説明

高層建物用増圧給水システム

【課題】本発明は、可変電圧・可変周波数電源にて制御される電動機で駆動する可変速ポンプの複数台以上を並列に運転させ、その圧力を吐出圧力一定制御または推定末端圧力一定制御方式によって制御されている高層建物用増圧給水システムに関するものである。
【解決手段】本発明の高層建物用増圧給水システムは、1〜4階用の低圧力系統と、5〜8階用の高圧力系統に分割される。本発明は、5〜8階用の高圧力系統用給水ユニツトと1〜4階用に低圧力系統給水ユニツトを対応させ、合計2組の給水ユニツトによって構成される複合増圧ユニツトを適用する。このような設計にすることにより、1〜4階の給水系統も減圧弁が不要となる。また、1〜4階用の低圧力系統用給水ユニツトは、5〜8階給水用の高圧力系統給水ユニットよりも低い圧力設定のもとで運転することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変電圧・可変周波数電源にて制御される電動機で駆動する可変速ポンプの複数台以上を並列に運転させ、その圧力を吐出圧力一定制御または推定末端圧力一定制御方式によって制御されている高層建物用増圧給水システムに関するものである。本発明は、前記吐出圧力一定制御または推定末端圧力―定制御によって制御される増圧給水ユニツトを、高圧力増圧ユニット(H系統用)と低圧力増圧ユニット(L系統用)の複合増圧ユニツトに構成し、前記複合増圧ユニツトを複数ユニット直列に接続して、中高層建物の全階層床に対しても、必要な圧力で必要な水量を給水出来るように構成した高層建物用増圧給水システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の高層建物用増圧給水システムは、増圧給水ユニツトを直列にしたものとして、たとえば、特開2008−223269号公報(特許文献1)、特開2008−240276号公報(特許文献2)がある。しかし、前記高層建物用増圧給水システムは、一組で構成されており、給水系統も1系統で構成されている。このために、前記特許文献1および特許文献2の高層建物用増圧給水システムは、低階層床の給水栓に減圧弁が必要であった。
【0003】
また、高層建物用増圧給水システムは、6 階建ビルの場合と9階建ビルの場合、ゾーニング方法によって、複数の増圧給水ユニツトを直列にして解決している。しかし、前記高層建物用増圧給水システムは、一組であり、給水系統も1系統で構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−223269号公報
【特許文献2】特開2008−240276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、増圧給水ユニツトを高圧力給水ユニット(H系統用)と、低圧力給水ユニット(L系統用)の複合増圧ユニットとして構成することにより、低階床水栓に低圧力給水ユニットから給水することにより減圧弁を省略している。また、本発明は、低圧力給水ユニットの設定圧力、あるいは推定末端圧力一定制御の目標曲線圧力を、従来のl給水系統の場合よりも、低く設定できるため、省エネルギー効果を大きくすることができる。
【0006】
本発明は、増圧ポンプユニットを高圧力給水ユニツトと、低圧力給水ユニツトの複合増圧ユニットで構成し、低階層ゾーン複合増圧ユニット、中間階層ゾーン増圧ユニット、上階層ゾーン複合増圧ユニツトを直列に接続することにより、低階床の減圧弁を省略し、省エネルギー効果を高める高層建物用増圧給水システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の高層建物用増圧給水システムは、たとえば、8階建ビルに給水する場合を考える。この場合、給水系統は、1〜4階用の低圧力系統と、5〜8階用の高圧力系統に分割される。本発明は、5〜8階用の高圧力系統用給水ユニツトと1〜4階用に低圧力系統給水ユニツトを対応させ、合計2組の給水ユニツトによって構成される複合増圧ユニツトを適用する。このような設計にすることにより、1〜4階の給水系統も減圧弁が不要となる。
【0008】
