説明

高容量の電気化学素子及びその製造方法

本発明は、充電区間の中にガスが発生するプラトー電位を有する電極活物質を前記プラトー電位以上まで充電する段階;及び、ガスを除去する段階を含む電気化学素子の製造方法を提供する。また、本発明は、充電区間の中にガスが発生するプラトー電位を有する電極活物質を前記プラトー電位以上まで充電してから、ガスを除去した電気化学素子を提供する。
本発明によれば、高容量を有するが、高容量を発揮するために、ガスが発生するプラトー電位以上まで充電しなければならない電極活物質において、ガス発生により高容量の電池の適用が困難した問題点を、プラトー電位以上に充電した後、ガス除去を行うことにより解決できる。すなわち、ガス発生により発生し得る電池の外観変化、寿命特性の減少、C−レート特性の減少等の問題点を解決し、以後の充電からはガスが発生するプラトー電位以上に充電して容量増加を確保できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充電区間の中にガスが発生するプラトー電位を有する電極活物質を適用した電気化学素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、移動通信及び情報電子産業の発達に伴い、高容量且つ軽量のリチウム二次電池の需要が継続的に増加している。ところが、移動機器の多機能化に従う移動機器のエネルギー消費量が増加することにより、電池のパワー増加及び容量増加が一層要望されている。また、高価且つ供給が極に制限されたCoの代りに、低価のNi、Mn、Fe等を使用するための研究が活発に進行されつつある。
【0003】
しかしながら、LiMnの場合は、LiCoOに比べて電池容量が20%程度低くて、高温でMnがディゾリューション(dissolution)される。また、LiNiOの場合は、LiCoOに比べてエネルギー密度は向上するが、安全性に問題がある。さらに、LiFePOの場合は、LiCoOに比べて容量が20%程度低くて、C−レートの特性に問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
充電区間の中にガスが発生するプラトー電位を有する電極活物質の場合、充電時にガスの発生前まで充電すれば容量が低くて、容量を高めるためにガス発生区間まで充電する場合、ガス発生により電池を構成出来ないという問題点があった。
【0005】
本発明者らは、実験により、ガスが発生するプラトー電位以上まで1番目充電した場合、多量のガスは発生するが、以後からはプラトー電位以上まで充電しても、多量のガスは発生しないことを見出した。
【0006】
よって、本発明は、これに基づいたもので、ガスが発生するプラトー電位以上に充電した後、ガス除去工程を行うことで、ガス発生による電池の外観変化、寿命特性の減少、C−レート特性の減少などの問題点を解決し、2度目充電からガスが発生するプラトー電位以上に充電して容量増加を確保できる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、充電区間(期間)の中にガスが発生するプラトー電位を有する電極活物質を前記プラトー電位以上まで充電する段階;及び、ガスを除去する段階を含む電気化学素子の製造方法を提供する。
【0008】
また、本発明は、充電区間(期間)の中にガスが発生するプラトー電位を有する電極活物質を前記プラトー電位以上まで充電した後、ガス除去を行う電気化学素子を提供する。
【0009】
本発明において、前記プラトー電位以上まで充電することは、1番目充電時に行うのが好ましい。
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明は、ガスが発生するプラトー電位以上まで電圧を高めて充電した後、発生したガスを除去して、電池を構成することを特徴とする。
【0012】
電極活物質として用いられる材料のうちでは、充放電の間、電極活物質内の構成成分の酸化数変化により現れる酸化/還元電位以上で一定区間のプラトー電位を有するものがある。
【0013】
一般に、このような電極活物質は、プラトー電位区間で酸素が発生する。これは、電圧上昇による物質の不安定性を安定化させる役割を果す。すなわち、1番目充電時、Liは、電極活物質を構成する遷移金属の酸化還元でない酸素離脱によりディインターカレーションされる。酸素が離脱されると、構造内に酸素及び金属間のチャージバランスが崩れ、これを解消するためにLiが離脱される。このように離脱されたLiは、放電時に電極活物質を構成する遷移金属(例、Mn)の酸化数が4+から3+に変化すると共に、正極に還元され得る。すなわち、O欠陥が発生した後(活性化の後)には、電極活物質を構成する遷移金属の酸化還元による充放電を行うことになる。このとき、4+から3+に還元される遷移金属(例、Mn)は、1番目充電時にはLiの挿入、離脱に関与しないものであったが、以後の充電時に充放電に関与しながら、それだけ可逆容量が増加できると考えられる。
【0014】
