説明

(2−ヒドロキシメチルインダニル−4−オキシ)フェニル4,4,4−トリフルオロブタン−1−スルホネートの水性製剤

【課題】本発明の課題は、点滴液剤またはこれらの点滴液剤を産生するための濃縮液として適する、(−)−(R)−3−(2−ヒドロキシメチル−インダニル−4−オキシ)−フェニル−4,4,4−トリフルオロブタン−1−スルホネート含有水性製剤を提供することである。
【解決手段】(−)−(R)−3−(2−ヒドロキシメチルインダニル−4−オキシ)フェニル4,4,4−トリフルオロブタン−1−スルホネート(I)およびシクロデキストリンを含む水性製剤により、上記の課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点滴液剤またはそのような点滴液剤を調製するための濃縮液として適する(−)−(R)−3−(2−ヒドロキシメチルインダニル−4−オキシ)フェニル4,4,4−トリフルオロブタン−1スルホネート含有水性製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
(−)−(R)−3−(2−ヒドロキシメチルインダニル−4−オキシ)フェニル4,4,4−トリフルオロブタン−1−スルホネートは、式
【化1】

の化合物である。
【0003】
カンナビノイド受容体アゴニストとして、化合物(I)は、卒中および頭蓋脳外傷(craniocerebral trauma)の予防および処置に適する;それは、WO98/37061の実施例278で初めて記載された。しかしながら、非経腸投与に適する水性医薬製剤は、WO98/37061に開示されていない。該薬剤を点滴液剤として投与するのは、卒中および頭蓋脳外傷の応急処置において有利であるので、化合物(I)を含有し、この目的での使用に適切な水性製剤への要望があった。
【0004】
際だって、化合物(I)の水性製剤は、不均一な濃度分布を示す。このことは、特に1リットル当たり数ミリグラムの低い有効成分濃度では、用量をベースとする一定の点滴速度を、全点滴時間にわたって確保できないことを想定しなければならないことを意味する。これに伴う不利益は明白である。
【0005】
薬局方(Ph. Eur. 4, 2002) は、注射用の非経腸粉末剤および懸濁剤を含む単回投与医薬形態に対して、内容物の均一性を試験し、その偏差ができるだけ低く、有効成分含量の平均から±15%を超えないものであることを要求している。
【発明の概要】
【0006】
驚くべきことに、水性製剤へのシクロデキストリンの添加が、均一な濃度を導くことが判明した。
従って、本発明は、化合物(I)およびシクロデキストリンを含む水性製剤に関する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
シクロデキストリン類およびそれらの製造方法は、US3,453,259、US3,459,731、WO97/39770、US5,670,530、WO96/32135、EP−B149197およびUS4,727,064に開示されている。シクロデキストリン類は、シクロデキストリングリコシルトランスフェラーゼ類によりデンプンの分解中に形成される環状オリゴ糖類である。
【0008】
β−シクロデキストリン類は、7個のα−1,4結合グルコース単位を含有する。この分子に存在する21個のヒドロキシ基は、例えば、置換されていることもある脂肪族C−C基、好ましくはヒドロキシプロピルまたはスルホブチル基により、全体的または部分的に置換され得る。本件で使用されるシクロデキストリン類は、好ましくは、1ないし10、特に3ないし8の、1分子当たりの平均置換度(degree of substitution (DS))を有する。
【0009】
本発明のために、用語「シクロデキストリン」は、非置換、部分置換および完全置換シクロデキストリン類、特に、ヒドロキシプロピルおよびスルホブチル置換β−シクロデキストリン類を包含する。
【0010】
驚くべきことに、さらに、生理的に許容される酸が、本水性製剤の保存安定性を高めることができるとわかってきた。
かかる生理的に許容される酸には、鉱酸(例えば、塩酸、硫酸)、1ないし4塩基性飽和および不飽和C−C10カルボン酸(例えば、酢酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸)、C−Cヒドロキシカルボン酸(例えば、リンゴ酸、クエン酸、グリコール酸、乳酸、酒石酸、桂皮酸)、C−Cケトカルボン酸(例えば、ピルビン酸、1または2塩基性C−C10−アミノ酸(例えば、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、バリン)、C−C12−アミドカルボン酸(例えば、馬尿酸)、C−C10−ラクトン(例えば、アスコルビン酸)およびこれらの混合物が含まれる。乳酸およびクエン酸が好ましい;クエン酸が特に好ましい。
【0011】
本発明の水性製剤に好ましいpH範囲は、2ないし6、特に3ないし5、そしてことさらに約3.5ないし4.5である。
等張液剤を調製するために、本発明の製剤は、例えば、グルコース、マンニトール、好ましくは塩化ナトリウムなどの、この目的に適する化合物を含むことができる。溶液は、浸透圧250ないし500、好ましくは270ないし350mosmol/kgであるとき、等張であると言う。
好ましい本発明の等張製剤は、すぐに使える状態(ready for use)の製剤をベースとして、5ないし15、好ましくは7ないし13、そして特に好ましくは8ないし10g/lの塩化ナトリウムを含む。
【0012】
本発明の製剤に、生理的に許容される有機溶媒(例えば、ポリエチレングリコール類、プロピレングリコール、グリコフロール(glycofurol)、グリセロール、または、好ましくは、アルコール類、ことさらにエタノール)を添加することも、さらに可能である。
本発明の製剤は、一般的に、すぐに使える状態の製剤をベースとして、0.05ないし2、好ましくは0.1ないし1.5、そして特に約0.6ないし1.0g/lの有機溶媒を含み得る。
【0013】
本発明の製剤は、すぐに使える状態の点滴液剤の形態、または水または等張電解質溶液の添加により点滴液剤を調製できる水性濃縮液の形態であり得る。本発明のこれらの濃縮液は、化合物(I)を、0.002ないし9.0、好ましくは0.01ないし0.05、特に好ましくは0.025g/lの濃度で含み得る。該濃縮液は、シクロデキストリンを、4ないし550、好ましくは20ないし200、特に好ましくは50g/lの濃度で含み得る。均一な液剤は、該濃縮液から滅菌条件下で容易かつ迅速に調製でき、例えば点滴液剤として、直接使用するのに適する。
【0014】
本発明の製剤は、シクロデキストリンを、すぐに使える状態の製剤をベースとして、0.1ないし60、好ましくは1ないし30、特に好ましくは1ないし10、特に2g/lで含み得る。
化合物(I)の水への溶解度は、25℃で0.002g/lである。
【0015】
点滴にすぐに使える状態の本発明の製剤は、0.00005ないし0.002、好ましくは0.0001ないし0.002、特に0.0005ないし0.0015、そして非常にことさらに約0.001g化合物(I)/溶液lの有効成分濃度を有し得る。
本発明の製剤は、各成分を混合し、溶解することにより簡単に製造できる。
【0016】
化合物(I)を、全量で約0.001ないし約240、好ましくは24時間ごとに0.01ないし24μg/kg体重で、適するならば複数の単回投与の形態で投与することが、所望の結果を得るのに有利であることが一般的に明らかになった。
【0017】
しかしながら、適するならば、上述の量から逸脱すること、特に、処置する患者の性質および体重、薬剤に対する個体の挙動、疾患の性質および重篤度、製剤および投与の様式、投与時間または間隔の関数としてそのようにすることが、有利であり得る。
【0018】
本発明はさらに、該水性製剤を含む容器および点滴器具からなる投与キットに関する。点滴器具は、最も簡単な場合、針、連結チューブおよび点滴チャンバー(drip chamber)からなる。点滴ポンプおよび調節栓を、連結チューブに取り付けることができる。投与は、さらに、連結チューブの付いた点滴シリンジを含むシリンジドライバーを利用しても可能である。
【0019】
本生産物と接触することになる該投与キットの材料は、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド類、ポリエステル類、またはそれらのコポリマー類、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー類、ポリプロピレン/スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン、好ましくは、ポリオレフィン、特に好ましくは、ポリエチレンからなり得る。
【実施例】
【0020】
実施例:
1)すぐに使える状態の、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンをベースとする点滴製剤の実施例
【表1】

