説明

2サイクルエンジン

【課題】始動性が良好なオートチョークを備えた2サイクルエンジンを提供すること。
【解決手段】2サイクルエンジン1を、始動用燃料貯留部からクランクケース24内に始動用燃料を供給する始動用燃料供給流路200と、始動用燃料供給流路200の途中に設けられた流路開閉手段とを含んで構成し、始動用燃料供給流路200を、クランクケース24内と連通する位置に常に開口させている。そのため、ピストン27の動きが下死点から上昇に転じてクランクケース24内に負圧が生じるのと同時に、クランクケース24内に始動用燃料を供給する動作を開始させることができ、従来に比べて長い間クランクケース24内に始動用燃料を供給することができるので、始動するのに十分な燃料を供給できて2サイクルエンジン1の始動性を向上できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2サイクルエンジンに係り、例えばオートチョークを備えた2サイクルエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に小排気量の2サイクルエンジンは、刈払機やチェーンソウ等の携帯型の作業機などに用いられることが多く、これらの中には、冷間時における始動性を向上させるために、オートチョークを備えたものがある。オートチョークとしては、種々の構成のものがあるが、例えばキャブレタと一体にソレノイドバルブ(電磁弁)を設けたものがある。
このようなオートチョークは、キャブレタ内の燃料貯留部から延びてキャブレタ内の吸気流路に開口する始動用燃料供給流路、および始動用燃料供給流路の途中に設けられた流路開閉手段としてのソレノイドバルブを備えており、このソレノイドバルブを開くことで、吸気流路内の負圧によって燃料貯留部から始動用燃料供給流路を通して吸気流路に過濃化用の燃料、つまり始動用燃料が引き出される。
【0003】
このようなオートチョークを備えた2サイクルエンジンにおいて、例えば吸気方式がピストンバルブ方式のエンジンの吸気流路は、シリンダ内で吸気ポートとして開口し、往復動するピストンによって開閉される。つまり、このような従来の2サイクルエンジンでは、ピストンが下死点から上死点側に動いて吸気ポートが開いた際に、クランクケース内から吸気流路内に負圧がかかり、吸気流路に始動用燃料供給流路から燃料が供給された(例えば特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2002−339805号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来の2サイクルエンジンでは、ピストンが上死点に向かう途中で吸気ポートが開かれてからピストンが上死点の位置に達するまでのごくわずかな時間しか吸気流路内に負圧がかからないうえ、例えばエンジンが真新しくてまだピストンリングが十分になじんでおらずシール性が良好とはいえない状態の時には、クランクケース内にかかる負圧が低くなってしまい吸気流路内にかかる負圧も低下してしまう。つまり、従来の2サイクルエンジンでは、吸気ポートが開いているわずかな時間しか吸気流路内に負圧がかからないうえ、例えばシール性が良好とはいえない状態の時には、吸気流路内にかかる負圧が十分な高さにはならないので、吸気流路に十分な始動用燃料が引き出されず、始動性が低下してしまうという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、始動性が良好な2サイクルエンジンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に係る2サイクルエンジンは、2サイクルエンジンにおいて、始動用燃料貯留部からクランクケース内に始動用燃料を供給する始動用燃料供給流路と、前記始動用燃料供給流路の途中に設けられた流路開閉手段とを備え、前記始動用燃料供給流路は、クランクケース内と連通する位置に常に開口していることを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項2に係る2サイクルエンジンは、請求項1に記載の2サイクルエンジンにおいて、クランクケース内に混合気を送る吸気流路と、クランクケース内の圧力変動によって動作するとともに、前記吸気流路に供給される燃料を燃料タンクからキャブレタ内の燃料貯留部に送るポンプ部と、クランクケース内の圧力変動を前記ポンプ部に伝達する脈動伝達通路とを備え、前記キャブレタ内の燃料貯留部は、前記始動用燃料貯留部であり、前記脈動伝達通路は、前記始動用燃料供給流路の一部を兼ねていることを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項3に係る2サイクルエンジンは、請求項1に記載の2サイクルエンジンにおいて、