説明

高屈折率透明粒子及びそれを用いた高屈折率透明複合体並びに発光素子

【課題】樹脂に対する含有率が高く、この樹脂の透明性を損なわずに高屈折率を付与することが可能な高屈折率透明粒子及びそれを用いた高屈折率透明複合体並びに発光素子を提供する。
【解決手段】本発明の高屈折率透明粒子は、結晶子径が15nm以下、粒子径が1μm以上かつ100μm以下の透明な球状粒子であり、この球状粒子は、Zr、Ti、Sn、Ce、Ta、Nb、Znの群から選択される1種または2種以上を含有する屈折率が2.0以上の金属酸化物からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高屈折率透明粒子及びそれを用いた高屈折率透明複合体並びに発光素子に関し、更に詳しくは、樹脂の屈折率を高めるためのフィラー材、あるいは樹脂に光散乱性を付与するためのフィラー材として用いて好適な高屈折率透明粒子、及び、この高屈折率透明粒子を樹脂中に分散し複合一体化した透明複合体、並びに、この透明複合体を光透過領域に適用した発光素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂の屈折率を高めるためには、粒子径が20nm程度以下の屈折率の高い透明酸化物微粒子を樹脂に混合するのが一般的である。しかしながら、この方法では、透明酸化物微粒子の表面積が著しく大きく、屈折率をより高めるために透明酸化物微粒子を増量しようとすると、樹脂の粘性が極めて高くなり、その結果、ハンドリング性がなくなったり、あるいは樹脂成型ができなくなったりすることとなり、自ずと透明酸化物微粒子の混合割合が制限され、樹脂の屈折率を高めるには限界があった。
また、樹脂に光散乱性を付与するためには、樹脂に、この樹脂と屈折率の異なる樹脂ビーズを混合するのが一般的である。しかしながら、この方法では、樹脂と樹脂ビーズとの屈折率差を十分取ることが難しいために、光散乱性が不十分なものとなり、透明で光散乱性をより付与することができる材料が求められていた。
【0003】
例えば、近年、白色光を発光する半導体発光素子を透明樹脂で封止した白色発光ダイオード(LED)が大幅な省エネルギーを実現しうる照明用光源として注目されているが、この発光ダイオードでは、半導体発光領域で発生した光の一部が発光ダイオード内で消滅するために、外部への光取り出し効率が悪いという問題点があった。その理由は、半導体発光領域自体の屈折率が約2.5程度、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂等の封止樹脂の屈折率が1.4〜1.5程度であり、発光領域と封止樹脂との間の屈折率差が大きすぎてしまい、発光領域と封止樹脂との界面での全反射光が多いからである。
【0004】
そこで、封止樹脂の屈折率を1.6〜1.9程度に高めることができれば、発光領域と封止樹脂との界面での全反射光を大幅に減少させることが可能である。この場合、封止樹脂の屈折率が高ければ高い程、光の取り出し効率が向上する。一般に、ミー散乱は、粒子径が200nm〜800nmの範囲で光散乱が大きくなることにより生じ、また、レイリー散乱は、粒子径が20nm〜200nmの範囲で光散乱が大きくなることにより生じる。したがって、光散乱性の大きい粒子を樹脂中に混入すると、光の後方散乱により樹脂の屈折率を高めることは可能になるが、光の前方成分が減少するために、結果として光の取り出し効率は向上しないことになる。
そこで、散乱のない程度に小さい平均粒子径が50nm以下の酸化チタン微粒子を光硬化性樹脂に混入した光学材料が提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−221405号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した従来の光学材料においては、酸化チタン微粒子の比表面積が大きくなってしまうために、この酸化チタン微粒子の光硬化性樹脂における分散性が悪化することとなる。したがって、この酸化チタン微粒子の光硬化性樹脂に対する含有率を高くすることができず、その結果、従来の酸化チタン微粒子を封止樹脂に添加しても、樹脂の屈折率を0.2程度以上向上させることが難しいという問題点があった。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、樹脂に対する含有率が高く、この樹脂の透明性を損なわずに高屈折率を付与することが可能な高屈折率透明粒子及びそれを用いた高屈折率透明複合体並びに発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、樹脂に透明性及び高屈折率を付与することが可能な粒子について鋭意検討を重ねた結果、結晶子径が15nm以下、粒子径が1μm以上かつ100μm以下の透明な球状粒子とすれば、粒子の透明性を維持しながら高屈折率化が可能であることを見出し、さらに、この透明な球状粒子を透明樹脂中に分散させて透明複合体とすれば、透明樹脂の透明性を維持しながら高屈折率化が可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の高屈折率透明粒子は、結晶子径が15nm以下、粒子径が1μm以上かつ100μm以下の透明な球状粒子からなることを特徴とする。
