説明

高誘電定数のナノ複合材料、その製造方法、及びそれを含んでなる物品

【課題】高誘電定数のナノ複合材料、その製造方法、及びそれを含んでなる物品を提供する。
【解決手段】熱可塑性ポリマーとナノ粒子とを含んでなる組成物であって、ナノ粒子が基材上にコーティング組成物を設けたものからなり、基材がコーティング組成物の誘電定数と異なる誘電定数を有する組成物であり、ポリマー材料とナノ粒子とを含んでなる組成物であって、ナノ粒子が基材上に複数の層を含むコーティング組成物を設けたものからなり、1以上の層が残りの層と異なる誘電定数を有し、ナノ粒子とをブレンドして組成物を形成する段階を含んでなる方法であって、ナノ粒子が基材上に複数の層を含むコーティング組成物を設けたものからなり、1以上の層が残りの層と異なる誘電定数を有する方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高誘電定数のナノ複合材料、その製造方法、及びそれを含んでなる物品に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用点火プラグキャップのような商業的用途では、高い誘電定数及び高い破壊電圧を得ることが望ましい。点火プラグキャップは、一般にポリマー複合材料から製造される。ポリマー複合材料での高い誘電定数は、一般に高体積分率の充填材を使用することで達成される。しかし、これは点火プラグキャップの衝撃強さ及び延性のような機械的性質を低下させる。
【0003】
また、高エネルギー密度電力変換用途で使用されるエネルギー貯蔵デバイス(例えば、DCリンクコンデンサー)は、電動機及び発電機のような電気装置の高電圧−高温環境に耐えることが望ましい。したがって、かかる貯蔵デバイスは高い破壊電圧及び耐コロナ性を示すことが望ましい。電子工業では、プリント配線基板中にコンデンサーを組み込むための電気的要件、信頼性要件及び加工要件を満足する好適な高誘電定数材料を得ることも望ましい。
【0004】
このように、電子工業及び自動車工業では、高い誘電定数及び高い破壊電圧並びに良好な機械的強度及び加工性を有する新しいポリマー複合材料に対するニーズが存在している。したがって、高い誘電定数と、加工の容易さ及び既存の高誘電定数複合材料に比べて向上した機械的性質とを併せ持つ組成物を得ることが望ましい。
【特許文献1】米国特許第5650031号明細書
【特許文献2】米国特許第6632109号明細書
【特許文献3】米国特許第6778053号明細書
【特許文献4】米国特許第6864306号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2003/0017351号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2004/0265551号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2005/0080175号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2005/0161149号明細書
【特許文献9】国際公開第01/89827号パンフレット
【特許文献10】特開昭58−141222号公報
【非特許文献1】Colin Kydd Campbell.“Experimental and Theoretical Characterization of an Antiferroelectric Ceramic Capacitor for Power Electronics”.IEEE Transactions on Components and Packaging Technologies,Vol.25,No.2,pages 211−216,June 2002
【非特許文献2】Jianwen Xu and C.P.Wonga).“Low−loss percolative dielectric composite”Applied Physics Letters 87,082907,pages 082907−1,2,3,2005
【非特許文献3】Y.Bai,Z.−Y.Cheng,V.Gharti,H.S.Xu,and Q.M.Zhanga).“High−dielectric−constant ceramic−power polymer composites”Applied Physics Letters,Vol.76,No.25,pages 3804−3806,published April 28,2000
【非特許文献4】E.Aulagner,J.Guillet,G.Seytre,C.Hantoche,P.Le Gonidec,G.Terzulli.“(PVDF/BatiO3) AND (PP/BaTiO3) FILMS FOR ENERGY STORAGE CAPACITORS”1995 IEEE 5th International Conference on Conduction and Breakdown in Solid Dielectrics.Pages 423−427.1995
【非特許文献5】D.Dimos.“PEROVSKITE THIN FILMS FOR HIGH−FREQUENCY CAPACITOR APPLICATIONS1”.Annual Review of Materials Science.Vol.28:397−419(Volume publication date August 1998)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書中には、熱可塑性ポリマーとナノ粒子とを含んでなる組成物であって、ナノ粒子が基材上にコーティング組成物を設けたものからなり、基材がコーティング組成物の誘電定数と異なる誘電定数を有する組成物が開示される。
【0006】
本明細書中にはまた、ポリマー材料とナノ粒子とを含んでなる組成物であって、ナノ粒子が基材上に複数の層を含むコーティング組成物を設けたものからなり、1以上の層が残りの層と異なる誘電定数を有する組成物が開示される。
【0007】
本明細書中にはまた、ポリマー樹脂とナノ粒子とをブレンドして組成物を形成する段階を含んでなる方法であって、ナノ粒子が基材上に複数の層を含むコーティング組成物を設けたものからなり、1以上の層が残りの層と異なる誘電定数を有する方法が開示される。
【0008】
図面の簡単な説明
図1は、アルミナ被覆酸化チタンナノ粒子をULTEM(登録商標)に配合したときの誘電定数の増加を示すグラフである。
【0009】
図2は、アルミナ被覆酸化チタンナノ粒子をULTEM(登録商標)に配合したときの誘電定数の増加を示すグラフである。
