説明

高硬度ハードコートフィルム

【課題】高い表面硬度をもち、カールが低く、さらに密着性、透明性に優れたハードコートフィルムを提供すること。
【解決手段】トリアセチルセルロースフィルム(1)の少なくとも片面に、下記のハードコート層形成用組成物を塗布し、これを硬化してハードコート層(4)を形成してなる高硬度ハードコートフィルム。該組成物は、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を分子中に含有する多官能性モノマーを主成分とするUV硬化型材料(2)60〜90重量部(不揮発分として)と、架橋性ポリマー(3)10〜40重量部と、前記トリアセチルセルロースフィルム(1)を溶解または膨潤させる溶剤(5)の少なくとも1種と、前記架橋性ポリマー(3)を溶解させかつトリアセチルセルロースフィルム(1)を溶解かつ膨潤させない溶剤(6)の少なくとも1種とを含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い表面硬度をもち、密着性に優れ、さらにカールが低く透明性に優れたハードコートフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、各種ディスプレイに用いられるプラスチックフィルムに硬度を付帯させる為に、アクリル系UV樹脂等をコーティングし、ハードコート性を付帯させる方法が用いられてきた。しかし、高い鉛筆硬度を得るには30μm程度とハードコート層膜厚を厚くする必要があり、その結果、ハードコート層形成後にカールが発生するといった弊害が発生した。
そこでこれらの問題を改善する為、基材フィルムとハードコート層との間にプライマー層を積層して密着性を向上させる方式(例えば、特許文献1参照)が提案されているが、プライマー層を積層する場合、基材との屈折率差によって干渉縞が発生してしまう、コストアップに繋がってしまうなどの問題がある。
さらに、カールが低く高い鉛筆硬度が得られるよう、ハードコート層に金属酸化物微粒子を添加する方法(例えば、特許文献2および特許文献3参照)が提案されているが、透明性の低下や脆性劣化、さらに塗液の安定性の低下やコストアップに繋がるなどの問題があった。
【特許文献1】特開平7−97468号公報
【特許文献2】特開2000−159916号公報
【特許文献3】特開2006−106427号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、高い表面硬度をもち、カールが低く、さらに密着性、透明性に優れたハードコートフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題は、下記の手段によって解決できる。
請求項1に記載の発明は、トリアセチルセルロースフィルム(1)の少なくとも片面に、下記のハードコート層形成用組成物を塗布し、これを硬化してハードコート層(4)を形成してなることを特徴とする高硬度ハードコートフィルムである。
ハードコート層形成用組成物:
1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を含有する多官能性モノマーを主成分とするUV硬化型材料(2)60〜90重量部(不揮発分として)と、
架橋性ポリマー(3)を不揮発分として10〜40重量部と(ただし、前記UV硬化型材料(2)および架橋性ポリマー(3)の合計量は100重量部である)、
前記トリアセチルセルロースフィルム(1)を溶解または膨潤させる溶剤(5)の少なくとも1種と、
前記架橋性ポリマー(3)を溶解させかつトリアセチルセルロースフィルム(1)を溶解かつ膨潤させない溶剤(6)の少なくとも1種と
を含有する。
請求項2に記載の発明は、前記ハードコート層の膜厚が20μm以下であることを特徴とする請求項1記載の高硬度ハードコートフィルムである。
請求項3に記載の発明は、前記溶剤(5)が、ジブチルエーテル、ジメトキシエタン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、アセチルアセトンおよびシクロヘキサノンから選択された少なくとも1種であり、前記溶剤(6)が、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサンおよびメチルイソブチルケトンから選択された少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または2記載の高硬度ハードコートフィルムである。
請求項4に記載の発明は、前記溶剤(5)が、30重量部以上70重量部以下であり、かつ前記溶剤(6)が30重量部以上70重量部以下であり、前記溶剤(5)と溶剤(6)の合計量が100重量部であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の高硬度ハードコートフィルムである。
請求項5に記載の発明は、前記溶剤(5)が、酢酸メチルであり、かつ前記溶剤(6)がメチルイソブチルケトンまたはトルエンであることを特徴とする請求項4記載の高硬度ハードコートフィルムである。
請求項6に記載の発明は、前記架橋性ポリマー(3)が、アクリル樹脂であることを特徴とする請求項5記載の高硬度ハードコートフィルムである。
