説明

黒色耐熱遮光フィルムとその製造方法、および、それを用いた絞り、光量調整モジュール並びに耐熱遮光テープ

【課題】大気中155℃の高温環境下でも高遮光性、表面及び端面での低反射性、低表面光沢性、黒色性を維持することでシャッター羽根や固定絞り、光量調整モジュール用絞り装置の絞り羽根、耐熱遮光テープなどとして使用できる黒色耐熱遮光フィルムとその製造方法を提供する。
【解決手段】155℃以上の耐熱性を有する樹脂フィルム(A)の両面に微細凹凸が形成された黒色耐熱遮光フィルムであって、樹脂フィルム(A)が、黒色顔料(B)及び無機充填材(C)を含有する黒色フィルムであり、かつ、黒色耐熱遮光フィルムの厚みが25μm以下、両表面の表面粗さ(算術平均高さRa)が0.2〜2.2μmであって、さらに、波長380〜780nmにおける光の遮光性の指標である平均光学濃度が3.5以上であることを特徴とする黒色耐熱遮光フィルムなどにより提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、黒色耐熱遮光フィルム、および、それを用いた絞り、光量調整モジュール並びに耐熱遮光テープに関し、より詳しくは、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラのレンズシャッターなどのシャッター羽根または絞り羽根や、カメラ付き携帯電話や車載モニターのレンズユニット内の固定絞りや、プロジェクターの光量調整モジュールの絞り羽根などの光学機器部品として用いられ、耐熱性、高遮光性、低反射性、低表面光沢性に優れた黒色耐熱遮光フィルムとその製造方法、及び、それを用いた絞り、光量調整モジュール、並びに耐熱遮光テープに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラの高速(機械式)シャッターの開発が活発に行われている。その狙いは、シャッタースピードをより高速にして、超高速の被写体をブレ無く撮影し、鮮明な画像を得ることを可能にすることである。一般にシャッターは、シャッター羽根と呼ばれる複数の羽根が回転、移動することで開閉が行われているが、シャッタースピードを高速化するためには、シャッター羽根が瞬間的な動作と停止に対応できるよう、軽量かつ高摺動性であることが必要不可欠である。更に、シャッター羽根は、シャッターが閉じている状態では、フィルムなどの感光材やCCD、CMOSなどの撮像素子の前面を覆って光を遮る役割を果たすために、完全な遮光性を必要とする。しかも、シャッター羽根には、複数枚のシャッター羽根が互いに重なり合って動作する際に、各羽根間の漏れ光の発生を防ぐために羽根表面の反射率が低いこと、すなわち表面色の黒色度が高いことが望まれる。
【0003】
デジタルカメラのレンズユニット内に挿入され、一定の光量に絞って光を撮像素子に送る役割の固定絞りについても、絞りの表面で光の反射が生じると迷光となり鮮明な撮像を損なうため、シャッター羽根には、表面の低反射性、すなわち黒色性が高いことが要求される。
【0004】
撮影機能を有した携帯電話、すなわちカメラ付携帯電話においても、デジタルカメラ同様、近年、高画素で高画質の撮影が行えるよう、小型の機械式シャッターがレンズユニットに搭載され始めている。また、固定絞りも携帯電話のレンズユニット内に挿入されている。上記の携帯電話に組み込まれる機械式シャッターは、一般のデジタルカメラよりも、省電力で作動することが要求される。そのためシャッター羽根の軽量化が特に強く要求される。
カメラモジュールやレンズユニットを実装するには、従来、接着剤を用いて個々に部品を製造している。ところが、最近カメラ付き携帯電話では、レンズユニットの組み立てる際、製造コストを低減する目的で、レンズ、固定絞り、シャッターなどの各部材をリフロー工程で行えることが要望されている。そのため、これに用いられるシャッター羽根や固定絞りには、表面の低反射性・黒色性の他に耐熱性が要求されるようになった。
このリフロー工程は、近年のデジタルカメラ、カメラ付き携帯電話などのカメラモジュールの製造方法において、小型化、低背化、製造工程の簡略化を目標として実用化されつつある。リフロー工程が実用化されることによって、各部品が個々のチップ単位に分離されていないウェハー状態ですべての組み立てを行い、ダイボンディング、半田ボールなどでの回路基板への実装を終了した後、これをチップサイズに個々にダイシングし、完成品を得るという製造方法へと移行していく。なお、ここで使用される部品は、近年半導体チップのパッケージ産業で培われたものであり、ウェハー・レベル・チップサイズ・パッケージ(以下、WLCSPと言う)と呼ばれる。
このWLCSPを用いれば、部品点数も削減でき、カメラモジュールの小型化、低背化に対して有効である。しかし、打ち抜き端面にバリなどがあると、WLCSP構造のカメラモジュールを組み立てる際、ウェハー同士の積層に支障をきたしてしまう。
【0005】
また、CCD、CMOSなどの撮像素子の前面からの漏れ光以外にもフレキシブルプリント配線基板(以下、FPCと称する)がより薄くなった場合、撮像素子の裏面にあるFPC側から入射する光も無視できなくなってしまう。この撮像素子裏面からの入射光によって、FPCの配線回路が撮像域に写り込み、撮像の品質が劣化してしまうため、FPC側からの漏れ光を遮光する必要が生じる。
【0006】
また、最近の自動車搭載機器の動向として、バックビューモニターなどのビデオカメラを用いたモニターが搭載される傾向にある。このビデオカメラモニターのレンズユニット内にも、固定絞りが使われているが、同様に迷光防止のため絞りの表面は、低反射性・黒色性であることが要求されている。そして車載用のビデオカメラのレンズユニットには、真夏の炎天下など高温の使用環境下でも機能を損なうことが無いよう、耐熱性が必要であり、固定絞り部材にも耐熱性が要求されている。
【0007】
一方、大画面でホームシアターとして鑑賞できる液晶プロジェクターが、最近、一般家庭に普及し始めている。リビングルームといった明るい環境下でも鮮やかなハイコントラスト映像が楽しめるように高画質化が強く要望され、ランプ光源を高出力化することによって、画質の高輝度化が図られている。プロジェクターの光学系には、ランプ光源からの光量を調整する光量調整モジュール用絞り装置(オートアイリス)がレンズ系の内部や側面に用いられている。光量調整モジュールの絞り装置は、シャッターと同様に複数枚の絞り羽根が互いに重なって光を通す開口部の面積を調整する。このような光量調整モジュール用絞り装置の絞り羽根も、シャッター羽根の場合と同様の理由から表面の低反射性と軽量化が要求されている。それと同時に、光量調整モジュール用絞り装置の絞り羽根では、ランプ光の照射による加熱に対する耐熱性も必要となる。すなわち、光照射によって羽根材の低反射性が損なわれてしまうと、迷光が生じて鮮明な映像を写せなくなるからである。
【0008】
上述のシャッター羽根や固定絞り、光量調整モジュール用絞り装置の絞り羽根では、遮光板として、要求特性に応じて下記のものが用いられている。
耐熱性が要求される場合は、遮光板として、SUS、SK材、Al、Ti等の金属薄板を基材としたものが一般的である。金属薄板自体を遮光板としたものもあるが、金属光沢を有するため、表面の反射光による迷光の影響を回避したい場合には好ましくない。これに対して金属薄板上に黒色潤滑塗装した遮光板は、低反射性、黒色性を有するが、塗装部が耐熱性に劣るため、高温環境下では一般に使用できない。しかも、加工端面での光の反射を抑えるために、所定の形状に加工後、加工端面を黒染め処理する工程が必要となり、製造コストが高くなるという課題を有している。
そのため、特許文献1には、アルミニウム合金などの金属製羽根材料の表面に硬質炭素膜を形成した遮光材が開示されている。しかし、硬質炭素膜を表面形成しても低反射特性は実現できず、反射光による迷光の発生は避けられない。上記いずれの場合も、金属薄板を基材に用いた遮光板は、重量が大きいため、シャッター羽根や絞り羽根として使用すると、羽根を駆動する駆動モーターのトルクが大きくなり、消費電力が大きくなってしまう。また、シャッタースピードが上げられない、羽根同士の接触により騒音が発生するなどの問題が有る。
【0009】
これに対して、樹脂フィルムを基材として用いた遮光板も提案されている(特許文献2,3参照)。この特許文献2では、表面の反射を低減するためにマット処理加工した樹脂フィルムを使用した遮光板や、微細な多数の凹凸面を形成することで艶消し性を付与したフィルム状の遮光板を提案している。また、特許文献3では、樹脂フィルム上に、艶消し塗料を含有した熱硬化性樹脂を塗膜した遮光フィルムを提案している。しかし、これらは、カーボンブラックなどの黒色顔料を内部に含浸させたポリエチレンテレフタレート(PET)などの樹脂フィルムを基材として用い、その基材表面に黒色顔料などを含浸した遮光層を形成することで遮光板に十分な遮光性を付与している。つまり、黒色顔料を含浸させた樹脂フィルムだけなので十分な遮光性を発現することができない。また、前記遮光層に黒色顔料や艶消し剤を含浸させることで表面の反射や表面光沢を低減させているが、遮光板を加工して形成される端面で、光の反射により発生する迷光を防止することはできない。
【0010】
樹脂フィルムを基材として用いた遮光板については、比重が小さく、安価で可とう性があるという利点から、黒色顔料を含浸させたポリエチレンテレフタレート(PET)を基材とした遮光板が広範に用いられている。
【0011】
しかし、PET材は、耐熱性が150℃より低く、引張弾性率などの機械的強度が弱いために、高出力のランプ光が照射されるプロジェクターの光量調整モジュール用絞り部材やリフロー工程に対応した固定絞り部材やシャッター用部材として利用することができない。また、高速シャッターの羽根部とするには、シャッター羽根の高速化に応じてフィルム厚みの低減が必要となるが、黒色微粒子を内部に含浸させて製造された樹脂フィルムの場合は、フィルム厚が薄くなると十分な遮光性を発揮することができない。特に38μm以下になると、光量調整モジュール用絞りや固定絞り、シャッター羽根には使用できない。
一方、耐熱性に優れた樹脂中に、カーボンブラックなどの黒色顔料を含浸させた樹脂フィルムについては、次のような提案がなされている。例えば、特許文献4には、高耐熱性を有するポリイミド樹脂と、カーボンブラック、アセチレンブラックなどの黒色顔料などを含浸させた導電性ポリイミド組成物が開示され、また、特許文献5、6には、カーボンブラックやグラファイトなどの黒色顔料を含浸させた導電性ポリイミド成型体が開示されている。しかし、特許文献4〜6では、フィルムの表面粗さや遮光性、正反射率、表面光沢度などの光学特性について言及がなく、遮光性フィルムとして評価することはできない。
【0012】
また、デジタルカメラ、カメラ付携帯電話の小型化、薄肉化が進むとともに、近年、搭載される構成部品にも小型化、薄肉化が求められている。そのため、本出願人は、200℃以上の耐熱性を有する樹脂フィルム基材(A)と、その片面もしくは両面にスパッタリング法で形成された50nm以上の膜厚を有するNi系金属膜(B)と、その上に、スパッタリング法で形成された、低反射性のNi系酸化物膜(C)からなり、かつ表面粗さが0.1〜0.7μm(算術平均高さRa)である耐熱遮光フィルムを提案した(特許文献7参照)。これにより、従来よりも遮光性、耐熱性、摺動性、低表面光沢性、導電性に優れた耐熱遮光フィルムとすることができた。
しかしながら、カメラモジュール内のレンズユニットの構成部品である固定絞り、シャッター羽根には、特に、厚みが25μm以下という要望が非常に強くなっており、フィルムが薄く、耐熱性、高遮光性、低反射性、低表面光沢性、黒色性に優れたシャッター羽根材や固定絞り材が必要不可欠となっている。
特許文献2、3では厚みが25〜250μmの樹脂フィルムを基材として用いており、フィルム厚み25μm以下が望まれるデジタルカメラやカメラ付き携帯電話向けの固定絞りやシャッター羽根には適さない。一方、特許文献6にはフィルム厚み約25μmの実施例があるが、表面を粗雑化しておらず、特許文献4、5では、フィルム厚みについての記載はない。
さらに、デジタルカメラ、カメラ付き携帯電話に用いられる固定絞りやシャッター羽根、プロジェクターの光量調整モジュール用絞り羽根は、機械加工で所望の形状に加工された遮光板が使用されるが、その加工端面が光の光路上に配置されるため、端面での光の反射が高いとゴーストやフレアなどが発生し、撮像品質が悪くなる。そのため、端面での遮光性、低反射性、低表面光沢性が重要となる。一般に、端面へ入射する光を吸収し、遮光するために黒色顔料を含浸させた樹脂フィルムを基材に用いる場合が多い。しかし、特許文献2、3では、カーボンブラックなどの黒色顔料を含浸させた樹脂フィルムを基材として用いているものの、樹脂フィルムが厚い為に、遮光性を有する黒色顔料を十分に添加でき、端面での光の反射も抑制できるに過ぎない。フィルムがより薄い場合では、フィルム製造時、良好なフィルムが得られる黒色顔料の含有量も少なくなってしまい、絞り表面や端面での遮光性が失われてしまうという問題がある。
【0013】
以上説明したように、従来、耐熱性が要求される用途では、樹脂フィルムと比較して重量の大きい金属薄板、すなわち、SUS、SK材、Al、Ti等からなる金属薄板を用いざるを得なかった。そのため、羽根を駆動する駆動モーターのトルクや消費電力が大きくなってしまう、あるいはシャッタースピードが上げられず、羽根同士の接触による騒音が発生してしまう、さらには表面および加工端面を黒染め処理するため製造コストが高くなるという問題を抱えている。したがって、遮光板の厚みが25μm以下であって、優れた耐熱性に加え、可視域における十分な遮光性、表面及び加工端面の低反射性、低表面光沢性、軽量性を併せ持つ新たなシャッター羽根や固定絞り、光量調整モジュール用絞り装置の絞り羽根が必要とされていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平2−116837号公報
【特許文献2】特開平1−120503号公報
【特許文献3】特開平4−9802号公報
【特許文献4】カナダ特許第708896号
【特許文献5】米国特許第5078936号
【特許文献6】特開平6−212075号公報
【特許文献7】特開2008−158479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明では、上記従来技術の問題点に鑑み、大気中155℃の高温環境下でも高遮光性、表面及び端面での低反射性、低表面光沢性、黒色性を維持することでシャッター羽根や固定絞り、光量調整モジュール用絞り装置の絞り羽根、耐熱遮光テープなどとして使用できる黒色耐熱遮光フィルムとその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上述した従来の課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンナフタレート、アラミド、ポリエーテルエーテルケトン、又はポリエーテルサルフォンから選ばれた1種以上の耐熱性樹脂に、黒色顔料や無機充填材を含有させることにより、厚みが25μm以下、かつ波長380〜780nmにおける平均光学濃度が3.5以上である黒色耐熱遮光フィルムとした。そして、これを用いることで、155℃以上の高温環境下でも変形せず、高遮光性、低反射性、低表面光沢性、明度などの特性が維持でき、更に所望の形状に加工して得られる端面に入射した迷光を黒色顔料により光吸収させ、端面に形成された微細な凹凸で迷光を散乱させることができ、低反射化、低表面光沢度が達成されることを見出し、デジタルカメラ、カメラ付き携帯電話、デジタルビデオカメラ、液晶プロジェクターなどの絞りや羽根部材として利用できることを確認して、本発明を完成するに至った。
