説明

11−ベータ−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ−1阻害剤としてのトリアゾール誘導体

構造式Iのトリアゾール誘導体は、11β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ−1の選択的阻害剤である。当該化合物は、糖尿病、例えばインスリン非依存性2型糖尿病(NIDDM)、高血糖症、肥満、インスリン抵抗性、脂質障害、高脂血症、高血圧、メタボリックシンドローム、及びNIDDMに付随した他の症状の治療のために有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酵素11−ベータ−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ1型(11β−HSD1又はHSD1)の阻害剤としてのトリアゾール誘導体、及び、かかる化合物を用いて特定の症状を治療する方法に関する。本発明化合物は、インスリン非依存性2型糖尿病(NIDDM)、インスリン抵抗性、肥満、脂質障害、高血圧、認知症、眼内圧増大の治療、損傷治癒の促進、及び他の疾病及び症状ために有用である。
【背景技術】
【0002】
糖尿病は、多数の因子によって引き起こされ、最も単純には、絶食状態における高い血漿グルコースレベル(高血糖症)によって特徴づけられる。糖尿病には、一般に認められた2つの型がある:1型糖尿病、又はインスリン依存性糖尿病(IDDM)であって、これにおいて患者は、グルコース利用を調節するホルモンであるインスリンを殆ど又は全く産生しない;及び、2型糖尿病、又はインスリン非依存性糖尿病(NIDDM)であって、これにおいて患者はインスリンを産生し、高インスリン血症(非糖尿病被験者に比較して同じか又は一層高い血漿インスリンレベル)さえも示すが、同時に高血糖症を示す。1型糖尿病は、典型的には、注射による外来性のインスリン投与によって治療される。しかしながら、2型糖尿病は、しばしば「インスリン抵抗性」を発症し、主要なインスリン感受性組織、すなわち筋肉、肝臓、及び脂肪組織におけるグルコース及び脂質の代謝を刺激することにおける、インスリンの効果が低減される。インスリン抵抗性であるが糖尿病ではない患者は、インスリン抵抗性を補正する高いインスリンレベルを有するため、血清グルコースレベルは高められない。NIDDM患者では、血漿インスリンレベルは、それが高められている場合でも、顕著なインスリン抵抗性を克服するには不充分であり、結果として高血糖症を生じる。
【0003】
2型糖尿病は、心臓血管系の合併症、例えばアテローム性動脈硬化症、冠動脈性心疾患、卒中、末梢血管疾患、高血圧、腎症、神経症、及び網膜症の発症のリスクが高い。それゆえ、グルコースホメオスタシス、脂質代謝、肥満、及び高血圧の治療的制御は、糖尿病の臨床管理及び治療において、極めて重要である。
【0004】
インスリン抵抗性をもつが、2型糖尿病を発症していない多くの患者はまた、「シンドロームX」又は「メタボリックシンドローム」と呼ばれる症候を発症するリスクがある。シンドロームX又はメタボリックシンドロームは、異常な肥満、高インスリン血症、高血圧、低HDL、及び高VLDLとともに、インスリン抵抗性によって特徴づけられる。こうした患者は、顕性糖尿病を発症しているか否かにかかわらず、前記にリストされた心臓血管系合併症を発症するリスクが高い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
糖尿病及び関連疾患、例えばメタボリックシンドロームを治療する新規な方法には、継続したニーズがある。本発明は、この及び他のニーズを満たす。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要旨)
本発明は、式I:
【0007】
【化1】

