説明

1−アミノ−1,3,3,5,5−ペンタメチルシクロヘキサンメシラートの合成

下記ステップ(i)からなる1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンの製造方法。
ステップ(i):1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンをメタン・スルホン酸に、下記より選択される一つの溶媒、または2つ以上の溶媒の混合物中にて反応させる。すなわち、アニソール,クメン; ペンタン,ヘキサン,ヘプタン,イソオクタン; 酢酸メチル,プロピル・アセテート,イソプロピル・アセテート,n-ブチル・アセテート,イソブチル・アセテート; メチルエチルケトン,メチルイソプロピルケトン,メチルイソブチルケトン; ジメチルスルホキシド; テトラヒドロフラン,メチルテトラヒドロフラン,1,1-ジエトキシプロパン,1,1-ジメトキシメタン及び2,2-ジメトキシプロパンより選択される一つの溶媒、または2つ以上の溶媒の混合物中にて反応させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ある溶媒中にて、または2つ以上の溶媒の混合物中にて、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンをメタン・スルホン酸に反応させるステップ(i)を含む、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン(ネラメキサン)メシラートを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ネラメキサン及びその塩類は、耳鳴り、アルツハイマー型痴呆、及び神経障害性疼痛といった疾患または症状に苦しむ患者の持続性治療のための価値ある薬剤である。
【0003】
WO 99/01416は、イソホロンから出発しての、ネラメキサン、ネラメキサン塩酸塩または中間生成物の調製について開示する。
【0004】
イソホロンから出発してネラメキサン及びネラメキサン塩酸塩を調製する、他の反応スキームも、Danyszら("Amino-alkyl-cyclohexanes as a novel class of uncompetitive NMDA receptor antagonist, Current Pharmaceutical Design, 2002, 8, 835-843)により知られている。この公開文献の図1は、以下の反応シーケンスを開示する。
【化1】

【0005】
イソホロンから出発するネラメキサン及びネラメキサン塩酸塩の調製のためのもう一つのルートは、JirgensonsらによりEuropean J. Med. Chem. 35 (2000), 555-565 ("Synthesis and structure-affinity relationships of 1 ,3,5-alkylsubstituted cyclohexylamines binding at NMDA receptor PCP site")に開示されている。
【0006】
ネラメキサンにメタン・スルホン酸(メシラート)を付加した塩が、上述した疾患のための強力な薬であることも知られている(WO 2007/062815)。
【0007】
WO99/01416は、従来の手順にのっとって酸添加によりアミノ化合物からメシラートを調製するか、または、塩酸塩を中和することでフリーの塩基とした後、フリーの塩基を、メタン・スルホン酸で、再度、酸とすることを提案する。
【0008】
シュバイツァー(Erstellung eines Praformulierungskonzeptes fuer mittelstandische Pharmauntemehmen unter besonderer Beruecksichtigung des physikalisch-chemischen Eigenschaften neuer Arzneistoffe, dargestellt am Beispiel der NMDA-Antagonisten MRZ 2/579 und MRZ 2/576, Dissertation, Johann-Wolfgang-Goethe-University in Frankfurt/Main, 2001)は、ネラメキサン・メシラートを再結晶化し得る種々の溶媒を提案している。適当な溶媒は、酢酸エチル、アセトン、ジクロロメタン、水、ジエチルエーテル、1,4-ジオキサン、エタノール70%、エタノール96%、イソプロパノール及びトルエンである。アセトンとジクロロメタンからの再結晶化であると、溶媒和化合物となり得る。溶媒は、溶媒和化合物を破壊する高温で除去することとなり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開WO 99/01416
【特許文献2】米国特許出願公開US2006/002999A
【特許文献3】国際公開WO2006/094674A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、ネラメキサン・メシラート(1-アミノ-1 ,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン・メシラート)の製造方法を確立することにある。この製造方法は、経済的な工業スケールで実施され得るもので、これにより、医療・医薬の用途で確実に用い得る製品を得るようにするものである。この方法は、ネラメキサン・メシラートを高い収率及び純度で提供するものである。また、この提供にあたり、ネラメキサン・メシラートの粒径及び粒径分布は、ステップ(i)において得られる反応混合物から分離する方式及び溶媒といったプロセス・パラメータを調整することにより、変動させ得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、次のステップ(i)からなる1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン・メシラートを製造する方法に関する。;
ステップ(i):1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンをメタン・スルホン酸に、下記より選択される一つの溶媒、または2つ以上の溶媒の混合物中にて反応させる。すなわち、アニソール,クメン; ペンタン,ヘキサン,ヘプタン,イソオクタン; 酢酸メチル,プロピル・アセテート,イソプロピル・アセテート,n-ブチル・アセテート,イソブチル・アセテート; メチルエチルケトン,メチルイソプロピルケトン,メチルイソブチルケトン; ジメチルスルホキシド; テトラヒドロフラン,メチルテトラヒドロフラン,1,1-ジエトキシプロパン,1,1-ジメトキシメタン及び2,2-ジメトキシプロパンより選択される一つの溶媒、または2つ以上の溶媒の混合物中にて反応させる。
【0012】
一実施形態において、ステップ(i)の範囲内での溶媒は、アニソールであるか、または、上記に規定された溶媒のうちの少なくと1つの他の溶媒とアニソールとの混合物である。
【0013】
他の一実施形態において、ステップ(i)の範囲内での溶媒は、溶け込んだ水を含む。
【0014】
一実施形態において、上記の溶媒における水の含量は、水と溶媒とのトータルの量を基準にして、0.1〜10重量%、または0.1〜8重量%、または0.1〜5重量%、または0.1〜4重量%、または0.1〜2重量%、または0.1〜1重量%である。
【0015】
他の一実施形態において、ステップ(i)の範囲内での溶媒は、テトラヒドロフラン,1,1-ジエトキシプロパン,1,1-ジメトキシメタン,2,2-ジメトキシプロパン; メチルエチルケトン,メチルイソプロピルケトン及びメチルイソブチルケトンのグループから選ばれ、さらに水を含み得る。
【0016】
一実施形態において、ステップ(i)の範囲内での溶媒は、テトラヒドロフラン、1,1-ジエトキシプロパン、1,1-ジメトキシメタン、2,2-ジメトキシプロパン; メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトンとメチルイソブチルケトンのグループから選ばれ、水を、水と溶媒とのトータルの量を基準にして、0.1〜10重量%、または0.1〜8重量%、または0.1〜5重量%、または0.1〜4重量%、または0.1〜2重量%、または0.1〜1重量%含む。
【0017】
一実施形態において、前記ステップ(i)中にあっては、溶媒の体積についての、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンの重量に対する比率は、5:1〜50:1(ml/g)である。
【0018】
一実施形態において、ステップ(i)の範囲内での温度は、-20℃〜120℃である。
【0019】
一実施形態において、ステップ(i)の範囲内での温度は、0℃から60℃である。
【0020】
一実施形態において、ステップ(i)の範囲内での温度は0℃から60℃であり、溶媒は、アニソール、クメン; ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、イソオクタン; メチルエチルケトン、メチル・イソプロピル・ケトン; メチルイソブチルケトン; テトラヒドロフラン; 及びこれらの混合物のグループから選ばれ、さらに水を含み得る。
【0021】
一実施形態において、本本発明にしたがう製造方法は、次のステップ(ii)からなる。:
ステップ(ii) 結晶化(晶出)により1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン・メシラートを分離する。
【0022】
一実施形態において、ステップ(ii)の結晶化は、ステップ(i)の反応混合物の温度を下げるか、反溶媒(逆溶媒anti-solvent)を加えるか、ステップ(i)の溶媒を蒸留操作で部分的に除去するか、またはこれらのやり方のうちの二つ以上の組合せにより実現できる。
【0023】
一実施形態において、ステップ(ii)では、温度が-20℃〜50℃の範囲にまで下げられる。
【0024】
一実施形態において、本製造方法は、ステップ(i)またはステップ(ii)の後に、ステップ(iii)〜(v)の少なくとも1つを含む。:
ステップ(iii): ステップ(i)またはステップ(ii)での生成物について、上記に規定した一つ以上の溶媒から再結晶化させる。;
ステップ(iv):先のステップ(i)〜(iii)のいずれかにて、1-アミノ-1 ,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン・メシラートを添加する。;
ステップ(v): ステップ(i)〜(iv)のいずれかで形成された生成物について、凝集の解除、及び/または粉砕を行う。
【0025】
一実施形態において、ステップ(i)及び/またはステップ(iii)(すなわち、これらの少なくとも一方)における前記溶媒は、アニソール、クメン; メチルエチルケトン、メチル・イソプロピル・ケトン、メチルイソブチルケトン; テトラヒドロフラン ; n-ブチル・アセテート; 及び、これらの混合物のグループから選ばれ、さらに水を含み得る。また、ステップ(i)及び/またはステップ(iii)における温度は60〜120℃である。
【0026】
一実施形態において、本発明にしたがう製造方法は、ステップ(i)の前に次のステップ(a)〜(c)を更に含む。:
(a) イソホロンを3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキサノンに変換する。;
(b) 3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキサノンを1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサノールに変換する。;
(c) 1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサノールを1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンに変換する。
【0027】
一実施形態において、本発明にしたがう製造方法は、ステップ(vii)を更に含む。:
(vii) 本発明にしたがう製造方法によって得られる1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン・メシラートを、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンに変換する。
【0028】
更なる一実施形態において、本発明にしたがう製造方法は、ステップ(viii)を更に含む:
(viii) ステップ(vii)にて得られる1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンを、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン・メシラートとは異なる、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンの、製剤学的に許容される塩または誘導体に変換する。
【0029】
一態様において、本発明は、1-アミノ-1,3,3-トランス-5-テトラメチルシクロヘキサンを含まない1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンに関するものである。
【0030】
他の一態様において、本発明は、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン・メシラートの結晶化及び/または再結晶化のために、アニソールを用いるか、または、アニソールと、ステップ(i)にて規定した少なくとも一つの溶媒との混合物を用いることに関するものである。
【0031】
一態様において、本発明は、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン・メシラートの結晶であって、星型であるものに関する。
【0032】
一態様において、本発明は、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン・メシラート粒子であって、粒子の総重量の20%未満が10μm以下の粒径を有するか、または、15%未満が10μm以下の粒径を有するか、または、10%未満が10μm以下の粒径を有するものに関する。
【0033】
一態様において、本発明は、(1) 1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンメシラート結晶であって星形であるものからなるか、または(2) 1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンメシラート粒子であって、粒子の総重量の20%未満が10μm以下の粒径を有するか、または、15%未満が10μm以下の粒径を有するか、または、10%未満が10μm以下の粒径を有するものからなるか、または(3) 1-アミノの-1,3,3-トランス-5-テトラメチルシクロヘキサンを含まない1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンからなり、任意追加成分として、1つ以上の薬剤学的に許容可能な生理非活性添加剤を含み得る医薬組成物を生産する方法に関する。
【0034】
さらなる態様において、本発明は、(1) 1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンメシラート結晶であって星形であるものからなるか、または(2) 1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンメシラート粒子であって、粒子の総重量の20%未満が10μm以下の粒径を有するか、または、15%未満が10μm以下の粒径を有するか、または、10%未満が10μm以下の粒径を有するものからなるか、または(3) 1-アミノの-1,3,3-トランス-5-テトラメチルシクロヘキサンを含まない1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンからなり、任意追加成分として、1つ以上の薬剤学的に許容可能な生理非活性添加剤を含み得る医薬組成物に関する。
【0035】
さらなる態様において、本発明は、医薬品として用いられる、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンメシラート結晶であって星形であるものに関する。または医薬品として用いられる、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンメシラート粒子、粒子の総重量の20%未満が10μm以下の粒径を有するか、または、15%未満が10μm以下の粒径を有するか、または、10%未満が10μm以下の粒径を有するものに関する。または、医薬品として用いられる、1-アミノの-1,3,3-トランス-5-テトラメチルシクロヘキサンを含まない1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンに関する。
【0036】
さらなる態様において、本発明は、耳鳴りの治療剤として用いられる、(1) 1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンメシラート結晶であって星形であるもの、または(2) 1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンメシラート粒子であって、粒子の総重量の20%未満が10μm以下の粒径を有するか、または、15%未満が10μm以下の粒径を有するか、または、10%未満が10μm以下の粒径を有するもの、または(3) 1-アミノの-1,3,3-トランス-5-テトラメチルシクロヘキサンを含まない1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンからなるものに関する。
【0037】
