説明

2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩

本発明は、(R)−1−[3−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−イソキサゾール−5−イルメチル]−3−(3−フルオロ−フェノキシ)−1−アゾニア−ビシクロ[2.2.2]オクタン2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩、それを含む医薬組成物、および治療におけるその使用を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ムスカリンアンタゴニストの塩、それを含む医薬組成物および治療におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ムスカリン受容体は、5種のファミリーメンバーM、M、M、MおよびMを有するGタンパク質共役受容体(GPCR)ファミリーである。この5種のムスカリンサブタイプの中で、3種(M、MおよびM)がヒト肺組織に対する生理学的作用を発揮することが知られている。副交感神経はヒト気道における反射性気管支収縮の主経路であり、ムスカリン受容体へアセチルコリンを送達することにより気道緊張を媒介する。気道緊張は、喘息および慢性閉塞性肺疾患(COPD)のような呼吸器障害を有する患者で上昇しており、この理由により、ムスカリン受容体アンタゴニストは気道疾患での使用のために開発されている。診療においてはしばしば抗コリン剤と呼ばれるムスカリン受容体アンタゴニストは、COPDを有する個体の第一選択薬として広く受容れられており、その使用は文献に広範にレビューされている(例えばLee et al, Current Opinion in Pharmacology 2001,1, 223-229参照)。
【0003】
呼吸器障害の処置に使用されるとき、ムスカリン受容体アンタゴニストは、典型的に吸入により投与される。しかしながら、吸入により投与したとき、ムスカリン受容体アンタゴニストの相当な割合がしばしば全身循環系に吸収され、口渇のような報告されている副作用をもたらす。さらに、ムスカリンアンタゴニストの大多数は相対的に短い作用時間を有し、1日に数回投与することが必要である。このような1日多数回投与レジメは、患者にとって不便なだけでなく、頻繁に繰り返される投与スケジュールと関連して患者のノンコンプライアンスのために、不適切な処置の顕著な危険性も形成する。従って、ムスカリン受容体を遮断できる新規化合物の必要性が残されている。特に、吸入により投与したときに、高い効力および低い全身副作用を有する新規ムスカリンアンタゴニストの必要性が存在する。さらに、吸入により投与したとき、長い作用時間を示し、1日1回または2回投与が可能な新規ムスカリンアンタゴニストの必要性が存在する。
【0004】
医薬製剤の製造において、商業的に価値のある製造工程を得るために、活性化合物が好都合に取り扱いおよび加工できる形であることが重要である。これに関連して、活性化合物の化学的安定性および物理的安定性は重要な因子である。活性化合物、およびそれを含む製剤は、活性化合物の物理化学的特徴(例えば化学組成、密度、吸湿性および溶解度)に何等顕著な変化をもたらすことなく、相当な期間有効に貯蔵できなければならない。
【0005】
さらに、活性化合物が肺投与用製剤に包含すべきものであるなれば、活性化合物が良好な流動特性を有し、高い微結晶性粒子画分(すなわち活性化合物粒子が10μm(マイクロメーター)未満の空気動力学的質量中央径を有する画分)を含む粉末を得るために容易に微粉化できることが望まれる。かかる画分は、活性化合物の速く、増加した吸収に至る肺の深部まで運搬され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
国際特許出願WO2008/099186(PCT/GB2008/000519)は、M3受容体に対する高い効力を示す新規ムスカリンアンタゴニスト群を記載する。PCT/GB2008/000519に記載されているかかるムスカリンアンタゴニストの一つは、(R)−1−[3−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−イソキサゾール−5−イルメチル]−3−(3−フルオロ−フェノキシ)−1−アゾニア−ビシクロ[2.2.2]オクタンクロライドである。しかし、この塩化物塩は、吸湿性であり、結晶性が乏しいと記載されている。本発明により、良好な物理化学的特性を有し、肺投与用乾燥粉末製剤への使用に適し得る(R)−1−[3−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−イソキサゾール−5−イルメチル]−3−(3−フルオロ−フェノキシ)−1−アゾニア−ビシクロ[2.2.2]オクタンの別の塩が製造可能であることが判明した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
それ故に、本発明によって、(R)−1−[3−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−イソキサゾール−5−イルメチル]−3−(3−フルオロ−フェノキシ)−1−アゾニア−ビシクロ[2.2.2]オクタンの2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩である塩が提供される。
【0008】
本発明の塩は、ここでは、(R)−1−[3−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−イソキサゾール−5−イルメチル]−3−(3−フルオロ−フェノキシ)−1−アゾニア−ビシクロ[2.2.2]オクタン2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩と呼ぶ。名称(R)−1−[3−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−イソキサゾール−5−イルメチル]−3−(3−フルオロ−フェノキシ)−1−アゾニア−ビシクロ[2.2.2]オクタンは、図Aに記載した構造およびカーン・インゴルド・プレローグ系に従い割り当てられた立体化学に基づき、MDL Information Systems Inc.により供給されたBeilstein Autonom 2000 naming packageにより作成したIUPAC名である。
【化1】

【0009】
本発明の一態様において、本塩は、結晶性特性を有し、少なくとも50%結晶性である。さらなる態様において、本塩は少なくとも60%結晶性である;さらに別の態様において少なくとも70%結晶性であり、なおさらに別の態様において少なくとも80%結晶性である。結晶化度は、通常のX線回折法により概算できる。
【0010】
本発明の他の態様において、本塩は50%、60%、70%、80%または90%から95%、96%、97%、98%、99%または100%結晶性である。
【0011】
一態様において、本発明の塩のカチオン対アニオンの化学量論比は、約1:1、すなわち1:0.9〜1:1の範囲である。
【0012】
(R)−1−[3−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−イソキサゾール−5−イルメチル]−3−(3−フルオロ−フェノキシ)−1−アゾニア−ビシクロ[2.2.2]オクタン2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩の結晶形態の一例は、以下に定義する結晶形態Aである。それ故に、一態様において、本発明は、(R)−1−[3−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−イソキサゾール−5−イルメチル]−3−(3−フルオロ−フェノキシ)−1−アゾニア−ビシクロ[2.2.2]オクタン2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩の塩形態(塩形態A)を提供し、それは少なくとも以下の特徴的X線粉末回折ピークを示す(λ=1.5418を使用するとき2θ度で表す):8.4、14.7および16.8。
