説明

高速アプリケーション用多軸ロボット

【課題】位置決め精度を高めたベルト駆動設計の多軸ロボットを提供する。
【解決手段】互いに実質的に平行に配置されている第1ガイドレールと第2ガイドレール12,14とを具備する。第1端18および第2端20を有するクロスバー16が、ガイドレール12,14に作動可能に支持されている。第2運動軸66に沿って移動させるために、搬送台22が前記クロスバー16に作動可能に連結されている。第1および第2ドライブと、第1ベルト32とを有する第1駆動システムは、第1および第2運動軸66に沿った搬送台22の移動を提供する。第2および第3ベルト34,36は別々の第2および第3ベルト経路を走行し、第2および第3ベルト34,36の一方は右回りでクロスバー16に進入するとともに、左回りでクロスバー16から離れ、第2および第3ベルトの他方が左回りでクロスバー16に進入するとともに、右回りでクロスバー16から離れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速アプリケーション用多軸ロボットに関係する。
【背景技術】
【0002】
第1運動軸を画成するために互いに実質的に平行に配置されている第1および第2ガイドレールと、第1ガイドレールに作動可能に支持されている第1端および第2ガイドレールに作動可能に支持されている第2端を有するクロスバーと、第1端から第2端まで延びている第2運動軸に沿って移動するためにクロスバーに作動可能に連結されている搬送台と、第1および第2ドライブ、および第1および第2運動軸に沿ってクロスバーおよび搬送台を移動するために第1H形ベルト経路を走行する第1ベルトを有する第1駆動システムと、少なくとも部分的にクロスバーおよびガイドレールに沿って延びている第2および第3ベルトとを具備する。
【0003】
この種の多軸ロボットは、下記特許文献1から周知である。
下記特許文献1は、3本の直交軸X,Y,Zに沿って工具キャリアを移動させ、かつこれら軸の1本を中心に工具キャリアを回転させるために3つのベルト駆動システムを使用している多軸ロボットを開示している。工具キャリアは搬送台に配置されていて、さらにクロスバーに作動可能に支持されている。クロスバーの各端は2本の平行なガイドレールのうちの1本に支持されている。クロスバーおよび搬送台は、典型的にはX軸およびY軸と呼ばれる2本の直交軸に沿った工具キャリアの移動のためのものである。これら2本の軸に沿って搬送台とクロスバーとを移動させるために、2つの固定モータドライブとH形ベルト経路を走行する循環ベルトとを具備する駆動システムが設けられている。H形ベルト経路はガイドレールおよびクロスバーの配置に合わせている。2つのモータドライブが共に同じ回転方向に駆動されると、搬送台はクロスバーに沿って移動する。2つのモータドライブが反対の回転方向に駆動されると、クロスバーはガイドレールに沿って移動する。
【0004】
第3軸に沿った工具キャリアの移動および第3軸周りの工具キャリアの回転を生じさせるために、さらに2本のH形ベルトが設けられている。まとめると、周知のロボットは平行な面に重なるように配置されている3本のH形ベルトを具備する。
このロボット設計の利点は、固定モータドライブから得られるものであり、駆動力がH形ベルトによって工具キャリアに伝わる点にある。そのため、ロボットの可動部分はドライブの重量を支える必要がない。したがって、工具キャリアは非常に軽量に製造することができ、加速度および減速度が高い非常にダイナミックな動きが可能となる。
【0005】
しかし、この周知の設計では、H形ベルト駆動システムは望ましくないクロスバーのその縦軸および垂直Z軸周りの回転を受けやすいため、位置決め精度が制限される。かかる回転により生じる不正確な位置決めは、特に、この種のロボット設計の使命であるはずの工具キャリアが非常に高速で移動する場合、問題を引き起こしかねない。
下記特許文献2は、H形ベルトの方法を採用している別のロボット設計を開示している。しかし、ここでも、提案された設計は望ましくないクロスバーの回転の結果、不正確な位置決めを受けやすい。
【0006】
