説明

高強度歯科修復物

リチウムジシリケートベースのガラスセラミックは、歯科製品の製造に使用するための高強度セラミック部品を含んでいる。ガラスセラミックはすぐれた加圧成形性、すなわち、市販の装置を用いた加熱加圧成形により歯科製品に形成される性能を有している。歯科物品の強度は、高強度セラミック部品の含有により増加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科修復物全般に関し、特に、歯科修復物に使用されるセラミック部品に用いる接合層とその製造方法に関する。また、本発明は、歯科材料として使用され、複合材料又はセラミック材料に埋め込まれるセラミック部品も対象とする。
【背景技術】
【0002】
強度と信頼性は、歯科修復物を製造するときに考慮すべき重要な要素である。歯科修復物は、通常の咀嚼力と口内環境に存在する応力とに耐えなくてはならない。異なる種類の食べ物を咀嚼する時に異なる応力が観察され、それは、例えば、歯のインレーの中にストレインゲージを配置して実験的に測定することができる。応力は、食べ物の種類のみならず個人にも依存して異なる。例えば、応力値は、肉片を強く1回噛む行為で570から2300lb/inchまで変動し、ビスケットを強く1回噛む行為で950から2400lb/inchまで変動する。歯科補修物の物理的特性は、繰り返される咀嚼力によってかかる応力に耐えるのに適していなければならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
セラミック材料は、シングルユニットの歯科修復物を製作するには信頼できることが証明されてきた。Katzの米国特許第4798536号と、Kabbert及びKnodeの論文「Inceram:Testing a New Ceramic Material」Vol.4、pp87-89(1993)は、いずれも、歯科修復物の強度と信頼性とを備えるために、リューサイトを含むセラミックの組成を開示している。材料の強度は170MPa前後であり、これは、強度約70MPaを示す一般的な磁器に比較して極めて高い。それでもなお、前述のセラミック材料の強度値及び/又は靭性値は、マルチユニットの歯科修復物の製作には適していない。
【0004】
構造的な完全性及び信頼性と、最適な接合性とを有する高強度のセラミック歯科修復物が望まれている。費用対効果の大きいポリマーベースの歯科材料と幅広く相性のよい高強度セラミック歯科修復物を製造することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
これらの及び他の目的及び利点は、歯科用途に用いるための高強度セラミック部品を対象とした本発明の組成及び製造方法により達成される。本明細書の1つの実施形態によれば、セラミック部品が樹脂材料、セラミック材料又は複合材料とより良く接合できるように、接合層がセラミック部品の表面に配置されて、セラミック部品の接合性を高めている。さらに、接合層は、表面に圧縮層を形成することにより、セラミック部品に強度を付与する。
【0006】
本明細書の別の実施形態によれば、セラミック部品は、部分的に又は全体的に、複合材料に埋め込まれ又は封入されている。セラミック部品は、機械的手段、化学的手段又はその両方によって複合材料と接合している。複合材料は、セラミック部品に直接配置される。あるいは、構造用部品は接合層で覆われており、複合材料等と構造用部品との間の接着性を与えている。
【0007】
本明細書のさらに別の実施形態によれば、構造用部品の表面に二酸化ケイ素が、コロイダルシリカ、テトラエチルオルソシリケート又は類似の前駆体の形態で配置され、構造用部品と樹脂層、セラミック又は複合材料とを接合する接合層を形成するために熱処理される。
【0008】
本明細書のさらにまた別の実施形態によれば、歯科修復物を提供するために、1つ以上のセラミック材料の層が高強度セラミック部品の表面に配置されている。セラミック材料は、粉末、パテ、テープ又はペレットの形態で適用される。
【0009】
本明細書のもう1つの実施形態によれば、ガラスセラミック材料が高強度セラミック部品の周囲に形成される。
【0010】
得られる構造用部品は、歯列矯正器具(orthodontic application)、ブリッジ(bridges)、保隙装置(space maintainers)、歯牙置換器具(tooth replacement appliances)、スプリント(sprints)等の歯科用途及び歯科修復物を製作するのに有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の形状は、添付の図面により開示される。複数の図面を通して、同様の参照符号は、同様の要素を示している。
【0012】
本発明は、歯科用途に使用する高強度の構造用セラミック部品を対象としている。本明細書の1つの実施形態では、高強度の構造用部品は、その表面に配置された接合層を含んで提供される。セラミック部品が樹脂材料、セラミック材料又は複合材料、例えばコネチカット州ウォリンフォードのPentron Laboratory Technologies,LLCから入手可能な市販のSculpture(登録商標)複合材料や、コネチカット州ウォリンフォードのPentron Laboratory Technologies,LLCから入手可能な市販のOPC(登録商標)ポーセレンや、又はリチウムジシリケート(lithium disilicate)ガラスセラミック材料とより良く接合できるように、接合層がセラミック部品の表面に配置されて、セラミック部品の接合性を高めている。さらに、接合層は、セラミック部品の表面に圧縮層を形成することによりセラミック部品に強度を付与する。得られる構造用部品は、歯列矯正器具、ブリッジ、保隙装置、歯牙置換器具、スプリント、そしてさらに、Panzera等の米国特許第5614330号、Goldbergの米国特許第4717341号及び第4894012号、及び同一出願人の米国特許第6120591号で説明されている修復物等の歯科用途及び歯科修復物を製作するのに有用である。これらの文献全てを参照して本明細書に組み込む。
【0013】
構造用部品は、例えば、これに限定されないが、アルミナ、ジルコニア、SIALON、ムライト、酸化チタン、酸化マグネシウム、及びそれらの複合物又は混合物等の高強度セラミック材料から製作される。セラミック部品の曲げ強さは、通常は約400MPaより高く、好ましくは約500MPa〜約1200MPaの範囲にある。構造用部品は、バー又はポンティック(Pontics)の形態が好ましい。バーは、いずれの断面形状でも最終的な歯科器具に強度と剛性とを付与するのに有効である。バーの断面形状の例には、正方形、矩形、三角形、菱形、卵形、又は円筒形が含まれる。バーは、配置や用途に合わせて直線状や湾曲状である。
【0014】
本明細書の1つの実施形態によれば、構造用部品は、歯科修復物のニアネットシェイプにおおよそ近い形状である。これらの高強度補強部品は、製造される歯科修復物の外形に従った形状に機械加工される。図20は、モールド(mold)202のニアネットシェイプに近い形状を有する構造用部品200を示しており、モールド202の上に配置されている。図21は、歯科製品と一体にされた構造用部品又は高強度補強部品206を有する歯科製品204を示している。構造用部品206は、歯科製品204のニアネットシェイプにおおよそ近い形状を有している。
【0015】
本発明の方法の1つの実施形態によれば、構造用部品は、接合層で覆われており、樹脂等と構造用部品との間の接着性を与えている。結合層はシリコンコンパウンド等のカップリング剤で容易に接合できるのが好ましい。好ましい接合層には、これに限定されないが、シリカ、シリケート(silicates)、アルミネート(aluminates)、ホスフェート(phosphates)、フルオレート(fluorates)、アルミノシリケート(aluminosilicates)、シリカリッチガラス、ジルコネート(zirconates)及びチタネート(titanates)を含む。接合層として使用するのに好ましいシリケート材料の1つは、コネチカット州ウォリンフォードのPentron Laboratory Technologies,LLCから入手可能な市販のOPC(登録商標)3G(登録商標)セラミックペレット等のリチウムジシリケートを含む。接合層としては、好ましくはコネチカット州ウォリンフォードのPentron Laboratory Technologies,LLCから入手可能なColorMatch(登録商標)ポーセレン、ドイツBad SackingenのVita Zahnfabrikから入手可能なVitadum(商標)ポーセレンなど磁器材料等のシリカ含有材料、及びシリカが使用される。その層は、これに限定されないが、ゾル−ゲル析出とそれに続く熱分解、融合、スパッタリング、化学蒸着法、イオン衝撃、及び真空蒸着等の既知の方法で適用される。もし接合層が構造用部品と融合されるならば、融解温度は構造用部品の融解温度よりも低くなくてはならない。接合材料の融解温度は、通常は約400℃〜約1500℃の範囲である。さらに、接合層は、構造用部品の熱膨張係数よりわずかに低い熱膨張係数を有しているのが好ましい。そしてさらに、接合層が、良好な濡れ特性を示すのが望ましい。
