説明

高溶融張力ポリエチレンテレフタレート系ポリエステルの連続造粒装置

【課題】 溶融張力の高いポリエチレンテレフタレート(PET)系ポリエステルは、中分子量のPETを主原料とし、混合結合剤と触媒で長鎖分岐構造体として形成されるが、反応押出機によるストランド法では長期的連続造粒が困難である。新しい造粒装置を開発し、従来PETでは困難な発泡、チューブラー法フィルム、パイプ等用のペレットを提供すること。
【解決手段】
(a)PET系ポリエステル、(b)結合剤として3以上官能性エポキシ化合物/2官能性エポキシ化合物の混合物、(c)触媒として有機酸金属塩から構成される混合物を、反応押出法により高溶融張力体に改質するが、その際にシリンダーの除湿、ダイス径状、スクリュー形状などの改善をした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高溶融張力ポリエチレンテレフタレート系ポリエステルを特定条件にて長期安定的にペレット化する連続造粒装置に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、高分子素材としてポリ塩化ビニル(塩ビ、PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンテレフタレート(PETまたはペット)などが5大汎用樹脂として適材適所に使用されてきた。これらの素材は、成形加工性、品質、価格、環境適合性等に関して、一長一短がある。
【0003】
ポリエチレンテレフタレートは、その高品質特性のために延伸ブロー法ペットボトルとして大量に使用され、またA−PETシートも透明性と剛性と環境適合性に優れるために食品包装材、食品容器、IT用資材、ブリスター・パック等の日用品などの用途が急拡大している。特に、使用済みペットのボトル、フィルム、シート等は、大量の回収再利用が積極的に進められつつあり、汎用樹脂の半値という安価で大量入手が可能となった。
本発明者らは、汎用樹脂の半値で入手できる回収ペットボトル・フレークおよび回収ペットシートまたは重縮合法で安価に得られる繊維用ペットを主体成分とし、エポキシ系結合剤と有機酸金属系触媒で高分子量・高熔融張力化した樹脂を反応押出法で製造することを提案した。
【特許文献1】特許第3503952号
また、本発明者らは、該反応押出法が高速度反応のために、不均一反応によりゲルやフィッシュアイ(FE)が副生し易いことを開示した。その対策として、エポキシ系結合剤と有機酸金属系触媒をマスターバッチ化することによる解決法を提案した。
【特許文献2】WO 2001/94443
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、高溶融張力ポリエチレンテレフタレート系ポリエステルを特定条件にて長期安定的にペレット化する連続造粒装置を提供することを目的とする。
しかしながら、市販の押出装置を使用して長期的に造粒運転をすると、メルトフローレート(MFR)の上昇、ダイスの両端ストランドの不安定化と切断、樹脂の黄変、スクリューの黒褐色化と汚れ等の課題が生じている。いずにせよ、実用レベレに達していない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、上記の課題を改善することに成功し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、下記の発明事項を提供するものである。
(1)A成分:ポリエチレンテレフタレート系ポリエステル100重量部、
B成分:結合剤として分子内に2個のエポキシ基を含有する化合物a対分子内に3個以上のエポキシ基を含有する化合物bの重量比が95〜40対5〜60の混合物0.1〜2重量部、
C成分:触媒として有機酸の金属塩0.05〜1重量部