【0017】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、155℃以上の耐熱性を有する樹脂フィルム(A)の両面に微細凹凸が形成された黒色耐熱遮光フィルムであって、樹脂フィルム(A)が、耐熱性を有する樹脂に少なくとも黒色顔料(B)と無機充填材(C)が含有された黒色フィルムであり、かつ、フィルム両表面の表面粗さ(算術平均高さRa)が0.2〜2.2μmであって、さらに、前記耐熱遮光フィルムの厚みが25μm以下、波長380〜780nmにおける光の遮光性の指標である平均光学濃度が3.5以上であることを特徴とする黒色耐熱遮光フィルムが提供される。
【0018】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、前記平均光学濃度が4.0以上であることを特徴とする黒色耐熱遮光フィルムが提供される。
また、本発明の第3の発明によれば、第1または2の発明において、樹脂フィルムの両表面の波長380〜780nmにおける平均正反射率が0.4%以下であることを特徴とする黒色耐熱遮光フィルムが提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、樹脂フィルム(A)が、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンナフタレート、アラミド、ポリエーテルエーテルケトン、又はポリエーテルサルフォンから選ばれた1種以上の樹脂を主成分とするフィルムであることを特徴とする黒色耐熱遮光フィルムが提供される。
一方、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、黒色顔料(B)が、カーボンブラック、アニリンブラック、チタンブラック、無機顔料ヘマタイト、またはペリレンブラックから選ばれた1種以上からなる顔料であることを特徴とする黒色耐熱遮光フィルムが提供される。
また、本発明の第6の発明によれば、第1〜5のいずれかの発明において、黒色顔料(B)の含有量が、耐熱性樹脂(固形物100重量部)に対して、5〜22重量部であることを特徴とする黒色耐熱遮光フィルムが提供される。
また、本発明の第7の発明によれば、第1〜6のいずれかの発明において、無機充填材(C)が、アルミナ、酸化チタン、シリカ、酸化亜鉛、マグネシアから選ばれた1種以上であることを特徴とする黒色耐熱遮光フィルムが提供される。
また、本発明の第8の発明によれば、第1〜7の発明において、無機充填材(C)の含有量が耐熱性樹脂(固形物100部)に対して、2〜25重量部であることを特徴とする黒色耐熱遮光フィルムが提供される。
また、本発明の第9の発明によれば、第1〜8のいずれかの発明において、CIE(国際照明委員会)で標準化されている、L表色系測定(JIS Z 8729)において、L(明度)が25〜40であることを特徴とする黒色耐熱遮光フィルムが提供される。
また、本発明の第10の発明によれば、第1〜9のいずれかの発明において、各面の表面光沢度が8以下であることを特徴とする黒色耐熱遮光フィルムが提供される。
【0019】
一方、本発明の第11の発明によれば、第1〜10の発明において、155℃以上の耐熱性を有する耐熱性樹脂に溶剤とともに、少なくとも黒色顔料(B)と無機充填材(C)を含有させて混練し、このスラリーを支持体に塗布し、乾燥して膜厚が5〜25μmとなった樹脂フィルム(A)を得た後、フィルム両表面の微細凹凸が0.2〜2.2μmの表面粗さ(算術平均高さRa)となるようにマット処理加工を行うことを特徴とする黒色耐熱遮光フィルムの製造方法が提供される。
【0020】
また、本発明の第12の発明によれば、第11の発明において、黒色顔料(B)の含有量が、耐熱性樹脂(固形物100部)に対して、5〜22重量部であることを特徴とする黒色耐熱遮光フィルムの製造方法が提供される。
また、本発明の第13の発明によれば、第11の発明において、無機充填材(C)の含有量が、耐熱性樹脂(固形物100部)に対して、2〜25重量部であることを特徴とする黒色耐熱遮光フィルムの製造方法が提供される。
【0021】
一方、本発明の第14の発明によれば、第1〜10のいずれかの発明に係る黒色耐熱遮光フィルムを、打ち抜き加工して得られる耐熱性に優れた絞りであって、得られた絞りの端面が低表面光沢性を有していることを特徴とする耐熱性に優れた絞りが提供される。
また、本発明の第15の発明によれば、第14の発明において、黒色耐熱遮光フィルムが、ウェハー・レベル・チップサイズ・パッケージ(WLCSP)構造のカメラモジュールに利用されることを特徴とする絞りが提供される。
また、本発明の第16の発明によれば、第1〜10のいずれかの発明に係る黒色耐熱遮光フィルムを、打ち抜き加工して得られる耐熱性に優れた羽根材であって、得られた絞りの端面が低表面光沢性を有していることを特徴とする耐熱性に優れた羽根材が提供される。
また、本発明の第17の発明によれば、第14,15の発明の耐熱性に優れた絞り、または、第16の発明の耐熱性に優れた羽根材のいずれかを具備していることを特徴とする光量調整モジュールが提供される。
さらに、本発明の第18の発明によれば、第1〜10のいずれかの発明において、黒色耐熱遮光フィルムの片面、または両面に粘着層を設けてなる耐熱遮光テープが提供される。
【発明の効果】
【0022】
本発明の黒色耐熱遮光フィルムは、算術平均高さRaが0.2〜2.2μmの表面粗さを有し、155℃以上の耐熱性を有する樹脂に、少なくとも黒色顔料と無機充填材が含有され、厚みが25μm以下であって、可視光域(波長380〜780nm)において低反射性、高遮光性、低表面光沢性を有しているため様々な光学部材に有用である。
また、耐熱性樹脂が少なくとも黒色顔料と無機充填材を含有しているので、フィルム内部は黒色であり、打ち抜き加工端面の色も黒色となる。さらに黒色顔料による光吸収とともに、無機充填材が分散されているため、無機充填材の表面凹凸性によって、端面での反射、表面光沢を防止することが可能となり、最近のデジタルカメラ、カメラ付き携帯電話、デジタルビデオカメラ、液晶プロジェクターなどの小型化、薄肉化の要望に対応した絞り材として極めて有用である。
さらに、本発明の黒色耐熱遮光フィルムは、耐熱性が優れているとともに、打ち抜き加工で端面に割れ、クラック、バリなどが発生せず、打ち抜き性に優れている。したがって、打ち抜き性の優れた本発明の黒色耐熱遮光フィルムは、WLCSP向けの絞り材としても極めて有用である。
【0023】
さらに、本発明の黒色耐熱遮光フィルムは、樹脂フィルムのため従来の金属薄板をベースにした遮光板に比べて軽量性に優れている。また、カーボンブラックなどの黒色顔料と無機充填材を含浸したポリイミド、ポリアミドイミドなどの高耐熱性の樹脂フィルムを用いることで、大気中300℃の高温環境下でも耐熱性を有する軽量な黒色遮光フィルムが実現でき、表面および加工端面の低反射性、低表面光沢性、高遮光性、黒色性も損なわれないことから、液晶プロジェクターの光量調整モジュール用絞り装置の絞り羽根材や、リフロー工程による組み立てに対応できる固定絞り材、シャッター羽根材並びに耐熱遮光テープとして利用することができるため、工業的価値が極めて高い。
【0024】
また、本発明の黒色耐熱遮光フィルムは、25μm以下と薄いため更なる軽量化が達成できるだけでなく、十分な遮光性を損なうことがないため、高速シャッターのシャッター羽根にも有効である。よって、駆動モーターの小型化が可能であり、光量調整モジュール用絞り装置や機械式シャッターの小型化が実現するなどのメリットがある。
さらに、本発明の黒色耐熱遮光フィルムの片面または両面に粘着層を設けた耐熱遮光テープは、FPCに貼り付けることで、CCD、CMOSなどの撮像素子の背面から漏れた光を吸収して通過を阻止することができる。そのため、漏れ光の撮像素子への再入射を抑制でき、撮像品質の安定化に寄与できる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の黒色耐熱遮光フィルムとその製造方法、及びその用途について説明する。
【0026】
1.黒色耐熱遮光フィルム
本発明の黒色耐熱遮光フィルムは、155℃以上の耐熱性を有する、厚み25μm以下の樹脂フィルム(A)の両面に、微細な凹凸を形成した黒色耐熱遮光フィルムであって、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンサルファイド、アラミド、ポリエーテルエーテルケトン、又はポリエーテルサルフォンから選ばれた1種以上の耐熱性樹脂に、少なくとも黒色顔料(B)と無機充填材(C)が含有されている。
本発明の黒色耐熱遮光フィルムの厚みは、25μm以下である。好ましくは5〜25μmであり、より好ましくは10〜20μmである。5μmよりも薄いと、ハンドリング性に劣るため、フィルムに傷や折れ目などの表面欠陥が付きやすく、25μmより厚いと、小型化、薄肉化が進む絞り装置や光量調整モジュールへの搭載ができなくなるおそれがある。
【0027】
(1)耐熱性を有する樹脂フィルム(A)
本発明の黒色耐熱遮光フィルムは、155℃以上の耐熱性を有する、耐熱樹脂フィルムであり、樹脂フィルムの基材樹脂は、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンサルファイド、アラミド、ポリエーテルエーテルケトン、又はポリエーテルサルフォンから選ばれた1種以上の耐熱性樹脂で構成されている。
ここで、155℃以上の耐熱性を有するフィルムとは、ガラス転移点が155℃以上であるフィルムであり、またガラス転移点の存在しない材料については、155℃以上の温度にて変質しないことを意味する。
ポリエチレンナフタレートは、耐熱性が約200℃であるから、155〜200℃の環境下で利用することができ、非常に安価であるため、本発明の用途材料として有用である。また、ポリイミド、ポリアミドイミド、アラミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、又はポリエーテルサルフォンは、耐熱性が200℃以上であり、200℃を越える環境下でも利用できる。特に、ポリイミド、ポリアミドイミドは耐熱温度が300℃以上と最も高く、本発明の用途に最適なフィルムである。
【0028】
(2)黒色顔料(B)
また、上記樹脂フィルム(A)は、上記耐熱性樹脂に、黒色顔料が含有されて黒色化していなければならない。黒色以外の着色フィルム表面に黒色塗膜を形成し、外観上黒色化した遮光板では、カメラ付き携帯電話などのカメラモジュールに搭載される固定絞りとして用いると、打ち抜き加工後の端面における反射や表面光沢を抑制する効果が得られない。
【0029】
黒色顔料を耐熱性樹脂に含有させる目的は、上述のように、遮光板の表面の黒色化と、打ち抜き加工後の表面および端面での光吸収により遮光することにある。黒色顔料としては、従来公知の材料が使用でき、例えば、カーボンブラック、アニリンブラック、チタンブラック、無機顔料ヘマタイト、ペリレンブラックのうちの1種以上を混合したものが挙げられ、これらの中でも、黒色顔料として特に、カーボンブラック、チタンブラックが好ましい。カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック等を用いることができる。
黒色度と着色力の優れたカーボンブラックとしては、一般に一次粒子径が小さいものが適切であり、平均粒子径は、1μm以下、特に0.5μm以下、さらには0.1μm以下であるものが望ましい。平均粒子径が、1μmより大きいと表面光沢度は低くなるが、遮光性が低下するので好ましくない。ただし、小さくなりすぎて平均粒子径が0.01μm未満になると凝集が大きくなるので好ましくない。チタンブラックは、二酸化チタンの還元により得られ、若干の窒素を含有する黒色顔料である
均一な色調のフィルムを得るために、例えば、カーボンブラックとして、東海カーボン社製の#7100F、チタンブラックとしてジェムコ社製の13M等、チタンブラックとして、例えば三菱マテリアル(株)の市販品が使用できる。また、アニリンブラックとして、アイ・シー・アイ・ジャパン社製のMONOLITE BLACK B、無機顔料ヘマタイトとして、日本フェロ社製のヘマタイトV−700、さらにペリレンブラックとして、BASF社製のPaliogen Black K−0084が挙げられる。
上記黒色顔料の含有量は、平均粒子径や黒色顔料の種類、樹脂の種類(成分や厚み)などによって異なるが、耐熱性樹脂(固形物100重量部)に対して5〜22重量部の範囲で適宜調節すれば遮光性に優れた黒色耐熱遮光フィルムが得られる。より好ましい黒色顔料の含有量は、8〜18重量部、特に好ましくは、10〜15重量部である。黒色顔料の含有量が5重量部未満では、波長380〜780nmにおける平均光学濃度は4.0未満となり、完全遮光性が損なわれ、光透過性が生じてしまう。また、黒色顔料の含有量が22重量部を超えると、完全遮光性は得られるが、混合物の粘性が非常に高くなり、均一なフィルムを作製することが困難となる。
【0030】
(3)無機充填材(C)
本発明の黒色耐熱遮光フィルムにおいて、無機充填材とは、アルミナ、酸化チタン、シリカ、酸化亜鉛、及び酸化マグネシウムからなる群から選ばれる1種以上である。この無機充填材は、黒色耐熱遮光フィルムの剛性を強化することとともに、艶消しすることを目的として含有され、さらに打ち抜き加工端面で、微細な表面凹凸を生じることにより、光散乱する効果を有している。よって、フィルム表面だけでなく、打ち抜き加工後の端面においても低反射性、低表面光沢度を発現することができる。
【0031】
無機充填材の平均粒子径は、10μm以下、特に5μm以下、さらには1μm以下であるものが望ましい。平均粒子径が、10μmより大きいと表面光沢度は低くなるが、遮光性が低下するので好ましくない。ただし、小さくなりすぎて平均粒子径が0.01μm未満になると凝集が大きくなるので好ましくない。
無機充填材の含有量は、平均粒子径や無機充填材の種類、樹脂の種類(成分や厚み)などによって異なるが、耐熱性樹脂(固形物100重量部)に対して、2〜25重量部が好ましく、さらに好ましいのは5〜20重量部、特に好ましいのは8〜15重量部である。2重量部未満では、フィルム表面の正反射率が高く、加工端面においては平坦な面が多く形成されるため、正反射、表面光沢度が大きくなり、好ましくない。また、25重量部を超えると、フィルムの粘性が高くなり、無機充填材の凝集による表面欠陥が発生しやすくなるため、安定的にフィルムを作製することができないため好ましくない。
