説明

高血圧剤としてのアリスキレンの有効性に関するバイオマーカー

後ろ向き薬理遺伝学解析を、遺伝学的変異と、抗高血圧剤としてのアリスキレンの効果の臨床試験結果の間の関係の可能性を評価する試みで行った。48個の遺伝子多型を、レニン−アンギオテンシン−アルドステロン系(RAS)または既に血圧制御に関与するとされている12個の遺伝子において試験した。アンギオテンシン変換酵素(ACE)遺伝子における1個の遺伝子多型、アンギオテンシンII2型受容体(AGTR2)遺伝子における2個の遺伝子多型と、平均座位拡張期および収縮期血圧低下臨床的パラメータの間の有意な関係が見られた。これらの効果はイルベサルタンおよびプラセボ処置では見られず、その代わり、アリスキレン処置に特異的であった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にインビトロ組織サンプルの分析的試験に、およびより具体的に、抗高血圧剤としてのアリスキレンの有効性を示す遺伝子多型の局面に関する。
【背景技術】
【0002】
レニンアンギオテンシン系(RAS)は血圧の制御および容量ホメオスタシスにおいて重要な役割を有する。レニンは、循環量および血圧の低下に応答して腎臓により分泌され、基質アンギオテンシノーゲンを開裂して、不活性デカペプチドアンギオテンシンI(Ang I)を形成する。Ang Iは、アンギオテンシン変換酵素(ACE)により活性オクタペプチドAng IIに変換される。Ang IIは細胞受容体と相互作用し、血管収縮ならびに副腎髄質および接合部前神経終末からのカテコールアミンの遊離を誘発する。これはまたアルドステロン分泌およびナトリウム再吸収も促進する。加えて、Ang IIはレニン遊離を阻害し、故にこの系におけるネガティブ・フィードバックを提供する。従って、Ang IIは種々のレベル(例えば脈管構造、交感神経系、副腎の皮質および髄質)で作用し、血管抵抗および血圧を高める。
【0003】
レニンアンギオテンシン系(RAS)は種々のレベルで遮断され得る。レニン阻害剤がACE阻害剤およびAng IIアンタゴニストよりも高いレベルでRASを阻害するため、それらはRASの要素に対して異なる効果を有する。レニン阻害剤の投与後、Ang IおよびAng IIの両方の形成は遮断される。一方ACE阻害後は、Ang II形成しか遮断されず、Ang Iのレベルは増加する。Ang Iは、故にAng IIおよび他のアンギオテンシンペプチドを、キマーゼ系のような他の経路により変換するためにまだ利用可能である。
【0004】
アリスキレン(SPP100)は、低分子量(609.8)の非ペプチド抗高血圧剤である。Wood JM et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 308(4):698-705(September 5, 2003)参照。この作用機序は、市場にある他の抗高血圧剤と異なる。アリスキレンはレニンアンギオテンシン系(RAS)を、その最初の、かつ律速の工程で遮断する。インビトロで、アリスキレンはヒトレニンの強力な阻害剤である(IC50=0.6nM)。インビボで、ナトリウム涸渇マーモセットでの経口(p.o.)または静脈(i.v.)の両方で投与したいくつかの試験において、アリスキレンは血漿レニン活性(PRA)の完全な阻害、平均動脈圧(MAP)の持続した低下、ならびに活性レニンおよび全レニンの血漿濃度の著しい増加をもたらした。ヒトにおいて、アリスキレンの血漿濃度は投与後急速に増加し、3−5時間でピークレベルに到達する。CmaxおよびAUCの両方とも、容量と共にではあるが、非線形形態で増加する。アリスキレンの半減期は約25時間であり、そのバイオアベイラビリティは約2.7%である。
【0005】
疾患の処置のための慣用の医学的方法は、臨床データのみに基づくか、または診断試験と組み合わせてなされる。このような伝統的な方法は、しばしば個々の対象のための処方薬治療の有効性についてまたは副作用の可能性を最少にするために最適ではない、治療選択に至る。治療特異的診断(別名、セラノスティクス(theranostics))は新興の医療技術分野であり、それは疾患の診断、正確な処置レジメンの選択および対象の応答のモニタリングに有用な試験を提供する。すなわち、セラノスティクスは個々の対象における薬剤応答の予測および評価に有用であり、すなわち、個別化された医学である。セラノスティクス試験はまた、特にその処置から利益を得そうな対象の選択に、または、処置を最小限の遅れで変えることができるように、個々の対象における処置の有効性の早く、かつ客観的な指標を提供するためにも有用である。
【0006】
特異的薬剤に対する応答と個々の患者の遺伝学的プロファイルの相関を確立する薬理遺伝学の進歩が、新規セラノスティクス・アプローチの開発の基礎である。そのようなものとして、遺伝子配列および遺伝子発現の患者−対−患者変異の評価のための分野の必要性が存在する。遺伝学的プロファイリングの一般的形態は、個々の薬剤応答の患者−対−患者変異をもたらす遺伝子の変異の一つのタイプである一塩基多型(“SNP”)と呼ばれるDNA配列変異の同定に依存する。その結果、当分野で薬剤応答性と関係する対象の遺伝子型の同定に有用な、SNPのような遺伝子の変異を同定および特徴付けが必要となる。
【発明の開示】
【0007】
発明の要約
本発明は、当分野における必要性への対応を提供する。アンギオテンシン変換酵素(ACE)遺伝子における多型、アンギオテンシンII2型受容体(AGTR2)遺伝子における多型と、抗高血圧剤としてのアリスキレン処置後の平均座位拡張期および収縮期血圧低下の臨床的パラメータの間に、顕著な関係が同定された。これらの効果は、イルベサルタンおよびプラセボ処置では見られず、アリスキレン処置に特異的である。
【0008】
従って、本発明は、選択された患者集団の高血圧の処置用薬剤の製造におけるアリスキレンの使用を提供する。処置すべき患者集団は、患者に存在するバイオマーカー遺伝子の遺伝子多型に基づいて選択される。該バイオマーカー遺伝子はアンギオテンシン変換酵素(ACE)遺伝子およびアンギオテンシンII2型受容体(AGTR2)遺伝子である。該遺伝子多型が、高血圧処置におけるアリスキレンの有効性を示す。
【0009】
本発明はまた、本発明の1箇所以上の多型遺伝子座でのヌクレオチド対のアイデンティティに基づいた、アリスキレンでの処置に対する高血圧を有する個体の応答性を決定する方法を提供する。
【0010】
本発明は、さらに、個体における高血圧処置のためのセラノスティクス方法を提供する。本発明の多型遺伝子座でのヌクレオチド対が、個体が抗高血圧剤での処置に応答性であることを示すならば、該個体に抗高血圧剤を投与する。一つの態様において、抗高血圧剤はアリスキレンである。本発明の多型遺伝子座でのヌクレオチド対が、個体が抗高血圧剤での処置に応答性ではないことを示すならば、該個体に代替療法を施す。
【0011】
本発明は、一般に、日中携帯型での(daytime ambulatory)拡張期血圧(DADBP)を低下させる方法を提供する。具体的態様において、本発明は、平均座位拡張期血圧(MSDBP)低下のセラノスティクス方法を提供する。
【0012】
加えて、本発明は、日中携帯型での収縮期血圧(DASBP)を低下させる方法を提供する。具体的態様において、本発明は、平均座位収縮期血圧(MSSBP)低下のセラノスティクス方法を提供する。
【0013】
さらに、本発明は、高血圧の処置のための抗高血圧剤の効果を決定する臨床試験に包含させるための個体の選択方法を提供する。個体の遺伝子型が、その個体における高血圧処置のための抗高血圧剤の有効性を示すならば、その個体を治験に包含し得る。個体の遺伝子型が、その個体における高血圧処置のための抗高血圧剤の有効性を示さないならば、その個体を治験から除き得る。
【0014】
本発明は、本発明の方法を実施するためのキットを提供する。本発明はまた、薬剤開発の標的としてのアンギオテンシン変換酵素(ACE)遺伝子産物およびアンギオテンシンII2型受容体(AGTR2)遺伝子産物の使用方法も提供する。
【0015】
図面の簡単な説明
図1は、3アリスキレン処置群一緒、最高量アリスキレン群(600mg)、イルベサルタン群およびプラセボ群についてのSNP_4769遺伝子型で分けた応答者比率を示す一連の棒グラフである。図の下部の数字は、上段がCT対立遺伝子を意味し、下段がTT対立遺伝子を意味する。
【0016】
発明の詳細な記載
後ろ向き薬理遺伝学解析を、遺伝学的変異と臨床試験における臨床成績の間の関係の可能性を評価しようとして行われた。臨床試験において、1日1回75、150、または300mgで投与されたアリスキレンは、日中携帯型での収縮期血圧(DASBP)の統計学的に有意な低下をもたらし、軽度乃至中程度高血圧患者における有効な抗高血圧剤であることが示された。活性処置剤の全ての投与量は、包括解析(intend-to treat)(ITT)集団において臨床試験エンドポイントおよび8週目で、およびパー・プロトコル集団において臨床試験エンドポイントで、平均座位拡張期血圧(MSDBP)の低下において、プラセボよりも統計学的に優れていた。同様のMSDBP低下が、アリスキレン150mgおよびイルベサルタン150mgで見られた。以下の実施例I参照。
【0017】
平均座位収縮期血圧(MSSBP)について、活性処置剤の全ての投与量は、臨床試験エンドポイントでプラセボよりも統計学的に優れていた。アリスキレン300および600mgは、臨床試験エンドポイントでプラセボおよびイルベサルタンよりも統計学的に優れていた。同様のMSSBP低下が、アリスキレン150mgおよびイルベサルタン150mgで見られた。アリスキレン300および600mgは最大の低下をもたらした。以下の実施例I参照。
【0018】
薬理遺伝学解析において、48個の遺伝子多型を、レニン−アンギオテンシン−アルドステロン系(RAS)からのまたは既に血圧制御に関与するとされている12個の遺伝子で試験した。著しい関係が、アンギオテンシン変換酵素(ACE)遺伝子における1個の遺伝子多型(SNP_4769、配列番号1)、アンギオテンシンII2型受容体(AGTR2)遺伝子における2個の遺伝子多型(SNP_1445、配列番号2およびSNP_4795、配列番号3)と、平均座位拡張期および収縮期血圧低下の臨床的パラメータの間で見られた。これらの効果はイルベサルタンおよびプラセボ処置では見られず、この分析ではむしろアリスキレン処置に特異的であった。
【0019】
SNP_4769(配列番号1)のヌクレオチド配列は下記の通りである:
AGGACTTCCC AGCCTCCTCT TCCTGCTGCT CTGCTACGGG CACCCTCTGC TGGTCCCCAG CCAGGAGGCA/Y CCCAACAGGT GACAGTCACC CATGGGACAA GCAGCCAGGC AACAACCAGC AGCCAGACAA CCACCCACCA
【0020】
SNP_4769は、ACE酵素のコドン32においてアミノ酸配列をプロリンからセリンに変える、コーディングSNPである。
【0021】
SNP_1445(配列番号2)のヌクレオチド配列は下記の通りである:
TGGAAACTTC ATTTTTTTTG TTTGAGATTT ATTTGAATGA GCTGTTATGA TTGGAGACAG TGAGAATTTC AGATTAATGT TTTGCAGACA AAAAAAAACC TCTCTGGAAA GCTGGCAAGG GTTCATAAGT CAGCCCTAGA ATTATGTAGG TTGAAGGCTC CCAGTGGACA GACCAAACAT ATAAGAAGGA AACCAGAGAT CTGGTGCTAT TACGTCCCAG CGTCTGAGAG AACGAGTAAG CACAGAATTC AAAGCATTCT GCAGCCTGAA TTTTGAAGGT AAGTATGAAC AATTTATATA TAATTTACTT GGAAAGTAGA ACATACATTA AATGAAAATA TTTTTTATGG ATGAACTTCT GTTTTTCCTG TGTTTTAACA CTGTATTTTG CAAAACTCCT/R AATTATTTAG CTGCTGTTTC TCTTACAGGA GTGTGTTTAG GCACTAAGCA AGCTGATTTA TGATAACTGC TTTAAACTTC AACAACCAGT AAGTCTTCAA GTGGAATTTA TTATTGATTC TTTTATGTTA ATTTGTTAGG TCAAAAGAAA AATCTTTAGA GCAAAATAAA AGTTTTGCTC TTTATTAGGA GGTTCTTTAG ATATTACACT TTTAATTGGG TAGCTTATTT GCATGTATTT TGAAACTATC TAAAGTAAAT AGTGTTTCCT TTGTATGCTT ATCTTTAGCT AATGTGTTTT TTTTTTTGGT TTTAAAATAA TGCTTCTAGT GAAAAAAATC ACAAAAACCT CAACACTGTA ACGTTTGAGA GCAACGGCTA TTCAGTTCGG TTAAACCGAA
【0022】
SNP_1445はAGTR2 mRNAの非翻訳領域である(表2B参照)。
【0023】
SNP_4795(配列番号3)のヌクレオチド配列は下記の通りである:
ccaacacaaa agcacagcag ttgagaactg ggaaagcatc gcactacaac tgctactgcc attaaccaca ttgtcctgga tgcccaagag cttaagagcc cacttaccta cctggtacac tgctactaca actgacatct gagaaagcca cccaaaggaa caagaatttc cctgtctgga accaacagaa ttgtcactat/R ttctgtacca gatcccaagg atacacatgc ttagcttact attactacca ctgaaacttg caaaagaacc catcaagcat tccattcccc agcacaaatt catcagtttc tatcaataac ctcacaatgc cacacagagg aatagacaga tactactaag gctgtttata gccaatgaaa tcatacacag tcttcacca
【0024】
SNP_4795はAGTR2ゲノム領域である(表2B参照)。
【0025】
本発明のある種の局面、方法、態様、バリエーションおよび特性を、本発明の実質的な理解を提供するために、種々の詳細度で以下に記載する。一般に、このような開示は、処置を必要とする対象における診断および処置に有用なポリヌクレオチド変異、SNPの新規使用を提供する。従って、本発明の種々の局面は、ACEおよびAGTR2遺伝子において本発明のポリヌクレオチド変異をコードするポリヌクレオチドに関する。本発明の種々の局面はさらに、疾患の素因のある個体を同定するための、または薬剤応答性、副作用、または最適薬剤用量に関して個体を分類するための、本発明のポリヌクレオチド変異を使用する診断/セラノスティクス方法およびキットに関する。他の局面において、本発明は、本発明のポリヌクレオチド変異に関するデータの貯蔵および分析のための、化合物バリデーションおよびコンピューターシステムを提供する。従って、これらの局面を説明する具体的態様を以下に示す。
【0026】