よって、ガスが発生するプラトー電位は、電極活物質を構成する遷移金属の酸化還元電位より高く存在する。
【0015】
前述したように、充電区間の中にガス(例えば、酸素)が発生するプラトー電位を有する電極活物質は、ガスが発生するプラトー電位以上に1番目充電時のみに多量のガスが発生するため、発生したガスを除去すれば、以後の充放電サイクルでガスが発生するプラトー電位以上に充電しても、多量のガスが発生するような問題点はない。よって、本発明により1番目充電時にガスが発生するプラトー電位以上に充電した後、ガス除去工程を行うと、2番目充放電サイクルからは、ガスが発生するプラトー電位以上に充電して、多量のガスが発生することなく容量増加を確保できる。
【0016】
さらに、ガスが発生するプラトー電位以上に充電した後、充電電圧を下げても、前記ガスが発生するプラトー電位以上に充電しない場合よりも、容量が大きく増加する(図5参照)。
【0017】
一般に、一定区間のプラトー電位において、電極活物質は、リチウムが不足した状態で構造的に活性化した状態になるため、非可逆的相転移と共に、ガスが発生すると考えられる。
【0018】
下記の化学式1で表される化合物を正極活物質として用い、電池を構成して充放電の実験を行うと、1番目充電時に4.4〜4.6Vのプラトーな酸化区間を有し、前記プラトー電位で多量のガスを形成する(図3及び図4参照)。
【0019】
すなわち、下記の化学式1で表される電極活物質において、高容量の特性を発揮するためには、プラトー電位以上充電して構造変形になるように活物質を活性化させなければならないが、プラトー電位以上の充電時にガスが発生するという問題点がある。
【0020】
ガスが発生する場合、電池の外観変化やガス発生による電極の密着性の減少等により、電極の充放電の均一度を阻害することで、Li−副産物が発生して寿命特性が減少する。また、電極間に間隔が発生することにより、インピーダンスの増加や過電圧等によりC−レート特性が減少し、電池に多大な悪影響を及ぼすことになる。
【0021】
反面、プラトー電位以下に充電した場合は、例えば、下記の化学式1の電極活物質が持つ高容量の特性を発揮できないという問題がある。
【0022】
よって、本発明によりプラトー電位以上に1回以上充電した後、ガス除去工程を行う方式により電池を構成すれば、継続的にプラトー電位以上に充電しても、高容量の電池を構成すると共に、ガス発生による電池の問題点も解決できる。すなわち、プラトー電位以上に充電した後、以後のサイクルの充電からはガスが発生せず、プラトー区間はなくなる(図4参照)。
【0023】
さらに、プラトー電位以上に1回以上充電した後、ガス除去工程により製作された電池は、プラトー電位以下に充電して使用しても、プラトー電位以上の充電を行わない場合よりも、容量が大きく増加することは、前述したようである(図5参照)。
【0024】
化1
XLi(Li1/32/3)O+YLiM'Oの固溶体
式中、M=4+の酸化数を有する金属から選択された1種以上の元素、
M'=遷移金属から選択された1種以上の元素、
0<X<1、0<Y<1、X+Y=1である。
【0025】
M'の酸化還元電位以上に充電される場合、Liが離脱されながら、酸化還元バランスを取るために酸素も離脱される。よって、電極活物質はプラトー電位を有することになる。
【0026】
上記の化学式1の化合物は、プラトー電位以上の充電電圧(4.4〜4.8V)に充電した後、ガス除去工程を行ってからも、充放電サイクルで電極活物質として安定的であるため、好ましい。
【0027】
好ましくは、MはMn、Sn、Ti金属から選択された1種以上の元素であり、M'はNi、Mn、Co、Cr金属から選択された1種以上の元素である。
【0028】
本発明のように、上記の化学式1の化合物を含む電極活物質を備えた電気化学素子を、プラトー電位以上に1回以上充電した後、ガス除去工程を行う場合、電極活物質は3.0〜4.4Vの電圧範囲で100〜280mAh/gの放電容量を有し、好ましくは170〜250mAh/gである。プラトー電位以上に充電しない場合、上記電圧範囲での放電容量が90mAh/g程度であるのに対し、本発明の電気化学素子は、相当な容量の増加が可能である(図5参照)。
【0029】
また、前述したように、プラトー電位以上に1回以上充電した後、ガス除去工程を行う上記の化学式1の化合物を含む電極活物質は、3.0〜4.8Vの電圧範囲で充放電する場合、100〜350mAh/gの放電容量を有し、好ましくは200〜280mAh/gである(図4参照)。
【0030】
本発明により、ガスが発生するプラトー電位以上への1番目充電時に発生するガスを除去して製造される電気化学素子を説明すれば、下記のようである。
【0031】
本発明の好ましい電気化学素子は、リチウムイオン電池である。
【0032】
一般に、リチウムイオン電池は、正極活物質及び正極コレクタからなる正極と、負極活物質及び負極コレクタからなる負極と、正極及び負極間で電子伝導を遮断してリチウムイオンを伝導できる分離膜とからなり、電極及び分離膜材料の隙間には、リチウムイオンを伝導するためのリチウム塩含有の有機電解液が注入されている。