さらなる態様において、本発明は、(1) 1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンメシラート結晶であって星形であるもの、または(2) 1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンメシラート粒子であって、粒子の総重量の20%未満が10μm以下の粒径を有するか、または、15%未満が10μm以下の粒径を有するか、または、10%未満が10μm以下の粒径を有するもの、または(3) 1-アミノの-1,3,3-トランス-5-テトラメチルシクロヘキサンを含まない1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンからなるもの、を用いて耳鳴り治療用医薬組成物を製造する方法に関する。
【0038】
さらなる態様において、本発明は、耳鳴りの治療を必要とする患者における耳鳴りを治療する方法であって、患者に、下記(1)〜(3)のいずれかの有効量を投与することを含む方法に関する。すなわち、(1) 1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンメシラート結晶であって星形であるもの、または(2) 1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンメシラート粒子であって、粒子の総重量の20%未満が10μm以下の粒径を有するか、または、15%未満が10μm以下の粒径を有するか、または、10%未満が10μm以下の粒径を有するもの、または(3) 1-アミノの-1,3,3-トランス-5-テトラメチルシクロヘキサンを含まない1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンからなるもの、を投与することを含む方法に関する。
【0039】
他の態様において、本発明は、ステップ(viii)によって得られうる薬剤学的に許容可能な塩に関する。
【0040】
他の態様において、本発明は、薬剤とし用いられる、ステップ(viii)により得られうる薬剤学的に許容可能な塩に関する。
【0041】
他の態様において、本発明は、耳鳴り治療に用いられる、ステップ(viii)により得られうる薬剤学的に許容可能な塩に関する。
【0042】
他の態様において、本発明は、ステップ(viii)により得られ得る薬剤学的に許容可能な塩を用いて、耳鳴り治療用の医薬組成物を製造する方法に関する。
【0043】
他の態様において、本発明は、患者に、ステップ(viii)によって得られうる薬剤学的に許容可能な塩を、有効な量投与することを含む、その必要のある患者の中の耳鳴りを治療する方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の方法における、反応ステップ(i)または再結晶化ステップ(iii)の後の、種入れステップ(iv)にて、1-アミノ,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン・メシラートの種を、1%(重量/重量)、2.5%、5%及び7.5%添加した場合に単離された星形の結晶を示す。ここで、溶媒はアニソールである。実施例3を参照。
【図2】本発明の方法において、反応ステップ(i)及び/または再結晶化ステップ(iii)にて1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンの種を加えなかった場合の、柱状結晶を示す、場合、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンはないここで、溶媒はアニソールである。実施例1を参照。
【図3】実施例6によって得られたネラメキサン・メシラートのX線回折(XRD)分析を示す。X軸は、2θ[deg]/d[オングストローム]を、Y軸は、任意の単位の強度を示す。透過回折装置:U=40kV、I=35mA、Cu、λ=1.54186。
【図4】実施例6によって得られたネラメキサン・メシラートの粒径分布を示す。X軸はμmでの粒径を示し、Y軸は、密度分布を示す。測定はHELOSレーザー回折センサー(Sympatec GmbH)を用いて行われた。
【図5】対応するモード分布径を示す。X軸はμmでの粒径を表わし、Y軸は、%で、累計分布を示す。
【図6】実施例6によって得られたネラメキサン・メシラートの示差走査熱量測定(DSC)の線図を示す。加熱速度は5℃/分である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明はネラメキサン・メシラートを製造する方法に関する。
【0046】
用語「ネラメキサン・メシラート」は1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンメシラートを指す。この用語は、さらに、該化合物についての溶媒和化合物、複合体、プロドラッグ、多型体(polymorphic forms)、及びこれらの誘導体を包含する。
【0047】
用語「溶媒和化合物」は、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンメシラートが、溶媒分子と会合するか、または、溶媒分子を吸引してなる生成物を包含する。溶媒が水である場合、溶媒和化合物は「水和物」とも命名される。
【0048】
一実施形態において、用語「溶媒和化合物」は、ネラメキサン・メシラートの結晶格子の格子サイトに溶媒が組み入れられたネラメキサン・メシラートを含む。
【0049】
他の実施形態において、用語「溶媒和化合物」は、溶媒が格子サイトに組込まれずに、ネラメキサン・メシラートに付着した生成物を包含する。
【0050】
一実施形態において、溶媒は、高温及び/または減圧を施すことにより一般的な方法によって溶媒和化合物から除去し得る。
【0051】
用語「複合体」は、ネラメキサン・メシラートが、担体に共有結合または非共有結合で結合した生成物を包含する。
【0052】
用語「プロドラッグ」は、ネラメキサン・メシラートに由来する薬理物質、または、ある物質からネラメキサン・メシラートが作られる場合の該物質であって、ネラメキサン自体と比較して、不活性であるか、顕著に活性が低い形態にて投与される物質を包含する。
【0053】
用語「多型体(polymorphic form)」は、異なる結晶構造にて結晶化するネラメキサン・メシラートを包含する。
【0054】
用語「これらの誘導体」は、アミノ基が1つまたは2つのアルキル基で誘導体化されたネラメキサン・メシラートを包含する。
【0055】
具体的には、本発明は、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンにメタン・スルホン酸を反応させることを含む、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン・メシラートの製造方法に関する。
【0056】
より具体的には、本発明は、、少なくともステップ(i)を含み、選択・追加的にステップ(ii)〜(v)を含み得る、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンメシラートの製造方法に関する。:
(i)溶媒中で1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンとメタン・スルホン酸とを反応させる。;
(ii)結晶化(晶出)により、ステップ(i)の反応混合物から1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンメシラートを分離する。;
(iii)ステップ(i)またはステップ(ii)で形成された生成物を再度結晶化させる。;
(iv)先行するステップ(i)〜(iii)のうちのいずれかにて1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンメシラートを添加する。;
(v)ステップ(i)〜(iv)のうちのいずれかで形成された生成物について、凝集解除及び/または粉砕を行う。
【0057】
<ステップ(i)>
一実施形態において、ステップ(i)で用いられる溶媒は、下記(1)〜(8)の1つ以上が達成されるように、選択される。:
(1) 1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンメシラートが結晶を形成することを可能にする。;
(2) 形成される1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンメシラートの粒径分布をコントロールすることを可能にする。;
(3) 1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンメシラートが高純度及び高収率で形成されるこを可能にする。;
(4) 形成された1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンメシラートからの溶媒の良好な除去を可能にする。;
(5) 反応条件下での1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンメシラート及び溶媒の良好な安定性を実現する。;
(6) 溶媒が比較的少量で役割を果たすことを可能にする。;
(7) ステップ(i)によるプロセスの技術的な実現性の観点から、溶媒が安全に適用可能であるようにする。;
(8) 溶媒が薬剤学的に許容可能であるようにする。
【0058】
溶媒に関して「薬剤学的に許容可能な」との語は、該溶媒がヒトの健康に影響を及ぼさないこと、及び/または、ヒトが充分に耐えられることを意味する。
【0059】
一実施形態において、ステップ(i)にて用いられる溶媒または2つ以上の溶媒の混合物としては、アニソール、クメン; 酢酸メチル、酢酸プロピル・イソプロピル・アセテート、n-ブチル・アセテート、酢酸イソブチル; ジメチル・スルホキシド; ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、イソオクタン; メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル・イソプロピル・ケトン; テトラヒドロフラン、1,1-ジエトキシプロパン、1,1-ジメトキシメタン、2,2-ジメトキシプロパン及びメチルテトラヒドロフランから選ばれる。上記に列挙された溶媒のうちのいくつかは、米国保健社会福祉省らによって出された、ICHガイドライン「産業界のためのガイダンス」(2003年11月の改訂版1「Q3C -表及びリスト」)により「クラス3の溶媒」に分類されている。
【0060】
一実施形態において、ステップ(i)での溶媒は、アニソール及びクメンのうちから選択される。
【0061】
他の実施形態において、ステップ(i)での溶媒は、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンおよびイソオクタンのうちから選択される。
【0062】
他の実施形態において、ステップ(i)での溶媒はジメチル・スルホキシドである。
【0063】
他の実施形態において、ステップ(i)での溶媒は、メチルエチルケトン、メチル・イソプロピル・ケトンおよびメチルイソブチルケトンのうちから選択される。
【0064】
他の実施形態において、ステップ(i)での溶媒は、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、1,1-ジメトキシメタン、1,1-ジエトキシプロパン及び2,2-ジメトキシプロパンのうちから選択される。
【0065】
他の実施形態において、ステップ(i)での溶媒は、酢酸メチル、酢酸プロピル、イソプロピル・アセテート、n-ブチル・アセテートおよび酢酸イソブチルのグループから選ばれる。他の実施形態において、前記アセテートは、酸性条件下で不安定であり得ることから、用いられない。例えば、ステップ(i)による反応が高温で行なわれる場合に用いられない。
【0066】
ステップ(i)で形成された目標化合物は、分離されたときには、例えば、ろ過または遠心分離を行い、場合によっては追加的に乾燥も行うといった一般的な方法により分離されたときには、残留溶媒を含み得る。
【0067】
一実施形態において、本発明は、請求の範囲に記載の方法で製造された1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン・メシラートであって、メシラートと溶媒とのトータルの量をベースにして、残留溶媒を、5重量%以下、4重量%以下、3%重量%以下、2%重量%以下、または、1.5重量%以下含む。
【0068】
一実施形態において、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンメシラートは、メシラートと溶媒とのトータルの量をベースにして、0.50重量%以下の残留溶媒を含んでいる。さらなる一実施形態において、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンメシラートは、メシラートと溶媒とのトータルの量をベースにして、0.05重量%以下の残留溶媒を含んでいる。
【0069】
ステップ(i)は、溶媒だけでなく、下記のうちの少なくとも1つ以上をコントロールもしくは調整することにより行い得る。すなわち、温度、用いられる1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンに対する溶媒の量、選択された溶媒の含水量をコントロールもしくは調整することにより行い得る。
【0070】
一実施形態において、ステップ(i)中における温度は‐20〜120℃である。
【0071】
一実施形態において、ステップ(i)中における温度が、50℃と100℃との間、または50℃と90℃との間、または50℃と80の℃との間、または70℃と80℃との間、または80℃である。
【0072】
一実施形態において、ステップ(i)中における温度は0〜60℃である。一実施形態において、ステップ(i)中における温度は周囲温度すなわち室温である。
【0073】
一実施形態において、本発明は、上記に概説した方法において、前記ステップ(i)中における、溶媒の体積と、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンの重量との比率が5:1〜50:1(ml/g)である。
【0074】
一実施形態において、溶媒の体積についての、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンの重量に対する比率は、5:1〜20:1(ml/g)である。
【0075】
他の実施形態において、溶媒の体積についての、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンの重量に対する比率は、5:1〜10:1(ml/g)である。
【0076】
他の実施形態において、溶媒の体積についての、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンの重量に対する比率は、5:1〜8:1(ml/g)である。
【0077】
一実施形態において、ステップ(i)中にて用いられる前記溶媒は、アニソール、クメン、ジメチル・スルホキシド、ヘプタン、メチルエチルケトン、含水量が例えば0.01〜5重量%である含水メチルエチルケトン、メチルイソブチル・ケトン、ペンタン、テトラヒドロフラン及びこれらの混合物のうちの少なくとも1つから選ばれる。
【0078】
〈溶媒としてのアニソール〉
本件発明者は、アニソールは、上述の要件に非常によく適合するので、上記に示した温度範囲、及び、重量当たりの体積の比率の範囲にて、好ましく用い得ることを見出した。アニソールは、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン・メシラートが結晶を形成するのを可能にし、形成される1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンメシラートの粒径分布のコントロールを可能にし、また、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン・メシラートが高純度及び高収率で形成されるのを可能にする。154℃という比較的高い沸点にもかかわらず、アニソールは、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンメシラートから比較的容易に、乾燥により除去し得る。必要な場合には、高温及び/または減圧下での乾燥により除去し得る。アニソールは酸性の反応条件の下で安定しており、比較的少量であっても役割を発揮しうる。アニソールは、上記方法の技術的な実現性の観点から、安全に使用可能である。また、アニソールはクラス3溶媒に分類される。
【0079】
本発明の一態様によれば、ステップ(i)中における溶媒は、アニソール、または、アニソールと、上記に規定される少なくとも1つである他の溶媒との混合物である。
【0080】
前記態様による一実施形態において、前記溶媒は、アニソールと、下記の溶媒との混合物である。すなわち、n-ブチル・アセテート、クメン、ジメチル・スルホキシド、ヘプタン、イソブチル・アセテート、イソプロプル・アセテート、メチルエチルケトン、メチルイソブチル・ケトン、ペンタン、酢酸プロピル、テトラヒドロフラン、1,1-ジエトキシプロパン、1,1-ジメトキシメタン、2,2-ジメトキシプロパン、イソオクタン、イソプロピルエーテル、メチルイソプロピルケトンおよびメチルテトラヒドロフランのうちの少なくとも一つとの混合物であり、場合によりさらに水を含むことができる。
【0081】
一実施形態において、前記混合物はアニソールとヘプタンの混合物である。
【0082】
一実施形態において、溶媒はアニソールである。また、ステップ(i)は、温度内に行なわれる、50〜100℃、または50〜90℃、または50〜80℃、または70〜80℃、または80℃である。
【0083】
一実施形態において、アニソールの量は、ステップ(i)中にて形成されたメシラートが、上記の温度範囲中にて溶媒中に溶解し続けるとともに、冷却した際に沈殿するように選択される。一般に、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンメシラートは結晶の形で生産され、該結晶は、例えば、下記に規定されるようなステップ(ii)によって、分離することができる。例えば、ろ過または遠心分離によって分離され得る。
【0084】