また、上記黒色フィルムには、必要により、安定剤、酸化防止剤、可塑剤、防曇剤、滑剤を適宜含有させてもよい。
【0032】
(4)黒色耐熱遮光フィルムの物性
本発明の黒色耐熱遮光フィルムは、該黒色フィルムの表面粗さ(算術平均高さRa)が0.2〜2.2μmであり、好ましくは0.3〜2.1μmであり、特に0.5〜2.0μmであることが必要である。上記のような表面粗さ(算術平均高さRa)を該黒色フィルムに形成することで黒色耐熱遮光フィルムの低反射性、低表面光沢性を実現できるようになる。
ここで、算術平均高さとは、算術平均粗さとも言われ、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さだけ抜き取り、この抜き取り部分の平均線から測定曲線までの偏差の絶対値を合計して平均した値である。算術平均高さRaが0.2μmより小さいと、表面に十分な低反射性や低表面光沢性は得られない。また、算術平均高さRaが2.2μmを超えると、フィルム表面の凹凸が大きくなるため、フィルム厚が薄い場合にはマット処理加工によって、フィルムに穴やしわが起こりやすくなり、更にはフィルムが断裂するなどして、フィルムの歩留まりが悪くなるため、好ましくない。
また、光の遮光性の指標である平均光学濃度が3.5以上であることが必要である。さらに、光の遮光性の指標である平均光学濃度が4.0以上であることが好ましい。また、フィルム表面の波長380〜780nmにおける平均正反射率が0.40%以下であることを特徴としている。平均正反射率は、0.38%以下であることが好ましく、0.35%以下であることがより好ましい。
【0033】
また、本発明の黒色耐熱遮光フィルムにおいて、色の明度(以下、Lと表記する)は、25〜40であることが好ましく、より好ましくは35以下である。ここで、L値は色彩のCIE(国際照明委員会)表色系で表される明度(白黒度)を表し、CIEで標準化されている、L表色系測定(JIS Z 8729)により、可視光域での分光正反射率から求められ、L値が小さいほど黒色度が高いことを意味する。L値は、黒色顔料の含有量で調整できる。黒色耐熱遮光フィルムのL値を25未満とする場合には、黒色顔料の含有量が耐熱性樹脂(固形物100重量部)に対して、22重量部を超えてしまうので、フィルムの粘性が高くなり、均一な黒色顔料の分散が得られず、良好なフィルム表面状態が得られなくなり、算術平均高さ、正反射率、平均光学濃度、表面光沢度にばらつきが生じる。また、L値が40を超える場合では、黒色顔料の含有量が耐熱性樹脂(固形物100重量部)に対して5重量部未満となるので、完全遮光性が得られず、波長380〜780nmにおける平均正反射率が0.4%を超え、さらに表面光沢度が8より高くなってしまうため、好ましくない。
【0034】
また、該黒色耐熱遮光フィルムを打ち抜き加工して得られる固定絞りや絞り羽根は、得られる加工端面部の色が黒色であることや無機充填材を含有していることから、端面に入射した迷光は吸収または散乱され、端面での正反射、表面光沢を防止することが可能となり、デジタル撮影機器の固定絞りや機械的シャッター装置の絞り羽根、もしくは、液晶プロジェクターの光量絞り装置の羽根材として用いたときに、光学系内で反射光によって発生する迷光の出現を回避できる。
ここで、加工端面の表面光沢性は、端面に光が入射した時に、白く見える場合には表面光沢性が高いと判断し、加工端面が黒く見える場合は表面光沢性が低いとしている。端面の表面光沢性の判断は、顕微鏡下で直接、加工端面を目視観察しても良いし、写真などの記録媒体を見て判定してもよい。
【0035】
2.黒色耐熱遮光フィルムの製造方法
本発明の黒色耐熱遮光フィルムは、155℃以上の耐熱性を有する、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンナフタレート、アラミド、ポリエーテルエーテルケトン、又はポリエーテルサルフォンから選ばれた1種以上の耐熱性樹脂と、少なくとも上記黒色顔料と更に無機充填材を原料として用いて、黒色フィルムに成形したものである。また、上記黒色フィルムには、必要により、安定剤、酸化防止剤、可塑剤、防曇剤、滑剤を適宜含有してもよい。
【0036】
上記耐熱性樹脂と黒色顔料、無機充填材の混合は、溶剤を含む耐熱樹脂溶液に、黒色顔料と無機充填材を通常の攪拌混合器、たとえばヘンセルミキサー、又はバンバリーミキサー、ロールミルなどを用いて攪拌混合し、混練して混合溶液を得る。溶剤としては、各種アルコール、テトラヒドロフラン、ジグライムなどのエーテル系溶剤、N−メチル−2−ピロリドン、N,N’−ジメチルアセトアミドなどのアミド系溶剤、シクロヘキサン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶剤、γ−ブチロラクトンやテトラメチルウレアなど有機化合物を使用できるが、乾燥条件である室温〜200℃において蒸発しうるものが好ましい。
【0037】
次に、得られた上記混合溶液を任意の方法によって支持体上に塗工し、大気中、一定温度で混合溶液を固め、支持体から剥がし、フィルムを生成する。その後の乾燥工程で溶剤を除去することにより、最終的に膜厚が5〜25μmとなった黒色フィルムが得られる。ここで、支持体としては、ポリエチレンテレフタレートなどのプラスチックフィルム、不織布、ドラムなどが使用され、特に、その表面が粗雑化されたものが好ましい。
塗工方法としてはダイコーター、ドクターブレードコーター、グラビアコーター、リバースロールコーター、ノズルコーターなど公知の塗布法が用いられるが、特にこれらに限定されない。また、乾燥後、所定のフィルム厚みになるように、任意の支持体への塗布量を適宜調整し、塗布後、常圧または減圧下で加熱処理して残留溶剤を除去する。
また、乾燥条件は、混合溶液中の溶剤が加熱除去され、かつ厚み分布が均一なフィルムが得られるように、加熱温度を120〜300℃とし、加熱時間を30〜120分の間で適宜調整すればよい。
【0038】
本発明の黒色耐熱遮光フィルムを得るには、次に、この黒色フィルムの両表面に微細な凹凸を形成し、該黒色フィルム両表面に低反射性、低表面光沢性を発現させる。
具体的には、黒色フィルム両表面を、例えばショット材を使用するマット処理加工で、所定の表面凹凸を形成する。他に、ナノインプリンティング加工も用いることができる。マット処理加工の場合は、ショット材に珪砂、アルミナ、セラミックビーズまたはガラスビーズなどを使用することが一般的であるが、ショット材はこれらに限定されない。ショット材の平均粒子径は、例えば、50〜300μmとすることができる。
マット処理加工の方法として、ショットブラストとエアーブラストと呼ばれる方法が採用される。ショットブラスト法は、高速で回転するブレードにショット材を送り、ショット材を噴射してフィルムに当てる方法であり、フィルムを一定の搬送速度で搬送しながら表面凹凸を形成する。
ショット材を噴射する装置は、1台であっても複数台であっても構わない。また、エアーブラスト法は、圧縮空気を使用するか、ブロワーファンによってショット材を射出する方法である。本発明では、黒色耐熱遮光フィルムが所定の算術平均高さRaと表面光沢度を有し、健全なフィルム外観が達成できればよく、その方法はこれらに限定されない。
【0039】
黒色耐熱遮光フィルムに形成される表面凹凸の大きさは、マット処理加工中のフィルム搬送速度、搬送回数とショット材の種類、大きさ、射出圧力に依存する。本発明においては、これらの条件を最適化してフィルム表面の算術平均高さRa値が0.2〜2.2μmとなるように表面処理を行うことが重要である。ショット材として、例えば平均粒子径100μmの珪砂を用いた場合、3〜8m/分のフィルム搬送速度、搬送回数1〜3回、かつ10〜30kg/mの射出圧力とすることができる。
マット処理加工後、フィルムを水で洗浄してショット材を除去した後、乾燥する。洗浄・乾燥条件は特に制限されないが、例えば1〜5分水洗し、70〜120℃で1〜3分乾燥させることが好ましい。フィルム両面をマット処理加工する場合は、片面処理後、フィルムを裏返し、同様の処理を行う。
マット処理加工においては、黒色耐熱遮光フィルムの表面粗さが、算術平均高さRaで0.2〜2.2μmとなる条件を採用することが必要である。更に、0.3〜2.1μm、特に、0.5〜2.0μmの微細凹凸構造となる条件がより好ましい。
【0040】
3.黒色耐熱遮光フィルムの用途
本発明の黒色耐熱遮光フィルムは、デジタルカメラ、カメラ付き携帯電話、デジタルビデオカメラの固定絞り、機械式シャッター羽根や、一定の光量のみ通過させる絞り(アイリス)、更には液晶プロジェクターの光量調整モジュール用絞り装置(オートアイリス)の絞り羽根、また、CCD、CMOSなどの撮像素子裏面へ入射する光を遮光する耐熱遮光テープとして利用できる。
【0041】
本発明の黒色耐熱遮光フィルムは、そのまま特定の形状に打ち抜き加工を行って、光量調整モジュール用絞り装置(オートアイリス)の、複数の絞り羽根として用い、それらの絞り羽根を可動させ、絞り開口径を制御して光量の調整を可能とするシャッター機構に適用される。打ち抜き加工した後の加工端面は、端面に光が入射した時に、加工端面が黒く見え表面光沢性が低いものとなる。
【0042】
液晶プロジェクターの光量調整モジュール用絞り装置は、使用中、ランプ光の照射熱に常時曝される。そのため、本発明の黒色耐熱遮光フィルムを加工して製造された耐熱性と遮光性に優れた絞り羽根を搭載した光量調整モジュールが有用である。また、レンズユニットを製造する際に、リフロー工程で固定絞りや機械式シャッターを組み立てる場合においても、本発明の黒色耐熱遮光フィルムを加工して得た固定絞りやシャッター羽根を用いると、リフロー工程中の加熱環境下においても遮光性などの特性が変化しないため非常に有用である。
また、本発明の黒色耐熱遮光フィルムは、25μm以下の薄肉フィルムであり、リフロー工程中の加熱環境下においても遮光性、低反射性、打ち抜き加工端面の低反射性、低表面光沢性などの特性が変化しないため耐熱性に優れており、さらに打ち抜き加工性にも優れている。このため、カメラ付き携帯電話やデジタルカメラなどの小型化、低背化の要求に対応したWLCSP構造のリフローカメラモジュール用の絞り材として極めて有用である。
このリフロー工程を含む製法では、例えばウェハー(例えば、シリコンなど)面に等間隔でCCD、CMOSなどの撮像素子が実装され、その上に赤外線カットフィルター、レンズ、絞りなどのレンズユニットなどカメラモジュールを構成する主な部品がウェハーの上に実装され、最終的にダイシングなどで個々のカメラモジュールに分離される。
レンズユニット構成部品の絞りについては、ウェハー状の黒色耐熱遮光フィルムから、金型を使用した打ち抜き加工やレーザー加工によってウェハー内に等間隔に配列したリング状の絞りが多数形成される。カメラ付き携帯電話やデジタルカメラでのカメラモジュール用絞りは、リング状を呈しているため、従来の製法では、カメラモジュール構成部品を個々に、順次組み立てていく場合のように打ち抜き加工時に、リング状の絞りをシートから脱落させ、その後ピックアップする方法が採用されている。これに対して、リフロー工程を含む製法では、不要な部分のみウェハーから脱落させ、ウェハー内で、ある幅をもったリードによって、個々の絞りが連続的につながった形状になるように加工する。このため、得られたウェハー状の絞りを例えば、耐熱レンズが多数形成されたウェハーと組み合わせて、撮像素子が搭載されたウェハー上に同時に実装し、その後、個々のカメラモジュールにダイシングすればよい。
さらに、車載ビデオカメラモニターのレンズユニット内の固定絞りも、夏場の太陽光による高温環境下に曝されるため、同様の理由から本発明の黒色耐熱遮光フィルムから作製した固定絞りを適用することが有用である。
【0043】
また、本発明の黒色耐熱遮光フィルムは、その片面、または両面に粘着層を設けることで耐熱遮光テープまたはシートとすることができる。
粘着層を形成するための粘着剤は、特に限定されず、従来、粘着シート用として使用されているものの中から温度、湿度などの使用環境に適した粘着材を選択することができる。
一般的な粘着剤としては、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、あるいはシリコーン系粘着剤などを用いることができる。特に、携帯電話のレンズユニットをリフロー工程で組み立てる場合では、耐熱性が要求されるので、耐熱性の高いアクリル系粘着剤やシリコーン系粘着剤が好ましい。
また、黒色耐熱遮光フィルムに粘着層を形成するには、例えばバーコード法、ロールコート法、グラビアコート法、エアドクターコート法、ドクターブレード法、ラミネート法など、従来公知の方法により行うことができる。
【0044】
小型化、薄肉化したデジタルカメラ、カメラ付き携帯電話では、搭載される構成部品も小型で、薄肉のものが使用される。前記のとおり、CCD、CMOSなどの撮像素子や撮像素子が搭載されるFPCが薄肉の場合、撮像素子の前面からの漏れ光やFPCを透過する光によって、FPCの配線回路が撮像域に写り込み、撮像の品質が劣化してしまう。本発明の黒色耐熱遮光フィルムの片面、または両面に粘着層を設けた耐熱遮光テープは、粘着層によって、CCDやCMOSなどの撮像素子の裏面側周辺部に貼り付けることができるから、CCD、CMOSなどの撮像素子裏面へ入射する光を遮光することができる。
【実施例】
【0045】
次に、本発明について、実施例、比較例を用いて具体的に説明する。なお、得られた黒色耐熱遮光フィルムの評価は以下の方法で行った。
【0046】
(黒色耐熱遮光フィルムの平均正反射率と平行光透過率)
得られた黒色耐熱遮光フィルムは、波長380〜780nmにおける平均正反射率と平行光透過率を分光光度計(日本分光社製V−570)にて測定し、平行光透過率(T)から、以下の式に従って、平均光学濃度(ODと記す)を算出した。
OD=log(100/T)
黒色耐熱遮光フィルムの光の正反射率とは、反射光が反射の法則に従い、入射光の入射角に等しい角度で表面から反射していく光の反射率のことであり、平均正反射率とは、前記波長における正反射率の算術平均値を言う。入射角は5°で測定した。また、平行光透過率とは、黒色被覆膜を透過してくる光線の平行な成分を意味しており、次式で表される。
T(%)=(I/I)×100
(ここで、Tはパーセントで表わした平行光透過率、Iは試料に入射した平行照射光強度、Iは試料を透過した光のうち前記照射光に対して平行な成分の透過光強度である。)
【0047】
(黒色耐熱遮光フィルムの表面粗さ)
得られた黒色耐熱遮光フィルムの表面粗さは、算術平均高さRaを表面粗さ計((株)東京精密製、サーフコム570A)で測定した。
(黒色耐熱遮光フィルムの表面光沢度、色の明度L値)
