説明

2−スルホテレフタル酸ジメチルナトリウムの合成とテレフタル酸ジメチルとエチレングリコ−ルの重縮合系への添加

【課題】純度が>98.0%の2−スルホテレフタル酸ジメチルナトリウムを合成し、テレフタル酸ジメチルとエチレングリコ−ルの重縮合系に加えて、得られたスルホン基を有する直線状のポリエチレンテレフタレ−トの物性について検討すること。
【解決手段】テレフタル酸を3酸化イオウでスルホン化し、過剰の3酸化イオウをはじめに除去してから、ジメチルエステル化、水酸化カルシウム懸濁水溶液処理および炭酸ナトリウム飽和水溶液処理を経由して、純度が>98.0%の2−スルホテレフタル酸ジメチルナトリウムを合成する方法を見出した。これをテレフタル酸ジメチルとエチレングリコ−ルの重縮合系に添加してスルホン基を有する直線状のポリエチレンテレフタレ−トを合成し、これを市販の5−スルホイソフタル酸ジメチルナトリウムを代わりに用い、同じ重縮合系に添加して得た途中60°折れ曲がるスルホン基を有する非直線状のポリエチレンテレフタレ−トと比較した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本研究は、テレフタル酸を3酸化イオウを用いてスルホン化することにより2−スルホテレフタル酸とし、過剰の3酸化イオウを独自の方法で除去してから2−スルホテレフタル酸をメタノ−ルでジメチルエステル化することにより2−スルホテレフタル酸ジメチルとし、さらに2−スルホテレフタル酸ジメチルを水酸化カルシウム懸濁水溶液処理および炭酸ナトリウム飽和水溶液処理を経由してナトリウム塩化することにより純度>98.0%あるいは>98.1%の2−スルホテレフタル酸ジメチルナトリウムを合成することに関する分野である。さらに、2−スルホテレフタル酸ジメチルナトリウムをテレフタル酸ジメチルとエチレングリコ−ルの重縮合系に添加してスルホン基を有する直線状のポリエチレンテレフタレ−トを合成し、その物性について検討することに関する分野である。
【背景技術】
【0002】
背景技術としては、塩化鉄(II)を触媒として含むテレフタル酸あるいはそのアルキルエステル(C1−4のアルキル基)に、60%発煙硫酸を1時間かけて加えてから180℃に12時間加熱して2−スルホテレフタル酸あるいはそのアルキルエステル(C1−4のアルキル基)を得たという報告(特許文献1)があるだけで、他に類似した研究報告はない。 本研究に述べられているテレフタル酸のスルホン化の反応条件は特許文献1における反応条件と大きく異なっており、無触媒でもあるので比較することはできない。 また、本研究では2−スルホテレフタル酸をジメチルエステル化して得た2−スルホテレフタル酸ジメチルを水酸化カルシウム懸濁水溶液処理および炭酸ナトリウム飽和水溶液処理を経由して2−スルホテレフタル酸ジメチルナトリウム水溶液としこれを減圧濃縮している。この方法は本研究独自のものであり、これによりはじめて純度が>98.0%あるいは>98.1%の目的物の合成に成功しており貴重な成果である。一方にいて、2−スルホテレフタル酸ジメチルナトリウムをテレフタル酸ジメチルとエチレングリコ−ルの重縮合系に加えてスルホン基を有する直線状のポリエチレンテレフタレ−トを合成する方法については、関連技術とも言えるであろう多数の特許文献がある。すなわち、5−スルホイソフタル酸ジメチルナトリウムをテレフタル酸ジメチルとエチレングリコ−ルの重縮合系に加えて、スルホン基を有する非直線状のポリエチレンテレフタレ−トを合成している特許文献である。これらの殆んどは有効期限を過ぎたものであるが、本研究にとっては欠くことのできない参考文献となった。特許文献2、特許文献3、特許文献4を選択しこれらを参考にした。すなわち、これらの特許文献中に示されている5−スルホイソフタル酸ジメチルナトリウムの代わりに同じmol数の2−スルホテレフタル酸ジメチルナトリウムを用いて同じ条件で重縮合反応を行って結果を比較したのである。
【0003】
【特許文献1】Japan Kokai Tokkyo Koho JP 06340610;C.A.,122,265028(1994).
【特許文献2】Teijin,Japan Kokai 75 53496;C.A.,83,133228(1975).
【特許文献3】Kurarey,Japan 74 23267;C.A.,82,597884(1975).
【特許文献4】Imperial Chem.Ind.,Ltd.Belg.648565;C.A.,64,11375(1966).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明が解決しようとする課題は次に示される。先ず、純度が>98.0%の2−スルホテレフタル酸ジメチルナトリウムを収率よく合成することである。また、その合成法が実験室的規模でも工業的規模でも遂行可能なものでなくてはならない。このことを成し遂げたうえで、次は、2−スルホテレフタル酸ジメチルナトリウムをテレフタル酸ジメチルとエチレングリコ−ルの重縮合系に添加使用して撥水性の少ない染色性の改善されたスルホン基を有する直線状のポリエチレンテレフタレ−トを合成することである。現在までに同様な目的に5−スルホイソフタル酸ジメチルナトリウムが用いられているが、その場合はポリマ−分子が途中60°折れ曲がる。スルホン基を有する直線状のポリエチレンテレフタレ−ト(I)と途中60°折れ曲がるスルホン基を有する非直線状のポリエチレンテレフタレ−ト(II)を比較して、前者の特徴を見出し、これを利用しようとするのが本研究が解決しようとする課題である。
【化1】

