説明

高屈折率ガラス

【課題】本発明は、耐熱性が高く、且つ有機発光素子やITOの屈折率に整合し得る高屈折率ガラスを創案する。
【解決手段】本発明の高屈折率ガラスは、ガラス組成として、質量%で、SiO 10〜60%、B 0〜5%、BaO 0.1〜60%、La+Nb 0.1〜40%、LiO+NaO+KO 0〜10%を含有すると共に、質量比(MgO+CaO)/(SrO+BaO)の値が0〜0.5、歪点が600℃以上、屈折率ndが1.55〜2.3であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高屈折率ガラスに関し、例えば有機ELデバイス、特に有機EL照明に好適な高屈折率ガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機EL発光素子を用いたディスプレイ、照明が益々注目されている。これらの有機ELデバイスは、ITO等の透明導電膜が形成された基板により、有機発光素子が挟み込まれた構造を有する。この構造において、有機発光素子に電流が流れると、有機発光素子中の正孔と電子が会合して発光する。発光した光は、ITO等の透明導電膜を介して基板中に進入し、基板内で反射を繰り返しながら外部に放出される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、有機発光素子の屈折率ndは1.8〜1.9であり、ITOの屈折率ndは1.9〜2.0である。これに対して、基板の屈折率ndは、通常、1.5程度である。このため、従来の有機ELデバイスは、基板−ITO界面の屈折率差に起因して反射率が高いため、有機発光素子から発生した光を効率良く取り出せないという問題があった。
【0004】
また、有機EL発光素子を用いたディスプレイ(OLED等)では、電子の移動度、TFT特性の観点から、p−Si・TFTによる駆動が主流となっている。p−Si・TFTの製造工程には、400〜600℃の熱処理工程が存在するが、この熱処理工程で、ガラスに熱収縮と呼ばれる微小な寸法収縮が生じ、これがTFTの画素ピッチのズレを惹起して、表示不良の原因になるおそれがある。特に、近年では、多眼式の3Dディスプレイも登場し、自然な立体像を得るために、2K〜4K以上の高解像度のディスプレイが求められている。ディスプレイの解像度が高まると、数ppm程度の寸法収縮でも表示不良になるおそれがある。しかし、従来の高屈折率ガラスは、耐熱性が不十分であるため、高温の熱処理を行うと、ガラスが熱収縮するおそれがあった。よって、従来、有機EL発光素子を用いたディスプレイに高屈折率ガラスを用いて、光の取り出し効率を高めることが困難であった。
【0005】
そこで、本発明は、耐熱性が高く、且つ有機発光素子やITOの屈折率に整合し得る高屈折率ガラスを創案することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、鋭意検討を行った結果、ガラス組成範囲とガラス特性を所定範囲に規制することにより、上記技術的課題を解決し得ることを見出し、本発明として、提案するものである。すなわち、本発明の高屈折率ガラスは、ガラス組成として、質量%で、SiO 10〜60%、B 0〜5%、BaO 0.1〜60%、La+Nb 0.1〜40%、LiO+NaO+KO 0〜10%を含有すると共に、質量比(MgO+CaO)/(SrO+BaO)の値が0〜0.5、歪点が600℃以上、屈折率ndが1.55〜2.3であることを特徴とする。このようにすれば、有機発光素子やITOの屈折率に整合させ易くなると共に、耐熱性を高め易くなる。更には、耐失透性を高め易くなり、またITO、FTO等の透明導電膜の熱膨張係数に整合させ易くなる。
【0007】