【0010】
図3は、ULTEM(登録商標)中のナノ粒子濃度の増加に伴う絶縁破壊強さの低下を示すグラフである。
【0011】
図4は、不動態化後の粒子像を示している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本明細書中で使用する「第一」、「第二」などの用語は、いかなる順序、数量又は重要度も表すわけではなく、むしろある構成要素を別の構成要素から区別するために使用されることに注意すべきである。単数形で記載したものは、数量の制限を意味するわけではなく、むしろ記載されたものの1以上が存在することを意味する。数量に関して使用される「約」という修飾語は、記載された値を含むと共に、(例えば、特定の数量の測定に関連する誤差の程度を含め)前後関係から指示される意味を有する。本明細書中に開示されるすべての範囲は、両端を含むと共に独立して結合可能であることに注意すべきである。
【0013】
本明細書中には、ポリマー材料と、基材の誘電定数と異なる誘電定数を有するコーティング組成物を基材上に設けたものからなるナノ粒子とを含んでなる組成物が開示される。本明細書中にはまた、ポリマー材料と、複数の層を含むコーティング組成物を基材上に設けたものからなるナノ粒子とを含んでなる組成物であって、1以上の層がナノ粒子中の他の層と異なる誘電定数を有する組成物が開示される。本明細書中にはまた、ポリマー材料と、単一の層又は複数の層を含むコーティング組成物を金属基材上に設けたものからなるナノ粒子とを含んでなる組成物が開示される。金属基材上に複数の層を設けた場合、1以上の層はナノ粒子中の他の層と異なる誘電定数を有することが望ましい。一実施形態では、これらの層は、最内層がすべての層のうちで最も高い誘電定数を有すると共に最外層が最も低い誘電定数を有するようにして基材上に配列されている。一実施形態では、各層は先行する内層の誘電定数より低い誘電定数を有する。換言すれば、各層はナノ粒子の中心により近い内層の誘電定数より低い誘電定数を有する。
【0014】
一実施形態では、ナノ粒子は、基材上に設けられたコーティング組成物の誘電定数より高い誘電定数を有する無機酸化物及び/又はセラミック基材を含んでいる。コーティング組成物はナノ粒子とポリマー材料との相容性を高め、それがポリマー材料中へのナノ粒子の分散を可能にする。一実施形態では、ポリマー材料は約100℃以上のガラス転移温度を有するポリマーからなる。
【0015】
ポリマー材料とナノ粒子とを含む組成物は、約200ボルト/マイクロメートル以上の絶縁破壊強さを維持しながら単独のポリマー材料に比べて高い誘電定数を有する。
【0016】
組成物に使用されるポリマー材料は、多種多様な熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー、熱可塑性ポリマーのブレンド、及び熱可塑性ポリマーと熱硬化性ポリマーのブレンドから選択できる。ポリマー材料は、ホモポリマー、星形ブロックコポリマーやグラフトコポリマーや交互ブロックコポリマーやランダムコポリマーのようなコポリマー、イオノマー、デンドリマー、又はこれらの1種以上を含む組合せからからなるものでよい。ポリマー材料はまた、ポリマー、コポリマー、ターポリマーなどのブレンド、又はこれらの1種以上を含む組合せであってもよい。
【0017】
ポリマー材料に使用できる熱可塑性ポリマーの例には、ポリアセタール、ポリアクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリアルキド樹脂、ポリスチレン、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリアラミド、ポリアミドイミド、ポリアリーレート、ポリウレタン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン、ポリアリールスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリベンゾオキサゾール、ポリオキサジアゾール、ポリベンゾチアジノフェノチアジン、ポリベンゾチアゾール、ポリピラジノキノキサリン、ポリピロメリトイミド、ポリキノキサリン、ポリベンゾイミタゾール、ポリオキシンドール、ポリオキソイソインドリン、ポリジオキソイソインドリン、ポリトリアジン、ポリピリダジン、ポリピペラジン、ポリピリジン、ポリピペリジン、ポリトリアゾール、ポリピラゾール、ポリカルボラン、ポリオキサビシクロノナン、ポリジベンゾフラン、ポリフタリド、ポリアセタール、ポリアンヒドリド、ポリビニルエーテル、ポリビニルチオエーテル、ポリビニルアルコール、ポリビニルケトン、ポリハロゲン化ビニル、ポリビニルニトリル、ポリビニルエステル、ポリスルホネート、ポリスルフィド、ポリチオエステル、ポリスルホン、ポリスルホンアミド、ポリウレア、ポリホスファゼン、ポリシラザン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリシロキサンなど、又はこれらの熱可塑性ポリマーの1種以上を含む組合せがある。
【0018】
例示的なポリマーには、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリフッ化ビニリデン、又はこれらのポリマーの1種以上を含む組合せがある。典型的なポリマーは、General Electric Plastics(GE Plastics)社から市販のポリエーテルイミドのULTEM(登録商標)である。
【0019】
熱可塑性ポリマーのブレンドの例には、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン/ナイロン、ポリカーボネート/アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、ポリフェニレンエーテル/ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル/ポリアミド、ポリカーボネート/ポリエステル、ポリフェニレンエーテル/ポリオレフィンなど、又はこれらの1種以上を含む組合せがある。
【0020】
熱可塑性ポリマーとブレンドできる熱硬化性ポリマーの例は、エポキシ/アミン樹脂、エポキシ/アンヒドリド樹脂、イソシアネート/アミン樹脂、イソシアネート/アルコール樹脂、不飽和ポリエステル、ビニルエステル、不飽和ポリエステルとビニルエステルのブレンド、不飽和ポリエステル/ウレタン混成樹脂、ポリウレタン−ウレア、反応性ジシクロペンタジエン(DCPD)樹脂、反応性ポリアミドなど、又はこれらの1種以上を含む組合せである。
