説明

1,6−ヘキサンジオールの製造方法

本発明は、好ましくは少なくとも99.5%の純度を有する、特に実質的に1,4−シクロへキサンジオールを含まない1,6−ヘキサンジオールを製造する方法に関し、この場合、この方法は、酸素または酸素含有ガスを用いて、シクロヘキサンのシクロヘキサノン/シクロヘキサノールへの接触酸化の副生成物として反応混合物を水抽出することにより得られたカルボン酸混合物から出発して、該カルボン酸混合物を水素化し、エステル化し、かつ部分流を水素化してヘキサンジオールにすることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素または酸素含有ガスを用いてのシクロヘキサンのシクロヘキサノン/シクロヘキサノールへの接触酸化の副生成物として、反応混合物の水抽出によって得られたカルボン酸混合物から出発して、該カルボン酸混合物を水素化し、エステル化し、かつ部分流をヘキサンジオールに水素化によって、好ましくは少なくとも99.5%の純度で、特に1,4−シクロヘキサンジオールを実質的に含むことなく、1,6−ヘキサンジオールを製造する方法に関する。
【0002】
1,6−ヘキサンジオールは、ポリエステル分野およびポリウレタン分野において主に使用される需要の多いモノマー構成単位である。
【0003】
シクロヘキサンからシクロヘキサノールおよびシクロヘキサノンへの酸化の際に副生成物として生じるカルボン酸の水溶液(以降、ジカルボン酸溶液(DCL)と呼ぶ)(Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, 5. Ed., 1987, Vol. A8, p49参照)は一般的に、(水不含、質量%で計算して)アジピン酸10〜40%、6−ヒドロキシカプロン酸10〜40%、グルタル酸1〜10%、5−ヒドロキシ吉草酸1〜10%、1,2−シクロヘキサンジオール1〜5%、1,4−シクロヘキサンジオール1〜5%、ギ酸2〜10%、4−ヒドロキシシクロヘキサノン0.5〜5%、6−オキソカプロン酸0.5〜10%ならびに多数のさらなるモノカルボン酸とジカルボン酸、エステル、オキソ化合物とオキサ化合物(これらのそれぞれの含量は、5%を超過しない)を含む。たとえば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−または3−ヒドロキシアジピン酸が挙げられる。
【0004】
DE 2 321 101およびDE 1 235 879から、これらの水性ジカルボン酸溶液が120〜300℃の温度および50〜700バールの圧力で、主にコバルトを含有する触媒の存在下で、主生成物として1,6−ヘキサンジオールに水素化されることが知られている。水素化搬出物は、好ましくは蒸留的に後処理を行う。この際、極めて高い蒸留コストを用いる場合であってさえも、水素化の際に未変換の1,4−シクロヘキサンジオールを1,6−ヘキサンジオールに分離することはできないか、あるいはできたとしても不完全であり、その結果、最初からすでにDCL中に含まれる1,4−シクロヘキサンジオールが、一般に2〜5質量%の含量で、1,6−ヘキサンジオール中になおも見出される。
【0005】
この問題を解消するために、いくつかの解決策が知られている:
US 3 933 930においては、アジピン酸および6−ヒドロキシカプロン酸の水溶液中で1,4−シクロヘキサンジオールをシクロヘキサノール、シクロヘキサンおよび/またはシクロヘキセンに変換することが記載されており、これは、混合物を予め接触水素化することによる。この方法は、2種の異なる水素化触媒の使用を要求するものであって、1つは前水素化に関する触媒、一つは本来のカルボン酸水素化に関する触媒であり、したがってコストがかかる。
【0006】
DE-OS 2 060 548によれば、極めて純粋な1,6−ヘキサンジオールが触媒によって得られる。さらにこれらの方法は極めてコストがかかり、さらには顕著な収量損失につながる。
【0007】
高純度の1,6−ヘキサンジオールを得るための他の可能性は、DCLの代わりに純粋なアジピン酸または純粋なアジピン酸エステルを水素化することからなる(たとえば、K. Weissermel, H.J. Arpe in Industrielle Organische Chemie, VCH-Verlags-gemeinschaft Weinheim, 第4版、第263頁、1994年に記載されている)。しかしながら純粋なアジピン酸は、DCLと比較して極めて高価である。さらシクロヘキサンの酸化の際に生じるカルボン酸混合物は、環境保全の観点から材料活用すべき廃棄物である。さらにアジピン酸からは、簡単な方法でカプロラクトンを得ることはできない。
【0008】
DE-A 196 07 954では、すでに、前記水性カルボン酸混合物からの1,6−ヘキサンジオールの獲得が示された方法が記載されている。しかしながら、この洗練された方法はなおもいつくつかの欠点を有する。したがって、DCL中に存在する直鎖C−成分のすべてが、1,6−ヘキサンジオールの製造に役立つわけではない。たとえば、プロセス中に存在する6−オキソカプロン酸は、1,6−ヘキサンジオールの製造のための中間体エステルの蒸留による収量を、高沸成分形成によって喪失するかあるいは減少させる。さらに、1,6−ヘキサンジオールは、望ましくない1,4−シクロヘキサンジオールを完全に含まないものではなく、それというのも、これは、プロセス中でさらに効率的に分離されるが、しかしながら4−ヒドロキシシクロヘキサノンとして水素化中に連行され、ここで再度1,4−シクトヘキサンジオールが生じ、これは1,6−ヘキサンジオールから分離することが困難である。さらに、1,6−ヘキサンジオール中の6−オキソカプロン酸の二次生成物、たとえば6,6−ジメトキシヘキサン−1−オールおよび6−メトキシヘキサン−1−オールが検出されうる。これらのモノアルコールは、ジオールのポリマー適用の際に、一般には極めて妨げとなるものであって、それというのも鎖の構築の際に末端がブロックされるためである。さらに、DCL中に存在するギ酸は、エステル交換工程前の水分離の際に腐蝕の問題を招き、したがって高品質の高い原料を使用しなければならない。
【0009】