ここで、「歪点」は、ASTM C336−71に記載の方法に基づいて測定した値である。「屈折率nd」は、屈折率測定器で測定可能であり、例えば25mm×25mm×約3mmの直方体試料を作製した後、(徐冷点Ta+30℃)から(歪点−50℃)までの温度域を0.1℃/minになるような冷却速度でアニール処理し、続いて屈折率が整合する浸液をガラス間に浸透させながら、カルニュー社製の屈折率測定器KPR−200を用いることにより測定可能である。「徐冷点Ta」は、ASTM C338−93に記載の方法に基づいて測定した値を指す。また、「La+Nb」は、LaとNbの合量である。「LiO+NaO+KO」は、LiO、NaO、及びKOの合量である。「MgO+CaO」は、MgOとCaOの合量である。「SrO+BaO」は、SrOとBaOの合量である。
【0008】
第二に、本発明の高屈折率ガラスは、液相粘度が103.0dPa・s以上であることが好ましい。ここで、「液相粘度」は、液相温度におけるガラスの粘度を白金球引き上げ法で測定した値を指す。「液相温度」は、標準篩30メッシュ(500μm)を通過し、50メッシュ(300μm)に残るガラス粉末を白金ボートに入れ、温度勾配炉中に24時間保持して、結晶の析出する温度を測定した値である。
【0009】
有機EL照明等には、ガラス板の表面平滑性の僅かな違いによって、電流印加時の電流密度が変化し、照度のムラを引き起こすという問題があった。また、ガラス板の表面平滑性を高めるために、ガラス表面を研磨すると、加工コストが高騰するという問題が生じる。そこで、液相粘度を上記範囲とすれば、オーバーフローダウンドロー法で成形し易くなり、結果として、未研磨で表面平滑性が良好なガラス板を作製し易くなる。
【0010】
第三に、本発明の高屈折率ガラスは、ガラス組成として、質量%で、SiO 15〜60%、B 0〜5%、BaO 0.1〜40%、La+Nb 0.1〜30%、LiO+NaO+KO 0〜5%を含有すると共に、質量比(MgO+CaO)/(SrO+BaO)の値が0〜0.5、歪点が630℃以上、屈折率ndが1.55〜2.2であることが好ましい。
【0011】
第四に、本発明の高屈折率ガラスは、ガラス組成として、質量%で、SiO 20〜60%、B 0〜5%、BaO 5〜40%、La+Nb 0.1〜25%、LiO+NaO+KO 0〜3%を含有すると共に、質量比(MgO+CaO)/(SrO+BaO)の値が0〜0.4、歪点が650℃以上、屈折率ndが1.55〜2.1であることが好ましい。
【0012】
第五に、本発明の高屈折率ガラスは、密度が4.0g/cm以下であることが好ましい。「密度」は、周知のアルキメデス法で測定可能である。
【0013】
第六に、本発明の高屈折率ガラスは、板状であることが好ましい。このようにすれば、有機ELディスプレイ、有機EL照明、色素増感型太陽電池等の各種デバイスの基板に適用し易くなる。なお、「板状」は、板厚が小さいフィルム状のものを含む。
【0014】
第七に、本発明の高屈折率ガラスは、オーバーフローダウンドロー法又はスロットダウンドロー法で成形されてなることが好ましい。ここで、「オーバーフローダウンドロー法」は、溶融ガラスを耐熱性の樋状構造物の両側から溢れさせて、溢れた溶融ガラスを樋状構造物の下端で合流させながら、下方に延伸成形してガラス板を成形する方法である。また、「スロットダウンドロー法」は、略矩形形状の隙間から溶融ガラスを流し出しながら、下方に延伸成形して、ガラス板を成形する方法である。
【0015】
第八に、本発明の高屈折率ガラスは、少なくとも一方の面が未研磨であり、その未研磨面の表面粗さRaが10Å以下であることが好ましい。ここで、「表面粗さRa」は、JIS B0601:2001に準拠した方法で測定した値を指す。
【0016】
第九に、本発明の高屈折率ガラスは、照明デバイスに用いることが好ましい。
【0017】
第十に、本発明の高屈折率ガラスは、有機EL照明に用いることが好ましい
第十一に、本発明の高屈折率ガラスは、有機太陽電池に用いることが好ましい。
【0018】
第十二に、本発明の高屈折率ガラスは、有機ELディスプレイに用いることが好ましい。
【0019】
第十三に、本発明の高屈折率ガラスは、ガラス組成として、質量%で、SiO 25〜60%、B 0〜5%、BaO 20〜40%、La 0.1〜10%、Nb 0.1〜10%、La+Nb 0.1〜20%、LiO+NaO+KO 0〜0.1%を含有すると共に、質量比(MgO+CaO)/(SrO+BaO)の値が0〜0.2、屈折率ndが1.55〜2.0であることを特徴とする。