【化2】

【課題を解決するための手段】
【0005】
高純度の2−スルホテレフタル酸ジメチルナトリウムを合成することがすべてであると判断される。テレフタル酸のスルホン化、得られた2−スルホテレフタル酸のジメチルエステル化、得られた2−スルホテレフタル酸ジメチルのナトリウム塩化の各段階を繰り返し検討し、さらに2−スルホテレフタル酸ジメチルナトリウムの硫酸ナトリウム含有量を測定したうえで前に戻ってテレフタル酸のスルホン化から再びはじめたものである。従って特許請求の範囲の頭書に述べられているテレフタル酸と2.5mol当量の60%発煙硫酸の混合物を250〜255℃に0.5〜1.0時間加熱して2−スルホテレフタル酸にするという記述は、長期間の試行錯誤の繰り返しの結果として得られたものである。イソフタル酸のスルホン化においては、イソフタル酸と28%発煙硫酸を190℃に2時間加熱してから反応混合物を水に加え遠心分離している(特許文献5)。テレフタル酸のスルホン化においては、スルホン化後に水に加えてから同様にして遠心分離することは極めて困難で危険を伴う。このために、テレフタル酸のスルホン化後の反応混合物をそのままジメチルエステル化したのち、水酸化ナトリウム水溶液、塩化ナトリウム飽和水溶液あるいは炭酸ナトリウム飽和水溶液を用いて塩析したが好結果は得られなかった(実施例1)。次にテレフタル酸のスルホン化後の反応混合物中の3酸化イオウをメタノ−ルを用いてジメチル硫酸にし、減圧溜去してから、残留をジメチルエステル化したのち、同じように塩析したがひとつの例外を除いては好結果は得られなかった。その例外とは炭酸ナトリウム飽和水溶液を用いての塩析により得られた2−スルホテレフタル酸ジメチルナトリウムの純度が96.2%であったことである。このことが理由でテレフタル酸のスルホン化後の反応混合物中の3酸化イオウをメタノ−ルを用いてジメチル硫酸にし減圧溜去する手段と、2−スルホテレフタル酸ジメチルのナトリウム塩化において水酸化カルシウム懸濁水溶液処理および炭酸ナトリウム飽和水溶液処理を経由して2−スルホテレフタル酸ジメチルナトリウム水溶液とする手段が連結させられたのである(実施例3)。また、実施例3で得られた2−スルホテレフタル酸ジメチルナトリウムをテレフタル酸ジメチルとエチレングリコ−ルの重縮合系に加えることに関しては、課題として解決するための手段としてここに改めて記載するほどのことはない。
【化3】

