説明

(パー)フルオロエラストマー組成物

(パー)フルオロエラストマー100phr当たり、充填剤として表面積25〜35m2/gを有するカーボンブラック2〜70phr;架橋剤として一般式(I)(ここで、R1、R2、R3、R4、R5、R6は同一または異なってそれぞれHまたはC1〜C5アルキルであり;Zは酸素原子を任意に含んでいてもよく、好ましくは少なくとも部分的にフッ素化されている、C1〜C18の直鎖状もしくは分枝鎖状のアルキレンまたはシクロアルキレン基、あるいは(パー)フルオロポリオキシアルキレン基から選沢される)を有するビス−オレフィン0.5〜10phrを含む、過酸化物法により硬化し得る(パー)フルオロエラストマー組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温、例えば230℃〜320℃、特に250℃〜300℃での改善された蒸気耐性を有する(パー)フルオロエラストマー組成物に関する。
蒸気耐性とは、上記の高温で蒸気処理した後の、良好なシーリング特性(圧縮永久歪み)および機械的特性の小さい変動との組合せを意味する。
上記の特性の組合せは、長い処理時間、例えば150時間以上でも維持される。
【0002】
さらに具体的には、本発明は、上記の高温での長時間にわたる蒸気処理の後でも、破断応力、破断点伸び、硬度および体積膨潤のような機械的特性の変動により指摘される、良好な機械的特性を維持する(パー)フルオロエラストマー組成物に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特に化学および石油工業のためのシーリング製品の製造では、例えば320℃まで、好ましくは300℃までの高温での高い蒸気耐性を有する、すなわち上記の温度で長時間にわたって蒸気処理した後でも、良好な機械的特性およびシーリング特性を維持する、(パー)フルオロエラストマー組成物が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
驚くべきことに意外にも、本出願人は、以下に記載の特定の(パー)フルオロエラストマー組成物を用いることにより、上記の技術的課題を解決できることを見出した。
本発明の課題は、高温、例えば230℃〜320℃、特に250℃〜300℃で蒸気耐性を有する製品を製造するための、過酸化物法により硬化し得る(パー)フルオロエラストマー組成物の使用である。
【0005】
該組成物は、(パー)フルオロエラストマー100phr当たり:
− 充填剤として、25〜35m2/gの表面積CTAB(ASTM D 3765)を有するカーボンブラック2〜70phr;
− 架橋剤として、一般式:
【0006】
【化1】

【0007】
(式中、
1、R2、R3、R4、R5、R6は、同一または異なって、それぞれHまたはC1〜C5アルキルであり;
Zは、酸素原子を任意に含んでいてもよく、好ましくは少なくとも部分的にフッ素化されている、C1〜C18の直鎖状もしくは分枝鎖状のアルキレンまたはシクロアルキレン基、あるいは(パー)フルオロポリオキシアルキレン基から選沢される)
を有するビス−オレフィン0.5〜10phr
を含む。
【0008】
充填剤は、5〜50phr、好ましくは10〜40phrの間で変動し得る。ビス−オレフィンの量は、0.6〜5phr、好ましくは0.6〜1.80phr、より好ましくは0.9〜1.5phrの範囲である。上記範囲内の表面積CTABを有するカーボンブラックは、商業的に知られている。例えばカーボンブラック Corax(商標)N772およびCorax(商標)N774が挙げられる。
【0009】
ビス−オレフィンの式(I)において、Zは好ましくはC4〜C12、より好ましくはC4〜C8パーフルオロアルキレン基であり;Zが(パー)フルオロポリオキシアルキレン基であるとき、それは次の:
−CF2CF2O−、−CF2CF(CF3)O−、−CFX1O−(ここで、X1=F、CF3)、−CF2CF2CF2O−、−CF2−CH2CH2O−、−C36O−
から選択される単位を含むことができる。
【0010】
一方、R1、R2、R3、R4、R5、R6は、好ましくは水素である。
好ましくは、Zは、式:
−(Q)p−CF2O−(CF2CF2O)m(CF2O)n−CF2−(Q)p− (II)
(式中、QはC1〜C10アルキレンまたはオキシアルキレン基であり;pは0または1であり;mおよびnはm/nの比が0.2〜5の間であるような数であり、上記(パー)フルオロポリオキシアルキレン基の数平均分子量は300〜10000、好ましくは700〜2000の範囲である)
を有する。
【0011】
好ましくは、ビス−オレフィン中の−Q−は、−CH2OCH2−;−CH2O(CH2CH2O)sCH2−(ここで、s=1〜3)から選択される。
