説明

高電圧発生装置、及びこれを用いたX線高電圧装置

【課題】 複数のダイオードを有してなる高電圧整流器の絶縁耐圧及び冷却効果を共に確保することが可能な高電圧発生装置及びこれを用いたX線高電圧装置を提供する。
【解決手段】 高電圧変圧器と、高電圧変圧器から出力する交流電圧を昇圧すると共に直流電圧に整流する多倍コンデンサと、複数のダイオードからなる高電圧整流器と、直流電圧を平滑する平滑コンデンサの各部からなるコッククロフト・ウォルトン回路と、前記高電圧変圧器とコッククロフト・ウォルトン回路とを絶縁油を充填した内部に配置するタンクと、を有する高電圧発生装置であって、前記コッククロフト・ウォルトン回路の各部を、その各部単位で分割し前記タンク内に積層配置し、前記複数のダイオードを樹脂によるコーティングを行い、前記高電圧整流器の周囲を絶縁板で覆うと共に、前記絶縁板は前記コーティングとの間に隙間を設け設置し、前記隙間に絶縁油を対流させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高電圧発生装置、及びこれを用いたX線高電圧装置に関し、特に高電圧発生装置に用いる高電圧整流器部の絶縁耐圧及び冷却技術に関する。
【背景技術】
【0002】
高電圧トランス、高電圧整流器、フィラメント加熱用トランス等をエポキシ樹脂などの固体絶縁物で箱状に固め、単一のブロック体を形成し、安定した絶縁特性を持たせる高電圧発生装置はあった(特許文献1)。
【0003】
また、4つの外側側壁を具備する筐体内に複数のダイオードからなるブリッジ回路を設置し、該筐体内を油で浸し該ダイオードを冷却する高電圧整流器はあった(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5-176540号公報
【特許文献2】特開2003-153540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、高電圧トランス、高電圧整流器、フィラメント加熱用トランス等の回路全体をエポキシ樹脂などの固体絶縁物で箱状に固め、単一のブロックとしているため、これら回路から発生する熱の放熱効果の低下、及び該熱による固体絶縁物の発熱が懸念される。また、固体絶縁物が発熱することで固体絶縁物自身にクラック等が発生し、これによる絶縁不良等を引き起こす可能性があった。
【0006】
また、特許文献2では、高電圧整流器内のダイオードを油による冷却を行っているが、この場合、高電界下で使用される高電圧整流器においては絶縁耐量不足による回路部品間の誤放電によって回路破壊を引き起こす可能性があった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、複数のダイオードを有してなる高電圧整流器の絶縁耐圧及び冷却効果を共に確保することが可能な高電圧発生装置及びこれを用いたX線高電圧装置、を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、高電圧変圧器と、高電圧変圧器から出力する交流電圧を昇圧すると共に直流電圧に整流する多倍コンデンサと、複数のダイオードからなる高電圧整流器と、直流電圧を平滑する平滑コンデンサの各部からなるコッククロフト・ウォルトン回路と、前記高電圧変圧器とコッククロフト・ウォルトン回路とを絶縁油を充填した内部に配置するタンクと、を有する高電圧発生装置であって、前記コッククロフト・ウォルトン回路の各部を、その各部単位で分割し前記タンク内に積層配置し、前記複数のダイオードを樹脂によるコーティングを行い、前記高電圧整流器の周囲を絶縁板で覆うと共に、前記絶縁板は前記コーティングとの間に隙間を設け設置し、前記隙間に絶縁油を対流させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数のダイオードを有してなる高電圧整流器の絶縁耐圧及び冷却効果を共に確保することが可能な高電圧発生装置及びこれを用いたX線高電圧装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の高電圧発生装置を適用したX線高電圧装置の一部を示した構成図
【図2】図1に示すX線高電圧装置の動作について示した図
