説明

(−)−2−{[2−(4−ヒドロキシフェニル)エチル]チオ}−3−[4−(2−{4−(メチルスルホニル)オキシ]フェノキシ}エチル)フェニル]プロパン酸のカリウムまたはナトリウム塩および医薬におけるそれらの使用

本発明は、(−)−2−{[2−(4−ヒドロキシフェニル)エチル]チオ}−3−[4−(2−{4−(メチルスルホニル)オキシ}フェノキシ)エチル]フェニル]プロパン酸のカリウム塩またはナトリウム塩、それらの製造のための工程、インスリン耐性に関連してもしなくてもよい脂質疾患(脂質代謝異常)およびメタボリックシンドロームの他の徴候を含む臨床状態を処置することにおけるそれらの使用、およびそれらを含む医薬組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明が属する技術分野
本発明は(−)−2−{[2−(4−ヒドロキシフェニル)エチル]チオ}−3−[4−(2−{4−(メチルスルホニル)オキシ}フェノキシ)エチル]フェニル]プロパン酸のある種の新規な塩、とりわけそのカリウムおよびナトリウム塩、そのような化合物を製造するための方法、インスリン耐性に関連してもしなくてもよい脂質疾患(脂質代謝異常)および他のメタボリックシンドロームの徴候を含む臨床状態を処置することにおけるそれらの有用性、それらの治療的使用の方法、ならびにそれらを含有する医薬組成物に関する。
【0002】
発明の背景
2型糖尿病を含むメタボリックシンドロームは、付随する高インスリン血症を伴うインスリン耐性、おそらく2型糖尿病、動脈性高血圧、中心性(内臓)肥満、一般に上昇したVLDL(極低密度リポ蛋白質)、小濃密LDL粒子および減少したHDL(高密度リポ蛋白質)濃度を特徴とする混乱したリポ蛋白質レベルとして認められる脂質代謝異常、および減少した線維素溶解を含む徴候の集合を表す。
【0003】
最近の疫学的研究は、インスリン耐性の個体は、心血管性罹病率および死亡率のリスクが著しく増大する、とりわけ心筋梗塞および脳卒中に罹患するという資料を提供している。2型糖尿病では、アテローム性動脈硬化症に関連した状態はすべての死亡の80%までを引き起こす。
【0004】
臨床医学では、メタボリックシンドローム患者のインスリン感受性を増し、アテローム性動脈硬化症進行の促進を引き起こすと考えられている脂質代謝異常を治療する必要性が認識されている。しかし、現在のところ、このことは一般的に受け入れられた、明確な薬物治療的徴候を伴った診断ではない。
【0005】
同時係属中のPCT出願No.PCT/GB02/05743は、選択的なPPARαモジュレーター(PPAR(ペルオキシゾーム増殖因子‐活性化受容体)の総説に関してはT.M.Willson et al,J Med Chem 2000,Vol43,527を参照されたい)である、式A:
【0006】
【化1】

【0007】
の化合物(式中Rはクロロ、フルオロまたはヒドロキシを表す)、ならびにその光学的異性体およびラセミ体、ならびに薬剤的に受容できるその塩、プロドラッグ、溶媒和物および結晶性形状を開示する。これらの化合物はインスリン耐性に関連する状態の処置に効果的である。式Aの化合物の具体的な薬剤的に受容できる塩はPCT/GB02/05743には開示されていない。さらに、式Aの化合物の結晶性形状、およびとりわけその塩がどのように製造されうるかについての情報は提供されていない。Rがヒドロキシを表す化合物の(−)エナンチオマーは、本出願では遊離酸として製造される。しかし、この化合物はシロップのような粘ちゅう性のねばねばしたオイルであり、したがって流動性ではないため、医薬製剤における使用には適切ではない。したがって、医薬製剤における使用に適切な物理的および化学的性質を有するこの化合物の固体誘導体の必要性が存在する。多くの塩が試されたが、これらの大部分は固体状態で作ることができないか、または低いガラス転移温度を持つ非晶質であるか、のいずれかである。医薬製剤のための適切な性質を有する塩が現在見出されている。
【0008】
薬剤組成物の製剤において、都合よく取り扱い、加工することができる形状であることは薬物材料にとって重要である。このことは、商業的に実行可能な製造工程を得るという観点からだけでなく、その後の活性化合物を含有する医薬製剤の製造の観点からも重要である。
【0009】
さらに、薬剤組成物の製造において、患者への投与後に、信頼性があり、再現性があり、そして一定である薬物血漿中濃度特性が提供されることが重要である。
活性成分の化学的安定性、固体状態安定性、および“貯蔵寿命”も非常に重要な因子である。薬物材料、およびそれを含有する組成物は好ましくは、活性成分の物理化学的特徴(たとえば、化学的組成、密度、吸湿性および可溶性)における有意な変化を示さずに、かなりの期間にわたり効果的に保存できるべきである。
【0010】
さらに、化学的にできるだけ純粋である形状において薬物を提供できることも重要である。
一般に、薬物を安定な形状、たとえば安定な結晶性形状で容易に得ることができる場合、取り扱いの容易性、適切な医薬製剤の製造の容易性、およびより確実な可溶性特性に関する利点が提供されうることを、当業者は理解するであろう。
【0011】
発明の詳細な説明
本発明は(−)−2−{[2−(4−ヒドロキシフェニル)エチル]チオ}−3−[4−(2−{4−[(メチルスルホニル)オキシ]フェノキシ}エチル)フェニル]−プロパン酸のカリウム塩またはナトリウム塩を提供する。
【0012】
本発明の別の側面に従って、実質的に結晶性形状における本発明の化合物が提供される。
80%以上結晶性である本発明の化合物を生み出すことが可能であるが、“実質的に結晶性”という句により、20%以上、好ましくは30%以上、そしてより好ましくは40%以上(たとえば、50、60、70、80または90%)結晶性の形状も包含される。
【0013】
本発明の別の側面に従って、部分的結晶性形状における本発明の化合物も提供される。“部分的結晶性”という句により、本発明者らは5%または5%〜20%結晶性を含める。
【0014】
結晶性の程度(%)は、粉末X線回折(XRPD)を使用して、当業者により測定されうる。別の技術、たとえば固体NMR、FT−IR、ラマンスペクトロスコピー、示差走査熱量測定(DSC)およびミクロカロリメトリーも使用することができる。
【0015】
本発明の化合物、およびとりわけ本発明の結晶性化合物は、PCT/GB02/05743に開示された化合物に比較した場合、改善された安定性を有しうる。
本明細書で定義される“安定性”という語は、化学的安定性および固体状態安定性を包含する。
【0016】
“化学的安定性”という句により、本発明者らは、通常の保存条件下、わずかな化学的分解または崩壊の程度で、本発明の化合物を単離された形状、または薬剤的に受容できるキャリア、希釈剤、またはアジュバントと混合して(たとえば、錠剤、カプセル剤などのような経口剤形において)提供される製剤の形状において保存することが可能であってよいことを含める。
【0017】
“固体状態安定性”という句により、本発明者らは通常の保存条件下、わずかな固体状態変化(たとえば、結晶化、再結晶化、固体状態相転移、水和、脱水、溶媒和、または脱溶媒和)の程度で、本発明の化合物を単離された固体の形状、または薬剤的に受容できるキャリア、希釈剤、またはアジュバントと混合して(たとえば、錠剤、カプセル剤などのような経口剤形において)提供される固体製剤の形状において保存することが可能であってよいことを含める。
【0018】
“通常の保存条件”の例としては、長期間(6ヶ月より長いか、またはそれに等しい期間)、マイナス80〜プラス50℃の温度(好ましくは0〜40℃、そしてより好ましくは室温、たとえば15〜30℃)、0.1〜2バールの圧(好ましくは大気圧で)、5〜95%(好ましくは10〜60%)の相対湿度、および/または460ルクスのUV/可視光への曝露が挙げられる。そのような条件下、本発明の化合物は、適宜、15%未満、より好ましくは10%未満、そしてとりわけ5%未満、化学的に分解/崩壊されているか、または固体状態が転移していることが見出されてよい。上記の温度、圧および相対湿度の上限および下限は通常の保存条件の極値を表し、これらの極値のある組み合わせ(たとえば温度50℃および圧0.1バール)は通常の保存中に経験されないであろうということを、当業者は理解するであろう。
【0019】
溶媒系の存在下、または非存在下で、本発明の化合物の塩を結晶化させること(結晶化は超臨界条件下で融解物由来であっても、昇華により得てもよい)が可能でありうる。しかし、本発明者らは結晶化が適切な溶媒系から起こることを好む。
【0020】
本発明の別の側面に従って、本発明の結晶性化合物の製造のための工程が提供され、かかる工程は適切な溶媒系から本発明の化合物を結晶化することを含む。適切な溶媒としては、エタノールおよびトルエンならびにそれらの混合物が挙げられる。
【0021】
結晶化温度および結晶化時間は、結晶化されることになる塩、溶液中のその塩の濃度、使用される溶媒系に依存する。
また、結晶化は標準技術により、たとえば本発明の適切な結晶性化合物の結晶の種を播くことにより、または播かずに、開始され、および/または行われてよい。
【0022】
本発明の化合物の異なる結晶性形状は、たとえば以後に記載されるように、粉末X線回折(XRPD)法を使用して、容易に性状が解析されうる。