また、1〜4階用の低圧力系統用給水ユニツトは、5〜8階給水用の高圧力系統給水ユニットよりも低い圧力設定のもとで運転ができるから、従来方式のように、1〜8階までを一つの給水ユニツトで高い圧力設定のもとで運転する場合に比べて省エネルギー効果が大きい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、現行の日本水道協会の規格で、最高圧力として規定されている0.75Mpa の増圧ポンプユニットを複合増圧ユニットの高圧力系統用に採用し、この高圧力系統用増圧ユニツトを直列に接続することにより、高層建物用給水システムを構築することができる。
【0010】
本発明によれば、複合増圧ユニツトの低圧力系統用を各階層床の低階床用給水に採用することができるので減圧弁を必要としない。
【0011】
本発明によれば、高圧力系統、低圧力系統と2系統に分割しているために、低圧力系統の設定圧力を高圧力系統の設定圧力よりも小さく設定できるので、省エネルギー効果が大きく、設備容量も小さくなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の高層建物用複合増圧給水ユニット直列方式の構成を示した全体構成図である。(実施例1)
【図2】本発明の低階層ゾーンの複合増圧給水ユニツトの詳細構成図である。
【図3】本発明の複合増圧給水ユニツトの高圧力系統用圧力制御器の詳細構成図である。
【図4】本発明の複合増圧給水ユニットの低圧力系統用圧力制御器の詳細構成図である。
【図5】本発明の高層建物用増圧給水システムと従来方式とを省エネルギーについて比較説明するため図である。
【実施例】
【0013】
以下、本発明の実施例について図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明の高層建物用複合増圧給水ユニット直列方式の構成を示した全体構成図である。本発明の高層建物用増圧給水システムにおける複合増圧ユニツトは、低階層ゾーン用(200 〜1)、中間階層ゾーン用(200 〜2)、上階層ゾーン用(200 〜3)の3組が図示のように直列に構成されている。
【0014】
前記複合増圧ユニット(200 〜1)、(200 〜2)、(200 〜3)は、それぞれ高圧力系統用(H系統)、低圧力系統用(L系統)の給水ユニツトで構成されており、各階層の5〜8階の給水栓と1〜4階の給水栓に別々に接続される。たとえば、低階層ゾーンでの5〜8階の高圧力系統に接続される給水栓は、20〜5、20〜6、20〜7、20〜8である。同じく1〜4階の低圧力系統に接続される給水栓は、20〜1、20〜2、20〜3、20〜4である。
【0015】
同様に、中間階層ゾーン、上階層ゾーンの高圧力系統に接続される給水栓は、2l〜5 、21〜6 、21〜7 、21〜8 と、22〜5 、22〜6 、22〜7 、22〜8 であり、低圧力系統に接続される給水栓は、21〜1 、21〜2 、21〜3 、21〜4 と、22〜1、22〜2 、22〜3 、22〜4 となっている。このように構成することにより、各階層ゾーンの4階〜1階までの給水系統に減圧弁を必要としないように設計できる。本発明の方法では、既に、提案されている給水系統を1系統の増圧給水ユニツトの直列方式よりも、給水系統が2系統必要になる短所を有するが、この短所は、後述のように、本発明の方式では、従来方式に比べ、省エネルギー効果が大きいことで相殺される。むしろ、本発明の長所になっている。
【0016】
最初に、本発明の複合増圧ユニットから説明する。図2は、本発明の複合増圧ユニット200 〜1が詳細に示されている。高圧力系統、低圧力系統給水ユニツトは、それぞれ、ポンプ2台の並列・交互運転方式の増圧給水ユニツトで構成されている。最初に高圧力系統について説明する。ポンプ(P1、P2) 11 〜1、11〜2は、インバータ11〜17、11〜18によって可変電圧・可変周波数制御される誘導電動機11〜15、11〜16によって駆動される。逆止弁11〜3、l1〜5、および締切り弁11〜4、11〜6は、それぞれポンプ吐出側に設けられている。
【0017】
