説明

高速スイッチングのための周波数合成の新規方法

単一のソースの設計、マルチプレクサの設計、分数分周器の設計、または周波数逓倍器と周波数分周器の設計で実装可能なデジタル周波数シンセサイザである。実装は、制御器のディザリング回路またはデルタシグマ変調器を利用可能である。この周波数シンセサイザは、CMOS構成において実装可能であり、クリーンアップ位相ロックループ(PLL)を利用可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は一般的に通信回路およびシステムに関係し、特に、新規の開ループ生成方法を使用した周波数シンセサイザに関係する。より詳細には、本願は、高速スイッチング可能な周波数シンセサイザ、正確な、高い周波数のクロック基準を提供可能な周波数シンセサイザ、および/または通信機器における使用のための周波数シンセサイザに関係したものである。
【背景技術】
【0002】
1つの特定の用途、移動通信機器における無線周波数(RF)信号の生成によると、周波数シンセサイザは、複数の通信チャネルに対する周波数ソースを提供するために利用されている。一般的に従来の周波数シンセサイザは、整数または分数の位相ロックループ(PLL)を用いて周波数信号を生成していた。これら従来の周波数シンセサイザ(PLLベースの周波数シンセサイザ)は、ループフィルタと、比較器回路と、電圧制御発振器とを備えた位相ロックループとを利用している。また、これら従来のPLLベースの周波数シンセサイザは、ディザリング、およびデルタシグマディザリング方法を使用して、分数の周波数を生成していた。
【0003】
上記発振器は、ループフィルタと結合した制御入力を有している。上記比較器回路の出力は、このループフィルタと結合している。上記比較器回路の第1の入力は、整数分周器およびデルタシグマ平均化回路と結合している。上記比較器回路の第2の入力は、基準信号と結合している。整数分周器とデルタシグマ平均化回路の組み合わせは、分数分周器を構成している。基準周波数信号は、水晶または他のデバイスから生成することが可能である。デルタシグマ分数シンセサイザは、1986年9月2日にウェルズ(Wells)に発行された米国特許4,609,881にて開示されている。
【0004】
一般的にそのようなPLLベースの周波数シンセサイザは、デジタル集積回路(IC即ちチップ)上に容易に集積することが不可能であるために、不便である。PLLベースの周波数シンセサイザは、より高価なプロセス技術を要求し、ベースバンドおよび他のデジタル制御回路に対して使用されるものと同じCMOS技術とは両立できない。プロセス技術がサイズに関して小さくなるにつれ、CMOSプロセスと両立できる無線アーキテクチャを提供することは、よりいっそう望ましいことになる。米国特許公報番号2004/0066240は、デジタル的に集約したシンセサイザのアーキテクチャに移行することの、ある利点について説明している。
【0005】
通信用途において、この周波数シンセサイザは多くの場合、正確な、高い周波数のクロック基準を生み出すことが可能でなければならない。これまで多くの従来のシンセサイザは、アナログ集約的な設計を利用して、正確な、高い周波数のクロック基準を達成してきた。これら従来のアナログ設計は、先進のCMOSロジックデバイスにおける本来のデジタルプロセッシング能力を利用することが不可能である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そのため、デジタルな設計とより一層両立できる周波数シンセサイザに対する必要性が存在している。また、従来のPLLベースの設計を利用しないシンセサイザに対する必要性が存在している。さらに、周波数シンセサイザをCMOSロジックデバイスに集積することに対する必要性が存在している。さらにまた、アナログ集約的な設計に関連する伝統的な問題を持たない、高速スイッチング可能な周波数シンセサイザに対する必要性が存在している。そればかりでなく、さらにまた、正確な高い周波数のクロック信号を生み出すことが可能なデジタルンセサイザに対する必要性が存在している。
【課題を解決するための手段】
【0007】