【0009】
前記球状粒子は、屈折率が2.0以上の金属酸化物からなる粒子であることが好ましい。
前記金属酸化物は、Zr、Ti、Sn、Ce、Ta、Nb、Znの群から選択される1種または2種以上を含有してなることが好ましい。
前記球状粒子の空隙率は10体積%以下であることが好ましい。
前記球状粒子は、その表面が表面処理剤により処理されていてもよい。
【0010】
本発明の透明複合体は、本発明の高屈折率透明粒子を樹脂中に分散してなることを特徴とする。
【0011】
本発明の発光素子は、少なくとも光透過領域を本発明の透明複合体としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の高屈折率透明粒子によれば、結晶子径が15nm以下、粒子径が1μm以上かつ100μm以下の透明な球状粒子からなることとしたので、粒子の比表面積を小さくすることができ、粒子自体の透明性を維持しつつ、屈折率をさらに高めることができる。
したがって、透明性及び高屈折率を両立させた粒子を提供することができる。
【0013】
本発明の透明複合体によれば、本発明の高屈折率透明粒子を樹脂中に分散したので、この透明複合体における高屈折率透明粒子の含有率を高めることができ、したがって、透明複合体の透明性を維持した状態で、高屈折率化することができる。
しかも、後方散乱性が無いので、300nm〜600nmの波長帯域の光の透過率を高めることができる。したがって、透光性に優れた透明複合体を提供することができる。
【0014】
本発明の発光素子によれば、少なくとも光透過領域を本発明の透明複合体としたので、発光領域と樹脂との間の屈折率差を抑制することができ、したがって、発光領域と樹脂との界面での全反射光を大幅に減少させることができ、光の取り出し効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の高屈折率透明粒子及びそれを用いた高屈折率透明複合体並びに発光素子を実施するための最良の形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0016】
「高屈折率透明粒子」
本発明の高屈折率透明粒子は、結晶子径が15nm以下、粒子径が1μm以上かつ100μm以下の透明な球状粒子である。
【0017】
結晶子径を15nm以下としたのは、レイリー散乱が生じるのは結晶子径が20nm〜200nmの場合であるから、結晶子径を15nm以下とすることでレイリー散乱を生じさせないようにすることができるからである。
ここで、結晶子径とは、ラウエカメラ等でデバイ環を測定したり、あるいはX線回折装置にて回折線を測定したときに得られる結晶子の大きさのことであり、下記に示すシェーラー(Sherrer)の式(1)から結晶子の大きさ(Dhkl)を求めることができる。
hkl=K・λ/(βcosθ)……(1)
ただし、Dhkl=は(hkl)に垂直方向の結晶子の大きさ(nm)、λは測定に用いたX線の波長(nm)、βは結晶子の大きさによる回折線の広がり(rad)、θは回折線のブラッグ角(°)である。
また、Kは定数であり、βに半価幅(FWHM)を用いた場合、0.9となる。
【0018】
また、粒子径を1μm以上かつ100μm以下としたのは、ミー散乱が生じるのは粒子径が200nm(0.2μm)〜800nm(0.8μm)の場合であるから、粒子径を1μm以上とすることでミー散乱を生じさせないようにすることができるからである。
また、粒子径が100μmを越えると、この球状粒子を樹脂中に分散して透明複合体とした場合に、粒子の充填性が低下し、この透明複合体の屈折率を十分に高くすることができないからである。
ここで、粒子径とは、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)などの顕微鏡観察により直接観察された粒子径である。
【0019】
透明な球状粒子としては、屈折率が2.0以上の金属酸化物粒子が好ましい。
このような金属酸化物としては、Zr、Ti、Sn、Ce、Ta、Nb、Znの群から選択される1種または2種以上を含有してなる金属酸化物が好ましく、例えば、酸化ジルコニウム:イットリア添加酸化ジルコニウム、セリア添加酸化ジルコニウム、ジルコン、ジルコン酸鉛、ジルコン酸ビスマス等のジルコニア−酸化金属化合物:酸化ハフニウムまたはその化合物:酸化チタン:チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸スズ等のチタニア−酸化金属化合物:酸化スズ:酸化ビスマス:酸化ニオブ:ニオブ酸リチウム等の酸化ニオブ化合物:酸化タンタル:タンタル酸カリウム等の酸化タンタル化合物:酸化タングステン:酸化セリウム:酸化ランタン等の希土類酸化物:酸化ガリウム等を挙げることができる。
【0020】
このような球状粒子としては、その中に空隙が形成されていてもよい。
この空隙の大きさは、粒子の透明性と屈折率の観点から20nm以下が好ましく、より好ましくは10nm以下である。
また、空隙率は10体積%以下が好ましい。
