説明

高感度容量性微細加工超音波トランスデューサ

【課題】高感度で高性能な容量性微細加工超音波トランスデューサ(cMUT)を提示する。
【解決手段】容量性超微細加工超音波トランスデューサ(cMUT)は、下部電極を備える。さらにまた、cMUTは下部電極に隣接配置した隔膜で、隔膜と下部電極の間に第1の間隙幅を有する間隙が形成されるようにした隔膜を含む。加えて、cMUTは間隙内に形成した少なくとも一つの要素を含み、この少なくとも一つの要素が隔膜と下部電極の間に第2の間隙幅をもたらすよう配置してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概ね医用造影システムに係り、より詳しくは容量性微細加工超音波トランスデューサ(cMUT;capacitive micromachined ultrasound transducer)に関する。
【背景技術】
【0002】
トランスデューサは、一つの形式の入力信号を異なる形式の出力信号へ変換する装置である。一般に使用されているトランスデューサは、光センサと熱センサと音響センサとを含む。音響センサの一例は、医用造影や非破壊評価や他の応用に実装することのできる超音波トランスデューサである。
【0003】
現在、超音波トランスデューサの一つの形は、容量性微細加工超音波トランスデューサ(cMUT)である。cMUTセルは、一般に下部電極と支柱により基板上に懸架した隔膜と上記電極として機能する金属皮膜層とを収容した基板を含む。下部電極と隔膜と上部電極は、空隙を画成している。従来のcMUT装置では、cMUTセルの上下の電極間の間隙は、cMUT送受信器を受信器として使用するときの感度を増やすべく均一にかつ幅狭に設計してある。
【特許文献1】米国特許第6443901号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、cMUT送受信器を送信器として用いたときに、小さな空隙深さは隔膜変位の最大振幅を制限する。それ故、送信パルスの振幅を増すには、送信cMUTにとって上下の電極間により大きな間隙をもたせ、より大きな隔膜の撓みをもたせることが望ましかろう。
【0005】
さらに、送信器や受信器としての動作期間中にcMUTの感度と性能を高めることが望ましかろう。また、cMUTの音響領域(間隙)と空隙深さを能動的に制御することが望ましかろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
簡潔には、本技術の一実施形態によれば、容量性微細加工超音波トランスデューサ(cMUT)セルが提示される。cMUTは、下部電極を含む。さらにまた、cMUTは下部電極に隣接配置されて、第1の間隙幅を有する間隙が隔膜と下部電極の間に形成されるようにした隔膜を含む。加えて、cMUTは間隙内に形成した少なくとも一つの要素を含み、この少なくとも一つの要素が隔膜と下部電極の間に第2の間隙幅をもたらすよう配置してある。
【0007】
本技術の他の実施形態によれば、cMUTセルが提示される。cMUTは、上部と底部を備える下部電極を含む。加えて、複数の支柱が下部電極の上部に配置してあり、空隙を画成する構成としてある。さらにまた、隔膜が複数の支柱上に配置してあって、隔膜と下部電極が境界付ける間隙をもたらす。加えて、cMUTは隔膜上部に配置した上部電極を含む。加えて、cMUTは空隙内に形成した少なくとも一つの要素を含み、下部電極と上部電極の間に、空隙の深さに満たない間隙を設ける構成としてある。
【0008】
本技術の他の態様によれば、cMUTの製造方法が提示される。本方法は、下部電極上に複数の支柱を形成して支柱間に空隙を画成することが含まれる。加えて、本方法は空隙内への少なくとも一つの要素の形成を含む。加えて、本方法は複数の支柱上に隔膜を配置し、下部電極と隔膜の間に間隙を形成するステップを含む。さらに、本方法は隔膜上に上部電極を配置するステップを含む。
【0009】
本技術の態様に従い、cMUTセル構造が提示される。cMUTセル構造は受信モードで動作する構成とした第1のセルを含み、ここで第1のセルは下部電極と上部電極を備える。さらにまた、cMUTセル構造は送信モードにおいて動作するよう構成した第2のセルを含み、第2のセルは下部電極と上部電極を備える。加えて、cMUTセル構造は第1のセルと第2のセルの間それぞれに空隙を形成するよう配置した複数の支柱を含む。cMUTセル構造はさらに、支柱に配置した複数の隔膜を備える。加えて、cMUTセル構造は第1のセルと第2のセルの空隙内に形成した突出要素と後退要素のうちの少なくとも一方を含む。
【0010】
本技術のさらなる態様によれば、cMUTセル構造の製造方法が提示される。本方法は、受信モードで動作するよう構成した第1のセルを作製するステップで、第1のセルが下部電極と上部電極を含むステップを含む。加えて、本方法は送信モードにおいて動作する構成とした第2のセルを作製するステップで、第2のセルが下部電極と上部電極を含むステップを含む。
【0011】
本技術態様によれば、cMUTとこのcMUTに結合した抵抗器を含むシステムが提示される。さらにまた、システムはバイアス電圧バンクを含み、このバイアス電圧バンクを抵抗器に結合する。加えて、システムは多重化器を含み、この多重化器を抵抗器に結合する。加えて、システムは多重化器に結合したスイッチを含み、このスイッチがcMUTの動作モードを制御する構成とする。システムはスイッチに結合される制御回路もまた含み、この制御回路がバイアス電圧バンクとスイッチの動作を制御する構成とする。さらにまた、システムはスイッチに結合したパルス発生器を含み、このパルス発生器が交流励振パルスを発生する構成とする。また、システムはスイッチに結合した低雑音増幅器を含み、この低雑音増幅器が信号を増強する構成とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のこれら及び他の特徴や態様や利点は、添付図面を参照して以下の詳細な説明を読むときにより良く理解され、図面を通じて同様の文字は同様の部分を表わす。
【0013】
医用造影や非破壊評価等の多くの分野では、高品質診断画像の生成を可能にする超音波トランスデューサを活用することが望ましかろう。高品質診断画像は、超音波周波数の低レベル音響信号に対し高感度を示す容量性微細加工超音波トランスデューサ等の超音波トランスデューサにより得ることができる。本願明細書に開示する技術は、これらの問題の一部或いは全てに対処するものである。
【0014】