例示の実施形態は、デジタル周波数シンセサイザに関係している。前記デジタル周波数シンセサイザは、複数のデジタル周波数信号を提供するための少なくとも1つのソースと、複数のスイッチと、制御回路とを備えている。前記デジタル周波数信号の各々は、別個の周波数で提供される。前記スイッチは、前記デジタル周波数信号を受けるよう結合している。前記制御回路は前記スイッチと結合し、前記デジタル周波数信号を選択し、出力信号を提供するよう前記スイッチを制御する。
【0008】
一実施形態によると、前記出力の周波数は、ディザリングシーケンスが決定するように、前記デジタル周波数ソースの平均である。例えば、トーン1が890MHzであり、トーン2が900MHzであるならば、そしてそのディザリングシーケンスがトーン1、トーン2、トーン1、トーン2、...というものならば、前記出力周波数は895MHzである。別の例のとき、そのディザリングシーケンスがトーン1、トーン1、トーン1、トーン2、...というものならば、前記出力周波数は892.5MHzである。このように、前記ディザリングシーケンスおよび前記トーンの周波数は、最終的な出力周波数を決定する。前記ディザリングシーケンスは、シグマデルタ変調器、または任意の他のディザリングシーケンス生成器として具体化された制御回路によって実行可能である。ディザリングシーケンス生成器に対する例示の構成は、米国特許4,609,881におけるものである。
【0009】
別の例示実施形態は、デジタル周波数シンセサイザに関係している。前記デジタル周波数シンセサイザは、周波数逓倍器と、デルタシグマまたは他のディザリング回路と、分数の入力とを備えている。前記周波数逓倍器は、クロック入力と、第2の入力と、逓倍器出力とを有している。前記逓倍器は、前記クロック入力でクロック信号を受け、前記逓倍器出力で周波数信号を提供し、前記逓倍器出力は、前記入力クロックの周波数に、前記第2の入力によって設定された逓倍の数値を掛けたものである。前記デルタシグマまたは他のディザリング回路は、所望の逓倍のために、「整数+分数」を表す信号を提供するディザリング出力を有している。前記デルタシグマ/ディザリング出力は、前記第2入力と結合している。前記分数の入力は、前記デルタシグマまたは他のディザリング回路の入力と結合している。前記分数入力は入力信号を提供し、前記入力信号は、求める前記入力クロックの周波数に逓倍すべき前記分数の係数を表している。
【0010】
さらに別の例示実施形態は、デジタル周波数シンセサイザに関係している。前記デジタル周波数シンセサイザは、第1の周波数で第1の信号を提供するための周波数ソースと、前記第1信号を受け、第2の周波数で第2の信号を提供するための周波数逓倍器と、可変周波数分周器とを備えている。また前記デジタル周波数シンセサイザは、デルタシグマ変調器または任意の他のディザリング回路を備えている。前記第2周波数は、前記第1周波数の固定倍である。前記周波数分周器は、前記第2信号を受け、平均の第3周波数を有する第3の信号を提供する。前記平均第3周波数は、前記第2周波数より低い。前記デルタシグマ変調器または他のディザリング回路は、前記分周器を制御して、前記第3周波数が前記ディザリング回路からのディザリングシーケンスの平均であるようにしている。
【0011】
例示の実施形態は、信号ソースに関係している。前記信号ソースは、周波数信号を提供するためのデジタル周波数シンセサイザと、位相ロックループ・クリーンアップ回路とを備えている。前記位相ロックループ・クリーンアップ回路は、前記周波数信号を受け、クリーンアップ周波数信号を提供するよう結合している。前記デジタル周波数シンセサイザは、1.少なくとも1つのデジタル周波数ソース、スイッチ、および前記スイッチを制御するディザリング制御回路、2.周波数逓倍器、および前記逓倍器と結合し、整数と分数の和に関係した周波数で出力信号を提供するディザリング回路、3.別個の周波数で周波数信号のシーケンスを提供可能な単一のデジタル周波数ソース、または4.周波数逓倍器、および可変周波数分周器、を利用可能である。
【0012】
別の例示実施形態は、複数のデジタル周波数信号を提供するための少なくとも1つのデジタル周波数ソースと、制御回路とを備えたデジタル周波数シンセサイザに関係している。前記デジタル周波数信号は、個々の周波数で提供される。前記制御回路は前記デジタル周波数ソースを制御し、第1の周波数に平均周波数を有する出力信号を提供する。前記平均周波数は、前記個々の周波数の範囲内である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以後、添付の図面と共に好適な例示実施形態を説明し、符号等は要素等を示している。
