説明

高接着性共重合ポリイミドフィルム

【課題】銅箔との接着性が向上し、易滑性、寸法安定性、水濡れ性にも優れた高接着性共重合ポリイミドフィルムを提供する。
【解決手段】3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、およびピロメリット酸二無水物から形成されたポリイミドフィルムに、サンドマット処理を施した後、リラックス処理を施し、次いでプラズマ処理を施してなるポリイミドフィルムであって、200℃加熱収縮率がフィルムの機械搬送方向(MD)と幅方向(TD)で共に0.05%以下であり、フィルム表面の、触針式表面粗さ計で測定した表面粗さRaが0.065μm以上、Rmaxが1.0μm以上、接触角法に基づき測定した表面自由エネルギーが80mN/m以上である高接着性ポリイミドフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高接着性共重合ポリイミドフィルムに関し、さらに詳しくは銅箔との接着性が向上し、易滑性、寸法安定性、水濡れ性にも優れた高接着性共重合ポリイミドフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドフィルムのような耐熱性フィルムは、電子部品などのフレキシブルプリント配線基板(FPC)に用いる基材であるTAB(Tape Automated Bonding)、COF(Chip On Flex)の基材絶縁フィルムとして、あるいは半導体装置における支持部材であるLOC用テープなどとして用いられている。
【0003】
そして、このような用途では、基材となるフィルムの接着性が大きいことが望まれており、特に近年の高密度配線や微細加工といったファインピッチ化に伴って、その要求レベルは益々厳しくなってきている。
【0004】
また、耐熱性フィルムは、磁気記録媒体のベース材料としても用いられており、このような場合においても、フィルムの耐熱性と共に高い接着性が求められている。
【0005】
これまでに、耐熱性フィルムの接着性を向上させる表面改質方法としては、コロナ放電処理する方法(例えば、特許文献1参照)、アルカリ処理する方法(例えば、特許文献2参照)、サンドマット処理する方法(例えば、特許文献3参照)、およびプラズマ放電処理する方法(例えば、特許文献4参照)等の種々の技術が提案されている。
【0006】
また、耐熱性フィルムの接着性を改善するために添加する無機粒子としては、二酸化チタン粒子(例えば、特許文献5参照)が知られており、無機粒子とプラズマ処理の組み合わせ(例えば、特許文献6参照)や、粒子が1〜5μmを主体とした無機粉体を対フィルム樹脂重量当たり0.1〜0.5重量%含む芳香族熱可塑性ポリイミドフィルム(例えば、特許文献7参照)についても知られている。そして、特許文献7においては、内在させる無機粒子の粒子径が1μm以上であることが必須としており、1μm以上でないと十分な易滑性(滑り性)を発現しにくいと記載されている。
【0007】
上記従来技術のうち、プラズマ放電処理方法によれば、例えばポリイミドフィルムに対してコロナ放電処理する場合と比較して、良好な改質効果を発現させ得る。プラズマ放電処理とはいわゆるグロー放電処理であり、コロナ放電処理と比較して強い電力パワーを与えることが可能であるからである。より具体的には、コロナ放電処理に際しては、通常20〜500W・min/m程度の電力密度で処理されるのが通常であるのに対し、グロー放電処理では数千W・min/mでの放電が可能であることにより、効果が大きく向上するためと推定されるが、長期保管するとその効果が低下することが問題視されていた。この効果低下の原因は、ESCAなどのフィルム表面のO/C比を追跡すると、O/C比の低下と接触角の増加を生じていることから確認できる。
【0008】
また、サンドマット処理は、表面を粗面化させる意味では非常にその効果は大きい。接着剤が粗面化されて内部に食い込み、アンカー効果が発現したためと考えられる。
【0009】
一方、ポリイミドフィルムの寸法安定性を向上させるために、低熱収縮処理が行われるが、この低熱収縮処理は、製膜工程での引っ張り応力が残留されるために、のちの工程で接着剤を塗布しキュアー処理する際に著しく熱収縮を起こし、シワなどの発生を起こすなどの問題があった。そこで、応力緩和処置として、製膜されたフィルムに再度高熱処理を施すことにより熱安定性が向上することが知られている。
【0010】
