説明

高圧燃料ガス貯蔵装置の気密性評価方法およびシステム

【課題】燃料ガスと異なる試験ガスの使用を必要とせず、リーク試験を定期的にかつ燃料ガス貯蔵装置の寿命にわたって体系的に行うことができ、簡易にかつ低コストで、高圧燃料ガス貯蔵システムの気密性を評価することができるシステムを提供する。
【解決手段】配管およびタンクを含みかつチェックバルブが配管とタンクの間に設置された、車両燃料用の高圧燃料ガス貯蔵装置の気密性を評価するシステムであって、当該システムが、充填ホースまたは配管への接続に適した圧力測定装置と、圧力測定装置の測定値を処理する装置と、処理装置から供給された情報を表示する装置とを含み、圧力測定装置の測定値を処理する前記装置が、給油所から燃料ガス貯蔵装置への充填を制御および一時中断する手段と、充填速度を制御する手段と、時計と、充填が一時中断されている所定期間において測定した圧力を所定の閾値Siと比較する手段と、を含むシステム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接続した充填ホースを通って給油所(filling station)から供給される燃料ガスを高圧下で貯蔵する、配管および少なくとも一つのタンクを含む燃料ガス貯蔵装置の気密性を評価する方法およびシステムに関する。
【0002】
本発明はまた、特に、燃料天然ガスをタンクに充填することに関し、また、例えば圧力が約200バールであってよい、オンボード高圧リーク試験システムに関する。
【背景技術】
【0003】
従来の種々のシステムとして、常圧の液体燃料(例えば、ディーゼル燃料、ガソリン等)を含むタンクのリーク試験が知られている。
【0004】
そのようなシステムにおいては、作業は、メンテナンス中の車両において行われ、使用時になって接続する特定の部材を必要とし、また、充填装置端部と加圧不活性ガス源との間の気密接続を確保するために、特殊な接続部材を必要としている。タンクを、その上流にある配管と共に加圧した後、システムの圧力変化をモニターし、リークに特徴的な圧力降下を検出することが可能であるのだが、このようなリーク試験システムは、タンクを前もって空にする必要があるか、または液体が充填されていないタンク内部の空所の体積を決定する必要があるため、容易に使用することは困難であった。
【0005】
車両用天然ガス(NGV)を対象とした車両リーク試験もまた、提案されている。しかし、試験は、車両製造時に行われるものであり、燃料とは異なる不活性ガスを用いたガス貯蔵システムを加圧して行われるものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記先行技術の問題点に鑑み、本発明は、燃料ガスと異なる試験ガスの使用を必要とせず、リーク試験を定期的にかつ燃料ガス貯蔵装置の寿命にわたって体系的に行うことができ、簡易にかつ低コストで、高圧燃料ガス貯蔵システムの気密性を評価することができる方法およびシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成した本発明は、車両用燃料として使用され、接続した充填ホースを通って給油所から供給される燃料ガスを、高圧下で貯蔵する、配管および少なくとも一つのタンクを含む燃料ガス貯蔵装置の気密性を評価する方法であって、以下の工程を含むことを特徴とする。
a)給油所から燃料ガスを供給して燃料ガス貯蔵装置を充填する際に、充填ホース、配管およびタンクに、給油所から少なくとも5バールよりも高い圧力で圧力をかけ、制御された流速Qiで充填を行い、圧力Piの変化を測定し、
b)加圧開始後、第1の所定の瞬間tiにおいて、充填作業を減圧することなく一時中断し、第2の所定の瞬間tjまで圧力Pjの変化を測定し続け、所定の閾値Siと圧力Piとを比較し、第1および第2の所定の瞬間tiおよびtj間で所定の閾値Siよりも圧力が減少または降下している場合には、リークの存在を通知し、第1および第2の所定の瞬間tiおよびtj間で所定の閾値Siよりも高く圧力が維持されている場合には、充填作業を再開し、充填作業の正常終了時を含むその後の各瞬間において、リークが存在する場合にはその度ごとに検出できるように、充填作業の一時中断の後、所定の継続時間の間における、所定の閾値と圧力変化との照合を繰り返す。
