説明

高温スラグの処理方法

【課題】スラグの冷却過程における処理効率を向上させることができる高温スラグの処理方法を提供すること。
【解決手段】高温のスラグを一次冷却したうえ、冷却装置の内部を移動させつつ二次冷却する高温スラグの処理方法であって、該冷却装置投入前に一次冷却後のスラグの質量および内部温度を測定して該スラグの含有する熱量を計算し、該熱量を有するスラグを、該冷却装置の最大冷却処理能力(J/h)の80〜100%の範囲で冷却装置へ投入する制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温スラグの処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、1200℃以上の高温で排出される製鋼スラグに含まれる地金を分離する場合、分離作業の前工程として、高温スラグを冷却ピットで数時間放冷し、水蒸気爆発の危険がない温度まで冷却後、更に冷却を進行させるために、数時間に渡って冷却水を散水しながら冷却する冷却工程が必要であった。また該冷却工程を経たスラグを、その後、破砕機と磁選機に繰り返し通過させながら、順次、スラグから大塊地金・中塊地金・小塊地金を分級分離していたが、このようにして分離された地金は、スラグと十分に分離していない場合もあり、安定的に高い鉄含有率の地金を得ることが困難であった。
【0003】
これに対し、本願出願人は、製鋼スラグに含まれる地金を、水蒸気爆発や火災を発生させることなく効率よく回収し、鉄分含有率の高い地金を得ることができる製鋼スラグ中の地金回収方法を提供すること、および、過大な設備やコストを要することなく、かつ粉塵飛散を抑制しつつ製鋼スラグに含まれる地金を回収することができる方法を提供することを目的として、ロータリークーラーの内部に、製鋼スラグを、1000℃付近の高温状態で装入し、シェルの内面に突起を備えた該ロータリークーラーを回転させることによって、製鋼スラグに落下衝撃による破砕作用を加えながら冷却し、製鋼スラグに含まれる地金を分離する技術を開示している(特許文献1)。
【0004】
特許文献1記載の製鋼スラグ中の地金分離方法では、製鋼工程から排出される1300〜1500℃の高温の製鋼スラグを、冷却ピットで800〜1250℃にまで冷却(以下、1次冷却という)した後、ホッパーを介してロータリークーラーに投入する。ホッパーの入口には、振動グリズリーと呼ばれる格子状の振動篩が設置されており、ここで製鋼スラグ中の大塊地金が回収される。次に、振動グリズリーを通過した製鋼スラグは、振動フィーダー等の切り出し装置によって、800〜1250℃程度の高温状態のままロータリークーラーに装入される。該ロータリークーラーは、シェルの内面に突起を備えた構造を有し、シェルを回転させることによって製鋼スラグに落下衝撃による破砕作用を加えながら300℃以下まで冷却し(以下、2次冷却という)、製鋼スラグに含まれる地金を分離することができる。このようにして破砕され地金を分離された製鋼スラグは、その後、出口シュートからコンベヤ上に排出される。
【0005】
ロータリークーラーに投入される高温スラグ温度には800〜1250℃程度のバラつきがあり、このようなスラグを、2次冷却により一律300℃以下まで冷却する手段として、従来は、ロータリークーラーへのスラグ投入量を、ロータリークーラー最大冷却処理能力での単位時間あたりの最大投入量(例えば、75t/h)の70%程度(例えば、50t/h)に設定して定常運転を行っていた。しかし、常にロータリークーラー最大処理能力未満の運転を行う制御によると、スラグ処理効率が低下する問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−127094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は前記問題を解決し、スラグの冷却過程における処理効率を向上させることができる高温スラグの処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた本発明の高温スラグの処理方法は、高温のスラグを一次冷却したうえ、冷却装置の内部を移動させつつ二次冷却する高温スラグの処理方法であって、該冷却装置投入前に一次冷却後のスラグの単位時間あたりの質量および内部温度を測定して該スラグの含有する熱量を計算し、該熱量を有するスラグを、該冷却装置の最大冷却処理能力(J/h)の80〜100%の範囲で冷却装置へ投入する制御を行うことを特徴とするものである。