説明

(R)−3−(2−ヒドロキシ−2,2−ジフェニル−アセトキシ)−1−(イソキサゾール−3−イルカルバモイル−メチル)−1−アゾニア−ビシクロ−[2.2.2]オクタン・臭化物塩

結晶形態Tアルファで示される、(R)−3−(2−ヒドロキシ−2,2−ジフェニル−アセトキシ)−1−(イソキサゾール−3−イルカルバモイル−メチル)−1−アゾニア−ビシクロ−[2.2.2]オクタン・臭化物塩の新規多形結晶形態。その製造法および炎症性または閉塞性気道疾患の処置のための医薬の活性成分としての結晶形態の使用も記載する。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶形態Tアルファで示される(R)−3−(2−ヒドロキシ−2,2−ジフェニル−アセトキシ)−1−(イソキサゾール−3−イルカルバモイル−メチル)−1−アゾニア−ビシクロ−[2.2.2]オクタン・臭化物塩の新規多形結晶形態およびそれを製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化合物(R)−3−(2−ヒドロキシ−2,2−ジフェニル−アセトキシ)−1−(イソキサゾール−3−イルカルバモイル−メチル)−1−アゾニア−ビシクロ−[2.2.2]オクタン・臭化物塩は、式I
【化1】

で示される化学構造を有する。
【0003】
本明細書で“式Iの化合物”の(R)−3−(2−ヒドロキシ−2,2−ジフェニル−アセトキシ)−1−(イソキサゾール−3−イルカルバモイル−メチル)−1−アゾニア−ビシクロ−[2.2.2]オクタン・臭化物塩は、強力なムスカリンアンタゴニスト、より具体的には、ムスカリンM3受容体アンタゴニストである。それは、例えば、呼吸管、消化管および泌尿系の平滑筋のアセチルコリン誘導収縮を阻害する。
【0004】
式Iの化合物は、国際特許出願WO2004/96800(この内容を出典明示により本明細書に包含させる)に記載されている方法により製造する。
【0005】
この化合物は医薬として使用するために研究されてきた。該化合物の種々の結晶多形形態の存在が、提案された使用に対して化合物の最も適当な形態を決定するために研究されてきた。
【発明の概要】
【0006】
今回、式Iの化合物の新規結晶形態が単離され、結晶形態Tアルファを示した。この結晶形態は、例えば、保存中に非常に優れた安定性を有し、医薬投与剤形の製造における使用を容易にする。
【0007】
したがって、本発明は、第1の局面において、結晶形態Tアルファで示される結晶(R)−3−(2−ヒドロキシ−2,2−ジフェニル−アセトキシ)−1−(イソキサゾール−3−イルカルバモイル−メチル)−1−アゾニア−ビシクロ−[2.2.2]オクタン・臭化物塩を提供する。この結晶形態は実質的に無水である。
【0008】
第2の局面において、本発明は、示差走査熱量測定法により、約208℃の融点(同時に分解)により特徴付けられる、結晶形態Tアルファで示される結晶(R)−3−(2−ヒドロキシ−2,2−ジフェニル−アセトキシ)−1−(イソキサゾール−3−イルカルバモイル−メチル)−1−アゾニア−ビシクロ−[2.2.2]オクタン・臭化物塩を提供する。
【0009】
第3の局面において、本発明は、X線回折像で下記特徴的な回折線(角度2θ±0.2°)5.7°、15.7°、18.5°、19.8°、21.1°、22.2°および24.0°を有する、結晶形態Tアルファの結晶(R)−3−(2−ヒドロキシ−2,2−ジフェニル−アセトキシ)−1−(イソキサゾール−3−イルカルバモイル−メチル)−1−アゾニア−ビシクロ−[2.2.2]オクタン・臭化物塩を提供する。
【0010】
第4の局面において、本発明は、活性成分として、有効量の結晶(R)−3−(2−ヒドロキシ−2,2−ジフェニル−アセトキシ)−1−(イソキサゾール−3−イルカルバモイル−メチル)−1−アゾニア−ビシクロ−[2.2.2]オクタン・臭化物塩と、所望により、薬学的に許容される担体を共に含む、医薬組成物を提供する。好ましくは、該組成物は吸入可能形である。
【0011】
第5の局面において、本発明は、炎症性または閉塞性気道疾患の処置のための医薬の製造のための、結晶(R)−3−(2−ヒドロキシ−2,2−ジフェニル−アセトキシ)−1−(イソキサゾール−3−イルカルバモイル−メチル)−1−アゾニア−ビシクロ−[2.2.2]オクタン・臭化物塩の使用に関する。
【0012】
第6の局面において、本発明は、結晶(R)−3−(2−ヒドロキシ−2,2−ジフェニル−アセトキシ)−1−(イソキサゾール−3−イルカルバモイル−メチル)−1−アゾニア−ビシクロ−[2.2.2]オクタン・臭化物塩を製造するための方法であって、アセトンの溶液から(R)−3−(2−ヒドロキシ−2,2−ジフェニル−アセトキシ)−1−(イソキサゾール−3−イルカルバモイル−メチル)−1−アゾニア−ビシクロ−[2.2.2]オクタン・臭化物塩を結晶化することを含む方法を提供する。
【0013】
第7の局面において、本発明は、結晶(R)−3−(2−ヒドロキシ−2,2−ジフェニル−アセトキシ)−1−(イソキサゾール−3−イルカルバモイル−メチル)−1−アゾニア−ビシクロ−[2.2.2]オクタン・臭化物塩を製造するための方法であって、メタノールおよびエタノールの混合物溶液から(R)−3−(2−ヒドロキシ−2,2−ジフェニル−アセトキシ)−1−(イソキサゾール−3−イルカルバモイル−メチル)−1−アゾニア−ビシクロ−[2.2.2]オクタン・臭化物塩を結晶化することを含む方法を提供する。
【0014】
本明細書で使用される用語は下記意味を有する:
本明細書で使用される“多形”は、1種以上の異なる結晶種に結晶化する化合物の能力である。多形(または結晶変態)は同一の化学構造を有するが、しばしば全く異なる物理化学的特性を有する。多形は互変的多形および単変的多形を含む。
【0015】