【0008】
好ましい態様では、燃料ガス貯蔵装置に給油所の充填ホースを接続する前に、本発明の方法は、少なくとも5バールよりも大きい所定の圧力を充填ホースにかけ、所定の圧力に達する瞬間t0iにて、圧力を減少させることなく加圧を一時中断し、第2の所定の瞬間t0jまで圧力変化を測定し、所定の閾値S0iと圧力の瞬間値Piとを比較し、第1および第2の所定の瞬間t0iおよびt0j間で所定の閾値S0iよりも圧力が減少または降下している場合には、給油所または充填ホースにリークが存在することを通知し、第1および第2の所定の瞬間t0iおよびt0j間で所定の閾値S0iよりも高く圧力が維持されている場合には、以前に達していた圧力よりも高い所定の圧力まで充填ホースを加圧する作業を繰り返し行い、加圧を一時中断する作業、およびリークが存在する場合には今回においても検出できるように所定の継続時間の間における所定の閾値に対する圧力変化をモニターする作業を繰り返し行い、給油所の最大作業圧力に達するまで、圧力変化のモニタリングを行いながら加圧と一時中断の新たな作業を行うことを含む。
【0009】
制御された充填速度Qiで給油所から燃料ガス貯蔵装置に充填する第一の工程の間、圧力Piの変化を、時間の関数として測定し、傾きに不連続性が検出された場合には、配管からリークが発生していることが推定できる。
【0010】
このような状況においては、リーク位置を見つけることは容易である。
【0011】
本発明の別の側面では、リークの規模を割り出すために、燃料ガス貯蔵装置からリークが検出された場合には、充填作業を、圧力変化のモニタリングを続けながら、制御された充填速度が連続して増加するように調整された状態で繰り返し、制御された充填速度の2つの連続した増加の後に、最初圧力が一定の水平なステージと次に圧力が増加した傾きのあるステージが検出された場合には、リークは、小リークまたは中リークのカテゴリーである、と分類し、リーク速度を、前記一定圧力の水平なステージに至った制御された充填速度から割り出す。
【0012】
燃料ガス貯蔵装置からリークが検出された場合は、充填作業を、圧力変化のモニタリングを続けながら、制御された充填速度が連続して増加するように調整された状態で繰り返し、充填速度の値に無関係に圧力が安定せず常に増加するのが観測された場合には、リークは、極小リークのカテゴリーである、と分類する。
【0013】
燃料ガス貯蔵装置からリークが検出された場合は、充填作業を、圧力変化のモニタリングを続けながら、制御された充填速度が連続して増加するように調整された状態で繰り返し、充填速度の値に無関係に圧力が上昇しないのが見つかった場合には、リークは極度の大リークのカテゴリーである、と分類する。
【0014】
燃料ガス貯蔵装置からリークが検出された場合は、リークの規模を特定するカテゴリーを識別し、配管とタンクとの間にチェックバルブがあることを確認した後、圧力が降下した速度を分析して配管とタンクのそれぞれの体積に依存する閾値Svと比較し、圧力降下速度が閾値Svよりも大きい場合には配管から、圧力降下速度が閾値Svよりも小さい場合にはタンクから、リークが生じていると識別する。
【0015】
本発明の方法は、車両用燃料として用いられる天然ガスの貯蔵装置のリーク試験に適用した場合に特に有用である。
【0016】
本発明の方法は、給油所で燃料ガスを充填する各作業において、気密性の大まかな評価を簡易に行うことを可能にすると同時に、リークが発見された際に、リークの規模の分類、およびリークがタンクから発生しているのかタンクに供給する配管から発生しているのかの区別もまた可能にする。
【0017】
本発明はまた、車両用燃料として使用され、接続した充填ホースを通って給油所から供給される燃料ガスを、高圧下で貯蔵する、配管および少なくとも一つのタンクを含みかつ少なくとも一つのチェックバルブが配管とタンクとの間に設置された燃料ガス貯蔵装置の気密性を評価するシステムであって、当該システムが、充填ホースまたは配管への接続に適した圧力測定装置と、圧力測定装置により測定された値を処理する処理装置と、処理装置から供給された情報を表示する表示装置とを含み、圧力測定装置により測定された値を処理する前記処理装置が、給油所から燃料ガス貯蔵装置への充填を制御および一時中断する手段と、充填速度を制御する手段と、時計と、充填が一時中断されている所定期間において測定した圧力を所定の閾値Siと比較する手段と、を含むことを特徴とするシステムを提供する。
