説明

高濃度薬物粒子、製剤、懸濁液、及びこれらの使用

高濃度薬物粒子製剤が記載されている。薬物は粒子製剤の約25wt%〜約80wt%を占める。本発明の粒子製剤は例えば、マクロ分子、例えばタンパク質及び/又は小分子(例えばステロイド・ホルモン)を含む。粒子製剤は典型的にはさらに、1又は複数の追加成分、例えば1又は複数の安定剤(例えば炭水化物、抗酸化剤、アミノ酸、及び緩衝剤)を含む。このような高濃度粒子製剤を懸濁ビヒクルと組み合わせることにより、懸濁製剤を形成することができる。懸濁製剤は、(i)1又は複数のポリマー及び1又は複数の溶媒を含む、粘性流体特性を呈する非水性単一相ビヒクルと、(ii)高濃度薬物粒子製剤とを含んでいる。懸濁製剤の送達装置及び使用方法も記載されている。本発明は患者コンプライアンスを改善し、薬物利用可能性を広げるために、薬物製剤及び送達における必要な改善手段を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2008年10月15日付けで出願された米国仮出願第61/196,277号(現在係属中)、及び2009年1月9日付けで出願された米国仮出願第61/204,714号(現在係属中)の優先権を主張し、これらの出願の全体を参考のため本明細書中に引用する。
【0002】
本発明は、医薬の研究及び開発に適用される有機化学、製剤化学、及びタンパク質化学に関する。本発明の特徴は、高濃度薬物粒子製剤、このような粒子製剤を含む懸濁製剤、このような懸濁製剤を含む装置、及び疾患又は状態の治療のためのこれらの使用を提供する。
【背景技術】
【0003】
タンパク質、ペプチド、及びポリペプチドを含む薬物は、水溶液中で経時劣化するおそれがある。すなわち、これらは典型的には水溶液中で不安定である。このような化学的不安定の理由から、溶液中の薬物は長期間の貯蔵又は、長期薬物送達を可能にする薬物送達装置内の使用に適さないことがしばしばある。さらに、生体内半減期が短い薬物は、貯蔵及び送達のために製剤することが特に難しい。薬物製剤は、特に、送達方法(例えば皮下又は静脈内注射)に関して、また十分な治療投与量で投与される可能性において、これらの使用を制限する重大な欠点を依然として被っている。患者のコンプライアンスを改善し、そして薬物利用可能性を広げるために、薬物の製剤及び送達の改善が必要である。
【0004】
化学的安定性を改善するために、薬物が溶けるのではなく懸濁されるキャリアが示されている(例えば米国特許第5,972,370号明細書及び同第5,904,935号明細書)。さらに、作用物質が所望のビヒクル中で低い溶解度を示す場合には、キャリア中に有効薬剤を懸濁させることが有益である場合もある。しかしながら、懸濁液は、沈降、化学的不安定、及び懸濁した有効薬剤の凝集に基づき、物理的安定性が悪いおそれがある。更なる問題点は、例えば長期送達を可能にするために必要な、ビヒクル中の薬物濃度を得る能力である。非水性キャリアの問題は、薬物濃度が高くなるにつれて悪化する傾向がある。
【0005】
制御された速度で薬物を長期送達するために、いくつかのアプローチが講じられている。例えばBrodbeck他が記載したデポ型ゲル組成物は、所望の部位内に注射することができ、薬物の徐放を可能にする(米国特許第6,673,767号;同第6,468,961号;同第6,331,311号;及び同第6,130,200号の各明細書)。
【0006】
静脈内、動脈内、髄腔内、腹腔内、及び硬膜外の経路によって薬物を送達するための、植え込み可能な注入ポンプも記載されている。このようなポンプは典型的には、制御された薬物送達を可能にするために、下腹部内の組織ポケット内に外科的に皮下挿入される。インスリン送達、疼痛管理、及び化学療法送達のための数多くのシステムが記載されている(例えば、Health Services/Technology Assessment Text (HSTAT), External and Implantable Infusion Pumps, by Ann A. Graham, C.R.N.A., M.P.H., Thomas V. Holohan, M.D., Health Technology Review, No. 7, Agency for Health Care Policy and Research Office of Health Technology Assessment, January 1994)。
【0007】
長期薬物送達のための別のアプローチは、浸透圧送達装置を使用する。このような装置は、所定の投与期間にわたって、薬物を制御した状態で放出するように、患者の体内に植え込むことができる。一般に、これらの装置は、外部環境からの流体を吸収し、そして吸収された流体に相当する量の薬物を放出することによって作業する。このような1つの浸透圧送達装置の一例はVIADUR(登録商標)(ALZA Corporation, Mountain View, CA)装置である。VIADUR(登録商標)装置は、酢酸ロイプロリドを送達することにより進行(第4期)前立腺癌に伴う症状を管理するための、DUROS(登録商標)(ALZA Corporation, Mountain View, CA)技術を用いたチタン製の植え込み型薬物送達システムである。VIADUR(登録商標)装置を使用した治療は、患者の身体内で生産され循環されるテストステロンの量を低減し、12か月の連続療法を可能にする。
【0008】
長期薬物送達のためには、最大1年間の投与継続期間が望ましい。生理的温度における薬物のこのような長期貯蔵は、多くの難題を提示する。1つのこのような難題は、液状製剤中の薬物の沈降が発生し得ることである。このことは、薬物懸濁液中の薬物の不均質を招くおそれがある。別の難題は、長期送達のための送達装置から信頼性高くポンピングすることができる懸濁製剤を得ることの可能性である。第3の難題は、薬物貯蔵のための植え込み型送達装置内で利用可能な体積が典型的には小さいことによって制約が生じる場合の、高投与量の薬物を所定の時間にわたって送達することの可能性である。例えば、植え込み型リザーバは一般に25〜250μlのオーダーである。
【0009】
上記の装置及び製剤は、患者へ薬物を送達するのに役立っている。これらの装置は人間向けの医療及び獣医学の目的で使用されているものの、長い持続時間にわたって所期治療濃度で薬物を送達することができ、また長期間にわたる薬物安定性を可能にする製剤、装置、及び投与方法が引き続き必要である。本発明の高濃度薬物粒子製剤は、上述の難題及び問題点の多くに解決手段を提供する。本発明は、例えば、より長い継続時間、患者のコンプライアンス、利用可能な薬物のタイプ、及び薬物安定性に対して改良を施すために必要となる、薬物の製剤及び送達の改善をもたらす。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、一般に、高濃度薬物粒子製剤、高濃度薬物粒子製剤と懸濁ビヒクルと含む懸濁製剤、並びにこのような製剤を含む装置、このような製剤及び装置の製造方法、及びこれらの使用方法に関する。
【0011】
1つの態様において、本発明は高濃度薬物粒子製剤に関する。1実施態様の場合、本発明は、粒子製剤であって、約25wt%〜約80wt%の薬物と、約75wt%〜約20wt%の1又は複数の追加成分とを含み、薬物:追加成分の比が約1:1〜約5:1である、粒子製剤を含む。別の実施態様の場合、薬物は約40wt%〜約75wt%を占め、そして1又は複数の追加成分は約60wt%〜約25wt%を占める。
【0012】
本発明の粒子製剤は、薬物成分に加えて成分を含むことができる。1又は複数の追加成分の一例としては、抗酸化剤、炭水化物、及び緩衝剤が挙げられる。1つの実施態様の場合、薬物:抗酸化剤:炭水化物:緩衝剤の比は、約2〜20:1〜5:1〜5:1〜10である。抗酸化剤の一例としては、システイン、メチオニン、トリプトファン、及びこれらの混合物が挙げられる。緩衝剤の一例としては、クエン酸塩、ヒスチジン、琥珀酸塩、及びこれらの混合物が挙げられる。炭水化物の一例としては、二糖類、例えばラクトース、スクロース、トレハロース、セロビオース、又はこれらの混合物が挙げられる。
【0013】
1実施態様の場合、粒子製剤が、粒子の噴霧乾燥調製物である。
【0014】
本発明の粒子製剤中に含まれる薬物は、例えばタンパク質又は小分子であってよい。本発明のいくつかの実施態様は、ペプチド・ホルモン、例えばインクレチン模倣体{例えばグルカゴン様タンパク質、例えばGLP−1)、並びにこれらの類似体及び誘導体;エキセナチド(例えばエキセンジン−4)、並びにこれらの類似体及び誘導体;PYY(ペプチドYY、ペプチド・チロシン・チロシンとしても知られる)、並びにこれらの類似体及び誘導体;オキシントモデュリン、並びにこれらの類似体及び誘導体};胃抑制ペプチド(GIP)、並びにこれらの類似体及び誘導体;及びレプチン、並びにこれらの類似体及び誘導体の使用を含む。他の実施態様は、インターフェロン・タンパク質(例えばアルファ、ベータ、ガンマ、ラムダ、オメガ、タウ、コンセンサス、変異インターフェロン、及びこれらの混合物、並びにこれらの類似体又は誘導体、例えばペギル化形態)の使用を含む。有用なタンパク質の更なる例は、組み換え抗体、抗体フラグメント、ヒト化抗体、単鎖抗体、モノクローナル抗体、アヴィマー、ヒト成長ホルモン、上皮成長因子、線維芽細胞成長因子、血小板由来成長因子、形質転換成長因子、及び神経成長細胞、及びサイトカインを含む。
【0015】
1実施態様の場合、粒子製剤の粒子は、約2ミクロン〜約10ミクロンの粒子である。典型的には、例えば噴霧乾燥によって形成された粒子は、平均値を中心とする曲線によって表される規定サイズ範囲を有している。1実施態様の場合、曲線は鐘形曲線であり、そして平均粒径は約2ミクロン〜約10ミクロンである。
【0016】
第2の態様において、本発明は、高濃度薬物粒子製剤と懸濁ビヒクルとを含む懸濁製剤に関する。1実施態様の場合、懸濁製剤は、本発明の高濃度薬物粒子製剤と、非水性単一相懸濁ビヒクルとを含んでいる。懸濁ビヒクルは典型的には、1又は複数のポリマーと1又は複数の溶媒とを含んでいる。懸濁ビヒクルは粘性流体特性を示し、そして粒子製剤はビヒクル中に均質に分散されている。
【0017】
1実施態様の場合、該懸濁ビヒクルのポリマーは、ピロリドンを含むポリマー(ポリビニルピロリドン)である。
【0018】
懸濁ビヒクルの溶媒は、例えば乳酸ラウリル、ラウリルアルコール、安息香酸ベンジル、及びこれらの混合物であってよい。
【0019】
いくつかの実施態様において、懸濁ビヒクルは本質的に、1又は複数のポリマーと、1又は複数の溶媒から成っている。例えば、溶媒は本質的に安息香酸ベンジルから成っている。ポリマーは例えば、本質的にポリビニルピロリドンから成っている。1実施態様の場合、懸濁ビヒクルは本質的に、安息香酸ベンジルと、ピロリドンを含むポリマーとから成っている。
【0020】
懸濁ビヒクル中のポリマーと溶媒との比率は変化してよく、例えば懸濁ビヒクルは、約40wt%〜約80wt%のポリマーと、約20wt%〜約60wt%の溶媒とを含んでよい。懸濁ビヒクルの好ましい実施態様は、次の比で組み合わされたポリマーと溶媒とから形成されたビヒクルを含む:約25wt%の溶媒と約75wt%のポリマー;約50wt%の溶媒と約50wt%のポリマー;及び約75wt%の溶媒と約25wt%のポリマー。
【0021】
懸濁ビヒクルの33℃における典型的な粘度は、約5,000〜約30,000ポアズ、好ましくは約8,000〜約25,000ポアズ、より好ましくは約10,000〜約20,000ポアズである。1実施態様の場合、懸濁ビヒクルの粘度は、33℃で約15,000ポアズ±約3,000ポアズである。
【0022】
第3の態様において、本発明は、本発明の高濃度薬物粒子製剤と懸濁ビヒクルとを含む懸濁製剤を含む浸透圧送達装置に関する。
【0023】
本発明の高濃度薬物粒子製剤を含む懸濁製剤を充填すると、浸透圧送達装置は小型化してもなお、所望の期間にわたって所望の治療量の薬物を送達することができる。
【0024】
第4の態様において、本発明は、本発明の高濃度薬物粒子製剤と懸濁ビヒクルとを含む懸濁製剤を使用する治療を必要とする患者の疾患又は状態を治療する方法に関する。本発明は典型的には、1又は複数の浸透圧送達装置から患者へ、約1か月〜約1年の期間にわたって実質的に均一の速度で懸濁製剤を送達することを含む。
【0025】
第5の態様において、本発明は、本発明の高濃度薬物粒子製剤と懸濁ビヒクルとを含む懸濁製剤を、浸透圧送達装置のリザーバ内に充填することを含む、浸透圧送達装置の製造方法に関する。
【0026】
本発明はまた、本明細書中に記載された本発明の懸濁製剤、粒子製剤、懸濁ビヒクル、及び装置の製造方法を含む。
【0027】
本発明のこれらの実施態様及びその他の実施態様は、本明細書中の開示内容に照らして、当業者ならば容易に想到することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、懸濁製剤1(例2に記載)のin vitro放出速度分析からのデータを示す。この図は、100日目までの37℃における1日当たりの放出速度を示しており、概算放出速度は50μg/日である(データ点を横切る直線として示す)。図面では、縦軸は薬物の放出量(μg/日)であり、横軸は時間(日)である。
【図2】図2は、懸濁製剤2(例2に記載)のin vitro放出速度分析からのデータを示す。この図は、110日目までの37℃における1日当たりの放出速度を示しており、概算放出速度は75μg/日である(データ点を横切る直線として示す)。図面では、縦軸は薬物の放出速度(μg/日)であり、横軸は時間(日)である。
【図3】図3は、懸濁製剤3(例2に記載)のin vitro放出速度分析からのデータを示す。この図は、100日目までの37℃における1日当たりの放出速度を示しており、概算放出速度は80μg/日である(データ点を横切る直線として示す)。図面では、縦軸は薬物の放出速度(μg/日)であり、横軸は時間(日)である。
【図4】図4は、4種のオメガ・インターフェロン粒子懸濁製剤のin vitro放出速度分析からのデータを示す。この図は、100日間にわたる37℃における1日当たりの放出速度を示しており、概算放出速度は10,25,30及び50μg/日である(データ点を横切る直線として示す)。図面では、縦軸は薬物の放出速度(μg/日)であり、横軸は時間(日)である。10μg/日のデータは正方形で示し、25μg/日のデータは菱形で示し、30μg/日のデータは三角形で示し、そして50μg/日のデータは円形で示す。各測定毎に誤差バーを示す。
【図5】図5は、5種のエキセナチド粒子懸濁製剤のin vitro放出速度分析からのデータを示す。この図は、110日間にわたる37℃における1日当たりの放出速度を示しており、概算放出速度は5,10,20,40及び75μg/日である(データ点を横切る直線として示す)。図面では、縦軸は薬物の放出速度(μg/日)であり、横軸は時間(日)である。5μg/日のデータは菱形で示し、10μg/日のデータは白抜きの正方形で示し、20μg/日のデータは三角形で示し、40μg/日のデータは円形で示し、そして75μg/日のデータは黒塗りの正方形で示す。各測定毎に誤差バーを示す。
【図6】図6Aは、植え込み型浸透圧送達装置10の概略図であって、装置の基本構成部分(原寸通りの比率ではない)を示している。図6Aでは、リザーバ12が内壁と外壁とを含んでおり、内壁はルーメンを画定している。半透膜18がリザーバの第1の端部に少なくとも部分的に挿入されている。浸透圧エンジンは第1チャンバ20内に含まれている。第1チャンバは、半透膜18の第1表面と、ピストン14の第1表面とによって画定されている。薬物懸濁製剤は第2チャンバ16内に含まれている。第2チャンバは、ピストン14の第2表面と、拡散モデレータ22の第1表面とによって画定されている。拡散モデレータはリザーバの第2端部に少なくとも部分的に挿入されている。拡散モデレータは送達オリフィス24を含んでいる。この実施態様の場合、流路26は、ねじ山付き拡散モデレータ22と、リザーバ12の内面に形成されたねじ山28との間に形成されている。図6Bは、長さ約45mm及び直径約3.8mmの寸法を有する植え込み型浸透圧送達装置を示す概略図である。図6Bには、任意のレーザーマーキング帯60が示されており、そして任意の外部配向溝62も示されている。リザーバ12、半透膜18、及び拡散モデレータ22も示されている。図6Cは、図6Bの植え込み型浸透圧送達装置と比べて長さが短い植え込み型浸透圧送達装置を示す概略図である。この装置の寸法は、長さ約30mm及び直径約3.8mmである。図6Cには、任意のレーザーマーキング帯60が示されており、そして任意の外部配向溝62も示されている。リザーバ12、半透膜18、及び拡散モデレータ22も示されている。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本明細書中に引用された全ての特許明細書、刊行物、及び特許出願明細書は、あたかもそれぞれ個々の特許明細書、刊行物、及び特許出願明細書が具体的且つ個別に、あらゆる目的で参照されることにより全体的に組み込まれるように指示されているかのように、参照することにより本明細書中に組み込まれる。
【0030】
1.0.0 定義
言うまでもなく、本明細書中に使用される用語は、特定の実施態様を説明する目的に使用されるにすぎず、限定を意図するものではない。本明細書及び添付の特許請求の範囲に使用される単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が他のことを明示するのではない限り、複数の言及対象を含む。このように、例えば「溶媒」に言及したときには、これは1つ又は2つ以上のこのような溶媒を含み、「タンパク質」に言及したときには、これは1つ又は2つ以上のこのようなタンパク質、タンパク質の混合物、及び同様のものを含む。
