説明

高粘度水素化分解基油の製造方法

分留、溶剤抽出、脱ロウおよび水素仕上げを用いることによる基油の製造方法が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基油の製造方法に関する。より詳しくは、本発明は、分留、溶剤抽出、脱ロウおよび水素仕上げを用いて基油を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
未精製鉱油(crude mineral oil)を精製することにより生成された最も価値のある生成物の一つは、潤滑油であることは長く認められてきた。選択された溶剤を用いて、硫黄化合物、含酸素化合物、芳香族などの望ましくない成分を直留留出油から溶剤抽出することによって、潤滑油基材を回収することは通常の慣例である。しかし、パラフィン質ベース原油の入手可能性が減少し、ナフテン質およびアスファルテン質ベース原油の比率が対応して増加するにつれて、潤滑油基材(基油)に対する需要を満足することが、次第に困難になりつつある。
【0003】
比率の増大するナフテン質およびアスファルテン質ベース原油から、潤滑油基材(基油)を製造するため、多くの方法が提案されてきた。特許文献1(Kirkerら)および特許文献2(Changら)には、高品質の潤滑油基材が製造される方法が教示される。前記方法は、高沸点の炭化水素ストリームを、水素化分解条件に付す工程を含む。特許文献1では、水素化分解油生成物を製造するのに、フォージャサイトタイプの高シリカ含量ゼオライト触媒が用いられ、特許文献2では、水素化分解油生成物を製造するのに、水素添加/脱水素成分およびオキシアニオンにより変性された酸性固体成分を含む水素化分解触媒が用いられる。次いで、水素化分解油生成物を処理して潤滑油基材を製造する。
【0004】
しかし依然として、比率の増大するナフテン質およびアスファルテン質のベース原油から、潤滑油基材(基油)を製造する効果的な方法に対する技術的必要性が存在する。
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,171,422号明細書
【特許文献2】米国特許第6,217,747B1号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、基油の製造方法に関する。前記方法は、
a)炭化水素質原料材を、水素化分解触媒と、水素化分解生成物を製造するのに効果的な水素化分解条件下で接触させる工程;
b)前記水素化分解生成物を分留して、少なくとも第一のボトム留分を製造する工程;
c)前記第一のボトム留分を抽出溶剤と接触させて、少なくとも芳香族リッチの抽出物溶液および芳香族リーンのラフィネート溶液を製造する工程;
d)前記抽出溶剤の少なくとも一部を、前記芳香族リーンのラフィネート溶液から除去して、少なくとも芳香族リーンのラフィネートを製造する工程;
e)前記芳香族リーンのラフィネートを脱ロウして、脱ロウ生成物を製造する工程;
f)前記脱ロウ生成物を分留して、少なくとも第二のボトム留分を製造する工程;および
g)前記第二のボトム留分を水素仕上げして、少なくとも一種の基油を製造する工程
を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、少なくとも一種の基油の製造方法である。本発明は、炭化水素質原料材を、適切な水素化分解触媒と、水素化分解生成物を製造するのに効果的な水素化分解条件下で接触させる工程を含む。次いで、水素化分解生成物は分留されて、少なくとも第一のボトム留分が製造される。第一のボトム留分は溶剤抽出され、得られた芳香族リーンのラフィネート溶液は処理されて、芳香族リーンのラフィネート溶液中に存在する抽出溶剤の少なくとも一部が除去される。抽出溶剤の少なくとも一部を、芳香族リーンのラフィネート溶液から除去することにより、芳香族リーンのラフィネートが製造される。次いでこれを脱ロウする。芳香族リーンのラフィネートを脱ロウすることにより、脱ロウ生成物が製造される。次いで、脱ロウ生成物は分留されて、少なくとも第二のボトム留分が製造される。次いでこれは、少なくとも一種の基油を製造するのに効果的な水素仕上げ条件下で水素仕上げされる。本発明により、実施者は、高粘度基油を製造する能力を与えられ、これらの高粘度基油を直接脱ロウする必要はない。