【0006】
【特許文献5】Czech.133635;C.A.,73,109508(1970)
【発明の効果】
【0007】
市販の5−スルホイソフタル酸ジメチルナトリウム中の不純物としての硫酸ナトリウム含有量を測定して2.4%という値をえている。実際に工業的に用いられているものもこの前後であろう。すなわち、本研究で得られた2−スルホテレフタル酸ジメチルナトリウム中の不純物としての硫酸ナトリウム含有量が<2.4%でなければ、本発明が期待する効果は得られないのである。換言すれば本研究で得られた2−スルホテレフタル酸ジメチルナトリウムの純度が>97.6%でなければ、テレフタル酸ジメチルとエチレングリコ−ルの重縮合系に添加使用してスルホン基を有する直線状のポリエチレンテレフタレ−トを合成しても無意味なのである。そのために、テレフタル酸から2−スルホテレフタル酸ジメチルナトリウムまでの各段階を繰り返し検討して、純度が>98.0%の2−スルホテレフタル酸ジメチルナトリウムを合成したのである。ここではじめて本発明の効果が見えてきたのである。すなわち、テレフタル酸ジメチルとエチレングリコ−ル重縮合系に5−スルホイソフタル酸ジメチルナトリウムを添加して途中60°折れ曲がるスルホン基を有する非直線状のポリエチレンテレフタレ−トを合成した研究例があれば、代わりに2−スルホテレフタル酸ジメチルナトリウムを添加してスルホン基を有する直線状のポリエチレンテレフタレ−トを合成し、両結果を比較検討することが可能となったのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
先ず、2−スルホテレフタル酸ジメチルナトリウムの合成においては、得られたものの中の不純物としての硫酸ナトリウムの含有量を測定して純度の指標とした。これは繰り返された合成実験において、不純物としては硫酸ナトリウムが主たるものであり、他の不純物は殆んど含まれていないと判断されたからである。このことは実施例3において得られた2−スルホテレフタル酸ジメチルナトリウムの元素分析値を見れば明らかである。さらに、次の実験事実もこのことの傍証となりうるであろう。すなわち、実施例1において得られた2−スルホテレフタル酸ジメチルを含む反応混合物を塩化ナトリウム飽和水溶液で塩析した場合において、得られた2−スルホテレフタル酸ジメチルナトリウムの硫酸ナトリウム含有量は10%、塩化ナトリウム含有量は0%であった。
【実施例1】
【0009】
テレフタル酸20g(0.12mol)と60%発煙硫酸40g(3酸化イオウとして0.3mol)を混合し、かき混ぜながら温度を徐々に上げて最終的には250〜255℃に0.5〜1.0時間加熱して反応させた。反応が終了したか否かについては還流している3酸化イオウの量より大凡に判断できる。3酸化イオウが円滑に還流するように還流冷却器の水の温度を適当に調節しなければならない。また、反応温度および時間はテレフタル酸等の仕込み量にもある程度影響を受けるので注意が肝要である。反応後、70〜80g(2.2〜2.5mol)のメタノ−ルを加えて3.5時間還流煮沸した。得られた2−スルホテレフタル酸ジメチルを含む反応混合物を塩析した結果について述べる。反応混合物に50%水酸化ナトリウム水溶液を加えると途中にかき混ぜ不能になる。少量のメタノ−ルを加えかき混ぜてから濾過して得られた2−スルホテレフタル酸ジメチルナトリウムの硫酸ナトリウム含有量は7〜8%であった。50%水酸化ナトリウム水溶液の代わりに10〜20%水酸化ナトリウム水溶液を加えると少時間経過後に2−スルホテレフタル酸ジメチルナトリウムが析出した。このものの硫酸ナトリウム含有量は>50%であった。また、塩化ナトリウム飽和水溶液を用い、この中に反応混合物を加えると2−スルホテレフタル酸ジメチルナトリウムが析出した。このものの硫酸ナトリウム含有量は10%、塩化ナトリウム含有量は0%であった。そして、炭酸ナトリウム飽和水溶液を用い、これを反応混合物に加えると2−スルホテレフタル酸ジメチルナトリウムが析出したが極めて低収率であった。
【実施例2】
【0010】
実施例Iと全く同様にしてテレフタル酸をスルホン化した。 反応後、12g以上のメタノ−ルを冷却下加えて過剰の3酸化イオウをジメチル硫酸にした。ジメチル硫酸を減圧溜去してから残留に60〜70g(1.9〜2.2mol)のメタノ−ルを加えて3.5時間還流煮沸した。得られた2−スルホテレフタル酸ジメチルを含む反応混合物を塩析した結果について述べる。反応混合物に50%水酸化ナトリウム水溶液を加えると途中にかき混ぜ不能になる。少量のメタノ−ルを加えてから濾過して得られた2−スルホテレフタル酸ジメチルナトリウムの硫酸ナトリウム含有量は8〜9%であった。 50%水酸化ナトリウム水溶液の代わりに塩化ナトリウム飽和水溶液を用い、この中に反応混合物を加えると2−スルホテレフタル酸ジメチルナトリウムが析出した。このものの硫酸ナトリウム含有量は>10%であった。 しかし、炭酸ナトリウム飽和水溶液を用い、 これを反応混合物に加えると比較的高収率で2−スルホテレフタル酸ジメチルナトリウムが得られた。このものの硫酸ナトリウム含有量は3.8%であった。