【0021】
一実施形態では、熱可塑性ポリマーとブレンドできる好適な熱硬化性ポリマーには、エネルギー活性化可能な熱硬化性プレポリマー組成物から製造できる熱硬化性ポリマーがある。その例には、ウレタンポリエステルのようなポリウレタン、シリコーンポリマー、フェノールポリマー、アミノポリマー、エポキシポリマー、ビスマレイミド、ポリイミド及びフランポリマーがある。エネルギー活性化可能な熱硬化性プレポリマー成分は、ポリマー前駆体及び硬化剤を含んでいてもよい。ポリマー前駆体は熱活性化可能であってもよく、これは触媒の必要性を排除する。選択される硬化剤は、熱硬化性ポリマーを形成するために必要なエネルギー源の種類を決定するばかりでなく、得られる熱硬化性ポリマーの性質に影響を及ぼすこともある。硬化剤の例には、脂肪族アミン、芳香族アミン、酸無水物など、又はこれらの1種以上を含む組合せがある。エネルギー活性化可能な熱硬化性プレポリマー組成物は、組成物の粘度を低下させて高処理量及び低温での押出しを容易にするため、溶媒又は加工助剤を含んでいてもよい。溶媒は架橋反応を遅らすために役立ち、重合中又は重合後に部分的又は完全に蒸発させることができる。
【0022】
上述の通り、ポリマー材料は約100℃以上のガラス転移温度を有することが望ましい。一実施形態では、ポリマー材料は約175℃以上のガラス転移温度を有することが望ましい。別の実施形態では、ポリマー材料は約210℃以上のガラス転移温度を有することが望ましい。さらに別の実施形態では、ポリマー材料は約245℃以上のガラス転移温度を有することが望ましい。さらに別の実施形態では、ポリマー材料は約290℃以上のガラス転移温度を有することが望ましい。
【0023】
一実施形態では、ポリマー材料は組成物の総重量の約5〜約99.999wt%の量で使用される。別の実施形態では、ポリマー材料は組成物の総重量の約10〜約99.99wt%の量で使用される。別の実施形態では、ポリマー材料は組成物の総重量の約30〜約99.5wt%の量で使用される。別の実施形態では、ポリマー材料は組成物の総重量の約50〜約99.3wt%の量で使用される。
【0024】
上述の通り、粒子は基材上にコーティング組成物を設けたものからなるものでよい。コーティング組成物は、単一の層からなるものでも、或いは最内層から最外層まで次第に減少する誘電定数をもった複数の層からなるものでもよい。コーティング組成物の最内層は最も高い誘電定数を有すると共に、それに続く外側の各層は先行する内側の層より低い誘電定数を有する。
【0025】
基材として使用するのに適した材料の例には、金属、セラミック、ホウ化物、炭化物、ケイ酸塩、カルコゲニド、水酸化物、金属酸化物、窒化物、ペロブスカイト及びペロブスカイト誘導体、リン化物、硫化物、ケイ化物、シリコンや炭化ケイ素などの半導体、又はこれらの1種以上を含む組合せがある。
【0026】
好適な金属には、遷移金属、ランタニド、アクチニド、アルカリ金属、アルカリ土類金属など、又はこれらの1種以上を含む組合せがある。例示的な金属には、アルミニウム、銅、鉄、ニッケル、パラジウム、銀、チタンなど、、又はこれらの金属の1種以上を含む組合せがある。
【0027】
例示的なホウ化物には、ホウ化アルミニウム、ホウ化チタンなど、又はこれらのホウ化物の1種以上を含む組合せがある。例示的な炭化物には、炭化ケイ素、炭化チタン、炭化タングステン、炭化鉄など、又はこれらの炭化物の1種以上を含む組合せがある。例示的なカルコゲニドには、テルル化ビスマス、セレン化ビスマスなど、又はこれらのカルコゲニドの1種以上を含む組合せがある。例示的な窒化物には、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化チタン、窒化アルミニウム、窒化モリブデン、窒化バナジウムなど、又はこれらの窒化物の1種以上を含む組合せがある。
【0028】
基材又はコーティングとして使用できるケイ酸塩には、金属が周期表の第2A族(即ち、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)及びラジウム(Ra))からのものである金属ケイ酸塩がある。好ましい金属ケイ酸塩には、MgSiO、CaSiO、BaSiO及びSrSiOがある。第2A族金属に加えて、本発明の金属ケイ酸塩は、第1A族(即ち、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)及びフランシウム(Fr))からの金属を含んでいてもよい。例えば、金属ケイ酸塩には、NaSiOやNaSiO・5HOのようなケイ酸ナトリウム、及びLiAlSiOやLiSiOやLiSiOのようなケイ酸リチウムがある。追加の金属ケイ酸塩には、AlSi、ZrSiO、KAlSi、NaAlSi、CaAlSi、CaMgSi、BaTiSi、ZnSiO、又はこれらのケイ酸塩の1種以上を含む組合せがある。
【0029】
例示的な水酸化物には、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウムなど、又はこれらの水酸化物の1種以上を含む組合せがある。
【0030】
例示的な酸化物には、ジルコン酸塩、チタン酸塩、アルミン酸塩、スズ酸塩、ニオブ酸塩、タンタル酸塩及び希土類酸化物がある。例示的な無機酸化物には、シリカ、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、酸化カルシウム、酸化セリウム、酸化銅、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化イットリウム、酸化マグネシウム、MgSiO、MgO、CaTiO、MgZrSrTiO、MgTiO、MgAl、WO、SnTiO、ZrTiO、CaSiO、CaSnO、CaWO、CaZrO、MgTa、MgZrO、MnO、PbO、BiとLa、CaZrO、BaZrO、SrZrO、BaSnO、CaSnO、MgSnO、Bi/2SnO、Nd、Pr11、Yb、Ho、La、MgNb、SrNb、BaNb、MgTa、BaTa、Taなど、又はこれらの酸化物の1種以上を含む組合せがある。典型的な金属酸化物には、MgSiO、MgO、CaTiO、MgZrSrTiO、MgTiO、MgAl、MgTa、MgZrOなど、又はこれらの無機酸化物の1種以上を含む組合せがある。
【0031】
