にて発生した始動パルス電圧のピーク値に相当する値を検出することができる始動パルス相当値検出回路を接続し、この始動パルス相当値検出回路により間接的に始動パルス電圧のピーク値を検出し、前記制御回路により始動パルス発生回路を制御することで始動パルス電圧を所望の値に調整することを特徴とする高圧放電灯点灯装置。
【請求項2】
請求項1において、始動パルス相当値検出回路は始動用高電圧波形のパルス幅を検出することを特徴とする高圧放電灯点灯装置。
【請求項3】
請求項1において、始動パルス相当値検出回路は始動用高電圧波形の傾きを検出することを特徴とする高圧放電灯点灯装置。
【請求項4】
請求項1において、始動パルス相当値検出回路は少なくとも1つ以上の基準値レベルを持ち、始動用高電圧波形と前記基準値レベルとを比較することを特徴とする高圧放電灯点灯装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかにおいて、管灯長が少なくとも2m以上であることを特徴とする高圧放電灯点灯装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の高圧放電灯点灯装置を備える照明器具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2009−238382(P2009−238382A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−79043(P2008−79043)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】