【0020】
第十四に、本発明の高屈折率ガラスは、板状であり、実質的にPbOを含有せず、屈折率ndが1.55〜2.0、歪点が630℃以上、液相粘度が10dPa・s以上、30〜380℃における熱膨張係数が45×10−7/℃〜95×10−7/℃、厚みが0.05〜1.5mm、少なくとも一方の面の表面粗さRaが30Å以下であることを特徴とする。ここで、「実質的にPbOを含有せず」は、ガラス組成中のPbOの含有量が1000ppm(質量)未満であることを指す。「30〜380℃における熱膨張係数」は、ディラトメーターで測定可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の高屈折率ガラスにおいて、上記のように各成分の含有範囲を限定した理由を以下に説明する。なお、以下の含有範囲の説明において、%表示は、特に断りがある場合を除き、質量%を表す。
【0022】
SiOの含有量は10〜60%である。SiOの含有量が少なくなると、ガラス網目構造を形成し難くなり、ガラス化が困難になる。またガラスの粘性が低下し過ぎて、高い液相粘度を確保し難くなる。よって、SiOの含有量は10%以上であり、好ましくは12%以上、15%以上、20%以上、25%以上、28%以上、35%以上、特に40%以上である。一方、SiOの含有量が多くなると、溶融性、成形性が低下し易くなり、また屈折率ndが低下し易くなる。よって、SiOの含有量は60%以下であり、好ましくは55%以下、53%以下、50%以下、49%以下、48%以下、特に45%以下である。
【0023】
は0〜10%である。Bの含有量が多くなると、屈折率nd、ヤング率が低下し易くなり、また歪点が低下し易くなる。よって、Bの含有量は10%以下であり、好ましくは8%以下、5%以下、4%以下、3%以下、2%未満、特に1%未満であり、実質的に含有しないことが望ましい。ここで、「実質的にBを含有しない」とは、ガラス組成中のBの含有量が1000ppm(質量)未満の場合を指す。
【0024】
BaOは、アルカリ土類金属酸化物の中ではガラスの粘性を極端に低下させずに、屈折率ndを高める成分であり、その含有量は0.1〜60%である。BaOの含有量が多くなると、屈折率nd、密度、熱膨張係数が高くなり易い。しかし、BaOの含有量が60%を超えると、ガラス組成のバランスを欠いて、耐失透性が低下し易くなる。よって、BaOの含有量は60%以下であり、好ましくは53%以下、48%以下、44%以下、40%以下、39%以下、36%以下、特に33%以下である。但し、BaOの含有量が少なくなると、所望の屈折率ndを得難くなる上、高い液相粘度を確保し難くなる。よって、BaOの含有量は0.1%以上であり、好ましくは1%以上、2%以上、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、23%以上、特に25%以上である。
【0025】
La+Nbの含有量は0.1〜40%である。La+Nbの含有量が少なくなると、屈折率ndを高め難くなる。よって、La+Nbの含有量は0.1%以上であり、好ましくは1%以上、5%以上、8%以上、10%以上である。一方、La+Nbの含有量が多くなると、密度、熱膨張係数が高くなり過ぎ、その含有量が40%を超えると、ガラス組成のバランスを欠いて、耐失透性が低下し易くなり、更には高い液相粘度を確保し難くなる。よって、La+Nbの含有量は40%以下であり、好ましくは35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、18%以下、特に15%以下である。
【0026】
Laは、屈折率ndを高める成分である。Laの含有量が多くなると、密度、熱膨張係数が高くなり過ぎ、また耐失透性が低下し易くなる。よって、Laの好適な含有範囲は0〜25%、0〜22%、0.1〜18%、0.5〜14%、1〜12%、特に2〜10%である。
【0027】
Nbは、屈折率ndを高める成分である。Nbの含有量が多くなると、密度、熱膨張係数が高くなり過ぎ、また耐失透性が低下し易くなる。よって、Nbの好適な含有範囲は0〜25%、0〜22%、0.1〜18%、0.5〜14%、1〜12%、特に2〜10%である。
