説明

1種又は数種のカロチノイドの乾燥粉末の製造方法

本発明は、1種又は数種のカロチノイドの乾燥粉末の製造方法に関し、該方法は、a)1種又は数種のカロチノイドを、トレハロースと少なくとも1種のタンパク質含有保護コロイドとからなる混合物の水性の分子分散溶液又はコロイド分散溶液に懸濁させ、そしてb)得られた懸濁液を、水及び場合により追加使用した溶剤の除去により乾燥粉末に変換し、続いて、場合により被覆材料の存在下に乾燥することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1種又は数種のカロチノイドの乾燥粉末、好ましくはキサントフィル含有乾燥粉末、特にアスタキサンチン、カンタキサンチン、ルテイン、ゼアキサンチン、シトラナキサンチン及びβ-アポ-8’-カロチン酸エチルからなる群から選択されるキサントフィルの乾燥粉末の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カロチノイドの種類の物質は、二つの主なグループ、すなわちカロチン及びキサントフィルに分類される。例えば、β-カロチン又はリコピンのような純粋なポリエン炭化水素であるカロチノイドは、ヒドロキシ、エポキシ及び/又はカルボニル基のような酸素官能基をも有するキサントフィルとは異なる。後者のグループの典型的な代表例は、特にアスタキサンチン、カンタキサンチン、ルテイン及びゼアキサンチンである。
【0003】
酸素含有カロチノイドは、シトラナキサンチン及びβ-アポ-8’-カロチン酸エチルをも包含する。
【0004】
酸素含有カロチノイドは自然界に広く分布しており、特にトウモロコシ(ゼアキサンチン)、グリーン・ビーンズ(ルテイン)、パプリカ(カプサンチン)、卵黄(ルテイン)並びにエビ及びサーモン(アスタキサンチン)に存在し、これらの食料品にそれらの特徴的な色を与える。
【0005】
合成により得ることができるだけでなく天然源からも単離できるこれらのポリエンは、ヒト食物及び動物飼料の産業及び製薬部門のための重要な着色材料であり、そしてアスタキサンチンの場合のように、サーモンにおけるプロビタミンA活性を有する活性物質である。
【0006】
カロチン及びキサントフィルの両者は水に不溶性である一方、しかしながら、脂肪及び油中の溶解度はごく低いことが認められている。この限られた溶解度及び酸化に対する大きな感受性は、化学合成により得られた比較的粗大な粒子生成物をヒト食物及び動物飼料の着色に直接使用するのを妨げている。なぜならば、粗い結晶形態では、これらの物質は貯蔵中に安定でなく、そして悪い着色結果しか与えないからである。キサントフィルを実際に使用するために不利であるこれらの効果は、水性媒質において特に明白である。
【0007】
ヒト食品の直接着色の色の収率の改善は、活性物質が微粉化した形態にあり、そして場合により保護コロイドにより酸化から保護されている特別に製造された製剤によってしか達成することができない。加えて、動物飼料におけるこれらの製剤の使用は、カロチノイド及びキサントフィルのより大きな生体利用性に導き、従って、例えば卵黄又は魚類の染色において間接的に改善された着色効果に導く。
【0008】
色の収率を改善し、そして吸収性又は生体利用性を上昇させるための種々の方法が記載されており、それらの全ては、活性物質の結晶子のサイズを減少させ、そして粒子を10μm未満にすることを目指している。
【0009】
多数の方法、特にChimia 21, 329 (1967)、WO91/06292及びWO94/19411に記載された方法は、コロイドミルを用いるカロチノイドの粉砕を伴い、従って2〜10μmの粒径を達成する。
【0010】
また、例えば、DE-A-1211911又はEP-A-0410236に記載された、乳化/噴霧乾燥を組み合わせた多数の方法がある。
【0011】
欧州特許EP-B-0065193によれば、微粉化した粉末形態のカロチノイド生成物は、カロチノイドを揮発性の水混和性有機溶剤に高められた温度で、場合により高められた圧力で溶解し、そして保護コロイドの水溶液と混合することによりカロチノイドを沈殿させ、次いで噴霧乾燥することによって製造される。