空隙率を10体積%以下とする理由は、粒子の屈折率は粒子を構成する物質の屈折率×(1−空隙率/100)で表され、空隙率が10体積%以下でなければ、十分な高い屈折率を有する高屈折率透明粒子を得ることができないからである。
【0021】
このような球状粒子は、結晶子径がレイリー散乱を生じる大きさよりも小さい結晶子からなる多結晶体であり、しかも、粒子径がミー散乱を生じる大きさよりも大きいので、同程度の粒径のガラス粒子のようなガラス質、あるいはアモルファス状の粒子と比較して再帰反射がない。したがって、300nm〜600nm程度の波長の光に対して透明性を有することとなる。
【0022】
この球状粒子の製造方法については、特に制限するものではないが、屈折率が2.0以上の透明な金属酸化物球状粒子を作製する場合、以下のような方法がある。
1次粒径が10nm以下かつ分散粒径が20nm程度以下の金属酸化物ナノ粒子分散液を液滴状に噴霧して乾燥させ、球状の粒子体を形成した後、400℃程度以上の温度で加熱処理して緻密化及び焼結させることにより、空隙率が小さく、空隙サイズの小さい、結晶子径が15nm以下でかつ最小粒子径が1000nm以上の金属酸化物多結晶粒子を得ることができる。
【0023】
例えば、酸化ジルコニウム球状粒子を作製する場合、1次粒径が3nmのジルコニア粒子の水分散液(ジルコニア成分:5重量%;住友大阪セメント(株)社製)をスプレードライヤーにて噴霧乾燥して球状乾燥体を作製した後、450℃にて焼成することにより、結晶子径が6nm、粒子径が1.5μm〜10μm、空隙率が4%、比表面積が0.8m/gの緻密な球状のジルコニア粒子を得ることができる。結晶子径の大きさと空隙率は、焼成温度を高くすることで結晶子径を大きくし、空隙率を低下させることが可能である。
【0024】
この球状粒子は、樹脂中に分散させて透明複合体とする際に、樹脂との混合性を改善するために、粒子の表面を表面処理剤により処理してもよい。
表面処理剤としては、シリコーンカップリング剤、変性シリコーン、界面活性剤の群から選択された1種または2種以上が好ましい。
【0025】
シリコーンカップリング剤としては、シランカップリング剤、ビニルシランカップリング剤、エポキシシランカップリング剤、スチリルシランカップリング剤、アミノシランカップリング剤、アクリロキシシランカップリング剤、メタクロキシシランカップリング剤、メルカプトシランカップリング剤等が挙げられる。
【0026】
ここで、シランカップリング剤としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシランメチルメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン等が挙げられる。
【0027】
ビニルシランカップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等が挙げられる。
エポキシシランカップリング剤としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
スチリルシランカップリング剤としては、p−スチリルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0028】
アミノシランカップリング剤としては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
アクリロキシシランカップリング剤としては、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
メタクロキシシランカップリング剤としては、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
メルカプトシランカップリング剤としては、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
なお、カップリング剤としては、シリコーンカップリング剤以外に、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤等が挙げられる。
【0029】
変性シリコーンとしては、エポキシ変性シリコーン、エポキシ・ポリエーテル変性シリコーン、メタクリル変性シリコーン、フェノール変性シリコーン、メチルスチリル変性シリコーン、アクリル変性シリコーン、アルコキシ変性シリコーン、メチルハイドロジェンシリコーン等が挙げられる。
【0030】
界面活性剤としては、例えば、ポリカルボン酸系界面活性剤、リン酸エステル系界面活性剤、アクリル酸、クロトン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の不飽和脂肪酸等が挙げられる。
【0031】
上記の表面処理剤を用いて金属酸化物粒子の表面を処理する方法としては、湿式法、乾式法等が挙げられる。
湿式法とは、表面処理剤と金属酸化物粒子を溶媒に投入し混合することにより、金属酸化物粒子の表面を処理する方法である。
乾式法とは、表面処理剤と乾燥した金属酸化物粒子をミキサー等の乾式混合機に投入し混合することにより、金属酸化物粒子の表面を処理する方法である。