下記特許文献3はまったく別のロボット設計を開示しており、一般にデルタロボットとして知られている。このデルタロボットも固定モータドライブの利点を生かしており、平行な構造を介して工具キャリアを移動させる構成になっている。このロボット設計も可動部品が軽量であることから恩恵を受けるが、工具キャリアの所望の動きから駆動制御信号を計算するために高度な制御ロジックが必要である。
【特許文献1】独国特許出願公開第4444523A1号明細書
【特許文献2】国際公開第97/02931号パンフレット
【特許文献3】米国特許第4,976,582号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上2つの概念を超えた別のロボット設計があり、いわゆる6軸ロボットまたはいわゆるSCARA設計などである。しかし、3軸以上での移動および回転のために、これらのロボット設計はモータドライブを工具キャリアとともに移動させる必要があり、そのためダイナミックな動作を制限し、および/または高出力駆動システムを必要とする。
上記に鑑み、本発明の目的は、軽量で、実施するのに効率的かつ経済的な高速アプリケーション用多軸ロボットを提供することである。より具体的には、本発明の目的は、位置決め精度を高めたベルト駆動設計の多軸ロボットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
冒頭で述べた種類の多軸ロボットにおいて、本発明の多軸ロボットは、第2および第3ベルトが別々の第2および第3ベルト経路を走行し、第2および第3ベルトのうちの一方が右回りでクロスバーに進入するとともに左回りでクロスバーから離れ、第2および第3ベルトのうちの他方は左回りでクロスバーに進入するとともに右回りでクロスバーから離れるものである。
【0009】
このように新規なロボットは、この概念から得られるあらゆる利点を生かしたベルト駆動方法を採用する。しかし、この設計を採用している先行技術のロボットに比べ、新規なロボットは、第2および第3ベルトという新規なベルト設計により安定性および剛性が高まる。これら2本のベルトの各々は第1方向回りでクロスバーに進入し、第2の方向、つまり、第1の反対方向でクロスバーから離れるため、各ベルトは第3運動軸(典型的には、Z軸)周りの回転に対してクロスバーを安定させる。加えて、2本のベルトは逆の回転方向でクロスバーを安定させるように配置されている。したがって、第3運動軸周りに起こりうるクロスバーのあらゆる回転は第2および第3ベルトのうちの一方で遮られて阻止される(または少なくとも抑制される)ため、第2および第3ベルトはともに安定性および剛性を高めることになる。すなわち、第2および第3ベルトは新規なベルト設計の結果として、反対に作用することにより協働する。
【0010】
第2および第3ベルトという新規なベルト設計は特に、クロスバーが高い加速度および減速度で前後に移動する高速アプリケーションに有益である。第2ベルトおよび第3ベルトはガイドレールの間のクロスバーを安定させるため、クロスバーはガイドレールに対する位置がより安定した状態に維持される。ガイドレールをプラスチックなどの軽量な材料から製作できるのであればさらに安定性を高めることも可能であり、ロボットの総重量およびその製造コストを一層低減する。安定性の向上から得られる別の利点は、摩損が少なくなることである。
【0011】
以上をまとめると、新規な多軸ロボットは高速アプリケーションに適した経済的な設計であるが、低いコストで高い位置決め精度を提供する。したがって、上記目的は、完全に達成される。
本発明の好適な改良形態では、第2および第3ベルトの一方が実質的にd形の第2ベルト経路を走行し、第2および第3ベルトの他方が実質的にb形の第3ベルト経路を走行する。
【0012】
第1ベルトのH形ベルト経路と同様、第2および第3ベルトは、上から見たとき、それぞれd形またはb形ベルト経路を走行する。本改良形態によるベルト経路は対称ではないため、「文字」dおよびbは見方によってはpおよびqと考えられることはいうまでもない。そのため、本改良形態によるd形およびb形ベルト経路はp形およびq形ベルト経路としても理解されるべきである。いずれにしても、2本のベルト経路は、互いに実質的に交差して配置されている広いループおよび狭いループを持つことによって非対称である。広いループのベルトの一部分はクロスバーに沿ってまたはその中を走行するが、狭いループは実質的に完全にガイドレールの1つに沿って走行する。文字dおよびb(またはpおよびq)の基本形状が維持される限り、搬送台のプーリに巻き付けるなど、サイドループを設けてもよいことは本改良形態の範囲内である。
