説明

高誘電率及び高透磁率を有する薄膜を備えたラジオ周波数デバイス

【課題】マイクロ波周波電磁界において高誘電率及び高透磁率の両方を備えた磁気−誘電素子を含むラジオ−周波数デバイスでを提供する。
【解決手段】1GHzにおいて10以上の透磁率を示す磁性材料(16,18)と1GHzにおいて10以上の誘電率を示す誘電材料(12,22)とを備えた複合薄膜(10)を含む磁気−誘電素子を使用するラジオ−周波数デバイスであり、前記磁性材料から形成された層が、交換結合を用いて反強磁性層(20)と結合された強磁性層によって構成される。前記誘電材料の層が、タンタル、チタン、ハフニウム、ストロンチウム及びニオビウムの酸化物、並びにペロブスカイトであって、特にバリウム及びストロンチウムのチタン酸塩を含む群から選択され、真空筐体内でのイオンビームスパッタリングによって蒸着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的なラジオ−周波数トランシーバーの分野に係り、また、薄層磁気及び誘電システム技術を使用する情報処理の分野に関する。さらに具体的には、特定された周波電磁界が、約100メガヘルツから数十ギガヘルツの間にある。
【0002】
さらに具体的には、本発明は、薄膜に係り、特に、前記ラジオ−周波数トランシーバーに使用されるような、マイクロ波回路から構成された薄膜に関する。
【背景技術】
【0003】
一般的に、マイクロ波回路が、電気通信分野において使用され、これらが、送信/受信チェーン(chains)から構成され、特に、(フィルター,インピーダンス整合,増幅)信号処理用のラジオ−周波数アナログ回路及びアンテナを含む。
【0004】
従って、これらの回路に関する限り、特に、アンテナの設計に組み込まれる放射素子並びにフィルター及びインピーダンス整合に有用である共鳴素子(resonating elements)に関する限りでは、高いレベルでのコンパクト性、効率性及び統合性が求められる。このような要求を満足するために、基板が、マイクロ波周波数、換言すると、1から20ギガヘルツの間の周波数において、高誘電率及び高透磁率を備えた特別な特徴を有するように設計される必要がある。実際には、前記材料が、高いレベルでのコンパクト性及びそれ故に統合性を備えた回路、並びに、例えばバンドギャップ、“左−手系(left−hand)”特性及び周波数アジリティに関して機能化された基板に対する要求を満たすように使用されることが可能である。
【0005】
従って、例えばいわゆる“high K”誘電材料を使用する及びマイクロ波場に対して低周波圧電技術(low frequency piezoelectricity techniques)を適用するような、マイクロ波回路基板の構成材料に関して、複数の方針が研究されている。
【0006】
しかしながら、マイクロ波周波電磁界において高誘電率及び高透磁率の両方を備えた材料は現在知られていない。
【0007】
確かに、フェライトが、この目的を達成するための集中的な研究のテーマとなっているが、誘電性製品によるこれらの透磁率が、マイクロ−波周波数において、100という数値に達することが困難であり、これが十分なものではないことが分かる。
【0008】
従って、求められる特性を得るための1つの解決策に、注目する周波数バンドにおいて、高誘電率誘電材料と高透磁率強磁性材料とを組み合わせることが含まれる。例えばHfO、Ta、BaTiO又はSrTiOなどの化学量論の酸化物のような高誘電率誘電材料の開発が、通常500℃以上であるかなりの(蒸着又はアニール)温度を伴う方法の使用を必要とする一方、(NiFe、CoZrNb、FeHfN、FeCoB等のような)強磁性材料が、それらの磁気特性を大幅に低下させることなく、前記温度に耐えることが出来ないため、これまでは、この組み合わせが可能ではなかった。従って、現在も、技術的両立が困難であり、これが、高誘電率及び高透磁率の複合材料の製造を妨げている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】M.Niederbergerら‘A general soft−chemistry route to perovskites and related materials: synthesis of BaTiO3,BaZrO3,and LiNbO3,nanoparticles”−Angew.Chem.Int.Ed.2004,43,2270−2273
