説明

高離型性積層フィルム

【課題】
離型性、印刷性、廃棄時の環境負荷に優れ、更には成形時の被着体、被転写体となるフィルムへの追従性等の成形性にも優れた離型性積層フィルムを提供する。
【解決手段】
ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、ポリオレフィン系樹脂層を有する積層フィルムであって、
該ポリオレフィン系樹脂層は、メチルペンテン単位を有するポリオレフィン系樹脂を含み、
100℃で100%延伸時のヘイズ変化が0〜10%であることを特徴とする積層フィルムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、ポリオレフィン系樹脂層を有する積層フィルムであって、該ポリオレフィン系樹脂層は、メチルペンテン単位を有するポリオレフィン系樹脂を含む積層フィルムに関するものであり、さらに詳細には、離型性、成形性に優れた積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
離型性を有するフィルムは、各種表面保護フィルム、および転写箔などで幅広く用いられている。表面保護フィルムとは、主として建材用や光学用途用の樹脂部品、金属製品、ガラス製品等の被着体へ貼付して使用し、これらの輸送、保管や加工時の傷付きまたは異物混入を防ぐ役割を果たしている。これらの表面保護フィルムは、保護フィルムとして使用している間は被着体との適度な密着性が、製品使用時には保護フィルムを容易に取り外せるような適度な離型性が求められており、被着体が立体的な形状を持つ成形体等の保護の場合は、密着性、離型性に加えて表面保護フィルムの成形性が求められる。
【0003】
また、転写箔とは、基材であるフィルムの片面(転写面)に、順次、易接着層、離型層、クリア層、印刷層および接着層などを積層して構成されているものであり、これら転写箔の転写方法としては、転写装置を用いて加熱ロールで被転写物に転写する、いわゆるホットスタンピング方法や、射出成形機やブロー成形機の金型に接着層が成形樹脂と接するように転写材をセッティングした後、成形樹脂を射出またはブローし、成形と同時に転写し、冷却後金型より成形品を取り出すインモールド成形に代表される、いわゆる成形同時転写方法などが一般的に知られている。インモールド成形法は成形と転写を同時に行えるため、複雑な絵柄の付与に非常に有用であり、家庭用電化製品、自動車部材、台所用品、化粧容器、玩具類および文具類などに使用されるプラスチック成形品で広く使用されている。
【0004】
このように、フィルムへの離型性を与え、各種表面保護フィルム、および転写箔などに使用するための方法としては、離型性を有する樹脂をフィルム化し、基材となるフィルムと押出ラミネートする方法、離型剤を溶媒に溶解させて基材となるフィルムにコーティングさせ、乾燥させることにより離型層を形成する方法などが挙げられる。このうち、押出ラミネートでは、基材上に薄膜を形成するのが難しく、コストダウンの効果が低い。また、基材との密着性にも課題があった。
【0005】
コーティングによる積層は、離型層の薄膜化という点では効果的な処方であり、様々な方法が提案されている。溶剤系のコーティング剤を用いる方法としては、例えば、ビニル基含有ポリジメチルシロキサンを積層する方法(特許文献1)、フッ素化合物を積層する方法(特許文献2)、シリコーン樹脂を積層する方法(特許文献3)や、特殊な組成のポリオレフィン系樹脂を積層する方法(特許文献4)、アクリル系樹脂を積層する方法(特許文献5)が開示されている。一方、ポリメチルペンテン系樹脂を積層した方法として、特許文献6ではポリメチルペンテン樹脂の溶媒への溶解性向上が提案されており、特許文献7では基材への密着性向上が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−182037号公報
【特許文献2】特開2007−002066号公報
【特許文献3】特開2005−125656号公報
【特許文献4】特開2009−101680号公報
【特許文献5】国際公開WO2007−055225号パンフレット
【特許文献6】特開2006−131723号公報
【特許文献7】特開2006−130796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の樹脂層は、積層、硬化のために高温での処理を必要とする課題があり、耐熱性の高くない被着体、被転写体、およびフィルムに対しては表面保護フィルム、および転写箔としての適用が難しい問題があった。
【0008】
また、特許文献2に記載の樹脂は、高価なうえ、使用後の廃棄焼却処理において燃焼しにくく、かつ、有毒ガスを発生するという問題があった。特許文献3に記載の樹脂層は、基材との密着性に乏しく、しかも離型性等が不十分であるという課題があった。特許文献4では、絞り比の大きい部材や形状の複雑な部材への転写に対しては追従性が不十分という問題があった。特許文献5では、離型層の耐溶剤性が不十分であるため、クリア層、もしくは印刷層に含まれる溶剤の種類によっては離型層の平面性が悪化し、印刷欠点が発生しやすい場合があった。
【0009】
また特許文献6、7では、ポリメチルペンテン樹脂を被着体、被転写体に追従させるために高温での成形が必要であり、被着体、被転写体、およびフィルムが耐えられる温度では、絞り比の大きい部材や形状の複雑な部材への追従性は不十分であった。
【0010】
本発明は、これらの問題を鑑み、離型性、印刷性、廃棄時の環境負荷に優れ、更には成形時の基材への追従性等の成形性にも優れた離型層を有する積層フィルムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。1) ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、ポリオレフィン系樹脂層を有する積層フィルムであって、
該ポリオレフィン系樹脂層は、メチルペンテン単位を有するポリオレフィン系樹脂を含み、
100℃で100%伸長時のヘイズ変化が0〜10%であることを特徴とする積層フィルム。
2) 前記ポリオレフィン系樹脂層のビカット軟化温度が30〜175℃であることを特徴とする、前記1)に記載の積層フィルム。
3) 前記ポリオレフィン系樹脂層の厚みが、0.1〜50μmであることを特徴とする、前記1)又は2)に記載の積層フィルム。
4) 100℃での破断伸度が150%以上であり、100℃で100%伸長時の応力が0.5〜60MPaの範囲である前記1)から3)のいずれかに記載の積層フィルム。
5) 前記ポリエステルフィルムが、高結晶性ポリエステル層と他のポリエステル層の少なくとも2層からなる積層ポリエステルフィルムであり、
高結晶性ポリエステル層は、結晶性パラメータΔTcgが35℃以下であり、
ポリオレフィン系樹脂層、高結晶性ポリエステル層、他のポリエステル層がこの順に積層されることを特徴とする、前記1)〜4)のいずれかに記載の積層フィルム。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、離型性、印刷性、廃棄時の環境負荷に優れ、更には成形時に被着体、被転写体への追従性等の成形性にも優れた積層フィルムを得ることができる。より具体的には、離型性については、被転写体との離型性に優れるため離型工程での剥離痕が発生しにくい。印刷性については、印刷インクに含有される溶剤、特に酢酸エチル、メチルエチルケトンなどに対しての耐溶剤性に優れるため、各種印刷インクを用いることができる。また、離型層として一般的に用いられるポリ塩化ビニル系樹脂はハロゲン元素を含むので廃棄時の環境負荷が大きいが、本発明の積層フィルムの離型層であるポリオレフィン系樹脂層は、ハロゲン元素を使用しなくてもポリ塩化ビニル樹脂と同様の離型性を有するため、環境負荷が少ない利点がある。本発明の積層フィルムは、深絞り性および被転写体の表面形状への追従性などの成形性に優れるため、印刷および成形して用いるインモールド転写箔、さらに自動車内外装部品、浴室パネル、家電製品用部品、包装容器などの印刷の転写加工を行うための転写箔として好適に用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、前記課題、つまり離型性、印刷性、廃棄時の環境負荷に優れ、更には成形時に被着体、被転写体となるフィルムへの追従性にも優れた離型層を有するフィルムについて鋭意検討し、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、ポリオレフィン系樹脂層を有する積層フィルムであって、該ポリオレフィン系樹脂層は、メチルペンテン単位を有するポリオレフィン系樹脂を含み、100℃で100%伸長時のヘイズ変化が0〜10%である積層フィルムとすることで、かかる課題を一挙に解決することを究明したものである。
以下、本発明の積層フィルムについて具体的に説明する。
(ポリエステル)
本発明で用いられるポリエステルフィルムのポリエステルは、ジカルボン酸成分とグリコール成分とで基本的に構成されるポリマーからなる。
【0014】
かかるジカルボン酸成分としては、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、ジフェニル−4,4’−ジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ナフタレン−1,5−ジカルボン酸、ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸、マロン酸、1,1−ジメチルマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバチン酸、デカメチレンジカルボン酸などを用いることができる。
【0015】
