説明

高耐熱熱可塑性樹脂製歯車

【課題】耐熱性が高く、摩耗強度および剛性が高く、軽量であるためにモーターの負荷を小さく、しかも組立製品を軽くすることが可能であり、しかもリサイクル可能な熱可塑性樹脂製歯車を提供する。
【解決手段】(A)ポリフタルアミド樹脂および/またはポリエーテルエーテルケトン樹
脂、(B)ガラス繊維および/またはカーボン繊維と、(C)ポリテトラフルオロエチレンとを含む樹脂組成物からなり、(A)〜(C)の合計を100重量%としたときに、(B)の含有量が5〜50重量%、(C)ポリテトラフルオロエチレンの含有量が3〜30重量%である樹脂組成
物をからなる熱可塑性樹脂製歯車。(B)がガラス繊維であり、かつガラス繊維の含有量が
5〜50重量%である。(B)がカーボン繊維であり、かつカーボン繊維の含有量が5〜4
0重量%である。印刷機のトナー定着用ローラーのギアである前記熱可塑性樹脂製歯車。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優れた摺動特性を有し、複写機、プリンター、ファックス等の印刷機器の定着装置に使用可能な、耐熱性を有する熱可塑性樹脂性歯車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、OA機器、音響製品、電気・電子機械、工業機械などの各種装置のモーター減速部品に自動車部品などに用いられる各種歯車は、軽量性、製造容易性、コストなどを勘案して、熱可塑性樹脂によって製造されたものが提案され、一部実用化されている。
【0003】
このような熱可塑性樹脂製歯車としては、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂
ポリイミド樹脂や、ポリアセタールケトン樹脂、ポリアリールエーテル樹脂、ポリアミドイミド樹脂などのエンジニアリングプラスチックスが用いられている。
【0004】
たとえば、ポリアミド樹脂製歯車では、樹脂としてナイロン66、ナイロン6等を用い、これに強度・剛性を向上するためにガラス繊維や炭素繊維などを充填して強化した材料を射出成形し、ギアの歯部を切削加工して形成した樹脂製ギアが使用されている。
【0005】
近年事務機器などの分野においては、その樹脂製歯車を使用する部品が増加する傾向にある。
このような樹脂製歯車として、たとえば、特開平10−251512号公報(特許文献1)には、ポリアミドイミド樹脂とポリフェニレンスルフィド樹脂と繊維系充填材と固体潤滑剤とを含む組成物からなる歯車が開示されている。特許文献1では、繊維系充填剤としてガラス繊維、固体潤滑剤としてポリテトラフルオロエチレンが開示されている。
【0006】
また、特開2002−31213号公報(特許文献2)には、ポリアセタール、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリフェニレンサルフィドなどの結晶性ポリマーと、高級カルボン酸金属塩(潤滑剤)とからなる組成物から得られた歯車が開示されている。
【0007】
特開平8−216274号公報(特許文献3)には、ポリフェニレンサルフィド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリアミドイミド、芳香族ポリエステル、ナイロン(ポリアミド)、ポリエーテルイミドなどの熱可塑性樹脂に、ガラス繊維などの繊維状強化材を配合した組成物からなり、噛合面にフルオロポリエーテル重合体で表面処理された歯車が開示されている。かかる歯車は、電子写真装置の定着装置、または現像装置に適用できる旨が開示されている。
【0008】
さらにまた、特開2001−336608号公報(特許文献4)には、ディスク部分がガラス繊維強化ポリアセタール樹脂、ガラス繊維強化ポリエステル樹脂、ガラス繊維強化ポリアミド樹脂、ガラス強化ポリカーボネート樹脂などからなり、歯車部分が、ポリアセタール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、非強化ポリカーボネート樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂からなる歯車が開示されている。
【特許文献1】特開平10−251512号公報
【特許文献2】特開2002−31213号公報
【特許文献3】特開平8−216274号公報
【特許文献4】特開2001−336608号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一般的に、複写機、プリンター、ファックス等の印刷機器の定着装置に使用される、樹脂ギアは、使用温度の要求が近年高くなる傾向にあり、200℃以上の耐熱性も要求されるようになっている。ところが、従来より樹脂ギアに使用されているナイロン6、ナイロン66等の樹脂は吸水による寸法変化が大きくて高精度のギアが得にくく、耐熱性の面でも劣るという問題があった。このため、現状は、焼結金属や快削鋼などの金属、またはポリイミドなどの熱硬化性樹脂が使用されている。