定義。本明細書で使用するいくらかの用語の定義を、下記に提供する。他の用語の定義は、U.S. Department of Energy, Office of Science, Human Genome Project <http://www.ornl.gov/sci/techresources/Human_Genome/glossary/>により提供される用語集に見ることができる。医学上の定義はChobanian et al., “JNC-7 - Complete Version” Hypertension 42: 1206-1252(2003)により提供される。高血圧のアメリカ心臓学会の定義はウェブサイト<http://www.americanheart.org/presenter.jhtml?identifier=4623>に見ることができる。これらの全ての引用物は、引用により本明細書に包含させる。
【0027】
ここで使用する“対立遺伝子”は、特異的染色体位置(座)での遺伝子またはDNA配列の特定の形態を意味する。
【0028】
ここで使用する“抗体”は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化またはキメラ抗体および、抗体フラグメントがタンパク質に結合するのに十分な生物学的に機能性の抗体フラグメントを含むが、これらに限定されない。
【0029】
ここで使用する“臨床応答”は、下記のいずれかまたは全てを意味する:応答、応答なし、および有害な応答(すなわち、副作用)の定量的指標。
【0030】
ここで使用する“臨床試験”は、特定の処置に対する応答の臨床データを集めるために設計された全ての研究試験を意味し、そしてフェーズI、フェーズIIおよびフェーズIII臨床試験を含むが、これらに限定されない。患者集団の定義および対象の登録のための標準法を使用する。
【0031】
ここで定義する化合物の“有効量”は、所望の治療的および/または予防的効果を達成するのに十分な量、例えば、高血圧に関係する症状の予防または減少をもたらす量である。好ましい態様において、本化合物はアリスキレンである。
【0032】
対象に投与する化合物の量は、疾患のタイプおよび重症度、ならびに全体的な健康状態、年齢、性別、体重および薬剤に対する耐容性のような個体の特性に依存する。それはまた疾患の程度、重症度およびタイプにも依存する当業者は、これらのおよび他の因子に依存して、適当な投与量を決定できる。典型的に、治療的または予防的効果の達成に十分な本発明の化合物明の有効量は、約0.000001mg/体重kg/日から約10,000mg/体重kg/日の範囲である。好ましくは、投与量範囲は、約0.0001mg/体重kg/日から約100mg/体重kg/日である。本発明の化合物明は互いに組み合わせて、または1種以上のさらなる治療的化合物と組み合わせても投与できる。好ましい態様において、有効量は、75、150、または300mgのアリスキレン、1日1回投与である。
【0033】
ここで使用する“発現”は、適切な発現および機能に必要であるならば、下記の1個以上を含むが、これらに限定されない:遺伝子のmRNA前駆体への転写;成熟mRNAを産生するための、mRNA前駆体のスプライシングおよび他の処理;mRNA安定性;成熟mRNAのタンパク質への翻訳(コドン使用およびtRNA利用能を含む);およびグリコシル化および/または翻訳産物の他の修飾。
【0034】
ここで使用する“遺伝子”は、プロモーター、エキソン、イントロン、および発現を制御する他の非翻訳領域を含む、RNA産物の制御された生合成のための全ての情報を含む、DNAのセグメントである。
【0035】
ここで使用する“遺伝子型”は、個体の相同染色体の対上の座における1箇所以上の多型部位で見られるヌクレオチド対の位相になっていない(unphased)5'から3'配列を意味する。ここで使用する遺伝子型は完全遺伝子型および/またはサブ遺伝子型を含む。
【0036】
ここで使用する“座”は、遺伝子または身体的もしくは表現型特性に対応する染色体またはDNA分子の位置を意味する。
【0037】
ここで使用する“ACE調節剤”または“AGTR2調節剤”は、ACEポリペプチドまたはAGTR2ポリペプチド各々の発現レベルまたは生物学的活性レベルを、調節剤の非存在下でのポリペプチドの発現レベルまたは生物学的活性レベルと比較して変える(例えば、高めるまたは低下させる)全ての化合物を意味する。本調節剤は小分子、ポリペプチド、炭水化物、脂質、ヌクレオチド、またはそれらの組み合わせであり得る。本調節剤は有機化合物または無機化合物であり得る。
【0038】
ここで使用する“突然変異体”は、突然変異、例えば、一塩基多型の結果である、野生型からの全ての遺伝性の変異を意味する。用語“突然変異体”は、本明細書を通して、用語“マーカー”、“バイオマーカー”、および“標的”と交換可能に使用されている。
【0039】
ここで使用する“医学的状態”は、処置が望まれる1個以上の身体的および/または精神的症状として顕在化する全ての状態または疾患を含むが、これらに限定されず、以前に同定されたおよび新規に同定される疾患および他の障害を含む。好ましい態様において、本医学的状態は高血圧である。
【0040】
ここで使用する“ヌクレオチド対”は、個体からの染色体の2個のコピー上の多型部位で見られるヌクレオチドを意味する。
【0041】
ここで使用する“多型部位”は、集団内で少なくとも2個の別の配列が見られる場所である座内の位置を意味し、その最も頻繁なものは、99%を超えない頻度を有する。
【0042】
ここで使用する“多型”は、集団において>1%の頻度で存在する配列変異を意味する。本配列変異は、5%または10%またはそれ以上のような1%より著しく高い頻度で存在し得る。また、本用語は、個体において多型部位で見られる配列変異に言及するために使用し得る。遺伝子多型は、ヌクレオチド置換、挿入、欠失およびマイクロサテライトを含み、そして、必ずしもではないが、遺伝子発現またはタンパク質機能に検出可能な結果をもたらし得る。
【0043】
ここで使用する“ポリヌクレオチド”は、非修飾または修飾RNAまたはDNAであり得る全てのRNAまたはDNAを意味する。ポリヌクレオチドは、限定しないが、一本鎖および二本鎖DNA、一本鎖および二本鎖領域の混合物であるDNA、一本鎖および二本鎖RNA、一本鎖および二本鎖領域の混合物であるRNA、および一本鎖または、より典型的に、二本鎖または一本鎖と二本鎖領域の混合物であり得るDNAおよびRNAを含むハイブリッド分子を含む。加えて、ポリヌクレオチドは、RNAもしくはDNA、またはRNAとDNAの両方を含む三本鎖領域を意味する。用語ポリヌクレオチドはまた、1個以上の修飾塩基を含むDNAまたはRNAおよび安定性または他の理由のために修飾された骨格を有するDNAまたはRNAも含む。
【0044】
ここで使用する“ポリペプチド”は、ペプチド結合または修飾ペプチド結合により互いに結合した2個以上のアミノ酸を含む、全てのポリペプチド、すなわち、ペプチド・アイソスターを意味する。ポリペプチドは、一般にペプチド、グリコペプチドまたはオリゴマーと呼ばれる短鎖、および一般的にタンパク質と呼ばれる長鎖の両方を意味する。ポリペプチドは、20種の遺伝子がコードするアミノ酸以外のアミノ酸を含み得る。ポリペプチドは、翻訳後プロセシングのような天然プロセス、または、当分野で既知の化学修飾技術のいずれかにより修飾されたアミノ酸配列を含む。このような修飾は基本的教科書に十分に記載され、より詳細にはモノグラフ、ならびに多数の研究論文に記載されている。
【0045】
ここで使用する“SNP核酸”は、複数個体または複数個体群の間で、それ以外は同一のヌクレオチド配列であるヌクレオチドを含み、故に対立遺伝子として存在する、核酸配列を意味する。このようなSNP核酸は、好ましくは約15から約500ヌクレオチド長である。本SNP核酸は染色体の一部であってよく、またはそれらは、例えば、PCRまたはクローニングを介した、染色体のそのような部分の増幅による、染色体の正確なコピーであってよい。本SNP核酸は、以後単に“SNP”と呼ぶ。SNPは、2個の別の塩基が、ヒト集団内でかなりの頻度(すなわち、>1%)で発生する、ゲノム中の一箇所でのヌクレオチド変異性の出現である。SNPは遺伝子内またはゲノムの遺伝子間領域内で起こり得る。本発明のSNPプローブは、SNP核酸に相補的なオリゴヌクレオチドである。
【0046】
ここで使用する“対象”は、好ましくは該対象が哺乳動物、例えば、ヒトだけでなく、動物、例えば、家庭用動物(例えば、イヌ、ネコなど)、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマなど)および実験動物(例えば、サル(例えば、カニクイザル)、ラット、マウス、モルモットなど)であり得ることを意味する。
【0047】
ここで使用する対象または患者への医薬または薬剤の投与は、自己投与および他者による投与を含む。記載の医学的状態の処置または予防の種々のモードが“実質的”を意味することを意図し、これは、完全なだけでなく、いつくかの生物学的または医学的に関係した結果が達成される完全未満の処置または予防を含むことは明らかである。
【0048】
遺伝子配列変異の同定および特徴付け。その普及および広範囲に及ぶ性質から、SNPは、ヒト疾患状態に含まれる遺伝子の位置決めのための重要なツールである可能性を有する。例えば、Wang et al., Science 280:1077-1082(1998)参照。多くの一般的な障害の発症の危険性およびこれらの処置に使用する薬剤の代謝が、根底のゲノム変異により、何れか1個の変異による影響は小さいかもしれないが、実質的に影響されることが、徐々に明らかになってきている。
【0049】
SNPは、多型の存在のために、種のメンバーのいくらかが未変異配列(すなわち、元の対立遺伝子)を有し得て、他のメンバーが変異配列(すなわち、変異または突然変異対立遺伝子)を有し得るため、“対立遺伝子”と言われている。
【0050】
SNPと特定の表現型の間の関係が必ずしも示されないか、またはSNPはある表現型の原因である。その変わり、この関係は、単に、SNPと、ある表現型について実際に責任がある遺伝学的因子の間の、SNPおよび該遺伝学的因子が密接に関係するようなゲノム近接性のためであり得る。すなわち、SNPは、“真の”機能的変異と連鎖不均衡(“LD”)であり得る。LD(別名、対立遺伝子対合)は、ゲノムの2つの別々の位置の対立遺伝子が、予測よりもより高い関係であるとき、存在する。故に、SNPは、特定の表現型の原因となる突然変異に対するその近接性のために、価値のあるマーカーとして働き得る。
【0051】
本発明の多型部位の記載において、簡便のために遺伝子のセンス鎖を参照する。当業者には認識される通り、しかしながら、本遺伝子を含む核酸分子は、相補的二本鎖分子であり、故にセンス鎖上の特定のへの言及は、同様に相補的アンチセンス鎖上の対応する部位も言及する。すなわち、鎖上への何れかの上の同じ多型部位を参照してよく、そして、オリゴヌクレオチドは、本多型部位を含む標的領域でいずれかの鎖に特異的にハイブリダイズするために設計してよい。故に、本発明はまた、ここに記載のゲノム変異体のセンス鎖に相補的な一本鎖ポリヌクレオチドも含む。
【0052】
SNPの同定および特徴付け。一重鎖構造多型(SSCP)分析、変性高速液体クロマトグラフィー(DHPLC)および直接DNAシークエンシングによるヘテロ二本鎖分析ならびにコンピューターを利用した方法を含む、多くの種々の技術がSNPの同定および特徴付けに使用できる。Shi et al., Clin. Chem. 47:164-172(2001)。公的データベースに莫大な配列情報が存在する。
【0053】
最も一般的なSNPタイピング法は、現在ハイブリダイゼーション、プライマー伸長、および開裂法を含む。これらのいずれの方法も、適切な検出系と接続されていなければならない。検出技術は、蛍光偏光(Chan et al., Genome Res. 9:492-499(1999))、ピロリン酸放出の発光検出(ピロシーケンス)(Ahmadiian et al., Anal. Biochem. 280:103-10(2000))、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)に基づく開裂アッセイ、DHPLC、および質量分析(Shi, Clin. Chem. 47:164-172(2001);米国特許6,300,076B1)を含む。SNPの検出および特徴付けの他の方法は、米国特許6,297,018および6,300,063に開示されている。
【0054】
遺伝子多型は、INVADERTM技術(Third Wave Technologies Inc. Madison, Wisconsin, USAから入手可能)のような市販の製品を使用しても検出できる。このアッセイにおいて、特異的上流“インベーダー”オリゴヌクレオチドおよび部分的に重複した下流プローブが、相補的DNA鋳型に結合したとき、特異的構造を形成する。この構造が、Cleavase酵素により認識され、特異的部位で切断され、プローブオリゴヌクレオチドの5’フラップを遊離させる。次いで、このフラグメントが、本反応混合物中に含まれる合成二次標的および二次蛍光標識シグナルプローブに関して、“インベーダー”オリゴヌクレオチドとして働く。またRyan D et al., Molecular Diagnosis 4(2):135-144(1999)およびLyamichev V et al., Nature Biotechnology 17:292-296(1999)参照、米国特許5,846,717および6,001,567も参照のこと。
【0055】
遺伝子多型のアイデンティティは、また、リボプローブ(Winter et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:7575(1985);Meyers et al., Science 230:1242(1985))および大腸菌mutSタンパク質(Modrich P, Ann Revgenet 25:229-253(1991))のようなヌクレオチドミスマッチを認識するタンパク質を使用したRNase保護法を含むが、これらに限定されないミスマッチ検出技術を使用しても決定できる。あるいは、変異型対立遺伝子が一本鎖構造多型(SSCP)分析(Orita et al., Genomics 5:874-879(1989);Humphries et al., in Molecular Diagnosis of Genetic Diseases, Elles R, ed., pp. 321-340(1996))または変性勾配ゲル電気泳動(DGGE)(Wartell et al., Nucl. Acids. Res. 18:2699-2706(1990);Sheffield et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:232-236(1989))により同定できる。ポリメラーゼ仲介プライマー伸長法も遺伝子多型の同定に使用できる。いくつかのこのような方法が特許および科学文献に記載されており、“Genetic Bit Analysis”法(WO92/15712)およびリガーゼ/ポリメラーゼ仲介genetic bit analysis(米国特許5,679,524)を含む。関係法がWO91/02087、WO90/09455、WO95/17676、および米国特許5,302,509および5,945,283に記載されている。多型を含む伸長されたプライマーを、米国特許5,605,798に記載の通り質量分析により検出できる。他のプライマー伸長法は、対立遺伝子特異的PCR(Ruafio et al., Nucl. Acids. Res. 17:8392(1989);Ruafio et al., Nucl. Acids. Res. 19:6877-6882(1991);WO93/22456;Turki et al., J. Clin. Invest. 95:1635-1641(1995))である。加えて、多数の多型部位を、公開されたPCT特許出願WO89/10414に記載の通りの対立遺伝子特異的プライマーのセットを使用した、核酸の複数領域の同時の増幅により試験できる。