逆流防止用逆止弁 11 〜7 は、ポンプ側から水道本管への逆流を防止する、たとえば、2連式を示している。締切り弁 11 〜8 、11〜9 は、ポンプ吸込み側に、フロースイツチ11〜10は、給水流量が低流量に、たとえば、10〜20l/min 以下になったことを検出する。圧力センサ11〜11は、ポンプの吐出圧力を検出する。また、圧力センサ11〜12は、水道本管圧力を検出する、たとえば、本管圧力が揚程で10m以上になった時、給水ポンプP1、P2が運転できるようにインターロックする。圧力タンク11〜13は、ポンプ停止時の圧力保持用である。
【0018】
また、給水栓20〜5 から20〜8 は、高圧力系統を示している。圧力制御器31は、インバータ1l〜17、l1〜18によって、ポンプP1、P2を駆動する誘導電動機11〜15、1l〜16を可変電圧・ 可変周波数制御することによって、ポンプ吐出圧力を一定に、あるいは、推定末端圧力を一定に制御する。実施例の高圧力系統用圧力制御器の詳細を図3に示している。
【0019】
次に、低圧力系統の給水ユニツトの構成を説明する。ポンプ(P8、P4) 12 〜1 、12〜2 は、インバータ12〜17、12〜18によって可変電圧・可変周波数制御される誘導電動機12〜15、12〜16によって駆動される。逆止弁 12 〜3 、12〜5 は、それぞれのポンプ吐出側に、締切り弁12〜4 、12〜6 は、吐出側にある。逆流防止用逆止弁12〜7 は、ポンプ側から水道本管への逆流を防止する、たとえば、2連式を示している。締切り弁12〜8 、12〜9 は、ポンプ吸込み側に、フロースイツチ12〜10は、給水流量が低流量に、たとえば、10〜20l/min 以下になったことを検出する。
【0020】
圧力センサ12〜11は、ポンプの吐出圧力を検出する。また、圧力センサ12〜12は、水道本管圧力を検出する、たとえば、本管圧力が揚程で10m以上になった時、給水ポンプP3、P4が運転できるようにインターロツクする。圧力保持用圧力タンク12〜13は、ポンプ停止時の圧力を保持するものである。また、給水栓20〜1から20〜4は、低圧力系統のものを示している。
【0021】
圧力制御器 32 は、インバータ12〜17、12〜18によって、ポンプP3、P4を駆動する誘導電動機12〜15、12〜16を可変電圧・ 可変周波数制御することによつて、ポンプ吐出圧力を一定に、あるいは、推定末端圧力を一定に制御するものである。低圧力系統用圧力制御器32の詳細は、高圧力系統用圧力制御器に準じたものである。推定末端圧力一定制御は幾つかの方法が発表されている。
【0022】
図3において、本発明に適用した推定末端圧力一定制御の制御動作を説明する。圧力制御を行うPIまたはPID コントローラ31〜1は、圧力センサ11〜1lで検出したポンプの吐出圧力h1(p.u.)と圧力制御器31の内部で設定された圧力設定値hs(p.u.)を比較し、その偏差が入力として与えられている。
【0023】
前記偏差は、PIまたはPID コントローラ31〜1 で増幅され、出力がインバータ周波数指令fs*(p.u.)となる。前記周波数指令fs*は、D/A変換器31〜2 、31〜3を通して、インバータ11〜17、11〜18に周波数指令f1s 、f2s を与える。シーケンス制御ブロック31〜7 (SEQ )からインバータに与えられているRUN1 、RUN2 の信号は、インバータを起動、停止するON、OFF信号であり、インバータ起動時に“1"を、停止時に“0"を与える。したがって、RUN1 、RUN2 信号が“1"であれば、圧力設定値hsを基準値として、hIをフィードバック値として、その偏差が小さくなる向きに、インバータ11〜17、11〜l8によって、図2の誘導電動機ll〜15、11〜16の速度を、したがって、ポンプ11〜1 、11〜2
の速度を調整し、圧力制御を遂行する。
【0024】
ここで、圧力設定値hsは、圧力制御器31の内部で設定される最小圧力設定値ho(p.u) と、摩擦揚程演算器31〜6(HEAD)の出力△h (p.u) の和によって与えられる。つまり、
hs=ho+△h (p.u.) ・・・(1)
摩擦揚程演算器31〜6(HEAD)は、流量演算器31〜5(FLOW)の出力である流量推定値q *(p.u.)を受け取り、次の演算によつて、摩擦損失揚程△h(p.u.)を演算する。
△h=Kq・q*2(p.u.) ・・・(2)