【0032】
「透明複合体」
本発明の透明複合体は、本発明の高屈折率透明粒子を透明な樹脂中に分散してなる複合体である。この透明複合体の形状は、バルク状、フィルム状、シート状等、用途に応じて適宜選択可能である。
樹脂としては、可視光線あるいは近赤外線等の所定の波長帯域の光に対して透明性を有する樹脂であればよく、熱可塑性、熱硬化性、可視光線や紫外線や赤外線等による光(電磁波)硬化性、電子線照射による電子線硬化性等の硬化性樹脂が好適に用いられる。
【0033】
このような樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ブチラール樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。特に、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂は、耐熱性や耐光性に優れるので好ましい樹脂である。
【0034】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂:脂環式エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、ヒダントインエポキシ樹脂等の含窒素環エポキシ樹脂:水添加ビスフェノールA型エポキシ樹脂、脂肪族系エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロ環型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0035】
これらは、単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、上記エポキシ樹脂の硬化剤としては、例えば、酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤が挙げられる。
この酸無水系硬化剤としては、例えば、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ナジック酸、無水グルタル酸等が挙げられる。これらは単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
一方、フェノール系硬化剤としては、フェノールノボラック樹脂系硬化剤等が挙げられる。
エポキシ樹脂と硬化剤との配合割合は、エポキシ基1等量に対し、硬化剤におけるエポキシ基と反応可能な酸無水基または水酸基の活性基が0.5〜1.5等量となるように設定するのが好ましい。
【0036】
また、シリコーン樹脂は、硬化性オルガノポリシロキサン樹脂と硬化剤とからなるもので、硬化性オルガノポリシロキサン樹脂としては、例えば、ジメチルシリコーン樹脂、メチルフェニルシリコーン樹脂、ビニル基含有シリコーン樹脂、アミノ基含有シリコーン樹脂、メタクリル基含有シリコーン樹脂、カルボキシ基含有シリコーン樹脂、エポキシ基含有シリコーン樹脂、カルビノール基含有シリコーン樹脂、フェニル基含有シリコーン樹脂、オルガノハイドロジェンシリコーン樹脂、脂環式エポキシ基変性シリコーン樹脂、多環式炭化水素含有シリコーン樹脂、芳香環炭化水素含有シリコーン樹脂等、フェニルシルセスキオキサン樹脂等が挙げられる。
【0037】
これらは、単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、硬化剤としては、ヒドロシリル化反応触媒としてアルミニウム化合物、白金化合物、ロジウム化合物、パラジウム化合物等が挙げられる。これらは、単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0038】
この透明複合体では、高屈折率透明粒子の種類によって屈折率が異なるので、高屈折率透明粒子と樹脂との比率を一律に制限することはできないが、この透明複合体を発光素子の光透過領域に適用する場合には、透明複合体の屈折率を1.6〜1.9の範囲に制御できる程度に高屈折率透明粒子を含有することが好ましい。このように高屈折率透明粒子の含有率を規定することにより、発光素子の光取り出し効率を大幅に改善することができる。
【0039】
例えば、屈折率が2.2のジルコニア粒子及び屈折率が1.5のフェニルシリコーン樹脂を用いて透明複合体を作製する場合、フェニルシリコーン樹脂100重量部に対して、ジルコニア粒子を50重量部〜85重量部の範囲で含有することによって、屈折率が1.6〜1.9の高屈折率の透明複合体を作製することができる。
このように、高屈折率透明粒子と樹脂との比率は、透明複合体の屈折率を1.6以上とする比率であればよく、概ね、透明複合体中に含有する高屈折率透明粒子の含有率は40重量%程度以上とすることが好ましい。
【0040】
この透明複合体を製造する場合、形状によって方法が異なる。
例えば、フィルム状またはシート状の場合、上記の高屈折率透明粒子、あるいは表面処理が施された高屈折率透明粒子と、複合化したい樹脂の原料とを、高速ミキサー、サンドミル、三本ロールミルなどの混合分散機により機械的に混合・分散させて混合物を作製し、次いで、この混合物を重合または縮重合させて透明粒子含有樹脂組成物とし、この透明粒子含有樹脂組成物をフィルム状、シート状等の所定の形状に成形することにより得ることができる。