【0056】
オリゴヌクレオチドのハプロタイプ同定および遺伝子型同定。本発明は、個体の遺伝子のハプロタイプ同定および/または遺伝子型同定のための方法および組成物を提供する。ここで使用する用語“遺伝子型”および“ハプロタイプ”は、ここに記載の新規多型部位の1箇所以上に存在するヌクレオチド対またはヌクレオチドを各々含み、そして所望により、また本遺伝子中の1箇所以上のさらなる多型部位に存在するヌクレオチド対またはヌクレオチドを含み得る、遺伝子型またはハプロタイプを意味する。このさらなる多型部位は現在既知の多型部位であるか、または今後発見される部位であり得る。
【0057】
本発明の組成物は、多型部位またはそれに隣接した領域を含む1個以上の標的領域に特異的にハイブリダイズするように設計されたオリゴヌクレオチドプローブおよびプライマーを含む。本発明のオリゴヌクレオチド組成物は、個体における遺伝子の遺伝子型同定および/またはハプロタイプ同定法に有用である。ここに記載の新規多型部位で個体の遺伝子型またはハプロタイプを確立するための方法および組成物は、本タンパク質の発現および機能により影響される疾患の病因における遺伝子多型の影響の試験、ターゲティングした薬剤の影響の試験、本タンパク質の発現および機能により影響を受ける疾患への個体の感受性の予測および本遺伝子産物にターゲティングした薬剤に対する個体の応答性の予測に有用である。
【0058】
本発明の遺伝子型同定オリゴヌクレオチドは、マイクロチップ、ビーズ、またはガラススライドのような固体表面上に固定化するか、またはその上に合成してよい。例えば、WO98/20020およびWO98/20019参照。
【0059】
遺伝子型同定オリゴヌクレオチドを、ここで同定した新規多型部位の1個の数ヌクレオチド下流に位置する標的領域にハイブリダイズさせ得る。このようなオリゴヌクレオチドは、ここに記載の新規遺伝子多型の一つを検出するためのポリメラーゼ仲介プライマー伸長法において有用であり、故に、このような遺伝子型同定オリゴヌクレオチドは、ここで“プライマー伸長オリゴヌクレオチド”と呼ぶ。
【0060】
本発明の直接的遺伝子型同定法。本発明の遺伝子型同定法は、個体から目的の遺伝子またはそのフラグメントの2個のコピーを含む核酸混合物を単離し、該2個のコピーにおける1箇所以上の多型部位でヌクレオチド対のアイデンティティを決定することを含み得る。当業者には容易に理解される通り、個体における遺伝子の2個の“コピー”は、同じ対立遺伝子であってよく、または異なる対立遺伝子であってよい。特に好ましい態様において、本遺伝子型同定法は、各多型部位でヌクレオチド対のアイデンティティを決定することを含む。典型的に、本核酸混合物を、血液サンプルまたは組織サンプルのような個体から採った生物学的サンプルから単離する。適当な組織サンプルは全血、精液、唾液、涙、尿、糞便、汗、口腔スメア、皮膚および髪を含む。
【0061】
下記実施例において、遺伝子型同定アッセイのための一塩基多型(SNP)アッセイプローブセットは、ABIのAssays-by-Design(登録商標)プラットホームのために作成した。Livak KJ, Marmaro J & Todd JA, Nature Genetics 9:341-2(1995)。遺伝子型同定は、製造者の支持に従い、10ngのゲノムDNAで行った。
【0062】
本発明の直接的ハプロタイプ同定法。本発明のハプロタイプ同定法は、個体からの目的の遺伝子またはそのフラグメントの2個のコピーの一方のみを含む核酸分子の単離、およびそのコピーにおける1箇所以上の多型部位でのヌクレオチドのアイデンティティの決定を含み得る。直接ハプロタイプ同定法は、例えば、CLASPER SystemTM技術(米国特許5,866,404)または対立遺伝子特異的ロング・レンジPCR(Michalotos-Beloin et al., Nucl. Acids. Res. 24:4841-4843(1996))を含む。本核酸は、遺伝子またはフラグメントの2個のコピーの分離ができる任意の方法を使用して単離できる。当業者には容易に認識される通り、何らかの個々のクローンは、個体に存在する2個の遺伝子コピーの一方の上のハプロタイプ情報しか提供しない。一つの態様において、個体に存在する遺伝子の各コピーにおける1箇所以上の多型部位でヌクレオチドの位相配列を同定することにより、本個体に関するハプロタイプ対を決定できる。好ましい態様において、本ハプロタイプ同定法は、遺伝子の各コピーにおける各多型部位でのヌクレオチドの位相配列の同定を含む。
【0063】
遺伝子型同定およびハプロタイプ同定法の両方で、多型部位でのヌクレオチド(またはヌクレオチド対)のアイデンティティは、本遺伝子またはそのフラグメントの一方または両方のコピーに直接由来する多型部位を含む標的領域を増幅し、そして増幅した領域を慣用法により配列決定することにより、決定できる。個体の遺伝子の遺伝子型またはハプロタイプはまた、WO95/11995に記載のように核酸アレイおよびサブアレイに対する遺伝子の一方または両方のコピーを含む核酸サンプルのハイブリダイゼーションにより決定できる。
【0064】
標的多型と連鎖不均衡にある多型部位を使用した間接的遺伝子型同定法。加えて、本発明の新規多型部位のいずれかに存在する対立遺伝子のアイデンティティを、これらの目的の部位と連鎖不均衡にある他の多型部位の遺伝子型同定により間接的に決定できる。上記の通り、第一の部位での特定の変異の存在が、第二の部位での他の変異を示すとき、2個の部位は連鎖不均衡であると言う。Stevens JC, Mol. Diag. 4:309-317(1999)。本発明の多型部位と連鎖不均衡にある多型部位は、同じ遺伝子の領域または他のゲノム領域に位置し得る。
【0065】
標的遺伝子領域の増幅。本標的領域を、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(米国特許4,965,188)、リガーゼ連鎖反応(LCR)(Barany et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:189-193(1991);公開PCT特許出願WO90/01069)、およびオリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ(OLA)(Landegren et al., Science 241:1077-1080(1988))を含むが、これらに限定されない何らかのオリゴヌクレオチド特異的(directed)増幅法を使用して増幅できる。このような方法においてプライマーまたはプローブとして有用なオリゴヌクレオチドは、多型部位を含むか、それに隣接する核酸の領域に特異的にハイブリダイズすべきである。典型的に、本オリゴヌクレオチドは10から35ヌクレオチド長であり、好ましくは、15から30ヌクレオチド長である。最も好ましくは、本オリゴヌクレオチドは20から25ヌクレオチド長である。本オリゴヌクレオチドの正確な長さは、当業者が日常的に考慮し、実践している多くの因子に依存する。
【0066】
転写に基づく増幅系(米国特許5,130,238;EP329,822;米国特許5,169,766、公開されたPCT特許出願WO89/06700)および等温法(Walker et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:392-396(1992))を含む、他の既知の核酸増幅法を標的領域を増幅するために使用し得る。
【0067】
対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドの標的遺伝子へのハイブリダイズ。標的領域における多型は、当分野で既知のいくつかのハイブリダイゼーションに基づく方法の一つを使用して、増幅の前または後にアッセイできる。典型的に、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドを、このような方法の実施において利用する。本対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドは、異なって標識されたプローブ対として使用し、本対の一方が標的配列の一つの変異と完全にマッチし、他方が、異なる変異と完全にマッチする。ある態様において、1箇所以上の多型部位を、同時に一セットの対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド対を使用して検出できる。好ましくは、本セットのメンバーは、検出する多型部位の各々にハイブリダイズするとき、互いの差が5℃までの、より好ましくは2℃までの融点を有する。
【0068】
対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドの標的ポリヌクレオチドへのハイブリダイゼーションは、両方の物が溶液中で行ってよく、またはこのようなハイブリダイゼーションを、オリゴヌクレオチドまたは標的ポリヌクレオチドのいずれかが、固体支持体に共有結合的にまたは非共有結合的に結合しているときに行ってよい。結合は、例えば、抗体−抗原相互作用、ポリ−L−Lys、ストレプトアビジンまたはアビジン−ビオチン、塩架橋、疎水性相互作用、化学架橋、UV架橋、ベーキングなどにより仲介され得る。対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドは固体支持体上に直接合成してよく、または固体支持体に合成後に結合させてよい。本発明の検出法における使用に適する固体支持体は、シリコン、ガラス、プラスチック、紙などから作られた支持体を含み、それは、例えば、ウェル(96ウェルプレートなど)、スライド、シート、膜、繊維、チップ、皿、およびビーズなどの形作でよい。本固体支持体は、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドまたは標的核酸の固定を促進するために、処理し、コーティングし、または誘導体化してよい。
【0069】
集団遺伝子型およびハプロタイプの決定と、それらと特性との相関。本発明は、集団中の遺伝子型またはハプロタイプの頻度の決定法を提供する。本方法は、集団中の各員に存在する遺伝子について遺伝子型またはハプロタイプを決定し(ここで、遺伝子型またはハプロタイプは、遺伝子中の多型部位の1箇所以上で検出されたヌクレオチド対またはヌクレオチドを含む)、そして、遺伝子型またはハプロタイプが集団中で見られる頻度を計算することを含む。本集団は参照集団、家族集団、同性集団、母集団グループ、または特性集団(例えば、医学的状態または治療的処置のような目的の特性を示す個体のグループ)であり得る。
【0070】
本発明の他の局面において、参照集団中に見られる遺伝子型および/またはハプロタイプについての頻度データを、特性と遺伝子型またはハプロタイプの間の関係を同定するための方法において使用する。本特性は、疾患への感受性または処置に対する応答を含むが、これらに限定されない全ての検出可能な表現型であり得る。本方法は、参照集団における目的の遺伝子型またはハプロタイプの頻度についてのデータを得て、そのデータと、本特性を示す集団における本遺伝子型またはハプロタイプの頻度を比較することを含む。参照および特性集団の一方または両方の頻度データは、上記の方法の一つを使用した、本集団中の各個体の遺伝子型同定またはハプロタイプ同定により得ることができる。特性集団のハプロタイプは直接的に、または、あるいは、上記の予測的遺伝子型対ハプロタイプアプローチ(predictive genotype to haplotype approach)により決定できる。
【0071】
参照および/または特性集団の頻度データは、書面であるかまたは電子形態であり得る、以前に決定した頻度データへのアクセスにより得る。例えば、頻度データはコンピューターによりアクセス可能なデータベースに存在し得る。頻度データを得たら、参照および特性集団中の目的の遺伝子型またはハプロタイプの頻度を比較する。
【0072】
遺伝子多型を分析しているとき、偶然発見されたかもしれない著しい関係を補正するために、計算を行い得る。本発明の方法において有用な統計法について、Statistical Methods in Biology, 3rd edition, Bailey NTJ, (Cambridge Univ. Press, 1997);Waterman MS, Introduction to Computational Biology(CRC Press, 2000)およびBioinformatics, Baxevanis AD & Ouellette BFF editors(John Wiley & Sons, Inc., 2001)を参照のこと。
【0073】
他の態様において、異なるグループのハプロタイプ頻度データを試験して、それらがハーディ・ワインベルグ平衡と一致するか否かを決定する。Hartl DL et al., Principles of Population Genomics, 3rd Ed. (Sinauer Associates, Sunderland, MA, 1997)。
【0074】
他の態様において、統計学的解析を、標準ANOVA検定をボンフェローニ補正と共に使用して、または遺伝子型表現型相関を多数回摸倣し、そして有意の値を計算するブートストラッピング法を使用して、行う。ANOVAを使用して、応答変異が測定できる1個以上の特性または変異が原因であるかまたはそれと相関するか否かに関する仮説を試験する。Fisher LD & vanBelle G, Biostatistics:Methodology for the Health Sciences(Wiley-lnterscience, New York, 1993) Ch. 10。
【0075】
ハプロタイプ対予測のための一つの態様において、分析は下記の通りの割り当て段階を含む:第一に、可能なハプロタイプ対の各々を参照集団のハプロタイプ対と比較する。一般に、参照集団のハプロタイプ対の一方のみが可能なハプロタイプ対とマッチし、その対を該個体に割り当てる。時々、参照ハプロタイプ対で表示される1個のハプロタイプのみが、個体の可能なハプロタイプ対と一致し、そしてこのような場合、該個体をこの既知のハプロタイプと、可能なハプロタイプ対からの既知のハプロタイプの減算により導き出された新規ハプロタイプを含むハプロタイプ対に割り当てる。
【0076】
他の態様において、目的の遺伝子型またはハプロタイプと連鎖不均衡にある検出可能な遺伝子型またはハプロタイプを、代用マーカーとして使用し得る。他の遺伝子型と連鎖不均衡にある遺伝子型は、ある遺伝子に対する特定の遺伝子型またはハプロタイプが、本集団でより頻繁であるとき、また、可能性のある代用マーカー遺伝子型も参照集団より多いことを証明することを示す。頻度が統計学的に有意であるならば、本マーカー遺伝子型は、その遺伝子型またはハプロタイプの予測であり、代用マーカーとして使用できる。
【0077】