【0012】
微粉化した粉末形態のカロチノイド生成物を製造するための類似方法は、EP-A-0937412に記載されており、水非混和性溶剤が用いられる。
【0013】
EP-A-0937412に記載されたように製造したキサントフィル活性物質のナノ粒子分散物は、しかしながら、多くの場合に下記の現象を示す。
【0014】
キサントフィル含有活性物質の水性分散液は、多くの場合に、特に濃縮に際して、コロイドとして不安定である。一部は沈降により、そして一部はクリーミングにより、活性物質粒子の凝集は、その後の分散液の乾燥粉末への変換を不可能にする。
【0015】
従って、着色効果及び生体利用率に関してキサントフィル含有製剤に対してなされる大きな要求は、上記の方法について記載した問題があるために、必ずしも満たすことができるとは限らない。
【0016】
ゼラチンの別の欠点は、それらが強い接着性を有することである。液体系に慣用の乾燥方法、例えば、噴霧乾燥法などでは、ゼラチン含有生成物を用いると、糸の形成又はケーキングが生じることがある。
【0017】
追加の要因は、消費者によるゼラチン含有生成物の受け入れが減少することである。
【0018】
しばしば使用される他の保護コロイド、例えば、アラビアゴム、澱粉、デキストリン、ペクチン又はトラガントなどにおいて、多くの場合、比較的低濃度の脂溶性物質の混合しか可能でない。加えて、アラビアゴムは特に、収穫高が悪いためにこれまで十分な量で入手できるとは限らなかった。
【0019】
合成コロイド、例えばポリビニルピロリドン又は半合成ポリマー、例えばセルロース誘導体も同様に限られた乳化能を示し、そして特にヒト食物部門では必ずしも受け入れられない。
【0020】
DE-A-4424085は、液体可溶性活性物質のための保護コロイドとして部分分解ダイズタンパク質の使用を記載している。ダイズタンパク質は0.1〜そこに開示された5%の加水分解度を有する。これらの保護コロイドを用いて製造された製剤の色の濃さは、必ずしも十分ではない。
【0021】
ドイツ公開明細書DE-A-10104494は、保護コロイドとして大豆タンパク質を乳糖と一緒に用いるカロチノイド乾燥粉末の製造を記載している。そこに開示されたカロチノイド調製物の改善された冷水再分散性及び増加した色の濃さにもかかわらず、これらの処方物の貯蔵安定性は、活性物質含有量が高い場合には特に、必ずしも十分ではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明の目的は、先行技術の上記欠点を示さず、そして調製物において高いカロチノイド含有量の達成を可能にする、カロチノイド乾燥粉末、特に酸素含有カロチノイドの乾燥粉末の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明者らは、この目的が、
a)1種又はそれ以上のカロチノイドを、トレハロース及び少なくとも1種のタンパク質含有保護コロイドの混合物の水性の分子溶液又はコロイド溶液と混合し、そして
b)形成された懸濁液を水及び場合により追加使用した溶剤の除去により乾燥粉末に変換し、続いて、場合により被覆材料の存在下に乾燥すること
を含む、1種又はそれ以上のカロチノイドの乾燥粉末の製造方法によって達成されることを見出した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
好適なタンパク質含有保護コロイドは、下記のものである:
ゼラチン、例えばブタ又は魚類ゼラチン、特に0〜250の範囲のブルーム数を有する酸又は塩基で分解したゼラチン、実に特に好ましくはゼラチンA100及びA200、並びにブルーム数0及び15000〜25000Dの分子量を有する酵素分解した低分子量ゼラチンタイプ、例えば、Collagel A 及び Gelitasol P (Stoess, Eberbach から)など、及びこれらのゼラチンタイプの混合物;
カゼイン及び/又はカゼイン酸塩、例えばカゼイン酸ナトリウム;