従来これらの表面処理は、通常単独での処理が主に実施されているが、せいぜい2種類の表面処理方法を組み合わせることはあっても、3種類の表面処理方法を組み合わせることまでは考えられてはいなかった。
【0011】
そして、上記の従来技術では、ポリイミドフィルムに十分に満足すべき接着性を付与することができず、その改良がしきりに望まれていた。
【特許文献1】特開平7−330930号公報
【特許文献2】特開平8−12779号公報
【特許文献3】特開平8−34866号公報
【特許文献4】特開2003−55487号公報
【特許文献5】特開2006−28216号公報
【特許文献6】第3750044号公報
【特許文献7】特公平6−65707号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものである。
【0013】
したがって、本発明の目的は、銅箔との接着性が向上し、易滑性、寸法安定性、水濡れ性にも優れた高接着性共重合ポリイミドフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために本発明によれば、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、およびピロメリット酸二無水物から形成されたポリイミドフィルムに、サンドマット処理を施した後、リラックス処理を施し、次いでプラズマ処理を施してなるポリイミドフィルムであって、200℃加熱収縮率がフィルムの機械搬送方向(MD)と幅方向(TD)で共に0.05%以下であり、フィルム表面の、触針式表面粗さ計で測定した表面粗さRaが0.065μm以上、Rmaxが1.0μm以上、接触角法に基づき測定した表面自由エネルギーが80mN/m以上であることを特徴とする高接着性共重合ポリイミドフィルムが提供される。
【0015】
なお、本発明の高接着性ポリイミドフィルムにおいては、
前記共重合ポリイミドフィルムが、30〜60モル%の3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、40〜70モル%の4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、および100モル%のピロメリット酸二無水物から形成されたものであること、
フィルム中に分散されている無機粒子の粒子径は0.01〜1.5μmの範囲内にあり、かつ平均粒子径が0.05μm〜0.7μmであり、フィルム樹脂重量当たり0.1〜0.9重量%の割合でフィルム中に分散され、かつ表面にはこの無機粒子の存在に起因する微細な突起が形成されていること、
平均粒子径が0.1〜0.6μmであり、フィルム樹脂重量当たり0.3〜0.8重量%の割合で分散され、粒子径0.15〜0.6μmの粒子が全粒子中80体積%以上の割合を占める粒度分布を有していること、および
前記プラズマ処理を、フィルム表面の接触角法に基づき測定した表面自由エネルギーが80mN/m以上となる条件で施したこと
が、いずれも好ましい条件として挙げられる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、以下に説明するとおり、例えば銅箔との接着性が高く、また易滑性、寸法安定性に優れ、さらに水濡れ性にも優れた高接着性共重合ポリイミドフィルムを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の高接着性共重合ポリイミドフィルムについてさらに詳しく説明する。
【0018】
まず、本発明の高接着性共重合ポリイミドフィルムを得るに際してその前駆体であるポリアミド酸について説明する。本発明に用いられるポリアミド酸は、ジアミン成分としての3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルと、酸成分としてのピロメリット酸二無水物を重合させることで得られるものである。
【0019】
本発明に用いられる3,4’−ジアミノジフェニルエーテルおよび4,4’−ジアミノジフェニルエーテルは、有機溶媒に溶解させて用いるのが好ましい。ピロメリット酸二無水物並びに3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを重合してポリアミド酸を得る方法は、各種公知の方法で行ってもよく、例えば予め所定量の3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを有機溶媒に溶解させておき、それにピロメリット酸二無水物を添加し、所定の粘度を有するポリアミド酸を得る方法が挙げられる。