【0016】
本明細書の好ましい実施形態では、接合層として使用される上記で説明された材料は、構造用部品として適用され、歯科修復物のコアを形成する外層として他の材料を添加せずに単独で使用される。材料の1つ以上の層は、ペレット、粉末、パテ又はテープの形態で適用できる。1つの又は複数の層は、約0.1〜約8.0mm、好ましくは約0.3〜約5.0mm、より好ましくは約0.4〜約1.5mmの範囲の厚さで適用される。2000年9月1日に出願され、共有された同時係属の米国特許出願第09/653377号で、現在の米国特許第6648645号は、パテ及びテープの形態を対象としており、参照して本明細書に組み込む。さらに、材料は、1999年12月10日に出願され、同時係属の共有された米国特許出願第09/458919号で、現在の米国特許第6455451号、及び2000年8月17日に出願された米国特許出願第09/640941号で、現在の米国特許第6517623号に開示されたそれらの材料等の粉末の形態又はペレットの形態にできる。これらの文献は、参照して本明細書に組み込む。構造用部品に適用される材料の形態に依存して、適用方法はゾル−ゲル析出とそれに続く熱分解、融合、スパッタリング、化学蒸着法、イオン衝撃、真空蒸着、ハンマー打撃(hummering)、屈曲、ラッピング(wrapping)、成形、及び手による加圧の適用や静水圧プレス、ホットプレス又はコールドプレスの機械等の用具や加圧装置による加圧等の既知の方法を含む。この好ましい実施形態の1つの実施例では、歯科修復物の補強としてジルコニアバーが使用される。ジルコニアバーは、ダイヤモンドツールやアルミナツールを用いて研磨され、好ましい形状にする。リチウムジシリケートグラスセラミック材料は、コネチカット州ウォリンフォードのPentron Laboratory Technologies,LLCから入手可能なOPC(登録商標)3G(登録商標)プレッサブルセラミック(pressable ceramic)は、材料をジルコニアバーの周囲に製作されたモールドに圧入して、ジルコニアバーに適用される。
【0017】
本発明の方法の第2の実施形態によれば、二酸化ケイ素は、コロイダルシリカ、シラン、テトラエチルオルソシリケート又は類似の前駆体の形態で析出される。二酸化ケイ素は、純粋な二酸化ケイ素であってもよい。表面に層を備えた部品は、シリカが構造用部品と反応して結合を形成することができるように、約400℃〜約1400℃、好ましくは約600℃〜1300℃の範囲にある十分に高い温度で加熱される。例えば、もし構造用部品がアルミナを含むならば、シリカはそれと共に反応してムライトの薄い層を形成する。例えば、もし構造用部品がジルコニアを含むならば、シリカはそれと共に反応してジルコンを形成する。ムライト及びジルコンのそれぞれは、アルミナ及びジルコニアよりも低い熱膨張係数を有し、それにより、構造用部品の表面に、強度を増加する圧縮層を形成する。
【0018】
本明細書の方法によれば、接合層は、サンドブラストや酸エッチング等の本技術分野で既知の方法により、研磨やエッチング可能である。層は、それからカップリング剤で下塗り(primed)される。Waknineの米国特許第5444104号、第4547531号及び第4544359号に、好ましいエッチング及び下塗りの手順が検討されており、参照して本明細書に組み込む。適したカップリング剤は、有機シラン剤等のシラン化合物を含む。例えば、シラン系カップリング剤には、ウェストヴァージニア州フレンドリーのOsi Specialties,Inc.,から、Silquest A−174の名前で入手可能なシラン化合物は、ガンマ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(gamma-methacryloxy propyltrimethoxysilane)、ガンマ−アニイノプロピルトリエトキシシラン(gamma-aniinopropyl triethoxysilane)、ビニルトリクロロシラン、及びスチリルアミン官能基を有するシラン(styrylamine functional silane)を含む。
【0019】
本明細書のさらに別の実施形態によれば、本発明は、部分的に又は全体的に複合材料に埋め込まれ又は封入された高強度の構造用セラミック部品を対象としている。複合材料は、粒子及び/又は繊維材料と組み合わせた樹脂又はポリマー材料等の既知の複合材料にすることができる。好ましくは、複合材料は、コネチカット州ウォリンフォードのPentron Laboratory Technologies,LLCから入手可能な市販のSculpture(登録商標)複合材料等の粒子を含有するポリマー材料や、コネチカット州ウォリンフォードのPentron Laboratory Technologies,LLCから入手可能な市販のFibreKor(登録商標)複合材料等の繊維及び/又は粒子で補強したポリマー材料である。セラミック部品は、機械的手段、化学的手段又はその両方によって複合材料と接合している。機械的結合法は、セラミック部品が複合材料に埋め込まれて複合材料が硬化された後に生じる。セラミック部品に対する複合材料の機械的結合を助けるために、複合材料で覆う前に、セラミック部品を処理することができる。処理は、エッチング、研磨等を含む。セラミックと複合材料との化学的結合法には、例えば、セラミック表面へのシランや他のカップリング剤の適用を通して等により、セラミック表面を有機的に修飾することを含む。複合材料がセラミック材料を完全に封入するのが好ましい。そして、ブリッジ、保隙装置、歯牙置換器具及びスプリントのいずれも、人の口内に十分に適合するようにカスタマイズを求められるので、これによりカービングや研磨や他の類似の変更により部品を望みの形状に形成することを許容する。セラミック部品は、複雑な又は難しい形状にカーブさせるのが困難である。その表面の複合材料は、そのような形状を可能にする。得られる構造用部品は、歯列矯正用固定器具(orthodontic retainer)、ブリッジ、保隙装置、歯牙置換器具、スプリント、そしてさらに、Panzera等の米国特許第5614330号、Goldbergの米国特許第4717341号及び第4894012号、及び同一出願人の米国特許第6120591号で説明されている修復物等の歯科用途及び歯科修復物を製作するのに有用である。これらの文献全てを参照して本明細書に組み込む。
【0020】
本発明の方法のまた別の実施形態によれば、複合材料は、セラミック部品の表面に直接配置される。複合材料は、セラミック部品の周囲に巻きつけて、又は既知の手法や方法でモールド成形、圧着、又は析出させることができる。複合材料は、1つ以上の方向に配向できる。例えば、もし繊維補強複合材料を使用すれば、セラミック部品の周囲に巻きつけることができる。1つの層はセラミック部品の長手方向に直交して配向し、次の層はセラミック部品の長手方向に平行に配向して、層をその上に適用するときに向きを交互にすることができる。コネチカット州ウォリンフォードのPentron Laboratory Technologies,LLCから入手可能な市販のFibreKor(登録商標)繊維補強複合材料が、セラミック部品の周囲に繊維補強複合材料を構築するのに使用できる。
【0021】
本発明の方法の代わりの実施形態によれば、構造用部品が複合材料に部分的に又は全体的に封入され又は埋め込まれる前に、構造用部品は上述のように接合層によって覆われて、複合材料と構造用部品との間の接着を付与する。さらに、接合層は、表面に圧縮層を形成することにより、セラミック部品に強度を付与する。カップリング剤は、接合層を適用する前に、構造用部品に適用される。接合層は、シラン化合物等のカップリング剤と容易に結合することができるのが好ましい。好ましい接合層は、これに限定されないが、シリカ、シリケート、アルミネート、ホスフェート、フルオレート、アルミノシリケート、シリカリッチガラス、ジルコネート及びチタネートを含む。層は、これに限定されないが、融合、スパッタリング、化学蒸着法、イオン衝撃、及び真空蒸着等の既知の方法で適用される。もし接合層が構造用部品と融合されるならば、融解温度は構造用部品の融解温度よりも低くなくてはならない。さらに、接合層は、構造用部品の熱膨張係数よりわずかに低い熱膨張係数を有しているのが好ましい。
【0022】