したがって本発明の課題は、1,6−ヘキサンジオールを製造するための方法に関し、この場合、この方法は、高度に複雑なジカルボン酸溶液から出発し、この中に含まれる線状のC−カルボン酸を可能な限り完全に、極めて純粋な1,6−ヘキサンジールを製造するために変換し、かつそれによって、純粋なアジピン酸から出発する公知製造方法と同じかまたは高い生成物純度を達成し、付加的かつコストのかかる精製工程および/または材料を必要とすることはない。
【0010】
本発明の課題は、酸素または酸素含有ガスによるシクロヘキサンのシクロヘキサノン/シクロヘキサノールへの接触水素化の副生成物として、反応混合物の水抽出によって得られたアジピン酸、6−ヒドロキシカプロン酸、6−オキソカプロン酸、4−ヒドロキシシクロヘキサノン、ギ酸およびアジピン酸とヒドロキシカプロン酸との合計に対して0.5〜5質量%の1,4−シクロヘキサンジオールを含有するカルボン酸混合物から出発して、エステル化し、かつ部分流を水素化することによってヘキサンジオールにする、1,6−ヘキサンジオールを製造する方法によって解決するものであって、この場合、この方法は、
a)水性カルボン酸混合物中に含まれるアルデヒドおよびケトンのみを相当するアルコールに接触水素化し、かつ場合によっては含まれるC−C−二重結合を相当する飽和化合物に水素化し、かつ、混合物に含まれるギ酸が50質量%を上回って分解され、
b)水性反応混合物中に含まれるモノカルボン酸およびジカルボン酸を、脱水後に、低分子量アルコールにより相当するカルボン酸エステルに変換し、
c)得られたエステル化混合物から、第1の蒸留工程中で、過剰量のアルコールおよび低沸成分を取り除き、
d)塔底生成物から、第2の蒸留工程中で、1,4−シクロヘキサンジオールを減少させたエステル留分と1,4−シクロヘキサンジオールを含有する留分とに分離し、
e)(d)からのエステル留分を接触水素化し、かつ公知方法で水素化生成物を蒸留することによって1,6−ヘキサンジオールを得る、
ことを特徴とする。
【0011】
DCLの水素化は極めて複雑であり、それというのも固有の水素化を妨げうるか、あるいは同じく一緒に水素化される数多くの化合物を含有するためであり、これは、引き続いての後処理を困難にしうる。工程a)中のアルデヒドの水素化を、DCL中に含まれるC6−ヒドロキシカルボン酸がすでにこの工程中で1,6−ヘキサンジオールに変換されない程度に選択的に行うことは、自明ではなく、それどころか驚異的である。これは、生じる1,6−ヘキサンジールが引き続いて、本発明による方法の工程d)中で1,4−シクロヘキサンジオールと一緒に分離され、かつそれによって1,6−ヘキサンジオールの収率が減少する場合である。さらに、使用された触媒が、腐食性媒体にもかかわらず高い寿命を示すことは驚異的であり、このプロセスにおける高沸成分の形成を、1,6−ヘキサンジオールの収率および純度を顕著に改善できる程度に減少させることができる。さらに、ギ酸が少なくとも50%まで分解され、これによって後続の工程が腐蝕によってほとんど影響を受けないことについては予測されるものではない。
【0012】
エステル化は、触媒を添加することなしに、好ましくは触媒の影響下で実施することができる。低分子量アルコールとして、一般には1〜10個の炭素原子を有するもの、特に1〜8個の炭素原子を有するアルカノールを考慮することができる。ジオール、たとえばブタンジオール、またはペンタンジオールも、原則的に考慮される。
【0013】
エステル化のために使用されるアルコールとして技術的に好ましいのは、n−ブタノールまたはi−ブタノール、および特にメタノールである。
【0014】
メタノールを用いてエステル化を実施する場合には、蒸留工程(d)中で、1,4−シクロヘキサンジオールが取り除かれたカルボン酸メチルエステル留分を塔頂で得て、かつ高沸成分および1,4−シクロヘキサンジオールを含有する塔底留分を得て、かつ水素化工程(e)中でカルボン酸メチルエステル留分を接触水素化する。
【0015】
本発明による方法において、用語「塔頂を介して」または「塔底を介して」とは、それぞれ、蒸留ユニット、たとえば塔の供給口の上部または下部の搬出口を意味する。
【0016】
図1に示されたように、ジカルボン酸溶液(DCL)を脱水後に水素化し、C〜C−アルコール、好ましくはメタノールと一緒に、エステル化反応器R中に供給し、ここでカルボン酸をエステル化する。得られたエステル化混合物は、その後に塔K中に連行し、ここで過剰量のアルコール(ROH)、水および低沸成分(LS)を、塔頂を介して留去し、かつエステル混合物(EG)を塔底生成物として引き抜き、かつ塔K中に供給する。この塔中で、EGは、1,4−シクロヘキサンジオールをほぼ取り除かれた(供給口中に含まれる1,4−シクロヘキサンジオールの最大でも5質量%、好ましくは1質量%を下回る)エステル部分(EF)と、高沸成分(HS)およびcis−およびtrans-1,4−シクロヘキサンジオール(1,4−CHDO)から成る塔底留分とに分別する。その後に、エステル留分を、1,6−ヘキサンジオールおよびエステル化アルコールに水素化し、かつ1,6−ヘキサンジオールをK中で精留する。
【0017】
−重要生成物の全収率を増加させるために、たとえば図2に記載したようにして、塔K2中に生じた高沸成分混合物を、さらになおもエステル化アルコールROHと反応させ(R3)、引き続いてさらなる塔K中で、過剰量のアルコールROHを取り除き、かつ塔K中で、1,4−シクロヘキサンジオールを含有する高沸成分と、さらなるエステル混合物EF’とに分離する。このEF’は、たとえばエステル混合物EGと一緒にして、再度塔K2中に供給することができる。
【0018】
本発明による方法は、引き続いて図1〜3に基づいて個々に説明される。
【0019】
プロセス工程は、工程的に実施され、その際、工程1、2、3、4、5、6、7および8ならびに12は本発明の方法のために本質的であり、かつ工程4および5ならびに7および8はまとめて実施することもできる。工程9、10および11は任意であるが、しかしながら方法の経済性を高めるために場合によっては重要である。
【0020】
本発明による方法(工程1)の工程a)中でのDCLの接触水素化のために、元素周期律表の第7族〜第12族の金属の少なくとも1種の金属、たとえばルテニウム、パラジウム、白金、ニッケル、コバルト、鉄、レニウム、イリジウム、銅、オスミウムおよび亜鉛を含む触媒を使用する。この際、有利なのは、金属ルテニウム、ニッケル、コバルト、レニウムおよび銅である。これらの金属は、金属の形でも、たとえば酸化物および硫化物といった、それらの化合物の形でも使用することができる。