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、高誘電率及び高透磁率を示す、換言すると、それぞれ10以上の誘電率及び透磁率を示す薄膜を備えた磁気−誘電素子を提案することにより、前記課題を解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を達成するため、本発明の対象は、ラジオ−周波数デバイスであり、その少なくとも1つの磁気−誘電素子が、1GHzにおいて10以上の透磁率を備えた磁性材料と1GHzにおいて10以上の誘電率を備えた誘電材料とから構成された薄層のスタックを含む複合薄膜を備える。
【0012】
薄膜、又は薄層が、本願明細書では、10μm以下の厚さを有する層を意味する。
【0013】
本発明によって指定されたスタックから生じる特定の組み合わせが、磁気−誘電材料(ガーネット、フェライト等)に関する従来技術との明確な境界を構成する。実際には、このような材料が、(外部分極技術によらず)数百メガヘルツ以上に限定され、一方、特有の発明性のあるスタックが、(外部分極技術によらず)数十ギガヘルツ以上の周波数に関して機能することが可能である。
【0014】
従って、マイクロ波場において高透磁率及び高誘電率を兼ね備えた薄層内における複合磁気−誘電膜を提案することにより、比較的に、本発明がそれ自身の境界を定める。
【0015】
有利に、磁性材料の透磁率が、1GHzにおいて100以上である。さらに、誘電材料の誘電率が、有利に、1GHzにおいて100以上である。
【0016】
本発明によると、磁性材料及び誘電材料が、薄層状に配置される。膜が、物理的(気相)又は化学蒸着法によって得られうる。
【0017】
ひとつの有利な発明力のある特徴によると、磁性材料が、強磁性材料であり、その磁化が1T以上であり、有利には、2T以上である。有利には、これが、反強磁性材料と交換結合によって結合される。
【0018】
強磁性材料の層と反強磁性材料の層との間において生じる交換結合が、これらの2つの層の間の界面において生じ、これによって、十分に高い異方性エネルギー(磁気分極)を確保し、極めて高い周波数における、及び適切な、注目する場における場合での強磁性材料の層の動的性能(透磁率)を伸ばす。
【0019】
従って、この異方性によって、例えば、注目する場に適合しない電磁石のような外部磁気分極手段に頼ることなく、通常20ギガヘルツに至るまでの極めて高い周波数において高い透磁率を得ることが可能である。
【0020】
さらに、この結合のために、強磁性材料が、飽和残留状態(saturated remanent state)(磁区フリー(magnetic domain free))を有する。グレインのサイズが小さくかつ極めて近接している限り、強磁性材料の軟磁性特性が形成される。これは、各グレインに存在し、磁壁の可動性を減少させる傾向があり、これによって、求められる軟化特性に対する不利益をもたらす磁気結晶異方性定数が、なくなる又は十分に減らされることを意味する。実際には、そのままの強磁性材料の過度の加熱が、それらを分断する傾向があるグレイン結合(joints)の酸化及び/又はグレイン内の成長を引き起こし、これによって、強磁性材料の軟磁性特性を低下させる。反強磁性材料とのその結合によって得られる強磁性材料の飽和残留状態の効果は、この組み合わせの磁気特性が、強磁性材料を形成するグレインの大きさに依存しないということである。従って、この組み合わせを300℃以上の温度に至らせることが可能であり、これによる透磁率への影響がない。
【0021】
本発明によると、強磁性材料が、Fe、Co及びNiの合金、並びに、これらの元素の2つまたは3つ全てを結合させ、場合によってホウ素及び窒素でドープされたいずれの化合物を含む群から選択される(NiFe,CoNiFe,CoFe,CoFeB,FeN,CoFeN+場合によってはX,X=Al,Si,Ta,Hf,Zr,等)。
【0022】
この結果として、反強磁性材料が、特に、IrMn、PtMn、若しくはNiMnをベースとしたマンガンベースの合金、又はFe若しくはCoの酸化物である。
【0023】
誘電材料が、その一例として、タンタル、チタン、ハフニウム、ストロンチウム、ニオビウムの酸化物、及び有利にはペロブスカイト(常誘電体(para−electric)又は強誘電体)、並びに特にバリウム及びストロンチウムのチタン酸塩を含む群から選択される。