【0031】
他に特に定義されていなければ、本明細書中に使用される全ての技術科学用語は、本発明が関連する業界の当業者によって共通に理解されるものと同じ意味を持っている。本発明を実施する上で本明細書中に記載したものと類似又は同等の他の方法及び材料を用いることもできるが、好ましい材料及び方法は本明細書中に記載された通りである。
【0032】
本発明を説明・主張する際に、下記定義に従って次の用語を使用する。
【0033】
「薬物」、「治療薬」、及び「有効薬剤」という用語は、所望の有益な効果をもたらすために患者に送達される任意の治療上活性の物質を意味するように互いに同様に使用される。本発明の1実施態様の場合、薬物は、例えばインターフェロン又はインクレチン模倣体である。本発明の別の実施態様の場合、薬物は、小分子、例えばホルモン、例えばアンドロゲン又はエストロゲンである。本発明の装置及び方法は、タンパク質、小分子、及びこれらの組み合わせの送達によく適している。
【0034】
「ペプチド」、「ポリペプチド」、及び「タンパク質」という用語は、ここでは互換可能に使用され、そして典型的には、2つ又は3つ以上のアミノ酸(例えば最も典型的にはL−アミノ酸であるが、しかしD−アミノ酸、修飾アミノ酸、アミノ酸類似体、及び/又はアミノ酸模倣体をも含む)の鎖を含む分子を意味する。タンパク質はアミノ酸鎖を修飾する付加的な基、例えば、翻訳後修飾を介して付加される官能基を含んでもよい。翻訳後修飾の一例としては、アセチル化、アルキル化(メチル化を含む)、ビオチニル化、グルタミル化、グリシル化、グリコシル化、イソプレニル化、リポイル化、ホスホパンテテイニル化、ホスホリル化、セレン化、及びC末端アミド化が挙げられる。タンパク質という用語はまた、アミノ末端及び/又はカルボキシ末端の修飾形を含むタンパク質を含む。末端アミノ基の修飾形の一例としては、des−アミノ、N−低級アルキル、N−ジ−低級アルキル、及びN−アシル修飾形が挙げられる。末端カルボキシ基の修飾形の一例としては、アミド、低級アルキルアミド、ジアルキルアミド、及び低級アルキルエステル修飾形である(例えば低級アルキルはC1−C4アルキルである)。タンパク質という用語はまた、アミノ末端とカルボキシ末端との間の、アミノ酸の例えば上述のような修飾形を含む。1つの実施態様の場合、タンパク質は、小分子を付加することにより修飾されてよい。
【0035】
ペプチド鎖の一方の端部における末端アミノ酸は典型的に、遊離アミノ基(すなわちアミノ末端)を有している。鎖の他方の端部における末端アミノ酸は遊離カルボキシル基(すなわちカルボキシ末端)を有している。典型的には、タンパク質を形成するアミノ酸は、アミノ末端から始まって順番に番号付けされていて、タンパク質のカルボキシ末端に向かって数が大きくなる。
【0036】
本明細書に使用される「アミノ酸残基」という表現は、アミド結合又はアミド結合模倣体によってタンパク質内に組み込まれたアミノ酸を意味する。
【0037】
本明細書中に使用される「インクレチン模倣体」という用語の一例としては、グルカゴン様ペプチド1(GLP−1)並びにその誘導体及び類似体、及びエキセナチド並びにその誘導体及び類似体が挙げられる。インクレチン模倣体は「インスリン分泌促進性ペプチド」としても知られる。
【0038】
本明細書中に使用される「インスリン分泌促進性」という用語は、インスリンの生産及び/又は活性に刺激又は影響を与える化合物、例えばタンパク質(例えばインスリン分泌促進性ホルモン)の能力を意味する。このような化合物は典型的には、患者体内のインスリンの分泌又は生合成を刺激する。
【0039】
本明細書中に使用される「インターフェロン」という用語の一例としては、3つの主要クラスのヒト・インターフェロン、すなわちインターフェロンI型{例えばアルファ・インターフェロン(アルファ−2a及びアルファ−2bを含む)、ベータ・インターフェロン(ベータ−1a及びベータ−1bを含む)、オメガ・インターフェロン、タウ・インターフェロン、及びこれらの変異形};インターフェロンII型(例えばガンマ・インターフェロン、及びこれらの変異形);及びインターフェロンIII型(例えばラムダ・インターフェロン、及びこれらの変異形)が挙げられる。さらに、この用語は種々のコンセンサス・インターフェロン(例えば米国特許第4,695,623号明細書、同第4,897,471号明細書、同第5,372,808号明細書、同第5,541,293号明細書、及び同第6,013,253号明細書)を意味する。
【0040】
本明細書中に使用される「ビヒクル」は、薬物を担持するために使用される媒質を意味する。本発明のビヒクルは典型的には、ポリマー及び溶媒のような成分を含む。本発明の懸濁ビヒクルは典型的には、高濃度薬物粒子製剤をさらに含む懸濁製剤を調製するために使用される溶媒及びポリマーを含む。
【0041】
本明細書中に使用される「相分離」という表現は、例えば懸濁ビヒクルが水性環境に接触した場合に生じるような、懸濁ビヒクルにおける複数の相(例えば液相又はゲル相)の形成を意味する。本発明のいくつかの実施態様の場合、懸濁ビヒクルは、含水率がほぼ10%未満の水性環境と接触すると相分離を呈するように製剤される。
【0042】
本明細書中に使用される「単一相」は、物理的且つ化学的に一貫して均一である固形、半固形、又は液状の均質系を意味する。
【0043】
本明細書中に使用される「分散」という用語は、化合物、例えば高濃度薬物粒子製剤を懸濁ビヒクル中に分散、懸濁、又は分配することを意味する。典型的には、非水性懸濁液ビヒクル中に、本発明の高濃度薬物粒子製剤は均一に懸濁され、薬物粒子はこのビヒクル中には実質的に不溶性である。実質的に不溶性の材料は、懸濁液を含む投与形態の寿命全体を通して、概ね元の物理的形状のままである。例えば、本発明の高濃度薬物粒子製剤の固形粒子は概ね、非水性懸濁ビヒクル中で粒子として残る。
【0044】
本明細書中に使用される「化学的に安定」という表現は、化学経路、例えば脱アミド化(通常は加水分解)、凝集、又は酸化によって規定の期間にわたって生産される分解産物が、許容し得るパーセンテージを上回って製剤に形成されることがないことを意味する。
【0045】
本明細書中に使用される「物理的に安定」という表現は、製剤に形成される凝集体(例えば二量体及びその他の高分子量生成物)が、許容し得るパーセンテージを上回ることがないことを意味する。さらに、物理的に安定な製剤はその物理的状態を変化させること、例えば液体から固体へ、又は非晶質形態から結晶形態へ変化させることがない。
【0046】
本明細書中に使用される「粘度」という用語は典型的には、本質的に次のように、剪断速度に対する剪断応力の比から割り出される値を意味する(例えばConsidine, D.M. & Considine, G.D., Encyclopedia of Chemistry, 4th Edition, Van Nostrand, Reinhold, NY, 1984参照):
【0047】
F/A=μ*V/L (等式1)
ここでF/Aは剪断応力(単位面積当たりの力)、
μ=比例定数(粘度)、及び
V/L=層厚当たりの速度(剪断速度)。
【0048】
このような関係から、剪断速度に対する剪断応力の比は、粘度を定義する。剪断応力及び剪断速度の測定値は典型的には、選択された条件(例えば約37℃の温度)下で実施される平行板流量測定によって割り出される。他の粘度割り出し方法は、粘度計、例えばCannon-Fenske粘度計、Cannon-Fenske不透明溶液のためのUbbelohde粘度計、又はOstwald粘度計を使用した動粘性率の測定を含む。一般に、本発明の懸濁ビヒクルの粘度は、懸濁された粒子製剤が貯蔵中に沈降するのを防止し、そして送達法において、例えば植え込み型薬物送達装置内に使用するのに十分である。
【0049】
本明細書中に使用される「非水性」という用語は、例えば懸濁製剤の全含水率が、典型的には約10wt%以下、好ましくは約7wt%以下、より好ましくは約5wt%以下、さらにより好ましくは約4wt%以下を意味する。
【0050】
本明細書中に使用される「患者」という用語は、脊索動物亜門の任意の構成員を意味し、例えばヒト及び他の霊長類(ヒト以外の霊長類、例えばアカゲザル及び他のサル種及びチンパンジー及び他の類人猿種を含む);家畜、例えば牛、羊、豚、山羊及び馬;飼育動物、例えば犬及び猫;実験動物(齧歯類、例えばマウス、ラット及びモルモットを含む);及び鳥類(飼育された鳥、野生の鳥、及び狩猟鳥、例えばニワトリ、七面鳥、及び他の家禽、アヒル、及びガチョウなどを含む)を含む。この用語は、特定の年齢を意味しない。このようにして、成体及び新生体の両方が範囲に含まれる。
【0051】
本明細書中に使用される「浸透圧送達装置」という用語は典型的には、1又は複数の有効薬剤(例えばインクレチン模倣体)を患者に送達するために使用される装置を意味する。この装置は例えば、懸濁製剤(例えばインクレチン模倣体を含む)と浸透圧性物質製剤とを含有するルーメンを有するリザーバ(例えばチタン合金から形成される)を含む。ルーメン内に位置決めされたピストン集成体は、懸濁製剤を浸透圧性物質製剤から隔離する。浸透圧性物質製剤に隣接する、リザーバの第1の遠位端部に、半透膜が位置決めされており、また、(懸濁製剤が装置を出る際に通る送達オリフィスを画定する)流量モジュレータが、懸濁製剤に隣接するリザーバの第2の遠位端部に位置決めされている。典型的には、浸透圧送達装置は、患者体内の、例えば皮下(上腕の内側、外側、又は背後;又は腹部)に植え込まれる。浸透圧送達装置の一例は、DUROS(登録商標)(ALZA Corporation, Mountain View, CA)送達装置である。
【0052】
本明細書中に使用される「連続送達」という用語は典型的には、浸透圧送達装置から薬物を実質的に連続的に放出することを意味する。例えば、DUROS(登録商標)送達装置は、浸透圧原理に基づいて所定の速度で薬物を放出する。細胞外液が半透膜を通ってDUROS(登録商標)装置の浸透圧エンジン内に直接に入る。浸透圧エンジンは拡張することにより、遅く一貫した移動速度でピストンを動かす。ピストンの運動は、拡散モデレータのオリフィスを通って薬物製剤が強制的に放出されるようにする。従って、浸透圧送達装置からの薬物の放出は、遅い、制御された、一貫した速度で連続して行われる。
【0053】
本明細書中に使用される「実質的な定常状態送達」という用語は典型的には、規定の期間にわたって目標レベルで、又は目標レベル近くで薬物を送達することであって、浸透圧装置から送達される薬物の量が実質的にゼロ次送達であることを意味する。
【0054】
2.0.0 発明の総括
本発明を詳細に説明する前に理解するべきことは、本発明が特定の薬物送達タイプ、特定の薬物送達装置タイプ、特定の薬物源、特定の溶媒、及び特定のポリマーなどに限定されないことである。それというのも、このような具体的な事項は、本明細書の教示内容に照らして選択して使用することができるからである。また、本明細書中に使用される用語は、本発明の特定の実施態様を説明することを目的としているにすぎず、限定的であることを意図してはいない。
【0055】
移行句「含む(comprising)」、「本質的にから成る(consisting essentially of )」及び「から成る(consisting of )」は、列挙されていない付加的な成分又は工程がもし存在するならば、どのようなものが特許請求の範囲から排除されるかに関して、本発明の範囲を定義する。「含む(including)」、「含有する(containing)」、又は「を特徴とする(characterized by)」と同義である移行用語「含む(comprising)」はオープンエンドであり、また、付加的な列挙されていない要素又は方法工程を排除することはない。移行句「本質的にから成る(consisting essentially of )」は、指定された材料又は工程に、そして本発明の基本的且つ新規の特徴に実質的な影響を及ぼさない材料又は工程に、請求項の範囲を限定する。移行句「から成る(consisting of )」は、その請求項で指定されていないいかなる要素、工程、又は成分をも排除する。本発明の製剤及び装置の成分、並びに本発明の方法の工程は、典型的には、「含む(comprising)」というオープン・クレーム言語(例えば、〜を含む粒子製剤;〜を含む懸濁製剤;〜を含む懸濁ビヒクル;〜を含む送達装置;又は〜を含む製造方法)とともに記述される。このような記述は、移行句「本質的にから成る(consisting essentially of )」(例えば、本質的に〜から成る粒子製剤;本質的に〜から成る懸濁製剤;本質的に〜から成る懸濁ビヒクル;本質的に〜から成る送達装置;又は本質的に〜から成る製造方法)を使用して記述することができる本発明のより限定された実施態様を明示的に含み、また、移行句「から成る(consisting of )」(例えば、〜から成る粒子製剤;〜から成る懸濁製剤;〜から成る懸濁ビヒクル;〜から成る送達装置;又は〜から成る製造方法)を使用して、本発明のより一層限定された実施態様を記述することができる。
【0056】
1つの態様において、本発明は、粒子製剤の総重量の約25wt%〜約75wt%の薬物と、1又は複数の追加成分(例えば安定剤)とを含む高濃度薬物粒子製剤に関する。典型的には、薬物と1又は複数の追加成分の総量との比は、約1:3(薬物:追加成分)〜5:1(薬物:追加成分)、例えば1.4:1:1:2(薬物:抗酸化剤:炭水化物:緩衝剤、ここでは抗酸化剤、炭水化物及び緩衝剤は安定剤である)又は15:1:1:1(薬物:抗酸化剤:炭水化物:緩衝剤、ここでは抗酸化剤、炭水化物及び緩衝剤は安定剤である)の比である。1実施態様の場合、粒子製剤は、約40〜50wt%の薬物と、60〜50wt%の追加成分(例えば安定剤)と含み、薬物:追加成分の比は約1〜2:1である。
【0057】
本発明の高濃度薬物粒子製剤中の薬物は典型的にはタンパク質又は小分子である。1又は複数の安定剤は典型的には、炭水化物、抗酸化剤、アミノ酸、及び緩衝剤から成る群から選択される。
【0058】
本発明の1実施態様の場合、薬物はタンパク質である。本発明の実施において有用なタンパク質の例をさらに本明細書中で以下に論じる。その一例としては、インターフェロン、例えばアルファ、ベータ、ガンマ、ラムダ、オメガ、タウ、コンセンサス、変異インターフェロン、及びこれらの混合物が挙げられる。付加的なタンパク質の一例としては、インクレチン模倣体、例えばグルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、GLP−1の誘導体(例えばGLP−1(7−36)アミド)の誘導体、又はGLP−1の類似体、エキセナチド、エキセナチドの誘導体、又はエキセナチドの類似体が挙げられる。有用なタンパク質の更なる例は、組み換え抗体、抗体フラグメント、ヒト化抗体、単鎖抗体、モノクローナル抗体、アヴィマー、ヒト成長ホルモン、上皮成長因子、線維芽細胞成長因子、血小板由来成長因子、形質転換成長因子、神経成長細胞、及びサイトカインを含む。
【0059】
本発明の別の実施態様の場合、薬物は小分子である。本発明の実施において有用な小分子クラスの例をさらに本明細書中で以下に論じる。その一例としては、抗血管形成阻害剤(例えばチロキナーゼ阻害剤)、微小管阻害剤、DNA修復阻害剤、及びポリアミン阻害剤が挙げられる。本発明の実施において有用な具体的な小分子の例をさらに本明細書中で以下に論じる。その一例としては、テストステロン、デヒドロエピアンドロステロン、アンドロステンジオン、アンドロステンジオール、アンドロステロン、ジヒドロテストステロン、エストロゲン、プロゲステロン、プレドニゾロン、プレグネノロン、エストラジオール、エストリオール、及びエストロンが挙げられる。
【0060】
本発明の高濃度薬物粒子製剤は典型的には、下記の追加成分(例えば安定剤):1又は複数の炭水化物(例えばラクトース、スクロース、トレハロース、ラフィノース、セロビオース、又はこれらの混合物);1又は複数の抗酸化剤(例えばメチオニン、アスコルビン酸、チオ硫酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、クエン酸、ブチル化ヒドロキシルトルエン、及びこれらの混合物;及び1又は複数の緩衝剤(例えばクエン酸塩、ヒスチジン、琥珀酸塩、及びこれらの混合物)、のうちの1種又は2種以上を含む。
【0061】
好ましい実施態様の場合、高濃度薬物粒子製剤は薬物、二糖類(例えばスクロース)、抗酸化剤(例えばメチオニン)、及び緩衝剤(例えばクエン酸塩)を含む。薬物は典型的には、高濃度薬物粒子製剤の約20wt%〜約80wt%、好ましくは約25wt%〜約75wt%、より好ましくは約25wt%〜約50wt%を占める。薬物と安定剤との比は、典型的には約5:1、好ましくは約3:1、より好ましくは約2:1である。高濃度薬物粒子製剤は好ましくは、噴霧乾燥によって調製された粒子製剤であり、その含水率は低く、好ましくは約10wt%以下であり、より好ましくは約5wt%以下である。別の実施態様の場合、粒子製剤は凍結乾燥することができる。
【0062】
第2の態様において、本発明は、高濃度薬物粒子製剤と懸濁ビヒクルとを含む懸濁製剤に関する。懸濁ビヒクルは典型的には、1又は複数のポリマー及び1又は複数の溶媒を含む、非水性単一相懸濁ビヒクルである。懸濁ビヒクルは粘性流体特性を示す。粒子製剤がビヒクル中に均質且つ均一に分散されている。
【0063】
本発明の懸濁ビヒクルは、1又は複数の溶媒と1又は複数のポリマーとを含む。好ましくは、溶媒は、乳酸ラウリル、ラウリルアルコール、安息香酸ベンジル、及びこれらの混合物から成る群から選択される。より好ましくは、溶媒は、乳酸ラウリル又は安息香酸ベンジルである。好ましくは、ポリマーはピロリドンを含み、例えばいくつかの実施態様の場合、ポリマーはポリビニルピロリドン(例えば典型的には7,900〜10,800の概算近似分子量範囲を有するポリビニルピロリドンK−17)である。本発明の1実施態様の場合、ビヒクルは本質的に、安息香酸ベンジルとポリビニルピロリドンとから成っている。