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1記載の高温スラグの処理方法において、二次冷却を行う冷却装置として、内部手段を備えたロータリークーラーを使用し、該ロータリークーラーの入側に、一次冷却後のスラグが投入されるホッパーおよび、該ホッパーを振動させながらホッパー内のスラグをロータリークーラーに供給する振動フィーダーを備え、該ホッパーに、スラグ質量測定手段およびスラグ温度測定手段を備え、該制御が、該スラグ質量測定手段およびスラグ温度測定手段により測定された実測データに基づいてロータリークーラーへのスラグ切り出し量を決定し、該切り出し量に応じて該振動フィーダーの振動量を変化させる制御であることを特徴とするものである。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の高温スラグの処理方法において、振動フィーダーはインバータによる可変制御機能を備えることを特徴とするものである。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の高温スラグの処理方法において、一次冷却を終えたスラグの温度が、800〜1250℃であることを特徴とするものである。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項1記載の高温スラグの処理方法において、冷却装置の出口におけるスラグ温度を300℃以下にすることを特徴とするものである。
【0013】
請求項6記載の発明は、請求項1記載の高温スラグの処理方法において、冷却装置の入口にグリズリーを設置し、一次冷却を終えたスラグ中の地金大塊を分離することを特徴とするものである。
【0014】
請求項7記載の発明は、請求項1記載の高温スラグの処理方法において、CaOを含有するスラグが、製鋼スラグまたは溶銑予備処理スラグであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る高温スラグの処理方法では、冷却装置投入前に一次冷却後のスラグの質量および内部温度を測定して該スラグの含有する熱量を計算し、該熱量を有するスラグを、該冷却装置の最大冷却処理能力(J/h)の80〜100%の範囲で冷却装置へ投入する制御を行う構成を有する。当該構成によれば、冷却装置内に投入されるスラグの熱量を投入前に把握し、該熱量に応じて冷却装置への投入量を冷却装置の最大冷却処理能力(J/h)の80〜100%の範囲に制御することができるため、従来、冷却装置の最大冷却処理能力でのスラグ最大投入量の70%程度に設定して一律に運転を行っていた場合に比べて、スラグの冷却過程における処理効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】高温スラグ処理設備の概略説明図である。
【図2】ロータリークーラーの入口部に配置されるスラグ投入設備の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の好ましい実施形態を示す。
図1には、高温スラグ処理設備の概略説明図を示し、図2には、ロータリークーラーの入口部に配置されるスラグ投入設備の説明図を示している。
【0018】
本実施形態では、高温のスラグをスラグパン1からピット2に流下させ、先ず一次冷却を行う。本発明で処理対象とする高温のスラグは、炉または鍋から排出された製鋼スラグや溶銑予備処理スラグであり、製鋼スラグには転炉吹錬スラグ、溶銑予備処理スラグには溶銑脱リンスラグ、溶銑脱硫スラグなどが含まれる。
【0019】
なお、炉や鍋から排出されるスラグの温度はスラグの種類により異なるが、一般的には製鋼スラグでは1400〜1600℃であり、溶銑予備処理スラグでは1200〜1400℃である。
【0020】
一次冷却を行うピット2の構造は特に限定されるものではないが、ここでは砕石層の上に厚さ0.25mのスラブを敷き詰めた構造を採用している。このほか、冷却ボックスを使用して一次冷却を行うこともできる。高温のスラグはピット2上で均一な厚さに掻き均され、大きな塊や地金を取り除かれる。さらに散水ノズル(図示しない)から冷却水を噴霧する。この一次冷却によって、スラグ温度を800〜1250℃程度にまで降下させる。
【0021】
次にピット2からパワーショベル等の適宜の機器によりスラグを取り出し、冷却装置10において二次冷却を行う。冷却装置10の前段にはホッパー11が設置されており、その表面にはグリズリーと呼ばれる篩分け用の格子12が傾斜状態で設けられている。一次冷却を終えたスラグ中の地金大塊はこの篩分け格子12によって分離され、グリズリーを通過した小径のスラグのみが振動フィーダー13によって冷却装置10に投入される。
【0022】
該ホッパー11は、図2に示すように、ホッパー内に投入されたスラグ質量を測定するためのロードセル17およびホッパー内に投入されたスラグ温度を測定するための熱電対18を備えている。また、該振動フィーダー13はインバータによる可変制御機能を備え、ロータリークーラーへのスラグ切り出し量を制御している。