他の結晶性形状の非存在下で特定の結晶性形状が製造されることを確実にするために、結晶化は、好ましくは実質的に他の結晶性形状の核および/または種結晶の完全な非存在下で、所望する結晶性形状の核および/または種結晶を播くことにより行われる。適切な化合物の種結晶は、たとえば適切な塩溶液の一部から溶媒をゆっくり蒸発させることにより製造することができる。
【0023】
本発明の化合物は、当業者に公知である技術、たとえばデカンテーション、ろ過または遠心分離を使用して単離することができる。
化合物は標準技術を使用して乾燥することができる。
【0024】
本発明の化合物のそれ以上の精製は、当業者に公知である技術を使用して行うことができる。たとえば、不純物は適切な溶媒系から再結晶化により除去することができる。再結晶化に適切な温度および時間は溶液中の塩濃度、および使用される溶媒系に依存する。
【0025】
本発明の化合物が本明細書に記載のように結晶化、または再結晶化される場合、得られた塩は、以下に述べるように、改善された化学的および/または固体状態安定性を有する形状であってよい。
【0026】
本発明の化合物は、先行技術において公知の化合物より、効果的であり、毒性が低く、長時間作用し、広範な活性を有し、強力であり、副作用が少なく、容易に吸収され、および/または、優れた薬物動態学的特性、たとえばより高い経口バイオアベイラビリティーおよび/またはより低いクリアランスを有し、および/またはそれらより優れた別の有用な薬理学的、物理的、または化学的特性を有するという利点を有する。本発明の化合物は、先行技術において公知の化合物より少ない頻度で投与されてよいという付加的な利点を有しうる。
【0027】
また、本発明の化合物は改善された取り扱いの容易さを提供する形状にあるという利点を有していてもよい。さらに、本発明の化合物は、改善された化学的および/または固体状態安定性(たとえば、吸湿性がより低いことに帰因する)を有していてもよい形状で産生されてよいという利点を有する。したがって、本発明のそのような化合物は長期間にわたり保存された場合、安定であってよい。
【0028】
また、本発明の化合物は、それらを高収率で、高純度で、迅速に、都合よく、および安価で結晶化されてよいという利点を有していてもよい。
本発明の化合物は医薬品としての活性を有し、とりわけ該化合物は選択的なPPARαアゴニストである、すなわち、PPARαに関するそれらのEC50がPPARγに関するそれらのそれぞれのEC50の1/10以下であり、ここでEC50は本明細書で後述するアッセイにおいて記載するように、測定され、計算される。該化合物は強力で選択的な化合物である。
【0029】
本発明の具体的な化合物は:
(−)−2−{[2−(4−ヒドロキシフェニル)エチル]チオ}−3−[4−(2−{4−[(メチルスルホニル)オキシ]フェノキシ}エチル)フェニル]プロパン酸カリウム塩および
(−)−2−{[2−(4−ヒドロキシフェニル)エチル]チオ}−3−[4−(2−{4−[(メチルスルホニル)オキシ]フェノキシ}エチル)フェニル]プロパン酸ナトリウム塩である。
【0030】
これらの塩は、それらが結晶性であり、優れた流動性を有するという利点を有する。これらの塩は医薬製剤に適している。
当業者は、(−)が本明細書において存在する場合、実験の項において記載された条件および濃度を使用して測定されれば、酸が負の旋光度を有するということを理解するであろう。塩の絶対配置が(−)‐親酸の絶対配置と同じならば、本発明の塩は(+)旋光度を有していてもよいことは理解されるべきである。
【0031】
また、本発明の化合物が、たとえば水和またはエタノールによる溶媒和のような、溶媒和された、および溶媒和されない形状で存在してもよいことは理解されるであろう。本発明はそのような溶媒和された、および溶媒和されない形状のすべてを包含することを理解すべきである。
【0032】
別の側面において本発明は以下の態様を提供する。
粉末X線回折により性状解析された、9.3、5.8、4.65および4.53Åのd−値のピークを特徴とする、(−)−2−{[2−(4−ヒドロキシフェニル)エチル]チオ}−3−[4−(2−{4−[(メチルスルホニル)オキシ]フェノキシ}エチル)フェニル]プロパン酸のカリウム塩。
【0033】
実質的に図Aにおいて開示されたXRPDパターンを有する、(−)−2−{[2−(4−ヒドロキシフェニル)エチル]チオ}−3−[4−(2−{4−[(メチルスルホニル)オキシ]フェノキシ}エチル)フェニル]プロパン酸のカリウム塩。
【0034】
粉末X線回折により性状解析された、12.8、8.2、4.16および4.08Åのd−値のピークを特徴とする、(−)−2−{[2−(4−ヒドロキシフェニル)エチル]チオ}−3−[4−(2−{4−[(メチルスルホニル)オキシ]フェノキシ}エチル)フェニル]プロパン酸のナトリウム塩。
【0035】
実質的に図Bにおいて開示されたXRPDパターンを有する、(−)−2−{[2−(4−ヒドロキシフェニル)エチル]チオ}−3−[4−(2−{4−[(メチルスルホニル)オキシ]フェノキシ}エチル)フェニル]プロパン酸のナトリウム塩。
【0036】
製造方法
本発明の化合物は以下に概説されたように製造されてもよい。しかし、本発明はこれらの方法に限定されない。
【0037】
本発明の化合物は、不活性溶媒中、0〜100℃の範囲の温度で、カリウム含有塩基、たとえば水酸化カリウム、またはナトリウム含有塩基、たとえば水酸化ナトリウムのいずれかと(−)−2−{[2−(4−ヒドロキシフェニル)エチル]チオ}−3−[4−(2−{4−[(メチルスルホニル)オキシ]フェノキシ}エチル)フェニル]プロパン酸を反応させ、固体塩を単離することにより製造することができる。該塩は、反応溶液を冷却し、そして場合により所望する生成物を溶液に播く、および/または溶液を濃縮することにより単離することができる。場合により、生成物は不活性溶媒中の生成物溶液にアンチソルベント(antisolvent)を添加することにより単離されてもよい。固体は、当業者に公知の方法、たとえばろ過または遠心分離により集めることができる。
【0038】
別の側面において、本発明はエタノール中で、(−)−2−{[2−(4−ヒドロキシフェニル)エチル]チオ}−3−[4−(2−{4−[(メチルスルホニル)オキシ]フェノキシ}エチル)フェニル]プロパン酸と水酸化カリウムを反応させることにより得ることができる化合物を提供する。とりわけ、等量の水酸化カリウムが使用される。
【0039】
別の側面において、本発明はエタノール中で、(−)−2−{[2−(4−ヒドロキシフェニル)エチル]チオ}−3−[4−(2−{4−[(メチルスルホニル)オキシ]フェノキシ}エチル)フェニル]プロパン酸とナトリウムメトキシドを反応させ、続いてトルエンを添加することにより得ることができる化合物を提供する。とりわけ、等量のナトリウムメトキシドが使用される。
【0040】
“不活性溶媒”という表現は、所望する生成物の収率に有害な影響を与える様式で、出発物質、試薬、中間体または生成物と反応しない溶媒を表す。
【0041】
医薬製剤
本発明の化合物は、通常、薬剤的に受容できる剤形において、薬剤的調製物の形状で、経口的、非経口的、静脈内、筋肉内、皮下または別の注射方法、舌下、直腸内、経膣、経皮および/または経鼻経路を介して、および/または吸入により投与されるであろう。処置される疾患および患者ならびに投与経路に応じて、組成物は種々の投与量で投与されてよい。
【0042】
ヒトの治療的処置における本発明の化合物の適切な1日投与量は、約0.0001〜100mg/kg体重、好ましくは0.001〜10mg/kg体重である。
当業者に公知の方法により製剤され、0.5mg〜500mgの範囲、たとえば1mg、3mg、5mg、10mg、25mg、50mg、100mgおよび250mgの活性化合物の投与量を提供することができる経口製剤は、とりわけ錠剤またはカプセル剤が好ましい。
【0043】
本発明の別の側面によれば、薬剤的に受容できるアジュバント、希釈剤および/またはキャリアと混合した、本発明の化合物を含有する医薬製剤が提供される。
【0044】
薬理学的性質
本発明の化合物は、生来の、または誘導された、低下したインスリン感受性(インスリン耐性)、および関連する代謝疾患(メタボリックシンドロームとしても知られている)を伴う臨床症状の予防および/または処置に有用である。これらの臨床症状には一般肥満、腹部肥満、動脈性高血圧、高インスリン血症、高血糖症、2型糖尿病およびインスリン耐性に伴って特徴的に現れる脂質代謝異常が挙げられるが、それらに限定されないであろう。アテローム形成性リポ蛋白質特性としても知られているこの脂質代謝異常は、適度に上昇した非エステル化脂肪酸、上昇した極低密度リポ蛋白質(VLDL)トリグリセリドリッチ粒子、高アポBレベル、低アポAI粒子レベルを伴う低高密度リポ蛋白質(HDL)レベル、および小、濃密、低密度リポ蛋白質(LDL)粒子、表現型Bの存在下における高アポBレベルにより特徴付けられる。
【0045】
本発明の化合物は、複合もしくは混合脂肪血症、または種々の程度の高トリグリセリド血症および食後脂質代謝異常があり、メタボリックシンドロームの別の徴候があるか、またはない患者の処置に有用であることが期待される。
【0046】