得られた黒色耐熱遮光フィルムの表面光沢度は、色彩計(BYK−Gardner GmbH社製 商品名スペクトロガイド)にて、光入射角60°で行った。また、 フィルムの明度を表すL値も、CIE(国際照明委員会)で標準化されている、L表色系測定(JIS Z 8729)に準拠し、表面光沢度と同様に、上記色彩計を用いて、光源D65、視野角10°で測定した。
(加工後の端面反射と表面光沢観察)
黒色耐熱遮光フィルムをプレス金型で打ち抜き加工し、加工後の端面の反射を観察した。金属顕微鏡(ニコン製ECLIPSE ME600)を用いて、その端面に光をあて、光の反射、表面光沢の程度を観察倍率50倍で観察した。評価については反射や表面光沢が強い場合には×、弱いもしくは、ない場合には○とした。
(黒色耐熱遮光フィルムの耐熱性)
黒色耐熱遮光フィルムの耐熱性については、大気オーブンにて、155℃、200℃、270℃で30分の加熱処理を行い、フィルムの平均正反射率、平均光学濃度、表面光沢度、明度変化の有無を評価した。
【0048】
(実施例1)
ポリアミドイミド樹脂に溶剤としてメチルエチルケトンを加え、樹脂溶液の固形物100重量部に対して、黒色顔料としてカーボンブラック(東海カーボン社製、商品名:#7100F、平均粒子径0.05μm)を12.0重量部、無機充填材としてシリカ(電気化学工業社製、商品名:球状シリカ FB−302X、平均粒子径6.2μm)を4.0重量部含有し、ローラーミルを用いて混合し、黒色ポリアミドイミド樹脂溶液を作製した。ブレードコーターを用いて、加熱乾燥後のフィルム厚みが25μmとなるように、支持体であるポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの表面に樹脂溶液を塗工し、大気中、室温で固めた。その後、固めた黒色ポリアミドイミド樹脂溶液を支持体から剥がした後、150℃で1時間加熱後、さらに250℃で60分間加熱乾燥し、黒色ポリアミドイミドフィルムを作製した。
上記黒色ポリアミドイミドフィルムをマット処理装置に通紙するために、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に固定し、通紙後、ショット材として硅砂(平均粒子径100μm)を用い、5m/分の速度でフィルムを搬送しながら、20kg/mの硅砂をショットした後、水で3分間水洗し、80℃で2分間乾燥した。次に、フィルムを裏返し、同様のマット処理加工を施し、表1に示すとおり、算術平均高さRaが0.42μmの表面凹凸を形成した。
表面凹凸を形成後の黒色ポリアミドイミドフィルムは、波長380〜780nmにおける平均正反射率が0.24%、表面光沢度は5であった。平均光学濃度は4.0以上となり、完全遮光性を有していた。また、フィルムの色の明度を表すL値は、30となり、黒色度が高いことがわかった。
作製した黒色耐熱遮光フィルムを打ち抜き加工し、その端面を金属顕微鏡で反射の程度を観察したところ、端面の反射や表面光沢は弱く、良好であった。その端面をSEM(走査型電子顕微鏡)やEPMA(電子線マイクロアナライザ)で調べた結果、端面には微細な凹凸が観察され、その凹凸部にはシリカが存在していることがわかった。この微細な凹凸の形成によって、端面反射や表面光沢が低減されたものと考えられる。
また、大気中、155℃、200℃、270℃で30分間加熱処理した結果、各温度での波長380〜780nmにおける平均正反射率、平均光学濃度、明度は加熱処理前と比べて変化しなかった。また、表面光沢度、明度も加熱処理前と比べて変化しなかった。
よって、実施例1の黒色ポリアミドイミドフィルムは、平均光学濃度、平均正反射率、表面光沢度、明度、打ち抜き加工後の端面反射や表面光沢性、耐熱性について良好であり、このような黒色耐熱遮光フィルムは、高温度環境下で使用されるレンズユニット内で使用される固定絞り、シャッター羽根、液晶プロジェクターの絞りなどの部材として利用することができる。
【0049】
(実施例2〜4)
マット処理加工時のフィルム搬送速度を変え、フィルム両表面の算術平均高さRaを変えた以外は、実施例1と同様の黒色顔料および無機充填材の種類と含有量、フィルム作製方法で黒色ポリアミドイミドフィルムを作製した。フィルムの算術平均高さRaは表1に示すとおり、0.20μm(実施例2)、1.02μm(実施例3)、2.20μm(実施例4)とした。
表面凹凸を形成後の黒色ポリアミドイミドフィルムの波長380〜780nmにおける平均正反射率および平均光学濃度、表面光沢度を測定したところ、表1に示すとおり、実施例1と同等の結果が得られた。また、フィルムの明度L値も表1に示すとおり、実施例1と同等となり、黒色度が高いことがわかった。
また、実施例1同様に、打ち抜き加工を行い、その端面を金属顕微鏡で反射の程度を観察したところ、端面反射や表面光沢は実施例1と同様に弱く、良好であった。その端面をSEM(走査型電子顕微鏡)やEPMA(電子線マイクロアナライザ)で調べた結果、実施例1と同様に、端面には微細な凹凸が観察され、その凹凸部にはシリカが存在していることがわかった。また、155℃、200℃、270℃での加熱処理後の平均正反射率、平均光学濃度、フィルムのL値は加熱処理前と比べて変化しなかった。
よって、実施例2〜4の黒色ポリアミドイミドフィルムは、平均光学濃度、平均正反射率、表面光沢度、明度、打ち抜き加工後の端面反射や表面光沢性、耐熱性について良好であり、このような黒色耐熱遮光フィルムは、高温度環境下で使用されるレンズユニット内で使用される固定絞り、シャッター羽根、液晶プロジェクターの絞りなどの部材として利用することができる。
【0050】
(比較例1)
マット処理加工時のフィルム搬送速度を変え、フィルム両表面の算術平均高さRaを表1に示すとおり、2.3μmに変えた以外は、実施例1と同様な黒色顔料および無機充填材の種類と含有量でフィルムを作製した。表面凹凸形成後の黒色ポリアミドイミドフィルムの波長380〜780nmにおける平均正反射率および平均光学濃度、表面光沢度、明度L値を測定したところ、表1に示すとおり、実施例1と同等の結果が得られた。しかし、フィルムの算術平均高さRaを大きくするために、マット処理加工での搬送速度を非常に遅くしたためフィルムに微細な穴が多数発生し、良好なフィルムは得られなかった。
また、マット処理で穴が形成されなかった部分について、打ち抜き加工を行い、金属顕微鏡で端面反射を観察した結果、端面反射や表面光沢は実施例1と同様に弱く、良好であった。その端面をSEM(走査型電子顕微鏡)やEPMA(電子線マイクロアナライザ)で調べた結果、端面には微細な凹凸が観察され、その凹凸部にはシリカが存在していることがわかった。
よって、比較例1の黒色ポリアミドイミドフィルムは、波長380〜780nmにおける平均光学濃度、平均正反射率、表面光沢度、明度、打ち抜き加工後の端面反射や表面光沢性は良好であったが、外観上、良好なフィルムが得られなかったため、レンズユニット内で使用される固定絞り、シャッター羽根、液晶プロジェクターの絞りなどの部材として用いることはできない。
【0051】
(比較例2)
マット処理加工時のフィルム搬送速度を変え、フィルム両表面の算術平均高さRaを0.1μmに変えた以外は、実施例1と同様な黒色顔料および無機充填材の種類と含有量でフィルムを作製した。表面凹凸形成後の黒色ポリアミドイミドフィルムの波長380〜780nmにおける平均正反射率および平均光学濃度、表面光沢度、明度L値を測定したところ、表1に示すとおり、平均光学濃度とL値については実施例1と同等の結果が得られたが、波長380〜780nmにおける平均正反射率は0.70%、表面光沢度は10となり、実施例1より高くなった
155℃、200℃、270℃での加熱処理後の平均正反射率、平均光学濃度、明度は加熱処理前と比べて変化しなかった。
また、打ち抜き加工を行い、金属顕微鏡で端面反射を観察したところ、実施例1と同様に、端面反射や表面光沢は弱く、良好であった。その端面をSEM(走査型電子顕微鏡)やEPMA(電子線マイクロアナライザ)で調べた結果、端面には微細な凹凸が観察され、その凹凸部にはシリカが存在していることがわかった。よって、比較例2の黒色ポリアミドイミドフィルムは波長380〜780nmにおける平均光学濃度、フィルムの明度、打ち抜き加工後の端面反射や表面光沢性、耐熱性は良好であったが、平均正反射率と表面光沢度が実施例1〜4に比べ高いため、フィルム表面での反射光が撮像性に悪影響を及ぼすことになるから、レンズユニット内で使用される固定絞り、シャッター羽根、液晶プロジェクターの絞りなどの部材としては、利用することができない。
【0052】
(実施例5、6)
黒色ポリアミドイミドフィルムの厚みを12.5μm(実施例5)、6μm(実施例6)に変えた以外は、実施例1と同様の黒色顔料および無機充填材の種類と含有量、フィルム作製方法、マット処理加工で実施した。
表面凹凸形成後のフィルム両表面の算術平均高さRaは、表1に示すとおり、0.34μm(実施例5)、0.44μm(実施例6)であった。
表面凹凸形成後の黒色ポリアミドイミドフィルムで、波長380〜780nmにおける平均正反射率および平均光学濃度、表面光沢度を測定したところ、表1に示すとおり、実施例1と同等の結果が得られた。また、フィルムの明度L値も表1に示すとおり、実施例1と同等となり、黒色度が高いことがわかった。打ち抜き加工後の端面反射を金属顕微鏡で観察した結果、端面反射や表面光沢は実施例1と同様に弱く、良好であった。その端面をSEM(走査型電子顕微鏡)やEPMA(電子線マイクロアナライザ)で調べた結果、端面には微細な凹凸が観察され、その凹凸部にはシリカが存在していることがわかった。
また、155℃、200℃、270℃での加熱処理後の平均正反射率、平均光学濃度、フィルムの明度は加熱処理前と比べて変化しなかった。
よって、実施例5〜6の黒色ポリアミドイミドフィルムは、平均光学濃度、平均正反射率、表面光沢度、明度、打ち抜き加工後の端面反射や表面光沢性、耐熱性が良好であるから、このような黒色耐熱遮光フィルムは、高温度環境下で使用されるレンズユニット内で使用される固定絞り、シャッター羽根、液晶プロジェクターの絞りなどの部材として利用することができる。
【0053】
(比較例3、4)(実施例7〜9)
黒色顔料のカーボンブラックの含有量を4.0重量部(比較例3)、5.0重量部(実施例7)、15.0重量部(実施例8)、22.0重量部(実施例9)、23.0重量部(比較例4)とした以外は、実施例1と同様な無機充填材の種類と含有量、フィルム厚み、フィルム作製方法、マット処理加工とした。
表面凹凸形成後の黒色ポリアミドイミドフィルム両表面の算術平均高さRaは、表1に示すとおり、0.35μm(比較例3)、0.46μm(実施例7)、0.46μm(実施例8)、0.46μm(実施例9)、0.57μm(比較例4)であった。
また、波長380〜780nmにおける平均正反射率および平均光学濃度、表面光沢度を測定したところ、比較例4および実施例8、9は、表1に示すとおり、実施例1と同等の結果が得られ、フィルムの明度L値も表1に示すとおり、実施例1と同等となり、黒色度が高かった。しかし、比較例3、実施例7では波長380〜780nmにおける平均正反射率は実施例1と同等であったが、平均光学濃度は比較例3では2.9、実施例7では3.5となり、完全遮光性を有していなかった。また、比較例3では明度L値が実施例1に比べ高くなり、黒色度が低かった。これは、カーボンブラックの含有量が少なかったため、光の遮光性が低かったものと考えられる。一方、比較例4では、カーボンブラック含有量が高いため、カーボンブラックが均一に分散されていない。そのために表面凹凸、平均光学濃度、平均正反射率、表面光沢度など特性が不均一となり、良好なフィルムは得られなかった。
比較例3、実施例7〜9について、フィルムの打ち抜き加工を行い、端面反射の程度を金属顕微鏡で観察した結果、実施例7〜9のフィルムについては、端面反射や表面光沢は弱く、良好であった。その端面をSEM(走査型電子顕微鏡)やEPMA(電子線マイクロアナライザ)で調べた結果、端面には微細な凹凸が観察され、その凹凸部にはシリカが存在していることがわかった。しかし、比較例3のフィルムについては、端面反射や表面光沢が強いことがわかった。SEMやEPMAで調べたところ、端面には微細な凹凸があるものの、カーボンブラックの含有量が少なかったため、光の吸収が不十分となり、反射したものと考えられる。
なお、実施例7〜9及び比較例3のフィルムについては、155℃、200℃、270℃での加熱処理後の平均正反射率、平均光学濃度、フィルムの明度は加熱処理前と比べて変化しなかった。
よって、実施例8、9の黒色ポリアミドイミドフィルムは、平均光学濃度、平均正反射率、表面光沢度、明度、打ち抜き加工後の端面反射や表面光沢性、耐熱性について良好であり、このような黒色耐熱遮光フィルムは、高温度環境下、レンズユニット内で使用される固定絞り、シャッター羽根、液晶プロジェクターの絞りなどの部材として利用することができる。実施例7のフィルムについては、平均光学濃度が3.5と若干低かったが、レンズユニットの中で平均光学濃度が4.0以上と完全遮光性が必要とならない部位であれば、限定的に利用することができる。しかし、平均光学濃度が著しく低く、端面反射や表面光沢が強い比較例3や良好なフィルム外観が得られなかった比較例4のフィルムは、固定絞り、シャッター羽根、液晶プロジェクターの絞りなどの部材として利用することができない。
【0054】
(比較例5)
フィルム作製過程で黒色顔料を含有しない以外は、実施例1と同様のフィルム厚み、無機充填材の種類と含有量になるようにマット処理加工を実施し、黒色ポリアミドイミドフィルムを作製した。
表面凹凸形成のフィルム両表面の算術平均高さRaは表1に示すとおり、0.44μmであった。得られたポリアミドイミドフィルムの波長380〜780nmにおける平均正反射率は0.45%、表面光沢度は10であった。また、平均光学濃度は、0.3となり、光の透過性が非常に高かった。フィルムの明度Lは、50となり、黒色度は低かった。
打ち抜き加工後の端面反射の程度を金属顕微鏡で観察した結果、端面反射や表面光沢は強いことがわかった。その端面をSEM(走査型電子顕微鏡)やEPMA(電子線マイクロアナライザ)で調べた結果、端面には微細な凹凸が観察され、その凹凸部にはシリカが存在していることがわかったが、光を吸収するカーボンブラックが含有されていないために端面反射や表面光沢が強くなったものと考えられる。また、155℃、200℃、270℃での加熱処理後の平均正反射率、平均光学濃度、フィルムの明度は加熱処理前と比べて変化しなかった。
よって、比較例5のポリアミドイミドフィルムは、耐熱性は良好であったが、実施例1の黒色ポリアミドイミドフィルムに比べ、平均光学濃度が低く、平均正反射率と表面光沢度が高く、さらに、黒色度も低い。このためレンズユニット内で使用される固定絞り、シャッター羽根、液晶プロジェクターの絞りなどの部材として利用することができない。
【0055】
(実施例10、11および比較例6、7)
無機充填材の含有量を2.0重量部(実施例10)、25.0重量部(実施例11)、1.0重量部(比較例6)、26.0重量部(比較例7)とした以外は、実施例1と同様な黒色顔料の種類と含有量、無機充填材の種類、フィルム厚み、フィルム作製方法、マット処理加工とした。