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれかに記載の高硬度ハードコートフィルムのハードコート層上に低屈折率層を備えることを特徴とする反射防止フィルムである。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、高い表面硬度をもち、カールが低く、さらに密着性、透明性に優れたハードコートフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明を詳細に説明する。
通常のハードコート層は、表面硬度を得る為にハードコート層の膜厚を厚くする必要があり、その結果基材との密着性が低下していた。そこで、トリアセチルセルロースフィルムを溶解または膨潤させる溶剤を用いることにより、密着性に優れたハードコートフィルムを提供することができる。しかしながら、トリアセチルセルロースフィルムを溶解または膨潤させる溶剤のみ用いた場合、表面硬度が低下するなどの問題が発生していた。そこで、トリアセチルセルロースフィルムを溶解かつ膨潤させない溶剤を併用させることにより、密着性に優れかつ高い表面硬度を持つハードコートフィルムを提供できる。
【0007】
トリアセチルセルロースフィルム(1)は、複屈折が少なく、透明性、屈折率、分散などの光学特性、さらには耐衝撃性、耐熱性、耐久性などの諸物性の点に優れており、更に市販の溶剤によって容易に溶解または膨潤する為、本発明においては他のフィルムよりも好ましい。
トリアセチルセルロースフィルム(1)には、各種安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、着色剤、酸化防止剤、難燃剤等が添加されていても良い。
また、トリアセチルセルロースフィルム(1)の厚みは特に限定されるものではないが、20〜200μmが好ましい。
【0008】
UV硬化型材料(2)は、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を含有する多官能性モノマーを主成分とする。多官能性モノマーとしては、1,4‐ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、3−メチルペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールビスβ‐(メタ)アクリロイルオキシプロピネート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリ(2−ヒドロキシエチル)イソシアネートジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、2,3‐ビス(メタ)アクリロイルオキシエチルオキシメチル[2.2.1]ヘプタン、ポリ1,2−ブタジエンジ(メタ)アクリレート、1,2−ビス(メタ)アクリロイルオキシメチルヘキサン、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラデカンエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、10−デカンジオール(メタ)アクリレート、3,8−ビス(メタ)アクリロイルオキシメチルトリシクロ[5.2.10]デカン、水素添加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、1、 4−ビス((メタ)アクリロイルオキシメチル)シクロヘキサン、ヒドロキシピバリンサンエステルネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、エポキシ変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。多官能モノマーは、単独で使用しても良いし、2種類以上を併用しても良い。これらは、塗液において、モノマーであってもよいし、一部が重合したオリゴマーであってもかまわない。また、必要で有れば単官能モノマーと併用して共重合させることもできる。
【0009】
UV硬化型材料(2)は、架橋性ポリマー(3)10〜40重量部に対し90〜60重量部程度が望ましく、特に架橋性ポリマー(3)15〜30重量部に対し85〜70重量部が好ましい。
ただし、UV硬化型材料(2)および架橋性ポリマー(3)の合計量は100重量部である。
【0010】
ハードコート層形成用組成物には、更に光重合開始剤を配合できる。その例としては、例えば、2,2−エトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ジベンゾイル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、p−クロロベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、ミヒラーケトン、アセトフェノン、2−クロロチオキサントン等が挙げられる。これらを単独、もしくは2種類以上合わせて用いても良い。
また、光増感剤としてトリエチルアミン、トリエタノールアミン、2−ジメチルアミノエタノール等の3級アミン、トリフェニルホスフィン等のアルキルフォスフィン系、β―チオジグリコール等のチオエーテル系をあげることが出来、これらを1種類あるいは2種類以上を混合して使用できる。
さらに、性能改良のため、泡消剤、レベリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、重合禁止剤等を含有することができる。