本発明の化合物による処置は、それらの抗脂質代謝異常および抗炎症特性のために、アテローム性動脈硬化症を伴う心血管罹病率および死亡率を低下させることが期待される。心血管疾患状態には、心筋梗塞、鬱血性心不全、脳血管障害および下肢の末梢動脈不全を引き起こす、種々の内部器官のマクロアンギオパチーが挙げられる。また、本発明の化合物は、そのインスリン増感作用のために、メタボリックシンドローム由来の2型糖尿病および妊娠糖尿病の発生を妨げるか、または遅延させると期待される。したがって、腎臓疾患、網膜障害および下肢の末梢血管疾患を引き起こす、ミクロアンギオパチーのような、糖尿病における慢性高血糖症に伴う長期合併症の発生は遅延することが期待される。さらに、本発明の化合物は、インスリン耐性に関連するか、または関連しない、心血管系外の種々の状態、たとえば多嚢胞性卵巣症候群、肥満、癌、ならびに軽度な認知障害、アルツハイマー病、パーキンソン病および多発性硬化症のような神経変性障害を含む炎症性疾患状態の処置に有用であってもよい。
【0047】
本発明の化合物は、2型糖尿病に罹患している患者のグルコースレベルの制御に有用であると期待される。
本発明は、本発明の化合物の投与が必要な哺乳動物(とりわけヒト)へのかかる化合物の投与を含む、脂質代謝異常、インスリン耐性症候群および/または代謝性障害(先に定義したような)を治療するか、または予防する方法を提供する。
【0048】
本発明の化合物は、有効量の本発明の化合物の投与が必要な哺乳動物(とりわけヒト)へのかかる化合物の投与を含む、2型糖尿病を治療するか、または予防する方法を提供する。
【0049】
別の側面において、本発明は医薬品としての本発明の化合物の使用を提供する。
別の側面において、本発明はインスリン耐性および/または代謝性障害の処置のための医薬品の製造における、本発明の化合物の使用を提供する。
【0050】
組み合わせ治療
本発明の化合物は、高血圧、脂肪血症、脂質代謝異常、糖尿病および肥満のようなアテローム性動脈硬化症の発生および進行に伴う疾患の処置において有用な別の治療薬と組み合わせてもよい。本発明の化合物は、LDL:HDL比を減少させる別の治療薬、またはLDL‐コレステロールの循環レベルの低下を引き起こす薬剤と組み合わせてもよい。糖尿病に罹患している患者では、本発明の化合物はさらに、ミクロアンギオパチーに関連した合併症を処置するために使用される治療薬と組み合わせてもよい。
【0051】
本発明の化合物は、メタボリックシンドロームまたは2型糖尿病およびそれに伴う合併症の処置のための別の治療法と一緒に使用してもよく、これらにはビグアニド剤、たとえばメトホルミン、フェンホルミンおよびブホルミン、インスリン(合成インスリン類似体、アミリン)および経口抗高血糖症剤(これらは食事グルコース調節剤およびアルファ‐グルコシダーゼ阻害剤に分割される)が挙げられる。アルファ‐グルコシダーゼ阻害剤の例としてはアカルボースまたはボグリボースまたはミグリトールが挙げられる。食事グルコース調節剤の例としてはレパグリニドまたはナテグリニドが挙げられる。
【0052】
本発明の別の側面において、式Iの化合物、または薬剤的に受容できるその塩は、PPAR調節剤と一緒に投与してもよい。PPAR調節剤には、PPARアルファおよび/またはガンマおよび/またはデルタアゴニスト、または薬剤的に受容できるその塩、溶媒和物、そのような塩の溶媒和物もしくはプロドラッグが挙げられるが、それらに限定されない。適切なPPARアルファおよび/またはガンマアゴニスト、薬剤的に受容できるその塩、溶媒和物、そのような塩の溶媒和物もしくはプロドラッグは当該技術分野で公知である。これらには、WO01/12187、WO01/12612、WO99/62870、WO99/62872、WO99/62871、WO98/57941、WO01/40170、WO04/000790、WO04/000295、WO04/000294、WO03/051822、WO03/051821、WO02/096863、WO03/051826、WO02/085844、WO01/040172、J Med Chem,1996,39,665、Expert Opinion on Therapeutic Patents,10(5),623−634(とりわけ、634ページに挙げられた、特許出願に記載された化合物)およびJ Med Chem,2000,43,527に記載の化合物が挙げられ、それらはすべて参照として本明細書に援用される。とりわけPPARアルファおよび/またはガンマおよび/またはデルタアゴニストは、ムラグリタザール(BMS 298585)、リボグリタゾン(CS−011)、ネトグリタゾン(MCC−555)、バラグリタゾン(DRF−2593、NN−2344)、クロフィブレート、フェノフィブレート、ベザフィブレート、ゲムフィブロジル、シプロフィブレート、ピオグリタゾン、ロシグリタゾン、AVE−0847、AVE−8134、CLX−0921、DRF−10945、DRF−4832、LY−518674、LY−818、LY−929、641597、GW−590735、GW−677954、GW−501516、MBX−102、ONO−5129、KRP−101、R−483(BM131258)、TAK−559またはTAK−654を表す。とりわけPPARアルファおよび/またはガンマおよび/またはデルタアゴニストは、テサグリタザール((S)−2−エトキシ−3−[4−(2−{4−メタンスルホニルオキシフェニル}エトキシ)フェニル]プロパン酸)および薬剤的に受容できるその塩を表す。
【0053】
さらに、本発明の化合物はスルホニルウレア、たとえばグリメピリド、グリベンクラミド(グリブリド)、グリクラジド、グリピジド、グリキドン、クロロプロパミド、トルブタミド、アセトヘキシミド、グリコピラミド、カルブタミド、グリボヌリド、グリソキセピド、グリブチアゾール、グリブゾール、グリヘキサミド、グリミジン、グリピナミド、フェンブタミド、トルシラミドおよびトラザミドと一緒に使用されてよい。好ましくは、スルホニルウレアはグリメピリドまたはグリベンクラミド(グリブリド)である。より好ましくは、スルホニルウレアはグリメピリドである。本発明は、この組み合わせの項で記載された1、2またはそれ以上の既存の治療法と一緒の本発明の化合物の投与を包含する。2型糖尿病およびそれに伴う合併症の処置のための別の既存治療法の投与量は当該技術分野で公知のものであり、規制機関、たとえばFDAにより使用が認可され、FDAにより発行されたオレンジブック(Orange Book)中に見出すことができる。あるいは、組み合わせに由来する利点の結果として、より少ない投与量が使用されてもよい。本発明は、さらにコレステロール低下剤と組み合わせた本発明の化合物も包含する。本出願で述べるコレステロール低下剤には、HMG−CoAレダクターゼ(3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリルコエンザイムAレダクターゼ)の阻害剤が挙げられるが、それらに限定されない。適切には、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤は、アトルバスタチン、ベルバスタチン、セリバスタチン、ダルバスタチン、フルバスタチン、イタバスタチン、ロバスタチン、メバスタチン、ニコスタチン、ニバスタチン、プラバスタチンおよびシムバスタチンからなる群から選択されるスタチン、またはその薬剤的に受容できるその塩、とりわけナトリウムまたはカルシウム、もしくは溶媒和物、もしくはそのような塩の溶媒和物である。具体的なスタチンは、アトルバスタチン、または薬剤的に受容できるその塩、溶媒和物、そのような塩の溶媒和物、もしくはプロドラッグである。より具体的なスタチンは、アトルバスタチンカルシウム塩である。とりわけ好ましいスタチンは、しかし、化学名
(E)−7−[4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン−5−イル](3R,5S)−3,5−ジヒドロキシヘプト−6−エン酸[(E)−7−[4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−[N−メチル−N−(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン−5−イル](3R,5S)−3,5−ジヒドロキシヘプト−6−エン酸としても公知]を持つ化合物、または薬剤的に受容できるその塩、もしくは溶媒和物、もしくはそのような塩の溶媒和物である。化合物(E)−7−[4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン−5−イル](3R,5S)−3,5−ジヒドロキシヘプト6−エン酸、ならびにそのカルシウムおよびナトリウム塩は欧州特許出願公開No.EP−A−0521471およびBioorganic and Medicinal Chemistry,(1997),5(2),437−444に開示される。この後者のスタチンは現在、その一般名ロスバスタチンとして公知である。
【0054】
本出願において、“コレステロール低下剤”という用語はまた、活性または不活性のいずれであっても、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤の化学的改変物、たとえばエステル、プロドラッグおよび代謝産物を包含する。
【0055】
また、本発明は胆汁酸封鎖剤、たとえばコレスチポルまたはコレスチラミンまたはコレスタゲルと組み合わせた本発明の化合物を包含する。
また、本発明は回腸胆汁酸輸送系阻害剤(IBAT阻害剤)と組み合わせた本発明の化合物を包含する。
【0056】
