説明

高屈折率ポリシラン

【課題】 屈折率が非常に高く、溶媒に対する溶解性、樹脂に対する相溶性、及び成膜性に優れるポリシランを提供する。
【解決手段】 アリールトリハロシラン単位と、モノハロシラン単位及びジハロシラン単位から選択された少なくとも一種の他のハロシラン単位とでポリシランを構成する。ポリシランは、(i)金属マグネシウム成分単独で構成された触媒、あるいは(ii)金属マグネシウム成分とハロゲン化リチウム又は多価金属のハロゲン化物とを組合せた触媒系の存在下、非プロトン性溶媒中、アリールトリハロシラン化合物と、他のハロシラン化合物との反応により得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非常に高い屈折率を有するとともに、溶媒溶解性及び成膜性に優れるポリシラン及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリシランは、セラミックス前駆体、光電子材料(例えば、フォトレジスト、有機感光体などの光電子写真材料、光導波路などの光伝送材料、光メモリなどの光記録材料、エレクトロルミネッセンス素子用材料など)などとして注目されている。このような用途では、ポリシランは、通常、薄膜の形態で使用される。しかし、最も一般的なポリシランであるメチルフェニルポリシラン、ジフェニルポリシランは、溶媒への溶解性が低く、しかもこれらのポリシランの薄膜は硬くて脆く、機械的強度が低いため、クラックなどの欠陥を生じやすい。また、ポリシランの屈折率は、有機化合物としては高いものの、ほとんどが1.75以下であり、また、屈折率の高いポリシランほど溶媒への溶解性や耐クラック性が低いという傾向がある。
【0003】
なお、ポリシランを製造する方法として、WO98/29476号パンフレット(特許文献1)には、非プロトン性溶媒中、リチウム塩(LiCl、LiNO3、Li2CO3、LiClO4など)及び金属ハロゲン化物(FeCl2、FeCl3など)の共存下、ジハロシランにマグネシウム又はマグネシウム合金を作用させることにより、ポリシランを形成する方法が開示されている。しかし、この方法では、リチウム塩、金属ハロゲン化物及びマグネシウム成分の3成分が必須であるとともに、得られるポリシランは、溶媒への溶解性や樹脂などに対する親和性、成膜性が不十分である。
【0004】
また、特開2005−36139号公報(特許文献2)には、ジアリールシラン単位と他のハロシラン単位(モノ乃至テトラハロシラン単位など)とで構成されたコポリシランが開示されている。そして、前記特許文献2の実施例では、ジフェニルジクロロシランとフェニルトリクロロシランとを400/100(モル比)で用いて得られたコポリシランが開示されている。しかし、このようなコポリシランでは、溶媒溶解性及び成膜性に加え、屈折率も1.70〜1.73とある程度改善できるものの、さらに高い屈折率(例えば、1.75以上の屈折率)が要求される用途には適用できない。
【特許文献1】WO98/29476号パンフレット(請求項1)
【特許文献2】特開2005−36139号公報(請求項1及び2、並びに実施例4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、屈折率が非常に高く、溶媒への溶解性や成膜性に優れ、薄膜として使用可能なポリシラン及びその製造方法を提供することにある。
【0006】
また、本発明の他の目的は、簡便な方法により、ポリシランの物性を制御可能なポリシランの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、アリールトリハロシラン化合物とモノハロシラン化合物及び/又はジハロシラン化合物とを反応させると、屈折率が高く、溶媒への溶解性や成膜性に優れるポリシランが容易に得られることを見いだし、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明のポリシランは、アリールトリハロシラン単位と、モノハロシラン単位及びジハロシラン単位から選択された少なくとも一種の他のハロシラン単位とで構成されたポリシランである。前記ポリシランは、(i)金属マグネシウム成分単独で構成された触媒、あるいは(ii)金属マグネシウム成分とハロゲン化リチウム又は多価金属のハロゲン化物とを組合せた触媒系の存在下、非プロトン性溶媒中、アリールトリハロシラン化合物と、モノハロシラン化合物及びジハロシラン化合物から選択された少なくとも一種の他のハロシラン化合物との反応により得られる。
【0009】
前記ポリシランにおいて、アリールトリハロシラン単位と他のハロシラン単位との割合(モル比)は、前者/後者=60/40〜99/1程度であってもよい。
【0010】
前記アリールトリハロシラン単位は、下記式(1)
【0011】
【化1】

【0012】
(式中、X1〜X3は同一又は異なってハロゲン原子を示し、R1は有機基又はシリル基を示し、R1はnによって異なっていてもよい。nは0〜5の整数である)
で表されるアリールトリハロシラン化合物に対応するハロシラン単位であってもよく、前記モノハロシラン単位は、下記式(2)
【0013】
【化2】

【0014】