【0008】
語句「芳香族リーンのラフィネート溶液」および「芳香族リッチの抽出物溶液」は、語句「芳香族リーンのラフィネート」および「芳香族リッチの抽出物」と同義ではない。語句「芳香族リーンのラフィネート溶液」および「芳香族リッチの抽出物溶液」は、それぞれの相から溶剤が除去される前(即ち、蒸留またはストリッピング前)の溶剤抽出生成物を云うことを意味する。従って、語句「芳香族リーンのラフィネート」および「芳香族リッチの抽出物」は、「芳香族リーンのラフィネート溶液」および「芳香族リッチの抽出物溶液」に含まれる溶剤の少なくとも一部が除去された後の各生成物を云う。
【0009】
本発明の方法で用いるのに適切な炭化水素質原料材は、潤滑油範囲で沸騰するワックス含有原料材である。これらのストリームは、典型的には、ASTM D86またはASTM D2887によって測定して、10%留出点650゜F(343℃)超を有し、鉱物または合成素材から誘導される。本明細書で用いられる炭化水素質原料材のワックス含有量は、典型的には、炭化水素質原料材を基準として少なくとも50wt%であるが、ワックス100wt%までの範囲であってよい。原料材のパラフィン含有量は、核磁気共鳴分光法(ASTM D5292)または相関法(ASTM D3238)によって測定しうる。高ワックス含有量を有する炭化水素質原料材は、典型的には200以下、またはそれ以上の高い粘度指数を有する。本明細書で用いられる炭化水素質原料材は、溶剤精製プロセス由来の油など、多数の素材から誘導されうる。これらの油には、例えばラフィネート、部分溶剤脱ロウ油、脱瀝油、留出油、減圧軽油、コーカーガスオイル、スラックワックス、フーツ油などや、フィッシャー−トロプシュワックスが含まれる。好ましい原料は、スラックワックスおよびフィッシャー−トロプシュワックスである。スラックワックスは、典型的には、炭化水素原料から溶剤またはプロパン脱ロウによって誘導される。スラックワックスは、いくらかの残油を含み、典型的には脱油される。フーツ油は、脱油されたスラックワックスから誘導される。フィッシャー−トロプシュワックスは、フィッシャー−トロプシュ合成プロセスによって調製される。
【0010】
本明細書で用いられる炭化水素質原料材は、高濃度の窒素および硫黄汚染物も含んでいてよい。炭化水素質原料材を基準として0.2wt%までの窒素、および3.0wt%までの硫黄を含む原料が、本方法で処理されうる。
【0011】
上記に議論されるように、本明細書で用いられる炭化水素質原料材は、水素化分解触媒と、水素化分解生成物を製造するのに効果的な水素化分解条件下で接触される。適切な水素化分解触媒は、典型的には、少なくとも一種の水素添加成分を含む。水素添加成分は、好ましくは耐火性担体上に担持される。適切な耐火性担体の限定しない例には、シリカ−アルミナ、シリカ−マグネシア、シリカ−ジルコニア、アルミナ−ボリア、シリカ−チタニア、シリカ−ジルコニア−チタニア、酸処理クレーなどの二種以上の耐火性酸化物が含まれる。アルミナ−ホスフェートなどの酸性金属ホスフェートもまた、耐火性担体として用いてよい。好ましい耐火性担体は、シリカおよびアルミナの複合物を含む。特に好ましい耐火性担体は、XまたはY結晶タイプの部分脱水されたゼオライト結晶モレキュラーシーブである。これは、比較的均一な細孔直径8〜14オングストロームを有し、シリカ、アルミナおよび一種以上の交換性ゼオライトカチオンを単独で、または他の非晶質ベースとの完全な混合物として含む。これらの特に好ましい耐火性担体は、典型的には、20〜100wt%のゼオライトを含む。
【0012】