から構成される原料混合物Dを、その融点以上の温度で溶融させるとともに真空下に脱気脱水しながら反応押出法で均一反応させることによって、JIS法(280℃、荷重2.16Kg)のメルトフローレート20g/分以下およびスウェル1〜200%とした高溶融張力ポリエチレンテレフタレート系ポリエステルを特定条件にて長期安定的にペレット化することを特徴とする連続造粒装置。
(2)反応押出機のスクリューに原料混合物Dを供給するホッパー内に水蒸気を大気中に放出する導管を設置することにより、高溶融張力ポリエチレンテレフタレート系ポリエステルを長期安定的にペレット化することを特徴とする連続造粒装置。
(3)反応押出機のダイスに内径1〜5mm、突出長0.5〜10mmのノズルを設置することにより、高溶融張力ポリエチレンテレフタレート系ポリエステルを長期安定的にペレット化することを特徴とする連続造粒装置。
(4)反応押出機の単軸式スクリューとして口径対溝ピッチ比100対30〜60、混合帯2〜4帯を使用することにより、高溶融張力ポリエチレンテレフタレート系ポリエステルを長期安定的にペレット化することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の連続造粒装置。
【発明の効果】
【0007】
溶融張力の高いポリエチレンテレフタレート(PET)系ポリエステルは、中分子量のPETを主原料とし、混合結合剤と触媒で長鎖分岐構造体として形成されるが、反応押出機によるストランド法では長期的連続造粒が困難であった。しかし、本発明による新しい造粒装置により高溶融張力ペレットが製造されたので、従来のPET樹脂では困難であった新規用途、例えば発泡成形、チューブラー法フィルム成形、パイプ成形等が可能となった。
【発明の実施するため最良の形態】
【0008】
本発明における原料成分および反応押出法については、本発明者らの先願発明に詳細に記載されている。
A成分のポリエチレンテレフタレート(PET)系ポリエステルは、PET系芳香族ポリエステルとして世界的に大量生産されているポリエチレンテレフタレート(PETまたはペット)あるいはその共重合体が挙げられる。ポリエチレンテレフタレートが、特に好ましいが、固有粘度(IV値)が0.50dl/g以上(これは、JIS法、温度280℃、荷重2.16kgにおけるMFRが約210g/10分以下に相当する)が使用できるが、0.60dl/g以上(MFRが約130g/10分以下)であることが好ましい。固有粘度が0.50dl/g未満であると、本発明によっても高分子量化と高溶融粘度化が困難であり、あるいは必ずしも優れた成形加工性および物性を与えることができない恐れがある。固有粘度の上限は、特に制限されないが、通常0.90dl/g(MFRが約25g/10分以下)、好ましくは0.80dl/g(MFRが約45g/10分以上)である。
【0009】
現実には、大量に収集・回収されるPET系ポリエステルのペット・ボトルのフレーク、パリソン破砕物またはペレットをプレポリマーとして使用することが多い。通常は、PETボトルが有している固有粘度が比較的に高いので、回収品の固有粘度も高く、一般には0.60〜0.80dl/g(MFRが130〜45g/10分)、特に0.65〜0.75dl/g(MFRが100〜55g/10分)である。 一般に、回収ペット・ボトルのフレークは、20kg入り紙袋品と600kg入りフレコン品で供給されるが、通常含有水分は3,000〜6,000ppm(0.3〜0.6重量%)程度である。勿論、真空圧空成形工場から大量に回収されるA−PETシートのスケルトン・フレークも、本発明の原料ポリエステルとして好適である。
【0010】
食品包装材用としては、重縮合法による繊維用ペット樹脂およびフラフを使用することができる。通常は、固有粘度が0.55〜0.65dl/g(MFRが200〜130g/10分)であるが、0.60〜0.65dl/g(MFRが130〜100g/10分)が好ましい。
【0011】
本発明のB成分としての結合剤は、分子内に2個(a)および場合により3を越える個数(b)のエポキシ基を含有する化合物である。