ここに、Kqは、摩擦損失揚程係数である。たとえば、ho=0 .7 (p.u.)に設定されている場合とする。
【0025】
ポンプ1台運転の場合には、K q = l.0 −ho=1 .0 −0 .7 =0 .3 に設定する。したがって、(2) 式と(1) 式によって、hs=0 .7 +0.3×q*2 を演算することができる。同様に、ポンプ2台が並列運転している場合は、
Kq=(1 .0 −ho)/4 =(1 .0 −0 .7 )/4 =0 .075 に設定する。このようにして、推定末端圧力一定制御の目標曲線を得ることができる。
【0026】
次に、流量演算器31〜5 (FLOW)によつて、流量q *(p.u.)を演算することを説明する。ポンプの揚程近似式は、以下の(3) 式で与えることができる。
hP=a・n2 ―b ・q2 ・・・(3)
ここに、 hP=ポンプ揚程(p.u.)=ポンプ揚程Hp(m) /ポンプ定格揚程HN(m)
n=ポンプ速度(p.u.)=ポンプ速度N(rpm) /ポンプ定格速度Nn(rpm)
q=ポンプ流量(p.u.)=ポンプ流量Q( m3/min)/ポンプ定格流量Qn(m3/min)a 、 b =ポンプ定数
【0027】
給水ユニツトの吐出揚程h1(p.u.)は、 h1=吐出揚程H(m) /ポンプ定格揚程Hn(m) であり (4) 式で与えられる。
hI =hP十hs−hsUo−hsul ・・・(4)
ここに、 hsu =ポンプ吸込み側の押込み揚程(p.u.)=ポンプ吸込み側の押込み揚程Hsu(m)/ポンプ定格揚程Hn(m)、hsuo=ポンプ吸込み側の逆流防止用逆止弁の固定損失揚程(p.u.)=ポンプ吸込み側の逆流防止用逆止弁固定損失揚程Hsuo(m) /ポンプ定格揚程Hn(m)、hs・(p.u.)=ポンプ吸込み側の逆流防止用逆止弁の摩擦損失揚程(p.u.)=ポンプ吸込み側の逆流防止用摩擦損失揚程Hsul( m) /ポンプ定格揚程Hn(m) である。 ここで、 hs.(p.u.) は、(5)式で近似できる。
hsUL=hLo ・ q2 ・・・(5)
【0028】
ここに、huo は、逆流防止用逆止弁の摩擦損失揚程係数である。(5) 、(4) を式を(3) 式に代入して整理すれば、(6) 式が得られる。
q =((a ・n2―h1+hsu ―hSUO)/(b +hlo ))1/2 ・・・(6)
h1とhsu は、圧カセンサ11〜11と1l〜12にて検出可能であり、逆流防止用逆止弁の固定損失hsuoと同摩擦損失係数hlo は、逆流防止用逆止弁の圧力降下試験の結果から設定できる。
【0029】
よって、ポンプ速度nが推定できれば、(6) 式によって流量の推定が可能である。ここで、ポンプ速度nの推定方法を説明する。周波数指令fls 、f2s は、インバータ内部に備えられたソフトスタータの入力として与えられる。このソフトスタータは、ステップ状の周波数指令をソフトスクータに設定された傾斜のランプ状の周波数指令に変換する機能を有する。つまり、実際にインバータに与えられる周波数信号は、このランプ状の周波数指令になる。たとえば、f1s 、f2s として、ステップ状の定格周波数指令が与えられた場合、ソフトスタータに限定されている加速時間が1.0secであれば、定格周波数まで1.0secでランプ状に立ち上がる周波数指令に変換される。
【0030】
PID またはPIコントローラ31〜1 の出力信号fs*信号は、実際のインパーク周波数指令と一致しない。よって、ここでは、流量演算器31〜5 (FLOW)の中に、インバータ内部のソフトスタートと同じ機能を有するソフトスタータを準備している。したがって、流量演算器31〜5 (FLOW)に準備したソフトスタータの設定をインバータ内部の設定と同一にすることによって、インバータ内部で実際に与えられる周波数指令を摸擬できる。
【0031】
いま、前記ソフトスタータの出力を、fls *、f2s *とすれば、それぞれの、ポンプ途度は、周波数指令を入力とし、一次遅れ時定数によって、(7) 、(8) 式で推定できる。
n1 =(1 /(Tmls+1)・fls * (p.u.) ・・・ (7)
n2 =(1 /(Tm2s+1 )・f2s * (p.u.) ・・・ (8)
ここに、 n1=11〜l ポンプの速度(p.u.)