典型的には、水素添加成分は、耐火性担体基準(upon the refractory support)で0.3〜25wt%の量で存在する。「担体基準」とは、パーセントが、担体の重量を基準とすることを意味する。例えば、担体が重量100gである場合、20wt%の第VIII族金属とは、第VIII族金属20gが担体上にあることを意味する。適切な水素添加成分は、第VIB族金属,第VIII族金属、それらの酸化物およびそれらの混合物よりなる群から選択される。適切な水素添加成分の限定しない例には、クロム、タングステン、コバルト、ニッケルの酸化物、対応する遊離金属およびそれらのあらゆる組み合わせが含まれる。他の遷移金属、例えばレニウムなどの酸化物もまた、水素添加成分として用いうる。好ましい水素添加成分は、白金、パラジウム、ロジウムおよびイリジウムである。
【0013】
本明細書で用いられる効果的な水素化分解条件は、400〜800゜F、好ましくは450〜750゜Fの温度、100〜1000psig、好ましくは200〜600psigの全圧、50〜450psig、好ましくは150〜360psigの水素分圧、および200〜2000、好ましくは500〜1500のガス空間速度(GHSV)と見なすべきである。より高い全圧、およびより高い水素分圧を用いてもよい。従って、本発明の実施者は、水素化分解生成物を製造するのに、あらゆる知られた水素化分解触媒を、あらゆる知られた水素化分解条件下で用いうる。
【0014】
次いで、水素化分解生成物を適切な分留塔で分留する。本明細書で用いる分留塔は、減圧または常圧蒸留塔のいずれでもよい。減圧蒸留塔を用いることが好ましい。減圧蒸留塔の底部および頂部の温度は、少なくとも第一のボトム留分(次で定義)が減圧蒸留処理で効果的に製造されるようになるいかなる温度でもよい。好ましくは、減圧蒸留塔の底部および頂部の温度は、それぞれ585゜Fおよび485゜Fであり、より好ましくは、それぞれ575゜Fおよび475゜Fである。本明細書で用いるのに適切な減圧は、用いると、少なくとも第一のボトム留分が減圧蒸留塔で効果的に製造されるようになるいかなる圧力でもよい。好ましくは、減圧蒸留塔の圧力は、45〜60psig(減圧)であり、最も好ましくは50〜55psig(減圧)である。第一のボトム留分とは、分留塔からの、より高沸点を有する留分を意味することに留意されたい。
【0015】
このように製造された第一のボトム留分は、典型的には、ASTM D6417によって測定して350〜450℃、好ましくは375〜430℃の中間沸点範囲(50%LV)を有し、第一のボトムストリームは、中間沸点範囲430℃超〜575℃、より好ましくは460〜525℃を有する。第一のボトム留分の粘度は、200SUS(100°F)〜300SUS(100°F)、200SUS(100°F)〜275SUS(100°F)、より好ましくは225SUS(100°F)〜275SUS(100°F)である。
【0016】
水素化分解生成物を分留した後、このように製造された上記に定義される第一のボトム留分を抽出溶剤と接触させ、少なくとも芳香族リッチの抽出物溶液および芳香族リーンのラフィネート溶液を製造する。本明細書で用いる抽出溶剤は、非芳香族炭化水素よりむしろ芳香族炭化水素に親和力があると知られるいかなる抽出溶剤でもよい。これらの抽出溶剤の限定しない例には、スルホラン、フルフラール、フェノールおよびN−メチルピロリドン(「NMP」)が含まれる。フルフラール、フェノールおよびNMPが好ましい。
【0017】
第一のボトム留分は、適切ないかなる溶剤抽出方法で抽出溶剤と接触させてもよい。適切な溶剤抽出方法の限定しない例には、バッチ法、セミ−バッチ法および連続法が含まれる。抽出プロセスは連続プロセスであることが好ましく、連続プロセスは向流方式で運転されることがより好ましい。向流配置においては、第一のボトム留分を、細長い接触域または塔のより低い端部中に導入して、上流方向に流し、抽出溶剤を、塔のより高い端部に導入して、流上する第一のボトム留分と向流して下流方向に流れるようにすることが好ましい。この配置においては、第一のボトム留分は、抽出溶剤に向流して押しやられる。これにより、抽出溶剤および第一のボトム留分の間の完全な接触がもたらされる。抽出溶剤および第一のボトム留分は、接触域の対向する端部に移動する。
【0018】