【0008】
[式中、X、Y、及びZのうちの2つは、窒素原子を表し、他は酸素原子を表し;
及びRは、それらが結合している原子と一緒になって、1〜2個のフッ素原子で置換されていてもよいシクロブチル基を表し、かつRは、水素又はフッ素原子を表し;
或いは、Rは、メチルを表し、
は、メチル又はフッ素原子を表し、かつ
は、フッ素原子を表す]によって表される化合物、又は医薬的に許容され得るその塩又は溶媒和物に関する。
(発明の詳細な説明)
【0009】
本明細書においては、以下の定義が適用され得る。
【0010】
「アルキル」、並びに例えばアルコキシ及びアルカノイルのような、接頭語「alk」を有する他の基は、炭素鎖であって、他に定義されない限り、直鎖又は分枝鎖、及びそれらの組合せであってもよい炭素鎖を意味する。アルキル基の実例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−及びtert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、及びノニルなどを包含する。例えばC3−10から、明記された炭素原子数が許容する場合、用語アルキルはまた、シクロアルキル基と、シクロアルキル構造に結合した直鎖又は分枝鎖のアルキル鎖の組合せとを包含する。何ら炭素原子数が明記されていない場合には、C1−6が意図される。
【0011】
「シクロアルキル」は、アルキルのサブセットであり、明記された炭素原子数を有する飽和カルボサイクリック環を意味する。シクロアルキルの実例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、及びシクロオクチルなどを包含する。シクロアルキル基は、一般に、他に指定されない限り単環式である。シクロアルキル基は、他に定義されない限り飽和されている。
【0012】
「アリール」は、炭素環原子を含有する単環又は多環式の、芳香環系を意味する。好ましいアリールは、6〜10員の、単環又は二環式の芳香環系である。フェニル及びナフチルは、好ましいアリールである。最も好ましいアリールは、フェニルである。
【0013】
「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素を指す。塩素及びフッ素が、一般に好ましい。ハロゲンがアルキル又はアルコキシ基上に置換される場合、フッ素が最も好ましい(例えばCFO及びCFCHO)。
【0014】
医薬組成物における、用語「組成物」は、活性成分と、担体を構成する不活性成分とを含んでなる生成物、並びに、任意の2以上の成分の結合、錯化、又は会合から、又は1以上の成分の分解から、若しくは1以上の成分の他のタイプの反応又は相互作用から、結果として直接又は間接的に生じる任意の生成物を含むことが意図される。したがって、本発明の医薬組成物は、本発明の化合物と医薬的に許容され得る担体とを混合することにより製される任意の組成物を含む。
【0015】
用語、化合物「の投与」及び「を投与すること」は、本発明の化合物又は、本発明の化合物のプロドラッグを、必要としている個体へ与えることを意味すると理解されるべきである。
【0016】
構造式Iの化合物は、1以上の不斉中心を含有してもよく、したがってラセミ体及びラセミ混合物、単一のエナンチオマー、ジアステレオマー混合物、及び個々のジアステレオマーとして生じることが可能である。本発明は、構造式Iの化合物の、かかる異性体型の全てを包含することを意図している。
【0017】
構造式Iの化合物は、それらの個々のジアステレオ異性体へ、例えば、適当な溶媒、例えばメタノール又は酢酸エチル又はそれらの混合物からの分別結晶により、或いは、光学活性固定相を用いたキラルクロマトグラフィーにより、分離され得る。絶対立体化学は、必要であれば、公知の絶対配置の不斉中心を含有する試薬で誘導体化された、結晶性生成物又は結晶性中間体の、X線結晶学により決定され得る。
【0018】
別法として、一般構造式Iの化合物の任意の立体異性体は、立体特異的合成により、光学的に純粋な出発物質か、又は公知の絶対配置の試薬を用いて取得され得る。
【0019】
これらのビシクロ[2.2.2]オクチルトリアゾール誘導体は、11β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ1型(11β−HSD1)の阻害剤として有効である。それらは、それゆえ11β−HSD1の阻害に対し反応性の疾患、例えば2型糖尿病、脂質障害、肥満、アテローム性動脈硬化症、アルツハイマー病及び関連疾患の治療に必要とされるような認知増強、高血圧、眼内圧増大の治療、損傷治癒の促進、及び、メタボリックシンドロームの治療、管理、及び予防のために有用である。
【0020】
本発明はまた、本発明化合物と、医薬的に許容され得る担体とを含んでなる医薬組成物に関する。
【0021】
本発明はまた、11β−HSD1の阻害に対し反応性の障害、疾患、又は症状を治療、管理、又は予防する方法であって、かかる治療、管理、又は予防を必要とする患者において本発明の化合物及び医薬組成物を投与することによる方法に関する。
【0022】
本発明はまた、2型糖尿病、肥満、脂質障害、アテローム性動脈硬化症、及びメタボリックシンドロームの治療又は管理のための方法であって、本発明化合物及び本発明の医薬組成物を投与することによる方法に関する。
【0023】
本発明はまた、肥満を治療するための方法であって、本発明化合物を、当該症状を治療すべく有用であることが公知である別の薬剤の治療上有効な量と併用して投与することによる方法に関する。
【0024】
本発明はまた、2型糖尿病を治療するための方法であって、本発明化合物を、当該症状を治療すべく有用であることが公知である別の薬剤の治療上有効な量と併用して投与することによる方法に関する。
【0025】
本発明はまた、アテローム性動脈硬化症を治療するための方法であって、本発明化合物を、当該症状を治療すべく有用であることが公知である別の薬剤の治療上有効な量と併用して投与することによる方法に関する。
【0026】
本発明はまた、脂質障害を治療するための方法であって、本発明化合物を、当該症状を治療すべく有用であることが公知である別の薬剤の治療上有効な量と併用して投与することによる方法に関する。
【0027】
本発明はまた、メタボリックシンドロームを治療するための方法であって、本発明化合物を、当該症状を治療すべく有用であることが公知である別の薬剤の治療上有効な量と併用して投与することによる方法に関する。
【0028】
本発明はまた、高血糖症、インスリン抵抗性、2型糖尿病、脂質障害、肥満、アテローム性動脈硬化症、及びメタボリックシンドロームの治療のための、構造式Iの化合物の用途に関する。
【0029】
本発明はまた、高血糖症、インスリン抵抗性、2型糖尿病、脂質障害、肥満、アテローム性動脈硬化症、及びメタボリックシンドロームの治療における使用のための、医薬品製造における構造Iの化合物の用途も提供する。
【0030】
本発明はまた、高血圧を治療するための方法であって、高血圧を治療するべく有効な量の本発明化合物を投与することによる方法に関する。かかる治療は、式Iの化合物を用いた単一療法か、又は、高血圧を治療するべく有効な量の式Iの化合物が、当該症状を治療すべく有用であることが公知である別の薬剤の治療上有効な量と併用して投与されることによる、多剤療法を包含することができる。
【0031】
本発明はまた、認知を増強するための方法であって、認知を増強するべく有効な量の本発明化合物を投与することを含んでなる方法に関する。かかる治療は、式Iの化合物を用いた単一療法か、又は、認知を増強するべく有効な量の式Iの化合物が、当該症状を治療すべく有用であることが公知である別の薬剤の治療上有効な量と併用して投与されることによる、多剤療法を包含することができる。
【0032】
本発明はまた、アルツハイマー病を治療するための方法であって、アルツハイマー病を治療するべく有効な量の本発明化合物を投与することによる方法に関する。かかる治療は、式Iの化合物を用いた単一療法か、又は、アルツハイマー病を治療するべく有効な量の式Iの化合物が、当該症状を治療すべく有用であることが公知である別の薬剤の治療上有効な量と併用して投与されることによる、多剤療法を包含することができる。
【0033】
本発明はまた、損傷治癒を改善するための方法であって、損傷治癒を改善するべく有効な量の本発明化合物を投与することによる方法に関する。かかる治療は、式Iの化合物を用いた単一療法か、又は、損傷治癒を促進するべく有効な量の式Iの化合物が、当該症状を治療すべく有用であることが公知である別の薬剤の治療上有効な量と併用して投与されることによる、多剤療法を包含することができる。
【0034】
本発明はまた、眼内圧を低減するための方法であって、眼内圧を低減するべく有効な量の本発明化合物を投与することによる方法に関する。かかる治療は、式Iの化合物を用いた単一療法か、又は、眼内圧を低減するべく有効な量の式Iの化合物が、当該症状を治療すべく有用であることが公知である別の薬剤の治療上有効な量と併用して投与されることによる、多剤療法を包含することができる。
【0035】
本発明はまた、緑内障を改善するための方法であって、緑内障を治療するべく有効な量の本発明化合物を投与することによる方法に関する。かかる治療は、式Iの化合物を用いた単一療法か、又は、緑内障を治療するべく有効な量の式Iの化合物が、当該症状を治療すべく有用であることが公知である別の薬剤の治療上有効な量と併用して投与されることによる、多剤療法を包含することができる。
【0036】
本発明の別の側面においては、医薬組成物であって、構造式Iによる化合物か、又は医薬的に許容され得るその塩又は溶媒和物を、医薬的に許容され得る担体と組合せてなる組成物が扱われる。用語「溶媒和物」により、水和物、アルコラート、又は他の結晶化の溶媒和物が意味される。
【0037】
本発明のもう1つの側面においては、脂質異常症、高脂血症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、低HDL、及び高LDLからなる群より選択される脂質障害を治療する方法であって、かかる治療を必要とする哺乳類患者において、前記脂質障害を治療するべく有効な量の構造式Iの化合物を、当該患者へ投与することを含んでなる方法が開示される。
【0038】
本発明のもう1つの側面においては、アテローム性動脈硬化症を治療する方法であって、かかる治療を必要とする哺乳類患者において、アテローム性動脈硬化症を治療するべく有効な量の構造式Iの化合物を、当該患者へ投与することを含んでなる方法が開示される。
【0039】
本発明のもう1つの側面においては、(1)高血糖症、(2)低グルコース耐性、(3)インスリン抵抗性、(4)肥満、(5)脂質障害、(6)脂質異常症、(7)高脂血症、(8)高トリグリセリド血症、(9)高コレステロール血症、(10)低HDLレベル、(11)高LDLレベル、(12)アテローム性動脈硬化症及びその後遺症、(13)血管再狭窄、(14)膵臓炎、(15)腹部肥満、(16)神経変性疾患、(17)網膜症、(18)腎症、(19)神経症、(20)メタボリックシンドローム、(21)高血圧、(22)アルツハイマー病、(23)緑内障、(24)損傷治癒の遅延又は不良、並びにインスリン抵抗性が構成要素である他の症状及び障害、からなる群より選択される症状を治療する方法であって、かかる治療を必要とする哺乳類患者において、前記症状を治療するべく有効な量の構造式Iの化合物を、当該患者へ投与することを含んでなる方法が開示される。
【0040】
本発明のもう1つの側面においては、(1)高血糖症、(2)低グルコース耐性、(3)インスリン抵抗性、(4)肥満、(5)脂質障害、(6)脂質異常症、(7)高脂血症、(8)高トリグリセリド血症、(9)高コレステロール血症、(10)低HDLレベル、(11)高LDLレベル、(12)アテローム性動脈硬化症及びその後遺症、(13)血管再狭窄、(14)膵臓炎、(15)腹部肥満、(16)神経変性疾患、(17)網膜症、(18)腎症、(19)神経症、(20)メタボリックシンドローム、(21)高血圧、並びにインスリン抵抗性が構成要素である他の症状及び障害、からなる群より選択される症状の開始を遅延する方法であって、かかる治療を必要とする哺乳類患者において、前記症状の開始を遅延するべく有効な量の構造式Iの化合物を、当該患者へ投与することを含んでなる方法が開示される。
【0041】
本発明のもう1つの側面においては、(1)高血糖症、(2)低グルコース耐性、(3)インスリン抵抗性、(4)肥満、(5)脂質障害、(6)脂質異常症、(7)高脂血症、(8)高トリグリセリド血症、(9)高コレステロール血症、(10)低HDLレベル、(11)高LDLレベル、(12)アテローム性動脈硬化症及びその後遺症、(13)血管再狭窄、(14)膵臓炎、(15)腹部肥満、(16)神経変性疾患、(17)網膜症、(18)腎症、(19)神経症、(20)メタボリックシンドローム、(21)高血圧、並びにインスリン抵抗性が構成要素である他の症状及び障害、からなる群より選択される症状の発症のリスクを低減する方法であって、かかる治療を必要とする哺乳類患者において、前記症状の発症のリスクを低減するべく有効な量の構造式Iの化合物を、当該患者へ投与することを含んでなる方法が開示される。