適切なIBAT阻害剤活性を有する化合物は記載されている。たとえば以下に記載の化合物を参照されたい:WO93/16055、WO94/18183、WO94/18184、WO96/05188、WO96/08484、WO96/16051、WO97/33882、WO98/07449、WO98/03818、WO98/38182、WO99/32478、WO99/35135、WO98/40375、WO99/35153、WO99/64409、WO99/64410、WO00/01687、WO00/47568、WO00/61568、WO00/62810、WO01/68906、DE 19825804、WO00/38725、WO00/38726、WO00/38727、WO00/38728、WO00/38729、WO01/68906、WO01/66533、WO02/32428、WO02/50051、EP864582、EP489423、EP549967、EP573848、EP624593、EP624594、EP624595およびEP624596。これらの特許出願の内容は参照として本明細書に援用される。
【0057】
さらに適切なIBAT阻害剤活性を有する化合物は、WO94/24087、WO98/56757、WO00/20392、WO00/20393、WO00/20410、WO00/20437、WO01/34570、WO00/35889、WO01/68637、WO02/08211、WO03/020710、WO03/022825、WO03/022830、WO03/022286、WO03/091232、WO03/106482、JP10072371、US5070103、EP251315、EP417725、EP869121、EP1070703およびEP597107に記載され、そしてこれらの特許出願の内容は参照として本明細書に援用される。
【0058】
本発明の使用に適切なIBAT阻害剤の具体的なクラスはベンゾチエピンであり、WO00/01687、WO96/08484およびWO97/33882の特許請求の範囲、とりわけ請求項1に記載の化合物は参照として本明細書に援用される。IBAT阻害剤の別の適切なクラスは1,2−ベンゾチアゼピン、1,4−ベンゾチアゼピンおよび1,5−ベンゾチアゼピンである。IBAT阻害剤の別の適切なクラスは1,2,5−ベンゾチアジアゼピンである。
【0059】
IBAT阻害剤活性を有する1種の具体的な化合物は(3R,5R)−3−ブチル−3−エチル−1,1−ジオキシド−5−フェニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−ベンゾチアゼピン−8−イル a−D−グルコピラノシドウロン酸(EP864582)である。別の適切なIBAT阻害剤には以下のものの1種が挙げられる:
1,1−ジオキソ−3,3−ジブチル−5−フェニル−7−メチルチオ−8−(N−{(R)−1’−フェニル−1’−[N’−(カルボキシメチル)カルバモイル]メチル}カルバモイルメトキシ)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,5−ベンゾチアゼピン;
1,1−ジオキソ−3,3−ジブチル−5−フェニル−7−メチルチオ−8−(N−{(R)−a−[N’−(カルボキシメチル)カルバモイル]−4−ヒドロキシベンジル}カルバモイルメトキシ)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,5−ベンゾチアゼピン;
1,1−ジオキソ−3,3−ジブチル−5−フェニル−7−メチルチオ−8−(N−{(R)−1’−フェニル−1’−[N’−(2−スルホエチル)カルバモイル]メチル}カルバモイルメトキシ)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,5−ベンゾチアゼピン
1,1−ジオキソ−3−ブチル−3−エチル−5−フェニル−7−メチルチオ−8−(N−{(R)−1’−フェニル−1’−[N’−(2−スルホエチル)カルバモイル]メチル}カルバモイルメトキシ)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,5−ベンゾチアゼピン;
1,1−ジオキソ−3,3−ジブチル−5−フェニル−7−メチルチオ−8−(N−{(R)−a−[N’−(2−スルホエチル)カルバモイル]−4−ヒドロキシベンジル}カルバモイルメトキシ)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,5−ベンゾチアゼピン;
1,1−ジオキソ−3−ブチル−3−エチル−5−フェニル−7−メチルチオ−8−(N−{(R)−a−[N’−(2−スルホエチル)カルバモイル]−4−ヒドロキシベンジル}カルバモイルメトキシ)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,5−ベンゾチアゼピン;
1,1−ジオキソ−3−ブチル−3−エチル−5−フェニル−7−メチルチオ−8−(N−{(R)−a−[N’−(2−カルボキシエチル)カルバモイル]ベンジル}カルバモイルメトキシ)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,5−ベンゾチアゼピン;
1,1−ジオキソ−3,3−ジブチル−5−フェニル−7−メチルチオ−8−(N−{(R)−a−[N’−(2−カルボキシエチル)カルバモイル]−4−ヒドロキシベンジル}カルバモイルメトキシ)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,5−ベンゾチアゼピン;
1,1−ジオキソ−3−ブチル−3−エチル−5−フェニル−7−メチルチオ−8−(N−{(R)−a−[N’−(5−カルボキシペンチル)カルバモイル]ベンジル}カルバモイルメトキシ)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,5−ベンゾチアゼピン;
1,1−ジオキソ−3,3−ジブチル−5−フェニル−7−メチルチオ−8−(N−{(R)−a−[N’−(2−カルボキシエチル)カルバモイル]ベンジル}カルバモイルメトキシ)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,5−ベンゾチアゼピン;
1,1−ジオキソ−3,3−ジブチル−5−フェニル−7−メチルチオ−8−(N−{a−[N’−(2−スルホエチル)カルバモイル]−2−フルオロベンジル}カルバモイルメトキシ)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,5−ベンゾチアゼピン;
1,1−ジオキソ−3−ブチル−3−エチル−5−フェニル−7−メチルチオ−8−(N−{(R)−a−[N’−(R)−(2−ヒドロキシ−1−カルボキシエチル)カルバモイル]ベンジル}カルバモイルメトキシ)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,5−ベンゾチアゼピン;
1,1−ジオキソ−3,3−ジブチル−5−フェニル−7−メチルチオ−8−(N−{(R)−a−[N’−(R)−(2−ヒドロキシ−1−カルボキシエチル)カルバモイル]ベンジル}カルバモイルメトキシ)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,5−ベンゾチアゼピン;
1,1−ジオキソ−3,3−ジブチル−5−フェニル−7−メチルチオ−8−{N−[(R)−a−(N’−{(R)−1−[N”−(R)−(2−ヒドロキシ−1−カルボキシエチル)カルバモイル]−2−ヒドロキシエチル}カルバモイル)ベンジル]カルバモイルメトキシ}−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,5−ベンゾチアゼピン;
1,1−ジオキソ−3−ブチル−3−エチル−5−フェニル−7−メチルチオ−8−(N−{a−[N’−(カルボキシメチル)カルバモイル]ベンジル}カルバモイルメトキシ)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,5−ベンゾチアゼピン;
1,1−ジオキソ−3−ブチル−3−エチル−5−フェニル−7−メチルチオ−8−(N−{a−[N’−((エトキシ)(メチル)ホスホリルメチル)カルバモイル]ベンジル}カルバモイルメトキシ)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,5−ベンゾチアゼピン;
1,1−ジオキソ−3−ブチル−3−エチル−5−フェニル−7−メチルチオ−8−{N−[(R)−a−(N’−{2−[(ヒドロキシ)(メチル)ホスホリル]エチル}カルバモイル)ベンジル]カルバモイルメトキシ}−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,5−ベンゾチアゼピン;
1,1−ジオキソ−3,3−ジブチル−5−フェニル−7−メチルチオ−8−(N−{(R)−a−[N’−(2−メチルチオ−1−カルボキシエチル)カルバモイル]ベンジル}カルバモイルメトキシ)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,5−ベンゾチアゼピン;
1,1−ジオキソ−3,3−ジブチル−5−フェニル−7−メチルチオ−8−{N−[(R)−a−(N’−{2−[(メチル)(エチル)ホスホリル]エチル}カルバモイル)−4−ヒドロキシベンジル]カルバモイルメトキシ}−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,5−ベンゾチアゼピン;