第一のボトム留分が抽出溶剤と接触される条件には、塔頂温度180°F(82℃)〜225°F(107℃)、好ましくは160°F(71℃)〜205°F(96℃)が含まれる。塔底温度は、典型的には40°F、好ましくは30°Fであり、塔頂温度より低い。圧力は、典型的には0psi(0kPa)〜20psi(138kPa)、好ましくは5psi(34kPa)〜15psi(103kPa)である。最も好ましい実施形態においては、温度および圧力は、抽出溶剤における第一のボトム留分の完全な混和を防止するように選択される。
【0019】
第一のボトム留分と抽出溶剤の接触により、少なくとも芳香族リッチの抽出物溶液および芳香族リーンのラフィネート溶液が製造される。次いで芳香族リーンのラフィネート溶液を処理して、それに含まれる抽出溶剤の少なくとも一部を除去し、芳香族リーンのラフィネートを製造する。抽出溶剤の少なくとも一部の除去は、抽出溶剤の少なくとも一部を芳香族リーンのラフィネート溶液から分離するのに効果的な、技術的に知られたいかなる手段で行ってもよい。好ましくは、第一の芳香族リーンのラフィネートは、ストリッピングまたは蒸留塔において、抽出溶剤の少なくとも一部を第一の芳香族リーンのラフィネート溶液から分離することによって製造される。少なくとも一部とは、第一の芳香族リーンのラフィネート溶液を基準として少なくとも80vol%、好ましくは90vol%、より好ましくは95vol%の抽出溶剤を、第一の芳香族リーンのラフィネート溶液から除去することを意味する。最も好ましくは、実質的に全ての抽出溶剤を、芳香族リーンのラフィネート溶液から除去する。
【0020】
抽出溶剤の少なくとも一部を第一の芳香族リーンのラフィネート溶液から除去するためには、技術的に利用可能な多くの適切なプロセスおよび方法があるものの、それは、蒸留塔を用いることによって最良に達成される。用いられる蒸留塔は、好ましくは、連続的かつ優先的に、抽出溶剤の少なくとも一部を芳香族リーンのラフィネート溶液に存在する炭化水素留分から分離する。蒸留塔の底部および頂部の温度は、芳香族リーンのラフィネート溶液に存在する炭化水素留分から、抽出溶剤の少なくとも一部が減圧蒸留で効果的に分離されるようになるいかなる温度でもよい。好ましくは、蒸留塔の底部および頂部の温度は、それぞれ585°Fおよび485°Fであり、より好ましくは、それぞれ575°Fおよび475°Fである。本明細書で用いるのに適切な圧力は、用いると、芳香族リーンのラフィネート溶液に存在する炭化水素留分から、抽出溶剤の少なくとも一部が蒸留塔で効果的に分離されるようになるいかなる圧力でもよい。好ましくは、減圧蒸留塔の圧力は、45〜60psig、最も好ましくは50〜55psigである。また、回収された溶剤を、抽出プロセスの初めにリサイクルされることも好ましい。
【0021】
芳香族リッチの抽出物溶液を、更なる処理に送ってもよい。しかし、芳香族リッチの抽出物溶液を、芳香族リーンのラフィネート溶液と同じ方法で処理することが好ましい。即ち、抽出溶剤の少なくとも一部を除去し、少なくとも芳香族リッチの抽出物が製造されるように処理することが好ましい。
【0022】
抽出溶剤の少なくとも一部を除去した後、得られた芳香族リーンのラフィネートを脱ロウして、脱ロウ生成物を製造する。芳香族リーンのラフィネートを脱ロウする方法は、適切ないかなる脱ロウ方法またはプロセスでもよい。適切な脱ロウ方法の限定しない例には、接触および溶剤脱ロウが含まれる。好ましくは溶剤脱ロウである。芳香族リーンのラフィネートの溶剤脱ロウにおいては、その有効量、例えば溶剤/油比50〜700vol%、最も好ましくは溶剤/油比100〜500vol%で、適切ないかなる脱ロウ溶剤を用いてもよい。適切な脱ロウ溶剤の限定しない例には、メチルエチルケトン(「MEK」)およびメチルイソブチルケトン(「MIBK」)が含まれる。好ましい脱ロウ溶剤には、MEKとMIBKの混合物が含まれる。好ましくは、溶剤の全容積を基準としてMEK30vol%を含むそれらの混合物である。
【0023】