本発明の方法のさらに別の実施形態によれば、構造用部品が複合材料に部分的に又は全体的に封入され又は埋め込まれる前に、構造用部品の表面に二酸化ケイ素が、コロイダルシリカ、テトラエチルオルソシリケート又は類似の前駆体の形態で析出される。二酸化ケイ素は、純粋な二酸化ケイ素であってもよい。表面に層を備えた部品は、シリカが構造用部品と反応して結合を形成することができるように、十分に高い温度で加熱される。例えば、もし構造用部品がアルミナを含むならば、シリカはそれと共に反応してムライトの薄い層を形成する。例えば、もし構造用部品がジルコニアを含むならば、シリカはそれと共に反応してジルコンを形成する。ムライト及びジルコンは、それぞれがアルミナ及びジルコニアよりも低い熱膨張係数を有し、それにより、構造用部品の表面に、さらに強度を増加する圧縮層を形成する。
【0023】
上記で使用した複合材料は、光学的、化学的又は物理的手段により、制御された圧力下又は常圧下で、全体的に又は部分的に結晶化される。樹脂又はポリマー部品は、同一出願人の米国特許第6013694号に列挙されているものを含め、歯科材料として既知のものから選択できる。本文献は、参照して本明細書に組み込む。ポリマーマトリクス材料は、これに限定されないが、発泡性モノマー(expandable monomers)、液晶モノマー、開環モノマー(ring-opening monomers)、ポリアミド、アクリレート、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリイミド、ポリウレタン、ビニルエステル又はエポキシベース材料を含む。他のポリマー材料は、スチレン、スチレンアクリロニトリル、ABSポリマー、ポリスルホン酸(polysulfonate)、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド等を含む。これらのポリマー材料は、ポリマーマトリクス前駆体組成物の硬化から生じる。そのような前駆体組成物は、本技術分野において周知であり、部品に依存して一部(one-part)、二部(two-part)又はその他の組成に処方される。
【0024】
好ましい材料は、そのベースにアクリル又はメタクリルモノマーを含み、それらは、例えばBowenの米国特許第3066112号、第3179623号及び第3194784号や、Lee等の米国特許第3751399号及び第3926906号や、同一出願人のWaknineの米国特許第5276068号及び米国特許第5969000号に開示されており、これらの全文献を全て参照して本明細書に組み込む。特に、好ましいメタクリレートモノマーは、ビスフェノールAとグリシジルメタクリレート、2,2−ビス[4−(3−メタクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)−フェニル]プロパンとの縮合製品(以下では簡略化してBIS−GMAと称する)、エトキシ化ビスフェノールAとグリシジルメタクリレートとの縮合製品(以下ではEBPA−DMAと称する)、及び二部のヒドロキシメチルメタクリレートと一部のトリエチレングリコール ビス(クロロギ酸)の縮合製品(以下ではPCDMAと称する)を含む。ポリウレタンメタクリレート(以下では簡略化してPUDMAと称する)もまた、本発明で使用するのに適した一般的な主ポリマーである。
【0025】
ポリマーマトリクス前駆体組成物は、さらに、共重合可能な希釈モノマーを含む。そのようなモノマーは、一般に、重合可能な組成物の粘性を調節するために用いられ、組成物の湿潤性に影響する。好適な希釈モノマーは、これに制限されないが、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、及び2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のヒドロキシアルキルメタクリレート類、グリセリルジメタクリレート類、エチレングリコールメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、及びテトラエチレングリコールジメタクリレート等を含むエチレングリコールメタクリレート類、又は1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等のジイソシアネート類を含む。トリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)は、本発明で使用するのに特に好ましい。
【0026】
ポリマーマトリックス前駆体組成物は、通常は、重合開始剤、重合促進剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、蛍光ホワイトニング剤、及び本技術分野において周知の他の添加剤を含む。ポリマーマトリクスは、可視光硬化、自己硬化(self-curing)、二重硬化(dual curing)、真空、熱又は圧力による硬化が可能な化合物だけでなく、それらを組み合わせであってもよい。可視光硬化性化合物には、ベンジルジケトン等の光感応性の化合物、特に約0.05〜0.5重量パーセントの範囲の量のdl−カンファーキノン(dl-camphorquinone)を使用する。UV吸収剤は、入射紫外線による樹脂の変色を回避するために、可視光硬化性化合物において特に望ましい。好適なUV吸収剤には、様々なベンゾフェノンで、特に、American Cyanamid Companyから入手可能なUV−9及びUV−5411のものと、本技術分野において既知のベンゾトリアゾールで、特に2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールとがあり、これはニューヨーク州アーズリーのCiba−Geigy Corporationの商標TINUVIN Pとして、約0.05〜約5.0重量パーセントの範囲の量で販売されている。
【0027】
自己硬化性化合物において、重合促進剤は重合可能なモノマー組成物に含むことができる。使用に適した重合促進剤は、本技術分野において周知の種々の有機第三アミン、約0.05〜約4.0重量パーセントの範囲の量のジメチル−p−トルイジン、及び約0.05〜0.5重量パーセントの範囲の量のジヒドロキシエチル−p−トルイジン等の一般的な芳香族第三アミン、及びジメチルアミノエチルメタクリレートや特にジエチルアミノエチルメタクリレート等の一般的なアクリレート誘導体を含む。
【0028】
熱及び圧力硬化性化合物は、モノマー成分に加えて、ベンゾイルペルオキシド、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル(cyclohexanecarbonitrile))、又は他の適当なフリーラジカル開始剤等の硬化開始剤を含んでいる。特に適したフリーラジカル開始剤は、ラウロイルペルオキシド(lauroyl peroxide)、トリブチルヒドロペルオキシド、AIBNであり、特にベンゾイルペルオキシド又は1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)が適している。
【0029】
ポリマーマトリックスは、本技術分野において既知で歯科修復物材料に使用される少なくとも1つのフィラーをさらに含むことができ、Goldberg等の米国特許第4717341号及び第4894012号や、1999年3月17日に出願され、同時係属の同一出願人による米国特許出願第09/270853号で現在の米国特許第6362250号で説明された補強繊維を含む。これら全ての文献は、参照して本願明細書に組み込む。適したフィラーは、ポリマーマトリックス自体、又は両方に共有結合で接合できるカップリング剤に共有結合できる。好適な充填材料の例としては、本技術分野で知られたこれらに制限されないが、シリカ、シリケートガラス、石英、バリウムシリケート、ストロンチウムシリケート、バリウムボロシリケート、ストロンチウムボロシリケート、ボロシリケート、リチウムシリケート、アモルファスシリカ、アンモニア処理した又は非アンモニア処理のカルシウムホスフェート、及びアルミナ、ジルコニア、酸化スズ及びチタニアを含む。この発明によって調製された歯科用充填タイプ材料に特に適しているフィラーは、約0.1〜5.0ミクロン範囲の粒径を有し、0.001〜約0.07ミクロンのシリケートコロイドを含んでおり、そして水媒体中での湿式粉砕、表面エッチング粉砕及びシラン溶液中でのシラン化ミリングを含む一連の粉砕工程により調製される。前述の無機充填材料のいくつかは、同一出願人によるWaknineの米国特許第4544359号及び第4547531号に開示されており、関連部分を参照して本明細書に組み込む。
【0030】
ポリマー化合物の補強繊維要素は、好ましくはガラス、カーボン、グラファイト、ポリアラミド、又は、ポリエステル、ポリアミドやポリマーマトリックスと互換性のある天然又は合成材料等の本技術分野で既知の他の繊維を含む。前述の繊維材料のいくつかは、同時係属の同一出願人による米国特許第4717341号、第4894012号及び第6013694号に開示されており、それら全てを参照して本願明細書に組み込む。繊維は、繊維とポリマーマトリックス間の接合を向上させるために、例えばシラン化等の処理をさらにすることができる。フィラメントは長さ3〜4ミリメートルしかないが、繊維は、好ましくは長く連続的なフィラメントの形態をとる。均一な又はランダムな長さの短繊維も使用されるかもしれない。好ましくは、繊維は、少なくともワイヤーの長手方向に沿って部分的に配列され指向される。しかしながら、複合材料の最終用途によって、長手方向と垂直又は直交方向を含め、繊維を別方向に指向することもできる。
