説明

高音声検出装置

【課題】近隣住民への騒音被害を発生させること無く、動作確認試験が可能であり、平常動作時と動作確認時の出力を切り替えることにより、動作確認作業を容易に実施可能な高音声検出装置の提供。
【解決手段】可聴範囲の高周波域まで集音可能なマイクロホン1aを用い、点検時は人間の耳に聞こえにくい高周波域を入力することで騒音被害を無くす。また、入力音声の音圧レベルが予め設定した音圧レベルよりも大きいときに出力される複数の出力器A 1eと、出力器B 1fと、各出力器の出力を許可あるいは制限するための切替器1dを有し、通常動作時は出力器A 1eから信号を出力させ、動作点検時は切替器1dを操作して出力器B 1fから信号を出力させ、出力器B 1fにはブザー6やランプ7を接続することで正規動作を実施せずに点検を容易に行える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高音声検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高音声検出装置は、人間の発する悲鳴や呼び声、あるいは防犯ブザーといった大音量を検出することを目的とした装置であり、一般に80ないし100dB程度の音圧を検出したときに出力を発生する。また、人間が音として感じることができる周波数域、すなわち可聴域は通常20Hzから、15kHzないし20kHz程度であるが、音声は基音で約90Hzから1.2kHzであることや、また、防犯ブザーなど人への警告や威嚇を目的としたブザーやベルの周波数は人間の聴覚で最も感度の高い4kHz前後であることから、従来の高音声検出装置のマイクロホン1は、高音域側で10kHz程度までが集音可能であった。この高音声検出装置は、エレベーターにおいて、かご内の乗客が大声を発したことを検出し、最寄り階に非常停止させ、監視装置から監視センターへ通報される防犯装置としての使用例が知られている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−21041(段落0005〜0008、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このようにエレベーターの防犯装置として高音声検出装置が設置されている場合、定期的に動作確認を行う必要がある。従来、この動作確認は、エレベーターの点検作業員がかご内で大声を出すことにより、エレベーターが所定の動作を行うことを確認する直接的な方法を採っていた。この方法によると、近隣住民への騒音被害となるほか、エレベーターが実際の防犯発生時同様にかご内のブザーが鳴動、非常停止するため、点検作業員は復旧作業を行う必要が生じるほか、点検前に監視センターへ連絡するなどの事前準備を要するため、点検時間に多大な時間を要するという問題があった。
【0004】
そこで、本発明の目的は、近隣住民への騒音被害を及ぼさず、機能を確認できる高音声検出装置を提供することにある。また、本発明の別の目的は、動作確認作業を容易に実施可能な高音声検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に係る発明は、音声を入力するためのマイクロホンと、マイクロホンからの入力音声を増幅する増幅器と、予め設定した音圧レベルと入力音声の音圧レベルとを比較する第一の演算器と、入力音声の音圧レベルが予め設定した音圧レベルよりも大きいときに出力を行う出力器とを持ち、人の音声や警告音などの高音声を検出する高音声検出装置において、検出する周波数範囲を人の音声や警告音などの周波数範囲と、人間の可聴範囲のうち聴覚感度が低下する高周波数範囲の両方を有することを特徴とする。
【0006】
また、請求項1の高音声検出装置において、検出する周波数範囲のうち、人間の可聴域のうち聴覚感度が低下する高周波数範囲を10から20kHzに設定したことを特徴とする。
【0007】
また、請求項1の高音声検出装置において、入力音声の音圧レベルが予め設定した音圧レベルよりも大きいときに出力される複数の出力器と、各出力器の出力を許可あるいは制限するための切替器を持つことを特徴とする。
【0008】
さらに、請求項1の高音声検出装置において、入力音声の周波数成分のうち、予め設定した周波数成分のみを抽出するフィルター回路と、前記フィルター回路を通過した後の音声成分が予め設定した音圧レベルとを比較する第二の演算器を持ち、前記フィルター回路を通過した後の音声成分が予め設定した音圧レベル超える入力があった場合と、前記フィルター回路を通過した後の音声成分が予め設定した音圧レベルを下回る入力があった場合とで出力器の出力が切り替わることを特徴とする。
【0009】
