説明

1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンの塩およびその調製方法

本発明は、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレイン酸塩およびその結晶形1に関する。本発明は、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン(式(A))またはその薬剤的に許容できる塩の調製方法であって、(a)カルボン酸基が活性化された4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)安息香酸の非酸クロライド誘導体と、1−イソプロピル−ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンとを反応させる工程;および(b)任意に1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンの薬剤的に許容できる塩を調製する工程を含んでなる。工程(a)は、典型的には4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)安息香酸のカップリング試薬、好ましくはカルボニルジイミダゾールによる活性化、それに次ぐ1−イソプロピル−ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンとの反応を含んでなる。本発明は、1−イソプロピル−ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンビストリフルオロ酢酸塩も提供する。本発明は、Pが保護基を表す式(III)の化合物の調製方法も提供する。




【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒスタミンH3受容体に親和性を持つヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン誘導体(1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン)の塩およびその調製方法;ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン誘導体の調製に使用可能な中間体の調製方法;ならびにヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン誘導体の調製に使用可能な中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒスタミンH3受容体は主に哺乳動物の中枢神経系(CNS)に発現し、交感神経の一部以外の末梢組織には最低限しか発現しない(Leurs et al., (1998), Trends Pharmacol. Sci. 19, 177-183)。選択的な作用剤またはヒスタミンによるH3受容体の活性化は、ヒスタミン作動性ニューロンおよびコリン作動性ニューロンを含む種々の異なる神経集団からの神経伝達物質の放出を阻害する(Schlicker et al., (1994), Fundam. Clin. Pharmacol. 8, 128-137)。また、インビトロおよびインビボの研究により、H3拮抗剤が認知に関連する大脳皮質および海馬などの脳内領域での神経伝達物質の放出を促進できることが示された(Onodera et al., (1998), In: The Histamine H3 receptor, ed. Leurs and Timmerman, pp255-267, Elsevier Science B.V.)。さらに、文献中の数多くの報告は、齧歯動物モデルにおける五選択課題、物体認識、高架式十字迷路、新規課題の習得、および受動的回避行動を包含するH3拮抗剤(例えば、チオペラミド、クロベンプロピット、シプロキシファンおよびGT−2331)の認知増強特性を示した(Giovanni et al., (1999), Behav. Brain Res. 104, 147-155)。ヒスタミンH3受容体拮抗剤GSK189254は、ラットへの経口投与後に[3H]R−α−メチルヒスタミンのエキソビボでのラットの皮質への結合を阻害し、ある経口投与量では以下の認知パラダイム:受動的回避行動、水迷路、物体認識、および注意セットの移行(attentional set shift)におけるラットの行動を向上させた(A.D. Medhurst et al., J. Pharmacol. Exp. Therap., 2007, 321(3),1032-1045.)。
【0003】
国際公開WO2005/040144A1号公報(Glaxo Group Limited)は、ヒスタミンH3受容体に親和性を持ち、その拮抗剤および/または逆作用剤である一連の1−ベンゾイル−置換ジアゼパニル誘導体またはその薬剤的に許容できる塩を開示しているが、前記明細書中で、アルツハイマー病、認知症(レビー小体型認知症および血管型認知症)、加齢性記憶障害、軽度認知機能障害、認知障害、てんかん、神経因性疼痛、炎症性疼痛、偏頭痛、パーキンソン病、多発性硬化症、脳卒中、および睡眠障害(パーキンソン病関連のナルコレプシーおよび睡眠障害を含む)を含む神経疾患;統合失調症(特に統合失調症の認知障害)、注意欠陥多動性障害、うつ、不安、および中毒を含む精神疾患;ならびに肥満および胃腸疾患を含む他の疾病の治療に有用な可能性があると考えられると述べられている。国際公開WO2005/040144A1号公報は、上記の疾患、特にアルツハイマー病または関連する神経変性疾患などの疾病における認知機能障害の治療または予防における治療物質として使用するための、この一連の化合物またはその塩を開示している。
【0004】
国際公開WO2005/040144A1号公報の実施例10は、以下の方法を利用する、1−(イソプロピル)−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン塩酸塩の調製を開示している:
【化1】

室温のジクロロメタン(5ml)に4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)安息香酸(D6)(222mg)を加えた攪拌している懸濁液を、塩化オキサリル(0.28ml)および10%ジメチルホルムアミドのジクロロメタン溶液(1滴)により処理した。1時間後、溶液を蒸発させ、次いでジクロロメタン(2×5ml)から再蒸発させた。酸クロライドをジクロロメタン(10mL)に再溶解し、1−(イソプロピル)−ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン二塩酸塩(178mg)およびジエチルアミノメチルポリスチレン(3.2mmol/g、938mg)で処理した。一晩攪拌後、混合物をシリカゲルフラッシュカラム[ジクロロメタン中6〜10%のMeOH(10%0.880アンモニア溶液を含む)ステップ勾配]に直接入れた。必要な生成物を含む分画を蒸発させ、次いでジクロロメタンに再溶解し、過剰量の4MのHClジオキサン溶液で処理した。アセトンから結晶化することにより、標題化合物(E10)(225mg)を生じた。MSエレクトロスプレー(+イオン)347(MH)。H NMR δ(DMSO−d6):10.45(1H,m),7.41(2H,d,J=8.5Hz),7.02(2H,d,J=8.5Hz),4.63(2H,m),4.02(1H,m),3.02−3.93(13H,m),2.32(1H,m),1.96(2H,m),1.61(2H,m),1.27(6H,d,J=6.5Hz)。
【0005】
国際公開WO2005/040144A1号公報は、中間体4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)安息香酸(D6)の調製を以下のとおり開示している:
エタノール(10ml)に溶かしたエチル4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)ベンゾアート(D5)(0.73g)の溶液を1MのNaOH(5.84ml)で処理し、混合物を60℃で5時間攪拌した。溶液を室温に冷却し、エタノールを蒸発させた。水層をジクロロメタン(2×10ml)で洗浄し、酸性にした。固体を濾過により除き、水で洗浄し乾燥させ、標題化合物(D6)(0.55g)を生じた。MSエレクトロスプレー(−イオン)221(M−H)。H NMR δ(DMSO−d6):7.87(2H,d,J=8.5Hz),7.05(2H,d,J=8.5Hz),4.69(1H,m),3.85(2H,m),3.50(2H,m),1.98(2H,m),1.59(2H,m)。
【0006】
国際公開WO2005/040144A1号公報は、中間体エチル4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)ベンゾアート(D5)の調製を以下のとおり開示している:
エチル4−ヒドロキシベンゾアート(0.82g)、4−ヒドロキシ−テトラヒドロ−2H−ピラン(0.5g)およびトリフェニルホスフィンをテトラヒドロフラン(50ml)に溶かした氷冷溶液を、ジイソプロピルアゾジカルボキシラート(1.69ml)を滴下して処理した。15分後、冷却浴を外し、反応を一晩室温で静置した。混合物を蒸発させ、トルエンに再溶解して、2Nの水酸化ナトリウム(2×20ml)、水(2×20ml)および塩水(20ml)で連続して洗浄した。乾燥後(硫酸マグネシウム)、溶液を、シリカフラッシュカラム(石油エーテル40−60中の10〜30%酢酸エチルのステップ勾配)に直接入れ、標題化合物(D5)(0.75g)を生じた。H NMR δ(CDCl):7.98(2H,d,J=8.5Hz),6.91(2H,d,J=8.5Hz),4.60(1H,m),4.35(2H,q,J=9.8Hz),3.98(2H,m),3.57(2H,m),2.05(2H,m),1.80(2H,m),1.38(3H,t,J=9.8Hz)。
【0007】
2008年9月4日に出願され、2009年3月12日に国際公開WO2009/030716A1号公報として公開された同時係属中の国際特許出願PCT/EP2008/061664号明細書(Glaxo Group Limited)は、1−(1−メチルエチル)−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ピペラジンまたはその塩、ヒスタミンH3受容体の拮抗剤および/または逆作用剤としてのその使用、ならびに該化合物または塩の調製方法を開示している。
【化2】

【発明の概要】
【0008】
本発明者らは、今般、とりわけ、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンの新規塩およびその結晶形を発見した。
【0009】
したがって、本発明の第1の態様は、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレイン酸塩を提供する。
【0010】
第2の態様において、本発明は、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレイン酸塩の結晶形1を提供する。
【0011】
1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレイン酸の結晶形1は、そのX線粉末回折(XRPD)ディフラクトグラム(以下の本発明の第3および第4の態様において定義)、その固体赤外(IR)スペクトル(以下の本発明の第5および第6の態様において定義)、および/またはその示差走査熱量測定(DSC)サーモグラム(以下の本発明の第7の態様において定義)などの、分光的および/または物理的特性により特性化できる。
【0012】
本発明の他の態様は、とりわけ、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンまたはその薬剤的に許容できる塩(例えば、モノマレイン酸塩または塩酸塩)、および以下により詳細に定義される1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンの調製に有用な化学中間体の調製方法を提供する。
【化3】

【0013】
本発明のもう一つの態様は、例えば化学中間体としての、以下の式を有する1−イソプロピル−ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンビストリフルオロ酢酸塩を提供する。
【化4】

【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、縦軸の強度(カウント)に対して横軸にプロットされた2シータ角(度)を示し、銅KαX線を利用する回折計により、ステップサイズ0.0167°2シータ、ステップあたりの時間31.75秒で、シリコンウェハ(零バックグラウンド)プレートに載せた試料を利用して得られた、例4で調製された1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレイン酸塩の結晶形1のX線粉末回折(XRPD)ディフラクトグラムである(詳細は例5.1参照)。
【図2】図2は、スペクトル領域4000から650cm−1を示す、例3で調製された1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレイン酸塩の結晶形1の固体減衰全反射(ATR)赤外(IR)スペクトルである(詳細は例3参照)。
【図3】図3は、1800から650cm−1の「指紋」スペクトル領域を示す、例3で調製された1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレイン酸塩の結晶形1の固体減衰全反射(ATR)赤外(IR)スペクトルである(詳細は例3参照)。
【図4】図4は、加熱速度毎分約10℃を利用する熱量計を利用して大気圧で窒素気流下測定された、例4で調製された結晶性1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレイン酸塩の示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムである(詳細は例5.2参照)。
【図5】図5は、25℃で窒素下測定された、横軸の相対湿度に対して縦軸に最小質量に対する質量(%)をプロットした、例4で調製された1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレイン酸塩の結晶形1の蒸気収着量測定(GVS)グラフである(詳細は例5.3参照)。
【図6】図6は、25℃で窒素下測定された、横軸の相対湿度に対して縦軸に最小質量に対する質量(%)をプロットした、例2パートC(再結晶による精製前の試料)で調製された「動的固体」1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン塩酸塩の蒸気収着量測定(GVS)グラフである(詳細は例5.4参照)。
【図7】図7は、標準化された強度に対して百万分率(ppm)で表すケミカルシフトを示す、例4で調製された1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレイン酸塩のd6−DMSO溶液のH核磁気共鳴(NMR)スペクトルである(詳細は例5.5参照)。
【0015】
(発明の詳細な説明)
第1の態様において、本発明は、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレイン酸塩を提供する。
【0016】
この塩は、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンのモノマレイン酸塩(モノシスブテン二酸付加塩)であり、以下の式を有する。
【化5】

【0017】
本発明は、特に、固体形態、好ましくは結晶形の1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレイン酸塩も提供する。
【0018】
本発明は、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレイン酸塩(例えば結晶形)および薬剤的に許容できるキャリアを含んでなる医薬組成物(例えば、経口投与用)も提供する。
【0019】
第2の態様において、本発明は、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレイン酸塩の結晶形1を提供する。
【0020】
種々の相対湿度での水の収着/脱着を測定する、蒸気収着量測定(GVS)分析は、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレイン酸塩の結晶形1が、25℃で窒素下で相対湿度0〜90%の範囲にわたり、およそ0.4%w/wの水を可逆的に吸着および/または吸収、および/または脱着することを示す(詳細は、図5ならびに例4および5.3参照)。これは、25℃で窒素下で相対湿度0〜90%の範囲にわたり、より多量の水を吸着および/または吸収、および/または脱着する、例2パートCで調製された「動的固体」1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン塩酸塩(再結晶による精製前の試料)に優り、創薬性(drug developability)という点で利点を表す(比較データの詳細は図6および例5.4参照)。
【0021】
1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレイン酸塩の結晶形1は、そのX線粉末回折(XRPD)ディフラクトグラム(以下の本発明の第3および第4の態様において定義)、その固体赤外(IR)スペクトル(以下の本発明の第5および第6の態様において定義)、および/またはその示差走査熱量測定(DSC)サーモグラム(以下の本発明の第7の態様において定義)などの、分光的および/または物理的特性により特性化できる。
【0022】
したがって、第3の態様において、本発明は、実質的に以下の角度2シータ(2θ)の値で、以下のピークの4本以上(好ましくは5本以上、より好ましくは6本以上、または最も好ましくは全て)を含んでなるX線粉末回折(XRPD)ディフラクトグラムを有する、結晶性1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレイン酸塩を提供する:
9.2±0.1°、13.4±0.1°、17.0±0.1°、18.5±0.1°、19.8±0.1°、21.3±0.1°、および27.8±0.1°;
ここで、前記X線粉末回折のディフラクトグラムは、銅KαX線およびステップサイズ0.0167°2シータ以下を利用するX線粉末回折計で測定される。
【0023】
別法としてまたは追加的に、第3の態様において、結晶性1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレイン酸塩は、実質的に以下の角度2シータ(2θ)の値で、以下のピークの8本以上(好ましくは10本以上、より好ましくは12本以上、さらにより好ましくは14本以上、または最も好ましくは全て)を含んでなるX線粉末回折(XRPD)ディフラクトグラムを有する:
9.2±0.1°、11.8±0.1°、13.4±0.1°、14.7±0.1°、15.8±0.1°、16.2±0.1°、17.0±0.1°、18.5±0.1°、19.8±0.1°、20.3±0.1°、20.5±0.1°、21.0±0.1°、21.3±0.1°、27.1±0.1°、27.4±0.1°、27.8±0.1°、28.4±0.1°、および30.2±0.1°;
ここで、前記X線粉末回折のディフラクトグラムは、銅KαX線およびステップサイズ0.0167°2シータ以下を利用するX線粉末回折計で測定される。
【0024】
別法としてまたは追加的に、第3の態様において、結晶性1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレイン酸塩は、以下の表に示される角度2シータ(2θ)でのピーク位置およびオングストローム(Å)での計算されたd間隔により特徴づけられるX線粉末回折ディフラクトグラムを有し、ピーク位置の実験誤差はおよそ±0.1°2シータであり、
【0025】
【表1】