また、グリコール成分としては、例えば、エチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−プロパンジオール、スピログリコールなどの脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族グリコール、ビスフェノール−A、ビスフェノール−Sなどの芳香族グリコールといったようなグリコール成分やポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、エチレングリコール−プロピレングリコール共重合体等を用いることができる。
【0016】
本発明で用いられるポリエステルフィルムのポリエステルは、具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレンテレフタレート(PPT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリヘキサメチレンテレフタレート(PHT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリプロピレンナフタレート(PPN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート(PCT)、ポリヒドロキシベンゾエート(PHB)等が挙げられる。これらのポリエステルは、2種類以上を併用することもできる。
(ポリエステルフィルム)
本発明の積層フィルムに用いられるポリエステルフィルムは、少なくとも片面にメチルペンテン単位を有するポリオレフィン系樹脂を含むポリオレフィン系樹脂層(以下、メチルペンテン単位を有するポリオレフィン系樹脂を含むポリオレフィン系樹脂層を、単にメチルペンテン単位を有するポリオレフィン系樹脂層という)を積層することとなる。そしてポリエステルフィルム上への該ポリオレフィン系樹脂層の積層方法としては特に限定されないが、メチルペンテン単位を有するポリオレフィン系樹脂を有機溶媒に溶解させ、該溶液をポリエステルフィルムの片面または両面にコート後溶媒を乾燥させる方法が好ましく用いられる。この方法によりメチルペンテン単位を有するポリオレフィン系樹脂層を積層する場合、ポリエステルフィルムは有機溶媒との接触によりフィルム表面の平面性が悪化し、結果積層フィルム上に印刷した場合に印刷欠点が生じる場合がある。そのため、本発明の積層フィルムに用いられるポリエステルフィルムは、少なくともメチルペンテン単位を有するポリオレフィン系樹脂層との接触面が、耐薬品性を有することが好ましい。
【0017】
ポリエステルフィルムに耐薬品性を付与する方法としては、二軸延伸による方法、無延伸ポリエステルフィルムの表層に高結晶性のポリエステルを積層させた積層ポリエステルフィルムをポリエステルフィルムとして使用する方法などがあり、いずれの方法を用いても構わない。しかし、本発明の積層フィルムを、深絞り、もしくは複雑な表面形状の被転写体へ転写させる場合は、高い成形性が転写箔用途のフィルムに求められることから、本発明の積層フィルムに使用するポリエステルフィルムとしては、無延伸などの結晶性の低いポリエステル層上に高結晶性ポリエステル層を積層した積層ポリエステルフィルムをポリエステルフィルムとして用いること、すなわち、本発明の積層フィルムとしては、他のポリエステル層(高結晶性ポリエステル層以外のポリエステル層)/高結晶性ポリエステル層/メチルペンテン単位を有するポリオレフィン系樹脂層、の順に連続して積層することが好ましい。
【0018】
ここで、高結晶性ポリエステル層とは、層を削り取った粉末を示差走査熱量測定(DSC)した際に、昇温過程で見られる冷結晶化温度(Tc)とガラス転移温度(Tg)との差である結晶性パラメータΔTcgが35℃以下である層を指す。なお、一般にΔTcgの値が小さいほど結晶化しやすい。積層ポリエステルフィルムの耐薬品性をさらに高めるという観点から、積層ポリエステルフィルムの高結晶性ポリエステル層のΔTcgは、25℃以下がさらに好ましく、20℃以下が特に好ましい。また、ΔTcgの下限としては、製膜性の観点から7℃以上が好ましく、10℃以上がより好ましい。
【0019】
温度や湿度等による各層の伸縮応力の違いに起因するフィルムのカール現象の抑制やフィルムの取扱性の点から、本発明で用いられるポリエステルフィルムは、高結晶性ポリエステル層と他のポリエステル層の少なくとも2層からなる積層ポリエステルフィルムであることが好ましい。より具体的には、高結晶性ポリエステル層を層A、高結晶性ポリエステル層以外の他のポリエステル層を層Bとしたとき、層Bの両面に層Aが積層された、層A/層B/層Aのフィルム構成であることが特に好ましい。ここで、層A/層B/層Aとは、各層がこの順で積層された、2種3層からなるフィルム構成である。しかし、層Bの片面のみに層Aが積層された層A/層Bや、さらに他のポリエステル層が積層された層A/層B/層A/層B等のフィルム構成であってもよい。なお、他のポリエステル層とは、結晶性パラメータΔTcgの差が35℃より大きいポリエステル層を指す。
【0020】
本発明で用いられる積層ポリエステルフィルムは、高結晶性ポリエステル層(層A)の結晶化指数Xsと他のポリエステル層(層B)の結晶化指数Xcとが、20≧Xs−Xc≧4(%)の範囲にあるという関係にあることが好ましく、さらに好ましくは18≧Xs−Xc≧6(%)、特に好ましくは16≧Xs−Xc≧8(%)である。Xs−Xcの値が、上記範囲を外れると、印刷性が悪くなりやすいので好ましくない。
【0021】
本発明において、積層した各々の層の結晶化指数(XsやXc)は、示差走査熱量測定(DSC)で得られたデータから、[式1]によって算出することができる。積層フィルムにおいて各層の結晶化指数を算出する場合は、測定したい層以外の層を鑢やカッターナイフで除去してから分析することで結晶化指数を算出することができる。つまり、高結晶性ポリエステル層の結晶化指数Xsの算出について、対象となる高結晶性ポリエステル層が離型層等によって被覆され、表面に露出していない場合は、対象となる高結晶性ポリエステル層が表面に露出するまで、鑢やカッターナイフで離型層等を除去し、露出した高結晶性ポリエステル層を鑢やカッターナイフ等で削り採り、得られたサンプルを分析することで結晶化指数Xsを算出することができる。他のポリエステル層についても同様である。
結晶化指数:X(%)=(Sm−Sc)/Sm×100・・・[式1]
ここで、Xは結晶化指数、Scは結晶化時の発熱量、Smは融解時の吸熱量を指す。
(高結晶性ポリエステル層)
本発明で用いられる積層ポリエステルフィルムの高結晶性ポリエステル層の組成は、PPT、PBT、PPNおよびPBNから選ばれる少なくとも1つのポリエステルを、高結晶性ポリエステル層の全成分100質量%中に50〜100質量%含有することが好ましい。これらのポリエステルは、70〜100質量%含有されることがより好ましく、90〜100質量%含有されることが特に好ましい。これらのポリエステルが50質量%未満であると、層の結晶性パラメータΔTcgを35℃以下に設計することが困難であり、高結晶性ポリエステル層とすることができないために、満足する印刷性や転写性を得る為に必要な結晶化指数を達成することが難しい。
【0022】
高結晶性ポリエステル層に含まれるポリエステルとしては、結晶性が高いことから、PBTが最も好ましい。なお、高結晶性ポリエステル層には、その他の成分を0〜50質量%含有しても良い。その他の成分としては、上記の特定のポリエステル以外のポリエステルが好ましく、PETがより好ましい。ここでいうPETとしては、共重合PET、例えば、イソフタル酸を5〜30モル%程度共重合した共重合PETも含む。
(他のポリエステル層)
他のポリエステル層は、結晶性パラメータΔTcgが35℃より大きいポリエステル層を指す。
【0023】
他のポリエステル層に含まれるポリエステルは、そのポリエステルの全ジカルボン酸成分100モル%中でナフタレンジカルボン酸成分および/またはテレフタル酸成分を90モル%以上100モル%以下含有することが好ましい。
【0024】
また、他のポリエステル層に含まれるポリエステルは、そのポリエステルの全グリコール成分100モル%中でエチレングリコール成分を20〜99.9モル%含むことが好ましく、より好ましくは50〜99.9モル%、さらに好ましくは20〜99.9モル%である。さらに他のポリエステル層に含まれるポリエステルの全グリコール成分100モル%中には、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、及びスピログリコールからなる群より選ばれる少なくとも1つのジオールを0.1〜80モル%の範囲含有することが好ましく、より好ましくは0.1〜50モル%、さらに好ましくは0.1〜40モル%である。他のポリエステル層に含まれるポリエステルの全グリコール成分100モル%中のエチレングリコール成分の割合が、20〜99.9モル%の範囲から外れたり、該ポリエステルの全グリコール成分100モル%中の1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、及びスピログリコールからなる群より選ばれる少なくとも1つのジオール成分の割合が0.1〜80モル%の範囲から外れると、耐熱性、生産性、および成形性が低下しやすくなるので好ましくない。
【0025】
このような組成を有する他のポリエステル層に好適なポリエステルとしては、具体的には、PET、1,4−シクロヘキサンジメタノール共重合PET(PETG)、スピログリコール共重合PET、PEN、PPT、PBT、PPN、およびPBNからなる群より選ばれたポリエステルの混合物、あるいは、共重合体が好ましく挙げられる。これらのポリエステルの混合物、あるいは共重合体を用いる場合は、コスト面、および成形性の観点から、PET、1,4−シクロヘキサンジメタノール共重合PET(以下PETGという)、及びスピログリコール共重合PETなどのPET成分に、PEN、PPT、PBT、PPN、もしくはPBNを混合、あるいは共重合させるのが好ましい。