【0010】
また、OA機器の小型、軽量化及び制音性能を向上させるためには、従来より使用されていた金属製歯車では、その重量が製品の全重量に占める割合が増加し、歯車自体の重量削減が課題となっている。さらに、モーターも小型化すると、金属歯車を駆動する際のトルク増大も問題となっている。
【0011】
これに対し、前記特許文献1〜4のように樹脂製歯車が開発されているが、これらの樹脂製歯車では、磨耗強度、剛性や、高温下での耐熱性が不充分であった。また、熱硬化性樹脂製歯車も使用されていたが、熱硬化性樹脂は一般的に比重が高く、また、リサイクルに不利な材料であった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このような情況のもと、このような歯車に好適に使用できる熱可塑性樹脂組成物について、本発明者らは鋭意検討した。その結果、ポリフタルアミド(芳香族ナイロン)またはポリエーテルエーテルケトンを、テトラフルオロエチレンおよびガラス繊維・カーボン繊維と組み合わせることで、耐熱性が向上するとともに、摩耗強度および剛性が高く、軽量であるためにモーターの負荷を小さく、しかも組立製品を軽くすることが可能であるとともに、リサイクル可能であることを見出した。
【0013】
すなわち、本発明に係る熱可塑性樹脂製歯車は以下のとおりである。
(1)(A)ポリフタルアミド樹脂および/またはポリエーテルエーテルケトン樹脂、(B)ガラス繊維および/またはカーボン繊維と、(C)ポリテトラフルオロエチレンとを含む樹脂
組成物からなり、
(A)〜(C)の合計を100重量%としたときに、
(B)の含有量が5〜50重量%、(C)ポリテトラフルオロエチレンの含有量が3〜30重量%である樹脂組成物をからなる熱可塑性樹脂製歯車。
(2)(B)がガラス繊維であり、かつガラス繊維の含有量が5〜50重量%であることを
特徴とする(1)の熱可塑性樹脂製歯車。
(3)(B)がカーボン繊維であり、かつカーボン繊維の含有量が5〜40重量%であるこ
とを特徴とする(1)の熱可塑性樹脂製歯車。
(4)印刷機のトナー定着用ローラーのギアである前記熱可塑性樹脂製歯車。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば特定の樹脂組成を有する樹脂組成物から構成されているので、耐熱性に長け、しかも、従来使用できなかった200℃程度の高温下で使用しても劣化することがない歯車を提供できる。また特定の樹脂組成物から構成されているので、軽量化及び制音性能の向上を図ることができる。このため駆動時の騒音を低く抑えることができる。しかも従来の金属や熱硬化性樹脂製のものと同程度の耐摩耗性、剛性も有している。
【0015】
さらに、熱可塑性樹脂を使用しているので、製品重量を低くすることも可能であり、モーターのトルクも小さくてするのでモーターも小型化することができる。
しかも使用後の熱可塑性樹脂製歯車は、リサイクルすることができるので、資源の有効利用という点でも技術的価値が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る熱可塑性歯車について具体的に説明する。
[成分(A)]
ポリフタルアミド樹脂
該ポリフタルアミドとしては、米国特許第5916970号に開示されているような、ヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸を主なモノマーとした縮合物が好適に用いられる。
【0017】
ヘキサメチレンジアミンとともにトリメチルヘキサメチレンジアミンを用いてもよく、また、テレフタル酸とともにイソフタル酸、アジピン酸を使用してもよい。このポリフタルアミドは、一般的に結晶性であり高い耐熱性を示す。
【0018】
また、本発明では、このようなポリフタルアミドとともに、公知のポリアミド(その他ポリアミド)を使用しても良い。公知のポリアミドとしては、6ナイロン、66ナイロン、46ナイロンなどの脂肪族ポリアミド、テレフタル酸及び/又はイソフタル酸及びトリメチルヘキサメチレンジアミンから製造されたポリアミド、アジピン酸及びm−キシリレンジアミンから製造されたポリアミド、アジピン酸、アゼライン酸及び2,2−ビス−(p−アミノシクロヘキシル)プロパンから製造されたポリアミド、テレフタル酸及び4,4′−ジアミノジシクロヘキシルメタンから製造されたポリアミドなどの芳香族ポリアミドなどが挙げられる。
【0019】