【0031】
上述のすべての実施形態において、接合層は、構造用部品と、外部樹脂、セラミック又は複合層との間の結合を形成するのに十分な厚さに適用される。好ましくは、結合層の厚さは、約5ミクロン〜約100ミクロンである。その層は、構造用部品の全ての側面に、又は歯科修復物を形成するために外面層を必要とする側面だけに適用することができる。構造用部品の全ての側面が覆われるのが好ましい。結合層を硬化した後、サンドブラストや酸エッチング等の本技術分野で既知の方法により、研磨やエッチング可能である。層は、それからカップリング剤で下塗りされる。Waknineの米国特許第5444104号、第4547531号及び第4544359号に、好ましいエッチング及び下塗りの手順が検討されており、参照して本明細書に組み込む。適したカップリング剤は、有機シラン剤等のシラン化合物を含む。例えば、シラン系カップリング剤には、ウェストヴァージニア州フレンドリーのOsi Specialties,Inc.,から、Silquest A−174の名前で入手可能なシラン化合物は、ガンマ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ガンマ−アニイノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、及びスチリルアミン官能基を有するシランを含む。
【0032】
カップリング剤の適用後に、構造体は、歯科修復物又は器具を製造するために、樹脂、セラミック又は複合材料と容易に接合することができる。
【0033】
本明細書の本発明によれば、高強度補強バーに適用される好ましい材料は、リチウムジシリケート(LiSi)である。リチウムジシリケートガラスセラミックの組成は、以下の表1に与えられた範囲のシリカ、酸化リチウム、アルミナ、酸化カリウム及び五酸化リンを含む。本発明のガラスセラミック組成物は、歯科修復物に有用な特性を有している。ガラスセラミックは、すぐれた加圧成形性(pressability)、すなわち、市販の装置を用いたホットプレス又は射出成形としても知られている加熱加圧成形(heat-pressing)により、歯科製品に形成される性能を有している。ガラスセラミックは、良好な成形性を有しており、すなわち、粉末の形態で歯科用模型に適用され、加熱して歯科修復物を形成する性能を有している。ガラスセラミックは焼結されて十分な密度になり、歯科修復物に機械加工することができる。
【0034】
本明細書の組成物は、酸化物及び/又は分解して酸化物を形成する化合物を、所望の比率で混合する工程と、続いてチウムジシリケート組成物を得るために成分を融合する工程とにより準備される。都合のよい原料は、リチウムカーボネートと、シリカと、アルミナと、カリウム、ナトリウム及びカルシウムのカーボネートと、アンモニウムホスフェートと、トリカルシウムアルミネートと、アルミニウムホスフェート又はアルミニウムメタホスフェートと、必要に応じてTa、CeO、Tb、二酸化チタン及び酸化ジルコニウムとを含む。
【0035】
組成物は、約1200℃〜約1600℃、好ましくは約1300℃〜約1400℃の範囲で、ある時間、好ましくは約4時間で溶融され、そして上述の方法により、例えばペレット状(つまり円筒状のブランク)又は他の形状のブランクの形成ピースに形成される。
【0036】
得られたガラスペレットは、好ましくは約400℃〜約1100℃の範囲の温度で、1又は2ステップの熱処理サイクルを用いて熱処理されて、ガラスセラミックペレットが形成される。この結晶化熱処理は核生成ステップ及び結晶成長ステップを含むことができる。組成に依存して、第1の核生成ステップは、約450℃〜約700℃の範囲で、好ましくは約500℃〜約650℃の範囲で、約0.5〜約4時間行われ、第2の結晶成長ステップは、約800℃〜約1000℃の範囲で、好ましくは約830℃〜約930℃の範囲で、約0.5〜約48時間で行われる。最も好ましい熱処理は、約645℃で約1時間のソーク(soak)と、その後の約850℃で4時間のソークとを含む。得られるガラスセラミックペレットは、歯科修復物を形成するのに用いることができる。
【0037】
あるいは、(以下の表1に説明されたような)出発組成物は、約1200℃〜約1600℃、好ましくは約1300℃〜約1400℃で、ある時間、好ましくは4時間で溶融され、その後に急冷(例えば水による急冷やローラー急冷)され、あるいは結晶化温度に冷却される。もし溶融物が結晶化温度に冷却されるなら、それは同じ炉内にとどめておくことができる。得られたガラスペレットは、好ましくは約400℃〜約1100℃の範囲の温度で、1又は2ステップの熱処理サイクルを用いて熱処理されて、ガラスセラミックが形成される。この結晶化熱処理は核生成ステップ及び結晶成長ステップを含むことができる。組成に依存して、第1の核生成ステップは、約450℃〜約700℃の範囲で、好ましくは約500℃〜約650℃の範囲で約0.5〜約4時間行われ、第2の結晶成長ステップは、約800℃〜約1000℃の範囲で、好ましくは約830℃〜約930℃の範囲で約0.5〜約48時間で行われる。最も好ましい熱処理は、約645℃で約1時間のソークと、その後の約850℃で4時間のソークとを含む。
【0038】
【表1】

【0039】
ガラスセラミックはリチウムジシリケートを含む。得られるガラスセラミックは、続いて粉末に粉砕され、約30〜約40ミクロンの平均粒径の粉末を提供するために−200メッシュにふるいにかけられる。顔料、蛍光剤、乳化剤(opacifying agents)等は、約0〜約6wt%の間の量、好ましくは約0〜約5wt%の間の量、そして最も好ましくは約0%〜約3wt%の間の量の広い範囲で粉末に添加される。さらに、補強剤は、で約0〜約30vol%で、より好ましくは約0〜約20vol%で粉末に添加することができる。補強剤には、繊維、ウィスカー及び粒子フィラーを含み、既知の材料、好ましくはガラス又はセラミック材料から製作できる。粉末は、粉末の形態で歯科材料を製造するのに使用するか、又は好ましい形状、寸法及び構造のプレッサブルペレット(pressable pellets)及び/又はブランクに形成し融解(焼結)するのに使用できる。
【0040】
ペレット又はブランクの焼結は、約800℃〜約1000℃の範囲の温度で、好ましくは約850℃〜950℃の範囲の温度で行われる。焼結は、ペレット又はブランクを取り扱うのに十分な強さを与える。これらのペレットとブランクは、歯科製品又は歯科修復物用のプレッシングコア(pressing cores)、又は他のフレームワーク(frameworks)又は形状のために用いることができる。コアは1つ以上のコーティングを備えることができる。コーティングは、セラミック、焼結セラミック、ガラスセラミック、磁器(porcelain)、ガラス、釉薬(glaze)、それらの複合物及び混合物から選択することができる。コーティングは、約700℃〜約900℃の範囲の焼成温度を有し、熱膨脹係数(室温からその転移温度まで測定された)が歯科用コア(同じ温度範囲で測定された)の約±2.0×10−6/℃であるのが好ましい。ブランク又はペレットは、歯科修復物を得るために、約800℃〜約1200℃の範囲、好ましくは約850℃〜約950℃の範囲、最も好ましくは約930℃未満の温度で、約2〜約8bar(0.2〜0.8のMPa)の間、好ましくは約6bar(0.6MPa)以下の真空及び圧力を適用して、粘性変形を受ける。さらに、ブランクは、ドイツのFraunhofer Institut Produktionstechnologieから入手可能なMaho HGF 500 5軸線CNCフライス盤等の市販のミリング装置を用いて、所望の形状の歯科修復物に機械加工することが可能である。粉末が歯科修復物の製作に使用される場合、粉末は、耐火ダイ技術(refractory die techniques)又は白金箔技術(platinum foil technique)を適用することができる。
【0041】
本明細書の別の方法では、表1の組成物は、約1200℃〜約1600℃、好ましくは約1300℃〜約1400℃の範囲で、ある時間、好ましくは約4時間で溶融され、その後に水で急冷又はスチール製モールドで鋳造(cast)されて、インゴット又はブランクを形成する。鋳造ガラスは、300℃〜約600℃の範囲の温度で、約15分〜約8時間の範囲の時間でアニールされる。
【0042】