【0042】
本発明のもう1つの側面においては、(1)高血糖症、(2)低グルコース耐性、(3)インスリン抵抗性、(4)肥満、(5)脂質障害、(6)脂質異常症、(7)高脂血症、(8)高トリグリセリド血症、(9)高コレステロール血症、(10)低HDLレベル、(11)高LDLレベル、(12)アテローム性動脈硬化症及びその後遺症、(13)血管再狭窄、(14)膵臓炎、(15)腹部肥満、(16)神経変性疾患、(17)網膜症、(18)腎症、(19)神経症、(20)メタボリックシンドローム、(21)高血圧、並びにインスリン抵抗性が構成要素である他の症状及び障害、からなる群より選択される症状を治療する方法であって、かかる治療を必要とする哺乳類患者において、構造式Iに定義された有効量の化合物と:
(a)ジペプチジルペプチダーゼ−IV(DPP−IV)阻害剤;
(b)(i)PPARアルファアゴニスト、(ii)PPARガンマゴニスト、(iii)PPARアルファ/ガンマデュアルアゴニスト、及び(iv)ビグアニドからなる群より選択される、インスリン感受性増強剤;
(c)インスリン及びインスリンミメティクス;
(d)スルホニルウレア及び他のインスリン分泌促進物質;
(e)α−グルコシダーゼ阻害剤;
(f)グルカゴン受容体アンタゴニスト;
(g)GLP−1、GLP−1類似体、及びGLP−1受容体アゴニスト;
(h)GIP、GIPミメティクス、及びGIP受容体アゴニスト;
(i)PACAP、PACAPミメティクス、PACAP受容体3アゴニスト;
(j)(i)HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、(ii)金属イオン封鎖剤、(iii)ニコチニルアルコール、ニコチン酸、及びそれらの塩、(iv)コレステロール吸収阻害剤、(v)アシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼ阻害剤、及び(vi)酸化防止剤からなる群より選択される、コレステロール低下薬;
(k)PPARデルタアゴニスト;
(l)抗肥満化合物;
(m)回腸胆汁酸トランスポーター阻害薬;
(n)グルココルチコイドを除く抗炎症剤;
(o)タンパク質チロシンホスファターゼ1B(PTP−1B)阻害剤;並びに
(p)アンギオテンシン転換酵素阻害剤、アンギオテンシンII受容体アンタゴニスト又はレニン阻害剤といった、アンギオテンシン又はレニン系に作用するものを含む抗高血圧薬であって、例えばカプトプリル、シラザプリル、エナラプリル、フォシノプリル、リシノプリル、キナプリル、ラマプリル(ramapril)、ゾフェノプリル、カンデサルタン、シレキセチル、エプロサルタン、イルベサルタン、ロサルタン、タソサルタン、テルミサルタン及びバルサルタン;
からなる群より選択される化合物とを、当該患者へ投与することを含んでなり;
前記化合物は、前記症状を治療するべく有効な量で、当該患者へ投与される。
【0043】
構造式Iの化合物との併用が可能なジペプチジルペプチダーゼ−IV阻害剤は、WO 03/004498(2003年1月16日);WO 03/004496(2003年1月16日);EP 1 258 476(2002年、11月20日);WO 02/083128(2002年10月24日);WO 02/062764(2002年8月15日);WO 03/000250(2003年1月3日);WO 03/002530(2003年1月9日);WO 03/002531(2003年1月9日);WO 03/002553(2003年1月9日);WO 03/002593(2003年1月9日);WO 03/000180(2003年1月3日);及びWO 03/000181(2003年1月3日)に開示されたものを包含する。具体的なDP−IV阻害剤化合物は、イソロイシンチアゾリジド(thiazolidide);NVP−DPP728;P32/98;及びLAF237を包含する。
【0044】
構造式Iの化合物との併用が可能な抗肥満化合物は、フェンフルラミン、デキシフェンフルラミン、フェンテルミン、シブトラミン、オルリスタット、ニューロペプチドY又はYアンタゴニスト、カナビノイドCB1受容体アンタゴニスト又は逆アゴニスト、メラノコルチン受容体アゴニスト、特にメラノコルチン−4受容体アゴニスト、グレリンアンタゴニスト、及びメラニン凝集ホルモン(MCH)受容体アンタゴニストを包含する。構造式Iの化合物との併用が可能な抗肥満化合物の総説については、チャキ(S.Chaki)ら著、「摂食抑制剤における最近の進歩:肥満治療のための可能な治療戦略」、エキスパート・オピニオン・オン・セラピューティック・パテンツ(Exp.Opin.Ther.Patents)、2001年、第11巻、p.1677−1692参照。
【0045】
構造式Iの化合物との併用が可能なニューロペプチドY5アンタゴニストは、米国特許第6,335,345号(2002年1月1日)及びWO 01/14376(2001年3月1日)に開示されたもの;及びGW59884A;GW569180A;LY366377;及びCGP−71683Aとして同定された具体的な化合物を包含する。
【0046】
構造式Iの化合物との併用が可能なカナビノイドCB1受容体アンタゴニストは、PCT公開WO 03/007887;米国特許第5,624,941号、例えばリモナバント;PCT公開WO 02/076949、例えばSLV−319;米国特許第6,028,084号;PCT公開WO 98/41519;PCT公開WO 00/10968;PCT公開WO 99/02499;米国特許第5,532,237号;及び米国特許第5,292,736号に開示されたものを包含する。
【0047】
構造式Iの化合物との併用が可能なメラノコルチン受容体アゴニストは、WO 03/009847(2003年2月6日);WO 02/068388(2002年9月6日);WO 99/64002(1999年12月16日);WO 00/74679(2000年12月14日);WO 01/70708(2001年9月27日)、及びWO 01/70337(2001年9月27日)に開示されたもの、並びにスピーク(J.D.Speake)ら著、「メラノコルチン−4受容体アゴニスト開発における最近の進歩」、エキスパート・オピニオン・オン・セラピューティック・パテンツ、2002年、第12巻、p.1631−1638に開示されたものを包含する。
【0048】
本発明のもう1つの側面においては、高コレステロール血症、アテローム性動脈硬化症、低HDLレベル、高LDLレベル、高脂血症、高トリグリセリド血症及び脂質異常症からなる群より選択される症状を治療する方法であって、かかる治療を必要とする哺乳類患者において、治療上有効な量の構造式Iに定義された化合物と、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤とを、当該患者へ投与することを含んでなる方法が開示される。
【0049】
さらに詳細には、本発明のもう1つの側面においては、高コレステロール血症、アテローム性動脈硬化症、低HDLレベル、高LDLレベル、高脂血症、高トリグリセリド血症及び脂質異常症からなる群より選択される症状を、かかる治療を必要とする哺乳類患者において治療する方法であって、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤がスタチンである方法が開示される。
【0050】
なおさらに詳細には、本発明のもう1つの側面においては、高コレステロール血症、アテローム性動脈硬化症、低HDLレベル、高LDLレベル、高脂血症、高トリグリセリド血症及び脂質異常症からなる群より選択される症状を、かかる治療を必要とする哺乳類患者において治療する方法であって、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤が、ロバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、イタバスタチン及びロスバスタチンからなる群より選択されるスタチンである方法が開示される。
【0051】
本発明のもう1つの側面においては、高コレステロール血症、アテローム性動脈硬化症、低HDLレベル、高LDLレベル、高脂血症、高トリグリセリド血症及び脂質異常症からなる群より選択される症状の発症のリスク及びそのような症状の後遺症を低減する方法であって、治療上有効な量の構造式Iに定義された化合物と、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤とを、かかる処置を必要とする哺乳類患者へ投与することを含んでなる方法が開示される。
【0052】
本発明のもう1つの側面においては、アテローム性動脈硬化症の発症を開始遅延するか又はリスク低減するための方法であって、かかる処置を必要とするヒトの患者において、治療上有効な量の構造式Iに定義された化合物と、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤とを、当該患者へ投与することを含んでなる方法が開示される。
【0053】
さらに詳細には、アテローム性動脈硬化症の発症を、かかる処置を必要とするヒトの患者において、開始遅延するか又はリスク低減するための方法であって、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤がスタチンである方法が開示される。
【0054】
さらに詳細には、アテローム性動脈硬化症の発症を、かかる処置を必要とするヒトの患者において、開始遅延するか又はリスク低減するための方法であって、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤が:ロバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、イタバスタチン及びロスバスタチンからなる群より選択されるスタチンである方法が開示される。
【0055】
なおさらに詳細には、アテローム性動脈硬化症の発症を、かかる処置を必要とするヒトの患者において、開始遅延するか又はリスク低減するための方法であって、スタチンがシンバスタチンである方法が開示される。
【0056】
本発明のもう1つの側面においては、アテローム性動脈硬化症の発症を、かかる処置を必要とするヒトの患者において、開始遅延するか又はリスク低減するための方法であって、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤がスタチンであり、更にコレステロール吸収阻害剤を投与することを含んでなる方法が開示される。
【0057】
さらに詳細には、本発明のもう1つの側面においては、アテローム性動脈硬化症の発症を、かかる処置を必要とするヒトの患者において、開始遅延するか又はリスク低減するための方法であって、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤がスタチンであり、コレステロール吸収阻害剤がエゼチミブである方法が開示される。
【0058】
本発明のもう1つの側面においては、医薬組成物であって、
(1)構造式Iの化合物、
(2)以下からなる群より選択される化合物:
(a)DP−IV阻害剤;
(b)(i)PPARアルファアゴニスト、(ii)PPARガンマゴニスト、(iii)PPARアルファ/ガンマデュアルアゴニスト、及び(iv)ビグアニドからなる群より選択される、インスリン感受性増強剤;
(c)インスリン及びインスリンミメティクス;
(d)スルホニルウレア及び他のインスリン分泌促進物質;
(e)α−グルコシダーゼ阻害剤;
(f)グルカゴン受容体アンタゴニスト;
(g)GLP−1、GLP−1類似体、及びGLP−1受容体アゴニスト;
(h)GIP、GIPミメティクス、及びGIP受容体アゴニスト;
(i)PACAP、PACAPミメティクス、PACAP受容体3アゴニスト;
(j)(i)HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、(ii)金属イオン封鎖剤、(iii)ニコチニルアルコール、ニコチン酸、又はそれらの塩、(iv)コレステロール吸収阻害剤、(v)アシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼ阻害剤、及び(vi)酸化防止剤からなる群より選択される、コレステロール低下薬;
(k)PPARデルタアゴニスト;
(l)抗肥満化合物;
(m)回腸胆汁酸トランスポーター阻害薬;
(n)グルココルチコイドを除く抗炎症剤;
(o)タンパク質チロシンホスファターゼ1B(PTP−1B)阻害剤;及び