ハプロタイプ内容と臨床応答の間の相関を発見するための他の方法は、誤差最小化最適化アルゴリズムに基づく予測モデルの使用であり、その一つが遺伝学的アルゴリズムである。Judson R, “Genetic Algorithms and Their Uses in Chemistry”in Reviews in Computational Chemistry, Ch. 10, Lipkowitz KB & Boyd DB, eds. (VCH Publishers, New York, 1997) pp. 1-73参照。シミュレーテッドアニーリング(Press et al., Numerical Recipes in C:The Art of Scientific Computing, Ch. 10(Cambridge University Press, Cambridge, 1992)、神経回路網(Rich E & Knight K, Artificial Intelligence, 2nd Edition, Ch. 10(McGraw-Hill, New York, 1991)、標準勾配降下法(Press et al., supra Ch. 10)、または他の全般的または局所的最適化アプローチ(Judson, supraの考察参照)も使用できる。
【0078】
下記実施例において、遺伝子型−表現型関係試験および関係分析を、Analyst(登録商標)を使用してSAS(Cary, NC, USA)で行った。関係試験は、分類別の遺伝子型を優性に関する仮定条件なしで独立変数として、そして種々の効果変数を従属変数として使用した。連続的な従属変数の試験はANCOVA解析を使用し、ロジスティック回帰を分類別の従属変数について使用した。遺伝子型−表現型関係解析における共変量は:処置、試験領域およびベースライン値であった。ANCOVA解析を、各処置群について同じモデルで繰り返した。加えて、応答者のパーセントを、処置および領域を計数とし、ベースラインを共変量としてロジスティック回帰モデルの手段で解析した。全データセットにおいてp<0.05の関係を有意と見なした。
【0079】
対象遺伝子型またはハプロタイプの処置応答への相関。好ましい態様において、特性は疾患への感受性、疾患の重症度、疾患の進行度または薬剤への応答である。このような方法は、遺伝子型と、効果値、薬物動態学的値および副作用値を含む処置結果の間の関係の可能性が存在するとき、全ての薬理遺伝学適用について診断試験および治療的処置の開発への適用性を有する。
【0080】
他の好ましい態様において、目的の特性は、ある治療的処置に対して患者が示す臨床応答、例えば薬剤ターゲティングもしくは医学的状態のための治療的処置への応答である。
【0081】
処置に対する臨床応答と遺伝子型またはハプロタイプの間の相関を導き出すために、遺伝子型またはハプロタイプデータを、その処置を受けた個体の集団(以後“臨床集団”)が示す臨床応答に対して得る。この臨床データは、既に行っている臨床試験の結果の解析により、および/または1個以上の新規臨床試験の設計および実施により、得ることができる。
【0082】
本臨床集団に含まれる個体は、通常目的の医学的状態の存在について分類される。この潜在的患者の分類は、標準的身体検査または1種以上の臨床検査を用いる。あるいは、患者の分類は、ハプロタイプ対と疾患感受性または重症度の間に強い相関がある状況については、ハプロタイプ同定を使用できる。
【0083】
目的の治療的処置を、試験集団中の各個体に施し、そして各個体の処置に対する応答を予め決定した1個以上の基準を使用して測定する。多くの場合、試験集団が広範な応答を示し、治験担当医が種々の応答から成る応答者群の数(例えば、低、中、高)を選択することが企図される。加えて、試験集団中の各個体の遺伝子を、遺伝子型同定および/またはハプロタイプ同定し、これは処置を施す前または後に行ってよい。
【0084】
次いでこれらの結果を解析して、多型群の間の臨床応答における何らかの観察された変異が統計学的に有意であるかどうかを決定する。使用できる統計学的解析法は、Fisher LD & vanBelle G, Biostatistics:Methodology for the Health Sciences(Wiley-lnterscience, New York, 1993)に記載されている。この解析はまた、遺伝子中の多型部位が表現型の違いに最も顕著に関与する回帰計算も含み得る。
【0085】
臨床および多型データの両方を得た後、個々の応答と遺伝子型またはハプロタイプ内容の間の相関を作る。相関はいくつかの方法で作り得る。一つの方法では、個体をそれらの遺伝子型またはハプロタイプ(またはハプロタイプ対)により分類し(多型グループともよぶ)、次いで、各多型グループのメンバーが示す臨床応答の平均および標準偏差を計算する。
【0086】
上記の解析から、遺伝子型またはハプロタイプ内容の関数として臨床応答を予測する当業者は、数学モデルを容易に構築できる。臨床応答と遺伝子の遺伝子型またはハプロタイプ(またはハプロタイプ対)の間の関係の同定は、処置にしそうであるまたはしそうにない個体、あるいは、低レベルでしか応答せず、故により多くの処置、すなわち、より多い薬剤が必要である個体を決定するための診断法の設計の基礎であり得る。本診断法はいくつかの形態:例えば、直接DNA試験(すなわち、遺伝子中の1箇所以上の多型部位の遺伝子型同定またはハプロタイプ同定)、血清学的試験、または身体検査値の一つを取り得る。唯一の必須要件は、診断試験結果と、根底の遺伝子型またはハプロタイプの間に良好な相関があることである。好ましい態様において、この診断法は、上記の予測的ハプロタイプ同定法を使用する。
【0087】
対象の遺伝子型グループへの割り当て。当業者には理解される通り、この決定を成す際にある程度の不確実さが含まれる。従って、コントロールグループレベルの標準偏差を、確率的な決定を成すために使用し、そして本発明の方法は、広範な確率ベースの遺伝子型グループ決定に適用可能である。故に、例として、そして限定するものではなく、一つの態様において、遺伝子発現産物の測定したレベルが何れかのコントロールグループの平均の2.5標準偏差に入るならば、その個体はその遺伝子型グループに割り当てられる。他の態様において、遺伝子発現産物の測定したレベルが、何れかのコントロールグループの2.0標準偏差に入るならば、その個体は遺伝子型グループに割り当てられる。さらに別の態様において、遺伝子発現産物の測定したレベルが何れかのコントロールグループの1.5標準偏差に入るならば、その個体は遺伝子型グループに割り当てられる。さらに別の態様において、遺伝子発現産物の測定したレベルが何れかのコントロールグループの1.0標準偏差またはそれ未満に入るならば、その個体は遺伝子型グループに割り当てられる。
【0088】
故に本方法は、種々の程度の確率で、どのグループに特定の対象を入れるべきかの決定を可能にし、そして次にこのような遺伝子型グループへの割り当てがその個体が入るべきリスクカテゴリーを決定する。
【0089】
臨床応答と遺伝子型またはハプロタイプの相関。処置に対する臨床応答と遺伝子型またはハプロタイプの相関を導き出すために、遺伝子型またはハプロタイプデータを、その処置を受けた個体の集団(以後“臨床集団”)が示す臨床応答に対して得る。この臨床データは、既に行っている臨床試験の結果の解析により、および/または1個以上の新規臨床試験の設計および実施により、得ることができる。
【0090】
このようにして異なるコントロールグループで決定した遺伝子発現産物の標準コントロールレベルを、次いで、ある患者における遺伝子発現産物の測定されたレベルと比較する。この遺伝子発現産物は、特定の遺伝子型グループものと関係する特徴的mRNAまたはその遺伝子型グループのポリペプチド遺伝子発現産物である。本患者を、次いで、測定されたレベルがあるグループのコントロールレベルと比較してどれだけ類似しているかに基づき、特定の遺伝子型グループに分類または割り当てる。
【0091】
多型データを貯蔵または表示するためのコンピューターシステム。本発明はまた本遺伝子について決定した多型データを貯蔵および表示するためのコンピューターシステムを提供する。本コンピューターシステムは、コンピューター処理装置、ディスプレイ、および多型データを含むデータベースを含む。本多型データは、参照集団におけるある遺伝子について同定した遺伝子多型、遺伝子型およびハプロタイプを含む。好ましい態様において、本コンピューターシステムは、それらの進化的関係に従い組織化されたハプロタイプを示す表示を作ることができる。コンピューターは、本発明の方法の実施に含まれる何れかのまたは全ての解析的および数学的操作を実行し得る。加えて、本コンピューターは、ディスプレイ装置上に表示される図(またはスクリーン)を作るプログラムを起動でき、それにより使用者は図と接触でき、染色体位置、遺伝子構造、および遺伝子ファミリー、遺伝子発現データ、多型データ、遺伝子配列データ、および臨床集団データ(例えば、1個以上の集団に関する人種地理学的(ethnogeographic)起源、臨床応答、遺伝子型、およびハプロタイプ)を含む、遺伝子およびそのゲノム変異に関する大量の情報を解析する。ここに記載の多型データは関係するデータベース(例えば、Oracleデータベースの実例またはASCIIフラットファイルのセット)の一部として貯蔵し得る。これらの多型データはコンピューターのハードドライブに貯蔵してよく、または、例えば、CD−ROMまたはコンピューターによりアクセスできる1個以上の他の貯蔵デバイスに貯蔵してよい。例えば、本データを、ネットワークを介してコンピューターと接続できる1個以上のデータベースに貯蔵できる。
【0092】
核酸に基づく診断。他の局面において、本発明は、遺伝学的変異のタイプに従い対象を分類するのに有用なSNPプローブを提供する。本発明のSNPプローブは、慣用の対立遺伝子判別アッセイにおいてSNPの間を判別する、オリゴヌクレオチドである。ある好ましい態様において、本発明のこの局面のオリゴヌクレオチドは、SNP核酸の1個の対立遺伝子に相補的であるが、SNP核酸の全ての他の対立遺伝子には相補的ではない。本発明のこの態様のオリゴヌクレオチドは、種々の方法でSNPの間を判別する。例えば、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、適当な長さのオリゴヌクレオチドが1個のSNPとハイブリダイズするが、全ての他のものとはしない。本オリゴヌクレオチドは、放射標識または蛍光分子タグを使用して標識し得る。あるいは、適当な長さのオリゴヌクレオチドをPCRのプライマーとして使用し、ここで、3’末端ヌクレオチドがSNPを含む1個の対立遺伝子に相補的であるが、他の対立遺伝子には相補的ではない。この態様において、PCRによる増幅の有り無しがSNPのハプロタイプを決定する。
【0093】
ここで同定した少なくとも1個の新規多型部位を含む本発明のゲノムおよびcDNAフラグメントは、少なくとも10ヌクレオチドの長さを有し、そして本遺伝子の完全長までの範囲であり得る。好ましくは、本発明のフラグメントは、100から3000ヌクレオチド長、より好ましくは200から2000ヌクレオチド長、最も好ましくは500から1000ヌクレオチド長である。
【0094】
本発明のキット。本発明は、個体における遺伝子のハプロタイプ同定および/または遺伝子型同定に有用な核酸およびポリペプチド検出キットを提供する。このようなキットは、個体の分類の目的で個体を分類するのに有用である。具体的に、本発明は、例えば、血清、血漿、リンパ、嚢胞液、尿、大便、脳脊髄液、腹水(ascities fluid)または血液を含むがこれらに限定されない何らかの体液および体組織の生検サンプルを含む生物学的サンプルにおける本発明のマーカーに対応するポリペプチドまたは核酸の存在を検出するためのキットを含む。例えば、本キットは、生物学的サンプルにおける本発明のマーカーに対応するポリペプチドまたは本ポリペプチドをコードするmRNAの検出が可能な標識した化合物または試薬、およびサンプル中のポリペプチドまたはmRNAの定量のための手段、例えば、本ペプチドをコードするDNAまたはmRNAに結合するポリペプチドまたはオリゴヌクレオチドプローブに結合する抗体を含む。キットはまた本キットを使用して得た結果の解釈のための指示書も含み得る。
【0095】
他の態様において、本発明は、別々の容器に包装された少なくとも2個の遺伝子型同定オリゴヌクレオチドを含むキットを提供する。本キットはまた別の容器に包装されたハイブリダイゼーション緩衝液(オリゴヌクレオチドをプローブとして使用すべきであるとき)のような他の成分も含み得る。あるいは、オリゴヌクレオチドを標的領域を増幅するために使用すべきであるとき、本キットはまた、PCRの場合のように、ポリメラーゼが仲介するプライマー伸長のために最適化されたポリメラーゼおよび反応緩衝液を、別の容器に包装して含み得る。好ましい態様において、このようなキットはDNAサンプル回収手段をさらに含み得る。
【0096】
抗体を利用するキットについて、本キットは、例えば、(1)本発明のマーカーに対応するポリペプチドに結合する、第一抗体(例えば、固体支持体に結合した);および、所望により(2)本ポリペプチドまたは本第一抗体に結合し、検出可能な標識に結合している第二の異なる抗体を含み得る。
【0097】
オリゴヌクレオチドを利用するキットについて、本キットは、例えば、(1)本発明のマーカーに対応するポリペプチドをコードする核酸配列とハイブリダイズする、オリゴヌクレオチド、例えば、検出可能に標識されたオリゴヌクレオチド;または(2)本発明のマーカーに対応する核酸分子の増幅に有用なプライマーの対を含み得る。
【0098】
本キットはまた、例えば、緩衝剤、保存剤またはタンパク質安定化剤も含み得る。本キットは検出可能な標識、例えば、酵素または基質の検出n必要な成分をさらに含み得る。本キットはまたアッセイし、試験サンプルと比較し得るコントロールサンプルまたは一連のコントロールサンプルを含み得る。キットの各成分は個々の容器内に封入され得、この種々の容器の全てが、本キットを使用して行ったアッセイの結果の解釈のための指示書と共に一つの容器内にあり得る。
【0099】
本発明の核酸配列。一つの局面において、本発明は1個以上の単離ポリヌクレオチドを含む。本発明はまた、該ポリヌクレオチドの対立遺伝子変異、すなわち、本ポリヌクレオチドによりコードされるものと同一、相同または関係する突然変異体ポリペプチドをコードする、単離ポリヌクレオチドの天然に存在する別形態も含む。あるいは、天然に存在しない変異も、当分野で既知の突然変異誘発技術によりまたは直接合成技術により、製造できる。
【0100】
従って、本発明の突然変異体ポリペプチドをコードする何らかの核酸配列と低ストリンジェンシーでハイブリダイズできる核酸配列は、本発明の範囲内であると見なされる。標準ストリンジェンシー条件は標準分子生物学クローニングテキストにおいて十分に特徴付けされている。例えばMolecular Cloning A Laboratory Manual, 2nd Ed., Sambrook, Fritsch & Maniatis(Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989);DNA Cloning, Volumes I and II, Glover DN, ed. (1985);Oligonucleotide Synthesis, Gait MJ, ed. (1984);Nucleic Acid Hybridization, Hames BD & Higgins SJ, eds. (1984)参照。