【0013】
さらなる態様において、本発明は、(R)−1−[3−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−イソキサゾール−5−イルメチル]−3−(3−フルオロ−フェノキシ)−1−アゾニア−ビシクロ[2.2.2]オクタン2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩の塩形態(塩形態A)を提供し、それは少なくとも以下の特徴的X線粉末回折ピークを示す(λ=1.5418を使用するとき2θ度で表す):8.4、14.7、16.8および25.3。
【0014】
さらなる態様において、本発明は、(R)−1−[3−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−イソキサゾール−5−イルメチル]−3−(3−フルオロ−フェノキシ)−1−アゾニア−ビシクロ[2.2.2]オクタン2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩の塩形態(塩形態A)を提供し、それは少なくとも以下の特徴的X線粉末回折ピークを示す(λ=1.5418を使用するとき2θ度で表す):8.4、14.7、16.8、18.9および25.3。
【0015】
さらなる態様において、本発明は、(R)−1−[3−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−イソキサゾール−5−イルメチル]−3−(3−フルオロ−フェノキシ)−1−アゾニア−ビシクロ[2.2.2]オクタン2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩の塩形態(塩形態A)を提供し、それは少なくとも以下の特徴的X線粉末回折ピークを示す(λ=1.5418を使用するとき2θ度で表す):8.4、11.8、14.7、16.8、18.9および25.3。
【0016】
さらなる態様において、本発明は、(R)−1−[3−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−イソキサゾール−5−イルメチル]−3−(3−フルオロ−フェノキシ)−1−アゾニア−ビシクロ[2.2.2]オクタン2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩の塩形態(塩形態A)を提供し、それは少なくとも以下の特徴的X線粉末回折ピークを示す(λ=1.5418を使用するとき2θ度で表す):8.4、11.8、14.7、16.8、18.9、23.7および25.3。
【0017】
さらなる態様において、本発明は、(R)−1−[3−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−イソキサゾール−5−イルメチル]−3−(3−フルオロ−フェノキシ)−1−アゾニア−ビシクロ[2.2.2]オクタン2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩の塩形態(塩形態A)を提供し、それは少なくとも以下の特徴的X線粉末回折ピークを示す(λ=1.5418を使用するとき2θ度で表す):8.4、11.8、12.3、14.7、16.8、18.9、23.7および25.3。
【0018】
本明細書において特にことわらない限り、X線粉末回折ピーク(2θ度で表す)の誤差の範囲は、X線回折に対する米国薬局方の一般的章と一致する(USP941) − the United States Pharmacopeia Convention. X-Ray Diffraction, General Test <941>. United States Pharmacopeia, 25th ed. Rockville, MD: United States Pharmacopeial Convention; 2002:2088-2089)参照。本発明の一態様において、X線粉末回折ピーク(2θ度で表す)の誤差の範囲は(±0.1°)である。
【0019】
図1および2は、(R)−1−[3−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−イソキサゾール−5−イルメチル]−3−(3−フルオロ−フェノキシ)−1−アゾニア−ビシクロ[2.2.2]オクタン2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩の塩形態AのX線粉末回折パターンを示す。
【0020】
本発明は、さらに、図1に示すものと実質的に同じX線粉末回折パターンを有する塩形態を提供する。図2のX線粉末回折パターンは図1のものと実質的に同じである。
【0021】
一態様において、本発明は、(R)−1−[3−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−イソキサゾール−5−イルメチル]−3−(3−フルオロ−フェノキシ)−1−アゾニア−ビシクロ[2.2.2]オクタン2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩の塩形態(塩形態A)を提供し、それは少なくとも以下の特徴的d間隙値を示す:
(1) 10.5、6.0および5.3、または
(2) 10.5、6.0、5.3および3.5、または
(3) 10.5、6.0、5.3、4.7および3.5、または
(4) 10.5、7.5、6.0、5.3、4.7および3.5、または
(5) 10.5、7.5、6.0、5.3、4.7、3.7および3.5、または
(6) 10.5、7.5、7.2、6.0、5.3、4.7、3.7および3.5。
【0022】
本発明の一態様において、塩形態Aは無水和物である(すなわち水を含まない結晶相)。本発明の一態様において、塩形態Aは、80%相対湿度および25℃でのGVSで測定した質量の増加により測定して、1%未満の水取り込み値を有する。
【0023】
本発明の一態様は、実質的に他の物理形態がない塩形態Aを提供する。実質的に他の物理形態がないとは、少なくとも90重量%、例えば90、91、92、93、94、95、96、97、98または100重量%の本塩がその物理形態であることを意味する。
【0024】
(R)−1−[3−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−イソキサゾール−5−イルメチル]−3−(3−フルオロ−フェノキシ)−1−アゾニア−ビシクロ[2.2.2]オクタン2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩は、(R)−1−[3−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−イソキサゾール−5−イルメチル]−3−(3−フルオロ−フェノキシ)−1−アゾニア−ビシクロ[2.2.2]オクタンクロライドからアニオン交換法を使用して製造し得る。例えば適当な溶媒(例えばジクロロメタン)中の(R)−1−[3−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−イソキサゾール−5−イルメチル]−3−(3−フルオロ−フェノキシ)−1−アゾニア−ビシクロ[2.2.2]オクタンクロライドを形成し、該溶液とアンモニウムイセチオネート(isoethionate)の水溶液を適当な温度(例えば0〜50℃)で混合し、該混合物から(R)−1−[3−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−イソキサゾール−5−イルメチル]−3−(3−フルオロ−フェノキシ)−1−アゾニア−ビシクロ[2.2.2]オクタン2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩を単離することによる。(R)−1−[3−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−イソキサゾール−5−イルメチル]−3−(3−フルオロ−フェノキシ)−1−アゾニア−ビシクロ[2.2.2]オクタン2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩の製造の詳細は、以下の実施例に記載する。