【0021】
さらに有利なのは、元素周期表の第7族〜第12族の少なくとも2種の金属からなる混合物または合金である。例示的に挙げられるのは、パラジウム/レニウム、白金/レニウムおよびコバルト/銅である。
【0022】
更に良く適しているのは、いかなる担体も含有せず、かつ金属、金属酸化物またはそれらの混合物から成るいわゆる非担持型触媒である。これに関して好ましくは、鉄非担持型触媒および特にコバルト非担持型触媒である。
【0023】
金属または金属化合物は、担体なしに使用することができる。しかしながら有利には、該金属または金属化合物は、たとえばTiO、Al、ZrO、SiO、HfO、カーボン、ゼオライトまたはこれらの混合物といった担体上に施与される。これらの担持触媒は、たとえばストランド、ペレットまたはリングといった様々な最終的形状で使用することができる。
【0024】
銅、ニッケルおよびコバルトは、有利にはラネーニッケル、ラネー銅またはラネーコバルトの形で使用することができる。ラネー触媒も、全ての公知の最終的形状において、たとえばペレット、ストランドまたはグラニュールとして使用することができる。適したラネー銅触媒は、たとえばWO-A99/03.801に記載されているラネー銅ナゲットである。
【0025】
さらに、DCLの水素化のために特に適しているのは、二酸化チタン成形体に担持されたルテニウムを含む触媒であり、この際、該二酸化チタン成形体は、二酸化チタンを、成形体へと成形する前または成形した後に、該二酸化チタンが難溶性である酸0.1〜30質量%で処理することによって得られる。
【0026】
触媒活性ルテニウムは、自体公知の方法に従って、有利には担体材料として予め作製されたTiO上に施与される。
【0027】
ルテニウムを含有する触媒中での使用のために有利には適した二酸化チタン担体は、DE-A 197 38 464に相応して、二酸化チタンを、成形体に成形前または成形後に、二酸化チタンに対して、該二酸化チタンが難溶性である酸0.1〜30質量%で処理することによって得られる。好ましくは、アナターゼ形の二酸化チタンを使用する。このような酸として、たとえばギ酸、リン酸、硝酸、酢酸およびステアリン酸が適している。
【0028】
活性成分ルテニウムは、ルテニウム塩溶液の形で、このようにして得られた二酸化チタン担体上に1回または複数回の浸漬工程で施与することができる。引き続き、浸漬された担体を乾燥させ、かつ場合によりか焼する。しかしながら、ルテニウム塩溶液からのルテニウムを、有利には炭酸ナトリウムにより、粉末として水性懸濁液中に存在する二酸化チタン上に析出させることも可能である。析出された沈殿物を洗浄し、乾燥させ、場合によりか焼させ、かつ形付ける。さらに、揮発性のルテニウム化合物、たとえばルテニウムアセチルアセトネートまたはルテニウムカルボニルを気相に変換し、かつ自体公知の方法で担体に施与することができ、これは化学蒸着法と呼称される。
【0029】
他の好ましい担体材料は、二酸化ジルコニウム、炭化ケイ素およびカーボンである。特にカーボン(活性炭)は、高い表面積および耐酸性と同時に少ないリットル質量(Litergewichts)の利点を有する。カーボン担体材料は、使用前に空気または硝酸で前処理されてもよく、同時に強酸、たとえば硫酸、塩酸またはリン酸で処理することが適している。前処理は一般に高い触媒活性を導く。
【0030】
このようにして得られた担持触媒は、すべての公知の最終的形状で存在していてよい。たとえば、ストランド、ペレットまたはグラニュールである。その使用前に、ルテニウム触媒前駆体は、水素含有ガスで、100℃を上回る温度で処理することによって還元する。有利には、触媒はその使用前に本発明による方法において、0〜50℃の温度で、有利には室温で、酸化含有ガス混合物により、有利には空気−窒素混合物により不動態化される。触媒を酸化された形で水素化反応器中に組み入れること、および反応条件下で還元することも可能である。
【0031】
本発明による特に有利な触媒は、触媒活性金属および担体からなる触媒の全質量に対して0.01〜10質量%、好ましくは0.1〜6質量%のルテニウム含量を示す。本発明による触媒は、触媒の全質量に対して0.01〜1質量%の硫黄含量を示していてもよく、この際、硫黄の測定はクーロメトリーにより行われる。
【0032】
これに関して、ルテニウム表面積は1〜20m/g、有利には5〜15m/gであり、かつBET表面積(DIN66131に従って測定)は5〜500m/g、有利には50〜200m/gである。
【0033】
本発明による触媒は、0.1〜100ml/gの細孔容積を有する。さらに触媒は1〜100Nの切断強さによって際立っている。
【0034】
水素化触媒は、反応混合物中に懸濁されていてよい。有利なのは、触媒を水素化反応器中に固定配置することである。水素化は、断続的にまたは有利には連続的に実施することができる。この際、反応混合物は、アップフロー運転方式またはダウンフロー運転方式で触媒上に連行することができる。水素化は、単一の反応器中であるか、あるいは2個の直列接続された反応器中で実施することができる。2個の反応器が使用される場合、両反応器は、同じ触媒または2個の異なる触媒を含有することができる。この際、両反応器は、水素化温度と水素分圧の点で異なる。
【0035】
さらに水素化を、単一の触媒が充填されている単一の反応器中で、反応器中の水素化温度が所望の温度範囲内で上昇するように実施することも可能である。これに関して、水素化のための温度範囲は50〜200℃、好ましくは70〜180℃、特に好ましくは90〜160℃である。
【0036】
反応圧は、実質的に水素により生じ、1〜100バール(絶対圧)である。好ましくは3〜50バール、特に好ましくは5〜35バールである。
【0037】
水素として、純粋な水素を使用することができるが、しかしながらさらに、他の水素化からの廃ガス、たとえばエステルから1,6−ヘキサンジオールへの水素化からの廃ガスが技術的には好ましく、水素化のために全部または少なくとも部分的に使用することが可能である。
【0038】
水素化すべき成分に対する水素のモル過剰量は、1〜5000モル%であり、好ましくは10〜3000モル%であり、特に好ましくは50〜1000モル%である。