図1に関して、デジタル周波数シンセサイザ10は、高い周波数の信号のような、周波数信号の生成を必要とする任意の用途に利用可能である。好ましくは、周波数シンセサイザ10は、無線通信用途(例えば、携帯電話の用途)等の通信用途において利用可能な、位相ロックループ(PLL)ベースでないシンセサイザである。シンセサイザ10は、複数の周波数ソース12A−Dと、制御器16と、スイッチ14A−Dとを備えている。一実施形態において、シンセサイザ10は、変調(広帯域変調)のために使用される。
【0014】
好ましくは、ソース12A−Dとスイッチ14A−Dは、1対1の関係である。ソース12A−Dの数は、2からnまでの任意の数とすることが可能であり、またスイッチ14A−Dの数は、2からnまでの任意の数とすることが可能である。好ましくは、少なくとも2つの数のソース12A−Dおよびスイッチ14A−Dが、用途のパラメータおよびシステムの基準に従って利用される。スイッチ14A−Dは、好ましくはCMOSデバイス等のソリッドステートスイッチである。またスイッチ14A−Dは、マルチプレクサとしても実装可能である。
【0015】
周波数ソース12A−Dは、スイッチ14A−Dの各々と結合した出力を有する。スイッチ14A−Dは、出力18と結合した出力を有しており、この出力18は、制御器16と結合している。制御器16は、スイッチ14A−Dの各々の制御入力と、制御線14A−Dを介して結合した出力を有している。
【0016】
ソース12A−Dは、整数若しくは分数のPLL、クロック逓倍器、または逓倍用DLL等の任意のタイプの周波数ソースとして実装することが可能である。1つの好適実施形態において、ソース12A−Dは、デジタル遅延ロックループ(DLL)である。デジタル遅延ロックループは、従来のDLLのように実装可能である。
【0017】
1つの代替実施形態において、周波数ソース12A−Dは、プログラム可能逓倍器を備えた1つの遅延ロックループによって実装している。図1から認識可能であるように、特定のスイッチがオンになるとき、すべての他のスイッチはオフになるので、これは好適な実装である。例えば、ソース12Aと接続しているスイッチ14Aがオンになれば、スイッチ14B、14C、14Dはすべてオフになる。このことは、ソース12B、12C、12Dはオンになる必要がないことを意味している。このように、実装におけるハードウェアの量は、単一の周波数機敏なソースを実装することにより相当に低減することができ、この単一の周波数機敏なソースは、スイッチ14Aから14Dによって必要とされ、そして決定されたソース12A、12B、12C、12Dに関連した信号を生成可能である。
【0018】
代替の実施形態(図8)において、周波数シンセサイザ500は、(整数または分数の)乗算用DLL等、単一の周波数ソースの構成502(例えば、単一のソース)を備えている。ソース502は、ソース12A−Dに関連した信号を提供する。この実施形態において、スイッチ14A−Dは必要でない。以下でより詳述する制御器16に類似する制御器526は、シンセサイザ500の構成502に、信号の適切なシーケンスを提供させるために利用可能である。この信号のシーケンスは、好ましくはソース502が提供する信号の範囲内で、平均周波数を有している。制御器526は、入力528で分数の値を受けることが可能である。
【0019】
動作において、周波数ソース12A−Dは、有利なことに、n個の正確な周波数信号の組を提供する。出力18での信号に対する所望の周波数は、このn個の正確な周波数の組の範囲内のどこかに存在している。この所望の周波数は可変であり、このn個の正確な周波数の組の範囲内で任意の周波数に変更可能である。例えば、この所望の周波数は905MHzとすることが可能であり、ソース12A−Dからの周波数は、それぞれ890MHz、900MHz、910MHz、および920MHzとすることが可能である。別の例のとき、この所望の周波数が905MHzであるならば、902MHz、904MHz、906MHz、908MHzのソースの組も、それらの間で適切なディザリングをすることで、905MHzを生じさせる。
【0020】
トーンを互いに近接して配置する利点は、結果として生ずる出力位相ノイズまたはジッタを、相当に低減することである。一実施形態においてこのトーンは、近傍のトーン同士で等しく間隔を空けることが可能である。別実施形態においてこのトーンは、近傍のトーン同士で等しく間隔を空けていない。