【0101】
遺伝子発現レベルの特徴付け。mRNAレベル(すなわち、遺伝子転写レベル)およびポリペプチド遺伝子発現産物のレベル(すなわち、遺伝子翻訳レベル)を検出および測定するための方法は当分野で既知であり、ヌクレオチドマイクロアレイならびに質量分析計および/または抗体検出および定量技術を含むポリペプチド検出法の使用を含む。またStrachan T & Read A, Human Molecular Genetics, 2nd Edition. (John Wiley and Sons, Inc. Publication, New York, 1999)参照。
【0102】
標的遺伝子転写の決定。生物学的サンプル、例えば、個体の組織または体液における遺伝子の発現産物のレベルの決定は種々の方法で行い得る。用語“生物学的サンプル”は、対象から単離された組織、細胞、生物学的液体およびそれらの単離物、ならびに、対象内に存在する細胞および流体を含む。多くの発現検出法が単離RNAを使用する。インビトロ法のために、mRNAの単離に反して選択しない何らかのRNA単離技術を、細胞からのRNAの精製に利用できる。例えば、Ausubel et al., ed., Curr. Prot. Mol. Biol. (John Wiley & Sons, New York, 1987-1999)参照。
【0103】
一つの態様において、標的遺伝子のmRNA発現産物のレベルを決定する。特定のmRNAのレベルを測定するための方法は当分野で既知であり、ノーザンブロット分析、逆転写PCRおよび実時間定量的PCRを含むか、またはオリゴヌクレオチドアレイもしくはマイクロアレイに対するハイブリダイゼーションによる。他のより好ましい態様において、発現レベルの決定は、血液または血清を含むが、これらに限定されない体液または組織サンプル中の遺伝子のタンパク質またはポリペプチド発現産物のレベルの決定により行い得る。多数の組織サンプルを、例えば、米国特許4,843,155の一段階RNA単離法のような当業者に既知の技術を使用して容易に処理できる。
【0104】
単離したmRNAを、サザンまたはノーザン分析、PCR分析およびプローブアレイを含むが、これらに限定されないハイブリダイゼーションまたは増幅アッセイにおいて使用できる。mRNAレベルの検出のための一つの好ましい診断法は、単離したmRNAと、検出する遺伝子によりコードされたmRNAにハイブリダイズできる核酸分子(プローブ)を接触させることを含む。本核酸プローブは、例えば、完全長cDNA、またはそれらの一部、例えば少なくとも7、15、30、50、100、250または500ヌクレオチド長であり、本発明のマーカーをコードするmRNAまたはゲノムDNAとストリンジェントな条件下で特異的にハイブリダイズするのに十分なオリゴヌクレオチドであり得る。本発明の診断アッセイに使用するための他の適当なプローブはここに記載されている。mRNAとプローブのハイブリダイゼーションは、問題のマーカーが発現されていることを示す。
【0105】
一つの形態において、例えば、Affymetrix遺伝子チップアレイ(Affymetrix, Calif. USA)において、本プローブを固体表面上に固定し、mRNAをプローブと接触させる。当業者は、既知のmRNA検出法を、本発明のマーカーによりコードされるmRNAのレベルの検出に使用するために容易に適合できる。
【0106】
サンプル中の本発明のマーカーに対応するmRNAを検出するための別法は、例えば、RT−PCR(実験的態様は米国特許4,683,202に明示);リガーゼ連鎖反応(Barany et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:189-193(1991))、自立した配列増幅(Guatelli et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:1874-1878(1990));転写性増幅系(Kwoh et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:1173-1177(1989));Q-Beta Replicase(Lizardi et al., Biol. Technology 6:1197(1988));ローリング・サークル増幅(米国特許5,854,033);または任意の他の核酸増幅法による、核酸増幅の過程、その後の当業者仁吉の技術を使用した増幅分子の検出を含む。これらの検出スキームは、核酸分子が非常に少ない数で存在するとき、そのような分子の検出にとりわけ有用である。ここで使用する“増幅プライマー”は、遺伝子の5’または3’領域にアニールでき(各々プラスおよびマイナス鎖、またはその逆)、その間に短領域を含む核酸分子の対として定義する。一般に、増幅プライマーは約10−30ヌクレオチド長、および約50−200ヌクレオチド長のフランク領域である。
【0107】
実時間定量的PCR(RT−PCR)は、例えば本発明の遺伝子の、例えば目的のSNPおよび遺伝子多型を含むものの、遺伝子発現レベルの評価の一つの方法である。RT−PCRアッセイは、mRNA鎖を含むRNA鎖からのDNA鎖の合成を触媒するために、RNA逆転写酵素を利用する。得られるDNAを特異的に検出および定量でき、そしてこの方法はmRNAの特定の種のレベルの決定に使用できる。これを行う一つの方法は、TAQMAN(登録商標)(PE Applied Biosystems, Foster City, Calif., USA)であり、PCR反応中、プローブの特異的形態を開裂するために、AMPLITAQ GOLDTM DNAポリメラーゼの5’ヌクレアーゼ活性を利用する。これはTAQMANTMプローブと呼ばれる。Luthra et al., Am. J. Pathol. 153:63-68(1998);Kuimelis et al., Nucl. Acids Symp. Ser. 37:255-256(1997);およびMullah et al., Nucl. Acids Res. 26(4):1026-1031(1998)参照。本反応中、プローブの開裂はレポーター色素とクエンチャー色素を分離させ、レポーターの増加した蛍光をもたらす。PCR産物の蓄積を、本レポーター色素の蛍光の増加のモニタリングにより直接検出する。Heid et al., ゲノム Res. 6(6):986-994(1996))。核酸標的の出発コピーの数が多いほど、蛍光のより速い著しい増加が観察される。Gibson, Heid & Williams et al., Genome Res. 6:995-1001(1996)参照。
【0108】
細胞の転写状態の測定のための他の技術は、ダブルの制限酵素消化と位相プライマーを組み合わせる方法(例えば、EP0534858A1参照)、または定義したmRNA末端に最も近い部位を有する制限フラグメントを選択する方法(例えば、Prashar & Weissman, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93(2) 659-663(1996)参照)のような、電気泳動的分析のための限られた複雑さの制限フラグメントのプールを作る。
【0109】
他の方法は、各cDNAを同定するために複数のcDNAの各々で、十分な塩基対、例えば、20−50塩基対のシークエンシングにより、または定義したmRNA末端経路パターンに対して既知の位置に産生した短タグ、例えば、9−10塩基対のシークエンシングにより、cDNAプールを統計学的にサンプルする。例えば、Velculescu, Science 270:484-487(1995)参照。サンプル中のcDNAレベルを定量し、各cDNAの中央値、平均および標準偏差を当業者に既知の標準統計学的手段を使用して決定する。Norman T.J. Bailey, Statistical Methods In Biology, 3rd Edition(Cambridge University Press, 1995)。
【0110】
ポリペプチドの検出。免疫学的検出法。本発明の遺伝子によりコードされるタンパク質の発現は、検出可能に標識された、またはその後に標識できるプローブにより検出できる。プローブまたは抗体に関する用語“標識された”は、検出可能な物質のプローブまたは抗体へのカップリング、すなわち、物理的架橋によるプローブまたは抗体の直接標識、ならびに、直接標識された他の試薬との反応性によるプローブまたは抗体の間接的標識を含むことを意図する。間接的標識の例は、蛍光標識された二次抗体を使用した一時抗体の検出および蛍光標識されたストレプトアビジンにより検出できるようなビオチンでのDNAプローブの末端標識を含む。一般に、本プローブは、発現されたタンパク質を認識する抗体である。種々の形態を、サンプルが、ある抗体に結合する標的タンパク質を含むか否かの決定に用いることができる。本発明の標的ポリペプチドの検出に有用な免疫アッセイ法は、例えば、ドットブロット法、ウエスタンブロット法、タンパク質チップ、競合および非競合タンパク質結合アッセイ、酵素免疫吸着アッセイ(ELISA)、免疫組織化学、蛍光標識細胞分取(FACS)、および一般に使用され、そして科学および特許文献に広く記載されている他の方法を含むがこれらに限定せず、そして多くは商業的に用いられる。当業者は、細胞が本発明のマーカーを発現するか否か、および血中または他の身体組織中のその特異的ポリペプチド発現産物の相対的濃度の決定に使用するために、既知のタンパク質/抗体検出法を容易に適合できる。個体からのタンパク質を、当業者に既知の技術を使用して単離できる。用いるタンパク質単離法は、例えば、Harlow & Lane, Antibodies:Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1988))に記載のようなものであり得る。
【0111】
記載の遺伝子の一つによりコードされるタンパク質に対する抗体を産生するために、種々の宿主動物をポリペプチド、またはその一部の注射により免疫し得る。このような宿主動物は、ウサギ、マウスおよびラットを含み得るが、これらに限定されない。種々のアジュバントを使用して、免疫学的応答を高めることができ、宿主種に依存して、フロインド(完全および不完全)、水酸化アルミニウムのようなミネラルゲル;リソレシチン、pluronicポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油エマルジョン、キーホールリンペットヘモシアニンおよびジニトロフェノールのような界面活性剤;およびbacille Camette-Guerin(BCG)およびCorynebacterium parvumのような有用な可能性のあるヒトアジュバントを含むが、これらに限定されない。
【0112】
特定の抗原に対する抗体の均質集団であるモノクローナル抗体(mAbs)を、培養中の連続継代細胞系からの抗体分子の産生を提供する任意の技術による得ることができる。これらは、Kohler & Milstein, Nature 256:495-497(1975);および米国特許4,376,110のハイブリドーマ技術;Kosbor et al., Immunol. Today 4:72(1983);Cole et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80:2026-2030(1983)のヒトB細胞ハイブリドーマ技術;およびCole et al., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy (Alan R. Liss, Inc., 1985) pp. 77-96のEBVハイブリドーマ技術を含むが、これらに限定されない。
【0113】
加えて、適当な抗原特異性のマウス抗体分子からの遺伝子を、適当な生物学的活性のヒト抗体分子からの遺伝子と一緒にスプライシングすることによる、“キメラ抗体”の産生のために開発された技術(Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6851-6855(1984);Neuberger et al., Nature 312:604-608(1984);およびTakeda et al., Nature 314:452-454(1985)参照)を、使用できる。キメラ抗体は、異なる部分が異なる動物種由来である分子、例えばマウスmAb由来の可変または超可変領域とヒト免疫グロブリン定常領域を有する分子である。
【0114】
あるいは、一本鎖抗体の産生について記載された技術(米国特許4,946,778;Bird, Science 242:423-426(1988);Huston et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883(1988);およびWard et al., Nature 334:544-546(1989))を、異なって発現される遺伝子一本鎖抗体の産生に適合できる。
【0115】
“ヒト化抗体”の産生に有用な技術を、タンパク質、そのフラグメントまたは誘導体に対する抗体の産生に適合できる。このような技術は米国特許5,932,448;5,693,762;5,693,761;5,585,089;5,530,101;5,569,825;5,625,126;5,633,425;5,789,650;5,661,016;および5,770,429に開示されている。
【0116】
抗体または抗体フラグメントを、ウエスタンブロットまたは免疫蛍光技術のような方法に使用して、発現されたタンパク質を検出できる。このような使用において、抗体またはタンパク質のいずれかを固体支持体上に固定することが一般に好ましい。適当な固相支持体または担体は、抗原または抗体を結合できる全ての支持体を含む。既知の支持体または担体は、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、天然および修飾セルロース、ポリアクリルアミド、斑糲岩およびマグネタイトを含む。
【0117】
検出を容易にするための有用な方法は、サンドイッチELISAであり、それに多くの変法が存在するが、その全ては本発明の方法およびアッセイにおいて使用することが意図される。ここで使用する“サンドイッチアッセイ”は、基本的な2部位技術からの全ての変法を含むことを意図する。免疫蛍光およびEIA技術は両方とも当分野で非常によく知られている。しかしながら、放射性同位体、化学発光または生物発光分子のような他のレポーター分子も用い得る。要求される使用に合わせるためにどのように本方法を変えるかは、当業者には容易に明らかである。
【0118】
タンパク質の全ゲノムモニタリング、すなわち、“プロテオーム”を、結合部位が、本細胞ゲノムによりコードされた複数のタンパク質種に特異的な、固定化された好ましくはモノクローナルの抗体を含むマイクロアレイの構築により行うことができる。好ましくは、抗体はコードされたタンパク質のかなりの部分に対して、または少なくとも目的の生物学的ネットワークモデルの試験または確認に関係するタンパク質に対して存在する。上記の通り、モノクローナル抗体の製造法は既知である。例えば、Harlow & Lane, Antibodies:Laboratory Manual”(Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York, 1988)参照。好ましい態様において、モノクローナル抗体を、細胞のゲノム配列に基づいて設計した合成ペプチドフラグメントに対して惹起させる。このような抗体アレイを用いて、細胞からのタンパク質を、本アレイと接触させ、それらの結合を当分野で既知のアッセイにより測定する。