【0025】
本発明の塩は医薬としての、特にムスカリン受容体(M1、M2、およびM3)アンタゴニスト、特にM3アンタゴニストを含む抗コリン剤としての活性を有する。本塩で処理し得る疾患および状態は次のものを含む:
1. 呼吸器:以下を含む気道の閉塞性疾患:間欠性および持続性両方の、ならびに全ての重症度の、気管支性、アレルギー性、内因性、外因性、運動誘発性、薬物誘発性(アスピリンおよびNASAID誘発性を含む)、および塵埃誘発性喘息、ならびに気道過敏反応の他の原因を含む喘息;慢性閉塞性肺疾患(COPD);感染性および好酸球増加性気管支炎を含む、気管支炎;気腫;気管支拡張症;嚢胞性線維症;サルコイドーシス;農夫肺および関連疾患;過敏性肺炎;原因不明線維化肺胞炎、特発性線維化肺胞炎、特発性間質性肺炎、抗悪性腫瘍治療の合併症としての線維症ならびに結核およびアスペルギルス症ならびに他の真菌感染症を含む、慢性感染を含む、肺線維症;肺移植の合併症;肺血管系の脈管炎性および血栓性障害、ならびに肺高血圧;気道の炎症性のおよび分泌性の異常に関連する慢性咳嗽、ならびに医原性咳嗽の処置を含む鎮咳活性;薬物性鼻炎を含む急性のおよび慢性の鼻炎、ならびに血管運動神経性鼻炎;神経性鼻炎(枯草熱)を含む通年性および季節性アレルギー性鼻炎;鼻のポリープ症;感冒を含む急性ウイルス感染症、および呼吸器合胞体ウイルス、インフルエンザウイルス、コロナウイルス(SARSを含む)もしくはアデノウイルスによる感染症;
【0026】
2. 骨および関節:原発性および、例えば、先天的股関節異形成症に二次性の両方を含む、骨関節症/骨関節症と関連する、またはそれを含む関節炎(arthritides);頚部および腰部脊椎炎、および背下部および頚部痛;リウマチ性関節炎およびスチル病;強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、反応性関節炎および未分化脊椎関節症(spondarthropathy)を含む血清反応陰性脊椎関節症;敗血症性関節炎およびポット病およびポンセ病を含む結核のような他の感染関連関節症(arthopathies)および骨障害;尿酸塩痛風、ピロリン酸カルシウム沈着疾患、およびカルシウムアパタイト関連腱、滑液包および滑膜炎症を含む急性および慢性結晶誘発滑膜炎;ベーチェット病;原発性および二次性シェーグレン症候群;全身性硬化症および限局型強皮症;全身性エリテマトーデス、混合型結合組織疾患、および未分化結合組織疾患;皮膚筋炎および多発性筋炎を含む炎症性ミオパシー;リウマチ性多発筋痛症;どんな関節分布であれ特発性炎症性関節炎(arthritides)を含む若年性関節炎および関連症候群、およびリウマチ熱およびその全身合併症;巨細胞性動脈炎、高安動脈炎、チャーグ・ストラウス症候群、結節性多発性動脈炎、顕微鏡的多発動脈炎、およびウイルス感染、過敏症反応、クリオグロブリン、およびパラプロテインと関連する脈管炎を含む脈管炎;背下部痛;家族性地中海熱、マックル・ウェルズ症候群、および家族性アイルランド熱(Familial Hibernian Fever)、キクチ病;薬剤誘発性関節痛(arthalgias)、腱炎(tendonititides)、およびミオパシー;
【0027】
3. 傷害[例えば運動傷害]または疾患による筋骨格障害の疼痛および結合組織リモデリング:関節炎(arthritides)(例えばリウマチ性関節炎、骨関節症、痛風または結晶性関節症)、他の関節疾患(例えば椎間板変性または側頭下顎関節変性)、骨リモデリング疾患(例えば骨粗鬆症、ページェット病または骨壊死)、多発性軟骨炎、強皮症、混合型結合組織障害、脊椎関節症または歯周疾患(例えば歯周炎);
【0028】
4. 皮膚:乾癬、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎または他の湿疹性皮膚炎、および遅延型過敏症反応;植物性および光皮膚炎;脂漏性皮膚炎、疱疹状皮膚炎、扁平苔癬、硬化性萎縮性苔癬、壊疽性膿皮症、皮膚サルコイド、円板状エリテマトーデス、天疱瘡、類天疱瘡、表皮水疱症、蕁麻疹、血管浮腫、脈管炎、毒性紅斑、皮膚好酸球増加症、円形脱毛症、男性型禿頭、スウィート症候群、ウェーバー・クリスチャン症候群、多形性紅斑;感染性および非感染性両方の蜂巣炎;脂肪織炎;皮膚リンパ腫、非黒色腫性皮膚癌および他の形成異常性病変;固定薬疹を含む薬物誘発性障害;
【0029】
5. 眼:眼瞼炎;通年性および春季アレルギー性結膜炎を含む、結膜炎;虹彩炎;前部および後部ブドウ膜炎;脈絡膜炎;自己免疫性;網膜に影響する変性または炎症性障害;交感神経性眼炎を含む眼炎;サルコイドーシス;ウイルス性、真菌性、および細菌性を含む感染症;
【0030】
6. 胃腸管:舌炎、歯肉炎、歯周炎;逆流性を含む食道炎;好酸球性胃腸炎、肥満細胞症、クローン病、潰瘍性大腸炎を含む大腸炎、直腸炎、肛門掻痒症;セリアック病、過敏性腸症候群、および腸から離れて作用し得る食物関連アレルギー(例えば偏頭痛、鼻炎または湿疹);
【0031】
7. 腹部:自己免疫性、アルコール性およびウイルス性を含む肝炎;肝臓の線維症および硬変;胆嚢炎;急性および慢性両方の膵炎;
【0032】
8. 尿生殖器:間質性および糸球体腎炎を含む腎炎;ネフローゼ症候群;急性および慢性(間質性)膀胱炎およびハンナー潰瘍を含む膀胱炎;急性および慢性尿道炎、前立腺炎、精巣上体炎、卵巣炎および卵管炎;外陰部腟炎;ペイロニー病;勃起不全(男女両方);
【0033】
9. 同種移植片拒絶反応:例えば、腎臓、心臓、肝臓、肺、骨髄、皮膚もしくは網膜の移植後または輸血後の急性のおよび慢性の移植拒絶;または慢性移植片対宿主病;
【0034】
10. CNS:アルツハイマー病およびCJDおよびnvCJDを含む他の認知症になる障害;アミロイド症;多発性硬化症および他の脱髄症候群;脳アテローム性動脈硬化症および脈管炎;側頭動脈炎;重症筋無力症;内臓痛、頭痛、偏頭痛、三叉神経痛、非定型顔面痛、関節および骨疼痛、癌および腫瘍侵襲に起因する疼痛、糖尿病性、ヘルペス後、およびHIV関連ニューロパシーを含む神経障害性疼痛症候群を含む、急性および慢性疼痛(中枢起源であれ、末梢起源であれ、急性、間欠性または永続性);神経サルコイドーシス;悪性、感染性または自己免疫性過程の中枢および末梢神経系合併症;
【0035】
11. 橋本甲状腺炎、グレーブス病、アジソン病、真性糖尿病、特発性血小板減少性紫斑病、好酸球性筋膜炎、高IgE症候群、抗リン脂質抗体症候群を含む他の自己免疫およびアレルギー性障害;
【0036】
12. 炎症性または免疫学的要素を含む他の障害;後天性免疫不全症候群(AIDS)、ハンセン病、セザリー症候群、および新生物随伴症候群を含む;
【0037】
13. 心血管:冠血管および末梢循環に影響するアテローム性動脈硬化症;心膜炎;心筋サルコイドを含む心筋炎、炎症性および自己免疫心筋症;虚血再灌流傷害;感染性(例えば梅毒性)を含む心内膜炎、弁膜炎、および大動脈炎;脈管炎;深部静脈血栓症および静脈瘤の合併症を含む静脈炎および血栓症を含む近位および末梢静脈の障害;
【0038】
14. 腫瘍学:前立腺、乳、肺、卵巣、膵臓、腸および結腸、胃、皮膚および脳腫瘍および骨髄(白血病を含む)およびリンパ増殖系に影響する悪性腫瘍、例えばホジキンおよび非ホジキンリンパ腫を含む、一般的な癌の処置;転移および腫瘍再発、および新生物随伴症候群の予防および処置を含む;および
【0039】
15. 胃腸管:セリアック病、直腸炎、好酸球性胃腸炎、肥満細胞症、クローン病、潰瘍性大腸炎、顕微鏡的大腸炎、判定不能大腸炎、過敏性腸障害、過敏性腸症候群、非炎症性下痢、腸から離れた部位に発現する食物関連アレルギー、例えば、偏頭痛、鼻炎および湿疹。
【0040】
従って、本発明は、さらに、治療に使用するための、上で定義した(R)−1−[3−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−イソキサゾール−5−イルメチル]−3−(3−フルオロ−フェノキシ)−1−アゾニア−ビシクロ[2.2.2]オクタン2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩を提供する。