=11〜1 ポンプの速度恥m)/11〜l ポンプの定格速度(rpm)
n2 =11〜2 ポンプ速度(p.u.)
=1l〜2 ポンプの速度(rpm)/11〜2 ポンプの定格速度(rpm)
Tm1=1l〜15誘導電動機用インバータ周波数指令f1s *から速度n1までの遅れ時定数(sec)
Tm2 =11〜16誘導電動機用インバータ周波数指令f2s *から速度n2までの遅れ時定数(sec)
s=ラプラス演算子
【0032】
ところで、ポンプ11〜1 とポンプ11〜2 は、通常、同―定格であり、誘導電動機1l〜15、11〜16も同一定格である。また、それぞれのインバータのソフトスタータも同一機能を有し、設定時間も同じに設定される。よって、f1s *=f2s *、Tm1 = Tm2と置くことができる。つまり、n1=n2となる。したがって、ポンプ速度をn、遅れ時定数をTm、ソフトスタータの出力をfns *とすれば、(9) 式が得られる。
n=(1 /(Tms+1 ))・fns * (p.u.) ・・・ (9)
【0033】
ここに、fns *は、PIまたはPID コントローラ31〜1 の出力から、前述のように、インバータ内部のソフトスタータと同一機能のソフトスタータを流量演算器31〜5 (FLOW)に準備し、その設定を等しくすることによって、その出力から検出することができる。したがって、(9) 式によって、ポンプ速度を検出し、その結果を(6) 式に代入することによって、時々刻々の流量を演算することができる。演算推定した時々刻々の流量をここでは、q *(p.u.)として表現している。このq*(p.u.)は、摩擦揚程演算器31〜6 (HEAD)の入力信号となり、前記(2) 式で、△hを演算する。
【0034】
次に、シーケンス制御回路31〜7 (SEQ)の制御動作について説明する。この基本的制御動作は、ポンプ2台の並列・交互運転方式の直送式増圧ポンプユニツトとして公知のものである。つまり、前記シーケンス制御回路31〜7 (SEQ)は、直送式増圧ポンプユニットの運転、停止や並列投入、解列のためのシーケンス制御並びに保護、インターロツク等を遂行するシーケンス制御ブロックである。たとえば、給水量が低下したことを、フロースイツチ11〜10が検出し、その時間が所定時間継続すれば、絵水量が殆どゼロであると判断し、ポンプを保圧運転制御へと切替える。
【0035】
保圧運転では、圧力設定が保圧圧力に切替えられ( ただし、図3では図示されていない。) 、この圧力でポンプを一定時間運転し、圧力タンク11〜13に圧力水を蓄積する。設定された保圧運転時間が経過すると、ポンプは、停止せしめられる。また、もし、ポンプ運転中に、ポンプの吸込み側圧力が規定圧力以下になれば、RUN1 、RUN2 を“0"にして、ポンプを停止し、ポンプをキャビテーションから保護する。
【0036】
さらに、全てのポンプが停止している状態で、ポンプ吸込み側圧力が、再始動可能圧力以上に回復すると、ポンプ始動可能インターロツク回路を完成する。この条件が完成している場合、ポンプ吐出側圧力が、予め設定されて圧力以下になれば、自動交互運転制御によって、選択されたポンプ、たとえば、後発ポンプが自動起動する。このように、シーケンス制御回路31〜7 (SEQ)は、並列・自動交互運転方式に要求される、直送給水式増圧ポンプユニツトとして公知の制御シーケンスを実行する。
【0037】
以上は、図2の200 〜1 、複合増圧ユニツトの圧力制御器31の高圧力系統について、圧力制御とシーケンス制御を説明したものである。圧力制御器32の低圧力系統の圧力制御とシーケンス制御は、高圧力系統の圧力制御とシーケンス制御に準じたものになる。つまり、圧力制御器32の詳細は、図4に示すように、引出し記号31〜XXを全て32〜XXに変更したものであり、その動作は、引出し記号3Iで説明したものと同じである。ただし、制御されるインバータ、電動機、ポンプは、図2に示すように、該当する機器に変更する。
【0038】