【0013】
本改良形態は非常に安定し、実施しやすくかつ経済的な実施態様を提供することが証明されている。特に、本改良形態は第1、第2および第3ベルトのモータを2本のガイドレールの別々の端部に配置することができるため、非常にコンパクトかつ安定した構造にしやすい。
別の改良形態では、新規な多軸ロボットは、第1および第2運動軸に交差している第3運動軸に沿って移動するために、搬送台に作動可能に連結されている工具キャリアを具備する。本好適な改良形態は、新規な多軸ロボットの基本概念に第3運動軸を追加し、それによって柔軟性および操作能力が高まる。
【0014】
本発明の別の改良形態では、新規なロボットは、第3運動軸に沿って工具キャリアを移動させる第2駆動システムを具備し、この第2駆動システムは第3ドライブと第2ベルトとを具備する。
本改良形態により、第2ベルトは安定性および剛性の向上に寄与するだけでなく、第3運動軸に沿って工具キャリアを駆動する役割も果たす。その結果、本改良形態は非常に効率的かつ経済的な設計を可能にする。
【0015】
別の改良形態によると、第2駆動システムは第2ベルトに平行に配置されて、前記第2ベルトと同時に走行する第4ベルトを具備する。
本改良形態では、第2ベルトは第4ベルトによって「ミラーリング」されるため、第2駆動システムは第3運動軸の方向に間隔をあけて互いに同時に走行する2本の平行なベルトを効果的に具備する。二重ベルトおよびその間の間隔により、本改良形態は新規なロボットの安定性および剛性を一層高める。特に、間隔があいた2本のベルトはその縦軸に沿ったクロスバーの回転を減じるのに寄与する。
【0016】
別の改良形態によると、搬送台は工具キャリアを支持している第1部分と、第1部分に対して移動するために第2ベルトに接続されている第2部分とを具備し、ロボットはさらに、第1および第2部分の相対移動が第3運動軸に沿った工具キャリアの移動になるように、第1および第2部分と、工具キャリアとを接続しているロープを具備する。
本改良形態では、第3運動軸に沿った工具キャリアの(典型的には垂直な)移動は、第1および第2搬送台部分の相対的な移動によってもたらされる。2つの部分が互いに離れる方向に移動すると、典型的には工具キャリアはロープによって上昇し、一方2つの搬送台部分が互いに近づく方向に移動すると、典型的には工具キャリアは下降することになる。本改良形態は、可動する搬送台および工具キャリアを特に軽量な構造にすることができ、それによってより一層のダイナミクスの向上に寄与する。しかし、基本的には、第2ベルトの並進運動を第3運動軸に沿った並進運動に変換するために、ねじ留めを使用しているスピンドル構成など、他の設計も使用可能である。
【0017】
別の改良形態では、新規なロボットは、工具キャリアを第3運動軸周りに回転させるための第3駆動システムを具備し、第3駆動システムは第4ドライブと第3ベルトとを具備する。
本改良形態も、第3ベルトを使用することによって、クロスバーの安定化だけでなく、工具キャリアの駆動に対しても効率的かつ経済的な構成に寄与する。
【0018】
別の改良形態では、第3ベルトは第2ベルトの対応するベルト幅よりも実質的に大きく、かつ、また好ましくは第1および第4ベルトの対応するベルト幅よりも大きいベルト幅を有する。
本改良形態によると、ベルトの移動方向に交差する方向で測定するベルト幅は、第3ベルトが他のベルトに比べて大きい。あるいは、第1および第2ベルトのベルト幅は第3ベルトと比べて小さくしてもよいということができよう。本改良形態は、第2および第4ベルトに関して上記詳細に説明したように、第1および第2ベルトを対応する「ミラーベルト」によって二重にしている他の改良形態と組み合わせると特に好ましい。新規なロボットの好適な改良形態の第3ベルトは二重にされていないため、駆動力の伝達を高めるためにそのベルト幅を他のベルトに比べて大きくするのが有利である。大きくした第3ベルトのベルト幅は、第2ベルトが第4ベルトによって二重にされている場合、幅の広い第3ベルトがより効率的に第2および第4ベルトの抗力に対抗できるため、クロスバーの安定性の向上にも寄与する。第3ベルトのベルト幅を第2および第4ベルトの対応するベルト幅よりも単独で測った場合に実質的に2倍にすると特に好ましい。