例示的なペロブスカイト及びペロブスカイト誘導体には、チタン酸バリウム(BaTiO)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、チタン酸ストロンチウムバリウム、ストロンチウムドープトマンガン酸ランタン、酸化アルミニウムランタン(LaAlO)、酸化銅ストロンチウムランタン(LSCO)、酸化銅バリウムイットリウム(YBaCu)、チタン酸ジルコニウム鉛、ランタン改質チタン酸ジルコニウム鉛など、ニオブ酸マグネシウム鉛−チタン酸鉛の組合せ、又はこれらのペロブスカイト及びペロブスカイト誘導体の1種以上を含む組合せがある。巨大誘電現象を例示するペロブスカイト、例えば下記の式(I)を有するカルシウム−銅−チタン酸化物(CCTO)も挙げられる。
【0032】
ACuTi12 (I)
式中、Aはカルシウム(Ca)又はカドミウム(Cd)である。
【0033】
別の実施形態では、下記の式(II)を有するペロブスカイトが挙げられる。
【0034】
A'2/3CuTiFeO12 (II)
式中、A'はビスマス(Bi)又はイットリウム(Y)である。
【0035】
さらに別の実施形態では、下記の一般式(III)を有するリチウム−チタン共ドープト酸化ニッケル(LTNO)と呼ばれるペロブスカイトが挙げられる。
【0036】
LiTiNi1−x−yO (III)
式中、xは約0.3以下であり、yは約0.1以下である。
【0037】
例示的なリン化物には、リン化ニッケル、リン化バナジウムなど、又はこれらのリン化物の1種以上を含む組合せがある。例示的なケイ化物には、ケイ化モリブデンがある。例示的な硫化物には、硫化モリブデン、硫化チタン、硫化タングステンなど、又はこれらの硫化物の1種以上を含む組合せがある。
【0038】
基材は、ナノメートル範囲内にある1以上の寸法を有している。基材は、約500nm以下の平均最大寸法を有することが一般に望ましい。この寸法は、直径、面の一辺、長さなどがある。基材は、整数で定義される次元を有する形状を有していてもよい。例えば、無機酸化物基材は一次元、二次元又は三次元の形状を有する。これらはまた、整数で定義されない次元を有する形状を有していてもよい(例えば、これらはフラクタルの形態で存在し得る)。基材は、球、フレーク、繊維、ホイスカーなどの形態、又はこれらの形態の1以上を含む組合せで存在し得る。これらの基材の断面形状は、円形、楕円形、三角形、長方形、多角形、又はこれらの形状の1以上を含む組合せでよい。市販の充填材は、ポリマー材料中への配合前に又はポリマー材料中への配合後にも、凝集体又は集合体の形態で存在し得る。凝集体は2以上の基材が互いに物理的に接触したものからなる一方、集合体は2以上の凝集体が互いに物理的に接触したものからなる。
【0039】
基材は、ナノ粒子の総重量の約0.05〜約50wt%の量で添加される。一実施形態では、基材はナノ粒子の総重量の約0.1〜約30wt%の量で添加される。別の実施形態では、基材はナノ粒子の総重量の約1〜約25wt%の量で添加される。さらに別の実施形態では、基材はナノ粒子の総重量の約3〜約20wt%の量で添加される。
【0040】
市販のナノサイズ無機酸化物基材の例は、いずれもNanoScale Materials Incorporatedから市販のNANOACTIVE(商標)酸化カルシウム、NANOACTIVE(商標)酸化カルシウムプラス、NANOACTIVE(商標)酸化セリウム、NANOACTIVE(商標)酸化マグネシウム、NANOACTIVE(商標)酸化マグネシウムプラス、NANOACTIVE(商標)酸化チタン、NANOACTIVE(商標)酸化亜鉛、NANOACTIVE(商標)酸化ケイ素、NANOACTIVE(商標)酸化銅、NANOACTIVE(商標)酸化アルミニウム及びNANOACTIVE(商標)酸化アルミニウムプラスである。市販のナノサイズ窒化物の例は、ESK社から市販のBORONID(商標)窒化ホウ素である。
【0041】
コーティング組成物は、1以上の層をなして基材上に配設できる。コーティング組成物が1以上の層をなして基材上に設けられる場合、1以上の層は他の層の誘電定数又は基材(基材が非金属である場合)の誘電定数と異なる誘電定数を有する。一実施形態では、若干の層が他の層の誘電定数と同様な誘電定数を有していてもよいが、化学組成は異なる。例示的な実施形態では、コーティング組成物は単一の層を含むか、或いは最内層から最外層まで次第に減少する誘電定数を有する複数の層を含むことが望ましい。コーティング組成物の最内層が最も高い誘電定数を有する一方、それに続く各外層は先行する内層より低い誘電定数を有する。
【0042】
コーティング組成物は、基材を形成するために使用するものとして上述した材料の一部からなるものでよい。例えば、ナノ粒子は金属アルミニウム基材を酸化アルミニウム層で被覆したものでもよい。別の例では、ナノ粒子は酸化チタン基材上に酸化アルミニウムの内層及び二酸化ケイ素の外層を設けたものでもよい。さらに別の例では、ナノ粒子はストロンチウムドープト酸化チタン基材上に窒化ホウ素層を設けたものからでもよい。減少する誘電定数をもった複数の層を含む好適なナノ粒子の例は、誘電定数k=3000を有するチタン酸バリウム基材を、内側から外側に向かって記載の順序でランタン改質PZT(k=1000)−PZT(k=500)−SrTiO(k=250)−TiO(k=104)−Al(k=9.6)−SiO(k=3.9)の層で被覆したものである。
【0043】
一実施形態では、コーティング組成物の各層は約10ナノメートル以下の厚さを有する。別の実施形態では、コーティング組成物の各層は約5ナノメートル以下の厚さを有する。さらに別の実施形態では、コーティング組成物の各層は約2ナノメートル以下の厚さを有する。基材上へのコーティング組成物の堆積は、溶液中で実施するか、又はコーティング組成物を形成するために使用される成分の存在下で直接に実施することができる。堆積が溶液中で実施される場合、適当な溶媒が使用できる。基材を被覆する一方法では、例えばアイリッヒ(Eirich)ミキサーのようなミキサー内で基材を適当な温度に任意に加熱し、次いでコーティング組成物又はコーティング組成物の反応性前駆体を含む溶液をミキサーに添加する。基材を一様に被覆するのに有効な時間にわたり、基材を溶液の存在下で混合する。被覆を容易にするため、混合操作中には温度を加減できる。被覆後、ナノ粒子を乾燥することで、未反応の前駆体を除去すると共に、存在し得る溶媒を除去できる。コーティング組成物の反応性前駆体をさらに反応させるため、乾燥粒子に焼結段階を施すことができる。
【0044】
一実施形態では、第一の層と同様な組成を有する第二の層でナノ粒子を被覆するための第二の被覆操作を被覆粒子に施すことができる。別の実施形態では、第一の層と異なる組成を有する第二の層でナノ粒子を被覆するための第二の被覆操作を被覆粒子に施すことができる。
【0045】