【0041】
他の面において、本発明は、治療で使用するための医薬の製造における、上で定義した(R)−1−[3−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−イソキサゾール−5−イルメチル]−3−(3−フルオロ−フェノキシ)−1−アゾニア−ビシクロ[2.2.2]オクタン2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩の使用を抵抗する。
【0042】
本明細書の文脈で、異なる具体的指示がない限り、用語“治療”は、“予防”を含む。用語“治療的”および“治療的に”もこれに従い解釈すべきである。
【0043】
本発明の別の面は、疾患状態を有する、またはリスクがある哺乳動物における該疾患を処置する方法であって、かかる処置を必要とする哺乳動物に治療有効量の上で定義した(R)−1−[3−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−イソキサゾール−5−イルメチル]−3−(3−フルオロ−フェノキシ)−1−アゾニア−ビシクロ[2.2.2]オクタン2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩を投与することを含む、方法を提供する。
【0044】
本発明はまた、慢性閉塞性肺疾患(COPD)(例えば不可逆性COPD)の処置に使用するための(R)−1−[3−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−イソキサゾール−5−イルメチル]−3−(3−フルオロ−フェノキシ)−1−アゾニア−ビシクロ[2.2.2]オクタン2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩を提供する。
【0045】
本発明はまた、慢性閉塞性肺疾患(COPD)(例えば不可逆性COPD)の処置に使用するための医薬の製造における、上で定義した(R)−1−[3−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−イソキサゾール−5−イルメチル]−3−(3−フルオロ−フェノキシ)−1−アゾニア−ビシクロ[2.2.2]オクタン2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩の使用を提供する。
【0046】
本発明はまた、喘息の処置に使用するための医薬の製造における、上で定義した(R)−1−[3−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−イソキサゾール−5−イルメチル]−3−(3−フルオロ−フェノキシ)−1−アゾニア−ビシクロ[2.2.2]オクタン2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩の使用を提供する。
【0047】
本発明は、さらに、ヒトのような温血動物における慢性閉塞性肺疾患(COPD)(例えば不可逆性COPD)の処置方法であって、かかる処置を必要とする哺乳動物に有効量の上で定義した(R)−1−[3−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−イソキサゾール−5−イルメチル]−3−(3−フルオロ−フェノキシ)−1−アゾニア−ビシクロ[2.2.2]オクタン2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩を投与することを含む、方法を提供する。
【0048】
ヒトのような温血動物の治療的処置のために本発明の化合物を使用するために、該成分は、通常の薬務に従い医薬組成物に製剤される。
【0049】
上記治療的使用のために、投与する投与量は、当然、投与方式、望む処置および指示される障害により変化するが、典型的に0.001mg/kg〜30mg/kgの範囲であり得る。
【0050】
本発明に従う塩はそれ自体で投与してよいが、一般に、(R)−1−[3−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−イソキサゾール−5−イルメチル]−3−(3−フルオロ−フェノキシ)−1−アゾニア−ビシクロ[2.2.2]オクタン2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩(活性成分)を薬学的に許容されるアジュバント、希釈剤または担体と共に含む医薬組成物の形で投与する。適当な医薬製剤の選択および製造のための慣用法は、例えば、“Pharmaceuticals - The Science of Dosage Form Designs”, M. E. Aulton, Churchill Livingstone, 1988に記載されている。
【0051】
投与方式によって、本医薬組成物は、0.05〜99%w(重量パーセント)、より好ましくは0.05〜80%w、なお好ましくは0.10〜70%w、およびさらに好ましくは0.10〜50%wの活性成分を含んでよく、全ての重量パーセントは全組成物に基づく。
【0052】
本発明はまた、(R)−1−[3−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−イソキサゾール−5−イルメチル]−3−(3−フルオロ−フェノキシ)−1−アゾニア−ビシクロ[2.2.2]オクタン2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩を薬学的に許容されるアジュバント、希釈剤または担体と共に含む、医薬組成物を提供する。
【0053】
本発明は、さらに、(R)−1−[3−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−イソキサゾール−5−イルメチル]−3−(3−フルオロ−フェノキシ)−1−アゾニア−ビシクロ[2.2.2]オクタン2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩と薬学的に許容されるアジュバント、希釈剤または担体を混合することを含む、本発明の医薬組成物の製造方法を提供する。
【0054】
本医薬組成物は、局所的に(例えば皮膚または肺および/または気道に)、例えば、クリーム、溶液、懸濁液、ヘプタフルオロアルカン(HFA)エアロゾルおよび乾燥粉末製剤、例えば、Turbuhaler(登録商標)として既知の吸入器中の製剤の形態で;または全身的に、例えば錠剤、カプセル剤、シロップ剤、散剤または顆粒剤の形で経口投与により;または溶液または懸濁液の形態で非経腸投与により;または皮下投与により;または坐薬の形態で直腸投与により;または経皮的に投与してよい。
【0055】
本発明の一態様において、活性成分を吸入により投与する。さらなる態様において、活性成分を乾燥粉末吸入器の手段により投与する。本吸入器は、一投与量または多投与量吸入器であってよく、そして呼気駆動型乾燥粉末吸入器であってよい。
【0056】
吸入により投与するとき、活性成分の投与量は、一般に0.1μg〜10000μg、0.1〜5000μg、0.1〜1000μg、0.1〜500μg、0.1〜200μg、0.1〜200μg、0.1〜100μg、0.1〜50μg、5μg〜5000μg、5〜1000μg、5〜500μg、5〜200μg、5〜100μg、5〜50μg、10〜5000μg、10〜1000μg、10〜500μg、10〜200μg、10〜100μg、10〜50μg、20〜5000μg、20〜1000μg、20〜500μg、20〜200μg、20〜100μg、20〜50μg、50〜5000μg、50〜1000μg、50〜500μg、50〜200μg、50〜100μg、100〜5000μg、100〜1000μgまたは100〜500μgの範囲である。
【0057】
活性成分の乾燥粉末製剤および加圧HFAエアロゾルは経口または経鼻吸入により投与し得る。吸入のために、本化合物は望ましくは微粉化されている。微粉化された化合物は、好ましくは10μm未満の質量中央直径を有し、C−C20脂肪酸またはその塩(例えば、オレイン酸)、胆汁酸塩、リン脂質、アルキルサッカライド、過フッ素過またはポリエトキシル化界面活性剤、または他の薬学的に許容される分散剤のような分散剤の助けを借りて噴射剤混合物に懸濁し得る。