ここで図1を見るに、容量性微細加工超音波トランスデューサ(cMUT)送受信器10の一実施形態の縦断側面図が図示してある。当業者には理解されるように、この図は例示目的であって、実寸で描かれてはいない。図1は、送信モードで動作するcMUT送受信器10を表す。cMUT送受信器10は、上部と底部とを有し、基板(図示せず)上に配置することのできる下部電極12を備える。下部電極12の肉厚は、例えばほぼ20〜500マイクロメートルの範囲とすることができる。上部と底部を備える複数の支柱14を、下部電極12の上部に配置することができる。さもなくば、複数の支柱14を基板上に直接配置することもできる。支柱14は、空隙20を画成するよう構成することができる。一般に、支柱14の高さはコンマ数マイクロメートル〜数マイクロメートル(μm)台である。また、支柱14は、これらに限定はされないが、酸化シリコンや窒化シリコン等の材料で作成することができる。加えて、複数の支柱14の上部に膜すなわち隔膜16を配置することができる。加えて、cMUTの製造に用いる微細加工法に応じて、隔膜16は、これらに限定はされないが、窒化シリコンや酸化シリコンや単結晶シリコンやエピタキシ・シリコンや多結晶シリコンや他の半導体材料等の材料を用いて製造することができる。隔膜16の肉厚は、例えばほぼ0.1〜5マイクロメートルの範囲とすることができる。cMUT送受信器10には上部と底部を備える上部電極18を含ませることができ、ここで上部電極18は隔膜16の上部に配置することができる。上部電極18の肉厚は、例えばほぼ0.1〜1マイクロメートルの範囲とすることができる。cMUT送受信器10には、下部電極12と隔膜16が境界付けることのできる間隙を含ませることができる。空隙20は、空気又はガスを充填するか、或いは完全に又は一部抜気することができる。しかしながら、本技術の一例示実施形態によれば、完全に又は一部抜気した空隙20が用いられよう。さらにまた、空隙20は誘電体床面24を含む。空隙20は、ほぼコンマ数ミクロン〜数ミクロン台の深さをもたせることができる。
【0015】
本技術の一例示実施形態により、そしてさらに以下に説明する如く、突出要素(例えば、図1〜図5)や後退要素(例えば、図6)等の少なくとも一つの要素を空隙20内に形成し、所定の動作モード下でこの間隙すなわち間隙幅を下部電極12と上部電極18の間の空隙20の深さ未満に調整する構成とすることができる。具体的には、第1の例示実施形態では、少なくとも一つの要素は間柱(スタッド)22等の突出要素で構成することができる。間柱22は、下部電極12の上部に配置することができる。さもなくば、間柱22は隔膜16の底面に配置することもできる。
【0016】
間柱22は、二層で構成することができる。図1の間柱の拡大図に描いたように、間柱22の上層は下部電極12と上部電極18の間の電気的短絡を阻止すべく誘電体層等の絶縁材で構成することができる。誘電層には、これらに限定はされないが、酸化シリコンや窒化シリコンやポリマーや他の非導電材等の材料を含めることができる。さらにまた、間柱22の底層は、これらに限定はされないが、金属やエピシリコンや単結晶シリコンや多結晶シリコンや他の半導体材料等の導電材で構成することができる。間柱22は、これらに限定はされないが、円形や矩形や六角形等の様々な形状を呈することができる。加えて、間柱22は単一の間柱や、リング形状間柱、以下リング間柱と呼ぶものや、これに限定はされないが間柱列等の間柱の任意配置で表わすことができる。また、間柱22の側壁は、垂直としたり先細としたり丸めたりすることができる。
【0017】
さらにまた、cMUT送受信器10の空隙20内に形成することのできる少なくとも一つの要素を縦穴26等の後退要素とすることができる。縦穴26は、空隙20内にエッチング形成することができる(図6を参照して例示し以下に説明する)。さらに、cMUT送受信器10には間柱22と縦穴(図示せず)を含ませることができる。さもなくば、縦穴を下部電極12にエッチング形成し、間柱22を隔膜16上に形成することもできる。さらに別の構成によれば、縦穴内に間柱22を形成することができる。
【0018】
加えて、本技術のさらなる態様によれば、cMUT送受信器10にバイアス電位源(図示せず)を含ませ、このバイアス電位源を隔膜16を下部電極12へ向けて膨張させる構成とすることができる。本技術の一実施形態によれば、下部電極12と上部電極18との間の間隙幅は、間柱22の高さ及び/又は縦穴の深さを変えることにより、かつcMUT送受信器の動作モードに基づいてバイアス電位を変えることにより、可変することができる。cMUT送受信器10が送信器として動作している間、空隙の深さを増大させて隔膜のより大きな撓みを促し、送信信号の振幅を増強することは有益であろう。しかしながら、cMUT送受信器が受信器として機能するときは、信号受信を向上させるには下部電極12と上部電極18の間により小さな間隙幅をもたせることが有利であろう。従って、cMUT送受信器10の感度は下部電極12と上部電極18の間の間隙寸法を調整し、それによって信号の送受信へ向けcMUT送受信器10の性能を都合よく最適化することができる。
【0019】
当業者には理解されるように、空隙20により隔てられた下部電極12と上部電極18は静電容量を形成している。図1に示す如く送信モードで動作するcMUT送受信器10にとっては、より深い空隙20により送信パルスの振幅を増大させる隔膜の大きな撓みを達成することができる。送信モードでは、より小さな直流(DC)バイアスにより大きな交流(AC)励振パルスを印加することができ、このことが都合よくはより大きな膜撓みとcMUT送受信器10に関するより大きな信号対ノイズ比に帰結する。
【0020】
しかしなから、受信モードで動作中のcMUT送受信器10にとっては、cMUT送受信器10の感度を高める上で下部電極12と上部電極18の間により小さな間隙をもたせることが望ましかろう。図2は、受信モードで動作中のcMUT送受信器10の縦断側面図を示す。図2に示す如く、空隙20の深さは送信モードで動作中の図1のcMUT送受信器10の空隙の深さよりも小さくすることができる。このより小さな空隙深度は、翻って都合よくはcMUT送受信器10の感度向上をもたらすより大きな容量に帰結することになる。図2に表わした如く、cMUT送受信器10にバイアス電位源を印加すると、下部電極12へ向け隔膜16を撓ませることができる。しかしなから、空隙20内の間柱22の存在が故に、空隙20の深さは相当に減ることになる。それ故、空隙深度の減少した隔膜16の撓みが受信器として機能するcMUT送受信器10の感度向上を招来しよう。
【0021】