【図3】図2の動作状況における多倍コンデンサ701の各部電圧値について示した図
【図4】図2の動作状況におけるダイオード904の各部電圧値について示した図
【図5】高電圧発生装置300を構成する各部の実装形態について示した図
【図6】図5で示した各部に分割したコッククロフト・ウォルトン回路304のそれぞれの部品配置と、この場合の図2で示した動作状況における各部の電圧値について示した図
【図7】図5で示した多倍コンデンサ701と高電圧整流器900の部品実装方法に対し詳細に示した図
【図8】図7で示した高電圧整流器900をより詳細に示した図
【図9】図8で示した高電圧整流器900を上部から見た場合の図
【図10】図8又は図11で示したコーティング樹脂907の厚みについて示した図
【図11】図8の変形実施例を示した図
【図12】図10の変形実施例を示した図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面に従って本発明の高電圧発生装置及びこれを用いたX線高電圧装置の好ましい実施形態について詳説する。なお、発明の実施形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
【実施例1】
【0012】
本発明の実施例について図1乃至7、10用いて説明する。
図1は、本発明の高電圧発生装置を適用したX線高電圧装置の一部を示した構成図である。図2は、図1に示すX線高電圧装置の動作について示した図である。図3は、図2の動作状況における多倍コンデンサ701の各部電圧値について示した図である。図4は、図2の動作状況におけるダイオード904の各部電圧値について示した図である。図5は、高電圧発生装置300を構成する各部の実装形態について示した図である。図6は、図5で示した各部に分割したコッククロフト・ウォルトン回路304のそれぞれの部品配置と、その場合の図2で示した動作状況での各部の電圧値について示した図である。図7は、図5で示した多倍コンデンサ701と高電圧整流器900の部品実装方法に対し詳細に示した図である。図8は、図7で示した高電圧整流器900をより詳細に示した図である。図9は、図8で示した高電圧整流器900を上部から見た場合の図である。
【0013】
図1に示すX線高電圧装置は、直流電源301と、インバータ回路302と、高電圧発生装置300と、を備え、負荷にはX線を発生する陽極305aとフィラメント305bとから構成されるX線管装置305を接続している。高電圧発生装置300は、高電圧変圧器303とコッククロフト・ウォルトン回路304と、これらを封入配置し内部を絶縁油1002で充填したタンク1001を有して構成される。
【0014】
直流電源301から出力する直流電圧は、インバータ回路302により所定の周波数の交流電圧に変換し、該変換した交流電圧を高電圧変圧器303により昇圧する。該昇圧した交流電圧は2段構成の対称型コッククロフト・ウォルトン回路304により、さらに4倍の電圧に昇圧すると共に直流電圧に変換し、負荷であるX線管装置305に供給する。前記高電圧変圧器303は、鉄心403と鉄心403の周囲を電線で巻いた1次巻線400と、1次巻線400の周囲を電線で巻いた第1の2次巻線401と、第2の2次巻線402からなる。
【0015】
また、前記2段の対称型コッククロフト・ウォルトン回路304は、該回路に入力される電圧を倍化する多倍コンデンサ601、602と、交流電圧を直流電圧に整流する複数のダイオード801〜804により構成されるブリッジ回路を形成する高電圧整流器800と、該整流した直流電圧を平滑する平滑コンデンサ501からなる1段目のコッククロフト・ウォルトン回路と、多倍コンデンサ701、702と、ダイオード901〜904を有する高電圧整流器900と、平滑コンデンサ502からなる1段目のコッククロフト・ウォルトン回路と同一構成の2段目のコッククロフト・ウォルトン回路から構成される。コッククロフト・ウォルトン回路を2段構成とすることにより、1段構成の場合より、より高電圧の直流電圧をX線管装置305に出力することができる。
【0016】
本実施形態ではコッククロフト・ウォルトン回路を2段構成としたが当然これに限定するものではない。X線管装置305が必要とする電圧値に応じて1段としてもいいし、3段以上としてもよい。