【0011】
架橋性ポリマー(3)としては、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリシロキサン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリカーボネート系樹脂などが挙げられる。また、これらの有機物ポリマー成分はそれぞれ単独での使用あるいは2種以上を併用することが可能であり、さらに有機物ポリマーには各種硬化剤、架橋剤などを用いて三次元架橋することも可能であり、また、反応性の官能基をペンダントさせたものでも良い。
前述のように、架橋性ポリマー(3)は、UV硬化型材料(2)と架橋性ポリマー(3)の合計を100重量部とした際に、10〜40重量部であることが好ましい。架橋性ポリマー(3)が10重量部に満たない場合、ハードコート形成後のカールの度合いが大きくなってしまう。また、架橋性ポリマー(3)が40重量部を超えるような場合では、形成されたハードコート層が十分に高い硬度を得られなくなってしまう。本発明においては、UV硬化型材料(2)と架橋性ポリマー(3)を用い、両者の割合をコントロールすることにより、カールの度合いが小さく、高硬度であるハードコートフィルムを形成することが可能となった。
【0012】
ハードコート層(4)を硬化させる方法としては、例えば、紫外線照射、加熱等を用いることができる。紫外線照射の場合、高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ等の有電極ランプの他、フュージョンランプに代表される無電極ランプ等を使用することができる。紫外線照射量は、通常100〜800mJ/cm程度である。
ハードコート層(4)は、鉛筆硬度、塗工精度、取扱いから、膜厚は20μm以下が望ましく、特に8〜15μmの範囲が好ましい。
ハードコート層(4)は、ウェットコーティング法(ディップコーティング法、スピンコーティング法、フローコーティング法、スプレーコーティング法、ロールコーティング法、グラビアロールコーティング法、エアドクターコーティング法、プレードコーティング法、ワイヤードクターコーティング法、ナイフコーティング法、リバースコーティング法、トランスファロールコーティング法、マイクログラビアコーティング法、キスコーティング法、キャストコーティング法、スロットオリフィスコーティング法、カレンダーコーティング法、ダイコーティング法等)によりトリアセチルセルロースフィルム(1)の少なくとも片面に塗工される。
【0013】
溶剤(5)としては、トリアセチルセルロースフィルム(1)を溶解または膨潤させる溶剤として、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、プロピレンオキシド、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、1,3,5−トリオキサン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトール等のエーテル類、またアセトン、アセチルアセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、およびメチルシクロヘキサノン等の一部のケトン類、また蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸n−ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン醸エチル、酢酸n−ペンチル、およびγ−プチロラクトン等のエステル類、さらにメチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のセロソルブ類が挙げられる。これらは1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、ジブチルエーテル、ジメトキシエタン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、アセチルアセトンおよびシクロヘキサノンから選択された少なくとも1種が好ましい。
トリアセチルセルロースフィルム(1)を溶解または膨潤させる溶剤(5)の使用により、密着性を向上させることが可能である。
【0014】
架橋性ポリマー(3)を溶解させかつトリアセチルセルロースフィルム(1)を溶解かつ膨潤させない溶剤(6)としては、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、シクロヘキシルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、メチルイソブチルケトン、メチルブチルケトンなどの一部のケトン類などが挙げられる。これらは1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサンおよびメチルイソブチルケトンから選択された少なくとも1種が好ましい。
溶剤(6)の使用により、トリアセチルセルロースフィルム(1)が溶解しすぎることを抑制し、ハードコート層(4)の膜厚が20μm以下であっても鉛筆硬度4Hを得ることが可能である。