【0026】
特定の組成のポリエステルは、例えば、2種類以上のポリマーペレットを配合して押出機に供給し、押出機内で混練して任意の成分構成のポリエステルを得る方法(ドライブレンド法)、2種類以上のモノマーを用いて重合することによって任意の成分のポリエステルを得る方法(共重合法)、ドライブレンド法と共重合法を組み合わせた方法といったような公知の方法によって得ることができる。ポリマーの製造コスト、生産性および耐熱性の観点より、ドライブレンド法を用いることが好ましい。
(製造時の反応触媒、着色防止剤)
本発明の積層フィルムで用いられるポリエステルフィルムの原料となるポリエステルを製造する際には、従来から用いられている反応触媒および着色防止剤を使用することができる。反応触媒としては、例えばアルカリ土類金属化合物、亜鉛化合物、鉛化合物、マンガン化合物、コバルト化合物、アルミニウム化合物、アンチモン化合物、チタン化合物等を用いることができる。着色防止剤としては、例えばリン化合物等を用いることができる。好ましくは、ポリエステルの製造が完結する以前の任意の段階において、反応触媒としてアンチモン化合物、ゲルマニウム化合物またはチタン化合物を添加することが好ましい。反応触媒を添加する方法としては、例えば、反応触媒の粉体をそのまま添加する方法や、ポリエステルの出発原料であるグリコ−ル成分中に反応触媒を溶解させて添加する方法等を用いることができる。
【0027】
また、前記アンチモン化合物としては、特に限定されないが、例えば、三酸化アンチモンなどのアンチモン酸化物、酢酸アンチモンなどを用いることができる。
また、前記チタン化合物としては、特に限定されないが、テトラエチルチタネート、テトラブチルチタネートなどのアルキルチタネート化合物、またチタンと珪素、ジルコニウムおよびアルミニウムから選ばれる元素との複合酸化物などが好ましく使用できる。
【0028】
本発明の積層フィルムで用いられるポリエステルフィルムが2種類以上のポリエステルを混合して用いる場合には、M/P≦1を満足することが好ましい。ここで、式中のMはポリエステル中に残存する触媒金属元素の濃度(ミリモル%)、Pはポリエステル中に残存するリン元素の濃度(ミリモル%)を示す。またこれらのMおよびPは、ポリエステルの繰り返し単位1ユニット(モル)に対する濃度として表しているものである。さらに好ましくはM/Pが0.0001以上1未満、特に好ましくは0.001以上0.8以下であるのがよい。また、本発明の積層フィルムで用いられるポリエステルフィルムが少なくとも2層以上の積層構造を有する場合(積層ポリエステルフィルムの場合)は、各層について上記条件を満たすことが好ましい。
【0029】
M/P≦1に制御することにより、2種類以上のポリエステルがエステル交換することを抑制することができ、ポリエステルの熱安定性が増し、溶融押出等の熱処理による融点の低下を抑えることが可能である。この結果、ポリエステルの耐熱性、耐溶剤性および印刷性を向上させることができ、さらに品質ばらつきを低減することができる。
【0030】
ポリエステル中のリン元素を上記範囲に制御するための方法としては、ポリエステルへのリン化合物の添加が挙げられる。ポリエステルに添加するリン化合物としては、特に限定されないが、リン酸、亜リン酸、リン酸エステルなどが好ましい。かかるリン化合物の中でも、フィルムの製造中のブリードアウトを抑制する点から、好ましくは分子量300以上、さらに好ましくは400以上のリン化合物が用いられる。分子量300以上のリン化合物としては、たとえばステアリルリン酸、トリフェニルホスフェート、トリクレジルフォスフェート、トリキシレニルフォスフェート、クレジルジフェニルフォスフェートなどが挙げられる。ブリードアウト抑制の点から特にステアリルリン酸が好ましく用いられる。かかるリン化合物の含有量(添加量)は、熱安定性、色調などの点からリン化合物をリン元素量として、ポリエステルの繰り返し単位1ユニット(モル)に対して20〜1000ミリモル%であることが好ましく、より好ましくは90〜900ミリモル%、特に好ましくは120〜800ミリモル%である。
【0031】
かかるリン化合物の添加方法としては、重合時に添加する方法、押出機にポリマーと共に供給して添加する方法のいずれでも構わない。一般に重合時に多量のリン化合物を添加すると重合反応を阻害することから、ポリエステルと共に押出機に供給する方法が好ましい。
(ポリエステルの粘度)
本発明の積層フィルムに用いられるポリエステルフィルム中のポリエステルの固有粘度は、それぞれ0.6〜1.3dl/gの範囲にあるものを使用することが好ましい。さらに好ましくは0.65〜1.2dl/g、特に好ましくは0.7〜1.1dl/gの範囲である。固有粘度が0.6dl/g未満であると、積層フィルム中のポリエステルフィルムの成形性が低下する場合がある。また、固有粘度が1.3dl/gを越えると、生産性が低下したり、ポリエステルフィルムの厚み斑が顕著となり、結果として積層フィルムにも厚み斑が生じやすい。また、本発明の積層フィルムで用いられるポリエステルフィルムが少なくとも2層の積層構造を有する積層ポリエステルフィルムの場合は、各層で使用されるポリエステルについて上記条件を満たすことが好ましい。
【0032】
また、本発明の積層フィルムに用いられるポリエステルフィルムが、高結晶性ポリエステル層、および他のポリエステル層の少なくとも2層を有する積層ポリエステルフィルム構造をとる場合、各層のポリエステルの固有粘度の差は、好ましくは0.4dl/g未満の範囲、より好ましくは0.2dl/g未満の範囲、特に好ましくは0.1dl/g未満の範囲であることが好ましい。固有粘度の差が上記の範囲にあることにより、幅方向のポリエステルフィルムの各層の厚みの斑が生じにくくなり、生産性が向上する。
(ポリエステルフィルムのDSC結晶融解ピーク)
本発明の積層フィルムで用いられるポリエステルフィルムは、示差走査型熱量測定(窒素雰囲気下、昇温速度20℃/分)で得られるDSC曲線が実質的に単一の結晶融解ピークを示すものであることが好ましい。DSCの結晶融解ピークを二つ以上有する場合には、分子構造が均一となっていないため、成形性が悪い場合がある。ここで、一つの吸熱曲線に部分的に重なる融解熱量が2J/g以上のショルダーピーク(ピークの極小点)についても独立した結晶融解曲線のピークとする。
【0033】
また、本発明の積層フィルムで用いられるポリエステルフィルムが少なくとも2層以上の積層構造を有する積層ポリエステルフィルムの場合は、各層について上記条件(示差走査型熱量測定(窒素雰囲気下、昇温速度20℃/分)で得られるDSC曲線が実質的に単一の結晶融解ピークを示す)を満たすことが好ましい。各層の結晶融解ピークを確認するための方法としては、フィルムの表層、内層をそれぞれ削り取った粉末を示差走査熱量測定(DSC)にかける方法が挙げられる。
(ポリエステルフィルムの厚み)
本発明の積層フィルムで用いられるポリエステルフィルムの厚みは、好ましくは10〜600μmの範囲であり、より好ましくは20〜400μm、特に好ましくは40〜300μmである。ポリエステルフィルムの厚みが10μmより薄いと、フィルムの剛性、生産安定性および平面性が低下し、さらには成形時にしわなどが入りやすくなり好ましくない。また、ポリエステルフィルムの厚みが600μmを超えると、取扱性や成形性の悪化を引き起こす場合がある。
【0034】
本発明の積層フィルムに用いられるポリエステルフィルムが、高結晶性ポリエステル層、および他のポリエステル層の少なくとも2層を有する積層ポリエステルフィルムの場合、印刷性、転写性および成形性の全てを良好にする観点から、高結晶性ポリエステル層の1層単位の厚みが、ポリエステルフィルムの全厚み100%に対して0.1%〜30%の範囲かつ2μm〜120μmであることが好ましく、ポリエステルフィルムの全厚み100%に対して0.2%〜20%の範囲かつ4μm〜80μmであることがさらに好ましい。高結晶性ポリエステル層の厚みが薄すぎると、耐薬品性、耐熱性が不十分となり、印刷性や転写性が低下する場合がある。一方、高結晶性ポリエステル層の厚みが厚すぎると、成形性が不十分な場合がある。また、他のポリエステル層は、1層単位の厚みがポリエステルフィルムの全厚み100%に対して70〜99.9%かつ10μm〜500μmであることが好ましく、80〜99.8%かつ20μm〜400μmであることがさらに好ましい。他のポリエステル層の厚みが薄すぎると、成形性が不十分な場合があり、他のポリエステル層の厚みが厚すぎると、耐熱性が低下し、印刷性や転写性が不十分な場合がある。
(表面処理)
本発明の積層フィルムに用いられるポリエステルフィルムは、コロナ放電処理などの表面処理を施すことにより、必要に応じてメチルペンテン単位を有するポリオレフィン系樹脂の液状物の塗工性を向上させることが可能である。また、必要に応じてエンボス加工などの成形加工、印刷などを施して使用することもできる。
(ポリエステルフィルムの製造方法)
本発明の積層フィルムに用いられるポリエステルフィルムとして積層ポリエステルフィルムを使用する場合には、共押出法、押出ラミネーション法、押出コーティング法、融着法、および、これらを組み合わせた方法などの公知の方法によって製造することができる。フィルムの取扱性、生産性、製造コストなどの面で共押出法が好ましく用いられる。
【0035】
共押出法は、それぞれの層を構成するポリエステルをそれぞれ複数の押出機から一つのダイに供給し、同時に押出して積層フィルムを製造する方法であり、Tダイ法とインフレーション法がある。ポリエステルフィルムは、Tダイ法およびインフレーション法のいずれによっても製造できるが、生産性の面から、Tダイ法が好ましく用いられる。