【0024】
有利には、磁性材料が、2つの反強磁性層の間における交換結合に挿入された強磁性材料の少なくとも1つの層及び/又は2つの強磁性層の間における交換結合に挿入された反強磁性材料の層を含む。この種の配置が、強磁性材料の飽和残留状態を与え、及び使用可能な高い製造温度を介して磁性材料を製造する方法を簡易化するために使用されることが可能である。
【0025】
本発明が、前記デバイスを具現する方法にも及ぶ。この方法によると、強磁性材料の層(場合によっては、1つ又は2つの反強磁性層と結合される)及び誘電材料の層が、真空筐体内でのイオンビームスパッタリングによって、交互に蒸着される。
【0026】
そのようにして得られたスタックが、400℃に至る温度を含む技術的段階と適合し、これによって、低温で非晶質に蒸着された場合に、強磁性及び反強磁性材料の層の磁気特性を保持しながら、誘電材料が、誘電材料の層の結晶特性を助長するこのような温度又はアニールにおいて蒸着されることが可能となる。
【0027】
この方法によると、強磁性及び反強磁性材料の層が、イオンビームスパッタリングによって蒸着されることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】第一の発明に関する実施形態の線断面図である。
【図2】第二の発明に関する実施形態の線断面図である。
【図3】第三の発明に関する実施形態の線断面図である。
【図4】図1〜3による薄膜を製造するために用いられるイオンビームスパッタリング設備の線図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本願明細書が、単に例示を目的として与えられ、添付した図面と関連して与えられる以下の記載を読むことによりさらに理解され、この図面において、同一の参照符号は、同一又は同様な要素を示す。
【0030】
図1において、薄膜10が、以下を含む。
好ましくは表面酸化(SiO)であるシリコン基板等の基板11。
高誘電率誘電材料、換言すると、(1GHzにおいて)10以上又はさらには100以上の誘電率を有する10から100nmの間の厚さを有する第一層12。
1T以上(又はさらには2T以上)の磁化を備えた強磁性材料と対応し、高いマイクロ−波透磁率(2GHzにおいて10以上、又はさらには100以上であり、全バンドにわたって0.1以下の損失正接(loss tangent)を有する)を備えた強磁性材料の2つの層16,18及び反強磁性材料の層20の交互構造14。強磁性層の厚さが、ほぼ10から100nmの間程度であり、反強磁性層の厚さが、ほぼ0.7から30nmの間程度である。
強磁性材料の最後の層18上に蒸着された高誘電率誘電材料の第二層22。
【0031】
層12及び22の誘電材料が、有利には、ストロンチウム(Sr)及びチタン(Ti)の酸化物並びに特にチタン酸ストロンチウムSrTiOであり(常誘電材料)、その非晶質−ペロブスカイト相転移温度、及び従ってその製造温度が、400℃未満又は400℃と等しい。
【0032】
層16,18を構成する強磁性材料が、一例として、有利には、鉄(Fe)、コバルト(Co)及び/又はニッケル(Ni)をベースとした合金であり、特に、当然に、通常2Tに近い磁化である極めて高い飽和磁化を示すFeCo又はFeCoBである。
【0033】
強磁性材料の層16,18の間に挿入された層20の反強磁性材料が、一例として、有利には、マンガン(Mn)をベースとした合金、特にNiMnによって構成される。
【0034】
本発明によると、強磁性材料が、そのままで(反強磁性材料と結合されることなく)使用されることが可能である。しかしながら、これが、スタックが良好な透磁率特性を保持しながら(結合FeCo/NiMnに対して約400℃の)高温に耐えることを可能にするため、前記結合が、特に有利である。
【0035】
従って、誘電材料としてSrTiO、強磁性材料としてのFeCo及び/又はFeCoB並びに反強磁性材料としてのNiMnを使用することによって、この強磁性材料と反強磁性材料との組み合わせが、誘電材料のペロブスカイト相を形成するための要求に応じた300℃から400℃の間の温度に耐えるため、温度適合性が達成される。
【0036】