通常、分子内に平均2個のエポキシ基を有する化合物aの例としては、脂肪族系のエチレングリコール・ジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコール・ジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコール・ジグリシジルエーテル、トリラメチレングリコール・ジグリシジルエーテル、テトラメチレングリコール・ジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサメチレングリコール・ジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコール・ジグリシジルエーテル、グリセリン・ジグリシジルエーテル、また脂環式系の水素化ビスフェノールA・ジグリシジルエーテル、水素化イソフタル酸ジグリシジルエステル、また芳香族系のビスフェノールA・ジグリシジルエーテル、ビスフエノールA・ジグリシジルエーテルの初期縮合物、ジフェニルメタンジグリシジルエーテル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル等を挙げることができる。好ましくは、エチレングリコール・ジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサメチレングリコール・ジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコール・ジグリシジルエーテル、グリセリン・ジグリシジルエーテルである。
【0012】
分子内に平均3個のエポキシ基を有する化合物bの例としては、脂肪族系のトリメチロールプロパン・トリグリシジルエーテル、グリセリン・トリグリシジルエーテル、またヘテロ環式系のトリグリシジルイソシアヌレート、トリグリシジルシアヌレート、トリグリシジル・ヒダントイン、また芳香族系のトリグリシジル・パラ−またはメタ−アミノフエノール等を挙げることができる。
工業用品としては、分子内に平均2.1個以上から数個の中間的個数のエポキシ基を有する化合物の混合物も使用できる。例えば、フェノール・ノボラック・エポキシ樹脂、クレゾール・ノボラック・エポキシ樹脂およびビフェニルジメチレン系エポキシ樹脂(例えば、日本化薬(株)の耐熱エポキシ樹脂NC−3000シリーズ)等を挙げることができる。その他の例としてダウケミカル社から分子内のエポキシ基が、平均して約2.2、3.6、3.8および5.5個のものが上市されており、これらを使用することができる。好ましくは、トリメチロールプロパン・トリグリシジルエーテル、グリセリン・トリグリシジルエーテルである。
【0013】
本発明の特徴のひとつは、結合剤の選定である。結合剤として分子内に2個のエポキシ基を含有する化合物(2官能:D)aに分子内に3個以上のエポキシ基を含有する化合物(3官能以上:T)bを併用することによって「長鎖分岐構造体」を導入し、T/D比を増加させて例えば、シートの真空圧空成形における結晶化速度を増大させることができる。これは、3官能以上のエポキシ基を含有する化合物が「分子サイズの結晶化核剤」として作用するものと推定される。
また、本発明の長鎖分岐構造体は、従来の線状構造体に比べて分子鎖の「絡み合い効果」により溶融粘度を約10〜100倍にも増大することが可能となり、溶融体から固体への再結晶化速度を遅くできるので、従来の線状構造体PETでは困難だった、発泡、チューブラー法フィルム、バイプなどの成形を可能としている。
本発明のエポキシ基含有化合物Bは、分子内に2個のエポキシ基を含有する化合物(D)a:100〜0重量%および分子内に3を越える個数のエポキシ基を含有する化合物(T)b:0〜100重量%の混合物である。後者(T)の増加で樹脂のスウェルと溶融粘度が、急上昇する。後者/前者の重量比率(T/D比)は、通常、5/95〜70/30、好ましくは10/90〜60/40、更に好ましくは12.5/87.5〜50/50である。T/D比が、5/95以下では効果が少なく、60/40以上ではPET系ポリエステル樹脂の製造が困難であり、フィルムにゲル・フィッシュアイが副生して商品にならない。