これらのその他ポリアミドは、前記ポリフタルアミドとの合計100重量%中に、50重
量%以下、好ましくは30重量%以下の量で含まれていることが望ましい。特に脂肪族ポリアミドの量が多くなると、吸水性が高く、耐熱性及び寸法安定性に劣ることがあり、また、芳香族ポリアミドの量が増えると流動性が低下し、成形性が悪くなることがある。
【0020】
本発明において用いるポリフタルアミド樹脂の重合度については、特に制限がなく、1%濃硫酸溶液の25℃における相対粘度が、たとえば1.5〜5.0の範囲内にあるものを用いることができる。これらのポリフタルアミド樹脂の末端基は、通常、溶融粘度調整および熱安定性向上のため末端封鎖などが行われていてもよい。
ポリエーテルエーテルケトン樹脂
ポリエーテルエーテルケトンは、繰り返し単位がオキシ-1,4-フェニレン-オキシ-1,4-
フェニレン-カルボニルからなり、下記式で表される。
【0021】
【化1】

【0022】
このようなポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK樹脂)は、ビクトレックス・エムシー(株)より製造・販売されている。このようなPEEK樹脂は、耐熱性が高く、機械的強度、耐薬品性、成形加工性に優れた材料として知られている。
[成分(B)]
成分(B)の繊維状充填材は、歯車の強化目的で添加されるが、通常アスペクト比で2
〜100のものが良い。具体的には、ガラス繊維、中空ガラス繊維、カーボン繊維 、中
空カーボン繊維などが挙げられる。
【0023】
ガラス繊維 は、それ自体公知であり、市販のEガラス、Cガラス、Sガラス、Aガラ
ス等各種のガラス繊維 を使用できる。市販の通常のカーボン繊維を使用できる。
ガラス繊維、カーボン繊維は、ミルドガラス繊維、ミルドカーボン繊維であってもよい。
【0024】
また繊維状充填材として、酸化チタンウィスカー、繊維状ワラストナイトなどを使用することも可能である。
ガラス繊維およびカーボン繊維の直径は、好ましくは3〜20ミクロン、特に好ましくは5〜15ミクロンである。上記下限未満では、樹脂と加熱混練する際、ガラス繊維 の
取扱いが困難となり、かつガラス繊維 の樹脂中への分散が悪くなる。上記範囲を超える
と、衝撃強度及び剛性が低下する。樹脂への混練後の平均繊維長は好ましくは150〜800μm、特に好ましくは200〜600μmであり、上記範囲が衝撃強度及び流動性の点で好ましい。アスペクト比(径と長さの比)は、好ましくは10〜40、特に好ましくは15〜35である。上記下限未満では、強度及び剛性が低下し、上記範囲を超えると、流動性及び寸法精度が悪化する。
【0025】
ガラス繊維、カーボン繊維は、エポキシ系やウレタン系などのバインダーで収束されたもの、アミノシランやエポキシシランなどのカップリング剤を添加したもの等を用いることができる。
【0026】
また、これらの繊維状充填材とともに、それ以外の充填剤を含んでいてもよく、形状的に、板状、粒状、無定形などのタルク、マイカ、クレー、シリカ、ガラスフレーク、ガラスビーズ、中空フィラー等を含んでいても良い。これらのフィラーは、単体で用いても良いし、2種以上組み合わせて用いても良い。
[成分(C)]
本発明における成分(C)ポリテトラフルオロエンチレンは、四フッ化エチレンを重合
して得られる、代表的なフッ素樹脂に属するポリマーである。高い耐薬品性を示し、260℃での長期使用が可能な高耐熱性、低摩擦性等の特徴がある。このポリテトラフルオロエチレンは、公知のいずれの製造法により得られるものであってもよい。好ましくは、懸濁重合法あるいは乳化重合法により得られるものである。
【0027】
特に重量平均分子量300万以上、1000万以下のポリテトラフルオロエチレンが好ましい。分子量範囲にあるポリテトラフルオロエチレンはフィブリル形成能を有さないので、摺動磨耗性を向上させることができる。フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンは、難燃性は高いものの、摺動改質性能が低い。その理由は明確ではないものの、フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンは、成形加工時などにせん断によって、フィブリルを形成して、摺動性が低下するものと思料される。これに対し、フィブリル形成能を有さないポリテトラフルオロエチレンは、成形加工時などにフィブリルを形成することがなく、また加工時に均一に溶解するので、摺動性に優れているものと思料される。
【0028】
このようなPTFEとして使用可能な市販品としては、伊国モンテジソン社製:アルゴフロン、デュポン社製:テフロン(登録商標)、英国アイ・シー・アイ社製:フルオン、ダイキン工業社製:ポリフロン等が挙げられる。