代替策として、例えば、バリウム(Ba)及びチタンの酸化物、特にチタン酸バリウムBaTiO、ハフニウム(Hf)の酸化物、特にHfO、又はタンタル(Ta)、特にTa(強誘電体)である他の材料が誘電層12として使用されてよい。とはいえ、例えば、BaTiO又はSrTiOのような高誘電率(バリウム又はハフニウム酸化物の10とは対照的に約100である)を示すペロブスカイトが優先される。
【0037】
反強磁性層20として、PtMn若しくはIrMn合金、さらに一般的には全てのマンガンベースの合金、鉄、コバルト、又はニッケル酸化物のような他の材料も可能である。
【0038】
強磁性層としては、CoFeB、FeN及びCoFeNが優先されるが、他の材料も可能であり、特に、鉄、コバルト及びニッケルから選択された2つ又は3つの元素を結合した全ての合金が可能である。これらの合金が、場合によっては、例えば、ホウ素又は窒素でドープされてよい。これらが、Al,Si,Ta,Hf,Zr等の他の元素と結合されてもよい。
【0039】
100以上の、又はさらには1000以上の透磁率製品による誘電率を有し、20ギガヘルツ程に至る周波数に対して通常0.1未満又はさらには0.01未満の低いそれぞれの損失正接を有する薄膜を提供するために、上記の常誘電体/強誘電体、強磁性及び反強磁性材料の異なる組み合わせが、使用されることが可能である。
【0040】
さらに、薄膜のインピーダンスを選択するために、異なる層の材料及び厚さの選択によって、設計者は、誘電率と透磁率の値の平衡に関して自由に選択することが出来る。有利には、空気とのインピーダンス不整合が要求されない場合、薄膜に対して空気のそれと近いインピーダンスを提供するように、薄膜の誘電率と透磁率の値が選択される。しかしながら、他の使用に対し、他の値が選択されてよく、例えばアンテナに対し、通過帯域(pass band)を低下させないように、1より大きなミュー/イプシロン比が通常推奨される。
【0041】
図1が、反強磁性材料の層20を含む強磁性材料の2つの層16,18の交互構造14を示す。
【0042】
図2が、強磁性材料の層38を含む反強磁性材料の2つの層34,36の交互構造32を提供する薄膜30を示す。
【0043】
しかしながら、図2の実施形態よりも、反強磁性材料の層が誘電材料の層からさらに離れているため、図1の実施形態が好ましい。実際には、特に、反強磁性材料がマンガンを含む場合、薄膜を製造している間に、誘電材料の層と接触する反強磁性材料の層が、界面での酸素の移動によって劣化しうる。
【0044】
図3が、強磁性及び反強磁性層の組み合わせが、中間層によって誘電層から分離されている点を除き、図1及び2におけるそれらと同様な実施形態を示す。
【0045】
例えば、図1の実施形態を基にして、中間層42が、誘電層12と強磁性層16との間に挿入され、中間層44が、強磁性層18と誘電層22との間に挿入される。中間層42,44が、成長層又は保護層(特に拡散バリア)として機能し、有利に、ルテニウム(Ru)、タンタル(Ta)又は白金(Pt)から構成される。しかしながら、ルテニウムが、有利な結晶成長を可能とし、良好な相互拡散バリアを構成する。
【0046】
強磁性層及び反強磁性層の単一の交互構造(強磁性/反強磁性/強磁性又は反強磁性/強磁性/反強磁性)が記載されているが、要求される用途に応じ、複数の交互構造をスタックすることが可能である。有効厚さの増加が、例えば、アンテナの場合における波と周囲環境との間の相互作用の効率性を改善する。物質の増加により、信号を増加させることが可能である。
【0047】
適当な位置に及び2つの誘電層の間に含まれる磁気スタックの代わりに、スタックが実施されることも可能であり、誘電層が、2つの磁気スタック(そのままの強磁性材料、又は反強磁性材料と結合し、場合によっては、上記の実施例のような中間層と結合した強磁性材料)の間に挿入される。
【0048】
図4が、図1から3に関連して記載された薄膜を製造するために有利に用いられるイオンビームスパッタリング装置を図式的に示す。
【0049】
イオンビームスパッタリングは、物理蒸着技術であり、真空状況にある筐体50内において、イオンが、源52によって形成され、スパッタリングするための材料54に向かって加速される。この技術によると、イオン源52が、正の単一−エネルギーイオンのビーム(通常500から1500eVの間のエネルギーを有する)を生成し、このビームが、空間的に定義される。通常Arイオンであるイオンビームが、蒸着しようとする材料によって構成されたターゲット54に衝突する。イオンビームによってそのようにスパッタされた粒子56が、ターゲットに面した半空間58内に放出され、加熱される又は加熱されない表面60上に凝縮され、ターゲットを構成する材料の層を形成する。