【0119】
ポリペプチドの検出。二次元ゲル電気泳動。二次元ゲル電気泳動は、当分野で既知であり、典型的に第一の次元に沿った等電点電気泳動と、その後の第二の次元に沿ったSDS−PAGE電気泳動を含む。例えば、Hames et al., Gel Electrophoresis of Proteins:Practical Approach(IRL Press, New York, 1990);Shevchenko et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:14440-14445(1996);Sagliocco et al., Yeast 12:1519-1533(1996);およびLander, Science 274:536-539(1996)参照。
【0120】
ポリペプチドの検出。質量分析。標的ポリペプチドのアイデンティティおよび発現レベルを、質量分析技術(MS)を使用して決定できる。MSを利用する分析法は、単離された標的ポリペプチドの分析ならびに生物学的サンプル中の標的ポリペプチドの分析に有用である。標的ポリペプチドを分析するためのMS形態は、マトリックス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI)、連続またはパルス状エレクトロスプレーイオン化(ESI)および関係法、例えばイオンスプレーまたは熱スプレー、およびマッシブクラスター衝撃(MCI)を含むが、これらに限定されないイオン化(I)を含む。このようなイオン源は、直線状または非直線状リフレクトロン飛行時間(TOF)、1個または複数個の四重極、1個または複数個の磁場、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(FTICR)、イオントラップおよびイオントラップ/TOFのようなこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない検出形態と適当し得る。イオン化について、多くのマトリックス/波長組み合わせ(例えば、マトリックス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI))または溶媒組み合わせ(例えば、ESI)を用い得る。
【0121】
質量スペクトル(MS)分析について、標的ポリペプチドを適当な溶液または試薬系に溶解する。溶液または試薬系の選択、例えば、有機または無機溶媒は、標的ポリペプチドの特性および行うMSのタイプに依存し、そして当分野で既知の方法に基づく。例えば、MALDIについてはVorm et al., Anal. Chem. 61:3281(1994)を参照;およびESIについてはValaskovic et al., Anal. Chem. 67:3802(1995)を参照。ペプチドのMSも、例えば、国際PCT出願WO93/24834および米国特許5,792,664に記載されている。標的ポリペプチドが気化工程のために導入するエネルギーにより分解される危険性を最小にする溶媒を選択する。標的ポリペプチド分解の減少した危険性は、例えば、サンプルのマトリックスへの包埋により達成される。適当なマトリックスは、糖、例えば、ペントースまたはヘキソース、またはセルロースのようなポリサッカライドのような有機化合物であり得る。このような化合物は、熱分解によりCOおよびHOに分解され、その結果化学反応に至り得る残基は形成されない。マトリックスはまた、本質的に何ら残渣を残さずに分解するアンモニウムの硝酸塩のような無機化合物でもあり得る。これらおよび他の溶媒の使用は当業者に既知である。例えば、米国特許5,062,935参照。エレクトロスプレーMSはFenn et al., J. Phys. Chem. 88:4451-4459(1984);およびPCT出願WO90/14148;により記載され、現在の適用はレビュー文献に要約されている。Smith et al., Anal. Chem. 62:882-89(1990)およびArdrey, Spectroscopy 4:10-18(1992)。
【0122】
MSで決定した標的ポリペプチドの質量を、対応する既知のポリペプチドの質量と比較する。例えば、標的ポリペプチドが突然変異体タンパク質であるとき、対応する既知ポリペプチドは対応する非突然変異体タンパク質、例えば、野生型タンパク質であり得る。ESIで、フェムトモル量のサンプルでの分子量の決定が、全て質量計算に使用され得る複数イオンピークの存在のために、非常に正確である。アトモルより低いレベルのタンパク質が例えば、ESI MS(Valaskovic et al., Science 273:1199-1202(1996))およびMALDI MS(Li et al., J. Am. Chem. Soc. 118:1662-1663(1996))を使用して検出されている。
【0123】
マトリックス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI)。生物学的サンプル、例えば、体液または組織サンプル中の標的タンパク質のレベルを、マトリックス支援レーザ脱離/イオン化、飛行時間型質量分析(MALDI−TOF−MS)およびレーザー脱離/イオン化のために改善された表面、下記にさらに詳述する飛行時間型質量分析(SELDI−TOF−MS)を含むが、これらに限定されない質量分光学(MS)法の手段により測定できる。MALDIを実施するための方法は当業者に既知である。例えば、Juhasz et al., Analysis, Anal. Chem. 68:941-946(1996)を参照、およびまた、MALDIおよび遅延抽出プロトコールの記載に関して例えば、米国特許5,777,325;5,742,049;5,654,545;5,641,959;5,654,545および5,760,393を参照。分解能を改善するための多くの方法も既知である。MALDI−TOF−MSはHillenkamp et al., Biological Mass Spectrometry, Burlingame & McCloskey, eds. (Elsevier Science Publ., Amsterdam, 1990) pp. 49-60により記載されている。
【0124】
質量分析を使用したマーカー検出のための種々の技術を使用できる。Bordeaux Mass Spectrometry Conference Report, Hillenkamp, ed., pp. 354-362 (1988); Bordeaux Mass Spectrometry Conference Report, Karas & Hillenkamp, eds., pp. 416-417 (1988); Karas & Hillenkamp, Anal. Chem. 60: 2299-2301 (1988);およびKaras et al., Biomed. Environ. Mass Spectrum 18: 841-843 (1989)参照。TOF−MSにおけるレーザービームの使用は、例えば、米国特許4,694,167;4,686,366、4,295,046および5,045,694に記載され、これらはその全体を引用により本明細書に包含させる。他のMS技術は、高分子量バイオポリマーの十分な揮発を、フラグメント化無しに可能にし、そして、広範囲の生物学的巨大分子を質量分析により分析することを可能にしている。
【0125】
レーザー脱離/イオン化(SELDI)のための表面改善。親和性質量分析(AMS)として記載されている、新規MSプローブエレメント組成物と、本プローブエレメントが特異的検体の捕捉およびドッキングに能動的に関与することを可能にする表面を用いる、他の技術を使用する。SELDI特許:米国特許5,719,060;5,894,063;6,020,208;6,027,942;6,124,137;および公開された米国特許出願U.S.2003/0003465参照。新規MSプローブエレメントのいくつかのタイプが、親和性捕捉のために改善された表面(SEAC)のために設計されている。Hutchens & Yip, Rapid Commun. Mass Spectrom. 7:576-580(1993)参照。SEACプローブエレメントは、タンパク質表面構造および生体分子特異的分子認識に関して既知のものを利用することにより、バイオポリマーの異なるクラス、特にタンパク質を回収し、つなぎ止めるために十分に使用されている。MSプローブエレメント表面上の固定化親和性捕捉デバイス、すなわち、SEACは、検体のプローブ表面に対する位置および親和性(特異性)を決定し、それにより、その後の分析的MS工程が有効である。
【0126】
SELDIの一般的カテゴリー内に、3つの別のサブカテゴリーが存在する:(1)表面に直接(正味)に添加した検体の脱離/イオン化を促進するために、プローブエレメント表面、すなわち、サンプル提示手段が、“マトリックス”の代わりにエネルギー吸収分子(EAM)を含むように設計された、正味の脱離のための表面改善(SEND)。(2)プローブエレメント表面、すなわち、サンプル提示手段が、種々の機構(ほとんど非共有結合的)により、プローブ表面への検体の特異的または非特異的結合または吸着(いわゆるドッキングまたは連結)のいずれかを促進するために化学的に定義されたおよび/または生物的に定義された親和性捕捉デバイスを含むように設計された、SEAC。(3)プローブエレメント表面、すなわち、サンプル提示手段が、共有結合的ドッキングデバイスとして働くための化学的に定義された架橋分子を含むように設計または修飾されている光解離性結合および遊離のための表面改善(SEPAR)。SEPARサンプル提示手段(すなわち、プローブエレメント表面)と検体(例えば、タンパク質)の間の光解離性分子結合点のタイプおよび数を決定する化学特異性は、検体中の多くの異なる残基または化学構造のいずれか1個以上を含み得る(例えば、タンパク質およびペプチドの場合、His、Lys、Arg、Tyr、PheおよびCys残基)。
【0127】
生物学的状態の他の局面。本発明の種々の態様において、生物学的活性状態の状況、または混合された状況を、薬剤および経路応答を得るために測定できる。細胞機能の特徴付けに関与するタンパク質を測定でき、および本発明の態様はこのような測定に基づき得る。活性測定は、特徴付けする特定の活性に適当な任意の機能的、生化学的または物理的手段により行い得る。本活性が化学変換に関与するとき、細胞タンパク質を天然基質と接触でき、変換の割合を測定する。活性が、多量体単位の会合、例えば、DNAとの活性化DNA結合複合体の会合に関与するとき、会合したタンパク質またはこのような会合の二次的結果、例えば転写されたmRNAの量を測定できる。また、例えば、細胞サイクルコントロールにおけるような一つの機能的活性しか知られていないとき、機能の性能を観察できる。どのように知られていても測定していても、タンパク質活性の変化は、本発明の方法により分析される応答データを形成する。別のおよび非限定的態様において、応答データは、細胞の生物学的状態の混合された状況の形であり得る。応答データは、例えば、ある種のmRNA発生量の変化、ある種のタンパク質発生量の変化およびある種のタンパク質活性の変化から構築できる。
【0128】
下記実施例は、本発明の好ましい態様をより詳細に説明するために提示する。この実施例はいかなる方法でも、添付の特許請求の範囲により定義された本発明の範囲を限定すると解釈してはならない。
【実施例】
【0129】
軽度から中程度本態性高血圧の患者におけるアリスキレンとプラセボおよびイルベサルタンの比較
導入および要約。後ろ向き薬理遺伝学解析を、遺伝学的変異と臨床試験における臨床成績の間の関係の可能性を評価する目的で行った。具体的に、48個の遺伝子多型を、レニン−アンギオテンシン−アルドステロン系(RAS)からのまたは既に血圧制御に関与するとされている12個の遺伝子で試験した。著しい関係が、アンギオテンシン変換酵素(ACE)遺伝子における1個の遺伝子多型、アンギオテンシンII2型受容体(AGTR2)遺伝子における2個の遺伝子多型と、平均座位拡張期および収縮期血圧低下の臨床的パラメータの間で見られた。これらの効果はイルベサルタンおよびプラセボ処置では見られず、この分析ではむしろアリスキレン処置に特異的であった。
【0130】
臨床試験。多施設、無作為、二重盲検式、並行群臨床試験を、軽度から中程度高血圧患者の集団における、プラセボと比較したアリスキレンの効果および安全性を検査のために設計した。本処置は8週間、すなわち、本臨床試験エンドポイントは、この特定の試験に関して8週目であった。本試験の一次評価項目は、軽度から中程度本態性高血圧の患者における150mg イルベサルタンおよびプラセボと比較したアリスキレン150mg、アリスキレン300mg、およびアリスキレン600mgの血圧低下効果であった。人口統計学的特性は、一般的に処置グループ間で同等であった。患者の大多数は白人であり、65歳より若く、平均50台半ばであった。男性と女性の全体的分布は等しかった。
【0131】
分析した一次効果変数は、MSDBP変化(ベースラインからのMSDBPの低下)であった。分析した二次効果変数はMSSBP変化(ベースラインからのMSSBPの低下)、応答者比、ベースラインからの血漿レニン活性(PRA)低下および活性血漿レニン(AREN)増加であった。
【0132】
一次効果に関して、対比較は、全ての投与量の活性処置剤が、包括解析(ITT)集団においてエンドポイントおよび8週目で、およびパー・プロトコル集団において臨床試験エンドポイントで、平均座位拡張期血圧(MSDBP)の低下において、プラセボよりも統計学的に優れていた。同様のMSDBP低下が、アリスキレン150mgおよびイルベサルタン150mgで見られた。アリスキレン300および600mgは最大の低下をもたらしたが、600mg用量ではより大きな低下は観察されなかった。
【0133】
二次効果に関して、平均座位収縮期血圧(MSSBP)について、活性処置剤の全ての投与量は、臨床試験エンドポイントでプラセボよりも統計学的に優れていた。8週目で、アリスキレン300および600mgはプラセボおよびイルベサルタンより、エンドポイントで優れていた。同様のMSSBP低下が、アリスキレン150mgおよびイルベサルタン150mgで見られた。アリスキレン300および600mgは最大の低下をもたらしたが、600mg用量ではより大きな低下は観察されなかった。
【0134】
十分な応答者(MSDBP<90mmHgまたはベースラインからの≧10mmHg低下;またはMSSBP<140mmHgまたはベースラインからの≧20mmHg低下として定義)の割合に関して、全活性処置剤は、エンドポイントでプラセボよりも統計学的に優れていた。エンドポイントでのITT集団に関するMSDBP結果は、アリスキレングループについて59−67%応答者であり、それに対しイルベサルタンについて56%およびプラセボについて38%であった。エンドポイントでのITT集団に関するMSSBP結果は、アリスキレングループについて57−68%応答者であり、それに対しイルベサルタンについて59%およびプラセボについて36%であった。ITT集団において、活性レニンの用量相関平均増加がアリスキレングループで観察された(アリスキレン150、300および600mgについて各々20.8、29.9および93.6mu/mL)。アリスキレン150mgは、イルベサルタン150mg(11.2mu/mL)よりも大きいレニンの平均増加をもたらした。これはレニン阻害剤の作用機構と一致する。