【0021】
制御器16は、好ましくは、スイッチ14A−Dの個々のスイッチを時間に関して制御し、その所望の周波数を伴う出力信号が、出力18で提供されるようにする。制御器16は、分数の入力15から、分数の係数を受けることが可能である。この分数係数は、制御器16によって使用され、この所望周波数を獲得するため、スイッチ14A−Dを制御する。制御器16は、有利なことに、制御線14A−Dを介して周波数ソース12A−Dの時間に関する適切な組み合わせを選び、この所望周波数を獲得するようにする。好ましくは、シンセサイザ10は、本質的には可変クロック信号ソースとして動作し、この可変クロック信号ソースは、図3および4で示すような、この所望周波数のあたりでジッタを生じさせる。
【0022】
シンセサイザ10は、携帯電話における使用のための周波数シンセサイザとすることが可能である。シンセサイザ10は、有利なことに、周波数間の非常に高速なスイッチング、およびフィードバックループに関連する不都合なことの回避を可能にする。スイッチ14A−D間のスイッチングのレートは、例えば水晶の周波数の、比較的低いレートとすることが可能である。代わりに、出力18は、図1のように制御器16と結合し、よりいっそう高いスイッチングレートを提供することが可能である。出願人は、制御器16に対するより高速なスイッチングレート、およびこれによるスイッチ14A−Dが、低減されたノイズフロアを生じさせると考えている。周波数分周器は、制御器16が動作するレートを低減させるため、出力18と制御器16との間に配置することが可能である。
【0023】
分数の入力23は、出力18でのこの所望周波数を提供するため、制御器16に適切な分数を提供する。入力23は、入力15(図1)と類似している。この分数は、様々な回路、制御器等によって提供可能である。制御器16は、出力20A、20B、20C、および20Dで適切なシーケンスを生成し、分数入力23が提供する分数(例えば、整数+分数)に関連した周波数を達成する。有利なことに、フィードバックループがないため、シンセサイザ10は非常に高い帯域幅を有することが可能である。
【0024】
シンセサイザ10は、標準的PLL実装におけるようなフィードバックループを使用することのない、開ループシステムとして動作可能である。シンセサイザ10は、好ましくは完全にデジタルな周波数ソースとして動作し、すべてデジタルのCMOSプロセスに集積することが可能である。シンセサイザ10に対して必要になる比較的小さなダイサイズに加えて、この特徴は、デジタルおよびアナログな集積に対して、それを非常に魅力的なものにしている。
【0025】
図2に関して、1つの好適実施形態によると、制御器16は、デルタシグマ変調器または他のディザリング回路として実装している。このデルタシグマ変調器は、その所望の周波数の指示を受け、制御線14A−Dで信号のシーケンスを提供し、この所望周波数の信号に影響を及ぼしている。
【0026】
このデルタシグマ変調器の例示の実施形態は、米国特許4,609,881におけるものである。このデルタシグマ変調器(または任意のディザリング回路)の出力は、そのクロックレートで変化する、数値のシーケンスである。このデルタシグマ変調器(または任意のディザリング回路)の入力は、分数、例えば0.3333である。このデルタシグマ変調器(または任意のディザリング回路)の性質は、このシーケンスの平均が、その入力の分数であることである。なお、その出力は、好ましくは整数の数値である。周波数分周器または逓倍器は、一般的に、整数の分周器または逓倍器としてのみ作成することが可能である。この入力が0.3333である例において、その出力シーケンスは、0,2,−1,1,0,0,−2,3,0等とすることが可能である。なお、このシーケンスの平均は0.3333である。このデルタシグマ変調器の別の性質は、このシーケンスが、非常に長い期間の後にのみ繰り返すということである。このように、我々は擬似ランダムソースを獲得し、この出力でのジッタまたはノイズは、スプリアストーンを有さない(なぜなら、これらスプリアストーンは、そのディザリングシーケンスにおける、任意の周期的な繰返しによって生じるからである)。
【0027】