植物性タンパク質、例えばダイズ、コメ及び/又はコムギタンパク質、これらの植物性タンパク質は、部分分解された形態又は分解されていない形態であってよい。
【0025】
本発明の目的に用いられる好ましい保護コロイドは、カゼイン又はカゼイン酸塩又はそれらの混合物である。カゼイン酸ナトリウムは、特に好ましい保護コロイドとして挙げるべきである。
【0026】
上記方法の好ましい実施形態は、工程段階a)で製造した懸濁液を、乾燥粉末に変換する前に粉砕することを含む。この場合、活性物質[カロチノイド(1種又は数種)]は、粉砕工程の前に結晶形態で懸濁させることが好ましい。
【0027】
粉砕は、本来公知の方法で、例えばボールミルを用いて行うことができる。これは、使用するミルのタイプに応じて、粒子が、Fraunhofer回折により決定して0.1〜100μm、好ましくは0.2〜50μm、特に好ましくは0.2〜20μm、実に特に好ましくは0.2〜5μm、特に0.2〜0.8μmの平均粒径D[4.3]を有するまで粉砕することを必要とする。D[4.3]という用語は、容積-加重平均直径を指す(Handbook for Malvern Mastersizer S, Malvern Instruments Ltd., UK 参照)。
【0028】
粉砕及びそのために使用する装置のさらなる詳細は、特に Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry, Sixth Edition, 2000, Electronic Release, Size Reduction, Chapter 3.6.: Wet Grinding、及びEP-A-0498824に見出すことができる。
【0029】
本発明方法の同様に好ましい変法は、下記の段階:
)1種又はそれ以上のカロチノイドを水混和性有機溶剤又は水と水混和性有機溶剤との混合物に溶解するか、又は
)1種又はそれ以上のカロチノイドを水非混和性有機溶剤に溶解し、そして
)a)又はa)のようにして得られた溶液を、トレハロースと少なくとも1種のタンパク質含有保護コロイドとの混合物の水性の分子溶液又はコロイド溶液と混合し、カロチノイドの疎水性相をナノ分散相として生じさせること
を含む、段階a)における懸濁操作を含む。
【0030】
段階a)で用いられる水混和性溶剤は、特に、炭素、水素及び酸素だけを含む水混和性、熱安定性、揮発性の溶剤、例えばアルコール、エーテル、エステル、ケトン及びアセタールである。好都合に用いられる溶剤は、少なくとも10%水混和性であり、200℃未満の沸点を有し、そして/又は10個未満の炭素を有するものである。特に好ましく用いられるものは、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、1,2-ブタンジオール、1-メチルエーテル、1,2-プロパンジオール1-n-プロピルエーテル、テトラヒドロフラン又はアセトンである。
【0031】
「水非混和性有機溶剤」という用語は、本発明の目的で、大気圧下で10%未満の水中溶解度を有する有機溶剤を意味する。これに関して可能な溶剤は、特に、ハロゲン化脂肪族炭化水素、例えば塩化メチレン、クロロホルム及びテトラクロロメタン、カルボン酸エステル、例えば炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸プロピレン、ギ酸エチル、酢酸メチル、エチル又はイソプロピル、並びにエーテル、例えばメチルtert-ブチルエーテルなどである。好ましい水非混和性有機溶剤は、炭酸ジメチル、炭酸プロピレン、ギ酸エチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル及びメチルtert-ブチルエーテルからなる群からの化合物である。
【0032】
本発明方法は、好ましくは酸素含有カロチノイド、特に好ましくはアスタキサンチン、カンタキサンチン、ルテイン、ゼアキサンチン、シトラナキサンチン及びβ-アポ-8’-カロチン酸エチル、実に特に好ましくはアスタキサンチン及びカンタキサンチンからなる群から選択される化合物の乾燥粉末の製造を伴う。