【0064】
懸濁製剤の総含水率は典型的には低く、例えば約10wt%以下であり、好ましい実施態様では約5wt%以下である。
【0065】
別の態様において、本発明は、本発明の懸濁製剤を含む植え込み型薬物送達装置に関する。好ましい実施態様の場合、薬物送達装置は浸透圧送達装置である。1実施態様の場合、本発明は、全長が約35mm〜約20mm、好ましくは約30mm〜約25mm、より好ましくは約28mm〜約33mmであり、直径が約8mm〜約3mm、好ましくは約3.8mm〜約4mmである浸透圧送達装置を使用することに関する。いくつかの実施態様の場合、これらの寸法を有する浸透圧送達装置に、本発明の高濃度薬物粒子製剤を含む懸濁製剤を充填する。1実施態様の場合、浸透圧送達装置の長さは約30mmであり、直径は約3.8mmである。
【0066】
本発明はさらに、本発明の高濃度薬物粒子製剤及び/又は懸濁製剤、並びに、本発明の懸濁製剤がローディングされた浸透圧送達装置を製造する方法に関する。1実施態様の場合、本発明は、浸透圧送達装置のリザーバ内に懸濁製剤を充填することを含む。
【0067】
別の態様において、本発明は、例えば、約1か月から約1年の期間にわたって実質的に均一の速度で、浸透圧送達装置から、治療を必要とする患者に薬物を送達することによって、患者における疾患又は状態を治療する方法に関する。1実施態様の場合、本発明は、浸透圧送達装置から、例えばインクレチン模倣体を含む本発明の高濃度薬物粒子製剤を実質的に均一の速度で送達することを含む、治療を必要する患者における糖尿病(例えば糖尿病2型又は妊娠糖尿病)を治療する方法に関する。典型的には、懸濁製剤は、約1か月〜約1年、好ましくは約3か月〜約1年の期間にわたって送達される。この方法は、本発明の懸濁製剤がローディングされた浸透圧送達装置を患者体内に皮下挿入することを含んでよい。このような浸透圧送達装置は、例えば糖尿病2型に関連する治療方法において使用することもできる。
【0068】
別の実施態様の場合、本発明は、1種又は2種のインターフェロンを含む高濃度薬物粒子製剤を投与することにより、インターフェロン反応性疾患を治療することに関する。インターフェロン反応性疾患の一例としては、ウイルス感染症(例えばC型肝炎ウイルス感染症、自己免疫疾患(例えば多発性硬化症)、及び特定の癌が挙げられる。
【0069】
別の態様において、本発明は、最長約90日間にわたって最大約400μg/日、最長約180日間にわたって最大約200μg/日、又は約1年間にわたって最大約100μg/日の薬物を、送達装置から長期送達することに関する。
【0070】
3.0.0 製剤及び組成
3.1.0 高濃度薬物粒子製剤
1つの態様において、本発明は、製薬用途のために高濃度薬物粒子製剤を提供する。粒子製剤は典型的には約20wt%〜約75wt%の薬物を含み、そして1又は複数の追加成分(例えば安定剤)を含んでいる。安定化成分である追加成分の一例としては、炭水化物、抗酸化剤、アミノ酸、緩衝剤、無機化合物、及び界面活性剤が挙げられる。
【0071】
3.1.1 模範的な薬物
高濃度薬物粒子製剤は、1又は複数の薬物を含んでいてよい。薬物は生理的又は薬理的に活性の任意の物質、具体的には、ヒト又は動物の身体に送達されることが知られている物質、例えば薬剤、ビタミン、又は栄養素などであってよい。本発明の高濃度薬物粒子製剤は典型的には医薬製剤であり、そして例えば乾燥形態又は懸濁製剤としてパッケージングすることができる。
【0072】
浸透圧送達システムによって送達することができる薬物の一例としては、末梢神経、アドレナリン受容体、コリン作動性受容体、骨格筋、心臓血管系、平滑筋、血液循環系、シナプス系、神経効果器接合部位、内分泌・ホルモン系、免疫系、生殖器系、骨格系、オータコイド系、消化・排泄系、ヒスタミン系、又は中枢神経系に作用する薬物が挙げられる。さらに、浸透圧送達システムによって送達することができる薬物の一例として、感染症、慢性疼痛、糖尿病、自己免疫疾患、内分泌障害、代謝障害、癌、及びリウマチ障害の治療のために使用される薬物も挙げられる。
【0073】
一般的には、高濃度薬物粒子製剤中に使用するのに適した薬物の一例としては、ペプチド、タンパク質、ポリペプチド(例えば酵素、ホルモン、サイトカイン)、ポリヌクレオチド、核タンパク質、多糖類、糖タンパク質、リポタンパク質、ステロイド、鎮痛薬、局部麻酔薬、抗生剤、抗炎症性コルチコステロイド、眼薬、医薬用途のための他の小分子(例えばリバビリン)、又はこれらの種の合成類似体、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0074】
1実施態様の場合、好ましい薬物はマクロ分子を含む。このようなマクロ分子の一例としては、薬理的に活性のペプチド、タンパク質、ポリペプチド、遺伝子、遺伝子産物、他の遺伝子治療薬、又は他の小分子が挙げられる。好ましい実施態様の場合、マクロ分子はペプチド、ポリペプチド又はタンパク質である。本発明の実施において有用な数多くのペプチド、タンパク質、又はポリペプチドが本明細書中に記載されている。記載されたペプチド、タンパク質、又はポリペプチドに加えて、これらのペプチド、タンパク質、又はポリペプチドの修飾形も当業者に知られており、本明細書に提示された指針に従って本発明の実施に際して使用することができる。このような修飾形の一例としては、アミノ酸類似体、アミノ酸模倣体、類似タンパク質、又は誘導タンパク質が挙げられる。さらに、本明細書中に開示された薬物は、単独又は組み合わせ(例えば混合物)で製剤されてよい。
【0075】
本発明の高濃度薬物粒子製剤として製剤することができるタンパク質の一例としては、成長ホルモン;ソマトスタチン;ソマトロピン、ソマトトロピン、ソマトトロピン類似体、ソマトメジン−C、ソマトトロピン・プラス・アミノ酸、ソマトトロピン・プラス・タンパク質;卵胞刺激ホルモン;黄体形成ホルモン、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)、LHRH類似体、例えばロイプロリド、ナファレリン及びゴセレリン、LHRHアゴニスト又はアンタゴニスト;成長ホルモン放出因子;カルシトニン;コルヒチン;ゴナドトロピン放出ホルモン;ゴナドトロピン、例えば絨毛性ゴナドトロピン;オキシトシン、オクトレオチド;バソプレシン;副腎皮質刺激ホルモン;上皮成長因子;線維芽細胞因子;血小板由来成長因子;形質転換成長因子;神経成長細胞;プロラクチン;コシントロピン;リプレシンポリペプチド、例えばチロトロピン放出ホルモン;甲状腺刺激ホルモン;セクレチン;パンクレオチミン;エンケファリン;グルカゴン;内分泌され血流によって分配される内分泌物質;又はこれに類するもの
が挙げられる。
【0076】
高濃度薬物粒子製剤として製剤することができる更なるタンパク質の一例としては、アルファ抗トリプシン;因子VII;因子IV及び他の凝固因子;インスリン;ペプチド・ホルモン;副腎皮質刺激ホルモン、甲状腺刺激ホルモン及びその他の下垂体ホルモン;エリストポエチン;成長因子、例えば顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球マクロファージ・コロニー刺激因子、インスリン様成長因子1;組織プラスミノゲン活性化因子;CD4;1−デアミノ−8−D−アルギニンバソプレシン;インターロイキン−1受容体アンタゴニスト;腫瘍壊死因子、腫瘍壊死因子受容体;腫瘍抑制タンパク質;膵酵素;ラクターゼ;リンフォカイン、ケモカイン又はインターロイキン、例えばインターロイキン−1、インターロイキン−2を含むサイトカイン;細胞毒性タンパク質;スーパーオキシド・ジスムターゼ;及び内分泌され血流によって動物体内に分配される内分泌物質が挙げられる。
【0077】
いくつかの実施態様において、薬物は1又は複数のタンパク質であり得る。1又は複数のタンパク質の一例としては、組み換え抗体、抗体フラグメント、ヒト化抗体、単鎖抗体、モノクローナル抗体、及びアヴィマーから成る群から選択された1又は複数のタンパク質;ヒト成長ホルモン、上皮成長因子、線維芽細胞成長因子、血小板由来成長因子、形質転換成長因子、及び神経成長細胞から成る群から選択された1又は複数のタンパク質;又は1又は複数のサイトカインが挙げられる。
【0078】
本発明のいくつかの実施態様は、ペプチド・ホルモン、例えばインクレチン模倣体{例えばグルカゴン様タンパク質、例えばGLP−1)、並びにこれらの類似体及び誘導体;エキセナチド(例えばエキセンジン−4)、並びにこれらの類似体及び誘導体;PYY(ペプチドYY、ペプチド・チロシン・チロシンとしても知られる)、並びにこれらの類似体及び誘導体;オキシントモデュリン、並びにこれらの類似体及び誘導体};胃抑制ペプチド(GIP)、並びにこれらの類似体及び誘導体;及びレプチン、並びにこれらの類似体及び誘導体の使用を含む。他の実施態様は、インターフェロン・タンパク質{例えばアルファ、ベータ、ガンマ、ラムダ、オメガ、タウ、コンセンサス、変異インターフェロン、及びこれらの混合物、並びにこれらの類似体又は誘導体、例えばペギル化形態;例えばThe Interferons: Characterization and Application, by Anthony Meager (Editor), Wiley-VCH (2006年5月1日)参照}の使用を含む。
【0079】
GLP−1{3種のペプチド形態、すなわちGLP−1(1−37)、GLP−1(7−37)及び、GLP−1(7−36)アミド、並びにGLP−1の類似体を含む}は、インスリン分泌を刺激し(すなわちインスリン分泌促進性)、このインスリン分泌が細胞によるグルコース取り込みを誘発し、その結果、血清中のグルコース濃度を低下させることが判っている{例えばMojsov, S., Int. J. Peptide Protein Research, 40:333-343 (1992)}。
【0080】
インスリン分泌促進作用を示す数多くのGLP−1誘導体及び類似体が、当業者に知られている(例えば米国特許第5,118,666号;同第5,120,712号;同第5,512,549号;同第5,545,618号;同第5,574,008号;同第5,614,492号;同第5,958,909号;同第6,191,102号;同第6,268,343号;同第6,329,336号;同第6,451,974号;同第6,458,924号;同第6,514,500号;同第6,593,295号;同第6,703,359号;同第6,706,689号;同第6,720,407号;同第6,821,949号;同第6,849,708号;同第6,849,714号;同第6,887,470号;同第6,887,849号;同第6,903,186号;同第7,022,674号;同第7,041,646号;同第7,084,243号;同第7,101,843号;同第7,138,486号;同第7,141,547号;同第7,144,863号;及び同第7,199,217号の各明細書参照)。GLP−1誘導体及び類似体の一例としては、SYNCRIA(登録商標)(GlaxoGroup Limited, Greenford, Middlesex, UK) (アルビグルチド)剤、タスポグルチド剤(Hoffmann-La Roche Inc.)、及びVICTOZA(登録商標)(Novo Nordisk A/S LTD, Bagsvaerd, DK)(リラグルチド)剤が挙げられる。従って、参照の便宜上、インスリン分泌促進活性を有するGLP−1誘導体及び類似体から成る群をまとめて「GLP−1」と呼ぶ。
【0081】
エキセンジン−3及びエキセンジン−4が当業者に知られている{Eng, J.他、J. Biol. Chem., 265:20259-62 (1990); Eng., J.他、J. Biol. Chem., 267:7402-05 (1992)}。2型糖尿病の治療及び高血糖の予防のためにエキセンジン−3及びエキセンジン−4を使用することが提案されている(例えば米国特許第5,424,286号明細書参照)。数多くのエキセンジン−4誘導体及び類似体(例えばエキセンジン−4アゴニストを含む)が当業者に知られている(例えば米国特許第5,424,286号;同第6,268,343号;同第6,329,336号;同第6,506,724号;同第6,514,500号;同第6,528,486号;同第6,593,295号;同第6,703,359号;同第6,706,689号;同第6,767,887号;同第6,821,949号;同第6,849,714号;同第6,858,576号;同第6,872,700号;同第6,887,470号;同第6,887,849号;同第6,924,264号;同第6,956,026号;同第6,989,366号;同第7,022,674号;同第7,041,646号;同第7,115,569号;同第7,138,375号;同第7,141,547号;同第7,153,825号;同第7,157,555号の各明細書参照)。エキセンジン誘導体及び類似体の一例はリキシセナチド(Sanofi-Aventis)である。エキセナチドはエキセンジン−4の合成バージョンである{Kolterman O. G.他、J. Clin. Endocrinol. Metab. 88(7): 3082-9 (2003)}。従って、参照の便宜上、エキセナチド、エキセンジン−4(例えばエキセンジン−4又はエキセンジン−4−アミド)、エキセンジン−4誘導体、及びエキセンジン−4類似体から成る群をまとめて「エキセナチド」と呼ぶ。
【0082】
PYYは36アミノ酸残基ペプチドアミドである。PYYは腸運動性及び血流を阻害し(Laburthe, M., Trends Endocrinol Metab. 1(3):168-74 (1990))を阻害し、腸内分泌を媒介し(Cox, H.M.他、Br J Pharmacol 101(2):247-52 (1990); Playford, R.J.,他、Lancet 335(8705): 1555-7 (1990))、そして正味吸収を刺激する(MacFayden, R.J.他、Neuropeptides 7(3):219-27 (1986))。PYY、並びに類似体及び誘導体の配列が当業者に知られている(例えば米国特許第5,574,010号明細書及び同第5,552,520号明細書)。
【0083】
オキシントモジュリンは、結腸内に見いだされる天然発生型の37アミノ酸ペプチド・ホルモンである。このホルモンは食欲を抑え、減量を容易にすることが判っている(Wynne K他、Int J Obes (Lond) 30(12): 1729-36(2006))。オキシントモジュリン、並びに類似体及び誘導体の配列が当業者に知られている(例えば米国特許公開第2005/0070469号明細書及び同第2006/0094652号明細書)。
【0084】
GIPはインスリン分泌促進ペプチド・ホルモンであり(Efendic, S.他、Horm Metab Res. 36: 742-6 (2004))、そして吸収された脂肪及び炭水化物に反応して十二指腸及び空腸の粘膜によって分泌され、このことが膵臓を刺激してインスリンを分泌させる。GIPは生物学的に活性の42アミノ酸タンパク質として循環する。GIPは胃抑制ペプチド及びグルコース依存性インスリン分泌促進ペプチドの両方として知られている。GIPは42−アミノ酸胃腸調節ペプチドであって、グルコースの存在において膵臓ベータ細胞からのインスリン分泌を刺激する(Tseng, C他、PNAS 90:1992-1996 (1993))。GIP、並びに類似体及び誘導体の配列が当業者に知られている(例えばMeier J.J., Diabetes Metab Res Rev. 21(2);91-117 (2005); Efendic S., Horm Metab Res. 36(11-12):742-6 (2004))。
【0085】
レプチンは、食欲及び代謝を含むエネルギー摂取及びエネルギー消費を調節する上で重要な役割を果たす16 kDaltonのタンパク質ホルモンである(Brennan他、Nat clin Pract Endocrinol Metab 2(6): 316-27 (2006))。レプチン・タンパク質(肥満(Ob)遺伝子によってコードされる)、類似体、及び誘導体は、哺乳類及びヒトを含む動物の体重及び脂肪過多症をコントロールするためのモジュレータとして使用するように提案されている。レプチン、並びにその類似体及び誘導体の配列が当業者に知られている(例えば米国特許第6,734,106号;同第6,777,388号;同第7,307,142号;及び同第7,112,659号の各明細書;国際公開第96/05309号パンフレット)。
【0086】
本発明の高濃度薬物粒子製剤を、インクレチン模倣体とインターフェロンとを使用して例証する(例1)。これらの例は限定的になることを意図するものではない。
【0087】
別の実施態様の場合、好ましい薬物は変性タンパク質を含む。変性タンパク質の一例としては、ハイブリッド・タンパク質(例えば2種又は3種以上のタンパク質又は2種又は3種以上の化学共役タンパク質のコード配列のインフレーム融合体)、タンパク質に結合された小分子(例えば治療用タンパク質に結合された標的部分、標的タンパク質に結合された治療小分子、治療用小分子と標的タンパク質と治療用タンパク質との組み合わせ)が挙げられる。ハイブリッド・タンパク質の一例としては、エキセナチド−PYY、オキシントモジュリン/PYY、モノクローナル抗体/細胞毒性タンパク質、アルブミン融合タンパク質(例えばGLP−1/アルブミン)、及びエキセナチド/オキシントモジュリン/PYYが挙げられる。タンパク質に結合された小分子の一例としては、モノクローナル抗体/細胞毒性薬物(例えばビンブラスチン、ビンクリスチン、ドキソルビシン、コルヒシン、アクチノマイシンD、エトポシド、タクソール、プロマイシン、及びグラミシジンD)が挙げられる。