【0033】
ガスが発生するプラトー電位以上への1番目充電時に多量のガスを発生させた後、2度目充電からはガスが発生せず、プラトー区間がなくなる電極活物質、例えば、上記の化学式1の正極活物質は、単独に使用できるが、次の正極活物質と混合して正極を構成することもできる。例えば、LiCoO、LiNiO、LiMnO、LiMn、Li(NiCoMn)O(0<a<1、0<b<1、0<c<1、a+b+c=1)、LiNi1−YCo、LiCo1−YMn、LiNi1−YMn(ここで、0≦Y<1)、Li(NiCoMn)O(0<a<2、0<b<2、0<c<2、a+b+c=2)、LiMn2−ZNi、LiMn2−ZCo(ここで、0<Z<2)、LiCoPO、及びLiFePOからなる群より選択される1種以上が用いられる。
【0034】
正極は、例えば、正極コレクタ上に前述した正極活物質、導電剤及びバインダーの混合物を塗布した後、乾燥して製造される。必要に応じては前記混合物に充填剤をさらに添加できる。
【0035】
一般に、正極コレクタは3〜500μmの厚さで製造される。このような正極コレクタは、当該電池に化学的変化を誘発せず、高い導電性を持つものであればよい。例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼結炭素、又は、アルミニウムやステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの等が用いられる。正極コレクタは、表面に微細な凹凸を形成して正極活物質の接着力を高めることができ、フィルム、シート、ホイール、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体等の多様な形態が可能である。
【0036】
導電剤は、通常、正極活物質を含む混合物の全体重量に基づいて1〜50重量%で添加される。このような導電剤は、当該電池に化学的変化を誘発せず、導電性を持つものであればよい。例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フロロカーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが用いられる。
【0037】
バインダーは、活物質及び導電剤などの結合や、活物質のコレクタに対する結合を促進させる成分である。通常、バインダーは正極活物質を含む混合物の全体重量に基づいて1〜50重量%で添加される。例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、スルフォン化EPDM、スチレンブチレンゴム、フッ素ゴム、多様な共重合体などが挙げられる。
【0038】
充填剤は、正極の膨脹を抑制する成分であり、選択的に使用され、当該電池に化学的変化を誘発せず、繊維状の材料であればよい。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系重合体;ガラス繊維、炭素繊維などの繊維状の物質が挙げられる。
【0039】
負極は、負極コレクタ上に負極活物質を含む混合物を塗布し、乾燥して製作される。必要に応じては前述したような成分がさらに含まれる。
【0040】
一般に、負極コレクタは3〜500μmの厚さで製造される。このような負極コレクタは、当該電池に化学的変化を誘発せず、導電性を持つものであればよい。例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼結炭素、銅やステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム−カドミウム合金等が用いられる。負極コレクタは、正極コレクタと同様に、表面に微細な凹凸を形成して負極活物質の接着力を高めることができ、フィルム、シート、ホイール、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体等の多様な形態が可能である。
【0041】
負極活物質は、例えば、硬質炭素、黒鉛化炭素などの炭素;LiFe(0≦X≦1)、LiWO(0≦X≦1)、SnMe1−xMe'(Me:Mn、Fe、Pb、Ge;Me':Al、B、P、Si、周期表の1族、2族、3族元素、ハロゲン;0<x≦1;1≦y≦3;1≦z≦8)などの金属複合酸化物;リチウム金属;リチウム合金;ケイ素系合金;すず系合金;SnO、SnO、PbO、PbO、Pb、Pb、Sb、Sb、Sb、GeO、GeO、Bi、Bi、及びBiなどの金属酸化物;ポリアセンチレンなどの導電性高分子;Li−Co−Ni系材料などが用いられる。
【0042】
分離膜は、正極及び負極間に介在され、高いイオン透過度及び機械的強度を持つ絶縁性の薄膜が用いられる。一般に、分離膜の気孔直径は0.01〜10μmであり、厚さは5〜300μmである。このような分離膜としては、例えば、耐化学性及び疎水性のポリプロピレンなどのオレフィン系ポリマー;ガラス繊維又はポリエチレンなどで作られたシートや不織布などが用いられる。電解質としてポリマーなどの固体電解質が用いられる場合には、固体電解質が分離膜を兼ねることができる。