【0020】
次に、得られたポリアミド酸溶液から共重合ポリイミドフィルムを得る方法を説明する。
【0021】
まず、開環触媒および脱水剤を用いて脱水する化学閉環法または加熱処理によって脱水する熱閉環法によりポリアミド酸を環化させることにより、共重合ポリイミドのゲルフィルムを得ることが好ましく行われる。そして、得られたゲルフィルムの端部を固定し、縦方向に1.05〜1.5の倍率、横方向に1.05〜2.0の倍率で2軸延伸して共重合ポリイミドフィルムを得ることができる。かかる2軸延伸を行うことにより、得られるポリイミドフィルムの機械的特性を向上させることができる。化学閉環法または熱閉環法のいずれの方法で行っても良いが、得られる共重合ポリイミドフィルムの弾性率を向上させることができること、熱膨張係数を低下せせることができることなどの利点を有する化学閉環法が好ましく採用される。
【0022】
化学閉環法で使用される脱水剤としては、無水酢酸などの脂肪族酸無水物,N−ジアルキルカルボジイミド類、低級脂肪酸ハロゲン化物、アリルホスホン酸次ハロゲン化物、安息香酸無水物、フタル酸無水物などの芳香族酸無水物およびケテンなどが好ましい。
【0023】
また、使用される環化触媒としては、3,4’−Nルチジン、3,5−ルチジン、4−メチルピリジン、4−イソプロピルピリジン、4−ベンジルピリジンなどのピリジン類、N−ジメチルベンジルアミン、4−ジメチルベンジルアミン、4−ジメチルドデシルアミン、β−ピコリンなどのピコリン類、トリエチルアミン、N−ジメチルアニリン、キノリンおよびイソキノリンなどが好ましく、これらを単独または混合して使用するのが好ましい。
【0024】
化学閉環法を行うに際しては、ポリアミド酸溶液中に環化触媒、脱水剤を混合させイミド化した後に、この溶液をコーティングして共重合ポリイミドフィルムを得る方法、およびポリアミド酸溶液をコーティングして薄膜化させた後、これを環化触媒、脱水剤の混合中に浸積してイミド化させることによって共重合ポリイミドフィルムを得る方法などを採用し得る。
【0025】
なお、得られる共重合ポリイミドフィルムの機械的性質などを改善させるために、種々の添加剤と触媒をポリアミド酸に添加することができるが、本発明においては、ポリイミドフィルムの表面を粗化させてフィルムに滑り性を付与し工程安定性を向上させる観点から、無機粒子をポリアミド酸に混合することが必要である。
【0026】
本発明で使用する無機粒子としては、ゾル・ゲル法、結晶シリカ、溶融シリカ等の二酸化珪素が好ましく、その形状については特に限定するものではない。無機粒子は、粒子径は0.01〜1.5μmの範囲内にあり、かつ平均粒子径が0.05μm〜0.7μmであり、フィルム樹脂重量当たり0.1〜0.9重量%の割合でフィルム中に分散され、かつ表面にはこの無機粒子の存在に起因する微細な突起が形成されていること、さらには、平均粒子径が0.1〜0.6μmであり、フィルム樹脂重量当たり0.3〜0.8重量%の割合で分散され、粒子径0.15〜0.6μmの粒子が全粒子中80体積%以上の割合を占める粒度分布を有していることが好ましい。
【0027】
無機粒子の添加方法としては、重合時の溶媒に予め分散させたスラリーを添加する方法が好ましい。
【0028】
本発明の共重合ポリイミドフィルムを構成するポリイミドは、ブロックポリマー、ランダムポリマーおよび混合ポリマーのいずれであってもよい。
【0029】
ポリアミド酸溶液は粘性が高いことから、通常、キャスティングドラムあるいはエンドレスベルトの上にポリアミド酸溶液をフィルム状に押し出し、あるいは流延塗布し、前記キャスティングドラムまたはエンドレスベルトの上にポリアミド酸を少なくとも自己支持を備える程度に硬化させた後、必要に応じて熱処理などを施し、安定な共重合ポリイミドフィルムとすることも好ましく行われる。
【0030】
本発明の高接着性共重合ポリイミドフィルムは、30〜60モル%の3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、40〜70モル%の4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、および100モル%のピロメリット酸二無水物から形成されることが望ましい。
【0031】
さらに好ましい組成は、ジアミン成分として3,4’−ジアミノジフェニルエーテル40モル%と4,4’−ジアミノジフェニルエーテル60モル%、酸性分としてピロメリット酸二無水物100モル%から形成される共重合ポリイミドフィルムである。