(式中、X4はハロゲン原子を示し、R2〜R4は同一又は異なって、水素原子、有機基又はシリル基を示す)
で表されるモノハロシラン化合物に対応するハロシラン単位であってもよく、前記ジハロシラン単位は、下記式(3)
【0015】
【化3】

【0016】
(式中、X5及びX6は同一又は異なって、ハロゲン原子を示し、R5及びR6は同一又は異なって、水素原子、有機基又はシリル基を示す)
で表されるジハロシラン化合物に対応するハロシラン単位であってもよい。前記式(1)〜(3)において、R1〜R6で表される有機基は、炭化水素基、アルコキシ基、アミノ基、又はN−置換アミノ基であってもよい。前記ポリシランは、C6-10アリールトリハロシラン化合物に対応する単位と、トリアルキルハロシラン、アルキルアリールジハロシラン、及びジアリールジハロシランから選択された少なくとも一種の他のハロシラン化合物に対応するシラン単位とを有していてもよい。
【0017】
本発明では、(i)金属マグネシウム成分単独で構成された触媒、あるいは(ii)金属マグネシウム成分とハロゲン化リチウム又は多価金属のハロゲン化物とを組合せた触媒系の存在下、非プロトン性溶媒中で、アリールトリハロシラン化合物と、モノハロシラン化合物及びジハロシラン化合物から選択された少なくとも一種の他のハロシラン化合物とを反応させてポリシランを製造する。
【0018】
本発明には、前記ポリシランを用いて、製膜性及び/又は溶媒への溶解性と、屈折率とを改善する方法も含まれる。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、アリールトリハロシラン単位と特定のシラン単位(モノハロシラン単位及び/又はジハロシラン単位)とでポリシランを構成するので、屈折率が非常に高いポリシランを簡便に製造できる。また、溶媒への溶解性、樹脂に対する相溶性及び成膜性にも優れ、薄膜として使用可能なポリシランを簡便に製造できる。また、アリールトリハロシラン単位と、特定のシラン単位とを組み合わせるので、特に特殊な装置や方法を用いなくても、簡便な方法により、ポリシランを高収率で製造できるとともに、ポリシランの物性を容易に制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
[ポリシラン]
本発明のポリシランは、アリールトリハロシラン単位と、モノハロシラン単位及びジハロシラン単位から選択された少なくとも一種の他のハロシラン単位とで構成されたコポリシランである。前記ポリシランは、前記アリールトリハロシラン単位に対応するアリールトリハロシラン化合物と、前記モノハロシラン単位及びジハロシラン単位にそれぞれ対応するモノハロシラン化合物及びジハロシラン化合物から選択された少なくとも一種の他のハロシラン化合物との反応により得られる。
【0021】
前記アリールトリハロシラン化合物、モノハロシラン化合物及びジハロシラン化合物は、それぞれ、前記式(1)、(2)及び(3)で表されるアリールトリハロシラン化合物、モノハロシラン化合物、及びジハロシラン化合物であってもよい。
【0022】
前記式(1)、(2)及び(3)において、R1〜R6で表される有機基としては、アルキル基[メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル及びt−ブチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-10アルキル基(好ましくはC1-6アルキル基、特にC1-4アルキル基など)など]、シクロアルキル基(シクロヘキシル基などのC5-8シクロアルキル基、特にC5-6シクロアルキル基など)、アリール基(フェニル、ナフチル基などのC6-10アリール基など)、アラルキル基[ベンジル、フェネチル基などのC6-10アリール−C1-6アルキル基(C6-10アリール−C1-4アルキル基など)など]などの炭化水素基の他、アルコキシ基[メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ及びt−ブトキシ基などのC1-10アルコキシ基(好ましくはC1-6アルコキシ基、特にC1-4アルコキシ基)など]、アミノ基、及びN−置換アミノ基(前記アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アシル基などで置換されたN−モノ又はジ置換アミノ基など)などが挙げられる。
【0023】
前記アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を構成するアリール基などは、置換基を有していてもよい。このような置換基としては、前記例示のアルキル基(特にC1-6アルキル基など)、前記例示のアルコキシ基などが挙げられる。置換基の個数は、特に制限されず、1つであってもよく、複数(例えば、2〜4個)であってもよい。このような置換基を有する有機基としては、例えば、トリル、キシレニル、エチルフェニル、メチルナフチル基などのC1-6アルキルC6-10アリール基(好ましくはモノ乃至トリC1-4アルキルC6-10アリール基、特にモノ又はジC1-4アルキルフェニル基など);メトキシフェニル、エトキシフェニル、メトキシナフチル基などのC1-10アルコキシC6-10アリール基(好ましくはC1-6アルコキシC6-10アリール基、特にC1-4アルコキシフェニル基など)などが挙げられる。