さらに、請求項1ならびに請求項3の高音声検出装置において、人間の可聴範囲の高周波域を発する点検装置、ならびに前記切替器の操作によって、前記高音声検出装置の動作点検手段とすることを特徴とする。
【0010】
さらに、請求項1ならびに請求項4の高音声検出装置において、人間の可聴範囲の高周波域を発する点検装置によって、前記高音声検出装置の動作点検手段とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
上記を特徴とすることによって、人間の可聴域のうち聴覚感度が低下する10から20kHzの音を一定音圧以上発生させることによって、近隣住民への騒音被害を発生させること無く、高音声装置の動作確認試験ができる。また、平常動作時と動作確認時の出力を切り替えることにより、動作確認作業を容易に実施可能な高音声検出装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下本発明の一実施の形態を図1から図3により説明する。
【0013】
図1は、高音声検出装置1の全体構成を示すものである。高音声検出装置1は、音声を入力するためのマイクロホン1aと、マイクロホン1からの入力音声を増幅する増幅器1bと、予め設定した音圧レベルと入力音声の音圧レベルとを比較する演算器1cと、入力音声の音圧レベルが予め設定した音圧レベルよりも大きいときに出力される出力器A1eおよび出力器B1f、出力器1e、1fの各出力を許可あるいは制限するための切替器1d、とから構成される。マイクロホン1の集音可能な周波数領域は高周波数側で20kHzまでである。
【0014】
図2は高音声検出装置1をエレベーターかご2に取り付け、防犯装置として利用している状態を示している。高音声検出装置1はかご上に設置しており、出力器A1eはエレベーターの制御盤3に入力している。切替器1dは、通常時は一定音圧以上の音を検出すると、出力器A1eのみから出力されるように設定され、制御盤3はエレベーターを最寄り階に非常停止し、監視装置4から監視センター5へ通報する。一方、出力器B1fにはブザー6、ランプ7が接続されている。
【0015】
点検時は、点検作業員9が切替器1dを操作して、出力器B1fのみから出力されるように設定を変更した後、点検装置8を操作して高音声検出装置1の動作確認を行う。点検装置8は10から20kHzで、60から120dB程度の音圧を発生させる音源を内蔵している。例えば高音声検出装置1の検出レベルが100dBに設定されている場合、まず点検装置8の音圧を80dBで発生させ、高音声検出装置1がこの音源を反応しないことを確認した後、点検装置8の音圧を上げていく。ある音圧レベルに達すると高音声検出装置1が検出して出力器B1fが信号を出力し、ブザー6が鳴動、ランプ7が点灯する。点検作業員9はこのブザー6の鳴動とランプ7の点灯によって、高音声検出装置の検出レベルを確認することができる。人間が音として感じることができる周波数域、すなわち可聴域は通常20Hzから、15kHzないし20kHz程度である。しかし、この周波数帯域のうち、10kHzを超える帯域は、聴覚感度が低下する。また、点検時に出力を出力器A1eから出力器B1fに切り替えることにより、エレベーターは最寄り階停止せず、確認試験後は切替器1dを操作して、出力器A1eのみから出力される設定に復帰させるのみでよい。さらに、監視センター5への通報も起こらないため、点検前に監視センター5へ連絡するなどの事前準備も削減できる。
【0016】
図3は本発明の異なる一実施形態を示す、高音声検出装置1の全体構成を示すものである。高音声検出装置1は、音声を入力するためのマイクロホン1aと、マイクロホン1aからの入力音声を増幅する増幅器1bと、予め設定した音圧レベルと入力音声の音圧レベルとを比較する演算器A1cと、入力音声の音圧レベルが予め設定した音圧レベルよりも大きいときに出力される出力器A1eおよび出力器B1f、出力器A1e、出力器B1fの各出力を許可あるいは制限するための切替器1d、増幅器1bによって増幅した入力音声成分のうち、予め決められた周波数範囲のみを抽出する周波数フィルター1gと、周波数フィルター1gを通した後の音圧レベルと予め設定した音圧レベルとを比較する演算器B1h、とから構成される。マイクロホン1の集音可能な周波数領域は高周波数側で20kHzまでである。また、周波数フィルター1gは、可聴域のうち、聴覚感度が低下する10kHzのみを抽出し、10kHzより小さい周波数を除去する。周波数フィルター1gを通過した入力音声は演算器B1hで予め設定した音圧レベルと比較し、この音圧レベルよりも大きい場合は切替器1dの設定を変更する信号が出力され、この信号が出力されていないときは出力器A1e、出力されているときは出力器B1fが選択される。
【0017】