制御器16は、CMOSプロセスで実装した標準的アーキテクチャを使用して、デルタシグマ変調器として実装可能である。出願人は、シンセサイザ10は有利なことに、従来の分数分周PLL回路(fractional−N PLL circuit)に関連する2つの機能(これら2つの機能とは、トーン生成と、ノイズフィルタリングである)を分離すると考えている。シンセサイザ10に対するこのアーキテクチャは、周波数選択に対してデジタルの実装を使用し、その出力信号のフィルタリングに対してPLLを使用する。これはまた、ジッタ除去回路またはクリーンアップPLLとして見ることも可能である。このクリーンアップPLLは、すべての用途において要求されるわけではない。出願人は、非常に厳しい位相ノイズ要求を伴う用途のみが、このクリーンアップPLLを要求すると考えている。クリーンアップ位相ロックループ34は、図7に関して説明されている。従来のPLLベースシンセサイザに関連する2つの機能のこの分割は、有利なことに、電力要求を低減し、周波数シンセサイザ10に対するデジタル回路の使用を可能にしている。
【0028】
図3に関して、シンセサイザ10は、出力信号202を提供する。出力信号202は、必要ならば特定の用途に対して、出力信号206を提供するよう平均した周波数とすることが可能である。信号202の周波数の平均化は、図7に関して説明するクリーンアップ位相ロックループ348等のクリーンアップ位相ロックループを利用して実行可能である。
【0029】
信号202は、周波数ソース12A−Dを選択することによって生成する。この例において見られるように、信号202は、信号206が8個のパルスを有する同じ時間にわたり、8個のパルスを有している。しかし信号202のパルスは、それらの間で同じ周期を有していない。
【0030】
信号202は、各パルスでスイッチ可能なパルス幅(または、それと等価なパルス周波数)を有している。この実施形態において、信号202の周波数は、パルス毎に変更可能である。あるいはその代わりとして、制御器16は、その出力クロックのn番目のパルスのたびにスイッチ14A−Dを制御することが可能である。
【0031】
図4に関して、信号208は、出力18での信号を表している。信号208はシンセサイザ10において提供され、このシンセサイザ10は、例えば、制御器16が5個のパルスごとにスイッチ14A−Dを選択するようにのみ構成されている。信号210は、位相ロックループ348(図7)を使用して、信号208を平均即ちクリーンアップしたバージョンである。
【0032】
図5に関して、デジタル周波数シンセサイザ300は、デジタル周波数シンセサイザ10と類似しており、類似の利点を達成している。シンセサイザ300は、信号202および208を生成するよう利用可能である。
【0033】
シンセサイザ300は、クロック周波数逓倍器306と、ディザリング回路(例えばデルタシグマ変調器302)と、分数の入力304とを備えている。逓倍器306は、入力で基準信号(CLK)を受ける。この基準信号は、DLL、水晶発振回路等、任意の周波数ソースから提供可能である。また逓倍器306は、ディザリング回路または(例えばデルタシグマ変調器302)から信号を受けるための入力を備えている。ディザリング回路または変調器302は、和回路307を通って、逓倍器306へ信号を提供する。和回路307は、整数入力309から整数を受ける。
【0034】
和回路307は、入力309からの整数を、変調器302からの分数の値へ加算する。この整数は、適当な安定した整数の数値であり、それによって、その出力でその所望の周波数の出力信号が提供される。この実装において、このディザリング回路またはデルタシグマ変調器302は、整数の数値のシーケンスを提供し、このシーケンスの平均は、入力304が提供する分数を表している。このシーケンスにおける各数値は、この整数数値に加算され、この整数数値は、それから入力としてクロック周波数逓倍器306に送り込まれる。
【0035】
逓倍器306は、好ましくは以下の方法で機能する。即ち、その出力周波数は、その入力クロック周波数の倍数である。この倍数は、逓倍器306の第2の入力により決定する。例えば、このクロック周波数が7MHzであり、逓倍の数値が100ならば、この出力周波数は7×100=700MHzである。もしこの数値が、各出力パルスに対して可変とすること(または低いレートではあるが、やはりこの出力パルスに関係すること)を保つならば、シンセサイザ300は、信号202または208を生成可能である。ディザリング/デルタシグマ変調器回路は、図2に関して、上でより詳述している。