【0039】
ジカルボン酸溶液(DCL)は一般的に、20〜80%の含水量を有する水溶液である。エステル化反応は、水が生じる平衡反応であることから、特に、たとえばメタノールによるエステル化に際し、特にエステル化反応中に水を、たとえば共沸により取り除くことができない場合には、存在する水を反応前に除去することが重要である。工程b)中の脱水(工程2)は、たとえば膜系によって実施することができるか、あるいは好ましくは蒸留装置によって、ここで10〜250℃、好ましくは20〜200℃、特に好ましくは30〜200℃および1〜1500ミリバール、好ましくは5〜1100ミリバール、特に好ましくは20〜1000ミリバールで、水を塔頂により、かつ高級モノカルボン酸、ジカルボン酸および1,4−シクロヘキサンジオールを塔底により分離することができる。この際、塔底温度は好ましくは、塔底生成物が液状で取り出せるように選択することができる程度に選択される。塔底における水含量は0.01〜10質量%、好ましくは0.01〜5質量%、特に好ましくは0.01〜1質量%であってよい。
【0040】
水の分離は、水が酸不含で得られるように実施することができるか、あるいはDCL中に含まれる低級モノカルボン酸、実質的にはギ酸を、さらに存在する場合には、供給口中に含まれる酸、たとえばギ酸および酢酸のその大部分、好ましくは60〜95質量%を水と一緒に留去することで、エステル化中でこれらがエステル化アルコールと結合することはない。水と一緒に、さらに他の成分、たとえばシクロヘキサノール、場合によってはさらに存在するシクロヘキサノンを分離することができる。これは、たとえば水の相分離によって分離することができ、かつ、たとえばシクロヘキサノール/シクロヘキサノン獲得における重要な生成物として搬出することができる。
【0041】
工程2からのカルボン酸流に、1〜10個の炭素原子を有するアルコールROHを添加混合する。この際、一方でメタノール、エタノール、プロパノールまたはイソプロパノールまたはこれらアルコールの混合物、有利にはメタノールを、あるいは他方でCおよびより高級のアルコール、殊に4〜8個の炭素原子を有するアルコール、および有利にはn−ブタノールまたはi−ブタノール、またはn−ペンタノールまたはi−ペンタノールも使用することができる。アルコール対カルボン酸流の混合比(質量比)は0.1〜30、好ましくは0.2〜20、特に好ましくは0.5〜10であってよい。
【0042】
この混合物は、溶融物または溶液として工程3の反応器中に達し、ここでカルボン酸をアルコールでエステル化する。エステル化反応は50〜400℃、有利には70〜300℃、特に有利には90〜200℃で実施することができる。外圧をかけてよいが、しかしながら有利にエステル化は、該反応系の自生圧力下で行われる。この際、エステル化装置として攪拌釜または流管またはそのつど複数から成るものを使用してよい。エステル化に必要とされる滞留時間は0.3〜10時間、有利には0.5〜5時間である。該エステル化反応は、触媒の添加なしに進行しうるが、しかしながら有利には、反応速度の向上のために触媒を添加する。これに関しては、均一に溶解された触媒または固体触媒である。均一系触媒として例に挙げられるのは、硫酸、リン酸、塩酸、スルホン酸、たとえばp−トルエンスルホン酸、ヘテロポリ酸、たとえばタングステンリン酸、またはルイス酸、たとえばアルミニウム化合物、バナジウム化合物、チタン化合物、ホウ素化合物である。好ましくは鉱酸、特に硫酸である。均一系触媒のカルボン酸溶融物に対する質量比は、一般に0.0001〜0.5、有利には0.001〜0.3である。
【0043】
固体触媒として、酸性または超酸性の材料、たとえば酸性および超酸性の金属酸化物、たとえばSiO、Al、SnO、ZrO、層状ケイ酸塩またはゼオライトが適しており、これらはすべて酸度増大のために鉱酸基、たとえばスルフェートまたはホスフェートでドープされていてよいか、あるいはスルホン酸基、またはカルボン酸基を有する有機イオン交換体が適している。固体触媒は、固定層として配置することができるか、あるいは懸濁液として使用することができる。
【0044】
反応に際して形成される水は、目的に応じて連続的に、たとえば膜または蒸留により取り除かれる。
【0045】
カルボン酸溶融物中に存在する遊離カルボキシ基の変換の完全性は、反応後に測定される酸価(mg KOH/g)により確認される。この酸価は、場合により触媒として添加される酸を差し引いて0.01〜50、好ましくは0.1〜10である。この際、該系中に存在するカルボキシ基のすべてが、使用されるアルコールのエステルとして存在する必要はなく、一部がヒドロキシカプロン酸のOH末端とのエステルダイマー、またはエステルオリゴマーの形で存在していてよい。
【0046】
エステル化混合物は工程4中で、膜系、または好ましくは蒸留塔に供給される。エステル化反応のために触媒として溶解された酸が使用される場合には、エステル化混合物は、目的に応じて塩基で中和され、この際、触媒の酸当量あたり1〜1.5の塩基当量が添加される。塩基として、一般にアルカリ金属酸化物またはアルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属炭酸塩またはアルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属アルコラートまたはアルカリ土類金属アルコラート、あるいはアミンを、塊状で、あるいはエステル化アルコール中に溶解された形で使用する。これは同様に、イオン交換体の使用が可能であり、この際、このイオン交換体は、好ましくは再生によって常に再利用可能である。
【0047】
工程4中で塔を使用する場合、塔への供給は、有利には塔頂流と塔底流との間で行われる。塔頂を介して1〜1500ミリバール、有利には20〜1000ミリバール、特に有利には40〜800ミリバールの圧力、および0〜150℃、有利には15〜90℃および殊に25〜75℃の温度で、過剰量のエステル化アルコールROH、水並びに相応するギ酸エステル、酢酸エステルおよびプロピオン酸エステルを取り出す。この流は、焼却されるか、あるいは有利には、工程12においてさらに後処理されるかの何れかであってよい。
【0048】