【0041】
また、バルク状の場合、上記の高屈折率透明粒子と樹脂とを、高速ミキサー、サンドミル、三本ロールミルなどの混合分散機により機械的に分散させて硬化前の透明複合体を作製する。硬化前の透明複合体には、粘度やハンドリング性を改善する目的で樹脂と相溶性のある溶剤を添加してもよい。
次いで、この硬化前の透明複合体を、ディスペンサー等を用いて被注入物または金型内に注入し、次いで、加熱、可視光線や紫外線や赤外線等の光照射、電子線照射等を施すことにより得ることができる。
【0042】
「発光素子」
本発明の発光素子は、少なくとも光透過領域を本発明の透明複合体としたものである。
図1は、本発明の一実施形態の発光ダイオード(LED:発光素子)を示す断面図である。
図において、1はIII−V族化合物半導体からなるLEDチップ、2はLEDチップ1が搭載されるリードフレーム、3はリードフレーム2から外部へ引き出される外部端子、4はLEDチップ1およびリードフレーム2を封止する保護機能およびレンズ機能を兼ねた封止材(透明複合体)、5はLEDチップ1およびリードフレーム2を収納するメタルケース、6は外部端子3を絶縁するための絶縁体、7はメタルケース5に形成された開口部である。
【0043】
LEDチップ1は、サファイア等の結晶基板上にIII−V族化合物半導体、例えば、GaN、GaAlN、InGaN、InAlGaN等の窒化ガリウム系化合物半導体を積層したチップである。
封止材4は、結晶子径が15nm以下、粒子径が1μm以上かつ100μm以下の透明な球状粒子からなる高屈折率透明粒子を樹脂中に分散させた透明複合体である。
【0044】
この発光ダイオードでは、LEDチップ1からメタルケース5の開口部7に至る領域がLEDチップ1から放出される光の透過領域とされ、この光透過領域が、結晶子径が15nm以下、粒子径が1μm以上かつ100μm以下の透明な球状粒子からなる高屈折率透明粒子を樹脂中に分散させた透明複合体からなる封止材4により封止されているので、LEDチップ1の発光領域と封止材4との間の屈折率差を抑制することができ、したがって、発光領域と封止材4との界面での全反射光を大幅に減少させることができ、光の取り出し効率を向上させることができる。
【0045】
この透明複合体には、LEDチップ1の半導体発光層(活性層)からの光で励起されて発光する蛍光体粒子を含有させてもよい。
蛍光体粒子の種類としては、特に制限するものではないが、例えば、白色LED用としては、下記に挙げるような蛍光体が好適に用いられる。
例えば、黄色蛍光体としては、(Y,Gd)Al12;Ce、TbAl12;Ce、CaGaS;Eu、SrSiO;Eu等が挙げられる。
【0046】
赤色蛍光体としては、(Sr,Ca)S;Eu、(Ca,Sr)Si;Eu、CaSiN;Eu、CaAlSiN;Eu、YS;Eu、LaS;Eu、LiW;EuSm、(Sr,Ca,Mg,Ba)10(POCl;Eu,Mn、BaMgSi;EuMn等が挙げられる。
緑色蛍光体としては、Y(Al,Ga)12;Ce、SrGa;Eu、CaScSi12;Ce、Sr−SiON;Eu、ZnS;Cu,Al、BaMgAl1017;Eu,Mn、SrAl12;Eu等が挙げられる。
青色蛍光体としては、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(POCl;Eu、(Ba,Sr)MgAl1017;Eu、(Sr,Ba)MgSi;Eu等が挙げられる。
これらの蛍光体は、2種以上を混合して用いてもよい。
【0047】
この封止材4を形成するには、まず、本発明の高屈折率透明粒子と分散媒とを含む分散液と、上述したエポキシ樹脂やシリコーン樹脂等の樹脂とを、高速ミキサー、サンドミル、三本ロールミルなどの混合分散機により機械的に混合・分散し、流動性のある発光素子封止用組成物を作製する。この発光素子封止用組成物には、粘度やハンドリング性を改善する目的で樹脂と相溶性のある有機溶剤を添加してもよい。
次いで、この発光素子封止用組成物を、デイスペンサー等を用いて発光素子の少なくとも光透過領域に充填し、次いで、この充填物に加熱あるいは紫外線や赤外線等の照射、のいずれかを施して充填物を硬化させることにより、発光素子の光透過領域を透明複合体からなる封止材4により封止する。
【0048】
この発光素子によれば、光透過領域を、透明性が高く、しかも屈折率が1.6〜1.9の高屈折率である封止材4により封止したので、この光透過領域が高光透過率、高屈折率、高硬度等に優れたものとなる。したがって、発光素子の光の取り出し効率を著しく向上させることができ、その結果、発光輝度を著しく向上させることができる。
【0049】
また、上記の透明複合体を液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(EL)、表面電界ディスプレイ(SED)等のフラットパネルディスプレイ(FPD)の表示部に用いられる前方散乱、反射、集光等の機能性フィルムに適用することももちろんできる。