(p)アンギオテンシン転換酵素阻害剤、アンギオテンシンII受容体アンタゴニスト又はレニン阻害剤といった、アンギオテンシン又はレニン系に作用するものを含む抗高血圧薬であって、例えばカプトプリル、シラザプリル、エナラプリル、フォシノプリル、リシノプリル、キナプリル、ラマプリル(ramapril)、ゾフェノプリル、カンデサルタン、シレキセチル、エプロサルタン、イルベサルタン、ロサルタン、タソサルタン、テルミサルタン及びバルサルタン;
からなる群より選択される化合物、並びに
(3)医薬的に許容され得る担体、
を含んでなる医薬組成物が開示される。
【0059】
本発明化合物は、医薬的に許容され得る塩の形状で投与されてもよい。用語「医薬的に許容され得る塩」は、無機又は有機塩基、及び無機又は有機酸を含む、医薬的に許容され得る非毒性の塩基又は酸から調製される塩を指す。用語「医薬的に許容され得る塩」に含まれる塩基性化合物の塩は、一般に遊離塩基と適当な有機又は無機酸とを反応させることにより調製される、本発明化合物の非毒性の塩を指す。本発明化合物の塩基性化合物の代表的な塩は、制限されることなく、以下:アセタート(酢酸塩)、ベンゼンスルホナート(ベンゼンスルホン酸塩)、ベンゾアート(安息香酸塩)、バイカーボナート(炭酸水素塩)、バイスルファート(硫酸水素塩)、バイタートラート(酒石酸水素塩)、ボラート(ホウ酸塩)、ブロミド(臭化物)、カンシラート(カンシル酸塩)、カーボナート(炭酸塩)、クロリド(塩化物)、クラブラナート(クラブラン酸塩)、シトラート(クエン酸塩)、ジヒドロクロリド(二塩化水素化物)、エデタート(エデト酸塩)、エジシラート、エストラート、エシラート、フマラート(フマル酸塩)、グルセプタート(グルセプト酸塩)、グルコナート、グルタマート、グリコリルアルサニラート、ヘキシルレソルシナート、ヒドラバミン、ヒドロブロミド、ヒドロクロリド、ヒドロキシナフトアート、ヨージド(ヨウ化物)、イソチオナート(イソチオン酸塩)、ラクタート(乳酸塩)、ラクトビオナート(ラクトビオン酸塩)、ラウラート(ラウリン酸塩)、マラート(リンゴ酸塩)、マレアート(マレイン酸塩)、マンデラート(マンデル酸塩)、メシラート、メチルブロミド(臭化メチル)、メチルニトラート(硝酸メチル)、メチルスルファート(硫酸メチル)、ムカート(ムチン酸塩)、ナプシラート(ナプシル酸塩)、ニトラート(硝酸塩)、N−メチルグルカミンアンモニウム塩、オレアート(オレイン酸塩)、オキザラート(オキザル酸塩)、パモアート(パモ酸塩)(エンボナート)、パルミタート(パルミチン酸塩)、パントテナート(パントテン酸塩)、ホスファート(リン酸塩)/ジホスファート(二リン酸塩)、ポリガラクツロナート(ポリガラクツロン酸塩)、サリチラート(サリチル酸塩)、ステアラート(ステアリン酸塩)、スルファート(硫酸塩)、サブアセタート(塩基性酢酸塩)、スクシナート(コハク酸塩)、タンナート(タンニン酸塩)、タートラート(酒石酸塩)、テオクラート(テオクル酸塩)、トシラート(トシル酸塩)、トリエチオジド、及びバレラート(吉草酸塩)、を包含する。
さらに、本発明化合物が酸性成分をもつ場合、その好適な医薬的に許容され得る塩は、制限されることなく、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、第二鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、第二マンガン、mangamous、カリウム、ナトリウム、及び亜鉛などを含む、無機塩基から誘導される塩を包含する。特に好ましいのは、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウム、及びナトリウム塩である。医薬的に許容され得る非毒性有機塩基から誘導される塩は、第一級、第二級、及び第三級アミンの塩、環状アミン及び塩基性イオン交換樹脂、例えば、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、及びトロメタミンなどの塩を包含する。
【0060】
また、本発明化合物中にカルボン酸(−COOH)又はアルコール基が存在する場合、医薬的に許容され得るカルボン酸誘導体のエステル、例えばメチル、エチル、又はピバロイルオキシメチル、又は、アルコールのアシル誘導体、例えばアセタート又はマレアートが使用可能である。徐放性又はプロドラッグ製剤としての使用のため、溶解性又は加水分解特性を修正するための、当該技術分野における公知のエステル及びアシル基が包含される。
【0061】
本明細書では、構造式Iの化合物に対する言及は、医薬的に許容され得る塩、及びまた、それらが遊離化合物又は医薬的に許容され得る塩の前駆物質として、或いは他の合成操作において使用される場合には、医薬的に許容されない塩も包含することを意味することが理解されるであろう。
【0062】
構造式Iの化合物の溶媒和物、及び特に、水和物もまた本発明に包含される。
【0063】
本明細書に記述された化合物は、11β−HSD1酵素の選択的阻害剤である。したがって、本発明は、コルチゾンをコルチゾールへ転換する役割を果たしている11β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼのレダクターゼ活性を阻害するための、11β−HSD1阻害剤の使用に関する。過剰のコルチゾールは、NIDDM、肥満、脂質障害、インスリン抵抗性、及び高血圧を含む多数の疾患と関連づけられる。本発明化合物の投与は、コルチゾール及び他の11β−ヒドロキシステロイドを標的組織において低減し、それにより過剰量のコルチゾール及び他の11β−ヒドロキシステロイドの影響を低減する。11β−HSD1の阻害は、異常に高いレベルのコルチゾール及び他の11β−ヒドロキシステロイドに仲介される疾患、例えばNIDDM、肥満、高血圧、及び脂質障害を、治療及び管理するべく使用可能である。コルチゾールレベルを低下するためといった、脳における11β−HSD1活性の阻害はまた、不安、抑うつ、及び認知障害を治療又は低減するために有用であり得る。
【0064】
本発明は、11β−HSD1阻害剤の用途であって、哺乳類患者、特にヒトにおいて、過剰な、又は管理されていない量のコルチゾール及び/又は他のコルチコステロイドに仲介されるような、本明細書に記述されている疾患及び症状の、治療、管理、改善、予防、発症の開始遅延又はリスク低減のための、有効量の構造式Iの化合物又は医薬的に許容され得るその塩又は溶媒和物を投与することによる用途を包含する。11β−HSD1酵素の阻害は、通常は不活性であるコルチゾンの、過剰量が存在すればこれらの疾患及び症状の徴候を引き起すか又はもたらす可能性のある、コルチゾールへの転換を制限する。
【0065】
NIDDM及び高血圧:
本発明化合物は、11β−HSD2に比較して、11β−HSD1の選択的阻害剤である。11β−HSD1の阻害は、コルチゾールレベルの低減及びそれに関連する症状の治療に有用であるのに対し、11β−HSD2の阻害は、高血圧のような重い副作用と関連づけられる。
【0066】
コルチゾールは、重要かつ充分に認められた抗炎症性ホルモンであり、また肝臓におけるインスリン作用に対するアンタゴニストとしても作用して、インスリン感受性が低減されるようにし、結果として糖新生の増大と、肝臓におけるグルコースレベルの上昇とを生じる。グルコース耐性がすでに損なわれている患者は、異常に高いレベルのコルチゾールの存在下に2型糖尿病を発症する確率がより大きい。
【0067】
鉱質コルチコイド受容体が存在する組織における、高レベルのコルチゾールは、しばしば高血圧をもたらす。11β−HSD1の阻害は、特定の組織におけるコルチゾールとコルチゾンとの比を、コルチゾン寄りにシフトする。
【0068】
治療上有効な量の11β−HSD1阻害剤の投与は、NIDDMの症状を治療、管理、及び改善することにおいて有効であり、治療上有効な量の11β−HSD1阻害剤の標準ベースの投与は、NIDDMの発症を、特にヒトにおいて遅延又は防止する。
【0069】
クッシング症候群:
コルチゾールレベルの上昇はまた、血中の高いコルチゾールレベルにより特徴づけられる代謝疾患である、クッシング症候群の患者において観察される。クッシング症候群の患者は、しばしばNIDDMを発症する。
【0070】
肥満、メタボリックシンドローム、脂質異常症:
過剰なレベルのコルチゾールは、おそらくは肝臓の増大した糖新生に起因する、肥満と関係づけられてきた。腹部肥満は、グルコース耐性、高インスリン血症、高トリグリセリド血症、及び、メタボリックシンドロームの他の因子、例えば高血圧、高いVLDL、低いHDLと密接に関係づけられる。モンタギュー(Montague)ら著、「ダイアベーツ(Diabetes)」、2000年、第49巻、p.883−888。したがって、有効量の11β−HSD1阻害剤の投与は、肥満の治療又は管理において有用である。11β−HSD1阻害剤を用いた長期間の治療はまた、患者が11β−HSD1阻害剤を栄養制限食及び運動と併用して使用する場合には特に、肥満の始まりの遅延又は予防において有用である。
【0071】
インスリン抵抗性を低減すること及び、血清グルコースを正常濃度に維持することにより、本発明化合物はまた、メタボリックシンドローム又はシンドロームX、肥満、反応性低血糖症、及び糖尿病性脂質異常症を含む、2型糖尿病及びインスリン抵抗性に随伴する症状の治療及び予防において有用性を有する。
【0072】
認知及び痴呆:
脳における過剰なレベルのコルチゾールはまた、神経毒素の増強を通して、ニューロン損失又は機能不全を生じる結果となることがある。認知障害は、加齢及び、脳における過剰レベルのコルチゾールに関連づけられてきた。セクル(J.R.Seckl)及びウォーカー(B.R.Walker)著、「エンドクリノロジー(Endocrinology)」、2001年、第142巻、p.1371−1376、及びそれに引用された参考文献を参照。有効量の11β−HSD1阻害剤の投与は、加齢及びニューロン機能不全に関連した認知障害の低減、改善、管理、又は予防を生じる結果となる。11β−HSD1の阻害剤はまた、不安及び抑うつを治療するために有用であり得る。
【0073】
アテローム性動脈硬化症:
前述のとおり、11β−HSD1活性の阻害及び、コルチゾール量の低減は、高血圧の治療又は管理において有益である。高血圧及び脂質異常症は、アテローム性動脈硬化症の発症の一因となるため、治療上有効な量の本発明の11β−HSD1阻害剤の投与は、アテローム性動脈硬化症の治療、管理、開始遅延、又は予防において特に有益であり得る。
【0074】
すい臓に対する効果:
単離されたネズミ膵臓β細胞における11β−HSD1の阻害は、グルコース刺激インスリン分泌を改善する(ダバニ(B.Davani)ら著、「ザ・ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J.Biol.Chem.)」、2000年、第275巻、p.34841−34844)。グルココルチコイドは、インビボでインスリン分泌を低減することが示されている(ビルオーデル(B.Billaudel)ら著、「ホルモン・アンド・メタボリック・リサーチ(Horm.Metab.Res.)」、1979年、第11巻、p.555−560)。
【0075】
眼内圧の低減:
最近のデータは、グルココルチコイド標的受容体及び11β−HSD酵素のレベルと、緑内障に対する感受性との間の関係を示唆している(ストーク(J.Stokes)ら著、「Invest.Ophthamol.」、2000年、第41巻、p.1629−1638)。それゆえ、11β−HSD1活性の阻害は、緑内障の治療における眼内圧の低減において有用である。
【0076】
免疫修飾:
結核、乾癬といった特定の疾病状態、及び、過剰なストレス条件下においても、高いグルココルチコイド活性は、実際には細胞ベースの応答が患者に対しより有益であってよい場合に、免疫応答を体液性応答へシフトさせる。11β−HSD1活性の阻害及び、不随するグルココルチコイドレベルの低減は、免疫応答を細胞ベースの応答へシフトさせる(メイソン(D.Mason)著、「イムノロジー・トゥデイ(Immunology Today)」、1991年、第12巻、p.57−60、及びルック(G.A.W.Rook)著、「ベイリエルズ・クリニカル・エンドクリノロジー・アンド・メタボリズム(Baillier’s Clin.Endocrinol.Metab.)」、1999年、第13巻、p.576−581参照。
【0077】
骨粗鬆症:
グルココルチコイドは、結果として正味の骨損失を生じる可能性のある骨形成を阻害することが可能である。11β−HSD1は、骨吸収において役割をもつ。11β−HSD1の阻害は、骨粗鬆症による骨損失を防止することにおいて有益である。キム(C.H.Kim)ら著、「ザ・ジャーナル・オブ・エンドクリノロジー(J.Endocrinol.)」、1999年、第162巻、p.371−379;ベロウズ(C.G.Bellows)ら著、「ボーン(Bone)」、1998年、第23巻、p.119−125;及びクーパー(M.S.Cooper)ら著、「ボーン」、2000年、第27巻、p.375−381参照。