【0050】
二次的な低エネルギー照射によって表面における種の移動性を増加させることによって蒸着の均一性を改善するために、補助的な又はいわゆるサポート源(support source)64が、使用されることが可能である。いくつかの酸化物の化学量論が、密度が高く(denser)形成され又は良好に制御されることが可能であるように、例えば酸素が加えられることも可能である。
【0051】
同じ組成のターゲットから直接得られた化学量論的組成の誘電材料の層を蒸着するために、イオンビームスパッタリングが、特に有利である。さらに、酸素ガスが、有利に、蒸着ガン内、又はサポートガン内のいずれかに注入されてよいが、これは、蒸着層のコンパクト性を増加させることが可能であり、また、誘電材料の層の化学量論が制御されることが可能であり、SrTiO又はBaTiOのような、ペロブスカイトに対する重要な特性であることを意味する。
【0052】
蒸着の間において層の環境内にプラズマが存在しないことで、欠陥をほとんど存在させずに成長することが可能となり、高い界面特性を保証し、これによって、ナノメートル厚さの複数の層のスタックを含む膜の特性の良好な制御を確保する限りにおいて、また、反強磁性材料の層上に強磁性材料の層を蒸着するために、及びその逆も同様に、イオンビームスパッタリングが、有利である。
【0053】
さらに、イオンビームスパッタリングにより、SrTiO又はBaTiOのようなペロブスカイトが、300℃から400℃の間のペロブスカイト遷移温度で、非晶質で蒸着されることが可能である。従って、誘電層、反強磁性層及び強磁性層の全体のスタックが、この技術を使用して形成されることが可能である。
【0054】
IBS蒸着が特に有利である。それにもかかわらず、使用される温度により、含まれる異なる材料の特性が保持される限りにおいて、他の実施形態の技術が考えられる。強磁性、反強磁性層、及び中間層が、例えば、物理的気相成長法(PVD)によって蒸着され、例えば、次に、非特許文献1の記事に記載されているように、ペロブスカイトSTOが、化学的手段によってスタック上に蒸着され、続いてPVD蒸着が行われることが可能である。STOを蒸着する化学的方法に用いられる温度が、ほぼ200/300℃程度であり、従って、スタック内において下部にある磁性材料と適合する。
【0055】
例えば、誘電層内へガス種(例えば、水素及び/又はヘリウム)を注入し、要求される磁性スタック上に前記層を直接的に結合し、及び注入された領域内に分割することによる誘電層に対する層転写技術も考えられる。
【0056】
従って、上記のような薄層内における磁気−誘電複合薄膜が、高い透磁率及び誘電率を兼ね備え、従って、マイクロ波場における、特にマイクロ波回路の製造に特に役立つ。実際には、これらの薄膜が、ラジオ−周波数デバイスの磁気−誘電素子の構成部品であり、特に、このようなデバイス用の基板、若しくは基板用のコーティングを構成し、及び/又は受動部品(共鳴素子、フィルター、結合器、インダクタンス、バラン、遅延線、等)若しくはラジオ−周波数アンテナ(例えば、このような膜から形成された又は前記膜を含む基板内にアンテナパターンを形成することによって得られたコーティングを含む)の形成に使用されてよい。
【符号の説明】
【0057】
10,30,40 薄膜
11 基板
12,22 誘電層
14,32 交互構造
16,18,38 強磁性層
20,34,36 反強磁性層
42,44 中間層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジオ−周波数デバイスであって、前記ラジオ−周波数デバイスの少なくとも1つの磁気−誘電素子が、1GHzにおいて10以上の透磁率を示す磁性材料(16,18,38)と1GHzにおいて10以上の誘電率を示す誘電材料(12,22)とを備えた複合薄膜(10,30,40)を含むことを特徴とするラジオ−周波数デバイス。
【請求項2】
前記磁性材料(16,18,38)の透磁率が、1GHzにおいて100以上であることを特徴とする請求項1に記載のラジオ−周波数デバイス。
【請求項3】