さらに、光学分野のマイクロアレイレンズシート、プリズムシート、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ等のレンズシート、導光板、拡散フィルム、ホログラフィック基板、調光フィルム等に適用した場合、光吸収ロスの少ない散乱、反射、回折光を得ることができ、その機能を十分に発揮することができる。
【実施例】
【0050】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
ここでは、以下の実施例に用いられる高屈折率透明粒子として、次の2種類のジルコニア球状粒子A、Bを作製した。
また、以下の比較例に用いられる透明粒子として、次のジルコニア球状粒子Cを作製した。
【0051】
「ジルコニア球状粒子A」
1次粒径が3nmのジルコニア粒子を水に分散させたジルコニア分散液(ジルコニア:5重量%、住友大阪セメント(株)社製)をスプレードライヤーにて噴霧乾燥し、球状の乾燥物を作製した。次いで、この乾燥物を450℃にて60分間焼成し、ジルコニア粒子を作製した。
次いで、このジルコニア粒子の任意の100個の粒径分布を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて測定した。その結果は、最小粒子径(最小値)が1.5μm、最大粒子径(最大値)が40μmであった。
【0052】
また、このジルコニア粒子の回折線をX線回折装置にて測定し、結晶子径を求めた。その結果は6nmであった。
また、このジルコニア粒子の空隙率を水銀圧入法により測定した。その結果は4%であった。
また、このジルコニア粒子の比表面積をガス吸着法(BET法)により測定した。その結果は0.8m/gであった。
以上により、このジルコニア粒子は、結晶子径が6nm、粒子径が1μm以上かつ40μm以下の緻密かつ透明なジルコニア球状粒子であった。
【0053】
「ジルコニア球状粒子B」
1次粒径が3nmのジルコニア粒子を水に分散させたジルコニア分散液(ジルコニア:5重量%、住友大阪セメント(株)社製)をスプレードライヤーにて噴霧乾燥し、球状の乾燥物を作製した。次いで、この乾燥物を500℃にて60分間焼成し、ジルコニア粒子を作製した。
このジルコニア粒子の物性を上記のジルコニア球状粒子Aに準じて測定した。
その結果は、最小粒子径(最小値)が1.5μm、最大粒子径(最大値)が40μm、結晶子径が10nm、空隙率が2%、比表面積が0.7m/gの緻密かつ透明なジルコニア球状粒子であった。
【0054】
「ジルコニア球状粒子C」
粒子径が20nmのジルコニア粉末(第一希元素社製)500gを純水10000gと混合し、高速ホモジナイザーにて分散処理してスラリー状とした後、スプレードライヤーにて造粒・噴霧乾燥し、球状の造粒物を作製した。次いで、この造粒物を500℃にて60分間焼成し、ジルコニア粒子を作製した。
このジルコニア粒子の物性を上記のジルコニア球状粒子Aに準じて測定した。
その結果は、結晶子径が25nm、空隙率が18%、比表面積が17m/gであった。
【0055】
また、以下の実施例及び比較例に用いられる樹脂やカップリング剤としては、次のものを用いた。
エポキシ樹脂 :ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ等量185)
酸無水物硬化剤 :4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸7重量部と
ヘキサヒドロ無水フタル酸3重量部との混合物
カップリング剤A:エポキシ基含有シランカップリング剤 KBM303
(信越化学工業社製)
カップリング剤B:メタクリロキシ含有シランカップリング剤 KBM503
(信越化学工業社製)
シリコーン樹脂A:メチルハイドロジェンシリコーンオイル KF99
(信越化学工業社製)
シリコーン樹脂B:メチルフェニルシリコーンオイル KF54
(信越化学工業社製)
シリコーン樹脂C:メタクリル変性シリコーンオイル X−22−2404
(信越化学工業社製)
【0056】
「実施例1」
(ジルコニア球状粒子の表面処理)
ジルコニア球状粒子A 100g
カップリング剤A 1g
2−プロパノール 500g
を40℃にて2時間、混合・攪拌した後、濾過により固液分離し、得られた固形物を90℃にて乾燥し、カップリング剤により表面処理された表面処理ジルコニア球状粒子Aを作製した。
【0057】
(透明複合体の作製)
表面処理ジルコニア球状粒子A 75g
エポキシ樹脂 75g
酸無水物硬化剤 75g
をホモジナイザーにて混合・攪拌し、表面処理ジルコニア球状粒子Aをエポキシ樹脂中に分散させた後、硬化触媒として2−エチル−4−メチルイミダゾール0.75gを添加し、更にホモジナイザーを用いて攪拌・混合し、硬化前透明複合体Aを作製した。
【0058】
次いで、この硬化前透明複合体Aを、離型剤を塗布したガラス板で組み上げた型の中に、ディスペンサーを用いて厚みが1mmになるように充填し、150℃にて30分間加熱硬化させ、実施例1の透明複合体を作製した。
また、表面処理ジルコニア球状粒子Aを含有しないエポキシ樹脂を上記と同様にして加熱硬化させ、基準となる透明エポキシ樹脂を作製した。
