説明

高濃度紅茶ポリフェノール含有インスタントミルクティー

【課題】 紅茶ポリフェノールを高濃度に含有し、好ましい色調と風味を呈し溶解性にすぐれ、手軽に多量の紅茶ポリフェノールを摂取するのに適したインスタントティーを提供すること。
【解決手段】 乳成分を含有し、全粉体重量に対する
A:紅茶ポリフェノール添加量(重量%)
B:蛋白添加量(重量%)が
イ)0.8≦A≦8.0
ロ)0.8≦B≦32.0
ハ)0.5≦B/A≦10.0
の3式を満たすインスタントミルクティー粉末とすること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紅茶ポリフェノールを高濃度に含有するインスタントミルクティーおよびその溶解性改善方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紅茶に含まれる紅茶ポリフェノールには強い抗酸化作用や、血中脂質上昇抑制作用、血糖上昇抑制や発ガン抑制等の効果が知られている。これらの生理機能をより良く発現させるためには、体内吸収や作用濃度域の点からその摂取量が重要であり、手軽に高濃度の紅茶ポリフェノールを摂取できる飲食品が望まれている。
しかし、高濃度の紅茶ポリフェノールを含有する食品では色調が濃くなりすぎてしまったり、特有の香味が強く感じられたり、苦味、渋味、エグ味、雑味など独特の風味を有するため、添加対象の飲食品の選択が重要である。
【0003】
ここで、色調や風味における違和感が少なく、手軽に紅茶ポリフェノールが摂取できる飲食品としてインスタントティーがあげられる。インスタントティーは粉末を熱水等に溶解させるだけで手軽に複雑な味の飲料を摂取することができる優れた商品であり、均一な分散性や、溶解性が何よりも求められる。しかしながら、高濃度の紅茶ポリフェノールは溶解性が悪く、他成分と反応してダマや沈殿が生じたり、べた付き感が強く扱い辛いため、溶解性の改善が必要となってくる。
【0004】
インスタント紅茶における溶解性改善方法としては、これまでに、水溶性カゼイン塩を含有させる(特許文献1)、紅茶・緑茶の乾燥物を混合する(特許文献2)、不溶性クリームを分離したのち茶葉に再混合する(特許文献3)などの技術が開示されている。しかしこれらはどれも紅茶ポリフェノールとカフェインの結合による、クリームダウンと呼ばれる混濁物の生成を抑制するための手段であり、高濃度の紅茶ポリフェノールの溶解性改善方法については何ら言及されていない。
【特許文献1】特開昭60−105455号公報
【特許文献2】特開平7−194303号公報
【特許文献3】特開平8−80158号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明では、紅茶ポリフェノールを高濃度に含有しているにも関わらず、好ましい色調と風味を呈し、均一な分散性、および溶解性にすぐれ、手軽に紅茶ポリフェノールを摂取するのに適したインスタントティーの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、紅茶ポリフェノール量に対する蛋白量をコントロールし、かつ乳成分を含有するミルクティーとすることで、紅茶ポリフェノールを多量に含むにも関わらず、好ましい色調と風味を呈し、均一な分散性および溶解性にすぐれ、紅茶ポリフェノールを高濃度で摂取するのに適したインスタントティーが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明のインスタントミルクティー粉末は請求項1記載のとおり、乳成分を含有し、全粉体重量に対するA:紅茶ポリフェノール添加量(重量%)、B:蛋白添加量(重量%)が
イ)0.8≦A≦8.0
ロ)0.8≦B≦32.0
ハ)0.5≦B/A≦10.0
の3式を満たすことを特徴とする。