表面凹凸形成後の黒色ポリアミドイミドフィルム両表面の算術平均高さRaは、表1に示すとおり、0.43μm(実施例10)、0.54μm(実施例11)、0.44μm(比較例6)、0.44μm(比較例7)であった。
また、得られた黒色ポリアミドイミドフィルムについて、波長380〜780nmにおける平均正反射率および平均光学濃度、表面光沢度、明度L値を測定したところ、表1に示すとおり、実施例10、11および比較例7では実施例1と同等の結果が得られた。しかし、比較例6では、艶消し材であるシリカの含有量が少ないため、表1に示すとおり、表面光沢度、平均正反射率が実施例1より高くなった。一方、比較例7では、SEMで断面観察を行ったが、シリカの含有量が多いため、フィルム内での分散が悪く、凝集が見られ、良好なフィルム外観が得られなかった。
実施例10、11および比較例6のフィルムについて打ち抜き加工を行い、その端面について金属顕微鏡で反射の程度を観察したところ、実施例10、11のフィルムでは端面反射や表面光沢は弱く、実施例1と同等に良好であり、その端面をSEM(走査型電子顕微鏡)やEPMA(電子線マイクロアナライザ)で調べた結果、端面には微細な凹凸が観察され、その凹凸部にはシリカが存在していることがわかった。しかし、比較例6では、端面に微細な凹凸はなく、平坦な面が多数見られ、端面反射や表面光沢が強いことがわかった。艶消し効果のあるシリカの含有量が少なすぎたことが原因であった。
なお、実施例10、11及び比較例6のフィルムについては、加熱処理後の平均正反射率、平均光学濃度、フィルムの明度は加熱処理前と比べて変化しなかった。
よって、実施例10、11の黒色ポリアミドイミドフィルムは、平均光学濃度、平均正反射率、表面光沢度、明度、打ち抜き加工後の端面反射や表面光沢性、耐熱性について良好であり、このような黒色耐熱遮光フィルムは、高温度環境下で使用されるレンズユニット内で使用される固定絞り、シャッター羽根、液晶プロジェクターの絞りなどの部材として利用することができる。しかし、比較例6のフィルムでは表面及び端面反射、表面光沢度が高いこと、比較例7のフィルムでは、良好なフィルム外観が得られないことから、絞り用部材として利用することはできない。
【0056】
(実施例12)
無機充填材としてアルミナを用いた以外は、実施例1と同様のフィルムの種類および厚み、黒色顔料の種類および含有量、無機充填材の含有量、フィルム作製方法、マット処理加工で実施した。
マット処理加工後のフィルム両表面の算術平均高さRaは、表1に示すとおり、0.46μmであった。
表面凹凸形成後の黒色ポリアミドイミドフィルムで、波長380〜780nmにおける平均正反射率および平均光学濃度、表面光沢度を測定したところ、実施1と同等の結果が得られた。また、フィルムの明度L値も表1に示すとおり、実施例1と同等となり、黒色度が高いことがわかった。また、実施例1同様に打ち抜き加工を行い、その端面について金属顕微鏡で反射の程度を観察したところ、端面反射や表面光沢は実施例1と同等に弱く、良好であった。その端面をSEM(走査型電子顕微鏡)やEPMA(電子線マイクロアナライザ)で調べた結果、端面には微細な凹凸が観察され、その凹凸部にはアルミナが存在していることがわかった。この微細な凹凸の形成によって、端面反射や表面光沢が低減されたものと考えられる。
また、加熱処理後の平均正反射率、平均光学濃度、フィルムのL値は加熱処理前と比べて変化しなかった。
よって、実施例12の黒色ポリアミドイミドフィルムは、平均光学濃度、平均正反射率、表面光沢度、明度、打ち抜き加工後の端面反射や表面光沢性、耐熱性について良好であり、このような黒色耐熱遮光フィルムは、高温度環境下、レンズユニット内で使用される固定絞り、シャッター羽根、液晶プロジェクターの絞りなどの部材として利用することができる。
【0057】
(実施例13)
無機充填材として酸化チタン(東邦チタニウム製、グレードHTO210 平均粒径2.3μm)を用いた以外は、実施例1と同様のフィルムの種類および厚み、黒色顔料の種類および含有量、無機充填材の含有量、フィルム作製方法、マット処理加工で実施した。
マット処理加工後のフィルム両表面の算術平均高さRaは、表1に示すとおり、0.43μmであった。
表面凹凸形成後の黒色ポリアミドイミドフィルムで、波長380〜780nmにおける平均正反射率および平均光学濃度、表面光沢度を測定したところ、実施1と同等の結果が得られた。また、フィルムの明度L値も表1に示すとおり、実施例1と同等となり、黒色度が高いことがわかった。また、実施例1と同様に打ち抜き加工を行い、その端面について金属顕微鏡で反射の程度を観察したところ、端面反射や表面光沢は実施例1と同等に弱く、良好であった。その端面をSEM(走査型電子顕微鏡)やEPMA(電子線マイクロアナライザ)で調べた結果、端面には微細な凹凸が観察され、その凹凸部にはアルミナが存在していることがわかった。この微細な凹凸の形成によって、端面反射や表面光沢が低減されたものと考えられる。
また、加熱処理後の平均正反射率、平均光学濃度、フィルムのL値は加熱処理前と比べて変化しなかった。
よって、実施例13の黒色ポリアミドイミドフィルムは、平均光学濃度、平均正反射率、表面光沢度、明度、打ち抜き加工後の端面反射や表面光沢性、耐熱性について良好であり、このような黒色耐熱遮光フィルムは、高温度環境下、レンズユニット内で使用される固定絞り、シャッター羽根、液晶プロジェクターの絞りなどの部材として利用することができる。
【0058】
(実施例14)
黒色顔料としてチタンブラック(ジェムコ製 品名13M−C)を用いた以外は、実施例1と同様のフィルムの種類、厚み、黒色顔料の含有量、無機充填材の種類および含有量、フィルム作製方法、マット処理加工で実施した。
マット処理加工後のフィルム両表面の算術平均高さRaは、表1に示すとおり、0.44μmであった。
表面凹凸形成後の黒色ポリアミドイミドフィルムで、波長380〜780nmにおける平均正反射率および平均光学濃度、表面光沢度を測定したところ、表1に示すように、実施例1と同等の結果が得られた。また、フィルムの明度L値も表1に示すとおり、実施例1と同等となり、黒色度が高いことがわかった。
また、実施例1同様に打ち抜き加工を行い、金属顕微鏡で端面反射の程度を観察した結果、端面反射や表面光沢は実施例1と同等に弱く、良好であった。その端面をSEM(走査型電子顕微鏡)やEPMA(電子線マイクロアナライザ)で調べた結果、端面には微細な凹凸が観察され、その凹凸部にはシリカが存在していることがわかった。
加熱処理後の平均正反射率、平均光学濃度、フィルムのL値は加熱処理前と比べて変化しなかった。
よって、実施例13の黒色ポリアミドイミドフィルムは、平均光学濃度、平均正反射率、表面光沢度、明度、打ち抜き加工後の端面反射や表面光沢性、耐熱性について良好であり、このような黒色耐熱遮光フィルムは、高温度環境下、レンズユニット内で使用される固定絞り、シャッター羽根、液晶プロジェクターの絞りなどの部材として利用することができる。
【0059】
(実施例15)
黒色顔料としてアニリンブラック(東京色材工業製 No.2スーパーブラック Pigment Black1)を用いた以外は、実施例1と同様のフィルムの種類、厚み、黒色顔料の含有量、無機充填材の種類および含有量、フィルム作製方法、マット処理加工で実施した。
マット処理加工後のフィルム両表面の算術平均高さRaは、表1に示すとおり、0.46μmであった。
表面凹凸形成後の黒色ポリアミドイミドフィルムで、波長380〜780nmにおける平均正反射率および平均光学濃度、表面光沢度を測定したところ、表1に示すように、実施例1と同等の結果が得られた。また、フィルムの明度L値も表1に示すとおり、実施例1と同等となり、黒色度が高いことがわかった。
また、実施例1同様に打ち抜き加工を行い、金属顕微鏡で端面反射の程度を観察した結果、端面反射や表面光沢は実施例1と同等に弱く、良好であった。その端面をSEM(走査型電子顕微鏡)やEPMA(電子線マイクロアナライザ)で調べた結果、端面には微細な凹凸が観察され、その凹凸部にはシリカが存在していることがわかった。
加熱処理後の平均正反射率、平均光学濃度、フィルムのL値は加熱処理前と比べて変化しなかった。
よって、実施例15の黒色ポリアミドイミドフィルムは、平均光学濃度、平均正反射率、表面光沢度、明度、打ち抜き加工後の端面反射や表面光沢性、耐熱性について良好であり、このような黒色耐熱遮光フィルムは、高温度環境下、レンズユニット内で使用される固定絞り、シャッター羽根、液晶プロジェクターの絞りなどの部材として利用することができる。
【0060】
(実施例16)
樹脂フィルムの原料をポリアミドイミド樹脂からポリイミド樹脂に変えた以外は、実施例1と同様のフィルム厚み、黒色顔料および無機充填材の種類と含有量、フィルム作製方法、マット処理加工で実施した。
マット処理加工後のフィルム両表面の算術平均高さRaは、0.21μmであった。
表面凹凸形成後の黒色ポリイミドフィルムの波長380〜780nmにおける平均正反射率および平均光学濃度、表面光沢度を測定したところ、表1に示すとおり、実施例1と同等の結果が得られた。また、フィルムの明度L値も、表1に示すとおり、実施例1と同等となり、黒色度が高いことがわかった。
また、実施例1同様に打ち抜き加工を行い、その端面について金属顕微鏡で反射の程度を観察したところ、端面反射や表面光沢は実施例1と同等に弱く、良好であった。その端面をSEM(走査型電子顕微鏡)やEPMA(電子線マイクロアナライザ)で調べた結果、端面には微細な凹凸が観察され、その凹凸部にはシリカが存在していることがわかった。
また、155℃、200℃、270℃での加熱処理後の平均正反射率、平均光学濃度、フィルムの明度L値は加熱処理前と比べて変化しなかった。
よって、実施例16の黒色ポリイミドフィルムは、平均光学濃度、平均正反射率、表面光沢度、明度、打ち抜き加工後の端面反射や表面光沢性、耐熱性について良好であり、このような黒色耐熱遮光フィルムは、高温度環境下、レンズユニット内で使用される固定絞り、シャッター羽根、液晶プロジェクターの絞りなどの部材として利用することができる。
【0061】
(実施例17〜19)(比較例8、9)
マット処理加工での搬送速度を変え、フィルム両表面の算術平均高さRaを表1に示すとおり、0.41μm(実施例17)、1.06μm(実施例18)、2.20μm(実施例19)、2.30μm(比較例8)、0.10μm(比較例9)とした以外は、実施例16と同様のフィルムの種類、フィルム厚み、黒色顔料および無機充填材の種類と含有量、フィルム作製方法で実施した。
表面凹凸形成後の黒色ポリイミドフィルムで、波長380〜780nmにおける平均正反射率および平均光学濃度、表面光沢度、明度L値を測定したところ、実施例17〜19および比較例8では、表1に示すとおり、実施例16と同等の結果が得られた。しかし、比較例9は平均光学濃度、明度L値は表1に示すとおり、実施例16と同等であったが、平均正反射率、表面光沢度が実施例16に比べ高くなった。また、比較例8では、フィルムの算術平均高さRaを大きくするために、マット処理での搬送速度を非常に遅くしたことでフィルムに微細な穴が多数発生し、良好なフィルムは得られなかった。
よって、比較例8の黒色ポリイミドフィルムは、波長380〜780nmにおける平均光学濃度、平均正反射率、表面光沢度、フィルムの明度が良好であったが、外観上、良好なフィルムが得られなかった。
また、実施例16同様に打ち抜き加工を行い、その端面について金属顕微鏡で反射の程度を観察したところ、実施例17〜19および比較例8、9では端面反射や表面光沢は実施例16と同等に弱く、良好であった。その端面をSEM(走査型電子顕微鏡)やEPMA(電子線マイクロアナライザ)で調べた結果、端面には微細な凹凸が観察され、その凹凸部にはシリカが存在していることがわかった。この微細な凹凸の形成によって、端面反射や表面光沢が低減されたものと考えられる。
なお、実施例17〜19、比較例8、9のフィルムについて、加熱処理後の平均正反射率、平均光学濃度、フィルムの明度は加熱処理前と比べて変化しなかった。
よって、実施例17〜19の黒色ポリイミドフィルムは、耐熱性、平均光学濃度、平均正反射率、表面光沢度、打ち抜き加工後の端面反射や表面光沢性が良好であるため、レンズユニット内で使用される固定絞り、シャッター羽根、液晶プロジェクターの絞りなどの部材として利用することができる。しかし、良好なフィルムが得られなかった比較例8と平均正反射率、表面光沢度が高かった比較例9は、固定絞り、シャッター羽根、液晶プロジェクターの絞りなどの部材として利用することができない。
【0062】
(実施例20、21)
黒色ポリイミドフィルムの厚みを12.5μm(実施例20)、7.5μm(実施例21)に変えた以外は、実施例16と同様の黒色顔料および無機充填材の種類と含有量、フィルム作製方法、マット処理加工で実施した。
表面凹凸形成後のフィルム両表面の算術平均高さRaは表1に示すとおり、0.33μm(実施例20)、0.36μm(実施例21)であった。
得られた黒色ポリイミドフィルムの波長380〜780nmにおける平均正反射率および平均光学濃度、表面光沢度を測定したところ、表1に示すとおり、実施例14と同等の結果が得られた。また、フィルムの明度L値も表1に示すとおり、実施例16と同等となり、黒色度が高いことがわかった。また、実施例16同様に打ち抜き加工を行い、その端面について金属顕微鏡で反射の程度を観察したところ、端面反射や表面光沢は弱く、良好であった。その端面をSEM(走査型電子顕微鏡)やEPMA(電子線マイクロアナライザ)で調べた結果、端面には微細な凹凸が観察され、その凹凸部にはシリカが存在していることがわかった。この微細な凹凸の形成によって、端面反射や表面光沢が低減されたものと考えられる。
加熱処理後の平均正反射率、平均光学濃度、フィルムの明度は加熱処理前と比べて変化しなかった。
よって、実施例20,21の黒色ポリイミドフィルムは、平均光学濃度、平均正反射率、表面光沢度、明度、打ち抜き加工後の端面反射や表面光沢性、耐熱性について良好であり、このような黒色耐熱遮光フィルムは、高温度環境下で使用されるレンズユニット内に設置される固定絞り、シャッター羽根、液晶プロジェクターの絞りなどの部材として利用することができる。
【0063】
(実施例22〜24)(比較例10、11)
黒色顔料の含有量を4.0重量部(比較例10)、5.0重量(実施例22)、15.0重量部(実施例23)、22.0重量部(実施例24)、23.0重量部(比較例11)とした以外は、実施例16と同様なフィルムの種類および厚み、黒色顔料の種類、無機充填材の種類と含有量、フィルム作製方法、マット処理加工で実施した。
表面凹凸形成後の黒色ポリイミドフィルム両表面の算術平均高さRaは、表1に示すとおり、0.52μm(比較例10)、0.44μm(実施例22)、0.44μm(実施例23)、0.31μm(実施例24)、0.67μm(比較例11)であった。