一実施形態において、5〜15mlのアニソール、8〜12mlのアニソール、または10mlのアニソールが、ステップ(i)(及び/またはステップ(iii))にて、1グラムの1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンまたは1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンメシラートに対して用いられる。
【0085】
必要ならば、ステップ(i)(下記に規定されるステップ(ii)やステップ(iii)が採用される場合には、ステップ(i)及び/またはステップ(ii)及び/またはステップ(iii))で得られた混合物が、室温まで、または室温もしくは外気温よりも低い温度にまで、分離の前に予め設定した冷却速度にて冷却され得る。例えば、0.05〜2℃/分、0.5〜2℃/分、または0.8〜2℃/分に設定した冷却速度にて冷却され得る。
【0086】
目標化合物ネラメキサン・メシラートは、高収率及び高品質で得られ得るものであり、例えば下記に規定さる再結晶化ステップ(iii)といった精製を行うことなしに、次の工程に適したものとなっている。例えば医薬組成物に加工する工程に適したものとなっている。
【0087】
〈溶媒としての、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、イソオクタン; メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソプロピルケトン; テトラヒドロフラン; 場合により含水溶媒〉:
本発明の他の態様において、溶媒は、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、イソオクタン; メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル・イソプロピル・ケトン; テトラヒドロフラン、またはこれらの混合物からなるグループから選ばれ、場合により含水溶媒である。
【0088】
用語「ペンタン、ヘキサン、ヘプタン」は、さらにそれぞれの異性体を包含する。
【0089】
ステップ(i)が前述の溶媒の1つ以上を用いて行なわれるならば、反応指針により、該目標化合物はを高収率、高品質で得ることが可能であり、目標化合物について、例えば再結晶化ステップ(iii)によって、さらに生成することなしに、さらなる加工・処理を行うのに適している。例えば、医薬組成物に加工するのに適している。
【0090】
一実施形態において、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンメシラートは、上記に規定された1つまたは2以上の溶媒中にて、すなわち、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、イソオクタン; メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル・イソプロピル・ケトン; テトラヒドロフラン、及びこれらの混合物のうちの1つ以上(場合により含水溶媒)である溶媒中に、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンを混合した混合物にメタン・スルホン酸を加えることにより得られる。
【0091】
一実施形態において、ステップ(i)による反応は、0〜60℃の温度範囲にて行なわれる。一実施形態において、ステップ(i)中の温度は周囲温度(例えば室温)である。
【0092】
一般に、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンメシラートは、上記に規定された溶媒の体積と1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンの重量との比率、及び、上記の温度範囲にて、上述の溶媒に、溶解しないか、または難溶性である。そのため、該メシラートは、メタン・スルホン酸が1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンに添加された際に沈殿する。
【0093】
一般に、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンメシラートは、結晶の形で生産され、例えば、下記に定義されるようなステップ(ii)によって、例えば、ろ過または遠心分離によって分離され得る。溶媒によっては、比較的少量のアモルファス物質も生成しうる。しかしながら、結晶化度は、通常、X線回折分析を可能にするのに充分なものである。
【0094】
必要ならば、ステップ(i)(下記に規定されるステップ(ii)やステップ(iii)が採用される場合には、ステップ(i)及び/またはステップ(ii)及び/またはステップ(iii))で得られた混合物が、室温まで、または室温もしくは外気温よりも低い温度にまで、分離の前に予め設定した冷却速度にて冷却され得る。例えば、0.05〜2℃/分、0.5〜2℃/分、または0.8〜2℃/分に設定した冷却速度にて冷却され得る。目標化合物は、通常、例えば医薬組成物に加工するといった次の加工・処理に適したものとなる純度を有している。
【0095】
一実施形態において、結晶のサイズは、ステップ(i)での反応温度によってコントロールされうる。
【0096】
一般に、上述の0〜60℃の温度範囲のうちの、50℃と55℃との間といった上部領域で生成する結晶は、より低い温度で生成する結晶よりも、有意に大きい。例えば、約0℃または0℃と20℃との間で生成する結晶よりも、有意に大きい。このことは、既知の顕微鏡の手法によって決定し得る。
【0097】
大部分について、より低い温度範囲で形成された生成物は粉状であり、低度から中程度の、かさ密度を有しているのに対し、より高い温度(すなわち、50〜60℃の範囲、または50〜55℃の範囲)で形成された生成物は、大部分が結晶であり、高いかさ密度を有している。
【0098】
特定の実施形態において、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンは、ステップ(i)を行なうべくメチルエチルケトンに溶かされる。
【0099】
一実施形態において、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンがメチルエチルケトンに溶かされて、混合物が50〜55℃の温度に加熱される。その後、メタン・スルホン酸が混合物に加えられ、当該塩が、結晶材料の形で沈殿し始める。該混合物は、撹拌され、20〜25℃の温度、または0〜5℃まで冷却され得る。沈殿した結晶は、ろ過、または遠心分離によって分離され得る。
【0100】
他の実施形態において、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンはメチルエチルケトンに溶かされて、メタン・スルホン酸混合物に加えられ、当該塩が、結晶材料の形で沈殿し始める。沈殿した結晶は、ろ過、または遠心分離によって分離され得る。例えば、周囲温度でのろ過または遠心分離によって分離され得る。
【0101】
他の実施形態において、アニソールまたはクメンといった溶媒も、上記と同様の条件にて、すなわち、0〜60℃の温度範囲にて用い得る。一実施形態において、溶媒を用いる温度は周囲温度である。
【0102】
〈含水溶媒〉
発明の他の態様によれば、ステップ(i)での溶媒は水を含む。
【0103】
一実施形態において、使用される溶媒は、該溶媒中に溶けていた水を含む。
【0104】
一実施形態において、溶媒と水は混和する。
【0105】
「混和する」との語は、前記溶媒と水との混合物であって、溶媒と水とが別個の相を作らず均一な相を形成する混合物を包含する。
【0106】
本件発明者は、水を含むそのような混合物が本件発明による製造法にて、結晶形成に寄与しうることを、予期せずして発見した。そのため、このように寄与することは、結晶化により行われる分離ステップ(ii)に寄与しうる。
【0107】
結晶形成は、顕微鏡的な手法により、または精製した材料についてのX線回折分析によって定性的に決定され得る。
【0108】
一実施形態において、前記混合物は、本発明による製造法に用いられる溶媒であって、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン・メシラートに対する溶解性が低いが、水と混和する溶媒から選ばれる。
【0109】
一実施形態において、ステップ(i)での溶媒は、テトラヒドロフラン、1,1-ジエトキシプロパン、1,1-ジメトキシメタン、2,2-ジメトキシプロパン; メチルエチルケトン、メチル・イソプロピル・ケトンおよびメチルイソブチルケトンのグループから選ばれ、該溶媒中に溶解した水を含む。
【0110】
他の実施形態において、溶媒は、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、メチル・イソプロピルケトンおよびメチルイソブチルケトンのグループから選ばれ、該溶媒中に溶解した水を含む。
【0111】
他の実施形態において、溶媒はテトラヒドロフラン及びメチルエチルケトンのグループから選ばれる、該溶媒中に溶解した水を含む。
【0112】
一実施形態において、水と溶媒との混合物中における水の量は、水と溶媒とのトータルの量を基準にして、0.1〜5重量%、0.1〜3重量%、0.5〜3重量%、0.5〜2.5重量%または1〜2重量%である。
【0113】
一実施形態において、上記の溶媒における水の含量は、水と溶媒とのトータルの量を基準にして、0.1〜10重量%、または0.1〜8重量%、または0.1〜5重量%、または0.1〜4重量%、または0.1〜2重量%、または0.1〜1重量%である。
【0114】
特定の実施形態において、溶媒は、メチルエチルケトンであって、重量で0.01〜5%の量の水が混ぜ合わされたものである。この溶媒中におけるステップ(i)による反応は、場合により、詳細には後述するようなステップ(iv)にしたがい、ネラメキサン・メシラートの種が存在する状態で行うことができる。これらの種の添加は、ネラメキサンと溶媒の混合物へのメタン・スルホン酸の添加の前に、添加とともに、または添加の後に行いうる。必要ならば、形成されたメシラートは、下記に規定されるようなステップ(v)による粉砕まは凝集解除のステップに供され得る。
【0115】
〈ステップ(i)でのメタン・スルホン酸の追加〉
本発明による製造方法の一実施形態において、メタン・スルホン酸はステップ(i)の溶媒に加えられる。
【0116】
一実施形態において、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンは、上記に規定した前記溶媒のうちの溶媒または2つ以上の混合溶媒中に、溶解、分散、懸濁または乳化される。溶解、分散、懸濁または乳化に続き、メタン・スルホン酸が、メシラートを形成すべく加えられる。
【0117】
一実施形態において、メタン・スルホン酸は、前記の溶媒のうちの溶媒または2つ以上の混合溶媒についての溶液の形態にて、加えられる。ここで、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンのための、前記溶媒のうちの溶媒または2つ以上の混合溶媒と、メタン・スルホン酸のための、前記溶媒のうちの溶媒または2つ以上の混合溶媒とは、互いに独立に選択しうる。
【0118】
一実施形態において、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンのための溶媒およびメタン・スルホン酸のための溶媒が、アニソールであるか、またはアニソールを含む。
【0119】
一実施形態において、メタン・スルホン酸は1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン及び溶媒に、そのままの形で加えられる。すなわち、メタン・スルホン酸を溶媒中に溶解または分散することなしに加えられる。
【0120】
別の実施形態において、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンがメタン・スルホン酸に加えられる。ここで、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンは、場合により、溶媒中に溶解、分散、懸濁または乳化されたものであり、メタン・スルホン酸は、場合により、溶媒中に溶解または乳化されたものである。
【0121】
別の実施形態において、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン及びメタン・スルホン酸が、ステップ(i)で使用された溶媒中に、同時に、かつ、相互に別個に加えられる。ここで、ここで、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンは、場合により、溶媒中に溶解、分散、懸濁または乳化されたものであり、メタン・スルホン酸は、場合により、溶媒中に溶解または乳化されたものである。
【0122】
<ステップ(ii)>
一実施形態において、本発明は、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンメシラートが、ステップ(ii)の結晶化によってステップ(i)の反応混合物から分離される方法・工程に関する。
【0123】
「ステップ(ii)の結晶化によってステップ(i)の反応混合物から分離される」との語は、形成された結晶が、ろ過または遠心分離によって分離される工程を包含する。
【0124】
ステップ(ii)による結晶化は、ステップ(i)の反応混合物の温度を下げるか、反溶媒を加えるか、またはステップ(i)で用いられた溶媒を蒸留操作により部分的に除去するか、またはこれらの手段の2つ以上の組み合わせにより実現しうる。
【0125】
用語「反溶媒」は、ステップ(i)で形成された付加塩に加えられた際に、メシラートの沈殿または結晶化を引き起こす、あらゆる溶媒を包含する。
【0126】
結晶化を実現すべく、一実施形態において、温度は、−20〜50℃の範囲内の目的温度もしくは終結温度にまで低下させ得る。一実施形態において、結晶化の目的温度が、5℃と15℃との間である。さらなる一実施形態において、結晶化の目的温度が20℃である。他の一実施形態において、結晶化の目的温度が10℃である。
【0127】
本発明の一実施形態において、結晶化の目的温度にて撹拌する時間は3時間以下である。例えば、10分から2時間までである。
【0128】
<ステップ(iii)>
本発明の他の一実施形態において、用いられ溶媒または溶媒混合物中で反応ステップ(i)及び/または結晶化ステップ(ii)が行なわれ得るだけでなく、該溶媒または溶媒混合物が、再結晶化ステップ(iii)のような再結晶を可能にする。:
ステップ(iii): ステップ(i)またはステップ(ii)形成された生成物を、ステップ(i)で使用される溶媒の1つ以上から再度結晶化させる。
【0129】
用語「再結晶化」は、生成されたメシラートの少なくとも過半すなわち50重量%超が溶媒中に溶解した状態にあり、そして、例えば、温度が下げられたならば、または、反溶媒が加えられたならば、沈殿するプロセスとして定義される。
【0130】
特に興味深いのは、ステップ(iii)にしたがう次のような再結晶化ステップである。すなわち、比較的少量の溶媒のみ必要とするが、高度に精製するのに適するとともに、再結晶化され精製された生成物を高収率でもたらす(すなわち、比較的少量の製品のみ母液に残留する)再結晶化ステップである。このような溶媒は、経済的な理由に基づくプロセスの技術的な実現性から、また、薬剤学的に許容可能な塩としての品質と適性に基づく生成物の性質から、特に興味深いものである。
【0131】
ネラメキサン・メシラートについての「薬剤学的に許容可能な塩」との語は該溶媒がヒトの健康に影響を及ぼさないこと、及び/または、ヒトが充分に耐えられることを意味する。
【0132】
一実施形態において、反応ステップ(i)及び再結晶化ステップ(iii)で、使用される溶媒が同一である。
【0133】
一実施形態において、例えば、結晶化ステップ(ii)によってメシラートを分離するために、反応ステップ(i)中に、形成されたメシラートを分離する必要がない。一実施形態において、初めに反応ステップ(i)が行なわれ、続いて、再結晶化ステップ(iii)が行われる。例えば、ステップ(i)で採用された初期反応温度を増大させることによって行われる。他の実施形態において、再結晶化ステップ(iii)は、反応ステップ(i)と同時に行われ得る。すなわち、両方のステップが同時に行なわれる。すなわち、再結晶が生じる温度で、ステップ(i)が行なわれる。
【0134】
他の実施形態において、反応ステップ(i)中に形成されたメシラートが分離される。例えば、結晶化ステップ(ii)によって分離される。分離に続いて、メシラートが、ステップ(i)で使用されるのと同じ溶媒を用いる再結晶化ステップ(iii)に供される。
【0135】
他の実施形態において、反応ステップ(i)及び再結晶化ステップ(iii)で使用される溶媒が、互いに異なる。これは、ステップ(i)の中で形成されたメシラートが分離されることを意味する、例えば、ステップ(ii)によって分離される。分離に続いて、メシラートは、ステップ(i)で使用される溶媒とは異なる溶媒を用いるステップ(iii)に供される。
【0136】
〈溶媒としてのアニソール〉
本件発明者は、アニソールが上述の要件に適合することを見出した。
【0137】
したがって、一実施形態において、本発明は、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン・メシラートの製造方法であって、下記ステップ(i)を含むものに関する。:
(i) アニソール溶媒中で1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンとメタン・スルホン酸とを反応させる。
【0138】
一実施形態において、本製造方法は上記ステップ(ii)に加えて、さらにステップ(iii)を含む。:
(iii)アニソール中にて、ステップ(i)またはステップ(ii)で形成された生成物を再度結晶化させる。
【0139】
一実施形態において、ステップ(i)及び/またはステップ(iii)のためには、5〜15mlのアニソール、8〜12mlのアニソール、または10mlのアニソールが、1グラムの1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンまたは1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン・メシラートに対して用いられる。
【0140】