【0029】
ポリテトラフルオロエチレンの代わりに、フッ素系樹脂として、α−フルオロアクリル酸フルオロアクリルを必須成分として重合して得られるポリマーを使用することも可能であり、具体的には、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルニトリル、芳香族ポリエステル等にα−フルオロアクリル
酸フルオロアクリルが重合したものが挙げられる。フッ素系樹脂として、ポリアセタール樹脂に、ポリテトラフロロエチレンやポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニルなどのフッ素系重合体がグラフト重合したものも使用することができる。
【0030】
これらは2種以上混合して使用してもよい。
[各成分の組成]
(A)〜(C)の合計を100重量%としたときに、
(B)の含有量が5〜50重量%、好ましくは15〜30重量%、(C)の含有量が3〜30重量%、好ましくは10〜20重量%である。
【0031】
このような組成にあると、摩耗強度および剛性が高く、耐熱性が高い組成物を得ることができる。
また(B)成分がガラス繊維の場合、ガラス繊維の含有量は、5〜50重量%、好ましく
は15〜30重量%の範囲にあることが望ましい。また、(B)成分がカーボン繊維の場合
、カーボン繊維の含有量は、5〜40重量%、好ましくは10〜20重量%ポリテトラフルオロエチレンの含有量が3〜30重量%の範囲にあることが望ましい。
【0032】
この範囲にあると、前記効果がより顕現するとともに、樹脂の重量も小さくできるので、より軽量化を図ることが可能となる。
さらに、組成物には、物性を損なわない範囲で、公知の充填材を含んでいてもよく、たとえば、帯電防止材、リン系難燃剤、シリコーン系難燃剤、金属塩系難燃剤、顔料、染料、耐熱剤、安定剤(酸化防止剤)、耐候剤(紫外線吸収剤)、滑剤、離型剤、結晶核剤、可塑剤、流動性改良剤、衝撃改質材、無機及び有機系抗菌剤等周知の添加物を配合することができる。
【0033】
組成物を製造するための方法に特に制限はなく、通常の方法が満足に使用できる。一般に溶融混合法が望ましい。少量の溶剤の使用も可能であるが、一般に必要はない。
装置としては特に押出機、バンバリーミキサー、ローラー、ニーダー等を例として挙げることができる。これ等装置を回分的又は連続的に運転することができる。また、成分の混合順序は特に限定されない。
【0034】
例えば、押出機などで溶融混練する場合、各成分をすべて配合して混練してもよいし、一つの押出機において複数のフィード口を設け、シリンダーに沿って1種以上の各成分を順次フィードしてもよい。溶融混練により得られた樹脂組成物は、そのまま直ちに本発明による成形体の製造に使用してもよく、あるいは冷却固化してペレット、粉末などの形態にした後、必要に応じて添加剤を添加し、再度溶融してもよい。
[歯車]
本発明の歯車形状は特に制限されるものではなく、いかなる形状の歯車に適用することすることができる。たとえば、平歯車、はすば歯車、内歯車、ラック、やまば歯車、すぐばかさ歯車、まがりばかさ歯車、冠歯車、ゼロールベベルギア、ハイポイドギア、フェーズギア、ネジ歯車、円筒ウォームギア、鼓型ウォームギア、ノビコフ歯車などが挙げられる。歯車の成形方法としては特に限定されず、射出成形のほか、押出成形等で製造された丸棒や板などの素材から切削加工など一般的な成形方法が採用される。特に射出製刑法で得られた歯車は耐熱性、機械的強度、摩耗性および生産性に優れているとともに、駆動音も静かなので好適である。
【0035】
成形法としては、射出成形、押出成形、真空・圧空成形などの公知の成形法が採用できる。
一般に、複写機などの電子式写真装置は、光学装置で形成された静電潜像に現像工程でトナーを付着させ、このトナー像をコピー用紙に転写し、さらに定着工程においてヒート
ローラでトナー像をコピー紙上に加熱融着させるものである。
【0036】
図1に示すように、この場合に用いられる定着装置は、ヒータ1を内蔵するヒートローラ2と、これに平行に配置されて前記ローラ面に配送されるコピー紙を介して圧接する加圧ローラ3を有し、ヒートローラ2の一端には合成樹脂製の歯車4が固定されている。
【0037】
歯車4は、図外のモーターで回転駆動される駆動歯車5と噛合しており、回転力をヒートローラ2に伝導し、ヒートローラ2と加圧ローラ3との対接する外周面間に挟持されたトナー像付きのコピー紙は、移送されつつ加熱加圧された条件で定着処理される。
【0038】
このような定着装置に使用される樹脂製歯車の一例を図2に示す。図2は画像形成装置における定着部周辺の部分拡大斜視図である。図2において、11は駆動ギアを、12は定着ローラギアを、13はアイドラギアを、14は排紙ローラギアを、15はヒータを、16は排紙ローラを、17は定着ローラをそれぞれ示す。