【0032】
上記の組成からなる本発明の高接着性共重合ポリイミドフィルムは、製膜後のフィルムに、サンドマット処理を施した後、リラックス処理を施し、次いでプラズマ処理を施してなり、200℃加熱収縮率がフィルムの機械搬送方向(MD)と幅方向(TD)で共に0.05%以下、特に0.04%以下であり、フィルム表面の、触針式表面粗さ計で測定した表面粗さRaが0.065μm以上、特に0.066μm以上、Rmaxが1.0μm以上、特に1.4μm以上、接触角法に基づき測定した表面自由エネルギーが80mN/m以上、特に82mN/m以上であることを特徴とする。
【0033】
ここで、ポリイミドフィルムの200℃加熱収縮率が上記の条件を外れる場合、表面粗さRaが0.065μm未満の場合、Rmaxが1.0μm未満の場合、および表面自由エネルギーが80mN/m未満の場合は、いずれも接着性改良効果が不十分となるため好ましくない。加熱収縮率、表面粗さRa、Rmaxおよび表面自由エネルギーの四条件が上記の範囲を満たすことにより、銅箔との接着性が高く、また寸法安定性に優れ、さらに水濡れ性にも優れたポリイミドフィルムを得ることができるのである。
【0034】
ここでフィルムとは、厚み数μm〜数mmの平板な形状の樹脂を指す。本発明の共重合ポリイミドフィルムの厚みは、通常3〜300μmであり、好ましくは5〜125μm、より好ましくは7.5〜75μm、さらに好ましくは7.5〜50μmである。
【0035】
上記の特性を満たす本発明の高接着性ポリイミドフィルムは、上記の組成からなるポリイミドフィルムにサンドマット処理を施した後、リラックス処理を施し、次いでプラズマ処理を施すことにより製造することができる。
【0036】
サンドマット処理は、好ましくは、粒子径分布のサンド径80〜200μmのサンド粒子をフィルム表面に打ち付けることにより、平均表面粗さRaが0.065μm以上、Rmaxが1.0μm以上となるように施すのが好ましい。このサンドマット処理により形成される平均表面粗さRmaxが1.0μmより小さい場合は、十分なアンカー効果が期待できないために接着力の改良効果が小さくなる。また、Rmaxの上限は特に制限しないが、機械物性の低下を避けるためには、1.6μm程度であることが望ましい。
【0037】
サンドマット処理を施した共重合ポリイミドフィルムには、次いでリラックス処理が施される。リラックス処理は、200℃加熱収縮率がフィルムの機械搬送方向(MD)と幅方向(TD)で共に0.05%以下となるような条件、具体的には、200〜500℃の中を低張力下にてフィルムを走行させ、アニール処理することにより行われる。炉の中でフィルムが滞留する時間が処理時間となるが、これは走行速度を変えることによりコントールすることができ、5秒〜5分の処理時間が好ましい。処理時間がこれよりも短いと、フィルムに充分熱が伝わらず、またこれよりも長いと、過熱気味になり平面性を損なうという好ましくない傾向が招かれることがある。また、フィルムの走行時の張力は10〜50N/mであることが好ましく、さらには20〜30N/mであることが好ましい。この範囲よりも張力が低いとフィルムの走行性が悪くなり、また張力が高いと得られたフィルムの走行方向の熱収縮率が高くなる傾向となる。
【0038】
リラックス処理を施したポリイミドフィルムには、次いでさらにプラズマ処理が施される。プラズマ処理は、フィルムの接触角法に基づき測定した表面自由エネルギーが80mN/m以上となる条件で施すことが望ましい。具体的には、希ガスが20モル%以上含有される100〜1000torrの雰囲気下で表面が誘電体によって被覆され、かつ10℃〜100℃に冷却された電極と、これに対向して設けられた表面が誘電体によって被覆された電極を用いて行うこと、および処理電力密度200W・min/m以上で行うことが、いずれも好ましい条件として挙げられる。
【0039】
プラズマ処理を施こさない場合には、フィルムの表面自由エネルギーが80mN/mとならず、十分な接着性改良効果を得ることができない。
【0040】
かくして得られる本発明の高接着性共重合ポリイミドフィルムは、銅箔との接着性が高く、また寸法安定性に優れ、さらに水濡れ性にも優れた特性を有しているため、これらの特性を活かして、電子部品などのフレキシブルプリント配線基板(FPC)に用いる基材であるTAB(Tape Automated Bonding)、COF(Chip On Flex)の基材絶縁フィルムとして、あるいは半導体装置における支持部材であるLOC用テープなどとして有用に利用することができる。