【0036】
ディザリング回路またはデルタシグマ変調器302は、逓倍器306からの出力信号によって、または外部クロック信号を介して、クロック可能である。分数の入力304は、デルタシグマ変調器302に対する適切な分数の入力を提供する。
【0037】
図6に関して、周波数シンセサイザ318は、シンセサイザ10に類似しており、類似の利点を達成可能である。シンセサイザ318は、水晶発振回路等の周波数ソース322を備えている。またシンセサイザ318は、周波数逓倍器326と、ディザリング回路またはデルタシグマ変調器320と、分数の入力321と、周波数分周器(またはカウンタ)328とを備えている。またシンセサイザ318は、整数の入力329と、和回路327とを備えることが可能である。分周器328は、その所望の周波数で出力信号を提供する。ディザリング回路(例えばデルタシグマ変調器320)は、和回路327を通って分周器328と結合している。和回路は、変調器320からの分数の出力を、入力329からの整数に加算する。
【0038】
ディザリング回路/デルタシグマ変調器320は分周器328を制御して、分周器328がこの所望の周波数で出力信号を提供するようにする。好ましくは、逓倍器326は整数逓倍器である。例えば、要求された出力周波数が900MHzならば、1つの実装においては、逓倍器326は、好ましくは水晶322からの信号を逓倍して、約9GHzのような非常に高い周波数にする。
【0039】
分周器328は、この信号を分周し、905MHzという所望の周波数に下げる。このことは、この分周器の入力をディザリングする(またはデルタシグマ変調する)ことによって達成し、その出力で、この所望の周波数およびジッタが現れるようにする。この機能性は、シンセサイザ300(上述)と非常に類似しているが、クロック逓倍器が信号202または208を生成するために使用されるのに対し、シンセサイザ318においては、周波数分周器が信号202または208を生成するために使用されるという事実は除く。
【0040】
一実施形態において、逓倍器326は固定の逓倍器であり、分周器328はディザリング回路(例えばデルタシグマ変調器320)が制御する可変の分周器である。変調器320は回路321から信号を受け、分周器328に対する分周を設定する。
【0041】
図7を参照すると、デジタル周波数シンセサイザ352は、クリーンアップシンセサイザまたは位相ロックループ348と結合可能である。このクリーンアップシンセサイザには、シンセサイザ10、300または318において本来的に表れるジッタの除去を要求することができる。シンセサイザ352は、シンセサイザ10、300または318の何れかとして実装可能である。シンセサイザ352は、信号を位相ロックループ348に提供する。位相ロックループ348は、ジッタを除去し、波形202を206へ、または208を210へ変化させるためのクリーンアップ位相ロックループである(図3および4)。
【0042】
位相ロックループ348は、位相検出器/位相周波数検出器またはミキサ360と、電圧制御発振器362と、ループフィルタ361と、整数分周器350とを備えている。分数分周器とは対照的な整数分周器350の使用は、より簡単な実装を提供する。なお、この整数の分周は1の分周にできる。このケースに対しては、その入力および出力の周波数が同じであるために、物理的回路は必要でない。位相ノイズまたはジッタの要求を達成するのが非常に困難である移動通信のためのグローバルシステム(Global System for Mobile Communications)(GSM)のようなシステムに対して、ループ348は非常に有利である可能性がある。他のシステムは、ループ348を必要としないことができる。この機能(フィルタリングと分数信号生成)の分離は、CMOSにおいて集積されるデジタル実装を可能にする。
【0043】
出願人は、シンセサイザ10、300および318のアーキテクチャは、従来のPLLシステムよりも大幅に費用を抑えてそれらを製作することを可能にすると考えている。出願人は、シンセサイザ10、300または318は、従来のPLLより低電力消費であり、完全にデジタルであり、スイッチングノイズに対してより耐性があると考えている。本方法は効果的な開ループであり、ループの安定性を考慮することがほとんどないために、変調は非常に効果的に実行可能である。出願人は、シンセサイザ10は、より良好な位相ノイズまたはジッタ性能を提供すると考えている。出願人は、シンセサイザ300および318は、低減された電力消費での、より簡単な実装を提供すると考えている。