【0033】
上記の乾燥粉末は、少なくとも1種のカロチノイドを水混和性有機溶剤に30℃を超える温度、好ましくは50℃〜240℃、特に100〜200℃、特に好ましくは140℃〜180℃の温度で、場合により加圧下に溶解するような方法で有利に製造される。
【0034】
高い温度への暴露は、若干の状況では、全トランス異性体の望ましい高い割合を減少させることがあるで、カロチノイド(1種又は数種)の溶解はできるだけ迅速に、例えば数秒の範囲内で、例えば0.1〜10秒、特に好ましくは1秒未満で行われる。分子溶液を迅速に製造するために、高められた圧力、例えば20バール〜80バール、好ましく30〜60バールの範囲の圧力を負荷することが有利な場合がある。
【0035】
続いて、このようにして得られた分子溶液に、トレハロースと少なくとも1種のタンパク質含有保護コロイドとの混合物の、場合により冷却した分子溶液又はコロイド溶液を、約35℃〜80℃の混合温度が設定されるように、直接に加える。
【0036】
この間に、溶剤成分は水相中に移行し、そしてカロチノイド(1種又は数種)の疎水性相がナノ分散相として生成する。
【0037】
この点で、上記分散操作のための方法及び装置の詳細な説明についてはEPB-0065193が参照される。
【0038】
本発明は同様に、
a)アスタキサンチンを、水混和性有機溶剤又は水と水混和性有機溶剤との混合物に30℃より高い温度で溶解し、
b)生成した溶液を、トレハロースとカゼイン若しくはカゼイン酸塩との混合物又はトレハロースとカゼイン及びカゼイン酸塩との混合物の水性の分子溶液又はコロイド溶液と混合し、そして
c)形成された懸濁液を乾燥粉末に変換する、
アスタキサンチン乾燥粉末の製造方法に関する。
【0039】
トレハロースとカゼイン及び/又はカゼイン酸塩との、特にトレハロースとカゼイン酸ナトリウムとの混合物を用いるアスタキサンチン含有乾燥粉末の製造方法が、これに関して実に特に好ましい。
【0040】
乾燥粉末への変換は、特に、噴霧乾燥、噴霧冷却、凍結乾燥又は流動床乾燥により、場合により被覆材料の存在下に行うことができる。好適な被覆剤は、特にトウモロコシ澱粉、シリカ又はそのほかにリン酸三カルシウムである。
【0041】
酸化的分解に対する活性物質の安定性を増大するために、安定剤、例えばα-トコフェロール、t-ブチルヒドロキシトルエン、t-ブチルヒドロキシアニソール、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム又はエトキシクインを、粉末の乾燥質量に基づいて2〜10重量%、好ましくは3〜7重量%の濃度で加えることが有利である。それらは水相又は溶剤相の何れに加えてもよいが、それらは好ましくは活性物質と一緒に溶剤相に溶解される。
【0042】
微生物分解に対する活性物質の安定性を増大するために、保存剤、例えば4-ヒドロキシ安息香酸メチル、4-ヒドロキシ安息香酸プロピル、ソルビン酸又は安息香酸又はそれらの塩などを調製物に加えることが得策な場合がある。
【0043】
若干の状況では、さらに生理的に許容される油、例えばゴマ油、トウモロコシ油、綿実油、大豆油又は落花生油、及び中鎖植物脂肪酸のエステルを、キサントフィル(1種又は数種)に基づいて0〜500重量%、好ましくは10〜300重量%、特に好ましくは20〜100重量%の濃度で溶剤相に溶解し、次いで水相と混合して活性物質及び該添加物と一緒に極めて微細な粒子として沈殿させることも有利な場合がある。
【0044】
保護コロイド及びトレハロースとカロチノイドとの比率は、一般的に、生成した最終生成物が、0.1〜40重量%、好ましくは1〜35重量%、特に好ましくは5〜30重量%、実に特に好ましくは10〜25重量%の少なくとも1種のカロチノイド、1〜40重量%、好ましくは2〜30重量%、特に好ましくは3〜20重量%、実に特に好ましくは5〜15重量%の少なくとも1種の保護コロイド、及び10〜80重量%、好ましくは20〜75重量%、特に好ましくは30〜70重量%、実に特に好ましくは40〜60重量%のトレハロース(全てのパーセンテージは粉末の乾燥質量に基づく)、並びに場合により少量の安定剤及び保存剤を含むように選択される。