【0019】
別の改良形態では、新規なロボットはH形の第5ベルト経路に沿って延びている第5ベルトを具備し、この第5ベルトは第1ベルトに平行かつそれと同時に走行する。
本改良形態によると、第1ベルトも平行かつ同時であるが、第3運動軸の方向に間隔をあけて走行する第5ベルトによってミラーリングされる。好ましくは、第1および第5ベルト(第2および第4ベルトと同様)は各々が同じシャフトに配置されているプーリを走行する。二重に、またはミラーリングされる第1/第5ベルトも、その縦軸周りの回転に対しクロスバーの安定性の向上に寄与する。同じシャフトにそれぞれのプーリを配置することで非常にコンパクトかつ効率的な設計に寄与する。
【0020】
別の改良形態によると、第2および第3ベルトは、第1および第2運動軸に交差する方向から見て、第1および第5ベルトの間に位置付けられている。第1および第5ベルトを、今までに述べた5本のベルトのそれぞれ一番上と一番下のベルトにすると特に好ましい。すなわち、第2ベルト、第3ベルトおよび第4ベルトは、第1ベルトのベルト経路によって画成される第1平面と、第5ベルトのベルト経路によって画成される第5平面との間にあるそれぞれの平面に配置されている。
【0021】
本改良形態はコンパクトな設計と、第3運動軸、典型的には垂直軸に沿った第1ベルトと第5ベルトとの最大限の間隔とを兼備する。2本の平行なH形ベルト間の最大限の間隔は、その縦軸周りの回転に対するクロスバーの安定性を特に高める。
上記で説明した特徴および下記で説明する特徴は、本発明の範囲を逸脱することなく、説明した組合せだけでなく、他の組合せまたは単独で使用できることは言うまでもない。
【0022】
本発明の例示的な実施形態を図面に図示し、以下の説明でより詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1では、新規なロボットの実施形態の本質的な部分を全体として参照番号10で示している。分かりやすくするために、ここでは、本発明に本質的な、新規なロボット設計の部分のみを詳細に示している。新規なロボットは、実際にはここに図示していない、一般的な支持構造、モータドライブ、ハウジング部分および/またはカバーシートおよび後で説明する移動を制御するコントローラなど、別の部分を具備することは言うまでもない。
【0024】
典型的な実施形態では、新規なロボットは、フレームの各角に1本ずつ、4本の脚部に支持されている実質的に長方形のフレームを具備する。フレームは2本のガイドレール12,14、プーリおよびモータドライブ(ここでは詳細に図示せず)を支持している。脚部の高さと長方形支持フレームの長さおよび幅とは、所望のアプリケーションに適するように選んでもよいだろう。
【0025】
新規なロボット10は、第1端18および第2端20を有するクロスバー16を具備する。第1端は、ガイドレール12に沿って走行するように構成されているローラによってガイドレール12上に支持されている。第2端20は同様にローラによってガイドレール14上に支持されている。ローラは図4の参照番号21で模式的に示されている。
本実施形態では、クロスバー16は、第1搬送台部分22aおよび第2搬送台部分22bを有する搬送台を支持している。搬送台部分22a,22bは、第1端18と第2端20との間でクロスバー16に沿った摺動移動のために構成されている。
【0026】
搬送台22は工具キャリア24を支持しており、工具キャリア24は本実施形態ではロッド状のシャフトである。工具キャリア24は歯車26に接続されていて、歯車26は以下詳細に説明するようにベルトドライブによって回転できる。歯車26の回転が、ロッド状工具キャリア24にその縦軸周りの回転を生じさせる。工具キャリア24の下端28(上端30でもよい)は、一定の操作動作に望ましいであろうあらゆる種類の操作工具(ここでは図示せず)を受けるように構成されている。操作工具は工作物を把持するグリッパおよび/または工作物を加工する加工工具を含めてもよいだろう。
【0027】