【0014】
また、本発明における特徴のもうひとつは、フィルムおよびシートのゲル・フィッシュアイの副生原因となる結合剤Bの局所的不均一反応を防止する為に、希釈材として基体cを利用して結合剤マスターバッチdとして使用することにある。本混合物B:10〜50重量部と基体c:100重量部とで結合剤マスターバッチdが構成される。本混合物Bは、15〜25重量部が好ましい。結合剤Bが10重量部以下ではマスターバッチdの効果が少なく、かつコスト高になる。結合剤Bが50重量部以上では、マスターバッチdが製造し難く、反応押出法においてゲルが副生し易くなるので、好ましくない。
基体cとしては、固有粘度0.60〜0.80dl/gのポリエチレンテレフタレート系ポリエステル、回収されたポリエチレンテレフタレート系ポリエステル成形品再循環物、エチレングリコールとシクロヘキサン・ジメタノールとテレフタール酸等の縮合体(イーストマン社等のPETG)、あるいはトルエン、ベンゼンおよびキシレンなどを使用することが出来る。
【0015】
結合剤マスターバッチdの配合比率は、原料ポリエステルA:100重量部に対して、通常は1〜10重量部であるが、好ましくは分散・混合性の良好な2〜8重量部前後である。比率の増加とともに、PET系ポリエステルのMFRを低下させ、溶融粘度とスウェルを増大させることが出来る。
【0016】
本発明における結合反応触媒Cは、カルボン酸の金属塩の複合体およびそれらのマスターバッチである。カルボン酸の金属塩は、単独使用では本発明のポリエステルの安定造粒という目的に必ずしも適しないことが、本発明で判明している。従がって、結合反応触媒Cとしては、複合体が好ましい。例えば二元系触媒としてステアリン酸リチウム/ステアリン酸カルシウム=20/80〜50/100、ステアリン酸ナトリウム/ステアリン酸カルシウム=20/80〜50/100、ステアリン酸カリウム/ステアリン酸カルシウム=20/80〜50/100、酢酸マンガン/ステアリン酸リチウム=20〜50/100あるいは酢酸マンガン/ステアリン酸カルシウム=20〜50/100などである。
一方、例えば三元系触媒としてステアリン酸リチウム/ステアリン酸ナトリウム/ステアリン酸カルシウム=50/50/100、ステアリン酸カリウム/ステアリン酸ナトリウム/ステアリン酸カルシウム=50/50/100、ステアリン酸リチウム/酢酸ナトリウム/ステアリン酸カルシウム=50/50/100あるいはステアリン酸リチウム/酢酸マンガン/ステアリン酸カルシウム=50/50/100などの複合触媒Cが、一層好ましい。
【0017】
本発明における特徴の更にもう一つは、フィルムおよびシートのゲル・フィッシュアイの副生原因となる触媒C周辺の局所反応を防止する為に、希釈材として基体eを利用して触媒マスターバッチfを使用することにある。 基体eとしては、基体cとほぼ同様に固有粘度0.50〜0.90dl/gのポリエチレンテレフタレート系芳香族ポリエステル、回収されたポリエチレンテレフタレート系の芳香族ポリエステル成形品再循環物、エチレングリコールとシクロヘキサン・ジメタノールとテレフタール酸等の縮合体(イーストマン社のペットジー等)などを使用することが出来る。
基体eとして上記の樹脂を使用しない場合には、触媒活性が穏やかで滑剤効果もあるステアリン酸カルシウム白色粉末を使用することが出来る。ステアリン酸カルシウムの構成比率は、触媒にたいして50重量部以上とする。この白色粉末状複合触媒は、粉末飛散の作業性の課題があるが、安価であり小規模製造に適する。
【0018】
触媒マスターバッチfの構成比率は、通常は触媒C:5〜15重量部と基体e:100重量部とから構成されるが、好ましくは触媒C:7.5〜12.5重量部、更に好ましくは触媒C10重量部と基体e100重量部とから構成される。触媒Cが5重量部以下では触媒マスターバッチfの効果が少なく、かつコスト高になる。触媒Cが15重量部以上では、マスターバッチfが製造し難く、結合反応でゲルが副生し易く、かつ成形加工時に樹脂の加水分解の原因となるので、好ましくない。