【実施例3】
【0011】
実施例2の結果から、2−スルホテレフタル酸を合成した反応混合物中の過剰の3酸化イオウをジメチル硫酸にし、それを減圧溜去することを含む方法が好結果をもたらすと考えた。この方法と、水酸化カルシウム懸濁水溶液処理および炭酸ナトリウム飽和水溶液処理を経由して2−スルホテレフタル酸ジメチルを2−スルホテレフタル酸ジメチルナトリウム水溶液にする方法が連結させられたのである。これを以下に示す。実施例1と同様にしてテレフタル酸をスルホン化した。反応後、実施例2と同様にして過剰の3酸化イオウをジメチル硫酸にし、これを減圧溜去し、残留をメタノ−ルと還流煮沸して2−スルホテレフタル酸ジメチチルを含む反応混合物を得た。未反応のメタノ−ルの大部分を溜去してから、水酸化カルシウム懸濁水溶液を加えてpH7とした。これを減圧下で70℃に1時間加熱するとpH6位になる。生成した硫酸カルシウムを濾別し、濾液に炭酸ナトリウム飽和水溶液を加えてpH7〜7.5とした。さらに炭酸ナトリウム飽和水溶液を加えても新たに沈殿が生じないことを確かめてから活性炭処理後濾過した。濾液を減圧濃縮して析出した2−スルホテレフタル酸ジメチルナトリウムを濾過しとった。得られたものの硫酸ナトリウム含有量は1.8〜1.9%。また、このさいの濾液を蒸発乾固して得られたものの硫酸ナトリウム含有量は1.9〜2.0%であった。すなわち、2−スルホテレフタル酸ジメチルナトリウム水溶液の減圧濃縮にさいしては析出結晶を分別する必要はないのである。メタノ−ル−水(1:1容積比)で再結晶しうる。粗収率76〜84%。再結晶前の元素分析値(%)C35.9,H3.0,N<0.3。再結晶後の元素分析値(%)C40.0,H3.1,N<0.3;C10NaOSに対する計算値(%)C40.5,H3.1,N0。
【実施例4】
【0012】
実施例1と全く同様にしてテレフタル酸をスルホン化した。反応後、過剰の3酸化イオウを硫酸にするために必要最小限の水を加えた。これには極めて熟練した技術が必要とされるから、必要以上の水を加えて余分のものをあとで蒸散除去してもよい。次に、70〜80g(2.2〜2.5mol)のメタノ−ルを加えて3.5時間還流煮沸して2−スルホテレフタル酸ジメチルを含む反応混合物を得た。以下は実施例3と同様にして、活性炭処理後濾過して得た濾液を減圧濃縮して析出した2−スルホテレフタル酸ジメチルナトリウムを濾過しとった。
得られたものの硫酸ナトリウム含有量は2.7%。また、このさいの濾液を蒸発乾固して得られたものの硫酸ナトリウム含有量は4.0%であった。すなわち、テレフタル酸のスルホン化後の過剰の3酸化イオウを水を用いて硫酸にしから反応系にそのまま残すという方法は勧められない。
【実施例5】
【0013】
実施例1と全く同様にしてテレフタル酸をスルホン化した。反応後、過剰の3酸化イオウを水を用いて硫酸にしてから、さらに水を追加して反応混合物がグラスフィルタ−で濾過し易いようにした。2−スルホテレフタル酸を濾過しとり、濾液から水を減圧溜去して得られた析出物を前のものに合した。この操作を繰り返して得られた2−スルホテレフタル酸を合わせ一緒にした。これに60〜70g(1.9〜2.0mol)のメタノ−ルを加えて3.5時間還流煮沸して2−スルホテレフタル酸ジメチルを含む反応混合物をえた。以下は実施例3と同様にして、活性炭処理後濾過して得た濾液を減圧濃縮して析出した2−スルホテレフタル酸ジメチルナトリウムを濾過しとった。得られたものの硫酸ナトリウム含有量は1.8〜1.9%。また、このさいの濾液を蒸発乾固して得られたものの硫酸ナトリウム含有量は2.8%であった。すなわち、減圧濃縮の比較的初期に析出した2−スルホテレフタル酸ジメチルナトリウムは純度>98.1%であることから、特許請求の範囲の請求項3に示されている。
【実施例6】
【0014】
テレフタル酸ジメチル9.7g(0.050mol)、酢酸マンガン(II)4水和物3.7mg(0.015mmol)、実施例3で得られた2−スルホテレフタル酸ジメチルナトリウム0.34g(0.00115mol)、酸化アンチモン(III)3.9mg(0.0134mmol)、酢酸ナトリウム6.6mg(0.0804mmol)およびエチレングリコ−ル6.4g(0.103mol)を混合し、蒸溜フラスコに加え、これに窒素ガスを通じつつ常圧で170〜230℃に長時間加熱した。反応により生成したメタノ−ルが殆んど溜出し