【0088】
別の実施態様の場合、好ましい薬物は小分子を含む。本発明の実施に際して使用することができる薬物の一例としては、睡眠薬及び鎮静薬、例えばペントバルビタールナトリウム、フェノバルビタール、セコバルビタール、チオペンタール、ジエチルイソバレルアミド及びアルファ−ブロモ−イソバレリル尿素によって例示されるアミド及び尿素、ウレタン、又はジスルファン;複素環式睡眠薬、例えばジオキソピペリジン、及びグルタルイミド;抗うつ薬、例えばイソカルボキサジド、ニアラミド、フェネルジン、イミプラミン、トラニルシプロミン、パルギリン;トランキライザー、例えばクロロプロマジン、プロマジン、フルフェナジン、レセルピン、デセルピジン、メプロバメート、ベンゾジアゼピン、例えばクロルジアゼポキシド;抗痙攣薬、例えばプリミドン、ジフェニルヒダントイン、エトルトイン、フェネツリド、エトスクシミド;筋弛緩薬及び抗パーキンソン薬、例えばメフェネシン、メトカルボマル、トリヘキシルフェニジル、ビペリデン、L−ドーパ及びL−ベータ−3−4−ジヒドロキシフェニルアラニンとしても知られるlevo−ドーパ、鎮痛剤、例えばモルヒネ、コデイン、メペリジン、ナロルフィン;解熱薬及び抗炎症薬、例えばアスピリン、サリチルアミド、ナトリウムサリチルアミド、ナプロキシン、イブプロフェン;局部麻酔薬、例えばプロカイン、リドカイン、ネパイン、ピペロカイン、テトラカイン、ジブカイン;抗痙攣薬及び抗潰瘍薬、例えばアトロピン、スコポラミン、メトスコポラミン、オキシフェノニウム、パパベリン、プロスタグランジン、例えばPGE1、PGE2、PGE1alpha、PGE2alpha、PGA;抗菌薬、例えばペニシリン、テトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、クロロテトラサイクリン、クロラムフェニコール、スルホンアミド、テトラサイクリン、バシトラシン、クロロテトラサイクリン、エリトロマイシン、イソニアジド、リファムピン、エタムブトール、ピラジナミド、リファブチン、リファペンチン、サイクロセリン、エチオナミド、ストレプトマイシン、アミカシン/カナマイシン、カプレオマイシン、p−アミノサリチル酸、レボフロキサシン、モキシフロキサシン及びガチフロキサシン;抗マラリア薬、例えば4−アミノキノリン、8−アミノキノリン、ピリメタミン、クロロキン、スルファドキシン−ピリメタミン;メフロキン;アトバクオン−プログアニル;キニン;ドキシサイクリン;アルテミシニン(セスキテルペンラクトン)及び誘導体;抗リーシュマニア薬(例えばメグルミンアンチモニエート、ナトリウムスチボグルコネート、アンフォテリシン、ミルテフォシン、及びパロモマイシン);抗トリパノソーマ薬(例えばベンズニダゾール及びニフルチモックス);抗アメーバ症薬(例えばメトロニダゾール、チニダゾール、及びフロ酸ジロキサニド);抗原虫症薬(例えばエフロルニチン、フラゾリドン、メラルソプロール、メトロニダゾール、オルニダゾール、硫酸パロモマイシン、ペンタミジン、ピリメタミン及びチニダゾール);ホルモン剤、例えばプレドニゾロン、コルチゾン、コルチゾール及びトリアムシノロン、アンドロゲン性ステロイド(例えばメチルテストステロン、フルオクスメステロン)、エストロゲン性ステロイド(例えば17−ベータ−エストラジオール及びチニルエストラジオール)、プロゲステロン・ステロイド(例えば17−アルファ−ヒドロキシプロゲステロンアセテート、19−ノル−プロゲステロン、ノルエチンドロン);交感神経様薬、例えばエピネフリン、アンフェタミン、エフェドリン、ノルエピネフリン;心臓脈管薬、例えばプロカインアミド、硝酸アミル、ニトログリセリン、ジピリダモール、硝酸ナトリウム、硝酸マンニトール;利尿薬、例えばアセタゾールアミド、クロロチアジド、フルメチアジド;抗寄生虫薬、例えばベフェニウムヒドロキシナフトエート、ジクロロフェン、エニタバス、ダプソーン;新生物薬、例えばメクロロエタミン、ウラシルマスタード、5−フルオロウラシル、6−チオグアニン及びプロカルバジン;低血糖症薬、例えばインスリン関連化合物(例えばイソファン・インスリン懸濁液、プロタミン亜鉛インスリン懸濁液、グロビン亜鉛インスリン、持続型インスリン亜鉛懸濁液)、トルブタミド、アセトヘキサミド、トラザミド、クロルプロプアミド;栄養剤、例えばビタミン、必須アミノ酸、及び必須脂肪;眼薬、例えばピロカルピン塩基、塩酸ピロカルピン、硝酸ピロカルピン;抗ウイルス薬、例えばフマル酸ジソプロキシル、アシクロビル、シドフォビル、ドコサノール、ファムシクロビル、フォミビルセン、フォスカルネット、ガンシクロビル、イドクスリジン、ペンシクロビル、トリフルリジン、トロマンタジン、バラシクロビル、バルガンシクロビル、ビダラビン、アマンタジン、アルビドール、オセルタミビル、ペラミビル、リマンタジン、ザナミビル、アバカビル、ジダノシン、エムトリシタビン、ラミブジン、スタブジン、ザルシタビン、ジドブジン、テノフォビル、エファビレンツ、デラビルジン、ネビラピン、ロビリド、アンプレナビル、アタザナビル、ダルナビル、フォサムプレナビル、インジナビル、ロピナビル、ネルフィナビル、リトナビル、サキナビル、チプラナビル、エンフビルチド、アデフォビル、フォミビルセン、イミキモド、イノシン、ポドフィルロトキシン、リバビリン、ビラミジン、ウイルス表面タンパク質又はウイルス受容体を特異的に標的とする融合ブロッカー{例えばgp−41阻害薬(T−20)、CCR−5阻害薬};制嘔吐薬、例えばスコポラミン、ジメンヒドリネート;ヨードクスリジン、ヒドロコルチゾン、エセリン、ホスホリン、ヨウ化物、並びにその他の有益な薬物が挙げられる。
【0089】
本発明の1実施態様の場合、本発明の高濃度薬物粒子製剤中にステロイド(例えばテストステロン、デヒドロエピアンドロステロン、アンドロステンジオン、アンドロステンジオール、アンドロステロン、ジヒドロテストステロン、エストロゲン、プロゲステロン、プレドニゾロン、プレグネノロン、エストラジオール、エストリオール、エストロン、及びこれらの混合物が組み込まれる。
【0090】
本発明の高濃度薬物粒子製剤中には種々の形態の上記薬物を使用することができる。これらの形態の一例としては、非荷電分子;分子錯体の成分;及び薬理的に許容し得る塩、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、ラウリン酸塩、パルミチン酸塩、リン酸塩、硝酸塩、ホウ酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸、オレイン酸塩、又はサリチル酸塩が挙げられる。酸性の薬物の場合、金属、アミン、又は有機カチオン、例えば第四アンモニウムの塩を採用することができる。さらに、薬物の単純な誘導体、例えば、本発明の目的に適した溶解特性を有するエステル、エーテル、及びアミドなどをここで使用することもできる。
【0091】
別の実施態様の場合、小分子の組み合わせを本発明の高濃度薬物粒子製剤中に組み込むことができる。1又は複数のこのような小分子を、本発明の1又は複数の高濃度薬物粒子製剤中に個別に組み込み、そして個別に又は組み合わせて使用することができる。別の例として、2つ又は3つ以上の小分子を接合し、そして合体した小分子を、本発明の高濃度薬物粒子製剤として製剤することができる(例えばfolate-conjugated Vinca alkaloids; Reddy他、Cancer Res. 67(9):4434-442 (2007))。
【0092】
本発明の高濃度薬物粒子製剤は、製薬送達のための種々の投与形態、例えば溶液、分散体、ペースト、クリーム、粒子、顆粒、錠剤、エマルジョン、懸濁液、及び粉末などの形態で含むことができる。1又は複数の薬物に加えて、薬物製剤は任意には、製薬的に許容し得るキャリア及び/又は追加成分、例えば抗酸化剤、安定剤、緩衝剤、及び透過促進剤を含んでいてよい。好ましい実施態様の場合、本発明の高濃度薬物粒子製剤は、浸透圧送達装置内で使用するための懸濁製剤を形成するために使用される。
【0093】
当業者に知られている上記薬物及びその他の薬物は、種々の疾患及び状態、例えば慢性疼痛、血友病及びその他の血液疾患、内分泌障害、成長異常、代謝障害、リウマチ障害、糖尿病(2型糖尿病を含む)、白血病、肝炎、腎不全、感染症{細菌感染、ウイルス感染(例えばヒト免疫不全ウイルスによる感染症、C型肝炎、B型肝炎、黄熱病、西ナイル病、デング熱、マールブルク病、エボラ病など)、及び寄生虫感染症を含む}、遺伝病(例えばセレブロシド欠損症及びアデノシンデアミナーゼ欠損症)、高血圧症、敗血症ショック、自己免疫疾患(例えばグレーブス病、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、及び関節リウマチ)、ショック・消耗病、嚢胞性線維症、乳糖不耐症、クローン病、炎症性腸疾患、消化管癌(結腸癌及び直腸癌を含む)、乳癌、白血病、肺癌、膀胱癌、腎臓癌、非ホジキン・リンパ腫、膵臓癌、甲状腺癌、子宮内膜癌、前立腺癌、及びその他の癌を治療する方法において有用である。さらに、上記薬剤のうちのいくつかは、例えば結核、マラリア、リーシュマニア、トリパノソーマ(睡眠病及びシャーガス病を含む)、及び寄生虫を含む、長期治療を必要とする感染症を治療するのに有用である。
【0094】
高濃度薬物粒子製剤中の薬物の量は、送達部位に所望の治療結果を達成するように治療上有効量の薬剤を送達するために必要な量である。具体的には、このような量は、例えば具体的な薬剤、送達部位、状態の重症度、及び所望の治療効果のような変数に応じて変化することになる。有効薬剤及びこれらの投与単位量は、Goodman & GilmanのThe Pharmacological Basis of Therapeutics, 11th Ed., (2005), McGraw Hill; RemingtonのPharmaceutical Sciences, 18th Ed., (1995), Mack Publishing Co.;及びMartinのPhysical Pharmacy and Pharmaceutical Sciences, 1.00 edition (2005), Lippincott Williams & Wilkinsにおいて当業者に知られている。典型的には、浸透圧送達システムの場合、薬物製剤を含むチャンバの容積は、約100μl〜約1000μl、より好ましくは約140μl〜約200μlである。1実施態様の場合、薬物製剤を含むチャンバの容積は約150μlである。
【0095】
本発明の高濃度薬物粒子製剤は送達温度では、少なくとも1か月間、少なくとも1.5か月間、好ましくは少なくとも3か月間、好ましくは少なくとも6か月間、より好ましくは少なくとも9か月間、より好ましくは少なくとも12か月間にわたって、化学的物理的に安定していることが好ましい。送達温度は典型的には正常なヒトの体温、例えば約37℃、又はこれより僅かに高い温度、例えば約40℃である。さらに、本発明の高濃度薬物粒子製剤は貯蔵温度では、少なくとも3か月間、好ましくは少なくとも6か月間、より好ましくは少なくとも12か月間にわたって化学的物理的に安定していることが好ましい。貯蔵温度の例は、冷蔵温度、例えば約5℃、又は室温、例えば約25℃である。
【0096】
送達温度では約3か月後、好ましくは約6か月後、そして好ましくは約12か月後、また貯蔵温度では約6か月後、約12か月後、そして好ましくは約24か月後に、薬物粒子の分解産物が形成される比率が約25%未満、好ましくは約20%未満、より好ましくは約15%未満、より好ましくは約10%未満、そしてより好ましくは約5%未満であるならば、高濃度薬物粒子製剤は化学的に安定であると考えることができる。
【0097】
送達温度では約3か月後、好ましくは約6か月後、また貯蔵温度では約6か月後、好ましくは約12か月後に、薬物の凝集体が形成される比率が約10%未満、好ましくは約5%未満、より好ましくは約3%未満、より好ましくは約1%未満であるならば、高濃度薬物粒子製剤は物理的に安定であると考えることができる。
【0098】
例3Aは、本発明の高濃度薬物粒子製剤の安定性に関連する模範データを示している。
【0099】
高濃度薬物粒子製剤中の薬物がタンパク質である場合、タンパク質溶液は凍結状態で維持され、固形状態に凍結乾燥又は噴霧乾燥させられる。Tg(ガラス転移温度)が、タンパク質の安定な組成を達成する上で考慮すべき1つの因子となり得る。特定の理論に縛られようとするものではないが、ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質を安定化するために高Tg非晶質固体を形成するという理論が製薬業界では活用されている。一般に、非晶質固形物のTgが100℃のようにより高いならば、タンパク質は室温又は40℃で貯蔵されているときには、移動度を有することはない。なぜならば貯蔵温度がTgを下回っているからである。分子情報を用いた計算によれば、ガラス転移温度が50℃の貯蔵温度を上回る場合、分子の移動度がゼロであることが示されている。分子のゼロ移動度はより良好な安定性と相関する。Tgは、生成物製剤中の水分レベルにも依存する。一般に、水分が多ければ多いほど、組成物のTgは低くなる。
【0100】
従って、本発明のいくつかの態様において、安定性を改善するためにタンパク質製剤中に、Tgがより高い賦形剤、例えばスクロース(Tg=75℃)及びトレハロース(Tg=110℃)が含まれてよい。好ましくは、噴霧乾燥、凍結乾燥、乾燥、フリーズドライ、粉砕、顆粒化、超音波ドロップ形成、結晶化、析出、又は成分の混合物から粒子を形成するために当業者において利用可能な他の技術のような方法を用いて、粒子製剤を粒子として形成することができる。粒子の形状及びサイズは実質的に均一であることが好ましい。
【0101】
典型的な噴霧乾燥法は例えば、小分子又はタンパク質、例えばインクレチン模倣体(例えばエキセナチド;例1)、及び安定化賦形剤を含有する噴霧溶液を、試料チャンバ内に充填することを含んでよい。試料チャンバを典型的には所望の温度、例えば冷蔵温度から室温までの温度で維持する。溶液、エマルジョン、又は懸濁液を噴霧乾燥器に導入し、ここで流体を霧化して液滴にする。回転アトマイザー、圧力ノズル、空気圧ノズル、又はソニックノズルを使用して液滴を形成することもできる。液滴から成るミストを直ちに乾燥チャンバ内の乾燥ガスと接触させる。乾燥ガスは液滴から溶媒を除去し、そして粒子を収集チャンバ内に運ぶ。噴霧乾燥に際して、収量に影響を及ぼし得る因子の一例としては、粒子上の局在化電荷(これらは噴霧乾燥器に対する粒子の付着を促進し得る)、及び粒子の空気力学特性(粒子を収集するのを難しくするおそれがある)が挙げられる。一般に、噴霧乾燥法の収量は粒子製剤に一部依存する。
【0102】
本発明の1実施態様において、粒子は、植え込み型浸透圧送達装置を介して送達できるようにサイズ設定される。粒子の均一な形状及びサイズは典型的には、このような送達装置からの一貫した均一な放出速度を提供するのを助ける。しかしながら、非正規粒径分布プロフィールを有する粒子製剤を使用してもよい。例えば、送達オリフィスを有する典型的な植え込み型浸透圧送達装置内で、粒径は送達オリフィスの直径約30%未満、より好ましくは約20%未満、より好ましくは約10%未満である。インプラントの送達オリフィス直径が約0.5mmである浸透圧送達システムと一緒に使用するための粒子製剤の実施態様の場合、粒径は例えば、約150ミクロン未満〜約50ミクロンであってよい。インプラントの送達オリフィス直径が約0.1mmである浸透圧送達システムと一緒に使用するための粒子製剤の実施態様の場合、粒径は例えば、約30ミクロン未満〜約10ミクロンであってよい。1実施態様の場合、オリフィスは約0.25mm(250ミクロン)であり、粒径は約2ミクロン〜約5ミクロンである。
【0103】
典型的には、本発明の粒子製剤の粒子は、これが懸濁液中に組み込まれているときには、送達温度では、約3か月未満では沈降せず、好ましくは約6か月未満では沈降せず、より好ましくは約12か月未満では沈降せず、より好ましくは約24か月未満では沈降せず、最も好ましくは約36か月未満では沈降しない。懸濁ビヒクルの粘度は典型的には、約5,000〜約30,000ポアズ、好ましくは約8,000〜約25,000ポアズ、より好ましくは約10,000〜約20,000ポアズである。1実施態様の場合、懸濁ビヒクルの粘度は、約15,000ポアズ±約3,000である。一般的に言えば、粒子が小さければ小さいほど、粘性の懸濁ビヒクル中の沈降速度は、大きい粒子よりも低い傾向がある。従って、ミクロンからナノのサイズの粒子が典型的には望ましい。シミュレーション・モデリング研究に基づいて、粘性懸濁製剤中では、本発明の約2ミクロンから約10ミクロンまでの粒子は、室温では少なくとも20年間にわたって沈降しないと予想される。植え込み型浸透圧送達装置内で使用するための本発明の粒子製剤の実施態様において、粒子製剤の粒径は、約50ミクロン未満、より好ましくは約10ミクロン未満、より好ましくは約2〜約7ミクロンである。
【0104】
1実施態様の場合、本発明の高濃度薬物粒子製剤は、上述のような1又は複数の薬物と、1又は複数の追加成分(例えば1又は複数の安定剤)とを含む。安定剤は例えば、炭水化物、抗酸化剤、アミノ酸、緩衝剤、無機化合物、又は界面活性剤であってよい。粒子製剤中の安定剤及び緩衝剤の量は、安定剤及び緩衝剤の活性、並びに製剤の所望の特性に基づいて実験的に決定することができる。典型的には、製剤中の炭水化物の量は、凝集との関連によって決定される。一般に、炭水化物レベルは、薬物に結合されていない過剰の炭水化物に起因して水の存在において結晶成長を促進するのを回避するように、過度に高くあるべきではない。典型的には、製剤中の抗酸化剤の量は、酸化との関連によって決定されるのに対して、製剤中のアミノ酸の量は、酸化との関連によって、且つ/又は噴霧乾燥中の粒子の成形性によって決定される。典型的には、製剤中の緩衝剤の量は、前処理との関連、安定性との関連、及び噴霧乾燥中の粒子の成形性によって決定される。緩衝剤は、処理中、例えば溶液調製中及び噴霧乾燥中、全ての賦形剤が可溶化されるときに、薬物を安定化するために必要とされることがある。