【0017】
次に、高電圧発生装置300の内部回路構成についてより詳細に説明する。
高電圧発生装置300内の直列接続した2次巻線401、402の両端子部には、多倍コンデンサ601、602の一方の電極がそれぞれ接続され、多倍コンデンサ601、602の他方の電極はそれぞれダイオード801のアノードと、ダイオード802のアノードに接続される。ダイオード801と803、ダイオード802と804、はそれぞれ直列に接続され、さらにダイオード801のカソードとダイオード802のカソード、ダイオード803のアノードとダイオード804のアノードをそれぞれ接続することでブリッジ回路を形成している。ダイオード801のカソードとダイオード803のアノード間には平滑コンデンサ501が接続される。2次巻線401と402の接続部と、ダイオード803のカソードは共にグランド1003に接地される。
【0018】
次にダイオード801のアノードとダイオード802のアノードにはそれぞれ多倍コンデンサ701、702の一方の電極が接続され、多倍コンデンサ701、702の他方の電極はそれぞれダイオード901のアノードと、ダイオード902のアノードに接続される。ダイオード901と903、ダイオード902と904、はそれぞれ直列に接続され、さらにダイオード901のカソードとダイオード902のカソード、ダイオード903のアノードとダイオード904のアノードをそれぞれ接続することでブリッジ回路を形成している。ダイオード901のカソードとダイオード903のアノード間に平滑コンデンサ502を接続される。ダイオード901のアノードはダイオード801のアノードと接続され、ダイオード903のアノードはX線管装置305内のフィラメント305bに接続される。また、X線管装置305内の陽極305aはグランド1003に接地される。
【0019】
次に、図2を用いて図1に示すX線高電圧装置の動作について説明する。
図2に示すX線高電圧装置の各部における電圧値は2次巻線401、402の両端の電圧値がそれぞれ+35(kV)、-35(kV)の場合、電圧値である。また該電圧値はグランド1003(0(V)とする)を基準としている。2次巻線401、402の両端の電圧値がそれぞれ+35(kV)、-35(kV)の場合、高電圧整流器800、及び高電圧整流器900の各ダイオードに印加される電圧の向きは、ダイオード801、804、901、904が順方向、ダイオード802、803、902、903が逆方向となる。この場合、ダイオード801の両端子の電圧値は0(V)、ダイオード804、901の両端子の電圧値は-70(kV)、ダイオード904の両端子の電圧値は-140(kV)、となり、X線管装置の陰極305bには-140(kV)の直流電圧が印加される。
【0020】
次に、図3を用いて図2の動作状況における多倍コンデンサ701の各部電圧値について詳説する。図3に示す多倍コンデンサ701は複数の同一容量の直列接続した低耐圧のコンデンサ701a〜701zからなり、該複数の直列接続したコンデンサの両端部にあたるコンデンサ701aの一方の電極の電圧値は0(V)、コンデンサ701zの他方の電極の電圧値は-70(kV)となる。コンデンサ701aの一方の電極からコンデンサ701zの他方の電極に行くにつれ、各コンデンサの接続箇所の電圧値は下がっていく。直列接続されたコンデンサ701a〜701zのちょうど中間にあたるコンデンサ701nとコンデンサ701oとの接続箇所では-70(kV)の半分の値となる-35(kV)となる。また、特に図示しないが多倍コンデンサ701以外の多倍コンデンサ601、602、702についてもそれぞれ複数の同一容量の直列接続した低耐圧のコンデンサから構成される。
【0021】
次に、図4を用いて図2の動作状況におけるダイオード904の電位について詳説する。図4に示すダイオード904は複数の直列接続した低耐圧のダイオード904a〜904zからなり、図2の動作状況においては、ダイオード904a〜904zにかかる電圧は順方向であるため、各ダイオードの接続箇所の電圧値は全て-140(kV)となる。また、特に図示しないがダイオード904以外のダイオード801〜804、ダイオード801〜803についてもそれぞれ複数の直列接続した低耐圧のダイオードから構成される。