0.35dl・g−1(ο−クロロフェノ−ル、25℃)であった。
【実施例7】
【0015】
実施例1と同様にしてポリエステルを合成した。ただし、実施例6における275℃/1〜3mmHgでの3時間加熱の代わりに275℃/5〜7mmHgでの3時間加熱とした。得られた

た。
【実施例8】
【0016】
テレフタル酸ジメチル9.7g(0.050mol)、酢酸マンガン(II)4水和物3.7mg(0.015mmol)、市販の5−スルホイソフタル酸ジメチルナトリウム0.34g(0.00115mol)、酸化アンチモン(III)3.9mg(0.0134mmol)、酢酸ナトリウム6.6mg(0.0804mmol)およびエチレングリコ−ル6.4g(0.103mol)を混合し、蒸溜フラスコに加え、これに窒素ガスを通じつつ常圧で170〜230℃に長時間加熱した。反応により生成したメタノ−ルの殆んどが溜出してから

dl・g−1(ο−クロロフェノ−ル、25℃)であった。
【実施例9】
【0017】
テレフタル酸ジメチル10.0g(0.0515mol)、酢酸亜鉛4mg(0.022mmol)、実施例3で得られた2−スルホテレフタル酸ジメチルナトリウム0.15g(0.00051mol)、およびエチレングリコ−ル8.0g(0.129mol)を混合し、蒸溜フラスコに加え、これに窒素ガスを通じつつ常圧で170〜230℃に長時間加熱した。反応により生成したメタノ−ルの殆んどが溜出してから、蒸溜フラスコを冷却し、これに酸化アンチモン(III)3mg(0.01mmol)、酸化チタン(IV)45mg(0.563mmol)およびリン酸トリメチル5mg(0.036mmol)を加え、再び窒素ガス

[η]=0.37dl・g−1(ο−クロロフェノ−ル、25℃)であった。
【実施例10】
【0018】
実施例9における2−スルホテレフタル酸ジメチルナトリウム0.15g(0.00051mol)の代わりに、市販の5−イソフタル酸ジメチルナトリウム0.15g(0.00051mol)を用い、他は実施例9と同様にしてポリエステルを得た。ただし、重縮合反応の最終段階における280℃/1〜2mmHgでの2.5時間加熱の代わりに280℃/2〜4mmHgでの2.5時間加熱とした。得ら

った。
【実施例11】
【0019】
テレフタル酸ジメチル17.9g(0.0922mol)、酢酸カルシウム1水和物17.03mg(0.0966mmol)、酸化アンチモン(III)8.33mg(0.0285mmol)、実施例3で得られた2−スルホテレフタル酸ジメチルナトリウム3.033g(0.01024mol)およびエチレングリコ−ル14.33g(0.231mol)を混合し、蒸溜フラスコに加え、これに窒素ガスを通じつつ常圧で170〜230℃に長時間加熱した。反応により生成したメタノ−ルの半分以上が溜出してから、すなわち、幾分の生成メタノ−ルを残して蒸溜フラスコを冷却し、これにリン酸30mg(0.31mmol)を加え、再び窒素ガスを通じつつ100〜150℃/100mmHgに少時間加熱したのち、

0.21dl・g−1(ο−クロロフェノ−ル,25℃)であった。
【実施例12】
【0020】
実施例11における2−スルホテレフタル酸ジメチルナトリウム3.033g(0.01024mol)の代わりに、市販の5−スルホイソフタル酸ジメチルナトリウム3.033g(0.01024mol)を用い、他は実施例11と同様にしてポリエステルを得た。ただし、重縮合反応の最終段階における281〜288℃/1〜2mmHgでの2.5時間加熱の代わりに、281〜286℃/1〜2mmHgでの