【0059】
次いで、この透明複合体及び透明エポキシ樹脂各々の全光線透過率及び屈折率を測定し、この透明複合体と透明エポキシ樹脂との透過率差及び屈折率差を求めた。
(1)全光線透過率
日本工業規格:JIS K 7361−1:1997「プラスチック−透明材料の全光線透過率の試験方法」に準拠し、ヘーズメータ NDH2000(日本電色工業(株)社製)を用いて測定した。
(2)屈折率
日本工業規格:JIS K 7142「プラスチックの屈折率測定方法」に準拠し、アッベ屈折計により測定した。
測定結果を表1に示す。
【0060】
「実施例2」
(透明複合体の作製)
実施例1の表面処理ジルコニア球状粒子Aを用いて透明複合体を作製した。
表面処理ジルコニア球状粒子A 450g
エポキシ樹脂 75g
酸無水物硬化剤 75g
をホモジナイザーにて混合・攪拌し、表面処理ジルコニア球状粒子Aをエポキシ樹脂中に分散させた後、硬化触媒として2−エチル−4−メチルイミダゾール0.75gを添加し、更にミキサーを用いて攪拌・混合し、硬化前透明複合体Bを作製した。
【0061】
次いで、この硬化前透明複合体Bを、離型剤を塗布したガラス板で組み上げた型の中に、ディスペンサーを用いて厚みが1mmになるように充填し、150℃にて30分間加熱硬化させ、実施例2の透明複合体を作製した。
次いで、この透明複合体の全光線透過率及び屈折率を実施例1と同様にして測定し、この透明複合体と透明エポキシ樹脂との透過率差及び屈折率差を求めた。
測定結果を表1に示す。
【0062】
「実施例3」
(ジルコニア球状粒子の表面処理)
ジルコニア球状粒子B 100g
カップリング剤A 1g
2−プロパノール 500g
を40℃にて2時間、混合・攪拌した後、濾過により固液分離し、得られた固形物を90℃にて乾燥し、カップリング剤により表面処理された表面処理ジルコニア球状粒子Bを作製した。
【0063】
(透明複合体の作製)
表面処理ジルコニア球状粒子B 225g
エポキシ樹脂 75g
酸無水物硬化剤 75g
をホモジナイザーにて混合・攪拌し、表面処理ジルコニア球状粒子Bをエポキシ樹脂中に分散させた後、硬化触媒として2−エチル−4−メチルイミダゾール0.75gを添加し、更にミキサーを用いて攪拌・混合し、硬化前透明複合体Cを作製した。
【0064】
次いで、この硬化前透明複合体Cを、離型剤を塗布したガラス板で組み上げた型の中に、ディスペンサーを用いて厚みが1mmになるように充填し、150℃にて30分間加熱硬化させ、実施例3の透明複合体を作製した。
次いで、この透明複合体の全光線透過率及び屈折率を実施例1と同様にして測定し、この透明複合体と透明エポキシ樹脂との透過率差及び屈折率差を求めた。
測定結果を表1に示す。
【0065】
「実施例4」
(ジルコニア球状粒子の表面処理)
ジルコニア球状粒子B 100g
カップリング剤B 1g
2−プロパノール 500g
を40℃にて2時間、混合・攪拌した後、濾過により固液分離し、得られた固形物を90℃にて乾燥し、カップリング剤により表面処理された表面処理ジルコニア球状粒子Cを作製した。
【0066】
(透明複合体の作製)
表面処理ジルコニア球状粒子C 350g
シリコーン樹脂A 60g
シリコーン樹脂B 60g
シリコーン樹脂C 30g
をホモジナイザーにて混合・攪拌し、表面処理ジルコニア球状粒子Cをシリコーン樹脂中に分散させた後、硬化触媒として塩化白金酸0.005gを添加し、更にミキサーを用いて攪拌・混合し、硬化前透明複合体Dを作製した。
【0067】
次いで、この硬化前透明複合体Dを、離型剤を塗布したガラス板で組み上げた型の中に、ディスペンサーを用いて厚みが1mmになるように充填し、150℃にて30分間加熱硬化させ、実施例4の透明複合体を作製した。
また、表面処理ジルコニア球状粒子Cを含有しないシリコーン樹脂を上記と同様にして加熱硬化させ、基準となる透明シリコーン樹脂を作製した。
次いで、この透明複合体及び透明シリコーン樹脂各々の全光線透過率及び屈折率を実施例1と同様にして測定し、この透明複合体と透明シリコーン樹脂との透過率差及び屈折率差を求めた。
測定結果を表1に示す。
【0068】
「比較例1」
(ジルコニア球状粒子の表面処理)
ジルコニア球状粒子C 100g
カップリング剤A 1g
2−プロパノール 500g
を40℃にて2時間、混合・攪拌した後、濾過により固液分離し、得られた固形物を90℃にて乾燥し、カップリング剤により表面処理された表面処理ジルコニア球状粒子Dを作製した。
【0069】
(複合体の作製)
表面処理ジルコニア球状粒子D 75g
エポキシ樹脂 75g
酸無水物硬化剤 75g
をホモジナイザーにて混合・攪拌し、表面処理ジルコニア球状粒子Dをエポキシ樹脂中に分散させた後、硬化触媒として2−エチル−4−メチルイミダゾール0.75gを添加し、更にホモジナイザーを用いて攪拌・混合し、硬化前複合体Eを作製した。
【0070】
次いで、この硬化前複合体Eを、離型剤を塗布したガラス板で組み上げた型の中に、ディスペンサーを用いて厚みが1mmになるように充填し、150℃にて30分間加熱硬化させ、比較例1の複合体を作製した。
次いで、この複合体の全光線透過率及び屈折率を実施例1と同様にして測定し、この複合体と透明エポキシ樹脂との透過率差及び屈折率差を求めた。