【0018】
給油所と充填ホースの完全性のチェックを自己診断することが可能な本発明の好ましい態様では、圧力測定装置により測定された値を処理する装置は、燃料ガス貯蔵装置が接続されていない場合に、給油所に接続している充填ホースを制御して所定の参照圧力値まで加圧し、この加圧を一時中断し、そして、選択的に、加圧を一時中断した後に給油所のリークの存在を表示するか、以前の所定の参照圧力値よりも高い新たな所定の参照圧力値まで充填ホースを再加圧する手段をさらに含む。
【0019】
本発明の別の好ましい態様では、圧力測定装置により測定された値を処理する装置は、圧力測定装置により測定された圧力降下速度を解析する手段と、配管およびタンクのそれぞれの体積に依存する閾値Svと前記圧力降下速度とを比較する手段とをさらに含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の他の特徴および効果を、例と添付の図面を参照し、特定の実施態様について説明しながら以下に示す。
【0021】
図1は、車両に用いられ、車両用天然ガス(NGV)と呼ばれる圧縮天然ガス(CNG)などのガス燃料を高圧下で貯蔵するための装置(配管、タンク)の気密性を評価するための、本発明の気密性診断システムの原理を示す概略図である。
【0022】
圧縮天然ガスは、例えばタンク60のようなタンクを充填するために、使用者がそれに接続可能な柔軟性の充填ホース20を備えたターミナルを有する給油所10にて、得られる。
【0023】
本発明において、車両タンクなどの1またはそれ以上のタンク60は、充填ホース20との接続に適した配管30に接続されており、充填ホース20は給油所10に接続されており、本質的に、圧力ゲージ51、マイクロコンピュータなどの処理回路50、およびマイクロコンピュータの一部を構成してもよく、処理回路から独立したユニットを構成していてもよい表示ユニット70を含む気密性診断システムと協働する。流速計46は、好ましくは、タンク60に接続された配管に配置される。配管30は、とりわけ、可変絞りの電磁バルブ35を含む。
【0024】
図2は、リーク試験システムを、少なくとも一つの貯蔵タンク12または一つの圧縮機と、高圧供給のために柔軟性のホース20に接続された供給ターミナル11とを含む給油所10の近くに配置された、特定の高圧燃料ガス貯蔵装置に適用した態様を示す。
【0025】
データ処理装置50および表示ユニット70は、給油所10内に配置され、そして、高圧供給ホース20内の圧力を測定する圧力測定装置52より、またはタンク60をホース20に接続するためのパイプ38内の圧力を測定する圧力測定装置51より供給される圧力データを受け取る。
【0026】
タンク60は、温度ヒューズ37を備えた通気パイプ、および供給パイプ38に停止状態ではチェックバルブとして機能するポリバルブを含む。ポリバルブは、手動バルブ34、電磁バルブ35、および流量リミッター36を含んでいてもよい。
【0027】
ポリバルブの上流で、パイプは、任意のチェックバルブ33、二重リング継手を備えていてもよい任意のCNG T−フィルタ32、および高圧供給ホース20と接続するための充填端部31を含んでいてもよい。ポリバルブの上流で、剛体のまたは柔軟性のパイプ39は、インラインCNGフィルタ41、電磁バルブ42、およびエキスパンダ43に接続され、上記装置を搭載した車両が給油所を離れて運行している時はタンク60からCNGが供給される注入装置45に、CNGを供給するための柔軟性のホース44によって長く伸びている。
【0028】
本発明のリーク試験システムの機能的部材について、本発明の方法の種々の工程を示しながら、図3のフローチャートを参照して、以下説明する。
【0029】
本発明は、第一に、通常、車両の高圧部の気密性を評価するために用いられ、1またはそれ以上のタンクと、給油所に接続するための配管とを含み、第二に、リークが検出された場合に、リークをその規模に応じたカテゴリーに分類し、最終的に、リークがタンクから生じているのか、配管から生じているのかを決定するのに用いられる。
【0030】