図3は、図1の3−3線に沿うcMUT送受信器10の断面上面図である。図3の例示実施形態では、リング間柱が描かれている。しかしなから、前述した如く、間柱は円形や矩形や六角形や他の任意の形状とすることができる。
【0022】
図4〜図6は、送信モードにおいて動作するcMUT送受信器10の代替実施形態の断面図を示す。特に図4を参照するに、送信モードで動作し空隙20内に配置した単一の間柱22を有するcMUT送受信器10の代替実施形態の断面図が図示してある。さらにまた、図5は送信モードで動作し空隙20内に形成することのできる配列に配置した複数の間柱22を有するcMUT送受信器10のさらに別の代替実施形態を示す。本技術のさらなる態様によれば、空隙20内に後退要素を形成することができる。図6は、送信モードにおいて動作し空隙20内にエッチング形成した縦穴26等の後退要素を有するcMUT送受信器10の一実施形態を示す。
【0023】
図6を参照するに、縦穴26は二層から構成することができる。図6の縦穴の拡大図に示す如く、縦穴26の上層は下部電極12と上部電極18の間の電気的短絡を阻止すべく誘電体層等の絶縁材で構成することができる。誘電体層には、これらに限定はされないが、酸化シリコンや窒化シリコンやポリマーや他の非導電材等の材料を含ませることができる。さらにまた、縦穴26の底層はこれらに限定はされないが、金属やエピシリコンや単結晶シリコンや多結晶シリコンや他の半導体材料等の導電材で構成することができる。縦穴26は、これらに限定はされないが、円形や矩形や六角形等の様々な形状を呈するようにできる。加えて、縦穴26は、単一の縦穴や、リング形状縦穴、以下リング縦穴と呼ぶものや、これに限定はされないが縦穴列等の任意の縦穴配置により表わすことができる。また、縦穴26の側壁は垂直としたり先細としたり丸めたりすることができる。
【0024】
図7〜図9は、受信モードで動作する図4〜図6に示したcMUT送受信器10の対応断面図を示す。図7は、受信モードで動作する図4のcMUT送受信器10を描いたものである。同様に、図8は受信モードで動作する図5のcMLTT送受信器10を示すものである。同様に、図9は受信器として機能する図6のcMUT送受信器10を示すものである。
【0025】
図10〜図12は図4〜図6に示したcMUT送受信器10の断面上面図を示す。特に図10を参照するに、図4の10−10線に沿うcMUT送受信器10で、その空隙20内に配置した単一の間柱22を有するcMUT送受信器10の上面図が図示してある。図11は、図5の11−11線に沿うcMUT送受信器10の上面図を示すものであり、ここでは間柱22の列がcMUT送受信器10の空隙20内に配置してある。同様に、図6の12−12線に沿うcMUT送受信器10で、その空隙20内にエッチング形成した縦穴26を有するcMUT送受信器10の上面図が図示してある。
【0026】
間柱22と縦穴26はcMUT送受信器10の空隙20の深さを可変するよう実装することができる。加えて、バイアス電位を可変することで、下部電極12と上部電極18の間の間隙を信号の送受信用に最適化することができる。この最適化は、cMUT送受信器10が送信及び/又は受信モードで動作するときに隔膜16の撓みを制御するバイアス電位源を採用することで達成することができる。例えば、cMUT送受信器が図1に示す如く送信モードで動作しているときに、バイアス源を用いて圧潰電圧よりも低い直流バイアスを印加することができ、このことが有益なことに図1に示した下部電極12と上部電極18の間の大きな間隙に帰結する。当業者には理解されるように、圧潰電圧はバイアス電圧であり、ここでは小さく膜を撓ませる膜撓みの機械的復元力は静電力に拮抗させることはできない。小さな直流バイアスがAC励振パルスの印加を可能にし、このパルスがより大きな膜撓みと送信モードで動作するcMUT送受信器10に関する信号対ノイズ比に帰結させることができる。
【0027】
さらにまた、受信モードでは、隔膜16を間柱22へ圧潰させるのに十分な直流バイアスをバイアス電位源を介して印加することができる。印加電圧は、図2に示す如く、隔膜16を間柱22へ撓ませることができる。下部電極12と上部電極18の間の低減された間隙は、都合よくは所与の入射音響波に対するより大きな容量変化を招き、そのことが翻ってcMUT送受信器10の感度向上に通ずる。加えて、受信モードで動作するcMUT送受信器10内の下部電極12と上部電極18の間の間隙幅は、送信モードで動作するcMUT送受信器10内よりも小さなものとなる。さらに、受信器として機能するcMUT送受信器10に印加するバイアス電圧は上部電極18を間柱22上へ吸引するのに妥当なものではあるが、バイアス電位は下部電極12と上部電極18に関する圧潰電圧よりも低いものとすることができる。
【0028】
上記した如く、間柱22は空隙20の床面から突出させることができる。これ故、間柱22の上部と上部電極18との間の空隙20(すなわち、「間隙」)の有効深さをより小さなものとし、それによって隔膜16を間柱22上へ圧潰するのに必要なバイアス電位をより小さくすることができる。一例示実施形態では、間柱22の高さは例えば0.2マイクロメートル未満とすることができる。さらに、間柱を下部電極12上に或いは上部電極18上に配置することができる。受信器として機能するcMUT送受信器10の空隙20の深さは、隔膜16が間柱22上へ圧潰したときの間柱22の高さにより調整することができる。このより小さな空隙深度は、都合よくは所与の入射超音波に対するより大きな容量変化を招き、かくして受信モードで動作するcMUT送受信器10の感度向上に帰結させることができる。
【0029】
本発明の一例示実施形態により、間柱及び/又は縦穴を実装し、バイアス電位を可変することで下部電極12と上部電極18の間の間隙を調整することのできるcMUT送受信器10を開示した。本例示実施形態によれば、cMUT送受信器10は送信器及び受信器の両方の性能に合わせ最適化することができる。同様の原理を個別送信器セルと受信器セルを備える構成へ採用し、かくして以下にさらに説明する如く、送信器及び受信器として機能するcMUTセルの個別最適化を可能にすることができる。
【0030】
図13と図14は、異なる深さを有する間隙を各送信モードと受信モードのそれぞれに実装することのできるよう異なる送信器セル構造及び受信器セル構造を有する二重空隙cMUTユニットセル28の代替実施形態を示す。ここに熟慮した構成では、図13と図14に示したcMUTユニットセル28が受信モードで動作する構成の第1のセル(受信器セル)30を含む。以下にさらに説明する如く、受信器セル30は下部電極と上部電極と第1の間隙幅を有する間隙とを含む。加えて、cMUTユニットセル28は送信モードで動作する構成である第2のセル(送信器セル32)を含む。受信器セル30と同様、送信器セル32もまた下部電極と上部電極と、以下にさらに説明する如く第1の間隙を上回る大きさの第2の間隙幅を有する間隙とを含む。