【0045】
本発明はまた、最初に記載した方法の一つにより得ることのできるカロチノイドの乾燥粉末に関する。
【0046】
これらは、好ましくはアスタキサンチン、カンタキサンチン、ルテイン、ゼアキサンチン、シトラナキサンチン及びβ-アポ-8’-カロチン酸エチルからなる群から選択される酸素含有カロチノイド、特に好ましくはカンタキサンチン及びアスタキサンチン、実に特に好ましくはアスタキサンチンを含む乾燥粉末である。
【0047】
本発明の調製物中のアスタキサンチンの含有量は、好ましくは10〜25重量%の範囲にある。
【0048】
本発明の乾燥粉末は、特に、1μm未満の粒径範囲の活性物質の一様な微細分布が生じるように乾燥粉末を水性系に問題なしに再分散できるという事実によって区別される。
【0049】
トレハロースとタンパク質含有保護コロイド、特にカゼイン又はカゼイン酸ナトリウムとの組み合わせを製剤賦形剤として使用することは、他の糖、例えば乳糖又は蔗糖と比較して、それらを用いて製造したカロチノイド製剤が特に高い貯蔵安定性を示すという利点を有する。
【0050】
上記乾燥粉末は、ヒト食物及び動物飼料の添加物として、また医薬調製物の添加物として特に適している。動物飼料部門におけるカロチノイド含有乾燥粉末の典型的な使用分野は、例えば、水産養殖魚の着色、並びに家禽飼育における卵黄及びブロイラー皮膚の着色である。
【実施例】
【0051】
本発明方法のための手順を下記実施例において詳細に説明する。
【0052】
実施例1
トレハロースとカゼイン酸ナトリウムとの組み合わせを用いるアスタキサンチン乾燥粉末の製造
66gの結晶性アスタキサンチン及び15gのα-トコフェロールを30℃の温度で、加熱容器に入れた室温の496gの共沸性イソプロパノール/水混合物に懸濁させた。次いでこの活性物質懸濁液を90℃に加熱し、3.6kg/hの流速で連続的に混合し、さらに220℃の温度で4.6kg/hの流速を用いてイソプロパノール/水を共沸させると、アスタキサンチンは55バールの圧力で設定された165℃の混合温度で溶解した。次いでこの活性物質溶液を直ちに、8724gの蒸留水中の29gのカゼイン酸ナトリウム及び166gのトレハロースの溶液からなる水相(pHを1M NaOHで9.5に調節した)と55kg/hの流速で混合した。
【0053】
混合したときに生成した活性物質粒子は、イソプロパノール/水混合物中で130nmの粒径を有し、E1/1値1)は117であった。
【0054】
次いで活性物質懸濁液を、薄層蒸発装置で約27.4%乾燥物質含有量の濃度まで蒸発させ、噴霧乾燥した。この乾燥粉末は22.4重量%のアスタキサンチン含有量を有した。水に再分散させた乾燥粉末は141nmの粒径及び120のE1/1値を有した。
【0055】
1) E1/1値は、これに関して、1cmキュベットに入れた20重量%乾燥粉末の0.5%濃度の水性分散液の吸収極大における比吸収係数を定める。
【0056】
実施例2(比較例)
乳糖とカゼイン酸ナトリウムとの組み合わせを用いるアスタキサンチン乾燥粉末の製造
83.5gの結晶性アスタキサンチン及び20gのα-トコフェロールを30℃の温度で、加熱容器に入れた室温の626gの共沸性イソプロパノール/水混合物に懸濁させた。次いでこの活性物質懸濁液を90℃に加熱し、2.1kg/hの流速で連続的に混合し、さらに220℃の温度で2.6kg/hの流速を用いてイソプロパノール/水を共沸させると、アスタキサンチンは55バールの圧力で設定された165℃の混合温度で溶解した。次いでこの活性物質溶液を直ちに、20580gの蒸留水中の83.5gのカゼイン酸ナトリウム及び177gの乳糖の溶液からなる水相(pHを1M NaOHで9.5に調節した)と60kg/hの流速で混合した。
【0057】
混合したときに生成した活性物質粒子は、イソプロパノール/水混合物中で133nmの粒径を有し、E1/1値は123であった。