【0135】
臨床試験に参加する患者には、薬理遺伝学解析への参加について別の同意書を提供するよう依頼した。全同意患者からの血液サンプルを、個々の治験現場で採取し、次いでCovance(Indianapolis, IN, USA)に輸送した。PUREGENETM DNA Isolation Kit(D-50K)(Gentra, Minneapolis, Minnesota, USA)を使用して、各患者のゲノムDNAをCovanceにより血液から抽出した。最終的に、511名の患者を遺伝子型同定し、大まかに各処置アームで等しい割合であった。
【0136】
薬理遺伝学解析目標および設計。後ろ向き薬理遺伝学解析を、薬理遺伝学試験のためのサンプル提供に同意した全患者で行った。主要な目的は、遺伝学的変異と、第一にMSDBPによりおよび第二にMSSBPおよび応答者比により評価した、アリスキレンでの処置の効果における変異の間の相関の同定のためであった。
【0137】
候補遺伝子アプローチを使用して、レニンアンギオテンシン系(RAS)または予め血圧制御に関与している12個の遺伝子中の48個の遺伝子多型の選択に使用した(表1)。全ての利用可能なサンプルを、各SNPについて遺伝子型同定した。次いで、下記の通り関係試験を行った。
【表1】

【0138】
遺伝子型同定。一塩基多型(SNP)アッセイを、公的dbSNPデータベースおよび私有Celera/ABIデータベースからの情報を使用して設計した。遺伝子型同定アッセイについての得られるプローブセットを、ABIのAssays-by-Design(登録商標)プラットホームのために作成した。Livak KJ, Marmaro J, & Todd JA, Nature Genetics 9:341-2(1995)。遺伝子型同定を、製造者の指示に従い10ngのゲノムDNAで行った。
【0139】
本分析において遺伝子型同定された遺伝子多型を、内部CPG座コード、遺伝子、経路、引用データベースおよび効果と共に、表2に示す。
【0140】
【表2】

【表3】

【0141】
統計学的解析。遺伝子型−表現型関係試験および関係解析を、Analyst(登録商標)を使用してSAS(Cary, NC, USA)で行った。
【0142】
関係試験は、分類別の遺伝子型を優性に関する仮定条件なしで独立変数として、そして種々の効果変数を従属変数として使用した。連続的な従属変数の試験はANCOVA解析を使用し、ロジスティック回帰を分類別の従属変数について使用した。遺伝子型−表現型関係解析における共変量は:処置、試験領域およびベースライン値であった。
【0143】
ANCOVA解析を、各処置群について同じモデルで繰り返した。加えて、応答者のパーセントを、処置および領域を計数とし、ベースラインを共変量としてロジスティック回帰モデルの手段で解析した。全データセットにおいてp<0.05の関係を有意と見なした。
【0144】
アンギオテンシン変換酵素(ACE)。Ang Iは、アンギオテンシン変換酵素(ACE)により活性オクタペプチドAng IIに変換される。SNP_4769を、RASにおけるこの重要な酵素における6個の他の遺伝子多型と共に、患者において遺伝子型同定された。有意な関係が、SNP_4769と、ベースラインからのMSDBP低下の一次効果変数(p=0.0058)、および応答者比の二次変数(p=0.001)で見られた。ベースラインからのMSSBP低下の他の二次変数では、有意な関係はなく、同様な傾向が見られたのみであった(p=0.0745)。
【0145】
ANCOVA解析を各グループについて繰り返したとき、本関係はアリスキレン処置グループでのみ検出され、イベサルタンまたはプラセボグループではなかった。全てのSNPと、二次パラメータ血漿レニン活性(PRA)および活性レニン(AREN)の間に有意な関係は見られなかった。アリスキレン特異的効果を表3に示す。
【表4】

【0146】
SNP_4769は、ACE酵素中のコドン32でアミノ酸配列をプロリンからセリンに変えるコーディングSNPである。ACE I/D多型(イントロン16中の287bp Alu反復の存在または非存在)は、ACEレベルおよび活性の制御、ならびにRASにおけるその悪影響に関与している。Rigat B et al., J. Clin. Invest. 86(4):1343-6(1990)。
【0147】
アンギオテンシンII受容体、2型(AGTR2)。AGTR2は、アンギオテンシンII受容体、2型をコードする。1型アンギオテンシンII受容体は、数種の抗高血圧剤の標的である。Ang IIは、I型受容体への結合を介してシグナル伝達し、血管収縮および血圧上昇を誘発する。2型アンギオテンシンII受容体はACE活性を阻害し、そして1型受容体仲介作用を減弱し、それにより血管拡張をもたらすことが示されている。Hunley TE et al., Kidney Int. 57(2):570-7(2000);Ichiki T et al., Nature 377(6551):748-50(1995)。
【0148】
AGTR2 SNP(SNP_1445およびSNP_4795)と、ベースラインからのMSDBP低下の一次効果変数の間に有意な関係が見られた(各々p=0.0078および0.0004)。SNP_4795はまたベースラインからのMSSBP低下の二次変数と有意な関係を証明したが(p=0.0245)、応答者比である他の二次パラメータとは示さなかった。一方、SNP_1445は、二次パラメータと有意な関係を示さなかった。全てのSNPと、二次パラメータ血漿レニン活性(PRA)および活性レニン(AREN)の間に有意な関係は見られなかった。
【0149】
ANCOVA解析を各処置グループについて繰り返したとき、この関係はアリスキレン処置グループについてのみ検出され、イベサルタンまたはプラセボグループではなかった。アリスキレン処置患者における遺伝子型の効果は上記表3に示している。
【0150】
これら2個のSNPは両方とも非コーディングである。SNP_1445はAGTR2遺伝子の非翻訳領域内にあり、そしてSNP_4795は、AGTR2遺伝子と連鎖不均衡であるゲノム領域由来である。
【0151】
考察。要約すると、ACE遺伝子における1個の変異およびAGTR2遺伝子における2個のSNPが、一次パラメータMSDBPと有意な関係を示した。ACE変異およびAGTR2変異の一方が、また二次パラメータMSSBPおよび応答者比と有意な関係を示した。他方のAGTR2変異は有意な関係を示さず、二次パラメータに対して同じ傾向があるのみであった。この遺伝子型効果はアリスキレン処置グループのみで見られ、イベサルタンまたはプラセボグループではなかった。従って、上記の効果は、アリスキレンに特異的な薬理遺伝学効果である。
【0152】
ACE変異効果は、TTおよびCT遺伝子型の間の差異がかなり大きいように見えるため、特に興味深い(MSDBP低下 11.1対4.7mmHg、MSSBP低下 13.7対6.2mmHg、および応答者比 69%対14%)。CC同型遺伝子型は患者の中で見られず、これにより、検出された対立遺伝子頻度は、SNP DBが報告する0.1の対立遺伝子頻度より低かった。
【0153】
遺伝子型によるアリスキレン応答を調査したとき、TT遺伝子型についての応答比は大まかに70%まで増加した。これが意味するところは、この結果が、図1に示す通り、良好な応答比を示す一般集団の大多数(SNP DB対立遺伝子頻度に従うと約80%であるが、この解析では幾分高い可能性さえある)を支持することにより過密な抗高血圧市場におけるアリスキレンの位置付けの助けとなり得ることである。これはまた将来の試験において、アリスキレンに対する恐らく“良好な”応答者を集める助けとなる方法も提供し得る。
【0154】
AGTR2遺伝子における2個のSNPは連鎖不均衡にある可能性が非常に高い。
【0155】
これらの報告されたSNPは、MSDBPおよびMSSBPのベースライン測定値との関係を示さず、また、遺伝学的効果がアリスキレン関連薬理遺伝学効果であることを示唆する。
【0156】
実施例II
臨床試験A2203についての臨床薬理遺伝学解析
導入および要約。後ろ向き薬理遺伝学解析を、遺伝学的変異と臨床試験における臨床成績の間の可能性の関係を評価する目的で行った。実施例I参照。その後、他の臨床試験(A2203)の結果を、増幅分析のために考慮した。具体的に、我々は、48個の遺伝子多型を、レニン−アンギオテンシン−アルドステロン系(RAS)からのまたは既に血圧制御に関与するとされている12個の遺伝子で再試験した。
【0157】
実施例Iにおいて、アンギオテンシン変換酵素(ACE)遺伝子における1個の多型、アンギオテンシンII2型受容体(AGTR2)遺伝子における2個の遺伝子多型と、平均座位拡張期および収縮期血圧低下の臨床的パラメータの間の有意な関係が見られた。これらの効果はイルベサルタンおよびプラセボ処置で見られなかった。加えて、低下した応答と関連するACEミスセンス変異(Pro32Ser)について、我々は、白人よりも黒人においてより高いC(Pro)対立遺伝子頻度を発見した(19/154対2/790)。
【0158】
本実施例において、セリン残基(C対立遺伝子)を有する全4名の患者は全て黒人であった。C対立遺伝子を有する患者の非常に少ない数のため、このSNPについて実施例Iと同じモデルを用いた解析はできなかった。加えて、実施例Iにおいて見られたAGTR2における2個のSNPの関係は、繰り返さなかった。
【0159】
本実施例における臨床試験は、高血圧患者におけるアリスキレンおよびバルサルタンの効果および安全性を、それらの成分の単剤療法およびバルサルタンとヒドロクロロチアジド(HCTZ)の組み合わせと比較して評価するための無作為、二重盲検式、多施設、多因子、プラセボ対照、並行群試験であった。この実施例の主要目的は、臨床的平均座位拡張期血圧([MSDBP]≧95mmHgおよび<110mmHg)の患者に6週間投与したときの、アリスキレンおよびバルサルタン(75/80mg、150/160mgおよび300/320mg)の組み合わせの、それらの成分での単剤療法と比較した血圧低下効果の評価、および、臨床的平均座位拡張期血圧([MSDBP]≧95mmHgおよび<110mmHg)の患者に6週間投与したときの、プラセボに対する単独で投与したアリスキレン75mg、150mgおよび300mgの血圧低下効果の評価であった。処置グループは、人口統計およびベースライン特性について一般に同等であり、平均年齢56歳、56%男性および6.8%黒人であった。
【0160】
アリスキレン単剤療法対プラセボについての一次効果変数である、MSDBPのベースラインからの変化は、アリスキレン300mgグループで統計学的に有意であった。両単剤治療についての血圧低下の全体的強度は、先の試験で見られたものと一致した。プラセボ効果の強度は、しかしながら、予測より高く、そして以前のアリスキレン試験で見られたものより高かった。アリスキレンとバルサルタンの組み合わせでの血圧低下は、ヒドロクロロチアジド(HCTZ)12.5mg/バルサルタンで見られたものより少なく、加算性は、低用量組み合わせよりもアリスキレン300mg/バルサルタン320mgの最大量で小さかった。
【0161】
薬理遺伝学解析目的。後ろ向き薬理遺伝学解析を、薬理遺伝学試験へのサンプル提供に同意した全患者で行った。主要目的は、遺伝学的変異と、第一にMSDBPでおよび第二にMSSBPおよび応答者比で評価したアリスキレンでの処置の効果に置ける変異の間の関係の同定であった。
【0162】
候補遺伝子アプローチを、RASまたは予め血圧制御に関与している12個の遺伝子からの48個の遺伝子多型の選択に使用した(表4)。全ての利用可能なサンプルを、各SNPについて遺伝子型同定した。関係試験を実施例Iに記載の通り行った。
【表5】

【0163】
サンプル。臨床試験A2201(実施例I参照)および臨床試験A2203に参加した患者は、薬理遺伝学解析への参加について別の同意書を提供するよう依頼した。全同意患者からの血液サンプルを個々の治験現場で採取し、次いでCovance(Indianapolis, IN)に輸送した。PUREGENETM DNA Isolation Kit(D-50K)(Gentra, Minneapolis, MN)を使用して、各患者のゲノムDNAをCovanceにより血液から抽出した。最終的に、実施例Iにおける臨床試験(A2201)からの511名の患者を遺伝子型同定し、大まかに各処置アームで等しい割合であった。A2203からの684名の患者を遺伝子型同定し、プラセボおよびアリスキレン単剤アームと他の処置アームに対する患者数は3:1比であった。
【0164】
一次効果変数はMSDBP変化であった(エンドポイントでのベースラインからのMSDBPの低下)。二次効果変数はMSSBP変化(エンドポイントでのベースラインからのMSSBPの低下)、応答者比、ベースラインからの血漿レニン活性(PRA)低下および活性血漿レニン(AREN)増加である。
【0165】
遺伝子型同定。SNPアッセイを、公的dbSNPデータベースおよび私有Celera/ABIデータベースからの情報を使用して設計した。遺伝子型同定アッセイについての得られるプローブセットを、ABIのAssays-by-Design(登録商標)プラットホームのために作成した。Livak KJ et al., Nat. Genet. 9:341-2(1995)。遺伝子型同定を、製造者の指示に従い10ngのゲノムDNAで行った。
【0166】
遺伝子型同定された遺伝子多型。本試験において遺伝子型同定された遺伝子多型のリストを、座コード、遺伝子、引用データベースおよび効果と共に表5に示す。
【0167】
【表6】

【表7】

【0168】
統計学的解析。遺伝子型−表現型関係試験および関係解析を、Analyst(登録商標)を使用してSAS(Cary, NC, USA)で行った。
【0169】
関係試験は、分類別の遺伝子型を優性に関する仮定条件なしで独立変数として、そして種々の効果変数を従属変数として使用した。連続的な従属変数の試験はANCOVA解析を使用し、ロジスティック回帰を分類別の従属変数について使用した。結果はいずれも試験した多数の仮説に対して著巣悦していないことは注意すべきである。p<0.05の閾値を使用して示唆的な関係を定義した。遺伝子型−表現型関係解析における共変量は:(1)処置の用量レベル;(2)A2201(実施例I参照)におけるSTU1Aとしてコードされる試験領域またはA2203における領域;(3)MSDBPおよびMSSBPのベースライン測定値;および(4)人種であった。解析は、最初の3個のアリスキレン処置アームからのサンプル全てにおいて行った。示唆的関係が示されたとき、同じ解析をイルベサルタンおよびプラセボアームで行った。
【表8】

【0170】
ACE。SNP_4769を、RASにおけるこの重要な酵素における6個の他の遺伝子多型と共に、患者において遺伝子型同定した。有意な関係が、SNP_4769と一次効果変数、ベースラインからのMSDBP低下(p=0.023)、および二次変数、応答者比(p=0.0048)で見られた。他の二次変数、ベースラインからのMSSBP低下では、有意な関係はなく、同様な傾向が見られたのみであった(p=0.14)。
【0171】