【0023】
具体的には、ホッパー11に投入されたスラグの単位時間あたりの質量W(kg/h)および内部温度T(K)を測定して、該スラグの含有する単位時間あたりの熱量Q(J/h)を下記式で求めた上で、ロータリークーラーの単位時間あたりの最大冷却処理能力(J/h)の80〜100%となるように振動フィーダー13の単位時間あたりのスラグ切り出し量(t/h)を決定する制御を行っている。
【数1】

【0024】
このように、冷却装置内に投入されるスラグの熱量を投入前に把握し、該熱量に応じて冷却装置への投入量を制御することにより、スラグの冷却過程における処理効率を向上させることができる。例えば、例えば、スラグ温度が高い時には冷却装置へのスラグ切り出し量を少なくし、スラグ温度が低い時にはロータリークーラーへのスラグ切り出し量を増加させるなど、冷却装置の単位時間あたりの最大冷却処理能力(J/h)を超過しない範囲で、適宜スラグ切り出し量を増減させることで、常に最大冷却処理能力(J/h)の80〜100%で運転を行うことができる。これにより、従来、冷却装置の最大冷却処理能力でのスラグ最大投入量の70%程度に設定して一律に運転を行っていた場合に比べて、より多くのスラグを効率よく処理することが可能となる。
【0025】
二次冷却のための冷却装置10としては様々な形式のものを用いることができるが、この実施形態ではロータリークーラーが用いられている。これはケーシング14を水平面に対してわずかに傾斜させた軸線のまわりに回転させ、その内部に冷却風吹付け手段を設けたものである。一次冷却によって800〜1250℃となったスラグはホッパー11から投入され、振動フィーダー13によりケーシング14内に送り込まれ、ケーシング14の回転に連れて徐々に出口15の方向に移動して行く。二次冷却によって、スラグは300℃以下にまで冷却され、出口15から傾斜コンベヤ16に排出され、その後、トリッパコンベア19を介して製品ピット20へと搬送される。
【符号の説明】
【0026】
1 スラグパン
2 ピット
10 冷却装置
11ホッパー
12篩分け用の格子
13振動フィーダー
14ケーシング
15 出口
16 傾斜コンベヤ
17 ロードセル
18 熱電対
19 トリッパコンベア
20 製品ピット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温のスラグを一次冷却したうえ、冷却装置の内部を移動させつつ二次冷却する高温スラグの処理方法であって、
該冷却装置投入前に一次冷却後のスラグの質量および内部温度を測定して該スラグの含有する熱量を計算し、該熱量を有するスラグを、該冷却装置の最大冷却処理能力(J/h)の80〜100%の範囲で冷却装置へ投入する制御を行うことを特徴とする高温スラグの処理方法。
【請求項2】
二次冷却を行う冷却装置として、内部手段を備えたロータリークーラーを使用し、
該ロータリークーラーの入側に、一次冷却後のスラグが投入されるホッパーおよび、該ホッパーを振動させながらホッパー内のスラグをロータリークーラーに供給する振動フィーダーを備え、
該ホッパーに、スラグ質量測定手段およびスラグ温度測定手段を備え、
該制御が、該スラグ質量測定手段およびスラグ温度測定手段により測定された実測データに基づいてロータリークーラーへのスラグ切り出し量を決定し、該切り出し量に応じて該振動フィーダーの振動量を変化させる制御であることを特徴とする請求項1記載の高温スラグの処理方法。
【請求項3】
振動フィーダーはインバータによる可変制御機能を備えることを特徴とする請求項2記載の高温スラグの処理方法。
【請求項4】
一次冷却を終えたスラグの温度が、800〜1250℃であることを特徴とする請求項1記載の高温スラグの処理方法。
【請求項5】
冷却装置の出口におけるスラグ温度を300℃以下にすることを特徴とする請求項1に記載の高温スラグの処理方法。
【請求項6】
冷却装置の入口にグリズリーを設置し、一次冷却を終えたスラグ中の地金大塊を分離することを特徴とする請求項1記載の高温スラグの処理方法。
【請求項7】
CaOを含有するスラグが、製鋼スラグまたは溶銑予備処理スラグであることを特徴とする請求項1記載の高温スラグの処理方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−57228(P2012−57228A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−203009(P2010−203009)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】