クランクケース内に混合気を送る吸気流路と、クランクケース内の圧力変動によって動作するとともに、前記吸気流路に供給される燃料を燃料タンクからキャブレタ内の燃料貯留部に送るポンプ部と、クランクケース内の圧力変動を前記ポンプ部に伝達する脈動伝達通路とを備え、前記始動用燃料貯留部は、前記キャブレタ内の燃料貯留部であり、前記始動用燃料供給流路は、前記脈動伝達通路とは別に設けられていることを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項4に係る2サイクルエンジンは、請求項3に記載の2サイクルエンジンにおいて、前記始動用燃料供給流路は、前記キャブレタ側と前記クランクケース側とを連通させるチューブを含んで構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、始動用燃料供給流路は、下死点から上死点まで往復動するピストンの位置にかかわらず、クランクケース内と連通する位置に常に開口しているので、ピストンの動きが下死点から上昇に転じてクランクケース内に負圧が生じるのと同時に、クランクケース内に始動用燃料を供給する動作を開始させることができる。そのため、従来に比べて長い間クランクケース内に始動用燃料を供給することができ、シール性が良好とはいえない状態のためクランクケース内にかかる負圧が低くなる場合でも、始動するのに十分な燃料を供給できてエンジンの始動性を向上できる。
【0012】
そのうえ、吸気ポートが開かれるまでは、吸気流路内には負圧がかからず始動用燃料供給流路にのみ負圧がかかるので、始動用燃料供給流路にかかる負圧がより高くなり、始動用燃料供給流路からクランクケース内に確実に始動用燃料を供給できる。
また、流路径を小さくして始動用燃料供給流路を設けることにより、速い流速で、つまり、クランクケース内からの負圧に応答性よく始動用燃料を供給できる。
【0013】
請求項2の発明によれば、脈動伝達通路は、始動用燃料供給流路の一部を兼ねているので、専用の始動用燃料供給流路を別に設ける必要がなく構造を簡素化できて製造コストを抑えることができる。
【0014】
請求項3の発明によれば、始動用燃料供給流路は、脈動伝達通路とは別に設けられているので、設計の自由度が大きくなり、始動用燃料供給流路の流路径を、始動用燃料供給時の応答性および確実な供給を考慮した最適な流路径にできる。
【0015】
請求項4の発明によれば、始動用燃料供給流路が、キャブレタ側とクランクケース側とを連通させるチューブを含んで構成されているので、キャブレタ内に複雑な形状の燃料供給流路を設ける必要がなく、配管を取り付けるだけでよいので構造がより簡素化されて製作が容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の第1実施形態の2サイクルエンジン1の断面図である。
図1に示されるように、2サイクルエンジン1は、エンジン本体2と、エンジン本体2にインシュレータ3を介して取り付けられたキャブレタ4と、エンジン本体2に対してインシュレータ3とは反対側に取り付けられたマフラー5とを備えている。
【0017】
エンジン本体2は、シリンダ20と、シリンダ20の下側に設けられたクランクケース24と、クランクケース24に支持されたクランク軸25と、クランク軸25にコネクティングロッド26を介して連結されるとともに、ピストンリング270を備えてシリンダ20内に摺動自在に挿入されたピストン27とを含んで構成されている。シリンダ20内部には、ピストン27上部空間により燃焼室201が形成されている。
【0018】
シリンダ20には、シリンダ20内周面に吸気ポート210として開口して、かつ、吸気行程においてクランクケース24内に混合気を送るシリンダ吸気流路21が設けられており、本実施形態の混合気の吸気方式が、ピストン27外周面で吸気ポート210を開閉するピストンバルブ方式になっている。また、シリンダ20には、クランクケース24内に吸入された混合気を掃気行程において燃焼室201内に送って排気ガスを掃気する掃気流路28と、掃気される排気ガスをマフラー5に送る排気流路29とが設けられている。さらに、シリンダ吸気流路21の下方には、シリンダ20内周面に設けられた溝状部220に開口したシリンダ始動用燃料供給流路22が設けられている。
【0019】
このシリンダ始動用燃料供給流路22は、ピストン27が下死点側に位置する場合(図1の状態)には、溝状部220を介してクランクケース24内と連通し、ピストン27が上死点側に位置する場合には、シリンダ20内部のピストン27下部空間に開口することとなり、従ってやはりクランクケース24内と連通する。つまり、シリンダ始動用燃料供給流路22は、下死点から上死点の間を往復動するピストン27の位置にかかわらず、クランクケース24内と連通する位置に常に開口している。