【0039】
これらの歯車は、トナーの溶融定着または現像に必要な温度(約200℃前後)まで加熱されるので、耐熱性が必要であると共に連続して正確に動作する必要があり、本発明の樹脂製歯車をこのような定着部周辺に用いると高温で使用されても優れた機械的強度や耐摩耗性、摺動時に相手材を破損することもない。
【0040】
実施例
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
[試料]
樹脂組成物として、以下の4種を使用した。
【0041】
【表1】

【0042】
[評価]
上記試料から各測定用の試験片を作製した。
比重はASTM D792に準じて測定した。
【0043】
吸水率は、ASTM 570に準じて測定した。
成形収縮率は、ASTM D955に準じて測定した。
引張強さおよび引張伸びは、ASTM D638に準じて測定した。
【0044】
曲げ強さおよび曲げ弾性率は、ASTM D790に準じて測定した。
線膨張係数はASTM D696に準じて測定した。(TMA法)
アイゾット衝撃強度は、23℃ 1/8インチノッチ付きの試験片を用いて、ASTM D256に準
じて測定した。
【0045】
荷重たわみ温度は、荷重1.82MPaの荷重をかけて、ASTM D648に準じて測定した。
燃焼性はUL-94で評価した。
成型品の対S45C部材に対する動摩擦係数、静摩擦係数をスラストワッシャーテスト装置
にて評価した。なお、試験用試料は、前記試料1〜4から、外径φ28.5mm内径φ7.1mm高
さ3.1mm肉厚1.6mmに成形されたリング状の成形品試料を作製した。
【0046】
結果を表2に示す。
【0047】
【表2】

【0048】
また、参考のために、同じ評価をアセタール樹脂、66ナイロンのみ、PEEKのみについて同様の評価を行った。結果を表3に示す。
【0049】
【表3】

【0050】
上記表2および表3を対比すれば明らかなように、摩擦係数は従来のものと、本発明の試料は同レベルにある。特に200℃以上での耐熱性(荷重たわみ温度参照)、および高温
下での寸法精度(線膨張係数参照)は、いずれも本発明の試料が優れていることが明白である。
【0051】
したがって、本発明の試料は高温下で使用されるギア用材料として極めて有用であると思料される。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1は、本発明の歯車が使用される定着装置の概略図を示す。
【図2】図2は、本発明の歯車が使用される定着装置の概略図を示す。
【符号の説明】
【0053】
1・・・ヒータ
2・・・ヒートローラ
3・・・加圧ローラ
4・・・歯車4
5・・・駆動歯車
11・・・駆動ギア
12・・・定着ローラギア
13・・・アイドラギア
14・・・排紙ローラギア
15・・・ヒータ
16・・・排紙ローラ
17・・・定着ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリフタルアミド樹脂および/またはポリエーテルエーテルケトン樹脂、(B)ガラス繊維および/またはカーボン繊維と、(C)ポリテトラフルオロエチレンとを含む樹脂組成
物からなり、
(A)〜(C)の合計を100重量%としたときに、
(B)の含有量が5〜50重量%、(C)ポリテトラフルオロエチレンの含有量が3〜30重量%である樹脂組成物をからなることを特徴とする熱可塑性樹脂製歯車。
【請求項2】
(B)がガラス繊維であり、かつガラス繊維の含有量が5〜50重量%であることを特徴
とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂製歯車。
【請求項3】
(B)がカーボン繊維であり、かつカーボン繊維の含有量が5〜40重量%であることを
特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂製歯車。
【請求項4】
印刷機のトナー定着用ローラーのギアであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂製歯車。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−226464(P2006−226464A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−42764(P2005−42764)
【出願日】平成17年2月18日(2005.2.18)
【出願人】(390000103)日本ジーイープラスチックス株式会社 (36)
【Fターム(参考)】