好ましくは、ビス−オレフィンは、式:CH2=CH−(CF2t0−CH=CH2(ここで、t0は6〜10の整数である)を有する。
【0012】
Zがアルキレンまたはシクロアルキレン基である式(I)のビス−オレフィンは、例えばI.L.Knunyantsらによる“Izv.Akad.Nauk.SSSR”,Ser.Khim.,1964(2), 384-6の記載に従って製造することができ、(パー)フルオロポリオキシアルキレンのシーケンスを含むビス−オレフィンは、USP 3,810,874に記載されている。
【0013】
本発明による架橋システムで過酸化物法により硬化し得る(パー)フルオロエラストマーは、過酸化物の架橋部位を含むものである。好ましくは、これらの部位は、ヨウ素および/または臭素、好ましくはヨウ素原子により代表される。例えば、EP 769,521に記載のパーフルオロエラストマー参照。
【0014】
ヨウ素および/または臭素原子は、主鎖に沿っておよび/または主鎖の末端として存在し得る。ヨウ素および/または臭素の量は、一般にポリマーの総重量に対して0.001〜5重量%、好ましくは0.01〜2.5重量%である。
【0015】
鎖に沿ってヨウ素原子を導入するために、フルオロエラストマーのモノマーの重合は、ヨウ素を含む適当なフッ素化コモノマー(硬化部位のモノマー)と共に行われる。例えば、USP 4,745,165、USP 4,831,085、USP 4,214,060、EP 683,149参照。
【0016】
硬化部位は、例えば次の化合物から選沢され得る:
(a)式:
I−Rf−O−CF=CF2 (III)
(式中、Rfは、塩素および/またはエーテル酸素原子を任意に含んでいてもよい、C1〜C12(パー)フルオロアルキレン;例えば、ICF2−O−CF=CF2、ICF2CF2−O−CF=CF2、ICF2CF2CF−O−CF=CF2、CF3CFICF2−O−CF=CF2などである)
のヨード(パー)フルオロアルキル−パーフルオロビニルエーテル;
【0017】
(b)式:
I−R’f−CF=CF2 (IV)
(式中、R’fは、塩素原子を任意に含んでいてもよい、C1〜C12(パー)フルオロアルキレン;例えば、ヨードトリフルオロエチレン、1−ヨード−2,2−ジフルオロエチレン、ヨード−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1,4−ヨード−パーフルオロブテン−1などである)
のヨード−(パー)フルオロオレフィン;
【0018】
(c)式:
CHRO=CH−ZO−CH2CHRO−I (V)
(式中、ROはHまたは−CH3であり;ZOは1以上の酸素原子を任意に含んでいてもよい、C1〜C18直鎖状もしくは分枝鎖状(パー)フルオロアルキレン基、または上記で定義された(パー)フルオロポリオキシアルキレン基である)
のヨード−(パー)フルオロオレフィン
から選択され得る。
【0019】
硬化部位のためのその他のヨウ素化コモノマーは、ヨードフルオロアルキルビニルエーテルである。USP 4,745,165およびUSP 4,564,662参照。
その代わりに、またはヨウ素化コモノマーに加えて、USP 4,501,869に記載のようにフルオロエラストマーは、フルオロエラストマーの重合中に反応媒体に導入される好適なヨウ素化連鎖移動剤から誘導されるヨウ素原子を末端部分に含み得る。
【0020】
上記の移動剤は、式:RAf(I)x(ここで、RAfは塩素原子を任意に含んでいてもよいC1〜C12(パー)フルオロアルキル基であり、xは1または2である)を有する。上記の移動剤は、例えば、CF22、I(CF26I、I(CF24I、CF2ClI、CF3CFICF2Iなどから選択され得る。上記のヨウ素化連鎖移動剤の添加により鎖末端基として導入されるヨウ素については、例えばUSP 4,243,770およびUSP 4,943,622を参照されたい。
【0021】
特許出願EP 407,937の記載に従って、連鎖移動剤として、ヨウ化アルカリ金属またはヨウ化アルカリ土類金属を用いることも可能である。
ヨウ素を含む連鎖移動剤と組み合わせて、酢酸エチル、マロン酸ジエチルなどのような先行技術で知られているその他の連鎖移動剤が用いられ得る。
(パー)フルオロエラストマーの末端部分におけるヨウ素の量は、一般に、フルオロエラストマーの重量に対して0.001〜3重量%、好ましくは0.01〜1重量%である。USP 4,035,565およびUSP 4,694,045参照。
【0022】
さらに、過酸化物法により硬化し得る(パー)フルオロエラストマーは、その代わりにまたはヨウ素と組み合わせて、鎖中および末端部分の両方に臭素も含み得る。
鎖中の臭素は、公知技術に従って、硬化部位のためのコモノマーを用いることにより導入され得る。例えばUSP 4,035,565、USP 4,745,165、EP 199,138参照。あるいは末端臭素についてUSP 4,501,869参照。