【0008】
また、請求項2記載の本発明は請求項1記載のインスタントミルクティー粉末において、蛋白が乳性蛋白であることを特徴とする。
【0009】
また、請求項3記載の本発明は請求項1又は2記載のインスタントミルクティー粉末において、糖類を25重量%以上含有することを特徴とする。
【0010】
また、請求項4記載の本発明は請求項1乃至3記載のインスタントミルクティー粉末において、リン酸塩および/又はクエン酸塩を含有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明のインスタントミルクティーの溶解性改善方法は、請求項5記載のとおり、乳成分を含有し、全粉体重量に対するA:紅茶ポリフェノール添加量(重量%)、B:蛋白添加量(重量%)を
イ)0.8≦A≦8.0
ロ)0.8≦B≦32.0
ハ)0.5≦B/A≦10.0
の3式を満たす割合とすることを特徴とする。
【0012】
また、請求項6記載のインスタントミルクティー粉末は、乳成分を含有し、可溶性固形分重量に対するC:紅茶ポリフェノール検出量(重量%)、D:蛋白検出量(カゼイン当量,重量%)が
ニ)0.4≦C≦5.0
ホ)10.0≦D≦40.0
ヘ)2.0≦D/C≦45.0
の3式を満たすことを特徴とする。
【0013】
また、請求項7記載の本発明は、請求項1〜4、および6記載のインスタントミルクティー粉末を水性媒体に溶解してなるインスタントミルクティー飲料である。
【0014】
また、請求項8記載の本発明は、請求項7記載のインスタントミルクティー飲料において、分光式色差計におけるL値(明度)が20以上であることを特徴とする。
【0015】
また、請求項9記載のインスタントミルクティーの溶解性改善方法は、乳成分を含有し、可溶性固形分重量に対するC:紅茶ポリフェノール検出量(重量%)、D:蛋白検出量(カゼイン当量,重量%)を
ニ)0.4≦C≦5.0
ホ)10.0≦D≦40.0
ヘ)2.0≦D/C≦45.0
の3式を満たす割合とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、紅茶ポリフェノールを高濃度に含有しているにも関わらず、好ましい色調と風味を呈し、かつ均一な分散性および溶解性にすぐれ、手軽に多量の紅茶ポリフェノールを摂取するのに適したインスタントティーの提供が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明におけるインスタントミルクティー粉末とは、水、湯、牛乳、茶類、果汁入りエキスおよび水溶性エキスなど水性媒体を用いて液体状に溶解して飲用等するミルクティーにおける、液体状に溶解する前の粉末状態を意味する。また、インスタントミルクティー飲料とは、上記インスタントミルクティー粉末を水性媒体に溶解した液体状飲料を意味する。インスタントミルクティー飲料におけるインスタントミルクティー粉末の溶解量はデジタル屈折計などで測定された可溶性固形分重量(Brix)から求められる。
【0018】
また、本発明のインスタントミルクティーの溶解性改善方法は、粉体重量又は可溶性固形分重量に対する紅茶ポリフェノール含量、および蛋白量(カゼイン当量)を好ましい値に調整することで実施可能である。ここで、インスタントミルクティーとは上記に示す粉末状態に限定されず、錠剤、飲料、濃縮エキスなどの状態におけるものも含む。
【0019】