【0058】
次いで活性物質懸濁液を、薄層蒸発装置で約6.9%乾燥物質含有量の濃度まで蒸発させ、噴霧乾燥した。この乾燥粉末は22.5重量%のアスタキサンチン含有量を有した。水に再分散させた乾燥粉末は167nmの粒径及び123のE1/1値を有した。
【0059】
実施例3(比較例)
乳糖とダイズタンパク質との組み合わせを用いるアスタキサンチン乾燥粉末の製造
83.5gの結晶性アスタキサンチン及び20gのα-トコフェロールを30℃の温度で、加熱容器に入れた室温の626gの共沸性イソプロパノール/水混合物に懸濁させた。次いでこの活性物質懸濁液を90℃に加熱し、2.1kg/hの流速で連続的に混合し、さらに220℃の温度で2.6kg/hの流速を用いてイソプロパノール/水を共沸させると、アスタキサンチンは55バールの圧力で設定された165℃の混合温度で溶解した。次いでこの活性物質溶液を直ちに、11010gの蒸留水中の83.5gのダイズタンパク質及び177gの乳糖の溶液からなる水相(pHを1M NaOHで9.5に調節した)と32.5kg/hの流速で混合した。
【0060】
混合したときに生成した活性物質粒子は、イソプロパノール/水混合物中で107nmの粒径を有し、E1/1値は124であった。
【0061】
次いで活性物質懸濁液を、薄層蒸発装置で約23.7%乾燥物質含有量の濃度まで蒸発させ、噴霧乾燥した。この乾燥粉末は23重量%のアスタキサンチン含有量を有した。水に再分散させた乾燥粉末は317nmの粒径及び101のE1/1値を有した。
【0062】
実施例4(比較例)
乾燥グルコースシロップ(Glucidex(登録商標)47、Roquette Freres から)とカゼイン酸ナトリウムとの組み合わせを用いるアスタキサンチン乾燥粉末の製造
66gの結晶性アスタキサンチン及び15gのα-トコフェロールを30℃の温度で、加熱容器に入れた室温の496gの共沸性イソプロパノール/水混合物に懸濁させた。次いでこの活性物質懸濁液を90℃に加熱し、3.6kg/hの流速で連続的に混合し、さらに220℃の温度で4.6kg/hの流速を用いてイソプロパノール/水を共沸させると、アスタキサンチンは55バールの圧力で設定された165℃の混合温度で溶解した。次いでこの活性物質溶液を直ちに、8724gの蒸留水中の28.7gのカゼイン酸ナトリウム及び165.6gのGlucidex 47の溶液からなる水相(pHを1M NaOHで9.5に調節した)と56kg/hの流速で混合した。
【0063】
混合したときに生成した活性物質粒子は、イソプロパノール/水混合物中で144nmの粒径を有し、E1/1値は115であった。
【0064】
次いで活性物質懸濁液を、薄層蒸発装置で約19.4%乾燥物質含有量の濃度まで蒸発させ、噴霧乾燥した。この乾燥粉末は23.6重量%のアスタキサンチン含有量を有した。水に再分散させた乾燥粉末は623nmの粒径及び119のE1/1値を有した。
【0065】
実施例5(比較例)
乾燥グルコースシロップ(Glucidex(登録商標)47、Roquette Freresから)とカゼイン酸ナトリウムとの組み合わせを用いるアスタキサンチン乾燥粉末の製造
83.5gの結晶性アスタキサンチン及び20gのα-トコフェロールを30℃の温度で、加熱容器に入れた室温の626gの共沸性イソプロパノール/水混合物に懸濁させた。次いでこの活性物質懸濁液を90℃に加熱し、3.6kg/hの流速で連続的に混合し、さらに220℃の温度で4.6kg/hの流速を用いてイソプロパノール/水を共沸させると、アスタキサンチンは55バールの圧力で設定された165℃の混合温度で溶解した。次いでこの活性物質溶液を直ちに、11010gの蒸留水中の83.5gのカゼイン酸ナトリウム及び177gのGlucidex 47の溶液からなる水相(pHを1M NaOHで9.5に調節した)と56kg/hの流速で混合した。
【0066】
混合したときに生成した活性物質粒子は、イソプロパノール/水混合物中で155nmの粒径を有し、E1/1値は116であった。
【0067】