1,1−ジオキソ−3,3−ジブチル−5−フェニル−7−メチルチオ−8−{N−[(R)−a−(N’−{2−[(メチル)(ヒドロキシ)ホスホリル]エチル}カルバモイル)−4−ヒドロキシベンジル]カルバモイルメトキシ}−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,5−ベンゾチアゼピン;
1,1−ジオキソ−3,3−ジブチル−5−フェニル−7−メチルチオ−8−(N−{(R)−a−[(R)−N’−(2−メチルスルフィニル−1−カルボキシエチル)カルバモイル]ベンジル}カルバモイルメトキシ)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,5−ベンゾチアゼピン;
1,1−ジオキソ−3,3−ジブチル−5−フェニル−7−メトキシ−8−[N−{(R)−a−[N’−(2−スルホエチル)カルバモイル]−4−ヒドロキシベンジル}カルバモイルメトキシ]−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,5−ベンゾチアゼピン;
1,1−ジオキソ−3,3−ジブチル−5−フェニル−7−メチルチオ−8−(N−{(R)−a−[N−((R)−1−カルボキシ−2−メチルチオエチル)カルバモイル]−4−ヒドロキシベンジル}カルバモイルメトキシ)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,2,5−ベンゾチアジアゼピン;
1,1−ジオキソ−3,3−ジブチル−5−フェニル−7−メチルチオ−8−(N−{(R)−a−[N−((S)−1−カルボキシ−2−(R)−ヒドロキシプロピル)カルバモイル]−4−ヒドロキシベンジル}カルバモイルメトキシ)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,2,5−ベンゾチアジアゼピン;
1,1−ジオキソ−3,3−ジブチル−5−フェニル−7−メチルチオ−8−(N−{(R)−a−[N−((S)−1−カルボキシ−2−メチルプロピル)カルバモイル]−4−ヒドロキシベンジル}カルバモイルメトキシ)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,2,5−ベンゾチアジアゼピン;
1,1−ジオキソ−3,3−ジブチル−5−フェニル−7−メチルチオ−8−(N−{(R)−a−[N−((S)−1−カルボキシブチル)カルバモイル]−4−ヒドロキシベンジル}カルバモイルメトキシ)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,2,5−ベンゾチアジアゼピン;
1,1−ジオキソ−3,3−ジブチル−5−フェニル−7−メチルチオ−8−(N−{(R)−a−[N−((S)−1−カルボキシプロピル)カルバモイル]ベンジル}カルバモイルメトキシ)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,2,5−ベンゾチアジアゼピン;
1,1−ジオキソ−3,3−ジブチル−5−フェニル−7−メチルチオ−8−(N−{(R)−a−[N−((S)−1−カルボキシエチル)カルバモイル]ベンジル}カルバモイルメトキシ)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,2,5−ベンゾチアジアゼピン;
1,1−ジオキソ−3,3−ジブチル−5−フェニル−7−メチルチオ−8−(N−{(R)−a−[N−((S)−1−カルボキシ−2−(R)−ヒドロキシプロピル)カルバモイル]ベンジル}カルバモイルメトキシ)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,2,5−ベンゾチアジアゼピン;
1,1−ジオキソ−3,3−ジブチル−5−フェニル−7−メチルチオ−8−(N−{(R)−a−[N−(2−スルホエチル)カルバモイル]−4−ヒドロキシベンジル}カルバモイルメトキシ)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,2,5−ベンゾチアジアゼピン;
1,1−ジオキソ−3,3−ジブチル−5−フェニル−7−メチルチオ−8−(N−{(R)−a−[N−((S)−1−カルボキシエチル)カルバモイル]−4−ヒドロキシベンジル}カルバモイルメトキシ)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,2,5−ベンゾチアジアゼピン;
1,1−ジオキソ−3,3−ジブチル−5−フェニル−7−メチルチオ−8−(N−{(R)−a−[N−((R)−1−カルボキシ−2−メチルチオエチル)カルバモイル]ベンジル}カルバモイルメトキシ)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,2,5−ベンゾチアジアゼピン;
1,1−ジオキソ−3,3−ジブチル−5−フェニル−7−メチルチオ−8−(N−{(R)−a−[N−{(S)−1−[N−((S)−2−ヒドロキシ−1−カルボキシエチル)カルバモイル]プロピル}カルバモイル]ベンジル}カルバモイルメトキシ)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,2,5−ベンゾチアジアゼピン;
1,1−ジオキソ−3,3−ジブチル−5−フェニル−7−メチルチオ−8−(N−{(R)−a−[N−((S)−1−カルボキシ−2−メチルプロピル)カルバモイル]ベンジル}カルバモイルメトキシ)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,2,5−ベンゾチアジアゼピン;
1,1−ジオキソ−3,3−ジブチル−5−フェニル−7−メチルチオ−8−(N−{(R)−a−[N−((S)−1−カルボキシプロピル)カルバモイル]−4−ヒドロキシベンジル}カルバモイルメトキシ)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,2,5−ベンゾチアジアゼピン;
1,1−ジオキソ−3,3−ジブチル−5−フェニル−7−メチルチオ−8−[N−((R/S)−a−{N−[1−(R)−2−(S)−1−ヒドロキシ−1−(3,4−ジヒドロキシフェニル)プロプ−2−イル]カルバモイル}−4−ヒドロキシベンジル)カルバモイルメトキシ]−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,2,5−ベンゾチアジアゼピン;
1,1−ジオキソ−3,3−ジブチル−5−フェニル−7−メチルチオ−8−(N−{(R)−a−[N−(2−(S)−3−(R)−4−(R)−5−(R)−2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル)カルバモイル]−4−ヒドロキシベンジル}カルバモイルメトキシ)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,2,5−ベンゾチアジアゼピン;および
1,1−ジオキソ−3,3−ジブチル−5−フェニル−7−メチルチオ−8−(N−{(R)−a−[N−(2−(S)−3−(R)−4−(R)−5−(R)−2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシフェニル)カルバモイル]ベンジル}カルバモイルメトキシ)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,2,5−ベンゾチアジアゼピン;
または薬剤的に受容できるその塩、溶媒和物、そのような塩の溶媒和物もしくはプロドラッグ。
【0060】
本発明の付加的な別の側面によれば、場合により薬剤的に受容できる希釈剤またはキャリアと一緒の有効量の本発明の化合物の投与と、場合により薬剤的に受容できる希釈剤またはキャリアと一緒の以下のものから選択される1種以上の薬剤の、かかる療法的処置を必要とするヒトなどの温血動物への同時、連続または個別投与を含む組み合わせ処置が提供される:
CETP(コレステリルエステル転移蛋白質)阻害剤、たとえばWO00/38725、7ページ22行〜10ページ17行(参照として本明細書に援用される)で言及され、それに記載されたもの;
コレステロール吸収アンタゴニスト、たとえばSCH58235のようなアゼチジノンおよびUS5,767,115(参照として本明細書に援用される)に記載されたもの;
MTP(ミクロソーム転移蛋白質)阻害剤、たとえばScience,282,751−54,1998(参照として本明細書に援用される)に記載されたもの;
徐放および組み合わせ製剤を含むニコチン酸誘導体、たとえばニコチン酸(ナイアシン)、アシピモックスおよびニセリトロール;
フィトステロール化合物、たとえばスタノール;
プロブコール;
オメガ‐3脂肪酸、たとえばOmacor(登録商標);
抗肥満化合物、たとえばオルリスタット(EP129,748)およびシブトラミン(GB2,184,122およびUS4,929,629);
抗高血圧化合物、たとえばアンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、アンギオテンシンII受容体アンタゴニスト、アドレナリン遮断薬、アルファアアドレナリン遮断薬、ベータアドレナリン遮断薬、たとえばメトプロロール、アルファ/ベータ混合アドレナリン遮断薬、アドレナリン刺激薬、カルシウムチャネル遮断薬、AT−1遮断薬、塩類利尿剤、利尿剤または血管拡張薬;