紅茶ポリフェノールには、茶の生葉などに存在するカテキン類((±)−カテキン、(−)−エピカテキン、(−)−エピガロカテキン、(±)−ガロカテキン、(−)−エピカテキンガレート、(−)−カテキンガレート、(−)−エピガロカテキンガレート、(−)−ガロカテキンガレート)および、これらが酸化酵素であるポリフェノールオキシダーゼの発酵作用によって酸化重合することで形成されたオリゴマー(テアシネンシン類、テアフラビン類、テアルビジン類等)や、さらに発酵が進むにつれこれら成分が複雑に重合した構造の定かではない化合物も含まれる。本発明において、紅茶ポリフェノールを含有する素材を得る手段としては茶樹(Camellia sinensis)の主に葉、茎を発酵させて加工された紅茶葉として、および/又は前記紅茶葉を原料とし、水、熱水、有機溶媒、含水有機溶媒等によって抽出することにより紅茶抽出物として得る他、さらに上記紅茶抽出物から有機溶媒分画や吸着樹脂等により紅茶ポリフェノールを所望の濃度に精製することもできる。本発明における紅茶ポリフェノールとは、以下の測定方法を用いて定量される成分であり、原料となる紅茶葉や紅茶抽出物および製品となるインスタントティーに適用可能である。
【0020】
(紅茶ポリフェノールの測定法)
測定試料はMeOH/HO/1M−HCL=30/70/0.4の混合溶媒にて超音波洗浄機で30分間抽出、希釈・定容した後、遠心分離(15,000rpm,20min,4℃)する。上清を孔径0.45μmの親水性PTFEフィルター(ADVANTEC製,DISMIC−13HP)でろ過し、試料溶液とする。105℃で1時間乾燥させた没食子酸エチルを用い、同混合溶媒にて定容し、標準溶液とする。没食子酸エチル標準溶液または試料溶液500μLに酒石酸鉄試薬(硫酸第一鉄100mgと酒石酸カリウムナトリウム500mgを超純水に溶解し100mLに定容)500μLとリン酸緩衝液(※1)1500μLを加えてよく撹拌し、分光光度計にて540nmの吸光度を測定する。
標準溶液の吸光度をプロットして検量線を作成し、試料溶液の吸光度から没食子酸エチル相当濃度を求める。試料溶液中の紅茶ポリフェノール量を下記の数1を用いて算出し、試料に対する希釈・定容倍率から試料中の紅茶ポリフェノール濃度を求める。
※1:M/15リン酸水素二ナトリウム十二水和物水溶液とM/15リン酸二水素カリウム水溶液を84/16の割合で混合し、pH 7.50となるように微調整して調製する。
【0021】
【数1】

【0022】
本発明のインスタントミルクティー粉末において、A:紅茶ポリフェノール添加量は全粉体重量に対して0.8重量%以上8.0重量%以下である。紅茶ポリフェノール量が下限を下回ると、望ましい量の紅茶ポリフェノールを摂取することが難しく、また上限を超えると水性媒体に対する溶解性が不十分となる上、紅茶ポリフェノールの苦味が際立つため飲用に適さない。紅茶ポリフェノール添加量は1.0重量%以上7.5重量%以下であることがより好ましく、1.5重量%以上7.0重量%以下であることが更に好ましく、1.8重量%以上6.5重量%以下であることが特に好ましく、2.0重量%以上6.0重量%以下であることが最も好ましい。
【0023】
なお、インスタントミルクティー中では蛋白など他成分の影響により紅茶ポリフェノールの検出量は添加量と異なるため、C:紅茶ポリフェノール検出量は、可溶性固形分重量に対して0.4重量%以上5.0重量%以下であり、0.45重量%以上4.5重量%以下であることがより好ましく、0.5重量%以上4.0重量%以下であることが更に好ましく、0.55重量%以上3.5重量%以下であることが特に好ましく、0.6重量%以上3.0重量%以下であることが最も好ましい。インスタントミルクティー飲料においては飲料中の可溶性固形分重量と紅茶ポリフェノール検出量を測定することで、溶解されたインスタントミルクティー粉末中の紅茶ポリフェノール検出量を求める事が可能である。
【0024】
本発明のインスタントミルクティーは、乳成分を含有することを特徴とする。乳成分としては、牛やヤギ等の乳から加工される粉乳などの粉体製品を利用するのが好ましく、例えば全粉乳、脱脂粉乳、加糖粉乳、クリームパウダー、チーズパウダー、バターパウダー、ホエーパウダー、バターミルクパウダー、ヨーグルトパウダー、カゼイン、乳糖などが好適である。また、生乳、練乳、クリーム、発酵乳などの液状乳製品を利用し、最終的に乾燥させてインスタントミルクティー粉末とすることもできる。