【0058】
一つの可能性は、微粉化された本発明の化合物と担体物質、例えば、モノ、ジまたはポリサッカライド、糖アルコール、または他のポリオールの混合である。適当な担体は糖類、例えば、ラクトース、グルコース、ラフィノース、メレジトース、ラクチトール、マルチトール、トレハロース、スクロース、マンニトールおよびデンプンである。あるいは微粉化された化合物を他の物質でコーティングしてよい。粉末混合物をまた硬ゼラチンカプセルに分配してよく、各々所望の用量の活性化合物を含む。
【0059】
他の可能性は、微粉化された粉末の、吸入過程中に破壊する球体への加工である。球体化粉末を、多投与量吸入器、例えば、Turbuhaler(登録商標)の薬剤貯蔵部に充填してよく、該吸入器で、投与ユニットが所望用量を測定し、それが患者により吸入される。このシステムで、活性成分は担体物質を伴いまたは伴わず、患者に送達される。
【0060】
経口投与のために、本発明の化合物をアジュバントまたは担体、例えば、ラクトース、サッカロース、ソルビトール、マンニトール;デンプン、例えば、ジャガイモデンプン、コーンデンプンまたはアミロペクチン;セルロース誘導体;結合剤、例えば、ゼラチンまたはポリビニルピロリドン;および/または滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ポリエチレングリコール、蝋、パラフィンなどと混合し、錠剤に圧縮し得る。コーティング錠剤が必要であるならば、上記の通りに製造したコアを、例えば、アラビアゴム、ゼラチン、タルクおよび二酸化チタンを含み得る、濃縮糖溶液でコーティングし得る。あるいは、錠剤を、易揮発性有機溶媒に溶解した適当なポリマーでコーティングしてよい。
【0061】
軟ゼラチンカプセル製造のために、本発明の化合物を、例えば、植物油またはポリエチレングリコールと混合し得る。硬ゼラチンカプセルは、錠剤について上記した賦形剤の何れかを使用した本化合物の顆粒を含み得る。また本発明の化合物の液体または半固体製剤も硬ゼラチンカプセルに充填し得る。
【0062】
経口投与用の液体製剤は、シロップまたは懸濁液、例えば、本発明の化合物を含み、残りが糖およびエタノール、水、グリセロールおよびプロピレングリコールの混合物である溶液を含む。場合によりかかる液体製剤は着色剤、香味剤、濃化剤としてサッカリンおよび/またはカルボキシメチルセルロースまたは当分野で既知の他の賦形剤を含んでよい。
【0063】
本発明をここで以下の非限定的実施例により説明する。実施例において以下の図が示される:
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】製造例1で製造した(R)−1−[3−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−イソキサゾール−5−イルメチル]−3−(3−フルオロ−フェノキシ)−1−アゾニア−ビシクロ[2.2.2]オクタン2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩の塩形態AのX線粉末回折パターン。
【図2】製造例2で製造した(R)−1−[3−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−イソキサゾール−5−イルメチル]−3−(3−フルオロ−フェノキシ)−1−アゾニア−ビシクロ[2.2.2]オクタン2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩の塩形態AのX線粉末回折パターン。
【図3】(R)−1−[3−((R)−シクロ(cyco)ヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−イソキサゾール−5−イルメチル]−3−(3−フルオロ−フェノキシ)−1−アゾニア−ビシクロ[2.2.2]オクタンクロライドのX線粉末回折パターン。
【実施例】
【0065】
一般的な実験の詳細
全ての反応を、特に断らない限り窒素の雰囲気下に行った。NMRスペクトルは、400MHzで操作するVarian Unity Inova 400分光計で、5mm逆検出三重共鳴プローブまたは400MHzで操作する5mm逆検出三重共鳴TXIプローブを備えたBruker Avance DRX 400分光計または300MHzで操作する標準5mmデュアル周波数プローブを備えたBruker Avance DPX 300分光計で得た。シフトをテトラメチルシランに対するppmで記載する。生成物をカラムクロマトグラフィーで精製するとき、‘フラッシュシリカ’は、クロマトグラフィー用シリカゲル、0.035〜0.070mm(220〜440メッシュ)(例えばFluka silica gel 60)、そして10p.s.i.までの窒素圧を適用した加速カラム溶出または半自動化CombiFlash(登録商標)Companion精製系または減圧下のBiotage(登録商標)Isolute Flash Si IIカートリッジの自動溶出による、またはBiotage(登録商標)SP1半自動化システムの使用を意味する。全ての溶媒および市販反応材は受領したまま使用した。SCXクロマトグラフィーを、Biotage(登録商標)Isolute SCXまたはSCX-2予充填カートリッジを使用して行った。
【0066】
引用される液体クロマトグラフィー質量分析(LCMS)を以下に記載する:
方法1
C18逆相カラム(100×3.0mm Higgins Clipeusと5μm粒子径)を用いたWaters Micromass ZQ2000、A:水+0.1%ギ酸;B:アセトニトリル+0.1%ギ酸で溶出。勾配:
【表1】

検出 − MS、ELS、UV(インラインUVデテクターを備えたMSに対して100μlスプリット)MSイオン化法方法 − エレクトロスプレー(陽イオン)
【0067】
方法2
C18逆相カラム(30×4.6mm Phenomenex Luna 3μm粒子径)を用いたWaters Platform LC四重極質量分光計、A:水+0.1%ギ酸;B:アセトニトリル+0.1%ギ酸で溶出。勾配:
【表2】

検出 − MS、ELS、UV(インラインUVデテクターを備えたMSに対して200μlスプリット)MSイオン化法方法 − エレクトロスプレー(陽および陰イオン)。
【0068】
実験の章で使用する
略語:DCM=ジクロロメタン;DMF=ジメチルホルムアミド;DMSO=ジメチルスルホキシド;IMS=工業用メチル化酒精;LCMS=液体クロマトグラフィー−質量分析;NBS=N−ブロモスクシンイミド;RT=室温;Rt=保持時間;TFA=トリフルオロ酢酸;THF=テトラヒドロフラン;SCX=強カチオン交換クロマトグラフィー。
【0069】
中間体の製造例
(R)−3−(3−フルオロ−フェノキシ)−1−アザ−ビシクロ[2.2.2]オクタン − 中間体1
(R)−1−アザ−ビシクロ[2.2.2]オクタン−3−オール(1.25g)、CuI(93.1mg)、1,10−フェナントロリン(176mg)、CsCO(3.19g)および3−フルオロ−ヨード−ベンゼン(1.11g)のトルエン(2.5mL)溶液を、100℃で20時間加熱した。反応混合物を冷却し、酢酸エチルで希釈し、セライトを通して濾過した。不溶性物質を数回酢酸エチルで洗浄した。濾液を5%硫酸銅溶液、水で洗浄し、乾燥させ(MgSO)、濾過し、真空で蒸発させた。SCXによる精製により、(R)−3−(3−フルオロ−フェノキシ)−1−アザ−ビシクロ[2.2.2]オクタン(490mg、45%)を褐色油状物として得た。LCMS(方法2、Rt 2.09分)。MH=222。
【0070】
(R)−(5−クロロメチル−イソキサゾール−3−イル)−シクロヘキシル−フェニル−メタノール − 中間体2