【0024】
1〜R6で表されるシリル基は、前記アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基及びアルコキシ基などで置換された置換シリル基であってもよい。
【0025】
これらの基のうち、水素原子又は炭化水素基、特に、炭化水素基(アルキル基、アリール基、アラルキル基など)が好ましい。
【0026】
前記式(1)〜(3)において、X1〜X6で表されるハロゲン原子には、F、Cl、Br、I原子が含まれる。これらのハロゲン原子のうち、特に、Cl及びBr(特にCl)原子が好ましい。
【0027】
(1)アリールトリハロシラン化合物
前記式(1)で表されるアリールトリハロシラン化合物において、nは0〜5の整数、好ましくは0〜3の整数、さらに好ましくは0〜2の整数であってもよい。また、基R1はnによって異なっていてもよい。
【0028】
アリールトリハロシラン化合物としては、前記式(1)において、基R1を有しない、すなわちn=0であるフェニルトリハロシラン化合物、又は基R1が前記アルキル基(例えば、メチル基、エチル基などのC1-6アルキル基など)及び/又は前記アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基などのC1-6アルコキシ基など)などである置換フェニルトリハロシラン化合物(例えば、nが1〜3の整数である化合物)が好ましい。
【0029】
アリールトリハロシラン化合物の具体例としては、例えば、フェニルトリクロロシラン、フェニルトリブロモシラン、フェニルブロモジクロロシランなどのフェニルトリハロシラン;前記フェニルトリハロシランに対応する置換フェニルトリハロシラン(トリルトリクロロシラン、キシリルトリクロロシラン、メトキシトリルトリクロロシランなどのモノ乃至トリC1-4アルキル−フェニルトリハロシラン;メトキシフェニルトリクロロシランなどのモノ乃至トリC1-4アルコキシ−フェニルトリハロシランなど)などのC6-10アリールトリハロシランなどが挙げられる。
【0030】
アリールトリハロシラン化合物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0031】
(2)モノハロシラン化合物
前記式(2)のモノハロシラン化合物において、基R2〜R4としては、アルキル基、アリール基などの炭化水素基が好ましい。
【0032】
モノハロシラン化合物の具体例としては、例えば、トリアルキルハロシラン(トリメチルクロロシランなどのトリC1-6アルキルハロシランなど)、ジアルキルアリールハロシラン(ジメチルフェニルクロロシランなどのジC1-6アルキルC6-10アリールハロシランなど)、アルキルジアリールハロシラン(メチルジフェニルクロロシランなどのC1-6アルキルジC6-10アリールハロシランなど)、トリアリールハロシラン(トリフェニルクロロシランなどのトリC6-10アリールハロシランなど)などが例示できる。
【0033】
これらのモノハロシラン化合物は、単独で又は二種以上組合せて使用できる。
【0034】
(3)ジハロシラン化合物
前記式(3)のジハロシラン化合物において、基R5及びR6としては、アルキル基、アリール基などの炭化水素基が好ましい。
【0035】
ジハロシラン化合物の具体例としては、例えば、ジアルキルジハロシラン(ジメチルジクロロシランなどのジC1-4アルキルジハロシランなど)、アルキルアリールジハロシラン(メチルフェニルジクロロシランなどのC1-4アルキルC6-10アリールジハロシランなど)、ジアリールジハロシラン(ジフェニルジクロロシランなどのジC6-10アリールジハロシランなど)などが挙げられる。
【0036】
これらのジハロシラン化合物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0037】
前記他のハロシラン化合物のうち、特に、トリアルキルハロシラン、アルキルアリールジハロシラン、ジアリールジハロシランなどが好ましい。すなわち、ポリシランのうち、これらの他のハロシラン化合物に対応するシラン単位と、アリールトリハロシラン単位(C6-10アリールトリハロシランなど)とを有するポリシランが好ましい。
【0038】
ポリシランの重合形態は、特に限定されず、ランダム又はブロックコポリマーであってもよい。ブロックコポリマーは、例えば、ジハロシラン化合物(3)のオリゴマー又は重合体(特に、ジハロシラン単位の繰り返し数が多いオリゴマー又は重合体)を用いることにより得ることができる。また、ハロシラン化合物(2)や(3)をモノマーとして、またハロシラン単位の繰り返し数が小さなオリゴマーなどを用いると、ランダムコポリマーを得ることができる。
【0039】