【0105】
粒子製剤中に含まれてよい炭水化物の一例としては、単糖類(例えばフルクトース、マルトース、ガラクトース、グルコース、D−マンノース、及びソルボース)、二糖類(例えばラクトース、スクロース、トレハロース、及びセロビオース)、多糖類(例えばラフィノース、メレジトース、マルトデキストリン、デキストラン、及び澱粉)、及びアルジトール(非環式ポリオール;例えばマンニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、キシリトールソルビトール、ピラノシルソルビトール、及びミオイノシトール)が挙げられる。好ましい炭水化物は、二糖類及び/又は非還元糖、例えばスクロース、トレハロース、及びラフィノースを含む。
【0106】
粒子製剤中に含まれてよい抗酸化剤の一例としては、メチオニン、アスコルビン酸、チオ硫酸ナトリウム、カタラーゼ、白金、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、クエン酸、システイン、チオグリセロール、チオグリコール酸、チオソルビトール、ブチル化ヒドロキサニゾール、ブチル化ヒドロキシルトルエン、及び没食子酸プロピルが挙げられる。さらに、容易に酸化するアミノ酸、例えばシステイン、メチオニン、及びトリプトファンを、抗酸化剤として使用することができる。好ましい抗酸化剤はメチオニンである。
【0107】
粒子製剤中に含まれてよいアミノ酸の一例としては、アルギニン、メチオニン、グリシン、ヒスチジン、アラニン、L−ロイシン、グルタミン酸、イソ−ロイシン、L−トレオニン、2−フェニルアミン、バリン、ノルバリン、プラリン、フェニルアラニン、トリプトファン、セリン、アスパラギン、システイン、チロシン、リシン、及びノルロイシンが挙げられる。好ましいアミノ酸は、容易に酸化するアミノ酸、例えばシステイン、メチオニン、及びトリプトファンを含む。
【0108】
粒子製剤中に含まれてよい緩衝剤の一例としては、クエン酸塩、ヒスチジン、琥珀酸塩、リン酸塩、マレイン酸塩、トリス、酢酸塩、炭水化物、及びgly−glyが挙げられる。好ましい緩衝剤は、クエン酸塩、ヒスチジン、琥珀酸塩、及びトリスを含む。
【0109】
粒子製剤中に含まれてよい無機化合物の一例としては、NaCl、Na2SO4、NaHCO3、KCl、KH2PO4、CaCl2及びMgCl2が挙げられる。
【0110】
加えて、粒子製剤は他の賦形剤、例えば界面活性剤及び塩を含んでいてよい。界面活性剤の一例としては、Polysorbate 20、Polysorbate 80、PLURONIC(登録商標)(BASF Corporation, Mount Olive, NJ) F68、及びドデシル硫酸ナトリウム(SDS)が挙げられる。塩の一例としては、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、及び塩化マグネシウムが挙げられる。
【0111】
粒子製剤中に含まれる全ての成分は、哺乳動物、具体的にはヒトにおける医薬用途のために典型的に許容し得るものである。
【0112】
下記表1は、タンパク質を含む粒子に対応する粒子製剤組成範囲の例を示している(範囲値は例えば「範囲」欄において概算値であり、タンパク質は約25wt%〜約80wt%で存在する)。好ましい実施態様はタンパク質を含むものの、いくつかの実施態様では、例えば、タンパク質と炭水化物だけ;タンパク質と抗酸化剤だけ;タンパク質と緩衝剤だけ;タンパク質と炭水化物と抗酸化剤だけ;タンパク質と炭水化物と緩衝剤だけ;タンパク質と抗酸化剤と緩衝剤だけを含んでいてよく、この場合タンパク質のwt%範囲は表1に示され、残りのwt%範囲は、選択された追加成分によって形成される。従って、いくつかの実施態様の場合、粒子製剤は、選択された成分を含んでいてよく、そして他の実施態様の場合には、粒子製剤は本質的に、選択された成分から成っていてよい。さらに上述のように、本発明の粒子製剤は更なる賦形剤及び/又は安定剤を含んでいてもよい。本発明の好ましい実施態様は本質的に、表1に示された概算wt%範囲のタンパク質と、選択された安定剤(例えば炭水化物及び/又は抗酸化剤及び/又はアミノ酸及び/又は緩衝剤、並びにこれらの組み合わせ)とから成ることにより、総wt%を本質的に100%にする。小分子を本明細書中に記載したように製剤することもできる。選択された小分子のwt%は、タンパク質に関して表1に示したものと同じ範囲にあるのが典型的である。
【0113】
【表1】

【0114】
懸濁製剤中のいくつかの好ましい粒子ロードレベルは、約40%未満、約30%未満、約20%未満、及び約10%未満であり、典型的には、懸濁製剤中の下位粒子ロードレベルは、約0.1%超、約1%超、及び好ましくは約5%超である。本発明の高濃度薬物粒子製剤のいくつかの模範的な実施態様が例1に示されている。ここでは薬物はタンパク質である。
【0115】
下記表2は、インクレチン模倣体、例えばグルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、GLP−1の誘導体{例えばGLP−1(7−36)アミド}、又はGLP−1の類似体、エキセナチド、エキセナチドの誘導体、エキセナチドの類似体を含む粒子に対応する粒子製剤組成範囲の例を示している。表1に関して説明した特定の実施態様の記述は、表2に記載した製剤にも当てはまる。
【0116】
【表2】

【0117】
粒子製剤の成分に対応するこれらの重量パーセント範囲内で、いくつかの好ましい成分比は次の通りである:薬物と1又は複数の追加成分(例えば安定剤)との比1:4、1:3、1:2、1:1、2:1、2.5:1、5:1、10:1、16:1、及び20:1、好ましくは約1:4〜10:1(すなわち約1〜10:4〜1)、又は好ましくは約1:3〜5:1(すなわち約1〜5:3〜1)。本発明はまた、薬物と追加成分(例えば安定剤)とのこれらの比の全てに相当する範囲、例えば約1:1〜2:1(すなわち1〜2:1)、約1:4〜約20:1(すなわち1〜20:4〜1)、約1:4〜約16:1(すなわち1〜16:4〜1)、約1:3〜約10:1(すなわち1〜10:3〜1)、及び約1:2〜約20:1(すなわち1〜20:2〜1)などを含んでいる。
【0118】
従って、1つの態様において、本発明は約25wt%〜約80wt%、好ましくは約40wt%〜約75wt%の薬物と、約75wt%〜約20wt%、好ましくは約60wt%〜約25wt%の1又は複数の追加成分、例えば抗酸化剤と炭水化物と緩衝剤とから成る群から選択された安定剤とを含む粒子製剤を含んでいる。薬物:抗酸化剤:炭水化物:緩衝剤の比は約2〜20:1〜5:1〜5:1〜10、好ましくは約5〜10:1〜2.5:1〜2.5:1〜5である。典型的には、本発明の粒子製剤の残留水分は約10wt%未満、好ましくは約5wt%未満である。
【0119】
本発明の粒子製剤の一例としては、薬物としてのタンパク質、抗酸化剤としてのメチオニン、炭水化物としてのスクロース、及び緩衝剤としてのクエン酸塩が挙げられる。タンパク質は粒子製剤の約40wt%〜約70wt%を占め、タンパク質と追加成分との比は約1:2〜3:1(すなわち約1〜3:2〜1)である。下で例証する特定のタンパク質はインターフェロンとインクレチン模倣体とを含む(例1)。
【0120】
要約すると、選択された薬物又は薬物の組み合わせを製剤することにより、固体状態の乾燥粉末にする。このような粉末は薬物の最大限の化学的生物学的安定性を維持する。粒子製剤は高温における長期貯蔵安定性を提供し、ひいては、安定であり生物学的に効果的な薬物を長期にわたって患者に送達するのを可能にする。1実施態様の場合、本発明の高濃度薬物粒子製剤中のペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質は、冷蔵又は凍結を必要とすることなしに、輸送及び/又は貯蔵の際に安定である。本発明の高濃度薬物粒子製剤によって安定化されないと、ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質は、輸送及び/又は貯蔵に際して不安定であり、或いは、輸送及び貯蔵のために低温又は凍結状態を必要とする場合がある。例えば、高濃度薬物粒子製剤は滅菌バイアル又はアンプル内に入れられる。使用時には、本発明の粒子製剤を例えば注射用の水で素早く戻すことにより、ボーラス注射を患者に施す直前に高濃度水溶液を生成することができる。
【0121】
乾燥粒子粉末の粒径分布は、例えば粒子製剤を調製するために噴霧乾燥法又は凍結乾燥法を用いることにより、良好に制御することができる(0.1ミクロン〜20ミクロン)。乾燥粉末を形成するためのプロセス・パラメータは、所望の粒径分布、密度、及び表面積を有する粒子を製造するために最適である。
【0122】
高濃度薬物粒子製剤中の選択された賦形剤及び緩衝剤は、例えば次の機能を提供することができる:乾燥粉末の密度変更;薬物化学的安定性の維持;薬物の物理的安定性の維持(例えば高いガラス転移温度、及び相間転移の回避);懸濁液中の均質な分散体の生成;選択された溶媒中の乾燥粉末溶解性を操作するための、疎水性及び/又は親水性の変更:及び処理中のpHの操作及び製品におけるpHの維持(溶解性及び安定性のため)。
【0123】
3.2.0 ビヒクル製剤及び懸濁製剤
本発明の1態様において、懸濁ビヒクルは、高濃度薬物粒子製剤が分散される安定な環境を提供する。高濃度薬物粒子製剤は、(上記のように)懸濁ビヒクル中で化学的物理的に安定である。懸濁ビヒクルは典型的には、1又は複数のポリマーと1又は複数の溶媒とを含み、これらは薬物を含む粒子を均一に懸濁させるのに十分な粘度の溶液を形成する。懸濁ビヒクルは、例えば界面活性剤、抗酸化剤、及び/又はビヒクル中に可溶性のその他の化合物を含む更なる成分を含んでいてよい。
【0124】
懸濁ビヒクルの粘度は典型的には、高濃度薬物粒子製剤が貯蔵中に沈降するのを防止し、そして送達法において、例えば植え込み型薬物送達装置内に使用するのに十分である。懸濁ビヒクルは、懸濁ビヒクルが生物学的環境に反応して所定の期間にわたって崩壊又は分解するという点において生分解性であるのに対して、高濃度薬物粒子製剤は生物学的環境中で溶解され、粒子中の活性医薬成分が吸収される。
【0125】
ポリマーが溶解される溶媒は、懸濁製剤の特徴、例えば貯蔵中の高濃度薬物粒子製剤の挙動に影響を与え得る。結果として生じる懸濁ビヒクルが、水性環境と接触すると相分離を呈するように、ポリマーとの組み合わせにおいて溶媒を選択することができる。本発明のいくつかの実施態様の場合、溶媒は、結果として生じる懸濁ビヒクルが、水分約10%未満の水性環境と接触すると相分離を呈するように、ポリマーとの組み合わせにおいて溶媒を選択することができる。
【0126】
溶媒は、水と不混和性の許容し得る溶媒であってよい。溶媒は、ポリマーが高濃度で、例えば約30%を上回るポリマー濃度で、溶媒中に可溶性であるように選択することもできる。本発明の実施に際して有用な溶媒の一例としては、ラウリルアルコール、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール、乳酸ラウリル、デカノール(デシルアルコールとも呼ばれる)、乳酸エチルヘキシル、及び長鎖(C8−C24)脂肪族アルコール、エステル、及びこれらの混合物が挙げられる。懸濁ビヒクル中に使用される溶媒は、含水率が低いという点で「ドライ」であってよい。懸濁ビヒクルの製剤において使用するのに好ましい溶媒は、乳酸ラウリル、ラウリルアルコール、安息香酸ベンジル、及びこれらの混合物を含む。
【0127】
本発明の懸濁ビヒクルの製剤のためのポリマーの一例としては、ポリエステル(ポリ乳酸又はポリ乳酸ポリグリコール酸);分子量がほぼ2,000〜ほぼ1,000,000のピロリドンを含むポリマー{例えばポリビニルピロリドン(PVP)};不飽和アルコールのエステル又はエーテル(例えば酢酸ビニル);ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン・ブロックコポリマー;又はこれらの混合物が挙げられる。1実施態様の場合、ポリマーは分子量2,000〜1,000,000のPVPである。好ましい実施態様の場合、ポリマーは、ポリビニルピロリドンK−17(概算平均分子量7,900〜10,800)である。ポリビニルピロリドンは、粘度指数であるそのK値(例えばK−17)によって特徴づけることができる。懸濁ビヒクル中に使用されるポリマーは、1又は複数の異なるポリマーを含んでいてよく、或いは単一ポリマーの異なる等級を含んでいてもよい。懸濁ビヒクル中に使用されるポリマーは、ドライであるか又は低い含水率を有していてもよい。
【0128】
一般的に言えば、本発明による懸濁ビヒクルは、所望の性能特徴に基づいて組成が変化してよい。1実施態様の場合、懸濁ビヒクルは、約40wt%〜約80wt%のポリマーと、約20wt%〜約60wt%の溶媒とを含んでいてよい。懸濁ビヒクルの好ましい実施態様は、下記比、すなわち約25wt%の溶媒と約75wt%のポリマー;約50wt%の溶媒と約50wt%のポリマー;及び約75wt%の溶媒と約25wt%のポリマーの比で組み合わされたポリマーと溶媒とから形成されたビヒクルを含む。従って、いくつかの実施態様の場合、懸濁ビヒクルは、選択された成分を含んでいてよく、他の実施態様においては、本質的に、選択された成分から成っていてよい。
【0129】
懸濁ビヒクルはニュートン挙動を呈することがある。懸濁ビヒクルは典型的には、所定の期間にわたって粒子製剤の均一な分散を維持する粘度を提供するように製剤される。このことは、高濃度薬物粒子製剤中に含有される薬物の制御された送達を可能にするように調整された懸濁製剤を形成するのを容易にする。懸濁ビヒクルの粘度は、所望の用途、粒子製剤のサイズ及びタイプ、及び懸濁ビヒクル中の粒子製剤のローディング率に応じて変化してよい。懸濁ビヒクルの粘度は、使用される溶媒又はポリマーのタイプ又は相対量を変更することにより変えることができる。
【0130】
懸濁ビヒクルの粘度は、約100ポアズ〜約1,000,000ポアズ、好ましくは約1,000〜約1,00,000ポアズであってよい。好ましい実施態様の場合、懸濁ビヒクルの33℃における典型的な粘度は、約5,000〜約30,000ポアズ、好ましくは約8,000〜約25,000ポアズ、より好ましくは約10,000〜約20,000ポアズである。1実施態様の場合、懸濁ビヒクルの粘度は、33℃で約15,000ポアズ±約3,000ポアズである。粘度は、平行板レオメータを使用して、剪断速度10-4/秒で、33℃で測定することができる。
【0131】
懸濁ビヒクルは、水性環境と接触すると相分離を呈することができるが、しかし典型的には、懸濁ビヒクルは温度の関数としては相分離をほとんど呈することはない。例えば、ほぼ0℃〜ほぼ70℃の温度で、温度サイクル時、例えば4℃から37℃へ、37℃から4℃へのサイクル時には、懸濁ビヒクルは相分離を呈さないのが典型的である。
【0132】
懸濁ビヒクルは、乾燥条件下、例えばドライボックス内でポリマーと溶媒とを合体させることにより調製することができる。ポリマー及び溶媒は、高温で、例えばほぼ40℃〜ほぼ70℃の温度で合体させ、そして液化して単一相を形成するようにしておくことができる。成分を真空下でブレンドすることにより、乾燥成分から生成された気泡を除去することができる。成分は、ほぼ40rpmの速度で設定されたコンベンショナルなミキサー、例えば二重螺旋ブレードミキサー又は同様のミキサーを使用して合体させてよい。しかしながら、より高い速度を用いて成分を混合することもできる。成分の溶液が得られたら、懸濁ビヒクルを室温まで冷却してよい。示差走査熱量計(DSC)を使用することにより、懸濁ビヒクルが単一相であることを検証することができる。さらに、ビヒクルの成分(例えば溶媒及び/又はポリマー)を、過酸化物を実質的に低減するか又は実質的に除去するように処理してもよい(例えばメチオニンによる処理;例えば米国特許出願公開第2007/0027105号明細書参照)。
【0133】
懸濁ビヒクルに高濃度薬物粒子製剤を添加することにより、懸濁製剤を形成する。いくつかの実施態様では、懸濁製剤は、高濃度薬物粒子製剤と懸濁ビヒクルとを含み、また他の実施態様では、高濃度薬物粒子製剤と懸濁ビヒクルとから成っていてよい。
【0134】
懸濁製剤は、粒子製剤を懸濁ビヒクル中に分散することにより調製することができる。懸濁ビヒクルを加熱し、乾燥条件下で懸濁ビヒクルに粒子製剤を添加することができる。成分は高温で、例えばほぼ40℃〜ほぼ70℃の温度で、真空下で混合してよい。成分は、懸濁ビヒクル中に粒子製剤の均一な分散を得るのに十分な速度、例えば約40rpm〜約120rpmで、また十分な時間、例えば約15分間にわたって混合してよい。ミキサーは、二重螺旋ブレードミキサー又はその他の好適なミキサーであってよい。結果として生じた混合物はミキサーから取り出し、水が懸濁製剤を汚染するのを防止するために乾燥容器内に密閉し、そして更なる使用の前、例えば植え込み型薬物送達装置、投与単位容器、又は複数回投与用容器内に充填する前に室温まで冷却させておいてよい。
【0135】
懸濁製剤の典型的な総含水率は、約10wt%未満、好ましくは約5wt%未満であり、より好ましくは約4wt%未満である。
【0136】
インクレチン模倣体及びインターフェロンを参照しながら本発明の懸濁製剤を下記に例証する(例2)。さらに、生体適合性、単一相、及び非水性であるビヒクル中に懸濁された薬物粒子製剤の安定性について例3Bで説明する。これらの例は限定的であることを意図してはいない。