【0036】
Tダイ法としては、シングルマニホールドダイを用いるラミナーフロー方式、マルチマニホールドダイを用いるダイ内積層方式、デュアルスロットダイを用いるダイ外積層方式などが代表的な方法である。本発明の積層フィルムに用いられるポリエステルフィルムは、いずれの方式によっても製造できるが、幅方向への積層厚みのムラが小さく、生産性が良い点より、ラミナーフロー方式およびダイ内積層方式を好ましく用いることができる。また、高結晶性ポリエステル層と高結晶性でないポリエステル層のポリエステルを積層させる場合に各層の粘度差が大きいときは、ダイ内積層方式を特に好ましく用いることができる。
【0037】
Tダイ法によって製造する場合、ダイスから共押出した多層シートをキャストドラムに引き取ることにより、本発明の積層フィルムに用いられるポリエステルフィルムを製造することができる。キャストドラムの温度は、ダイから押出された溶融シートがキャストドラムに粘着しない温度範囲の上限付近の温度に設定することが特に好ましい。キャストドラムの温度をこのような範囲にすることにより、高結晶性ポリエステル層におけるポリエステルの結晶化を進行させることができる。
【0038】
キャストドラムの温度が低すぎると、高結晶性ポリエステル層のポリエステルの結晶化が進行しにくく、印刷性および転写性が悪くなる場合がある。一方、キャストドラムの温度が高すぎると、フィルムがキャストドラムへ粘着しやすくなり、生産性が悪くなる場合があり、また、ポリエステル層のポリエステルが結晶化して成形時の応力が高くなり、成形性が低下する場合がある。
【0039】
キャスティングドラムの温度設定について、例えば特開2000−103000号公報の17〜19段落に記載されているようなキャスト方式も好ましい。つまり、溶融フィルムがキャストドラムに接する際のキャストドラムの表面温度が高結晶性ポリエステル層のポリエステルのTg以上に設定されていて、キャストドラムから剥離される直前のキャストドラムの表面温度が高結晶性ポリエステル層のポリエステルのTg未満に設定されているようなキャスト方式によって、本発明の積層フィルムを製造し、表層をさらに特異的に結晶化させる方法も好ましく用いることもできる。
【0040】
キャスト後の無延伸フィルムが高結晶性ポリエステルからなる場合は、二軸延伸を行って耐薬品性を向上させることができる。延伸方式としては、同時二軸、逐次二軸延伸いずれでもよいが、該未延伸シートをフィルムの長手方向及び幅方向に延伸、熱処理し、目的とする面配向度のフィルムを得る。好ましくはフィルムの品質の点でテンター方式によるものが好ましく、長手方向に延伸した後、幅方向に延伸する逐次二軸延伸方式、長手方向、幅方向をほぼ同時に延伸していく同時二軸延伸方式が望ましい。延伸倍率としてはそれぞれの方向に1.5〜4.0倍、好ましくは1.8〜4.0倍である。長手方向、幅方向の延伸倍率はどちらを大きくしてもよく、同一としてもよい。また、延伸速度は1000%/分〜200000%/分であることが望ましく、延伸温度はポリエステルのガラス転移温度以上ガラス転移温度+80℃以下であれば任意の温度とすることができるが、通常は80〜150℃が好ましい。更に二軸延伸の後にフィルムの熱処理を行うが、この熱処理はオーブン中、加熱されたロール上等、従来公知の任意の方法で行なうことができる。熱処理温度は120℃以上245℃以下の任意の温度とすることができるが、好ましくは120〜240℃である。また熱処理時間は任意とすることができるが、通常1〜60秒間行うのが好ましい。熱処理はフィルムをその長手方向および/または幅方向に弛緩させつつおこなってもよい。さらに、再延伸を各方向に対して1回以上行ってもよく、その後熱処理を行っても良い。
(メチルペンテン単位を有するポリオレフィン系樹脂)
メチルペンテン単位を有するポリオレフィン系樹脂とは、ポリオレフィン系樹脂中にメチルペンテン単位を有しさえすればその量は特に限定されない。しかし、離型性、耐薬品性の観点から、より好ましいメチルペンテン単位を有するポリオレフィン系樹脂は、メチルペンテン単位を有するポリオレフィン系樹脂100質量%において、メチルペンテン単位を50〜100質量%含むポリオレフィンであり、より好ましくは70〜100質量%である。
【0041】
またメチルペンテン単位を有するポリオレフィン系樹脂層とは、前記メチルペンテン単位を有するポリオレフィン系樹脂を含みさえすれば特に限定されない。 メチルペンテン単位としては、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、2−メチル−1−ペンテンなどが挙げられる。これらのメチルペンテンは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
(分子量)
本発明に用いられるメチルペンテン単位を有するポリオレフィン系樹脂は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により測定した質量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が1.0〜3.5の範囲にあり、好ましくは1.0〜3.0、より好ましくは1.0〜2.8、さらに好ましくは1.5〜2.8の範囲である。Mw/Mnの値が大きいと、重合体の靱性等の機械物性を発現するのに不利である。Mw/Mnの値が1.0〜3.5の範囲にあれば、靱性等の機械物性を発現するのに有利であり、工業的に価値がある。
【0042】
本発明に用いられるメチルペンテン単位を有するポリオレフィン系樹脂の分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により求められる質量平均分子量(Mw)がポリスチレン換算で1,000〜10,000,000であると好ましく、より好ましくは1,500〜5,000,000である。
(粘度)
本発明に用いられるメチルペンテン単位を有するポリオレフィン系樹脂は、極限粘度[η]が0.5(dl/g)以上、好ましくは1.0〜20(dl/g)、より好ましくは1.2〜10(dl/g)である。
(融点)
本発明に用いられるメチルペンテン単位を有するポリオレフィン系樹脂の融点は、140℃〜235℃が好ましく、より好ましくは150℃〜230℃、さらに好ましくは160℃〜225℃である。メチルペンテン単位を有するポリオレフィン系樹脂の融点が低すぎると、耐熱性が不十分で印刷性、転写性が低下する場合があり、融点が高すぎると、成形性が不十分な場合がある。
(ビカット軟化温度)
本発明の積層フィルムのポリオレフィン系樹脂層のビカット軟化温度は、30〜175℃が好ましく、より好ましくは40〜170℃、さらに好ましくは50〜155℃、特に好ましくは50〜120℃である。ポリオレフィン系樹脂層のビカット軟化温度が低すぎると、耐熱性が不十分で印刷性、転写性が低下する場合があり、融点が高すぎると、成形性が不十分な場合がある。
【0043】
なお、本発明の積層フィルムには各種機能性の付与を目的として、塗剤をコートする場合があるが、最近の塗剤はUV硬化型などの塗剤が用いられており、UV硬化型の塗剤は、高い温度(120℃付近以上)では発泡などの分解を生じるため、成形温度の低温化(80℃〜120℃)が進められている。ポリオレフィン系樹脂層のビカット軟化温度が上記30〜175℃の範囲であると、本発明の積層フィルムを保護フィルム、もしくは転写箔として使用する場合に、80〜120℃のような低温の領域で、耐熱性、および被着体、もしくは被写体への成形追従性がともに優れることから好ましい。本発明の積層フィルムのポリオレフィン系樹脂層のビカット軟化温度を30〜175℃の範囲にするための方法としては、4-メチル-1-ペンテンなどのメチルペンテン単位に炭素原子数2〜20のオレフィン単位を共重合させる方法が挙げられる。ただし、本明細書中の炭素原子数2〜20のオレフィン単位には、特に断らない限り4-メチル-1-ペンテンなどのメチルペンテン単位を含まないものとする。炭素原子数2〜20のオレフィン単位としては、例えば直鎖状または分岐状のα−オレフィン、環状オレフィン、芳香族ビニル化合物、共役ジエン、非共役ポリエン、官能化ビニル化合物などが挙げられる。
【0044】
ビカット軟化温度は、メチルペンテン単位を有するポリオレフィン系樹脂から射出成形で試験片を作製し、ASTM D1525(2007年式)の方法で測定することができる。また、積層フィルム中の、メチルペンテン単位を有するポリオレフィン系樹脂のビカット軟化温度を測定したい場合は、例えば#1000〜#1500の目の細かい紙やすりなどを用いて、一方の表層のメチルペンテン単位を有するポリオレフィン系樹脂層を削り取り、得られた粉末から射出成形により試験片を作製し、測定することが可能である。
(炭素原子数2〜20のオレフィン単位)
メチルペンテン単位を有するポリオレフィン系樹脂には、炭素原子数2〜20のオレフィン単位が好適に使用される。炭素原子数2〜20のオレフィン単位としては、例えば直鎖状または分岐状のα−オレフィン、環状オレフィン、芳香族ビニル化合物、共役ジエン、非共役ポリエン、官能化ビニル化合物などが挙げられる。以下これらについて説明する。
【0045】
本発明に用いられるメチルペンテン単位を有するポリオレフィン系樹脂に含まれる、直鎖状または分岐状のα−オレフィンとして具体的には、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどの炭素原子数2〜20、好ましくは2〜10の直鎖状のα−オレフィン;例えば3−メチル−1−ブテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセンなどの好ましくは5〜20、より好ましくは5〜10の分岐状のα−オレフィンが挙げられる。