【0025】
また本発明の構成成分である蛋白としては、植物性、動物性のどちらでも構わないが、溶解性の高い精製加工品を選択するのが好ましく、特に生乳から脂質や乳糖を除去した乳性蛋白が製品添加時の違和感がなく好ましい。乳性蛋白はその80%程を占めるカゼイン、残りの大部分を占めるホエー蛋白などから構成されるが、本発明のインスタントミルクティー粉末および飲料では特に風味の好ましさと溶解性の点から水溶性カゼイン塩を含有することが好ましく、カゼインナトリウム、カゼインカルシウム、カゼインナトリウムカルシウム等、一般に飲食品に用いられるものであれば特に制限はないが、溶解性がすぐれている点でカゼインナトリウムを含有することが最も好ましい。本発明において蛋白検出量は、インスタントミルクティー粉末および飲料が含有している蛋白量をカゼイン換算当量で表し、例えば以下の方法を用いて測定を行うことができる。
【0026】
(蛋白(カゼイン当量)の測定法)
標準試料(カゼインナトリウム)、および測定試料は超純水で適宜希釈・定容し、それぞれ標準溶液または試料溶液とする。タンパク質定量用キットとして、BIO−RAD製のQuick StartTM Bradford Dye Reagent,1×(Dye)を用い、標準溶液または試料溶液20μLとDye1mLを試験管に入れてよく撹拌し、室温で5分間以上静置し、1時間以内に595nmの吸光度を測定する。標準溶液のカゼインナトリウム濃度に対する吸光度をプロットして検量線を作成し、試料溶液の吸光度から蛋白量を算出し、試料に対する希釈・定容倍率などから試料中の蛋白量を求める。
【0027】
インスタントミルクティー粉末中のB:蛋白添加量は全粉体重量に対して0.8重量%以上32.0重量%以下である。蛋白の配合量が下限を下回ると、インスタントミルクティー飲料においてコクが弱くなり、甘さが強調されるため、味のバランスが悪くなる。また上限を超えると油膜が生じ、臭みが目立つため外観および風味の面から好ましくない。
蛋白添加量は1.0重量%以上31.0重量%以下であることがより好ましく、2.0重量%以上30.0重量%以下であることが更に好ましく、2.5重量%以上25.0重量%以下であることが特に好ましく、3.0重量%以上20.0重量%以下であることが最も好ましい。なお、インスタントミルクティー中では紅茶ポリフェノールなど他成分の影響により蛋白の検出量は添加量とは異なってくるため、D:蛋白検出量は、可溶性固形分重量に対して10.0重量%以上40.0重量%以下であり、10.5重量%以上38.0重量%以下であることがより好ましく、11.0重量%以上35.0重量%以下であることが更に好ましく、11.5重量%以上30.0重量%以下であることが特に好ましく、12.0重量%以上25.0重量%以下であることが最も好ましい。また、インスタントミルクティー飲料においては飲料中の可溶性固形分重量と蛋白検出量を測定することで溶解されたインスタントミルクティー粉末中の蛋白検出量を求める事が可能である。
【0028】
さらに、インスタントミルクティー粉末中の紅茶ポリフェノール添加量をA(重量%)、蛋白添加量をB(重量%)としたときに、B/Aの値は0.5以上10.0以下である。好ましい蛋白量は、紅茶ポリフェノールの配合量に依存し、紅茶ポリフェノールに対する蛋白の配合割合が高すぎる場合には、インスタントミルクティー飲料とした際の、紅茶の香味が弱くなるだけでなく、色調が暗くなりすぎてミルクティーとして許容しがたい外観となってしまう。また低すぎる場合には水性媒体への溶解性が悪く、澱の浮遊が発生しやすくなるだけでなく、紅茶ポリフェノールの苦味がより強く感じられるようになる。