ナノ粒子の製造に関するさらに別の実施形態では、金属からなる基材を酸化、炭化又は窒化することで、基材上にセラミック層が形成される。この操作は、時には金属表面の不動態化といわれる。例示的な実施形態では、アルミニウムからなる基材を酸化することで、アルミニウム上に酸化アルミニウムの層が形成される。次いで、アルミニウム基材上に設けられた酸化アルミニウムコーティングを含むナノ粒子をポリマー材料中に分散させることで組成物が形成される。
【0046】
さらに別の実施形態では、化学蒸着(CVD)、原子層堆積(ALD)、膨張熱プラズマ(ETP)、イオンめっき、プラズマ強化化学蒸着(PECVD)、金属有機物化学蒸着(MOCVD)(有機金属化学蒸着(OMCVD)ともいう)、金属有機物気相エピタキシー(MOVPE)、スパッタリングのような物理蒸着法、反応性電子ビーム(eビーム)堆積及びプラズマ溶射のような方法により、基材をコーティング組成物で被覆できる。
【0047】
一実施形態では、ナノ粒子は、ポリマー材料との結合又は付着を容易にするため任意に表面処理することができる。一実施形態では、表面処理はナノ粒子をシランカップリング剤で被覆することからなる。好適なシランカップリング剤の例には、テトラメチルクロロシラン、ヘキサジメチレンジシラザン、γ−アミノプロポキシシランなど、又はこれらのシランカップリング剤の1種以上を含む組合せがある。シランカップリング剤は、一般にナノ粒子とポリマー材料との相容性を高めてポリマー材料中へのナノ粒子の分散を向上させる。
【0048】
上述の通り、ナノ粒子はナノメートル範囲にある1以上の寸法を有する。ナノ粒子は、約1000nm以下の平均最大寸法を有することが一般に望ましい。この寸法は、直径、面の一辺、長さなどがある。一実施形態では、ナノ粒子の形状及び幾何学的形態は基材と同じものであってもよい。別の実施形態では、ナノ粒子の形状及び幾何学的形態は基材と異なるものであってもよい。
【0049】
ナノ粒子は、整数で定義される次元を有する形状を有していてもよい。例えば、無機酸化物粒子は一次元、二次元又は三次元の形状を有する。これらはまた、整数で定義されない次元を有する形状を有していてもよい(例えば、これらはフラクタルの形態で存在し得る)。ナノ粒子は、球、フレーク、繊維、ホイスカーなどの形態、又はこれらの形態の1以上を含む組合せで存在し得る。これらのナノ粒子の断面形状は、円形、楕円形、三角形、長方形、多角形、又はこれらの形状の1以上を含む組合せでよい。市販のナノ粒子は、ポリマー材料中への配合前に又はポリマー材料中への配合後にも、凝集体又は集合体の形態で存在し得る。凝集体は2以上のナノ粒子が互いに物理的に接触したものからなる一方、集合体は2以上の凝集体が互いに物理的に接触したものからなる。
【0050】
ナノ粒子の正確な粒度、形状及び組成に関係なく、これらは所望ならば組成物の総重量の約0.0001〜約50wt%の添加量でポリマー材料中に分散させることができる。一実施形態では、ナノ粒子は組成物の総重量の約1wt%以上の量で存在する。別の実施形態では、ナノ粒子は組成物の総重量の約1.5wt%以上の量で存在する。別の実施形態では、ナノ粒子は組成物の総重量の約2wt%以上の量で存在する。一実施形態では、ナノ粒子は組成物の総重量の40wt%以下の量で存在する。別の実施形態では、ナノ粒子は組成物の総重量の約30wt%以下の量で存在する。別の実施形態では、ナノ粒子は組成物の総重量の約25wt%以下の量で存在する。
【0051】
ポリマー材料は一般に、ナノ粒子及び他の任意に所望される充填材と共に、いくつかの異なる方法(例えば、特に限定されないが、メルトブレンディング、溶液ブレンディングなど、又はこれらのブレンディング方法の1以上を含む組合せ)で加工できる。組成物のメルトブレンディングは、剪断力、伸長力、圧縮力、超音波エネルギー、電磁エネルギー、熱エネルギー、或いはこれらの力又はエネルギー形態の1種以上を含む組合せの使用を伴い、単一のスクリュー、複数のスクリュー、噛合式同方向回転又は異方向回転スクリュー、非噛合式同方向回転又は異方向回転スクリュー、往復スクリュー、ピン付きスクリュー、ピン付きバレル、ロール、ラム、らせん状ローター、又はこれらの1以上を含む組合せで上述の力を及ぼす加工装置で実施される。
【0052】
上述の力を伴うメルトブレンディングは、特に限定されないが、一軸又は多軸押出機、バス(Buss)ニーダー、ヘンシェル(Henschel)、ヘリコーン、ロス(Ross)ミキサー、バンバリー(Banbury)、ロールミル、成形機(例えば、射出成形機、真空成形機、吹込成形機)などの機械、又はこれらの機械の1以上を含む組合せで実施できる。組成物のメルトブレンディング又は溶液ブレンディング中には、組成物1キログラム当たり約0.01〜約10キロワット時(kwhr/kg)の比エネルギーを付与することが一般に望ましい。この範囲内では、組成物のブレンディングのためには、約0.05kwhr/kg以上、好ましくは約0.08kwhr/kg以上、さらに好ましくは約0.09kwhr/kg以上の比エネルギーが一般に望ましい。組成物のブレンディングのためにはまた、約9kwhr/kg以下、好ましくは約8kwhr/kg以下、さらに好ましくは約7kwhr/kg以下の比エネルギーが望ましい。
【0053】
一実施形態では、所望ならば、押出機又はバスニーダーのようなメルトブレンディング装置への供給に先立ち、粉末状、ペレット状、シート状などのポリマー材料をまずヘンシェル又はロールミル内でナノ粒子及び他の任意充填材とドライブレンドすることができる。別の実施形態では、ナノ粒子がマスターバッチの形態でメルトブレンディング装置内に導入される。かかる方法では、マスターバッチはポリマー材料より下流側でメルトブレンディング装置内に導入すればよい。
【0054】
マスターバッチを使用する場合、ナノ粒子はマスターバッチの総重量の約20〜約50wt%の量でマスターバッチ中に存在し得る。一実施形態では、ナノ粒子はマスターバッチの総重量の約22.5wt%以上の量で使用される。別の実施形態では、ナノ粒子はマスターバッチの総重量の約25wt%以上の量で使用される。別の実施形態では、ナノ粒子はマスターバッチの総重量の約30wt%以上の量で使用される。一実施形態では、ナノ粒子はマスターバッチの総重量の約45wt%以下の量で使用される。別の実施形態では、ナノ粒子はマスターバッチの総重量の約40wt%以下の量で使用される。別の実施形態では、ナノ粒子はマスターバッチの総重量の約35wt%以下の量で使用される。マスターバッチに使用できるポリマー材料の例には、ポリプロピレン、ポリエーテルイミド、ポリアミド、ポリエステルなど、又はこれらのポリマー材料の1種以上を含む組合せがある。
【0055】