【0028】
LiO+NaO+KOは、ガラスの粘性を低下させる成分であり、また熱膨張係数を調整する成分であるが、多量に含有させると、ガラスの粘性が低下し過ぎて、高い液相粘度を確保し難くなる。よって、LiO+NaO+KOの含有量は10%以下であり、好ましくは5%以下、3%以下、2%以下、1%以下、0.5%以下、特に0.1%以下である。なお、LiO、NaO、KOの含有量は、それぞれ8%以下、5%以下、2%以下、1%以下、0.5%以下、特に0.1%以下が好ましい。
【0029】
質量比(MgO+CaO)/(SrO+BaO)の値は0〜0.5である。質量比(MgO+CaO)/(SrO+BaO)の値が小さくなると、高い液相温度を確保し難くなり、また歪点が低下し易くなる。一方、質量比(MgO+CaO)/(SrO+BaO)の値が大きくなると、密度が高くなり、その値が0.5を超えると、ガラス組成のバランスを欠いて、逆に耐失透性が低下し易くなる。よって、質量比(MgO+CaO)/(SrO+BaO)の値は0.5以下であり、好ましくは0.45以下、0.4以下、0.35以下、0.3以下、0.25以下、0.05〜0.22、特に0.1〜0.2である。
【0030】
MgOは、屈折率nd、ヤング率、歪点を高める成分であると共に、高温粘度を低下させる成分であるが、多量にMgOを含有させると、液相温度が上昇して、耐失透性が低下したり、密度や熱膨張係数が高くなり過ぎる。よって、MgOの含有量は20%以下、10%以下、5%以下、3%以下、特に1%以下が好ましい。
【0031】
CaOの含有量は0〜15%が好ましい。CaOの含有量が多くなると、密度、熱膨張係数が高くなり易く、その含有量が15%を超えると、ガラス組成のバランスを欠いて、耐失透性が低下し易くなる。よって、CaOの含有量は15%以下、13%以下、11%以下、9.5%以下、特に8%以下が好ましい。なお、CaOの含有量が少なくなると、溶融性が低下したり、ヤング率が低下したり、屈折率ndが低下し易くなる。よって、CaOの含有量は0.5%以上、1%以上、2%以上、3%以上、特に5%以上が好ましい。
【0032】
SrOの含有量は0〜25%が好ましい。SrOの含有量が多くなると、屈折率nd、密度、熱膨張係数が高くなり易く、その含有量が25%を超えると、ガラス組成のバランスを欠いて、耐失透性が低下し易くなる。よって、SrOの含有量は18%以下、14%以下、12%以下、11%以下、8%以下、7%以下、特に6%以下が好ましい。なお、SrOの含有量が少なくなると、溶融性が低下し易くなり、また屈折率ndが低下し易くなる。よって、SrOの含有量は0.1%以上、0.8%以上、1.4%以上、3%以上、特に4%以上が好ましい。
【0033】
上記成分以外にも、任意成分として、以下の成分を添加してもよい。
【0034】
TiOは、屈折率ndを高める成分である。TiOの含有量が多くなると、耐失透性が低下し易くなる。よって、TiOの好適な含有範囲は0〜25%、0〜22%、0.1〜18%、1〜14%、2〜12%、特に4〜10%である。
【0035】
ZrOは、屈折率ndを高める成分である。ZrOの含有量が多くなると、耐失透性が低下し易くなる。よって、ZrOの好適な含有範囲は0〜25%、0〜20%、0.1〜10%、0.1〜8%、0.1〜6%、特に0.1〜5%である。
【0036】
Alの含有量は0〜20%が好ましい。Alの含有量が多くなると、ガラスに失透結晶が析出し易くなって、液相粘度が低下し易くなる。また屈折率ndが低下し易くなる。よって、Alの含有量は15%以下、10%以下、8%以下、特に6%以下が好ましい。なお、Alの含有量が少なくなると、ガラス組成の成分バランスを欠いて、逆にガラスが失透し易くなる。よって、Alの含有量は0.1%以上、0.5%以上、特に1%以上が好ましい。
【0037】