ロボット10はさらに、複数のベルトを案内するように配置されている複数のプーリを具備する。本実施形態では、ロボット10は第1ベルト32と、第2ベルト34と、第3ベルト36と、第4ベルト38と、第5ベルト40とを具備する。これら5本のベルトはすべて、以下に参照する図2から図5に関連して詳細に説明するベルト軌道に沿って走行する循環ベルトである。
【0028】
第1ベルト32は4つのプーリ42,44,46,48を介して案内されるが、プーリ42,44は第1ガイドレール12の各端に配置されていて、プーリ46,48は第2ガイドレール14の各端に配置されている。さらに、第1ベルト32はさらに別の4つのプーリ50,52,54,56に沿って案内され、プーリ50,52はクロスバー16の第1端18にも装着されていて、プーリ54,56はクロスバー16の第2端20にも装着されている。図2および図3から分かるように、第1ベルト32は本質的にH形のベルト経路を走行する。
【0029】
第5ベルト40も、第1ベルト32の経路に平行に延びており、かつ好ましくはまったく同一のH形ベルト経路を走行する。図1から分かるように、第5ベルト40はプーリ42’,44’,46’,48’によって案内され、これらプーリは第1ベルト32を案内する対応のプーリ42,44,46,48と同じシャフト58に配置されているため、第1および第5ベルト32,40は必ず同時にかつ互いに平行に走行する。クロスバー16の両端18,20にあるプーリ50,52,54,56にも同じことが言え、これらプーリは第5ベルト40を案内するために同様に「ミラーリング」されている。
【0030】
本実施形態では、ガイドレール12,14それぞれの平行な端部に配置されている駆動シャフト58aおよび58bは、モータドライブに接続されている。簡潔にするため、それらのモータドライブはここでは詳細に図示していないが、図2および図3では参照番号60,62で表されている。
当業者には十分に理解されるように、H形ベルト32,40は、2つのドライブ60,62を同時に、一方のドライブを左回りに、他方のドライブを右回りに作動させると、クロスバー16を第1運動軸64に沿って移動させる。2つのドライブ60,62を図2の各矢印で示すように作動させると、クロスバー16は矢印64の方向に移動する。各ドライブ60,62を反対方向に作動させると、クロスバー16は反対方向に移動する。
【0031】
しかし、ドライブ60,62を両方とも右回りに作動させると(または両方とも左回りに作動させると)、クロスバー16の位置は変わらないが、搬送台24がクロスバー16に沿って移動する。ドライブ60,62を両方とも同時に右回りに作動させると、搬送台24は矢印66の方向に移動するが、これは第2運動軸を示す。搬送台24は適切な取付具(ここでは詳細に図示せず)で両方のベルト32,50に取り付けられていることは言うまでもない。以上をまとまると、H形ベルト32,50は2本の実質的に交差する運動軸に沿った工具キャリア24の並進移動を提供する。
【0032】
図4は第2ベルト34の経路(および「ミラーリングされている」第4ベルト38の経路)を示している。見て分かるように、ベルト34,38は、見方によって、実質的にd形またはp形のベルト経路をたどる。本実施形態では、第2搬送台部分22bはベルト34,38に接続されていて、第1搬送台部分22aは第1および第5ベルト32,40に接続されている。そのため、第1/第5ベルト32,40に対する第2/第4ベルト34,38の独立した移動が、第1搬送台部分22aに対する第2搬送台部分22bの矢印68方向の移動になる。図1から分かるように、各搬送台部分22a,22bはロープ72を支持する対のプーリ70を具備し、ロープは工具キャリア24の下端28に接続されている。ロープ72のおかげで、搬送台部分22a,22bが互いに離れる方向に移動すると、工具キャリア24は第3運動軸74(図1)に沿って上昇し、逆に搬送台22a,22bが互いに近づく方向に移動すると、工具キャリア24は下降する。そのため、第2および第4ベルト34,38は、工具キャリア24の第3運動軸74(図1)に沿った移動を生じさせるように構成されている。ベルト34,38を移動させるために、第3ドライブ76をガイドレール14の(第2)端に配置している。
【0033】