溶剤(5)と溶剤(6)の合計を100重量部とした際に、溶剤(5)は30重量部〜70重量部であり、溶剤(6)は30重量部〜70重量部であることが好ましい。溶剤(5)が30重量部に満たない場合、塗液がトリアセチルセルロースフィルム(1)を十分に溶解することが出来ずに、形成されたハードコート層(4)とトリアセチルセルロースフィルム(1)との界面において十分な密着性が得られない。また、溶剤(5)が70重量部を超えるような場合、塗液がトリアセチルセルロースフィルム(1)を溶解しすぎてしまい、十分な表面硬度が得られないことがある。
また、これらの溶剤(5)および(6)は、ハードコート層形成用組成物全体を100重量部とした際に、10〜80重量部が望ましく、特に30〜70重量部が好ましい。溶剤が10重量部に満たない場合、塗液の粘度が高いために均一な膜厚のハードコート層(4)を形成することができなくなってしまう。また、80重量部を超えるような場合には、生産性が低下してしまう。
【0015】
本発明の高硬度ハードコートフィルムは、必要に応じて、ハードコート層上に反射防止性能、帯電防止性能、防汚性能、防眩性能、電磁波シールド性能、赤外線吸収性能、紫外線吸収性能、色補正性能等を有する機能層が設けられる。これらの機能層としては、反射防止層、帯電防止層、防汚層、防眩層、電磁波遮蔽層、赤外線吸収層、紫外線吸収層、色補正層等が挙げられる。なお、これらの機能層は単層であってもかまわないし、複数の層であってもかまわない。例えば、反射防止層にあっては、低屈折率層単層から構成されても構わないし、低屈折率層と高屈折率層の繰り返しによる複数層から構成されていても構わない。また、機能層は、防汚性能を有する反射防止層というように、1層で複数の機能を有していても構わない。本発明の高硬度ハードコートフィルム及び機能層がその上に設けられた機能性フィルムは、例えば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、CRTディスプレイといった各種のディスプレイ表面と貼りあわせることができ、耐擦傷性に優れたディスプレイを提供することが可能となる。
【0016】
反射防止層である低屈折率層としては、バインダマトリックス中に低屈折率剤を分散させたものを例示できる。このとき、低屈折率剤の種類は特に限定されるものではないが、フッ化マグネシウム、空気を含有する中空粒子、フッ素樹脂等の低屈折率材料を用いることができる。これらの低屈折率剤を、バインダマトリックス材料であるUV硬化型材料、珪素アルコキシド等の金属アルコキシドに分散させ、必要に応じて溶媒を加えたものを塗液とし、ハードコートフィルムのハードコート層上に塗工する。そして、ハードコート層上に塗液を塗布した後、バインダマトリックス材料として紫外線硬化型材料を用いた場合には紫外線照射することにより、金属アルコキシドを用いた場合には焼成することにより、低屈折率層を形成することができ、反射防止フィルムとすることができる。なお、UV硬化型材料としては、先で例示した多官能性モノマーを用いることができ、このとき、光重合開始剤を配合できる。塗工方法としては、ロールコータ、リバースロールコータ、グラビアコータ、ナイフコータ、バーコータ、スロットダイコータを用いた塗工方法を使用することができる。コスト面から、反射防止層は低屈折率層と高屈折率層の繰り返しによる複数層で構成されるのではなく、低屈折率層単層で構成されることが好ましい。また、低屈折率層を形成する前に、ハードコート層と反射防止層との密着性の向上を目的として高硬度ハードコートフィルムのハードコート層に対してアルカリ溶液によるケン化処理をおこなうこともできる。
【実施例】
【0017】
以下、本発明の実施例について詳細に説明するが、本発明は下記例に限定されるものではない。
【0018】
ハードコートフィルムの性能は,下記の方法に従って評価した。
(a)光学特性
(a)−1:ヘイズ値…ハードコートフィルムを写像性測定器[日本電色工業(株)製,NDH−2000 ]を使用して測定した。
【0019】
(b)機械特性
(b)−1:密着性…基材表面を1mm角100点カット後、粘着セロハンテープ〔ニチバン(株)製工業用24mm巾セロテープ(登録商標)〕による剥離の有無を目視判定した(クロスカットテープピール試験)。
(b)−2:鉛筆硬度…JIS K5400に準拠し、試験機法により500g加重で評価した。
【0020】
(c)外観
(c)−1:カール…50mm×2mmの大きさにカットしたサンプルの曲率半径Rを測定した。
【0021】
<実施例1>
厚み80μmのトリアセチルセルロース(全光線透過率:93%、ヘイズ値:0.2%)上に、
PE−3A(ペンタエリスリトールトリアクリレート/共栄社化学製) 80重量部
BGV−12(アクリル樹脂/綜研化学製) 20重量部
イルガキュアー184(光重合開始剤/チバスペシャリティケミカルズ製) 5重量部
酢酸メチル 50重量部
メチルイソブチルケトン 50重量部
を撹拌混合した塗布液を、バーコーティング法により乾燥後の膜厚が12μm程度になるように塗布、乾燥させ、高圧水銀灯により600mJ/cmの紫外線を照射し、ハードコートフィルムを作製した。このフィルムの性能評価結果を表1に示す。
【0022】
<実施例2>
PE−3A(共栄社化学製) 80重量部
BGV−12(綜研化学製) 20重量部
イルガキュアー184 5重量部
酢酸メチル 80重量部
メチルイソブチルケトン 20重量部
とした以外は実施例1と同様にしてハードコートフィルムを作製した。このフィルムの性能評価結果を表1に示す。
【0023】
<実施例3>
PE−3A(共栄社化学製) 80重量部