ポリマーブレンド中でのマスターバッチの使用に関する別の実施形態では、組成物の連続相をなすポリマー材料と同じポリマー材料を含むマスターバッチを使用することが時には望ましい。ポリマーブレンド中でのマスターバッチの使用に関するさらに別の実施形態では、組成物に使用するポリマーと化学的に異なるポリマー材料を含むマスターバッチを使用することが望ましい場合がある。この場合、マスターバッチのポリマー材料はブレンド中で連続相をなす。
【0056】
ポリマー材料とナノ粒子とを含む組成物には、所望ならば、複数のブレンディング段階及び成形段階を施すことができる。例えば、まず組成物を押し出してペレットに成形できる。次いで、ペレットを成形機に供給し、そこで他の望ましい形状に成形できる。別法として、単一のメルトブレンダーから得られる組成物をシート又はストランドに成形し、次いでアニール、一軸延伸又は二軸延伸のような押出後操作を施すこともできる。
【0057】
溶液ブレンディングを用いて組成物を製造することもできる。溶液ブレンディングでは、剪断、圧縮、超音波振動などの追加エネルギーを用いて、ナノ粒子とポリマー材料との均質化を促進することもできる。一実施形態では、流体中に懸濁したポリマー材料をナノ粒子と共に超音波処理装置内に導入できる。混合物は、ナノ粒子をポリマー材料中に分散させるのに有効な時間の超音波処理で溶液ブレンドすることができる。次いで、所望ならば、ポリマー材料をナノ粒子と共に乾燥し、押し出し、成形できる。流体は超音波処理操作中にポリマー材料を膨潤させることが一般に望ましい。ポリマー材料を膨潤させることは、一般に、溶液ブレンディング操作中にナノ粒子がポリマー材料に浸透する能力を高め、結果として分散を向上させる。
【0058】
溶液ブレンディングに関する別の実施形態では、ナノ粒子がポリマー材料前駆体と共に超音波処理される。ポリマー材料前駆体は、一般に、反応してポリマー材料を生成できるモノマー、ダイマー、トライマーなどであってもよい。ナノ粒子及びポリマー材料前駆体と共に、溶媒のような流体を超音波処理装置内に任意に導入できる。超音波処理の時間は、一般に、ポリマー材料前駆体によるナノ粒子の封入を促進するのに有効な長さである。封入後、ポリマー材料前駆体を重合させることで、内部にナノ粒子が分散したポリマー材料が生成される。
【0059】
このような封入及び分散方法を容易にするために使用できるモノマーの好適な例は、特に限定されないが、ポリアセタール、ポリアクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアリーレート、ポリウレタン、ポリアリールスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリーレンスルフィド、ポリ塩化ビニル、ポリスルホン、ポリエーテルイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトンなど、又はこれらの1種以上を含む組合せのようなポリマーの合成で使用するものである。一実施形態では、ポリマー材料、ポリマー材料前駆体、流体及び/又はナノ粒子の混合物が約1分〜約24時間の時間にわたり超音波処理される。別の実施形態では、混合物は約5分以上の時間にわたり超音波処理される。別の実施形態では、混合物は約10分以上の時間にわたり超音波処理される。別の実施形態では、混合物は約15分以上の時間にわたり超音波処理される。一実施形態では、混合物は約15時間以下の時間にわたり超音波処理される。別の実施形態では、混合物は約10時間以下の時間にわたり超音波処理される。別の実施形態では、混合物はさらに好ましくは約5時間以下の時間にわたり超音波処理される。
【0060】
組成物の溶液ブレンディングに際しては溶媒を使用できる。溶媒は粘度調整剤として使用でき、或いはナノ粒子の分散及び/又は懸濁を容易にするために使用できる。液状非プロトン性極性溶媒(例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチロラクトン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、ニトロメタン、ニトロベンゼン、スルホラン、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなど、又はこれらの溶媒の1種以上を含む組合せ)が使用できる。極性プロトン性溶媒(例えば、水、メタノール、アセトニトリル、ニトロメタン、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなど、又はこれらの極性プロトン性溶媒の1種以上を含む組合せ)も使用できる。所望ならば、他の無極性溶媒(例えば、ベンゼン、トルエン、塩化メチレン、四塩化炭素、ヘキサン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなど、又はこれらの溶媒の1種以上を含む組合せ)も使用できる。1種以上の非プロトン性極性溶媒及び1種以上の無極性溶媒を含む共溶媒も使用できる。一実施形態では、溶媒はキシレン又はN−メチルピロリドンである。
【0061】
溶媒を使用する場合、それは組成物の総重量の約1〜約50wt%の量で使用できる。一実施形態では、溶媒を使用する場合、それは組成物の総重量の約3〜約30wt%の量で使用できる。さらに別の実施形態では、溶媒を使用する場合、それは組成物の総重量の約5〜約20wt%の量で使用できる。組成物のブレンディング前、ブレンディング中及び/又はブレンディング後に溶媒を蒸発させることが一般に望ましい。
【0062】
ブレンディングは、分散剤、結合剤、改質剤、洗浄剤及び添加剤のような各種の二次的化学種を用いて支援することができる。二次的化学種は、組成物の1以上の性質を向上させるためにも添加できる。ブレンディングはまた、ポリマー材料の薄層又はポリマー材料との相容性を有する相(例えば、シラン層)でナノ粒子を予備被覆することでも支援できる。
【0063】
ポリマー材料とナノ粒子とを含む組成物は、単独のポリマー材料、又はポリマー材料とマイクロメートル範囲の粒度を有する粒子とを含む他の市販の組成物に比べて利点を有する。一実施形態では、本組成物はポリマー材料のみからなる組成物より10%以上高い誘電定数を有する。別の実施形態では、本組成物は単独のポリマー材料より50%以上高い誘電定数を有する。別の実施形態では、本組成物は単独のポリマー材料より100%以上高い誘電定数を有する。
【0064】