触媒マスターバッチfの使用量は、原料ポリエステルA:100重量部に対して、通常は0.25〜10重量部であるが、好ましくは分散・混合性の良好な0.5〜5重量部前後である。
【0019】
反応押出法の装置としては、単軸押出機、二軸押出機、それらの組合せの二段式押出機、あるいはPET樹脂の重縮合の製造に使用されるセルフクリーニング性の二軸反応装置等を使用することができる。本発明の高溶融張力PET系ポリエステルを製造する反応押出法は、特に押出機中で約2〜10分間の短時間でおこなうので、押出反応機のL/Dは、30〜50程度であることが好ましく、特に38〜45程度が好ましい。
本発明によれば、反応押出機の性能にもよるが、一般に短い時間、例えば、1〜20分、好ましくは2〜10分、特に好ましくは4〜7分の滞留時間で、原料ポリエステルAの分子量を急上昇させ、所望のポリエステルを生成させることが出来る。
【0020】
上記の反応押出装置は、一般に回収ペットボトルフレークまたは新品のポリエステル樹脂を予め110〜140℃で熱風乾燥して水分量100〜300ppmに下げたもの、および除湿空気で乾燥して水分量を50ppm以下に下げたものを使用することが好ましい。ポリエステル樹脂は、通常空気中の湿度を吸着してその環境湿度に応じて3,000〜6,000ppm(0.30〜0.60重量%)の水分を含んでおり、上記のような乾燥処理を行うことにより、本発明の目的を安定的に達成する一助とする。
単軸または二軸押出機の真空ラインを非水封式でない油封式または乾式とし、例えば第1〜第3ベントの真空度を13.3×10Pa(100mmHg)以下、好ましくは2.6×10Pa(20mmHg)以下、更に好ましくは0.66×10Pa(5mmHg)以下、更に一層好ましくは0.26×10Pa(2mmHg)に下げて、ポリエステル樹脂が溶融した直後および溶融混合中に残存水分を真空脱気して除去することによって、連続造粒の運転が安定化する。
【0021】
しかしながら、市販の押出装置を使用して長期的に造粒運転をすると、メルトフローレート(MFR)が設定値の2〜3倍に上昇する現象が生じた。原料PETを、熱風乾燥して水分量を約100〜300ppmに、または除湿乾燥して30〜50ppmにしていたが、遅かれ早かれそうなった。その原因は、ホッパー下から第1ベントまでの間のシリンダー内で加熱された原料PETから発生した水蒸気がホッパー側に逆流して原料PETに蓄積され、この水分が反応押出機中で加水分解に作用し、PET樹脂の低分子量化とMFR上昇を惹起するものと判断された。この水分は、第1ベント孔からの真空除去では、完全除去が不可能である。特に、原料PETの供給速度を上げるとその現象が顕著になる。そこで、ホッパー内に水蒸気を大気中に放出できる導管を設置して、長期安定な造粒運転を達成できることを見出した。
【0022】
本発明の高溶融張力・高スウェルのPET系ポリエステルの造粒運転においては、ダイスに水平配置したノズル孔から押出されるストランドは両端ストランドの不安定化と切断が起こり易い。また、スウェルが大きいために、ノズル孔の間隔が通常配置の場合には、ストランドが互着して一枚板になり易い。
本発明では、ダイスから適当な間隔、例えば5〜20mmにてノズルを突出させ、ストランドの互着を防止する。突出の方向は、水平、斜め下または垂直下方向とする。ノズルの内径は、1〜5mm、肉厚0.5〜2mm、長さ0.5〜10mmとする。ノズルは、ダイスへのねじ込み式とする。
【0023】
反応押出法では、樹脂の黄変、スクリューの黒褐色化と汚れ等の課題が生じている。樹脂の黄変は、原料系から持ち込まれる空気による樹脂の酸化劣化によるものである。単軸押出機は、樹脂への圧縮ができるのでベントを併用すれば、空気の「搾り出し除去」による黄変防止が可能であり、2軸押出機に勝っている。