ポリシランにおいて、アリールトリハロシラン化合物(アリールトリハロシラン単位)と他のトリハロシラン化合物(他のトリハロシラン単位)との割合(モル比)は、特に制限されず、前者/後者=10/90〜99/1の広い範囲から選択でき、例えば、10/90〜95/5、好ましくは20/80〜90/10、さらに好ましくは30/70〜80/20程度であってもよい。なお、他のハロシラン単位が、ジアリールジハロシラン単位を含む場合、前記ジアリールジハロシラン単位1モルに対する前記アリールトリハロシラン単位の割合は、0.25モルを越えるのが好ましい。本発明のポリシランは、通常、アリールトリハロシラン単位を主たる構成単位として含んでおり、前記アリールトリハロシラン化合物と他のトリハロシラン化合物との割合は、例えば、55/45〜99/1、好ましくは60/40〜95/5、さらに好ましくは65/35〜90/10程度であってもよい。
【0040】
ハロシラン単位全体に対するアリールトリハロシラン単位の割合(すなわち、ハロシラン化合物全体に対するアリールトリハロシラン化合物の割合)は、例えば、50モル%以上(例えば、50〜98モル%程度)、好ましくは55〜97モル%(例えば、60〜97モル%)、さらに好ましくは65〜95モル%(例えば、70〜95モル%)程度であってもよい。
【0041】
なお、ポリシランにおいて、トリハロシラン化合物の割合が大きくなると、屈折率は向上するものの、溶媒に対する溶解性は低下する傾向にある。また、トリハロシラン化合物の割合が小さくなると、溶媒に対する溶解性及び成膜性は向上するものの、屈折率は徐々に低下する傾向にある。
【0042】
ポリシランの重量平均分子量は、例えば、500〜5,000、好ましくは800〜4,000、さらに好ましくは1,000〜3,000(例えば、1,200〜2,500)程度である。
【0043】
また、ポリシランの薄膜屈折率(ポリシランで形成した薄膜の屈折率(波長589.4nmの光に対する屈折率))は、薄膜の厚みが1μmのとき、1.75以上(例えば、1.75〜1.85)、好ましくは1.755〜1.85、さらに好ましくは1.76〜1.85程度である。
【0044】
ポリシランの溶液透過率(波長600nmの可視光に対する透過率)は、ポリシランを50重量%の濃度で含むトルエン溶液について、60%以上(例えば、65〜100%程度)、好ましくは70〜100%、さらに好ましくは80〜100%(例えば、90〜100%)程度である。また、前記溶液透過率は、ポリシランを10重量%の濃度で含むプロピレングリコール−1−モノエチルエーテル−2−アセタート(PGMEA)溶液について、70%以上(例えば、70〜100%)、好ましくは80〜100%(例えば、90〜100%)、さらに好ましくは90〜100%程度である。ポリシランは、前記トルエン溶液及びPGMEA溶液の少なくとも一方が、このような範囲の溶液透過率を有していてもよいが、通常、双方の溶液について、上記範囲の溶液透過率を有している場合が多い。
【0045】
[ポリシランの製造方法]
前記ポリシランは、アリールトリハロシラン化合物と、モノハロシラン化合物及びジハロシラン化合物から選択された少なくとも一種の他のハロシラン化合物とを反応させることにより製造できる。前記アリールトリハロシラン化合物と、他のハロシラン化合物との反応は、通常、(i)マグネシウム金属成分又は(ii)マグネシウム金属成分及び金属ハロゲン化物の存在下、非プロトン性溶媒中で行ってもよい。
【0046】
(触媒又は触媒系)
前記反応において、(i)マグネシウム金属成分、及び(ii)マグネシウム金属成分及び金属ハロゲン化物は、それぞれ触媒又は触媒系を構成する。本発明の製造方法では、金属ハロゲン化物は、必須ではなく、マグネシウム金属成分単独でも、屈折率及び溶媒に対する溶解性の高いポリシランを製造することが可能である。特に、従来使用されていた触媒系、例えば、マグネシウム金属成分と、ハロゲン化リチウム又はリチウム塩と、他の金属ハロゲン化物(リチウムを除く金属のハロゲン化物)との3成分を組合せて用いる必要がなく、かつ屈折率を大きく改善(1.75以上に改善)することができる。
【0047】
(a)マグネシウム金属成分
マグネシウム金属成分は、少なくともマグネシウムを含有していればよく、マグネシウム金属単体又はマグネシウム系合金、あるいは前記マグネシウム金属又は合金を含む混合物などであってもよい。マグネシウム合金としては、特に制限されず、慣用のマグネシウム合金、例えば、アルミニウム、亜鉛、希土類元素(スカンジウム、イットリウムなど)などの成分を含むマグネシウム合金などが例示できる。これらのマグネシウム金属成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0048】
マグネシウム金属成分の形状は、ハロシラン化合物の反応性を損なわない限り特に限定されないが、粉粒状体(粉体、粒状体など)、リボン状体、切削片状体、塊状体、棒状体、平板などが例示され、特に表面積の大きい形状(粉体、粒状体、リボン状体、切削片状体など)であるのが好ましい。マグネシウム金属成分が粉粒状の場合、平均粒径は、例えば、1〜10,000μm、好ましくは10〜5,000μm、さらに好ましくは20〜1,000μm程度である。
【0049】
なお、マグネシウム金属成分の保存状況などによっては、金属表面に被膜(酸化被膜など)が形成されることがある。この被膜は反応に悪影響を及ぼすことがあるので、必要に応じて、切削などによって除去してもよい。
