説明

麦芽アルコール飲料の泡の粒径を測定する方法及び装置

本発明は、麦芽アルコール飲料の泡の品質を客観的に判定することができる、麦芽アルコール飲料の泡の粒径を測定する方法及び装置を提供する。本発明による麦芽アルコール飲料の泡の粒径を測定する装置は、麦芽アルコール飲料に形成された泡層の表面にライン状レーザービームを照射するレーザー光源5と、前記泡層の表面に映されたレーザーラインを撮影して、前記レーザーラインの画像を取得する撮像デバイス4と、前記レーザーラインの画像から前記レーザーラインのエッジ情報を取得し、前記エッジ情報に基づいて前記泡層の泡の粒径を算出する算出デバイス6とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、麦芽アルコール飲料の泡の粒径を測定する方法及び麦芽アルコール飲料の泡の粒径を測定する装置に関する。
【背景技術】
ビール及び発泡酒のような麦芽アルコール飲料を飲用時に容器に注ぐと、麦芽アルコール飲料の表面に泡層が形成される。泡層の性質は、麦芽アルコール飲料の品質を示す一つの重要な要素である。
泡層の性質は、泡立ちの良し悪し、泡層の厚さ、泡層の継続性(泡持ち)、泡の粒径の大きさ、泡の容器への付着性などで表され、それぞれの泡層を客観的に評価するための指標である。
泡の粒径に関しては、細かい均一な泡の粒子で構成された泡層が、見た目にクリーミーで継続性のある上質な泡と呼ばれている。一方、容器に注いだ直後に形成され、泡層の上層で急速に崩壊する大きく粗い泡は、継続性がない。このような大きく粗い泡が、相対的に多い場合には、泡層の全体の持続性が小さく、クリーミーな泡ではない。従って、形成された泡の粒径を測定することによって、泡の性質を判定することができる。この泡の粒径の測定は、ビール及び発泡酒のような麦芽アルコール飲料の泡の性質を判定することだけでなく、例えば、ホイップクリームの泡層において、きめ細かいクリーミーな泡が形成されているか否かを判定することにも適用することができる。
しかしながら、麦芽アルコール飲料の泡の粒径を適切に測定することが可能な測定方法は、確立されておらず、現状では、泡の粒径の測定は、目視の判定に依存せざるを得ず、泡の粒径の厳密な測定値を得ることは困難であった。
【発明の開示】
本発明の一つの目的は、麦芽アルコール飲料の泡の品質を客観的に判定することができる、麦芽アルコール飲料の泡の粒径を測定する方法を提供することである。
本発明の他の目的は、麦芽アルコール飲料の泡の品質を客観的に判定することができる、麦芽アルコール飲料の泡の粒径を測定する装置を提供することである。
上記目的の一つは、麦芽アルコール飲料に形成された泡層の表面にライン状レーザービームを照射するステップと、前記泡層の表面に映されたレーザーラインを撮像デバイスで撮影して、前記レーザーラインの画像を取得するステップと、前記レーザーラインの画像から前記レーザーラインのエッジ情報を取得し、前記エッジ情報に基づいて前記泡層の泡の粒径を算出するステップとを含む、麦芽アルコール飲料の泡の粒径を測定する方法によって達成される。
上記の麦芽アルコール飲料の泡の粒径を測定する方法において、好ましくは、前記ライン状レーザービームは、前記泡層の表面に対して斜めに照射され、前記レーザーラインは、前記泡層の表面に対して垂直な方向における位置から撮影される。
また、上記目的の一つは、麦芽アルコール飲料に形成された泡層の表面にライン状レーザービームを照射するレーザー光源と、前記泡層の表面に映されたレーザーラインを撮影して、前記レーザーラインの画像を取得する撮像デバイスと、前記レーザーラインの画像から前記レーザーラインのエッジ情報を取得し、前記エッジ情報に基づいて前記泡層の泡の粒径を算出する算出デバイスとを含む、麦芽アルコール飲料の泡の粒径を測定する装置によって達成される。
本発明の他の目的及び特長は、以下図面と共に述べる説明より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
FIG.1は、本発明による麦芽アルコール飲料の泡の粒径を測定する装置を示す図である。
FIG.2は、本発明による麦芽アルコール飲料の泡の粒径を測定する方法の原理を説明する図である。
FIG.3は、泡層の表面に映されたレーザーラインをCCDカメラによって撮影して得られたレーザーラインの画像の一例を示す図である。
FIG.4A−4Dは、レーザーラインのエッジ部分に観察される凹凸を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面と共に詳細に説明する。
まず、FIG.1を用いて本発明による麦芽アルコール飲料の泡の粒径を測定する装置を説明する。本発明による麦芽アルコール飲料の泡の粒径を測定する装置は、麦芽アルコール飲料の泡の品質を判定する装置でもあり、簡単のために、以下泡品質評価装置と呼ぶことにする。また、麦芽アルコール飲料としてビールを用いた例を説明する。
FIG.1に示す泡質評価装置は、ビール注出装置10、データ処理装置6、及びデータ出力装置7から構成される。ここで、ビール注出装置10は、ターンテーブル2、ビール注出機構3、CCDカメラ4、及びラインレーザー光源5を備える。また、ターンテーブル2は、テスト用コップ1などの容器を支持し、ビールの注出位置及びビールの泡を撮影することができる位置にテスト用コップ1を移動させることができる。さらに、ビール注出機構3は、ビール瓶を保持し、テスト用コップ1にビールを注出する。CCDカメラ4のような撮像デバイスは、ビールの表面に形成された泡を上部から撮影する。加えて、ラインレーザー光源5は、テスト用コップ1内にライン状レーザービームを照射する。レーザー光源5は、例えば、非球面レンズ及びロッドレンズで構成される。このようなライン状レーザービームを射出するレーザー光源としては、例えば、エフエムレーザテック株式会社製のLM10を使用することができる。このレーザー光源を使用することによって、線幅1mm以下のライン状レーザービームを取り出すことができる。
また、FIG.1に示す泡質評価装置は、モニタ付きパソコン6及びプリンター7を備える。ここで、モニタ付きパソコン6は、ビール注出装置10の動作を設定及び制御すると共に、得られた測定データを処理し、プリンター7は、測定データをプリントアウトする。