リークがある場合には、リークは、流速により特徴付けされ、流速は、圧力およびリークの起こっている開口部の大きさに依存している。
【0031】
リークは従って、時間あたりの立方メートル(Nm3/h)として表される(すなわち、標準状態の温度(273ケルビン(K))と圧力(101.3キロパスカル(kPa))に換算した時間あたりの立方メートルで表された体積流速に対応する)リーク速度の関数として、本質的に4つのカテゴリーに分けられる。
・極小リーク(流速0.02Nm3/h未満):継手の締め付けが不十分である(しかし、レンチは使用している)ときに生じるような、「1000 BULLES」(フランス製品名:漏れ検出液)でのみ通常検出することができるようなリーク。充填装置端部のガスケットが欠けている場合のリークも、このカテゴリーに入る。
・小リーク(流速0.2〜3Nm3/h):このリーク速度は、ポリバルブより下流側で、ポリバルブは閉じているが、パッキンの気密性が低下している場合によく観測される。端部のガスケットが削れている場合も、このカテゴリーのリークを起こす。
・中リーク(流速3〜10Nm3/h):この種のリークは、継手が手によってのみ締め付けられている場合によく起こる。
・大リーク(流速10Nm3/h超過):この種のリークは、配管の損傷により(場合によっては半径0.5ミリメートル(mm)程度の穴によって)起こり得る。
【0032】
気密性を点検するための本発明の方法およびシステムについて、本方法の主な工程を示す図3を参照しながら、以下説明する。
【0033】
工程101〜105は、給油所10およびホース20の自己診断手順に相当している。この自己診断手順は、車両の燃料ガス貯蔵装置への充填作業が行われておらず、充填端部31がホース20に接続されていない場合に、実施される。圧力ゲージ52が、ホース20内の圧力を測定するために用いられ、測定処理装置50に接続されている。
【0034】
自己診断作業は、周期的に、手動で、または自動的に開始されてもよく、異なる作業圧力P0、例えば、10バール、100バール、200バール等で行ってもよい。
【0035】
この自己診断手順の工程101は、給油所10とホース20とにより構成されるアセンブリを、圧力P0(約5バールより高い圧力)まで加圧することよりなる。瞬間t0iにおいて圧力P0に達したとき、加圧を一時中断するが、減圧は行わない。圧力変化を、所定の第2の瞬間t0jまで測定する(工程102)。瞬間t0jにおける圧力の瞬間値Piを、所定の閾値S0iと比較する(工程103)。工程104では、瞬間t0iおよびt0j間で所定の閾値Siよりも圧力が減少または降下しているかどうかを決定すべく試験を行う。もし、所定の閾値Siよりも圧力が減少または降下していた場合は、工程105では、給油所10およびホース20を含むアセンブリからリークが発生していると診断し、そして、車両への充填作業の前に、例えば、ホース20を交換するなどの予防措置をとればよい。
【0036】
診断および修理工程105の後、方法は、工程101に戻る。
【0037】
工程104の試験が、給油所10およびホース20を含むアセンブリにリークがないことを示す場合には、本方法は、工程111に進み、工程111では、ホース20をタンク60の端部31に接続した後、充填ホース20、配管30およびタンク60に、少なくとも5バールよりも高い圧力Pi、例えば7バールまで、制御された流速Qiで充填しながら、給油所10から圧力をかけ、圧力Piの変化を、時間の関数として測定する。
【0038】
工程117では、時間の関数として圧力Piの変化の傾きに不連続な部分があるかを確認する調査を行い、不連続な部分があった場合には、配管30からリークが生じているものと推定する。
【0039】
配管30にてリークがあるのに係わらず充填が開始された場合には、車両が停止しているとき、従って充填中にはチェックバルブとして機能する、手動制御バルブ34と電磁バルブ35と流量リミッター36とを有するポリバルブがあるのであれば、配管30内のガスは、車両の停止から充填開始まで漏洩する時間があったため、充填の開始時において、配管30とタンク60との間には、圧力差がある。この圧力差は、配管からガスが漏洩することによって生じたものである。
【0040】