【0046】
環状オレフィンとしては、シクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、テトラシクロドデセン、ビニルシクロヘキサンなどの炭素原子数3〜20、好ましくは5〜15のものが挙げられる。
【0047】
芳香族ビニル化合物としては、例えばスチレン、およびα−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o,p−ジメチルスチレン、o−エチルスチレン、m−エチルスチレン、p−エチルスチレンなどのモノまたはポリアルキルスチレンが挙げられる。
【0048】
共役ジエンとしては、例えば1,3−ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチルブタジエン、4−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、1,3−オクタジエンなどの炭素原子数4〜20、好ましくは4〜10のものが挙げられる。
【0049】
非共役ポリエンとしては、例えば1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,4−オクタジエン、1,5−オクタジエン、1,6−オクタジエン、1,7−オクタジエン、2−メチル−1,5−ヘキサジエン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、4−エチリデン−8−メチル−1,7−ノナジエン、4,8−ジメチル−1,4,8−デカトリエン(DMDT)、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ジシクロオクタジエン、メチレンノルボルネン、5−ビニルノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、6−クロロメチル−5−イソプロペンル−2−ノルボルネン、2,3−ジイソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−エチリデン−3−イソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−プロペニル−2,2−ノルボルナジエンなどの炭素原子数5〜20、好ましくは5〜10のものが挙げられる。
【0050】
官能化ビニル化合物としては、水酸基含有オレフィン、ハロゲン化オレフィン、アクリル酸、プロピオン酸、3-ブテン酸、4-ペンテン酸、5-ヘキセン酸、6-ヘプテン酸、7-オクテン酸、8-ノネン酸、9-デセン酸などの不飽和カルボン酸類、アリルアミン、5-ヘキセンアミン、6-ヘプテンアミンなどの不飽和アミン類、(2,7-オクタジエニル) コハク酸無水物、ペンタプロペニルコハク酸無水物および上記不飽和カルボン酸類にある化合物の例示において、カルボン酸基をカルボン酸無水物基に置き換えた化合物などの不飽和酸無水物類、上記不飽和カルボン酸類にある化合物の例示において、カルボン酸基をカルボン酸ハライド基に置き換えた化合物などの不飽和カルボン酸ハライド類、4-エポキシ-1-ブテン、5-エポキシ-1-ペンテン、6-エポキシ-1-ヘキセン、7-エポキシ-1-ヘプテン、8-エポキシ-1-オクテン、9-エポキシ-1-ノネン、10-エポキシ-1-デセン、11-エポキシ-1-ウンデセンなどの不飽和エポキシ化合物類などが挙げられる。
【0051】
上記水酸基含有オレフィンとしては、水酸基含有のオレフィン系化合物であれば特に制限は無いが、例えば末端水酸化オレフィン化合物が挙げられる。末端水酸化オレフィン化合物として具体的には、例えばビニルアルコール、アリルアルコール、水酸化−1−ブテン、水酸化−1−ペンテン、水酸化−1−ヘキセン、水酸化−1−オクテン、水酸化−1−デセン、水酸化−1−ドデセン、水酸化−1−テトラデセン、水酸化−1−ヘキサデセン、水酸化−1−オクタデセン、水酸化−1−エイコセンなどの炭素原子数2〜20、好ましくは2〜10の直鎖状の水酸化α−オレフィン;例えば水酸化−3−メチル−1−ブテン、水酸化−3−エチル−1−ペンテン、水酸化−4,4−ジメチル−1−ペンテン、水酸化−4−メチル−1−ヘキセン、水酸化−4,4−ジメチル−1−ヘキセン、水酸化−4−エチル−1−ヘキセン、水酸化−3−エチル−1−ヘキセンなどの好ましくは5〜20、より好ましくは5〜10の分岐状の水酸化α−オレフィンが挙げられる。
【0052】
上記ハロゲン化オレフィンとして具体的には、塩素、臭素、ヨウ素等周期表第17族原子を有するハロゲン化α−オレフィン、例えばハロゲン化ビニル、ハロゲン化−1−ブテン、ハロゲン化−1−ペンテン、ハロゲン化−1−ヘキセン、ハロゲン化−1−オクテン、ハロゲン化−1−デセン、ハロゲン化−1−ドデセン、ハロゲン化−1−テトラデセン、ハロゲン化−1−ヘキサデセン、ハロゲン化−1−オクタデセン、ハロゲン化−1−エイコセンなどの炭素原子数2〜20、好ましくは2〜10の直鎖状のハロゲン化α−オレフィン;例えばハロゲン化−3−メチル−1−ブテン、ハロゲン化−3−エチル−1−ペンテン、ハロゲン化−4,4−ジメチル−1−ペンテン、ハロゲン化−4−メチル−1−ヘキセン、ハロゲン化−4,4−ジメチル−1−ヘキセン、ハロゲン化−4−エチル−1−ヘキセン、ハロゲン化−3−エチル−1−ヘキセンなどの好ましくは5〜20、より好ましくは5〜10の分岐状のハロゲン化α−オレフィンが挙げられる。
(メチルペンテン単位を有するポリオレフィン系樹脂層の厚み)
本発明の積層フィルム中に含まれる、メチルペンテン単位を有するポリオレフィン系樹脂層の厚みは、0.1〜50μmの範囲とすることが好ましく、0.1〜20μmであることがより好ましく、0.2〜5μmであることがさらに好ましく、0.3〜2μmであることが特に好ましい。0.1μm未満では十分な離型性が得られず、50μmを超える場合は離型性が低下する場合があるだけでなく、コストアップとなる。
(積層フィルムの構成)
本発明の積層フィルムは、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、ポリオレフィン系樹脂層を有する構造であれば特に限定されず、ポリエステルフィルムの片面にメチルペンテン単位を有するポリオレフィン系樹脂層を有していても、ポリエステルフィルムの両面にメチルペンテン単位を有するポリオレフィン系樹脂層を有していても構わない。両面に該ポリオレフィン系樹脂層を有する積層フィルムの場合は、積層フィルムのカール抑制、取扱い性向上の点で有効であるが、コスト面からは片面に該ポリオレフィン系樹脂層を有する積層フィルムがより好ましい。
(メチルペンテン単位を有するポリオレフィン系樹脂層の形成方法)
本発明に用いられるメチルペンテン単位を有するポリオレフィン系樹脂層の形成方法は、メチルペンテン単位を有するポリオレフィン系樹脂からなるフィルムを事前に作製して、ポリエステルフィルムと貼り合わせてもよいし、メチルペンテン単位を有するポリオレフィン系樹脂を溶媒に溶解させた液状物をポリエステルフィルム上に塗工したのち乾燥してもよいが、薄膜化の容易さ、および工程の簡便化といった観点からは、メチルペンテン単位を有するポリオレフィン系樹脂を溶媒に溶解させた液状物をポリエステルフィルムに塗工したのち乾燥する方法が好ましい。
【0053】
ポリエステルフィルムとメチルペンテン単位を有するポリオレフィン系樹脂からなるフィルム(層)を貼り合せる場合、貼り合わせには、接着剤を用いることが好ましい。その接着剤は、熱硬化タイプでも熱可塑タイプでも構わないが、好ましくは熱硬化タイプが好ましい。例えば、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリルニトリル−ブタジエン共重合体、メチルメタアクリレート−ブタジエン共重合体、クロロプレン、ポリブタジェン等のゴム系樹脂、ポリアクリル酸エステル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリブタジエン、あるいはこれらの樹脂のカルボキシル変性物、エポキシ系樹脂、セルロース系誘導体、エチレン酢酸ビニル系共重合体、ポリエチレンオキサイド、アクリル系樹脂、リグニン誘導体等からなる接着剤が挙げられる。ポリエステルフィルムとメチルペンテン単位を有するポリオレフィン系樹脂からなるフィルムとの密着性の点からは、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂からなる接着剤が好ましい。また、ポリエステルフィルムとメチルペンテン単位を有するポリオレフィン系樹脂からなるフィルム(層)の貼り合わせには、ポリエステルフィルムに接着性樹脂層を設け、メチルペンテン単位を有するポリオレフィン系樹脂を溶融押出ラミネーションしても構わない。
【0054】
メチルペンテン単位を有するポリオレフィン系樹脂を溶媒に溶解させた液状物を塗工したのち乾燥する方法を用いる場合、メチルペンテン単位を含むポリオレフィン系樹脂を溶解させた液状物における溶媒については、水、有機溶剤、あるいは水と両親媒性有機溶剤を含む水性媒体などが挙げられるが、乾燥速度、溶解度の観点からは、有機溶剤が好ましく用いられる。
【0055】