インバータは、符号12〜17、12〜18、誘導電動機は、符号12〜15、12〜16、ポンプは、P3ポンプ12〜1 、P4ポンプ12〜2 、吐出側圧力センサは、符号12〜l1、吸込み側圧力センサは、符号12〜12、低流量検出用フロースイッチは、符号12〜10になる。なお、本発明は、図4に示す圧力制御器32の最小圧力設定値ho(p.u.)は、後述のように、図3に示す圧力制御器31の最小圧力設定値ho(p.u.)より小さい。
【0039】
次に、本発明のように、複合増圧給水ユニットによれば、従来方式より省エネ効果が大きくなる理由を図5のq−h特性で説明する。図5は、8階建ビル用給水システムで、1〜4階系統に低圧力系統を、5〜8階系統に高圧力系統の給水ユニツトを適用した場合の給水ユニツトの動作点を説明したものである。
【0040】
本例では、高圧力系統用ポンプの定格揚程を40m、低圧力系統用ポンプの定格揚程を30m、ポンプ吸込み側の押込み揚程を20m、逆流防止用逆止弁の固定損失揚程を5m、摩擦損失楊程を2m/l00 %流量の場合である。給水負荷は、1〜4階の全給水流量を100 %、同ように、5〜8階の全給水流量を100 %として表している。
【0041】
従来方式の増圧ポンプユニツトでは、全負荷時の給水流量は200 %になる。図5のhmは、高圧力系統用の推定末端圧力一定制御の目標曲線で、hL2がL系統用の推定末端圧力ー定制御の目標曲線を示している。給水流量が100 %からある流量に低下する場合、高圧力系統ではhL1の曲線に沿って、低圧力系統ではhL2曲線に沿って圧力制御が遂行される。今、流量が100 %であると仮定する。そうすると、給水ユニツトの動作点は、高圧力系統ではA点になり、低圧力系統ではA1 点になる。
【0042】
この場合、高圧力系統の揚程特性h1 は、高圧力系統のポンプの揚程+押込揚程−逆流防止用逆止弁の固定、並びに摩擦損失揚程から計算したものである。h2は、同様に、低圧力系統のポンプの揚程+押込揚程−逆流防止用逆止弁の固定、並びに摩擦損失揚程から計算したものである。ここで、図5のhsn1 は、本発明のように複合増圧ポンプユニットを採用した場合の正味押込み楊程、つまり、押込み正味揚程hsun=押込み揚程hsu −逆流防止用逆止弁の固定、並びに摩擦損失揚程(hsuo +hsL ) として計算したものである。
【0043】
したがって、A点、A1 点で給水ユニツトが運転している時のポンプの水動力は、それぞれ四辺形ABCDと四辺形A1BCD1に比例したものになる。本発明の例題の水動力w12(p.u.)を計算して見ると、W12 =(1−0 .350)×1 .0 +(0.750 −0.350)×1 .0 =1.05(p.u.)になる。従来方式では、定格揚程を8階建物用として、上記高圧力系統と同じく40mとし、ただし、200 %流量で定格揚程になるよう、定格流量200 %のポンプが選定される。したがって、図5に示すように、hL8 が目標曲線になるように設計される。
【0044】
ポンプ吸込み側の押込み揚程を20m、逆流防止用逆止弁の固定損失揚程を5m、摩捺損失揚程を2m/200 %流量として、給水ユニツトの揚程特性を計算すると、h3 のようになる。したがって、本発明の条件と同じく、全負荷給水の場合、従来方式の給水ユニツトの動作点はAo点となる。この場合のポンプの水動力は、四辺形AOBOCDに比例したものになる。つまり、水動力Wo(p.u.)は、Wo=(1―0,350)x2.0 =1 .3o(p.u.)になる。すなわち、本発明の方法を採用すれば、1.30−l.05=0.25(p.u.)の水動力を節減できることになり、省エネルギー効果が高いと云える。
【0045】
次に、本発明の方式によると、設備容量が小さくなることを説明する。上記実施例の定格流量をQ( m3/min)とすると、本発明のポンプ用誘導電動機の容量
は、
高圧力系統用電動機容量 PH=0,163 × 40 ×Q /ηp (KW)
低圧力系統用電動機容量 PL=0,163 × 30 ×Q /ηp (KW)
となる。他方、従来方式のポンプ用誘導電動機の容量は
従来方式の電動機容量 Po=0.l63 ×40×2Q/ηp (KW)
となる。
【0046】