【0044】
詳細な図面、特定の例、およびあるコンポーネントの所与の値は、本発明の好適な例示実施形態を説明しているが、それらは例示の目的のみのものであることは理解されよう。本発明の装置および方法は、開示した正確な詳細および状況に限定されない。さらに、特定のタイプの周波数ソースを説明したが、様々な他のコンポーネントをこのデジタル周波数シンセサイザに対して利用可能である。好適な実施形態の設計、動作状況、および配置に関しては、特許請求の範囲で明示した本発明の精神から逸脱することなしに、他の代用、修正、変更、および省略をなすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】例示の実施形態に従う、デジタル周波数シンセサイザの電気的な概略ブロック図である。
【図2】例示の実施形態に従う、図1において示されている制御器のより詳細なブロック図である。
【図3】例示の実施形態に従う、図1において示されているシンセサイザに関連する2つの波形の波形図である。
【図4】また別の例示実施形態に従う、図1において示されているシンセサイザに関連する2つの波形の波形図である。
【図5】また別の例示実施形態に従う、デジタル周波数シンセサイザの電気的な概略ブロック図である。
【図6】さらに別の例示実施形態に従う、周波数シンセサイザの電気的な概略ブロック図である。
【図7】さらにまた別の例示実施形態に従う、図1、4、または5のいずれかにおいて示されている周波数シンセサイザ、およびこの周波数シンセサイザによって提供される出力信号をクリーンにするためのPLL回路の電気的な概略ブロック図である。
【図8】例示の実施形態に従う、デジタル周波数シンセサイザの電気的な概略ブロック図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のデジタル周波数信号を提供するための少なくとも1つのソースであって、前記信号には別個の周波数が提供される前記ソースと、
前記デジタル周波数信号を受けるよう結合した複数のスイッチと、
前記スイッチと結合した制御回路であって、前記デジタル周波数信号を選択し、第1の周波数に平均周波数を有する出力信号を提供するよう前記スイッチを制御し、前記平均周波数は前記別個の周波数の範囲内である、前記制御回路と、
を備えた、デジタル周波数シンセサイザ。
【請求項2】
前記制御回路は、デルタシグマ変調器を備えた、請求項1に記載のデジタル周波数シンセサイザ。
【請求項3】
前記デルタシグマ変調器は、クロック入力を備えた、請求項2に記載のデジタル周波数シンセサイザ。
【請求項4】
前記クロック入力は、前記出力信号と結合した、請求項3に記載のデジタル周波数シンセサイザ。
【請求項5】
前記クロック入力は、クロック信号を受けるよう結合し、前記クロック信号は前記出力信号と異なる信号である、請求項3に記載のデジタル周波数シンセサイザ。
【請求項6】
前記デジタル周波数信号は、少なくとも1つのデジタル遅延ロックループが提供する、請求項1に記載のデジタル周波数シンセサイザ。
【請求項7】
前記デジタル周波数シンセサイザは、CMOS、バイ−CMOS、シリコンゲルマニウム、ガリウム砒素のデバイス上に完全に集積する、請求項1に記載のデジタル周波数シンセサイザ。
【請求項8】
前記デジタル周波数シンセサイザは、プログラム可能ゲートアレイ上に完全に実装する、請求項1に記載のデジタル周波数シンセサイザ。
【請求項9】
前記出力信号を受けるよう結合した位相ロックループをさらに備えた、請求項1に記載のデジタル周波数シンセサイザ。
【請求項10】
前記位相ロックループは整数分周器を備え、前記位相ルックループは、前記出力信号の、よりクリーンなバージョンを提供する、請求項9に記載のデジタル周波数シンセサイザ。
【請求項11】
前記スイッチと結合した複数のデジタル周波数ソースをさらに備え、前記複数のデジタル周波数ソースは、前記デジタル周波数信号を個々に提供する、請求項1に記載のデジタル周波数シンセサイザ。
【請求項12】
前記デジタル周波数信号間のトーン間隔は、固定量である、請求項1に記載のデジタル周波数シンセサイザ。