工程1:1,1’−カルボニルジイミダゾール(25.0g、154mmol)を、撹拌している(R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−酢酸(30.0g、128mmol)の乾燥THF(600mL)懸濁液に添加した。90分間、室温で撹拌後、水素化ホウ素ナトリウム(11.6g、307mmol)を1時間にわたり少しずつ添加した。反応混合物を室温で一夜撹拌した。反応を水(100mL)の添加によりクエンチし、DCMで抽出した。合わせた有機相を乾燥させ(MgSO)、濾過し、真空で蒸発させて、粗固体を得た。シリカゲルクロマトグラフィー(0−5%メタノールのDCM溶液で溶出)での精製により、(R)−1−シクロヘキシル−1−フェニル−エタン−1,2−ジオール(20.7g、73%)を得た。H NMR (400MHz, CDCl3):δ 7.41-7.33 (4 H, m), 7.28-7.24 (1 H, m), 3.99 (1 H, d), 3.83 (1 H, d), 2.68 (1 H, br s), 1.86-1.80 (1 H, m), 1.78-1.64 (3 H, m), 1.63-1.57 (1 H, m), 1.47-1.41 (1 H, m), 1.27-0.94 (5 H, m)。
【0071】
工程2:塩化オキサリル(15.5mL、201mmol)の乾燥DCM(900mL)溶液を窒素雰囲気下−78℃に冷却した。DMSO(28.5mL、401mmol)のDCM(25mL)溶液を滴下し、混合物を−78℃で10分間撹拌した。(R)−1−シクロヘキシル−1−フェニル−エタン−1,2−ジオール(29.5g、134mmol)のDCM(250mL)溶液を1時間にわたり滴下して、濃いスラリーを得た。内部温度は−45℃に達した。トリエチルアミン(92.8mL、669mmol)を滴下し、添加完了後混合物を室温に温めた。混合物を1N塩酸(500mL×2)、水(500mL)および塩水(500mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO)、濾過し、蒸発させて、オレンジ色油状物を得た。これをIMS(320mL)に溶解し、予め形成したヒドロキシルアミンヒドロクロライド(14.0g、201mmol)および炭酸ナトリウム(21.3g、201mmol)の水(210mL)溶液に少しずつ添加した。得られたエマルジョンを室温で一夜撹拌し、DCMおよび水に分配した。有機層を水および塩水で洗浄し、乾燥させ(MgSO)、濾過し、真空で蒸発させた。シリカゲルクロマトグラフィー(0−15%EtOAcのシクロヘキサン溶液で溶出)での精製により、(R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−アセトアルデヒドオキシム(25.9g、83%)を得た。H NMR (400MHz, CDCl3):δ 7.76 (1 H, s), 7.44-7.41 (2 H, m), 7.37-7.33 (2 H, m), 7.27-7.23 (1 H, m), 7.22 (1 H, br s), 3.34 (1 H, s), 1.90-1.60 (5 H, m), 1.37-1.05 (6 H, m)。
【0072】
工程3:(R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−アセトアルデヒドオキシム(8g、34mmol)および2,6−ルチジン(10mL、86mmol)のDCM(150mL)溶液を、氷浴で冷却した。トリメチルシリルトリフルオロメタンスルホン酸塩(15.6mL、86mmol)を滴下した。混合物を10分間、0℃で撹拌し、室温で30分間温めた。反応を水(50mL)の添加によりクエンチした。有機相を相分離カートリッジを通すことにより単離し、真空で蒸発させた。シリカゲルクロマトグラフィー(10−20%EtOAcのシクロヘキサン溶液で溶出)での精製により、モノおよびビスTMS保護化合物の混合物を得た。これをメタノールに溶解し、室温に一夜静置し、真空で蒸発させて、(R)−シクロヘキシル−フェニル−トリメチルシラニルオキシ−アセトアルデヒドオキシム(10g、96%)を得た。H NMR (400MHz, CDCl3):δ 7.62 (1 H, s), 7.32-7.28 (4 H, m), 7.26-7.21 (1 H, m), 7.11 (1 H, s), 1.93-1.85 (2 H, m), 1.76-1.71 (1 H, m), 1.68-1.56 (2 H, m), 1.49-1.42 (1 H, m), 1.27-0.78 (5 H, m), 0.11 (9 H, m)。
【0073】
工程4:(R)−シクロヘキシル−フェニル−トリメチルシラニルオキシ−アセトアルデヒドオキシム(6g、19.6mmol)の溶液を乾燥DCM(400mL)中に形成し、−78℃に冷却した。照明を抑えながら、次亜塩素酸tert−ブチル(4.3g、39.3mmol)のDCM(10mL)溶液を滴下した。2時間、−78℃の後、トリエチルアミン(4.1mL、29.4mmol)のDCM(10mL)溶液を滴下した。さらに10分間、−78℃の後、混合物を0℃に温めた。この時点で、プロパルギルクロライド(14.4mL、196mmol)を添加し、混合物を一夜室温に温めた。混合物を塩水(200mL)で洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濾過し、蒸発させた。シリカゲルクロマトグラフィー(0−10%EtOAcのシクロヘキサン溶液で溶出)での精製により、粗5−クロロメチル−3−((R)−シクロヘキシル−フェニル−トリメチルシラニルオキシ−メチル)−イソオキサゾールを得た。これをTHF(100mL)に再溶解し、氷浴で冷却し、テトラブチルアンモニウムフルオライド(19.6mLのTHF中1M)を滴下した。この混合物を30分間、0℃で撹拌し、酢酸エチルおよび水に分配した。有機相を乾燥させ(NaSO)、濾過し、真空で蒸発させた。シリカゲルクロマトグラフィー(0−20%EtOAcのシクロヘキサン溶液で溶出)での精製により、表題化合物を白色固体として得た(3.5g、58%)。H NMR (400MHz, CDCl3):δ 7.51 (2 H, m), 7.32 (2 H, m), 7.25-7.21 (1 H, m), 6.29 (1 H, s), 4.52 (2 H, s), 2.80 (1 H, s), 2.34-2.28 (1 H, m), 1.81-1.76 (1 H, m), 1.72-1.62 (3 H, m), 1.36-1.02 (6 H, m)。
【0074】
(R)−1−[3−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−イソキサゾール−5−イルメチル]−3−(3−フルオロ−フェノキシ)−1−アゾニア−ビシクロ[2.2.2]オクタン2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩(塩形態A)の合成
製造例1
a)(R)−1−[3−((R)−シクロ(Cyco)ヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−イソキサゾール−5−イルメチル]−3−(3−フルオロ−フェノキシ)−1−アゾニア−ビシクロ[2.2.2]オクタンクロライド
(R)−(5−クロロメチル−イソキサゾール−3−イル)−シクロヘキシル−フェニル−メタノール(中間体2)(3.00g)および(R)−3−(3−フルオロ−フェノキシ)−1−アザ−ビシクロ[2.2.2]オクタン(中間体1)(2.17g)をアセトニトリル(60mL)中で混合し、50℃で2時間加熱した。反応混合物を真空で蒸発させ、シリカゲルクロマトグラフィー(1−15%メタノールのDCM溶液で溶出)で精製して、表題化合物を白色泡状物として得た。これを沸騰アセトニトリル(500ml)に溶解し、ゆっくり室温に冷却した。得られた白色結晶を濾過により回収し、真空で乾燥させて、表題化合物を得た(3.9g、75%)。1H NMR (400MHz, DMSO-d6):δ 7.49 (dd, 2 H), 7.40-7.29 (m, 3 H), 7.25-7.20 (m, 1 H), 6.93-6.79 (m, 4 H), 5.90 (s, 1 H), 4.96 (s, 1 H), 4.77 (s, 2 H), 3.95 (dd, 1 H), 3.49 (d, 4 H), 2.43 (s, 1 H), 2.26-2.10 (m, 2 H), 2.07-1.98 (m, 1 H), 1.95-1.82 (m, 2 H), 1.69 (d, 1 H), 1.59 (s, 4 H), 1.28-1.14 (m, 3 H), 1.10-0.98 (m, 3 H)。LCMS(方法1、8.70分)。M=491。