しかしながら、単軸押出機は、2軸押出機に較べて混合性能に劣るので、スクリューに混合帯を2〜4帯、好ましくは4帯を設置する必要がある。
またスクリューの黒褐色化と汚れ防止のために、スクリュー口径対溝ピッチ比100対30〜60とし、スクリュー溝内に樹脂を満たして、「空焼け防止」をする工夫が必要である。単軸押出機は、2軸押出機に較べて汚れたスクリューの清掃と再組立てが極めて容易である。
【実施例】
【0024】
次に本発明を実施例に基づいて詳細に説明する。まず、評価方法は以下の通りである。
(1)固有粘度:PETおよび系PETポリエステルについては、1,1,2,2−テトラクロロエタンとフェノールの等重量の混合溶媒を使用し、キャノンフエンスケ粘度計で25℃にて測定した。
(2)MFR:JIS K7210の条件20に従い、PETおよびPET系ポリエステルについては、温度280℃、荷重2.16kgの条件にて測定した。
(3)スウェル:MFR用のメルトインデクサーを用い、温度280℃、荷重2.16kgの条件で垂れ流し、サンプルが2.0cm垂れたところでカットし、下端から5.0mmのところの直径を測定し、下記の計算式により算出した。
スウェル(%)=[(直径の平均値−2.095)/2.095]×100
(4)分子量:PET系ポリエステルについては、GPC法により下記の条件で測定した。
(本体)昭和電工社製SYSTEM−21、(カラム)Shodex KF−606M(2本)サンプル、リファレンス側とも、(溶剤)ヘキサフロロイソプロピルアルコール、(カラム温度)40℃、(注入量)20μl、流量:0.6ml/分、(ポリマー濃度)0.15重量%、(検出器)Shodex RI−74、(分子量換算スタンダード)PMMA:Shodex M−75
(5)DSCの測定:セイコー電子製DSC220を使用し、サンプル5−15mg、窒素50ml/分、昇温速度10℃/分、20−300℃で測定した。
(6)機械的物性の測定:本発明のフィルムの引張試験は、JIS K7113に従い、テンシロンを使用し、引張速度50〜500mm/分で行った。
(7)溶融粘度:スウェーデン国REOLOGICA社製DynAlyser DAR−100を使用し、2cm角×厚さ2mmの試験片を窒素雰囲気下280℃でホットプレート間のねじり振動を加えることにより測定した。
【0025】
[製造例1〜2:結合剤マスターバッチd1〜d2]
製造例1:ベルストルフ製二軸押出し機、口径43mm、L/D=43、3段油封式真空引きを使用し、よのペットボトルリサイクル(株)のクリアフレーク(PETボトルの回収品、固有粘度0.73dl/g、MFR40.4g/10分、スウエル−10%)を120℃で約12時間熱風乾燥した)100重量部を、設定温度260〜270℃、スクリュー回転数150rpm、第1ベント約−600mmHg、第3ベント約−670mmHg、樹脂自動供給速度35Kg/hで押出しながら、第2ベント孔より結合剤として2官能エポキシ化合物(Dと略称)であるエチレングリコール・ジグリシジルエ−テル(共栄社化学(株)のエポライト40E、エポキシ当量135g/eq、淡黄色液体)15重量部を定量ポンプで注入混合した。ダイスの穴径3.5mmから流出する5本のストランドを水冷し、回転カッターで切断してペレットにした。得られた熱いペレットの夫々の100Kgを40℃で約0.5時間熱風乾燥して防湿袋(紙/アルミ/ポリエチレン3層)に保管した(結合剤マスターバッチd1:2官能/3官能・比率T/D=0/100、有効結合剤0.130wt.%)。
【0026】
製造例2:同様にして、エチレングリコール・ジグリシジルエ−テル50重量部に、3官能のトリメチロールプロパン・トリグリシジルエーテル(Tと略称、共栄社化学(株)のエポライト100MF、エポキシ当量150g/eq、淡黄色液体)50重量部の混合物15重量部を定量ポンプで注入した。ダイスの穴径3.5mmから流出する5本のストランドを水冷し、回転カッターで切断してペレットにした。同様に熱風乾燥して防湿袋(紙/アルミ/ポリエチレン3層)に保管した(結合剤マスターバッチd2:T/D=50/50、有効結合剤0.130wt.%)。