一実施形態において、ステップ(i)及び/またはステップ(iii)が、60〜120℃、または60〜100℃、または70〜100℃、または80〜100℃の温度範囲で行なわれる。
【0141】
一実施形態において、ステップ(i)及び/またはステップ(iii)のためには、5〜15mlのアニソール、8〜12mlのアニソール、または10mlのアニソールが、1グラムの1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンまたはそのメシラートに対して用いられ、ステップ(i)及び/またはステップ(iii)が、60〜100℃、または80〜100℃の温度範囲で行なわれる。
【0142】
一実施形態において、ステップ(i)及び/またはステップ(iii)のためには、8〜12mlのアニソール、または10mlのアニソールが、1グラムの1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンまたはそのメシラートに対して用いられ、ステップ(i)及び/またはステップ(iii)が、80〜100℃の温度範囲で行なわれる。
【0143】
一実施形態において、ステップ(i)及び(iii)が同時に行なわれる。
【0144】
一実施形態において、所要量のアニソール及び1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンが、およそ80〜90℃の温度まで加熱される。その後、メタン・スルホン酸が加えられ、場合により、アニソールで希釈される。一実施形態において、アニソール及び1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンの所要量は、形成されたメシラートが前記温度範囲中にて、溶解したままであるように選択される。一般に、形成されたメシラートは、80℃より低い温度にて沈殿し始める。
【0145】
一実施形態において、上記に規定された冷却速度は、ステップ(iii)で得られた混合物を冷却するのにも採用し得る。すなわち、0.05〜2℃/分、0.5〜2℃/分、または0.8〜2℃/分の冷却速度を採用し得る。
【0146】
一実施形態において、ステップ(i)及びステップ(iii)が、互いに独立して行なわれる。一実施形態において、ステップ(i)及びステップ(iii)が連続的に行なわれる。ここで、ステップ(i)は、上記に規定したように行なわれる。生成物はステップ(ii)によって分離され得る。この後、このように分離された生成物は、ステップ(iii)に供される。
【0147】
一実施形態において、ステップ(i)で形成された生成物が分離される。例えば、ろ過または遠心分離によって分離される。続いて、分離された生成物は、上記のような具合にステップ(iii)に供される。一実施形態において、分離された生成物は、ステップ(i)で形成された生成物を、80〜100℃または90〜100℃で溶解するのに充分な量の中のアニソールと混ぜ合わせられる。溶液を冷却するにあたり、上記に規定されたような冷却速度が採用されて、生成物が結晶の形で沈殿し始める。
【0148】
必要ならば、ステップ(iii)は、高度に精製された生成物を得るために一度または数回行なわれ得る。
【0149】
一般に、前記の結晶化ステップ(ii)及び/または再結晶化ステップ(iii)では、柱状の結晶が得られる。「ラス(木摺)状」の語は、柱状と同義に使用される。
【0150】
一実施形態において、ステップ(i)で採用した初期温度が、例えば、ステップ(ii)による結晶化、またはステップ(iii)による再結晶化を行うべく、上述の目的温度に下げられるならば、温度を低下させる時間、すなわち冷却速度を調整しうる。このような調整によって、形成される粒子の粒径及び粒径分布を、コントロールし調整しうる。
【0151】
一実施形態において、沈殿しつつあるか、または既に沈殿した生成物を含む、ステップ(i)及び/またはステップ(iii)で得られた反応混合物は、40〜−10℃に、30〜−10℃に、または20〜0℃に冷却される。この際、0.05〜2℃/分、0.5〜2℃/分、または0.8〜2℃/分の冷却速度が採用される。
【0152】
一実施形態において、このように規定された冷却速度の適用によって、粒径分布をコントロールし適合させることが可能である。
【0153】
他の実施形態において、ステップ(i)で得られた反応混合物は、該反応混合物を冷却する際に撹拌される。
【0154】
一実施形態において、一般に使用される工業的な生産反応器によれば、5〜75rpmの撹拌速度が用いられる。一実施形態において、採用される撹拌速度が、70〜75rpm、または45〜55rpmである。
【0155】
一実施形態において、撹拌速度により粒径分布をコントロールし調節することが可能である。
【0156】
他の実施形態において、撹拌速度及び冷却速度により粒径分布をコントロールすし調節することが可能である。
【0157】
他の態様によれば、上記に規定されるような他の溶媒のうちのいくつかは再結晶(iii)に用い得る。前記溶媒が、アニソールの溶解特性とは異なる、ネラメキサン・メシラートの溶解特性を示すものでありうる。このことは、例えば、ステップ(iii)での再結晶に関連して興味深い。前述の溶媒のうちのいくつかは、再結晶を行なうために比較的大量を必要とする。しかし、他の溶媒では、比較的低い量で行なえる可能性がある。該他の溶は、経済的な空間及び時間の利用率の点で有利である。特にアニソールは、経済的な空間及び時間の利用率に適したものである。
【0158】
〈溶媒としての、テトラヒドロフラン; クメン; メチルエチルケトン、メチル・イソプロピル・ケトン、メチルイソブチルケトン; またはn-ブチル・アセテート。(場合により水とともに用いる)〉
ステップ(iii)による再結晶のための溶媒はテトラヒドロフラン; クメン; メチルエチルケトン、メチル・イソプロピル・ケトンおよびメチルイソブチルケトン; 及びn-ブチル・アセテートのグループから選ばれ、場合により水を含み得る。
【0159】
一般に、アニソールと比較して、大量の溶媒がステップ(iii)を行なうために必要である。
【0160】
一実施形態において、ステップ(iii)による再結晶のための溶媒はクメン; メチルエチルケトン、メチル・イソプロピル・ケトン及びメチルイソブチルケトンのグループから選ばれ、場合により水を含み得る。
【0161】
一実施形態において、1グラムのネラメキサン・メシラートあたり、約20mlのテトラヒドロフランが、約60℃の温度でネラメキサン・メシラートを溶解するのに用いられる。
【0162】
一実施形態において、1グラムのネラメキサン・メシラートあたり、約20mlのクメンが、約104℃の温度でネラメキサン・メシラートを溶解するのに用いられる。
【0163】
一実施形態において、1グラムのネラメキサン・メシラートあたり、約20mlのメチルエチルケトンが、約80 ℃の温度でネラメキサン・メシラートを溶解するのに用いられる。
【0164】
一実施形態において、1グラムのネラメキサン・メシラートあたり、約20mlのメチルイソブチルケトンが、約104℃の温度でネラメキサン・メシラートを溶解するのに用いられる。
【0165】
一実施形態において、1グラムのネラメキサン・メシラートあたり、約23mlのn-ブチル・アセテートが、約100℃の温度でネラメキサン・メシラートを溶解するのに用いられる。
【0166】
一実施形態において、再結晶化ステップ(iii)に用いられる前記溶媒が、アニソール、クメン; メチルエチルケトン、メチル・イソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン; テトラヒドロフラン; またはこれらの混合物のグループから選ばれ、場合により水を含み得るのであり、ステップ(i)及び/またはステップ(iii)における温度は60〜120℃である。
【0167】
一実施形態において、前記溶媒は、アニソール、クメン; メチルエチルケトン、メチル・イソプロピルケトン; メチルイソブチルケトン; テトラヒドロフラン; またはこれらの混合物のグループから選ばれ、場合により水を含み得るのであり、ステップ(i)及び/またはステップ(iii)における温度は60〜120℃であり、ステップ(i)及び/またはステップ(iii)において、1グラムの1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンまたは1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン・メシラートあたり、5〜30mlまたは8〜25mlの溶媒が用いられる。
【0168】
一実施形態において、ステップ(i)及び/またはステップ(iii)で生成された反応混合物は、一時的にのみ、60〜120℃に保持される。「一時的」との語は、反応混合物が、規定された温度、または規定された温度範囲中に、5〜120分、10〜90分、または20〜60分といった、規定された期間中だけ保持されることを意味する。
【0169】
溶液を冷却する際、例えば、周囲温度まで、または室温まで冷却する際に、結晶化及び/または再結晶化したネラメキサン・メシラートが得られる。
【0170】
<ステップ(iv)>
本発明の他の実施形態において、ステップ(ii)による結晶化、またはステップ(iii)による再結晶化を支援すべく、すなわち、ネラメキサン・メシラートの材料特性に悪影響を与えるかも知れないアモルファス材料の形成をできるだけ防ぐべく、既に合成されていたネラメキサン・メシラートを、ステップ(i)及び/またはステップ(ii)及び/またはステップ(iii)に、ネラメキサン・メシラートの種の形態で添加する。このように、この実施形態においては、ネラメキサン・メシラートの種が加えられる。
【0171】
用語「ネラメキサン・メシラートの種」は、パウダーまたは結晶の形態のネラメキサン・メシラートを包含する。
【0172】
一実施形態において、当技術分野で知られているようなレーザー回折で測定した場合に、前記種は、粒径分布d(90)が、100〜500μm、100〜400μm、100〜300μm、150〜300μm、200〜275μm、または200〜250μmの範囲内である。
【0173】
一実施形態において、種の量は、ステップ(i)〜(iii)で形成されるネラメキサン・メシラートの理論量に対して、重量で(重量/重量)、0.1〜10%または1〜8%である。
【0174】
本発明の一実施形態において、80〜100℃の温度でアニソールに溶解している1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンメシラートに、種が加えられる。
【0175】
本件発明者は、予期せずして、そのような種入れした溶液であって溶媒がアニソールであるものを冷却する際に、晶癖が、先行技術に開示された晶癖や、ステップ(i)、ステップ(ii)および/またはステップ(iii)にて反応混合物に種入れすることなしに得られた晶癖とは異なる1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンメシラートが得られることを見出した。
【0176】
先行技術に記載された結晶、例えば柱状、板状、等軸晶系の結晶とは異なり、本発明の前記態様により得られた結晶は、星形である。種を用いて、アニソールの中で得られたこの晶癖は予期しなかったものである。
【0177】
用語「星の形」または「星形である」は、結晶について、中心体または芯体を有し、これから結晶材料が突き出しているものとして定義する。結晶には少なくとも3つの突起、または4つの突起、または、さらに多くの突起を有する。結晶は多数の突起を有しうる。
【0178】
「星の形を有する結晶が得られた」との語は、ステップ(iii)で得られた結晶であって、過半すなわち50%以上が前記形状を有するものを包含する。形状、及び、形成された結晶の量の評価は、例えば、当技術分野で知られている顕微鏡の手法により決定することができる。
【0179】
前記結晶は、良好な流動性、及び、医薬組成物の一般的な生薬の形態への加工性を与えうるものと考えられている。
【0180】
したがって、一実施形態において、上記製造方法は、ステップ(iv)を含む:
ステップ(iv):溶媒がアニソールであるステップ(i)及び/またはステップ(ii)及び/またはステップ(iii)(すなわち、これらの少なくとも一つ)にて、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンメシラートを加える。
【0181】
上述のように、形成された結晶は、ろ過または遠心分離によって分離され得る。
【0182】
ステップ(i)及び/またはステップ(ii)及び/またはステップ(iii)及び/またはステップ(iv)にて得られた結晶は、公知の方法によって乾燥し得る。例えば、減圧下及び/または高温下に乾燥しうる。
【0183】
本発明の製造方法で用いられる他のいくつかの溶媒も、ステップ(iii)で使用されれば、星形の結晶を与える。適した溶媒は、例えばクメン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、n-ブチル・アセテートであり、場合により水を含み得る。
【0184】
一実施形態において、種は、クメン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、n-ブチル・アセテートのような溶媒(場合により含水溶媒であり得る)を用いるステップ(iv)により、60〜120℃の温度で加えられる。
【0185】
先行技術(シュバイツァー)は、トルエン結晶からの再結晶に関して、針の形状、柱状結晶、または平面結晶を開示する。驚くべきことに、本発明の方法にしたがう、少なくとも、ステップ(iii)およびステップ(iv)において溶媒としてトルエンが使用される場合、星形の結晶が形成されることが見いだされた。
【0186】
一実施形態において、得られた結晶は下記に規定されるような粒径分布を有し、このような粒径分布は、付加的な撹拌ステップを行うことなしに錠剤成形を行うことを可能にする。このことは、工業プロセスの観点から有利である。
【0187】
<ネラメキサン・メシラートの粒径分布(PSD)>
別の態様において、発明による製造方法にて形成される1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンメシラートは、結晶の形で生産され、当技術分野で知られているようなレーザー回折で測定した場合の粒径分布d(90)が、100〜500μm、100〜400μm、100〜300μm、150〜300μm、200〜275μm、または200〜250μmの範囲内である。
【0188】
一実施形態において、粒径分布は単一モードのものである。
【0189】
他の実施形態において、粒径分布は、単一モードのものであり、小径粒子領域にショルダーを有する。
【0190】
一実施形態において、結晶の形をしている1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンメシラートは、粒径分布d(90)が、200〜300μmの範囲内にあり、10%以下の粒子が、55μm以下の粒径、例えば5μm以下の粒径を有している。
【0191】
一実施形態において、結晶の形をしている1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンメシラートは、粒径分布d(90)が200〜300μmの範囲内にあって10%以下の粒子が5μm以下の粒径を有しているか、粒径分布d(90)が200〜400μmの範囲内にあって10%以下の粒子が5μm以下の粒径を有している
生じる結晶の粒径範囲は、錠剤に成形する前に、さらなる粉砕が不必要となるのに十分であるか、または十分である可能性のあるものである。しかし、本件請求の範囲に記載の製造方法により得られた粒子について、粉砕及び篩い分けを行うことは、十分に本発明の範囲内にある。
【0192】
本発明の一実施形態において、アニソールが溶媒として用いられ、ステップ(ii)による結晶化、及び/または、ステップ(iii)による再結晶化は、得られるネラメキサン・メシラートの粒径が直接の錠剤成形を可能にするようなものになるように行われる。すなわち、ネラメキサン・メシラートが、粉砕及び篩い分けの不要なものとして得られるように行われる。
【0193】
本発明の一実施形態において、アニソールが溶媒として用いられ、ステップ(ii)による結晶化、及び/または、ステップ(iii)による再結晶化に加えて、ステップ(iv)による種入れが、上記に規定した粒径のネラメキサン・メシラートを得るべく行われる。当該粒径は、直接の錠剤成形を可能にするものである。すなわち、ネラメキサン・メシラートが、粉砕及び篩い分けの不要なものとして得られるように行われる。
【0194】
この点に関して、500μmを超える粒径の結晶は、比較的粗く硬いことから、錠剤の形態のような医薬組成物へと直接圧縮するのには、往々にして困難が伴うことに注目すべきである。圧縮成形の前に、このような粗く硬い結晶は、当技術分野で知られている適当な手段によって壊されなければならない可能性がある。
【0195】
上記先行技術文献(シュバイツァー、学位論文、200ページ)から知られるように、該先行技術文献に示されたメシラートの粒子の個体群は、およそ20重量%の直径が10未満μmである。シュバイツァー文献は、このような粒子が、より大きな粒子に比べ比較的広い表面を粒子が有することから、前記粒子状物質が、より良好水蒸気吸着性を有していると報告する。しかしながら、医薬組成物のためには、上記の水蒸気の吸着は、不利であり避けるべきである。
【0196】
本件発明者は、予期せずして、本発明の製造方法によって生産される1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンメシラートが、該先行技術文献のメシラートと比較して、通常、より低い量の粒子状物質を有していることを見出した。
【0197】
用語「粒子状物質」は、直径が10μm以下であるである1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンメシラート粒子を包含する。
【0198】
一実施形態において、粒子のトータルの数量、または粒子個体群のうち、20重量%未満が直径10μm以下であるか、15重量%未満が直径10μm以下であるか、または、10重量%未満が直径10μm以下である。
【0199】
粒径は、上記に既に述べたレーザー回折を用いる既知の方法によって決定され、これにより分布のモード径(最頻粒子径)が決定される。
【0200】