【0075】
(R)−1−[3−((R)−シクロ(Cyco)ヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−イソキサゾール−5−イルメチル]−3−(3−フルオロ−フェノキシ)−1−アゾニア−ビシクロ[2.2.2]オクタンクロライドの別の製造例がWO2008/099186に記載
【0076】
b)(R)−1−[3−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−イソキサゾール−5−イルメチル]−3−(3−フルオロ−フェノキシ)−1−アゾニア−ビシクロ[2.2.2]オクタン2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩(塩形態A)
(R)−1−[3−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−イソキサゾール−5−イルメチル]−3−(3−フルオロ−フェノキシ)−1−アゾニア−ビシクロ[2.2.2]オクタンクロライド(3.2g)の温DCM(50ml)およびメタノール(0.5ml)中の溶液を激しく撹拌し、イセチオン酸アンモニウム(5g)の水(20ml)溶液で処理した。反応混合物を室温で1時間撹拌し、0℃に冷却し、0.5時間撹拌した。得られた白色沈殿を濾過により回収し、水およびエーテルで洗浄し、真空で乾燥させた。沈殿を沸騰アセトニトリル(172ml)に溶解した。得られた溶液を熱い間に濾過し、撹拌しながらゆっくり室温に冷却した。2時間後、得られた白色結晶を濾過により回収し、真空で乾燥させて、表題化合物を得た(3.07g、82%)。1H NMR δ (ppm)(DMSO-d6):7.47-7.42 (2 H, m), 7.35-7.25 (3 H, m), 7.21-7.13 (1 H, m), 6.81 (4 H, d, J = 43.75 Hz), 5.84 (1 H, s), 4.92 (1 H, s), 4.70 (2 H, s), 4.40 (1 H, t, J = 5.72 Hz), 3.90 (1 H, dd, J = 13.18, 8.10 Hz), 3.58 (2 H, td, J = 6.74, 5.72 Hz), 3.48-3.29 (5 H, m), 2.56 (2 H, t, J = 6.74 Hz), 2.39 (1 H, s), 2.21-2.04 (2 H, m), 2.03-1.94 (1 H, m), 1.93-1.77 (2 H, m), 1.64 (1 H, d, J = 10.36 Hz), 1.54 (3 H, d, J = 9.07 Hz), 1.24-1.10 (3 H, m), 1.10-0.93 (3 H, m). LCMS(方法1, 8.72分). M+= 491。
【0077】
(R)−1−[3−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−イソキサゾール−5−イルメチル]−3−(3−フルオロ−フェノキシ)−1−アゾニア−ビシクロ[2.2.2]オクタン2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩(塩形態A)の合成
製造例2
オーバーヘッドスターラーを備えた5Lフラスコ中の撹拌している(R)−1−[3−((R)−シクロ(Cyco)ヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−イソキサゾール−5−イルメチル]−3−(3−フルオロ−フェノキシ)−1−アゾニア−ビシクロ[2.2.2]オクタンクロライド(155.83g)およびDCM(2380mL)の懸濁液に、MeOH(23.8mL)を一度に添加した。数分撹拌後、溶液が形成された。撹拌している塩化物塩の溶液に、イセチオン酸アンモニウム塩(61.60g)の水(945mL)溶液を5分間にわたり添加した。得られた二相反応混合物を激しく撹拌し、数分後(R)−1−[3−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−イソキサゾール−5−イルメチル]−3−(3−フルオロ−フェノキシ)−1−アゾニア−ビシクロ[2.2.2]オクタン2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩の種晶を少し添加した。さらに35分間の撹拌後に少し添加した。固体形成の痕跡がフラスコ側面に観察された。室温で2.5時間撹拌し、高密度沈殿が形成し始めた。少量の反応混合物の顕微鏡下の試験は、結晶性物質を示した。撹拌している反応混合物を氷浴で冷却した(内部温度4℃で35分間)。固体は、さらに顆粒状になった。固体を濾過により回収し、冷水(400−60mLずつ全量3.1L)、続いてエーテル(5×500mL)で洗浄した。それを空気中で吸引乾燥し、真空で40℃で一夜、そしてさらに6時間乾燥させて、生成物を白色結晶性固体として得た(152.48g)。LC−MS(方法2):R 8.91分、m/z 491 [M]。純度>99%。
【0078】
生成物(152.48g)を撹拌しながら、還流しているIMS(2.8L)に溶解し、熱溶液を濾過した。この溶液を熱いまま維持し、10L加熱ジャケット付リアクターで撹拌し、一方残った物質(151.64g)を還流しているIMS(2.8L)に溶解し、熱いまま濾過した。2溶液を10L加熱ジャケット付リアクターで合わせ、撹拌し、還流した。少量の物質が析出し始め、それ故にさらにIMS(350mL)を溶液が形成されるまで添加した。撹拌している溶液(撹拌速度88−89rpm)を徐々に冷却した[約1時間にわたり78℃(還流温度)から76.5℃(内部温度)、続いて4.5時間にわたり76.5−20℃(内部温度)、そして、20℃で一夜撹拌]。種晶を撹拌している溶液に77℃、69℃および59℃で添加した。固体物質がリアクターの底に析出し始めた。混合物をさらに冷却するにつれその後数分間でさらなる結晶化が観察された。一夜撹拌後固体を濾過により回収し、冷IMS(〜300ml)で洗浄し、空気中で吸引により(2.5時間)、続いて真空で40℃で一夜乾燥させて、結晶性(R)−1−[3−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−イソキサゾール−5−イルメチル]−3−(3−フルオロ−フェノキシ)−1−アゾニア−ビシクロ[2.2.2]オクタン2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩(274.48g)を得た。
【0079】
LC−MS(方法2):R 8.84分、m/z 491[M]。純度>99%。 (R)−1−[3−((R)−シクロ(Cyco)ヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−イソキサゾール−5−イルメチル]−3−(3−フルオロ−フェノキシ)−1−アゾニア−ビシクロ[2.2.2]オクタンクロライドの製造例はWO2008/099186に記載
【0080】
(R)−1−[3−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−イソキサゾール−5−イルメチル]−3−(3−フルオロ−フェノキシ)−1−アゾニア−ビシクロ[2.2.2]オクタン2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩の塩形態Aの固体状態分析
装置詳細
X線粉末回折(XRPD) − PANalytical X'Pert機で2θ−θ配置で、またはPANalytical CubiX PRO機で、φ−φ配置で、0.02°増分あたり100秒間暴露で、2°〜40° 2φの走査範囲にわたり行った。X線を、45kVおよび40mAで操作する銅長高精度焦点チューブで発生させた。銅X線の波長は1.5418Åであった。データを、〜2mgの化合物が入ったゼロ・バックグラウンド・ホルダー上で集めた。ホルダーはシリコンの一結晶から成り、それは、非回折平面に沿って切断し、その後磨いて光学的に平に仕上げた。この表面上へのX線投射は、Bragg消光により打ち消された。