【0078】
他の有用性:
以下の疾患、障害、及び症状は、本発明化合物を用いた処置により、治療、管理、予防、又は遅延されることが可能である:(1)高血糖症、(2)低グルコース耐性、(3)インスリン抵抗性、(4)肥満、(5)脂質障害、(6)脂質異常症、(7)高脂血症、(8)高トリグリセリド血症、(9)高コレステロール血症、(10)低HDLレベル、(11)高LDLレベル、(12)アテローム性動脈硬化症及びその後遺症、(13)血管再狭窄、(14)膵臓炎、(15)腹部肥満、(16)神経変性疾患、(17)網膜症、(18)腎症、(19)神経症、(20)メタボリックシンドローム、(21)高血圧及び、インスリン抵抗性が構成要素である他の症状。
【0079】
上記の疾患及び症状は、構造式Iの化合物を用いて治療可能であるか、或いは、当該化合物は、本明細書に記述された疾患及び症状の発症のリスクを防止又は低減するべく投与可能である。11β−HSD2の同時阻害は、有害副作用を有することがあり、或いは、コルチゾールの低減が所望される標的組織においてコルチゾールの量を実際に増大させることがあるため、11β−HSD2の阻害が殆どないか又は全くない、11β−HSD1の選択的阻害が望ましい。
【0080】
構造式Iの11β−HSD1阻害剤は、一般に、約500nM未満、及び好ましくは約100nM未満の阻害定数IC50を有する。一般に、化合物の11β−HSD1に対する11β−HSD2のIC50の比は、少なくとも約2以上であり、好ましくは約10以上である。さらに好ましいのは、約100以上の、11β−HSD1に対する11β−HSD2のIC50比をもつ化合物である。例えば、本発明化合物は、理想的には約1000nMより大きく、好ましくは4000nMより大きい阻害定数IC50を、11β−HSD2に対し示す。
【0081】
構造式Iの化合物は、1以上の他の薬剤と併用して、構造式Iの化合物又は他の薬剤が効用をもつ疾患又は症状の、治療、予防、抑制、又は改善において使用され得る。典型的には、薬剤の併用は、どちらかの薬剤単独よりも安全又は有効であり、或いは、併用は、個々の薬剤の相加効果に基づいて期待されるものよりも安全又は有効である。かかる他の薬剤は、1つの経路により、構造式Iの化合物と同時に、又は順次に、一般的に使用される量で投与され得る。構造式Iの化合物が1以上の他の薬剤と同時に使用される場合には、かかる他の薬剤と構造式Iの化合物とを含有する、配合生成物が好ましい。しかしながら、併用療法はまた、構造式Iの化合物及び1以上の他の薬剤が、別々の一部重複するスケジュールで投与される療法も包含する。他の活性成分と組合せて使用される場合、本発明化合物、又は他の活性成分、又は双方は、各々が単独で使用される場合よりも低い用量で効果的に使用され得る。したがって、本発明の医薬組成物は、構造式Iの化合物に加えて、1以上の他の活性成分を含有するものを包含する。
【0082】
構造式Iの化合物と併用して投与されてよく、別々に投与されるか、又は同一の医薬組成物中において投与されてもよい他の活性成分の実例は、制限されることなく:
(a)ジペプチジルペプチダーゼ−IV(DPP−IV)阻害剤;
(b)(i)PPARデルタアゴニスト、例えばグリタゾン(例えばトログリタゾン、ピオグリタゾン、エングリタゾン、MCC−555、及びロシグリタゾンなど)、及びPPARアルファ/ガンマデュアルアゴニスト、例えばKRP−297,及びPPARアゴニスト、例えばジェムフィブロジル、クロフィブラート、フェノフィブラート、及びベザフィブラートを含む他のPPARリガンド、並びに(ii)ビグアニド、例えばメトホルミン及びフェンホルミンを包含する、インスリン感受性増強剤;
(c)インスリン及びインスリンミメティクス;
(d)スルホニルウレア及び他のインスリン分泌促進物質、例えばトルブタミド、グリピジド、メグリチニド、及び関連物質;
(e)アルファ−グルコシダーゼ阻害剤、例えばアカルボーズ;
(f)グルカゴン受容体アンタゴニスト、例えばWO 98/04528、WO 99/01423、WO 00/39088、及びWO 00/69810に開示されたもの;
(g)GLP−1、GLP−1類似体、及びGLP−1受容体アゴニスト、例えばWO 00/42026、及びWO 00/59887に開示されたもの;
(h)GIP、GIPミメティクス、例えばWO 00/58360に開示されたもの、及びGIP受容体アゴニスト;
(i)PACAP、PACAPミメティクス、及びPACAP受容体3アゴニスト、例えばWO 01/23420に開示されたもの;
(j)コレステロール低下薬、例えば(i)HMG−CoAレダクターゼ阻害剤(ロバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、イタバスタチン、ロスバスタチン、及び他のスタチン類)、(ii)胆汁酸金属イオン封鎖剤(コレスチラミン、コレスチポル、及び架橋デキストランのジアルキルアミノアルキル誘導体)、(iii)ニコチニルアルコール、ニコチン酸、又はそれらの塩、(iv)コレステロール吸収阻害剤、例えばエゼチミブ及びベータ−シトステロール、(v)アシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼ阻害剤、例えばアバシミベ(avasimibe)、及び(vi)酸化防止剤、例えばプロブコール;
(k)PPARデルタアゴニスト、例えばWO97/28149に開示されたもの;
(l)抗肥満化合物、例えばフェンフルラミン、デキシフェンフルラミン、フェンテルミン、シブトラミン、オルリスタット、ニューロペプチドY又はYアンタゴニスト、CB1受容体インバースアゴニスト及びアンタゴニスト、βアドレナリン受容体アゴニスト、メラノコルチン受容体アゴニスト、特にメラノコルチン−4受容体アゴニスト、グレリンアンタゴニスト、及びメラニン凝集ホルモン(MCH)受容体アンタゴニスト;
(m)回腸胆汁酸トランスポーター阻害薬;
(n)炎症性症状における使用を意図した、グルココルチコイド以外の薬剤、例えばアスピリン、非ステロイド抗炎症剤、アズルフィジン、及び選択的シクロオキシゲナーゼ−2阻害剤;
(o)タンパク質チロシンホスファターゼ1B(PTP−1B)阻害剤;及び
(p)アンギオテンシン転換酵素阻害剤、アンギオテンシンII受容体アンタゴニスト、又はレニン阻害剤のような、アンギオテンシン又はレニン系に作用するものを含む抗高血圧薬、例えば、カプトプリル、シラザプリル、エナラプリル、フォシノプリル、リシノプリル、キナプリル、ラマプリル(ramapril)、ゾフェノプリル、カンデサルタン、シレキセチル、エプロサルタン、イルベサルタン、ロサルタン、タソサルタン、テルミサルタン、及びバルサルタン;
を包含する。
【0083】
上記の組合せは、構造式Iの化合物又は、医薬的に許容され得るその塩又は溶媒和物と、1以上の他の活性化合物とを包含する。制限しない実例は、構造式Iの化合物と、ビグアニド、スルホニルウレア、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、PPARアゴニスト、PTP−1B阻害剤、DP−IV阻害剤、及び抗肥満化合物から選択される2以上の活性成分との組合せを包含する。
【0084】
任意の適当な投与経路が、哺乳動物、特にヒトに、有効用量の本発明化合物を与えるべく採用され得る。例えば、経口、経直腸、局所、非経口、経眼球、経肺、及び経鼻などが採用され得る。剤形は、タブレット、トローチ、分散剤、懸濁液、溶液、カプセル、クリーム、軟膏、及びエアゾールなどを包含する。好ましくは、構造式Iの化合物は経口的に投与される。
【0085】
活性成分の有効投与量は、用いる特定の化合物、投与様式、治療される症状、及び症状の厳しさに依存して変わる。かかる投与量は、当業者により容易に確認され得る。特定の疾患又は症状の治療のための「有効量」として記述される投与量は、以下に規定した範囲と一部重複してもよく、一般にはその範囲内に入る。
【0086】
構造式Iの化合物が適応される、本明細書に記述された疾患及び症状を治療又は予防する場合、満足な結果は、本発明化合物が、体重kg当たり約0.005から約50ミリグラム(mpk)の一日用量で投与され、好ましくは単回の日用量で、又は一日当たり約2〜6回に分けて与えられる場合に得られる。したがって、合計一日用量は、約0.3mgから約4000mgまで、好ましくは約1mgから約100mgまでの範囲である。典型的な体重70kgの成人の場合、合計一日用量は、約0.3mgから約4000mgまでの範囲である。この用量は、最適の治療応答を与えるべく調整され得る。
【0087】
式Iの化合物との組合せにおいて、本明細書に記述された付加的な薬剤の用量は、処方される通常の用量を包含しており、臨床医により、所望される結果、患者の耐性、副作用、及び他の因子を考慮して、臨床医の熟練のレベル内で調整され得る。
【0088】
本発明のもう1つの側面は、医薬組成物であって、構造式Iの化合物、又は医薬的に許容され得るその塩又は溶媒和物を、医薬的に許容され得る担体と組合せて含んでなる組成に関する。
【0089】
当該組成物は、経口、経直腸、局所、非経口(皮下、筋肉内、及び静脈内を包含する)、経眼(眼科用)、経皮、経肺(経鼻又はバッカル吸入)、又は経鼻投与に好適な組成物を包含するが、任意の所与の症例における最適な経路は、治療される症状の特質及び厳しさと、活性成分とに依存するであろう。それらは単位剤形として便利に提供されてよく、調剤の技術分野における任意の周知の方法により調製されてよい。
【0090】
構造式Iの化合物は、通常の医薬調剤技術に従って、医薬担体と組合されることが可能である。担体は、広く多様な形状をとる。例えば、経口液体組成物用の担体は、例えば水、グリコール、油、アルコール、着香剤、保存料、着色剤、及び、経口液体懸濁物、エリキシル、及び溶液の製造に使用される他の成分を包含する。担体、例えばデンプン、糖及びマイクロクリスタリンセルロース、希釈剤、造粒剤、潤滑剤、結合剤、及び崩壊剤などが、経口用の固形剤形、例えば粉末、硬及び軟カプセル、並びにタブレットを調製するべく使用される。固形の経口用製剤は、経口用液体に比較して好ましい。
【0091】
経口用固形剤形はまた、結合剤、例えばトラガカント、アラビアゴム、コーンスターチ、又はゼラチン;賦形剤、例えば第二リン酸カルシウム;崩壊剤、例えばコーンスターチ、ジャガイモデンプン、アルギン酸;滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウム;及び甘味剤、例えばスクロース、ラクトース、又はサッカリンを含有してもよい。カプセルはまた、脂肪油のような液体担体を含有してもよい。
【0092】
種々の他の物質が、コーティングとして作用するべく、又は用量単位の物理的形状を修飾するべく存在し得る。例えば、タブレットはセラック、糖、又は双方を用いてコートされ得る。
【0093】
タブレットは、標準的な水性又は非水性の技術によりコートされてもよい。これらの組成物中の活性化合物の典型的なパーセントは、w/wベースで約2パーセントから約60パーセントまで当然に変化し得る。したがってタブレットは、構造式Iの化合物又は、その塩又は水和物を、約0.1mgのような低さから、約1.5gのような高さまで、好ましくは約1.0mgのような低さから、約500mgのような高さまで、さらに好ましくは約10mgのような低さから、約100mgのような高さまでの範囲にわたる量で含有する。
【0094】
経口用液体、例えばシロップ又はエリキシルは、活性成分に加えてスクロースを甘味剤として、メチル及びプロピルパラベンを保存料として、色素、及び着香料、例えばチェリー又はオレンジフレーバーを含有してもよい。
【0095】
非経口剤は、典型的には溶液又は懸濁液の形状で、典型的には水を用いて調製され、ヒドロキシプロピルセルロースのような界面活性剤を包含してもよい。分散剤は、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、及びそれらの油中の混合物中に調製されることが可能である。希釈された形状の典型的な製剤はまた、保存料を含有する。
【0096】
水溶液、及び注射可能な溶液又は分散剤の即時調合剤用の分散剤及び粉末を含む、医薬的に注射可能な剤形はまた、無菌でありかつ、容易に注射可能である程度に液体でなければならず;製造及び貯蔵の条件下に安定でなければならず、通常は保存加工される。したがって担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール)、好適なそれらの混合物、及び植物油を含有する、溶媒又は分散媒を包含する。
【0097】
本発明化合物の製造:
本発明の構造式Iの化合物は、以下のスキーム及び実施例の方法に従って製造可能である。
【0098】
本発明化合物の製造の記述において使用される略語:
【0099】
【表1】