【0043】
非水電解液は、電解液化合物で環状カーボネート及び/又は線状カーボネートを含むことができる。環状カーボネートの例としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、γ−ブチロラクトン(GBL)などが挙げられる。線状カーボネートの例としては、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)及びメチルプロピルカーボネート(MPC)からなる群より選択された1種以上が好ましいが、これに限定されるものではない。また、非水電解液は、カーボネート化合物と共にリチウム塩を含み、具体例としては、LiClO、LiCFSO、LiPF、LiBF、LiAsF及びLiN(CFSO)からなる群より選択されることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0044】
本発明のリチウムイオン電池は、通常の方法により正極及び負極間に多孔性の分離膜を挿入し、非水電解液を投入して製造することになる。
【0045】
本発明によるリチウムイオン電池は、円筒形、角形、パウチ型電池など、外形に関係なく用いられる。
【発明の効果】
【0046】
本発明によれば、高容量を有するが、高容量を発揮するために、ガスが発生するプラトー電位以上まで充電しなければならない電極活物質において、ガス発生により高容量の電池の適用が困難した問題点を、プラトー電位以上に充電した後、ガス除去を行うことにより解決できる。すなわち、ガス発生により発生し得る電池の外観変化、寿命特性の減少、C−レート特性の減少等の問題点を解決し、以後の充電からはガスが発生するプラトー電位以上に充電して容量増加を確保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明が下記の実施例により限定されるものではない。
【実施例1】
【0048】
Li(Li0.2Ni0.2Mn0.6)O(3/5[Li(Li1/3Mn2/3)O]+2/5[LiNi1/2Mn1/2]O)を正極活物質として使用して、活物質、導電剤カーボン及びバインダーPVDFの重量比率を88:6:6としてスラリーを作り、厚さ15μmのAl箔上にコーティングして正極を作り、負極としては人造黒鉛を使用し、電解液としてEC:EMC(重量比1:2)にLiPF1M溶液を使用し、パウチ形態の電池を製作した。
【0049】
製造された電池を、4.8Vまで1番目充電した後、ガス除去を行い、2番目充電を行った後、体積膨脹の変化を測定した。
【比較例1】
【0050】
実施例1と同様な方法により製作された電池を、ガス除去を行うことなく、4.2Vまで1番目充電した後、体積膨脹の変化を測定した。
【比較例2】
【0051】
実施例1と同様な方法により製作された電池を、ガス除去を行うことなく、4.4Vまで1番目充電した後、体積膨脹の変化を測定した。
【比較例3】
【0052】
実施例1と同様な方法により製作された電池を、ガス除去を行うことなく、4.8Vまで1番目充電した後、体積膨脹の変化を測定した。
【比較例4】
【0053】
実施例1と同様な方法により製作された電池を、ガス除去を行うことなく、4.8Vまで1番目充電し、2番目充電した後、体積膨脹の変化を測定した。
【0054】
下記の表1には、実施例1、比較例1〜比較例4のように、1番目サイクル又は2番目サイクルでそれぞれの充電電圧で現れる膨張程度を示す。
【表1】

【0055】
表1に示すように、4.8Vまで1番目充電した後、ガス除去を行い、2番目充電した後、体積膨脹の変化を測定した実施例1の場合、2番目充電後の体積膨脹程度が4.2V程度に充電した場合と類似している。これにより、4.8Vまで1番目充電した後、ガス除去を行うと、これ以上の多量のガス発生はないことが分かる。
【比較例5】
【0056】
実施例1と同様な方法により製作された正極を使用し、負極としてLi金属を使用し、電解液としてEC:EMC(重量比1:2)にLiPF 1M溶液を使用して、コイン形態の電池を製作した。製作された電池を3〜4.25Vまで充放電容量を観察した(図1参照)。
【比較例6】
【0057】
比較例5と同様な方法により製作された電池を、4.4Vまで充電した以外は、同様な方法により充放電の実験を行った(図2参照)。
【実施例2】
【0058】
比較例5と同様な方法により製作された電池を、4.8Vまで充電した以外は、同様な方法により充放電の実験を行った(図3参照)。
【実施例3】
【0059】
比較例5と同様な方法により製作された電池を、1番目サイクル及び2番目サイクルにおいて4.8Vまで充電した以外は、同様な方法により充放電の実験を行った(図4参照)。
【実施例4】
【0060】
比較例5と同様な方法により製作された電池を、1番目サイクルでは4.8Vまで充電し、2番目サイクルでは4.4Vまで充電した以外は、同様な方法により充放電の実験を行った(図5参照)。
【0061】