塔底生成物として、使用されたアルコールROHとジカルボン酸、たとえばアジピン酸およびグルタル酸とのエステル、ヒドロキシカルボン酸、たとえば6−ヒドロキシカプロン酸および5−ヒドロキシ吉草酸、並びにオリゴマーのおよび遊離されたかまたはエステル化された1,4−シクロヘキサンジオールから主に成るエステル混合物が得られる。水および/またはアルコールROHの残留含分を、エステル混合物中でそれぞれ4質量%まで許容することが合理的であってもよい。塔底温度は70〜250℃、有利には80〜220℃、特に有利には100〜190℃である。
【0049】
実質的に水およびエステル化アルコールROH不含の工程4からの流を、工程5に供給する。これに関しては蒸留塔であり、低沸成分と難沸成分との間で供給が行われる。該塔は10〜300℃、有利には20〜270℃、特に有利には30〜250℃の温度および1〜1000ミリバール、有利には5〜500ミリバール、特に有利には10〜200ミリバールの圧力で運転される。
【0050】
塔頂画分は、主に残留水および残留アルコールROH、該アルコールROHとモノカルボン酸とのエステル、主にヒドロキシカプロン酸、たとえば6−ヒドロキシカプロン酸、5−ヒドロキシ吉草酸とのC〜C−モノカルボン酸エステル、ならびになかでもジカルボン酸、たとえばアジピン酸、グルタル酸およびコハク酸とのジエステル、1,2−シクロヘキサンジオール、カプロラクトンおよびバレロラクトンから成る。
【0051】
上述の成分は、一緒に塔頂を介して分離することができるか、あるいは好ましい実施形態において工程5の塔中で、残留水および残留アルコール並びに上述の3〜5個の炭素原子を有する成分を主に含有する塔頂流と、上述のC−エステルの成分を含有する側流とに分離することができる。C−酸のエステルを含有する流は、水素化中に完全に導くことができる(工程6)。
【0052】
工程4からの流の難沸成分は、1,4−シクロヘキサンジオールまたはそのエステル、エステルのダイマーまたはオリゴマーならびに詳細には定義されていないが部分的にDCLのポリマー成分から主に構成され、工程5の塔の搬出部により分離される。これはまとめて生じるか、あるいは塔の側流を介して搬出部中で主に1,4−シクロヘキサンジオールを分離し、かつ塔底を介して残りを分離する。このようにして得られた1,4−シクロヘキサンジオールは、たとえば作用物質のための出発材料としての使用が見出されている。
【0053】
1,4−シクロジオールの含量を含むかまたは含まない難沸成分を、燃焼させることができる。
【0054】
工程4および5はとりわけ少量のみが処理される場合、一つにまとめてよい。これに関して、たとえば回分的に実施される分別蒸留中で、C−エステル流を得ることができ、さらに1,4−シクロヘキサンジオールを含むことなしに、水素化に連行される流が達成される。
【0055】
水素化は、触媒により気相または液相中で実施する。触媒として、原則、カルボニル基の水素化に適した均一系および不均一系触媒のすべて、たとえば金属、金属酸化物、金属化合物またはこれらの混合物を考慮することができる。均一系触媒に関する例はH. Kropf, Houben-Weyl, Methoden der Organischen Chemie、第IV/1c巻、Georg Thieme Verlag Stuttgart、1980年、第45頁〜第67頁に記載されており、かつ不均一系触媒に関する例は Houben-Weyl, Methoden der Organischen Chemie、第IV/1c巻、第16頁〜第26頁に記載されている。
【0056】
元素周期律表の第I副族および第VI副族〜第VIII副族からの1種またはそれ以上の元素が使用され、好ましくは銅、クロム、モリブデン、マンガン、レニウム、ルテニウム、コバルト、ニッケルおよびパラジウムを含み、特に好ましくは銅、コバルトまたはレニウムを含む。
【0057】
この触媒は、すべてが活性成分から構成されていてもよいか、あるいは活性成分が担体上に施与されていてもよい。担体材料として、たとえばCr、Al、SiO、ZrO、TiO、ZnO、BaOおよびMgOまたはこれらの混合物が適している。
【0058】
特に好ましくは、たとえば、EP 0 552 463中に記載された触媒である。これは、酸化された形で組成式

を有する触媒である。この触媒の製造は、たとえばEP 0 552 463の記載にしたがって、相当する金属イオンをその塩の形で含む溶液から難溶性成分を沈澱させることによって実施される。適した塩は、たとえばハロゲン化物、硫酸塩および硝酸塩である。沈澱剤として、熱処理によって酸化物に変換することができる不溶性の中間生成物の形成を導くすべての薬剤が適している。特に適した中間生成物は、水酸化物および炭酸塩、または炭酸水素塩であり、これは特に好ましい沈澱剤として、アルカリ金属炭酸塩または炭酸アンモニウムを使用する。触媒製造のために重要であるのは、500℃〜1000℃の温度での中間生成物の熱処理である。触媒のBET表面積は10〜150m/gである。
【0059】
他の好ましい水素化触媒は、Cuの他さらにLaおよびAl−酸化物を含む。これは、たとえばDE-A 10313702中に記載されている。
【0060】
好ましくは、固定されているか、あるいは懸濁液として使用される不均一系触媒を使用する。水素化が気相中で、かつ固定配置された触媒を介して実施される場合には、一般に1〜100バール、好ましくは15〜70バールで150〜300℃の温度で実施する。これに関して、目的に応じて、水素化剤およびキャリアガスとして、反応の間に出発材料、中間生成物および最終生成物が液体となりえない程度の量の水素を使用する。過剰量の水素を、好ましくは循環中に連行し、この際、わずかな部分は不活性成分、たとえばメタンを除去するための廃ガスとして搬出することができる。ここで、1個の反応器であるか、あるいは複数個の直列接続された反応器を使用することができる。
【0061】
水素化を、固定配置されたか、あるいは懸濁された触媒を含む液相中で実施する場合には、一般に100〜350℃、好ましくは120〜300℃の温度で、かつ30〜350バール、好ましくは40〜300バールの圧力で実施する。
【0062】