急冷ガラスは、粉末に粉砕される。顔料、蛍光剤、乳化剤等は、約0〜約6wt%の間の量、好ましくは約0〜約5wt%の間の量、そして最も好ましくは約0%〜約3wt%の間の量の広い範囲で粉末に添加される。さらに、補強剤は、で約0〜約30vol%で、より好ましくは約0〜約20vol%で粉末に添加することができる。補強剤には、繊維、ウィスカー及び粒子フィラーを含み、既知の材料、好ましくはガラス又はセラミック材料から製作できる。粉末は、ペレット又は出発ブランク(starting blank)に圧縮される。
【0043】
上述の別方法から形成されたブランクは、その後は同様に焼結され結晶化される。熱処理は、約400℃〜約1100℃の範囲の温度で、1又は2ステップの熱処理サイクルにすることができる。この結晶化熱処理は核生成ステップ及び結晶成長ステップを含むことができる。組成に依存して、第1の核生成ステップは、約450℃〜約700℃の範囲で、好ましくは約500℃〜約650℃の範囲で約0.5〜約4時間行われ、第2の結晶成長ステップは、約800℃〜約1000℃の範囲で、好ましくは約830℃〜約930℃の範囲で約0.5〜約48時間で行われる。最も好ましい熱処理は、約645℃で約1時間のソークと、その後の約850℃で4時間のソークとを含む。
【0044】
ブランク又はペレットは、歯科修復物を得るために、約800℃〜約1200℃の範囲、好ましくは約850℃〜約950℃の範囲、最も好ましくは約930℃未満の温度で、約2〜約8bar(0.2〜0.8のMPa)の間、好ましくは約6bar(0.6MPa)以下の真空及び圧力を適用して、粘性変形を受ける。さらに、ブランクは、所望の形状の歯科修復物に機械加工することが可能である。
【0045】
要求された特性の組み合わせ、すなわち、十分な強度と、コネチカット州ウォリンフォードのPentron Laboratory Technologies,LLCから入手可能な市販のAutopress(登録商標)Plus等の歯科用プレス機を用いた加熱加圧成形による950℃以下での成形性と、半透明性(translucency)と、そして化学的耐久性とを達成するために、本発明の最適な化合(chemical combinations)及び結晶化処理は必要である。最良の特性は、リチウムメタシリケート(LiSiO)及びシリカ相がほとんど存在せず、LiPOの体積比率が約5%未満、そしてリチウムジシリケート(LiSi)の体積比率が約35%〜約60%の間にあるときに得られる。リチウムジシリケート相の高アスペクト比モフォロジー(high aspect ratio morphology)は重要で、ガラスセラミックの機械的特性、つまり強度及び破壊靭性を向上させると考えられる。
【0046】
LiOとSiOは、本発明の組成物における必要な量のリチウムジシリケート相を結晶化させるのに役立つ。さらに、BaOとCSOは残余のガラスを安定化させ、また残余ガラスの屈折率を高めてリチウムジシリケートの屈折率と一致させる。Alと、より少ない程度のBは、3%未満でならば、十分に低い溶解度を示す化学的耐久性ガラスセラミックをもたらす。アルカリ(Na、K、Cs)及びアルカリ土類金属(Ca、Ba)の酸化物は、ガラスセラミックの処理温度を下げるのに必要とされる。しかしながら、それらのうちのいくつかは、他のもの以上の化学的耐久性に影響を与える。カリウム、カルシウム、ナトリウム及びバリウムから成るアルカリ金属及びアルカリ土類金属の群に関して、リチウム含有ガラスの化学的耐久性の減少は、カリウムが最も小さく、次いでカルシウムで、そしてナトリウム及びバリウムが化学的耐久性に最も影響する。しかしながら、それらの酸化物がいわゆる「混合アルカリ効果(mixed alkali effect)」を達成するために併用して用いられるときに、最良の特性の組合せが達成される。Fは、ガラスマトリクスの粘性を低下させて、約950℃以下の温度での成形性を向上させる。Ce、Eu及びTbと組み合わせたYは、蛍光を与えるだけでなく屈折率も変更する。NbとTaは、得られたガラスセラミックの核生成及び化学的耐久性を補助するだけでなく屈折率も変更する。以下の表2は、本発明の実施例を説明している。
【0047】
【表2】

【0048】
図1〜7は、本発明によって製造された歯科材料の実施例を示す。図1は、接合層3と、接合層3の上に形成された樹脂材料4とを備えたセラミック部品2の断面図を示している。図2は、粒子充填複合材料14に部分的に埋め込まれたセラミック部品12を含む歯科材料10の断面図を示す。部品12の全ての側面は、露出して複合材料14によって覆われていない端部12a及び12bを除いて、埋め込まれている。図3は、図2の2−2線での断面図を示す。図4は、接合層20で覆われ、全ての側面で繊維補強複合材料22に完全に埋め込まれたセラミック部品18を備えた歯科材料16の断面図を示す。図5は、複合材料28に部分的に埋め込まれたセラミック部品26を備えた歯科材料24の断面図を示す。セラミック部品26の上部側面26aが露出されている。図6は、繊維補強複合材料34に完全に埋め込まれたセラミック部品32を含む歯科材料30の断面図を示す。図7は、セラミック部品38の輪郭に沿った繊維補強複合材料40に完全に埋め込まれたセラミック部品38を有する歯科材料36の断面図を示す。各図面において図示されたコーティング構造体材料は、歯科器具又は修復物の製作のために、研磨、切断、のこ引き(sawing)、機械加工又は同様の修正によって所望の形状にさらに修正することができる。外側の複合材料は、切断や研磨が困難なセラミック部品と比較して、加工が容易である。外側材料は、好ましい形状や寸法に容易に切断できる。
【0049】
図10は、ジルコン等の高強度材料から製造されたバー102を含むブリッジ修復物100を示している。リチウムジシリケート等のセラミック材料102は、ブリッジ修復物100を形成するバー104の表面及び周囲に示されている。セラミック材料102は、以下に説明するように図11に示すようなテープの形態110、図12に示すようなパテ120の形態、図13に示すような粉末130の形態、又は図16に示すようなペレット168の形態でバー104に適用できる。図14はジルコニアバー140を示しており、図15に示すような望ましい形状に研磨又は切断して、歯科修復物150を形成することができる。
【0050】
図16は、ロストワックス法を用いて製作したモールド160を示しており、材料をモールド160に流入できる湯口(sprues)162が形成されている。高強度バー164はモールド160中に位置し、形成される歯科修復物用の補強部品として機能する。図16に示されるように、モールドは耐火性のダイ材料(die material)166で包まれている。モールド160は、164t(上部)及び164b(下部)の点で完全にはバー164を覆っておらず、(ダイ素材のような)高熱耐火材166が164t及び164bの点に接触しており、ワックスが燃え尽きてモールド160が形成されたときにバー164の位置を維持する。次いで、例えば図16の上側の矢印で示されるように材料168のペレットを押すことにより、モールド160はセラミック材料で満たされて、歯科修復物の外部を形成する。図17はモールドから外した後の歯科用ブリッジ修復物170を示す。患者の口内に挿入する前に、覆われていなかった部分164t及び164bは、元々はバーに適用できる上述のセラミック材料、又は、例えば粉末充填複合材料等の上述の複合材料で覆われるだろう。
【0051】
以下の実施例は、本発明を説明している。
【実施例1】
【0052】
3点曲げ試験は、寸法が33mm×4mm×3mmのジルコニアバーで、図8に示すように3mmの側面が2.6mmにテーパーしており、バーの先端がわずかに凹んだもので行われた。バーは以下の表3に説明するように処理されて、バーとベニヤ層(veneering layer)との間の結合力を決定する。図9の中で示されるように、ベニヤ層は、バーの長さに沿って約17mm×10mm×10mmの範囲で適用された。実施例1で、前処置なし及び結合材料なしのジルコニアバーの強度が試験された。実施例2では、ジルコニアバーは加熱され、ベニヤ層が中間の接合層なしで適用された。実施例3では、ジルコニアバーは熱処理され、その後にシラン層で覆われた。ベニヤ層はその後に適用された。実施例4〜6では、ジルコニアバーは接合層で覆われ、その後に熱処理されて、バーに層を融合させた。その後、表3に説明するように、ベニヤ層は、熱処理若しくはカップリング剤ありで、又はなしで、接合層に適用された。表3は、様々な実施例の3点曲げ試験の結果を提供する。
【0053】
【表3】

【0054】
表3の結果は、中間の接合層が用いたときに、ジルコニアバーと樹脂材料の間で得られた接合強度を示す。実施例1は、ジルコニアの強度を示す。接合材料で覆われたバー(実施例4−6)は、実施例1の前処理していない入手したまま(as received)のバーと同程度の強度を示す。接合層を用いない場合、接合力は減少した。本発明によって、高強度構造用部品を有する歯科材料及び修復物に、融合、融合、スパッタリング、化学蒸着法、イオン衝撃、及び真空蒸着等によって接合層が適用されて、樹脂、組成物、セラミック及びそれに類する材料が容易に接合するようになることが十分に理解される。