本組成物はまた、単独のポリマー材料、又はポリマー材料とマイクロメートル範囲の粒度を有する粒子とを含む他の市販の組成物より有利に高い破壊電圧を有する。一実施形態では、本組成物は150ボルト/マイクロメートル(V/マイクロメートル)以上の破壊電圧を有する。破壊電圧は、一般に組成物の厚さの関数として求められる。別の実施形態では、本組成物は300V/マイクロメートル以上の破壊電圧を有する。別の実施形態では、本組成物は400V/マイクロメートル以上の破壊電圧を有する。
【0065】
本組成物はまた、単独のポリマー材料、又はポリマー材料とマイクロメートル範囲の粒度を有する粒子とを含む他の市販の組成物より有利に高い耐コロナ性を有する。一実施形態では、本組成物は約200〜約2000時間にわたり印加された約1000〜約5000ボルトの電流に耐える耐コロナ性を有する。別の実施形態では、本組成物は約250〜約1000時間にわたり印加された約1000〜約5000ボルトの電流に耐える耐コロナ性を有する。さらに別の実施形態では、本組成物は約500〜約900時間にわたり印加された約1000〜約5000ボルトの電流に耐える耐コロナ性を有する。
【0066】
本組成物は、約100〜約10ヘルツ(Hz)の周波数で測定した場合に約3以上の誘電定数を有する。一実施形態では、本組成物は約100〜約10Hzの周波数で測定した場合に約5以上の誘電定数を有する。さらに別の実施形態では、本組成物は約100〜約10Hzの周波数で測定した場合に約10以上の誘電定数を有する。さらに別の実施形態では、本組成物は約100〜約10Hzの周波数で測定した場合に約50以上の誘電定数を有する。
【0067】
別の実施形態では、本組成物はまた約5キロジュール/平方メートル(kJ/m)以上の衝撃強さを有する。別の実施形態では、本組成物は約10kJ/m以上の衝撃強さを有する。別の実施形態では、本組成物は約15kJ/m以上の衝撃強さを有する。別の実施形態では、本組成物は約20kJ/m以上の衝撃強さを有する。
【0068】
ナノ粒子を含む組成物は、光学的に透明であってもよい。一実施形態では、本組成物は約70%以上の可視光透過率を有する。別の実施形態では、本組成物は約80%以上の可視光透過率を有する。さらに別の実施形態では、本組成物は約90%以上の可視光透過率を有する。さらに別の実施形態では、本組成物は約95%以上の可視光透過率を有する。
【0069】
さらに別の実施形態では、本組成物はまた成形された場合にクラスAの表面仕上を有する。成形物品は、射出成形、吹込成形、圧縮成形など、又はこれらの1以上を含む組合せで製造できる。
【0070】
本組成物は、点火プラグキャップ、コンデンサー、除細動器、プリント配線基板又は他の物品で有利に使用できる。
【実施例】
【0071】
限定的ではなく例示的なものである以下の実施例は、本明細書中に記載された組成物及び製造方法の様々な実施形態の一部をなす組成物及び製造方法を例示している。
【0072】
実施例1
この実施例は、コーティング組成物で被覆した基材をポリマー材料中に分散させた場合における組成物の誘電定数の増加を証明するために実施した。酸化チタン(TiO)粒子を、ALD NanoSolutions Inc.から購入した酸化アルミニウム(Al)の層で被覆した。酸化アルミニウム層は10nm未満であり、α相にある酸化アルミニウムを含まない。
【0073】
被覆粒子は30ナノメートルの平均粒度を有していた。被覆粒子をULTEM(登録商標)ポリマー(General Electric Corporationから市販のポリエーテルイミド)中に、ULTEM(登録商標)ポリマー100部当たり3部(phr)及び31phrの量で配合してナノ複合材を形成した。ULTEM(登録商標)は、ULTEM(登録商標)及び溶媒からなる溶液の総重量を基準にして16wt%の量で溶媒に添加した。溶液流延のために使用した溶媒はN−メチルピロリドン(NMP)であった。次いで、ナノ複合材を溶媒に溶解し、ガラス基材上に流延してフィルムを形成した。誘電定数の測定は、Hewlett Packard Corporationから市販の誘電体分析装置モデルHP4285Aを用いて、100〜10Hzの周波数範囲にわたり室温で行った。
【0074】
流延及び乾燥後のフィルム厚さは20〜150ミクロンであり、これに白金をスパッター被覆した。白金は誘電体分析装置の電極に接触する。図1は、ナノ複合材フィルムの誘電定数を示すグラフである。3phrのアルミナ被覆チタニア粒子の添加により、誘電定数は3から3.5超に増加した。31phrのアルミナ被覆チタニア粒子を含む試料については、誘電定数は1000Hzの周波数で3から約12に増加している。これは400%以上の誘電定数増加を表している。
【0075】
3phrのアルミナ被覆チタニア粒子を含むナノ複合材フィルムの絶縁破壊強さはULTEM(登録商標)ポリマー単独のものと同様であり、約300キロボルト/ミリメートル(kV/mm)であると測定された。高い充填材添加量は絶縁破壊強さを低下させる。
【0076】
絶縁破壊強さを評価するためには、試料をシリコーン油中に浸漬し、高圧電源を用いて直流(DC)電圧を印加した。絶縁破壊測定のためには球−平面試験装置を用いた。球の直径は1/4インチ(6.25ミリメートル)であった。球電極は高電位に接続したのに対し、平面電極は大地電位に接続した。試験は段階的な電圧を用いて室温で実施した。次に高い電圧を印加するまでの各電圧差は500V/秒であった。この操作を絶縁破壊が起こるまで継続した。絶縁破壊は、一般に、試料が急激な電流増加を示す場合に起こると考えられる。絶縁破壊強さは、電圧を試料の厚さで割った値として算出した。
【0077】
実施例2
この実施例は、アルミナ層で不動態化したアルミニウム基材をULTEM(登録商標)からなるポリマー材料中に分散させた場合における組成物の誘電定数の増加を証明するために実施した。アルミニウム粒子の不動態化は、2つの異なる方法で達成した。一方法では、ナノサイズアルミニウム粉末を室温の空気に暴露することで酸化した。第二の方法は、アルミニウム粉末を600℃の空気中で1/2時間酸化することからなっていた。これらの粒子は、(室温の空気に暴露した場合には)酸化アルミニウムの薄層で不動態化され、或いは別法として(600℃の空気に暴露した小さな粒子については)図4に示すように完全に酸化された。
【0078】
100部のULTEM(登録商標)樹脂に100部の不動態化アルミニウムを添加した。不動態化アルミニウムはナノ粒子又はマイクロメートルサイズ粒子の形態で添加した。ナノ粒子は50ナノメートルの平均粒度を有している。マイクロメートルサイズ粒子は3マイクロメートルの平均粒度を有している。実施例1と同様にしてフィルムを形成した。約100〜約10000Hzの周波数で行った誘電測定の結果が図2にプロットされている。図2から、100phrの不動態化アルミニウムナノ粒子の添加はULTEM(登録商標)の誘電定数を3.2から9.5に増加させることがわかる。やはりこの図から、ナノ粒子を添加すれば、ナノ複合材の誘電定数は粒子がマイクロメートル範囲の平均粒度を有する場合に得られる値を超えて増加することもわかる。加えて、アルミニウム粒子を200phrの量で添加すれば、組成物の誘電定数を20まで増加できることがわかる。