脱ロウ後、脱ロウ生成物を分留して、少なくとも第二のボトム留分を製造する。脱ロウ生成物を分留するのに用いられる分留塔は、減圧または常圧蒸留塔のいずれでもよい。減圧蒸留塔を用いることが好ましい。減圧蒸留塔の底部および頂部の温度は、少なくとも第二のボトム留分(次で定義)が減圧蒸留で効果的に製造されるようになるいかなる温度でもよい。好ましくは、蒸留塔の底部および頂部の温度は、それぞれ585°Fおよび485°Fであり、より好ましくは、それぞれ575°Fおよび475°Fである。本明細書で用いるのに適切な減圧は、用いると、少なくとも第二のボトム留分(次で定義)が減圧蒸留塔で効果的に製造されるようになるいかなる圧力でもよい。好ましくは、減圧蒸留塔の圧力は、45〜60psig(減圧)、最も好ましくは50〜55psig(減圧)である。第二のボトム留分とは、分留塔からの、より高沸点を有する留分を意味することに留意すべきである。
【0024】
このように製造された第二のボトム留分は、典型的には、中間沸点範囲(50%LV)450℃超〜550℃、より好ましくは460℃〜525℃を有する。第二のボトム留分の粘度は、350SUS(100°F)〜650SUS(100°F)、400SUS(100°F)〜600SUS(100°F)、より好ましくは450SUS(100°F)〜550SUS(100°F)である。
【0025】
前述したように、第二のボトム留分を、効果的な水素仕上げ条件下で水素仕上げして、少なくとも一種の基油を製造する。水素仕上げは、潤滑油範囲のオレフィンおよび残留芳香族を飽和すると共に、残存するヘテロ原子および色相物質を除去するようにした、緩やかな水素化の形態である。従って、第二のボトム留分を水素仕上げすることにより、生成物の品質が所望の仕様に調整される。水素仕上げは一般に、効果的な条件下で実施される。これには、150〜350℃、好ましくは180〜250℃の温度、2859〜20786kPa(400〜3000psig)の全圧、典型的には0.1〜5hr−1、好ましくは0.5〜3hr−1の液空間速度(「LHSV」)および典型的には44.5〜1780m/m(250〜10000scf/B)の水素処理ガス比が含まれる。
【0026】
第二のボトム留分を水素仕上げする際に用いられる触媒は、典型的には、水素化触媒である。第二のボトム留分を水素仕上げするのに用いる適切な水素化触媒は、あらゆる通常の水素化触媒であり、これには、少なくとも一種の第VIII族金属(好ましくはFe、CoおよびNi、より好ましくはCoおよび/またはNi、最も好ましくはCo)および少なくとも一種の第VI族金属(好ましくはMoおよびW、より好ましくはMo)を、高表面積の担体物質(好ましくはアルミナ)上に担持してなるものが含まれる。一種超のタイプの水素化触媒を、同じ水素仕上げ反応槽中で用いることは、本発明の範囲内である。第VIII族金属は、典型的には2〜20wt%、好ましくは4〜12%存在する。第VI族金属は、典型的には5〜50wt%、好ましくは10〜40wt%、より好ましくは20〜30wt%存在する。全金属の重量パーセントは、担体基準(on support)である。「担体基準」とは、パーセントが担体の重量を基準とすることを意味する。例えば、担体が重量100gである場合、20wt%の第VIII族金属とは、第VIII族金属20gが担体上にあることを意味する。
【0027】
本発明の方法に従って製造された少なくとも一種の基油は、非常に高い粘度を有し、上記された原料から高収率で製造できる。少なくとも一種の基油の粘度は、典型的には、第二のボトム留分に対して上記した範囲内に入る。従って、少なくとも一種の基油は、典型的には、中間沸点範囲(50%LV)450℃超〜550℃、より好ましくは460℃〜525℃を有する。少なくとも一種の基油の粘度は、350SUS(100°F)〜650SUS(100°F)、400SUS(100°F)〜600SUS(100°F)、より好ましくは450SUS(100°F)〜550SUS(100°F)である。
【0028】