【実施例2】
【0055】
Friatec Aktiengesellschaft(ドイツ国マンハイムのFrialit−Degussit事業所)から入手した実施例2のジルコニアバー(長さ=70mm、高さ=4mm、幅は2.5mmから3mmまでテーパーになった)は、120グリット(grit)のシリコンカーバイドのサンドペーパーを用いて薄くし、ダイヤモンドホイールを備えた高速ハンドピース(high-speed hand-piece)で小区画に切断し、さらに、ホワイトストーン(アルミナ製)を用いて成形した。正方晶ジルコニア多結晶体(tetragonal zirconia polycrystalline)(TZP)材料は、ダイヤモンドホイールで比較的容易に切断され、標準的なアルミナ製ホワイトストーンでさらに軽く成形された。リチウムジシリケートガラスセラミック材料(コネチカット州ウォリンフォードのPentron Laboratory Technologies,LLCから入手可能なOPC(登録商標)3G(登録商標))は、ジルコニア(TZP)材料と膨張の適合性(compatible)があるだけでなく、ジルコニア材料への濡れ性及び接合性が非常に良好であることを見いだした。マルチユニット歯科修復物へのこれらの材料の適用を説明するために、Polyvest耐火性ダイ材料(ケンタッキー州ルイビルのWhip Mix Corp.,)から製造業者の取扱説明書どおりに製作した耐火性模型に、3ユニットバッジ(three-unit budge)を構築した。コア組立に先立って、Polyvest模型は蒸留水に3分間浸された。同一のフレームワークは、表2の下段に説明されているリチウムジシリケートガラスセラミック組成物から製造された−200メッシュの粉末を用いて製作された。いずれの粉末の平均粒径も約35ミクロンであった。特に、組成2のガラスセラミックはOPC(登録商標)30(登録商標)のペレット材料に類似している。粉末は、水と混合されて、高粘度のペースト濃度にされた。以下に説明するように、コアは、下記に述べられるような連続した3つの適用でPolyvest耐火ダイの上に構築された。最初に、リチウムジシリケート粉末は薄いコートとしてアバットメント(abutments)に塗布され、以下の表に定めた温度で焼成された。次に、アバットメントのうちの1つは、隣接した表面に穴を備えたほぼ完全な輪郭に構築された。上述のように製造されたジルコニア挿入物が穴の中にセットされ、ダイの上で平衡を保った。2回目の焼成(1回目の焼成と同じ温度で)の後、ジルコニア挿入物は、アバットメントのうちの1つに永久的に融合された。第3の適用では、アバットメント及びポンティックの両方とも、要求されたコア形状に完全に構築された。同じ温度での3回目の焼成後、ジルコニア補強を備えたリチウムジシリケートコアが完成した。組成1及び2から製造されたコアは、エポキシで固定され、区分化され、120〜400グリットのサンドペーパーで研磨された。研磨断面は、50倍と200倍の倍率により光学顕微鏡で研究された。コアは十分に緻密であることが分かった。ジルコニアとリチウムジシリケート材料との界面が注意深く調べられ、割れ目、泡、剥離(debonding)又は層間剥離は見つからなかった。組成2から作られたブリッジコア(フレームワーク)のうちの1つは、OPC(登録商標)3G(登録商標)ポーセレンを用いて完全に完成した。ジルコニア挿入物で補強された、焼結3ユニットフレームワームは、OPC(登録商標)3G(登録商標)ポーセレンで覆われた。ポーセレンを焼結後、得られたブリッジは、審美的(aesthetics)及び機能的(function)に十分であることがわかった。リチウムジシリケートガラスセラミックとTZPジルコニアとの間の熱膨張の適合性(thermal expansion compatibility)を確認するために両方の熱膨張を測定し、図18に示すように得られた膨張曲線を重ね合わせた。線182は、ジルコニアの熱膨張曲線を示す。線184は、表2の下段に説明された組成1の熱25の膨張を示す。線186は、以下の表4で説明された組成2の組成物の熱膨張を示す。
【0056】
【表4】

【実施例3】
【0057】
本発明のガラスセラミック組成物は、ガラスセラミックペレットを作るために利用された。表5に定めた組成のガラスは、(以下の表6の実施例6及び8に示すように)カーボネート、酸化物及びモノアンモニウムホスフェート(monoammonium phosphate)の対応する混合物から1回でまとめて処理(batched)され、融解シリカルツボ内で、1300℃で4時間溶融された。溶融ガラスの一部は、スチールモールド内でペレット状に鋳造され、残部は水で急冷した。長方形のステムに取り付けられた9つの円筒状のペレット(D=1.1mm、H=I.6mm)の形状を有するキャストインゴットは、スチール製モールドから、450℃で作動するアニール炉まで迅速に運搬された。インゴットはおよそ30分間アニールされ、炉冷(furnace-cooled)された。水で急冷されたガラスは、水から分離して乾燥させた。実施例6及び8のガラス組成には、急冷ガラスの一部は、分離してガラスとしてミルにかけて、ガラス及びガラスの残部がそうだったように、まとめて結晶化の熱処理をするために融解シリカルツボに入れた。
【0058】
【表5】

【0059】
実施例6及び8の組成は、先に述べた3つの別の方法を用いてガラスセラミックペレットを製作するのに使用された。すなわち、(1)親ガラス(parent glass)が円筒状のブランク(ペレット)形状に鋳造され、このペレットは、熱処理されてガラスセラミックペレットを形成した。このガラスセラミックペレットを、以後はキャスト−結晶化ペレットと称する。(2)親ガラスは急冷され、まとめて熱処理されて結晶化され、そして得られたガラスセラミックは粉末に粉砕され、ガラスセラミック粉末はペレットの形状に圧縮された。このペレットは真空下で十分に緻密に焼結された。このペレットを焼結ペレットと称する。(3)親ガラスは急冷され、ミルにかけて粉末にされ、ガラス粉末はペレットの形状に圧縮された。このペレットは、焼結と同時に結晶化して、ガラスセラミックペレットを形成した。このペレットを粉末−結晶化ペレットと称する。方法(1)及び方法(2)のガラスペレット及び急冷ガラスのそれぞれは、空気中で10℃/mmの速度で500℃まで加熱し、その温度で2時間保持し、10℃/分の速度で850℃まで加熱し、そしてその温度で4時間保持する工程を含む、同じ2ステップの体積結晶化サイクル(volume crystallization cycle)を用いて熱処理することができる。方法(3)では、粉末−結晶化ペレットは、真空下で20℃/分の速度で900℃まで加熱するが保持しない加熱工程を含むサイクルを用いて、ガラス粉末から圧縮されて、歯科用炉で焼結/結晶化される。
【0060】
これらの3タイプのペレットは、ISO 6872仕様書に記述された標準3点曲げにより曲げ強さを測定するための、長方形のバー(23×4×2mm)及びロッド(長さ23mm×直径3.2mm)を作るために用いられた。方法は、歯科修復物を製造するのに使用した方法と同じである。試験片は、よく記載された加熱加圧成形法(歯科用ガラスセラミックの射出成形と同様に称する)を用いた一般的なロスト−ワックス技術によって形成された耐火外層モールド(refractory investment molds)の空洞に圧入される。加熱加圧成形は、Autopress(登録商標)歯科用プレス炉(コネチカット州ウォリンフォードのPentron Laboratory Technologies,LLC)において真空下で行われた。圧縮サイクルは、圧力を加える前に、約700℃から約920℃まで加熱し、後者の温度で約20分保持することを含んでいた。図19に模式的に示されたモールドプランジャアッセンブリ(mold plunger assembly)により、0.55MPa(5.5bar)の圧力が約7分間加えられた。上述の3つの別の方法によって製作された実施例6及び8のガラスセラミック組成のガラスセラミックペレット用の3点曲げ試験の結果は、以下の表6にまとめられている。
【0061】
【表6】

【0062】
様々なタイプのペレットから得られた強度値を比較すると、キャスト−結晶化ペレットは、他の2つのタイプのペレットと比較して最も高い曲げ強さを示し、最小の工程数を伴って製作されていた。焼結ペレット及び粉末−結晶化ペレットでの顕著な強度減少は、余分な処理工程、特に、これらのタイプのペレットを形成するのに必要な真空焼結工程の間に導入された処理の欠陥の蓄積に起因する。本明細書のキャスト−結晶化ペレットは、一般に、350MPaを越え、好ましくは370MPa以上の3点曲げ強さを有する。
【0063】
さらに、マトリクスガラスの屈折率(−1.5)と結晶化相のリチウムジシリケートの屈折率(−1.55)との近似は、透明なガラスセラミック(translucent glass-ceramics)の可能性を許容する。特に、本発明では、ガラスマトリクスの屈折率は、これに限定されないが、Sr、Y、Nb、Cs、Ba、Ta、Ce、Eu及びTb等の重イオンを少量添加することにより上昇して、リチウムジシリケート相の屈折率と一致する。