ここで、X線粉末回折ディフラクトグラムは、以下の取得条件:銅KαX線、発生器電圧40kV、発生器電流45mA、開始角度2.0°2シータ、終了角度40.0°2シータ、ステップサイズ0.0167°2シータ、ステップあたりの時間31.750秒、を利用するX線粉末回折計により測定され、試料(例えば数ミリグラム)は、シリコンウェハ(零バックグラウンド)プレートに載せられ、典型的には粉末の層(典型的には薄層)を形成することにより調製される。このデータは、例4で調製された結晶形1モノマレイン酸塩に関して例5.1に示されるXRPDデータから取られる。
【0026】
第4の態様において、本発明は、実質的に図1に示されるX線粉末回折(XRPD)ディフラクトグラムを有する結晶性1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレイン酸塩を提供し、前記X線粉末回折ディフラクトグラムは、銅KαX線および0.0167°2シータ以下のステップサイズを利用するX線粉末回折計により測定される。
【0027】
第3および/または第4の態様において、XRPDディフラクトグラムは、好ましくは、31.75秒以上のステップあたりの時間を利用して測定される。追加的にまたは別法として、第3および/または第4の態様において、XRPDディフラクトグラムは、好ましくは、シリコンウェハプレート(好ましくはシリコンウェハ零バックグラウンドプレート)に載せられた試料を利用して、および/または粉末の層(例えば薄層)である試料を利用して測定される。
【0028】
第3および/または第4の態様において、特に第4の態様において、XRPDディフラクトグラムは、好ましくは、2°2シータ(2θ)の開始角度および40°2シータ(2θ)の終了角度を利用して測定される。
【0029】
第5の態様において、本発明は、以下のピークの5本以上(好ましくは6本以上、より好ましくは7本以上、さらにより好ましくは8本以上、さらにより好ましくは10本以上、または最も好ましくは全て)を含んでなる固体減衰全反射(ATR)赤外(IR)スペクトルを有する1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレイン酸塩を提供する:
1700、1622、1464、1422、1353、1247、1234、1089、1048、869、840および765cm−1
ここで各ピークに±2cm−1の変動が見込まれている。
【0030】
別法としてまたは追加的に、第5の態様において、結晶性1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレイン酸塩は、以下のピークの10本以上(好ましくは15本以上、より好ましくは20本以上、さらに好ましくは30本以上、さらにより好ましくは35本以上、または最も好ましくは全て)を含んでなる固体減衰全反射(ATR)赤外(IR)スペクトルを有する:
1700、1622、1604、1575、1509、1464、1422、1393、1375、1353、1341、1308、1297、1280、1247、1234、1205、1178、1169、1153、1132、1115、1089、1069、1048、1017、1005、985、962、944、908、883、869、840、828、802、784、765、725および685cm−1
ここで各ピークに±2cm−1の変動が見込まれている。
【0031】
高透過率をスペクトルの上部にして縦軸に透過率のパーセントをプロットするIRスペクトル(例えば図2および3など)ではどれでも、赤外線の吸収を起こす振動モードまたはバンドは、下向きの窪みまたは谷(低い透過率)として示され、上向きのピークとしては示されない。したがって、「ピーク」または「バンド」という用語は、本明細書においてIRスペクトルに関連して使用される場合、赤外線の吸収または減少した透過率を表す下向きの窪みを含む。これは、当業者が理解するとおりのことである。
【0032】
第6の態様において、本発明は、実質的に図2および/または図3に示される固体減衰全反射(ATR)赤外(IR)スペクトルを有する結晶性1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレイン酸塩を提供する。
【0033】
第5および/または第6の態様において、固体IRスペクトルは、例えば減衰全反射(ATR)サンプリングアクセサリ(例えば、ダイアモンド/ZnSe ATRサンプリングアクセサリ)を備えたFT−IR分光計など、FT−IR(フーリエ変換赤外)分光計を利用して測定でき、かつ/または、例えば、4cm−1の分解能で測定できる。
【0034】
第7の態様において、本発明は、実質的に図4に示され、かつ/または、大気圧で窒素気流下において毎分約10℃の加熱速度を利用する熱量計を利用して測定される場合、149.2±5℃(より詳細には、149.2±1.5℃)の開始温度の吸熱を有する示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムを有する、結晶性1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレイン酸塩を提供する。
【0035】
DSC吸熱の開始温度は、吸熱の上昇曲線の(すなわち吸熱の低温部分の、例えば図4の吸熱の左側部分の)直線外挿がDSCサーモグラムのベースラインと交わる温度として計算される。
【0036】
本発明の第7の態様は、149.2±5℃(より詳細には、149.2±1.5℃)の溶融開始温度を有する結晶性1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレイン酸塩も提供する。好ましくは、前記溶融開始温度は、例えば、大気圧で窒素気流下において毎分約10℃の加熱速度を利用する熱量計を利用して、示差走査熱量測定(DSC)を利用して測定できる。
【0037】
第8の態様において、本発明は、以下の工程を含んでなる、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレイン酸塩の結晶形1の調製方法を提供する:
(a)1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン、C2−4アルキルC2−4アルカノアートを含んでなる(例えばそれから本質的になる)溶媒(例えば、特に、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、または酢酸n−ブチルなどのC2−4アルキルアセタート;または好ましくは酢酸エチルを含んでなる、例えば酢酸エチルから本質的になる溶媒)、およびマレイン酸(シス−ブテン二酸、好ましくは1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンのモル量に対してその約1モル当量)を、マレイン酸および1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンが溶媒に溶解する条件下で混合する工程、
(b)任意に(および好ましくは)、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレイン酸塩の結晶形1により、得られた混合物をシーディングする工程、
(c)(例えば、約0〜40℃の範囲内の温度循環などの温度循環の利用および/または例えば約0℃から室温の温度など約0〜40℃の温度での、4時間以上の混合物の攪拌または静置により)1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレイン酸塩の結晶形1を混合物から結晶化させ、または結晶化を起こす工程、
(d)(特に濾過により)1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレイン酸塩の結晶形1を溶媒から分離する工程、および
(e)任意に(および好ましくは)、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレイン酸塩の結晶形1を(特に、真空下で、および/または約40℃などの約35〜60℃で、および/または約0.5から3日間)乾燥させる工程。
【0038】
第9の態様において、本発明は、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンまたは塩酸塩(典型的には一塩酸塩)もしくはマレイン酸塩(典型的にはモノマレイン酸塩)などのその薬剤的に許容できる塩を調製する方法であって、以下の工程を含んでなる方法を提供する:
【化6】

(a)カルボン酸基が活性化されている4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)安息香酸の非酸クロライド誘導体と、1−イソプロピル−ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンとを反応させる工程;および
(b)任意に、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンの薬剤的に許容できる塩(例えば、塩酸塩またはマレイン酸塩(典型的にはモノマレイン酸塩))を調製する工程。
【化7】

【0039】
プロセス(a)は、典型的には、カップリング試薬による(例えば、好適な溶媒中で、例えば極性非プロトン性有機溶媒、例えばアセトニトリル、プロピオニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、またはジメチルスルホキシドなどの中で)4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)安息香酸の活性化と、それに次ぐ1−イソプロピル−ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンとの反応を含んでなる。
【0040】
一実施形態において、カップリング試薬は、有機二置換カルボジイミド、例えば1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)であり、その場合、反応は任意に1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)の存在下で実施でき、かつ/または反応溶媒は、例えばN,N−ジメチルホルムアミドでよく、かつ/または反応温度は、例えば室温など約0℃から約40℃まででよい。
【0041】
代わりとなる特別な実施形態において、前記カップリング試薬は、カルボニルジイミダゾールまたはピバロイルクロライド(トリメチルアセチルクロライド)である。
【0042】
最も好ましくは、前記カップリング試薬はカルボニルジイミダゾールである。例えば、媒体中または大規模プロセスにおいて、カルボニルジイミダゾール(CDI)をカップリング試薬として使用すると、適度によい収率および/または適度にきれいな反応を与えると同時に、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩カップリング試薬よりも安価である。
【0043】
プロセス(a)において、好ましくは、4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)安息香酸のカルボニルジイミダゾールカップリング試薬による活性化およびその後の1−イソプロピル−ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンとの反応は、両方ともアセトニトリルおよび/またはプロピオニトリル、より好ましくはアセトニトリルを含んでなる(または、特別な実施形態において、それらから本質的になる)反応溶媒中で実施される。
【0044】
カルボニルジイミダゾール(CDI)が、4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)安息香酸の活性化のためのカップリング試薬として使用され、その後の1−イソプロピル−ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンとの反応が起こる場合、反応条件は、詳細には、独立および/または任意の組み合わせで以下のとおりでよい:
カルボニルジイミダゾールは、典型的には、0.5から1.5モル当量(4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)安息香酸のモル数に対して)、好適には0.9から1.1モル当量、好ましくは1.0から1.1モル当量、例えば1.1モル当量で存在し;かつ/または
1−イソプロピル−ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンは、典型的には、0.5から1.5モル当量(4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)安息香酸のモル数に対して)、好適には1.0から1.25モル当量、好ましくは1.1から1.2モル当量、例えば1.15または1.2モル当量で存在し;かつ/または
反応(4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)安息香酸のCDIによる活性化、もしくはその後の1−イソプロピル−ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンとの反応、または両方)は、典型的には、極性非プロトン性有機溶媒、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリジノン(NMP)、および/または1,4−ジオキサンを含んでなる(例えば、それらから本質的になる)溶媒などの好適な有機溶媒中で実施され;好ましくは反応溶媒は、アセトニトリルおよび/またはプロピオニトリル、より好ましくはアセトニトリルを含んでなるか、それらから本質的になり;かつ/または
反応溶媒は典型的には乾燥しているが、反応溶媒中の低パーセンテージの水はときには許容することもでき;かつ/または
反応溶媒がアセトニトリルまたはプロピオニトリルである場合、反応(4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)安息香酸のカルボニルジイミダゾールによる活性化、もしくはその後の1−イソプロピル−ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンとの反応、または両方)の温度は、例えば、約0℃から溶媒の沸点または還流温度でよい。活性化反応の温度は、例えば、約20から約40℃(例えば約30℃)の範囲でよく、次いで約20℃から反応溶媒の沸点または還流温度の温度(例えば、約40から約60℃、例えば約50℃)での1−イソプロピル−ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンとの反応である。この低い活性化反応温度は、CDI分解の低減による収率の最大化を助けることができるかもしれないが、活性化反応後に残存する過剰のCDIの多くは、後に加えられる1−イソプロピル−ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンと反応して不純物を形成する可能性が高い。そのため、4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)安息香酸のカルボニルジイミダゾールによる活性化は、約50℃から反応溶媒の沸点/還流温度または約60℃から沸点/還流温度(例えば、アセトニトリル溶媒で、約60から約70℃、例えば65から70℃)の温度で行うことが現在では好ましいと考えられており、かつ任意に、この温度範囲(約50℃から沸点/還流温度、例えば約60から約70℃)を1−イソプロピル−ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンとの次の反応の温度として有することも現在では好ましいと考えられており;かつ/または
4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)安息香酸とカルボニルジイミダゾールは、典型的には少なくとも0.5時間、好適には少なくとも2時間、例えば0.5から3時間などの0.5から5時間、例えば2から5時間または2から3時間一緒に反応(例えば、攪拌により)してから、活性化された4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)安息香酸に1−イソプロピル−ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンが混合され;かつ/または
カルボニルジイミダゾールによる4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)安息香酸の活性化の生成物および1−イソプロピル−ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンは、典型的には、少なくとも0.5時間(例えば0.5から24時間)、好適には、少なくとも2時間(例えば2から24時間、例えば2から3時間または10から24時間)など、少なくとも1時間(例えば1から24時間、例えば1から3時間または10から24時間)一緒に反応(例えば、攪拌により)する。
【0045】
本発明の第9の実施形態において、好ましくは、工程(a)に使用される1−イソプロピル−ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンは、1−イソプロピル−ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンビストリフルオロ酢酸塩を塩基(例えば、水性塩基、例えば水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム水溶液)で処理して調製される。これを実施するには、詳細には、1−イソプロピル−ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンビストリフルオロ酢酸塩を塩基(例えば、約2Mなど約1Mから約5Mの水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム水溶液)に溶解させ、水性混合物を非水混和性有機抽出溶媒(例えばジクロロメタン)により1回以上抽出し、有機抽出溶媒層(有機抽出物)を分離し、任意に有機抽出物から水を除去し、次いで有機抽出物から有機抽出溶媒を除去(例えば、蒸発または蒸留により)して、1−イソプロピル−ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンを単離することによる。
【0046】
遊離塩基1−イソプロピル−ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンを調製する出発物質としての1−イソプロピル−ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンビストリフルオロ酢酸塩の使用は、国際公開WO2005/040144A1号公報の実施例10の合成に開示された1−イソプロピル−ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン二塩酸塩の使用に優って特定の利点を有し、具体的には以下のとおりである。
【0047】
(i)1−イソプロピル−ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンビストリフルオロ酢酸塩を使用すると、(例えば中間体1のBOC−保護された前駆体からの)1−イソプロピル−ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン二塩酸塩の調製における毒性のあるジオキサンの使用を回避でき、前記調製は、典型的には、固体の1−イソプロピル−ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン二塩酸酸を得るために、(塩酸中に存在する水を避けるため)乾燥ジオキサン中のHCl(例えば4MのHCl)を使用する(例えば本明細書の中間体2参照)。
【0048】
(ii)重要なことに、固体の1−イソプロピル−ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン二塩酸塩は吸湿性が高く、通常の(英国で通常の)湿度の空気に放置されるとゴム状物質を形成する。吸湿性により、カップリング反応のための二塩酸塩の定量および秤量が困難であり、カップリング反応(例えばCDIとの)において望ましくない水が存在することにもなりかねない。
【0049】
(iii)1−イソプロピル−ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンビストリフルオロ酢酸塩は、結晶性の固体であり、長期の安定性を有するようであり、自由流動性であり、最も重要なことに、25℃で通常の相対湿度(例えば約30%)で実質的に非吸湿性である。
【0050】
そのため、本発明の第9の態様のプロセスにおいて、固体の1−イソプロピル−ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンビストリフルオロ酢酸塩の使用は、貯蔵、取扱い、および/または処理の点で利点があり、かつ/または、1−イソプロピル−ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン二塩酸塩の使用に比べると、より良好な水の存在しないカップリング(例えばDCIカップリング)反応を与える可能性がある。
【0051】
したがって、本発明の第10の態様において、以下の式を有する、(例えば結晶形などの固体の)1−イソプロピル−ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンビストリフルオロ酢酸塩が提供される。
【化8】