BGV−12(綜研化学製) 20重量部
イルガキュアー184 5重量部
酢酸メチル 20重量部
メチルイソブチルケトン 80重量部
とした以外は実施例1と同様にしてハードコートフィルムを作製した。このフィルムの性能評価結果を表1に示す。
【0024】
<比較例1>
PE−3A(共栄社化学製) 100重量部
イルガキュアー184 5重量部
酢酸メチル 50重量部
メチルイソブチルケトン 50重量部
とした以外は実施例1と同様にしてハードコートフィルムを作製した。このフィルムの性能評価結果を表1に示す。
【0025】
<比較例2>
PE−3A(共栄社化学製) 50重量部
BGV−12(綜研化学製) 50重量部
イルガキュアー184 5重量部
酢酸メチル 50重量部
メチルイソブチルケトン 50重量部
とした以外は実施例1と同様にしてハードコートフィルムを作製した。このフィルムの性能評価結果を表1に示す。
【0026】
<比較例3>
PE−3A(共栄社化学製) 80重量部
BGV−12(綜研化学製) 20重量部
イルガキュアー184 5重量部
メチルイソブチルケトン 50重量部
トルエン 50重量部
とした以外は実施例1と同様にしてハードコートフィルムを作製した。このフィルムの性能評価結果を表1に示す。
【0027】
【表1】

【0028】
表1の結果から明らかなように、UV硬化型材料(2)と架橋性ポリマー(3)の使用割合は適切な範囲にコントロールし、トリアセチルセルロースフィルム(1)を溶解または膨潤させる溶剤(5)と、架橋性ポリマー(3)を溶解させかつトリアセチルセルロースフィルム(1)を溶解かつ膨潤させない溶剤(6)とを併用させることにより、密着性、表面硬度、耐カール性に優れたハードコートフィルムを提供できる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明のハードコートフィルムは、高い表面硬度をもち、カールが低く、更に、密着性に優れ、透明性に優れているので、例えば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、CRTディスプレイといった各種のディスプレイ表面と貼りあわせることができ、耐擦傷性に優れたディスプレイを提供することが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリアセチルセルロースフィルム(1)の少なくとも片面に、下記のハードコート層形成用組成物を塗布し、これを硬化してハードコート層(4)を形成してなることを特徴とする高硬度ハードコートフィルム。
ハードコート層形成用組成物:
1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を含有する多官能性モノマーを主成分とするUV硬化型材料(2)60〜90重量部(不揮発分として)と、
架橋性ポリマー(3)を不揮発分として10〜40重量部と(ただし、前記UV硬化型材料(2)および架橋性ポリマー(3)の合計量は100重量部である)、
前記トリアセチルセルロースフィルム(1)を溶解または膨潤させる溶剤(5)の少なくとも1種と、
前記架橋性ポリマー(3)を溶解させかつトリアセチルセルロースフィルム(1)を溶解かつ膨潤させない溶剤(6)の少なくとも1種と
を含有する。
【請求項2】
前記ハードコート層の膜厚が20μm以下であることを特徴とする請求項1記載の高硬度ハードコートフィルム。
【請求項3】
前記溶剤(5)が、ジブチルエーテル、ジメトキシエタン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、アセチルアセトンおよびシクロヘキサノンから選択された少なくとも1種であり、前記溶剤(6)が、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサンおよびメチルイソブチルケトンから選択された少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または2記載の高硬度ハードコートフィルム。
【請求項4】
前記溶剤(5)が、30重量部以上70重量部以下であり、かつ前記溶剤(6)が30重量部以上70重量部以下であり、前記溶剤(5)と溶剤(6)の合計量が100重量部であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の高硬度ハードコートフィルム。
【請求項5】
前記溶剤(5)が、酢酸メチルであり、かつ前記溶剤(6)がメチルイソブチルケトンまたはトルエンであることを特徴とする請求項4記載の高硬度ハードコートフィルム。
【請求項6】
前記架橋性ポリマー(3)が、アクリル樹脂であることを特徴とする請求項5記載の高硬度ハードコートフィルム。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の高硬度ハードコートフィルムのハードコート層上に低屈折率層を備えることを特徴とする反射防止フィルム。

【公開番号】特開2008−133352(P2008−133352A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−319970(P2006−319970)
【出願日】平成18年11月28日(2006.11.28)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】