【0050】
マグネシウム金属成分の使用量は、通常、ハロシラン化合物のハロゲンに対して、マグネシウム換算で、1〜10当量であり、好ましくは1〜5当量、さらに好ましくは1〜3当量程度である。また、マグネシウム金属成分の使用量は、通常、ハロシラン化合物に対してモル数でマグネシウムとして1〜10倍であり、より好ましくは1.2〜5倍であり、最も好ましくは1.5〜3倍程度である。
【0051】
マグネシウム金属成分は、前記式(1)〜(3)のハロシラン化合物を還元して、ポリシランコポリマーを形成させるとともに、マグネシウム自身は酸化されてハロゲン化物を形成する。
【0052】
(b)金属ハロゲン化物
金属ハロゲン化物を、マグネシウム金属成分と組み合わせて用いると、ハロシラン化合物の反応性を高めたり、生成物の溶媒への溶解性や成膜性を改善することもできる。また、生成物ポリシランの物性(屈折率、分子量など)を制御することもできる。但し、前記触媒系は、マグネシウム金属成分と、ハロゲン化リチウム又はリチウム塩と、リチウムを除く金属のハロゲン化物との組合せを含まない。
【0053】
このような金属ハロゲン化物としては、ハロゲン化リチウム(塩化リチウムLiCl、臭化リチウムLiBr、ヨウ化リチウムLiIなど)及び多価金属のハロゲン化物などが例示できる。多価金属のハロゲン化物としては、例えば、遷移金属(例えば、サマリウムなどの周期表3A族元素;チタンなどの周期表4A族元素;バナジウムなどの周期表5A族元素;鉄、コバルト、パラジウムなどの周期表8族元素;亜鉛などの周期表2B族元素など)、周期表3B族金属(アルミニウムなど)、周期表4B族金属(スズなど)などのハロゲン化物(塩化物、臭化物又はヨウ化物など)などが挙げられる。
【0054】
金属ハロゲン化物の具体例としては、例えば、塩化物[LiCl;SmCl2、TiCl4、VCl2、塩化鉄(FeCl2、FeCl3など)、CoCl2、PdCl2、ZnCl2、AlCl3、SnCl2など]、臭化物(LiBr;FeBr2、FeBr3などの臭化鉄など)、ヨウ化物(SmI2など)などが例示できる。これらの金属ハロゲン化物のうち、塩化物(塩化リチウム、塩化鉄、塩化亜鉛など)及び臭化物が好ましい。金属ハロゲン化物は、単独で又は二種以上組合せて使用できる。
【0055】
また、前記触媒は、(i)金属マグネシウム成分単独、あるいは(ii)金属マグネシウム成分とハロゲン化リチウム又は多価金属のハロゲン化物との組合せ(すなわち、マグネシウム金属成分と、ハロゲン化リチウムと、多価金属のハロゲン化物との組合せは含まない)であってもよい。
【0056】
溶媒(又は反応液)中の金属ハロゲン化物の濃度は、例えば、0.001〜3mol/l、好ましくは0.005〜1mol/l、さらに好ましくは0.01〜0.5mol/l程度である。なお、反応液中の金属ハロゲン化物の濃度が高すぎると、生成するポリシランの溶解性は高くなる傾向にあるが、高い屈折率(例えば、屈折率1.75以上)を有するポリシランは得られ難くなる虞がある。
【0057】
(非プロトン性溶媒)
反応溶媒としては、非プロトン性溶媒が広く使用でき、例えば、エーテル類(1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテルなどの環状又は鎖状C4-6エーテル)、カーボネート類(プロピレンカーボネートなど)、ニトリル類(アセトニトリル、ベンゾニトリルなど)、アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)、ハロゲン含有化合物(塩化メチレン、クロロホルム、ブロモホルム、クロロベンゼン、ブロモベンゼンなどのハロゲン化炭化水素など)、芳香族炭化水素類(ベンゼン、トルエン、キシレンなど)、脂肪族炭化水素類(例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、シクロオクタンなどの鎖状又は環状炭化水素類)などが挙げられる。これらの非プロトン性溶媒は、単独で又は二種以上組合わせて混合溶媒として使用できる。これらの溶媒のうち、極性溶媒単独(テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタンなど)、2種以上の極性溶媒の混合物、極性溶媒と非極性溶媒との混合物などが好ましい。極性溶媒と非極性溶媒との混合物を使用する場合、両者の割合は、前者/後者(重量比)=1/0.01〜1/20程度であってもよい。
【0058】
なお、溶媒(又は反応液)中のハロシラン化合物の濃度が低すぎると、重合が効率よく行われない虞があり、高すぎると反応に使用する金属ハロゲン化物が溶解しない虞がある。そのため、溶媒(又は反応液)中のハロシラン化合物の濃度は、通常、0.05〜20mol/l、好ましくは0.2〜15mol/l、特に0.3〜13mol/l程度となるよう、溶媒の割合を適宜調整するのが好ましい。
【0059】