CB1アンタゴニストまたは、たとえばWO01/70700およびEP 65635に記載されたような逆アゴニスト;
アスピリン;
メラニン濃縮ホルモン(MCH)アンタゴニスト;
PDK阻害剤;もしくは
核受容体の調節因子、たとえばLXR、FXR、RXR、およびRORアルファ;
または薬剤的に受容できるその塩、溶媒和物、そのような塩の溶媒和物もしくはプロドラッグ。
【0061】
本発明の化合物と組み合わせて使用することができる、活性代謝産物を含む、具体的なACE阻害剤または薬剤的に受容できるその塩、溶媒和物、そのような塩の溶媒和物、もしくはプロドラッグには、以下のものが挙げられるが、それらに限定されない:アラセプリル、アラトリオプリル、アルチオプリルカルシウム、アンコベニン、ベナゼプリル、ベナゼプリル塩酸塩、ベナゼプリラート、ベンゾイルカプトプリル、カプトプリル、カプトプリル‐システイン、カプトプリル‐グルタチオン、セラナプリル、セラノプリル、シラザプリル、シラザプリラート、デラプリル、デラプリル‐ジアシド、エナラプリル、エナラプリラート、エナプリル、エピカプトプリル、ホロキシミチン、ホスフェノプリル、ホセノプリル、ホセノプリルナトリウム、ホシノプリル、ホシノプリルナトリウム、ホシノプリラート、ホシノプリル酸、グリコプリル、ヘモルフィン‐4、イドラプリル、イミダプリル、インドラプリル、インドラプリラート、リベンザプリル、リシノプリル、リシウミンA、リシウミンB、ミキサンプリル、モエキシプリル、モエキシプリラート、モベルチプリル、ムラセインA、ムラセインB、ムラセインC、ペントプリル、ペリンドプリル、ペリンドプリラート、ピバロプリル、ピボプリル、キナプリル、キナプリル塩酸塩、キナプリラート、ラミプリル、ラミプリラート、スピラプリル、スピラプリル塩酸塩、スピラプリラート、スピロプリル、スピロプリル塩酸塩、テモカプリル、テモカプリル塩酸塩、テプロチド、トランドラプリル、トランドプリラート、ウチバプリル、ザビシプリル、ザビシプリラート、ゾフェノプリルおよびゾフェノプリラート。本発明における使用に好ましいACE阻害剤は、ラミプリル、ラミプリラート、リシノプリル、エナラプリルおよびエナラプリラートである。本発明における使用により好ましいACE阻害剤は、ラミプリルおよびラミプリラートである。
【0062】
本発明の化合物との組み合わせにおける使用に好ましいアンギオテンシンIIアンタゴニスト、薬剤的に受容できるその塩、溶媒和物、そのような塩の溶媒和物またはプロドラッグには以下の化合物が挙げられるが、それらに限定されない:カンデサルタン、カンデサルタンシレキセチル、ロサルタン、バルサルタン、イルベサルタン、タソサルタン、テルミサルタンおよびエプロサルタン。本発明における使用にとりわけ好ましいアンギオテンシンIIアンタゴニストまたは薬剤的に受容できるその誘導体はカンデサルタンおよびカンデサルタンシレキセチルである。
【0063】
したがって、本発明の付加的な態様において、2型糖尿病およびそれに伴う合併症の処置が必要な温血動物、たとえばヒトにおけるそのような処置の方法が提供され、該方法は、上記動物に有効量の本発明の化合物を、有効量の、この組み合わせの項に記載の別の化合物の1種、または薬剤的に受容できるその塩、溶媒和物、そのような塩の溶媒和物、もしくはプロドラッグと同時、連続または個別投与において投与することを含む。
【0064】
したがって、本発明の付加的な態様において、脂肪血症状態の処置が必要な温血動物、たとえばヒトにおけるそのような状態を処置する方法が提供され、該方法は、上記動物への有効量の本発明の化合物を、有効量の、この組み合わせの項に記載の別の化合物の1種、または薬剤的に受容できるその塩、溶媒和物、そのような塩の溶媒和物、もしくはプロドラッグと同時、連続または個別投与において投与することを含む。
【0065】
本発明の別の側面によれば、本発明の化合物およびこの組み合わせの項に記載の別の化合物の1種または薬剤的に受容できるその塩、溶媒和物、そのような塩の溶媒和物もしくはプロドラッグを、薬剤的に受容できる希釈剤またはキャリアと一緒に含有する医薬組成物が提供される。
【0066】
本発明の別の側面によれば、本発明の化合物およびこの組み合わせの項に記載の別の化合物の1種または薬剤的に受容できるその塩、溶媒和物、そのような塩の溶媒和物もしくはプロドラッグを含有するキットが提供される。
【0067】
本発明の別の側面によれば、以下のものを含有するキットが提供される:
a)第1の単位剤形における、本発明の化合物;
b)第2の単位剤形における、この組み合わせの項に記載の別の化合物の1種または薬剤的に受容できるその塩、溶媒和物、そのような塩の溶媒和物もしくはプロドラッグ;および
c)上記第1および第2剤形を含有するための容器手段。
【0068】
本発明の別の側面によれば、以下のものを含有するキットが提供される:
a)第1の単位剤形における、薬剤的に受容できる希釈剤またはキャリアと一緒の本発明の化合物;
b)第2の単位剤形における、この組み合わせの項に記載の別の化合物の1種または薬剤的に受容できるその塩、溶媒和物、そのような塩の溶媒和物もしくはプロドラッグ;および
c)上記第1および第2剤形を含有するための容器手段。
【0069】
本発明の別の態様によれば、温血動物、たとえばヒトにおけるメタボリックシンドロームまたは2型糖尿病およびそれに伴う合併症の処置における使用のための医薬品の製造における、本発明の化合物およびこの組み合わせの項に記載の別の化合物の1種、または薬剤的に受容できるその塩、溶媒和物、そのような塩の溶媒和物、もしくはプロドラッグの使用が提供される。
【0070】
本発明の別の態様によれば、温血動物、たとえばヒトにおける脂肪血症状態の処置における使用のための医薬品の製造における、本発明の化合物およびこの組み合わせの項に記載の別の化合物の1種、または薬剤的に受容できるその塩、溶媒和物、そのような塩の溶媒和物、もしくはプロドラッグの使用が提供される。
【0071】
本発明の別の側面によれば、場合により薬剤的に受容できる希釈剤またはキャリアと一緒の有効量の本発明の化合物の投与と、場合により薬剤的に受容できる希釈剤またはキャリアと一緒の、有効量のこの組み合わせの項に記載の別の化合物の1種、または薬剤的に受容できるその塩、溶媒和物、そのような塩の溶媒和物、もしくはプロドラッグの同時、連続または個別投与を含む組み合わせ処置が必要な温血動物、たとえばヒトに、そのような治療的処置が提供される
【0072】
実験
H−NMRおよび13C−NMR測定は、H周波数がそれぞれ300、400、500および600MHzならびに13C周波数がそれぞれ75、100、125および150MHzで作動するVarian Mercury 300またはVarian UNITY plus 400、500もしくは600スペクトロメーターで行われた。測定はデルタスケール(δ)で行われた。
【0073】
特記しない限り、化学シフトは内部標準として溶媒を使用し、ppmで表す。
粉末X線回折(XRPD)は内部標準を全く使用せずに、標準法に従って調製された試料で、可変スリットを使用して行われた。標準法は、たとえば、Giacovazzo,C.et al(1995),Fundamentals of Crystallography,Oxford University Press;Jenkins,R.and Snyder,R.L.(1996),Introduction to X−Ray Powder Diffractometry,John Wiley&Sons,New York;Bunn,C.W.(1948),Chemical Crystallography,Clarendon Press,London;またはKlug,H.P.&Alexander,L.E.(1974),X−ray Diffraction Procedures,John Wiley and Sons,New Yorkに記載される。X線分析は、Siemens D5000回折装置においてCu−線を使用して実施した。以下の図におけるX軸は2−シータであり、Y軸は強度である。
【0074】
示差走査熱量測定(DSC)は、標準法、たとえばHohne,G.W.H.et al(1996),Differential Scanning Calorimetry,Springer,Berlinに記載の方法に従って、Mettler DSC820 またはMettler DSC820Eを使用して行われた。
【0075】
熱重量分析(TGA)はMettler Toledo TGA850またはMettler Toledo TG851を使用して行われた。10℃/分の勾配速度が使用された。
【0076】
本発明の化合物の結晶性形状は、本明細書に記載の工程に類似した方法により、および/または以下の実施例に従って製造してもよく、そして本明細書に開示されたものと本質的に同じXRPD回折パターンおよび/またはDSCおよび/またはTGAサーモグラムを示しうることが当業者により理解されるであろう。“本質的に同じ”XRPD回折パターンおよび/またはDSCおよび/またはTGAサーモグラムという句により、本発明者らは、相当するパターンおよび/またはサーモグラム(実験誤差を考慮する)から、本質的に同じ結晶性形状が形成されていることが明確な場合の実例を含める。規定された場合、DSC開始温度が±5℃(たとえば±2℃)の範囲で変化してもよく、そしてXRPD距離値が最後の小数位において±2の範囲で変化してもよい。当業者は、本質的に同じ結晶性形状に関して測定された場合、たとえば好ましいオリエンテーションを含む種々の理由から、XRPD強度は変化してもよいことを認めるであろう。