このような高音声検出装置1を図2のエレベーターかご2で使用した場合、通常時にかご内である一定以上の音圧レベルとなる音声を発生させると、高音声検出装置1は出力器A1eあるいは出力器B1fのいずれかから出力するが、人の声の場合は10kHz以上の高周波成分が少ないため、周波数フィルター1gでほとんどの音声入力成分が除去される。そのため演算器B1hの処理では、周波数フィルター1gを通過した後の音声成分は予め設定した音圧レベルよりも小さく、切替器1dの設定を変更する信号は出力されず、出力器A1eが選択される。その結果、制御盤3はエレベーターを最寄り階に非常停止し、監視装置4から監視センター5へ通報する。一方、点検作業員9が点検装置8を操作した場合は、10kHz以上の高周波数成分が多いため、周波数フィルター1gではほとんどの音声入力成分が除去されない。そのため演算器B1hの処理では、周波数フィルター1gを通過した後の音声成分は予め設定した音圧レベルよりも大きく、切替器1dの設定を変更する信号が出力され、出力器B1fが選択される。その結果、ブザー6が鳴動、ランプ7が点灯するのみで、エレベーターは最寄り階停止せず、監視センター5への誤通報も起こらないため、確認試験後は切替器1dを操作して、出力器A1eのみから出力される設定に復帰させるのみでよい。
【0018】
以上のような構造及び点検方法によって、近隣住民への騒音被害を及ぼさず、機能を確認できる高音声検出装置を提供することができる。また、動作確認作業を容易に実施可能な高音声検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態を表す、高音声検出装置の全体構成を示すものである。
【図2】本発明の一実施形態を表す、高音声検出装置をエレベーターの防犯装置として使用した場合のシステム構成図を示すものである。
【図3】本発明の異なる一実施形態を表す、高音声検出装置の全体構成を示すものである。
【符号の説明】
【0020】
1 高音声検出装置
1a マイクロホン
1b 増幅器
1c 演算器A
1d 切替器
1e 出力器A
1f 出力器B
1g 周波数フィルター
1h 演算器B
2 エレベーターかご
8 点検装置
9 点検作業員

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音声を入力するためのマイクロホンと、マイクロホンからの入力音声を増幅する増幅器と、予め設定した音圧レベルと入力音声の音圧レベルとを比較する第一の演算器と、入力音声の音圧レベルが予め設定した音圧レベルよりも大きいときに出力を行う出力器とを持ち、人の音声や警告音などの高音声を検出する高音声検出装置において、検出する周波数範囲を人の音声や警告音などの周波数範囲と、人間の可聴範囲のうち聴覚感度が低下する高周波数範囲の両方を有することを特徴とする高音声検出装置。
【請求項2】
請求項1の高音声検出装置において、検出する周波数範囲のうち、人間の可聴域のうち聴覚感度が低下する高周波数範囲を10から20kHzに設定したことを特徴とする高音声検出装置。
【請求項3】
請求項1の高音声検出装置において、入力音声の音圧レベルが予め設定した音圧レベルよりも大きいときに出力される複数の出力器と、各出力器の出力を許可あるいは制限するための切替器を持つことを特徴とする高音声検出装置。
【請求項4】
請求項1の高音声検出装置において、入力音声の周波数成分のうち、予め設定した周波数成分のみを抽出するフィルター回路と、前記フィルター回路を通過した後の音声成分が予め設定した音圧レベルとを比較する第二の演算器を持ち、前記フィルター回路を通過した後の音声成分が予め設定した音圧レベル超える入力があった場合と、前記フィルター回路を通過した後の音声成分が予め設定した音圧レベルを下回る入力があった場合とで出力器の出力が切り替わることを特徴とする高音声検出装置。
【請求項5】
請求項1ならびに請求項2の高音声検出装置において、人間の可聴範囲の高周波域を発する点検装置、ならびに前記切替器の操作によって、前記高音声検出装置の動作点検手段とすることを特徴とする高音声検出装置。
【請求項6】
請求項1ならびに請求項3の高音声検出装置において、人間の可聴範囲の高周波域を発する点検装置によって、前記高音声検出装置の動作手段とすることを特徴とする高音声検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−57323(P2007−57323A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−241265(P2005−241265)
【出願日】平成17年8月23日(2005.8.23)
【出願人】(000232955)株式会社日立ビルシステム (895)
【Fターム(参考)】