ANCOVA解析を各グループについて繰り返したとき、本関係はアリスキレン処置グループでのみ検出され、イベサルタンまたはプラセボグループではなかった。アリスキレン特異的効果を表7に示す。全てのSNPと、二次パラメータ血漿レニン活性(PRA)および活性レニン(AREN)の間に有意な関係は見られなかった。
【表9】

【0172】
SNP_4769は、ACE酵素アイソフォーム2および3のコドン32においてアミノ酸配列をプロリンからセリンに変える、コーディングSNPである。ACE I/D多型(イントロン16中の287bp Alu反復の存在または非存在)は、ACEレベルおよび活性の制御、ならびにRASにおけるその悪影響に関与している。Rigat B et al., J. Clin. Invest. 86(4):1343-6(1990)。我々は、本実験においてACE I/Dを試験し、アリスキレン応答に対する関係がないことを観察した。SNP_4769は、体性アイソフォーム(somatic isoform)をコードするACE遺伝子の12番目のイントロンに位置し、それは第二および第三のアイソフォームをコードする遺伝子の第一エキソンに位置する。ACE I/Dは16番目のイントロンに位置し、それは特徴付けした白人、アフリカ系アメリカ人および中国人において、SNP_4769と同じ連鎖不均衡ブロックにある(SNPbrowser, Applied Biosystems, Foster City, California)。
【0173】
AGTR2。2型アンギオテンシンII受容体はACE活性を阻害し、そして1型受容体仲介作用を減弱し、それにより血管拡張をもたらすことが示されている。Ichiki T et al., Nature 377(6551):748-50(1995);Hunley TE et al., Kidney Int. 57(2):570-7(2000)。
【0174】
SNP_1445および4795と、一次効果変数のベースラインからのMSDBP低下の間に有意な関係が見られた(各々p=0.0071および0.0026)。SNP_4795はまたベースラインからのMSSBP低下の二次変数と有意な関係を証明したが(p=0.046)、応答者比である他の二次パラメータとは示さなかった。一方、SNP_1445は、二次パラメータと有意な関係を示さなかった。全てのSNPと、二次パラメータPRAおよびARENの間に有意な関係は見られなかった。
【0175】
ANCOVA解析を各処置グループについて繰り返したとき、この関係はアリスキレン処置グループについてのみ検出され、イベサルタンまたはプラセボグループではなかった。アリスキレン処置患者における遺伝子型の効果は上記表7に示している。
【0176】
アリスキレン処置アームでA2203においてこれら2個のSNPにおいて見られたこの関係を繰り返すことを試みたとき、結果は繰り返さなかった(p>0.05)。関係の傾向もいずれも観察されなかった。呼び的臨床結果の要約において、プラセボ応答が以前みられたより高かったため(8.6mmHg)、アリスキレン処置の用量応答およびプラセボ減算効果は予測より低かった。この矛盾は、少なくとも一部、AGTR2関係の増幅の不足によるものであろう。
【0177】
これら2個のSNPは両方とも非コーディングである。SNP_1445はAGTR2遺伝子の非翻訳領域内にあり、そしてSNP_4795は、AGTR2遺伝子と連鎖不均衡であるゲノム領域由来である。少なくとも中国人において、これら2個のSNPは、同じ連鎖不均衡ブロックにある(SNPbrowser, Applied Biosystems, Foster City, Calif.)。
【0178】
考察。この解析は、A2201試験における臨床成績の変動と著しく関係する2個の遺伝子における遺伝子多型を同定した(実施例I参照)。ACE遺伝子における1個の変異およびAGTR2遺伝子における2個のSNPが、一次パラメータMSDBPと有意な関係を示した。ACE変異およびAGTR2変異の一方が、また二次パラメータMSSBPおよび応答者比と有意な関係を示した。他方のAGTR2変異は有意な関係を示さず、二次パラメータに対して同じ傾向があるのみであった。この遺伝子型効果はアリスキレン処置グループのみで見られ、イベサルタンまたはプラセボグループではなかった。従って、上記の効果は、アリスキレンに特異的な薬理遺伝学効果である。
【0179】
ACE Pro32Ser変異効果は、TTおよびCT遺伝子型の間の差異がかなり大きいように見えるため、特に興味深い(MSDBP低下 11.4対5.6mmHg、MSSBP低下 11.7対5.9mmHg、および応答者比 70%対14%)。しかしながら、CC同型遺伝子型は患者の中で見られなかった。これにより、検出された対立遺伝子頻度は、SNP DBが報告する0.1の対立遺伝子頻度より低く、そしてCT遺伝子型を有する患者の全体的数を非常に少数とした。我々は、白人よりも黒人おいてより高いC対立遺伝子頻度を発見した(19/154対2/790)。A2203において、セリン残基(C対立遺伝子)を有する全4名の患者は黒人であった。C対立遺伝子を有する患者の非常に少ない数のため、A2203解析は同じモデルでは行えなかった。
【0180】
ACE遺伝子多型と、それらのACE酵素血漿濃度および血圧に対する影響は、主にアフリカ人およびアフリカ系アメリカ人集団で観察されている。Bouzekri N et al., Eur. J. Hum. Genet. 12(6):460-8(2004);Cox R et al., Hum. Mol. Genet. 11(23):2969-77(2002);Zhu X et al., Am. J. Hum. Genet. 68(5):1139-48(2001)。2個のSPP100試験からの黒人患者におけるACE遺伝子中のSNP_4769のより高い対立遺伝子頻度の観察は、この多型がACEレベルまたは活性に対して有し得る機能的影響についてのさらなる試験への根拠である。さらに、コドン32でのアミノ酸変化が、酵素の精巣アイソフォームにあることが推測される。
【0181】
遺伝子型によるアリスキレン応答を調査したとき、TT遺伝子型についての応答比は大まかに70%まで増加した。これが意味するところは、この結果が、図1に示す通り、良好な応答比を示す、TT遺伝子型を有する一般集団の大多数(SNP DB対立遺伝子頻度に従うと約80%であるが、この解析では幾分高い可能性さえある)を標的とすることにより過密な抗高血圧市場におけるアリスキレンの位置付けの助けとなり得ることである。これはまた将来の試験において、アリスキレンに対する恐らく“良好な”応答者を集める助けとなる方法も提供し得る。
【0182】
AGTR2遺伝子における2個のSNPは、この座の周囲の染色体領域が主として一つの連鎖不均衡ブロック内にあるため、連鎖不均衡にある可能性が非常に高い。2型受容体を介したAng IIシグナル伝達の機能は、1型受容体と比較してあまり試験されていない。この試験は、レニン阻害の下流での血圧制御におけるAng II機能のAGTR2の関与をさらに示唆し得る。
【0183】
これらの報告されたSNPは、MSDBPおよびMSSBPのベースライン測定値との関係を示さなかった。これは、本遺伝学的効果がアリスキレン関連薬理遺伝学効果であることを示唆する。
【0184】
同等物
1種以上の本発明の態様の詳細を上記に明示する。ここに記載のものに類似したまたは同等な任意の方法および材料を、本発明の実施または試験において使用できるが、好ましい方法および材料をここに記載する。本発明の他の特性、目的、および利点は、明細書および特許請求の範囲から明らかである。本明細書および添付の特許請求の範囲において、単数表現は、文脈が明らかに別のことを示さない限り、複数対象も含む。特記しない限り、ここで使用する全ての技術的および科学的用語は本発明が属する分野の当業者に共通して理解されているのと同じ意味を有する。ここに引用した全ての文献は、個々の刊行物、特許または特許出願が具体的にそして個々に、全ての目的に関して、引用によりその全体を本明細書に包含すると示したのと同程度、その全体をかく全ての目的に関して、引用により本明細書に包含させる。
【0185】
本発明は、本発明の個々の局面の一つの説明であることを意図する、本明細書に記載の特定の態様の観点に限定すべきではない。本発明の多くの改変および変更を、当業者には明らかな通り、その精神および範囲から逸脱することなく成し得る。ここに名前を挙げたものに加えて、本発明の範囲内で機能的に同等な方法および装置は、前記の記載から当業者には明らかである。このような修飾および変更は添付の特許請求の範囲の範囲内に入ると解釈される。本発明は添付の特許請求の範囲の観点においてのみ、そのような請求の範囲が権利を与えている同等物の完全な範囲と共に、限定されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0186】
【図1】3アリスキレン処置群一緒、最高量アリスキレン群(600mg)、イルベサルタン群およびプラセボ群についてのSNP_4769遺伝子型で分けた応答者比率を示す一連の棒グラフである。図の下部の数字は、上段がCT対立遺伝子を意味し、下段がTT対立遺伝子を意味する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
選択された患者集団の高血圧の処置用薬剤の製造におけるアリスキレンの使用であって、該患者集団が患者に存在するバイオマーカー遺伝子の遺伝子多型に基づいて選択され、ここで、該遺伝子多型が、高血圧処置におけるアリスキレンの有効性を示す、使用。
【請求項2】
遺伝子多型がアンギオテンシン変換酵素(ACE)遺伝子におけるSNP_4769;アンギオテンシンII受容体、2型(AGTR2)遺伝子におけるSNP_1445;AGTR2遺伝子におけるSNP_4795;およびこれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項1記載の使用。
【請求項3】
抗高血圧剤での処置に対する高血圧を有する個体の応答性を決定する方法であって;
(a)該個体に存在する2個のコピーの遺伝子について、1箇所以上の多型遺伝子座でのヌクレオチド対のアイデンティティを得て(ここで、該遺伝子座がアンギオテンシン変換酵素(ACE)遺伝子、アンギオテンシンII受容体、2型(AGTR2)遺伝子、およびこれらの組み合わせから成る群から選択される);そして
(b)該多型座のヌクレオチド対が、該個体が抗高血圧剤での処置に応答性であることを示すならば、該個体を“高”応答者群に割り当てる
工程を含む、方法。
【請求項4】
遺伝子多型がアンギオテンシン変換酵素(ACE)遺伝子におけるSNP_4769;アンギオテンシンII受容体、2型(AGTR2)遺伝子におけるSNP_1445;AGTR2遺伝子におけるSNP_4795;およびこれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項3記載の方法。
【請求項5】
抗高血圧剤がアリスキレンである、請求項3記載の方法。
【請求項6】
個体における高血圧の処置方法であって:
(a)該個体に存在する2個のコピーの遺伝子について、1箇所以上の多型遺伝子座でのヌクレオチド対のアイデンティティを得て(ここで、遺伝子座はアンギオテンシン変換酵素(ACE)遺伝子、アンギオテンシンII受容体、2型(AGTR2)遺伝子、およびこれらの組み合わせから成る群から選択される);そして
(b)(i)該多型座のヌクレオチド対が、該個体が抗高血圧剤での処置に応答性であることを示すならば、該個体に抗高血圧剤を投与するか、または(ii)該多型座のヌクレオチド対が、該個体が抗高血圧剤での処置に応答性ではないことを示すならば、該個体に代替治療を施す
工程を含む、方法。
【請求項7】
該遺伝子多型がアンギオテンシン変換酵素(ACE)遺伝子におけるSNP_4769;アンギオテンシンII受容体、2型(AGTR2)遺伝子におけるSNP_1445;AGTR2遺伝子におけるSNP_4795;およびこれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項6記載の方法。
【請求項8】
抗高血圧剤がアリスキレンである、請求項6記載の方法。
【請求項9】
個体における平均座位収縮期血圧(MSSBP)を低下させる方法であって:
(a)該個体に存在する2個のコピーの遺伝子について、アンギオテンシンII受容体、2型(AGTR2)遺伝子におけるSNP_4795でのヌクレオチド対のアイデンティティを得て;そして
(b)(i)SNP_4795での該ヌクレオチド対が、該個体が抗高血圧剤での処置に応答性であることを示すならば、該個体に抗高血圧剤を投与するか、または(ii)SNP_4795での該ヌクレオチド対が、該個体が抗高血圧剤での処置に応答性ではないことを示すならば、該個体に代替治療を施す
工程を含む、方法。
【請求項10】
抗高血圧剤がアリスキレンである、請求項9記載の方法。
【請求項11】
個体における拡張期血圧を低下させる方法であって:
(a)低下させる必要のある拡張期血圧を有する該個体に存在する2個のコピーの遺伝子について、1箇所以上の多型遺伝子座でのヌクレオチド対のアイデンティティを得て(ここで、該遺伝子座はアンギオテンシン変換酵素(ACE)遺伝子、アンギオテンシンII受容体、2型(AGTR2)遺伝子、およびこれらの組み合わせから成る群から選択される);そして
(b)(i)該1箇所以上の多型遺伝子座でのヌクレオチド対のアイデンティティが、該個体が抗高血圧剤での処置に応答性であることを示すならば、該個体に抗高血圧剤を投与するか、または(ii)該1箇所以上の多型遺伝子座でのヌクレオチド対のアイデンティティが、該個体が抗高血圧剤での処置に応答性ではないことを示すならば、該個体に代替治療を施す
工程を含む、方法。
【請求項12】
抗高血圧剤がアリスキレンである、請求項11記載の方法。
【請求項13】
アンギオテンシン変換酵素(ACE)遺伝子およびアンギオテンシンII受容体、2型(AGTR2)遺伝子から選択された遺伝子の遺伝子産物の薬剤活性の標的としての使用であって:
(a)薬剤と、アリスキレンでの高血圧の処置に対する高応答性を示す選択された遺伝子の領域における多型部位にヌクレオチド対を有するポリヌクレオチドによりコードされた第一遺伝子産物を接触させ;
(b)該第一遺伝子産物に対する薬剤の活性を同定し;
(c)該薬剤と、アリスキレンでの高血圧の処置に対する低応答性を示す選択された遺伝子の領域における多型部位にヌクレオチド対を有するポリヌクレオチドによりコードされた第二遺伝子産物を接触させ;
(d)該第二遺伝子産物に対する薬剤の活性を同定し;
(e)工程(b)において同定された活性と工程(d)において同定された活性の間の類似および相違を同定する
工程を含む、使用。

【図1】
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【公表番号】特表2008−538549(P2008−538549A)
【公表日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−503059(P2008−503059)
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【国際出願番号】PCT/US2006/009913
【国際公開番号】WO2006/102177
【国際公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】