【請求項13】
前記デジタル周波数信号間のトーン間隔は、非固定量である、請求項1に記載のデジタル周波数シンセサイザ。
【請求項14】
前記制御回路は、ディザリング回路を備えた、請求項1に記載のデジタル周波数シンセサイザ。
【請求項15】
デジタル周波数シンセサイザであって、1.少なくとも1つのデジタル周波数ソース、スイッチ、および前記スイッチを制御するディザリング制御回路、2.周波数逓倍器、および前記逓倍器と結合し、整数と分数の和に関係した周波数で出力信号を提供するディザリング回路、3.別個の周波数で周波数信号のシーケンスを提供可能な単一のデジタル周波数ソース、または4.周波数逓倍器、および可変周波数分周器、のうち、少なくとも1つを利用し、周波数信号を提供する前記デジタル周波数シンセサイザと、
前記周波数信号を受け、クリーンアップした周波数信号を提供するよう結合した位相ロックループ・クリーンアップ回路と
を備えた、信号ソース。
【請求項16】
広帯域変調を達成する、請求項15に記載のデジタル周波数シンセサイザ。
【請求項17】
複数のデジタル周波数信号を提供するための少なくとも1つのデジタル周波数ソースであって、前記デジタル周波数信号は別個の周波数で提供される前記デジタル周波数ソースと、
前記デジタル周波数ソースを制御し、第1の周波数に平均周波数を有する出力信号を提供する制御回路であって、前記平均周波数は前記別個の周波数の範囲内である前記制御回路と、
を備えた、デジタル周波数シンセサイザ。
【請求項18】
クロック入力と、第2の入力と、逓倍器出力とを有する周波数逓倍器であって、前記逓倍器は、前記クロック入力でクロック信号を受け、前記逓倍器出力で整数と分数の和に従って周波数信号を提供する前記周波数逓倍器と、
ディザリング入力とディザリング出力とを有するディザリング回路であって、前記ディザリング出力は前記第2の入力と結合した前記ディザリング回路と、
前記ディザリング入力と結合した分数の入力であって、前記分数入力は前記分数を表す信号を提供し、前記ディザリング回路は、前記ディザリング出力で前記分数に対応した第2の信号を提供し、前記逓倍器は、前記整数と前記分数の和に関連した所望の周波数で前記周波数信号を提供する前記分数入力と、
を備えた、デジタル周波数シンセサイザ。
【請求項19】
クリーンアップ位相ロックループをさらに備えた、請求項18に記載のデジタル周波数シンセサイザ。
【請求項20】
前記シンセサイザは、無線通信デバイスにおいて利用する、請求項18に記載のデジタル周波数シンセサイザ。
【請求項21】
第1の周波数で第1の信号を提供するための周波数ソースと、
前記第1信号を受け、第2の周波数で第2の信号を提供するための周波数逓倍器であって、前記第2周波数は前記第1周波数の固定の倍数である前記周波数逓倍器と、
前記第2信号を受け、平均の第3周波数を有する第3の信号を提供するための可変周波数分周器であって、前記平均第3周波数は前記第2周波数より低い前記可変周波数分周器と、
ディザリング回路であって、前記分周器は前記ディザリング回路によって制御され、それにより前記第3周波数が前記ディザリング回路からのディザリングシーケンスの平均であるようにする前記ディザリング回路と
を備えた、デジタル周波数シンセサイザ。
【請求項22】
前記第3信号をクリーンにするために、前記第3信号を受けるよう結合したクリーン位相ロックループをさらに備えた、請求項21に記載のデジタル周波数シンセサイザ回路。
【請求項23】
前記ディザリング回路はデルタシグマ変調器である、請求項21に記載のデジタル周波数シンセサイザ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2009−522875(P2009−522875A)
【公表日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−548694(P2008−548694)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【国際出願番号】PCT/US2006/049330
【国際公開番号】WO2007/079098
【国際公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(508192614)
【Fターム(参考)】