図5から分かるように、第3ベルト36は、実質的にb形(または見方によってはq形)のベルト経路を走行する。第3ベルト36は、歯車26の歯に噛み合わせるために歯車26に適合する歯付きベルトである。そのため、第3ベルト36は、矢印78で示すように、工具キャリア24の回転運動を生じさせるように構成されている。第3ベルト36を移動させる各ドライブを参照番号80で模式的に示している。ドライブ80は第1ガイドレール12の第2自由端に配置されているため、4つのドライブ60,62,76,80は2本のガイドレール12,14の自由端によって画成されている4つの角に位置している。ベルト32〜40およびドライブ60,62,76,80の配置は、3本の並進軸方向および1本の回転軸周りの工具キャリア24の4つの独立した動きを生じさせるように構成されている。
【0034】
図4および図5から分かるように、ベルト34,36および38はそれぞれ、クロスバー16の第2端20に配置されているプーリ82,82’に沿って案内される。しかし、ベルト経路が異なるため、第2および第4ベルト34,38はドライブ62に向いた側でプーリ82に巻き付き、対して第3ベルト36はドライブ62から遠ざかる、第3ドライブ76に向いた側でプーリ82’に巻き付く。すなわち、ベルト34/38および36はプーリ82,82’に別々の抗力をかけ、別々の抗力が互いに対抗して、それによってガイドレール14上でクロスバー16の第2端20を安定化させる。
【0035】
また、第2および第4ベルト34,38と第3ベルト36も、プーリ84/84’および86/86’に対して互いに対抗する抗力をかけることによって、ガイドレール12でクロスバー16の第1端18を安定化させる。その結果、クロスバー16は、第1および第2ドライブ60,62が第1および第5ベルト32,40にわずかでも異なる駆動力を与えたとしても、ガイドレール12,14に対しその交差位置で安定化されている。参照番号78で示す垂直軸74周りのクロスバー16の回転は、避けられないとしても、大幅に減じられる。
【0036】
さらに、「ミラーリングされる」第1および第5ベルト32,40ならびに第2および第4ベルト34,38、および図1の矢印92で示すそれぞれの垂直空間の結果、クロスバー16の縦軸90周りの回転運動88(図1を参照)も、避けられないとしても、減じられる。
本実施形態では、対のベルト32/40および34/38に対し第3ベルト36は「ミラーリング」されていないため、第3ベルト36の幅94は、各ベルト32,34,38,40の対応する幅の2倍である。
【0037】
図4および図5から分かるように、第2および第4ベルト34,38はクロスバー16に必ず右回りで進入し、左回りでクロスバー16から離れる。このことは、第2および第4ベルト34,38の移動方向に関係無く当てはまる。対して、第3ベルト36は必ずクロスバー16に左回りで進入し、右回りでクロスバー16から離れる。したがって、ベルト34/38と36との駆動経路は異なっており、クロスバー16に対し互いに対抗する抗力をかけるので、クロスバー16をガイドレール12,14に対して交差する向きで安定化させる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の多軸ロボットの好適な実施形態の本質的な部分を透視図である。
【図2】本発明のロボットの実施形態の第1運動軸に沿った移動を説明するための模式図である。
【図3】本発明のロボットの実施形態の第2運動軸に沿った移動を説明するための模式図である。
【図4】本発明のロボットの実施形態の第3運動軸に沿った移動を説明するための模式図である。
【図5】本発明のロボットの実施形態の回転運動を説明する模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1運動軸(64)を規定するために互いに実質的に平行に配置されている第1および第2ガイドレール(12,14)と、前記第1ガイドレール(12)に作動可能に支持される第1端(18)および前記第2ガイドレール(14)に作動可能に支持される第2端(20)を有するクロスバー(16)と、前記第1端(18)から前記第2端(20)まで延びる第2運動軸(66)に沿って移動するために前記クロスバー(16)に作動可能に連結されている搬送台(22)と、ならびに前記第1および第2運動軸(64,66)に沿って前記クロスバー(16)および前記搬送台(22)を移動させるため、第1および第2ドライブ(60,62)、第1H形ベルト経路を走行する第1ベルト(32)を有する第1駆動システムと、少なくとも部分的に前記クロスバー(16)および前記ガイドレール(12,14)に沿って延びている第2および第3ベルト(34,36)とを具備する高速アプリケーション用多軸ロボットにおいて、