清澄剤として、As、Sb、CeO、SnO、F、Cl、SOの群から選択された一種又は二種以上を0〜3%添加することができる。但し、As、Sb、及びF、特にAs、及びSbは、環境的観点から、その使用を極力控えることが好ましく、それぞれの含有量は0.1%未満が好ましい。以上の点を考慮すると、清澄剤として、SnO、SO、及びClが好ましい。特に、SnOの含有量は0〜1%、0.01〜0.5%、特に0.05〜0.4%が好ましい。また、SnO+SO+Clの含有量は0〜1%、0.001〜1%、0.01〜0.5%、特に0.01〜0.3%が好ましい。ここで、「SnO+SO+Cl」は、SnO、SO、及びClの合量を指す。
【0038】
PbOは、高温粘性を低下させる成分であるが、環境的観点から、その使用を極力控えることが好ましく、その含有量は0.5%以下が好ましく、実質的に含有しないことが望ましい。ここで、「実質的にPbOを含有しない」とは、ガラス組成中のPbOの含有量が1000ppm(質量)未満の場合を指す。
【0039】
本発明の高屈折率ガラスにおいて、各成分の好適な含有範囲を組み合わせて、好適なガラス組成範囲とすることが可能である。その中でも、好適なガラス組成範囲の具体例は以下の通りである。
(1)ガラス組成として、質量%で、SiO 20〜60%、B 0〜5%、BaO 10〜40%、La 0.1〜25%、Nb 0.1〜25%、La+Nb 0.1〜25%、 LiO+NaO+KO 0〜1%含有すると共に、質量比(MgO+CaO)/(SrO+BaO)の値が0〜0.3、屈折率ndが1.55〜2.0、
(2)ガラス組成として、質量%で、SiO 25〜55%、B 0〜5%、BaO 10〜40%、La 0.1〜18%、Nb 0.1〜18%、La+Nb 0.1〜20%、 LiO+NaO+KO 0〜0.5%を含有すると共に、質量比(MgO+CaO)/(SrO+BaO)の値が0〜0.3、屈折率ndが1.55〜2.0、
(3)ガラス組成として、質量%で、SiO 25〜50%、B 0〜5%、BaO 20〜40%、La 0.1〜10%、Nb 0.1〜10%、La+Nb 0.1〜20%、 LiO+NaO+KO 0〜0.1%を含有すると共に、質量比(MgO+CaO)/(SrO+BaO)の値が0〜0.2、屈折率ndが1.55〜2.0、
(4)ガラス組成として、質量%で、SiO 25〜45%、B 0〜3%、BaO 20〜40%、La 0.1〜10%、Nb 0.1〜10%、La+Nb 0.1〜15%、 LiO+NaO+KO 0〜0.1%を含有すると共に、質量比(MgO+CaO)/(SrO+BaO)の値が0〜0.2、屈折率ndが1.55〜2.0。
【0040】
本発明の高屈折率ガラスにおいて、屈折率ndは1.55以上であり、好ましくは1.58以上、1.60以上、1.63以上、1.65以上、1.67以上、1.69以上、1.70以上、特に1.71以上である。屈折率ndが1.55未満になると、ITO−ガラス界面の反射によって光を効率良く取り出せなくなる。一方、屈折率ndが2.3より高くなると、空気−ガラス界面での反射率が高くなり、ガラス表面に粗面化処理を施しても、光の取り出し効率を高めることが困難になる。よって、屈折率ndは2.3以下であり、好ましくは2.2以下、2.1以下、2.0以下、1.9以下、特に1.75以下である。
【0041】
本発明の高屈折率ガラスにおいて、歪点は630℃以上、650℃以上、670℃以上、690℃以上、特に700℃以上が好ましい。色素増感型太陽電池等のデバイスにおいて、FTOを形成する際、透明性が高く、且つ低電気抵抗の膜を形成するためには、600℃以上の高温が必要になる。しかし、従来の高屈折率ガラスでは、耐熱性が十分ではなく、透明性と低電気抵抗の両立が困難であった。そこで、歪点を上記範囲とすれば、色素増感太陽電池等において、透明性と低電気抵抗の両立が可能になると共に、デバイスの製造工程における熱処理によりガラスが熱収縮し難くなる。
【0042】
本発明の高屈折率ガラスにおいて、液相温度は1200℃以下、1150℃以下、1130℃以下、1110℃以下、1090℃以下、1070℃以下、1050℃以下、特に1010℃以下が好ましい。また、液相粘度は103.5dPa・s以上、103.8dPa・s以上、104.2dPa・s以上、104.4dPa・s以上、104.6dPa・s以上、105.0dPa・s以上、特に105.2dPa・s以上が好ましい。このようにすれば、成形時にガラスが失透し難くなり、オーバーフローダウンドロー法でガラス板を成形し易くなる。