【0064】
表7に示した以下の実施例は、得られたガラスセラミックスの異なった添加物による透明性、強度及び外層(investment)との反応性への影響を説明している。実施例6の組成(表2)は、この研究の目的のために、実験対照用組成として選択された。組成は、この組成物は、CeOを0.13モル%、又はTbを0.06モル%、又はTa、La、又はYを0.26モル%添加して、及び後者とCeOとの組み合わせを添加して、変更された。不透明度は、光学用濃度計を用いて、圧縮したディスクについて測定された。外層との反応性は、反応層をサンドブラストする前後のディスク及びコーピング(copings)の外観検査によって、質的に判断される。ディスク表面は、低倍率(8倍)の実体顕微鏡下の点食(pitting)の有無を調査された。TaとCeOとの組合せを含む組成物は、高い透明性(低い不透明度)及び外層との低い反応性との最良の組合せを有することが分かった。
【0065】
【表7】

【実施例4】
【0066】
実施例2、6、8及び9の組成物のペレットは、Autopress(登録商標)歯科用プレス(コネチカット州ウォリンフォードのPentron Laboratory Technologies,LLC)で、圧縮サイクルにより様々な歯科物品を加圧成形するのに使用された。圧縮サイクルは、真空下で行われ、また、圧力を加える前に、約700℃から約920℃まで加熱して約20分保持することを含んでいた。図19に模式的に示されたモールドプランジャアッセンブリにより、0.5MPaの圧力が約7分間加えられた。ペレットを歯科修復物に加圧成形するのに使用されるプランジャアッセンブリは、同時係属の同一出願人による米国特許第6302186号に説明されたようなシステムにすることができ、文献を参照して本明細書に組み込む。実施例11及び13の組成物のディスクが上述のように加圧成形され、化学的溶解度がISO 6872によって測定され、そして、許容限界の100μg/cmよりも著しく低いことがわかった。
【0067】
さらに、射出成形法によって製造された歯科修復物の強度を高めるために、実施例8の組成物のキャスト−結晶化ペレットは、イットリア安定化正方晶ジルコニア(yttria-stabilized tetragonal zirconia)(YTZP)バーから製作された構造体要素によって補強されたポンティックを備えた4ユニット前歯用ブリッジ及び3ユニットの奥歯用ブリッジのフレームワークを加圧成形するために使用された。図2は、歯科製品の補強に用いられたYTZPバー20を示す。
【0068】
Friatec Aktiengesellschaft(ドイツ国マンハイムのFrialit−Degussit事業所)から入手したYTZPバー(長さ=70mm、高さ=4mm、幅は2.5mmから3mmまでテーパーになった)は、120グリットのシリコンカーバイドのサンドペーパーを用いて薄くし、ダイヤモンドホイールを備えた高速ハンドピースで小区画に切断し、さらに、ホワイトストーン(アルミナ製)を用いて成形した。驚くべきことに、このYTZP材料は、ダイヤモンドホイールにより比較的容易に切断され、標準的なアルミナ製ホワイトストーンで研磨及び成形可能であった。
【0069】
石模型(stone model)上で、4ユニット前歯用ブリッジ及び3ユニットの奥歯用のフレームワークにワックスが塗布され(waxed up)、そのときに、図3に示すように、構造体要素がフレームワークのワックス模型に挿入された。補強バー30は石模型32に置かれ、ワックス34はバー30の周囲に構築される。市販のYTZP材料からバー状に手作業で製作されたこれらのハンドメイド構造体要素と各デンタルラボ(dental lab)で容易に入手可能な使用工具は、ブリッジのワックス塗布に比較的容易に組み込まれ、このことは、予め製作された(pre-fabricated)YTZPポンティック(挿入物)を、さらに容易で好都合に使用できることを示唆している。
【0070】
図4は、本願明細書によって製造されたリチウムジシリケートフレームワーク42で囲まれたYTZP補強バー40を示す。図5は、内部にYTZP補強バー50を備えた4ユニットフレームワークの加圧成形体を示す。本明細書に沿って製作されたリチウムジシリケートペレット52は、加圧位置に図示されている。図6は、内部にYTZP補強バー50を備えた4ユニット前歯用ブリッジ用の図5から、ペレット52から製造された、完成した加圧リチウムジシリケートフレームワーク52Fを示している。
【0071】
加圧されたフレームワークのいくつかは、リチウムジシリケートガラスセラミックとYTZP構造体要素(挿入物)の間の界面の完全性(integrity)を評価するために切断された。驚くべきことに、本発明のリチウムジシリケートガラスセラミックは、YTZP材料と熱膨張の適合性があるだけでなく、YTZP材料への濡れ性及び接合性が非常に良好であることを見いだした。
【0072】
残りの加圧フレームワークは、リチウムジシリケートガラスセラミック及びYTZP材料のいずれとも適合性のあるOPC(登録商標)3G(登録商標)ポーセレン(コネチカット州ウォリンフォードのPentron Laboratory Technologies,LLC)と張り合わされた。
【実施例5】
【0073】
ジャケットクラウンを製造するために、以下の表8に定めたリチウムジシリケートガラスセラミックの異なった3つの粉末が用いられた。1つ目の粉末は実施例24の組成から形成され、第2の粉末は、実施例25の組成50パーセントと実施例26の組成50%とから形成され、第3の粉末は実施例26の組成から形成された。粉末は、水と混合されて高粘度のペースト濃度にされ、ケンタッキー州ルイビルのWhip Mix Corp.,から入手可能なPolyvest耐火性ダイ材料、又はコネチカット州ウォリンフォードのPentron Laboratory Technologies,LLCから入手可能なSynvest耐火性ダイ材料から製造された耐火性ダイに塗布された。いずれの外層も適切であることがわかった。以下に示すように、コアは2回の適用で構築され、焼成された。1回目の適用はかなり薄かった。焼成したコアは、区分化され、120及び400グリットのサンドペーパーで研磨された。研磨された断面は50倍と200倍の倍率により光学顕微鏡で研究された。コアは十分に緻密であることが分かった。ほんの時々、30μm未満の気孔が観察された。コーピングのいくつかは、コネチカット州ウォリンフォードのPentron Laboratory Technologies,LLCから入手可能なOPC(登録商標)3G(登録商標)ポーセレンを用いてフルクラウンを構築され、審美的及び機能的に十分であることがわかった。さらに、組成26の粉末は、バーに湿潤凝縮(wet-condensed)された。ISO−6872のとおり、バーは焼成されて研磨された。3点曲げ試験が10本のバーで行なわれて、曲げ強さが241±25と測定された。
【0074】
【表8】

【0075】
本発明のガラスセラミックは、粉末塗布技術、加圧技術、又は機械加工技術を用い、コネチカット州ウォリンフォードのPentron Laboratory Technologies,LLCから入手可能なAutopress(登録商標)のような既存の市販の装置を用いて950℃以下の温度でシングル又はマルチユニットの歯科修復物を提供するために、歯科物品の製作に使用できる可能性を有している。加圧成形性又は流動性及び歯科修復物の複雑な形状へのその温度における加圧成形は、得られたガラスセラミック中に、約15体積%〜60体積%の範囲で十分な量の残余のガラスが存在することにより達成される。本発明のガラスセラミックは、歯科用ポーセレンに通常用いられる方法によりガラスセラミック粉末に顔料を混合して、又は、出発ガラス組成物を溶かす前のガラスバッチに顔料を混合して、陰影をつけることができる。
【0076】
本発明の様々な説明が上述されているが、様々な特徴は、個々に又はそれらを組合せて用いることができると理解されるべきである。従って、本発明は、本明細書に図示された特に好ましい実施形態だけに制限されない。
【0077】
さらに、発明が属する技術分野における知識を有する者により、発明の精神及び範囲内での変更及び修正が起こってもよいと理解されるべきである。従って、本願明細書に説明された開示内容から、本技術分野に精通した者によって容易に到達可能なすべての好都合な修正で、本発明の範囲で精神の範囲内にあるものは、本発明のさらなる実施形態として含まれる。本発明の範囲は、付随の特許請求の範囲の記述に沿って確定される。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】図1は、本発明に係るセラミックバーと接合層を示している。
【図2】図2は、複合材料に埋め込まれた本発明に係るセラミックバーを示している。