ここに、ηpは、ポンプ効率である。ここで、ポンプ効率が等しいと仮定すると本発明の合計電動域容量と従来方式の電動機容量の比は、
〔(0.163 ・Q/u)(40+30 )〕/〔〔(0.163 ・Q/u)・80〕=7/8
となる。つまり、電動機容量で見た設備容量は、本発明の場合、従来方式に比べ、87.5 %になる。以上に述べたように、本発明の複合増圧給水ユニツトを適用すれば、従来方式で必要になっていた低階床の減圧弁を省略できるのみならず、省エネルギー効果を大きくできる長所がある。
【0047】
この複合増圧ユニツトの高圧力系統を、現行の日本水道協会の規格で最高圧力として規定されている0 .75Mpa の増圧ポンプで設計し、図1に示すように、直列に接続すれば、0 .75Mpa 以上の圧力が必要になる高層建物用増圧給水システムを安価に構築できることになる。ただし、図1では、中間階層ゾーンに用いる複合増圧ユニツトを200 〜2、上階層ゾーンに用いる複合増圧ユニツトを200 〜3として示している。
【0048】
前記構成は、以上に説明した低階層ゾーン用の増圧ユニット200 〜1と同ようの機能を有するものである。ただし図示していないが、200 〜1、200 〜2、200 〜3、それぞれの高圧力系統圧力制御器31のシーケンス制御ブロックSEQ には、直列運転に伴うシーケンス制御機能が追加されている。これらの技術は、通常の技術である。たとえば、自己より上階層のポンプが自動始動した場合には、たとえ、分担する自己階層の給水要求がない場合においても、自動起動せしめられ、水道本管からの直列給水システムを完成する。
【0049】
また、直列運転中に、自己階層の給水量がゼロに減少した場合においても、上階層のポンプが運転中であれば、運転を継続するように制御される。このようなシーケンス制御機能によって、複合増圧ユニツトの直列構成によって、全階層床の給水運転が可能になるように構成されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変電圧・可変周波数電源にて制御される電動機で駆動する可変速ポンプの複数台以上を並列に運転させ、その圧力を吐出圧力一定制御または推定末端圧力一定制御方式によって制御されている高層建物用増圧給水システムにおいて、
低圧力系統および高圧力系統のポンプを有する第1複合増圧ユニットと、
前記第1複合増圧ユニットの前記低圧力系統のポンプから供給される第1低層階用給水部と、
前記第1複合増圧ユニットの高圧力系統のポンプから供給される前記低層階の上に位置する第2低層階用給水部と、
前記第1複合増圧ユニットの高圧力系統のポンプによって増圧するとともに、低圧力系統および高圧力系統のポンプを有する第2複合増圧ユニットと、
前記第2複合増圧ユニットの低圧力系統のポンプから供給される第1中層階用給水部と、
前記第2複合増圧ユニットの高圧力系統のポンプによって増圧するとともに、前記中層階の上に位置する第2中層階用給水部と、
前記第2複合増圧ユニットの高圧力系統のポンプによって増圧するとともに、低圧力系統および高圧力系統のポンプを有する第3複合増圧ユニットと、
前記第3複合増圧ユニットの低圧力系統のポンプから供給される第1高層階用給水部と、
前記第3複合増圧ユニットの高圧力系統のポンプによって増圧するとともに、前記高層階の上に位置する第2高層階用給水部と、
から少なくとも構成されている高層建物用増圧給水システム。
【請求項2】
前記複合増圧ユニットは、数が3以上であり、低層階から超高層階の給水部に適用できることを特徴とする請求項1に記載された高層建物用増圧給水システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−275688(P2010−275688A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−126188(P2009−126188)
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【出願人】(000143721)株式会社佐山製作所 (19)
【Fターム(参考)】