フェノ−ル、25℃)であった。
【産業上の利用可能性】
【0021】
産業上の利用可能性となると、2−スルホテレフタル酸ジメチルナトリウムをテレフタル酸ジメチルとエチレングリコ−ルの重縮合系に添加使用した場合に得られたポリマ−の利用可能性ということになる。実施例6と実施例8が比較可能な場合である。実施例6で

240〜242℃である。前者が52°低融点であった。実施例9と実施例10が比較可能な場合

あった。何れの場合においても2−スルホテレフタル酸ジメチルナトリウムを用いた前者が約50°低融点となっている。すなわち、テレフタル酸ジメチルとエチレングリコ−ルの重縮合系に5−スルホイソフタル酸ジメチルナトリウムを添加するより2−スルホテレフタル酸ジメチルナトリウムを添加する方が、得られたスルホン基を有するポリエチレンテレフタレ−トが比較的低温度で熔融紡糸できて有利であることが示された。しかも、大きい抗張力を示すことが定性的ではあるが認められた。すなわち、より細い繊維になりうるのである。延伸についてははっきりしないが、その化学構造式からみてより延伸し易いことは明らかである。
【0022】
それ以上に注目すべきことは、純度>98.0%の2−スルホテレフタル酸ジメチルナトリウムを実験室的規模においても工業的規模においても合成しうる方法が見出されたことである。ここで純度>98.0%のものが合成されてはじめてテレフタル酸ジメチルとエチレングリコ−ルの重縮合系に添加使用して、5−スルホイソフタル酸ジメチルナトリウムを用いている場合と比較検討することが可能となったのである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施例3で得られた2−スルホテレフタル酸ジメチルナトリウムのIRスペクトル(KBr錠剤法)である。
【図2】市販の5−スルホイソフタル酸ジメチルナトリウムのIRスペクトル(KBr錠剤法)である。
【図3】

【図4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
テレフタル酸と2.5mol当量の60%発煙硫酸の混合物を250〜255℃に0.5〜1.0時間加熱して2−スルホテレフタル酸にした。反応混合物中の3酸化イオウをメタノ−ルを用いてジメチル硫酸にしてから減圧溜去した。残溜をメタノ−ルと還流煮沸して2−スルホテレフタル酸ジメチルとし、水酸化カルシウム懸濁水溶液処理および炭酸ナトリウム飽和水溶液処理を経由して2−スルホテレフタル酸ジメチルナトリウム水溶液とした。これを乾固に近い状態まで減圧濃縮して純度が>98.0%の2−スルホテレフタル酸ジメチルナトリウムを合成する方法。
【請求項2】
請求項1に示された方法で得られた純度が>98.0%の2−スルホテレフタル酸ジメチルナトリウムをテレフタル酸ジメチルとエチレングリコ−ルの重縮合系に添加してスルホン基を有する直線状のポリエチレンテレフタレ−トを合成する方法。
【請求項3】
テレフタル酸と2.5mol当量の60%発煙硫酸の混合物を250〜255℃に0.5〜1.0時間加熱して2−スルホテレフタル酸にした。反応混合物中の3酸化イオウを水を用いて硫酸にしてから水を追加して、反応混合物を濾過し易いようにした。2−スルホテレフタル酸を濾過しとり、濾液から水を減圧溜去して得られた析出物を前のものに合した。この操作を繰り返して得た2−スルホテレフタル酸を一緒にした。 これをメタノ−ルと還流煮沸して2−スルホテレフタル酸ジメチルとし、水酸化カルシウム懸濁水溶液処理および炭酸ナトリウム飽和水溶液処理を経由して2−スルホテレフタル酸ジメチルナトリウム水溶液にした。若干の水を残して減圧濃縮してから濾過しとって純度が>98.1%の2−スルホテレフタル酸ジメチルナトリウムを合成する方法。
【請求項4】
請求項3に示された方法で得られた純度が>98.1%の2−スルホテレフタル酸ジメチルナトリウムをテレフタル酸ジメチルとエチレングリコ−ルの重縮合系に添加してスルホン基を有する直線状のポリエチレンテレフタレ−トを合成する方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−87111(P2012−87111A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−247881(P2010−247881)
【出願日】平成22年10月18日(2010.10.18)
【出願人】(510293051)株式会社モンダ写真型製作所 (1)
【Fターム(参考)】