【0031】
先ず図13を参照するに、受信器セル30は下部電極34を含む。複数の支柱36を、下部電極34上に配置することができる。さらに、隔膜38を複数の支柱36上に配置することができる。加えて、上部電極40を隔膜38上に配置することができる。受信器セル30は、下部電極34と上部電極40の間に第1の間隙幅を有する間隙を有する。第1の間隙幅は、cMUTユニットセル28が受信モードで動作しているときの所与の入射超音波信号に対する容量変化を最適化する構成とすることができる。
【0032】
cMUTユニットセル28はさらに送信器セル32を含み、これを下部電極42を含ませ得る受信器セル30に隣接配置することができる。さもなくば、送信器セル32は受信器セル30から隔離して配置することもできる。受信器セル30と同様、送信器セル32は下部電極42上に配置した複数の支柱36をさらに備える。加えて、隔膜44は複数の支柱36上に配置することができ、上部電極46は隔膜44上に配置することができる。さらにまた、本例示実施形態によれば、送信器セル32には微細加工した縦穴48を含ませることができる。受信器セル30の間隙幅と比較したときに、縦穴48の存在が送信下部電極42と送信上部電極46の間により大きな間隙幅を有する間隙をもたらし、そのことが翻ってcMUTユニットセル28が送信モードで動作するときに送信隔膜44の変位増大を促す。従って、cMUTユニットセル28が送信モードで動作しているときに振幅を増大させた超音波を得ることができる。さらに、絶縁層50を受信下部電極34と送信下部電極42と縦穴49の床面に配置することができる。
【0033】
さらに、図13に示した本例示実施形態は送信下部電極42内に形成され、受信器セル30と送信器セル32のそれぞれに可変間隙幅を提供する縦穴48を示すものであるが、図14に示す代替例示実施形態では、間柱52等の突出要素を受信下部電極34上に配置することができる。間柱52は受信下部電極34と受信上部電極40の間の間隙幅を低減する構成とし、かくして所与の入射超音波に関する容量変化を最適化する構成とすることができる。さらにまた、絶縁層は間柱52上に配置することができる。絶縁層は、受信下部電極34に配置することもできる。さもなくば、二重空隙cMUTユニットセル28は送信器セル32内の各縦穴48と受信器セル30内の間柱52或いはそれらの間柱と縦穴の組み合わせを含む構成とすることができる。
【0034】
図13〜図14に示した二重空隙cMUTユニットセル28の一例示実施形態では、受信器と送信器セルの横方向寸法を異ならしめることができる。このことで、様々な分野における二重空隙cMUTユニットセル28の応用が容易になる。例えば、二重空隙cMUTユニットセル28は調波造影に応用分野を見出すことができ、そこでは受信器セル30と送信器セル32の動作周波数は各セルの個別寸法を調節することにより都合よく調整することができる。二重空隙ユニットセル28は、図1のcMUT送受信器10と同じ大きさとすることができる。当業者には理解されるように、それらの機能性、すなわち送信であるか受信であるかに基づきcMUTセルを分離することで、送信器セルと受信器セルが作動的である間に複数の異なる送信器cMUTセルと受信器cMUTセルが検出面積の低減が原因で信号損失を経験することがあり得る。しかしながら、この構造を図13と図14に示す如く送信器用と受信器用に異なるセルに分離することで、cMUTセルの一組だけ、すなわち送信器セルと受信器セルのいずれかが作動的であるときに招く信号損失を十二分に補償することができる。送信器セルと受信器セルをここで個別に最適化し、それによって能動的検出領域内の損失を上回るであろう感度向上をもたらすことができる。
【0035】
さらに、cMUT送受信器10に関して説明した如く、二重空隙cMUTユニットセル28には少なくとも一つのバイアス電位源を含ませることができ、ここではバイアス電位源は受信隔膜38と送信隔膜44とをそれらの対応する底部電極34,42へ向けて膨張させる構成とする。
【0036】
本技術のさらなる態様によれば、cMUT送受信器の一実施形態の製造方法が提示される。図15〜図20はcMUTの製造工程フローを表わすものであり、ここでは間柱は隔膜上に配置することができる。図15は、cMUT送受信器の下部電極を含ませることのできる底部54(低抵抗性プライムウェーハ)の製造工程中の初期ステップを示すものである。図15に示したように、第1の酸化物層56と第2の酸化物層60を、乾式酸化工程や湿式酸化工程やその二つの組み合わせとすることのできる酸化工程により高導電性シリコン層58等の基板の両面に形成することができる。第2の酸化物層60が、下部電極と上部電極の間に間隙を画成している。図16に示す如く、写真平板と湿式エッチングを用い、第2の酸化物層の一部をエッチングにより取り除くことができ、それによって複数の支柱62とこの支柱により画成される空隙64とを画成することができる。その後、図17に示す如く、酸化工程を用い、空隙64内に電気的な絶縁をもたらすことができる。
【0037】
cMUT送受信器の製造方法にはさらに、上部電極を含む上部68(絶縁膜上結晶シリコン(SOI;Silicon on Insulator)ウェーハ)の製造が含まれる。さもなくば、当業者には理解されるように、シリコン基板や埋設酸化物層やシリコン支持基板ウェーハを含む予製作SOIをcMUT送受信器の製造に用いることもできる。図18に示す如く、上部68は支持基板ウェーハ72上に配置することのできる埋設酸化(「ボックス」)層70を含む。加えて、これらに限定はされないが、エピシリコンや単結晶シリコンや多結晶シリコン層等の導電性或いは低抵抗層を酸化ボックス層70上に配置することができ、ここでは導電層を隔膜74として機能させる構成とすることができる。さもなくば、これらに限定はされないが、エピシリコンや単結晶シリコンや多結晶シリコン層等の非導電性或いは高抵抗性層を酸化ボックス層70上に配置することもでき、ここでこの層は隔膜74として機能させる構成とすることができる。さらに、突出間柱76等の少なくとも一つの要素を隔膜74上に形成することができる。間柱76は乾式エッチング処理が続く写真平板工程を用いて形成することができ、エッチングに続いて間柱76上に絶縁層78を配設する熱酸化工程を行なうことができる。当業者には理解されるように、これらに限定はされないが、プラズマ化学気相成長(PECVD;plasma enhanced chemical vapor deposition)や減圧化学気相成長(LPCVD;low−pressure chemical vapor deposition)を用いても間柱76を形成することができる。さもなくば、間柱76は隔膜74上の金属等の材料の付着により形成することができ、これに間柱76上に絶縁層を配設する誘電体付着工程が続く。さらにまた、形成された間柱76の高さは、cMUT送受信器が受信モードで機能するときに上部電極と下部電極の間の空隙64内の間隙幅を画成する構成とすることができる。