次いで活性物質懸濁液を、薄層蒸発装置で約25%乾燥物質含有量の濃度まで蒸発させ、噴霧乾燥した。この乾燥粉末は22.3重量%のアスタキサンチン含有量を有した。水に再分散させた乾燥粉末は179nmの粒径及び117のE1/1値を有した。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)1種又はそれ以上のカロチノイドを、トレハロースと少なくとも1種のタンパク質含有保護コロイドとの混合物の水性の分子溶液又はコロイド溶液と混合し、そして
b)形成された懸濁液を、水及び場合により追加使用した溶剤の除去により乾燥粉末に変換し、続いて、場合により被覆材料の存在下に乾燥すること
を含む、1種又はそれ以上のカロチノイドの乾燥粉末の製造方法。
【請求項2】
工程段階a)において製造した懸濁液を乾燥粉末に変換する前に粉砕する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程段階a)における懸濁操作が下記の段階:
)1種又はそれ以上のカロチノイドを、水混和性有機溶剤又は水と水混和性有機溶剤との混合物に溶解するか、又は
)1種又はそれ以上のカロチノイドを水非混和性有機溶剤に溶解し、そして
)a)又はa)のようにして得られた溶液を、トレハロースと少なくとも1種のタンパク質含有保護コロイドとの混合物の水性の分子溶液又はコロイド溶液と混合し、カロチノイドの疎水性相をナノ分散相として生じさせること
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
カゼイン又はカゼイン酸塩又はそれらの混合物を保護コロイドとして使用する、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
使用するカロチノイドが酸素含有カロチノイドである、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
酸素含有カロチノイドが、アスタキサンチン、カンタキサンチン、ルテイン、ゼアキサンチン、シトラナキサンチン及びβ-アポ-8’-カロチン酸エチルからなる群から選択される化合物である、請求項5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
a)アスタキサンチンを、水混和性有機溶剤又は水と水混和性有機溶剤との混合物に30℃より高い温度で溶解し、
b)生成した溶液を、トレハロースとカゼイン若しくはカゼイン酸塩との混合物又はトレハロースとカゼイン及びカゼイン酸塩との混合物の水性の分子溶液又はコロイド溶液と混合し、そして
c)形成された懸濁液を乾燥粉末に変換する、
アスタキサンチン乾燥粉末の製造方法。
【請求項8】
トレハロースとカゼイン酸ナトリウムとの混合物を、段階b)における保護コロイドとして使用する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の方法により得ることのできるカロチノイド含有乾燥粉末。
【請求項10】
0.1〜40重量%のカロチノイド含有量を有する、請求項9に記載の乾燥粉末。
【請求項11】
10〜25重量%のアスタキサンチンを含有する、請求項10に記載の乾燥粉末。
【請求項12】
ヒト食物、医薬及び/又は動物飼料の添加物としての、請求項9〜11のいずれかに記載のカロチノイド含有乾燥粉末の使用。

【公表番号】特表2007−521812(P2007−521812A)
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−551788(P2006−551788)
【出願日】平成17年2月2日(2005.2.2)
【国際出願番号】PCT/EP2005/001016
【国際公開番号】WO2005/075385
【国際公開日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【氏名又は名称原語表記】BASF Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】