該水素化は、1個の反応器であるか、あるいは複数個の直列接続された反応器中で実施されることができる。固定層による液相中での水素化は、ダウンフロー運転方式(Rieselfahrweise)またはアップフロー運転方式(Sumpffahrweise)で実施される。好ましい実施形態によれば、複数個の反応器を使用し、この際、最初の反応器中でエステルの大部分が水素化され、かつ、熱を搬出するための液体循環を有する最初の反応器、および還流を有しない1個または複数個の後続の反応器は、完全な変換のために運転される。循環ガスは、特にダウンフロー運転方式の場合には必要とされない。
【0063】
水素化は断続的に、好ましくは連続的に実施することができる。
【0064】
水素化搬出物は、実質的に1,6−ヘキサンジオールおよびアルコールROHから構成される。さらなる成分は、工程5のすべての低沸成分流が使用される場合には、1,5−ペンタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−シクロヘキサンジオールならびに1〜6個の炭素原子を有する少量のモノアルコール、場合によってはエステルおよび水である。
【0065】
水素化搬出物は、工程7中で、たとえば膜系または好ましくは蒸留塔で、付加的にさらなる低沸成分の多くの量を含むアルコールROHと、1,5−ペンタンジオール以外に主に1,6−ヘキサンジオールおよび1,2−シクロヘキサンジオールを含有する流とに分離する。この際、10〜1500ミリバール、好ましくは30〜1200ミリバール、特に好ましくは50〜1000ミリバールの圧力で、0〜120℃、好ましくは20〜100℃、特に好ましくは30〜90℃の塔頂温度、ならびに100〜270℃、好ましくは140〜260℃、特に好ましくは160〜250℃の塔底温度に調整する。易沸騰性の物質流は、直接、工程3のエステル化に返送することができるか、あるいは工程9または工程12に連行することができる。
【0066】
1,6−ヘキサンジオールを含有する物質流は、工程8中で1個の塔内で精製される。ここで、1,5−ペンタンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、ならびに他の場合により存在する低沸成分を、塔頂を介して除去する。1,2−シクロヘキサンジオールおよび/または1,5−ペンタンジオールを付加的な重要生成物として獲得すべき場合には、これらはさらなる塔内で、分離除去することができる。塔底を介して、場合により存在する高沸成分を搬出する。1,6−ヘキサンジオールは、少なくとも99.5%、好ましくは少なくとも99.7%、特に好ましくは99.9%の純度で、塔の側流から取り出される。これに関して1〜1000ミリバール、好ましくは5〜800ミリバール、特に好ましくは20〜500ミリバールの圧力で、50〜200℃、好ましくは60〜150℃の塔頂温度および130〜270℃、好ましくは150〜250℃の塔底温度に調整する。
【0067】
少量の1,6−ヘキサンジオールのみを製造すべき場合には、工程7および8はさらに断続的な分別蒸留においてまとめることができる。
【0068】
本発明による方法を可能な限り経済的に操作するために、エステル化アルコールROHを回収し、かつ常に再度エステル化に使用することが合理的である。これに関して、工程4および/または7からの主にアルコールROHを含有する流を、工程12中で後処理をすることができる。この際、アルコールROHよりも易沸騰性の成分を塔頂から、水およびアルコールROHよりも高い沸点を有する成分を塔底から、側流中で得られるアルコールROHと分離する塔を使用することが有利である。目的に応じて、塔は500〜5000ミリバール、好ましくは800〜3000ミリバールで運転する。
【0069】
本発明による方法のさらなる好ましい実施形態によれば、工程5からの高沸成分流を、使用されたDCLに対して重要生成物の全収率を増加させるために後処理を行う。この際、工程9中で、アジピン酸またはヒドロキシカプロン酸のダイマーおよびオリゴマーエステルの部分を、アルコールROH、たとえばメタノールのさらなる量により、触媒の存在下に変換する。アルコールROHと工程5からの塔底流との質量比は0.1〜20、好ましくは0.5〜10、特に好ましくは1〜5である。触媒として、原則、工程3中のエステル化のためにすでに記載した触媒が適している。しかしながら好ましくは、ルイス酸またはルイス塩基を使用する。これに関する例は、アルミニウム、錫、アンチモン、ジルコニウムまたはチタンの化合物または錯体、たとえばアセチル酢酸ジルコニウムまたはテトラアルキルチタネート、たとえばテトライソプロピルチタネートであり、この場合、これは1〜10000ppm、好ましくは50〜6000ppm、特に好ましくは100〜4000ppmの濃度で使用する。特に好ましくは、チタン化合物である。
【0070】
反応は、回分的または連続的に、1個の反応器または複数個の反応器中で、直列接続された攪拌釜または管型反応器中で、100〜300℃、好ましくは120〜270℃、特に好ましくは140〜240℃の温度で、かつこれに関して調整された自生圧力下で実施することができる。要求される滞留時間は0.5〜10時間、好ましくは1〜4時間である。
【0071】
工程9からのこの流は、メタノールでエステル化する場合には、たとえば、さらに工程4に供給される。特に1,4−シクロヘキサンジオールの集積を回避するために、工程5からの高沸成分の部分流を、回分的または連続的に搬出しなければならない。もう一つの変法は、工程9からの流を工程4に返送するのではなくて、工程4と同様に工程10中で、再度、工程3、9または12中に連行することができる主にアルコールROHと、エステルを含有する流とに分離する。
【0072】
このエステル流は、原則(但し、1,4−シクロヘキサンジオールの集積を回避するという条件付きで)、工程5中に返送するか、あるいは好ましくはさらなる工程11中で、一方で工程5にまたは工程6に直接供給されるC−酸のエステルおよび(数量的にはむしろわずかであるが)C−酸のエステルと、他方で1,4−シクロヘキサンジオールを含有する高沸成分とに分離し、これによって高沸成分を搬出する。
【0073】
本発明による方法によれば、1,6−ヘキサンジオールの収率は95%を上回り、純度は99%を上回って達成する。
【0074】