【0079】
図3は、ULTEM(登録商標)中に分散させた自己不動態化粒子及び酸化粒子に関する絶縁破壊強さを示している。このグラフから、粒子の重量パーセントを増加させるのに伴って絶縁破壊強さが低下することがわかる。これは、金属粒子が高い導電性を有するからである。酸化物の薄層で保護された場合でも、試験の高電圧下では電子移動度が電子トンネル効果を引き起こす一因となる。しかし、図2及び3からわかるように、10wt%のナノ粒子添加量では、絶縁破壊強さをなお約200ボルト/マイクロメートルに維持しながら誘電定数が増加する。この組成物は、コンデンサー、除細動器、プリント配線基板、点火プラグキャップ、点火プラグ用部品又は他の物品で有利に使用できる。
【0080】
以上、例示的な実施形態に関して本発明を説明してきたが、当業者であれば、本発明の技術的範囲から逸脱せずに様々な変更及び同等物による構成要素の置換をなし得ることが理解されよう。加えて、特定の状況又は材料を本発明の教示に適合させるため、本発明の本質的な範囲から逸脱せずに多くの修正を行うことができる。したがって、本発明はこの発明を実施するために想定される最良の形態として開示された特定の実施形態に限定されず、特許請求の範囲に含まれるすべての実施形態を包含するものである。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】アルミナ被覆酸化チタンナノ粒子をULTEM(登録商標)に配合したときの誘電定数の増加を示すグラフである。
【図2】アルミナ被覆酸化チタンナノ粒子をULTEM(登録商標)に配合したときの誘電定数の増加を示すグラフである。
【図3】ULTEM(登録商標)中のナノ粒子濃度の増加に伴う絶縁破壊強さの低下を示すグラフである。
【図4】不動態化後の粒子像を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ポリマーと、
ナノ粒子と
を含んでなる組成物であって、ナノ粒子が基材上にコーティング組成物を設けたものからなり、基材がコーティング組成物の誘電定数と異なる誘電定数を有する、組成物。
【請求項2】
コーティング組成物が1以上の層を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
最内層の誘電定数が最外層の誘電定数より高い、請求項2記載の組成物。
【請求項4】
各層が、ナノ粒子の中心に近い先行内層の誘電定数より低い誘電定数を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
基材が、コーティング組成物の誘電定数より高い誘電定数を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
コーティング組成物が、最内層から最外層まで次第に減少する誘電定数をもった複数の層を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
基材が、金属、セラミック、ホウ化物、炭化物、ケイ酸塩、カルコゲニド、水酸化物、金属、金属酸化物、窒化物、ペロブスカイト及びペロブスカイト誘導体、リン化物、硫化物、ケイ化物、又はこれらの1種以上を含む組合せを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
コーティング組成物が、金属、ホウ化物、炭化物、ケイ酸塩、カルコゲニド、水酸化物、金属、金属酸化物、窒化物、ペロブスカイト及びペロブスカイト誘導体、リン化物、硫化物、ケイ化物、又はこれらの1種以上を含む組合せを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項9】
熱可塑性ポリマーが約150℃以上のガラス転移温度を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項10】
熱可塑性ポリマーが、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリフッ化ビニリデン、又はこれらのポリマーの1種以上を含む組合せからなる、請求項1記載の組成物。
【請求項11】
金属酸化物が、ジルコン酸塩、チタン酸塩、アルミン酸塩、ケイ酸塩、スズ酸塩、ニオブ酸塩、タンタル酸塩、希土類酸化物、又はこれらの金属酸化物の1種以上を含む組合せからなる、請求項8記載の組成物。
【請求項12】
ペロブスカイトが下記の式(I)を有するカルシウム−銅−チタン酸化物からなるか、又はペロブスカイトが下記の式(II)を有するか、又はペロブスカイトが下記の一般式(III)を有するリチウム−チタン共ドープト酸化ニッケル(LTNO)である、請求項8記載のコーティング組成物。
ACuTi12 (I)
(式中、Aはカルシウム又はカドミウムである。)
A'2/3CuTiFeO12 (II)
(式中、A'はビスマス又はイットリウムである。)
LiTiNi1−x−yO (III)
(式中、xは約0.3以下であり、yは約0.1以下である。)
【請求項13】
請求項1記載の組成物を含んでなる物品。
【請求項14】
ポリマー材料と、
ナノ粒子と
を含んでなる組成物であって、ナノ粒子が基材上に複数の層を含むコーティング組成物を設けたものからなり、1以上の層が残りの層と異なる誘電定数を有する、組成物。
【請求項15】
請求項14記載の組成物を含んでなる物品。
【請求項16】
ポリマー樹脂とナノ粒子とをブレンドして組成物を形成する段階を含んでなる方法であって、ナノ粒子が基材上に複数の層を含むコーティング組成物を設けたものからなり、1以上の層が残りの層と異なる誘電定数を有する、方法。
【請求項17】
さらに組成物を流延する段階を含む、請求項16記載の方法。
【請求項18】
さらに組成物を射出成形する段階を含む、請求項16記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−217658(P2007−217658A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−317222(P2006−317222)
【出願日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】