本発明の製造方法では、例えば、密閉可能な反応容器に、アリールトリハロシラン化合物(1)、他のハロシラン化合物(モノハロシラン化合物(2)及び/又はジハロシラン化合物(3))、及び前記触媒又は触媒系を反応溶媒とともに収容し、必要により機械的又は磁気的に攪拌しつつ、反応を行ってもよい。出発原料のハロシラン化合物は、予め、アリールトリハロシラン化合物と他のハロシラン化合物との混合物として用いてもよく、それぞれのハロシラン化合物を別途反応系に添加してもよい。例えば、アリールトリハロシラン化合物と他のハロシラン化合物とを併行して反応系に添加してもよく、一方のハロシラン化合物を添加して、ある程度反応を進行させた後、他方のハロシラン化合物を添加してもよい。なお、アリールトリハロシラン化合物と他のハロシラン化合物を予め混合して用いる方法は、ランダムコポリマーを得るのに有用であり、一方のハロシラン化合物の反応の途中で、他方のハロシラン化合物を添加する方法は、ブロックコポリマーを得るのに有用である。
【0060】
なお、反応において、基質のハロシラン化合物は、できる限り高純度であるのが好ましい。例えば、液体のハロシラン化合物では、水素化カルシウムなどの乾燥剤を用いて乾燥し、蒸留して使用するのが好ましく、固体のハロシラン化合物については、再結晶法などにより、精製して使用するのが好ましい。
【0061】
反応容器は、密閉できる限り、形状や構造についての制限は特にない。反応容器内は、乾燥雰囲気であればよいが、乾燥した不活性ガス(例えば、ヘリウム、窒素、アルゴンガス)雰囲気、特に、脱酸素し、乾燥したアルゴンガス雰囲気が好ましい。
【0062】
反応時間は、ハロシラン化合物の種類や量、マグネシウム金属成分の量、金属ハロゲン化物の有無などによって異なるが、通常、5分以上であり、好ましくは30分〜100時間程度である。反応時間を調整することにより、ポリシランの分子量を制御してもよい。
【0063】
反応温度は、通常、−20℃から使用する溶媒の沸点までの温度範囲内にあり、好ましくは0〜70℃、さらに好ましくは15〜70℃程度の範囲内であってもよい。また反応温度を高くするほど高屈折率のポリシランが得られるが、溶媒への溶解性が低下する場合がある。
【0064】
なお、フェニルトリクロロシランを原料とするホモポリマーは、製造条件によっては1.75以上の高屈折率を有するものの、殆どの有機溶媒に対して溶解性が低い。また、メチルフェニルジクロロシランやジフェニルジクロロシランなどを原料とするホモポリマーは、屈折率が1.75以下であり、成膜時にクラックが生じやすく、機械的強度も低い。
【0065】
これに対し、本発明では、高屈折率ポリシランの原料であるアリールトリハロシラン化合物と、他のハロシラン化合物(モノクロロハロシラン化合物及び/又はジハロシラン化合物)とを組み合わせてポリシランを製造するため、ポリシランの屈折率を(例えば、屈折率1.75以上に)向上できるだけでなく、溶媒(有機溶媒など)に対する溶解性、成膜性、及び樹脂(有機ポリマーなど)との相溶性も改善できる。そのため、本発明には、アリールトリハロシラン化合物に前記他のハロシラン化合物を反応させることにより、ポリシランの溶媒の対する溶解性、樹脂に対する相溶性(又は親和性)、及び/又は屈折率を改善する方法も含まれる。
【0066】
また、本発明では、特に特殊な装置や煩雑な手段を用いなくても、汎用の装置を用いて、簡便な方法により前記ポリシランを高収率で製造できる。また、ハロシラン化合物の組合せ、反応温度、反応時間、触媒又は触媒系の割合などを適宜調整することにより、ポリシランの構造や屈折率、分子量、溶解性などの諸物性を制御することもできる。
【0067】
なお、本発明のポリシランは、樹脂と組み合わせて樹脂組成物として用いてもよい。このような樹脂組成物において、前記ポリシラン(コポリシラン、又はポリシラン混合物)は、通常、添加剤として添加される。樹脂の種類は、特に限定されず、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂のいずれであってもよい。
【0068】
熱可塑性樹脂としては、例えば、オレフィン系樹脂[ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、非晶質ポリオレフィンなど]、ハロゲン含有樹脂[ポリ塩化ビニル、フッ化樹脂など]、スチレン系樹脂[ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン樹脂など]、アクリル系樹脂[ポリメタクリル酸メチルなど]、ポリカーボネート系樹脂[ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂など]、ポリエステル系樹脂[ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、液晶ポリエステルなど]、ポリアセタール系樹脂、ポリアミド系樹脂[ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン6T、ナイロンMXDなど]、ポリフェニレンエーテル系樹脂[変性ポリフェニレンエーテルなど]、ポリスルホン系樹脂[ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなど]、ポリイミド系樹脂[ポリエーテルイミド、ポリアミドイミドなど]、マレイミド系樹脂[ポリアミノビスマレイミド、ビスマレイミドトリアジン樹脂など]、熱可塑性エラストマーなどが例示できる。