【0137】
要約すると、懸濁ビヒクルの成分は生体適合性を提供する。懸濁ビヒクルの成分は、高濃度薬物粒子製剤の安定な懸濁液を形成するのに適した化学物理特性をもたらす。これらの特性の一例としては、懸濁液の粘度;ビヒクルの純度、ビヒクルの残留水分;ビヒクルの密度;乾燥粉末との適合性;植え込み型装置との適合性;ポリマーの分子量;ビヒクルの安定性;及びビヒクルの疎水性及び親水性が挙げられる。これらの特性は、例えばビヒクル組成を変えること、及び懸濁ビヒクル中に使用される成分の比を操作することによって操作して制御することができる。
【0138】
4.0.0 懸濁製剤の送達
本明細書中に記載された懸濁製剤を植え込み型薬物送達装置内に使用することにより、長期にわたって、例えば数週間、数か月、又は最大約1年、例えば少なくとも約1か月、少なくとも約1.5か月、好ましくは少なくとも約3か月、好ましくは少なくとも約6か月、より好ましくは少なくとも約9か月、より好ましくは少なくとも約12か月にわたって化合物の持続的な送達を可能にすることができる。このような植え込み型薬物送達装置は典型的には、所望の期間にわたって所望の流量で化合物を送達することができる。懸濁製剤はコンベンショナルな技術によって、植え込み型薬物送達装置内にローディングされてよい。
【0139】
懸濁製剤は、例えば浸透圧的、機械的、電気機械的、又は化学的に駆動される薬物送達装置を使用して送達されてよい。高濃度薬物粒子製剤は、薬物による治療を必要としている患者に治療上効果的な薬物を送達する流量で送達される。
【0140】
薬物は、約1週間〜約1年以上、好ましくは約1か月〜約1年以上、より好ましくは約3か月〜約1年以上にわたって送達されてよい。植え込み型薬物送達装置は、薬物が送達される際に通る少なくとも1つのオリフィスを有するリザーバを含んでいてよい。懸濁製剤はリザーバ内部に貯蔵されてよい。1実施態様の場合、植え込み型薬物送達装置は浸透圧送達装置であり、薬物の送達は浸透圧によって駆動される。いくつかの浸透圧送達装置及びこれらの構成部分、例えばDUROS(登録商標)送達装置又は類似の装置が記載されている(例えば米国特許第5,609,885号;同第5,728,396号;同第5,985,305号;同第5,997,527号;同第6,113,938号;同第6,132,420号;同第6,156,331号;同第6,217,906号;同第6,261,584号;同第6,270,787号;同第6,287,295号;同第6,375,978号;同第6,395,292号;同第6,508,808号;同第6,544,252号;同第6,635,268号;同第6,682,522号;同第6,923,800号;同第6,939,556号;同第6,976,981号;同第6,997,922号;同第7,014,636号;同第7,207,982号;同第7,112,335号;同第7,163,688号;米国特許出願公開第2005/0175701号、同第2007/0281024号、及び同第2008/0091176号の各明細書参照)。
【0141】
DUROS(登録商標)送達装置は典型的には、浸透圧エンジン、ピストン、及び薬物製剤を含有する円筒形のリザーバから成っている。リザーバは一方の端部で、制御された速度の半透膜によってキャッピングされており、そして他方の端部で、薬物製剤が薬物リザーバから放出される際に通る拡散モデレータによってキャッピングされている。ピストンは薬物製剤を浸透圧エンジンから隔離し、そしてシール部材を利用することにより、浸透圧エンジン区画内の水が薬物リザーバに入るのを防ぐ。拡散モデレータは、薬物製剤との関連において、体液がオリフィスを通って薬物リザーバに入るのを防止するように構成されている。
【0142】
DUROS(登録商標)装置は、浸透圧原理に基づいて所定の速度で薬物を放出する。細胞外液が半透膜を通ってDUROS(登録商標)装置の塩エンジン内に直接に入る。浸透圧エンジンは拡張することにより、遅く一貫した移動速度でピストンを動かす。ピストンの運動は、オリフィス又は出口ポートを通って薬物製剤が強制的に所定の剪断速度で放出されるようにする。本発明の1実施態様の場合、DUROS(登録商標)装置のリザーバには、高濃度薬物粒子製剤を含む本発明の懸濁製剤をローディングし、装置は、長期(例えば約1か月、約3か月、約6か月、又は約12か月)にわたって、所定の治療上効果的な送達速度で、懸濁製剤を患者に送達することができる。
【0143】
植え込み型装置、例えばDUROS(登録商標)装置は、高濃度薬物粒子製剤を投与する上での次のような利点を提供する:有効薬剤の薬理学的に見て真のゼロ次放出;長い放出期間(例えば最大約12か月);患者のコンプライアンス;及び、薬物の信頼性高い送達及び投与。
【0144】
本発明の実施に際して、他の植え込み型薬物送達装置を使用することもでき、このような薬物送達装置は、レギュレータ型植え込み型ポンプを含んでよく、これらのポンプは、一定の化合物流、調節可能な化合物流、又はプログラミング可能な化合物流、例えばCodman & Shurtleff, Inc. (Raynham, MA)、Medtronic, Inc. (Minneapolis, MN)、及びTricumed Medizintechnik GmbH (ドイツ国)から入手可能なポンプを含んでいてよい。
【0145】
本発明の送達装置において採用される高濃度薬物粒子製剤の量は、所望の治療結果を達成するように治療上有効量の薬剤を送達するために必要な量である。具体的には、このような量は、例えば具体的な薬剤、送達部位、状態の重症度、及び所望の治療効果のような変数に応じて変化することになる。本発明の模範的な高濃度薬物粒子製剤の概算放出速度の例が、エキセナチドの放出速度(図2、図3、及び図5)、及びオメガ・インターフェロンの放出速度(図1及び図4)を含めて、例4に示されている。
【0146】
図4及び図5に示されたデータは、本発明の別の態様を示している。本発明の高濃度薬物粒子製剤は、懸濁製剤中にローディングされる粒子の重量パーセント、粒子製剤中の薬物の濃度、又はその両方を変えることにより、薬物放出速度の制御方法において使用することができる。このような方法は、カスタマイズ可能な薬物濃度を所定の時間にわたって送達することができる浸透圧送達装置を調製するのに有用である。この場合、薬物/粒子の濃度範囲にわたる一連のストック粒子製剤を個別に又は組み合わせて粒子ローディング濃度範囲にわたって使用することにより、選択された薬物濃度の所定の時間にわたる送達を可能にすることができる。このことは、異なる投与計画を用意するための、又は個体の例えば体重によってカスタマイズされた投与を可能にするための製造効率をもたらす。このように、異なる投与レベルを、必要に応じて提供することができる。
【0147】
典型的には、浸透圧送達装置の場合、有効薬物製剤を含む有効薬剤チャンバの容積は、約100μl〜約1000μl、より好ましくは約120μl〜約500μl、より好ましくは約150μl〜約200μlである。
【0148】
典型的には、浸透圧送達装置は、患者体内の、例えば皮下に植え込まれる。装置は一方又は両方の腕(上腕の内側、外側、又は背後)又は腹部に皮下挿入することができる。腹部の好ましい位置は、肋骨の下及びベルトラインの上方に延びる部位における腹部の皮膚下である。腹部内に1つ又は2つ以上の浸透圧送達装置の多数の挿入位置を提供するために、腹壁を次のように4つの四半部に分けることができる:右肋骨より5〜8センチメートル下方、正中線より約5〜8センチメートル右側に延びる右上四半部;ベルトラインより5〜8センチメートル上方、正中線より約5〜8センチメートル右側に延びる右下四半部;左肋骨より5〜8センチメートル下方、正中線より約5〜8センチメートル左側に延びる左上四半部;及びベルトラインより5〜8センチメートル上方、正中線より約5〜8センチメートル左側に延びる左上四半部。このことは、1回又は2回以上の機会に1つ又は2つ以上の装置を植え込むための複数の利用可能な位置を提供する。
【0149】
高濃度薬物粒子製剤を含む本発明の懸濁製剤は、植え込み可能ではない又は植え込まれない薬物送達装置、例えば外部ポンプ、例えば病院環境において皮下送達のために使用される蠕動ポンプから送達されてよい。
【0150】
本発明の懸濁製剤は、輸液ポンプ、例えば実験動物(例えばマウス及びラット)への連続投与のための小型輸液ポンプとして形成されたALZET(登録商標)(DURECT Corporation, Cupertino CA)において使用されてもよい。
【0151】
本発明の懸濁製剤は、薬物の高濃度ボーラス投与を提供するために、注射の形態で使用されてもよい。
【0152】
浸透圧送達装置、例えばDUROS(登録商標)装置を介して送達される本発明の懸濁製剤のいくつかの利点及び利益の例として、次のことが挙げられる。治療コンプライスが増大することにより効力が高くなり、このようなコンプライアンスの増大は、植え込まれた浸透圧送達装置を使用して達成することができる。治療効力を改善できる理由は、植え込み型浸透圧送達装置、例えばDUROS(登録商標)装置が、1日24時間にわたる連続的な一貫した薬物送達を可能にするからである。また、他の持続型放出製剤及びデポ注射とは異なり、例えば安全性の問題が特定の患者に対して生じた場合、DUROS(登録商標)装置の使用時の薬物投与を、装置を取り外すことによって直ちに中止することができる。
【0153】
本発明はまた、上記粒子製剤、懸濁ビヒクル、及び懸濁製剤を含む本発明の製剤の製造方法を含む。本発明はまた、例えば、選択された懸濁製剤を浸透圧送達装置のリザーバ内に充填することを含む、浸透圧送達装置の製造方法を含む。
【0154】
5.0.0 懸濁製剤用途
本明細書中に記載された懸濁製剤は、選択された薬物の連日投与を必要とする数多くの治療に対する有望な代替手段を提供する。例えば、高濃度インクレチン模倣体粒子製剤を含む本発明の懸濁製剤は、糖尿病(例えば真性糖尿病、及び妊娠糖尿病)、及び糖尿病関連障害(例えば糖尿病性心筋症、インスリン耐性、糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症、網膜症、白内障、高血糖、高コレステロール血、高血圧、高インスリン血、高脂血、アテローム性動脈硬化、及び組織虚血、特に心筋虚血)、並びに、高血糖(例えば、ベータ・ブロッカー、チアジド系利尿薬、コルチコステロイド、ナイアシン、ペンタミジン、プロテアーゼ阻害薬、L−アスパラギナーゼ、及びいくつかの抗精神病薬を含む、高血糖のリスクを高くする薬剤による治療に関連する)、食物摂取量の低減(例えば肥満治療、食欲制御、又は減量)、卒中、血漿中脂質低下、急性冠状症候群、冬眠心筋、胃腸運動性の調節、尿流の増大、の治療に有用である場合がある。
【0155】
加えて、本発明の懸濁製剤は、製剤によって治療される患者の食欲の潜在的なレギュレータであり得る。
【0156】
別の例としては、インターフェロンを含む高濃度薬物粒子製剤は、インターフェロン応答障害、例えばウイルス感染症、免疫障害、及び癌を治療するために有用であり得る。このようなインターフェロン応答障害の治療は一般に、長期にわたって実施される。例えば、ウイルス感染症、例えばフラビ・ウイルス感染症(例えばC型肝炎、黄熱病、及び西ナイル病;Buckwold, V.E.他、Antiviral Research 73:118-125 (2007))の治療のために、オメガ・インターフェロンを使用することができる。投与スケジュールに対するノンコンプライアンスは、このような長期治療にとって歴史的に問題である。本発明の懸濁製剤は、例えば浸透圧送達装置内に提供されると、連日の注射に対する望ましい代替手段をもたらす。
【0157】
1実施態様の場合、上記浸透圧送達装置を使用して懸濁製剤が投与される。本発明の懸濁製剤の放出速度は、選択された送達速度で長期にわたって薬物を一貫して均一に送達する浸透圧送達システムを提供する。本発明の懸濁製剤を使用した送達速度の達成例が、例4に提供されている。放出速度データが示しているように、システムは、インターフェロン概算送達速度50μg/日(図1)、エキセナチド概算送達速度75μg/日(図2)、及びエキセナチド概算送達速度80μg/日(図3)で、薬物を一貫して均一に送達する。
【0158】
薬物の毎日の目標送達速度が、浸透圧送達装置からの懸濁製剤の実質的に連続した均一な送達によって合理的に達成されるように、浸透圧送達装置からの懸濁製剤の出口剪断速度が決定される。出口剪断速度の一例としては、約1〜約1×10-7-1、好ましくは約4×10-2〜約6×10-4-1、より好ましくは5×10-3〜1×10-3-1が挙げられる。
【0159】
6.0.0 浸透圧送達装置
本発明の高濃度薬物粒子製剤は、例えば浸透圧送達装置を使用して送達されてよい。1実施態様の場合、本発明は、現在使用されている浸透圧送達装置と比較して小型化された浸透圧送達装置の使用に関する。図6Bは、長さ約45mm及び直径約3.8mmの寸法を有する浸透圧送達装置を概略的に示している。このサイズの浸透圧送達装置は、例えばオメガ・インターフェロン粒子懸濁製剤及びエキセナチド粒子懸濁製剤の送達のために使用されている(“Continuous Delivery of Stabilized Proteins and Peptides at Consistent Rates for at least Three Months from the DUROR Device”, 2008 American Association of Pharmaceutical Sciences, Annual Meeting and Exposition, Poster No. T3150, Nov. 18, 2008, Yang, B.他; “A Phase 1b Study of ITCA 650: Continuous Subcutaneous Delivery of Exenatide via DUR R Device Lowers Fasting and Postprandial Plasma Glucose”, American Diabetes Association 69th Scientific Sessions, June 5-9, 2009, Luskey, K.他; 及び“A Phase 1b Study of ITCA 650:Continuous Subcutaneous Delivery of Exenatide via DUROR Device Lowers Fasting and Postprandial Plasma Glucose”, European Association for the Study of Diabetes 45th Annual Meeting, September 29 to October 3, 2009, Luskey, K.他)。本発明の高濃度薬物粒子製剤は、より小さな寸法の浸透圧送達装置の使用を容易にする一方、所定の時間にわたって制御された量の薬物を連続的に長期送達する能力を依然として提供する。例えば、図6Cは、長さ約30mm及び直径約3.8mmの寸法を有する浸透圧送達装置を概略的に示している。薬物粒子製剤中の薬物濃度を高くすることによって、浸透圧送達装置内にローディングされるべき薬物粒子懸濁製剤の量を低減することができ、薬物粒子懸濁製剤の流量を低減することができ、そして所定の時間にわたって予め決められた量の薬物を連続的に長期送達する能力を維持しつつ、浸透圧送達装置を小型化することもできる。
【0160】
植え込み型薬物送達装置の実施態様は典型的には、次のような構成部分(図6A参照)、すなわち、ルーメンを画定する内壁を有する不透過性リザーバ、リザーバの第1端部に設けられた半透膜、浸透圧性物質を含有することができる第1チャンバ、ピストン、薬物懸濁製剤を含有することができる第2チャンバ、及びリザーバの第2端部に設けられた拡散モデレータ及びオリフィスを含む。第1チャンバは、半透膜の第1表面と、隣接するピストンの第1表面とによって画定されている。第2チャンバは、ピストンの第2表面と、拡散モデレータの第1表面とによって画定されている。
【0161】
図6Aは、本発明を実施する上で有用なDUROS(登録商標)送達装置の一例を示している。図6Aでは、浸透圧送達装置10はリザーバ12を含んだ状態で示されている。リザーバのルーメン内には、ピストン集成体14が位置決めされており、このピストン集成体はルーメンを2つのチャンバに分割している。この例では、チャンバ16は有効薬物製剤を含有し、そしてチャンバ20は浸透圧性物質製剤を含有している。浸透圧性物質製剤を含有するチャンバ20に隣接する、リザーバの遠位端部には、半透膜18が位置決めされている。薬物を含む懸濁製剤を含有するチャンバ16に隣接する、リザーバ12の遠位端部には、拡散モデレータ22が嵌め合い関係で位置決めされている。拡散モデレータ22は送達オリフィス24を含んでいる。拡散モデレータ22は、送達オリフィスを有する任意の好適な流動装置であってよい。この実施態様の場合、流路26は、ねじ山付き拡散モデレータ22と、リザーバ12の内面に形成されたねじ山28との間に形成されている。別の実施態様の場合、拡散モデレータは例えば、(i)開口を通って圧入(又は摩擦嵌合)していてよく、リザーバの平滑な内面に接触することができ、又は(ii)開口内に位置決めするように構成され配列された外側シェルと、外側シェル内に挿入された内側コアと、外側シェルと内側コアとの間に画定された螺旋形状の流路とを含む2つの部材を含むことができる(例えば米国特許出願公開第2007−0281024号明細書)
【0162】