そのため、本願にて規定された溶媒を用いる本発明の製造方法により製造された1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンメシラートは、含まれる粒子状物質が顕著に少ないことから、先行技術により知られた1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンメシラートに比べて、水蒸気の吸着量が低減されていて有利である。
【0201】
したがって、一態様において、本発明は、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンメシラート粒子であって、トータルの粒子のうち、20重量%未満が直径10μm以下であるか、15%重量未満が直径10μm以下であるか、または、10重量%未満が直径10μm以下であるものに関する。
【0202】
経済的な工業プロセスをの観点から、例えば、目標化合物の収率は、なるべく高いものであるべきである。反応ステップ(i)、結晶化ステップ(ii)、再結晶化ステップ(iii)及び/または種入れステップ(iv)によって(すなわち、これらのうちの少なくともいずれか、または任意の組み合わせによって)得られた生成物は、生成物から粒子状物質を除去する工程に供されない。例えば、篩分けのステップによる粒子状物質の除去を行わない。
【0203】
したがって、一態様において、本発明は、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンメシラート粒子であって、トータルの粒子または粒子個体群のうち、20重量%未満が直径10μm以下であるか、15重量%未満が直径10μm以下であるか、または、10重量%未満が直径10μm以下であり、また、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンメシラートの粒子または粒子個体群が、粒子状物質を除去する工程に供されないものに関する。
【0204】
一実施形態において、溶媒としてアニソールを用いて、基準となる分布モード径が得られる。
【0205】
溶媒としてアニソールを用いる一実施形態において、d(90)の粒径分布は、100〜500μm、または200μm〜400μmの範囲内にある。
【0206】
他の実施形態において、d(90)の粒径分布が100〜500μmの範囲にあり、トータルの粒子の、20重量%未満の直径が10μm以下、15重量%未満の直径が10μm以下、または、10重量%未満の直径が10μm以下である。
【0207】
他の実施形態において、d(90)の粒径分布が200〜400μmの範囲にあり20重量%未満の直径が10μm以下、15重量%未満の直径が10μm以下、または、10重量%未満の直径が10μm以下である。
【0208】
本件発明者は、上記のステップ(iv)にて述べたような星形の結晶の形成により、粒径分布がさらに有利に影響を受け得るということをさらに見出した。
【0209】
したがって、反応ステップ(i)及び/または結晶化ステップ(ii)及び/または再結晶化ステップ(iii)を、種入れステップ(iv)と組み合わせて行い、溶媒として、アニソール、クメン; メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン; 及びn-ブチル・アセテートのグループから選ばれるものを用いるならば、粒径分布d(90)について、種入れステップを行わない製造方法と比較して、より小さい粒子の領域へと、有利にシフトしうる。この製造方法では、付加的な粉砕ステップは必要でない。
【0210】
一実施形態において、少なくともステップ(iii)及び(iv)が行なわれる場合、得られた粒径分布d(90)は、100μm〜300μm、または100μm〜250μmである。
【0211】
一実施形態において、星形の結晶は、アニソールを溶媒として用いる、少なくともステップ(iii)及び(iv)を行うことで得られる。
【0212】
一実施形態において、星形の結晶は、メチルエチルケトンを溶媒として用いる、少なくともステップ(iii)及び(iv)を行うことで得られる。
【0213】
一実施形態において、星形の結晶は、クメンを溶媒として用いる、少なくともステップ(iii)及び(iv)を行うことで得られる。
【0214】
一実施形態において、星形の結晶は、n-ブチル・アセテートを溶媒として用いる、少なくともステップ(iii)及び(iv)を行うことで得られる。
【0215】
一実施形態において、星形の結晶は、メチルイソブチルケトンを溶媒として用いる、少なくともステップ(iii)及び(iv)を行うことで得られる。
【0216】
一実施形態において、種は、メシラートが、対応する溶媒に溶解する温度にて加えられる。
【0217】
他の実施形態において、種は、メシラートが、対応する溶媒に溶解する温度より約5℃低い温度にて加えられる。
【0218】
アニソール、クメン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンおよびn-ブチル・アセテート中にて、少なくとも再結晶化ステップ(iii)及び種入れステップ(iv)を行なうことにより得られたメシラートについて、レーザー回折によって決定された粒径分布を、下表に示す。:
【表1】

【0219】
種入れステップ(iv)を行なわずに、製造方法を実施する場合、得られた粒径のd(90)は、用いる溶媒及び反応条件によって、約1.5倍、または2倍、または、それ以上大きくなる。またd(50)及びd(10)が同様に増加する。
【0220】
一実施形態において、少なくとも再結晶化ステップ(iii)を種入れステップ(iv)と組み合わせて行い、溶媒として、アニソール、クメン; メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン; 及びn-ブチル・アセテートのグループから選択することで、d(90)の粒径分布が100〜300μmの範囲内にあり、トータルの粒子の、20重量%未満の直径が10μm以下、15重量%未満の直径が10μm以下、または、10重量%未満の直径が10μm以下である。
【0221】
他の実施形態において、少なくとも再結晶化ステップ(iii)を種入れステップ(iv)と組み合わせて行い、溶媒として、アニソール、クメン; メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン; 及びn-ブチル・アセテートのグループから選択することで、d(90)の粒径分布は100〜250μmの範囲内にあり、トータルの粒子の、20重量%未満の直径が10μm以下、15重量%未満の直径が10μm以下、または、10重量%未満の直径が10μm以下である。
【0222】
<ステップ(v)>
他の態様において、反応ステップ(i)及び/または結晶化ステップ(ii)及び/または再結晶化ステップ(iii)及び/または種入れステップ(iv)からの結晶が、凝集物を形成する場合、この凝集物について、凝集解除が施される。
【0223】
用語「凝集物」は、互いにくっつき合った結晶を包含する。
【0224】
したがって、一実施形態において、d(90)で表現される、凝集結晶の粒径分布は、500μmを超える。
【0225】
凝集解除に適した方法は、当技術分野において公知であり、例えば、適切な装置中での揺り動かし、または温和な粉砕といった粉砕である。
【0226】
用語「温和な粉砕」は、粒子状物質の形成を可能な限り避ける粉砕を包含する。
【0227】
したがって、一実施形態において、本製造方法は、さらにステップ(v)を含み得る。:
(v): ステップ(i)、ステップ(ii)、ステップ(iii)及び/またはステップ(iv)(すなわち、こらのうちのいずれか、または任意の組み合わせ)にて形成された生成物について、凝集の解除、及び/または粉砕を行う。
【0228】
<ネラメキサン・メシラートを調製するための反応シーケンス>
本発明のさらなる一態様において、本発明は、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンを、イソホロンから出発し、本願の背景の技術のところで述べたような一連の反応ステップを経て、すなわち、Danyszによって開示された反応シーケンスを経て得る方法に関連している。
【0229】
適宜に、一実施形態において、反応ステップ(i)に先立って、ステップ(a)〜(c)を含む製造方法に関連している。:
(a) イソホロンを3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキサノンに変換する。;
(b) 3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキサノンを1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサノールに変換する。;
(c) 1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサノールを1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンに変換する。
【0230】
<副産物の分離>
イソホロンから出発してグリニャール・ルート経由でネラメキサン・メシラートを生産する上記参考文献のシーケンスにおいて生じうる副反応のために、1-アミノ-1,3,3-トランス-5-テトラメチルシクロヘキサンは副産物として生成する。例えば、0.5重量%を超えるか、またはそれより多い量だけ生成する。このアミン化合物も、メタン・スルホン酸と反応してメシラートを形成する。物理的性質が類似のものであることにより、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンに含まれる上記のアミン化合物を、メシラートの形成の前に、蒸留などといった通常の精製方法にて除去する試みは、満足すべきものでなかった。
【0231】
一実施形態において、1-アミノ-1,3,3-トランス-5-テトラメチルシクロヘキサンを含む粗製(非精製の)1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンが、本発明の製造方法によるメシラート形成に供される。メシラート形成の際に、1-アミノ-1,3,3-トランス-5-テトラメチルシクロヘキサン・メシラートを含む1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン・メシラートが形成される。
【0232】
本発明による製造方法におけるステップ(i)〜(v)のうちのいずれか1つが行なわれて目標生成物ネラメキサン・メシラートが分離されるのであれば、例えば、ステップ(ii)によって、例えば、形成された結晶を濾過するか遠心分離することにより、目標化合物を該副産物に関して高純度で得ることができる。1-アミノ-1,3,3-トランス-5-テトラメチルシクロヘキサン・メシラートは、より良好な溶解性により、母液中、すなわち溶媒中に残留するからである。
【0233】
したがって、一実施形態において、1-アミノ-1,3,3-トランス-5-テトラメチルシクロヘキサンメシラートは、本発明による製造方法を用いることにより、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンメシラートから分離される。ここで、目標生成物の純度は、上記副産物に関して向上する。
【0234】
したがって、ステップ(i)、ステップ(ii)、ステップ(iii)及び/またはステップ(iv)の目標化合物は沈殿するのであるが、副産物である1-アミノ-1,3,3-トランス-5-テトラメチルシクロヘキサンメシラートは、上記溶媒中に、少なくとも部分的に溶解されたままとなる。目標化合物であるネラメキサン・メシラートが分離されるならば、例えば、ろ過または遠心分離によって分離されるならば、上記副産物は、母液に蓄積されて行き、このようにして、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン・メシラートから除去される。
【0235】
ステップ(i)で形成された反応混合物の中に存在しうる他の副産物は、1-ニトロ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンである。この生成物は、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンの酸化によって形成されうる。例えば、製造シーケンス中に1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンの取り扱いや検査を行う際に形成されるか、または、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンが不活性ガス中に保存されなかったならば形成される。この化合物も、本発明による製造方法において、溶媒として、アニソールまたはメチルエチルケトンを用い、場合によりこれらの含水溶媒を用いることにより、目標化合物から効率的に除去されうる。
【0236】
一実施形態において、本発明による製造方法は、ステップ(vi)を含む:
(vi) 1-アミノ-1,3,3-トランス-5-テトラメチルシクロヘキサン・メシラートについての、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン・メシラートからの分離;及び/または1-ニトロ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンについての、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン・メシラートからの分離。
【0237】
また、ステップ(a)〜(c)のうちのいずれかで得られる他の物質が、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンについての、ありうる汚染により反応ステップ(i)中に存在しうる。これらの物質は、ステップ(a)〜(c)でそれぞれ用いられ形成された化合物である。例えば、イソホロン、3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキサノン、1-ヒドロキシ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサノール、及び/または1-N-クロロアセトアミド-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンである。このような化合物も、溶媒として、アニソールまたはメチルエチルケトンを用い、場合によりこれらの含水溶媒を用いることにより、目標化合物から効率的に除去されうる。
【0238】
上記に概説した方法において、水を添加したアニソール、メチルエチルケトン及びメチルエチルケトンは、高純度、高結晶化度であり、粒子状物質の含量が低い1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンメシラートの調製を可能にする。粒子状物質の含量が低いことは、特には医薬組成物の製造に適した目標化合物を与えるものである。
【0239】
<アミノ-1,3,3-トランス-5-テトラメチルシクロヘキサンに関して高純度である1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンの調製>
一態様において、分離ステップ(vi)によって得られる1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン・メシラートは、メシラートを水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムのような延期で処理することにより、フリーのアミンに変換される。
【0240】
適宜に、本発明による製造方法は、さらに次のものを含む。:
(vii) ステップ(vi)によって得られた1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン・メシラートを、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンに変換する。
【0241】
望まれない副産物である1-アミノ-1,3,3-トランス-5-テトラメチルシクロヘキサンが、分離ステップ(vi)によって既に除去されたので、変換ステップ(vii)によって得られる1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンは、1-アミノ-1,3,3-トランス-5-テトラメチルシクロヘキサンを含まない。そのため、上記のシーケンスは、-アミノ-1,3,3-トランス-5-テトラメチルシクロヘキサンに関して、より高純度である1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンの製造を可能にする。すなわち、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンについて、ステップ(vi)を行わずに蒸留を施す場合に比べて、より高純度である1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンの製造を可能にする。
【0242】
「1-アミノ-1,3,3-トランス-5-テトラメチルシクロヘキサンを含まない1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン」との語は、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンと1-アミノ-1,3,3-トランス-5-テトラメチルシクロヘキサンとのトータルの量をベースにして、例えばガスクロマトグラフィー法によって決定される、1-アミノ-1,3,3-トランス-5-テトラメチルシクロヘキサンの含量が、0.05重量%未満、0.01重量%未満、0.005重量%未満、または0.001重量%未満である1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンとして定義される。
【0243】
したがって、本発明による製造方法は、1-1-アミノ-1,3,3-トランス-5-テトラメチルシクロヘキサンの不純物関して高純度で1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンを形成することを可能にする。