B/Aの値は1.0以上9.5以下であるのがより好ましく、1.2以上9.0以下であるのが更に好ましく、1.5以上8.5以下であるのが特に好ましく、1.8以上8.0以下であるのが最も好ましい。
【0029】
なお、インスタントミルクティー粉末中の紅茶ポリフェノール検出量をC(重量%)、蛋白検出量をD(重量%)とすると、D/Cの比は2.0以上45.0以下であるのが好ましく、3.0以上40.0以下であるのがより好ましく、4.0以上35.0以下であるのが更に好ましく、5.0以上32.0以下であるのが特に好ましく、6.0以上30.0以下であるのが最も好ましい。インスタントミルクティー飲料においては飲料中の紅茶ポリフェノール検出量と蛋白検出量を測定することで上記インスタントミルクティー粉末中のD/Cの値を求める事が可能である。
【0030】
本発明のインスタントミルクティー粉末では、高濃度紅茶ポリフェノールの溶解性向上、および風味の観点から25重量%以上、好ましくは30重量%以上の糖類を含有することが好ましい。上限は通常98重量%である。ここで、糖類とはブドウ糖・果糖などの単糖類、ショ糖・麦芽糖・乳糖などの二糖類、またそれらの誘導体からなるパラチノースやトレハロースなどの糖類、オリゴ糖類、糖アルコール類等の甘味を示す水溶性成分が挙げられる。特にキシリトールやエリスリトールなどの糖アルコール類は、清涼感や特有の呈味を示すために、紅茶ポリフェノールを高濃度に配合した際の苦渋味がマスキングされるため、好ましい。
【0031】
本発明におけるインスタントミルクティーは紅茶ポリフェノールや乳成分、蛋白、糖類のほか、デキストリン、環状オリゴ糖、植物性油脂、動物性油脂、果汁、食品用エキス、酒類、ハーブ・スパイス類、香辛料抽出物、茶類、pH調整剤、甘味料、酸味料、調味料、酵素、糊料、ゲル化剤、増粘多糖類、安定剤、乳化剤、着色料、香料、酸化防止剤、日持向上剤、栄養強化剤、保存料等の副成分を含有してもよい。特にpH調整剤としてリン酸塩および/又はクエン酸塩を用いて、pHを6.0〜7.2、好ましくは6.3〜7.0に調整すると、茶ポリフェノールと乳成分の凝集反応が抑制され、より溶解性と安定性が向上する。特に高濃度紅茶ポリフェノールでは凝集が起こりやすいため、その抑制効果は顕著である。
【0032】
一般的にインスタントミルクティー粉末の製造方法としては、各原料となる粉末を混合、造粒等して均一にするほか、液状原料を混合、濃縮、乾燥、粒型化等して得られるが、本発明のインスタントミルクティー粉末を製造するのに適した公知手法を適宜選択することが可能であり、これらに限定はされない。
【0033】
インスタントミルクティー粉末の水性媒体に対する溶解量は、溶解の均一性および作業性の観点から1〜30g/100mLが好ましく、3〜20g/100mLがさらに好ましく、5〜15g/100mLが特に好ましく、7〜10g/100mLが最も好ましく、インスタントミルクティー飲料はこれらの範囲から選ばれてなる最適量を水性媒体50〜400mL、好ましくは80〜200mL、最も好ましくは100〜160mLに溶解させたものが通常飲用濃度として色調および風味の面で優れている。インスタントミルクティー粉末を製品化する際には、これら最適溶解量をパッケージに表示するのが好ましい。
【0034】