工程111において、いったん制御された流速で充填が開始され、圧力を時間の関数としてプロットした曲線CのセグメントC1およびC2の間に、傾きの不連続性があった場合には(図5)、リークが配管で起きていると推定できる(工程118)。配管は体積が小さく、最初は(セグメントC1)、配管の圧力がタンクの圧力に達するまで圧力上昇が見られる。その後圧力は、はるかによりゆっくりと上昇し(セグメントC2)、その間は、充填を同じ速度で続ける。
【0041】
対照的に、タンクにリークがある場合には、タンクは配管30よりもはるかに大きな体積を有しているので、車両の停止から充填開始までの経過時間においてガスは、傾きの不連続性がその後観測できるのに十分なほどに、配管から漏洩することができない(図5の曲線DのセグメントD1がこれに当てはまる)。
【0042】
しかし、本発明の方法は、リークがタンクから起ころうが、配管から起ころうとも、確実にリークを検出することが可能である。
【0043】
この検出のために、工程111に続く工程112では、加圧開始後の所定の瞬間tiにおいて、圧力を減少させることなく充填作業を一時中断し、圧力Piの変化を、瞬間tjまでゲージ51を用いて測定し続ける。
【0044】
工程113では、測定した圧力Piを、所定の閾値Siと比較する。
【0045】
工程114では、瞬間tiおよびtj間で所定の閾値Siよりも圧力が減少または降下しているのが観測された場合には(図4の、時間の関数として圧力変化をプロットし、連続するセグメントB1、B2およびB3を有する曲線Bの、セグメントB2がこれに当てはまる)、リークの存在が通知され、本方法は、工程117または119へと進む。
【0046】
対照的に、工程114において、第1および第2の所定の瞬間tiおよびtj間で所定の閾値Siよりも高く圧力が維持されているのが観測された場合には(図4の、時間の関数として圧力変化をプロットし、連続するセグメントA1、A2およびA3を有する曲線Aの、セグメントA2がこれに当てはまる)、充填作業を圧力Paxにて再開し(工程115)、続いて、圧力Pstopでの充填作業の正常終了を含むその後の各瞬間において、リークが存在する場合にはその度ごとに検出できるように、充填作業の各一時中断の後、所定の継続時間の間における、所定の閾値と圧力変化の照合を行う(工程111〜115)。
【0047】
既に停止圧力Pstopに達した工程115の終了時にリークが検出されなかった場合は、工程116において、配管30およびタンク60を含む貯蔵装置が気密であり、満タンであることが表示される。
【0048】
リークが検出された工程114または工程117の後、本方法は、リークの規模を決定する工程119へと進む。
【0049】
リークの規模を決定するために、工程120において、リーク速度と充填速度のバランスがとれるように流速を調節しながら、圧力を再び上昇させる。制御された速度で再び充填することにより、圧力は閾値まで上昇する。この圧力と、リーク速度と釣り合いが取れた充填速度は、極小リーク、小リーク、中リークまたは大リークのような分類を可能とするリークの特徴となる(工程122)。
【0050】
従って、診断システムにおいて流速が制御されているのにも係わらず、圧力が安定せずに上昇を続ける場合には、リークは、極小リークのカテゴリーに分類される。もう一方の極端な場合として、流速に係わらず圧力が上昇しない場合には、リークは、大リークのカテゴリーに分類される。
【0051】
図6は、種々の制御された充填速度においてリークがある場合に、配管30内の圧力およびタンク60内の圧力について、それぞれ時間の関数として圧力変化をプロットした曲線EおよびFを示す。
【0052】
連続する瞬間t1、t2およびt3において、充填速度は増加している。充填速度の各増加の後には、E1およびE2のようなステージが存在しているのが見られる。上述のように、リークがある場合の曲線形状の変化は、リークの規模の特徴づけに役立つ。
【0053】
配管30および対応するタンク60に充填中に検出されるリークの規模の決定に採用される手順を、図6を参照しながら、以下、より詳細に説明する。
【0054】