次に、FIG.2を用いて本発明による麦芽アルコール飲料であるビールの泡の粒径を測定する方法の原理を説明する。まず、FIG.1に示す泡質評価装置において、テスト用コップ1にビール注出機構3からビールが注がれて、ターンテーブル2を回転させることで、ビールの泡を撮影することができる位置にテスト用コップ1を移動させる。このとき、テスト用コップ1に注がれたビールの表面に泡層が形成されている。次に、レーザー光源5から、テスト用コップ1に注がれたビールへ、ライン状レーザービームを照射し、テスト用コップ1に注がれたビールを、テスト用コップ1の上方からCCDカメラ4を用いて撮影する。より詳しくは、テスト用コップ1に対して斜め上方に配置されたレーザー光源5から、テスト用コップ1に注がれたビールに形成された泡層の表面に、ライン状レーザービームが斜めに照射され、レーザーラインが、泡層の表面に映される。この泡層の表面に映されたレーザーラインを、CCDカメラ4によって撮影する。
FIG.2の上側に示すように、テスト用コップ1に注がれたビールを、時間経過と共に側面から観察すると、テスト用コップ1に注がれたビールの表面に形成された泡層が、時間の経過と共に崩壊して、泡層の表面(泡面)が、初期の泡面Sから泡面Sまで下降する。このとき、泡層の表面に映されたレーザーラインは、位置Aから位置Bへと移動する。
また、FIG.2の下側に示すように、テスト用コップ1に注がれたビールを、時間経過と共に上面から観察すると、泡面の高さが、泡面Sの高さから泡面Sの高さまで下降する間に、泡層の表面に映されたレーザーラインは、位置αから位置βまで移動する。すなわち、泡面が、Sの高さにあるときには、レーザーラインは、αの位置にあり、泡面が、Sの高さにあるときには、レーザーラインは、βの位置にある。
FIG.3は、泡層の表面に映されたレーザーラインをCCDカメラによって撮影して得られたレーザーラインの画像の一例を示す。FIG.3に示すように、レーザー光源5からライン状レーザービームが射出され、ビールの泡層の表面に、白く光るライン状の幅約1mmのレーザーラインが映される。このレーザーラインのエッジ部分には、泡の粒子によって形成される凹凸が観察される。
FIG.4A−4Dは、ビールの泡層の表面に映されたレーザーラインを詳細に説明するための模式図であり、レーザーラインのエッジ部分に観察される凹凸を示す。ここで、ビールの泡層の表面に映されたレーザーラインの両方のエッジ部分に沿って、等しい粒径を有する泡が整列すると仮定する。FIG.4Aは、比較的大きい粒径を有する泡の整列を示し、FIG.4Cは、比較的小さい粒径を有する泡の整列を示し、FIG.4Bは、中間の粒径を有する泡の整列を示す。なお、FIG.4Dは、FIG.4Aに示すレーザーラインのエッジ部分に存在する泡の一つのm−m’方向に沿った断面図である。すなわち、FIG.4A−4Cは、FIG.4Dに示すようにレーザー光源5からライン状レーザービームをビールの泡層の表面に対して斜めに照射したときに、ビールの泡層の表面に整列した泡によってレーザーラインのエッジ部分に凹凸が生ずる。このようなエッジ部分に凹凸を有するレーザーラインをCCDカメラ4によって撮影する。次に、FIG.3に示すような得られたレーザーラインの画像を、モニタ付きパソコン6で画像処理して、レーザーラインのエッジ部分の凹凸を明確にする。
モニタ付きパソコン6によるレーザーラインの画像に対する画像処理として、レーザーラインの画像の明るさを検出すると、レーザーラインの画像のエッジ部分に存在する泡の輪郭を観察することができる。すなわち、レーザーラインの画像における明るい部分は、ライン状レーザービームを示し、レーザーラインの画像のエッジ部分における暗い部分は、泡を示す。ここで、レーザーラインの画像のエッジ部分における暗い部分の大きさを評価することにより、泡の粒径を算出することができる。例えば、レーザーラインのエッジ部分における画像信号を、所定の明るさの閾値を設定して二値化し、レーザーラインのエッジ部分における明るい部分と暗い部分とを識別する。このとき、明るさの閾値を適正に選択することによって、FIG.4A、4B、及び4Cに示すように、レーザーラインのエッジ部分の泡による明確な凹凸の輪郭を検出することができる。得られたレーザーラインの画像の明るさに関する二次元波形は、その波形が泡粒径の大小を反映しているため、泡粒径を数値化するには波形を計測、解析する様々な手法を適用することが可能である。例えば、基準定規を画像処理ソフトウェアーに予め準備しておき、二次元波形の振幅を当該定規にて各々計測することにより個々の泡径を直接知ることができる。
また、レーザーラインのエッジ部分凹凸の輪郭は画像処理画面上では画素の繁がりとして認識されている。グラスの上面方向から取得した画面において、この輪郭を形成している個々の画素は、FIG.2に示したように、側面方向の高さ情報と対応しており、数値化取得が可能である。輪郭を形成している全画素の高さ情報のばらつきは、その凹凸を形成させる元となった泡粒のサイズを反映しており、この高さ情報のばらつき具合の統計量(例えば、偏差や分散)を比較することで、泡粒のサイズを比較することが可能となる。これらのレーザーラインの画像に対する画像処理及び泡の粒径の評価は、FIG.1に示す泡質評価装置におけるモニタ付きパソコン6の演算処理部で実行される。
以上のように、FIG.1に示すような泡質評価装置において、ビール注出装置10を使用してテスト用コップ1にビールを注ぎ、ビールに形成された泡層にレーザー光源5からライン状レーザービームを照射し、泡層の表面に映されたレーザーラインをCCDカメラ4により撮影し、得られたレーザーラインの画像をモニタ付きパソコン6によって画像処理して、レーザーラインのエッジ部分の輪郭に関する情報(エッジ情報)を得て、この輪郭の情報に基づいて、ビールに形成された泡層の泡の粒径を判定することができる。なお、FIG.2に示すように、テスト用コップ1にビールを注いだ直後、及びビールを注いでから所定時間が経過した後に、FIG.1に示すような泡質評価装置を使用してビールに形成された泡層を観察することによって、ビールの泡持ちの程度も判定することができる。また、上述のようにレーザーラインのエッジ部分の輪郭に関する情報を得ることで、レーザーラインのエッジ部分における凹凸の数、すなわち、レーザーラインのエッジ部分における泡の数を数値化すること、及び泡の大きさを数値化することも可能となる。
以上、本発明の好ましい実施例を詳述してきたが、本発明は、上記実施例に限定されず、上記実施例を、請求の範囲内で改良及び変更することができる。
【産業上の利用可能性】
以上説明したように、本発明による麦芽アルコール飲料の泡の粒径を測定する方法及び麦芽アルコール飲料の泡の粒径を測定する装置を使用して、麦芽アルコール飲料の泡の粒径を測定して、麦芽アルコール飲料の泡の品質を客観的に判定することができる。
【図1】