【0052】
本発明の第10の態様は、特に1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンまたはその薬剤的に許容できる塩(例えばモノマレイン酸塩)の調製における、化学中間体としての(例えば結晶形などの固体の)1−イソプロピル−ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンビストリフルオロ酢酸塩の使用も提供する。
【0053】
1−イソプロピル−ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンビストリフルオロ酢酸塩は、以下の反応により調製できる:
【化9】

上式において、反応は以下を含んでなる:
(i)1−tert−ブチル−4−イソプロピル−ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン−1−カルボキシラート(調製に関して中間体1参照)をトリフルオロ酢酸(例えば、2〜20モル当量、例えば約10モル当量)と、好適な非水性有機溶媒(例えばジクロロメタン)中で、例えば27〜33℃などの20〜40℃で、かつ/または例えば12から18時間などの6から48時間反応させ、かつ
(ii)得られた混合物を蒸発乾固し、かつ
(iii)好適な非水性有機沈殿溶媒(例えば、任意に少量(例えば溶媒の体積で2〜10%、例えば3〜5%)の酢酸エチルを含むtert−ブチルメチルエーテル)から沈殿(例えば結晶化)させる。
【0054】
例えば、本明細書中の以下の中間体3を参照されたい。
【0055】
1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンの塩酸塩(典型的には一塩酸塩)を調製する一般的な方法
【化10】

【0056】
1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンの塩酸塩(例えば一塩酸塩)を調製、結晶化、および単離するために、一実施形態において、アセトニトリルまたはプロピオニトリルなどの反応溶媒中で、4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)安息香酸がカップリング試薬(例えばカルボニルジイミダゾール)により活性化され、次いで活性化された酸が1−イソプロピル−ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンと反応する反応の最後で、以下のプロセスを実施することができる:
典型的には、反応溶媒(例えば、プロピオニトリル、または好ましくはアセトニトリル)の体積は、減圧下で、(例えばプロピオニトリル、または好ましくはアセトニトリルの)約2〜4の体積に、例えば約2.5〜3の体積に減らされ;次いで、任意に、約2〜6体積(例えば約2〜4、または約5〜6体積、例えば約3体積)のイソプロパノールが加えられ、溶媒の体積が減圧下で、約2〜4体積に、例えば2.5〜3の溶媒体積に減らされ;かつ
次いで、好適な溶媒中のHClの溶液(例えば以下に定義される結晶化溶媒、例えばイソプロパノール;例えば、約0.7〜1.1体積、例えば約0.9体積などのイソプロパノール中の約5〜6NのHCl)が反応混合物に加えられ;好ましくは、使用される出発物質4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)安息香酸のモル量に対して、0.85から1.05モル当量などの0.5から1.3モル当量、例えば1.0モル当量の量でHClが加えられ;かつ
好ましくは、薬剤的に許容できる塩を形成する適切な酸(例えばHCl)の添加の前および/またはその後および/またはそれと同時に、結晶化溶媒が加えられる(結晶化溶媒は、例えば以下のものを含んでなるか、それらでよい:例えば、イソプロパノール、n−プロパノール、n−ブタノール、エタノール、またはメタノールのC1−3アルコールまたはn−ブタノール(アルコールの混合物を含む)であるアルコール;水とC1−3アルコールまたはn−ブタノールであるアルコールとの混合物、例えば、イソプロパノール:水、エタノール:水、またはメタノール:水;酢酸イソプロピル;酢酸エチル;メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルエチルケトン、またはアセトンなどのC3−6ケトン;アセトニトリル;またはジクロロメタン;好適には、結晶化溶媒は、C1−3アルコールまたはn−ブタノールであるアルコール(アルコールの混合物を含む)、または水とC1−3アルコールまたはn−ブタノールであるアルコールとの混合物、を含んでなるか、それであり;好ましくは、イソプロパノール、イソプロパノール:水(特に、イソプロパノール中約2〜10%の水、例えばイソプロパノール中約3〜5%または約4〜5%の水など、イソプロパノール中約3〜7%または約2〜5%の水)、またはエタノールもしくは工業用メチル化スピリット中の約1〜5%の水などエタノール:水);かつ例えば、
結晶化溶媒添加の典型的な例として、6から12体積、例えば約6〜10体積、例えば約9〜10体積の結晶化溶媒(例えば本明細書に定義されるもの、例えばイソプロパノール、またはイソプロパノール中の約2〜10%の水、例えばイソプロパノール中の約4〜5%など約3〜7%または約2〜5%の水)を、HClの添加の前および/またはその後および/またはそれと同時に加えることができ;かつ
好ましくは、塩酸塩生成物を含んでなる溶媒含有混合物は、約50℃から溶媒の沸点または還流温度(例えば約50〜75℃、例えば約60〜70℃、例えば約60〜65℃)の温度で、またはその温度に加熱され;かつ
1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンの塩酸塩(例えば一塩酸塩)は、温混合物から結晶化もしくは再結晶化され、または結晶化もしくは再結晶化を起こされる(例えば、温混合物の冷却により、例えば、約30℃などの約25〜35℃への冷却など約17〜35℃に冷却し、かつ/または室温(典型的には17〜25℃)に冷却することにより、冷却による場合、好ましくは1〜3時間以上の期間をかける温混合物の緩やかな冷却により;かつ任意に冷却された混合物を、約5〜48時間、例えば約10〜30時間攪拌することにより)、かつ
1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンの結晶性塩酸塩(例えば一塩酸塩)は溶媒から単離され(例えば濾過により)、通常乾燥される(例えば、減圧下で約50℃などの約40〜60℃での乾燥(例えば真空オーブン乾燥)により、または例えば吸引下または空気もしくは窒素などの気流下での室温での乾燥による)。
【0057】
このセクションでは、溶媒/溶液/液体の「体積」は、4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)安息香酸に関して、後者の1gに対して前者の1mlを同等として述べられる。例えば、10gの4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)安息香酸を使用する場合、0.9体積の5〜6NのHClのイソプロパノール溶液は、0.9×10=9mlの5〜6NのHClのイソプロパノール溶液を意味する。
【0058】
1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン(「遊離塩基」)の調製および/または単離のための一般的方法
【化11】

【0059】
反応混合物から、「遊離塩基」である1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンを調製および/または単離するために、
反応溶媒を除去でき、かつ/または
遊離塩基を酢酸イソプロピルに溶解させ、次いで酢酸イソプロピル溶液へのヘプタンの添加により結晶化でき、例えば遊離塩基を、約1:2の酢酸イソプロピル:ヘプタンから結晶化でき、かつ/または
結晶化の後、遊離塩基を分離(例えば濾過による)および乾燥(例えば減圧下で約50℃などの約40〜60℃で(例えば真空オーブン乾燥)、例えば一晩の乾燥による)して、固体の1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン(「遊離塩基」)を生じることができる。
【0060】
特別な一実施形態において、単離された固体の遊離塩基は再結晶され、好ましくはtert−ブチルメチルエーテルから再結晶される(例えば、再結晶されるべき遊離塩基の重量に対して、約10〜20体積、好ましくは約15体積のtert−ブチルメチルエーテルを使用する)。例えば、tert−ブチルメチルエーテルからの遊離塩基の再結晶は、遊離塩基を約40〜60℃で、例えば約50℃で、tert−ブチルメチルエーテル(例えば、再結晶されるべき遊離塩基の重量に対して、それを約10〜20体積、好ましくは約15体積)に溶解させ、溶液をゆっくりと室温まで放冷してスラリーを形成し、スラリーから固体の遊離塩基を分離し(例えば濾過による)、分離された固体を乾燥し(例えば真空オーブン中で一晩、約40〜60℃、例えば50℃で)、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンを固体として生じることができる。
【0061】
遊離塩基からの、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレイン酸塩、具体的にはその結晶形1の調製には、例えば、上記の本発明の第8の態様ならびに以下の例3および4を参照されたい。
【0062】
中間体の調製
【0063】
4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)安息香酸(IV)は、本発明の第9の態様において中間体として使用され、以下のスキームに従い調製してもよく、下式において、Pは、C1−6直鎖アルキル(例えば、メチル、エチル、n−プロピルもしくはn−ブチル)またはイソプロピルもしくはイソブチル、またはベンジルなど、メチルまたはエチルなど、特にメチルなどの好適な保護基を表す。
【0064】
【化12】

【0065】
工程(i)は、典型的には、テトラヒドロフラン、トルエン、および/またはキシレン(「キシレン」はo−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、または複数のキシレンの混合物でよい)などの好適な溶媒中での、トリフェニルホスフィンなどのホスフィンの使用、それに次ぐジエチルアゾジカルボキシラートまたはジイソプロピルアゾジカルボキシラートなどのアゾジカルボキシラートの、好適な温度、例えば室温から約80℃、例えば室温での添加(例えば、緩慢な添加および/または滴下による添加)を含んでなる。反応時間(アゾジカルボキシラート添加時間いずれもを含む)は、例えば0.5から72時間になりうる。反応溶媒としてテトラヒドロフランが使用される場合、室温を利用でき、反応時間は例えば3から72時間である。反応溶媒がトルエンおよび/またはキシレン、特にトルエンを含んでなり、またはそれらから本質的になる場合、約40から約80℃、例えば約40から約70℃、例えば約55℃の反応温度を利用でき;かつ/または約0.5から6時間、例えば0.5から3時間、例えば1〜2時間の反応時間(アゾジカルボキシラートの添加時間いずれもを含む)を利用できる。
【0066】
特別な実施形態において、工程(i)反応溶媒は、トルエンおよび/またはキシレン、好ましくはトルエンを含んでなり、またはそれらから本質的になり、反応工程(i)は、トリフェニルホスフィンおよびジイソプロピルアゾジカルボキシラートの存在下で実施される(例えば、化合物(I)に対して約1.3〜2.0当量、例えば約1.5モル当量のトリフェニルホスフィンおよび/またはジイソプロピルアゾジカルボキシラート;および/または、例えばトリフェニルホスフィンおよびジイソプロピルアゾジカルボキシラートは、互いに実質的に同じモル当量数で存在する);その場合、好適には、加熱された(例えば約40〜70℃)の反応混合物を、例えば0.5から2時間冷却でき(例えば、溶媒の融点以下に冷却されないという条件で、−10から25℃に、例えば約0〜5℃に)、次いで形成された固体の副生成物が、例えば濾過により除去される。反応溶媒としてのトルエンの使用は、トリフェニルホスフィンオキシドとジイソプロピルヒドラジンジカルボキシラートとの副生成物付加物を溶液から晶出するのに役立ち(特に反応混合物が、例えば冷却後に、この付加物によりシーディングされた場合)、それは粗生成物(III)中のトリフェニルホスフィンオキシドの濃度を低下させるのに役立つ。
【0067】
反応工程(i)の溶媒としてトルエンおよび/またはキシレンを使用する場合、一実施形態において、式(III)の反応生成化合物は単離されない。任意に、この実施形態において、式(III)の化合物のトルエンおよび/またはキシレンの溶液は、特にC1−6直鎖アルキル(例えば、メチル、エチル、n−プロピルもしくはn−ブチル)またはイソプロピルもしくはイソブチル、次の工程(ii)がエステルのアルカリ(例えばNaOHまたはKOH)加水分解を含んでなる場合、次の反応(脱保護、例えば加水分解)工程(ii)に直接使用される。
【0068】
本発明の第11の態様によると、式(III)の化合物を調製する方法が提供される:
【化13】

上式において、Pは保護基[C1−6直鎖アルキル(例えば、メチル、エチル、n−プロピルもしくはn−ブチル)またはイソプロピルもしくはイソブチル、またはベンジルなど;特にC1−6直鎖アルキルまたはイソプロピル、例えばメチルまたはエチル]を表し、前記方法は
(i)下式(I)の化合物と、式(II)の4−ヒドロキシテトラヒドロピランまたはそのOH基が活性化されているその誘導体とを反応させる工程を含んでなり、
【化14】