上記通常飲用濃度に溶解したインスタントミルクティー飲料中の紅茶ポリフェノール検出濃度は30〜500mg/100mLであるのが好ましく、35〜450mg/100mLであるのがより好ましく、40〜400mg/100mLであるのが更に好ましく、45〜350mg/100mLであるのが特に好ましく、50〜300mg/100mLであるのが最も好ましい。紅茶ポリフェノール量が下限を下回ると、望ましい量の紅茶ポリフェノールを摂取することが難しく、また上限を超えると紅茶の苦味が際立つため飲用に適さない。また、インスタントミルクティー飲料中の蛋白検出濃度は、600〜5500mg/100mLであるのが好ましく、700〜4500mg/100mLであるのがより好ましく、800〜4000mg/100mLであるのが更に好ましく、900〜3500mg/100mLであるのが特に好ましく、1000〜3000mg/100mLであるのが最も好ましい。蛋白量が下限を下回ると、ミルク感が弱くなり、甘さが強調されるため、味のバランスが悪くなる。また上限を超えると油膜が生じ、乳臭さが目立つ等外観および風味の面から好ましくない。
【0035】
また、紅茶ポリフェノールを高濃度に含有するミルクティー飲料では水色が濃く、暗茶褐色を示すため、ミルクティーとしてのイメージにそぐわない外観を有してしまう。ミルクティーとしてイメージされる溶液の目安としては、インスタントミルクティー飲料を分光式色差計にて反射光で測定を行った際のL値(明度)が20以上、好ましくは25以上、より好ましくは30以上の値を示すのが好ましい。
【0036】
本発明のインスタントミルクティー粉末の包装形態は、特に制限はなく、紙、プラスチック、アルミなどからなる袋、瓶、缶、プラスチックボトル等の容器に大容量が詰められ、スプーンで計量するタイプの形態を用いても良いが、分包タイプのものが一杯分を簡便に調整できる上で好ましい。包装品の材質は酸素・湿度透過性の低いものの方がインスタントミルクティー粉末の品質を維持する上で好ましく、窒素ガスを充填しても構わない。アルミ袋などの大容量に詰められたインスタントミルクティー粉末をカップ式自動販売機やディスペンサー等で使用することも可能である。
【0037】
本発明のインスタントミルクティー粉末は、水、湯、牛乳、茶類、果汁入りエキスおよび水溶性エキスなどの水性媒体に溶かして飲むほか、クッキー、クラッカー、ビスケット、ドーナツ、ガム、チョコレート、キャンディー、グミ、キャラメル、饅頭、大福、羊羹、せんべい、ゼリー、プリン、アイス、ソフトクリーム、ケーキ、ヨーグルト、等の菓子・デザート類の他、パン、シリアル、ショートブレッド、ジャム、スプレッドクリーム、チョコレートコーティング剤等の飲食品に配合できる。また、錠剤、顆粒等のサプリメント、老人用流動食、病人用流動食、離乳食、嚥下補助食品等の流動食、各種栄養剤にも配合できる。これら食品中のインスタントミルクティー粉末の含有量は食品の種類によっても異なるが、一般に0.5〜100重量%、特に5〜80重量%が好ましい。
【0038】
(実施例)
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
【0039】
<インスタントミルクティー中の成分測定>
インスタントミルクティー粉末/飲料中の紅茶ポリフェノール量および蛋白量は以下の方法により測定を行った。
【0040】
(紅茶ポリフェノールの測定法)
測定試料はMeOH/HO/1M−HCL=30/70/0.4の混合溶媒にて超音波洗浄機で30分間抽出、希釈・定容した後、遠心分離(15,000rpm,20min,4℃)した。上清を孔径0.45μmの親水性PTFEフィルター(ADVANTEC製,DISMIC−13HP)でろ過し、試料溶液とした。105℃で1時間乾燥させた没食子酸エチル(東京化成工業製)を用い、同混合溶媒にて定容し、標準溶液とした。没食子酸エチル標準溶液または試料溶液500μLに酒石酸鉄試薬(硫酸第一鉄(和光純薬製)100mgと酒石酸カリウムナトリウム(和光純薬製)500mgを超純水に溶解し100mLに定容)500μLとリン酸緩衝液(※1)1500μLを加えてよく撹拌し、分光光度計にて540nmの吸光度を測定した。