【0023】
本発明の(パー)フルオロエラストマーは、エチレンタイプの1つの不飽和を有する、少なくとも1つの過フッ素化されたオレフィンを含むTFEポリマーである。
特に、コモノマーは、次のものから選沢される:
−(パー)フルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)CF2=CFOR2f(ここで、R2fがC1〜C6(パー)フルオロアルキル、例えばトリフルオロメチル、ブロモトリジフルオロメチル、ペンタフルオロプロピルである);
−(パー)フルオロオキシアルキルビニルエーテル CF2=CFOXo(ここで、Xoは1以上のエーテル基を含むC1〜C12パーフルオロオキシアルキル、例えばパーフルオロ−2−プロポキシ−プロピルである);
【0024】
− 一般式:
CFX2=CX2OCF2OR”f (I−B)
を有するMOVEと称される(パー)フルオロビニルエーテル:
(式中、
− R”fは、次の意味:
− C1〜C6直鎖状または分枝鎖状(パー)フルオロアルキル、
− C5〜C6環状(パー)フルオロアルキル、
− 1〜3の酸素原子を含むC2〜C6直鎖状または分枝鎖状(パー)フルオロオキシアルキル
を有し、
− X2=F、H)。
【0025】
(パー)フルオロエラストマーにおいて、コモノマーが式(I−B)の(パー)フルオロビニルエーテルであるとき、それは好ましくは次の:
CF2=CFOCF2OCF2CF3 (MOVE1)、
CF2=CFOCF2OCF2CF2OCF3 (MOVE2)、
CF2=CFOCF2OCF3 (MOVE3)
から選択される。
【0026】
硬化し得る(パー)フルオロエラストマーのための好ましいモノマー組成は、モル%で表される次の:
− TFE50〜85%、PAVE15〜50%;
− TFE20〜85%、MOVE15〜85%、任意のPAVE0〜50%
であり、モノマーの合計は100モル%である。
【0027】
本発明の(パー)フルオロエラストマー組成物中で用いられる(パー)フルオロエラストマーは、VDF、水素原子、塩素および/または臭素および/またはヨウ素を任意に含んでもいてもよいC3〜C8フルオロオレフィン、C2〜C8非フッ素化オレフィン(OI)、好ましくはエチレンおよび/またはプロピレンから誘導される単位を任意に含んでいてもよい。
【0028】
これらの(パー)フルオロエラストマー組成物の具体例は、次の:
− テトラフロオロエチレン(TFE)33〜75モル%、好ましくは40〜60モル%;パーフルオロビニルエーテル(PAVE)15〜45モル%、好ましくは20〜40モル%;フッ化ビニリデン(VDF)2〜25モル%、好ましくは15〜20モル%;− TFE32〜60モル%、PAVE20〜40モル%;OI10〜40モル%であり、組成物のモルの合計は100%である。
【0029】
好ましいパーフルオロビニルエーテルPAVEとしては、(パー)フルオロメチルビニルエーテル、パーフルオロエチルビニルエーテル、パーフルオロプロピルビニルエーテルが挙げられる。
【0030】
上記の(パー)フルオロエラストマー組成物において、ビニルエーテルPAVEの代わりに、またはそれと組み合わせて、式(I−B)の(パー)フルオロビニルエーテルが用いられ得る。ただし、ビニルエーテルの合計%は、PAVEを含む上記の組成物について上記で示された範囲内である。
【0031】
(パー)フルオロエラストマーは、USP 5,585,449に記載のように、上記の一般式(I)の少量のビス−オレフィンから誘導されるモノマー単位を鎖中に含むこともでき、一般に(パー)フルオロエラストマー中のビス−オレフィンの量は、ポリマーに対して0.01〜5モル%の範囲である。
【0032】
その他の成分、例えば次の:
− Ba、Na、K、Pb、Caのステアリン酸塩、安息香酸塩、炭酸塩、シュウ酸塩または亜リン酸塩のような、弱酸塩と任意に組み合わさっていてもよい、ポリマーに対して0〜15重量%の量の、例えばMg、Zn、CaまたはPbのような2価の金属オキサイドまたはハイドロキサイドから選択される金属化合物;
− 補強充填剤、顔料、抗酸化剤、安定化剤などのような、その他の通常の添加剤
が、硬化し得る化合物に任意に加えられてもよい。
【0033】
充填剤としては、カーボンブラック、硫酸バリウム、珪酸塩、例えばPTFEまたはコモノマーで修飾されたPTFEから選択される半結晶質(パー)フルオロポリマーが挙げられる。
【0034】
硬化し得るパーフルオロエラストマーは、パーフルオロエラストマーおよび硬化剤を含む。
本発明の(パー)フルオロエラストマーは、上記のように、過酸化物法により硬化される。