また、得られた黒色ポリイミドフィルムの波長380〜780nmにおける平均正反射率、表面光沢度、明度L値を測定したところ、比較例11および実施例23、24は、表1に示すとおり、実施例16と同等の結果が得られた。一方、比較例10、実施例22の波長380〜780nmにおける平均正反射率は表1に示すとおり、実施例16と同等であったが、平均光学濃度はそれぞれ2.9、3.5となり、完全遮光性を有していないことがわかった。また、比較例10では明度L値が実施例16に比べ高くなり、黒色度が低いことがわかった。
比較例10のフィルムではカーボンブラックの含有量が少ないため光の遮光性が低かったものと考えられる。一方、比較例11のフィルムでは、カーボンブラック含有量が高いため、カーボンブラックの均一な分散がされておらず、表面凹凸、平均光学濃度、平均正反射率、表面光沢度、明度など特性が不均一であり、良好なフィルムは得られなかった。
また、実施例16と同様に打ち抜き加工を行い、その端面について金属顕微鏡で反射の程度を観察したところ、実施例22〜24および比較例11で作製した黒色ポリイミドフィルムでは、端面反射や表面光沢は実施例16と同等に弱く、良好であった。しかし、比較例10のフィルムでは、端面反射や表面光沢は強かった。その端面をSEM(走査型電子顕微鏡)やEPMA(電子線マイクロアナライザ)で調べた結果、端面には微細な凹凸が観察され、その凹凸部にはシリカが存在していたが、カーボンブラックの含有量が少なすぎたため、端面での光の吸収が不十分となったことが原因と考えられる。なお、比較例10、実施例22〜24のフィルムについては、加熱処理後の平均正反射率、表面光沢度、平均光学濃度、フィルムの明度は加熱処理前と比べて変化しなかった。
よって、実施例23,24の黒色ポリイミドフィルムは、平均光学濃度、平均正反射率、表面光沢度、明度、打ち抜き加工後の端面反射や表面光沢性、耐熱性について良好であり、このような黒色耐熱遮光フィルムは、高温度環境下で使用されるレンズユニット内に設置される固定絞り、シャッター羽根、液晶プロジェクターの絞りなどの部材として利用することができる。実施例22のフィルムについては、平均光学濃度が3.5と若干低かったが、レンズユニットの中で平均光学濃度が4.0以上と完全遮光性が必要とならない部位であれば、限定的に利用をすることができる。しかし、平均光学濃度が著しく低い比較例10や良好なフィルム外観が得られなかった比較例11のフィルムは、固定絞り、シャッター羽根、液晶プロジェクターの絞りなどの部材として利用することができない。
【0064】
(比較例12)
フィルム作製過程で黒色顔料を含有しないポリイミドフィルムを作製した以外は、実施例16と同様のフィルム厚み、無機充填材の種類と含有量、マット処理加工で実施した。
表面凹凸形成のフィルム両表面の算術平均高さRaは表1に示すとおり、0.44μmであった。得られたポリイミドフィルムの波長380〜780nmにおける平均正反射率および表面光沢度を測定したところ、表1に示すとおり、実施例16より高くなった。また、波長380〜780nmにおける平均光学濃度は、0.4となり、実施例16より小さかった。また、フィルムの明度Lは、50となり、黒色度は非常に低かった。
打ち抜き加工後の端面反射の程度を金属顕微鏡で観察した結果、端面反射や表面光沢は実施例16に比べ強いことがわかった。その端面をSEM(走査型電子顕微鏡)やEPMA(電子線マイクロアナライザ)で調べた結果、端面には微細な凹凸が観察され、その凹凸部にはシリカが存在していることがわかったが、光を吸収するカーボンブラックを含有していないため端面反射や表面光沢が強くなったものと考えられる。
また、加熱処理後の平均正反射率、平均光学濃度、フィルムの明度は加熱処理前と比べて変化しなかった。
よって、比較例12のポリイミドフィルムは、耐熱性は良好であったが、平均光学濃度が低く、平均正反射率と表面光沢度が高く、さらに、黒色度も低いことから、レンズユニット内で使用される固定絞り、シャッター羽根、液晶プロジェクターの絞りなどの部材として利用することができない。
【0065】
(実施例25、26)(比較例13、14)
無機充填材の含有量を2.0重量部(実施例25)、25.0重量部(実施例26)、1.0重量部(比較例13)、26.0重量部(比較例14)とした以外は、実施例16と同様な黒色顔料の種類と含有量、無機充填材の種類、フィルム厚み、フィルム作製方法、マット処理加工で実施した。
表面凹凸形成後の黒色ポリイミドフィルム両表面の算術平均高さRaは表1に示すとおり、0.38μm(実施例25)、0.41μm(実施例26)、0.43μm(比較例13)、0.44μm(比較例14)であった。
また、得られた黒色ポリイミドフィルムの波長380〜780nmにおける平均正反射率および平均光学濃度、表面光沢度、明度L値を測定したところ、表1に示すとおり、実施例25、26および比較例14では実施例16と同等の結果が得られた。しかし、比較例13では、艶消し材として使用しているシリカの含有量が少ないため、表1に示すとおり、平均正反射率、表面光沢度が実施例14より高くなった。一方、比較例14のフィルムでは、SEMで断面観察を行ったが、シリカの含有量が多いため、フィルム内での分散が悪く、凝集が見られ、良好なフィルム外観が得られなかった。
実施例25、26および比較例13のフィルムについて打ち抜き加工を行い、その端面について金属顕微鏡で反射の程度を観察したところ、実施例25、26で作製した黒色ポリイミドフィルムでは、端面反射や表面光沢は弱く、良好であった。しかし、比較例13のフィルムでは、端面反射や表面光沢は実施例16に比べ強かった。その端面をSEM(走査型電子顕微鏡)やEPMA(電子線マイクロアナライザ)で調べた結果、端面には微細な凹凸が観察されず、平坦な面が多数見られた。シリカの含有量が少なかったために微細な凹凸が形成されず、光散乱が不十分となったことが原因と考えられる。
なお、実施例25、26及び比較例13のフィルムについては、加熱処理後の平均正反射率、平均光学濃度、フィルムの明度は加熱処理前と比べて変化しなかった。
よって、実施例25、26の黒色ポリイミドフィルムは、平均光学濃度、平均正反射率、表面光沢度、明度、打ち抜き加工後の端面反射や表面光沢性、耐熱性について良好であり、このような黒色耐熱遮光フィルムは、高温度環境下、レンズユニット内で使用される固定絞り、シャッター羽根、液晶プロジェクターの絞りなどの部材として利用することができる。しかし、比較例13のフィルムでは表面及び端面反射、表面光沢度が高いこと、比較例14のフィルムでは、良好なフィルム外観が得られないことからこと、絞り材として利用することはできない。
【0066】
(実施例27)
無機充填材としてアルミナを用いた以外は、実施例16と同様のフィルムの種類と厚み、黒色顔料の種類と含有量、フィルム作製方法、マット処理加工で実施した。
マット処理加工後のフィルム両表面の算術平均高さRaは、0.44μmであった。
表面凹凸形成後の黒色ポリイミドフィルムの波長380〜780nmにおける平均正反射率および平均光学濃度、表面光沢度を測定したところ、実施例16と同等の結果が得られた。また、フィルムの明度L値も、表1に示すとおり、実施例16と同等となり、黒色度が高いことがわかった。
また、実施例16のフィルムと同様に打ち抜き加工を行い、その端面について金属顕微鏡で反射の程度を観察したところ、実施例27で作製した黒色ポリイミドフィルムでは、端面反射や表面光沢は実施例16と同等に弱く、良好であった。その端面をSEM(走査型電子顕微鏡)やEPMA(電子線マイクロアナライザ)で調べた結果、端面には微細な凹凸が観察された。
また、加熱処理後の平均正反射率、平均光学濃度、フィルムの明度L値は加熱処理前と比べて変化しなかった。
よって、実施例27の黒色ポリイミドフィルムは、平均光学濃度、平均正反射率、表面光沢度、明度、打ち抜き加工後の端面の反射性、耐熱性について良好であり、このような黒色耐熱遮光フィルムは、高温度環境下で使用されるレンズユニット内で使用される固定絞り、シャッター羽根、液晶プロジェクターの絞りなどの部材として利用することができる。
【0067】
(実施例28)
無機充填材として酸化チタンを用いた以外は、実施例16と同様のフィルムの種類と厚み、黒色顔料の種類と含有量、フィルム作製方法、マット処理加工で実施した。
マット処理加工後のフィルム両表面の算術平均高さRaは、0.44μmであった。
表面凹凸形成後の黒色ポリイミドフィルムの波長380〜780nmにおける平均正反射率および平均光学濃度、表面光沢度を測定したところ、実施例16と同等の結果が得られた。また、フィルムの明度L値も、表1に示すとおり、実施例16と同等となり、黒色度が高いことがわかった。
また、実施例16のフィルムと同様に打ち抜き加工を行い、その端面について金属顕微鏡で反射の程度を観察したところ、実施例28で作製した黒色ポリイミドフィルムでは、端面反射や表面光沢は実施例16と同等に弱く、良好であった。その端面をSEM(走査型電子顕微鏡)やEPMA(電子線マイクロアナライザ)で調べた結果、端面には微細な凹凸が観察された。
また、加熱処理後の平均正反射率、平均光学濃度、フィルムの明度L値は加熱処理前と比べて変化しなかった。
よって、実施例28の黒色ポリイミドフィルムは、平均光学濃度、平均正反射率、表面光沢度、明度、打ち抜き加工後の端面の反射性、耐熱性について良好であり、このような黒色耐熱遮光フィルムは、高温度環境下で使用されるレンズユニット内で使用される固定絞り、シャッター羽根、液晶プロジェクターの絞りなどの部材として利用することができる。
【0068】
(実施例29)
黒色顔料としてチタンブラックを用いた以外は、実施例16と同様のフィルムの種類と厚み、黒色顔料の含有量、無機充填材の種類と含有量、フィルム作製方法、マット処理加工で実施した。
マット処理加工後のフィルム両表面の算術平均高さRaは、表1に示すとおり、0.44μmであった。
表面凹凸形成後の黒色ポリイミドフィルムの波長380〜780nmにおける平均正反射率および平均光学濃度、表面光沢度は、表1に示すとおり、実施例16と同等の結果が得られた。また、フィルムの明度L値も表1に示すとおり、実施例16と同等となり、黒色度が高いことがわかった。
また、実施例16のフィルムと同様に打ち抜き加工を行い、その端面について金属顕微鏡で反射の程度を観察したところ、実施例29で作製した黒色ポリイミドフィルムでは、端面での正反射や表面光沢は実施例16と同等に弱く、良好であった。その端面をSEM(走査型電子顕微鏡)やEPMA(電子線マイクロアナライザ)で調べた結果、端面には微細な凹凸が観察された。
また、加熱処理後の平均正反射率、平均光学濃度、フィルムの明度L値は加熱処理前と比べて変化しなかった。
よって、実施例29の黒色ポリイミドフィルムは、平均光学濃度、平均正反射率、表面光沢度、明度、打ち抜き加工後の端面反射や表面光沢性、耐熱性について良好であり、このような黒色耐熱遮光フィルムは、高温度環境下、レンズユニット内で使用される固定絞り、シャッター羽根、液晶プロジェクターの絞りなどの部材として利用することができる。
【0069】
(実施例30)
黒色顔料としてアニリンブラックを用いた以外は、実施例16と同様のフィルムの種類と厚み、黒色顔料の含有量、無機充填材の種類と含有量、フィルム作製方法、マット処理加工で実施した。
マット処理加工後のフィルム両表面の算術平均高さRaは、表1に示すとおり、0.45μmであった。
表面凹凸形成後の黒色ポリイミドフィルムの波長380〜780nmにおける平均正反射率および平均光学濃度、表面光沢度は、表1に示すとおり、実施例16と同等の結果が得られた。また、フィルムの明度L値も表1に示すとおり、実施例16と同等となり、黒色度が高いことがわかった。
また、実施例16のフィルムと同様に打ち抜き加工を行い、その端面について金属顕微鏡で反射の程度を観察したところ、実施例30で作製した黒色ポリイミドフィルムでは、端面反射や表面光沢は実施例16と同等に弱く、良好であった。その端面をSEM(走査型電子顕微鏡)やEPMA(電子線マイクロアナライザ)で調べた結果、端面には微細な凹凸が観察された。
また、加熱処理後の平均正反射率、平均光学濃度、フィルムの明度L値は加熱処理前と比べて変化しなかった。
よって、実施例30の黒色ポリイミドフィルムは、平均光学濃度、平均正反射率、表面光沢度、明度、打ち抜き加工後の端面反射や表面光沢性、耐熱性について良好であり、このような黒色耐熱遮光フィルムは、高温度環境下で使用されるレンズユニット内に設置される固定絞り、シャッター羽根、液晶プロジェクターの絞りなどの部材として利用することができる。
【0070】
【表1】

【0071】
(実施例31)
ポリフェニレンサルファイド樹脂に溶剤としてN−メチル−2−ピロリドンを加え、表2に示すように、溶液の固形物100重量部に対して、黒色顔料としてカーボンブラック(平均粒子径0.05μm)を12.0重量部、無機充填材としてシリカを4.0重量部含有し、ローラーミルを用いて混合し、黒色ポリフェニレンサルファイド樹脂溶液を作製した。ブレードコーターを用いて、加熱乾燥後のフィルム厚みが25μmとなるように、支持体上に、作製した樹脂溶液を塗工し、150℃で20分、その後220℃で1時間加熱乾燥した後で、支持体から剥離し、黒色ポリフェニレンサルファイドフィルムを作製した。
フィルム両表面について、ショット材として硅砂(平均粒子径100μm)を用い、まずフィルム片面について、5m/分の速度でフィルムを搬送しながら、20kg/mの硅砂をショットした後、水で3分間水洗し、80℃で2分間乾燥した。次に、フィルムを裏返し、片面と同様のマット処理加工を施し、表面凹凸を加工して、算術平均高さRaが0.22μmの表面凹凸を形成した。
表面凹凸形成後の黒色ポリフェニレンサルファイドフィルムの波長380〜780nmにおける平均正反射率は0.34%、表面光沢度は6であった。平均光学濃度は4.0以上となり、完全遮光性を有していた。また、フィルムの明度を表すL値は、30となり、黒色度が高いことがわかった。
作製した黒色耐熱遮光フィルムを打ち抜き加工し、その端面について金属顕微鏡で反射の程度を観察したところ、実施例31で作製した黒色ポリフェニレンサルファイドフィルムでは、端面反射や表面光沢は弱く、良好であった。その端面をSEM(走査型電子顕微鏡)やEPMA(電子線マイクロアナライザ)で調べた結果、端面には微細な凹凸が観察され、光の散乱に寄与し、低反射や低表面光沢となったものと考えられる。
また、大気中、155℃、200℃、270℃で30分間加熱処理した結果、155℃、200℃での波長380〜780nmにおける平均正反射率、平均光学濃度、明度は加熱処理前と比べて変化しなかったが、270℃ではフィルムの変形が著しかった。
よって、実施例31の黒色ポリフェニレンサルファイドフィルムは、200℃以下の使用環境下では平均光学濃度、平均正反射率、表面光沢度、明度、打ち抜き加工後の端面反射や表面光沢性、耐熱性について良好であり、このような黒色耐熱遮光フィルムは、200℃以下で使用されるレンズユニット内に設置される固定絞り、シャッター羽根、液晶プロジェクターの絞りなどの部材として利用することができる。
【0072】