標準溶液の吸光度をプロットして検量線を作成し、試料溶液の吸光度から没食子酸エチル相当濃度を求める。試料溶液中の紅茶ポリフェノール量を下記の数1を用いて算出し、試料に対する希釈・定容倍率から試料中の紅茶ポリフェノール濃度を求めた。
※1:M/15リン酸水素二ナトリウム十二水和物(関東化学製)水溶液とM/15リン酸二水素カリウム(関東化学製)溶液を84/16の割合で混合し、pH 7.50となるように微調整して調製した。
【0041】
【数1】

【0042】
(蛋白量の測定法)
標準試料(カゼインナトリウムEMLV;DMV International製)、および測定試料は超純水で適宜希釈・定容し、それぞれ標準溶液または試料溶液とした。タンパク質定量用キットとして、BIO−RAD製のQuick StartTM Bradford Dye Reagent,1×(Dye)を用い、標準溶液または試料溶液20μLとDye1mLを試験管に入れてよく撹拌し、室温で5分間以上静置し、1時間以内に595nmの吸光度を測定した。標準溶液のカゼインナトリウム濃度に対する吸光度をプロットして検量線を作成し、試料溶液の吸光度から蛋白量を算出し、試料に対する希釈・定容倍率などから試料中の蛋白量を求めた。
【0043】
<試験例1>
紅茶ポリフェノールとして紅茶抽出物ポリフェノンPF(紅茶ポリフェノール24重量%含有;三井農林(株)製)、ショ糖、全粉乳、各種蛋白、クエン酸ナトリウム、香料を用いて、表1に示す配合割合で各成分を混合してインスタントミルクティー粉末(実施例1〜4)を調製した。蛋白はEMLV(カゼインナトリウム;DMV International製)、エマルアップ(カゼイン蛋白ペプチド;森永乳業(株)製)、ペプチドW−800(乳清蛋白ペプチド;明治製菓(株)製)、ハイニュートDC5(大豆ペプチド;不二製油(株)製)をそれぞれ用いた。また比較例として、蛋白を含有しないインスタントミルクティー粉末、および蛋白の代わりに脱脂粉乳(よつ葉乳業(株)製)を使用したインスタントミルクティー粉末(比較例1〜2)を調製した。これらを120mLの熱水で溶解してインスタントミルクティー飲料を調製し、溶解性の優劣、およびパネリスト10名の官能による風味の評価を行った。評価は4段階(◎:最も良い、○:良い、△:やや良い、×:良くない)にて行い、各評価結果から総合評価を求めた。結果を表1に示す。
【0044】
【表1】

【0045】
表1に示す通り、各種蛋白を添加することでインスタントミルクティー飲料の溶解性および風味に優れるものとなったが、その中でもカゼインナトリウム(実施例1)やカゼイン蛋白ペプチド(実施例2)を用いたインスタントミルクティーが特に優れていた。実施例4の様に乳性蛋白ではない大豆ペプチドを用いたものでは、風味への違和感がやや大きかった。
【0046】
また、比較例2の様に蛋白の代わりに脱脂粉乳を用い、本発明の構成を満たさないインスタントミルクティーでは、風味は良いものの、溶解性に欠けていた。
【0047】
<試験例2>
紅茶ポリフェノールとして、紅茶抽出物ポリフェノンPF(紅茶ポリフェノール24重量%含有;三井農林(株)製)、蛋白としてEMLV(カゼインナトリウム99.7重量%含有;DMV International製)、およびエリスリトール、甘味料製剤、脱脂粉乳、クリーミングパウダー、pH調整剤(リン酸カリウム、クエン酸ナトリウム)、香料を用いて、表2に示す配合割合で各成分を混合してインスタントミルクティー粉末(実施例5〜15、比較例3〜9)を調製した。各インスタントミルクティー粉末中の紅茶ポリフェノール検出量または蛋白検出量は、上に示した測定方法によって求めた。
【0048】