本明細書で使用される“非結晶”は、薬物(結晶化工程、乾燥、製粉)または製剤(造粒、圧縮)の製造中に現れ得る不規則な固体状態を意味する。非結晶固体のX線粉末回折パターンはシャープなピークを示さない。
【0016】
“疑似多形”は、多形のように、異なる物理学的特性を有するが、しかしながら、多形とは異なって、異なる化学組成物を有する化合物の溶媒和物または水和物である。要するに、それは化学量論的または非化学量論的いずれかの量の水(水和物の場合)または他の溶媒(溶媒和物の場合)を含む結晶形態である。
【0017】
結晶形態に関して本明細書で使用される“結晶学的に純粋”は、結晶形態が多くても約1%(w/w)の他の形態を含むことを意味する。したがって、例えば“結晶学的に純粋な結晶形態Tアルファ”は、≦約1%(w/w)の他の形態を含む。
【0018】
本明細書および特許請求の範囲を通して、文脈から他の解釈が必要でない限り、用語“含む”または“含み”もしくは“含まれる”のような派生語は、規定の整数または整数の群を含むが、他のいかなる個体または個体の群を除外しないことを意味することが理解されよう。
【0019】
今回、本発明の新規多形結晶形態は、添付の図面を引用して記載している。図面において:
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は結晶形態TアルファのX線回折像である。
【図2】図2は非結晶(R)−3−(2−ヒドロキシ−2,2−ジフェニル−アセトキシ)−1−(イソキサゾール−3−イルカルバモイル−メチル)−1−アゾニア−ビシクロ−[2.2.2]オクタン・臭化物塩のX線回折像である。
【図3】図3は結晶形態Tアルファのラマンスペクトルである。
【図4】図4は非結晶(R)−3−(2−ヒドロキシ−2,2−ジフェニル−アセトキシ)−1−(イソキサゾール−3−イルカルバモイル−メチル)−1−アゾニア−ビシクロ−[2.2.2]オクタン・臭化物塩のラマンスペクトルである。
【図5】図5は結晶形態TアルファのIRスペクトルである。
【図6】図6は非結晶(R)−3−(2−ヒドロキシ−2,2−ジフェニル−アセトキシ)−1−(イソキサゾール−3−イルカルバモイル−メチル)−1−アゾニア−ビシクロ−[2.2.2]オクタン・臭化物塩のIRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、結晶形態Tアルファで示される結晶(R)−3−(2−ヒドロキシ−2,2−ジフェニル−アセトキシ)−1−(イソキサゾール−3−イルカルバモイル−メチル)−1−アゾニア−ビシクロ−[2.2.2]オクタン・臭化物塩を提供する。
【0022】
その非結晶形態の式Iの化合物は、国際特許出願WO2004/96800の実施例21の方法にしたがって製造してもよい。これは、炎症性または閉塞性気道疾患の処置のための医薬の活性剤として有用である。
【0023】
結晶形態Tアルファは実質的に無水である。これは、少量の水の存在が活性成分をあまり熱力学的に安定でない一水和物形態に変換することができるため、活性成分として(R)−3−(2−ヒドロキシ−2,2−ジフェニル−アセトキシ)−1−(イソキサゾール−3−イルカルバモイル−メチル)−1−アゾニア−ビシクロ−[2.2.2]オクタン・臭化物塩を含む医薬を製造するときに重要である。
【0024】
最初は非結晶形態でのみ得られた式Iの化合物は、最初の合成後数年が経って結晶形態で初めて回収されたが、その最初の結晶化後、その非結晶形態から極めて容易に結晶化を誘導できることが見出された。したがって、今回、該結晶物質が、アセトニトリルから化合物を結晶化することを含む、最初に使用された再結晶条件を越えて拡大した幅広い実験条件を使用して、容易に入手できるようになった。
【0025】
結晶形態Tアルファは、アセトンの溶液から式Iの化合物を結晶化することにより、例えば、90分にわたって35℃±01で溶媒中の該化合物を平衡化にすることにより、または、これと同様に例えば、下記実施例1に準じて製造してもよい。好ましくは、該溶液は、5重量%から30重量%、好ましくは約15重量%から25重量%、さらに好ましくは約20重量%の濃度を有する。水を化合物の溶解を達成するために加えてもよい。好ましくは、該溶液を、約0.5から24時間、より具体的には2から4時間、好ましくは3時間で、約50℃から70℃、好ましくは約60℃から65℃から0℃に冷却する。
【0026】
あるいは、結晶形態Tアルファは、メタノールおよびエタノールの混合物溶液から式Iの化合物を結晶化することにより製造してもよい。好ましくは、該溶媒混合物は、重量において当量のメタノールおよびエタノールを含み、結晶化は、5重量%から25重量%、より好ましくは10重量%から20重量%、さらに好ましくは約15重量%の濃度を有する混合物中の化合物の溶液から実施する。好ましくは、該溶液を、約4から24時間、より具体的に8−16時間、好ましくは12時間で、約60℃から75℃、好ましくは約60℃から65℃から0℃に冷却する。
【0027】
次の結晶化のために、例えば、下記実施例1に記載されている、結晶化を誘導するために結晶物質の“種晶”を溶液に加えることが好ましい。
結晶形態の式Iの化合物は容易に単離でき、それは結晶媒体から、例えば、濾取または遠心で単離できる。結晶形態Tアルファの製造のために、一般的に、例えば、加圧および/または真空を利用しまたは利用しない濾過により、または、遠心分離により母液から結晶を分離し、後に結晶を乾燥させる既知の方法を使用する後処理を実施してもよい。
【0028】
非結晶部分を適当な当分野で既知の方法により結晶形態に変換することができる。
結晶形態Tアルファは、多様な方法で特徴付けることができる。
結晶形態Tアルファは、例えば、10K/分の加熱速度で、示差走査熱量測定法により、約208℃の融点(同時に分解)を有する。
【0029】