該方法は、以下の例に基づいてより詳細に説明されるが、しかし、これによっていかなる制限もされない。物質流の組成に関する記述は、ガスクロマトグラフによって測定された質量%である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明による方法の一の実施形態を示す概略図
【図2】本発明による方法の一の実施形態を示す概略図
【0076】
例1(DCLの水素化なしの比較例)
工程2:(脱水)
0.1kgのジカルボン酸溶液/h(アジピン酸、6−ヒドロキシカプロン酸、6−オキソカプロン酸、1,4−シクロヘキサンジオール、4−ヒドロキシシクロヘキサノン、グルタル酸、5−ヒドロキシ−吉草酸、ギ酸、水)を連続的に、付属の充填塔(約4の理論段数であって、塔頂における還流はないもの)を備えた蒸留装置(外部循環油加熱装置を備えた3段式泡鐘塔、油温度150℃、それぞれ約25mlの泡鐘段容積、泡鐘段を介しての供給口)中で蒸留した。塔生成物として、水中のギ酸含量約3%で0.045kgが得られた。塔底流(5.5kg)中で、約0.4%の含水量であった。
【0077】
工程3:(エステル化)
工程1からの塔底流5.5kgを、メタノール8.3kgおよび硫酸14gと反応させた。搬出ガスの酸価は、硫酸を差し引いて約10mgKOH/gであった。
【0078】
工程4:
1個の塔内で、工程2からのエステル化流を蒸留した(1015ミリバール、65℃の塔頂温度、125℃までの塔底温度)。塔頂を介して7.0kgを引き抜いた。塔底生成物として、6.8kgが得られた。
【0079】
工程5:(1,4−シクトヘキサンジオールの分離)
50cmの充填塔で、工程3からの塔底流を分別蒸留した(10ミリバール、75〜95℃の塔頂温度、200℃までの塔底温度)。塔底において1,4−シクロヘキサンジオールが観察された。
【0080】
低沸成分として、0.3kgを分離し(コハク酸ジメチルエステル、吉草酸メチルエステル、ペンタン酸メチルエステル、カプロン酸メチルエステル、1,2−シクロヘキサンジオール、バレロラクトン、5−ヒドロキシ吉草酸メチルエステル、グルタル酸ジメチルエステル)、主にアジピン酸ジメチルエステルおよび6−ヒドロキシカプロン酸メチルエステルを含有する留分が4.6kg得られ、これはさらに2〜5%のグルタル酸ジメチルエステルおよび5−ヒドロキシ吉草酸メチルエステル、0.2〜1%のバレロラクトン、カプロラクトン、6,6−ジメトキシカプロン酸メチルエステルおよび4−ヒドロキシシクロヘキサノンを含んでいた。
【0081】
工程6:(部分流の水素化)
工程5からの2.7kgのC−エステル混合物を、連続的に25mlの反応器中で、触媒を用いて水素化した(触媒、70質量%のCuO、25質量%のZnO、5質量%のAlであり、これは予め水素流中で180℃で活性化されたものであり、水素化条件:供給口20g/h、循環なし、220バール、220℃)。エステル変換率は99.5%であり、これは1,6−ヘキサンジオール選択率99%を超えるものであった。
【0082】
工程7および8:(ヘキサンジオール精製)
工程6からの水素化搬出物2.5kgを、分別蒸留した(付属の70cm充填塔を備えた蒸留釜、還流比2)。1013ミリバールで、0.5kgのメタノールを留去し、かつ真空(20ミリバール)の適用後に、主に1,2−シクロヘキサンジオールおよび1,5−ペンタンジオールを留去した。このようにして(沸点146℃)1,6−ヘキサンジオールを99.6%の純度で留去した。ヘキサンジオール中で、数量的にはわずかな成分の他、なおも約0.2%の1,4−シクロヘキサンジオールならびに約0.02%の6−メトキシヘキサン−1−オールおよび0.1%の6,6−ジメトキシヘキサン−1−オールが存在していた。
【0083】
例2:(本発明による例)
工程1:(DCL−水素化)
0.1kg/hのジカルボン酸溶液を、管型反応器(1mの長さ、内容物100ml)中で、120℃および20バールの水素圧で、25標準リットル(Normliter)の水素/hで、100mlのRu(5%)/二酸化チタン触媒上で水素化した。水素化は500時間運転したが、水素化搬出物の組成は顕著に変化することはなかった。水素化後の1,6−ヘキサンジオールの含量は、水素化前のものよりも0.1%未満増加した。
【0084】
工程2:(脱水)
工程1からの0.1kg/hのジカルボン酸溶液(アジピン酸、6−ヒドロキシカプロン酸、1,4−シクロヘキサンジオール、グルタル酸、5−ヒドロキシ吉草酸、ギ酸、水)を連続的に、付属の充填塔(理論段数4、塔頂での還流なし)を備えた蒸留装置(外部循環油加熱装置を備えた3段式泡鐘塔、油温度150℃、それぞれ約25mlの泡鐘段容積、泡鐘段を介しての供給口)中で蒸留した。塔頂生成物として、水中約0.2%のギ酸含量で0.04kgが得られた。塔底流(5.5kg)中で、約0.4%の含水量であった。
【0085】
比較例と本発明による例との比較は、顕著に少ない量のギ酸を示し、これによって技術水準から知られているものよりも純粋な最終生成物(工程7および8参照)が得られた。
【0086】
工程3:(エステル化)
工程1からの塔底流5.5kgを、メタノール8.3kgおよび硫酸14gと反応させた。搬出ガスの酸価は、硫酸を差し引いて、約10mgKOH/gであった。
【0087】
工程4:
1個の塔内で、工程2からのエステル化流を蒸留した(1015ミリバール、65℃の塔頂温度、125℃までの塔底温度)。塔底を介して7.0kgを引き抜いた。塔底生成物として6.8kgが得られた。
【0088】
工程5:(1,4−シクロヘキサンジオールの分離)
50cm充填塔中で、工程3からの塔底流を分別蒸留した(10ミリバール、75〜95℃の塔頂温度、200℃までの塔底温度)。塔底において1,4−シクロヘキサンジオールが観察された。
【0089】
低沸成分として、0.3kgを留去し(コハク酸ジメチルエステル、吉草酸メチルエステル、ペンタン酸メチルエステル、カプロン酸メチルエステル、1,2−シクロヘキサンジオール、バレロラクトン、5−ヒドロキシ吉草酸メチルエステル、グルタル酸ジメチルエステル等)、主にアジピン酸ジメチルエステルおよび6−ヒドロキシカプロン酸メチルエステルを含む留分が5.5kg得られ、この場合、これはさらに2〜5%のグルタル酸ジメチルエステルおよび5−ヒドロキシ吉草酸メチルエステル、0.2〜1%のバレロラクトンおよびカプロラクトンを含んでいた。
【0090】
工程6:(部分流の水素化)