【0077】
略語
DMSO ジメチルスルホキシド
EtOAc 酢酸エチル
DMF N,N−ジメチルホルムアミド
THF テトラヒドロフラン
MeCN アセトニトリル
MeOH メタノール
TFA トリフルオロ酢酸
NHOAc 酢酸アンモニウム
NMR略語
t トリプレット
s シングレット
d ダブレット
q カルテット
m マルチプレット
bs ブロードシングレット
XRPD略語
XRPD 粉末X線回折
d−値 結晶格子における連続する平行なhlk面の間の間隔
【0078】
【表1】

【0079】
TGA 熱重量分析
DSC 示差走査熱量測定
【0080】
実施例
酸出発物質の製造
(i)メチル2−クロロ−3−[4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル]プロパノエート
2−(4−アミノフェニル)エタノール(11g、81mmol)および32ml濃HClをアセトンに溶解し、0°Cに冷やした。20ml水中の亜硝酸ナトリウム(5.6g、81mmol)を滴下して加えた。温度は0°C未満に保った。1時間後、メチルアクリレート(70g、808mmol)およびCuI(1.6g、8mmol)を添加した(<0℃)。反応混合物は一晩室温で撹拌した。
【0081】
溶媒を留去し、水を添加した。水相はEtOAcで3回抽出し、有機相をあわせ、水で洗浄し、乾燥(MgSO)し、減圧下で留去した。粗生成物は、溶離液としてEtOAcとヘプタンの65:35混合物を使用して、フラッシュクロマトグラフィーにより精製した。分取HPLC(溶離液としてCHCN/0.1M NHOAcを含有する5%CHCN−水相のグラジエントを使用)によるさらなる精製により、油状物として9.7gの生成物(収率49%)を得た。
HNMR(400MHz,CDCl):2.84(t,3H),3.15(dd,1H),3.35(dd,1H),3.75(s,3H),3.84(t,3H),4.43(t,1H),7.17(d,4H)
【0082】
(ii)メチル3−(4−{2−[4−(ベンジルオキシ)フェノキシ]エチル}フェニル)−2−クロロプロパノエート
トリフェニルホスフィン(2.4g、9mmol)を窒素雰囲気下、20mlトルエン中のメチル2−クロロ−3−[4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル]プロパノエート(2.1g、8.5mmol)および4−(ベンジルオキシ)フェノール(1.7g、8mmol)の溶液に添加した。溶液は55°Cに温め、ジイソプロピルアゾジカルボキシレート(1.8g、9mmol)を添加した。反応混合物は一晩55℃で撹拌した。
【0083】
混合物を冷やし、溶媒を減圧下で留去した。粗生成物は、溶離液としてヘプタンとEtOAcの80:20混合物を使用して、フラッシュクロマトグラフィーにより精製し、所望する生成物2.28g(収率61%)を無色結晶として得た。
HNMR(400MHz,CDCl):3.05(t,2H),3.16(dd,1H),3.36(dd,1H),3.75(s,3H),4.12(t,2H),4.45(t,1H),5.01(s,2H),6.82(m,2H),6.90(m,2H),7.13−7.27(m,4H),7.29−7.47(m,5H).
【0084】
(iii)メチル2−クロロ−3−{4−[2−(4−ヒドロキシフェノキシ)エチル]フェニル}プロパノエート
メチル3−(4−{2−[4−(ベンジルオキシ)フェノキシ]エチル}フェニル)−2−プロパノエート(1.0g、2.4mmol)およびジメチルスルフィド(0.9g、14mmol)を60ml CHClに溶解した。三フッ化ホウ素エーテラート(2.0g、14mmol)を撹拌溶液に滴下して加えた。反応混合物は室温で2日間撹拌した。別の当量(0.4g、2.87mmol)の三フッ化ホウ素エーテラートをさらに添加し、一晩撹拌を続けた。
【0085】
水を添加した。相を分離し、水相をCHClで2回抽出した。有機相をあわせ、洗浄(水、食塩水)し、乾燥(NaSO)し、減圧下で濃縮した。CHCN/0.1M NHOAcを含有する5%CHCN−水相のグラジエントを使用した分取HPLCによるさらなる精製により、所望する生成物0.55g(収率52%)を油状物として得た。
HNMR(400MHz,CDCl):3.04(t,2H),3.16(dd,1H),3.35(dd,1H),3.75(s,3H),4.10(t,2H),4.40(t,1H),6.75(m,4H),7.12−7.29(m,4H).
【0086】
(iv)メチル2−クロロ−3−[4−(2−{4−[(メチルスルホニル)オキシ]フェノキシ}エチル)フェニル]プロパノエート
メチル2−クロロ−3−{4−[2−(4−ヒドロキシフェノキシ)エチル]フェニル}プロパノエート(334mg、1.0mmol)およびトリエチルアミン(303mg、3.0mmol)を20mlジクロロメタンに溶解し、窒素雰囲気下、−20°Cに冷やした。メタンスルホニルクロリド(114mg、1.0mmol)を滴下して加えた。混合物は室温に戻した。2時間後、ジクロロメタンを添加し、混合物を洗浄(水、食塩水)し、乾燥(NaSO)し、減圧下で濃縮して、純粋な生成物394mg(収率96%)を得た。
HNMR(400MHz,CDCl):3.02−3.11(m,5H),3.15(dd,1H),3.35(dd,1H),3.74(s,3H),4.14(t,2H),4.44(t,1H),5.29(s,2H),6.88(d,2H),7.14−7.25(m,6H).
【0087】
(v)メチル2−({2−[4−(ベンジルオキシ)フェニル]エチル}チオ)−3−[4−(2−{4−[(メチルスルホニル)オキシ]フェノキシ}エチル)フェニル]プロパノエート
2−[4−(ベンジルオキシ)フェニル]エタンチオール(334mg、1.4mmol)、メチル2−クロロ−3−[4−(2−{4−[(メチルスルホニル)オキシ]フェノキシ}エチル)フェニル]プロパノエート(394mg、0.95mmol)および炭酸カリウム(189mg、1.4mmol)を14ml乾燥DMFに溶解し、窒素雰囲気下、室温で一晩撹拌した。
【0088】
溶媒を減圧下で留去し、残渣をトルエンに溶解した。有機相は洗浄(水、食塩水)し、乾燥(MgSO)し、留去した。CHCN/0.1M NHOAcを含有する5%CHCN−水相のグラジエントを使用した分取HPLCによるさらなる精製により、所望する生成物477mg(収率75%)を得た。
HNMR(400MHz,CDCl):2.76−2.89(m,4H),2.95(dd,1H),3.09(m,5H),3.20(dd,1H),3.53(m,1H),3.70(s,3H),4.15(t,2H),5.06(s,2H),6.91(m,4H),7.07−7.24(m,8H),7.31−7.48(m,5H).
【0089】
(vi)メチル2−{[2−(4−ヒドロキシフェニル)エチル]チオ}−3−[4−(2−{4−[(メチルスルホニル)オキシ]フェノキシ}エチル)フェニル]プロパノエート
メチル2−({2−[4−(ベンジルオキシ)フェニル]エチル}チオ)−3−[4−(2−{4−[(メチルスルホニル)オキシ]フェノキシ}エチル)フェニル]プロパノエート(477mg、0.8mmol)および15mlジクロロメタンの溶液に、 ジメチルスルフィド(239mg、3.8mol)および三フッ化ホウ素エーテラート(545mg、3.8mmol)を添加した。18時間撹拌後、反応物に水を添加した。相を分離し、水相はジクロロメタンで2回抽出した。有機相をあわせ、乾燥(MgSO)し、減圧下で留去した。所望する生成物274mg(収率67%)を油状物として得た。
HNMR(400MHz,CDCl):2.70−2.85(m,4H),2.91(dd,1H),3.05(t,2H),3.10(s,3H),3.17(dd,1H),3.49(m,1H),3.68(s,3H),4.13(t,2H),6.72(d,2H),6.87(d,2H),6.99(d,2H),7.10−7.22(m,6H)
【0090】
(vii)2−{[2−(4−ヒドロキシフェニル)エチル]チオ}−3−[4−(2−{4−[(メチルスルホニル)オキシ]フェノキシ}エチル)フェニル]プロパン酸
メチル2−{[2−(4−ヒドロキシフェニル)エチル]チオ}−3−[4−(2−{4−[(メチルスルホニル)オキシ]フェノキシ}エチル)フェニル]プロパノエート(105mg、0.2mmol)をTHFと水の7:1混合物6.5mlに溶解し、氷浴上で冷やした。水酸化リチウム(9.4mg、0.4mmol)を添加した。室温で24時間撹拌後、反応混合物に水を添加した。THFを減圧下で留去し、1M塩酸で酸性化した。水相はEtOAc(x3)で抽出し、有機相をあわせ、洗浄(水、食塩水)し,乾燥(MgSO)し、濃縮した。粗生成物を分取HPLC(溶離液:CHCN/0.1M NHOAcを含有する5%CHCN−水相)を使用して精製し、所望する生成物74mg(収率97%)を油状物として得た。
HNMR(400MHz,CDCl):2.68−2.95(m,5H),3.05(t,2H),3.10(s,3H),3.17(dd,1H),3.47(m,1H),4.12(t,2H),6.70(d,2H),6.86(d,2H),6.97(d,2H),7.12−7.21(m,6H).