結晶形態Tアルファは、図1に示されているX線回折像の特徴的な回折線(角度2θ±0.2°)を有する。これは実施例2にさらに詳細に記載されている。XRPDパターンは、特徴的な回折線(角度2θ±0.2°)5.7°、9.0°、11.5°、13.9°、15.1°、15.7°、17.2°、18.5°、18.7°、19.8°、20.6°、21.1°、22.2°、23.2°、24.0°、24.6°、26.3°、27.2°、27.4°、28.7°、29.1°、31.6°および31.8°を示す。5.7°、15.7°、18.5°、19.8°、21.1°、22.2°および24.0°のピークは顕著なピークである。9.0°、11.5°、13.9°、23.2°、24.2°および26.3°のピークも、あまり顕著ではないが、強い。最も強い回折ピークは15.7°である。非結晶(R)−3−(2−ヒドロキシ−2,2−ジフェニル−アセトキシ)−1−(イソキサゾール−3−イルカルバモイル−メチル)−1−アゾニア−ビシクロ−[2.2.2]オクタン・臭化物塩のX線回折像は図2のとおり何ら回折ピークが存在せず、それは、結晶形態TアルファのXRPDパターンと明白に区別できる。
【0030】
結晶形態TアルファはそのFT−ラマンスペクトルにより特徴付けることができる。結晶形態TアルファのFT−ラマンスペクトルを図3に示す。これは実施例3にさらに詳細に記載されている。非結晶(R)−3−(2−ヒドロキシ−2,2−ジフェニル−アセトキシ)−1−(イソキサゾール−3−イルカルバモイル−メチル)−1−アゾニア−ビシクロ−[2.2.2]オクタン・臭化物塩のFT−ラマンスペクトルを図4に示し、それは、結晶形態TアルファのFT−ラマンスペクトルと明白に区別できる。
【0031】
結晶形態TアルファはそのFT−IRスペクトルにより特徴付けることができる。結晶形態TアルファのFT−IRスペクトルを図5に示す。これは実施例4にさらに詳細に記載されている。非結晶(R)−3−(2−ヒドロキシ−2,2−ジフェニル−アセトキシ)−1−(イソキサゾール−3−イルカルバモイル−メチル)−1−アゾニア−ビシクロ−[2.2.2]オクタン・臭化物塩のFT−IRスペクトルを図6に示し、それは、結晶形態QαのFT−IRスペクトルと明白に区別できる。
【0032】
走査型電子顕微鏡(SEM)により観察された結晶形態Tアルファのサンプルは、白色の大型針状結晶の集団を示す。
【0033】
tベータで示される式Iの化合物の第2の結晶形態は、化合物をアセトンおよび水(94/6)の溶液から80℃±01で結晶化することにより得、これは半水和物、すなわち、疑似多形のようである。tベータで示される一水和物は、式Iの化合物を25℃および50℃で水の存在下で結晶化することにより得た。溶媒和物形は、また、ジメチルホルムアミド(DMF)から得た。
【0034】
アセチルコリンのM3ムスカリン受容体への結合の阻害を考慮して、結晶形態Tアルファの式Iの化合物は、ムスカリンM3受容体が介在する状態、特に、例えば、過剰な腺分泌物または平滑筋収縮による副交感神経緊張状態の増加と関連するものの処置に有用である。本発明にしたがう処置は、対症的または予防的であってよい。
【0035】
結晶形態Tアルファの式Iの化合物とヒトムスカリンアセチルコリンM3受容体の親和性(Ki)は、放射線標識アンタゴニスト[H]n−メチルスコポラミンメチルクロライド(NMS)で、競合濾過結合アッセイで測定できる:ヒトM3受容体を10μgタンパク質/ウェルで安定にトランスフェクトしたCHO細胞から製造された膜を、結晶形態Tアルファの式Iの化合物、[H]NMS(0.25nM)およびアッセイバッファー(20mMのHEPES、1mMのMgCl pH7.4)の連続希釈をしながら、17時間、室温でインキュベートする。アッセイは、最終ジメチルスルホキシド濃度1%の存在下で、最終容量250μLで実施する。全ての[H]NMSの結合をアッセイバッファーの対応する置換された容量で決定する。[H]NMSの非特異的結合を300nMのイプラトロピウム・臭化物塩の存在下で決定する。インキュベート後、膜を、BrandelTM濾過回収機9600を使用して、0.05%のポリエチレンイミンを含むUnifilterTMGF/B濾過板で回収する。濾過板を2時間、35℃で乾燥させ、MicroscintTM‘O’カクテルを加え、そして、H−シンチレーションプロトコールを使用してPackard TopcountTMシンチレーターで読む。全てのIC50は、XL−Fitグラフパッケージを使用して計算し、そしてK値はCheng-Prusoff correction (Cheng Y., Prusoff W. H. (1973) Biochem. Pharmacol. 22 3099-3109)を使用することによる。
【0036】
その抗ムスカリン活性に鑑み、結晶形態Tアルファの式Iの化合物は、気管支平滑筋の弛緩および気管支収縮の軽減に有用である。気管支収縮の軽減はモデル、例えば、Chong et al, J. Pharmacol. Toxicol. Methods 1998, 39, 163, Hammelmann et al, Am. J. Respir. Crit. Care Med., 1997, 156, 766のインビボプレチスモグラフィーモデルおよび類似のモデルで測定することができる。したがって、結晶形態Tアルファの式Iの化合物は、閉塞性または炎症性気道疾患の処置に有用である。その長期作用を考慮すると、このような疾患の処置において1日に1回、結晶形態Tアルファの式Iの化合物を投与することで可能にする。さらなる局面において、結晶形態Tアルファの式Iの化合物は、一般的に、βアゴニストで一般的に遭遇する副作用、例えば、頻脈、振戦および不安の発生の低下を表す特徴を示し、したがって、このような化合物は閉塞性または炎症性気道疾患の要時処置(レスキュー)ならびに予防処置における使用に適当である。
【0037】