【0043】
本発明の高屈折率ガラスにおいて、密度は5.0g/cm以下、4.8g/cm以下、4.5g/cm以下、4.3g/cm以下、3.7g/cm以下、3.5g/cm以下、3.4g/cm以下、3.3g/cm以下、特に3.2g/cm以下が好ましい。このようにすれば、デバイスを軽量化することができる。
【0044】
本発明の高屈折率ガラスは、板状であることが好ましい。また、厚みは1.5mm以下、1.3mm以下、1.1mm以下、0.8mm以下、0.6mm以下、0.5mm以下、0.3mm以下、0.2mm以下、特に0.1mm以下が好ましい。厚みが小さい程、可撓性が高まり、デザイン性に優れた照明デバイスを作製し易くなるが、厚みが極端に小さくなると、ガラスが破損し易くなる。よって、厚みは10μm以上、特に30μm以上が好ましい。
【0045】
本発明の高屈折率ガラスは、板状の場合、少なくとも一方の面が未研磨であることが好ましい。ガラスの理論強度は、本来非常に高いのであるが、理論強度よりも遥かに低い応力でも破壊に至ることが多い。これは、ガラス表面にグリフィスフローと呼ばれる小さな欠陥が成形後の工程、例えば研磨工程等で生じるからである。よって、ガラス表面を未研磨とすれば、本来のガラスの機械的強度を損ない難くなるため、ガラスが破壊し難くなる。また、ガラス表面を未研磨とすれば、研磨工程を省略できるため、ガラス板の製造コストを低廉化することができる。
【0046】
本発明の高屈折率ガラスにおいて、少なくとも一方の表面(但し、有効面)の表面粗さRaは10Å以下、5Å以下、3Å以下、特に2Å以下が好ましい。表面粗さRaが10Åより大きいと、その面に形成されるITOの品位が低下し、均一な発光を得難くなる。
【0047】
本発明の高屈折率ガラスは、オーバーフローダウンドロー法で成形されてなることが好ましい。このようにすれば、未研磨で表面品位が良好なガラス板を製造することができる。その理由は、オーバーフローダウンドロー法の場合、表面になるべき面は樋状耐火物に接触せず、自由表面の状態で成形されるからである。樋状構造物の構造や材質は、所望の寸法や表面精度を実現できる限り、特に限定されない。また、下方への延伸成形を行うために、溶融ガラスに対して、力を印加する方法も特に限定されない。例えば、充分に大きい幅を有する耐熱性ロールを溶融ガラスに接触させた状態で回転させて延伸する方法を採用してもよいし、複数の対になった耐熱性ロールを溶融ガラスの端面近傍のみに接触させて延伸する方法を採用してもよい。
【0048】
オーバーフローダウンドロー法以外にも、例えば、ダウンドロー法(スロットダウン法、リドロー法等)、フロート法、ロールアウト法等を採用することができる。
【0049】
本発明の高屈折率ガラスは、HFエッチング、サンドブラスト等によって、一方の面に粗面化処理を行うことが好ましい。粗面化処理面の表面粗さRaは10Å以上、20Å以上、30Å以上、特に50Å以上が好ましい。粗面化処理面を有機EL照明等の空気と接する側にすれば、粗面化処理面が無反射構造になるため、有機発光層で発生した光が有機発光層内に戻り難くなり、結果として、光の取り出し効率を高めることができる。またリプレス等の熱加工によって、ガラス表面に凹凸形状を付与してもよい。このようにすれば、ガラス表面に正確な反射構造を形成することができる。凹凸形状は、屈折率ndを考慮しながら、その間隔と深さを調整すればよい。さらに、凹凸形状を有する樹脂フィルムをガラス表面に貼り付けてもよい。
【0050】
大気圧プラズマプロセスにより粗面化処理すれば、一方の表面の表面状態を維持した上で、他方の表面に対して、均一に粗面化処理を行うことができる。また、大気圧プラズマプロセスのソースとして、Fを含有するガス(例えば、SF、CF)を用いることが好ましい。このようにすれば、HF系ガスを含有したプラズマが発生するため、粗面化処理の効率が向上する。
【0051】
なお、成形時に表面に無反射構造を形成する場合、粗面化処理しなくても同様の効果を享受することができる。