これは、加熱によりラジカルを発生し得る過酸化物の添加による、公知技術に従って行われる。
【0035】
最も一般的に用いられるものの中には、例えばジ−terブチル−パーオキサイドおよび2,5−ジメチル−2,5−ジ(terブチルパーオキシ)ヘキサンのようなジアルキルパーオキサイド;ジクミルパーオキサイド;ジベンゾイルパーオキサイド;ジ−terブチルパーベンゾエート;ジ[1,3−ジメチル−3−(terブチルパーオキシ)ブチル]−カルボネートがある。その他の過酸化物系は、例えば特許出願EP 136,596およびEP 410,351に記載されている。
一般に、用いられる過酸化物の量は、ポリマーの重量に対して0.1〜5重量%、好ましくは0.2〜3重量%の範囲である。
【0036】
本発明の(パー)フルオロエラストマーの製造は、先行技術で周知の方法に従って、水性エマルジョン中でのモノマーの共重合により、鉄もしくは銀塩またはその他の容易に酸化し得る金属を任意に有していてもよいラジカル開始剤(例えば、過硫酸、過リン酸、過ホウ酸または過炭酸のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩)の存在下に行われ得る。
【0037】
例えば(パー)フルオロアルキルカルボン酸塩もしくはスルホン酸塩(例えば、パーフルオロオクタン酸アンモニウム)または(パー)フルオロポリオキシアルキレン、あるいは先行技術で知られているその他のもののような界面活性剤も、反応媒体中に存在してもよい。
重合終了時、フルオロエラストマーは、電解質の添加または冷却による凝固のような通常の方法により、エマルジョンから単離される。
【0038】
また、重合反応は、塊状または懸濁で、適当なラジカル開始剤が存在する有機液体中で、周知の技術に従って行われ得る。重合反応は、一般に、25〜150℃の範囲の温度で、10MPaまでの圧力下に行われる。
【0039】
本発明のフルオロエラストマーの製造は、好ましくは水性エマルジョン中、パーフルオロポリオキシアルキレンのエマルジョン、分散液またはマイクロエマルジョンの存在下に、USP 4,789,717およびUSP 4,864,006に記載のように行われる。これらの特許は参考としてここに組み込まれる。
【0040】
本発明の(パー)フルオロエラストマーは、0〜70重量%、好ましくは0〜50重量%、さらに好ましくは2〜30重量%の量の、((パー)フルオロエラストマー+半結晶質(パー)フルオロポリマーの合計乾燥重量に対する重量%)の半結晶質(パー)フルオロポリマーと任意に混合されていてもよい。
【0041】
半結晶質(パー)フルオロポリマーとは、ガラス転移温度Tgに加えて、少なくとも結晶融点を示す(パー)フルオロポリマーを意味する。
半結晶質(パー)フルオロポリマーは、テトラフルオロエチレン(TFE)ホモポリマー、または0.01〜10モル%、好ましくは0.05〜7モル%の量の、少なくとも1つのエチレンタイプの不飽和を含む1以上のモノマーとのTFEコポリマーにより構成される。
【0042】
エチレン不飽和を有する上記のコモノマーは、水素化およびフッ素化されたタイプの両方である。
水素化されたものとしては、エチレン、プロピレン、アクリルモノマー、例えばメチルメタクリレート、(メタ)アクリル酸、ブチルアクリレート、ヒドロキシエチルヘキシルアクリレート、スチレンモノマーが挙げられる。
【0043】
フッ素化されたコモノマーとしては、次のものが挙げられる:
− ヘキサフルオロプロペン(HFP)、ヘキサフルオロイソブテンのような、C3〜C8パーフルオロオレフィン;
− フッ化ビニル(VF)、フッ化ビニリデン(VDF)、トリフルオロエチレン、パーフルオロアルキルエチレン CH2=CH−Rf(ここで、RfはC1〜C6パーフルオロアルキルである)のような、C2〜C8水素化フルオロオレフィン;
【0044】
− クロロトリフルオロエチレン(CTFE)のような、C2〜C8クロロ−および/またはブロモ−および/またはヨード−フルオロオレフィン;
− (パー)フルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)CF2=CFORf(ここで、RfはC1〜C6(パー)フルオロアルキル、例えばCF3、C25、C37である);
− (パー)フルオロ−オキシアルキルビニルエーテル CF2=CFOX(ここで、XはC1〜C12アルキル、またはC1〜C12オキシアルキル、または1以上のエーテル基を有するC1〜C12(パー)フルオロ−オキシアルキルである);
− (パー)フルオロジオキソール、好ましくはパーフルオロジオキソール。
【0045】
PAVE、特にパーフルオロメチル−、パーフルオロエチル−、パーフルオロプロピルビニルエーテルおよび(パー)フルオロジオキソール、好ましくはパーフルオロジオキソールが、好ましいコモノマーである。