半透膜18を通ってチャンバ20内に体液が吸収される。有効薬製剤は、チャンバ16から、拡散モデレータ22内の送達オリフィス24を通って計量分配される。ピストン集成体14は、リザーバ12の内壁に係合してこれをシーリングし、これにより、チャンバ20内の浸透圧性物質製剤と、半透膜18を通って吸収された体液とを、チャンバ16内の有効薬製剤から隔離する。定常状態で、懸濁製剤は、外部液が半透膜18を通ってチャンバ20内に吸収される速度に相当する速度で、拡散モデレータ22内の送達オリフィス24を通って駆出される。すなわち、DUROS(登録商標)送達装置は、浸透圧原理に基づいて所定の速度で薬物を放出する。細胞外液が半透膜を通ってDUROS(登録商標)装置の浸透圧エンジン内に直接に入る。浸透圧エンジンは拡張することにより、遅く一貫した移動速度でピストンを動かす。ピストンの運動は、拡散モデレータのオリフィスを通って薬物製剤が強制的に放出されるようにし、その結果、薬物を実質的に定常状態で送達する。
【0163】
半透膜18は、リザーバ12の内面とシーリング関係を成して弾性係合する栓の形態で形成されていてよい。図6Aでは半透膜18は、半透膜18とリザーバ12の内面とを摩擦係合させるのに役立つ畝を有するものとして示されている。
【0164】
小型化された浸透圧送達装置の実施態様は典型的には、図6Aに関連して説明したものと同様の構成部分を含んでいる。現在使用されている浸透圧送達装置は、典型的には、図6Bに示されている寸法、すなわち長さ約45mm及び直径3.8mmを有している。図6Cに示されている、現在使用されている装置と比較して小型化された浸透圧送達装置は、長さ約30mm及び直径3.8mmの寸法を有している。マーカー帯(例えば図6B及び図6Cに示されたレーザーマーカー帯)が任意に設けられ、これは例えば異なる投与量又は異なる薬物製剤を有する装置をマーキングすることにより、装置間を区別するために使用することができ、そしてさらに、植え込みのための所望の挿入方向を決めるのを助けるのに有用なことがある。外側の溝(例えば図6B及び図6Cに示されている)も任意に設けられ、これは典型的には、装置の半透膜側の端部を識別すること、そして植え込みのための所望の装置挿入方向を決めるのを助けるために使用される。
【0165】
本発明の小型化された浸透圧送達装置のリザーバは、典型的には、使用環境(例えば体液)を通さず、浸透圧性物質並びに薬物懸濁製剤も通さない材料から形成されている。リザーバのための好ましい材料の一例としては、チタン及びチタン合金が挙げられる。本発明の装置のためのリザーバの模範的なサイズは、全長が約35mm〜20mm、好ましくは約30mm〜25mm、より好ましくは約28mm〜33mmの長さであり、及び直径が約8mm〜約3mm、好ましくは約3.8mm〜約4mmである。1実施態様の場合、浸透圧送達装置は長さ約30mm、及び直径約3.8mmである。
【0166】
浸透圧送達装置の構成部分及びこれらの製造に使用される材料の模範的な実施態様は、例えば米国特許第5,728,396号、同第6,113,938号、同第6,132,420号、同第6,270,787号、同第6,375,978号、同第6,544,252号、同第6,508,808号、同第5,997,527号、同第6,524,305号、同第6,287,295号、同第7,163,688号、同第7,074,423号、同第7,014,636号、同第6,939,556号、同第7,207,982号、同第7,241,457号、同第7,407,499号、及び米国特許出願公開第2005/0010196号、同第2005/0101943号、同第2005/0175701号、同第2007/0281024号、同第2008/0091176号の各明細書に見いだすことができる。このような構成部分は、本発明の教示内容に照らして、小型化された浸透圧送達装置を提供するようにサイズ設定することができる。
【0167】
1実施態様の場合、より大型の浸透圧送達装置とより小型の浸透圧送達装置との間で本質的に同じリザーバ直径を維持することによりもたらされる利点は、リザーバ以外の2つの装置の構成部分(例えば半透膜、ピストン、及び拡散モデレータ)を1つのサイズで製造することができ、またこれらの構成部分を2装置間で互換可能に使用できることである。同様に、広範囲の長さのリザーバを有する種々の装置を提供することもできる。この場合、長さが種々異なっており、ひいては容積及び薬物ローディング容量も種々異なる、種々のリザーバを有する多様な装置を製造する際に、残りの構成部分は互換可能に使用することができる。
【0168】
7.0.0 本発明の高濃度薬物粒子製剤のいくつかの利点
活性薬物が高濃縮された粒子は、容易に植え込まれ患者に受け入れられ続けるのに十分に小さな全体の装置サイズを維持しながら、高投与量の薬物を送達できる浸透圧送達装置を調製するのに有用である。高濃度薬物粒子製剤は、疾患又は状態の効果的な治療のために、高投与量の選択された薬物が必要とされるときに特に有用であり得る。具体的には、高濃度薬物粒子製剤は、浸透圧送達装置の有用性及び用途を、このような装置にとっては余りにも高いと典型的には考えられている投与量を必要する低効能の薬物、例えばタンパク質、例えばGLP−1、エキセナチド、PYY、オキシントモジュリン、GIP、インターフェロン(例えばアルファ、ベータ、ガンマ、ラムダ、オメガ、タウ、コンセンサス、変異インターフェロン)、抗体、又は小分子、例えばテストステロン又はその他のステロイドにまで広げる。高濃度粒子はまた、動物毒物学研究及びヒトにおける初期投与量決定研究の両方に関する投与量範囲決定研究に必要とされる高投与量浸透圧送達装置の調製を容易にする。
【0169】
高濃度薬物粒子はまた、長期間にわたって治療投与量の薬物を送達できる浸透圧送達装置を調製するのに有用である。これらの装置は、1年当たりの装置交換回数が少ないことが望ましい慢性の疾患及び状態、例えば糖尿病及び肥満症を治療するのに特に有用である。例5は、高濃度粒子が、所望の送達速度で長期間にわたって薬物投与量を送達できる植え込み型浸透圧送達装置を調製するのに有用であることを実証している。
【0170】
対照的に、比較的低い濃度の活性薬物(約20%未満)を含有する粒子製剤を含む懸濁製剤は、高い1日薬物投与量を達成するために高い粒子ローディング率を必要とする。1日投与量が高ければ高いほど、高い重量パーセントの粒子が必要となり、その結果、製剤は装置の拡散モデレータを通して信頼性高くポンピングするのが難しくなる。このような高い粒子ローディング率は、例えば、出口チャネルの閉塞、又は半透膜の駆逐から装置の故障を招くのに十分な装置内圧を引き起こすおそれがある。可能性のある1つの解決手段として、出口チャネルの直径を大きくし、且つ/又は出口チャネルの長さを短くすることが考えられはするが、このような手段は、体液から拡散モデレータを介して薬物製剤チャンバ内へ水分が進入するのを許し、その結果、薬物が不安定にあり、或いは懸濁液が物理的に不安定になり、装置が故障するおそれがある。
【0171】
粒子中の高濃度の薬物は、懸濁製剤全体の重量に対して粒子がほぼ30%以下、20%以下、又は好ましくは10%以下である粒子ローディング率を維持するのに有用である。従って、本発明の高濃度薬物粒子製剤の利点は、薬物濃度が高いことにより、懸濁製剤中の低い粒子ローディング率を維持しながら、薬物をより高い濃度で提供できることである。
【0172】
高濃度の活性薬物を有する高濃度薬物粒子製剤は、製造プロセス及び全プロセス収率に対して利点を有することもある。粒子の製造は典型的には、水中に薬物を溶解することで始まり、続いて、乾燥工程、例えば噴霧乾燥又は凍結乾燥が行われる。タンパク質は具体的には、水溶液中に安定ではなく、従って薬物が水に曝される時間を最小限にすることが重要である。溶液中の薬物の濃度が高ければ高いほど、これは、乾燥過程中に除去しなければならない水の量が比較的少なくなり、これにより乾燥過程が高速になることを意味する。乾燥過程がより高速であることは、高温に対して且つ/又は水分に曝されたときに不安定な薬物分子を含む薬物粒子を調製する上で特に重要であり得る。
【0173】
高速の乾燥過程によって形成される粒子のサイズが、低濃度で形成される粒子よりも小さいという付加的な利点が得られることがある。より小さな粒子が提供されると、拡散モデレータの出口チャネルが目詰まりする可能性がさらに低くなり、そして特定の浸透圧送達装置/製剤の組み合わせの信頼性及び性能のために必要とされる場合には、より小さなチャネル直径及び/又は長さの使用を容易にすることができる。
【0174】
本発明の高濃度薬物粒子製剤を含む懸濁製剤の別の利点は、所望の薬物濃度を長期にわたって連続送達する可能性を維持しながら、薬物送達のために小型化された浸透圧送達装置を使用し得ることである。1実施態様の場合、本発明は、全長が約35mm〜約20mm、好ましくは約30mm〜約25mm、より好ましくは約28mm〜約33mmであり、直径が約8mm〜約3mm、好ましくは約3.8mm〜約4mmである浸透圧送達装置に関する。浸透圧送達装置には、本発明の高濃度薬物粒子製剤を含む懸濁製剤を充填することができる。(例えば図6Bに示された寸法を有する現行の浸透圧送達装置に対する)本発明の小型化された浸透圧送達装置を使用することの利点の一例としては、(i)植え込み及び取り外しのし易さの改善、(ii)より多くの可能な植え込み部位(腕の下側、及び腹部全体)、及び(iii)異物の植え込み及び/又は取り外しに関して患者に及ぼす心理的影響の軽減が挙げられる。
【0175】
異なるサイズの種々様々な浸透圧送達装置内に、本発明の高濃度薬物粒子製剤を含む懸濁製剤を使用できるので、懸濁製剤中の薬物濃度との組み合わせにおいて装置サイズを調整することにより、広範囲の一連の投与形態、薬物強度、及び送達継続時間を提供することが可能になる。例えば、少なくとも約1か月間、少なくとも約1.5か月間、好ましくは少なくとも約3か月間、好ましくは少なくとも約6か月間、より好ましくは少なくとも約9か月間、より好ましくは少なくとも約12か月間にわたって薬物を送達する装置のために、リザーバを種々異なる容積まで充填することにより、同じ薬物濃度を有する懸濁製剤を使用することができる。
【0176】
本発明の高濃度薬物粒子製剤の利点は、例えば冷蔵なしに幅広い地理的分布を可能にする改善された薬物安定性、及び、安定性が通常は悪いがしかし高濃度薬物粒子製剤中では安定化される薬物に対する改善された利用可能性を含む。本発明の高濃度薬物粒子製剤を含む懸濁製剤の付加的な利点は、より少ない容積でより多くの薬物を送達できること、懸濁製剤のうちの薬物以外の成分の送達量を少なくすること、薬物濃度の山・谷なしに薬物が一貫して送達されるため、生じ得る薬物副作用(例えば吐き気及び/又は嘔吐)が低減されることを含む。
【0177】
他の対象は、下記明細書及び特許請求の範囲を検討すれば当業者には明らかである。
【0178】
試験
下記例は、本発明の装置、方法、及び製法をどのように形成して使用するかに関する完全な開示及び説明を当業者に提供するために示すものであって、発明者が発明と見なすものの範囲を限定しようと意図するものではない。使用した数値(例えば量、温度など)に関して正確さを確保しようと努めてはいるが、しかし或る程度の試験誤差及び偏差は考慮に入れるべきである。他のことを示すのでなければ、部は重量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は℃であり、そして圧力は大気圧又は近大気圧である。
【0179】
本発明によって製造される組成物は、医薬品に求められる含有率及び純度に関する規格に合致している。
【実施例】
【0180】
例1
高濃度薬物粒子製剤
この例では、高濃度の活性医薬成分(すなわち薬物)を含む噴霧乾燥粒子製剤の製造を記述する。本発明の製剤は、噴霧乾燥粉末製剤における薬物ローディングを行う。
【0181】
A.製剤1−−オメガ・インターフェロン
凍結したバルク・オメガ・インターフェロン溶液5g/Lを、2〜8℃で解凍し、次いでpH5.9の22mMのクエン酸ナトリウム緩衝剤にこれを添加した。溶液をクエン酸ナトリウム緩衝剤で透析することにより、14mg/mlのオメガ・インターフェロンを含む最終溶液を形成した。次いで、溶液をスクロース及びメチオニンとともに製剤し、そして0.5L捕集容器を備えたNiro SD Micro噴霧乾燥器を使用して噴霧乾燥させた。ポンプ・フィード量は400g/hであり、噴霧器ガスは2.3kg/hであり、噴霧器ガスは周囲温度であり、プロセスガス入口温度は140℃であり、プロセスガスは30kg/hであった。乾燥粉末は35%のオメガ・インターフェロンであり、残留水分は3.0%であった。この粒子製剤中の成分の比は次の通りである。2:1:2:1(オメガ・インターフェロン:メチオニン:スクロース:クエン酸緩衝剤)。
【0182】
B.製剤2−−エキセナチド
エキセナチド溶液を下記のように調製した。2.5gのエキセナチドをpH5.8〜6.0のクエン酸ナトリウム緩衝剤中に溶解した。溶液を、クエン酸ナトリウム緩衝剤、スクロース、及びメチオニンを含有する製剤溶液で透析した。次いで、0.7mmのノズルを備えたBuchi 290を使用して、製剤された溶液を噴霧乾燥させた。出口温度85℃、噴霧圧力100Psi、固形分2%、及び流量2.8ml/minであった。乾燥粉末は44.82%のエキセナチドを含有し、残留水分は3.8%であり、密度は0.2329g/mlであった。この粒子製剤中の成分の比は次の通りである。5:1:1:3.5(エキセナチド:メチオニン:スクロース:クエン酸緩衝剤)。
【0183】
この粒子製剤中の薬物の濃度は44.82wt%であった。
【0184】
C.製剤3−−エキセナチド
エキセナチド溶液を下記のように調製した。13.7gのエキセナチドをpH6.0の50mMクエン酸ナトリウム緩衝剤中に溶解した。溶液を、クエン酸ナトリウム緩衝剤、スクロース、及びメチオニンを含有する製剤溶液で透析した。次いで、製剤された溶液を、0.5L捕集容器を備えたNiro SD Micro噴霧乾燥器を使用して噴霧乾燥させた。ポンプ・フィード量は400g/hであり、噴霧器ガスは2.3kg/hであり、噴霧器ガスは周囲温度であり、プロセスガス入口温度は140℃であり、プロセスガスは30kg/hであった。乾燥粉末は41.24%のエキセナチドであり、残留水分は4.13%であった。この粒子製剤中の成分の比は次の通りである。5:1:1:3.4(エキセナチド:メチオニン:スクロース:クエン酸緩衝剤)。
【0185】
この粒子製剤中の薬物の濃度は41.24wt%であった。
【0186】
D.製剤4−−オメガ・インターフェロン
オメガ・インターフェロン濃度5mg/mLの凍結したバルク・オメガ・インターフェロン溶液を、2〜8℃で解凍し、次いでpH6.0のクエン酸ナトリウム緩衝剤で透析することにより、14mg/mlのオメガ・インターフェロンを含む溶液を形成した。次いで、溶液をスクロース及びメチオニンとともに製剤した。次いで、0.7mmのノズルを備えたBuchi 290を使用して、製剤された溶液を噴霧乾燥させた。出口温度80℃、噴霧圧力100Psi、固形分2%、及び流量2.8ml/minであった。乾燥粉末は69%のオメガ・インターフェロンを含有し、残留水分は4%であった。この粒子製剤中の成分の比は次の通りである。6.8:1:1:1(オメガ・インターフェロン:メチオニン:スクロース:クエン酸緩衝剤)。
【0187】
この粒子製剤中の薬物の濃度は69wt%(重量パーセント)であった。
【0188】
例1A〜例1Dに記載された製剤を表3に要約する。表3では、薬物重量パーセント(wt%)はHPLC法を用いて直接に割り出されているに対して、他の成分のwt%は、製剤配合物からの計算に基づいており、0wt%の水分を基準として補正した。従って、列挙した成分の重量パーセントは本質的に合計100%になる。
【0189】
【表3】

【0190】
E.製剤5−−PYY
PYY溶液を下記のように調製した。1gのPYYをpH5.0の25mMクエン酸ナトリウム緩衝剤中に溶解した。溶液を、クエン酸ナトリウム緩衝剤、スクロース、及びメチオニンを含有する製剤溶液で透析した。次いで、0.7mmのノズルを備えたBuchi 290 Micro 噴霧乾燥器を使用して、製剤された溶液を噴霧乾燥させた。出口温度100℃、噴霧圧力100Psi、固形分2%、及び流量2.8ml/minであった。乾燥粉末は27.6%のPYYを含有した。この粒子製剤中の成分の比は次の通りである。1.8:1.0:2.2:1.5(PYY:メチオニン:スクロース:クエン酸緩衝剤)。
【0191】
この粒子製剤中のPYYの濃度は27.6wt%であった。表4では、PYY重量パーセント(wt%)はHPLC法を用いて直接に割り出されているに対して、他の成分のwt%は、製剤配合物からの計算に基づいており、0wt%の水分を基準として補正した。従って、列挙した成分の重量パーセントは本質的に合計100%になる。
【0192】
【表4】

【0193】
F.製剤6−−オキシントモジュリン
オキシントモジュリン溶液を下記のように調製した。1gのオキシントモジュリンをpH4.0の25mMクエン酸ナトリウム緩衝剤中に溶解した。溶液を、クエン酸ナトリウム緩衝剤、スクロース、及びメチオニンを含有する製剤溶液で透析した。次いで、0.7mmのノズルを備えたBuchi 290 Micro 噴霧乾燥器を使用して、製剤された溶液を噴霧乾燥させた。出口温度100℃、噴霧圧力100Psi、固形分2%、及び流量2.8ml/minであった。乾燥粉末は43.3%のオキシントモジュリンを含有した。この粒子製剤中の成分の比は次の通りである。4.1:1.8:1:2.6(オキシントモジュリン:メチオニン:スクロース:クエン酸緩衝剤)。
【0194】
この粒子製剤中のオキシントモジュリンの濃度は43.3wt%であった。表5では、オキシントモジュリン重量パーセント(wt%)はHPLC法を用いて直接に割り出されているに対して、他の成分のwt%は、製剤配合物からの計算に基づいており、0wt%の水分を基準として補正した。従って、列挙した成分の重量パーセントは本質的に合計100%になる。