【0052】
本発明の高屈折率ガラスにおいて、30〜380℃における熱膨張係数は45×10−7/℃〜110×10−7/℃、50×10−7/℃〜100×10−7/℃、60×10−7/℃〜95×10−7/℃、65×10−7/℃〜90×10−7/℃、65×10−7/℃〜85×10−7/℃、特に70×10−7/℃〜80×10−7/℃が好ましい。近年、有機EL照明、有機ELデバイス、色素増感太陽電池において、デザイン的要素を高める観点から、ガラス板に可撓性が要求される場合がある。可撓性を高めるためには、ガラス板の厚みを小さくする必要があるが、この場合、ガラス板とITO、FTO等の透明導電膜の熱膨張係数が不整合であると、ガラス板が反り易くなる。そこで、30〜380℃における熱膨張係数を上記範囲とすれば、このような事態を防止し易くなる。
【0053】
本発明の高屈折率ガラスにおいて、102.5dPa・sにおける温度は1450℃以下、1400℃以下、1370℃以下、1330℃以下、1290℃以下、特に1270℃以下が好ましい。このようにすれば、溶融性が向上するため、ガラスの製造効率が向上する。
【0054】
次に、本発明の高屈折率ガラスを製造する方法を例示する。まず所望のガラス組成になるように、ガラス原料を調合して、ガラスバッチを作製する。次いでこのガラスバッチを溶融、清澄した後、所望の形状に成形する。その後、所望の形状に加工する。
【実施例1】
【0055】
以下、実施例に基づいて、本発明を詳細に説明する。なお、以下の実施例は単なる例示である。本発明は、以下の実施例に何ら限定されない。
【0056】
表1、2は、本発明の実施例(試料No.1〜14)を示している。
【0057】
【表1】

【0058】
【表2】

【0059】
まず、表1、2に記載のガラス組成になるように、ガラス原料を調合した後、得られたガラスバッチをガラス溶融炉に供給して1500〜1600℃で4時間溶融した。次に、得られた溶融ガラスをカーボン板の上に流し出して板状に成形した後、所定のアニール処理を行った。最後に、得られたガラス板について、種々の特性を評価した。
【0060】
密度は、周知のアルキメデス法によって測定した値である。
【0061】
熱膨張係数は、ディラトメーターを用いて、30〜380℃における平均熱膨張係数を測定した値である。測定試料として、φ5mm×20mmの円柱状試料(端面はR加工されている)を用いた。
【0062】
歪点Psは、ASTM C336−71に記載の方法に基づいて測定した値である。なお、歪点Psが高い程、耐熱性が高くなる。
【0063】
徐冷点Ta、軟化点Tsは ASTM C338−93に記載の方法に基づいて測定した値である。
【0064】
高温粘度104.0dPa・s、103.0dPa・s、102.5dPa・s、及び102.0dPa・sにおける温度は、白金球引き上げ法で測定した値である。なお、これらの温度が低い程、溶融性に優れる。
【0065】
液相温度TLは、標準篩30メッシュ(500μm)を通過し、50メッシュ(300μm)に残るガラス粉末を白金ボートに入れ、温度勾配炉中に24時間保持して、結晶の析出する温度を測定した値である。また、液相粘度log10ηTLは、液相温度におけるガラスの粘度を白金球引き上げ法で測定した値を指す。なお、液相粘度が高く、液相温度が低い程、耐失透性、成形性に優れる。
【0066】
屈折率ndは、まず25mm×25mm×約3mmの直方体試料を作製した後、(Ta+30℃)から(歪点−50℃)までの温度域を0.1℃/minになるような冷却速度でアニール処理し、続いて屈折率が整合する浸液をガラス間に浸透させながら、カルニュー社製の屈折率測定器KPR−200を用いて測定した値である。
【実施例2】
【0067】