【0022】
次に、図5を用いて高電圧発生装置300を構成する各部の実装形態について説明する。図5は本発明による高電圧発生装置300の内部部品の一部を3次元で示した図である。コッククロフト・ウォルトン回路304は多倍コンデンサ601、602、701、702と、高電圧整流器800、900と、平滑コンデンサ501、502の各部にそれぞれ分割し、多倍コンデンサ601、602、の上方には高電圧整流器800、900を、高電圧整流器800、900の上方には多倍コンデンサ701、702を、多倍コンデンサ701、702上方には平滑コンデンサ501、502を順次積層しタンク1001内に配置される。また、高電圧変圧器303はこれら各部単位で分割し積層配置されたコッククロフト・ウォルトン回路304に隣接しタンク1001内に配置される。またタンク1001内には、絶縁油1002が充填されている。
【0023】
次に、図6、7を用いて図5で示した各部に分割したコッククロフト・ウォルトン回路304のそれぞれの部品配置と、この場合の図2で示した動作状況における各部の電圧値について説明する。本実施例のコッククロフト・ウォルトン回路304は2段構成となっているため以下説明では2段目のコッククロフト・ウォルトン回路を中心に説明する。また以下説明に関する内容は1段目、2段目共に同質である。高電圧整流器900の内部は、ダイオード904を構成する複数の直列接続した低耐圧のダイオード904a〜904zが垂直方向に上下し蛇行するように基板913、912にかけて実装される。基板911〜914は高電圧整流器900の側面及び底部を覆う絶縁板で構成された高電圧整流器ケース905の内部側壁に沿って垂直に設置され、特に詳説しないがダイオード901〜903についても該基盤にそれぞれダイオード904と同様の配置方法にて実装される。高電圧整流器ケース905は高電圧整流器900と、高電圧整流器900に隣接するタンク1001等に対し絶縁耐圧を増加する役割を果たしている。
【0024】
また、多倍コンデンサ701を構成する複数の直列接続した低耐圧のコンデンサ701a〜701zは、水平面に対し配線703を用いてU字型に直列接続され、多倍コンデンサケース705内にモールド樹脂704を充填して固定される。この場合、図2で示した動作状況によりダイオード904a〜904zには-140(kV)、コンデンサ701a〜701zは、0〜-70(kV)の電圧が順次かかっている。そのため、例えばU字型の曲がり角付近に配置したコンデンサ701n、701oの接続部は-35(kV)となり、積層して配置されるダイオード904a〜904zとの電位差が105(kV)にも及ぶ。
【0025】
次に、図8、11を用いて本実施例の中心となる箇所について説明する。
図8、11に示すように、高電圧整流器900のダイオード901〜904は、その表面をコーティング樹脂907によりコーティングしている。またこの場合、コーティング樹脂907と絶縁板で構成される高電圧整流器ケース905の内壁間には絶縁油1002が対流できる隙間911を設けている。これにより高電圧整流器900のダイオード901〜904の絶縁耐圧及び冷却効果を共に確保することできる。さらに、高電圧整流器900の上方に隣接する多倍コンデンサ701との絶縁耐圧を増加させるため、高電圧整流器900の上方にも高電圧整流器ケース905と同様の効果を奏する絶縁板908を備えている。これによりダイオード901〜904と多倍コンデンサ701間の絶縁耐圧を増加させることができる。また、高電圧整流器ケース905の中央部に空隙908aを備えることでよりタンク1001内に充填されている絶縁油1002の対流が促進し、ダイオード901〜904の冷却効果を増加することができる。
【0026】
以上説明した様に本実施例の高電圧発生装置300によれば、高電圧発生装置300内のコッククロフト・ウォルトン回路304を多倍コンデンサ601、602、701、702と、高電圧整流器800、900と、平滑コンデンサ501、502の各部にそれぞれ分割し、絶縁油1002で充填したタンク1001内に積層配置する際に、高電圧整流器800、900の周囲を絶縁板で覆うと共に高電圧整流器800、900の構成部品である複数の直列接続したダイオードに対し樹脂によるコーティングを施し、さらに、コーティングと絶縁板の内壁間に隙間を設け絶縁油1002を対流させることで高電圧整流器800、900の絶縁耐圧及び冷却効果を共に確保することができ、安定動作が可能な高電圧発生装置300と、これを用いたX線高電圧装置を提供することができる。