【0038】
さらにまた、図19に示す如く、ここでSOIウェーハとプライムウェーハ54との間の溶着により底部54(プライムウェーハ)上に上部68(SOIウェーハ)を配置することで構造80を形成することができる。これらに限定はされないが、テトラメチル水酸化アンモニウム(TMAH;tetramethyl ammonium hydroxide)や水酸化カリウム(KOH;potassium hydroxide)やエチレンジアミンピロカテコール(EDP;Ethylene Diamine Pyrocatechol)等の化学物質を用いた湿式エッチングが続く機械的研磨或いは研削を用いて、支持基板ウェーハ72を除去することができる。支持基板ウェーハ72の除去に続き、酸化ボックス層70はバッファードフッ酸(BHF;buffered hydrofluoric acid)により取り除くことができる。その後、図20に示す如く、上部電極83を隔膜74上に配置し、cMUT送受信器81を形成することができる。図20は、間柱76を隔膜74上に配置したcMUT送受信器81を示す。さらに、当業者には理解されるように、間柱及び/又は縦穴を含めるよう表面微細加工を用いることもできる。表面微細加工を用い、バルク微細加工工程のようにSOIウェーハから接着する代りに隔膜を付着する。これには、隔膜下側の全ての犠牲層(酸化膜等)の除去が続き、真空を用いた上部電極の付着をもって空隙を封止することができる。
【0039】
図15〜図20を参照して説明した工程フローは、間柱76を隔膜74上に配置することのできるcMUT送受信器の製造工程を示すものである。当業者には理解されるように、二重空隙cMUTユニットセル構造の製造に同様の技術を用いることもできる。同様の仕方で、図21〜26はcMUT送受信器の製造用工程フローを描いたものであり、ここでは以下に説明する如くかつ図1にて前述した如く間柱を下部電極上に配置する。
【0040】
図21は、cMUT送受信器の底部54(低抵抗プライムウェーハ)の製造工程における初期ステップを示すものであり、ここでは第1の酸化物層56と第2の酸化物層60は、これらに限定はされないが、乾式酸化工程や湿式酸化工程やその二つの組み合わせ等の酸化工程により製造し、高導電性シリコン層58上に配置することができる。第2の酸化物層60は、下部電極と上部電極の間に間隙を画成する。図22に示したように、写真平板と湿式エッチングを用いて第2の酸化物層の一部をエッチングして取り除き、それによって複数の支柱62とこの支柱が画成する空隙64とを画成することができる。その後、図23に示す如く、エッチング工程が続く写真平板工程を用い、空隙64内に間柱76を形成する。図24に示したように、間柱76上に電気的絶縁層78を配設する酸化工程を間柱76の形成に続かせることができる。さもなくば、上記の如く、間柱76を金属等の材料の付着により下部電極54上に形成し、これに電気的付着工程を続けて間柱76上に絶縁層を配設する。
【0041】
図25は、間柱76を空隙64内に付着させる場合の本技術の代替実施形態を示す。cMUT送受信器の本例示的製造方法にはさらに、上部68(SOIウェーハ)の製造が含まれる。さもなくば、当業者には理解されるように、シリコン基板や埋設酸化物層やシリコン支持基板ウェーハを含む予製作SOIをcMUT送受信器の製造に用いることもできる。図25に示したように、上部68は支持基板ウェーハ72上に配置した酸化物ボックス層70を含む。加えて、これらには限定はされないが、エピシリコンや単結晶シリコンや多結晶シリコン層等の導電層或いは低抵抗層を酸化ボックス層70上に付着させ、ここでこの層を隔膜74として機能させる構成とする。さもなくば、これらに限定はされないが、エピシリコンや単結晶シリコンや多結晶シリコン層等の非導電層或いは高抵抗層を酸化ボックス層70上に付着させ、ここでこの層を隔膜74として機能するようにできる。
【0042】
さらにまた、図25に示したように、ここでSOIウェーハとプライムウェーハの間の溶着により底部54上の上部68に付着させることで構造82を形成することができる。支持基板ウェーハ72は、これに限定はされないがTMAHやKOHやEDP等の腐食液を用いた湿式エッチングが続く機械的研磨或いは研削によって取り除くことができる。支持基板ウェーハの除去に続き、酸化物ボックス層70をBHFによって取り除くことができる。その後、図26に示したように、上部電極83を隔膜74上に付着させてcMUT送受信器85を形成することができる。図26は、間柱76を下部電極58に配置したcMUT送受信器85を示すものである。さらに、当業者には理解される如く、表面微細加工を用いて間柱及び/又は縦穴を使用することもできる。表面微細加工を用いることで、バルク微細加工工程の如くSOIウェーハから接着するのではなく、隔膜を付着させることができる。これに酸化物等の隔膜下側の任意の犠牲層の除去を続け、真空を用いた上部電極の付着により空隙を封止することができる。
【0043】
上記に記載した処理工程フローは、cMUT送受信器の空隙内に間柱を形成する工程を記述するものである。前述の如く、同様の技術を二重空隙cMUTユニットセル構造の製造に用いることもできる。当業者には理解されるように、図27〜図32を参照して以下にさらに説明する如く、cMUT送受信器の空隙内へ縦穴等の後退要素をエッチング形成する同様の工程を続けることができる。この発想により、感度改善へ向け受信モードでの所望の薄肉間隙を維持しつつ、突出する多量ドープ処理領域に隔膜を圧潰することができる。当業者には理解されるように、同様の技術を二重空隙cMUTユニットセル構造の製造に用いることもできる。
【0044】