本発明が適用できる炎症性または閉塞性気道疾患は、その類型および原因に関わりなく、例えば内因性(非アレルギー性)喘息および外因性(アレルギー性)喘息の両方、軽度の喘息、中度の喘息、重度の喘息、気管支炎喘息、運動誘発喘息、職業的喘息および細菌感染によって誘導される喘息を含む。喘息の処置には、喘鳴症候群を示し、主要な医学的懸念の確立された患者カテゴリーであり、しばしば初期のまたは早期の喘息として定義される“喘鳴小児”と診断されるまたは診断できる、例えば、4または5歳以下の対象の処置を包含すると理解されるべきである(便宜上、この特定の喘息状態は、“喘鳴小児症候群”と呼ぶ)。
【0038】
喘息の処置における予防効果は、症候発作、例えば、急性喘息または気管支収縮発作の頻度または重症度の減少、肺機能の改善または気道過反応性の改善により証明され得る。さらに、他の対症療法、すなわち症候発作を、それが起きたとき、制限もしくは中止するための、またはそれを意図した治療、例えば抗炎症剤(例えば、コルチコステロイド)または気管支拡剤の必要性の減少により証明できる。喘息における予防効果は、特に“モーニングディッピング(morning dipping)”になる傾向の対象において明らかになり得る。“モーニングディッピング”とは、喘息のかなりの割合に共通する、認識された喘息症候群であり、例えばおおよそ4から6amの時間、すなわち、前に投与された何らかの喘息対症治療から通常相当離れた時間に起こる喘息発作により特徴付けられる。
【0039】
本発明が適用できる他の炎症性または閉塞性気道疾患および状態は、急性肺外傷(ALI)、成人/急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、それらと関連する慢性気管支炎もしくは呼吸困難を含む慢性閉塞性肺(pulmonary)、気道もしくは肺嚢(lung)疾患(COPD、COADまたはCOLD)、気腫、ならびに他の薬剤治療、特に、他の吸入薬剤治療の結果生じる気道過反応性の悪化を含む。本発明はまた、急性、アラキジン性(arachidic)、カタール性、クループ性、慢性もしくは結核様(phthinoid)気管支炎を含む、いかなるタイプもしくは起源であれ、気管支炎の処置に適用できる。さらに本発明が適用できる炎症性または閉塞性気道疾患は、アルミニウム肺症、炭粉沈着症、石綿肺症、石肺症、ダチョウ塵肺症、鉄沈着症、珪肺症、タバコ症および綿肺症を含む、いかなるタイプもしくは起源であれ、塵肺(しばしば気道の閉塞を伴い、慢性または急性であり、しばしば粉塵の繰り返し吸引により起こる、肺の炎症性の、一般に職業的な疾患)を含む。
【0040】
その抗炎症性活性、特に好酸球活性化の阻害関連を考慮して、結晶形態Tアルファの式Iの化合物はまた、好酸球関連疾患、例えば、好酸球増多症、特に、(例えば、肺組織の病的好酸球性進入(それが気道および/または肺に影響する限り過好酸球増多症を含む)が関与する)気道の好酸球関連疾患、ならびに、例えば、レフラー症候群に続発するもしくは併発する気道の好酸球関連疾患;好酸球性肺炎;(熱帯好酸球増多症を含む)寄生虫(特に後生動物)の侵入;気管支肺アスペルギルス症;チャーグ・ストラウス症候群を含む結節性多発性動脈炎;好酸球性肉芽腫;および薬物反応誘導により起こる気道が影響する好酸球関連疾患の処置において有用である。
【0041】
結晶形態Tアルファの式Iの化合物はまた、皮膚の炎症性状態、例えば、乾癬、接触性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、円形脱毛症、多形性紅斑、疱疹状皮膚炎、強皮症、白斑症、過敏性血管炎、蕁麻疹、類天疱瘡、エリテマトーデス、天疱瘡、後天性表皮水疱症および皮膚の他の炎症性状態の処置に有用である。
【0042】
結晶形態Tアルファの式Iの化合物はまた、他の疾患または状態、特に、炎症性要素を有する疾患または状態、例えば、目の疾患および状態の処置、例えば結膜炎、乾性角結膜炎および春季結膜炎;鼻に影響する疾患、例えばアレルギー性鼻炎;関節の疾患、例えばリウマチ性関節炎および炎症性腸疾患、例えば潰瘍性大腸炎およびクローン病の処置のために使用してもよい。
【0043】
さらに、結晶形態Tアルファの式Iの化合物はまた、嚢胞性線維症、肺高血圧および肺線維症の処置のために使用してもよい。
【0044】
結晶形態Tアルファの式Iの化合物は、また、例えば、この薬剤の治療効果の増強剤として、または、この薬剤の必要用量もしくは潜在的副作用減少の手段として、特に抗炎症剤、気管支拡張剤、抗ヒスタミン/抗アレルギー剤または鎮咳剤、特に、閉塞性または炎症性気道疾患、例えば、上記記載のものの処置において、気道疾患の処置のための他の薬剤物質と組合せて使用するための、共治療剤として有用である。結晶形態Tアルファの式Iの化合物は、固定された医薬組成物として他の薬剤物質と混合されても、または他の薬剤物質と別々に、他の薬剤物質の前に、同時にまたは後に投与してもよい。
【0045】
このような抗炎症剤は、ステロイド、特に、グルココルチコステロイド、例えばブデソニド、ベクロメタゾン(beclamethasone)ジプロピオネート、フルチカゾンプロピオネート、シクレソニド、デキサメタゾン、フルニソリド、フロ酸モメタゾンおよびトライアムシナロン、WO02/00679、WO02/88167、WO02/12265、WO02/12266およびWO02/100879に記載されているもの(それらの塩または誘導体、例えば、スルホ安息香酸、リン酸、イソニコチン酸、酢酸、プロピオン酸、リン酸二水素、パルミチン酸、ピバル酸またはフランカルボン酸ナトリウム塩、可能なとき、水和物を含む);ドーパミンアゴニスト、例えば、ブロモクリプチン、カベルゴリン、α−ジヒドロ−エルゴクリプチン、リスリド、ペルゴリド、プラミペキソール、ロキシンドール、ロピニロール、タリペキソール、テルグリドおよびバイオザン(それらの薬学的に許容される塩、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸、酢酸、フマル酸、コハク酸、乳酸、クエン酸、酒石酸およびマレイン酸との塩)、非ステロイド性グルココルチコイド受容体アゴニスト、例えば、WO00/00531、WO02/10143、WO03/082280、WO03/082787、WO03/104195、WO04/005229に記載されているもの;LTB4アンタゴニスト、例えば、BIIL284、CP−195543、DPC11870、LTB4エタノールアミド、LY293111、LY255283、CGS025019C、CP−195543、ONO−4057、SB209247、SC−53228およびUS5451700およびWO04/108720に記載されているもの;LTD4アンタゴニスト、例えば、モンテルカスト、プランルカスト、ザフィルカスト、アコレート、SR2640、Wy−48,252、ICI198615、MK−571、LY−171883、Ro24−5913およびL−648051;ドーパミン受容体アゴニスト、例えば、カベルゴリン、ブロモクリプチン、ロピニロールおよび4−ヒドロキシ−7−[2−[[2−[[3−(2−フェニルエトキシ)−プロピル]スルホニル]エチル]−アミノ]エチル]−2(3H)−ベンゾチアゾロンおよびそれらの薬学的に許容される塩(Viozan(登録商標)−AstraZenecaの塩酸塩);PDE4阻害剤、例えば、シロミラスト(Ariflo(登録商標)GlaxoSmithKline)、ロフルミラスト(Byk Gulden)、V−11294A(Napp)、BAY19−8004(Bayer)、SCH−351591(Schering−Plough)、Arofylline(Almirall Prodesfarma)、PD189659/PD168787(Parke−Davis)、AWD−12−281(AstaMedica)、CDC−801(Celgene)、SelCID(TM)CC−10004(Celgene)、VM554/UM565(Vernalis)、T−440(田辺)、KW−4490(協和発酵工業)、GRC3886(Oglemilast、Glenmark)、および、WO92/19594、WO93/19749、WO93/19750、WO93/19751、WO98/18796、WO99/16766、WO01/13953、WO03/39544、WO03/104204、WO03/104205、WO04/000814、WO04/000839、WO04/005258、WO04/018450、WO04/018451、WO04/018457、WO04/018465、WO04/018431、WO04/018449、WO04/018450、WO04/018451、WO04/018457、WO04/018465、WO04/019944、WO04/019945、WO04/045607、WO04/037805、WO04/063197、WO04/103998、WO04/111044、WO05/012252、WO05012253、WO05/013995、WO05/030212、WO05/030725、WO05/087744、WO05/087745、WO05/087749およびWO05/090345に記載されているもの(それらの生理学的に許容される酸付加塩、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、メタン−スルホン酸、酢酸、フマル酸、コハク酸、乳酸、クエン酸、酒石酸およびマレイン酸との塩を含む);A2aアゴニスト、例えば、EP409595A2、EP1052264、EP1241176、WO94/17090、WO96/02543、WO96/02553、WO98/28319、WO99/24449、WO99/24450、WO99/24451、WO99/38877、WO99/41267、WO99/67263、WO99/67264、WO99/67265、WO99/67266、WO00/23457、WO00/77018、WO00/78774、WO01/23399、WO01/27130、WO01/27131、WO01/60835、WO01/94368、WO02/00676、WO02/22630、WO02/96462、WO03/086408、WO04/039762、WO04/039766、WO04/045618およびWO04/046083に記載されているもの;ならびに、A2bアンタゴニスト、例えば、WO02/42298およびWO03/042214に記載されているものを含む。
【0046】
このような気管支拡張剤はβ−2アドレナリン受容体アゴニストを含む。適当なβ−2アドレナリン受容体アゴニストは、アルブテロール(サルブタモール)、メタプロテレノール、テルブタリン、サルメテロール、フェノテロール、プロカテロール、および、とりわけ、フォルモテロール、カルモテロール、GSK159797、GSK642444およびそれらの薬学的に許容される塩、およびWO00/75114(これを出典明示により本明細書に包含させる)の式Iの化合物(遊離形または塩形または溶媒和物形)、好ましくはそれらの実施例の化合物、とりわけ式
【化2】