上式において、Pは式(III)の化合物に対して定義された保護基を表し、
前記反応工程(i)は、トルエンおよび/またはキシレン(特にトルエン)を含んでなるか、またはそれらから本質的になる反応溶媒中で実施される。
【0069】
「キシレン」は、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、または複数のキシレンの混合物であることがある。
【0070】
トルエンおよび/またはキシレンを含んでなる工程(i)反応溶媒を利用する本発明のこの第11の態様において、工程(i)の反応条件は、詳細には、中間体の調製に関して工程(i)で本明細書に記載されるとおりでよい。
【0071】
好ましくは、この第11の態様において、反応工程(i)は、トリフェニルホスフィンおよびジイソプロピルアゾジカルボキシラートの存在下で実施される(例えば、化合物(I)に対して約1.3〜2.0当量、例えば約1.5モル当量のトリフェニルホスフィンおよび/またはジイソプロピルアゾジカルボキシラート;および/または、例えばトリフェニルホスフィンおよびジイソプロピルアゾジカルボキシラートは、互いに実質的に同じモル当量数で存在する)。トルエンおよび/またはキシレン、特にトルエンを含んでなる工程(i)反応溶媒では、約40から約80℃、例えば約40から約70℃、例えば約55℃の反応温度を利用でき;かつ/または約0.5から6時間、例えば0.5から3時間、例えば1〜2時間の反応時間(アゾジカルボキシラートの添加時間いずれもを含む)を工程(i)で利用できる。
【0072】
この第11の態様の特別な実施形態において、工程(i)反応溶媒がトルエンおよび/またはキシレン、好ましくはトルエンを含んでなり、反応工程(i)がトリフェニルホスフィンおよびジイソプロピルアゾジカルボキシラートの存在下で実施される場合、加熱された(例えば、約40〜80℃、例えば、約40〜70℃)反応混合物を、例えば0.5から2時間冷却でき(例えば、溶媒の融点以下に冷却されないという条件で、−10から25℃に、例えば約0〜5℃に)、次いで形成された固体の副生成物(トリフェニルホスフィンオキシドとジイソプロピルヒドラジンジカルボキシラートとの付加物)が、例えば濾過により除去される。特に、例えば反応混合物を冷却した後で、反応混合物をトリフェニルホスフィンオキシドとジイソプロピルヒドラジンジカルボキシラートとの付加物によりシーディングできる。反応溶媒としてのトルエンの使用は、トリフェニルホスフィンオキシドとジイソプロピルヒドラジンジカルボキシラートとの副生成物付加物を溶液から晶出するのに役立ち(特に反応混合物が、例えば冷却後に、この付加物によりシーディングされた場合)、それは粗生成物(III)中のトリフェニルホスフィンオキシドの濃度を低下させるのに役立つ。
【0073】
本発明の第11の態様は、トルエンおよび/またはキシレンを含んでなる工程(i)反応溶媒を利用する、式(III)の化合物の調製方法であり、以下の工程を含んでなる、4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)安息香酸である式(IV)の化合物を調製する方法も提供される:
トルエンおよび/またはキシレンを含んでなるか、またはそれらから本質的になる反応溶媒を利用する反応工程(i)の実施(例えば、本明細書に記載されるとおり)、次いで
(ii)例えば、PがC1−6直鎖アルキル(例えば、メチル、エチル、n−プロピルもしくはn−ブチル)またはイソプロピルもしくはイソブチル(特にメチルまたはエチル)を表す場合の式(III)の化合物内のエステルの、例えばアルカリ条件下(例えば、例えば水溶液の水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムを利用する)での加水分解による;または、例えば、Pがベンジルを表す場合の水素化による、得られた式(III)の化合物の式(IV)の化合物への転化。
【0074】
本発明の第12の態様において、以下の工程を含んでなる、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンまたはその塩(例えば、薬剤的に許容できる塩、例えばモノマレイン酸塩もしくは塩酸塩)の調製方法が提供される:
【化15】

トルエンおよび/またはキシレンを含んでなるか、またはそれらから本質的になる反応溶媒を利用する反応工程(i)の実施(例えば、本明細書の第11の態様に記載されるとおり);次いで
(ii)得られた式(III)の化合物を、4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)安息香酸である式(IV)の化合物に転化する工程(例えば、本明細書中で上記または以下に記載されるとおり);次いで
a)4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)安息香酸を、カルボン酸基が活性化されたその非酸クロライド誘導体に転化し、次いでこれと、1−イソプロピル−ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンとを反応させる工程;または
aa)任意に4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)安息香酸を4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)ベンゾイルクロライドに転化し、次いでこれと、1−イソプロピル−ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンとを反応させる工程のいずれか;および
任意に1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンの塩(例えば、薬剤的に許容できる塩、例えば塩酸塩またはマレイン酸塩(典型的にはモノマレイン酸塩))を調製する工程。
【0075】
方法工程(a)は例えば本明細書に記載のとおりでよい。方法工程(aa)は、例えば、本発明の背景技術に記載したとおりでよい(国際公開WO2005/040144A1号公報の実施例10参照)。
【0076】
工程(ii)は脱保護反応である。PがC1−6直鎖アルキル(例えば、メチル、エチル、n−プロピルもしくはn−ブチル)またはイソプロピルもしくはイソブチル(特にメチルまたはエチル)を表す場合、反応は、典型的には、好適な溶媒、例えばメタノール(例えば、P=Meの場合)またはエタノール(例えば、P=Etの場合)、またはトルエンおよび/またはキシレンなどの中で、例えば、70〜100℃(例えば95℃または80℃)などの好適な温度および/または還流下で、例えば、2〜6時間または2〜3時間などの1〜24時間、典型的には加水分解が実質的に完了するまで、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムなど(例えば水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムの水溶液)の好適なアルカリ(例えば水溶液)、による処理を含んでなる。特別な実施形態において、工程(ii)反応溶媒がトルエンおよび/またはキシレンであり、反応が、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムの水溶液など好適なアルカリ水溶液による処理を含んでなる場合、反応は効率よい(例えば激しい)攪拌または混合を含んでなる。
【0077】
特別な実施形態において、工程(i)で製造された式(III)の化合物を含むトルエンおよび/またはキシレン溶液は、特に次の工程(ii)がエステルのアルカリ(例えば、NaOHまたはKOH)加水分解を含んでなる場合、直接、すなわち式(III)の化合物の単離をせずに、次の加水分解工程(ii)に使用される。工程(i)および/または(ii)の反応条件は、詳細には本明細書に記載のとおりでよく、例えば、反応工程(i)は、トリフェニルホスフィンおよびジイソプロピルアゾジカルボキシラートの存在下で実施できる。
【0078】
Pがベンジルを表す場合、脱保護反応(ii)は水素化を含んでなることがある。
【0079】
本発明の第13の態様によると、以下の工程を含んでなる、4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)安息香酸である、式(IV)の化合物の調製方法が提供される:
【化16】

(i)PがC1−6直鎖アルキル(例えば、メチル、エチル、n−プロピルもしくはn−ブチル)またはイソプロピルもしくはイソブチル(特にメチルまたはエチル)を表す式(I)の化合物と、式(II)の4−ヒドロキシテトラヒドロピランまたはそのOH基が活性化されているその誘導体とを反応させて、Pが式(I)の化合物の場合と同じ定義を有する式(III)の化合物を調製する工程、および
(ii)式(III)の化合物内のエステルを、例えばアルカリ条件下で(例えば、水溶液の、例えば水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムを利用して)加水分解して、式(IV)の化合物を形成する工程であって、
ここで、反応工程(i)および(ii)は両方とも、トルエンおよび/またはキシレン(特にトルエン)を含んでなるか、またはそれらから本質的になる反応溶媒中で実施される。
【0080】
「キシレン」は、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、または複数のキシレンの混合物でよい。
【0081】
本発明のこの第13の態様の特別な実施形態において、工程(i)で製造された式(III)の化合物のトルエンおよび/またはキシレン溶液は、特に次の工程(ii)がエステルのアルカリ(例えば、NaOHまたはKOH)加水分解を含んでなる場合、直接、すなわち式(III)の化合物の単離をせずに、次の加水分解工程(ii)に使用される。工程(i)および/または(ii)の反応条件は、詳細には本明細書に記載のとおりでよく、例えば、工程(i)は、トリフェニルホスフィンおよびジイソプロピルアゾジカルボキシラートの存在下で実施できる(例えば、化合物(I)に対して約1.3〜2.0当量、例えば約1.5モル当量のトリフェニルホスフィンおよび/またはジイソプロピルアゾジカルボキシラート;および/または、例えばトリフェニルホスフィンおよびジイソプロピルアゾジカルボキシラートは、互いに実質的に同じモル当量数で存在する)。
【0082】
本発明の第14の態様において、以下の工程を含んでなる、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンまたはその塩(例えば、薬剤的に許容できる塩、例えば、モノマレイン酸塩またはHCl塩)の調製方法が提供される:
【化17】

反応工程(i)および(ii)が両方とも、トルエンおよび/またはキシレンを含んでなるか、またはそれらから本質的になる反応溶媒中で実施される(例えば、第13および/または第11の態様において、先に記載されたとおり)反応工程(i)および(ii)を実施する工程;次いで、
a)4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)安息香酸を、カルボン酸基が活性化されたその非酸クロライド誘導体に転化し、ついでこれと、1−イソプロピル−ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンとを反応させる工程;または
aa)4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)安息香酸を4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)ベンゾイルクロライドに転化し、次いでこれと、1−イソプロピル−ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンとを反応させる工程のいずれか;および
任意に1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンの塩(例えば、薬剤的に許容できる塩、例えば塩酸塩またはマレイン酸塩(典型的にはモノマレイン酸塩))を調製する工程。
【0083】
方法工程(a)は、例えば本明細書に記載のとおりでよい。方法工程(aa)は、例えば、本発明の背景技術に記載したとおりでよい(国際公開WO2005/040144A1号公報の実施例10参照)。
【0084】
式(I)の化合物は市販されているか(例えば、メチル4−ヒドロキシベンゾアートはAldrichから入手でき)、または標準的な方法論を利用して市販の化合物から調製してもよい。式(II)の4−ヒドロキシテトラヒドロピランは、例えばAldrichから市販されている。
【0085】
tert−ブチル−ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン−1−カルボキシラートから、二塩酸塩またはビストリフルオロ酢酸塩として、1−イソプロピル−ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンを調製するには、例えば、本明細書中の中間体1A、1B、2、および3を参照されたい。
【0086】
医薬組成物、投与量、投与計画、および使用
療法に使用される場合、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンまたはその薬剤的に許容できる塩(例えばモノマレイン酸塩または塩酸塩)は通常医薬組成物に製剤される。そのような組成物は種々の手順を利用して調製できる。
【0087】
本発明は、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレイン酸塩(例えば、その結晶形1などのその結晶形)および薬剤的に許容できるキャリアを含んでなる医薬組成物(例えば経口投与用にされている)をさらに提供する。
【0088】
本発明は、医薬組成物の調製方法であって、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンまたはその薬剤的に許容できる塩(例えば、その結晶形1などのモノマレイン酸塩または塩酸塩)および薬剤的に許容できるキャリアを含んでなる医薬組成物の調製方法をさらに提供し、
【化18】

前記方法は、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンまたはその薬剤的に許容できる塩と、薬剤的に許容できるキャリアとを(例えば、室温および/または大気圧で)混合する工程を含んでなる。この方法は、本発明の他の方法に加えて(例えばその後で実施して)よい。
【0089】
医薬組成物は、通常、経口、非経口または直腸投与用にされていて、それ自体、錠剤、カプセル、または経口液体調合物、粉末、顆粒、トローチ、再構成可能な粉末、注射用もしくは注入用溶液もしくは懸濁液、または坐薬の形態でよい。錠剤またはカプセルなどの経口投与可能な医薬組成物が一般的に好ましい。
【0090】
例えば、背景で言及された疾患および/または以下の疾患/疾病のリストに言及されている疾患のいずれかの治療または予防に使用するための、特に、アルツハイマー病または関連する神経変性疾患または統合失調症または注意欠陥多動性障害などの疾病における認知機能障害の治療および/または予防(例えば治療)に使用するための、および/または医薬組成物に含まれる、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンまたはその薬剤的に許容できる塩の投与量、例えば経口投与量は、疾患の重篤度、患者の体重、および/または類似の因子により通常変動しうる。しかしながら、一般則として、一実施形態において、0.01から1000mg、例えば0.05から1000mg、または特に0.05から200mgの1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンまたはその薬剤的に許容できる塩(「遊離塩基」化合物として測定される)の好適な投薬単位(例えば経口投薬単位)を、例えば本発明の医薬組成物(例えば、経口医薬組成物、および/または、例えば投薬単位形態で)に利用できる。一実施形態において、そのような投薬単位は、例えば経口によりおよび/またはヒトなどの哺乳動物へ1日1回投与するためのものであり;あるいは、そのような投薬単位は、例えば経口によりおよび/またはヒトなどの哺乳動物へ1日1回以上、例えば1日2回もしくは3回投与するためのものであることもある。そのような療法は数週間、数ヶ月、または数年にわたることがある。
【0091】
1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン塩酸塩を、国際公開WO2009/030716A1号公報(Glaxo Group Limited)の47〜49ページ、特に48ページ26行から49ページ7行に開示されているヒスタミンH3機能的拮抗剤試験を実質的に利用して試験した。結果は、機能的pKi(fpKi)値として表される。機能的pKiは、培養されたH3細胞から調製された膜を利用するH3機能的拮抗剤試験において測定される拮抗剤平衡解離定数の負の対数値である。得られた結果は、数回の実験の平均である。1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン塩酸塩の試料は、およそ8.3のfpKiを持つH3拮抗作用を示した(fpKi測定値が7.7から9.3の範囲である12回の実験の平均である)。
【0092】
とりわけ、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン塩酸塩に関するラットのエキソビボ結合試験(ラットの脳ヒスタミンH3受容体占有率)およびブタ−PET試験(ポジトロン放射断層法、時間経過とともにブタの脳のH3受容体占有率プロファイルを示す)の結果に関しては、国際公開WO2009/030716A1号公報(Glaxo Group Limited)の50〜52ページ、53〜59ページ、および図10〜14を参照されたい。
【0093】
本発明は、哺乳動物(例えばヒト)の
神経変性疾患(特に神経変性疾患中の認知機能障害)であって、特に認知症(アルツハイマー病、レビー小体型認知症、血管型認知症、またはパーキンソン病認知症など)、軽度認知機能障害、加齢性記憶障害、または認知加齢でありうるもの;
統合失調症、特に統合失調症に関連する(または統合失調症における)認知機能障害;
注意欠陥多動性障害(ADHD)、特にそれにおける認知機能障害;
てんかん;
神経因性疼痛;
疲労および/または過剰な日中の眠気、例えば多発性硬化症に関連する疲労;
うつ(例えば、大うつ病性障害);または
不安
の治療または予防に使用するための(例えば経口投与による)、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレイン酸塩、特にその結晶形1も提供する。
【0094】
好ましくは、前記モノマレイン酸塩、特にその結晶形1は、哺乳動物(例えばヒト)の認知機能障害、特に、
神経変性疾患中の認知機能障害[例えば、認知症(アルツハイマー病、レビー小体型認知症、血管型認知症、またはパーキンソン病認知症など)、軽度認知機能障害、加齢性記憶障害、または認知加齢];または
統合失調症における(または関連する)認知機能障害;または
注意欠陥多動性障害における認知機能障害;
の治療または予防(例えば治療)に使用するためのものである。
【0095】
本発明は、哺乳動物(例えばヒト)の上述の疾病または疾患のいずれかの治療または予防に使用する(例えば経口投与による)ための医薬の製造における、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレイン酸塩、特にその結晶形1の使用も提供する。
【0096】
本発明は、治療または予防を必要とする哺乳動物(例えばヒト)の上述の疾病または疾患のいずれかの治療または予防(例えば治療)の方法であって、前記哺乳動物に有効量の1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレイン酸塩、特にその結晶形1を投与(例えば経口)する工程を含んでなる方法も提供する。
【0097】
前記活性化合物または塩(例えば本発明のモノマレイン酸塩)を含む特定の医薬組成物および/または経口剤形は、例えば、0.01mgから1mgの活性化合物または塩(遊離塩基として測定)を含む経口剤形(例えば錠剤)に任意に使用できるが、以下のとおりのことがある。
【0098】
本発明の特別な一実施形態において、経口投与用の剤形はキャリア錠剤(carrier tablet)を含んでなり、キャリア錠剤は、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンまたはその薬剤的に許容できる塩(例えば、その結晶形1など本発明のモノマレイン酸塩)を含んでなるフィルムにより少なくとも部分的に(例えば部分的に)覆われている。
【化19】