図27〜図32は、縦穴等の後退要素を下部電極と上部電極の間の間隙内に形成したcMUTセルを製造する本技術の態様になる例示工程を示すものである。図27は、下部電極を含むcMUTセルの底部84(プライムウェーハ)の製造工程における初期ステップを示すものであり、ここでは第1の酸化物層86と第2の酸化物層90は、これらに限定はされないが、乾式酸化工程や湿式酸化工程やこの二つの組み合わせ等の酸化工程により製造され、低導電性シリコン層88上に配置する。
【0045】
図28に示す如く、第1の写真平板及びエッチング工程を用い、第2の酸化物層90の一部をエッチングにより取り除き、それによって複数の支柱92とこの支柱92が画成する空隙94を画成することができる。加えて、図28に示したように、第2の写真平板及びエッチングステップを用い、空隙94の底部に形成される縦穴96等の後退要素を画成することができる。本実施形態では、先に説明したようにシリコン層88を多量にドープ処理することができる。さもなくば、図29に示したように、少量をドープ処理した図27のシリコン層88を支柱92に隣接する領域で多量にドープ処理することもできる。符号98で参照するこれらの多量ドープ処理領域は、追加のドープ処理ステップを介して組み込むことができる。多量ドープ処理領域98は、前の部分で説明したように間柱等の突出要素に適用することもできる。ドープ処理に続き、酸化工程は図30に示す如く電気的絶縁100をもたらすことができる。
【0046】
加えて、cMUTセルの製造方法はさらに前述の如く上部104(SOIウェーハ)の製造を含む。さもなくば、当業者には理解されるように、シリコン基板や埋設酸化物層やシリコン支持基板ウェーハを含む予製作SOIをcMUT送受信器の製造に用いることもできる。図31に示したように、上部104には第1の側面と第2の側面を有する酸化ボックス層106を含ませ、支持基板ウェーハ108上に配置することができる。加えて、これらに限定はされないが、エピシリコンや単結晶シリコンや多結晶シリコン層等の導電性或いは低抵抗性層を酸化ボックス層106の第2の側面上に配置することができ、ここでこの層は隔膜110として機能させる構成とすることができる。さもなくば、これらに限定はされないが、エピシリコンや単結晶シリコンや多結晶シリコン層等の非導電性或いは高抵抗性層を酸化ボックス層106の第2の側面上に配置することもでき、ここでこの層を隔膜110として機能させる構成とすることができる。
【0047】
さらにまた、図31に示したように、ここでSOIウェーハとプライムウェーハとの間の溶着により底部84上に上部104を配置することで構造102を形成することができる。支持基板ウェーハ108は、これらに限定はされないが、TMAHやKOHやEDP等の腐食液を用いた湿式エッチングが続く機械的研磨或いは研削により取り除くことができる。酸化物ボックス層106は、BHFによって取り除くことができる。その後、図31に示す如く、上部電極113を隔膜110上に配置し、cMUT送受信器112を形成する。図32は、縦穴96を下部電極88上に配置したcMUT送受信器112を示す。さらに、当業者には理解されるように、表面微細加工を用いて間柱及び/又は縦穴を包含させることもできる。表面微細加工を用いることで、バルク微細加工工程の如くSOIウェーハから接着するのではなく、隔膜を付着させることができる。これに隔膜の下側の全ての犠牲層(酸化物等)の除去を続け、真空と上部電極の付着とにより空隙を封止することができる。
【0048】
上記の工程フローは、cMUTセル112の空隙内に縦穴を形成する方法を説明するものである。cMUTセル112の空隙内に間柱等の突出要素を形成する同様の方法を続けることができる。しかしなから、本技術の一例示実施形態によれば、隔膜を間柱領域に優先的に取り付けるべく多量ドープ処理領域を間柱のシリコン層内に駐在させ、改善された受信モード動作用に低減された間隙をもたらすことが望ましかろう。
【0049】
前述の如く、本技術のさらなる実施形態によれば、図13と図14に示した二重空隙ユニットセル等の二重空隙ユニットセル構造を実装することができる。前述の如く、二重空隙ユニットセル構造は、受信器として動作するよう構成することのできる第1のセルを含む。加えて、二重空隙cMUTユニットセル構造は、送信器として動作するよう構成することのできる第2のセルを含む。本技術のさらなる態様により、二重空隙cMUTセルユニット構造の例示製造方法を説明する。前述の如く、図15〜図32を参照して説明した方法を用い、二重空隙cMUTセルユニット構造を製造することができる。本方法には、受信cMUTセルが下部電極と上部電極を含む受信器として動作するよう構成することのできる第1のセルの製造が含まれる。さらにまた、本方法は送信モードで動作する構成とすることのできる第2のセルの製造を必要とし、ここでは送信器cMUTセルは下部電極と上部電極を含もう。さらにまた、本方法は第1のセルと第2のセルのうちの一方に突出要素と後退要素のうちの一方の形成が必要となろう。
【0050】
図33は、本技術の態様に従って製造される例示的cMUTセル120を含むcMUT送受信器システム118のブロック線図である。このシステム118は抵抗器122のバンクを含み、cMUTセル120へ結合することができる。加えて、このシステム118は少なくとも一つの外部電圧によって給電することのできる抵抗器122に結合させることのできるバイアス電圧バンク124を含ませるとことができる。さらに、バイアス電圧バンクに存在することのある直流−直流変換器が、離散的或いは連続的な様々な所定のバイアス電圧を生成することができる。バイアス電圧バンク124は、基板上に配置した個別離散電子デバイスを用いて実装することができる。さもなくば、バイアス電圧バンクは特定用途向け集積回路(ASIC;application specific integrated circuit)として実装することもできる。ASICを実装してバイアス電圧バンク124と残りの機能ブロックとを統合することで、チップ搭載型システム(SOC;System−on−Chip)を得ることができる。
【0051】