【0027】
[製造例3:触媒マスターバッチf1]
粉末状触媒のステアリン酸リチウム25重量部とステアリン酸ナトリウム25重量部に滑剤およびマスターバッチの基材としてのステアリン酸カルシウム50重量部を加えた。これらの粉末状複合触媒をタンブラーで均一になるまで混合した(粉末状複合触媒マスターバッチf1:Li/Na/Ca=25/25/50)。
【実施例1】
【0028】
[2軸押出機による高分子量・高熔融張力PET樹脂P1の造粒例]
よのペットボトルリサイクル(株)のクリアフレーク(PETボトルの回収品、PET99.9%、固有粘度0.72dl/g、MFR57g/10分、スウェル −10%、分子量Mn11,500、Mw27,800、MW/Mn=2.4、280℃のゼロシェア−粘度700poise)の熱風乾燥品(水分150ppm)100重量部、2官能(D)のエチレングリコール・ジグリシジルエ−テルのマスターバッチd1(製造例1;T/D比=0/100):4重量部(結合剤有効量0.52重量部)と3官能(T)のトリメチロールプロパン・トリグリシジルエーテを含むマスターバッチd2(製造例2;T/D比=50/50):4重量部(有効量0.52重量部)、白色粉末状複合触媒マスターバッチf1(製造例3:Li/Na/Ca=25/25/50)0.15重量部をタンブラーミキサーで5分間混合した。(株)池貝の二軸押出機PCM−70、口径70mm、L/D=37、3ベント方式の油封式真空ラインを使用し、設定温度270〜280℃、スクリュー回転数100rpm、第1ベント約0.096Mpa、第2と第3ベント約0.098MPa、自動供給速度50Kg/hで押出しながら脱水・脱気・混合により反応させた。
当初、孔径6mm×5本ノズルのダイスを使用したら、両端ストランド2本が不安定になり、カールしたりサージングしたりして不安定になり、時々切れて落下した。真鍮のピンで封鎖したら、3本ストランドの両端2本が同様にまた不安定になり、やはりカールしたりして時々切れて落下した。
次に、孔径2mm×10本ノズルのダイスに取り換えたら、造粒運転が安定した。ストランドを水中に押出し、回転カッターで切断してペレットにした。得られたペレットを140℃で約3.5時間熱風乾燥して防湿袋に保管した。回収ペットボトルを原料とする本発明の高分子量・高熔融張力PETペレットP1は、黄白色で、MFR平均2.6g/10分(IV値0.99)、スウェル140%、280℃のゼロシェア−粘度12万poiseであり、収量が約300Kgであった。
【実施例2〜3】
【0029】
[単軸押出機による高分子量・高熔融張力樹脂P2〜P3の造粒例]
実施例2:よのペットボトルリサイクル(株)のクリアフレーク(PETボトルの回収品、固有粘度0.74dl/g、MFR40g/10分、スウェル −10%)の除湿空気乾燥品(水分50ppm)100重量部、2官能(D)のエチレングリコール・ジグリシジルエ−テルと3官能(T)のトリメチロールプロパン・トリグリシジルエーテを含むマスターバッチd2(製造例2;T/D比=50/50):5.5重量部(有効量0.715重量部)、粉末状複合触媒マスターバッチf1(製造例3:Li/Na/Ca=25/25/50)0.20重量部、安定剤イルガノックスB225:0.1重量部、流動パラフィン:0.05重量部をスーパーミキサーで2分間混合した。
(株)星プラスチックの単軸押出機(口径100mm、ビッチ比43の圧縮型スクリュー、L/D18=換算32)を使用し、スクリュー回転数20rpm、原料混合物供給速度40Kg/h、シリンダー中央部1ベント式、シリンダー設定温度240〜320℃で反応押出しを開始した。ダイスに10mm間隔にて内径3.5mm、肉厚0.5mm、突出長さ7mm、5本のノズルを斜め下方向に突出させ、ストランドの互着を防止した。ノズルは、ダイスへのねじ込み式とした。