有機溶剤としては、ジエチルケトン(3−ペンタノン)、メチルプロピルケトン(2−ペンタノン)、メチルイソブチルケトン(4−メチル−2−ペンタノン)、2−ヘキサノン、5−メチル−2−ヘキサノン、2−へプタノン、3−へプタノン、4−へプタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン類、トルエン、キシレン、ベンゼン、ソルベッソ100、ソルベッソ150等の芳香族炭化水素類、ブタン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン等の脂肪族炭化水素類、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、p−ジクロロベンゼン等の含ハロゲン類、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸−sec−ブチル、酢酸−3−メトキシブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、炭酸ジエチル、γ―ブチロラクトン、イソホロン等のエステル類、加えて後述の親水性の有機溶剤などが挙げられる。中でも、本発明で用いられるメチルペンテン単位を有するポリオレフィン系樹脂の溶解性から、ヘキサン、トルエン、シクロヘキサン、およびメチルシクロヘキサンが好ましく用いられる。
【0056】
本発明で使用する液状物の固形分含有率は、積層条件、目的とする厚さや性能等により適宜選択でき、特に限定されるものではないが、液状物の粘性を適度に保ち、かつ良好な樹脂層を形成させるためには、1〜60質量%が好ましく、5〜30質量%がより好ましい。
【0057】
メチルペンテン単位を有するポリオレフィン系樹脂を溶媒に溶解させた液状物を、本発明の積層フィルムに用いられるポリエステルフィルムに塗工する方法としては、公知の方法、例えばグラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、リップコーティング、エアナイフコーティング、カーテンフローコーティング、スプレーコーティング、浸漬コーティング、はけ塗り法等により本発明の積層フィルムに用いられるポリエステル表面に均一に塗工し、必要に応じて室温付近でセッティングした後、乾燥処理又は乾燥のための加熱処理に供することにより、均一な樹脂層を本発明の積層フィルムに用いられるポリエステルフィルムに密着させて形成することができる。
【0058】
また、メチルペンテン単位を有するポリオレフィン系樹脂を各種溶媒に溶解させる場合、特開2006−131723号公報のような公知の方法を用いて樹脂を高濃度で溶解させたり、特開2006−130796号公報のような公知の方法でポリエステルフィルムとメチルペンテン単位を有するポリオレフィン系樹脂との密着性を向上させてもよい。
(添加粒子)
本発明に用いられる積層フィルムの各層には、目的や用途に応じて各種の粒子を添加することができる。添加する粒子は、ポリエステルフィルム、及び/またはメチルペンテン単位を有するポリオレフィン系樹脂に不活性なものであれば特に限定されないが、無機粒子、有機粒子、架橋高分子粒子、重合系内で生成させる内部粒子などを挙げることができる。これらの粒子を2種以上添加しても構わない。かかる粒子の添加量は、0.01〜10質量%が好ましく、さらに好ましくは0.05〜3質量%である。
【0059】
本発明で用いられる積層フィルムに易滑性を付与することが粒子添加の目的であるときは、製造コストや生産性の点より、表面の層のみに粒子を添加することが好ましい。一般に易滑性はフィルム表面の形状に大きな影響を受けるので、表面の層に粒子を添加することで、易滑性を得ることができる。
【0060】
前記無機粒子の種類としては、特に限定されないが、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウムなどの各種炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの各種硫酸塩、カオリン、タルクなどの各種複合酸化物、リン酸リチウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウムなどの各種リン酸塩、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウムなどの各種酸化物、フッ化リチウムなどの各種塩を使用することができる。
【0061】
また有機粒子としては、シュウ酸カルシウムや、カルシウム、バリウム、亜鉛、マンガン、マグネシウムなどのテレフタル酸塩などが使用される。
【0062】
架橋高分子粒子としては、ジビニルベンゼン、スチレン、アクリル酸、メタクリル酸などのビニル系モノマーの単独重合体または共重合体が挙げられる。その他、ポリテトラフルオロエチレン、ベンゾグアナミン樹脂、熱硬化エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、熱硬化性尿素樹脂、熱硬化性フェノール樹脂などの有機微粒子も好ましく使用される。
【0063】
重合系内で生成させる内部粒子としては、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等を反応系内に添加し、さらにリン化合物を添加する公知の方法で生成される粒子などが使用される。
【0064】
本発明に用いられる積層フィルムには、必要に応じて公知の添加剤、例えば、難燃剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、可塑剤、粘着性付与剤、ポリシロキサンなどの消泡剤、顔料または染料などの着色剤を適量配合することができる。
(帯電防止剤)
本発明に用いられる積層フィルムの各層には帯電防止剤を含有、または共重合することが好ましい。かかる帯電防止剤としては、アニオン系、カチオン系、非イオン系、両性などの各種公知の帯電防止剤を用いることが可能である。中でも特に耐熱性などの点からはアニオン系帯電防止剤であるアルキルスルホン酸ナトリウムまたはアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムを用いることが好ましい。また、これらの帯電防止剤を重合時に添加する際には、併せて酸化防止剤を添加することが、取扱性などの点から好ましい。かかる酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、フォスファイト系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤などの各種公知のものを用いることができる。これらの化合物は、複数の化合物を混合して用いてもよい。
(破断伸度、応力)
本発明の積層フィルムは、100℃の雰囲気下、100%伸長時の応力が0.5〜60MPaの範囲であることが好ましい。最近の塗剤は、UV硬化型などの塗剤が用いられており、UV硬化型の塗剤は、高い温度では発泡などの分解を生じるので成形温度の低温化が進められている。塗剤の分解が始まる上限温度は、120℃位と言われており、80〜120℃での成形性が求められている。本発明に用いられる積層フィルムは、低温でも転写箔として良好な成形追従性を持たせるため、100℃での破断伸度が150%以上であることが好ましく、より好ましくは250%以上、さらに好ましくは500%以上であり、しかも、100℃での100%伸張時の応力が、好ましくは0.5〜60MPa、より好ましくは0.5〜30MPa、さらに好ましくは0.5〜3MPaであるのがよい。100℃での破断伸度が150%未満の場合や、100℃での100%伸長時の応力が0.5〜60MPaの範囲から外れる場合、転写箔として被転写体に転写する際に成形追従性が不十分な場合がある。なお、100℃での破断伸度は大きいほどよいが、印刷層や各種塗剤に影響を及ぼさない値として、1500%が実質的に各種表面保護フィルム、転写箔用途で用いられる上限である。
【0065】
本発明の積層フィルムを、100℃での破断伸度が150%以上であり、100℃での100%伸長時の応力が0.5〜60MPaの範囲にするための方法としては、積層フィルムに用いられるポリエステルフィルムを前述のような高結晶性ポリエステル層と他のポリエステル層の少なくとも2層からなる積層ポリエステルフィルムとなるような特定の組成、構造、特性を持たせる方法などが挙げられる。
(ヘイズ変化)
本発明の積層フィルムは、100℃で100%伸張時のヘイズ変化が0〜10%であることが重要であり、好ましくは0〜7%、より好ましくは0〜4%である。ただし、ここでのヘイズ変化とは、フィルムの機械方向、幅方向にそれぞれ延伸し、各方向のヘイズ変化の平均をとったものである。フィルムの機械方向、幅方向がわからない場合は、任意の垂直2方向に延伸し、各方向のヘイズ変化の差が最も大きい場合の平均値をとるものとする。100℃で100%伸張時のヘイズ変化が、0〜10%の範囲を満たさない場合、本発明の積層フィルムに含まれる、メチルペンテン単位を含むポリオレフィン系樹脂層がポリエステルフィルムの延伸に追従せず、クラックが入ってしまっている場合があり、表面平滑性悪化により印刷性、離型性が不十分になる場合がある。
【0066】
本発明の積層フィルムの、100℃雰囲気下、100%伸張時のヘイズ変化を上記0〜10%の範囲にするための方法としては、積層フィルムに用いられるポリエステルフィルムを、前述のような高結晶性ポリエステル層と他のポリエステル層の少なくとも2層からなる積層ポリエステルフィルムになるような特定の組成、構造、特性を持たせて低応力、高伸度化し、かつ、積層フィルムに用いられるメチルペンテン単位を有するポリオレフィン系樹脂を、前述のような特定の組成、構造、特性にして柔軟性を持たせ、ポリエステルフィルムへの延伸追従性を向上させる方法などが挙げられる。
【0067】
なお本発明の積層フィルムは、JIS−K−6714(2001年式)に従って測定したヘイズ値が、0.1〜50%であると好ましく、より好ましくは0.1〜20%、さらに好ましくは0.1〜10%である。ヘイズが上記0.1〜50%の範囲内に含まれると、本発明の積層フィルムを各種表面保護フィルム、および転写箔等に使用する場合に、被着体、被転写体の状態確認や印刷面の状態を確認できて好ましい。
【実施例】
【0068】