【0069】
熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、フラン樹脂、アミノ樹脂[尿素樹脂、メラミン樹脂など]、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂などが例示できる。熱硬化性樹脂は初期縮合物であってもよい。
【0070】
これらの樹脂は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。複数の樹脂を用いる場合、ポリマーアロイを形成していてもよい。
【0071】
ポリシランの添加量は、樹脂及びポリシランの種類、並びに用途などによって異なるが、概ね樹脂100重量部に対し、0.01〜50重量部(例えば、0.5〜50重量部)、好ましくは0.1〜30重量部程度であってもよい。添加量が少ないと、樹脂に難燃性や撥水性などの特性を付与できず、多すぎると樹脂の特性を損なう場合がある。
【0072】
なお、前記樹脂組成物は、用途に応じて種々の添加剤、例えば、溶剤、充填剤、強化剤、可塑剤、硬化剤、重合開始剤、触媒、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤など)、離型剤、帯電防止剤、着色剤、加硫剤、消泡剤、レベリング剤、分散剤、流動調整剤などを含んでいてもよい。
【0073】
樹脂へのポリシランの添加混合方法は、特に制限されず、通常、樹脂ペレットと、ポリシランと、必要により添加剤とを溶融混合する場合が多い。例えば、樹脂ペレットと安定剤などの成分とを予備混合したのち、ポリシランを、必要により強化剤や充填剤などの添加剤とともに混練装置で溶融混合してもよい。溶融混合された樹脂組成物は、通常、ペレット化され、成形に供される。混練装置はバッチ式と連続式がある。バッチ式混練装置としては、ミキシングロール、ニーダー、インテンシブミキサーなどが例示できる。連続式混練装置としては、単軸スクリュー押出機、噛合型2軸スクリュー押出機、非噛合型2軸押出機などが例示できる。
【0074】
熱硬化性樹脂においては、一般的に、硬化剤などの各種樹脂添加剤とともに、ポリシランと樹脂初期縮合物とを混合することにより硬化性組成物が調製される。なお、ポリシランと樹脂初期縮合物とを混合又は溶解槽にて混合するとともに、必要により強化剤などの添加剤と混練して硬化性組成物を調製し、この硬化性組成物を基材などに含浸又は塗布して乾燥し、硬化させてもよい。
【0075】
樹脂組成物の成形方法としては、樹脂の種類、用途によって異なるが、熱可塑性樹脂の場合は、押出成形、射出成形、ブロー成形、延伸フィルム成形、圧縮成形、カレンダー成形、RIM成形(反応射出成形)などの方法が例示できる。熱硬化性樹脂の場合は、圧縮成形、トランスファー成形、積層成形、注型成形、RIM成形などの方法が例示できる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、アリールポリシランの特性を維持しつつ、溶媒溶解性や樹脂などに対する親和性を向上できる。そのため、アリールポリシランの特性、例えば、難燃性、撥水性、離型性、滑り性などの特性を樹脂や基材などに有効に付与できる。そのため、種々の用途、例えば、セラミックス前駆体、光電子材料(例えば、フォトレジスト、有機感光体などの光電子写真材料、光導波路などの光伝送材料、光メモリなどの光記録材料、エレクトロルミネッセンス素子用材料など)、難燃剤、撥水剤、離型剤などとして利用できる。
【実施例】
【0077】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0078】
実施例1
三方コックを装着した内容積1000mlの丸型フラスコに、粒状(粒径20〜1000μm)のマグネシウム25gを仕込み、1mmHg(=133kPa)の減圧下、50℃で加熱して、反応器内部を乾燥した。次いで、乾燥アルゴンガスを反応器内に導入し、予めナトリウム−ベンゾフェノンケチルで乾燥したテトラヒドロフラン(THF)500mlを加え、50℃で約30分間撹拌した。この反応混合物に、予め蒸留により精製したフェニルトリクロロシラン(PhSiCl3)105.8g(0.5mol)及びトリメチルクロロシラン(Me3SiCl)10.9g(0.1mol)をシリンジを用いて添加し、55℃で約24時間撹拌した。反応終了後、反応混合物に1N(=1モル/L)の塩酸250mlを投入し、さらにトルエン500mlで抽出した。トルエン相を純水200mlで5回洗浄し、トルエン相を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、トルエンを留去することにより、フェニルトリクロロシラン−トリメチルクロロシラン共重合体を得た(重量平均分子量1900、収率95%)。
【0079】
実施例2
トリメチルクロロシランの量を21.7g(0.2mol)とする以外は実施例1と同様にして反応を行い、フェニルトリクロロシラン−トリメチルクロロシラン共重合体を得た(重量平均分子量1600、収率95%)。