(実施例32〜34)(比較例15、16)
マット処理加工で形成されるフィルム両表面の算術平均高さRaを表2に示すとおり、0.34μm(実施例32)、1.14μm(実施例33)、2.20μm(実施例34)、2.30μm(比較例15)、0.10μm(比較例16)とした以外は、フィルムの厚み、黒色顔料および無機充填材の種類と含有量、フィルム作製方法、マット処理加工は実施例31と同様にした。
表面凹凸形成後の黒色ポリフェニレンサルファイドフィルムの波長380〜780nmにおける平均正反射率および平均光学濃度、表面光沢度、明度L値を測定したところ、実施例32〜34および比較例15では、表1、表2に示すとおり、実施例31と同等の結果が得られた。しかし、比較例16は平均光学濃度、明度L値は表2に示すとおり、実施例31と同等であったが、平均正反射率、表面光沢度が実施例31に比べ高くなった。しかし、比較例15では、フィルムの算術平均高さRaを大きくするために、マット処理加工での搬送速度を非常に遅くしたことでフィルムに微細な穴が多数発生し、良好なフィルムは得られなかった。
よって、比較例15の黒色ポリフェニレンサルファイドフィルムは波長380〜780nmにおける平均光学濃度、平均正反射率、表面光沢度、フィルムの明度が良好であったが、外観上、良好なフィルムが得られなかった。
よって、比較例16の黒色ポリフェニレンサルファイドフィルムでは波長380〜780nmにおける平均光学濃度、フィルムの明度が良好であったが、平均正反射率、表面光沢度が高いためレンズユニット内に設置される固定絞り、シャッター羽根、液晶プロジェクターの絞りなどの部材として用いることはできない。
作製した実施例32〜34、比較例15、16の黒色耐熱遮光フィルムを実施例31と同様に打ち抜き加工し、その端面について金属顕微鏡で反射の程度を観察したところ、端面反射や表面光沢は実施例31と同等に弱く、良好であった。その端面をSEM(走査型電子顕微鏡)やEPMA(電子線マイクロアナライザ)で調べた結果、端面には微細な凹凸が観察され、その凹凸部にはシリカが存在していた。
なお、実施例32〜34、比較例16のフィルムについて大気中、155℃、200℃での加熱処理後の平均正反射率、表面光沢度、平均光学濃度、フィルムの明度は加熱処理前と比べて変化しなかったが、270℃での加熱ではフィルムの変形が著しかった。
よって、実施例32〜34の黒色ポリフェニレンサルファイドフィルムは、平均光学濃度、平均正反射率、表面光沢度、打ち抜き加工後の端面反射や表面光沢性、明度が良好であるが、270℃の耐熱性はないため、ウェハー・レベル・チップサイズ・パッケージ(WLCSP)構造のカメラモジュール用の絞り部材には使用できないものの、少なくとも使用温度が200℃までの絞り材、羽根材としては利用できる。
しかし、良好なフィルムが得られなかった比較例15の黒色ポリフェニレンサルファイドフィルムは固定絞り、シャッター羽根、液晶プロジェクターの絞りなどの部材として利用することができない。
【0073】
(実施例35,36)
黒色ポリフェニレンサルファイドフィルムの厚みを12μm(実施例35)、7μm(実施例36)に変えた以外は、実施例31と同様の黒色顔料および無機充填材の種類、含有量、フィルム作製方法、マット処理加工とした。フィルム両表面の算術平均高さRaは表2に示すとおり、0.27μm(実施例35)、0.34μm(実施例36)であった。
得られた黒色ポリフェニレンサルファイドフィルムの波長380〜780nmにおける平均正反射率および平均光学濃度、表面光沢度を測定したところ、実施例31と同等の結果が得られた。また、フィルムの明度L値も実施例31と同等となり、黒色度が高いことがわかった。
作製した実施例35、36の黒色耐熱遮光フィルムを実施例27と同様に打ち抜き加工し、その端面について金属顕微鏡で反射の程度を観察したところ、端面反射や表面光沢は実施例27と同等に弱く、良好であった。その端面をSEM(走査型電子顕微鏡)やEPMA(電子線マイクロアナライザ)で調べた結果、端面には微細な凹凸が観察され、その凹凸部にはシリカが存在していた。
なお、実施例35、36の黒色ポリフェニレンサルファイドフィルムを大気中、155℃、200℃での加熱処理したところ、平均正反射率、表面光沢度、平均光学濃度、フィルムの明度L値は加熱処理前と比べて変化しなかったが、270℃での加熱ではフィルムの変形が著しかった。
よって、実施例35、36の黒色ポリフェニレンサルファイドフィルムは、平均光学濃度、平均正反射率、表面光沢度、明度、打ち抜き加工後の端面反射や表面光沢性が良好であるが、270℃での耐熱性はないため、ウェハー・レベル・チップサイズ・パッケージ(WLCSP)構造のカメラモジュール用の絞り部材には使用できないものの、少なくとも使用温度が200℃までの絞り材、羽根材としては利用できる。
【0074】
(実施例37〜39)(比較例17、18)
黒色顔料のカーボンブラックの含有量を表2に示すとおり、4.0重量部(比較例17)、5.0重量部(実施例37)、15.0重量部(実施例38)、22.0重量部(実施例39)、23.0重量部(比較例18)とした以外は、実施例31と同様な厚みの黒色ポリフェニレンサルファイドフィルムを作製した。なお、マット処理加工も実施例31と同様に実施した。
表面凹凸形成後の黒色ポリフェニレンサルファイドフィルム両表面の算術平均高さRaは表2に示すとおり、0.35μm(比較例17)、0.39μm(実施例37)、0.39μm(実施例38)、0.42μm(実施例39)、0.70μm(比較例18)であった。
また、得られた黒色ポリフェニレンサルファイドフィルムの波長380〜780nmにおける平均正反射率および平均光学濃度、表面光沢度、明度L値を測定したところ、実施例38、39および比較例18は、表2に示すとおり、実施例31と同等の結果が得られた。一方、表2に示すとおり、比較例17、実施例37のフィルムの波長380〜780nmにおける平均正反射率は実施例31と同等であったが、平均光学濃度はそれぞれ2.8、3.5となり、完全遮光性を有していないことがわかった。また、比較例17のフィルムでは明度L値が実施例31に比べ高くなり、黒色度が低いことがわかった。
比較例17のフィルムでは、カーボンブラックの含有量が小さいためカーボンブラックの光吸収が不十分であったため光の遮光性が低かったものと考えられる。一方、比較例18のフィルムでは、カーボンブラック含有量が高いため、カーボンブラックの均一な分散がされておらず、表面凹凸、平均光学濃度、平均正反射率、表面光沢度、明度など特性が不均一であり、良好なフィルムは得られなかった。
作製した実施例37〜39、比較例18の黒色耐熱遮光フィルムを打ち抜き加工し、その端面について金属顕微鏡で反射の程度を観察したところ、端面反射や表面光沢は見られなかった。その端面をSEM(走査型電子顕微鏡)やEPMA(電子線マイクロアナライザ)で調べた結果、端面には微細な凹凸が観察され、その凹凸部にはシリカが存在していた。比較例17については、カーボンブラックの含有量が少ないため、光吸収が不十分となり、端面反射や表面光沢が見られた。
また、大気中、155℃、200℃での加熱処理後の平均正反射率、平均光学濃度、フィルムの明度は加熱処理前と比べて変化しなかったが、270℃での加熱ではフィルムの変形が著しかった。
よって、実施例38、39の黒色ポリフェニレンサルファイドフィルムは、平均光学濃度、平均正反射率、表面光沢度、明度、打ち抜き加工後の端面反射や表面光沢性が良好であるが、270℃での耐熱性はないため、ウェハー・レベル・チップサイズ・パッケージ(WLCSP)構造のカメラモジュール用の絞り部材には使用できないものの、少なくとも使用温度が200℃までの絞り材、羽根材としては利用できる。
また、平均光学濃度が3.5と完全遮光性を有していなかった実施例37については、レンズユニット内で完全遮光性を必要としない部位であれば限定的に利用することができる。
なお、平均光学濃度が著しく低く、加工後の端面反射や表面光沢の強い比較例17や良好なフィルム外観が得られなかった比較例18のフィルムは、固定絞り、シャッター羽根、液晶プロジェクターの絞りなどの部材として利用することができない。
【0075】
(比較例19)
フィルム作製過程で黒色顔料を含有しないでポリフェニレンサルファイドフィルムを作製した以外は、実施例31と同様のフィルム厚み、無機充填材の種類と含有量、マット処理加工で実施した。
表面凹凸形成のフィルム両表面の算術平均高さRaは表2に示すとおり、0.32μmであった。得られたポリフェニレンサルファイドフィルムの波長380〜780nmにおける平均正反射率、表面光沢度を測定したところ、表2に示すとおり、実施例31より高かった。また、平均光学濃度は、0.3となり、実施例31より平均光学濃度が小さかった。フィルムの明度L値は、51となり、黒色度は非常に低かった。
打ち抜き加工後の端面反射の程度を実施例27と同様に金属顕微鏡で観察した結果、端面反射や表面光沢が実施例31より強いことがわかった。その端面をSEM(走査型電子顕微鏡)やEPMA(電子線マイクロアナライザ)で調べた結果、端面には微細な凹凸が観察され、その凹凸部にはシリカが存在していることがわかった。これは、光を吸収するカーボンブラックが含有されていないため端面反射や表面光沢が強くなったものと考えられる。
また、大気中、155℃、200℃、270℃で加熱処理を行ったが、155℃と200℃では加熱処理後の平均正反射率、平均光学濃度、フィルムの明度L値は加熱処理前と比べて変化しなかったが、270℃での加熱ではフィルムの変形が著しかった。
よって、比較例19のポリフェニレンサルファイドフィルムは、平均光学濃度が低く、平均正反射率と表面光沢度が高く、さらに、黒色度も低いことから、レンズユニット内に設置される固定絞り、シャッター羽根、液晶プロジェクターの絞りなどの部材として利用することができない。
【0076】
(実施例40、41)(比較例20、21)
無機充填材の含有量を2.0重量部(実施例40)、25.0重量部(実施例41)、1.0重量部(比較例20)、26.0重量部(比較例21)とした以外は、実施例31と同様な黒色顔料の種類と含有量、無機充填材の種類、フィルム厚み、フィルム作製方法、マット処理加工とした。
表面凹凸形成後の黒色ポリフェニレンサルファイドフィルム両表面の算術平均高さRaは、表2に示すように、0.36μm(実施例40)、0.40μm(実施例41)、0.41(比較例20)、0.50(比較例21)であった。
また、得られた黒色ポリフェニレンサルファイドフィルムの波長380〜780nmにおける平均正反射率および平均光学濃度、表面光沢度、明度L値を測定したところ、表2に示すとおり、実施例40、41および比較例21では実施例31と同等の結果が得られた。しかし、比較例20のフィルムでは、艶消し材として使用しているシリカの含有量が少ないため、表2に示すとおり、平均正反射率、表面光沢度が実施例31より高くなった。一方、比較例21のフィルムでは、SEMで断面観察を行ったが、シリカの含有量が多いため、フィルム内での分散が悪く、凝集が見られ、良好なフィルム外観が得られなかった。
実施例40、41、比較例20のフィルムについて、実施例31と同様に打ち抜き加工を行い、端面の反射の程度を金属顕微鏡で観察した結果、実施例40、41で作製した黒色ポリフェニレンサルファイドフィルムでは、端面反射や表面光沢は実施例27と同等に弱く、良好であった。しかし、比較例20のフィルムでは、端面反射や表面光沢は実施例31より強かった。その端面をSEM(走査型電子顕微鏡)やEPMA(電子線マイクロアナライザ)で調べた結果、端面には微細な凹凸が観察されず、平坦な面が多数見られた。シリカの含有量が少なかったために微細な凹凸が形成されず、光散乱が不十分となったことが原因と考えられた。
なお、実施例36、37および比較例20のフィルムについては、大気中、155℃、200℃、270℃で加熱処理を行ったが、155℃と200℃では加熱処理後の平均正反射率、平均光学濃度、フィルムの明度L値は加熱処理前と比べて変化しなかったが、270℃での加熱ではフィルムの変形が著しかった。
よって、実施例40、41の黒色ポリフェニレンサルファイドフィルムは、平均光学濃度、平均正反射率、表面光沢度、明度、打ち抜き加工後の端面反射性について良好であり、このような黒色耐熱遮光フィルムは、200℃以下で使用される固定絞り、シャッター羽根、液晶プロジェクターの絞りなどの部材として利用することができる。しかし、比較例20のフィルムでは表面及び端面の反射、表面光沢性が高いこと、比較例21のフィルムでは、良好なフィルム外観が得られないことからこと、絞り材として利用することはできない。
【0077】
(実施例42)
無機充填材としてアルミナを用いた以外は、実施例31と同様のフィルムの種類、厚み、黒色顔料の種類と含有量、フィルム作製方法、マット処理加工とした。
マット処理加工後のフィルム両表面の算術平均高さRaは、表2に示すとおり、0.44μmであった。
表面凹凸形成後の黒色ポリフェニレンサルファイドフィルムの波長380〜780nmにおける平均正反射率および平均光学濃度、表面光沢度を測定したところ、実施例31と同等の結果が得られた。また、フィルムの明度L値も実施例31と同等となり、黒色度が高いことがわかった。
また、実施例31のフィルムと同様に打ち抜き加工を行い、金属顕微鏡で端面の反射の程度を観察した結果、実施例43では、端面反射や表面光沢は実施例31と同等に弱く、良好であった。その端面をSEM(走査型電子顕微鏡)やEPMA(電子線マイクロアナライザ)で調べた結果、端面には微細な凹凸が観察された。この微細な凹凸が光散乱に寄与し、低反射や低表面光沢になったと考えられた。
また、大気中、155℃、200℃、270℃で加熱処理を行ったが、155℃と200℃では加熱処理後の平均正反射率、平均光学濃度、フィルムの明度L値は加熱処理前と比べて変化しなかったが、270℃での加熱ではフィルムの変形が著しかった。
よって、実施例42の黒色ポリフェニレンサルファイドフィルムは、平均光学濃度、平均正反射率、表面光沢度、明度、打ち抜き加工後の端面反射性について良好であり、このような黒色耐熱遮光フィルムは、200℃以下で使用されるレンズユニット内に設置される固定絞り、シャッター羽根、液晶プロジェクターの絞りなどの部材として利用することができる。
【0078】
(実施例43)
無機充填材として酸化チタンを用いた以外は、実施例31と同様のフィルムの種類、厚み、黒色顔料の種類と含有量、フィルム作製方法、マット処理加工とした。
マット処理加工後のフィルム両表面の算術平均高さRaは、表2に示すとおり、0.44μmであった。
表面凹凸形成後の黒色ポリフェニレンサルファイドフィルムの波長380〜780nmにおける平均正反射率および平均光学濃度、表面光沢度を測定したところ、実施例31と同等の結果が得られた。また、フィルムの明度L値も実施例31と同等となり、黒色度が高いことがわかった。