で示される化合物およびその薬学的に許容される塩、ならびにWO04/16601の式Iの化合物(遊離形または塩形または溶媒和物形)、および、また、EP147719、EP1440966、EP1460064、EP1477167、EP1574501、JP05025045、JP2005187357、US2002/0055651、US2004/0242622、US2004/0229904、US2005/0133417、US2005/5159448、US2005/5159448、US2005/171147、US2005/182091、US2005/182092、US2005/209227、US2005/256115、US2005/277632、US2005/272769、US2005/239778、US2005/215542、US2005/215590、US2006/19991、US2006/58530、WO93/18007、WO99/64035、WO01/42193、WO01/83462、WO02/66422、WO02/70490、WO02/76933、WO03/24439、WO03/42160、WO03/42164、WO03/72539、WO03/91204、WO03/99764、WO04/16578、WO04/22547、WO04/32921、WO04/33412、WO04/37768、WO04/37773、WO04/37807、WO04/39762、WO04/39766、WO04/45618WO04/46083、WO04/80964、WO04/087142、WO04/89892、WO04/108675、WO04/108676、WO05/33121、WO05/40103、WO05/44787、WO05/58867、WO05/65650、WO05/66140、WO05/70908、WO05/74924、WO05/77361、WO05/90288、WO05/92860、WO05/92887、WO05/90287、WO05/95328、WO05/102350、WO06/56471、WO06/74897またはWO06/8173の化合物を含む。
【0047】
このような気管支拡張剤は、また、他の抗コリン剤またはムスカリン受容体拮抗剤、例えば、イプラトロピウムブロマイド、オキシトロピウムブロマイド、チオトロピウム(tiotropium)塩、CHF 4226(Chiesi)、SVT−40776およびグリコピロレートおよび他のグリコピロニウム塩、また、EP424021、US3714357、US5171744、US2005/171147、US2005/182091、WO01/04118、WO02/00652、WO02/51841、WO02/53564、WO03/00840、WO03/33495、WO03/53966、WO03/87094、WO04/018422、WO04/05285、WO04/96800、WO05/77361およびWO06/48225に記載のものを含む。
【0048】
適当なデュアル抗炎症性および気管支拡張は、デュアルβ−2アドレナリン受容体アゴニスト/ムスカリンアンタゴニスト、例えば、US2004/0167167、US2004/0242622、US2005/182092、US2005/256114、US2006/35933、WO04/74246、WO04/74812、WO04/89892およびWO06/23475に記載のものを含む。
【0049】
適当な抗ヒスタミン/抗アレルギー剤は、アセトアミノフェン、アクチバスチン、アステミゾール、アゼラスチン、バミピン、塩酸セチリジン、デクスクロフェニラミン、クロロ−フェノキサミン、フマル酸クレマスチン、デスロラチジン(desloratidine)、ジメンヒドリナート、ジメチンデン、ジフェンヒドラミン、ドキシラミン、エバスチン、エメダスチン、エピナスチン、塩酸フェキソフェナジン、ケトチフェン、レボカバスチン、ロラチジン、メクリジン、ミゾラスチン、フェニラミン、プロメタジンおよびテフェナジン(tefenadine)、ならびにJP2004107299、WO03/099807およびWO04/026841に記載のもの(存在できる全ての薬理学的に許容される酸付加塩を含む)を含む。
【0050】
結晶形態Tアルファの式Iの化合物およびβ−2アドレナリン受容体アゴニスト、ステロイド、PDE4阻害剤またはLTD4アンタゴニストの組合せ剤は、特に、喘息の処置に使用することが適当である。
【0051】
結晶形態Tアルファの式Iの化合物およびβ−2アドレナリン受容体アゴニスト、PDE4阻害剤、LTB4アンタゴニストの組合せ剤は、特に、COPDの処置に使用することが適当である。
【0052】
前記にしたがって、本発明はまた、有効量の上記定義の結晶形態Tアルファの式Iの化合物を、それらを必要とする対象、特にヒト対象に投与することを含む、炎症性状態、特に炎症性または閉塞性気道疾患の処置法を提供する。さらなる局面において、本発明は、炎症性状態、特に炎症性または閉塞性気道疾患の処置用医薬の製造のための結晶形態Tアルファの式Iの化合物の使用を提供する。
【0053】
結晶形態Tアルファの式Iの化合物は、すべての適当な経路で、例えば、経口で、例えば、錠剤またはカプセル形で;非経腸的に、例えば、静脈内に;例えば、炎症性または閉塞性気道疾患の処置において吸入により;例えば、アレルギー性鼻炎の処置において経鼻で;例えば、アトピー性皮膚炎の処置において皮膚に局所的に;または、例えば、炎症性腸疾患の処置において経直腸的に投与してもよい。
【0054】
さらなる局面において、本発明はまた、活性成分として結晶形態Tアルファの式Iの化合物を、所望により薬学的に許容される希釈剤または担体とともに含む医薬組成物を提供する。該組成物は、共治療薬、例えば上記記載の気管支拡張剤または抗炎症剤を含んでもよい。このような組成物を慣用の希釈剤または賦形剤およびガレヌス分野で既知の技術を使用して製造してもよい。したがって、経口投薬形は、錠剤およびカプセルを含んでもよい。局所投与用製剤は、クリーム、軟膏、ゲルまたは経皮送達システム、例えば、パッチの形であってよい。吸入用組成物は、エアロゾルもしくは他の噴霧可能製剤または乾燥粉末製剤を含んでもよい。
【0055】