【0021】
製造:化合物(I)のエタノール溶液を、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンおよび塩化ナトリウムの水性溶液に、撹拌しながら添加する。pHをクエン酸で約4に合わせる。その溶液を濾過滅菌し、250mlのガラス瓶に分配し、ゴム栓およびクリンプキャップ(crimped cap)で密封し、次いで、蒸気オートクレーブ中、121℃で20分間滅菌する。
【0022】
2)すぐに使える状態の、スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンをベースとする点滴製剤の実施例
【表2】

【0023】
製造:化合物(I)のエタノール溶液を、スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンおよび塩化ナトリウムの水性溶液に、撹拌しながら添加する。pHをクエン酸で約4に合わせる。その溶液を濾過滅菌し、250mlのガラス瓶に分配し、ゴム栓およびクリンプキャップで密封し、次いで、蒸気オートクレーブ中、121℃で20分間滅菌する。
【0024】
3)点滴製剤を調製するための濃縮液の実施例
【表3】

【0025】
製造:化合物(I)のエタノール溶液を、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンおよび塩化ナトリウムの水性溶液に、撹拌しながら添加する。pHをクエン酸で約4に合わせる。その溶液を濾過滅菌し、10mlのガラス瓶に分配し、ゴム栓およびクリンプキャップで密封し、次いで、蒸気オートクレーブ中、121℃で20分間滅菌する。
使用前に、濃縮液10mgを生理塩水240mlと混合する。得られたものは、有効成分濃度0.001g/lの、すぐに使える状態の点滴製剤である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(−)−(R)−3−(2−ヒドロキシメチルインダニル−4−オキシ)フェニル4,4,4−トリフルオロブタン−1−スルホネート(I)およびシクロデキストリンを含む、水性製剤。
【請求項2】
0.00005ないし9.0g/lの化合物(I)、および0.1ないし550g/lのシクロデキストリンを含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
0.0001ないし0.050g/lの化合物(I)、および0.2ないし200g/lのシクロデキストリンを含む、請求項1または請求項2に記載の製剤。
【請求項4】
0.0005ないし0.025g/lの化合物(I)、および1ないし50g/lのシクロデキストリンを含む、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の製剤。
【請求項5】
pH2ないし6である、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の製剤。
【請求項6】
少なくとも1の生理的に許容される酸を含む、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の製剤。
【請求項7】
生理的に許容される酸としてクエン酸を含む、請求項6に記載の製剤。
【請求項8】
すぐに使える状態の製剤をベースとして、8ないし10g/lの塩化ナトリウムを含む、請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の製剤。
【請求項9】
すぐに使える状態の製剤をベースとして、0.05ないし2g/lのエタノールを含む、請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の製剤。
【請求項10】
a)請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の水性製剤を含む容器
b)点滴器具、ここで、少なくとも該生産物と接触することになる部分は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー、ポリプロピレン/スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンまたはそれらのコポリマーからなる、
からなる、投与キット。

【公開番号】特開2011−98979(P2011−98979A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24007(P2011−24007)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【分割の表示】特願2003−581746(P2003−581746)の分割
【原出願日】平成15年3月31日(2003.3.31)
【出願人】(507113188)バイエル・シェーリング・ファルマ・アクチェンゲゼルシャフト (141)
【氏名又は名称原語表記】Bayer Schering Pharma Aktiengesellschaft
【Fターム(参考)】