【0244】
適宜に、本発明による製造方法は、さらにステップ(viii)を含みうる。:
(viii) ステップ(vii)にて得られる1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンを、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン・メシラートとは異なる、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンの、製剤学的に許容される塩または誘導体に変換する。
【0245】
<さらなる態様>
上記に規定されるような溶媒はネラメキサン・メシラートの結晶化に使用されてもよい。これらの溶媒は、種々に相異なる性質を示す生成物をもたらしうる。例えば、収率、結晶形、かさ密度、流動性、及び、医薬組成物の処方に対する適合性において種々の性質を示す生成物をもたらしうる。
【0246】
結晶形は、例えば、形成されたメシラートの流動性、またはそのかさ密度に影響を及ぼする。これら両特性は、技術的な見地から興味深いものでありうる。往々にして、生成物には、医薬組成物に加工するための良好な流動性と、保存の要件のための、比較的高いかさ密度とを示すことが求められる。
【0247】
一態様において、本発明は、、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロ-ヘキサンメシラートの結晶化及び/または再結晶化のためのアニソールの使用に関係する。
【0248】
他の態様において、本発明は、クメン; メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン; n-ブチル・アセテートを、場合により水とともに用いることに関連している。
【0249】
一態様において、本発明は、星形である、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンメシラート結晶に関する。
【0250】
一態様において、本発明は、星形である1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンメシラート結晶であって、以下のステップ(i)及び/またはステップ(iii)及び/またはステップ(iv)からなる(場合によりステップ(v)をも含む)方法によって得ることのできるものに関する。:
(i)1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンとメタン・スルホン酸とを、アニソール、クメン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンまたはn-ブチル・アセテートであって水を含みうる溶媒中にて反応させること。;及び/または、
(iii)ステップ(i)及び/またはステップ(iii)中にて形成された生成物を、アニソール、クメン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンまたはn-ブチル・アセテート(これれらは水を含みうる)にて再度結晶化させること。;
(iv)ステップ(i)及び/またはステップ(iii)に1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン・メシラートを加えること。;
(v)ステップ(iii)で形成された生成物について、凝集解除、または、粉砕を施すこと。
【0251】
一実施形態において、溶媒はアニソールである。
【0252】
他の実施形態において、溶媒は、クメン、メチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトンのグループから選ばれる。
【0253】
他の実施形態において、溶媒は、メチルエチルケトンまたはメチルイソブチルケトンであって、水を含みうるものである。
【0254】
他の態様において、本発明は1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン・メシラート粒子であって、粒子の総重量の20%未満が10μm以下の粒径を有するか、または、15%未満が10μm以下の粒径を有するか、または、10%未満が10μm以下の粒径を有し、少なくともステップ(i)及び/またはステップ(iii)を含むプロセスによって得られうるものに関する。:
(i) 1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンとメタン・スルホン酸とを、アニソール、クメン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンまたはn-ブチル・アセテートであって水を含みうる溶媒中にて反応させること。;及び/または
(iii) ステップ(i)で形成された生成物を再度結晶化させること。
【0255】
一実施形態において、溶媒はアニソールである。
【0256】
他の実施形態において、溶媒は、クメン、メチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトンのグループから選ばれる。
【0257】
他の実施形態において、溶媒はメチルエチルケトンまたはメチルイソブチルケトンであり、水を含みうる。
【0258】
一の態様において、本発明は、星形である1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンメシラート結晶と、薬剤学的に許容可能な生理非活性添加剤とを含む医薬組成物に関する。
【0259】
他の態様において、本発明は、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンメシラート粒子であって、粒子の総重量の20%未満が10μm以下の粒径を有するか、または、15%未満が10μm以下の粒径を有するか、または、10%未満が10μm以下の粒径を有するものと、薬剤学的に許容可能な生理非活性添加剤とを含む医薬組成物を製造する方法に関する。
【0260】
さらに他の態様において、本発明は、星形である1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンメシラート結晶と、少なくとも一つの薬剤学的に許容可能な生理非活性添加剤とを含む医薬組成物に関する。
【0261】
一態様において、本発明は、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンメシラート粒子であって、粒子の総重量の20%未満が10μm以下の粒径を有するか、または、15%未満が10μm以下の粒径を有するか、または、10%未満が10μm以下の粒径を有するものを含み、任意に追加可能なものとしての少なくとも一つの薬剤学的に許容可能な生理非活性添加剤を含みうる医薬組成物に関する。
【0262】
他の態様において、本発明は、1-アミノ-1,3,3-トランス-5-テトラメチルシクロヘキサンを含まない1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン、またはその塩を含み、任意に追加可能なものとしての少なくとも一つの薬剤学的に許容可能な生理非活性添加剤を含みうる医薬組成物に関する。
【0263】
さらなる態様において、本発明は、(1) 1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンメシラート結晶であって星形であるものからなるか、または(2) 1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンメシラート粒子であって、粒子の総重量の20%未満が10μm以下の粒径を有するか、または、15%未満が10μm以下の粒径を有するか、または、10%未満が10μm以下の粒径を有するものからなるか、または(3) 1-アミノの-1,3,3-トランス-5-テトラメチルシクロヘキサンを含まない1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンからなり、薬物として用いるものに関する。
【0264】
さらなる態様において、本発明は、(1) 1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンメシラート結晶であって星形であるものからなるか、または(2) 1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンメシラート粒子であって、粒子の総重量の20%未満が10μm以下の粒径を有するか、または、15%未満が10μm以下の粒径を有するか、または、10%未満が10μm以下の粒径を有するものからなるか、または(3) 1-アミノの-1,3,3-トランス-5-テトラメチルシクロヘキサンを含まない1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンからなり、耳鳴りの治療剤として用いるものに関する。
【0265】
本願で用いられるように、用語「耳鳴り」は、主観的及び客観的な耳鳴りの症状、並びに、急性型、亜急性型及び慢性型を含む。
【0266】
さらなる態様において、本発明は、本発明は、(1) 1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンメシラート結晶であって星形であるもの、または(2) 1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンメシラート粒子であって、粒子の総重量の20%未満が10μm以下の粒径を有するか、または、15%未満が10μm以下の粒径を有するか、または、10%未満が10μm以下の粒径を有するもの、または(3) 1-アミノの-1,3,3-トランス-5-テトラメチルシクロヘキサンを含まない1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンからなるもの、を用いて耳鳴り治療用医薬組成物を製造する方法に関する。
【0267】
さらなる態様において、本発明は、耳鳴りの治療を必要とする患者における耳鳴りを治療する方法であって、患者に、下記(1)〜(3)のいずれかの有効量を投与することを含む方法に関する。すなわち、(1) 1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンメシラート結晶であって星形であるもの、または(2) 1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンメシラート粒子であって、粒子の総重量の20%未満が10μm以下の粒径を有するか、または、15%未満が10μm以下の粒径を有するか、または、10%未満が10μm以下の粒径を有するもの、または(3) 1-アミノの-1,3,3-トランス-5-テトラメチルシクロヘキサンを含まない1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンからなるもの、を投与することを含む方法に関する。
【0268】
他の態様において、本発明は、ステップ(viii)によって得られうる薬剤学的に許容可能な塩に関する。
【0269】
他の態様において、本発明は、薬剤として用いられる、ステップ(viii)によって得られうる、薬剤学的に許容可能な塩に関する。
【0270】
他の態様において、本発明は、耳鳴りの治療剤として用いられる、ステップ(viii)によって得られうる、薬剤学的に許容可能な塩に関する。
【0271】
他の態様において、本発明は、ステップ(viii)によって得られうる、薬剤学的に許容可能な塩を用いて、耳鳴りの治療用の医薬組成物を製造する方法に関する。
【0272】
他の態様において、本発明は、ステップ(viii)によって得られれうる薬剤学的に許容可能な塩を患者に有効量だけ投与することを含む、治療を必要とする患者の耳鳴りを治療する方法に関する。
【0273】
<本発明の追加の態様>
さらには、以下について開示する。すなわち、メタン・スルホン酸に1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンを溶媒中にて反応させるステップ(i)を含む1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンメシラートを製造する方法であって、該溶媒は、アセトン、アニソール、酢酸ブチル、t-ブチル・メチル・エーテル、クメン、ジメチル・スルホキシド、酢酸エチル、2,2-ジメトキシプロパン・エーテル、ギ酸エチル、ヘプタン、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、酢酸メチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチル・ケトン、ペンタン、酢酸プロピル、テトラヒドロフラン、1,1-ジエトキシプロパン、1,1-ジメトキシメタン、イソオクタン、ジイソプロピルエーテル、メチル・イソプロピルケトン及びメチルテトラヒドロフランのうちから選択される一の溶媒または2つ以上の溶媒の混合物である。
【0274】
一実施形態において、前記溶媒が、アニソール、t-ブチル・メチルエーテル、クメン、ジメチル・スルホキシド、ヘプタン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ペンタン、テトラヒドロフラン、またこれらの混合物である。
【0275】
他の実施形態において、前記溶媒が、アニソール、または、アニソールと上記に規定されるような他の溶媒の少なくとも1つとの混合物である。
【0276】
他の実施形態において、溶媒の体積についての、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンの重量に対する比率は、5:1〜50:1(ml/g)である。
【0277】
他の実施形態において、ステップ(i)での温度は−20〜120℃である。
【0278】
他の実施形態において、前記製造方法は、ステップ(i)の前にステップ(a)〜(c)を含む。;
(a) イソホロンを3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキサノンに変換する。;
(b) 3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキサノンを1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサノールに変換する。;
(c) 1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサノールを1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンに変換する。
【0279】
さらに他の実施形態において、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンメシラートは、結晶化ステップ(ii)によって、ステップ(i)で生産された反応混合物から分離される。
【0280】
他の実施形態において、結晶化は、ステップ(i)の反応混合物の温度を下げるか、反溶媒を加えるか、またはステップ(i)で用いられた溶媒を部分的に蒸留操作により除去することにより実現される。
【0281】
他の実施形態において、ステップ(i)の混合物の温度は、−20〜50℃の範囲内に下げられる。
【0282】
さらに他の実施形態において、本発明は、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンを結晶化するのに用いるものとしての、アニソール、または、アニソールと上記に規定される他の溶媒のうちの少なくとも1つとの混合物に関する。
【0283】
本発明による製造方法は、ネラメキサン・メシラートを高収率で得るとともに、粒径が、直接の錠剤成形を可能にするのに適しているもの、すなわち、錠剤成形の前に攪拌を行わずに錠剤成形を可能にするのに適しているものを得るのを可能にする。これは、経済的な工業プロセスには特に有利である。
【0284】
また、ネラメキサン・メシラートは、特にはアルキル・メシラートからなる不純物に関して、高純度で得られる。こののような不純物は、毒作用が疑われることにより、合理的に実現可能な程度に、なるべく少なくするべきである。
【0285】
一実施形態において、本発明は、100ppm以下のメタン・スルホン酸アルキル・エステルを含む1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンメシラートに関する。
【0286】
次の製造方法も開示する。すなわち、メタン・スルホン酸と1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンとを溶媒中にて反応させるステップ(i)を含む1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンメシラートを製造する方法であって、該溶媒が、アセトン、アニソール、酢酸ブチル、t-ブチル・メチルエーテル、クメン、ジメチルスルホキシド、酢酸エチル、エチルエーテル、ギ酸エチル、ヘプタン、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、酢酸メチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ペンタン、酢酸プロピル、テトラヒドロフラン、1,1-ジエトキシプロパン、1,1-ジメトキシメタン、2,2-ジメトキシプロパン、イソオクタン、イソプロピルエーテル、メチルイソプロピルケトン及びメチルテトラヒドロフランのうちから選ばれる1つまたは2つ以上の溶媒の混合物であるものを開示する。上記に列挙された溶媒のうちのいくつかは、米国保健社会福祉省らによって出された、ICHガイドライン「産業界のためのガイダンス」(2003年11月の改訂版1「Q3C -表及びリスト」)により「クラス3の溶媒」に分類されている。
【0287】
一実施形態において、前記溶媒は、アセトン、アニソール、t-ブチルメチルエーテル、クメン、ジメチル・スルホキシド、ヘプタン、メチルエチルケトン、含水メチルエチルケトン(含水量が例えば0.01〜5重量%)、メチルイソブチルケトン、ペンタン、テトラヒドロフラン及びこれらの混合物の少なくとも1つから選ばれる。
【0288】