上述のように、充填の開始時において、低い制御された流速Qiでシステムを加圧する(図4工程111)。連続する瞬間tiおよびtj間において圧力を測定しているとき、システムが気密でない場合には、充填速度は、開始時には小さく、リーク速度よりも小さいため、これら連続する瞬間tiおよびtjにおいて、ゲージ51または52で測定される圧力に、減少が観測される(図6の曲線Eの領域E0)。
【0055】
リーク速度を決定するために、図6の曲線Fに示されるようなタンク60内の規定の圧力値を与え、最初の制御された流速Qiで充填を行う最初の工程の後、供給バルブ(例、電磁バルブ35)を、瞬間t1、t2およびt3において、段階的に徐々に開いていき、配管30およびタンク60が充填されるようにする。供給バルブの各瞬間のバルブ位置を、流量計46(図1)により、調整またはモニターする。充填速度の各増加の際、図6の曲線Eの、制御された流速の増加に対応する瞬間t1およびt2の間の領域E1に示されるような圧力が安定した水平のステージが見られるまで、配管30内の圧力変化を測定する。当該プロセスにおいて、充填速度が0になる瞬間はない。
【0056】
領域E1の水平な圧力安定ステージは、充填速度がちょうどリーク速度と釣り合っていることに相当する。充填速度が瞬間t2において再び増加する場合、図6の曲線Eの領域E2に、わずかに増加を続けるステージが見られ、これは、充填速度がリーク速度よりも大きくなっているために、圧力にわずかな増加があることを意味する。
【0057】
従って、当該プロセス(図3の工程119、120および122)の終了時、小リークまたは中リークカテゴリーに分類されたリークは、圧力の水平ステージ(領域E1)に至った充填速度の値という形で、当該水平ステージの圧力の値により完全に分類することができる。
【0058】
制御された充填速度を増加させる調整操作が二回続けて行われた後に、圧力上昇の傾きのあるステージに続く安定圧力の水平ステージが観測できないという極端な状況では、リークを以下の極端なリークのカテゴリーに分類することができる。
【0059】
例えばtiおよびtjなどの連続する瞬間において診断システムにかけられた充填速度値がどんな値であっても、領域E1のような水平ステージによって圧力の安定が観測されず、領域E2のような右上がりの傾きステージのみである場合には、リークは、極小リークのカテゴリーに属すると分類される。
【0060】
対照的に、例えばtiおよびtjなどの連続する瞬間において診断システムにかけられた充填速度値と無関係に、領域E2のような上昇ステージが観測されなかった場合には、リークは、極度の大リークのカテゴリーに属すると分類される。
【0061】
工程121から125は、リークが配管から発生しているか、タンクから発生しているかその位置を特定する役割の工程である。
【0062】
パイプ30からのリークとタンク60からのリークの識別は、それらそれぞれの体積が大きく異なっており(これらの体積比は通常50よりも大きい)、車両の停止時よって充填作業中に、チェックバルブとして機能するポリバルブによりお互い隔離されているために、可能となっている。
【0063】
いったん工程122においてリークの規模が決定されると、工程123において、圧力降下時の速度が確認される。工程123において、急速な圧力降下が見られた場合(図5の曲線CのセグメントC3)、リークが、配管にある、または充填システムの連結部にあると推定される(工程124)。一方、工程123において、圧力降下がゆっくりであった場合(図5の曲線DのセグメントD2)、リークがタンクにあると推定される(工程2125)。
【0064】
概して、一定温度Tにおいて、時間の関数として測定された圧力変化の値dP/dtは、圧力とリーク規模の関数である瞬間的なリーク速度Qiに比例し、かつリーク体積Vに反比例し、以下の等式で表すことができる。
【0065】
【数1】

【0066】
ここで、Rは、理想気体定数である。
【0067】
上記数々の工程を有する本発明の方法は、例えば、7バール〜200バールに及んでもよいような、充填の開始から充填の終わりまでの圧力値の全範囲にわたって実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明のリーク試験システムの主な部材の図である。
【図2】本発明のリーク試験システムを高圧下でガスを貯蔵する特定の装置に適用した例を示す図である。