上記の説明は、本発明の好ましい実施形態に関するもので、本発明をそれに限定するものではない。当業者は、依然として本発明の精神および範囲内にある修正形態および変更形態が存在することを理解する。本明細書において、発明者は、そのようなあらゆる変更形態および修正形態を予想し、またそのような変更形態および修正形態が、添付の特許請求の範囲によって、本発明の真の精神および範囲内に包含されることを意図する。
【0029】
次の実施例は、本発明の実施をより良好に例証するのに有用であるが、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0030】
上記の発明に従って基油を製造した。中間沸点450℃を有する原料材を、HCY−642の名で市販される市販水素化分解触媒で水素化分解して、水素化分解生成物を製造した。次いで水素化分解生成物を、減圧分留塔で、ボトム留分(ASTM D6417によって測定した中間沸点範囲(50%LV)450℃超、好ましくは476℃以上、および粘度11.1cSt(100゜F)以上を有する)10vol%を得るように選択された条件下で分留した。次いでこのボトム留分を、フェノール(水0.5〜1.5%)を用いて溶剤抽出した。塔頂温度は205゜Fおよび塔底温度は170゜Fであった。次いで、減圧ストリッピング塔を用いてストリッピング媒体を除去し、芳香族リーンのラフィネートを製造した。次いで、芳香族リーンのラフィネートを、メチルエチルケトン/メチルイソブチルケトン(30vol%MEK/70vol%MIBK)を用い、溶剤/油比4:1(v/v)および−15℃を含む条件下で溶剤脱ロウした。次いで、減圧ストリッピング塔を用いて脱ロウ溶剤を除去し、脱ロウ生成物を製造した。次いで脱ロウ生成物を、減圧分留塔で、第二のボトム留分(下記表1に明示される特性を有する)15vol%を製造するのに十分な条件下で分留した。次いで第二のボトム留分を、C−411の名で市販される市販触媒を用いて、温度280℃、水素400psi、空間速度4(v/v)を含む条件下で水素精製した。この実験の結果を、次の表1に示す。
【0031】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)炭化水素質原料材を、水素化分解触媒と、水素化分解生成物を製造するのに効果的な水素化分解条件下で接触させる工程;
b)前記水素化分解生成物を分留して、少なくとも第一のボトム留分を製造する工程;
c)前記第一のボトム留分を抽出溶剤と接触させて、少なくとも芳香族リッチの抽出物溶液および芳香族リーンのラフィネート溶液を製造する工程;
d)前記抽出溶剤の少なくとも一部を、前記芳香族リーンのラフィネート溶液から除去して、少なくとも芳香族リーンのラフィネートを製造する工程;
e)前記芳香族リーンのラフィネートを脱ロウして、脱ロウ生成物を製造する工程;
f)前記脱ロウ生成物を分留して、少なくとも第二のボトム留分を製造する工程;および
g)前記第二のボトム留分を水素仕上げして、少なくとも一種の基油を製造する工程
を含むことを特徴とする基油の製造方法。
【請求項2】
前記炭化水素質原料材は、潤滑油範囲で沸騰することを特徴とする請求項1に記載の基油の製造方法。
【請求項3】
前記水素化分解触媒は、シリカ−アルミナ、シリカ−マグネシア、シリカ−ジルコニア、アルミナ−ボリア、シリカ−チタニア、シリカ−ジルコニア−チタニア、酸処理クレー、酸性金属ホスフェートなどよりなる群から選択される耐火性担体上に担持された、第VIB族金属、第VIII族金属、それらの酸化物およびそれらの混合物よりなる群から選択される少なくとも一種の水素添加金属を含むことを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の基油の製造方法。
【請求項4】
前記耐火性担体は、XまたはY結晶タイプの、部分脱水されたゼオライト結晶モレキュラーシーブから選択され、8〜14オングストロームの比較的均一な細孔直径を有し、シリカ、アルミナおよび一種以上の交換性ゼオライトカチオンを、単独で、または20〜100wt%のゼオライトを含む他の非晶質ベースとの完全な混合物として含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の基油の製造方法。