【0099】
任意に、少なくとも部分的にキャリア錠剤を覆うフィルムは、安定剤を含まない同等な剤形に比較して、剤形中の1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンまたはその薬剤的に許容できる塩の劣化を低減する安定剤を含んでなる。安定剤は、例えば、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸およびその塩、重炭酸ナトリウム、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、および/またはそれらの組み合わせ;特にクエン酸でありうる。
【0100】
任意に、かつ個別にまたは追加的に、少なくとも部分的にキャリア錠剤を覆うフィルムは、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)を含んでなる。
【0101】
この医薬組成物の文脈において、「キャリア錠剤」という用語は、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンまたはその薬剤的に許容できる塩を実質的に含まない錠剤を意味する。通常、キャリア錠剤は治療薬を全く含まない。好ましくは、キャリア錠剤は1つ以上の凹みを有し(例えば、錠剤の両面に2つの凹み、すなわち両凹の錠剤)、より好ましくは、活性化合物または塩を含むフィルムがキャリア錠剤の凹みまたは複数の凹みの中に存在する。
【0102】
組成物例1:0.01mgの1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンまたはその薬剤的に許容できる塩(遊離塩基として測定)を含む円形錠剤の調製
コア成分を公称30メッシュのふるいに通し、次いで好適なブレンダーで混合し、ロータリー錠剤プレスで圧縮して、直径が7.9mmで錠剤の両面におよそ0.8mmの深さの窪みがある円形両凹錠剤を製造する。圧縮に続き、脱塵および金属チェックを行う。次いで、錠剤をコーティングパンに移し、目標である4%(w/w)増加量(target 4% (w/w) gain)に被覆する。
【0103】
キャリア錠剤の組成を(キャリア錠剤上のフィルムコートとともに)以下に示す。
【0104】
【表2】

【0105】
【表3】

【0106】
被覆されたキャリア錠剤上に、活性化合物または塩を含むフィルムを形成するには以下の方法を実施する。
【0107】
5gのヒドロキシプロピルセルロース(グレードEF;HPC)および3gの無水クエン酸をメタノールに溶かし、10ミクロンフィルターを通して濾過し、次いでメタノールで最終体積を100mlにして、キャリア溶液を調製する。最終濃度12.5mg/g(w/w)(遊離塩基として測定)の均質な溶液が得られるまで、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンまたはその薬剤的に許容できる塩(例えば、その結晶形1などのそのモノマレイン酸塩)を、超音波処理器で(およびマグネティックスターラーも使用して)、キャリア溶液に溶かす。4mgのキャリア溶液を、配列されたキャリア錠剤の被覆されたキャリア錠剤のそれぞれの上に分配する。錠剤を、強制通風オーブンで、約50℃で10〜20分間乾燥させる。
【0108】
完成した錠剤の組成は以下のとおりである。
【0109】
【表4】

【0110】
活性化合物または塩を含むフィルムを含むこれらの錠剤を、任意にさらに被覆することができる。
【0111】
組成物例2、3、および4:0.02mg、0.05mgまたは0.5mgの1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンまたはその薬剤的に許容できる塩(遊離塩基として測定)を含む円形錠剤の調製
0.02mg、0.05mgまたは0.5mgの1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンまたはその薬剤的に許容できる塩(遊離塩基として測定)(例えば、その結晶形1などのそのモノマレイン酸塩)を含む錠剤は、キャリア溶液中の1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンまたはその薬剤的に許容できる塩の濃度を変更する以外、組成物例1に記載の方法で調製できる。
【実施例】
【0112】
(実験セクション)
以下の非限定的な例は、本発明の1つ以上の調製方法を説明し、中間体は、本発明の1つ以上の調製方法に使用できる中間体の調製を説明する。
【0113】
本明細書で使用される略語には以下のものがある。
eq 当量
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
h 時間
min 分
GC ガスクロマトグラフィー
LCMSまたはLC/MS 液体クロマトグラフィー/質量分析
NMR 核磁気共鳴
H NMR H核磁気共鳴、ここでbr=ブロード、m=マルチプレット、s=シングレット、d=ダブレット、t=トリプレット、td=ダブレットのトリプレットなど、1Hまたは2H=積分が1つの水素または2つの水素を表している、など。
TLC 薄層クロマトグラフィー
室温(周囲温度) 本明細書で開示される以外、通常約17から約25℃の範囲、またはこの範囲内の副範囲にある。
【0114】
中間体1(方法A)
1−tert−ブチル−4−イソプロピル−ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン−1−カルボキシラート
tert−ブチル−ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン−1−カルボキシラート(10.0g)を、ジクロロメタン(200ml)に溶かした。アセトン(7.33ml)を加え、反応を5分間攪拌したままにした。次いで、ナトリウムトリアセトキシボロヒドリド(21.0g)を加え、反応を室温で16時間攪拌した。反応混合物を飽和炭酸カリウム溶液で洗浄した(2×200ml)。有機層を乾燥させ(硫酸マグネシウム)蒸発させ、透明な油として標題化合物を生じた(11.0g)。
【0115】
中間体1(方法B)
1−tert−ブチル−4−イソプロピル−ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン−1−カルボキシラート
tert−ブチル−ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン−1−カルボキシラート(25.06g)を、アセトニトリル(250ml)に溶かした。無水炭酸カリウム(34.5g)および2−ヨードプロパン(63g、37ml)を加え、混合物を18時間加熱還流した。冷却した混合物を濾過し、固体をアセトニトリルで洗浄した。合わせた濾液を蒸発させ、残った油をジエチルエーテルに溶かし、水、チオ硫酸ナトリウム溶液および塩水で洗浄し、乾燥させ(NaSO)、蒸発させ、薄茶色の油として標題化合物を生じた(29.8g)。
【0116】
中間体2
1−イソプロピル−ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン二塩酸塩
1−tert−ブチル−4−イソプロピル−ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン−1−カルボキシラート(11.0g、例えば、中間体1方法AまたはBに記載のとおり調製できる)をメタノール(200ml)に溶かし、ジオキサン(100ml)中の4NのHClを加えた。反応を室温で2時間攪拌し、次いで蒸発させ、白色固体として標題化合物を生じた(9.6g)。H NMR(CDCl):11.35(1H,s),10.22(1H,s),9.72(1H,s),4.15−3.52(9H,m),2.83−2.40(2H,m),1.47(6H,d,J=6.24Hz)。
【0117】
中間体3
1−イソプロピル−ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンビストリフルオロ酢酸塩
【化20】

【0118】
方法の概要
重量、体積および当量は全て、1−tert−ブチル−4−イソプロピル−ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン−1−カルボキシラートに対するものである。
【0119】
1−tert−ブチル−4−イソプロピル−ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン−1−カルボキシラート(1重量、例えば、任意に中間体1方法AまたはBに記載のとおり調製できる)をジクロロメタン(14体積)に溶かした溶液を0±3℃に冷却する。トリフルオロ酢酸(5重量、3.4体積、10モル当量)を少なくとも30分かけて加える。次いで、反応混合物を30±3℃に温め、この温度で少なくとも12時間攪拌する。TLCおよびGCにより反応が完了したら、混合物をロータリーエバポレーターで蒸発乾固する。酢酸エチル(7体積)を残渣に加え、混合物を蒸発乾固する。これを1度繰り返す。酢酸エチル(0.5体積)を得られた油に加え、次にtert−ブチルメチルエーテル(10体積)を加え、混合物を2時間攪拌する。得られた固体を真空下で濾過して除き、tert−ブチルメチルエーテル(2×3体積)で洗浄する。次いで、一定のプローブ温度が得られるまで、固体を40℃真空中で乾燥させ、固体の1−イソプロピル−ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンビストリフルオロ酢酸塩を生じる。
【0120】
例1
4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)安息香酸
【化21】

【0121】
方法説明の簡単な概要
重量、体積(「体積(vol)」)、および当量は、メチル4−ヒドロキシベンゾアートに対するものである。
【0122】
メチル4−ヒドロキシベンゾアート(1重量、1モル当量)、トリフェニルホスフィン(2.6重量、1.5モル当量)、4−ヒドロキシテトラヒドロピラン(0.75体積、1.2モル当量)をトルエン(3.5体積)に溶かした窒素下の溶液を、55℃に加熱し、内容物を60±2℃に保ちながら、ジイソプロピルアゾジカルボキシラート(1.95体積、1.5モル当量)を60分間かけて滴下して加える。添加の後、反応を30分間攪拌し、次いで0〜5℃に冷却する。次いで、バッチを事前に調製したトリフェニルホスフィンオキシド−ジイソプロピルヒドラジンジカルボキシラート付加物によりシーディングし、次いで、さらに1時間攪拌してから濾過する。ウェットケーキをトルエン(2×1体積)で洗浄し、合わせた母液を清潔な容器に移す。トルエン溶液を、0〜5℃の2Mの水酸化ナトリウム溶液(5体積)で洗浄し、次いで3Mの水酸化ナトリウム溶液(5体積)を加え、反応を80℃に加熱する。HPLCにより出発物質が全くないと示されるまで、反応を少なくとも2.5時間攪拌する。次いで、混合物を50℃に冷却し、トルエン(5体積)および水(5体積)を加える。層を分離させ、水層をトルエン(10体積)で洗浄し、次いで2.5MのHCl溶液(7.5体積)でpH1に酸性化する。得られたスラリーを濾過し、ウェットケーキを水(2×2体積)で洗浄する。窒素抽気(bleed)しながら一定のプローブ温度まで、標題化合物を真空オーブン中で約50℃で乾燥させる。
【0123】
詳細な方法説明
1.メチル4−ヒドロキシベンゾアート(1重量、482.3g、Flukaから市販)を容器1に加えた。
2.4−ヒドロキシテトラヒドロピラン(0.75体積、362mL、1.2モル当量、Sigma−Aldrichから市販)を容器1に加えた。
3.トリフェニルホスフィン(2.6重量、1253g、1.5モル当量)を容器1に加えた。
4.容器1を窒素でパージした。
5.トルエン(3.5体積、1690mL)を容器1に加えた。
6.攪拌しながら、内容物を55℃に加熱した。
7.内容物温度を60±2℃に維持しながら、ジイソプロピルアゾジカルボキシラート(DIAD、1.95体積、940mL、1.5モル当量、Aldrichから市販)を、ペリスタリックポンプにより2時間かけて容器1に加えた。
8.容器1の内容物を、60±2℃で50分間攪拌した。
9.HPLC分析用に反応混合物をサンプリングした。
10.容器1の内容物を0〜5℃に冷却した。
11.トリフェニルホスフィンオキシド−ジイソプロピルヒドラジンジカルボキシラート付加物(0.001重量、0.482g)によりバッチをシーディングした。
12.容器1の内容物を81分間攪拌した。
13.濡らしたWhatman No113強化濾紙(粗面を上に)を付けたPTFEミニフィルターで5分かけて副生成物を濾過により除いた。20Lのブフナーフラスコを受器として使用した。
14.ウェットケーキをトルエン(2×約1体積、2×490mL)で洗浄し、ケーキを吸引して溶媒をきった。
15.濾液およびケーキ洗浄液を合わせて、PTFE吸引ラインにより容器2に移した。
16.容器2の内容物を0〜5℃に冷却した。
17.2Mの水酸化ナトリウム溶液(5体積、2400mL)を容器2に加えた。
18.容器2の内容物を0〜5℃で5分間攪拌してから、放置して層を落ちつかせた。
19.下の水層をラベル付きのSchott瓶に流した。
【0124】
20.3Mの水酸化ナトリウム溶液(5体積、2410mL)を容器2に加えた。
21.内容物を80℃に加熱し、2時間45分間攪拌した。
22.加水分解が完了するまで、HPLCにより反応をモニターした。
23.容器2の内容物を50℃に冷却し、次いで、トルエン(5体積、2410mL)を容器2に加えた。
24.水(5体積、2410mL)を容器2に加えた。
25.内容物を50±5℃で5分間攪拌してから、放置して層を落ち着かせた。
26.保存するため、下の水層をラベル付きのSchott瓶に流した。
27.廃棄するため、上の有機層をラベル付きのSchott瓶に流した。
28.水層をラベル付きのSchott瓶から容器2に戻した。
29.トルエン(約10体積、4900mL)を容器2に加えた。
30.内容物を50±5℃で5分間攪拌してから、放置して層を落ち着かせた。
31.保存するため、下の水層をラベル付きのSchott瓶に流した。
32.廃棄するため、上の有機層をラベル付きのSchott瓶に流した。
33.水層を容器2に戻した。
34.pH1になるまで、2.5Mの塩酸水溶液(7.5体積、3620mL)をペリスタリックポンプにより加えた。
35.得られたスラリーを15分間攪拌した。
36.濡らしたWhatman 113強化濾紙(粗面を上に)を付けたPTFEミニフィルターで生成物を濾過により除いた。濾過時間10分。
37.フィルターケーキを水(2×2体積、970mL)で洗浄した。
38.固体生成物を、真空下かつ窒素抽気しながら50℃で一晩、75℃でさらに3日間、スチールトレイを並べたポリエチレン中でモスリンでおおって、乾燥させた。
39.標題生成物が、灰色がかった白色の固体として得られた(568.9g)。
【0125】
分析データ
H NMR(400MHz,DMSO−d)δppm 1.55−1.64(m,2H)1.95−2.03(m,2H)3.49(ddd,J=11.74,9.41,2.57Hz,2H)3.85(ddd,J=11.80,4.34,4.16Hz,2H)4.69(ddd,J=8.56,4.65,4.40Hz,1H)7.03−7.09(m,2H)7.84−7.90(m,2H),および12.31(br−s,1H)。
【0126】
上記の方法に代わり、工程37で、フィルターケーキを水の代わりにトルエンで洗浄してから、工程38の50〜75℃真空乾燥を行うことができる。
【0127】
例2
(パートA):1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン、および
【化22】