【0020】
インシュレータ3は、エンジン本体2からキャブレタ4への伝熱を抑える合成樹脂性の部材であり、エンジン本体2のシリンダ吸気流路21と連通するインシュレータ吸気流路31と、インシュレータ吸気流路31の下方に位置してエンジン本体2のシリンダ始動用燃料供給流路22と連通するインシュレータ始動用燃料供給流路32と、インシュレータ始動用燃料供給流路32の上流側(図1中右側)から分岐して設けられたインシュレータ脈動伝達通路33とを備えている。ここで、図1中の脈動伝達通路300は、ピストン27の往復動に伴うクランクケース24内の圧力変動を、キャブレタ4内に設けられた後述するポンプ部7(図2)へ伝達する通路であるが、本実施形態では、脈動伝達通路300を構成するシリンダ脈動伝達通路23が、シリンダ始動用燃料供給流路22を兼ね、同様に脈動伝達通路300を構成するインシュレータ脈動伝達通路33が、インシュレータ始動用燃料供給流路32の分岐部分までを兼ねている。
【0021】
図2は、キャブレタ4の要部を拡大して示す断面図である。
キャブレタ4は、図1および図2に示されるように、外部側(図1中右)がベンチュリー形状とされて外部とインシュレータ吸気流路31とを連通するキャブレタ吸気流路41と、キャブレタ吸気流路41の下方に位置するとともに、インシュレータ始動用燃料供給流路32と燃料貯留部6とを連通するキャブレタ始動用燃料供給流路42と、インシュレータ脈動伝達通路33とポンプ部7とを連通するキャブレタ脈動伝達通路43とを備えている。
【0022】
ここで、本実施形態では、シリンダ吸気流路21、インシュレータ吸気流路31、およびキャブレタ吸気流路41から吸気流路100が形成され、シリンダ始動用燃料供給流路22(シリンダ脈動伝達通路23)、インシュレータ始動用燃料供給流路32(インシュレータ脈動伝達通路33が分岐部分までを兼ねている)、およびキャブレタ始動用燃料供給流路42から始動用燃料供給流路200が形成され、シリンダ脈動伝達通路23、インシュレータ脈動伝達通路33、およびキャブレタ脈動伝達通路43から脈動伝達通路300が形成されている。始動用燃料供給流路200は、流路径を吸気流路100の流路径より小さくされて設けられている。
【0023】
また、キャブレタ4は、図2に示されるように、吸気流路100に燃料を供給するための一般的な構成を備えており、インレットパイプ40およびキャブレタ4内の内部流路44を通して図示しない燃料タンクからの燃料が貯留される燃料貯留部6、クランクケース24内から脈動伝達通路300を通して伝達されたピストン27の往復動による圧力変動によって動作して燃料貯留部6に燃料を送るポンプ部7、貫通孔450を備えてスロットル操作により回動されるロータリーバルブ45、燃料貯留部6と連通するとともに先端部分に形成された開口部460から燃料を貫通孔450に供給するノズル46、および燃料がノズル46から引き出されると、内部流路44および燃料貯留部6を連通する連通孔47を開いて燃料を補給する貯留部用ニードルバルブ48等を備えている。吸気流路100に供給する燃料を貯留する燃料貯留部6は、本実施形態では、始動用燃料を貯留する始動用燃料貯留部600を兼ねている。
【0024】
このようなキャブレタ4には、始動用燃料供給流路200(キャブレタ始動用燃料供給流路42)を開閉するオートチョーク用の流路開閉手段としてソレノイドバルブ8が取り付けられている。ソレノイドバルブ8は、可動鉄心80と、これを図中の左方向に付勢するコイルばね81と、可動鉄心80の外周に設けられた円筒コイル82とを備えている。
始動用燃料供給流路200は、円筒コイル82が励磁されない状態では可動鉄心80により塞がれており、円筒コイル82が励磁されると、可動鉄心80がコイルばね81に抗して図中右方向に移動することにより開かれる。
【0025】
また、エンジン1は、オートチョークを構成するものとして、このソレノイドバルブ8の他、エンジン1の温度を検出する温度センサや、温度センサでの検出結果に基づいてソレノイドバルブ8を制御する制御部等を備えており、オートチョークは、エンジン1の温度が予め設定された所定温度以下の場合に作動するように制御されている。
【0026】
以上のエンジン1は、始動時において、オートチョークが効いている状態では、円筒コイル82が励磁状態となってソレノイドバルブ8は開いており、ピストン27の動きが下死点から上昇に転じてクランクケース24内の負圧が生じ始めると、燃料貯留部6とクランクケース24内とを連通する始動用燃料供給流路200に負圧が作用し、クランクケース24内に始動用燃料が引き出される。