13CNMR(100MHz,CDCl):33.8,35.1,35.5,37.2,37.3,48.1,69.3,115.6,115.8,123.3,129.3,129.4,129.9,132.3,136.2,136.9,142.8,154.4,158.0,177.2.
【0091】
(viii)(−)−2−{[2−(4−ヒドロキシフェニル)エチル]チオ}−3−[4−(2−{4−[(メチルスルホニル)オキシ]フェノキシ}エチル)フェニル]プロパン酸
2−{[2−(4−ヒドロキシフェニル)エチル]チオ}−3−[4−(2−{4−[(メチルスルホニル)オキシ]フェノキシ}エチル)フェニル]プロパン酸のラセミ体をキラルクロマトグラフィーを使用して、そのエナンチオマーに分離した。Chiralpak AD JDB01+AS003(336x100mm i.d.)およびエタノール/ギ酸100/0.01%を移動相として使用した。ラセミ体(9g)をエタノールに溶解し、カラムに注入した。初めの溶出ピークを集め、UVで検出した。生成物(4.1g)をエナンチオマー純度>99%で得た。旋光度は、エナンチオマーをメタノール中濃度0.64g/100mlに溶解することにより[a]20=−33oであることが見出された。旋光度はナトリウム線を使用して、20oC、589nmで測定した。
HNMR(500MHz,CDOD):7.17−7.22(6H,m),6.99(2H,d),6.94(2H,d),6.69(2H,d),4.17(2H,t),3.46(1H,t),3.16(3H,s),3.13(1H,dd),3.05(2H,t),2.69−2.88(5H,m).
【0092】
実施例1
−)−2−{[2−(4−ヒドロキシフェニル)エチル]チオ}−3−[4−(2−{4−[(メチルスルホニル)オキシ]フェノキシ}エチル)フェニル]プロパン酸のカリウム塩
エタノール(8.2L)中の(S)−2−{[2−(4−ヒドロキシフェニル)エチル]チオ}−3−[4−(2−{4−[(メチルスルホニル)オキシ]フェノキシ}エチル)フェニル]プロパン酸(344g)の溶液を、エタノール性4.2%w/w水酸化カリウム溶液(1.2L)の添加により中和した。中和した溶液を50℃に加熱し、晶析容器にふるい入れた。蒸留により溶液は容積を4.4Lに減らした。依然として50℃に保ちながら、トルエン(6.2L)を共溶媒として添加した。バッチを周囲温度に冷やし、種晶を入れた。結晶化溶液にさらにトルエン(4.2L)を添加した。スラリーは60分間かけて−5℃に冷やし、さらに150分間維持した。生成物はろ過により分離し、冷やしたトルエンで洗浄した。反応物から、灰色がかった白色固体として、標題化合物339gを得た。
【0093】
以下の図面のX軸は、2‐シータであり、Y軸は強度である。DSCは91〜97℃の範囲における外挿開始温度を有する吸熱を示した。TGAは25〜110℃間で6.0〜7.1%の範囲における重量損失を示した。より純度の高い試料で繰り返されたDSC分析は、より高い融点を示してよい。
【0094】
(上記の実施例および/または別の方法により得られた)(S)−2−{[2−(4−ヒドロキシフェニル)エチル]チオ}−3−[4−(2−{4−[(メチルスルホニル)オキシ]フェノキシ}エチル)フェニル]プロパン酸のカリウム塩の結晶を、XRPDにより分析し、結果は以下の表に表し、図Aに示す。
【0095】
【化2】

【0096】
図A、(S)−2−{[2−(4−ヒドロキシフェニル)エチル]チオ}−3−[4−(2−{4−[(メチルスルホニル)オキシ]フェノキシ}エチル)フェニル]プロパン酸のカリウム塩のXRPDパターン
【0097】
【表2】

【0098】
【表3】

【0099】
実施例2
(−)−2−{[2−(4−ヒドロキシフェニル)エチル]チオ}−3−[4−(2−{4−[(メチルスルホニル)オキシ]フェノキシ}エチル)フェニル]プロパン酸のナトリウム塩
(−)−2−{[2−(4−ヒドロキシフェニル)エチル]チオ}−3−[4−(2−{4−[(メチルスルホニル)オキシ]フェノキシ}エチル)フェニル]プロパン酸(529mg)を、エタノール(3.2mL)に溶解した。溶液を45℃に加熱し、ナトリウムメトキシド(58mg、1.03eq.)を添加した。次に、溶液を60℃に加熱し、トルエン(4ml)を添加した。この後、溶液を18時間かけてゆっくり0℃に冷やし、2時間、0℃に放置した。固体をろ過により集め、トルエン(2x0.5ml)で洗浄し、真空下、50℃で乾燥し、結晶として標題化合物(205mg)を得た。
【0100】
(−)−2−{[2−(4−ヒドロキシフェニル)エチル]チオ}−3−[4−(2−{4−[(メチルスルホニル)オキシ]フェノキシ}エチル)フェニル]プロパン酸のナトリウム塩の性質の例
DSCは155℃の外挿開始温度を有する吸熱を示した。TGAは25〜110℃間で0.3%および110〜165℃間で0.7%の重量損失を示した。より純度の高い試料で繰り返されたDSC分析は、より高い融点を示してよい。
【0101】
(上記の実施例および/または別の方法により得られた)(S)−2−{[2−(4−ヒドロキシフェニル)エチル]チオ}−3−[4−(2−{4−[(メチルスルホニル)オキシ]フェノキシ}エチル)フェニル]プロパン酸のナトリウム塩の結晶を、XRPDにより分析し、結果は以下の表に表し、図Bに示す。
【0102】
【化3】

【0103】
【表4】

【0104】
【表5】

【0105】
生物活性
本発明の化合物の活性はWO03/051821に記載のアッセイにおいて示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(−)−2−{[2−(4−ヒドロキシフェニル)エチル]チオ}−3−[4−(2−{4−(メチルスルホニル)オキシ]フェノキシ}エチル)フェニル]プロパン酸のカリウム塩またはナトリウム塩。
【請求項2】
カリウム塩である、請求項1に記載の塩。
【請求項3】
ナトリウム塩である、請求項1に記載の塩。
【請求項4】
溶媒和物、水和物、溶媒和物/水和物の混合物、無溶媒物または無水物であってもよい、請求項1〜3のいずれか1つに記載の塩。
【請求項5】
結晶性または部分的結晶性形状における、請求項1〜4のいずれか1つに記載の塩。
【請求項6】
薬剤的に受容できるアジュバント、希釈剤および/またはキャリアと混合した、請求項1〜5のいずれか1つに記載の化合物を含有する医薬製剤。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の化合物の投与が必要な哺乳動物への、かかる化合物の投与を含む、インスリン耐性に関連してもしなくてもよい脂質疾患(脂質代謝異常)を治療または予防する方法。
【請求項8】
インスリン耐性に関連してもしなくてもよい脂質疾患(脂質代謝異常)の処置のための医薬品の製造における、請求項1〜5のいずれか1つに記載の化合物の使用。
【請求項9】
有効量の請求項1〜5のいずれか1つに記載の化合物の投与が必要な哺乳動物への、有効量のかかる化合物の投与を含む、2型糖尿病を治療または予防する方法。
【請求項10】
高血圧、脂肪血症、脂質代謝異常、糖尿病および肥満のような、アテローム性動脈硬化症の発生および進行に関連する疾患の処置に有用な別の治療薬と組み合わせた、請求項1〜5のいずれか1つに記載の化合物を含有する医薬組成物。

【公表番号】特表2006−527750(P2006−527750A)
【公表日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−516434(P2006−516434)
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【国際出願番号】PCT/GB2004/002595
【国際公開番号】WO2004/113284
【国際公開日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【出願人】(300022641)アストラゼネカ アクチボラグ (581)
【Fターム(参考)】