該組成物が、エアロゾル製剤、好ましくは例えば、ヒドロ−フルオロ−アルカン(HFA)噴射剤、例えばHFA134aもしくはHFA227またはこれらの混合物を含むとき、1種以上の当分野で既知の共溶媒、例えばエタノール(20重量%まで)、および/または1種以上の界面活性剤、例えばオレイン酸またはソルビタントリオレート、および/また1種以上の充填剤、例えばラクトースを含んでもよい。組成物が乾燥粉末製剤を構成するとき、それは、好ましくは、例えば、所望により望む粒径分布の希釈剤または担体、例えばラクトース、および湿気による製造物の性能劣化に対する保護のための化合物、例えば、ステアリン酸マグネシウム、一般的に0.05−2.0%のステアリン酸マグネシウムと一緒に、10ミクロンまでの粒径を有する結晶形態Tアルファの式Iの化合物を含む。組成物が噴霧製剤を構成するとき、それは、好ましくは、例えば、水、共溶媒、例えばエタノールまたはプロピレングリコールおよび安定剤(これは界面活性剤であってよい)を含む賦形剤中、溶解または懸濁している結晶形態Tアルファの式Iの化合物を含む。
【0056】
本発明は、(A)吸入可能形、例えば、エアロゾルもしくは他の噴霧可能組成物または吸入可能粒子、例えば、微粒子形の結晶形態Tアルファの式Iの化合物;(B)吸入可能形の結晶形態Tアルファの式Iの化合物を含む吸入可能医薬;(C)吸入デバイスに関連する吸入可能形の結晶形態Tアルファの式Iの化合物を含む医薬生成物;および(D)吸入可能形の結晶形態Tアルファの式Iの化合物を含む吸入デバイスを含む。
【0057】
カプセル化形態の乾燥粉末の送達のための適当なデバイスは、US3,991,761(AEROLIZERTMデバイスを含む)またはWO05/113042に記載されており、適当なMDDPIデバイスはWO97/20589(CERTIHALERTMデバイスを含む)、WO97/30743(TWISTHALERTMデバイスを含む)、WO05/14089(GEMINITMデバイスを含む)およびWO05/37353(GYROHALERTMデバイスを含む)に記載されているものを含む。
【0058】
本発明の実施において、使用される結晶形態Tアルファの式Iの化合物の用量はもちろん、例えば、処置される特定の状態、所望の効果および投与経路に依存して変化する。一般的に、吸入による投与による適当な1日用量は、0.005から10mgであり、経口投与による適当な1日用量は、0.05から100mgである。
【0059】
本発明を、下記実施例により説明する。
【実施例】
【0060】
実施例
実施例1
結晶形態Tアルファの製造
国際特許出願WO2004/96800に記載されている方法により製造される、24gの(R)−3−(2−ヒドロキシ−2,2−ジフェニル−アセトキシ)−1−(イソキサゾール−3−イルカルバモイル−メチル)−1−アゾニア−ビシクロ−[2.2.2]オクタン・臭化物塩を120mlのアセトンに50℃から60℃、好ましくは約50から55℃の温度で溶解する。1mlの水を加え、化合物の溶解を達成する。溶液を45℃に冷却し、20mgの結晶形態の化合物を入れる。次に、懸濁液を0℃に3時間冷却し、懸濁液を2時間、0℃で撹拌し続ける。次に、生成物を濾過により単離し、15gのアセトンで2回洗浄し、40℃で減圧下で12時間乾燥させる。式Iの化合物を白色の結晶形態で得る。
【0061】
実施例2
結晶形態Tアルファの製造
国際特許出願WO2004/96800に記載されている方法により製造される、236gの(R)−3−(2−ヒドロキシ−2,2−ジフェニル−アセトキシ)−1−(イソキサゾール−3−イルカルバモイル−メチル)−1−アゾニア−ビシクロ−[2.2.2]オクタン・臭化物塩を708gのメタノールおよび708gのエタノールを含む混合物に約60℃の温度で溶解する。溶液をこの温度またはわずかに60℃を超える温度で濾過し、次に、55℃に約1−2時間冷却する。55℃で、溶液に200mgの結晶形態の化合物を入れる。次に、懸濁液を55℃で1時間撹拌し続け、次に0℃に12時間冷却する。次に、懸濁液をさらに6時間0℃で撹拌し続ける。次に生成物を濾過により単離し、150gの0℃であらかじめ冷却したエタノールで6回洗浄し、60℃で完全工場減圧下で8時間乾燥させる。式Iの化合物を高アスペクト比の針状の白色結晶形態で得る。
【0062】
実施例3
X線粉末回折による結晶形態Tアルファの特徴付け
実施例1にしたがって製造される結晶形態TアルファのX線回折像を、CuKα放出源を有するSCINTAGTMX線回折計を使用して測定する。そうして、測定されたX線回折像は図1を示し、反射線および最も重要な線の強度を下記表1に示す。
表1
結晶形態TアルファのX線回折線および強度
【表1】

【0063】
XRPDパターンは5.7°で強い回折ピークを示す。
α放出源を有する同じ回折計を使用して得られた非結晶(R)−3−(2−ヒドロキシ−2,2−ジフェニル−アセトキシ)−1−(イソキサゾール−3−イルカルバモイル−メチル)−1−アゾニア−ビシクロ−[2.2.2]オクタン・臭化物塩のX線回折像を図2に示す。
【0064】
実施例4
ラマン分光法による結晶形態Tアルファの特徴付け
実施例1にしたがって製造される結晶形態TアルファのFT−ラマンスペクトルを、BRUKER OPTICS RFS 100TM分光計を使用して測定する。そうして、測定されたfT−ラマンスペクトルは図3を示し、反射線および最も重要な線の強度が3131、3064、2987、2970、2957、1735、1707、1601、1517、1473、1413、1288、1185、1047、1030、1003、963、862、674、621、378、353および250cm−1に表れる。同じ分光計を使用して得られた非結晶(R)−3−(2−ヒドロキシ−2,2−ジフェニル−アセトキシ)−1−(イソキサゾール−3−イルカルバモイル−メチル)−1−アゾニア−ビシクロ−[2.2.2]オクタン・臭化物塩のFT−ラマンスペクトルを図4に示し、反射線および最も重要な線の強度が3131、3064、2987、2970、2957、1735、1707、1601、1517、1473、1413、1288、1185、1047、1030、1003、963、862、674、621、378、353および250cm−1に表れる。
【0065】
実施例5
IR分光法による結晶形態Tアルファの特徴付け