【実施例2】
【0027】
本発明の実施例について図11を用いて説明する。
図11は、図8の変形実施例を示した図である。図11に示す高電圧発生装置300内の高電圧整流器900では電界強度に対し、その上方に隣接して配置される多倍コンデンサ701による影響が大きい箇所のダイオード、つまり多倍コンデンサ701に距離的に近いダイオードのみをコーティング樹脂907によりコーティングしている。
【0028】
以上説明した様に本実施例の高電圧発生装置300によれば、高電圧整流器900の構成部品である複数の直列接続したダイオードに対しその配置距離が多倍コンデンサ701と近い一部のダイオードのみにコーティング樹脂907で覆うことにより、第1の実施例と同等の効果を得ることができ、ダイオード904に絶縁油1002が直接触れて冷却できる部分が増えるため、第1の実施例に比べ、より効率的に高圧整流器900を冷却することが可能な高電圧発生装置300と、これを用いたX線高電圧装置を提供することができる。
【実施例3】
【0029】
本発明の実施例について図10を用いて説明する。
図10は、図8又は図11で示したコーティング樹脂907の厚みについて示した図である。一般的に、物体の熱伝導率をα1[W/m・℃]、伝熱断面積をS[m2]、伝熱長さをL[m]とすると、熱抵抗Rth[℃/W]は以下の式で表される。

また、熱伝達率α2[W/m2・℃]は、

で表される。
【0030】
図10に示すコーティング樹脂907の厚さD[m]は、伝熱長さLと置き換えることができ、さらに、コーティング樹脂907の熱伝導率をα1cとし、絶縁油1002の熱伝達率をα2oとした場合、次式で表すことができる。

ここで

となるように各値を選定することでコーティング樹脂907のコーティングによって生じるダイオード904の放熱効果の低減を防ぐことができる。例えば、コーティング樹脂907の熱伝導率α1cを0.1[W/m・℃]、絶縁油1002の熱伝達率α2oを20[W/m2・℃]とした場合、コーティング樹脂907の厚さD[m]は次式より

5[mm]以下とすることでコーティング樹脂907のコーティングによって生じるダイオード904の放熱効果の低減を防ぐことができる。
【0031】
以上説明したように本実施例の高電圧発生装置300によれば、コーティング樹脂907の厚さを、コーティング樹脂907の熱伝導率を絶縁油1002の熱伝達率で割った値以下にすることで、コーティング樹脂907のコーティングによって生じるダイオード904の放熱効果の低減を防ぐことができ、安定動作が可能な高電圧発生装置300と、これを用いたX線高電圧装置を提供することができる。
【実施例4】
【0032】
本発明の実施例について図12を用いて説明する。
図12は、図10の変形実施例を示した図である。図12に示すコーティング樹脂はそれぞれ比誘電率の異なる2層のコーティング樹脂からなっている。また、コーティング樹脂の厚さは図10で示した厚さと同じにしている。ダイオード904に直接触れるコーティング樹脂909を第1層、第1層の上からコーティングする樹脂910を第2層とし、さらに、第1層のコーティング樹脂909の比誘電率をε1とし、第2層のコーティング樹脂910の比誘電率をε2とし、絶縁油1002の比誘電率をε3とした場合、各比誘電率の値の関係は、比誘電率ε1が一番大きく、ε2、ε3となるにつれ値を小さくしていくことで、コーティング樹脂が一層の場合よりも絶縁油1002で分担する電圧を減らすことができる。
【0033】
以上説明したように本実施例の高電圧発生装置300によれば、ダイオード904のコーティンに際し、比誘電率の異なる2層のコーティング樹脂909、910を用い、ダイオード904に直接触れる層のコーティング樹脂909の比誘電率を、直接触れない層のコーティング樹脂910の比誘電率より大きいものを用い多層コーティングすることで、ダイオード904の絶縁耐圧性も確保しつつ、絶縁油1002で分担する電圧を減らすことができるため、絶縁油1002内に混入した塵などの影響による絶縁破壊の可能性を低減することができる。またこれにより耐圧性の高い高電圧発生装置300と、これを用いたX線高電圧装置を提供することができる。