また、実施例31のフィルムと同様に打ち抜き加工を行い、金属顕微鏡で端面の反射の程度を観察した結果、実施例43では、端面反射や表面光沢は実施例31と同等に弱く、良好であった。その端面をSEM(走査型電子顕微鏡)やEPMA(電子線マイクロアナライザ)で調べた結果、端面には微細な凹凸が観察された。この微細な凹凸が光散乱に寄与し、低反射や低表面光沢になったと考えられた。
また、大気中、155℃、200℃、270℃で加熱処理を行ったが、155℃と200℃では加熱処理後の平均正反射率、平均光学濃度、フィルムの明度L値は加熱処理前と比べて変化しなかったが、270℃での加熱ではフィルムの変形が著しかった。
よって、実施例43の黒色ポリフェニレンサルファイドフィルムは、平均光学濃度、平均正反射率、表面光沢度、明度、打ち抜き加工後の端面反射性について良好であり、このような黒色耐熱遮光フィルムは、200℃以下で使用されるレンズユニット内に設置される固定絞り、シャッター羽根、液晶プロジェクターの絞りなどの部材として利用することができる。
【0079】
(実施例44)
黒色顔料としてチタンブラックを用いた以外は、実施例31と同様のフィルムの種類と厚み、黒色顔料の含有量、無機充填材の種類と含有量、フィルム作製方法、マット処理加工で実施した。
マット処理加工後のフィルム両表面の算術平均高さRaは、表2に示すとおり、0.44μmであった。
表面凹凸形成後の黒色ポリフェニレンサルファイドフィルムの波長380〜780nmにおける平均正反射率および平均光学濃度、表面光沢度を測定したところ、表2に示すとおり、実施31と同等の結果が得られた。また、フィルムのL値も実施例31と同等となり、黒色度が高いことがわかった。
また、実施例31のフィルムと同様に打ち抜き加工を行い、金属顕微鏡で端面の反射の程度を観察した結果、端面反射や表面光沢は実施例31と同等に弱く、良好であった。その端面をSEM(走査型電子顕微鏡)やEPMA(電子線マイクロアナライザ)で調べた結果、端面には微細な凹凸が観察された。この微細な凹凸が光散乱に寄与し、低反射や低表面光沢になったと考えられた。
また、大気中、155℃、200℃、270℃で加熱処理を行ったが、155℃と200℃では加熱処理後の平均正反射率、平均光学濃度、フィルムの明度L値は加熱処理前と比べて変化しなかったが、270℃での加熱ではフィルムの変形が著しかった。
よって、実施例44の黒色ポリフェニレンサルファイドフィルムは、平均光学濃度、平均正反射率、表面光沢度、明度、打ち抜き加工後の端面反射性について良好であり、このような黒色耐熱遮光フィルムは、200℃以下で使用されるレンズユニット内に設置される固定絞り、シャッター羽根、液晶プロジェクターの絞りなどの部材として利用することができる。
【0080】
(実施例45)
黒色顔料としてアニリンブラックを用いた以外は、実施例31と同様のフィルムの種類と厚み、黒色顔料の含有量、無機充填材の種類と含有量、フィルム作製方法、マット処理加工で実施した。
マット処理加工後のフィルム両表面の算術平均高さRaは、表2に示すとおり、0.43μmであった。
表面凹凸形成後の黒色ポリフェニレンサルファイドフィルムの波長380〜780nmにおける平均正反射率および平均光学濃度、表面光沢度を測定したところ、表2に示すとおり、実施31と同等の結果が得られた。また、フィルムのL値も実施例31と同等となり、黒色度が高いことがわかった。
また、実施例31のフィルムと同様に打ち抜き加工を行い、金属顕微鏡で端面の反射の程度を観察した結果、端面反射や表面光沢は実施例31と同等に弱く、良好であった。その端面をSEM(走査型電子顕微鏡)やEPMA(電子線マイクロアナライザ)で調べた結果、端面には微細な凹凸が観察された。この微細な凹凸が光散乱に寄与し、低反射や低表面光沢になったと考えられた。
また、大気中、155℃、200℃、270℃で加熱処理を行ったが、155℃と200℃では加熱処理後の平均正反射率、平均光学濃度、フィルムの明度L値は加熱処理前と比べて変化しなかったが、270℃での加熱ではフィルムの変形が著しかった。
よって、実施例45の黒色ポリフェニレンサルファイドフィルムは、平均光学濃度、平均正反射率、表面光沢度、明度、打ち抜き加工後の端面反射性について良好であり、このような黒色耐熱遮光フィルムは、200℃以下で使用されるレンズユニット内に設置される固定絞り、シャッター羽根、液晶プロジェクターの絞りなどの部材として利用することができる。
【0081】
(実施例46〜48)
樹脂フィルムの原料をポリアミドイミド樹脂からポリエチレンナフタレート樹脂(実施例46)、アラミド樹脂(実施例47)、ポリエーテルサルフォン樹脂(実施例48)に変えた。実施例48で溶剤としてN−メチル−2−ピロリドンを用いた以外は、フィルム厚み、黒色顔料および無機充填材の種類と含有量、マット処理加工は実施例1と同様に実施した。また、フィルム作製において、支持体から剥離した後の各樹脂溶液の乾燥温度は、150℃(実施例46、48)で実施し、実施例47では実施例1と同様に実施した。表面凹凸形成後の黒色耐熱遮光フィルム両表面の算術平均高さRaは、表2に示すとおり、0.40μm(実施例46)、0.43μm(実施例47)、0.42μm(実施例48)であった。
表面凹凸形成後の黒色耐熱遮光フィルムの波長380〜780nmにおける平均正反射率および平均光学濃度、表面光沢度を測定したところ、実施例1と同等の結果が得られた。また、フィルムの明度を表すL値も実施例1と同等となり、黒色度が高いことがわかった。
また、実施例1のフィルムと同様に打ち抜き加工を行い、金属顕微鏡で端面の反射の程度を観察した結果、実施例46〜48の黒色耐熱遮光フィルムでは、端面反射や表面光沢は実施例1と同等に弱く、良好であった。その端面をSEM(走査型電子顕微鏡)やEPMA(電子線マイクロアナライザ)で調べた結果、端面には微細な凹凸が観察された。この微細な凹凸が光散乱に寄与し、低反射や低表面光沢になったと考えられた。
大気中、155℃、200℃、270℃で30分間加熱処理した結果、実施例46は200℃と270℃、実施例48では270℃でフィルムが著しく変形した。実施例47では155℃、200℃、270℃で変形はしなかった。
フィルムが変形しなかった温度までの波長380〜780nmにおける平均正反射率、平均光学濃度は、加熱処理前と比べて変化しなかった。また、明度も加熱処理前と比べて変化しなかった。
よって、実施例46の黒色ポリエチレンナフタレートフィルムは少なくとも155℃、実施例47の黒色アラミドフィルムは少なくとも270℃、実施例48の黒色ポリエーテルサルフォンは少なくとも200℃までの耐熱性があり、平均光学濃度、平均正反射率、表面光沢度、打ち抜き加工後の端面反射性や表面光沢性、明度は良好であったことから、各耐熱温度までで使用されるレンズユニット内に設置される固定絞り、シャッター羽根、液晶プロジェクターの絞りなどの部材として利用することができる。
【0082】
(実施例49)
実施例1で作製した黒色ポリアミドイミドフィルムの両面に、耐熱性の高いアクリル系粘着剤(住友スリーエム社製、商品名:9079)を用いた厚さ50μmの粘着層を形成し、耐熱遮光テープを作製した。
大気中、270℃での加熱処理後においても波長380〜780nmにおける平均光学濃度が4.0以上の完全遮光性を有した。また、波長380〜780nmにおける平均正反射率が0.24%と低反射となり、加熱処理前後で平均光学濃度、平均正反射率、表面光沢度の変化はなかった。
したがって、実施例43の黒色ポリアミドイミドフィルムはその両面に粘着層を形成しているので、CCDやCMOSなどの撮像素子の裏面側周辺部に貼り付けることができるから、撮像素子裏面へ入射する漏れ光を遮断するための黒色耐熱遮光フィルムとして有用である。
【0083】
(実施例50,51)
実施例1で作製した黒色ポリアミドイミドフィルム(実施例50)や実施例16で作製した黒色ポリイミドフィルム(実施例51)の両面に、微粘着層をもった保護シートをラミネートした。100mm角のシートに裁断し、シート内で80mmφの円内に、各絞りがその外周部でリードによって連結された構造の外径4mmφ、内径2mmφのリング状の絞りを打ち抜き加工で多数作製した。打ち抜き加工では、リング状の絞りに打ち抜き後、80mmφのウェハー状に打ち抜き加工し、微粘着保護シートを剥離し、絞りが多数形成されたウェハーを得た。
実施例1と同様に、実施例50、51で得られた個々の絞りについて、金属顕微鏡での端面反射の程度を観察した結果、端面反射や表面光沢は実施例1と同等に弱く、良好であった。また、金属顕微鏡で絞り表面の外観を観察したが、クラック、バリなど外観欠陥は見られなかった。
よって、実施例50で作製した黒色ポリアミドイミドフィルム、実施例51で作製した黒色ポリイミドフィルムは、ウェハー状で絞り形状に打ち抜くことが可能で、個々の端面の反射や表面光沢は低く、打ち抜きによるクラック、バリがないことから、WLCSP構造のカメラモジュール用絞り材として非常に有用である。
【0084】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明の黒色耐熱遮光フィルムは、厚みが25μm以下であって、可視光域(波長380〜780nm)において低反射性、高遮光性、低表面光沢性を有しているため様々な光学部材に有用である。
また、耐熱性樹脂が少なくとも黒色顔料と無機充填材を含有しているので、最近のデジタルカメラ、カメラ付き携帯電話、デジタルビデオカメラ、液晶プロジェクターなどの小型化、薄肉化の要望に対応した絞り材として極めて有用である。さらに、打ち抜き性に優れているために、WLCSP向けの絞り材としても極めて有用である。
さらに、本発明の黒色耐熱遮光フィルムは、軽量性に優れていることから、液晶プロジェクターの光量調整モジュール用絞り装置の絞り羽根材や、リフロー工程による組み立てに対応できる固定絞り材、シャッター羽根材並びに耐熱遮光テープとして利用することができるため、工業的価値が極めて高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
155℃以上の耐熱性を有する樹脂フィルム(A)の両面に微細凹凸が形成された黒色耐熱遮光フィルムであって、
樹脂フィルム(A)が、黒色顔料(B)及び無機充填材(C)を含有する黒色フィルムであり、かつ、黒色耐熱遮光フィルムの厚みが25μm以下、両表面の表面粗さ(算術平均高さRa)が0.2〜2.2μmであって、さらに、波長380〜780nmにおける光の遮光性の指標である平均光学濃度が3.5以上であることを特徴とする黒色耐熱遮光フィルム。
【請求項2】
前記平均光学濃度が、4.0以上であることを特徴とする請求項1に記載の黒色耐熱遮光フィルム。
【請求項3】
両表面の波長380〜780nmにおける平均正反射率が、0.4%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の黒色耐熱遮光フィルム。
【請求項4】
樹脂フィルム(A)が、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンナフタレート、アラミド、ポリエーテルエーテルケトン、又はポリエーテルサルフォンから選ばれた1種以上の耐熱性樹脂を主成分とするフィルムであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の黒色耐熱遮光フィルム。
【請求項5】
黒色顔料(B)が、カーボンブラック、アニリンブラック、チタンブラック、無機顔料ヘマタイト、又はペリレンブラックから選ばれた1種以上からなる顔料であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の黒色耐熱遮光フィルム。
【請求項6】
黒色顔料(B)の含有量が、耐熱性樹脂(固形物100重量部)に対して、5〜22重量部であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の黒色耐熱遮光フィルム。
【請求項7】
無機充填材(C)が、アルミナ、酸化チタン、シリカ、酸化亜鉛、又はマグネシアから選ばれた1種以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の黒色耐熱遮光フィルム。
【請求項8】
無機充填材(C)の含有量が、耐熱性樹脂(固形物100重量部)に対して、2〜25重量部であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の黒色耐熱遮光フィルム。
【請求項9】
CIE(国際照明委員会)で標準化されている、L表色系測定(JIS Z 8729)において、L(明度)が25〜40であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の黒色耐熱遮光フィルム。
【請求項10】
各面の表面光沢度が8以下であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の黒色耐熱遮光フィルム。
【請求項11】
155℃以上の耐熱性を有する耐熱性樹脂に溶剤とともに、少なくとも黒色顔料(B)と無機充填材(C)を含有させて混練し、このスラリーを支持体に塗布し、乾燥して膜厚が5〜25μmとなった樹脂フィルム(A)を得た後、フィルム両表面の微細凹凸が0.2〜2.2μmの表面粗さ(算術平均高さRa)となるようにマット処理加工を行うことを特徴とする黒色耐熱遮光フィルムの製造方法。
【請求項12】
黒色顔料(B)の含有量が、耐熱性樹脂(固形物100重量部)に対して、5〜22重量部であることを特徴とする請求項11に記載の黒色耐熱遮光フィルムの製造方法。
【請求項13】
無機充填材(C)の含有量が、耐熱性樹脂(固形物100重量部)に対して、2〜25重量部であることを特徴とする請求項11に記載の黒色耐熱遮光フィルムの製造方法。
【請求項14】
請求項1〜10のいずれかに記載の黒色耐熱遮光フィルムを打ち抜き加工して得られる耐熱性に優れた絞りであって、得られた絞りの端面が低表面光沢性を有していることを特徴とする耐熱性に優れた絞り。
【請求項15】
黒色耐熱遮光フィルムが、ウェハー・レベル・チップサイズ・パッケージ(WLCSP)構造のカメラモジュールに利用されることを特徴とする請求項14に記載の絞り。
【請求項16】
請求項1〜10のいずれかに記載の黒色耐熱遮光フィルムを打ち抜き加工して得られる耐熱性に優れた羽根材であって、得られた絞りの端面が低表面光沢性を有していることを特徴とする耐熱性に優れた羽根材。
【請求項17】
請求項14,15に記載の耐熱性に優れた絞り、または、請求項16に記載の耐熱性に優れた羽根材のいずれかを具備していることを特徴とする光量調整モジュール。
【請求項18】
請求項1〜10のいずれかに記載の黒色耐熱遮光フィルムの片面、または両面に粘着層を設けてなる耐熱遮光テープ。

【公開番号】特開2011−128598(P2011−128598A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−227677(P2010−227677)
【出願日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【Fターム(参考)】