【0080】
実施例3
トリメチルクロロシラン10.9g(0.1mol)に変えて、メチルフェニルジクロロシラン(MePhSiCl2)19.1g(0.1mol)を用いる以外は、実施例1と同様にして反応を行い、フェニルトリクロロシラン−メチルフェニルジクロロシラン共重合体を得た(重量平均分子量1700、収率94%)。
【0081】
実施例4
トリメチルクロロシラン10.9g(0.1mol)に代えて、ジフェニルジクロロシラン(Ph2SiCl2)25.3g(0.1mol)を用いる以外は、実施例1と同様にして反応を行い、フェニルトリクロロシラン−ジフェニルジクロロシラン共重合体を得た(重量平均分子量1500、収率90%)。
【0082】
比較例1
トリメチルクロロシランを用いることなく、フェニルトリクロロシランを単独で用いる以外は実施例1と同様にして反応を行い、ポリフェニルシリンを得た(重量平均分子量2500、収率89%)。
【0083】
比較例2
WO98/29476号パンフレットに記載の方法に準じて、メチルフェニルジクロロシランを原料にポリメチルフェニルシランを得た。
【0084】
比較例3
WO98/29476号パンフレットに記載の方法に準じて、ジフェニルジクロロシランを原料にポリジフェニルシランを得た。
【0085】
[特性の評価]
(1)溶液透過率
実施例及び比較例で得られたポリシランを、トルエン又はプロピレングリコール−1−モノエチルエーテル−2−アセタート(PGMEA)と混合し、50重量%トルエン混合液又は10重量%PGMEA混合液を調製し、可視光(600nm)の透過率を測定した。
【0086】
(2)薄膜屈折率
実施例及び比較例で得られたポリシランを、PGMEAと混合し、10重量%PGMEA混合液を調製した。この混合液を用いてスピンコート法により基材上に乾燥後の厚み1μmとなるように塗膜を形成し、得られた薄膜につき、波長589.4nmの光に対する屈折率を測定した。
【0087】
【表1】

【0088】
表1から明らかなように、PhSiCl3を主原料としてMe3SiCl、MePhSiCl2、Ph2SiCl2を共重合させると、屈折率1.75以上であり、溶媒への溶解性も有するポリシランが得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アリールトリハロシラン単位と、モノハロシラン単位及びジハロシラン単位から選択された少なくとも一種の他のハロシラン単位とで構成されたポリシランであって、(i)金属マグネシウム成分単独で構成された触媒、あるいは(ii)金属マグネシウム成分とハロゲン化リチウム又は多価金属のハロゲン化物とを組合せた触媒系の存在下、非プロトン性溶媒中、アリールトリハロシラン化合物と、モノハロシラン化合物及びジハロシラン化合物から選択された少なくとも一種の他のハロシラン化合物との反応により得られるポリシラン。
【請求項2】
アリールトリハロシラン単位と他のハロシラン単位との割合(モル比)が、前者/後者=60/40〜99/1である請求項1記載のポリシラン。
【請求項3】
アリールトリハロシラン単位が、下記式(1)
【化1】

(式中、X1〜X3は同一又は異なってハロゲン原子を示し、R1は有機基又はシリル基を示し、R1はnによって異なっていてもよい。nは0〜5の整数である)
で表されるアリールトリハロシラン化合物に対応するハロシラン単位であり、モノハロシラン単位が、下記式(2)
【化2】

(式中、X4はハロゲン原子を示し、R2〜R4は同一又は異なって、水素原子、有機基又はシリル基を示す)
で表されるモノハロシラン化合物に対応するハロシラン単位であり、ジハロシラン単位が、下記式(3)
【化3】

(式中、X5及びX6は同一又は異なって、ハロゲン原子を示し、R5及びR6は同一又は異なって、水素原子、有機基又はシリル基を示す)
で表されるジハロシラン化合物に対応するハロシラン単位である請求項1記載のポリシラン。
【請求項4】
1〜R6で表される有機基が、炭化水素基、アルコキシ基、アミノ基、又はN−置換アミノ基である請求項3記載のポリシラン。
【請求項5】
6-10アリールトリハロシラン化合物に対応する単位と、トリアルキルハロシラン、アルキルアリールジハロシラン、及びジアリールジハロシランから選択された少なくとも一種の他のハロシラン化合物に対応するシラン単位とを有する請求項1記載のポリシラン。
【請求項6】
(i)金属マグネシウム成分単独で構成された触媒、あるいは(ii)金属マグネシウム成分とハロゲン化リチウム又は多価金属のハロゲン化物とを組合せた触媒系の存在下、非プロトン性溶媒中で、アリールトリハロシラン化合物と、モノハロシラン化合物及びジハロシラン化合物から選択された少なくとも一種の他のハロシラン化合物とを反応させてポリシランを製造する方法。

【公開番号】特開2007−77190(P2007−77190A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−263731(P2005−263731)
【出願日】平成17年9月12日(2005.9.12)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】