これらを120mLの熱水で溶解してインスタントミルクティー飲料を調製し、溶解性の優劣、およびパネリスト10名による風味の官能評価を行った。また、分光式色差計(型番:SE−2000 日本電色工業(株))にて反射L値を、デジタル屈折計(型番:RX−5000α (株)アタゴ)にて可溶性固形分重量を、pHメーター(型番:HM−50G:東亜DKK)にてpHを測定した。評価は4段階(◎:最も良い、○:良い、△:やや良い、×:良くない)にて行い、各評価結果から総合評価を求めた。結果を表2に示す。
【0049】
【表2】

【0050】
表2に示すように、インスタントミルクティー粉末の紅茶ポリフェノールと蛋白量を調整することで風味や色調に優れ、溶解性の改善されたインスタントミルクティー飲料が得られた。
【0051】
しかし、紅茶ポリフェノールと蛋白量が好ましい値でも、実施例10に示すように糖類の含有量が少ないと風味と溶解性にやや劣っていた。また、実施例15に示すように、pH調整剤を含まずpHが6.0以下となったインスタントミルクティー飲料では溶解性が不足していた。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明によれば、紅茶ポリフェノールを高濃度に含有しているにも関わらず、風味と溶解性にすぐれ、手軽に多量の紅茶ポリフェノールを摂取するのに適したインスタントティーを提供することができる点において産業上の利用可能性を有する。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳成分を含有し、全粉体重量に対する
A:紅茶ポリフェノール添加量(重量%)
B:蛋白添加量(重量%)が
イ)0.8≦A≦8.0
ロ)0.8≦B≦32.0
ハ)0.5≦B/A≦10.0
の3式を満たすインスタントミルクティー粉末。
【請求項2】
蛋白が乳性蛋白であることを特徴とする請求項1記載のインスタントミルクティー粉末。
【請求項3】
糖類を25重量%以上含有することを特徴とする請求項1又は2記載のインスタントミルクティー粉末。
【請求項4】
リン酸塩および/又はクエン酸塩を含有することを特徴とする請求項1乃至3記載のインスタントミルクティー粉末。
【請求項5】
乳成分を含有し、全粉体重量に対する
A:紅茶ポリフェノール添加量(重量%)
B:蛋白添加量(重量%)を
イ)0.8≦A≦8.0
ロ)0.8≦B≦32.0
ハ)0.5≦B/A≦10.0
の3式を満たす割合とすることを特徴とするインスタントミルクティーの溶解性改善方法。
【請求項6】
乳成分を含有し、可溶性固形分重量に対する
C:紅茶ポリフェノール検出量(重量%)
D:蛋白検出量(カゼイン当量,重量%)が
ニ)0.4≦C≦5.0
ホ)10.0≦D≦40.0
ヘ)2.0≦D/C≦45.0
の3式を満たすインスタントミルクティー粉末。
【請求項7】
請求項1〜4、および6記載のインスタントミルクティー粉末を水性媒体に溶解してなるインスタントミルクティー飲料。
【請求項8】
分光式色差計におけるL値(明度)が20以上であることを特徴とする請求項7記載のインスタントミルクティー飲料。
【請求項9】
乳成分を含有し、可溶性固形分重量に対する
C:紅茶ポリフェノール検出量(重量%)
D:蛋白検出量(カゼイン当量,重量%)を
ニ)0.4≦C≦5.0
ホ)10.0≦D≦40.0
ヘ)2.0≦D/C≦45.0
の3式を満たす割合とすることを特徴とするインスタントミルクティーの溶解性改善方法。




【公開番号】特開2008−54627(P2008−54627A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−237726(P2006−237726)
【出願日】平成18年9月1日(2006.9.1)
【特許番号】特許第3921230号(P3921230)
【特許公報発行日】平成19年5月30日(2007.5.30)
【出願人】(303044712)三井農林株式会社 (72)
【Fターム(参考)】