【図2】

【図3】



【特許請求の範囲】
【請求項1】
麦芽アルコール飲料に形成された泡層の表面にライン状レーザービームを照射するステップと、
前記泡層の表面に映されたレーザーラインを撮像デバイスで撮影して、前記レーザーラインの画像を取得するステップと、
前記レーザーラインの画像から前記レーザーラインのエッジ情報を取得し、前記エッジ情報に基づいて前記泡層の泡の粒径を算出するステップとを含むことを特徴とする、麦芽アルコール飲料の泡の粒径を測定する方法。
【請求項2】
前記ライン状レーザービームは、前記泡層の表面に対して斜めに照射され、
前記レーザーラインは、前記泡層の表面に対して垂直な方向における位置から撮影されることを特徴とする、請求項1記載の麦芽アルコール飲料の泡の粒径を測定する方法。
【請求項3】
麦芽アルコール飲料に形成された泡層の表面にライン状レーザービームを照射するレーザー光源と、
前記泡層の表面に映されたレーザーラインを撮影して、前記レーザーラインの画像を取得する撮像デバイスと、
前記レーザーラインの画像から前記レーザーラインのエッジ情報を取得し、前記エッジ情報に基づいて前記泡層の泡の粒径を算出する算出デバイスとを含むことを特徴とする、麦芽アルコール飲料の泡の粒径を測定する装置。

【国際公開番号】WO2004/025220
【国際公開日】平成16年3月25日(2004.3.25)
【発行日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−535933(P2004−535933)
【国際出願番号】PCT/JP2003/011574
【国際出願日】平成15年9月10日(2003.9.10)
【出願人】(303040183)サッポロビール株式会社 (150)
【Fターム(参考)】