(パートBおよびC):1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン塩酸塩
【化23】

【0128】
方法
温度計、冷却器/窒素バブラーおよびストッパーを備えた三口フラスコで、カルボニルジイミダゾール(CDI)(24g、0.8重量、1.1当量)をアセトニトリル(約300ml、約10体積)に約65℃の一定温度(ジャケット温度70℃)で、攪拌しながら窒素下で溶かした。溶解は約35〜40℃で完了した。4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)安息香酸(30g、1重量、1当量;任意に例1に記載のとおり調製できる)を、固体添加ロートより側管を通じて少しずつ加えると、気体(CO)が激しく発生した。添加は5〜10分間で終了した。添加ロートをアセトニトリル(約45ml、約1.5体積)ですすぎ、次いでそれを反応混合物に加えた。酸を活性化している反応混合物を、65℃(ジャケット温度70℃)に約2時間保った。
[ここで、1体積=30ml;ここでの体積は、投入した酸の30gに対するものである。]
【0129】
その間に、1−イソプロピル−ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンビストリフルオロ酢酸塩(100g、例えば中間体3に記載のとおり調製される)を2Mの水酸化ナトリウム水溶液(200ml)に溶かし、ジクロロメタン(2×200ml)で抽出した。有機抽出物を乾燥させ(NaSO)、蒸発乾固すると、1−イソプロピル−ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンを油として単離した(27.5g、0.916重量、これは、純粋な1−イソプロピル−ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンであれば、1.43当量であろう)。
【0130】
この油を全てアセトニトリル(45ml、1.5体積)に溶かし、この溶液を、活性化された酸の反応混合物に移した。この段階での反応混合物中のアセトニトリルの最大総体積は400mlである。
【0131】
反応混合物は、好都合なことに一晩放置して、65℃の内容物温度で反応させた。次いで、反応混合物を放冷した。次いで、反応混合物を澄まし、3つの等しい部分、パートA、BおよびCに分け、それぞれのパートは4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)安息香酸の10gの投入量に対応する。
【0132】
これら3つのパートA、BおよびCのそれぞれで、1体積=10ml;これらの3つのパートにおける体積は、投入された酸10gに対するものである(反応の3分の1)。
【0133】
パートA:1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンの調製および単離
反応混合物の第1の部分であるパートAから溶媒を除いた。酢酸イソプロピル(10体積、100ml)を加え、混合物を水(2×3体積、2×30ml)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、3体積(30ml)に濃縮した。ヘプタン(約6体積、約60ml)を加えると、固体の結晶化が起こり、混合物を一晩攪拌した。(すなわち、遊離塩基は約1:2の酢酸イソプロピル:ヘプタンから結晶化した)。
【0134】
パートAからの遊離塩基のスラリーを濾過し、分離された固体をヘプタン(3体積、30ml)で洗浄し、真空オーブンで一晩乾燥させると、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン(「遊離塩基」)(5.24g)を生じた。
【0135】
この遊離塩基の試料をtert−ブチルメチルエーテル(再結晶すべき遊離塩基の重量に対して15体積、約75ml)に懸濁させ、混合物を50℃に加熱するとすぐに、遊離塩基は全て溶解し透明な溶液を生じた。溶液を澄ますことなく、室温まで徐々に放冷するとスラリーを生じた。スラリーを濾過し、分離された固体を真空オーブン中で一晩50℃で乾燥させると、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンを固体として生じた(4.15g)。
【0136】
この遊離塩基の再結晶した試料は、XRPDによると結晶性のようであり(シャープなピーク、データ示さず)、示差走査熱量分析(DSC)による溶融開始温度が93.6℃(±1.5℃、熱量計の誤差のため)であり(データ示さず)、良好な蒸気収着量測定(GVS)プロファイルを有した(窒素下25℃で0〜90%の相対湿度範囲にわたり、およそ0.4〜0.5w/wの水を吸着および/または吸収した(出発湿度約30%RHでの最低重量と比較)(データ示さず))。XRPDおよびGVSデータは良好に見えるが、93.6℃(熱量計誤差のため±1.5℃、または試料変動誤差を包含するため±5℃)のDSC融解開始温度は、活性薬剤物質の溶融開始温度としては比較的低い。
【0137】
パートB:1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン塩酸塩の調製および単離
同時に、反応混合物の第2の部分であるパートBを2.5体積(25ml)に濃縮した。イソプロパノール(3体積、30ml)を加え、混合物を3体積(30ml)に濃縮した。イソプロパノール(3体積、30ml)および水(2.0ml、0.2体積)を加え、得られた混合物(約3.2体積%の水を含む)を65℃に加熱した。HClをイソプロパノールに溶かした溶液(5から6N、9ml、0.9体積)を一回で加えた。添加が終了した約10分後、結晶がいくらか現れた。混合物を4時間かけて徐々に20℃に冷却した。20℃で、スラリーは非常に濃厚で攪拌できなかった。スラリーを3.2%の水のイソプロパノール溶液でさらに希釈した。合計で60ml(6体積)の(3.2%の水のイソプロパノール溶液)を加えると、適度に攪拌可能なスラリーが20℃で得られた。
【0138】
スラリーを60℃に再加熱すると、透明な溶液が得られた。この溶液をゆっくりと冷却した。結晶化は約38℃で始まった。混合物を30℃に冷却し、スラリーを一晩30℃で攪拌した。次いで、スラリーをゆっくりと室温に冷却し、濾過した。得られた固体をイソプロパノール(4体積、40ml)で洗浄し、真空オーブン中で一晩乾燥させると、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン塩酸塩を固体として生じた(13.45g)。これは、「熱力学的固体」塩酸塩と名付けることができる(緩慢な冷却および結晶化の結果)。HPLCにより、この生成物は、約3%(HPLCピーク面積により測定)の量で存在する1種の不純物を含むことが示唆される。XRPD分析により、この「熱力学的固体」塩酸塩が結晶性であることが示される(XRPDはシャープなピークを有する、データ示さず)。
【0139】
パートC:1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン塩酸塩の調製および単離
同時に、反応混合物の第3の部分であるパートCを2.5体積(25ml)に濃縮した。イソプロパノール(3体積、30ml)を加え、混合物を3体積(30ml)に再濃縮した。イソプロパノール(7体積、70ml)および水(4ml、0.4体積)を加えると、約3.8体積%の水を含む混合物を生じた。室温で、HClをイソプロパノールに溶かした溶液(5から6N、9ml、0.9体積)を一回で加えると、その直後に結晶化が始まり、かろうじて攪拌できる濃厚なスラリーを生じた。このスラリーを濾過した。分離された固体をイソプロパノール(4体積、40ml)で洗浄し、50℃のオーブンで真空下一晩乾燥させ、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン塩酸塩を固体として生じた(12.4g)。これは、「動的固体」塩酸塩と名付けることができる(この生成物は、速い結晶化により生成した)。HPLCによると、この生成物は、それぞれ約2%および約13〜14%(HPLCピーク面積により測定)の量で存在する2種の不純物を含むことが示唆される。
【0140】
XRPDデータ(示さず)により、パートCから得たこの「動的固体」塩酸塩が、パートBから得た「熱力学的固体」塩酸塩と同じ結晶形を含んでなることが示されるようである。
【0141】
純度を上げるため、この「動的固体」塩酸塩を、アセトニトリルおよび水から再結晶した。「動的固体」塩酸塩(11g)をアセトニトリル(90ml)と混合したが、80℃でさえも完全に溶解しなかった。水(1ml)を、攪拌されているスラリーに加えると、ゆっくりと透明な溶液が得られた。この攪拌されている溶液をゆっくりと室温に放冷し、一晩攪拌した。濾過と乾燥を行うと、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン塩酸塩を固体(9g)として生じた。HPLCによる不純物は全く見られなかった。
【0142】
例3
1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレイン酸塩(結晶形1)
【化24】

【0143】
1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン(100mg、例2パートAに記載のとおり、すなわちtert−ブチルメチルエーテルから再結晶された「遊離塩基」物質を利用して調製される)を、酢酸エチル(1ml)に完全に溶かした。マレイン酸(34mg)も酢酸エチル(1ml)に溶かし、2つの溶液を合わせた。合わせると同時に乳状の白色沈殿を観察したが、攪拌すると溶液が再形成された。溶液を放置すると、約1時間後少量の白色固体がバイアルの底に沈殿していた。これを溶液中に掻きだすと、相当量の白色固体が沈殿した。非常に濃厚なスラリーを酢酸エチル(2ml)でさらに希釈し、一晩0〜40℃の温度循環プログラムにかけた。
【0144】
温度循環後、白色固体は混合物中に残っていた。この固体を濾過により混合物から単離し、真空中40℃で週末の間乾燥させた。1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレイン酸塩が固体として得られた(およそ93mgまたはおよそ95mg)。
【0145】
この例3の生成物の、d6−DMSO溶液でのH NMR(核磁気共鳴)スペクトルは、「遊離塩基」のモル量に対しておよそ化学量論的な量(1:1)のマレイン酸の存在を示しているようであり、酢酸エチルは全く存在しないようであった。例3で調製したモノマレイン酸塩のこの溶液H NMRのシフトパターンは、例4で調製した結晶形1モノマレイン酸塩のd6−DMSO溶液H NMRスペクトルのシフトパターンと全般的に一致した(詳細は例5.5参照)。
【0146】
例3−固体赤外(IR)データおよびスペクトル
例3で調製した固体モノマレイン酸塩物質の試料を、以下でさらに詳細に記載するとおり、固体減衰全反射赤外(IR)分光法にかけた(図2および3参照)。
【0147】
例3で調製した結晶形1モノマレイン酸塩の固体減衰全反射(ATR)赤外(IR)スペクトルは、Universal ATR Sampling Accessory(ダイアモンド/ZnSe)を備えたPerkinElmer Spectrum One FT−IR(フーリエ変換赤外)分光計で得た。固体をATRセルに対して圧縮して試料調製を行った。スペクトルの記録は、4cm−1の分解能で、4スキャンで行った。
【0148】
得られた結晶形1モノマレイン酸塩の固体減衰全反射赤外スペクトルを図2(IRスペクトル全体、縦軸に透過率のパーセント、横軸にcm−1で表す波数)および図3(IRスペクトルの「指紋領域」、縦軸に透過率のパーセント、横軸にcm−1で表す波数)に示し、とりわけ、以下の波数にバンド(ピーク)を含んでなる:
3021、2958、2949、2932、2864、2847、1700、1622、1604、1575、1509、1464、1422、1393、1375、1353、1341、1308、1297、1280、1247、1234、1205、1178、1169、1153、1132、1115、1089、1069、1048、1017、1005、985、962、944、908、883、869、840、828、802、784、765、725および685、cm−1
【0149】
このバッチは安全性試験または臨床試験に使用する予定でなかったので、これらのATR IRデータは調整された装置で集めず、情報を得るためにデータを取得した。PerkinElmer Spectrum One FT−IR装置は校正および保守点検されていたが、定期的にではなく、完全な記録もない。技術および装置の性質に基づき、データが、観察されたバンド、およびそれらの一般的プロファイルおよび相対強度という点でIR振動スペクトルを正確に表すだろうと考えられる。しかしながら、バンド(ピーク)位置は正確性が低いかもしれず、出願時には上述のIRバンド(ピーク)のそれぞれが持ちうる誤差は±2cm−1であると思われる。
【0150】
ATR IRスペクトルにおいて、以下の波数に比較的より強いIRバンド(ピーク)を観察した:
1700、1622、1464、1422、1353、1247、1234、1089、1048、869、840および765cm−1、ただし、それぞれのピークで±2cm−1の変動がある。
【0151】
例4
1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレイン酸塩(結晶形1)
【化25】