【実施例】
【0041】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
【0042】
なお、実施例中の3,4’−ODAは3,4’−ジアミノジフェニルエーテルを、4,4’−ODAは4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを、PMDAはピロメリット酸二無水物を、DMACはN,N−ジメチルアセトアミドを、それぞれ表す。
【0043】
また、実施例中のポリイミドフィルムの各特性は、次の方法で評価した。
【0044】
(1)表面自由エネルギー(mN/m)
表面処理を実施した表面を水、エチレングリコール、ヨウ化メチレンで各n=5回測定した接触角の平均値から、Kyowa Interface ScienceのFACE CA−W150を用い表面自由エネルギーを求めた。この値が大きいということは水濡れ性が良く接着力が一般に高い。
【0045】
(2)熱収縮率
25℃、60%RHに調湿された部屋に2日間放置した後のフィルム寸法(L1)を測定し、続いて200℃60分加熱した後再び25℃、60%RHに調湿された部屋に2日間放置した後のフィルム寸法(L2)を測定して、下記計算式より評価した。
加熱収縮率=−(L2−L1)/L1×100
【0046】
(3)表面粗さ
小坂研究所の表面粗さ計(SE3500)にて測定長で2.5mm間を測定してRa、Rmaxを求めた。
【0047】
(4)各フィルムの接着力評価
三井化学株式会社製 エポキシ樹脂接着剤(商品名エポックス AH−357A/AH−357B/AH−357C=100/5/12を100/5/12重量比で混合)をコータで各フィルムに塗布し、130℃×4分で予備乾燥を行い18μm圧延銅箔(BHY−22B−T、ジャパンエナジー社製)を重ねて2MPa加圧下170℃80分のプレスキュアで銅張り積層板を得た。得られた積層板に0.8mmの回路をきり塩化第2鉄溶液でエッチチングを行い評価用サンプルを作製した。得られた0.8mm幅の金属箔部分を90°の剥離角度、50mm/分の条件で剥離し、この場合の引き剥がし90強度をn=5回測定しその平均値を接着力とした。
【0048】
[実施例1]
DMACに3,4’−ODA45モル%とPMDAの一部34.5モル%を投入し、常温常圧中窒素雰囲気下で1時間反応させた。次に、ここに4,4’−ODA55モル%を投入し均一になるまで撹拌した後、
さらに無機粒子の粒子径0.01〜1.0μmの範囲内、平均粒子径0.4μmのゾル・ゲル法シリカを固形分基準で0.2重量%となるように添加した。
【0049】
続いてここに残りのPMDA65.5モル%を添加しさらに1時間反応させ3500ポイズのポリアミド酸溶液を得た。固形分濃度は、最終的に20.3重量%になるようにDMACを添加した。得られたポリアミド酸に無水酢酸、β−ピコリンを添加混合した後、エンドレスベルト上にキャストし100℃で5分乾燥して得られる自己支持性のフィルムを引き離し、端部を固定した後、テンタ−炉にて段階的に昇温して高温500℃にて1分間焼成して、厚み25μmのポリイミドフィルム長尺品を得た。
【0050】
得られたフィルムにサンドマット処理を行い表面粗さがRa0.065μm以上になるように処理した。すなわち、サンド粒子径分布の80〜200μmのサンドを10〜100m/Sで投射処理を行った。
【0051】
次に、熱リラックス処理を施した。すなわち、具体的には、450℃の中を低張力下にてフィルムを走行させ、アニール処理を行った。炉の中でフィルムが滞留する時間が処理時間となるが、走行速度を変えることでコントールすることができる。この実験では1分間処理を行った。
【0052】
最後に、希ガスが20モル%以上含有される760torr(常圧)の雰囲気下で、表面が誘電体によって被覆され、かつ50℃に冷却された電極と、これに対向して設けられた表面が誘電体によって被覆された電極を用いて、処理電力密度500W・min/mの条件でプラズマ処理を行った。得られた共重合ポリイミドフィルムの特性を表1に示す。
【0053】
[実施例2]
実施例1と同様の操作において、フィルム厚を12.5μmに変更した以外は、同様にしてポリイミドフィルムを作製した。得られた共重合ポリイミドフィルムの特性を表1に示す。
【0054】
[比較例1〜5]