実施例1
【0100】
【化2】

【0101】
5−(1,1−ジフルオロエチル)−3−(4−{メチル−5−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル}ビシクロ[2.2.2]オクタ−1−イル)−1,2,4−オキサジアゾール(1−H)
【0102】
【化3】

【0103】
工程A:
4−(メトキカルボニル)ビシクロ[2.2.2]オクタン−1−カルボン酸1−A(チャプマン(Chapman,N.B.)ら著、「ザ・ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー(J.Org.Chem.)」、1970年、第35巻、p.917)(4.0g、18.9mmol)は、窒素雰囲気下に、12mLの無水塩化メチレン中に溶解され、塩化オキサリル(塩化メチレン中2M、28mL、56mmol)で、続いて0.5mlのDMFで処理された。反応は、窒素雰囲気下に、室温で90分間攪拌され、次いで蒸発され、20分間真空下に置かれた。得られた酸塩化物は、無水塩化メチレン(75mL)中に溶解され、氷浴中で冷却され、次いでメチルアミン(THF中2M、57mL、113mmol)の溶液で滴下処理された。そのアミン添加に際し、氷浴は除去され、反応は室温で30分間攪拌された。得られた混合物は、1000mLの塩化メチレンで希釈され、1N HCl水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、及び食塩水で洗浄された。有機層は無水硫酸ナトリウム上で乾燥され、蒸発された。生成物は、0〜5%MeOH/CHCl勾配を溶出するフラッシュシリカゲルクロマトグラフィーにより精製され、メチル 4−[(メチルアミノ)カルボニル]ビシクロ[2.2.2]オクタン−1−カルボキシラート1−Bを、白色の固体として得た。MS(ESI)=226.2(M+1).
【0104】
工程B:
メチル 4−[(メチルアミノ)カルボニル]ビシクロ[2.2.2]オクタン−1−カルボキシラート1−B(2.76g、12.3mmol)は、塩化メチレン(100ml)中に溶解され、得られた溶液に対し、塩化オキサリル(DCM中2.0M、15.3ml)が、続いてDMF(0.19ml、2.45mmol)が添加された。その反応混合物は次に、濃縮されるに先立ち、窒素下に室温で2時間攪拌され、トルエンで3回ストリッピングされた。残渣はトルエン(100mL)中に再溶解され、5−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]−1H−テトラゾール(3.15g、14.7mmol)で処理され、窒素下に12時間還流された。HCl塩として反応混合物から析出された生成物、1,2,4−トリアゾール1−Cは、DCM中に溶解され、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で2回洗浄され、乾燥され(MgSO)、ストリッピングされて、白色固体を得た。MS(ESI+)=394.2(M+1);H NMR(500MHz,CDCl):δ2.00(6H,m),2.18(6H,m),3.48(3H,s),3.72(3H,s),7.51(1H,m),7.71(2H,m),7.85(1H,m)ppm.
【0105】
工程C:
5%HO/MeOH(30mL)中のメチルエステル1−C(1.19g、3.0mmol)の溶液は、KOH(0.51g、9.0mmol)により、窒素雰囲気下に60℃で18時間処理された。得られた混合物は濃縮され、水(150ml)で希釈され、EtOAcで洗浄され、HCl水溶液(1N)でpH=3まで酸性化された。生じた沈澱は濾過され、少量の水及びエーテルで洗浄され、真空下に乾燥されて、桃色の固体(4−{4−メチル−5−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル}ビシクロ[2.2.2]オクタン−1−カルボン酸(1−D))を得た。H NMR(500MHz,CDOD):δ2.00(6H,m),2.17(6H,m),3.55(3H,s),7.62(1H,m),7.85(2H,m),7.96(1H,m)ppm.
【0106】
工程D:
固体、4−{4−メチル−5−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル}ビシクロ[2.2.2]オクタン−1−カルボン酸(1−D、0.67g、1.77mmol)は、CHCl(15ml)中に懸濁され、1’,1’−カルボニルジイミダゾール(0.57g、3.54mmol)により、窒素雰囲気下に室温で処理された。2時間後、濃水酸化アンモニウム(40ml)が添加され、反応は18時間攪拌された。粗混合物は水(150ml)で希釈され、3ポーションのCHCl(70ml)で抽出された。その有機洗浄物は合され、食塩水で洗浄され、NaSO上で乾燥され、溶媒は減圧下に除去されて、カルボキシアミド1−Eを白色粉末として得た。MS(ESI)=379.3(M+1).
【0107】
工程E:
DMF(15ml)中の、カルボキシアミド1−E(0.64g、1.7mmol)及びシアヌル酸塩化物(0.47g、2.53mmol)の溶液は、窒素雰囲気下に室温で攪拌された。2時間後、DMFが真空中で除去され、固体はCHCl(100ml)中に再溶解され、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び食塩水で洗浄され、乾燥され(NaSO)、溶媒は減圧下に除去されて、ニトリル1−Fを淡黄色の固体として得た。
MS(ESI)=361.3(M+1);H NMR(500MHz,CDCl):δ2.15(6H,m),2.22(6H,m),3.47(3H,s),7.51(1H,m),7.72(2H,m),7.87(1H,m)ppm.
【0108】
工程F:
エタノール(40ml)中の、ニトリル1−F(0.56g、1.6mmol)及びヒドロキシルアミン(50%水溶液、4ml)の溶液は、80℃で18時間加熱された。得られた混合物は、室温に冷却され、真空中で濃縮された。固体はトルエン中に懸濁され、溶媒は真空中で除去され、固体(1−G)は減圧下に乾燥され、さらなる精製なしに次の工程に使用された。MS(ESI)=394.3(M+1).
【0109】
工程G:
無水DMF(30ml)中の、2,2−ジフルオロプロピオン酸(0.84g、7.63mmol)及びN’−ヒドロキシ−4−{4−メチル−5−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル}ビシクロ[2.2.2]オクタン−1−カルボキシイミドアミド(1−G)(1.0g、2.54mmol)の溶液に対し、HATU(2.93g、7.63mmol)が、続いてDIEA(2.2ml、12.7mmol)が添加された。得られた混合物は、室温で48時間攪拌され、次いで110℃で3時間加熱された。室温に冷却された後、溶媒は減圧下に除去された。残渣は酢酸エチル中に溶解され、水、飽和炭酸水素ナトリウム、及び食塩水で洗浄された。粗生成物は、溶出液として100%酢酸エチルを用いたカラムクロマトグラフィーにより精製され、1−Hを白色粉末として得た。MS(ESI)=468.3(M+1);H NMR(500MHz,CDCl):δ2.10−2.34(15H,m),3.57(3H,s),7.73−7.75(3H,m),7.86(1H,m)ppm.
実施例2
【0110】
【化4】