【0034】
また、本実施例では、樹脂コーティングが2層の場合について述べているが、コーティング樹脂が多層の場合でも同様な効果を得ることができる。この場合、n層目のコーティング材の比誘電率をεnとすると、ε1>ε2・・・・・・εnと段階的に落としていくことが好ましい。つまりダイオード904から離れる層ほど比誘電率を小さくすることが好ましい。
【符号の説明】
【0035】
300 高電圧発生装置、301 直流電源、302 インバータ回路、303 高電圧変圧器、304 コッククロフト・ウォルトン回路、305 X線管装置、305a 陽極、305b フィラメント、400 1次巻線、401 第1の2次巻線、402 第2の2次巻線、403 鉄心、703 配線、704 モールド樹脂、705 多倍コンデンサケース、800 高電圧整流器、900 高電圧整流器、905 高電圧整流器ケース、907 コーティング樹脂、908 絶縁板、908a 空隙、909 第1層のコーティング樹脂、910 第2層のコーティング樹脂、911〜914 基板、1001 タンク、1002 絶縁油、1003 グランド、501、502 平滑コンデンサ、601、602、701、702 多倍コンデンサ、701a〜701z 多倍コンデンサ701を構成する低耐圧コンデンサ、801〜804、901〜904、 高電圧整流器800、900を構成するダイオード 、904a〜904z ダイオード904を構成する低耐圧ダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高電圧変圧器と、前記高電圧変圧器から出力する交流電圧を昇圧すると共に直流電圧に整流する多倍コンデンサと、複数のダイオードからなる高電圧整流器と、直流電圧を平滑する平滑コンデンサの各部からなるコッククロフト・ウォルトン回路と、前記高電圧変圧器とコッククロフト・ウォルトン回路とを絶縁油を充填した内部に配置するタンクと、を備えた高電圧発生装置であって、
前記コッククロフト・ウォルトン回路の各部を、その各部単位で分割し前記タンク内に積層配置し、前記複数のダイオードを樹脂によるコーティングを行い、前記高電圧整流器の周囲を絶縁板で覆うと共に、前記絶縁板は前記コーティングとの間に隙間を空けて設置し、前記隙間に絶縁油を対流させることを特徴とする高電圧発生装置。
【請求項2】
前記高電圧整流器は、前記多倍コンデンサに隣接し積層配置すると共に、前記高電圧整流器の複数のダイオードのうち、その配置位置が前記多倍コンデンサに近い一部のダイオードのみ樹脂によるコーティングを行うことを特徴とする請求項1記載の高電圧発生装置。
【請求項3】
前記コーティングの厚みを、前記樹脂の熱伝導率を前記絶縁油の熱伝達率で割った値以下にすることを特徴とする請求項1又は請求項2いずれかに記載の高電圧発生装置。
【請求項4】
前記コーティングを比誘電率の異なる樹脂を用い複数の層で多層コーティングすることを特徴とする請求項1乃至3にいずれか一項に記載の高電圧発生装置。
【請求項5】
前記ダイオードから離れる層ほど比誘電率が小さくなることを特徴とする請求項4に記載の高電圧発生装置。
【請求項6】
直流電源と、前記直流電源の出力直流電圧を所定の周波数の交流電圧に変換するインバータ回路と、該交流電圧を昇圧すると共に直流電圧に整流し、X線を発生するX線管装置に該直流電圧を出力する高電圧発生装置と、を備えたX線高電圧発生装置であって、
前記高電圧発生装置に請求項1乃至5いずれか一項に記載の高電圧発生装置を用いることを特徴とするX線高電圧装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2011−198527(P2011−198527A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−61765(P2010−61765)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】