試料No.1〜3、8、及び11〜14に記載のガラス組成になるように、ガラス原料を調合した後、得られたガラスバッチを連続窯に投入し、1500〜1600℃の温度で溶融した。続いて、得られた溶融ガラスに対して、オーバーフローダウンドロー法による成形を行い、厚み0.5mmのガラス板を得た。得られたガラス板に対して、平均表面粗さ(Ra)を測定したところ、その値はいずれも2Åであった。なお、平均表面粗さ(Ra)は、JIS B0601:2001に準拠した方法で測定した値である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス組成として、質量%で、SiO 10〜60%、B 0〜5%、BaO 0.1〜60%、La+Nb 0.1〜40%、LiO+NaO+KO 0〜10%を含有すると共に、質量比(MgO+CaO)/(SrO+BaO)の値が0〜0.5、歪点が600℃以上、屈折率ndが1.55〜2.3であることを特徴とする高屈折率ガラス。
【請求項2】
液相粘度が103.0dPa・s以上であることを特徴とする請求項1に記載の高屈折率ガラス。
【請求項3】
ガラス組成として、質量%で、SiO 15〜60%、B 0〜5%、BaO 0.1〜40%、La+Nb 0.1〜30%、LiO+NaO+KO 0〜5%を含有すると共に、質量比(MgO+CaO)/(SrO+BaO)の値が0〜0.5、歪点が630℃以上、屈折率ndが1.55〜2.2であることを特徴とする請求項1又は2に記載の高屈折率ガラス。
【請求項4】
ガラス組成として、質量%で、SiO 20〜60%、B 0〜5%、BaO 5〜40%、La+Nb 0.1〜25%、LiO+NaO+KO 0〜3%を含有すると共に、質量比(MgO+CaO)/(SrO+BaO)の値が0〜0.4、歪点が650℃以上、屈折率ndが1.55〜2.1であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の高屈折率ガラス。
【請求項5】
密度が4.0g/cm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の高屈折率ガラス。
【請求項6】
板状であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の高屈折率ガラス。
【請求項7】
オーバーフローダウンドロー法又はスロットダウンドロー法で成形されてなることを特徴とする請求項6に記載の高屈折率ガラス。
【請求項8】
少なくとも一方の面が未研磨であり、その未研磨面の表面粗さRaが10Å以下であることを特徴とする請求項6又は7に記載の高屈折率ガラス。
【請求項9】
照明デバイスに用いることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の高屈折率ガラス。
【請求項10】
有機EL照明に用いることを特徴とする請求項9に記載の高屈折率ガラス。
【請求項11】
有機太陽電池に用いることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の高屈折率ガラス。
【請求項12】
有機ELディスプレイに用いることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の高屈折率ガラス。
【請求項13】
ガラス組成として、質量%で、SiO 25〜60%、B 0〜5%、BaO 20〜40%、La 0.1〜10%、Nb 0.1〜10%、La+Nb 0.1〜20%、LiO+NaO+KO 0〜0.1%を含有すると共に、質量比(MgO+CaO)/(SrO+BaO)の値が0〜0.2、屈折率ndが1.55〜2.0であることを特徴とする高屈折率ガラス。
【請求項14】
板状であり、実質的にPbOを含有せず、屈折率ndが1.55〜2.0、歪点が630℃以上、液相粘度が10dPa・s以上、30〜380℃における熱膨張係数が45×10−7/℃〜95×10−7/℃、厚みが0.05〜1.5mm、少なくとも一方の面の表面粗さRaが30Å以下であることを特徴とする高屈折率ガラス。

【公開番号】特開2012−121756(P2012−121756A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−273465(P2010−273465)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)
【Fターム(参考)】