【0111】
5−(3,3−ジフルオロシクロブチル)−3−(4−{4−メチル−5−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル}ビシクロ[2.2.2]オクタ−1−イル)−1,2,4−オキサジアゾール(2−E)
【0112】
【化5】

【0113】
工程A:
3−オキソシクロブタンカルボン酸(2−A)(1.0g、10.0mmol)は、無水エタノール(25ml)中に溶解され、炭酸セシウム(1.66g、5.1mmol)が添加された。窒素下に室温で4時間攪拌された後、反応混合物は濃縮された。残渣は、無水アセトニトリル(50ml)中に再溶解され、臭化ベンジル(1.2ml、10.0ml)で処理された。混合物は、窒素下に室温で12時間攪拌された。次いで、溶媒は減圧下に除去され、残渣は酢酸エチルと水との間に分配された。粗生成物は、100%ヘキサン〜96%ヘキサン/酢酸エチルの勾配を用いて溶出するシリカゲルクロマトグラフィーにより精製され、2−Bを得た。H NMR(500MHz,CDCl):δ3.30−3.48(5H,m),5.22(2H,s),7.37−7.41(5H,m)ppm.
【0114】
工程B:
ベンジル 3−オキソシクロブタンカルボキシラート(2−B)(1.23g、6.03mmol)は、塩化メチレン(35ml)中に溶解された。窒素下にDAST(8.0ml、6.03mmol)が、続いて無水エタノール(0.4ml、7.23mmol)が添加された。得られた混合物は、塩化メチレンで希釈されるに先立ち、12時間攪拌され、飽和炭酸水素ナトリウム、1N塩酸水溶液、及び食塩水で連続的に洗浄された。有機層は無水硫酸ナトリウム上で乾燥され、濾過され、濃縮された。粗生成物は、溶出液として93%ヘキサン/酢酸エチルを用いたシリカゲルクロマトグラフィーにより精製され、2−Cを油として得た。H NMR(500MHz,CDCl):δ2.81−2.93(4H,m),3.01−3.04(1H,m),5.20(2H,s),7.36−7.42(5H,m)ppm.
【0115】
工程C:
ベンジル 3,3−ジフルオロシクロブタンカルボキシラート(2−C)(0.84g、3.72mmol)は、エタノール(40ml)中に溶解され、約20mgのパラジウム活性炭が添加された。混合物は、水素雰囲気下に室温で12時間攪拌され、次いでセライトのパッドを通して濾過された。濾液は濃縮され、真空下に乾燥されて2−Dを得た。H NMR(500MHz,CDCl):δ2.86−2.93(4H,m),3.02−3.04(1H,m)ppm.
【0116】
工程D:
N’−ヒドロキシ−4−{4−メチル−5−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル}ビシクロ[2.2.2]オクタン−1−カルボキシイミドアミド(1−G)(120mg、0.305mmol)は、CHCl(8ml)中の、3,3−ジフルオロシクロブタンカルボン酸2−D(166mg、1.22mmol)及びカルボニルジイミダゾール(198mg、1.22mmol)の、予め攪拌された溶液へ添加された。得られた混合物は、室温で48時間攪拌され、次に濃縮された。固体はトルエン中に再懸濁され、窒素雰囲気下に3時間還流された。生成物は、30〜80%アセトニトリル/水に、0.1%TFAを加えて溶出するC−18逆相HPLCにより精製され、2−Eを白色粉末として得た。MS(ESI)=494.2(M+1);H NMR(500MHz,CDCl):δ2.09(6H,m),2.31(6H,m),3.03−3.11(4H,m),3.57−3.61(4H,m),7.56(1H,m),7.71(2H,m),7.86(1H,m)ppm
実施例3
【0117】
【化6】

【0118】
5−(1−フルオロ−1−メチルエチル)−3−(4−{4−メチル−5−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル}ビシクロ[2.2.2]オクタ−1−イル)−1,2,4−オキサジアゾール(3−A)
【0119】
【化7】

【0120】
無水DMF(2.5ml)中の、2−メチル−2−フルオロプロピオン酸(108mg、1.02mmol)及び1’1’−カルボニルジイミダゾール(144mg、0.888mmol)の溶液は、窒素雰囲気下に室温で30分間攪拌された。これに対し、N’−ヒドロキシ−4−{4−メチル−5−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル}ビシクロ[2.2.2]オクタン−1−カルボキシイミドアミド(1−G)(139.5mg、0.355mmol)が添加され、その溶液はN下に一晩攪拌された。反応は、ヒートブロックにおいて、100℃で1.5時間加熱された。DMFは真空中で除去され、固体はCHCN(4ml)中に再溶解された。生成物は、10〜90%CHCN(0.1%TFA)/水(0.1%TFA)を用いて溶出するC−18逆相クロマトグラフィーにより精製された。溶媒は除去され、残渣はDCM中に取られ、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液から遊離塩基化された。有機層はMgSO上で乾燥され、濾過された。溶媒はCHCN/水で置換され、凍結乾燥されて、5−(1−フルオロ−1−メチルエチル)−3−(4−{4−メチル−5−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル}ビシクロ[2.2.2]オクタ−1−イル)−1,2,4−オキサジアゾール(3−A)を、白色固体として得た。MS(ESI)=464.13(M+1).H NMR(500MHz,CDCl):δ7.89−7.85(m,1H),7.75−7.69(m,2H),7.55(t,1H),3.52(s,3H),2.30(dd,6H),2.15(dd,6H),1.90(s,3H),1.86(s,3H).
実施例4
【0121】
【化8】

【0122】
2−(1,1−ジフルオロエチル)−5−(4−{4−メチル−5−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル}ビシクロ[2.2.2]オクタ−1−イル)−1,3,4−オキサジアゾール(4−B)
【0123】
【化9】

【0124】
工程A:
酸1−A(1.0g、2.64mmol)は、DMF(30ml)中に溶解され、TFFH(0.84g、3.18mmol)が、続いてトリエチルアミン(0.88ml、6.34mmol)及び無水ヒドラジン(0.12ml、3.95mmol)が添加された。その混合物は、窒素下に室温で12時間攪拌された。混合物は減圧下に濃縮されて、DMFが除去された。残渣は酢酸エチル中に取られ、飽和炭酸水素ナトリウム及び食塩水で洗浄された。有機層は、無水硫酸ナトリウム上で乾燥され、濾過され、濃縮された。生成物(4−{4−メチル−5−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル}ビシクロ[2.2.2]オクタン−1−カルボヒドラジド、4−A)は、次の工程において使用される前に、トルエンによる数回の同時蒸発により、さらに乾燥された。MS(ESI)=394.2(M+1).
【0125】
工程B:
4−{4−メチル−5−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル}ビシクロ[2.2.2]オクタン−1−カルボヒドラジド(4−A)(334mg、0.850mmol)及び2,2−ジフルオロプロピオン酸(78mg、0.708mmol)の混合物は、塩化メチレン中に懸濁され、DMC(1.2g、7.08mmol)が固体として添加された。その混合物は、塩化メチレンで希釈されるに先立ち、窒素下に室温で48時間攪拌され、水、飽和炭酸水素ナトリウム、及び食塩水で洗浄された。粗生成物は、カラムクロマトグラフィーにより精製され、4−Bを白色固体として得た。MS(ESI)=468.3(M+1);H NMR(500MHz,CDCl):δ2.15−2.33(15H,m),3.52(3H,s),7.61(1H,m),7.72(2H,m),7.85(1H,m)ppm.
実施例5
【0126】
【化10】

【0127】
2−(3,3−ジフルオロシクロブチル)−5−(4−{4−メチル−5−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル}ビシクロ[2.2.2]オクタ−1−イル)−1,3,4−オキサジアゾール(5−A)
【0128】
【化11】

【0129】
工程A:
トリアゾール5−Aは、ヒドラジド4−A(119mg、0.303mmol)及び3,3−ジフルオロシクロブタンカルボン酸(49.4mg、0.363mmol)から、実施例4、工程Bに記述された方法を用いて製造された。2−(3,3−ジフルオロシクロブチル)−5−(4−{4−メチル−5−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル}ビシクロ[2.2.2]オクタ−1−イル)−1,3,4−オキサジアゾール(5−A)は、C−18逆相HPLC、2回(それぞれ20〜80%、及び25〜50%アセトニトリル/水に、0.1%TFAを加えて溶出する)による精製の後に、白色粉末として単離された。MS(ESI)=494.2(M+1).
実施例6
【0130】
【化12】

【0131】
2−(1−フルオロ−1−メチルエチル)−5−(4−{4−メチル−5−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル}ビシクロ[2.2.2]オクタ−1−イル)−1,3,4−オキサジアゾール(6−B)
【0132】
【化13】