前記第2および第3ベルト(34,36)がそれぞれ別々の第2および第3ベルト経路を走行し、前記第2および第3ベルト(34,36)の一方が右回りで前記クロスバー(16)に進入するとともに左回りで前記クロスバーから離れ、前記第2および第3ベルト(34,36)の他方が左回りで前記クロスバー(16)に進入するとともに右回りで前記クロスバーから離れることを特徴とする、高速アプリケーション用多軸ロボット。
【請求項2】
前記第2および第3ベルト(34,36)の前記一方(34)が実質的にd形の第2ベルト経路を走行し、前記第2および第3ベルト(34,36)の前記他方(36)が実質的にb形の第3ベルト経路を走行することを特徴とする、請求項1に記載の多軸ロボット。
【請求項3】
前記第1および第2運動軸(64,66)に交差する第3運動軸(74)に沿って移動するために、前記搬送台(22)に工具キャリア(24)が作動可能に連結されることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の多軸ロボット。
【請求項4】
前記第3運動軸(74)に沿って前記工具キャリア(24)を移動させるための第2駆動システムを具備し、前記第2駆動システムが第3ドライブ(76)と前記第2ベルト(34)とを含むことを特徴とする、請求項3に記載の多軸ロボット。
【請求項5】
前記第2駆動システムが、前記第2ベルト(34)に平行に配置されて、前記第2ベルト(34)と同時に走行する第4ベルト(38)を具備することを特徴とする、請求項4に記載の多軸ロボット。
【請求項6】
前記搬送台(22)が、前記工具キャリア(24)を支持する第1部分(22a)と、前記第1部分(22a)に対する移動のために前記第2ベルト(34)に接続された第2部分(22b)とを具備し、さらに前記第1および第2部分(22a,22b)の相対移動が前記第3軸(74)に沿った前記工具キャリア(24)の移動になるように、前記第1および第2部分(22a,22b)と、前記工具キャリア(24)とを接続しているロープ(72)を具備することを特徴とする、請求項4または請求項5に記載の多軸ロボット。
【請求項7】
前記工具キャリア(24)を前記第3運動軸(74)周りに回転させるための第3駆動システムを具備し、前記第3駆動システムが第4ドライブ(80)と前記第3ベルト(36)とを含むことを特徴とする、請求項4〜6のいずれか1項に記載の多軸ロボット。
【請求項8】
前記第3ベルト(36)が、前記第2ベルト(34)の対応するベルト幅よりも実質的に大きいベルト幅(94)を有することを特徴とする、請求項7に記載の多軸ロボット。
【請求項9】
H形の第5ベルト経路に沿って延びている第5ベルト(40)を具備し、前記第5ベルト(40)が前記第1ベルト(32)に平行にかつそれと同時に走行することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の多軸ロボット。
【請求項10】
前記第1および第2運動軸(62,64)に交差する方向から見て、前記第2および第3ベルト(34,36)が、前記第1ベルト(32)と前記第5ベルト(40)との間に位置付けられていることを特徴とする、請求項9に記載の多軸ロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−119595(P2009−119595A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−284548(P2008−284548)
【出願日】平成20年11月5日(2008.11.5)
【出願人】(501493037)ピルツ ゲーエムベーハー アンド コー.カーゲー (49)
【Fターム(参考)】