そして、ピストン27が上死点側へ移動する途中において吸気ポート210が開かれ、吸気流路100内にもクランクケース24内からの負圧がかかると、燃料貯留部6に連通するノズル46から燃料が吸気流路100に引き出される。そして、クランクケース24内に、吸気流路100から燃料および混合気の元となる空気が吸入され、それらが前述した始動用燃料と混合するので、クランクケース24内に燃料過濃とされた混合気が供給される。
【0027】
ここで、本実施形態のエンジン1では、始動用燃料供給流路200が、ピストン27が下死点側に位置する場合には溝状部220を介してクランクケース24内と連通し、ピストン27が上死点側に位置する場合には、シリンダ20内部のピストン27下部空間を介してクランクケース24内と連通する。つまり、始動用燃料供給流路200が、クランクケース24内と連通する位置に常に開口しているので、ピストン27の動きが下死点から上昇に転じてクランクケース24内に負圧が生じるのと同時に、クランクケース24内に始動用燃料を供給する動作を開始させることができる。すなわち、ピストン27が上昇する途中で吸気ポート210が開かれてから上死点に達するまでのごくわずかな時間しかクランクケース24内に始動用燃料を供給することができなかった従来に比べて、本実施形態のエンジン1では、比較的長い時間クランクケース24内に始動用燃料を供給することができるので、シール性が良好とはいえない状態のためクランクケース24内にかかる負圧が低くくなる場合でも、始動するのに十分な燃料を供給できてエンジン1の始動性を向上させることができる。
【0028】
そのうえ、ピストン27の上昇の途中で吸気ポート210が開かれるまでは、吸気流路100内には負圧がかからず始動用燃料供給流路200にのみ負圧がかかるので、始動用燃料供給流路200にかかる負圧がより高くなり、始動用燃料供給流路200からクランクケース24内に確実に始動用燃料を供給できる。
また、始動用燃料供給流路200は、流路径を小さくされて設けられているので、速い流速で、つまり、クランクケース24内からの負圧に応答性よく始動用燃料を供給できる。
【0029】
なお、エンジン1が始動した後にはオートチョークは解除されるので、ソレノイドバルブ8は閉じた状態となり、ピストン27往復動によるクランクケース24内の圧力変動は、脈動伝達通路300を通してポンプ部7に伝達され、ポンプ部7を動作させる。ここで、脈動伝達通路300が、始動用燃料供給流路200(シリンダ始動用燃料供給流路22、および分岐部分までのインシュレータ始動用燃料供給流路32)を兼ねているので、専用の始動用燃料供給流路200を別に設ける必要がなく構造を簡素化できて製造コストを抑えることができる。
【0030】
〔第2実施形態〕
図3は、本発明の第2実施形態に係る2サイクルエンジン1の断面図である。なお、本実施形態以降においては、第1実施形態と同一部材および同一機能部位には同一符号を付し、それらの説明を省略または簡略化する。
本実施形態では、図3に示されるように、第1実施形態とは異なり、始動用燃料供給流路200が、脈動伝達通路300とは別に設けられた点が特徴である。なお、本実施形態のエンジン1も、第1実施形態と同様に、オートチョークを構成するソレノイドバルブ8、温度センサ、および制御部等を備えている。
【0031】
始動用燃料供給流路200は、クランクケース内24に設けられてクランクケース24内に直接開口するクランクケース始動用燃料供給流路242と、インシュレータ脈動伝達通路33とは別に設けられてクランクケース始動用燃料供給流路242と連通するインシュレータ始動用燃料供給流路32と、インシュレータ始動用燃料供給流路32と連通するキャブレタ始動用燃料供給流路42とから構成されている。また、始動用燃料供給流路200は、クランクケース24内と連通する位置に常に開口して燃料貯留部6とクランクケース24内とを連通している。そして、始動用燃料供給流路200は、流路径を脈動伝達通路300の流路径より小さくされて設けられている。脈動伝達通路300は前記実施形態と等しい通路となっており、クランクケース24内とポンプ部7とを連通している。
【0032】
このような本実施形態でも、始動用燃料供給流路200がクランクケース24内と常に連通する位置に開口して燃料貯留部6とクランクケース24内とを連通しているので、前述した第1実施形態と同様な効果を得ることができる。そのうえ、始動用燃料供給流路200を、脈動伝達通路300を兼ねた部分を含まず別に設けたので、始動用燃料供給流路200のうち脈動伝達通路300を兼ねた部分の流路径を、脈動伝達を考慮した大きさにしなければならなかった第1実施形態と比べて、始動用燃料供給流路200の設計の自由度を大きくでき、始動用燃料供給時の応答性および確実な供給を考慮した最適な流路径にできる。
【0033】
〔第3実施形態〕
図4は、本発明の第3実施形態に係る2サイクルエンジン1の断面図である。