【図3】本発明のリーク試験方法の主な工程を示すフローチャートである。
【図4】ガス貯蔵装置が気密か否かを検出するよう働く本発明の方法の特定の工程において、圧力が時間の関数としてどのように変化するかを示すグラフである。
【図5】本発明の方法を実施し、配管からリークが生じた第一の場合と、タンクからリークが生じた第2の場合に、圧力が時間の関数としてどのように変化するかを示すグラフである。
【図6】充填速度を制御して増加させたときに、本発明の方法の特定の工程において、配管およびタンク内で、圧力が時間の関数としてどのように変化するかを示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用燃料として使用され、接続した充填ホース(20)を通って給油所(10)から供給される燃料ガスを、高圧下で貯蔵する、配管(30)および少なくとも一つのタンク(60)を含む燃料ガス貯蔵装置の気密性を評価する方法であって、以下の工程を含むことを特徴とする方法。
a)給油所(10)から燃料ガスを供給して燃料ガス貯蔵装置を充填する際に、充填ホース(20)、配管(30)およびタンク(60)に、給油所(10)から少なくとも5バールよりも高い圧力で圧力をかけ、制御された流速Qiで充填を行い、圧力Piの変化を測定し、
b)加圧開始後、第1の所定の瞬間tiにおいて、充填作業を減圧することなく一時中断し、第2の所定の瞬間tjまで圧力Pjの変化を測定し続け、所定の閾値Siと圧力Piとを比較し、第1および第2の所定の瞬間tiおよびtj間で所定の閾値Siよりも圧力が減少または降下している場合には、リークの存在を通知し、第1および第2の所定の瞬間tiおよびtj間で所定の閾値Siよりも高く圧力が維持されている場合には、充填作業を再開し、
充填作業の正常終了時を含むその後の各瞬間において、リークが存在する場合にはその度ごとに検出できるように、充填作業の一時中断の後、所定の継続時間の間における、所定の閾値と圧力変化との照合を繰り返す。
【請求項2】
前記燃料ガス貯蔵装置に給油所(10)の充填ホース(20)を接続する前に、少なくとも5バールよりも大きい所定の圧力を充填ホース(20)にかけ、所定の圧力に達する瞬間t0iにて、圧力を減少させることなく加圧を一時中断し、第2の所定の瞬間t0jまで圧力変化を測定し、所定の閾値S0iと圧力の瞬間値Piとを比較し、第1および第2の所定の瞬間t0iおよびt0j間で所定の閾値S0iよりも圧力が減少または降下している場合には、給油所(10)または充填ホース(20)にリークが存在することを通知し、第1および第2の所定の瞬間t0iおよびt0j間で所定の閾値S0iよりも高く圧力が維持されている場合には、以前に達していた圧力よりも高い所定の圧力まで充填ホース(20)を加圧する作業を繰り返し行い、
加圧を一時中断する作業、およびリークが存在する場合には今回においても検出できるように所定の継続時間の間における所定の閾値に対する圧力変化をモニターする作業を繰り返し行い、給油所(10)の最大作業圧力に達するまで、圧力変化のモニタリングを行いながら加圧と一時中断の新たな作業を行うことを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
制御された充填速度Qiで給油所(10)から燃料ガス貯蔵装置に充填する第一の工程の間、圧力Piの変化を、時間の関数として測定し、傾きに不連続性が検出された場合には、配管(30)からリークが発生していることを推定する請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記燃料ガス貯蔵装置からリークが検出された場合には、充填作業を、圧力変化のモニタリングを続けながら、制御された充填速度が連続して増加するように調整された状態で繰り返し、
制御された充填速度の2つの連続した増加の後に、最初圧力が一定の水平なステージと次に圧力が増加した傾きのあるステージが検出された場合には、リークは、小リークまたは中リークのカテゴリーである、と分類し、リーク速度を、前記一定圧力の水平なステージに至った制御された充填速度から割り出す請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記燃料ガス貯蔵装置からリークが検出された場合は、充填作業を、圧力変化のモニタリングを続けながら、制御された充填速度が連続して増加するように調整された状態で繰り返し、