さらなる実施形態において、前記溶媒は、アニソールであるか、または、アニソールと、アセトン、酢酸ブチル、t-ブチル・メチルエーテル、クメン、ジメチル・スルホキシド、酢酸エチル、エーテル、ギ酸エチル、ヘプタン、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、酢酸メチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチル・ケトン、ペンタン、酢酸プロピル、テトラヒドロフラン、1,1-ジエトキシプロパン、1,1-ジメトキシメタン、2,2-ジメトキシプロパン、イソオクタン、ジイソプロピルエーテル、メチルイソプロピルケトン及びメチルテトラヒドロフランのうちの少なくとも1つとの混合物である。
【0289】
一実施形態において、前記混合物はアニソールとヘプタンの混合物である。
【0290】
さらなる実施形態において、前記溶媒は、0.01〜5重量%の水を含むメチルエチルケトンである。ここで、追加選択的に、ステップ(i)による反応を、ネラメキサン・メシラートの種が存在する状態で行うことができる。これらの種は、ネラメキサンと溶媒の混合物へのメタン・スルホン酸の添加の前、添加とともに、または、添加の後に加えられうる。
【0291】
他の実施形態において、水の量は、0.1〜5重量%、0.1〜3重量%、0.5〜3重量%、0.5〜2.5重量%、または1〜2重量%である。
【0292】
上記に概説される方法において、本発明の一態様では、前記ステップ(i)にて、溶媒の体積についての、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンの重量に対する比率が、5:1〜50:1(ml/g)である。
【0293】
一実施形態において、溶媒の体積についての、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンの重量に対する比率は、5:1〜20:1(ml/g)である。
【0294】
別の実施形態において、溶媒の体積についての、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンの重量に対する比率は、5:1〜10:1(ml/g)である。
【0295】
別の実施形態において、溶媒の体積についての、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンの重量に対する比率は、5:1〜8:1(ml/g)である。
【0296】
本発明の他の態様は、ステップ(i)での温度が−20〜120℃である方法に関する。
【0297】
本発明の一実施形態において、ステップ(i)の内の温度が、50℃と80℃との間にあるか、70〜80℃であるか、または、80℃である。
【0298】
本発明の他の態様は、本願の背景技術の項で示した反応スキームによる方法によって、イソホロンから出発して、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンが得られる方法に関連する。
【0299】
したがって、一実施形態において、ステップ(i)に先立ってステップ(a)〜(c)を含む方法に関する。:
(a) イソホロンを3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキサノンに変換する。;
(b) 3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキサノンを1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサノールに変換する。;
(c) 1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサノールを1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンに変換する。
【0300】
本発明の一実施形態は、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンメシラートが、ステップ(i)の反応混合物から、結晶化のステップ(ii)によって分離される方法に関する。
【0301】
結晶化は、ステップ(i)の反応混合物の温度を下げるか、反溶媒を加えるか、またはステップ(i)で使用される溶媒を蒸留操作により部分的に除去するか、またはこれらの手段の2つ以上の組み合わせにより実現されうる。
【0302】
用語「反溶媒」は、ステップ(i)で形成された付加塩に加えられた際、メシラートの沈殿または結晶化を引き起こす、あらゆる溶媒を包含する。
【0303】
一実施形態において、結晶化を実現するために、温度は、−20〜50℃に下げられうる。一実施形態において、結晶化の目的温度もしくは終結温度が、5〜15℃にある。さらなる一実施形態において、結晶化の目的温度が20℃である。他の一実施形態において、結晶化の目的温度が10℃である。
【0304】
本発明の一実施形態において、結晶化の目的温度での攪拌時間は3時間以下である、例えば、10分〜2時間である。
【0305】
本発明の一実施形態において、メタン・スルホン酸はステップ(i)の溶媒へ加えられる。
【0306】
本発明の一実施形態において、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンメシラートは、結晶の形態であり、該結晶は、当技術分野で知られているようなレーザー回折で測定した場合に、粒径分布d(90)が、100〜500μm、100〜300μm、150〜300μm、200〜275μm、または200〜250μmの範囲内である。
【0307】
さらなる実施形態において、結晶の形をしている1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンメシラートは、粒径分布d(90)が、200〜300μmの範囲内にあり、10%以下の粒子が、55μm以下の粒径、例えば5μm以下の粒径を有している。
【0308】
生じる結晶の粒径範囲は、錠剤に成形する前に、さらなる粉砕が不必要となるのに十分であるか、または十分である可能性のあるものである。しかし、本件請求の範囲に記載の製造方法により得られた粒子について、粉砕及び篩い分けを行うことは、十分に本発明の範囲内にある。
【0309】
本発明の一実施形態において、アニソールが溶媒として使用される。また、結晶化は、得られるネラメキサン・メシラートの粒径が直接の錠剤成形を可能にするようなものになるように行われる。すなわち、ネラメキサン・メシラートが、粉砕及び篩い分けの不要なものとして得られるように行われる。
【0310】
この点に関して、500μmを超える粒径の結晶は、比較的粗く硬いことから、錠剤の形態のような医薬組成物へと直接圧縮するのには、往々にして困難が伴うことに注目すべきである。圧縮成形の前に、このような粗く硬い結晶は、当技術分野で知られている適当な手段によって壊されなければならない可能性がある。
【0311】
一実施形態において、本発明は、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンメシラートの結晶化のためのアニソールの使用に関係する。
【0312】
一実施形態において、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンメシラートは、アニソールとヘプタンとの混合物を用いて得ることもできる。
【0313】
一実施形態における本発明は、本願請求の範囲に記載の製造方法により性ぞうされるものにおいて、1重量%以下の溶媒を含む1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンメシラートに関する。
【0314】
一実施形態において、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンメシラートは、0.50重量%以下の残留溶媒を含む。さらなる一実施形態において、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンメシラートは、0.05重量%以下の残留溶媒を含む。
【0315】
本発明による一実施形態において、、上記に規定した前記溶媒のうちの溶媒または2つ以上の混合溶媒中に、溶解、分散、懸濁または乳化される。溶解、分散、懸濁または乳化に続き、メタン・スルホン酸が、メシラートを形成すべく加えられる。
【0316】
一実施形態において、メタン・スルホン酸は、前記の溶媒のうちの溶媒または2つ以上の混合溶媒についての溶液の形態にて、加えられる。ここで、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンのための、前記溶媒のうちの溶媒または2つ以上の混合溶媒と、メタン・スルホン酸のための、前記溶媒のうちの溶媒または2つ以上の混合溶媒とは、互いに独立に選択しうる。
【0317】
一実施形態において、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンのための溶媒およびメタン・スルホン酸のための溶媒が、アニソールであるか、またはアニソールを含む。
【0318】
一実施形態において、沈殿及び/または結晶化したメシラートが、ろ過によって反応混合物から分離されうる。
【0319】
以下において、本発明の説明を、下記の実施例に関連して行う。これら実施例は実例を示す目的でのみ与えられるものであり、本発明がこれらの実施例に限定されると解すべきでなく、ここで与えられた開示の結果として明らかとなった、あらゆる変形、全ての変形を包含すると解釈すべきである。以下の材料及び方法が、下記の実施例との関連で与えられるが、本発明によって包含される材料と方法論の多様性を制限するものでない。
【実施例】
【0320】
<例1>反応ステップ(i)の溶媒としてアニソールを使用:
上方からの攪拌機、温度計及び底部排出バルブを備えた、ジャケット付の250mlの実験室用3つ首ガラス反応器に、15.0g(1当量、88.59mmol)の1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチル-シクロヘキサンと、75.0mlのアニソールとを加えた。該混合物を80℃まで加熱した。この混合物に、80〜85℃の間で30〜40分の間に、22.5mlのアニソール中の5.76ml(1.0当量、88.59mmol)のメタン・スルホン酸を加えた。メタン・スルホン酸の添加後、反応混合物を、50℃で1時間撹拌した。反応混合物は、プログラム可能なフーバー社のサーモスタットを用いて、4時間の間に10℃まで冷却した。混合物を、10℃でさらに2時間撹拌した。沈殿し結晶化した生成物を濾過し、アニソールで2度洗浄した。生成物(1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンメシラート)は、恒量になるまで、60℃で一晩乾燥した。メシラート塩の融点は、175℃(キャピラリー法)である。生成物の収率は91%である。
【0321】
<例2>例1において得られたネラメキサン・メシラートの粒径分布:
例1の方法で得られた結晶について、結晶のサイズおよびサイズ分布を分析した。
【0322】
市販のMalven Mastersizer 2000を用いた。サンプルは菜種油中に分散する。結果は以下のとおりである。
【表2】

【0323】
粒径が10μm以下の粒子の総量は、重量で1%未満である。粒径分布および粒径は、従来の方法によって錠剤に加工することをせずに、生成物を直接用いるのに適している。
【0324】
<例3>反応ステップ(i)及び種形成ステップ(iv)の溶媒としてアニソールを使用:
上方からの攪拌機、温度計及び底部排出バルブを備えた、ジャケット付の250mlの実験室用3つ首ガラス反応器に、15.0g(1当量、88.59mmol)の1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチル-シクロヘキサンと、75.0mlのアニソールとを加えた。該混合物を80℃まで加熱した。この混合物に、80〜85℃の間で30〜40分の間に、22.5mlのアニソール中の5.76ml(1.0当量、88.59mmol)のメタン・スルホン酸を加えた。メタン・スルホン酸の添加後、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンメシラートを加えた。
【0325】
反応混合物は、プログラム可能なフーバー・サーモスタットを用いて、4時間の間に20℃まで冷やされる。反応混合物は、プログラム可能なフーバー社のサーモスタットを用いて、4時間の間に10℃まで冷却した。混合物を、20℃でさらに2時間撹拌した。沈殿し結晶化した生成物を濾過し、アニソールで2度洗浄した。生成物(1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンメシラート)は、恒量になるまで、60℃で一晩乾燥した。
【0326】
図1は分離された星形の結晶を示す。それぞれ、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン・メシラートの種を、1%(重量/重量)、2.5%、5%及び7.5%加えた場合を示す。
【0327】

粒径分布は、以下のとおりである(5重量%だけ種を添加)である:
【表3】

【0328】
粒径分布および粒径は、従来の方法によって錠剤に加工することをせずに、生成物を直接用いるのに適している。
【0329】
<例4>反応ステップ(i)及び結晶化ステップ(ii)の溶媒としてメチルエチルケトンを使用:
上方からの攪拌機、温度計及び底部排出バルブを備えた、50Lのスチール反応器に、3.33kgの1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチル-シクロヘキサンと、30.0Lのメチルエチルケトンを加えた。該混合物を50〜55℃まで加熱した。該混合物に、1.99kgのメタン・スルホン酸を、60分以内に加え、温度を50〜55℃に維持した。メタン・スルホン酸の添加後、反応混合物を、50〜55℃で1時間撹拌した。反応混合物を3時間以内に20〜25℃まで冷却した。混合物を、20〜25℃でさらに1時間攪拌した。沈殿し結晶化した生成物を濾過し、メチルエチルケトンで2度洗浄した。単離した1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンメシラートを、恒量になるまで、減圧下に50℃で乾燥し、5kgの無色の結晶を得た。
【0330】
<例5>反応ステップ(i)及び再結晶化ステップ(iii)の溶媒としてメチルエチルケトンを使用:
上方からの攪拌機、温度計及び底部排出バルブを備えた、ジャケット付の1000mlの実験室用3つ首ガラス反応器に、15.0g(1当量、88.59mmol)の1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチル-シクロヘキサンと、330mlのメチルエチルケトンとを加えた。該混合物を80℃まで加熱した。この混合物に、80〜85℃の間で30〜40分の間に、22.5mlのアニソール中の5.76ml(1.0当量、88.59mmol)のメタン・スルホン酸を加えた。メタン・スルホン酸の添加後、反応混合物を、80℃で1時間撹拌した。反応混合物は、プログラム可能なフーバー社のサーモスタットを用いて、4時間の間に10℃まで冷却したが、この際、ネラメキサン・メシラートが、結晶化された形態での沈殿を開始した。混合物を、10℃でさらに2時間撹拌した。沈殿し結晶化した生成物を濾過し、メチルエチルケトンで2度洗浄した。得られた1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンメシラートを、恒量になるまで、60℃で一晩乾燥した。メシラート塩の融点は、175℃(キャピラリー法)である。生成物の収率は95%である。
【0331】
<例6>
反応ステップ(i)、結晶化ステップ(ii)および再結晶化ステップ(iii)中のアニソールの使用:
<ステップ(i)による反応、及びステップ(ii)による結晶化>
攪拌機、温度調節機構及び底部排出バルブを備えた2.500Lの反応器に、762kgのアニソールと、110kgの、蒸留して得た1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチル-シクロヘキサンとを加えた。該混合物を、20〜30℃の温度で30分撹拌した。攪拌に引き続いて、該混合液を、反応器から排出し、メッシュ・サイズが0.65μmのカートリッジ・フィルタに通してろ過を行った。ろ過された溶液は、218kgのアニソールで希釈し、メッシュ・サイズが0.65μmのカートリッジ・フィルタを通して再ろ過した。反応器には、ろ過した混合物を再度仕込んだ。混合物は、45〜55rpmで撹拌し、80〜82℃の温度に加熱した。62.5kgのメタン・スルホン酸と54kgのアニソールとを撹拌して得た混合物を、60〜70分の間に、次のような混合物に加えた。すなわち、アニソール中にネラメキサンを撹拌して加熱した混合物をメッシュ・サイズが0.65μmのカートリッジ・フィルタに通してろ過したものに加えた。メタン・スルホン酸が仕込まれた後、カートリッジ・フィルタは、別途の54kgのアニソールで洗浄した。反応器中の混合物は、50〜70分間、45〜55rpmで80〜82℃の間の温度にて撹拌した。続いて、該混合物を、28℃と32℃の間の温度にまで、2.5〜3.5時間の間に冷却した。混合物をさらに2時間攪拌した。攪拌に引き続いて、混合物を、3つの部分に分けて遠心分離した。遠心分離した各部分について、50kgのアニソールで3回、それぞれ洗浄を行った。
【0332】
<ステップ(iii)による再結晶>
反応器に、上記の遠心分離によって得られた170kgのメシラートと1683kgのアニソールとを、再度仕込んだ。該混合物を、70〜75rpmの攪拌速度にて、88〜90℃の温度に加熱した。該温度に達した後に、該混合物を、さらに60分間撹拌した。続いて、該混合物を、70〜75rpmの攪拌速度で1.5〜2時間の間に28℃と32℃の間の温度にまで冷却した。該混合物を、70〜75rpmの攪拌速度で28℃と32℃の間の温度にて、さらに2時間撹拌した。生成物は、上述のようにして遠心分離した。
【0333】