図1〜図4から、実施例2及び実施例3のように、プラトー電位以上に電圧を上昇させる場合、容量が急激に増加する点と、そのときに2番目サイクルではプラトー区間がなくなる点とが分かる。
【0062】
なお、本発明の詳細な説明では具体的な実施形態について説明したが、本発明の要旨から逸脱しない範囲内で多様に変形・実施が可能である。よって、本発明の範囲は、前述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載及びこれと均等なものに基づいて定められるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】比較例5による3〜4.25Vまでの充放電グラフである。
【図2】比較例6による3〜4.4Vまでの充放電グラフである。
【図3】実施例2による3〜4.8Vまでの充放電グラフである。
【図4】実施例3による3〜4.8Vまで2番目サイクルの充放電グラフである。
【図5】実施例4により1番目サイクルでは3〜4.8Vまで充放電し、2番目サイクルからは3〜4.4Vまで充放電したグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
充電区間の中にガスが発生するプラトー電位を有する電極活物質を前記プラトー電位以上まで充電する段階と;及び、
ガスを除去する段階を含むことを特徴とする、電気化学素子の製造方法。
【請求項2】
前記電極活物質が、下記の化学式1で表される化合物(固溶体)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
化1
XLi(Li1/32/3)O+YLiM'O
[上記式中、
M=4+の酸化数を有する金属から選択された1種以上の元素、
M'=遷移金属から選択された1種以上の元素、
0<X<1、0<Y<1、X+Y=1である。]
【請求項3】
Mが、Mn、Sn、Ti金属から選択された1種以上の元素であり、
M'が、Ni、Mn、Co、Cr金属から選択された1種以上の元素であることを特徴とする、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記電極活物質は、プラトー電位が4.4〜4.8Vであることを特徴とする、請求項1〜3の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記ガスは、酸素(O)ガスであることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
充電区間の中にガスが発生するプラトー電位を有する電極活物質を、前記プラトー電位以上まで充電した後、ガス除去を行うことを特徴とする、電気化学素子。
【請求項7】
前記電極活物質は、プラトー電位が4.4〜4.8Vであることを特徴とする、請求項6に記載の電気化学素子。
【請求項8】
前記電極活物質が、下記の化学式1で表される化合物(固溶体)を含むことを特徴とする、請求項6に記載の電気化学素子。
化1
XLi(Li1/32/3)O+YLiM'O
[上記式中、
M=4+の酸化数を有する金属から選択された1種以上の元素、
M'=遷移金属から選択された1種以上の元素、
0<X<1、0<Y<1、X+Y=1である。]
【請求項9】
Mが、Mn、Sn、Ti金属から選択された1種以上の元素であり、
M'が、Ni、Mn、Co、Cr金属から選択された1種以上の元素であることを特徴とする、請求項8に記載の電気化学素子。
【請求項10】
前記プラトー電位以上まで充電し、ガスを除去した後、前記電極活物質の放電容量が3.0〜4.4Vの電圧範囲で100〜280mAh/g範囲になることを特徴とする、請求項8に記載の電気化学素子。
【請求項11】
前記プラトー電位以上まで充電し、ガスを除去した後、前記電極活物質の放電容量が3.0〜4.8Vの電圧範囲で100〜350mAh/g範囲になることを特徴とする、請求項8に記載の電気化学素子。
【請求項12】
前記電気化学素子は、前記ガスが発生するプラトー電位以上まで充電して使用するように設計されたことを特徴とする、請求項6に記載の電気化学素子。
【請求項13】
前記電気化学素子は、前記ガスが発生するプラトー電位以下まで充電して使用するように設計されたことを特徴とする、請求項6に記載の電気化学素子。
【請求項14】
前記電気化学素子は、リチウム二次電池であることを特徴とする、請求項6〜13の何れか一項に記載の電気化学素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−505367(P2009−505367A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−526887(P2008−526887)
【出願日】平成18年8月18日(2006.8.18)
【国際出願番号】PCT/KR2006/003239
【国際公開番号】WO2007/021148
【国際公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】