【0195】
【表5】

【0196】
例1に示されたデータは、本発明の粒子製剤が高濃度薬物粒子の生成を可能にすることを実証した。
【0197】
例2
懸濁製剤
この例では、懸濁ビヒクルと本発明の粒子製剤とを含む懸濁製剤の製造を記述する。
【0198】
A.懸濁製剤1−−オメガ・インターフェロン
粒子製剤を例1(製剤1)に記載したように調製した。
【0199】
ほぼ50:50の重量比でポリマーとしてのポリビニルピロリドンを、溶媒としての安息香酸ベンジル中に溶解することによって、懸濁ビヒクルを形成した。ビヒクル粘度は33℃で測定してほぼ12,000〜18,000ポアズであった。35%のオメガ・インターフェロンを含有する粒子を、懸濁製剤の総重量に対する粒子の濃度8.13wt%で、ビヒクル全体にわたって分散させた。
【0200】
B.懸濁製剤2
粒子製剤を例1(製剤2)に記載したように調製した。
【0201】
ほぼ50:50の重量比でポリマーとしてのポリビニルピロリドンを、溶媒としての安息香酸ベンジル中に溶解することによって、懸濁ビヒクルを形成した。ビヒクル粘度は33℃で測定してほぼ12,000〜18,000ポアズであった。44.82%のエキセナチドを含有する粒子を、懸濁製剤の総重量に対する粒子の濃度11.2wt%で、ビヒクル全体にわたって分散させた。
【0202】
C.懸濁製剤3
粒子製剤を例1(製剤3)に記載したように調製した。
【0203】
ほぼ50:50の重量比でポリマーとしてのポリビニルピロリドンを、溶媒としての安息香酸ベンジル中に溶解することによって、懸濁ビヒクルを形成した。ビヒクル粘度は33℃で測定してほぼ12,000〜18,000ポアズであった。41.24%のエキセナチドを含有する粒子を、懸濁製剤の総重量に対する粒子の濃度12wt%で、ビヒクル全体にわたって分散させた。
【0204】
例1に記載された粒子製剤1〜3を、表6に示された濃度(重量%)でビヒクル全体にわたって分散させた。
【0205】
【表6】

【0206】
C.更なる懸濁製剤
粒子製剤を例1(製剤3)に記載したように調製した。エキセナチド粒子製剤は例1(製剤3)に記載されている。
【0207】
ほぼ50:50の重量比でポリマーとしてのポリビニルピロリドンを、溶媒としての安息香酸ベンジル中に溶解することによって、懸濁ビヒクルを形成した。ビヒクル粘度は33℃で測定してほぼ12,000〜18,000ポアズであった。例1において記載された粒子を、表7に示された濃度でビヒクル全体にわたって分散させた。粒子濃度は、懸濁製剤の総重量に対して示されている。
【0208】
例1に記載された粒子製剤3,5及び/又は6を、表7に示された濃度(重量%)でビヒクル全体にわたって分散させた。
【0209】
【表7】

【0210】
例2に示されたデータは、本発明の高濃度薬物粒子製剤が製薬用途での懸濁製剤の生成を可能にすることを実証した。
【0211】
例3
粒子製剤及び懸濁製剤における薬物安定性
A. 粒子製剤安定性
噴霧乾燥粉末としての粒子製剤の安定性を評価するための研究を行った。サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)及び逆相高性能液体クロマトグラフィ(RP−HPLC)によって試料を分析した。結果を表8に示す。
【0212】
【表8】

【0213】
SEC及びRP−HPLCに基づく純度データは、本発明の高濃度薬物粒子製剤の優れた安定性を実証した。
【0214】
B. 懸濁製剤安定性
生体適合性であり単一相であり、そして非水性であるビヒクル中に懸濁された薬物粒子製剤の安定性を評価するための研究を行った。分析試験のために、オメガ・インターフェロン又はエキセナチドを懸濁液から抽出溶媒で抽出し、そしてサイズ排除クロマトグラフィ(SEC)、逆相高性能液体クロマトグラフィ(RP−HPLC)、及びバイオアッセイを用いて試料を分析した。
【0215】
抽出溶媒は懸濁ビヒクルを溶解し、そして薬物を沈殿させた。薬物沈殿物を数回洗浄し、乾燥させ、次いで分析のために水中で戻した。オメガ・インターフェロンのモノマー形態と凝集形態とを、TSK-Gel Super SW2000カラムを使用してSEC法によって分離し、220nmのUV検出器によって検出した。酸性pHでZorbax 300SB-C8 RP-HPLCカラム上でRP−HPLCによって、そして220nmのUV検出器を用いて、オメガ・インターフェロンの純度及び同一性を割り出した。
【0216】
エキセナチドのモノマー形態と凝集形態とを、TSK-Gel Super SW2000カラムを使用してSEC法によって分離し、220nmのUV検出器によって検出した。酸性pHでHiggins CLIPEUS-C8カラム上でRP−HPLCによって、そして210nmのUV検出器を用いて、エキセナチドの純度及び同一性を割り出した。
【0217】
懸濁製剤は、表8に示された目標粒子ローディング率を有した。植え込み型浸透圧送達装置(例えばDUROS(登録商標)送達装置)リザーバに、表9に示された懸濁液を充填し、25℃及び40℃で貯蔵した。いくつかの試料を抽出し、そして初期時点及び表9に示された後続の時点で分析した。SECによってモノマーレベルを測定し、そしてRP−HPLCによって純度レベルを測定した。分析結果を表9に示す。
【0218】
【表9】

【0219】
モノマー形態と凝集形態との比(モノマー形態が大部分である)、及び純度分析によって示された低レベルの分解生成物は、本発明の高濃度薬物粒子製剤を含む懸濁製剤が優れた安定性及び薬物純度を提供することを示した。
【0220】
例4
放出速度
植え込み型浸透圧送達装置を使用して本発明の実施態様に従って懸濁製剤の放出速度を評価するための研究を行った。各研究に対して、植え込み型浸透圧送達装置の薬物リザーバに、例2に記載された懸濁製剤のうちの1つを160ul充填した。浸透圧ポンプの膜端部を、3mlのリン酸緩衝溶液(PBS)で充填されたストッパ付きガラスバイアル内に入れ、そして浸透圧ポンプの拡散モデレータ端部を、2.5〜3mlの放出速度媒体(0.14M NaCl及び0.2%のアジ化ナトリウムを含むpH6.0のクエン酸緩衝溶液)で充填されたガラスバイアル内に入れた。
【0221】
それぞれのシステムを、拡散モデレータ側を下にして、キャップ付き試験管内に入れ、そして37℃の水浴内に部分的に浸した。指定時点で、拡散モデレータ端部のガラスバイアルを、2.5〜3mlの放出速度媒体(0.14M NaCl及び0.2%のアジ化ナトリウムを含むpH6.0のクエン酸緩衝溶液)で充填された新しいガラスバイアルと交換した。浸透ポンプの拡散モデレータ端部から試料を捕集し、これらをRP−HPLCを使用して分析した。
【0222】
RP−HPLC分析によるin vitro放出速度の結果を、図1、図2、及び図3に示す。図1は、懸濁製剤1のデータを表す。このデータは、100日目までの37℃における1日当たりの放出速度を示しており、概算放出速度は50μg/日である。図2は、懸濁製剤2のデータを表す。この図は、110日目までの37℃における1日当たりの放出速度を示しており、概算放出速度は75μg/日である。図3は、懸濁製剤3のデータを表す。この図は、100日目までの37℃における1日当たりの放出速度を示しており、概算放出速度は80μg/日である。データ点を横切る水平方向線は、所定の放出速度における実質的に定常状態の薬物送達を示している。
【0223】
放出速度データは、システムが、懸濁製剤1の場合には概算速度50μg/日近くのオメガ・インターフェロンを、懸濁製剤2の場合には概算速度75μg/日近くのエキセナチドを、そして懸濁製剤3の場合には概算速度80μg/日近くのエキセナチドを一貫して均一に送達することを示した。
【0224】
所定の薬物放出濃度範囲にわたる付加的な懸濁製剤の放出速度も割り出した。RP−HPLCによるin vitro放出速度の結果を図4及び図5に示す。図4は、オメガ・インターフェロンに関する植え込み型浸透圧送達装置からのin vitro放出のデータを示している。オメガ・インターフェロン粒子製剤及び懸濁製剤を本質的に上記のように調製した。懸濁製剤中の粒子ローディング率又は粒子製剤の粒子中の薬物濃度、又はその両方を変化させることにより、放出速度を制御した。データは、100日間にわたる37℃における1日当たりの放出速度を示しており、概算放出速度は10,25,30及び50μg/日である。データ点を横切る水平方向線は、所定の放出速度における実質的に定常状態の薬物送達を示している。
【0225】
図5は、エキセナチドに関する植え込み型浸透圧送達装置からのin vitro放出のデータを示している。エキセナチド粒子製剤及び懸濁製剤を本質的に上記のように調製した。懸濁製剤中の粒子ローディング率又は粒子製剤の粒子中の薬物濃度、又はその両方を変化させることにより、放出速度を制御した。データは、110日間にわたる37℃における1日当たりの放出速度を示しており、概算放出速度は5,10,20,40及び75μg/日である。データ点を横切る水平方向線は、所定の放出速度における実質的に定常状態の薬物送達を示している。
【0226】
図4及び図5に示された放出速度データはさらに、本発明の粒子製剤及び懸濁製剤を使用すると、浸透圧送達システムが、予め選択された送達速度近くで連続的に一貫して均一に薬物を送達することを実証した。
【0227】
要約すると、これらのデータは、本発明の高濃度薬物粒子製剤を含む懸濁製剤が、予め選択された送達速度で、一貫した均一な薬物送達を可能にすることを実証した。
【0228】
例5
薬物送達速度、量、及び使用期間
表10に示されたデータは、高濃度粒子が、規定された送達速度で長期間にわたって薬物投与量を送達できる植え込み型浸透圧送達装置を調製するのに有用であることを実証した。
【0229】
【表10】

【0230】
当業者には明らかなように、本発明の思想及び範囲を逸脱することなしに、上記実施態様に種々の改変及び変更を加えることができる。このような改変形及び変更形は、本発明の範囲に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子製剤であって、
約25wt%〜約80wt%の薬物と;
約75wt%〜約20wt%の1又は複数の追加成分とを
含み、
薬物:追加成分の比が約1:1〜約5:1である、
粒子製剤。
【請求項2】
該薬物が約40wt%〜約75wt%を占め、そして該1又は複数の追加成分が約60wt%〜約25wt%を占める、請求項1に記載の粒子製剤。
【請求項3】
該1又は複数の追加成分が、抗酸化剤、炭水化物、及び緩衝剤から成る群から選択される、請求項1又は2に記載の粒子製剤。
【請求項4】
該1又は複数の追加成分が抗酸化剤を含み、該抗酸化剤が、システイン、メチオニン、及びトリプトファンから成る群から選択される、請求項1から3までのいずれか1項に記載の粒子製剤。
【請求項5】
該抗酸化剤がメチオニンである、請求項4に記載の粒子製剤。
【請求項6】
該1又は複数の追加成分が緩衝剤を含み、そして該緩衝剤が、クエン酸塩、ヒスチジン、琥珀酸塩、及びこれらの混合物から成る群から選択される、請求項1から5までのいずれか1項に記載の粒子製剤。
【請求項7】
該緩衝剤がクエン酸塩である、請求項6に記載の粒子製剤。
【請求項8】
該1又は複数の追加成分が炭水化物を含み、そして該炭水化物が二糖類である、請求項1から7までのいずれか1項に記載の粒子製剤。
【請求項9】
該二糖類が、ラクトース、スクロース、トレハロース、セロビオース、又はこれらの混合物から成る群から選択される、請求項8に記載の粒子製剤。
【請求項10】
該二糖類がスクロースである、請求項9に記載の粒子製剤。
【請求項11】
該1又は複数の追加成分が、抗酸化剤、炭水化物、及び緩衝剤を含み、そして薬物:抗酸化剤:炭水化物:緩衝剤の比が約2〜20:1〜5:1〜5:1〜10である、請求項1から10までのいずれか1項に記載の粒子製剤。
【請求項12】
該粒子製剤が、粒子の噴霧乾燥調製物である、請求項1から11までのいずれか1項に記載の粒子製剤。
【請求項13】
該薬物がタンパク質である、請求項1から12までのいずれか1項に記載の粒子製剤。
【請求項14】
該タンパク質がインターフェロンである、請求項13に記載の粒子製剤。
【請求項15】
該タンパク質が、コンセンサス・インターフェロン、アルファ・インターフェロン、ベータ・インターフェロン、ガンマ・インターフェロン、タウ・インターフェロン、オメガ・インターフェロン、及びこれらの混合物から成る群から選択される、請求項14に記載の粒子製剤。
【請求項16】
該タンパク質が、インクレチン模倣体である、請求項13に記載の粒子製剤。
【請求項17】
該インクレチン模倣体が、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、GLP−1の誘導体、又はGLP−1の類似体である、請求項16に記載の粒子製剤。
【請求項18】
該インクレチン模倣体がGLP−1(7−36)アミドである、請求項17に記載の粒子製剤。
【請求項19】
該インクレチン模倣体がエキセナチド、エキセナチドの誘導体、又はエキセナチドの類似体である、請求項16に記載の粒子製剤。
【請求項20】
該インクレチン模倣体がエキセナチドである、請求項19に記載の粒子製剤。
【請求項21】
該タンパク質が、エキセナチド、PYY、GLP−1(7−36)アミド、オキシントモデュリン、GIP、及びレプチンから成る群から選択される、請求項13に記載の粒子製剤。
【請求項22】
該タンパク質が、組み換え抗体、抗体フラグメント、ヒト化抗体、単鎖抗体、モノクローナル抗体、及びアヴィマーから成る群から選択される、請求項13に記載の粒子製剤。
【請求項23】
該タンパク質が、ヒト成長ホルモン、上皮成長因子、線維芽細胞成長因子、血小板由来成長因子、形質転換成長因子、及び神経成長細胞から成る群から選択される、請求項13に記載の粒子製剤。
【請求項24】
該タンパク質がサイトカインである、請求項13に記載の粒子製剤。
【請求項25】
該粒子製剤の粒子が、約2ミクロン〜約10ミクロンの粒子である、請求項1から24までのいずれか1項に記載の粒子製剤。
【請求項26】
懸濁製剤であって、
請求項1から25までのいずれか1項に記載の粒子製剤と、
1又は複数のポリマー及び1又は複数の溶媒を含む、非水性単一相懸濁ビヒクルと
を含み;
該懸濁ビヒクルが粘性流体特性を示し、そして該粒子製剤が該ビヒクル中に均質に分散されている、
懸濁製剤。
【請求項27】
該1又は複数のポリマーが、ピロリドンを含むポリマーである、請求項26に記載の懸濁製剤。
【請求項28】
該1又は複数のポリマーが、ポリビニルピロリドンである、請求項27に記載の懸濁製剤。
【請求項29】
該1又は複数の溶媒が、乳酸ラウリル、ラウリルアルコール、安息香酸ベンジル、及びこれらの混合物から成る群から選択される、請求項26から28までのいずれか1項に記載の懸濁製剤。
【請求項30】
該懸濁ビヒクルが本質的に、1又は複数のポリマーと、1又は複数の溶媒とから成っている、請求項26に記載の懸濁製剤。
【請求項31】
該1又は複数の溶媒が本質的に、安息香酸ベンジルから成っている、請求項30に記載の懸濁製剤。
【請求項32】
該1又は複数のポリマーが本質的に、ポリビニルピロリドンから成っている、請求項30又は31に記載の懸濁製剤。
【請求項33】
該懸濁ビヒクルが本質的に、安息香酸ベンジルと、ピロリドンを含むポリマーとから成っている、請求項30に記載の懸濁製剤。
【請求項34】
該懸濁ビヒクルが約50%の溶媒、及び約50%のポリマーである、請求項26から33までのいずれか1項に記載の懸濁製剤。
【請求項35】
該懸濁ビヒクルの粘度が、約15,000ポアズ±約3,000ポアズである、請求項26から34までのいずれか1項に記載の懸濁製剤。
【請求項36】
請求項26から35までのいずれか1項に記載の懸濁製剤を含む、浸透圧送達装置。
【請求項37】
該浸透圧送達装置が、長さ約35mm〜約20mm及び直径約8mm〜約3mmの寸法を有するリザーバを含む、請求項36に記載の浸透圧送達装置。
【請求項38】
該リザーバが、長さ約30mm〜約25mm及び直径約4mm〜約3.8mmの寸法を有している、請求項37に記載の浸透圧送達装置。
【請求項39】
浸透圧送達装置の製造方法であって、
該浸透圧送達装置のリザーバ内に、請求項26から35までのいずれか1項に記載の懸濁製剤を充填する
ことを含む、浸透圧送達装置の製造方法。
【請求項40】
該浸透圧送達装置が、長さ約35mm〜約20mm及び直径約8mm〜約3mmの寸法を有するリザーバを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
該リザーバが、長さ約30mm〜約25mm及び直径約4mm〜約3.8mmの寸法を有している、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
請求項1から25までのいずれか1項に記載の粒子製剤を含む、医薬製剤。
【請求項43】
請求項26から35までのいずれか1項に記載の懸濁製剤を含む、医薬製剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【公表番号】特表2012−505882(P2012−505882A)
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−532079(P2011−532079)
【出願日】平成21年10月14日(2009.10.14)
【国際出願番号】PCT/US2009/005629
【国際公開番号】WO2010/044867
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(508346561)インターシア セラピューティクス,インコーポレイティド (5)
【Fターム(参考)】