ブラックボックス126は多重化器回路で構成することができ、抵抗器122に結合することができる。ブラックボックス126に結合することのできる送/受信(T/R)スイッチ128は通常スイッチ回路を含み、送信信号と受信信号の間を切り替えるよう設計することができる。さらにまた、システム118にはAC励振パルスを発生させるのに用いることのできるT/Rスイッチ128に結合できるパルス発生器130を含ませることができる。T/Rスイッチ128に結合することのできる低雑音増幅器(LNA)132を、信号の増強に用いることができる。加えて、本技術の一例示実施形態によれば、T/Rスイッチ128に結合することのできるT/R制御器ブロック134を用いてバイアス電圧バンク124とT/Rスイッチ128の機能を連携させることができる。これらに限定はされないが、書き換え可能ゲートアレイ(FPGA;field programmable gate array)や論理回路等のプログラム可能な装置を用い、T/R制御器134を実装することができる。在庫品の部品を用い、パルス発生器130とLNA132を実装することができる。
【0052】
cMUT送受信器120が送信モードで動作している間は、バイアス電圧バンク124が供給する直流バイアス電圧とパルス発生器が生成したAC励振パルスをcMUT送受信器120に印加することができる。T/R制御器134は、バイアス電圧バンク124とT/Rスイッチ128を送信モードに設定して、直流バイアス電圧と超音波パルスをcMUT120へ給送できるようにするのに用いることができる。これらの超音波のパルスは、cMUT120により音響信号へ変換することができる。
【0053】
受信モードで動作する間、バイアス電圧バンク124が供給するより大きな直流バイアス電圧をcMUT120に印加することができる。T/R制御器134は、バイアス電圧バンク124とT/Rスイッチ128を受信モードへ設定するのに用いることができる。反射音響信号の受信時に、cMUT120はこれらの音響信号を電気信号へ変換することができる。さらにまた、これらの電気信号は信号増幅へ向けLNA132へチャンネル配信する。
【0054】
本技術の一態様によれば、cMUT送受信器が提示される。図を参照して上記に説明したように、cMUT送受信器には下部電極を含ませることができる。さらにまた、下部電極に隣接配置して第1の間隙幅を有する間隙が隔膜と下部電極の間に形成されるようにできる。加えて、本技術の態様によれば、少なくとも一つの要素を間隙内に形成することができる。要素は、隔膜と下部電極の間に第2の間隙幅を提供するよう配置する。一実施形態では、第1の間隙幅は第2の間隙幅よりも大とする。さらにまた、要素は間柱等の突出要素を含ませることができる。この要素は、縦穴等の後退要素をさらに含ませることができる。cMUT送受信器に、隔膜に結合した上部電極を含ませることができる。加えて、cMUT送受信器にcMUT送受信器の動作期間中に隔膜を下部電極へ向け膨張させるのに用いることのできるバイアス電位源を含ませることができる。
【0055】
cMUT送受信器10と上記cMUT送受信器の製造方法により、感度向上させたcMUT送受信器の製作が可能である。送信器と受信器の両方として動作する間のcMUT送受信器の性能は、都合よく向上させることができる。これらのcMUT送受信器は、医用造影や非破壊評価や無線通信や保安応用やガス検出や他の応用等の様々な分野に応用を見出すことができる。
【0056】
さらにまた、二重空隙cMUTユニットセル28と上記の二重空隙cMUTユニットセルの製造方法が、送信信号と受信信号用の個別セルの動作の最適化を促し、そのことが二重空隙cMLTTユニットセルの感度を高める結果を招く。これらの二重空隙cMUTユニットセルは、医用造影や非破壊評価や無線通信や保安応用やガス検出や他の応用等の様々な分野に応用を見出すことができる。
【0057】
本願明細書では本発明の特定の特徴だけを図示し説明してきたが、当業者には多くの改変例と変形例が想起されよう。それ故、特許請求の範囲は本発明の趣旨範囲内に含まれる全てのこの種改変例や変形例を包含するよう意図するものである。一(又は複数)の図面中のものに対応する参照符号は、特許請求の範囲中では請求発明の理解を容易にするためだけのものであり、請求発明の範囲を狭めることを意図したものではない。本出願の特許請求の範囲の記述内容は、明細書の説明の一部として明細書中に取り込むものである。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】リング間柱を備え本技術態様になる送信モードで動作するcMUT送受信器の一例示実施形態を示す断面図である。
【図2】リング間柱を備え本技術態様になる受信モードで動作する図1のcMUT送受信器の一例示実施形態を示す断面図である。
【図3】3−3線に沿う図1のcMUT送受信器の断面上面図である。
【図4】本技術態様になる単一の間柱を備える図1のcMUT送受信器の代替例示実施形態の縦断側面図である。
【図5】本技術態様になる間柱列を備える図1のcMUT送受信器の別の例示実施形態の縦断側面図である、
【図6】本技術態様になる縦穴を備える図1のcMUT送受信器の別の例示実施形態の縦断側面図である。
【図7】本技術態様になる単一の間柱を備える図2のcMUT送受信器の代替例示実施形態の縦断側面図である。
【図8】本技術態様になる間柱列を備える図2のcMUT送受信器の別の例示実施形態の縦断側面図である。
【図9】本技術態様になる縦穴を備える図2のcMUT送受信器の別の例示実施形態の縦断側面図である。
【図10】10−10断面線に沿う図4のcMUT送受信器の断面上面図である。
【図11】11−11断面線に沿う図5のcMUT送受信器の断面上面図である。
【図12】12−12断面線に沿う図6のcMUT送受信器の断面上面図である。
【図13】本技術態様により二重空隙cMUTユニットセルの例示実施形態を示す縦断側面図である。
【図14】本技術態様になる図13の二重空隙cMUTユニットセルの代替構成の例示実施形態を示す縦断側面図である。
【図15】図1のcMUTセルを製造する例示工程を示す図である。
【図16】図1のcMUTセルを製造する例示工程を示す図である。
【図17】図1のcMUTセルを製造する例示工程を示す図である。
【図18】図1のcMUTセルを製造する例示工程を示す図である。
【図19】図1のcMUTセルを製造する例示工程を示す図である。
【図20】図1のcMUTセルを製造する例示工程を示す図である。
【図21】図1のcMUTセルを製造する代替例示工程を示す図である。
【図22】図1のcMUTセルを製造する代替例示工程を示す図である。
【図23】図1のcMUTセルを製造する代替例示工程を示す図である。
【図24】図1のcMUTセルを製造する代替例示工程を示す図である。
【図25】図1のcMUTセルを製造する代替例示工程を示す図である。
【図26】図1のcMUTセルを製造する代替例示工程を示す図である。
【図27】図1のcMUTセルを製造する別の例示工程を示す図である。
【図28】図1のcMUTセルを製造する別の例示工程を示す図である。