【0081】
示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムを、アルミニウム・パンおよび穿孔した蓋と共に、TA Q1000示差走査熱量計を使用して測定した。サンプル重量は0.5〜5mgの間で変化した。本工程は、窒素ガス流(50ml/分)下で、10℃/分で一定速度で温度を上昇させて、25〜300℃の試験温度で行った。
【0082】
重量蒸気収着(GVS)プロファイルをSurface Measurements Systems Dynamic Vapour Sorption DVS-1またはDVS Advantage装置を使用して測定した。固体サンプル約1−5mgをガラス容器に入れ、サンプル重量をデュアルサイクル工程法の間記録した(10%RH段階の40〜90〜0〜90〜0%相対湿度(RH))。
【0083】
(R)−1−[3−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−イソキサゾール−5−イルメチル]−3−(3−フルオロ−フェノキシ)−1−アゾニア−ビシクロ[2.2.2]オクタン2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩(塩形態A)の固体形態特性 − 製造例1
製造例1により製造した塩形態AをXRPD、GVSおよびDSCで分析した。融点をDSCで決定し、約214℃(±2℃)での鋭い融解開始が判明した。GVS測定は80%RHで重量増加がなかった。製造例1で製造した‘塩形態A’のXRPDスペクトルを図1に示す。
【0084】
(R)−1−[3−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−イソキサゾール−5−イルメチル]−3−(3−フルオロ−フェノキシ)−1−アゾニア−ビシクロ[2.2.2]オクタン2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩(塩形態A)の固体形態特性 − 製造例2
製造例2により製造した塩形態AをXRPD、GVSおよびDSCで分析した。DSCで決定した形態Aの融点は213℃(開始)(±2℃)であることが判明した。GVS測定は、80%RH(±0.3%)で0.15%の重量増加を示した。製造例2で製造した‘塩形態A’のXRPDスペクトルを図2に示す。
【0085】
(R)−1−[3−((R)−シクロ(Cyco)ヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−イソキサゾール−5−イルメチル]−3−(3−フルオロ−フェノキシ)−1−アゾニア−ビシクロ[2.2.2]オクタンクロライド(比較例)の塩形態特性
製造例1(工程a)で製造した(R)−1−[3−((R)−シクロ(Cyco)ヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−イソキサゾール−5−イルメチル]−3−(3−フルオロ−フェノキシ)−1−アゾニア−ビシクロ[2.2.2]オクタンクロライドのサンプルをXRPD、GVSおよびDSCで分析した。融点をDSCで決定し、約134℃(±2℃)で幅広の吸熱事象(融解)開始が判明した。GVS測定は、第一サイクルで約5%および第二サイクルで6.5%の質量増加を生じた。本塩化物塩のXRPDスペクトルを図3に示す。
【0086】
(R)−1−[3−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−イソキサゾール−5−イルメチル]−3−(3−フルオロ−フェノキシ)−1−アゾニア−ビシクロ[2.2.2]オクタン2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩の生物学的活性
ムスカリンアンタゴニストの生物学的活性
(R)−1−[3−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−イソキサゾール−5−イルメチル]−3−(3−フルオロ−フェノキシ)−1−アゾニア−ビシクロ[2.2.2]オクタン2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩の阻害効果を、ムスカリン受容体放射性リガンド結合アッセイで決定した。組み換えヒトM3受容体をCHO−K1細胞で発現させた。細胞膜を調製し、[3H]−N−メチルスコポラミン([3H]−NMS)と化合物の結合をシンチレーション近接アッセイ(SPA)で評価した。インキュベーション時間は16時間、環境温度で、1%(v/v)DMSO存在下であった。アッセイを白色96ウェル透明底NBSプレート(Corning)で行った。アッセイ前に、M3受容体含有CHO細胞膜をSPA WGA(小麦胚芽アグルチニン)ビーズ(GE Healthcare)にコーティングした。非特異的結合を1μMアトロピン存在下で決定した。放射活性をMicrobetaシンチレーションカウンター(PerkinElmer)で2分間/ウェル読み取り時間の3Hプロトコールを使用して測定した。[3H]−NMS結合の化合物による阻害を、典型的に0.03nM〜1μMの濃度範囲を使用して決定し、プレートについてプレート特異的放射性リガンド結合に対する阻害パーセントとして示した。(R)−1−[3−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−イソキサゾール−5−イルメチル]−3−(3−フルオロ−フェノキシ)−1−アゾニア−ビシクロ[2.2.2]オクタン2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩は、M3結合アッセイで0.66nMの効力(Ki値として)を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(R)−1−[3−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−イソキサゾール−5−イルメチル]−3−(3−フルオロ−フェノキシ)−1−アゾニア−ビシクロ[2.2.2]オクタン2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩である塩。
【請求項2】
少なくとも以下の特徴的X線粉末回折ピークを示す、請求項1に記載の塩(λ=1.5418を使用するとき2θ度で表す):8.4、14.7および16.8。
【請求項3】
図1に示すものと実質的に同一のX線粉末回折パターンを有する、請求項2に記載の塩。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の塩を薬学的に許容されるアジュバント、希釈剤または担体と共に含む、医薬組成物。
【請求項5】
治療に使用するための、請求項1〜3のいずれか1項に記載の塩。
【請求項6】
慢性閉塞性肺疾患の処置に使用する医薬の製造における、請求項1〜3のいずれか1項に記載の塩の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−530588(P2011−530588A)
【公表日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−522936(P2011−522936)
【出願日】平成21年8月11日(2009.8.11)
【国際出願番号】PCT/SE2009/050926
【国際公開番号】WO2010/019099
【国際公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(391008951)アストラゼネカ・アクチエボラーグ (625)
【氏名又は名称原語表記】ASTRAZENECA AKTIEBOLAG
【出願人】(507259730)パルメイゲン・セラピューティクス・(シナジー)・リミテッド (23)
【氏名又は名称原語表記】PULMAGEN THERAPEUTICS (SYNERGY) LIMITED
【Fターム(参考)】