最初の再結晶化ステップの後、1584kgのアニソール中の160kgの再度結晶化した生成物は、最初の再結晶化ステップに記載したと同様にして、再度の結晶化ステップに供した。該混合物を、70〜75rpmの攪拌速度にて、88〜90℃の温度に加熱した。該温度に達した後に、該混合物を、さらに60分間撹拌した。続いて、該混合物を、70〜75rpmの攪拌速度で1.5〜2時間の間に28℃と32℃の間の温度にまで冷却した。該混合物を、70〜75rpmの攪拌速度で28℃と32℃の間の温度にて、さらに2時間撹拌した。生成物は、上述のようにして遠心分離して洗浄した。
【0334】

生成物を、約10mbarの減圧下に55〜65℃で乾燥した。白い木摺状の結晶は融点が175.08℃であった (DSC法; 図6)。
【0335】
生成物はフリーの塩基に変換される。また、純度試験はガスクロマトグラフィー分析によって行なわれる:
1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン >98.5%
1-ヒドロキシ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン ≦0.10%
1-N-クロロアセトアミド-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン ≦0.10%
1-ニトロ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン ≦100ppm
1-アミノ-1,3,3-トランス-5-テトラメチルシクロヘキサン 検知されず。
【0336】
<例7>
反応ステップ(i)及び結晶化ステップ(ii)でのメチルエチルケトン/水混合物の使用:
反応器に、168kgの1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチル-シクロヘキサンと、1680kgのメチルエチルケトンと、6Lの水とが仕込まれる。撹拌された混合物に、1.5kgの1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチル-シクロヘキサン・メシラートが加えられる。続いて101kgのメタン・スルホン酸、撹拌された混合に加えられる。メタン・スルホン酸が加えられるとすぐに、11-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチル-シクロヘキサン・メシラートは結晶し始める。沈殿しつつあるか、または既に沈殿した生成物は、酸の追加中に連続的に除去され、湿式粉砕される。粉砕された生成物は、反応器に再度仕込まれる。沈殿の完了後、生成物は遠心分離機され、メチルエチルケトンで洗浄される。生成物は、減圧下に60℃で乾燥される。248kgの生成物が、白色から無色の結晶形態で得られる。結晶は柱状である。生成物は173℃と175℃(キャピラリー法)との間で溶融する。
【0337】
<例8>
溶媒としてクメンを用いるステップ(iii)によるネラメキサン・メシラートの再結晶:
20mlのクメンが、104°Cで1gのネラメキサン・メシラートを溶かすのに必要である。該混合物は、周囲温度まで冷却される。再度結晶化した生成物は、遠心分離によって分離される。得られた結晶は柱状である。
【0338】
<例9>
ステップ(iii)によるネラメキサン・メシラートの再結晶化、及び、溶媒としてクメンを用いたステップ(iv)による種入れ:
1gのネラメキサン・メシラートが、104℃で20mlのクメンに溶かされる。混合物が90℃まで冷却される。ここに、重量で5%のネラメキサン・メシラートが加えられる。続いて、該混合物が周囲温度まで冷却される。再度結晶化した生成物は、95%の収率で遠心分離により分離される。得られた結晶は星形である。
【0339】
<例10>
溶媒としてメチルエチルケトンを用いたステップ(iii)によるネラメキサン・メシラートの再結晶:
22mlのメチルエチルケトンが、80℃で1gのネラメキサン・メシラートを溶かすのに必要である。該混合物が周囲温度まで冷却される。再度結晶化した生成物は、遠心分離によって分離される。得られた結晶は、板状の形態を有し、柱状結晶と混じり合っている。
【0340】
<例11>
ステップ(iii)によるネラメキサン・メシラートの再結晶、及び、溶媒としてメチルエチルケトンを用いたステップ(iv)による種入れ:
1gのネラメキサン・メシラートが、80℃で22mlのメチルエチルケトンに溶かされる。該混合物が79℃まで冷却される。ここに、重量で5%のネラメキサン・メシラートが加えられる。続いて、該混合物が周囲温度まで冷却される。再度結晶化した生成物は、95%の収率で遠心分離により分離される。得られた結晶は星形である。
【0341】
<例12>
溶媒としてメチルイソブチルケトンを用いたステップ(iii)によるネラメキサン・メシラートの再結晶化:
20mlのメチルイソブチルケトンが、100℃で1gのネラメキサン・メシラートを溶かすのに必要である。該混合物が周囲温度まで冷却される。再度結晶化した生成物は、遠心分離によって分離される。得られた結晶は柱状である。
【0342】
<例13>
ステップ(iii)によるネラメキサン・メシラートの再結晶化、及び、溶媒としてメチルイソブチルケトンを用いステップ(iv)による種入れ:
1gのネラメキサン・メシラートが100°Cで20mlのメチルイソブチルケトンに溶かされる。該混合物が95℃まで冷却される。ここに、重量で5%のネラメキサン・メシラートが加えられる。続いて、該混合物が周囲温度まで冷却される。再度結晶化した生成物は、95%の収率で遠心分離により分離される。得られた結晶は星形である。
【0343】
<例14>
溶媒としてn-ブチル・アセテートを用いたステップ(iii)によるネラメキサン・メシラートの再結晶:
23mlのn-ブチル・アセテートが、100℃で1gのネラメキサン・メシラートを溶かすのに必要である。該混合物が周囲温度まで冷却される。再度結晶化した生成物が、遠心分離によって分離される。得られた結晶は柱状である。
【0344】
<例15>
ステップ(iii)によるネラメキサン・メシラートの再結晶化、及び、溶媒としてn-ブチル・アセテートを用いステップ(iv)による種入れ:
1gのネラメキサン・メシラートが、100℃で23mlのn-ブチル・アセテートに溶かされる。該混合物が95の℃まで冷却される。重量で5%のネラメキサン・メシラートが加えられる。続いて、該混合物が周囲温度まで冷却される。再度結晶化した生成物は、96%の収率で遠心分離により分離される。得られた結晶は星形である。
【0345】
<例16>
溶媒としてアニソールを用いたステップ(iii)によるネラメキサン・メシラートの再結晶化:
10mlのアニソールが、87℃で1gのネラメキサン・メシラートを溶かすのに必要である。該混合物が周囲温度まで冷却される。再度結晶化した生成物は、遠心分離によって分離される。得られた結晶は柱状である。
【0346】
<例17>
ステップ(iii)によるネラメキサン・メシラートの再結晶化、及び、溶媒としてアニソールを用いたステップ(iv)による種入れ:
1gのネラメキサン・メシラートが、90℃で10mlのアニソールに溶かされる。該混合物が85℃まで冷却される。ここに、粉砕されたネラメキサン・メシラートが加えられる。続いて、該混合物が周囲温度まで冷却される。再度結晶化した生成物は、減圧濾過によって分離され、恒量(収率約95%)になるまで60℃で減圧下に乾燥される。得られた結晶は星形である。
【0347】
下表は、種の量に対する粒径分布の依存性を示す。粒子状物質の量は、重量でそれぞれ5%未満である。
【表4】

【0348】
<例18>
ステップ(iii)によるネラメキサン・メシラートの再結晶化、及び、溶媒としてテトラヒドロフランを用いたステップ(iv)による種入れ:
20mlのテトラヒドロフランが、60℃で1gのネラメキサン・メシラートを溶かすのに必要である。該混合物が57℃まで冷却される。ここに、重量で5%のネラメキサン・メシラートが加えられる。続いて、該混合物が周囲温度まで冷却される。再度結晶化した生成物は、89%の収率で遠心分離により分離される。得られた結晶は板状の形態を有する
<例19(比較)>
溶媒としてトルエンを用いたステップ(iii)によるネラメキサン・メシラートの再結晶:
20mlのトルエンが、80℃で1gのネラメキサン・メシラートを溶かすのに必要である。該混合物が周囲温度に冷却される。再度結晶化した生成物が、遠心分離によって分離される。
【0349】
<例20>
ステップ(iii)によるネラメキサン・メシラートの再結晶化、及び、溶媒としてトルエンを用いたステップ(iv)による種入れ:
1gのネラメキサン・メシラートが、80℃で20mlのトルエンに溶かされる。該混合物が79℃まで冷却される。ここに、重量で5%のネラメキサン・メシラートが加えられる。続いて、該混合物が周囲温度に冷却される。再度結晶化した生成物は、遠心分離により分離される。得られた結晶は星形である。
【0350】
<例21(比較)>
溶媒としてアセトン/水(99/1(体積/体積))混合物を用いたステップ(iii)によるネラメキサン・メシラートの再結晶:
100mlの、アセトンと水との混合物が40℃で1gのネラメキサン・メシラートを溶かすのに必要である。該混合物が周囲温度に冷却される。再度結晶化した生成物は、66%の収率で遠心分離によって分離される。
【0351】
<例22(比較)>
溶媒としてジクロロメタンを用いたステップ(iii)によるネラメキサン・メシラートの再結晶:
55mlのジクロロメタンが、40℃で1gのネラメキサン・メシラートを溶かすのに必要である。該混合物が周囲温度に冷却される。再度結晶化した生成物は、87%の収率で遠心分離により分離される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記ステップ(i)からなる1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンの製造方法。
ステップ(i):1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンをメタン・スルホン酸に、下記より選択される一つの溶媒、または2つ以上の溶媒の混合物中にて反応させる。すなわち、アニソール,クメン; ペンタン,ヘキサン,ヘプタン,イソオクタン; 酢酸メチル,プロピル・アセテート,イソプロピル・アセテート,n-ブチル・アセテート,イソブチル・アセテート; メチルエチルケトン,メチルイソプロピルケトン,メチルイソブチルケトン; ジメチルスルホキシド; テトラヒドロフラン,メチルテトラヒドロフラン,1,1-ジエトキシプロパン,1,1-ジメトキシメタン及び2,2-ジメトキシプロパンより選択される一つの溶媒、または2つ以上の溶媒の混合物中にて反応させる。
【請求項2】
ステップ(i)の範囲内での溶媒は、アニソールであるか、または、請求項1に規定された溶媒のうちの少なくと1つの他の溶媒とアニソールとの混合物である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記溶媒は、該溶媒に溶解した水を含む、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記溶媒は、テトラヒドロフラン、1,1-ジエトキシプロパン、1,1-ジメトキシメタン、2,2-ジメトキシプロパン; メチルエチルケトン、メチル・イソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン; 及びこれらの混合物のグループより選ばれる請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
水を、水と溶媒とのトータルの量を基準にして、0.1〜10重量%、または0.1〜8重量%、または0.1〜5重量%、または0.1〜4重量%、または0.1〜2重量%、または0.1〜1重量%含む、請求項3または4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記ステップ(i)中にあっては、溶媒の体積についての、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンの重量に対する比率は、5:1〜50:1(ml/g)である請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
前記ステップ(i)の範囲内での温度は、-20℃〜120℃である請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
前記ステップ(i)の範囲内での温度は、0℃から60℃である請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
溶媒は、アニソール、クメン; ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、イソオクタン; メチルエチルケトン、メチル・イソプロピル・ケトン; メチルイソブチルケトン; テトラヒドロフラン; 及びこれらの混合物のグループから選ばれ、さらに水を含み得る請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
下記ステップ(ii)を含む請求項1〜9のいずれかに記載の製造方法。
ステップ(ii) 結晶化により1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン・メシラートを分離する。
【請求項11】
ステップ(ii)の結晶化は、ステップ(i)の反応混合物の温度を下げるか、反溶媒を加えるか、または、ステップ(i)の溶媒を蒸留操作で部分的に除去することにより行う請求項1〜10のいずれかに記載の製造方法。
【請求項12】
前記ステップ(ii)では、温度が−20℃〜50℃の範囲にまで下げられる請求項10または11に記載の製造方法。
【請求項13】
ステップ(i)またはステップ(ii)の後に、ステップ(iii)〜(v)の少なくとも1つを含む請求項1〜12のいずれかに記載の製造方法。
ステップ(iii): ステップ(i)またはステップ(ii)での生成物について、請求項1、4及び9のいずれかにて規定した一つ以上の溶媒から再結晶化させる。;
ステップ(iv):先のステップ(i)〜(iii)のいずれかにて、1-アミノ-1 ,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン・メシラートを添加する。;
ステップ(v): ステップ(i)〜(iv)のいずれかで形成された生成物について、凝集の解除、及び/または粉砕を行う。
【請求項14】
ステップ(i)及び/またはステップ(iii)における前記溶媒は、アニソール、クメン; メチルエチルケトン、メチル・イソプロピル・ケトン、メチルイソブチルケトン; テトラヒドロフラン ; n-ブチル・アセテート; 及び、これらの混合物のグループから選ばれ、さらに水を含み得る請求項1〜13のいずれかに記載の製造方法。
【請求項15】
前記ステップ(i)の前に次のステップ(a)〜(c)を更に含む請求項1〜14のいずれかに記載の製造方法
(a) イソホロンを3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキサノンに変換する。;
(b) 3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキサノンを1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサノールに変換する。;
(c) 1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサノールを1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンに変換する。
【請求項16】
下記ステップ(vii)を更に含む請求項1〜15のいずれかに記載の製造方法
(vii) 本発明にしたがう製造方法によって得られる1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン・メシラートを、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンに変換する。
【請求項17】
1-アミノ-1,3,3-トランス-5-テトラメチルシクロヘキサンを含まない1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン。
【請求項18】
アニソールを用いるか、または、アニソールと、請求項1にて規定した少なくとも一つの溶媒との混合物を用いる1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン・メシラートの結晶化及び/または再結晶化の方法。
【請求項19】
星形である、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンメシラートの結晶。
【請求項20】
粒子の総重量の20%未満が10μm以下の粒径を有するか、または、15%未満が10μm以下の粒径を有するか、または、10%未満が10μm以下の粒径を有する1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン・メシラート粒子。
【請求項21】
請求項17に記載の1-アミノ-1,3,3-トランス-5-テトラメチルシクロヘキサン、
請求項19に記載の1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンメシラート結晶、または、
請求項20に記載の1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンメシラート粒子を含み、
少なくとも1つの薬剤学的に許容可能な生理非活性添加剤を含みうる医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−524036(P2012−524036A)
【公表日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−505093(P2012−505093)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【国際出願番号】PCT/EP2010/002361
【国際公開番号】WO2010/118889
【国際公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(509295413)メルツ・ファルマ・ゲーエムベーハー・ウント・コ・カーゲーアーアー (14)
【Fターム(参考)】