【0133】
工程A:
無水DMF(2ml)中の、2−メチル−2−フルオロプロピオン酸(70mg、0.66mmol)及び1’1’−カルボニルジイミダゾール(107mg、0.66mmol)の溶液は、窒素雰囲気下に室温で30分間攪拌された。この溶液に対し、ヒドラジド4−A(200mg、0.509mmol)が添加され、その溶液はN下に一晩攪拌された。DMFは真空中で除去され、得られた固体は、少量のDMSOを加えたCHCN(4ml)に再溶解された。生成物は、10〜90%CHCN(0.1%TFA)/水(0.1%TFA)を用いて溶出するC−18逆相クロマトグラフィーにより精製された。溶媒は真空中で除去され、生成物は、DCM及び飽和炭酸ナトリウム水溶液から遊離塩基化された。有機層はMgSO上で乾燥され、濾過された。溶媒は除去され、生成物6−Aを得た。MS(ESI)=482.30(M+1).
【0134】
工程B:
工程Aで得られた物質に対し、トルエン(3mL)及び塩化チオニル(2mL)が添加され、還流コンデンサを装着し、溶液は窒素下に85℃に加熱された。1時間後、溶媒は減圧下に除去され、残渣はトルエン中に溶解され、それは減圧下に除去された。残渣はCHCN(4ml)中に溶解され、生成物は、10〜90%CHCN(0.1%TFA)/水(0.1%TFA)を用いて溶出するC−18逆相クロマトグラフィーにより精製された。溶媒は真空中で除去され、生成物は、DCM及び飽和炭酸ナトリウム水溶液から遊離塩基化された。有機層は食塩水で洗浄され、MgSO上で乾燥され、濾過された。溶媒は除去され、生成物はCHCN及び水から凍結乾燥され、2−(1−フルオロ−1−メチルエチル)−5−(4−{4−メチル−5−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル}ビシクロ[2.2.2]オクタ−1−イル)−1,3,4−オキサジアゾール(6−B)を、白色固体として得た。MS(ESI)=463.98(M+);H NMR(500MHz,CDCl):δ7.89−7.85(m,1H),7.76−7.70(m,2H),7.58(s,1H),3.53(s,3H),2.32(dd,6H),2.20(dd,6H),1.92(s,3H),1.87(s,3H).
【0135】
医薬製剤の実例
本発明化合物の経口組成物の具体的な実施態様として、実施例1〜15の任意の50mgは、充分な超微粒子化されたラクトースと配合されて総量580〜590mgとされ、0サイズの硬ゼラチンカプセルに充填される。
【0136】
アッセイ:阻害定数の測定:
インビトロの酵素活性は、シンチレーションプロキシミティアッセイ(SPA)により、試験化合物について査定された。手短にいえば、トリチウムコルチゾン基質、NADPHコファクター、及び構造式Iの滴定された化合物は、11β−HSD1酵素とともに37℃でインキュベートされ、コルチゾールへの転換が進むようにした。このインキュベーションに続き、抗コルチゾールモノクローナル抗体及び非特異的11β−HSD阻害剤、例えば18β−グリシレチン酸とプレブレンドされたプロテインAコートSPAビーズの標品が、各ウエルへ添加された。混合物は15℃において振とうされ、次いで96穴ウエルプレートに適した液体シンチレーションカウンタで読み取られた。パーセント阻害は、非阻害対照ウエルに比較して計算され、IC50曲線が作成された。このアッセイは、同様に11β−HSD2に適用され、これによりトリチウムコルチゾール及びNADは、各々基質及びコファクターとして使用された。アッセイを始めるべく、40μLの基質(25nM H−コルチゾン+1.25mM NADPH、50mM HEPES緩衝液中、pH7.4)が、96穴プレートの指定されたウエルへ添加された。化合物は、DMSO中10mMに溶解され、続いてDMSO中に50倍に希釈された。希釈された物質は次に、4倍、7回で滴定された。1μlの各滴定された化合物は、次に、デュプリケートに基質へ添加された。反応を始めるべく、CHOトランスフェクタントからの、10μlの11β−HSD1ミクロソームが、約10%の出発物質の転換を生じるために好適な濃度で各ウエルに添加された。パーセント阻害の最終的な計算のため、一連のウエルには、アッセイミニマム及びマキシマムを表すもの:化合物又は酵素なしに基質を含有する1セット(バックグラウンド)、及び、何らの化合物なしに基質及び酵素を含有する別の1セット(マキシマムシグナル)が添加された。プレートは、遠心分離機において低速で短時間回転されて、試薬をプールし、粘着性ストリップで密閉され、穏やかに混合され、37℃で2時間インキュベートされた。インキュベーションの後、抗コルチゾールモノクローナル抗体及び式Iの化合物と予め懸濁された、45μLのSPAビーズが各ウエルに添加された。プレートは再度密閉され、15℃において1.5時間より長く、穏やかに振とうされた。データは、プレートベースの液体シンチレーションカウンタ、例えばトップカウント(Topcount)で収集された。抗コルチゾール抗体/コルチゾール結合の阻害を調節するべく、1.25nM[3]Hコルチゾールがスパイク(添加)された基質が、指定された単一ウエルに添加された。これらのウエルの各々に、1μLの200μMの化合物が、酵素の代わりの10μLの緩衝液とともに添加された。計算された任意の阻害は、SPAビーズ上の抗体に対するコルチゾールの結合を妨害する化合物に帰せられた。本発明化合物は、ヒト11βHSD−1酵素を用いて、約9nM〜約100nMの範囲のIC50値を実証する。対照的に、11βHSD−2について実証された活性の範囲は、約1.7マイクロモル濃度から4マイクロモル濃度を超えるまでの範囲である。
【0137】
アッセイ:インビボの阻害の測定:
一般的にいえば、試験化合物は、経口的にマウスへ投与され、規定された時間間隔、通常は1と24時間の間、が経過するようにした。トリチウムコルチゾンは、静脈内へ注射され、数分後に採血により追跡された。ステロイドは、分離された血清から抽出され、HPLCにより分析された。H−コルチゾンと、その還元産物、H−コルチゾールとの相対レベルは、化合物投与及びビヒクル投与対照群について測定された。絶対転換、並びに阻害パーセントは、これらの値から計算された。
【0138】
さらに具体的には、化合物は経口投与のため、それらをビヒクル(5%ヒドロキシプロピル−ベータ−シクロデキストリン v/v HO、又は同等物)中に、典型的には体重kg当たり10mgの投与を可能にするための、所望の濃度で溶解することにより調製された。一晩の絶食の後、溶液は強制経口投与により、試験群当たり3匹の動物を用いて、ICRマウス(チャールズ・リバー(Charles River)から入手)へ投与された。
【0139】
所望の時間、常法では4又は16時間、が経過した後、0.2mLの、dPBS中の3μMのH−コルチゾンが尾静脈より注射された。動物は2分間ケージに入れられ、続いてCOチャンバー内で安楽死が行われた。終了と同時に、マウスが取り除かれ、血液は心臓に穴をあけて採集された。血液は、血清分離用チューブ内に室温で30分以上保留して、充分に凝固させるようにした。インキュベーション期間の後、4℃における、3000xgで10分間の遠心分離により、血液は血清に分離された。
【0140】
血清中のステロイドを分析するべく、それらはまず有機溶媒で抽出された。体積0.2mLの血清は、清浄なマイクロ遠心チューブへ移された。これに対し、1.0mLの酢酸エチルが添加され、その後に1分間の激しいボルテックシングが続けられた。マイクロ遠心分離機でのクイックスピンは、水溶性の血清タンパク質をペレット化し、有機物上清を透明化した。0.85mLの上部有機相は、新しいマイクロ遠心チューブに移され、乾燥された。乾燥試料は、HPLCによる分析のための、高濃度のコルチゾン及びコルチゾールを含有する0.250mLのDMSO中に再懸濁された。
【0141】
0.200mLの試料は、30%メタノール中で平衡化された、メタケム・イナートシル(Metachem Inertsil)C−18クロマトグラフィーカラム上に注入された。50%メタノールまでの緩やかな直線勾配が、標的ステロイドを分離した;再懸濁溶液中のコールド標準についての254nmにおけるUVによる同時モニタリングが、内部標準の役目を果たした。トリチウムシグナルは、分析用のソフトウエアにデータをアップロードするラジオクロマトグラフィーディテクタにより収集された。H−コルチゾンの、H−コルチゾールへのパーセント転換は、コルチゾン及びコルチゾールの合されたAUCに比較した、コルチゾールのAUCの比として計算された。トリチウムコルチゾンの、トリチウムコルチゾールへの転換のパーセント阻害は、約86〜98%の範囲内であった。
【0142】
本発明は、その具体的な実施態様を参照して例証されてきたが、当業者には、種々の変更、修飾、及び置換が、本発明の精神及び範囲から離れることなく行われることが可能であることが理解されよう。それゆえ、クレイムはそれにより制限されるべきものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

[式中、X、Y、及びZのうちの2つは、窒素原子を表し、他は酸素原子を表し;
及びRは、それらが結合している原子と一緒になって、1〜2個のフッ素原子で置換されていてもよいシクロブチル基を表し、かつRは、水素又はフッ素原子を表し;
或いは、Rは、メチルを表し、
は、メチル又はフッ素原子を表し、かつ
は、フッ素原子を表す]によって表される化合物、又は医薬的に許容され得るその塩又は溶媒和物。
【請求項2】
下記表:
【化2】

からなる群より選択される請求項1の化合物、又は医薬的に許容され得るその塩又は溶媒和物。
【請求項3】
請求項1の化合物及び医薬的に許容され得る担体と組合せてなる医薬組成物。
【請求項4】
高血圧を治療する方法であって、かかる治療を必要とする哺乳類患者において、抗高血圧的に有効な量の請求項1の化合物を、前記患者に投与することを含んでなる方法。
【請求項5】
認知を増強する方法であって、それを必要とする哺乳類患者において、認知を増強するべく有効である量の請求項1の化合物を、前記患者に投与することを含んでなる方法。
【請求項6】
糖尿病を治療する方法であって、かかる治療を必要とする哺乳類患者において、糖尿病を治療するべく有効である量の請求項1の化合物を、前記患者に投与することを含んでなる方法。
【請求項7】
肥満を治療する方法であって、かかる治療を必要とする哺乳類患者において、肥満を治療するべく有効である量の請求項1の化合物を、前記患者に投与することを含んでなる方法。

【公表番号】特表2009−512704(P2009−512704A)
【公表日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−536728(P2008−536728)
【出願日】平成18年10月16日(2006.10.16)
【国際出願番号】PCT/US2006/040459
【国際公開番号】WO2007/047625
【国際公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(390023526)メルク エンド カムパニー インコーポレーテッド (924)
【氏名又は名称原語表記】MERCK & COMPANY INCOPORATED
【Fターム(参考)】