【0152】
1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン(500mg、1.44mmol;好ましくは、tert−ブチルメチルエーテルから再結晶された遊離塩基物質を利用する、例2パートAに記載のとおり調製される)を、攪拌および超音波処理をしながら酢酸エチル(5ml)に溶かした。マレイン酸(169mg、1.44mmol、1モル当量)も超音波処理をしながら酢酸エチル(5ml)に溶かした。2つの溶液を滴下しながら合わせた。合わせている間、白色沈澱物が形成し始めたが、攪拌するとすぐに溶解した。次いで、溶液を、先に合成したバッチの形態1の結晶性1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレイン酸塩(例3にしたがい調製)数ミリグラムによりシーディングした。シードが効き、沈殿が見え、次の数分間でスラリーが濃厚になった。さらに酢酸エチル(3ml)を加え、スラリーを約60分間攪拌のため置いてから、0〜40℃温度循環プログラムに移し、三晩(週末の間)放置した。
【0153】
温度循環の後、濃厚なスラリーが残り、得られた固体を濾過により単離して、真空中40℃で一晩乾燥させた。1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレイン酸塩が白色固体として得られた(592mg、88%理論収率)。
【0154】
この物質の試料を、X線粉末回折(XRPD)(以下の表1および図1参照)、固体赤外(IR)分光法(データ示さず、しかし、例3で調製した形態1結晶性モノマレイン酸塩のものと一致する固体IRスペクトルを与える)、示差走査熱量測定(DSC)(図4参照)、熱重量分析(TGA)、および蒸気収着量測定(GVS)(図5参照)を包含する、ある種類の分析のために除いた。また、d6−DMSO溶液中のH NMR(核磁気共鳴)スペクトルを測定した(図7参照)。分析の詳細については以下の例5を参照されたい。
【0155】
とりわけ、シャープなピークを有する図1に示されるXRPDディフラクトグラムから、固体モノマレイン酸塩は結晶性のようである。この1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレイン酸塩の結晶形を結晶形1と名付ける。
【0156】
蒸気収着量測定(GVS)分析は、異なる相対湿度での水の収着/脱着を測定し、形態1の結晶性モノマレイン酸塩の試料が、25℃で窒素下で相対湿度0〜90%の範囲にわたり、およそ0.4%w/wの水を可逆的に吸着および/または吸収、および/または脱着することを示した(図5および例5.3参照)。これは、同じ相対湿度範囲で、より多量の水を吸着および/または吸収、および/または脱着する例2パートCの固体塩酸塩(再結晶による精製前の「動的」固体)に優り、創薬性という点で利点を表すようである(比較データは図6および例5.4参照)。
【0157】
例5−例4で調製した結晶形1の1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレイン酸塩の分光学的および物理的分析
【0158】
例5.1−例4の結晶形1モノマレイン酸塩のX線粉末回折(XRPD)データおよびディフラクトグラム(図1)
例4で調製した1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレイン酸塩の結晶形1のX線粉末回折(XRPD)データは、X’Celerator検出器を備えたPW3040/60型Phillips PANalytical X’Pert Pro粉末回折計、シリアルナンバーDY1850(PANalytical UK, 7310 IQ Cambridge, Waterbeach, Cambridge CB25 9AY,英国から市販)で取得した。取得条件は以下のとおりである:放射:CuKα(銅Kα)、発生器電圧:40kV、発生器電流:45mA、開始角度:2.0°2シータ、終了角度:40.0°2シータ、ステップサイズ:0.0167°2シータ。ステップあたりの時間31.750秒であった。試料調製は、数ミリグラムの試料をSi(シリコン)ウェハ(零バックグラウンド)プレートに載せ、粉末の薄層を形成した。XRPDデータは、室温において、大気圧で空気中で集めた。
【0159】
角度2シータ(2θ)で表す、特徴的になる可能性があるピーク位置およびオングストローム(Å)で表すd間隔計算値を以下の表1にまとめる。Highscoreソフトウェア(PANalytical UK, 7310 IQ Cambridge, Waterbeach, Cambridge CB25 9AY,英国から市販)を利用して、生データからこれらを計算した。ピーク位置の実験誤差はおよそ±0.1°2シータ(2θ)である。相対的なピーク強度は、好ましい配向によって変動するであろう。
【0160】
図1はXRPDディフラクトグラムを示す。
【0161】
【表5】

【0162】
図1から分かるとおり、表1に列記したピークのうち7本のXRPDピークは中程度または強い強度のものであり、かつ/または結晶形1モノマレイン酸塩を含む試験物質の試料に見いだされる可能性が最も高いと思われ、それらの一部または全ては結晶形1に特徴的な可能性が高いピークであり、それらは以下の角度2シータ(2θ)の値で観察される:
9.2±0.1°、13.4±0.1°、17.0±0.1°、18.5±0.1°、19.8±0.1°、21.3±0.1°、および27.8±0.1°。
【0163】
例5.2 例4の結晶形1モノマレイン酸塩の示差走査熱量分析(DSC)(図4)、熱重量分析(TGA)、およびカールフィッシャー水分分析
例4で調製した1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレイン酸塩の結晶形1の示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムは、TA Q1000熱量計、シリアルナンバー1000−0126(TA Instruments Ltd, The Fleming Centre, Fleming Way, Manor Royal, Crawley RH10 9NB,英国から市販)を利用して得て、TA Universal Analysisソフトウェア(TA Instruments Ltd,英国から市販)を利用してデータ処理した。試料をアルミニウムパンに量り入れ、パンの蓋を上に載せ、パンを密封せずに軽くかしめた。実験は、大気圧および窒素気流下で、加熱速度毎分10℃で実施した。
【0164】
得られたDSCサーモグラムを図4に示す。
【0165】
図4に示されるとおり、シャープで主要な吸熱は、エンタルピーが104J/gであり、開始温度が149.2℃であり、推定される誤差が±5℃である。開始温度は、この試料では熱量計の測定誤差(±1.5℃)に基づき149.2±1.5℃であるが、異なる結晶形1試料の間の変動を見込むためにより広い誤差±5℃を明示する。
【0166】
DSC吸熱の開始温度を、吸熱の上昇曲線の(すなわち吸熱の低温部分の、例えば図4の吸熱の左側部分の)直線外挿がDSCサーモグラムのベースラインと交わる温度として計算する。
【0167】
そのため、結晶形1モノマレイン酸塩は、溶融開始温度が149.2±5℃(または、例えば試験した試料では149.2±1.5℃)であると考えられる。
【0168】
例4で調製した結晶形1モノマレイン酸塩のDSCサーモグラム(図4)において、結晶形が水和物であれば通常見られるだろう水の喪失による吸熱は全く見られないことが分かる。さらに、例4で調製した結晶形1モノマレイン酸塩の熱重量分析(TGA)(データ示さず)は、溶融の前に著しい重量減を示さない。これら2つのデータは、例4で調製した結晶形1モノマレイン酸塩が水和物ではなく無水物であることを示唆するようである。
【0169】
水分のカールフィッシャー分析を、例4で調製した結晶形1モノマレイン酸塩に(英国の通常の室内湿度で)実施した。このカールフィッシャー分析は、0.1%w/w未満の水分を報告した。
【0170】
したがって、本明細書に示されるDSC、TGAおよびカールフィッシャーデータならびにGVSデータから、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレイン酸塩の結晶形1は水和物でないと考えられる。その代わりに実質的に無水の結晶形である無水物であると考えられる。
【0171】
例5.3 例4で調製した結晶形1モノマレイン酸塩の蒸気収着量測定(GVS)(図5)
蒸気収着量測定(GVS)データは、窒素ガス下で種々の相対湿度(RH)で25℃において水蒸気散布を利用する完全な収着/脱着等温線を生成する、Hiden IGA−Sorp分析器モデル(Hiden Isochema Ltd., 231 Europa Boulevard, Gemini Business Park, Warrington WA5 7TN,英国から市販)で取得した。
【0172】
例4で調製した1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレイン酸塩の結晶形1の23ミリグラムの試料を、清潔で乾燥した風袋測定済み試料メッシュパンに入れ、IGA−Sorp内蔵天秤を利用して秤量した。
【0173】
結晶形1モノマレイン酸塩の25℃でのGVSデータを図5に示す。
【0174】
図5に示されるGVSデータの、目標相対湿度(RH)は以下のとおりである:
(i)約10%RHの増加量で、約30%RHから出発し約90%RHに上昇させ(結果は、図5の中間および右側の実線で示される)、次いで
(ii)約10%の増加量で、約90%RHから0%RHに低下させ(結果は、図5の点線で示される)、次いで
(iii)約5%RHの増加量で約10%RHまで、次いで約10%RHの増加量で約10%RHから約30%RHまで、0%RHから約30%RHに上昇させる(結果は、図5の左側の実線で示される)。
【0175】
試料の重量は、約10%RH毎の増加の後に記録された。約10%RH毎の増加後に、97%漸近線設定を利用して、平衡点が自動的に決定された。
【0176】
図5から、例4で調製した結晶形1モノマレイン酸塩の試料は、25℃で窒素下で0〜90%RHの範囲にわたり、およそ0.4%w/w(約0.40〜0.43%w/w)の水を(約0〜5%RHでの最低重量に対し)可逆的に吸着および/または吸収、および/または脱着することが分かる。RH変動に伴うこの小さい重量変化は、創薬にとって良好な物性であり、例えば、貯蔵、定量、秤量、および/または例えば錠剤への製剤のために、および/または結晶形1モノマレイン酸塩から形成される錠剤などの組成物の貯蔵、取扱い、および/または物性などのために良好な物性である。
【0177】
例5.4 比較データ:例2パートCの固体1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン塩酸塩の蒸気収着量測定(GVS)(図6)
例2パートCの固体1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン塩酸塩(速い結晶化により製造され、再結晶による精製の前の「動的」固体塩酸塩)の蒸気収着量測定(GVS)データを、窒素ガス下で種々の相対湿度(RH)で25℃において水蒸気散布を利用する完全な収着/脱着等温線を生成するDVS−1 SMSモデル(Surface Measurement System (SMS)から市販)で取得した。
【0178】
22ミリグラムの明示された固体塩酸塩試料を、清潔で乾燥した風袋測定済み試料ガラスパンに入れ、DVS−1内蔵天秤を利用して秤量した。
【0179】
明示された固体塩酸塩試料の25℃でのGVSデータを図6に示す。
【0180】
図6に示されるGVSデータの目標相対湿度(RH)は以下の範囲である:
(i)約10%RHの増加量で、約30%RHから約90%RHに上昇させ(結果を図6の中間および右側の線で示す、約30%RHでの最低質量に比べ約7〜8%重量増加から出発し、約90%RHでの最低質量に比べ約14〜15%の重量増加)、次いで
(ii)約10%RHの増加量で、約90%RHから0%RHに低下させ(結果を図6の線で示す、約90%RHで最低質量に対する約14〜15%重量増加から、ほとんど水平に、約30%RHでの約14%重量増加まで左に向かい、次いで、0%RHでの0%重量増加へと急速に低下する)、次いで、
(iii)約10%RHの増加量で、0%RHから約30%RHに上昇させる(結果を図6の左下の線として示す、0%RHでの0%重量増加から約30%RHでの約2%重量増加まで)。
【0181】
試料の重量は、約10%RH毎の増加の後に記録された。0.02dm/dtの設定を利用して、平衡点が自動的に決定された。
【0182】
図6から、明示された固体塩酸塩の試料(速い結晶化により製造し、再結晶による精製の前の「動的」固体塩酸塩)は、窒素下25℃で、0%から90%RHの範囲にわたり、およそ14〜15%w/wの水(0%RHでの最低質量に対し)を、可逆的に吸着および/または吸収および/または脱着することが分かる。明示された固体塩酸塩のこの試料では、約30%RHから出発して約90%RHまで上昇させる時、重量増加(0%RHでの最低質量に対し)は、約30%RHでの約7〜8%w/wから、約90%RHでの約14〜15%w/wに増加した(図6参照)。
【0183】
したがって、図6に示されるGVSデータから、明示された1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンの固体塩酸塩(速い結晶化により製造され、再結晶による精製の前の「動的」固体塩酸塩)は、相対湿度の変化につれて、水を吸収/吸着および/または脱着する傾向が大きいと考えられる。
【0184】
図6から、これにより、GVSデータが図5に示されている結晶形1モノマレイン酸塩に比べて、明示された固体塩酸塩(速い結晶化により製造され、再結晶による精製前の「動的」固体塩酸塩)が、外部環境の相対湿度が変化するにつれ、より大きい重量変化を受けることになる可能性があると結論づけられる。このように大きい重量増加/減少により、物性、貯蔵、測定、定量、および/または明示された固体塩酸塩(再結晶による精製前の「動的」固体塩酸塩)の製剤、および/またはそれから形成される錠剤などの医薬組成物の物性、貯蔵などの、実際的な問題が起こるようである。
【0185】
図5は、明示された固体塩酸塩(再結晶による精製前の「動的」固体塩酸塩)の重量増加/重量減少のこのような問題が、明示された固体塩酸塩の代わりに1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレイン酸塩の結晶形1を活性薬剤物質として、そして錠剤などの医薬組成物に使用することにより克服できることを示している。
【0186】
例5.5 例4の結晶形1モノマレイン酸塩のH NMR(核磁気共鳴)溶液スペクトル(図7)
例4で調製した1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレイン酸塩の結晶形1のH NMR(核磁気共鳴)スペクトルは、400MHz H NMR分光器を利用してd6−DMSO(d6−ジメチルスルホキシド)中の溶液として得られ、図7に示され、横軸はppm(百万分率)で表すケミカルシフトを表す。H NMRスペクトルは、0から10ppmのみ報告するが、以下のとおりのδ(ppm)でピークを有する(括弧内の積分/水素数は主に図7から取る):9.03(0.78H,broad s),7.41(2.00H,d),7.05(2.00H,d),6.04(1.96H,s),4.65(1.01H,m),4.01(約0.7H,broad m),3.87(約2.6H,m),3.1〜3.8(約18.2H,m,3.51ppmのトリプレットおよび3.32ppmの強いピークを含む),2.52(20.0H,s),2.00(4.03H,broad d),1.61(2.07H,m),1.26(6.13H,sまたはm)。これらの報告されるピークには、重水素化が不完全なDMSOによるピークも含まれる。
【0187】
図7に示され、先に報告した例4モノマレイン酸塩の溶液H NMRスペクトルは:
(i)(「遊離塩基」に比べ)活性薬剤化合物のピークのいくらかのシフトを示すようであり、塩の形成が起こった可能性を示し、
(ii)マレイン酸も(遊離マレイン酸自体に比べ)シフトしたことを示すようであり、
(iii)「遊離塩基」のモル量に対して、およそ化学量論的量(1:1)のマレイン酸が存在していることを示すようであり、
(iv)酢酸エチルが全く存在しないことを示しているようである。
【0188】
例4で調製した結晶形1モノマレイン酸塩のこのd6−DMSO溶液のH NMRスペクトルのシフトパターンは、例3で調製した結晶形1モノマレイン酸塩のd6−DMSO溶液H NMRスペクトルのシフトパターン(データ示さず)と全般的に一致した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレイン酸塩。
【請求項2】
結晶形である、請求項1に記載の1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレイン酸塩。
【請求項3】
1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレイン酸塩の結晶形1。
【請求項4】
実質的に以下の角度2シータの値で、以下のピークの4本以上を含んでなるX線粉末回折ディフラクトグラムを有する、結晶性1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレイン酸塩:
9.2±0.1°、13.4±0.1°、17.0±0.1°、18.5±0.1°、19.8±0.1°、21.3±0.1°、および27.8±0.1°;
ここで、前記X線粉末回折ディフラクトグラムは、銅KαX線およびステップサイズ0.0167°2シータ以下を利用するX線粉末回折計で測定される。
【請求項5】
実質的に以下の角度2シータの値で、以下のピークの8本以上を含んでなるX線粉末回折ディフラクトグラムを有する、結晶性1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレイン酸塩:
9.2±0.1°、11.8±0.1°、13.4±0.1°、14.7±0.1°、15.8±0.1°、16.2±0.1°、17.0±0.1°、18.5±0.1°、19.8±0.1°、20.3±0.1°、20.5±0.1°、21.0±0.1°、21.3±0.1°、27.1±0.1°、27.4±0.1°、27.8±0.1°、28.4±0.1°、および30.2±0.1°;
ここで、前記X線粉末回折ディフラクトグラムは、銅KαX線およびステップサイズ0.0167°2シータ以下を利用するX線粉末回折計で測定される。
【請求項6】
以下の表に示される、ピーク位置の実験誤差がおよそ±0.1°2シータである角度2シータ(2θ)でのピーク位置およびオングストローム(Å)での計算されたd間隔により特徴づけられるX線粉末回折ディフラクトグラムを有する、結晶性1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレイン酸塩:
【表1】