【図29】図1のcMUTセルを製造する別の例示工程を示す図である。
【図30】図1のcMUTセルを製造する別の例示工程を示す図である。
【図31】図1のcMUTセルを製造する別の例示工程を示す図である。
【図32】図1のcMUTセルを製造する別の例示工程を示す図である。
【図33】本技術の一態様になるcMUT送受信器を実装するシステムのブロック線図である。
【符号の説明】
【0059】
10,81,85 cMUT送受信器
12,34,42 下部電極
14,36,62,92 支柱
16,38,44,74,110 隔膜
18,40,46,83,113 上部電極
20,64,94 空隙
22,52,76 間柱
24 誘電体床面
26,48,96 縦穴
28,112 cMUTセル
30 第1のセル(受信器セル)
32 第2のセル(送信器セル)
50,78 絶縁層
54,84 底部
56,86 第1の酸化物層
58,88 シリコン層
60,90 第2の酸化物層
68,104 上部
70,106 酸化ボックス層
72 支持基板ウェーハ
80,82,102 構造
98 多量ドープ処理領域
100 電気的絶縁
118 送受信器システム
120 cMUT
122 抵抗器
124 バイアス電圧バンク
126 ブラックボックス
128 T/Rスイッチ
130 パルス発生器
132 低雑音増幅器
134 T/R制御器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容量性超細加工超音波トランスデューサセル(10)であって、
下部電極(12)と、
前記下部電極(12)に隣接配置した隔膜(16)で、該隔膜(16)と下部電極(12)の間に第1の間隙幅を有する間隙が形成されるようにした前記隔膜(16)と、
前記間隙内に形成した少なくとも一つの要素で、前記隔膜(16)と前記下部電極(12)の間に第2の間隙を設けるよう配置した前記少なくとも一つの要素とを備える、容量性微細加工超音波トランスデューサセル(10)。
【請求項2】
前記少なくとも一つの要素は、突出要素を備える、請求項1記載の容量性超微細加工超音波トランスデューサセル(10)。
【請求項3】
前記少なくとも一つの要素は、後退要素を備える、請求項1記載の容量性超微細加工超音波トランスデューサセル(10)。
【請求項4】
容量性超微細加工超音波トランスデューサセル(10)であって、
上部と底部を備える下部電極(12)と、
前記下部電極(12)の前記上部に配置され、空隙(20)を画成する構成とした複数の支柱(14)と、
前記複数の支柱(14)上に配置した隔膜(16)で、該隔膜(16)と前記下部電極(12)が境界付ける間隙をもたらす前記隔膜(16)と、
前記隔膜(16)上に配置した上部電極(18)と、
前記空隙(20)内に形成され、前記下部電極(12)と前記上部電極(18)の間に前記空隙(20)の深さに満たない間隙幅をもたらすよう構成した少なくとも一つの要素とを備える、容量性超微細加工超音波トランスデューサセル(10)。
【請求項5】
バイアス電位源をさらに備え、該バイアス電位源は前記隔膜(16)を前記下部電極(12)へ向け膨張させる構成とした、請求項4記載の容量性微細加工超音波トランスデューサセル(10)。
【請求項6】
容量性微細加工超音波トランスデューサセルの製造方法であって、
下部電極(12)上に複数の支柱を形成し、該支柱(14)間に空隙(20)を画成するステップと、
前記空隙(20)内に少なくとも一つの要素を形成するステップと、
前記複数の支柱(14)上に隔膜を配置し、前記下部電極(12)と前記隔膜(16)の間に間隙を形成するステップと、
前記隔膜(16)上に上部電極を配置するステップとを含む、方法。
【請求項7】
容量性微細加工超音波トランスデューサセル構造(28)であって、
受信モードで動作する構成とした第1のセル(30)で、下部電極(34)と上部電極(40)を備える前記第1のセル(30)と、
送信モードで動作する構成とした第2のセル(32)で、下部電極(42)と上部電極(46)を備える前記第2のセル(32)と、
前記第1のセル(30)と前記第2のセル(32)のそれぞれの間に空隙を形成するよう配置した複数の支柱(36)と、
前記支柱(36)上に配設した複数の隔膜(38,44)と、
前記第1のセル(30)と前記第2のセル(32)のうちの一つの空隙内に形成した突出要素と後退要素のうちの少なくとも一つとを備える、構造(28)。
【請求項8】
容量性微細加工超音波トランスデューサユニットセル構造の製造方法であって、
受信モードで動作する構成のユニットセル内に第1のセルを作製するステップで、該第1のセル(30)が下部電極(34)と上部電極(40)を備える前記ステップと、
送信モードで動作する構成のユニットセル内に第2のセルを作製するステップで、該第2のセル(32)が下部電極(42)と上部電極(46)を備える前記ステップとを含む、方法。
【請求項9】
前記第1のセル(30)と前記第2のセル(32)のうちの一つに突出要素と後退要素のうちの一つを作製するステップをさらに含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
システム(118)であって、
容量性微細加工超音波トランスデューサ(120)と、
容量性微細加工超音波トランスデューサ(120)に結合した抵抗器(122)と、
前記抵抗器(122)に接続したバイアス電圧バンク(124)と、
前記抵抗器(122)に接続した多重化器(126)と、
前記多重化器(126)に接続され、容量性微細加工超音波トランスデューサ(120)の動作モードを制御する構成としたスイッチ(128)と、
前記スイッチ(128)に結合され、前記バイアス電圧バンク(124)と前記スイッチ(128)の動作を制御する構成とした制御回路(134)と、
前記スイッチ(128)に結合され、交流励振パルスを発生する構成としたパルス発生器(130)と、
前記スイッチ(128)に結合され、信号を増強する構成の低雑音増幅器(132)とを備える、システム(118)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【公開番号】特開2006−20313(P2006−20313A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2005−189199(P2005−189199)
【出願日】平成17年6月29日(2005.6.29)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】