以下、実施例に沿って本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。なお、諸特性は以下の方法により測定した。
(1)ヘイズ
積層フィルムのヘイズを、日本精密光学(株)社製ヘイズメーターSTP−H−2を用いて、JIS−K−6714(2001年式)に従って測定した。測定は両面それぞれから測定を行い、その平均値をヘイズとした。
なお、100℃で100%伸長時のヘイズ変化については、下記(2)にて記載する機械方向測定用サンプル、幅方向測定用サンプルのそれぞれについて伸長前のヘイズを測定してその平均を求め、さらに機械方向、幅方向それぞれについて下記(2)の方法によって伸長した後のヘイズを測定してその平均を求めた。そして、伸長後のヘイズ平均値から伸長前のヘイズ平均値を引いて、その値を求めた(表においては、伸長後のヘイズ平均値から伸長前のヘイズ平均値を引いた値の両面における平均差を、Δヘイズとして示した。)。
(2)100℃での100%伸長時の応力、および100℃での破断伸度
積層フィルムから、長さ150mm、幅10mmのサンプルを、機械方向測定用サンプル(長さが機械方向に150mm)および幅方向測定用サンプル(長さが幅方向に150mm)として切り出し、ASTM−D−882−81(A法)に従い、100℃雰囲気で引張速度200mm/分で測定し、機械方向及び幅方向の100%伸長時の応力を求め、これらの値の平均値を、100℃での100%伸長時の応力とした。
また同様の測定条件で機械方向及び幅方向の破断伸度を求め、これらの値の平均値を100℃での破断伸度とした。
(3)ビカット軟化温度
測定するメチルペンテン単位を有するポリオレフィン系樹脂から、射出成形によって63.5mm×12.7mm×6.4mmの試験片を作製し、ASTM D1525(2007年式)の方法で測定した。
なお、積層フィルム中の、メチルペンテン単位を有するポリオレフィン系樹脂層のビカット軟化温度を測定する場合は、例えば#1000〜#1500の目の細かい紙やすりなどを用いて、表層のメチルペンテン単位を有するポリオレフィン系樹脂層のみを削り取り、得られた粉末から射出成形により試験片を作製し、測定した。
(4)結晶性パラメータΔTcg
積層フィルムから、各層を削り取るなどして、ポリエステルフィルム(積層ポリエステルフィルムの場合はそのそれぞれの層)について試料5mgを採取し、Seiko Instrument(株)製示差走査熱量分析装置DSCII型を用い、−30℃から300℃まで昇温速度20℃/分で昇温した際の吸熱融解曲線のピーク温度を融点Tmとした。また、同様の測定条件で、ガラス転移温度Tgと結晶化温度Tcを測定して、[式5]から結晶性パラメータΔTcgを算出した。
結晶性パラメータ: ΔTcg=Tc−Tg ・・・[式5]
(5)フィルム厚みおよび層厚み
積層フィルムの全体厚みを測定する際は、ダイヤルゲージを用いて、フィルムから切り出した試料の任意の場所5ヶ所の厚みを測定し、平均して求めた。積層フィルムの各層の層厚みを測定する際は、ライカマイクロシステムズ(株)製金属顕微鏡LeicaDMLMを用いて、フィルムの断面を倍率100倍の条件で透過光を写真撮影し、積層フィルムの各層の層厚みを測定した。
(6)離型性
カップ型真空成形機を用いて、後述の各実施例に記載の条件で転写箔および樹脂を一体成形した後、成形物から積層フィルムを剥離するときの剥離性を以下の基準で判定した。AかBであれば合格レベルである。
成形は、直径50mmのカップ型で絞り比1.0の条件で行い、最も良好な温度条件で行った。
A:積層フィルムは非常にきれいに剥離でき、剥離ムラ由来の成形物の表面の欠点が認められない。
B:積層フィルムは剥離できるが、時折、成形物の表面に剥離ムラ由来の欠点が認
められる。
C:A及びBに該当しない場合をCとした。
(7)成形性
カップ型真空成形機を用いて、80〜180℃の温度条件で転写箔を成形し、成形性の最もよいものの成形性を評価した。成形は、直径50mmのカップ型で絞り比1.0の条件で行い、最も良好な温度条件で成形したときの転写箔の状態を観察し、以下の基準で判定した。AまたはBであれば合格レベルである。
A:コーナーがシャープに成形されており、かつポリエステルフィルムとメチルペンテン単位を有するポリオレフィン系樹脂層の層間剥離による透明性悪化はほとんどない。
B:コーナーに丸みがある、もしくは、ポリエステルフィルムとメチルペンテン単位を有するポリオレフィン系樹脂層の層間剥離による透明性悪化が見られる、のいずれかに相当する。
C:A及びBに該当しない場合をCとした。
【0069】
実施例および比較例には、以下のポリエステル、ポリオレフィン、および粒子マスターを使用した。
(8)固有粘度
オルトクロロフェノール中、25℃で測定した溶液粘度から[式6]により計算した。
固有粘度: ηsp /C=[η]+K[η]2 ・C ・・・[式6]
ここで、ηsp =(溶液粘度/溶媒粘度)−1、Cは溶媒100mlあたりの溶解ポリマー質量(1.2g/100ml)、Kはハギンス定数(0.343とした)である。また、溶液粘度および溶媒粘度はオストワルド粘度計を用いて測定した。
[ポリエチレンテレフタレートA(PET−A)]
テレフタル酸ジメチル100質量部、エチレングリコール60質量部の混合物に、テレフタル酸ジメチル量に対して酢酸マグネシウム0.09質量部、三酸化アンチモン0.03質量部を添加して、常法により加熱昇温してエステル交換反応を行った。次いで、エステル交換反応生成物に、テレフタル酸ジメチル量に対して、リン酸85%水溶液0.020質量%を添加した後、重縮合反応槽に移行した。次いで、加熱昇温しながら反応系を徐々に減圧して1mmHgの減圧下、290℃で常法により重縮合反応を行い、融点257℃、固有粘度0.65dl/gのポリエチレンテレフタレート樹脂を得た。
[ポリエチレンテレフタレートB(PET−B)]
PET−Aの重合時に、耐電防止剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム6質量部およびポリエチレングリコール(分子量4000)を4質量部、酸化防止剤として、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製“イルガノックス”(登録商標)1010を0.10質量部、および下記手法で得られた凝集シリカ粒子(富士ディビソン社製、数平均粒子径2.5μm)6質量部をさらに添加し、ポリエチレンテレフタレート樹脂(固有粘度0.65dl/g、融点264℃)を得た。
【0070】
凝集シリカ粒子:4塩化珪素1当量に対し、酸素1当量、および、水素1当量を気化装置において気化させ、酸水素炎中において1000℃で加水分解を行い、酸化ケイ素粒子を得た。さらに、直径0.5mmのビーズを用いた湿式サンドミルにて粉砕し、所望の数平均粒子径を有する凝集シリカを得た。
【0071】
[1,4−シクロへキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレートE(PET−C)]
イーストマン・ケミカル社製“6763”(融点なし、固有粘度0.72)を用いた。1,4−シクロへキサンジメタノールの共重合割合は、30モル%であった。
【0072】
[ポリブチレンテレフタレートA(PBT−A)]
東レ(株)社製“トレコン”(登録商標)1200S:ポリブチレンテレフタレート(融点224℃、固有粘度1.26dl/g)を用いた。
【0073】
[ポリブチレンテレフタレートB(PBT−B)]
PET−Bで用いた酸化防止剤と帯電防止剤と凝集シリカ粒子を、PET−Bと同じ配合で東レ(株)社製“トレコン”(登録商標)1200Sのポリブチレンテレフタレート(融点224℃、固有粘度1.26dl/g)に添加し、得られた混合物を250℃に設定したベント式二軸押出機(L/D=35)に供給した。押出機にて溶融した溶融樹脂を、直径5mmの円状の穴を有する口金から押出し、ただちに10℃の冷却水にて急冷して、得られたガット状樹脂を4mm間隔で切断し、ポリブチレンテレフタレートペレット(融点228℃、固有粘度1.26dl/g)を得た。
【0074】
[メチルペンテン単位を有するポリオレフィン系樹脂(PMP−A)]
ポリメチルペンテン単位を有するポリオレフィン系樹脂(融点:157℃、ビカット軟化温度:50℃)を用いた。
【0075】
[メチルペンテン単位を有するポリオレフィン系樹脂(PMP−B)]
ポリメチルペンテン単位を有するポリオレフィン系樹脂(融点:225℃、ビカット軟化温度:153℃)を用いた。
【0076】
[メチルペンテン単位を有するポリオレフィン系樹脂(PMP−C)]
ポリメチルペンテン単位を有するポリオレフィン系樹脂(融点:235℃、ビカット軟化温度:176℃)を用いた。
【0077】
[ポリオレフィン系樹脂(ポリオレフィン−D)]
旭化成(株)社製、サンテック−LD M6520:低密度ポリエチレン樹脂を用いた。射出成形により得られた片のビカット軟化温度は81℃であった。
(実施例1)
ポリエステルフィルムに用いるポリエステルのうち、表層のポリエステルとしてPBT−A、PBT−Bを表の割合で混合し(層A)、ベント式二軸押出機(L/D=36)に供給して250℃で溶融させた後に、真空ベント部2ヶ所を通過させた。次いで、樹脂を濾過精度30μmのリーフディスクフィルターを通過させた後、マルチマニホールド式ダイに供給した。
【0078】
また、ポリエステルフィルムに用いるポリエステルのうち、内層のポリエステルとして、PET−A、PBT−Aを表の割合で混合した(層B)。さらに別途ステアリン酸(旭電化工業(株)社製“アデカスタブ”(登録商標)AX−71))0.1質量%を添加し、ベント式二軸押出機(L/D=36)に供給した。供給された樹脂を280℃で溶融させた後に、真空ベント部2ヶ所を通過させた。次いで、樹脂を、濾過精度30μmのリーフディスクフィルターを通過させた後、マルチマニホールド式ダイに供給した。