【図3】図3は、図2の2−2線に沿った断面図を示している。
【図4】図4は、接合層が配置され、複合材料に埋め込まれた本発明に係るセラミックバーを示している。
【図5】図5は、複合材料に部分的に埋め込まれた本発明に係るセラミックバーを示している。
【図6】図6は、複合材料に埋め込まれた本発明に係る湾曲したセラミックバーを示している。
【図7】図7は、複合材料に埋め込まれた本発明に係る湾曲したセラミックバーを示しており、複合材料はセラミックバーの外形に沿っている。
【図8】図8は、本明細書の実施例で使用された本発明に係るバーの寸法と形状を示している。
【図9】図9は、本発明に係る図8のバーの表面のベニヤ材料を示しており、本明細書の実施例で結合力試験用に使用された。
【図10】図10は、内部に補強部品を含み、モールド上に配置された本発明に係る歯科修復物を示している。
【図11】図10は、図10の補強部品の表面に適用されて歯科修復物を形成する本発明に係るセラミックテープのピースを示している。
【図12】図12は、図10の補強部品の表面に適用されて歯科修復物を形成する本発明に係るセラミックパテを示している。
【図13】図13は、図10の補強部品の表面に適用されて歯科修復物を形成する本発明に係るセラミック粉末を示している。
【図14】図14は、切断又は研磨する前の本発明に係る構造用部品を示している。
【図15】図15は、本発明に係る歯科修復物を示しており、内部に補強部品を含んでいる。
【図16】図16は、本発明に係るモールドを示しており、内部に補強部品を含み、ロストワックス法より後で、且つセラミック材料を例えば射出成形法で導入するより前の状態である。
【図17】図17は、図16のダイから形成された本発明に係る歯科修復物を示している。
【図18】図18は、本明細書で使用される本発明に係る材料の熱膨張係数を示す膨張計のグラフを示している。
【図19】図19は、歯科修復物の製作に使用する本発明に係るプランジャーシステムの透視図であり、加圧炉内に配置されている。
【図20】図20は、内部に補強部品を含み、モールド上に配置された本発明に係る歯科修復物を示しており、補強バーは歯科修復物のニアネットシェイプに近い形状を有している。
【図21】図21は、本発明に係る歯科修復物を示しており、歯科修復物のニアネットシェイプに近い形状を有する補強バーを含んでいる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスセラミックブランクから成形されたリチウムジシリケートの歯科製品であって、
出発材料のガラス組成物を約1200〜約1600℃の範囲の温度で溶融する工程と、
溶融ガラスを、成形ブランクに形成する工程と、
ガラスブランクを約1200〜約1600℃の範囲の温度で、約15分〜8時間の間でアニールする工程と、
前記ガラスブランクを約400〜約1100℃の範囲の温度で1回以上熱処理して、前記ガラスブランクからガラスセラミックブランクに転化する工程と、を含む方法により形成され、
歯科修復物が、高強度の補強バーを有することを特徴とする歯科製品。
【請求項2】
前記高強度の補強バーが、ジルコニア、アルミナ、SIALON、ムライト、酸化チタン、酸化マグネシウム、及びそれらの複合物又は混合物を含むことを特徴とする請求項1に記載の歯科製品。
【請求項3】
前記高強度の補強バーが、ジルコニアとイットリアの混合物を含むことを特徴とする請求項2に記載の歯科製品。
【請求項4】
前記ブランクは、約350MPaを越える3点曲げ強さを有することを特徴とする請求項1に記載の歯科製品。
【請求項5】
前記3点曲げ強さが約370MPaより大きいことを特徴とする請求項4に記載の歯科製品。
【請求項6】
前記補強バーが、正方形、矩形、三角形、菱形、卵形、又は円筒形であることを特徴とする請求項1に記載の歯科製品。
【請求項7】
前記ブランクが、前記高強度補強バーの周囲の前記歯科製品に圧入されていることを特徴とする請求項1に記載の歯科製品。
【請求項8】
約400〜約1100℃の範囲の温度で1回以上熱処理したときに、リチウムジシリケートの結晶化が、アニール後の前記ガラスブランク内で生じることを特徴とする請求項1に記載の歯科製品。
【請求項9】
約400〜約1100℃の範囲の温度で1回以上熱処理する工程が、第1の核生成ステップと、第2の結晶成長ステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の歯科製品。
【請求項10】
前記第1の核生成ステップが、前記溶融ガラスを約450〜約700℃の範囲の温度に加熱する工程を含むことを特徴とする請求項9に記載の歯科製品。
【請求項11】
前記第2の結晶成長ステップが、核生成したガラスを約800〜約1000℃の範囲で加熱する工程を含むことを特徴とする請求項9に記載の歯科製品。
【請求項12】
前記第1の核生成ステップが、前記溶融ガラスを約500〜約650℃の範囲の温度に加熱する工程を含むことを特徴とする請求項9に記載の歯科製品。
【請求項13】
前記第2の結晶成長ステップが、核生成したガラスを約830〜約930℃の範囲で加熱する工程を含むことを特徴とする請求項9に記載の歯科製品。
【請求項14】
前記第1の核生成ステップが、約645℃で約1時間のソークを含み、
前記第2の結晶成長ステップが、約850℃で約4時間のソークを含むことを特徴とする請求項9に記載の歯科製品。
【請求項15】
前記ガラスセラミックブランクを歯科製品に機械加工する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の歯科製品。
【請求項16】
前記歯科製品が歯科用コアであり、1つ以上のコーティングを備えていることを特徴とする請求項1に記載の歯科製品。
【請求項17】
前記1つ以上のコーティングが、セラミック、焼結セラミック、ガラスセラミック、磁器、ガラス、釉薬、それらの複合物及び混合物から選択されることを特徴とする請求項16に記載の歯科製品。
【請求項18】
前記1つ以上のコーティングは、
約700〜約900℃の範囲の焼成温度と、
室温からその転移温度まで測定したときに、同じ温度範囲で測定した歯科製品の約±2.0×10−6/℃以内の熱膨張係数と、を有することを特徴とする請求項16に記載の歯科製品。
【請求項19】
前記歯科製品が、歯列矯正器具、ブリッジ、保隙装置、歯牙置換器具、スプリント、クラウン、パーシャルクラウン、義歯、ポスト、歯、ジャケット、インレー、オンレー、フェイシング、ベニヤ、ファセット、インプラント、アバットメント、シリンダー及びコネクターから成る群から選択される部品に形成されることを特徴とする請求項1に記載の歯科製品。
【請求項20】
前記高強度の補強バーが、最終的な前記歯科修復物のニアネットシェイプに近い形状を有することを特徴とする請求項1に記載の歯科製品。
【請求項21】
ガラスセラミック粉末から成形されたリチウムジシリケートの歯科修復物であって、
出発材料のガラス組成物を約1200〜約1600℃の範囲の温度で溶融する工程と、
溶融ガラスを急冷する工程と、
急冷したガラスを約400〜約1100℃の範囲の温度で1回以上熱処理して、ガラスからガラスセラミックに転化する工程と、
ガラスセラミックを粉砕して粉末にする工程と、
高強度の補強バーを配置したダイにより粉末を成形して歯科修復物を成形する工程と、
内部に高強度の補強バーを有する成型歯科修復物を焼成する工程と、を含む方法により形成されることを特徴とする歯科修復物。
【請求項22】
リチウムジシリケートの歯科製品であって、
出発材料のガラス組成物を約1200〜約1600℃の範囲の温度で溶融する工程と、
溶融ガラスを急冷する工程と、
急冷したガラスを約400〜約1100℃の範囲の温度で1回以上熱処理して、ガラスからガラスセラミックに転化する工程と、
ガラスセラミックを粉砕して粉末にする工程と、
ガラス粉末を出発材料のブランクに圧縮する工程と、
ブランクを焼成する工程と、を含む方法により形成され、
歯科修復物が、高強度の補強バーを有することを特徴とする歯科製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公表番号】特表2008−515549(P2008−515549A)
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−535824(P2007−535824)
【出願日】平成17年10月11日(2005.10.11)
【国際出願番号】PCT/US2005/036045
【国際公開番号】WO2006/042046
【国際公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(507114680)ペントロン・セラミックス・インコーポレイテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】PENTRON CERAMICS, INC.
【Fターム(参考)】