ここで、X線粉末回折ディフラクトグラムは、以下の取得条件:銅KαX線、発生器電圧40kV、発生器電流45mA、開始角度2.0°2シータ、終了角度40.0°2シータ、ステップサイズ0.0167°2シータ、ステップあたりの時間31.750秒を利用するX線粉末回折計により測定され、試料がシリコンウェハ(零バックグラウンド)プレートに載せられ、粉末の薄層を形成することにより調製される。
【請求項7】
前記X線粉末回折ディフラクトグラムが、銅KαX線および0.0167°2シータ以下のステップサイズを利用するX線粉末回折計により測定される、実質的に図1に示されるX線粉末回折ディフラクトグラムを有する、結晶性1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレイン酸塩。
【請求項8】
前記X線粉末回折ディフラクトグラムが、ステップあたりの時間31.750秒以上を利用し、シリコンウェハプレートに載せられた試料を利用し、開始角度2°2シータおよび終了角度40°2シータを利用して測定される、請求項4、5および7のいずれか一項に記載の結晶性1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレイン酸塩。
【請求項9】
以下のピークの5本以上を含んでなる固体減衰全反射赤外スペクトルを有する、結晶性1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレイン酸塩:
1700、1622、1464、1422、1353、1247、1234、1089、1048、869、840および765cm−1
ここで各ピークに±2cm−1の変動が見込まれている。
【請求項10】
請求項9に定義されたピークの7本以上を含んでなる、固体減衰全反射赤外スペクトルを有する、請求項9に記載の結晶性1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレイン酸塩。
【請求項11】
以下のピークの10本以上を含んでなる固体減衰全反射赤外スペクトルを有する、結晶性1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレイン酸塩:
1700、1622、1604、1575、1509、1464、1422、1393、1375、1353、1341、1308、1297、1280、1247、1234、1205、1178、1169、1153、1132、1115、1089、1069、1048、1017、1005、985、962、944、908、883、869、840、828、802、784、765、725および685cm−1
ここで各ピークに±2cm−1の変動が見込まれている。
【請求項12】
実質的に図2および/または図3に示される固体減衰全反射赤外スペクトルを有する、結晶性1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレイン酸塩。
【請求項13】
実質的に図4に示され、かつ/または、大気圧で窒素気流下において毎分約10℃の加熱速度を利用する熱量計を利用して測定される場合、149.2±5℃の開始温度の吸熱を有する示差走査熱量測定サーモグラムを有する、結晶性1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレイン酸塩。
【請求項14】
1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレイン酸塩および薬剤的に許容できるキャリアを含んでなる、医薬組成物。
【請求項15】
以下の工程を含んでなる、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレイン酸塩の結晶形1の調製方法:
(a)1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン、C2−4アルキルC2−4アルカノアートを含んでなる溶媒、およびマレイン酸を、マレイン酸および1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンが溶媒に溶解する条件下で混合する工程、
(b)任意に、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレイン酸塩の結晶形1により、得られた混合物をシーディングする工程、
(c)1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレイン酸塩の結晶形1を混合物から結晶化させ、または結晶化を起こす工程、
(d)1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレイン酸塩の結晶形1を溶媒から分離する工程、および
(e)任意に、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレイン酸塩の結晶形1を乾燥させる工程。
【請求項16】
工程(a)において、溶媒が酢酸エチルを含んでなる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
工程(a)において、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンのモル量に対して、約1モル当量のマレイン酸が使用される、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
以下の工程を含んでなる、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンまたはその薬剤的に許容できる塩の調製方法:
【化1】

(a)カルボン酸基が活性化されている4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)安息香酸の非酸クロライド誘導体と、1−イソプロピル−ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンとを反応させる工程;および
(b)任意に、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンの薬剤的に許容できる塩を調製する工程。
【化2】

【請求項19】
方法工程(a)が、4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)安息香酸のカップリング試薬による活性化と、それに次ぐ1−イソプロピル−ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンとの反応を含んでなる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記カップリング試薬がカルボニルジイミダゾールである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)安息香酸のカルボニルジイミダゾールカップリング試薬による活性化、およびその後の1−イソプロピル−ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンとの反応が、両方ともアセトニトリルおよび/またはプロピオニトリルを含んでなる反応溶媒中で実施される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)安息香酸のカルボニルジイミダゾールカップリング試薬による活性化、およびその後の1−イソプロピル−ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンとの反応が、両方ともアセトニトリルを含んでなる反応溶媒中で実施される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
工程(a)において使用される1−イソプロピル−ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンが、1−イソプロピル−ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンビストリフルオロ酢酸塩を塩基で処理して調製される、請求項18〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
以下の式を有する、1−イソプロピル−ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンビストリフルオロ酢酸塩。
【化3】

【請求項25】
固体形態である、請求項24に記載の1−イソプロピル−ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンビストリフルオロ酢酸塩。
【請求項26】
式(III)の化合物:
【化4】

(上式中、Pは、C1−6直鎖アルキルまたはイソプロピルもしくはイソブチル、またはベンジルのような保護基を表す)を調製する方法であって、
(i)式(I)の化合物と、式(II)の4−ヒドロキシテトラヒドロピランまたはそのOH基が活性化されているその誘導体とを反応させる工程を含んでなり、
【化5】

(上式中、Pは式(III)の化合物に対して定義された保護基を表す)
前記反応工程(i)が、トルエンおよび/またはキシレンを含んでなるか、またはトルエンおよび/またはキシレンから本質的になる反応溶媒中で実施される方法。
【請求項27】
前記反応工程(i)が、トルエンを含んでなるか、トルエンから本質的になる反応溶媒中で実施される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
約40から約80℃の反応温度が工程(i)で利用される、請求項26または27に記載の方法。
【請求項29】
前記反応工程(i)が、トリフェニルホスフィンおよびジイソプロピルアゾジカルボキシラートの存在下で実施される、請求項26、27または28に記載の方法。
【請求項30】
化合物(I)に対して約1.3〜2.0モル当量のトリフェニルホスフィンおよびジイソプロピルアゾジカルボキシラートが存在し、かつトリフェニルホスフィンおよびジイソプロピルアゾジカルボキシラートが、互いに実質的に同じモル当量数で存在する、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記反応混合物が加熱され、次いで、溶媒の融点以下に冷却されないという条件で−10から25℃に冷却され、次いで形成された固体の副生成物(トリフェニルホスフィンオキシドとジイソプロピルヒドラジンジカルボキシラートとの付加物)が除去される、請求項29または30に記載の方法。
【請求項32】
前記反応混合物が、反応混合物の冷却後に、トリフェニルホスフィンオキシドとジイソプロピルヒドラジンジカルボキシラートとの付加物によりシーディングされる、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
以下の工程を含んでなる、4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)安息香酸である式(IV)の化合物の調製方法:
【化6】

請求項26〜32のいずれか一項に定義された反応工程(i)を実施する工程、次いで
(ii)PがC1−6直鎖アルキルまたはイソプロピルもしくはイソブチルを表す場合の式(III)の化合物内のエステルの加水分解によるか、またはPがベンジルを表す場合の水素化による、得られた式(III)の化合物を式(IV)の化合物へ転化する工程。
【請求項34】
以下の工程を含んでなる、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンまたはその塩の調製方法:
【化7】

請求項26〜32のいずれか一項に定義される反応工程(i)を実施する工程;次いで
(ii)式(III)の化合物を、4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)安息香酸である式(IV)の化合物に転化する工程;次いで
a)4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)安息香酸を、カルボン酸基が活性化されたその非酸クロライド誘導体に転化し、次いでこれと、1−イソプロピル−ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンとを反応させる工程;または
aa)4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)安息香酸を4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)ベンゾイルクロライドに転化し、次いでこれと、1−イソプロピル−ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンとを反応させる工程のいずれか;および
任意に1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンの塩を調製する工程。
【請求項35】
以下の工程を含んでなる、4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)安息香酸である式(IV)の化合物の調製方法:
【化8】

(i)PがC1−6直鎖アルキルまたはイソプロピルもしくはイソブチルを表す式(I)の化合物と、式(II)の4−ヒドロキシテトラヒドロピランまたはそのOH基が活性化されているその誘導体とを反応させて、Pが式(I)の化合物の場合と同じ定義を有する式(III)の化合物を調製する工程、および
(ii)式(III)の化合物内のエステルを加水分解して、式(IV)の化合物を形成する工程であって、
反応工程(i)および(ii)が両方とも、トルエンおよび/またはキシレンを含んでなるか、またはトルエンおよび/またはキシレンから本質的になる反応溶媒中で実施される方法。
【請求項36】
前記反応工程(i)がトリフェニルホスフィンおよびジイソプロピルアゾジカルボキシラートの存在下で実施される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
工程(i)で製造された式(III)の化合物のトルエンおよび/またはキシレン溶液が、直接、すなわち式(III)の化合物の単離をせずに、次の加水分解工程(ii)に使用される、請求項35または36に記載の方法。
【請求項38】
式(III)の化合物内のエステルが加水分解されて、水性アルカリ条件下で式(IV)の化合物を形成する、請求項35、36または37に記載の方法。
【請求項39】
以下の工程を含んでなる、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンまたはその塩の調製方法:
【化9】

請求項35、36、37または38に定義される反応工程(i)および(ii)を実施する工程;次いで、
a)4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)安息香酸を、カルボン酸基が活性化されたその非酸クロライド誘導体に転化し、次いでこれと、1−イソプロピル−ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンとを反応させる工程;または
aa)4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)安息香酸を4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)ベンゾイルクロライドに転化し、次いでこれと、1−イソプロピル−ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンとを反応させる工程のいずれか;および
任意に1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンの塩を調製する工程。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2012−500192(P2012−500192A)
【公表日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−522523(P2011−522523)
【出願日】平成21年8月14日(2009.8.14)
【国際出願番号】PCT/EP2009/060578
【国際公開番号】WO2010/018231
【国際公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(397009934)グラクソ グループ リミテッド (832)
【氏名又は名称原語表記】GLAXO GROUP LIMITED
【住所又は居所原語表記】Glaxo Wellcome House,Berkeley Avenue Greenford,Middlesex UB6 0NN,Great Britain
【Fターム(参考)】