充填速度の値に無関係に圧力が安定せず常に増加するのが観測された場合には、リークは、極小リークのカテゴリーである、と分類する請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記燃料ガス貯蔵装置からリークが検出された場合は、充填作業を、圧力変化のモニタリングを続けながら、制御された充填速度が連続して増加するように調整された状態で繰り返し、
充填速度の値に無関係に圧力が上昇しないのが見つかった場合には、リークは極度の大リークのカテゴリーである、と分類する請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記燃料ガス貯蔵装置からリークが検出された場合は、リークの規模を特定するカテゴリーを識別し、配管(30)とタンク(60)との間にチェックバルブがあることを確認した後、圧力が降下した速度を分析して配管(30)とタンク(60)のそれぞれの体積に依存する閾値Svと比較し、圧力降下速度が閾値Svよりも大きい場合には配管(30)から、圧力降下速度が閾値Svよりも小さい場合にはタンク(60)から、リークが生じていると識別する請求項4〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
車両用燃料として用いられる天然ガスの貯蔵装置のリーク試験に適用するものである請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
車両用燃料として使用され、接続した充填ホース(20)を通って給油所(10)から供給される燃料ガスを、高圧下で貯蔵する、配管(30)および少なくとも一つのタンク(60)を含みかつ少なくとも一つのチェックバルブ(34−36,33)が配管(30)とタンク(60)との間に設置された燃料ガス貯蔵装置の気密性を評価するシステムであって、当該システムが、充填ホース(20)または配管(30)への接続に適した圧力測定装置(51)と、圧力測定装置(51)により測定された値を処理する処理装置(50)と、処理装置(50)から供給された情報を表示する表示装置(70)とを含み、圧力測定装置(51)により測定された値を処理する前記処理装置(50)が、給油所(10)から燃料ガス貯蔵装置への充填を制御および一時中断する手段と、充填速度を制御する手段と、時計と、充填が一時中断されている所定期間において測定した圧力を所定の閾値Siと比較する手段と、を含むことを特徴とするシステム。
【請求項10】
圧力測定装置(51)により測定された値を処理する前記処理装置(50)が、燃料ガス貯蔵装置が接続されていない場合に、給油所(10)に接続している充填ホース(20)を制御して所定の参照圧力値まで加圧し、この加圧を一時中断し、そして、選択的に、加圧を一時中断した後に給油所(10)のリークの存在を表示するか、以前の所定の参照圧力値よりも高い新たな所定の参照圧力値まで充填ホース(20)を再加圧する手段をさらに含む請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
圧力測定装置(51)により測定された値を処理する前記処理装置(50)が、圧力測定装置(51)により測定された圧力降下速度を解析する手段と、配管(30)およびタンク(60)のそれぞれの体積に依存する閾値Svと前記圧力降下速度とを比較する手段とをさらに含む請求項9または10に記載のシステム。
【請求項12】
車両用燃料として用いられる天然ガスの貯蔵装置のリーク試験に適用するものである請求項9〜11のいずれか1項に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−349180(P2006−349180A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−167768(P2006−167768)
【出願日】平成18年6月16日(2006.6.16)
【出願人】(592204130)ガーズ・ドゥ・フランス (7)
【氏名又は名称原語表記】GAZ DE FRANCE
【Fターム(参考)】