実施例1にしたがって製造される結晶形態TアルファのFT−IRスペクトルを、透過KBr技術およびBRUKER OPTICS IFS−55TMFourier Transform Infrared(FTIR)分光計を使用して測定する。そうして、測定されたFT−IRスペクトルは図5を示す。主なIRバンドを、3330(ブロード)、3174、2923、1734、1706、1600、1516、1493、1467、1413、1377、1287、1243、1208、1187、1122、1095、1058、1024、992、930、906、894、787、769、757、740、697、631、586および561cm−1で記録する。同じ分光計を使用して得られた非結晶(R)−3−(2−ヒドロキシ−2,2−ジフェニル−アセトキシ)−1−(イソキサゾール−3−イルカルバモイル−メチル)−1−アゾニア−ビシクロ−[2.2.2]オクタン・臭化物塩のIR−ラマンスペクトルを図6に示す。主なIRバンドを、3330(ブロード)、3175、2923、1738、1708、1602、1519、1466、1378、1290、1234、893、760および673cm−1で記録する。
【0066】
実施例6
走査型電子顕微鏡による結晶形態Tアルファの特徴付け
走査型電子顕微鏡(SEM)により観察された、実施例1にしたがって製造される結晶形態Tアルファのサンプルは、大型針状結晶の集団を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶形態Tアルファで示される結晶(R)−3−(2−ヒドロキシ−2,2−ジフェニル−アセトキシ)−1−(イソキサゾール−3−イルカルバモイル−メチル)−1−アゾニア−ビシクロ−[2.2.2]オクタン・臭化物塩。
【請求項2】
示差走査熱量測定法により、同時分解を有する約208℃の融点により特徴付けられる、結晶形態Tアルファで示される結晶(R)−3−(2−ヒドロキシ−2,2−ジフェニル−アセトキシ)−1−(イソキサゾール−3−イルカルバモイル−メチル)−1−アゾニア−ビシクロ−[2.2.2]オクタン・臭化物塩。
【請求項3】
X線回折像で下記特徴的な回折線(角度2θ±0.2°)5.7°、15.7°、18.5°、19.8°、21.1°、22.2°および24.0°を有する、結晶形態Tアルファで示される結晶(R)−3−(2−ヒドロキシ−2,2−ジフェニル−アセトキシ)−1−(イソキサゾール−3−イルカルバモイル−メチル)−1−アゾニア−ビシクロ−[2.2.2]オクタン・臭化物塩。
【請求項4】
X線回折像で下記特徴的な回折線(角度2θ±0.2°)9.0°、11.5°、13.9°、23.2°、24.2°および26.3を有する、請求項3に記載の結晶(R)−3−(2−ヒドロキシ−2,2−ジフェニル−アセトキシ)−1−(イソキサゾール−3−イルカルバモイル−メチル)−1−アゾニア−ビシクロ−[2.2.2]オクタン・臭化物塩。
【請求項5】
医薬として使用するための、請求項1から4のいずれかに記載の結晶(R)−3−(2−ヒドロキシ−2,2−ジフェニル−アセトキシ)−1−(イソキサゾール−3−イルカルバモイル−メチル)−1−アゾニア−ビシクロ−[2.2.2]オクタン・臭化物塩。
【請求項6】
活性成分として、有効量の結晶(R)−3−(2−ヒドロキシ−2,2−ジフェニル−アセトキシ)−1−(イソキサゾール−3−イルカルバモイル−メチル)−1−アゾニア−ビシクロ−[2.2.2]オクタン・臭化物塩と、所望により、薬学的に許容される担体を共に含む、医薬組成物。
【請求項7】
1種、2種、3種またはそれ以上の抗炎症剤、気管支拡張剤、抗ヒスタミン/抗アレルギー剤または鎮咳剤をさらに含む、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
吸入可能形である、請求項6または7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
炎症性または閉塞性気道疾患の処置のための医薬の製造のための、結晶(R)−3−(2−ヒドロキシ−2,2−ジフェニル−アセトキシ)−1−(イソキサゾール−3−イルカルバモイル−メチル)−1−アゾニア−ビシクロ−[2.2.2]オクタン・臭化物塩の使用。
【請求項10】
結晶形態Qαで示される結晶(R)−3−(2−ヒドロキシ−2,2−ジフェニル−アセトキシ)−1−(イソキサゾール−3−イルカルバモイル−メチル)−1−アゾニア−ビシクロ−[2.2.2]オクタン・臭化物塩を製造するための方法であって、アセトンの溶液から(R)−3−(2−ヒドロキシ−2,2−ジフェニル−アセトキシ)−1−(イソキサゾール−3−イルカルバモイル−メチル)−1−アゾニア−ビシクロ−[2.2.2]オクタン・臭化物塩を結晶化することを含む方法。
【請求項11】
結晶(R)−3−(2−ヒドロキシ−2,2−ジフェニル−アセトキシ)−1−(イソキサゾール−3−イルカルバモイル−メチル)−1−アゾニア−ビシクロ−[2.2.2]オクタン・臭化物塩を製造するための方法であって、メタノールおよびエタノールの混合物溶液から(R)−3−(2−ヒドロキシ−2,2−ジフェニル−アセトキシ)−1−(イソキサゾール−3−イルカルバモイル−メチル)−1−アゾニア−ビシクロ−[2.2.2]オクタン・臭化物塩を結晶化することを含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−501611(P2010−501611A)
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−525978(P2009−525978)
【出願日】平成19年8月29日(2007.8.29)
【国際出願番号】PCT/EP2007/007560
【国際公開番号】WO2008/025541
【国際公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】