前記誘電材料(12,22)の誘電率が、1GHzにおいて100以上であることを特徴とする請求項1及び2のいずれか一項に記載のラジオ−周波数デバイス。
【請求項4】
前記磁性材料(16,18,38)及び前記誘電材料(12,22)が、薄層状に配置されたことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のラジオ−周波数デバイス。
【請求項5】
前記磁性材料から形成された層が、前記誘電材料の層と接触することを特徴とする請求項4に記載のラジオ−周波数デバイス。
【請求項6】
前記磁性材料が、強磁性材料であり、
前記強磁性材料の磁化が、1T以上であり、有利には、2T以上であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のラジオ−周波数デバイス。
【請求項7】
前記磁性材料から形成された層が、交換結合を用いて反強磁性層(20,34,36)と結合された強磁性層によって構成されたことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のラジオ−周波数デバイス。
【請求項8】
前記強磁性材料及び反強磁性材料の層のスタックが、成長層又は保護層として機能する少なくとも1つの中間層(42,44)によって前記誘電材料の層から分離されたことを特徴とする請求項7に記載のラジオ−周波数デバイス。
【請求項9】
前記強磁性材料が、Fe、Co及びNiの合金、並びに、これらの元素の2つまたは3つ全てを結合させ、場合によってホウ素及び窒素でドープされたいずれの化合物を含む群から選択される(NiFe,CoNiFe,CoFe,CoFeB,FeN,CoFeN+場合によってはX,X=Al,Si,Ta,Hf,Zr,等)ことを特徴とする請求項6から8のいずれか一項に記載のラジオ−周波数デバイス。
【請求項10】
前記反強磁性材料が、Fe若しくはCoの酸化物、又は、特に、IrMn、PtMn、若しくはNiMnをベースとしたマンガンベースの合金を含む群から選択されることを特徴とする請求項7及び8のいずれか一項に記載のラジオ−周波数デバイス。
【請求項11】
前記誘電材料が、タンタル、チタン、ハフニウム、ストロンチウム及びニオビウムの酸化物、並びにペロブスカイトであって、特にバリウム及びストロンチウムのチタン酸塩を含む群から選択されることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載のラジオ−周波数デバイス。
【請求項12】
前記中間層(単数)又は中間層(複数)が、白金、ルテニウム、及びタンタルを含む群から選択された材料から形成されたことを特徴とする請求項8から11のいずれか一項に記載のラジオ−周波数デバイス。
【請求項13】
前記磁性材料が、2つの反強磁性層(34,36)の間における交換結合に挿入された強磁性材料(38)の少なくとも1つの層及び/又は2つの強磁性層(16,18)の間における交換結合に挿入された反強磁性材料(20)の層を含むことを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載のラジオ−周波数デバイス。
【請求項14】
前記誘電材料の層が、真空筐体内でのイオンビームスパッタリングによって蒸着されることを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載のラジオ−周波数デバイスの製造方法。
【請求項15】
前記膜を構成するスタックが、最大400℃と等しい温度における前記誘電材料のアニーリング又は蒸着の作業にさらされることを特徴とする請求項14に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−141301(P2010−141301A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−247769(P2009−247769)
【出願日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【出願人】(502124444)コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ (383)
【出願人】(500531141)セントレ・ナショナル・デ・ラ・レシェルシェ・サイエンティフィーク (84)
【Fターム(参考)】