ストランドを水冷し回転式ファンカッターで切断して円柱状ミニペレットにした。得られた無色透明ペレットを140℃で約3.5時間熱風乾燥して防湿袋に保管した。回収ペットボトルを原料とする本発明の高溶融張力ペットP2は、MFRの経時変化が5.4g/10分(1時間後)、8.4g/10分(2時間後)、11.5g/10分(3時間後)であり、明らかに「MFRの上昇現象」を示した。
【0030】
実施例2:次に、ホッパー下のスクリューからホッパー内を貫通してホッパー上まで1インチ径の銅製導管を設置し、上記と同様に造粒運転を実施した。得られた高溶融張力ペットP3は、MFRの経時変化が5.5g/10分(1時間後)、6.1g/10分(2時間後)、5.3g/10分(3時間後)であり、明らかに長期的に安定していた。本発明の高分子量・高熔融張力PETペレットP3の3時間後のペレットは、乾燥後に白色で、スウェル55%、280℃のゼロシェア−粘度18万poiseであり、収量が約40Kgであった。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の高溶融張力ポリエチレンテレフタレート系ポリエステル造粒ペレットは、従来のPET樹脂では成形が困難な、発泡体、チューブラー法フィルム、ダイレクトブロー法ボトル、パイプなどの新成形品を可能とした。従って、包装フィルム、産業資材などの日用品、土木建築、電子電機、自動車車両内装材等の分野に有用である。
また、大量に発生する回収PETボトルを原料として大量かつ有効に利用できるので、社会的に極めて有益である。更に、使用後に焼却処理したとしてもポリエチレンやポリプロピレンと比較して燃焼発熱量が低くて焼却炉を損傷することが少なく、有毒ガスの発生もない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A成分:ポリエチレンテレフタレート系ポリエステル100重量部、
B成分:結合剤として分子内に2個のエポキシ基を含有する化合物a対分子内に3個以上のエポキシ基を含有する化合物bの重量比が95〜40対5〜60の混合物0.1〜2重量部、
C成分:触媒として有機酸の金属塩0.05〜1重量部
から構成される原料混合物Dを、その融点以上の温度で溶融させるとともに真空下に脱気脱水しながら反応押出法で均一反応させることによって、JIS法(280℃、荷重2.16Kg)のメルトフローレート20g/分以下およびスウェル1〜200%とした高溶融張力ポリエチレンテレフタレート系ポリエステルを特定条件にて長期安定的にペレット化することを特徴とする連続造粒装置。
【請求項2】
反応押出機のスクリューに原料混合物Dを供給するホッパー内に水蒸気を大気中に放出する導管を設置することにより、高溶融張力ポリエチレンテレフタレート系ポリエステルを長期安定的にペレット化することを特徴とする請求項1に記載の連続造粒装置。
【請求項3】
反応押出機のダイスに内径1〜5mm、突出長0.5〜10mmのノズルを設置することにより、高溶融張力ポリエチレンテレフタレート系ポリエステルを長期安定的にペレット化することを特徴とする請求項1または2に記載の連続造粒装置。
【請求項4】
反応押出機の単軸式スクリューとして口径対溝ピッチ比100対30〜60、混合帯2〜4帯を使用することにより、高溶融張力ポリエチレンテレフタレート系ポリエステルを長期安定的にペレット化することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の連続造粒装置。

【公開番号】特開2007−84778(P2007−84778A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−307804(P2005−307804)
【出願日】平成17年9月23日(2005.9.23)
【出願人】(599168257)エフテックス有限会社 (4)
【出願人】(390036146)株式会社星プラスチツク (6)
【Fターム(参考)】