工程5からの3kgのC−エステル混合物を、連続的に25mlの反応器中で、触媒を用いて水素化した(触媒、70質量%のCuO、25質量%のZnO、5質量%のAlであり、これは予め水素流中で180℃で活性化したものであり、水素化条件:供給口20g/h、循環なし、220バール、220℃)。エステル変換率は99.5%であり、これは1,6−ヘキサンジオール選択率99%を超えるものであった。
【0091】
工程7および8:(ヘキサンジオール精製)
工程6からの水素化搬出物2.9kgを分別蒸留した(付属の70cm充填塔を備えた蒸留釜、還流比2)。1013ミリバールで、0.6kgのメタノールを留去し、かつ真空(20ミリバール)の適用後に、主として1,2−シクロヘキサンジオールおよび1,5−ペンタンジオールを留去した。このようにして(沸点146℃)1,6−ヘキサンジオールを99.93%の純度で留去した。ヘキサンジオール中で、数量的に僅かな成分の他、なおも約0.01%の1,4−シクロヘキサンジオールが存在していた。6−メトキシヘキサン−1−オールおよび6,6−ジメトキシヘキサン−1−オールは観察されなかった。
【0092】
例3:
例2の工程1を繰り返したが、この際、触媒として活性炭上にRu(0.5%)を使用する点で異なっていた。水素化の結果は、例2と同様であった。
【0093】
例4:
例2の工程1を繰り返したが、この際、触媒として活性炭上にNi(10%)を150℃および50バールで使用する点で異なっていた。水素化の結果は、例2と同様であった。
【0094】
例5:
例2の工程1を繰り返したが、この際、触媒として活性炭上にCo(10%)を120℃および50バールで使用する点で異なっていた。水素化の結果は、例2と同様であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素または酸素含有ガスを用いてシクロヘキサンのシクロヘキサノン/シクロヘキサノールへの接触酸化の副生成物として反応混合物の水抽出によって得られる、アジピン酸、6−ヒドロキシカプロン酸、6−オキソカプロン酸、4−ヒドロキシシクロヘキサノン、ギ酸、ならびにアジピン酸とヒドロキシカプロン酸との合計に対して0.5〜5質量%の1,4−シクロヘキサンジオールを含有するカルボン酸混合物から出発して、エステル化し、部分流を水素化することによってヘキサンジオールにする、1,6−ヘキサンジオールを製造する方法において、
a)水性カルボン酸混合物中に含まれるアルデヒドおよびケトンのみを相当するアルコールに接触水素化し、かつ混合物中に含まれるギ酸の50%以上が分解され、
b)水性反応混合物中に含まれるモノカルボン酸およびジカルボン酸を、脱水後、低分子量アルコールを用いて相当するカルボン酸エステルに変換し、
c)得られたエステル化混合物から、第一蒸留工程中で、過剰量のアルコールおよび低沸成分を分離し、
d)塔底生成物から、第2の蒸留工程中で、1,4−シクロヘキサンジオールを減少させたエステル留分と1,4−シクロヘキサンジオールを含む留分とに分離し、
e)(d)からのエステル留分を接触水素化し、かつ自体公知の方法で水素化生成物の蒸留によって1,6−ヘキサンジオールを得る、
ことを特徴とする、前記1,6−ヘキサンジオールを製造する方法。
【請求項2】
工程a)中の水素化のための触媒が、二酸化チタン成形体または活性炭成形体上に担持されたルテニウム、コバルトまたはニッケルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程a)中の水素化のための触媒が、触媒活性金属および担体からなる触媒の全質量に対して0.01〜10質量%の範囲の金属含量およびDIN66131により測定された5〜500m/gの範囲のBET表面積を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
エステル化を1〜3個の炭素原子を有するアルコールを用いて行う、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
エステル化を4〜10個の炭素原子を有するアルコールを用いて行う、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
エステル化をメタノールを用いて行い、かつ蒸留工程c)中で、塔頂で実質的に1,4−シクロヘキサンジオール不含のカルボン酸メチルエステル留分を得て、かつ、高沸成分および1,4−シクロヘキサンジオールを含有する塔底留分を得て、かつカルボン酸メチルエステル留分を、第3の蒸留工程d)中に連行する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
エステル化をn−ブタノールまたはi−ブタノールを用いて行い、かつ蒸留工程c)中で、1,4−シクロヘキサンジオールを低沸成分と一緒に塔頂を介して分離し、かつカルボン酸ブチルエステルを側流として、あるいはこれを含有する塔底生成物として得て、かつ第3の蒸留工程d)に連行する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
蒸留工程c)およびd)を単一の塔内で行う、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
工程c)の塔底生成物を少なくとも部分的に、低分子量アルコールおよびエステル化触媒のさらなる添加により再度エステル化し、かつb)およびc)と同様に、別個の蒸留工程中で分離するか、あるいは1,4−シクロヘキサンジオールを分離した後にのみ再度エステル化し、かつカルボン酸エステルを含有する留分を水素化工程d)に導く、請求項1に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2012−522819(P2012−522819A)
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−503955(P2012−503955)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【国際出願番号】PCT/EP2010/054053
【国際公開番号】WO2010/115738
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】