【0046】
半結晶質(パー)フルオロポリマーは、臭素化および/またはヨウ素化コモノマーから誘導される臭素および/またはヨウ素原子を、半結晶質(パー)フルオロポリマーのコア+シェルの基本モノマー単位の合計モルに対して0.1〜10モル%の量で鎖中に含む半結晶質(パー)フルオロポリマーのシェルにより任意に被覆されていてもよく、コア中およびシェル中の半結晶質(パー)フルオロポリマーは異なる組成であってもよい。EP 1,031,606参照。
【0047】
上記の半結晶質(パー)フルオロポリマーの製造は、USP 4,789,717およびUSP 4,864,006に記載のように、水性エマルジョン中で、パーフルオロポリオキシアルキレンのエマルジョン、分散液またはマイクロエマルジョンの存在下に、モノマーを重合させることにより行われる。好ましくは、この合成は、パーフルオロポリオキシアルキレンのマイクロエマルジョンの存在下に行われる。
【0048】
本発明の(パー)フルオロエラストマーが半結晶質(パー)フルオロポリマーを含むとき、混合は、好ましくは所望の比率で(パー)フルオロエラストマーのラテックスと半結晶質(パー)フルオロポリマーのラテックスとを混合することにより行われ、次いで得られた混合物を、USP 6,395,834およびUSP 6,310,142に記載のように、ともに凝固させる。
【0049】
また、半結晶質(パー)フルオロポリマーを重合させ、次いで(パー)フルオロエラストマーを(パー)フルオロポリマー粒子上で重合させることにより行うこともできる。このようにしてコア−シェル構造を得ることができる。
【0050】
本出願人は、意外にも驚くべきことに、本発明の(パー)フルオロエラストマーで充填剤として上記で定義されたカーボンブラックを用いることにより、高温、例えば230〜320℃、特に250〜300℃において改善された蒸気耐性が得られることを見出した。
このことは、圧縮永久歪みにより測定される良好なシーリング特性と、破断応力、破断点伸び、硬度および体積膨潤のような機械的特性の限定された変動との組合せを意味する。
【0051】
良好なシーリング特性および機械的特性の限定された変動との組合せは、上記の高温での長時間の蒸気処理、例えば150時間よりも長い処理時間の後でも維持されている。
本発明のさらなる課題は、改善された蒸気耐性を高温、230〜320℃、特に250〜300℃で、長時間の、150時間よりも長い処理時間の間でも、改善された蒸気耐性を示す製品を得るための、本発明による硬化し得る(パー)フルオロエラストマー組成物である。
【0052】
本発明の課題は、本発明の硬化し得る組成物から得られる、硬化した(パー)フルオロエラストマー組成物でもある。
本発明のさらなる課題は、本発明の硬化し得る(パー)フルオロエラストマー組成物から得られる硬化した製品である。
【0053】
上記の製品を得るために、先行技術で公知の方法、例えば圧縮成形が採用される。
上記のように、本発明の(パー)フルオロエラストマー組成物は、化学工業において、高温、例えば230〜320℃、特に250〜300℃での蒸気耐性が特に必要とされるときに用いられる。
【0054】
このことは、長時間、例えば150時間より長い間、上記の高温での蒸気処理の後に、良好なシーリング特性(圧縮永久歪み)および機械的特性の小さい変動との組合せが得られることを意味する。
特に、本発明の(パー)フルオロエラストマー組成物は、意外にも驚くべきことに、上記の高温での蒸気処理の後でも、上記の特性の改善された組合せを示す。
【0055】
高いレベルで維持されるこれらの特性は、機械的特性、特に、破断応力、破断点伸び、硬度および体積膨潤ならびに圧縮永久歪みにより示されるシーリング特性である。
特に、本発明の組成物は、食品および医薬の分野でも用いられ得る。
以下の実施例は、本発明を説明するためのものであり、本発明を限定するためのものではない。
【実施例】
【0056】
カーボンブラックの表面積CTABの測定
測定は、ASTM D 3765標準に記載のように行われる。
CTABは、測定に用いられる臭化セチルトリメチルアンモニウムを表す。
【0057】
実施例1
重合
460rpmで作動する攪拌機を備え付けた22リットルの鉄製オートクレーブ内に、脱気後、脱イオン水14.5リットルおよび次のものを混合して得られるマイクロエマルジョン145mlを導入した:
− 平均分子量600g/モルを有し、式:CF2ClO(CF2−CF(CF3)O)n(CF2O)mCF2COOH(ここで、n/m=10)の酸末端基を有するパーフルオロポリオキシアルキレン32ml;
− 30容量%のNH3水溶液32ml;
− 脱イオン水62ml;
− 平均分子量450g/モルおよび式:CF3O(CF2−CF(CF3)O)n(CF2O)mCF3(ここで、n/m=20)を有するGalden(商標)D02 19ml。