【請求項5】
前記効果的な水素化分解条件は、400〜800゜Fの温度、100〜1000psigの全圧、50〜450psigの水素分圧および200〜2000のガス空間速度(GHSV)を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の基油の製造方法。
【請求項6】
前記第一のボトム留分は、ASTM D6417によって測定される350〜450℃の中間沸点範囲(50%LV)を有し、200SUS(100゜F)〜300SUS(100゜F)の粘度を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の基油の製造方法。
【請求項7】
前記第一のボトム留分は、非芳香族炭化水素に比較して芳香族炭化水素に親和性があると知られる抽出溶剤から選択される抽出溶剤と、適切な溶剤抽出方法によって接触することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の基油の製造方法。
【請求項8】
前記適切な抽出溶剤方法は、スルホラン、フルフラール、フェノールおよびN−メチルピロリドン(「NMP」)よりなる群から選択される抽出溶剤を用いる連続法であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の基油の製造方法。
【請求項9】
前記抽出溶剤の少なくとも一部の、前記芳香族リッチのラフィネート溶液からの除去は、減圧蒸留塔を用いて達成されることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の基油の製造方法。
【請求項10】
前記芳香族リーンのラフィネートは、接触および溶剤脱ロウよりなる群から選択される脱ロウ方法を用いて脱ロウされることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の基油の製造方法。
【請求項11】
前記脱ロウ生成物および前記水素化分解生成物は、減圧または常圧蒸留塔で分留されることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の基油の製造方法。
【請求項12】
前記第二のボトム留分は、450℃超〜550℃、より好ましくは460℃〜525℃の中間沸点範囲(50%LV)を有し、200SUS(100゜F)〜300SUS(100゜F)の粘度を有することを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の基油の製造方法。
【請求項13】
前記第二のボトム留分は、従来の水素化触媒から選択される触媒を用いて、効果的な水素仕上げ条件下で水素仕上げされ、前記効果的な水素仕上げ条件は、150〜350℃の温度、典型的には2859〜20786kPa(400〜3000psig)の全圧、0.1〜5LHSV(hr−1)の液空間速度および44.5〜1780m/m(250〜10000scf/B)の水素処理ガス比を含むことを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の基油の製造方法。

【公表番号】特表2006−527275(P2006−527275A)
【公表日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−509094(P2006−509094)
【出願日】平成16年6月3日(2004.6.3)
【国際出願番号】PCT/US2004/018243
【国際公開番号】WO2005/001001
【国際公開日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(390023630)エクソンモービル リサーチ アンド エンジニアリング カンパニー (442)
【氏名又は名称原語表記】EXXON RESEARCH AND ENGINEERING COMPANY
【Fターム(参考)】