実施例1において、何も処理を施さない未処理品を比較例1、サンドマット処理のみを施したものを比較例2、サンドマット処理とリラックス処理を施したものを比較例3、リラックス処理とプラズマ処理を施したものを比較例4として、それぞれ4種類の共重合ポリイミドフィルムを作製した。得られた各共重合ポリイミドフィルムの特性を表1に示す。
【0055】
【表1】

【0056】
表1の結果から、サンドマット処理を行った後、さらにリラックス処理とプラズマ処理を施してなる本発明の高接着性共重合ポリイミドフィルム(実施例1〜2)は、サンドマット処理/リラックス処理/プラズマ処理のいずれかを欠いて得られた共重合ポリイミドフィルム(比較例1〜4)に較べて、加熱収縮率、表面粗さRa、Rmaxおよび表面自由エネルギーの四条件を均衡に満たし、寸法安定性とアンカー効果により接着性に優れるものであることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の高接着性共重合ポリイミドフィルムは、銅箔との接着性が高く、また寸法安定性に優れ、さらに水濡れ性にも優れた特性を有しているため、これらの特性を活かして、電子部品などのフレキシブルプリント配線基板(FPC)に用いる基材であるTAB(Tape Automated Bonding)、COF(Chip On Flex)の基材絶縁フィルムとして、あるいは半導体装置における支持部材であるLOC用テープなどとして有用に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、およびピロメリット酸二無水物から形成されたポリイミドフィルムに、サンドマット処理を施した後、リラックス処理を施し、次いでプラズマ処理を施してなるポリイミドフィルムであって、200℃加熱収縮率がフィルムの機械搬送方向(MD)と幅方向(TD)で共に0.05%以下であり、フィルム表面の触針式表面粗さ計で測定した表面粗さRaが0.065μm以上、Rmaxが1.0μm以上、接触角法に基づき測定した表面自由エネルギ−が80mN/m以上であることを特徴とする高接着性共重合ポリイミドフィルム。
【請求項2】
前記共重合ポリイミドフィルムが、30〜60モル%の3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、40〜70モル%の4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、および100モル%のピロメリット酸二無水物から形成されたものであることを特徴とする請求項1記載の高接着性共重合ポリイミドフィルム。
【請求項3】
前記共重合ポリイミドフィルム中の無機粒子の粒子径が0.01〜1.5μmの範囲内、かつ平均粒子径が0.05〜0.7μmであり、この無機粒子がフィルム樹脂重量当たり0.1〜0.9重量%の割合でフィルム中に分散され、かつフィルムフィルム表面にはこの無機粒子の存在に起因する微細な突起が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の高接着性共重合ポリイミドフィルム。
【請求項4】
前記無機粒子の平均粒子径が0.1〜0.6であり、この無機粒子がフィルム樹脂重量当たり0.3〜0.8重量%の割合でフィルム中に分散されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の高接着性共重合ポリイミドフィルム。
【請求項5】
前記無機粒子の粒子径0.15〜0.6μmの割合が全粒子中の80体積%以上の割合を占める粒子分布を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の高接着性共重合ポリイミドフィルム。
【請求項6】
前記プラズマ処理を、フィルム表面の接触角法に基づき測定した表面自由エネルギーが80mN/m以上となる条件で施したことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の高接着性共重合ポリイミドフィルム。

【公開番号】特開2008−156559(P2008−156559A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−349576(P2006−349576)
【出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【出願人】(000219266)東レ・デュポン株式会社 (288)
【Fターム(参考)】