【0058】
オートクレーブを80℃に加熱し、反応時間中、この温度に維持した。次いで、1,4−ジヨードパーフルオロブタン(C482)35gをオートクレーブ内に導入した。
次のモル組成:
− テトラフルオロエチレン(TFE)35%;
− パーフルオロメチルビニルエーテル(MVE)65%
を有するモノマー混合物を、圧力が25bar relative(rel)(2.5MPa)となるように供給した。
次いで、オートクレーブ内に:
− 開始剤としての過硫酸アンモニウム(APS)0.7g;
− 式CH2=CH−(CF26−CH=CH2のビス−オレフィン18g
を導入した。
【0059】
ビス−オレフィンの添加は、重合初期から開始し、モノマー転化率が5%増加する毎に、0.9gずつ20回に分けて行った。
テトラフルオロエチレン(TFE)60%、パーフルオロメチルビニルエーテル(MVE)40%のモル組成を有する混合物を供給することにより、25bar rel(2.5MPa)の圧力を重合の間中、一定に維持した。
モノマー転化100%に相当する、160分反応後に、オートクレーブを冷却し、ラテックスを取り出した。
【0060】
このようにして得られたラテックスは、290gホ゜リマー/kgラテックスに等しい濃度を有し、本発明の実施例および比較実施例の両方で用いられた。ラテックスを硝酸溶液中に滴下することにより凝固させた。得られたポリマーを90℃、空気循環オーブン内で、16時間乾燥した。
【0061】
乾燥したポリマーを次の成分:
− 式 CH2=CH−(CF26−CH=CH2を有するビス−オレフィン;
− 2,5−ジメチル−2,5−ジ(terブチルパーオキシ)ヘキサンLuperox(商標)101 XL45;
− 実施例に示されるカーボンブラック;
− 任意のその他の充填剤
と、本発明による実施例および比較実施例のために、表1に示される量(phr)で混合した。
【0062】
このようにして得られたブレンドを、10分間、170℃で成形し、次いで表1に示される条件下で特徴付けた。
表1において、
カーボンブラックN774は、33m2/gに等しい表面積CTABを有するカーボンブラックを示し;
カーボンブラックN990は、7m2/gに等しい表面積CTABを有するカーボンブラックを示し;
カーボンブラックN550は、42m2/gに等しい表面積CTABを有するカーボンブラックを示し;
カーボンブラックN326は、83m2/gに等しい表面積CTABを有するカーボンブラックを示し;
カーボンブラックN772は、33m2/gに等しい表面積CTABを有するカーボンブラックを示す。
【0063】
表1のデータから、本発明による(パー)フルオロエラストマー組成物は、破断応力および体積の変動が、比較実施例の変動と比較して極めて限定されているため、高い蒸気耐性を示すことが分かる。
さらに、本発明の実施例の圧縮永久歪みは、比較実施例のものより明らかに小さい。
【0064】
【表1】

【0065】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(パー)フルオロエラストマー100phr当たり、
− 充填剤として、25〜35m2/gの表面積CTAB(ASTM D 3765)を有するカーボンブラック2〜70phr;
− 架橋剤として、一般式:
【化1】

(式中、
1、R2、R3、R4、R5、R6は、同一または異なって、それぞれHまたはC1〜C5アルキルであり;
Zは、酸素原子を任意に含んでいてもよく、好ましくは少なくとも部分的にフッ素化されたC1〜C18の直鎖状もしくは分枝鎖状のアルキレンまたはシクロアルキレン基、あるいは(パー)フルオロポリオキシアルキレン基から選沢される)
を有するビス−オレフィン0.5〜10phr
を含み、過酸化物法により硬化し得る(パー)フルオロエラストマー組成物の、高温で蒸気耐性を有する製品を製造するための使用。
【請求項2】
(パー)フルオロエラストマー組成物において、カーボンブラックが5〜50phr、好ましくは10〜40phrの範囲である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
(パー)フルオロエラストマー組成物において、ビス−オレフィンが0.6〜5phr、好ましくは0.6〜1.80phr、より好ましくは0.9〜1.5phrの範囲である、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
式(I)において、ZがC4〜C12、好ましくはC4〜C8のパーフルオロアルキレン基であり、R1、R2、R3、R4、R5、R6が水素であり;Zが(パー)フルオロポリオキシアルキレン基であるとき、それは次の:
−CF2CF2O−、−CF2CF(CF3)O−、−CFX1O−(ここで、X1=F、CF3)、−CF2CF2CF2O−、−CF2−CH2CH2O−、−C36O−
から選択される単位を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の使用。
【請求項5】
Zが式:
−(Q)p−CF2O−(CF2CF2O)m(CF2O)n−CF2−(Q)p− (II)
(式中、QはC1〜C10アルキレンまたはオキシアルキレン基であり;pは0または1であり;mおよびnはm/nの比が0.2〜5の間であるような数であり、上記の(パー)フルオロポリオキシアルキレン基の数平均分子量は300〜10000、好ましくは700〜2000の範囲である)
を有する、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
Qが−CH2OCH2−;−CH2O(CH2CH2O)sCH2−(ここで、s=1〜3)から選択される、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
ビス−オレフィンが、式:
CH2=CH−(CF2t0−CH=CH2
(ここで、t0は6〜10の整数である)
を有する、請求項4〜6のいずれかに記載の使用。
【請求項8】
(パー)フルオロエラストマーが過酸化物架橋部位を含む、請求項1〜7のいずれかに記載の使用。
【請求項9】
過酸化物架橋部位が、ヨウ素および/または臭素原子、好ましくはヨウ素である、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
ヨウ素および/または臭素の量が、ポリマーの総重量に対して0.001〜5重量%、好ましくは0.01〜2.5重量%である、請求項8または9に記載の使用。
【請求項11】
(パー)フルオロエラストマーにおいて、ヨウ素および/または臭素原子が、鎖中および/または末端部分に存在する、請求項8〜10のいずれかに記載の使用。
【請求項12】
(パー)フルオロエラストマーが、エチレンタイプの1つの不飽和を有する、少なくとも1つの過フッ素化されたオレフィンとのTFEコポリマーである、請求項8〜11のいずれかに記載の使用。
【請求項13】
(パー)フルオロエラストマーにおいて、コモノマーが:
−(パー)フルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)CF2=CFOR2f(ここで、R2fはC1〜C6(パー)フルオロアルキル、好ましくはトリフルオロメチル、ブロモトリジフルオロメチル、ペンタフルオロプロピルである);
−(パー)フルオロオキシアルキルビニルエーテル CF2=CFOXo(ここで、Xoは1以上のエーテル基を含むC1〜C12パーフルオロオキシアルキルである);
− 一般式:
CFX2=CX2OCF2OR”f (I−B)
(式中、
− R”fは、次の意味:
− C1〜C6の直鎖状または分枝鎖状(パー)フルオロアルキル、
− C5〜C6の環状(パー)フルオロアルキル、
− 1〜3の酸素原子を含むC2〜C6の直鎖状または分枝鎖状(パー)フルオロオキシアルキル
を有し、
− X2=F、H)
を有する(パー)フルオロビニルエーテル
から選沢される、請求項12に記載の使用:
【請求項14】
(パー)フルオロエラストマーにおいて、コモノマーが式(I−B)の(パー)フルオロビニルエーテルであり、次の:
CF2=CFOCF2OCF2CF3 (MOVE1)、
CF2=CFOCF2OCF2CF2OCF3 (MOVE2)、
CF2=CFOCF2OCF3 (MOVE3)
から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
(パー)フルオロエラストマーが、モル%で表される次の組成:
− TFE50〜85%、PAVE15〜50%;
− TFE20〜85%、MOVE15〜85%、任意のPAVE0〜50%
を有し、モノマーの合計が100モル%である、請求項12〜14のいずれかに記載の使用。
【請求項16】
(パー)フルオロエラストマーが、VDF、任意に水素原子、塩素および/または臭素および/またはヨウ素を含んでもいてもよいC3〜C8フルオロオレフィン、C2〜C8非フッ素化オレフィン(OI)から誘導される単位を含む、請求項12〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
(パー)フルオロエラストマーが次の組成:
− テトラフロオロエチレン(TFE)33〜75モル%、好ましくは40〜60モル%;パーフルオロビニルエーテル(PAVE)15〜45モル%、好ましくは20〜40モル%;フッ化ビニリデン(VDF)2〜25モル%、好ましくは15〜20モル%;− TFE32〜60モル%、PAVE20〜40モル%;OI10〜40モル%