本実施形態のエンジン1は、始動用燃料供給流路200が、キャブレタ4側とクランクケース24側とを連通させるチューブ303を含んで構成されている点が特徴である。なお、始動用燃料供給流路200は、前述した第2実施形態と同様に、最適な大きさの流路径にされている。
このような本実施形態でも、始動用燃料供給流路200がクランクケース24内と常に連通する位置に開口して燃料貯留部6とクランクケース24内とを連通するとともに、最適な大きさの流路径にされているので、前述した第1,第2実施形態と同様の効果を得ることができる。また、キャブレタ4内に複雑な形状のキャブレタ始動用燃料供給流路42を設ける必要がなく、エンジン1にチューブ303を取り付けるだけでよいので、構造がより簡素化されて製作が容易になる。
【0034】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
例えば、キャブレタ4内に設けられて吸気流路100に供給される燃料が貯留される燃料貯留部6は、始動用の燃料を貯留する始動用燃料貯留部600を兼ねる必要はなく、始動用燃料貯留部600は、キャブレタ4外に備えられた専用の部品内に設けられていてもよい。つまり、始動用燃料供給流路200が、下死点から上死点まで往復動するピストン27の位置にかかわらず、クランクケース24内と連通する位置に常に開口し、始動用燃料貯留部600とクランクケース24内とを連通するように設けられるとともに、始動用燃料供給流路200の途中に流路開閉手段が設けられているならばよい。
また、前記実施形態では、流路開閉手段としてソレノイドバルブ8を採用していたが、その他、圧電モータ等を利用したアクチュエータを流路開閉手段として用いてもよく、本発明の流路開閉手段としては任意の構造のものを採用できる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、吸気方式がピストンバルブ方式でオートチョークを備えた2サイクルエンジンに有効に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第1実施形態に係る2サイクルエンジンの断面図。
【図2】キャブレタの要部を拡大して示す断面図。
【図3】本発明の第2実施形態に係る2サイクルエンジンの断面図。
【図4】本発明の第3実施形態に係る2サイクルエンジンの断面図。
【符号の説明】
【0037】
1…2サイクルエンジン、4…キャブレタ、6…燃料貯留部、7…ポンプ部、8…ソレノイドバルブ(流路開閉手段)、24…クランクケース、100…吸気流路、200…始動用燃料供給流路、300…脈動伝達通路、303…チューブ、600…始動用燃料貯留部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2サイクルエンジンにおいて、
始動用燃料貯留部からクランクケース内に始動用燃料を供給する始動用燃料供給流路と、
前記始動用燃料供給流路の途中に設けられた流路開閉手段とを備え、
前記始動用燃料供給流路は、クランクケース内と連通する位置に常に開口している
ことを特徴とする2サイクルエンジン。
【請求項2】
請求項1に記載の2サイクルエンジンにおいて、
クランクケース内に混合気を送る吸気流路と、
クランクケース内の圧力変動によって動作するとともに、前記吸気流路に供給される燃料を燃料タンクからキャブレタ内の燃料貯留部に送るポンプ部と、
クランクケース内の圧力変動を前記ポンプ部に伝達する脈動伝達通路とを備え、
前記キャブレタ内の燃料貯留部は、前記始動用燃料貯留部であり、
前記脈動伝達通路は、前記始動用燃料供給流路の一部を兼ねている
ことを特徴とする2サイクルエンジン。
【請求項3】
請求項1に記載の2サイクルエンジンにおいて、
クランクケース内に混合気を送る吸気流路と、
クランクケース内の圧力変動によって動作するとともに、前記吸気流路に供給される燃料を燃料タンクからキャブレタ内の燃料貯留部に送るポンプ部と、
クランクケース内の圧力変動を前記ポンプ部に伝達する脈動伝達通路とを備え、
前記始動用燃料貯留部は、前記キャブレタ内の燃料貯留部であり、
前記始動用燃料供給流路は、前記脈動伝達通路とは別に設けられている
ことを特徴とする2サイクルエンジン。
【請求項4】
請求項3に記載の2サイクルエンジンにおいて、
前記始動用燃料供給流路は、前記キャブレタ側と前記クランクケース側とを連通させるチューブを含んで構成されている
ことを特徴とする2サイクルエンジン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−239545(P2007−239545A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−61312(P2006−61312)
【出願日】平成18年3月7日(2006.3.7)
【出願人】(000184632)小松ゼノア株式会社 (60)
【Fターム(参考)】