【0079】
ダイ内にてそれぞれの樹脂がマニホールドを通過した後、2種の樹脂を層A/層B/層Aとなるように積層し、スリット状のダイからシート状に押出した。押出されたシートの両端部に針状エッジピニング装置を用いて静電印加を行い、表面が梨地加工されたキャスティングドラムに密着させて、冷却固化した。キャスティングドラムの表面温度は55℃に調整した。層A1層あたりの層厚みが7.5μm、フィルムの全厚みが75μmのポリエステルフィルムを得た。
【0080】
得られたポリエステルフィルムの一方の層A面にコロナ放電処理を施し、その上にPMP−Aを10wt%含有するメチルシクロヘキサン溶液を厚み1.8μm(固形分相当)でバーコートを用いてコーティング後、80℃で1分間乾燥し、本発明の積層フィルムを得た。PMP−Aのメチルシクロヘキサン溶液としては、PMP−Aをメチルシクロヘキサンに常温で3日間かけて溶解させたものを用いた。
【0081】
得られた本発明の積層フィルムの、PMP−Aをコートした面に、トップコート層、印刷層および接着層をこの順に形成し、転写箔を得た。
トップコート層としては、紫外線硬化型アクリル系樹脂(BASFジャパン社製“LAROMER”(登録商標)LR8983)を用いて、厚さ60μmの層を形成した。
印刷層としては、ポリウレタン系樹脂グラビアインキ(大日精化工業(株)社製“ハイラミック”(登録商標)、主要溶剤:トルエン/メチルエチルケトン/イソプロピルアルコール、インキ:723B黄/701R白)を用いて、厚さ70μmの層を形成した。
接着層としては、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)共重合樹脂フィルム(オカモト(株)社製ABSフィルム“ハイフレックス”(登録商標))を用いて、厚さ100μmの層を形成した。
【0082】
次に、得られた転写箔を、温度80℃に加熱した後、真空成形機を用い、直径50mm カップ凹金型で、温度85℃、絞り比1.0の条件でカップ型成形体を作製した。
【0083】
続いて、280℃に加熱したアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)共重合樹脂(東レ(株)社製ABS樹脂“トヨラック”(登録商標)930)を前記カップ型成形体に注入した。ABSが冷却固化後、カップ型成形体にABS共重合樹脂を注入したカップ型成形物を金型から取り出し、積層フィルムを引き剥がした後、波長365nmの紫外線を用いてカップ型成形物のトップコート層を硬化させた。本例で作成した積層フィルムの離型性、成形性はいずれも良好であった。
(実施例2)
ポリエステルフィルムの組成を表のように変えた以外は、実施例1と同様にした。本例で作成した積層フィルムの離型性、成形性はいずれも良好であった。
(実施例3)
ポリエステルフィルムの積層構成をA/Bの2層にした以外は、実施例1と同様にした。本例で作成した積層フィルムの離型性、成形性はいずれも良好であった。
(実施例4)
ポリエステルフィルムに用いるポリエステルのうち、表層のポリエステルとしてPET−B、PBT−A、PET−Cを表の割合で混合し(層A)、ベント式二軸押出機(L/D=36)に供給して280℃で溶融させた後に、真空ベント部2ヶ所を通過させた。次いで、樹脂を濾過精度30μmのリーフディスクフィルターを通過させた後、マルチマニホールド式ダイに供給した。
【0084】
また、ポリエステルフィルムに用いるポリエステルのうち、内層のポリエステルとして、PET−A、PBT−A、PET−Cを表の割合で混合し(層B)、ベント式二軸押出機(L/D=36)に供給した。供給された樹脂を280℃で溶融させた後に、真空ベント部2ヶ所を通過させた。次いで、樹脂を、濾過精度30μmのリーフディスクフィルターを通過させた後、マルチマニホールド式ダイに供給した。
【0085】
ダイ内にてそれぞれの樹脂がマニホールドを通過した後、2種の樹脂を層A/層B/層Aとなるように積層し、スリット状のダイからシート状に押出した。押出されたシートの両端部に針状エッジピニング装置を用いて静電印加を行い、表面温度25℃のキャスティングドラムに密着させて、冷却固化し、無延伸のポリエステルフィルムを得た。
【0086】
次いで、長手方向への延伸前に加熱ロールにてフィルム温度を上昇させ、予熱温度を110℃、延伸温度を105℃で長手方向に延伸し、すぐに40℃に温度制御した金属ロールで冷却化した。次いでテンター式横延伸機にて予熱温度95℃、延伸温度120℃で幅方向に3.1倍延伸し、そのままテンター内にて幅方向に4%のリラックスを掛けながら温度240℃で5秒間の熱処理を行い、層A1層あたりの厚みが18.8μm、フィルムの全厚みが188μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0087】
ポリエステルフィルム作成後は、実施例1と同様にして転写箔を作製し、真空成形を行った。本例で作製した積層フィルムの離型性、成形性はいずれも良好であった。
(実施例5〜7、9、10)
ポリエステルフィルムの組成、メチルペンテン単位を有するポリオレイン系樹脂の組成、コート溶媒、厚みを表のようにした以外は、実施例1と同様にした。本例で作製した積層フィルムの離型性、および/または成形性は良好であった。
(実施例8)
ポリエステルフィルムの組成、メチルペンテン単位を有するポリオレフィン系樹脂のコート溶媒を表のようにした以外は、実施例8と同様にした。本例で作製した積層フィルムの離型性は良好であった。
(実施例11)
メチルペンテン単位を有するポリオレイン系樹脂の組成を表のように、コート溶媒をシクロヘキサン、テトラヒドロフランの混合溶媒(シクロヘキサン:テトラヒドロフラン=75重量%:25重量%)にした以外は、実施例1と同様にした。本例で作製した積層フィルムの離型性は良好であった。
(比較例1)
メチルペンテン単位を有するポリオレフィン系樹脂の組成、厚みを表のように、コート溶媒をシクロヘキサン、テトラヒドロフランの混合溶媒(シクロヘキサン:テトラヒドロフラン=75重量%:25重量%)にした以外は変えた以外は、実施例8と同様にした。本例で作製した積層フィルムの離型性、成形性は不十分であった。これは、積層フィルムを構成するポリエステルフィルム、メチルペンテン単位を有するポリオレフィン系樹脂の成形性がともに不十分だったためと考えられる。
(比較例2)
メチルペンテン単位を有するポリオレフィン系樹脂の組成をポリオレフィン−Dに、コート溶媒をシクロヘキサン、テトラヒドロフランの混合溶媒(シクロヘキサン:テトラヒドロフラン=75重量%:25重量%)に、厚みを表のように変えた以外は、実施例8と同様にした。
【0088】
本例で作製した積層フィルムの成形性、離型性は不十分であった。これは、積層フィルムを構成するポリオレフィン−Dが成形時の予熱に耐えられず変形し、ポリエステルフィルムと表面剥離を起こると同時に、ポリオレフィン系樹脂層の熱変形でポリオレフィン層に厚みムラができたため、離型性も悪化したためと考えられる。
(比較例3)
実施例1と同様にしてポリエステルフィルムを作製後、メチルペンテン単位を有するポリオレフィン系樹脂をコートせずにトップコート層、印刷層、接着層を形成して転写箔を作製し、真空成形を実施した。本例で作製した積層フィルムは離型層を有していないため離型性が不十分であった。
【0089】
【表1】

【0090】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明によれば、離型性、印刷性、廃棄時の環境負荷に優れ、更には成形時の被着体、被転写体への追従性等の成形性にも優れた積層フィルムが得られるため、建材用や光学用途用の樹脂部品、金属製品、ガラス製品等の各種表面保護フィルム、印刷および成形して用いるインモールド転写箔、さらに自動車内外装部品、浴室パネル、家電製品用部品、包装容器などの印刷の転写加工を行うための転写箔として好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、ポリオレフィン系樹脂層を有する積層フィルムであって、
該ポリオレフィン系樹脂層は、メチルペンテン単位を有するポリオレフィン系樹脂を含み、
100℃で100%伸長時のヘイズ変化が0〜10%であることを特徴とする積層フィルム。
【請求項2】
前記ポリオレフィン系樹脂層のビカット軟化温度が30〜175℃であることを特徴とする、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
前記ポリオレフィン系樹脂層の厚みが、0.1〜50μmであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の積層フィルム。
【請求項4】
100℃での破断伸度が150%以上であり、100℃で100%伸長時の応力が0.5〜60MPaの範囲である請求項1から3のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項5】
前記ポリエステルフィルムが、高結晶性ポリエステル層と他のポリエステル層の少なくとも2層からなる積層ポリエステルフィルムであり、
高結晶性ポリエステル層は、結晶性パラメータΔTcgが35℃以下であり、
ポリオレフィン系樹脂層、高結晶性ポリエステル層、他のポリエステル層がこの順に積層されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の積層フィルム。

【公開番号】特開2011−173298(P2011−173298A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−38259(P2010−38259)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】