測定結果を表1に示す。
【0071】
「比較例2」
比較例1の表面処理ジルコニア球状粒子Dを用いて複合体を作製した。
(複合体の作製)
表面処理ジルコニア球状粒子D 350g
シリコーン樹脂A 60g
シリコーン樹脂B 60g
シリコーン樹脂C 30g
をホモジナイザーにて混合・攪拌し、表面処理ジルコニア球状粒子Dをシリコーン樹脂中に分散させた後、硬化触媒として塩化白金酸0.005gを添加し、更にミキサーを用いて攪拌・混合し、硬化前複合体Fを作製した。
【0072】
次いで、この硬化前複合体Fを、離型剤を塗布したガラス板で組み上げた型の中に、ディスペンサーを用いて厚みが1mmになるように充填し、150℃にて30分間加熱硬化させ、比較例2の複合体を作製した。
次いで、この複合体の全光線透過率及び屈折率を実施例1と同様にして測定し、この複合体と透明シリコーン樹脂との透過率差及び屈折率差を求めた。
測定結果を表1に示す。
【0073】
「比較例3」
粒子径が20nmのジルコニア粉末(第一希元素社製)を用いて透明複合体の作製を試みた。
ジルコニア粉末 75g
エポキシ樹脂 75g
酸無水物硬化剤 75g
をホモジナイザーにて混合・攪拌したが、流動性が無く、ジルコニア粉末をエポキシ樹脂中に均一分散させることができなかった。
【0074】
【表1】

【0075】
これらの評価結果によれば、実施例1〜4の透明複合体は、透明性が高く、しかも屈折率が1.6〜1.9と高く、透明性を維持した状態で、高屈折率化することができることが分かった。
また、実施例1〜4の透明複合体は、フィラーを含まない樹脂単味の場合と比較して、透過率がほとんど低下しないことが分かった。これにより、これらの透明複合体を発光素子の光透過領域に適用すれば、光の取り出し効率を著しく向上させることができることが分かった。
一方、比較例1、2の複合体は、透明性が低く、屈折率を測定することもできなかった。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の高屈折率透明粒子は、結晶子径が15nm以下、粒子径が1μm以上かつ20μm以下の透明な球状粒子としたことにより、粒子の透明性を維持しながら高屈折率化を可能としたものであるから、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(EL)、表面電界ディスプレイ(SED)等のフラットパネルディスプレイ(FPD)の表示部に用いられる前方散乱、反射、集光等の機能性フィルムに適用することはもちろんのこと、マイクロアレイレンズシート、プリズムシート、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ等のレンズシート、導光板、拡散フィルム、ホログラフィック基板、調光フィルム等の上記以外の様々な工業分野においても、光吸収ロスの少ない散乱、反射、回折光を得ることが可能であり、その効果は大である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の一実施形態の発光ダイオードを示す断面図である。
【符号の説明】
【0078】
1 LEDチップ
2 リードフレーム
3 外部端子
4 封止材
5 メタルケース
6 絶縁体
7 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶子径が15nm以下、粒子径が1μm以上かつ100μm以下の透明な球状粒子からなることを特徴とする高屈折率透明粒子。
【請求項2】
前記球状粒子は、屈折率が2.0以上の金属酸化物からなる粒子であることを特徴とする請求項1記載の高屈折率透明粒子。
【請求項3】
前記金属酸化物は、Zr、Ti、Sn、Ce、Ta、Nb、Znの群から選択される1種または2種以上を含有してなることを特徴とする請求項2記載の高屈折率透明粒子。
【請求項4】
前記球状粒子の空隙率は10体積%以下であることを特徴とする請求項1、2または3記載の高屈折率透明粒子。
【請求項5】
前記球状粒子は、その表面が表面処理剤により処理されてなることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項記載の高屈折率透明粒子。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項記載の高屈折率透明粒子を樹脂中に分散してなることを特徴とする透明複合体。
【請求項7】
少なくとも光透過領域を請求項6記載の透明複合体としたことを特徴とする発光素子。

【図1】
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【公開番号】特開2007−308345(P2007−308345A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−140267(P2006−140267)
【出願日】平成18年5月19日(2006.5.19)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【Fターム(参考)】