を有し、組成物の合計が100モル%である、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
(パー)フルオロエラストマーにおいて、PAVEの代わりに、またはPAVEと組み合わせて、式(I−B)の(パー)フルオロビニルエーテルが、コノマーとして用いられ、ビニルエーテルの合計%が、上記で示された範囲内である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
(パー)フルオロエラストマーが、式(I)のビス−オレフィンから誘導されるモノマー単位を鎖中に含む、請求項1〜18のいずれかに記載の使用。
【請求項20】
ビス−オレフィンの量が、ポリマーに対して0.01〜5モル%の範囲である、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
(パー)フルオロエラストマー組成物が:
− 弱酸塩と任意に組み合わさっていてもよい、2価の金属オキサイドまたはハイドロキサイドから選択される、ポリマーに対して0〜15重量%の量の金属化合物;
− 補強充填剤、顔料、抗酸化剤、安定化剤
から選択されるその他の成分を含む、請求項1〜20のいずれかに記載の使用。
【請求項22】
補強充填剤が、硫酸バリウム、珪酸塩、例えばPTFEまたはコモノマーで修飾されたPTFEから選択される半結晶質(パー)フルオロポリマーから選沢される、請求項21に記載の使用。
【請求項23】
(パー)フルオロエラストマーが、0〜70重量%、好ましくは0〜50重量%、さらに好ましくは2〜30重量%((パー)フルオロエラストマー+半結晶質(パー)フルオロポリマーの合計乾燥重量に対する重量%として)の量の半結晶質(パー)フルオロポリマーと混合されている、請求項1〜22のいずれかに記載の使用。
【請求項24】
半結晶質(パー)フルオロポリマーが、テトラフルオロエチレン(TFE)ホモポリマー、または0.01〜10モル%、好ましくは0.05〜7モル%の量の、少なくとも1つのエチレンタイプの不飽和を含む1以上のモノマーとのTFEコポリマーにより構成され、1つのエチレン不飽和を有する該コモノマーが、水素化およびフッ素化されたタイプの両方である、請求項23に記載の使用。
【請求項25】
水素化されたコモノマーが、エチレン、プロピレン、アクリルモノマー、スチレンモノマーから選択される、請求項23または24に記載の使用。
【請求項26】
フッ素化されたコモノマーが、次の:
− C3〜C8パーフルオロオレフィン;
− C2〜C8水素化フルオロオレフィン;パーフルオロアルキルエチレン CH2=CH−Rf(ここで、RfはC1〜C6パーフルオロアルキルである);
− C2〜C8クロロ−および/またはブロモ−および/またはヨード−フルオロオレフィン;
− (パー)フルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)CF2=CFORf(ここで、RfはC1〜C6(パー)フルオロアルキルである);
− (パー)フルオロ−オキシアルキルビニルエーテル CF2=CFOX(ここで、XはC1〜C12アルキル、またはC1〜C12オキシアルキル、または1以上のエーテル基を有するC1〜C12(パー)フルオロ−オキシアルキルである);
− (パー)フルオロジオキソール、好ましくはパーフルオロジオキソール。
から選沢される、請求項23〜25のいずれかに記載の使用:
【請求項27】
請求項1〜26のいずれかに記載の(パー)フルオロエラストマー組成物。
【請求項28】
請求項1〜26のいずれかに記載の硬化し得る(パー)フルオロエラストマー組成物から得られる製品。
【請求項29】
請求項1〜26のいずれかに記載の硬化し得る(パー)フルオロエラストマー組成物から得られる硬化した(パー)フルオロエラストマー組成物。

【公表番号】特表2009−541562(P2009−541562A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−517205(P2009−517205)
【出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際出願番号】PCT/EP2007/056480
【国際公開番号】WO2008/003636
【国際公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(503023047)ソルヴェイ ソレクシス エス.ピー.エー. (40)
【氏名又は名称原語表記】Solvay Solexis S.p.A.
【住所又は居所原語表記】Via Turati 12 − MILANO,Italy
【Fターム(参考)】