説明

2剤型酸化染毛剤の第1剤に使用される香料、およびその香料を含有する2剤型酸化染毛剤の第1剤

【課題】 主成分の染料中間体とともに、レゾルシン、メタアミノフェノール、5−アミノオルトクレゾール、5−(2−ヒドロキシエチルアミノ)−2−メチルフェノール、ピロガロール、没食子酸、4−ニトロオルトフェニレンジアミン、2−ニトロパラフェニレンジアミンまたはそれらの塩の少なくとも一種が配合されている2剤型酸化染毛剤の第1剤に使用する場合に、時間経過が伴っても、上記化合物の安定状態を保持しつつ配合可能な香料を提供することである。
【解決手段】 2,6,6−トリメチルシクロヘキシル−3−ヘキサノール、2,6−ジメチルヘプタノール、4−イソプロピルヘプタノール、4−メチル−3−デセン−5−オール、2−エチル−4−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−2−ブテン−1−オール等の香料群から選ばれる少なくとも1種の香料を80質量%以上含有することを特徴とする2剤型酸化染毛剤の第1剤用香料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化染料を主成分とする第1剤と酸化剤を主成分とする第2剤とから構成される2剤型酸化染毛剤の第1剤に使用される香料に関し、第1剤中に配合されている特定のカップラーや直接染料の安定状態を保持しつつ配合可能な香料に関する。
また、本発明は、特定のカップラーや直接染料の含有量の経時的変化が極めて少ない、上記香料を特定量含有する2剤型酸化染毛剤の第1剤に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、白髪染めをはじめとする染毛剤としては、いわゆる酸化染毛剤(oxidation hairdye)が広く使用されて主流となっている。かかる酸化染毛剤は、酸化染料に酸化剤を作用させて酸化重合をさせるために2剤型式を採用し、主成分の酸化染料(染料中間体、カップラー)、直接染料、アルカリ剤、界面活性剤および香料等を含む第1剤と、過酸化水素等の酸化剤を主成分として含む第2剤とから構成されている。
2剤反応型のこのタイプの染毛剤は無色の低分子の染料中間体およびカップラーを毛髪中に浸透させ、毛髪中で酸化重合を行なわせることにより色素を生成させ毛髪を染着するものである。
【0003】
酸化染料は、自身の酸化により発色する染料中間体と、この染料との組み合せにより種々の色調となるカップラーとに分けられ、これらの組み合せにより幅広い色調が得られる。染料中間体としては、パラフェニレンジアミン、パラトルイレンジアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−パラフェニレンジアミン、N−フェニル−パラフェニレンジアミン、4,4'−ジアミノジフェニルアミン、2−クロロパラフェニレンジアミン、N,N−ジメチルパラフェニレンジアミン、パラアミノフェノール、オルトアミノフェノール、パラメチルアミノフェノール、オルトトルイレンジアミン、2,6−ジクロロパラフェニレンジアミン、2−(β−ヒドロキシエチル)−パラフェニレンジアミン、ジフェニルアミン、パラアミノフェニルスルファミン酸またはそれらの塩類等が使用されている。また、カップラーとしては、ポリヒドロキシフェノール系、アミノフェノール系、およびジアミン系等に大別されるが、例えば、レゾルシン、ピロガロール、カテコール、メタアミノフェノール、メタフェニレンジアミン、2,4−ジアミノフェノール、1,2,4−ベンゼントリオール、メタトルイレンジアミン、ハイドロキノン、α−ナフトール、2,6−ジアミノピリジン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、5−アミノオルトクレゾール、フロログルシン、2,4−ジアミノフェノキシエタノール、没食子酸、タンニン酸、没食子酸エチル、没食子酸メチル、没食子酸プロピル、五倍子、1−メトキシ−2−アミノ−4−(2−ヒドロキシエチル)アミノベンゼン、5−(2−ヒドロキシエチルアミノ)−2−メチルフェノールまたはそれらの塩類等が使用されている。
【0004】
さらに、染料中間体及びカップラー以外の染料として、染め上がりを向上させる目的で直接染料が配合される場合がある。直接染料としては、例えば、4−ニトロメタフェニレンジアミン、4−ニトロオルトフェニレンジアミン、2−ニトロパラフェニレンジアミン、ピクラミン酸、1−アミノ−4−メチルアントラキノン、1,4−ジアミノアントラキノン、2−アミノ−4−ニトロフェノール、2−アミノ−5−ニトロフェノールまたはそれらの塩等が使用されている。
【0005】
2剤型酸化染毛剤は、ユーザーの嗜好に応じた種々の色調に毛髪を染色することができ、しかも、その染毛力も優れているので非常に便利であり、業務用のみならず家庭用に広く普及している。そのため、市場から常に高度の品質保持が要求されている。
【0006】
酸化染毛剤の品質保持という点では、染料や香料の安定性も重要な要因となってくるが、酸化染毛剤中の香料や染料の安定性を短期間で評価するためは、しばしば40℃や50℃といった加速条件での評価が行われている。
染料の酸化を防ぐためには、酸化防止剤としてアスコルビン酸、亜硫酸塩などが用いられている(特許文献1参照)。また、香料の安定化については、酸化的条件下で安定な香料を選択することが提案されている(特許文献2参照)。
しかし、試作品の中には、加速試験をした保存品が商品設計時に設定した色に染まらない、あるいは色調が変化するという問題が起きることがあった。
本発明者らは、この問題点を調査したところ、酸化染毛剤第1剤中の特定のカップラーや直接染料(以下、「カップラー等」という)の含有量が変化し、そのため設定した色に染まらない、あるいは色調に変化があることが突き止められた。すなわち、カップラー等の中には何らかの要因で製造後に経時的な化学的影響を受けて、含有量が変化しているものと推測された。
【0007】
さらに、この問題を調査したところ、基剤の成分や安定剤、香料などが原因であると予測された。特に、香料を配合した場合にカップラー等の含有量の経時的変化に影響を与えていることが分かり、ある種の香料がカップラー等に何らかの化学変化をもたらし、その結果、含有量の変化を引き起こすものと推測された。しかし、染毛剤に適用される香料は極めて種類が多く、また化学構造や作用も千差万別なので、正確な原因およびこのような悪影響をもたらす香料の具体的種類は未だ解明されていなかった。
そのため、複数の香料組成の中から実験的に安定な組成のものを選択する(すなわち個々の香料成分に対する検討は行われていなかった)、あるいは他の安定剤を配合するなどの対策がとられていたが、未だ対策としては確実なものではなかった。
【特許文献1】特開2002−201117号公報
【特許文献2】特開平10−231234号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、レゾルシン、メタアミノフェノール、5−アミノオルトクレゾール、5−(2−ヒドロキシエチルアミノ)−2−メチルフェノール、ピロガロール、没食子酸、4−ニトロオルトフェニレンジアミン、2−ニトロパラフェニレンジアミンまたはそれらの塩の少なくとも1種がカップラー等として配合されている2剤型酸化染毛剤の第1剤に使用する場合に、時間経過が伴っても、上記カップラー等の安定性を保持しつつ配合可能な香料を提供することである。
また、当該香料を適当量含有する2剤型酸化染毛剤の第1剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記従来技術における問題点を解決すべく鋭意研究した結果、きわめて選択された特定の香料成分又はそれらの組み合せを行うことにより、その香料を酸化染毛剤第1剤に使用しても、時間の経過とともに染毛剤中のカップラー等の安定性保持に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
なお、本発明において「香料」とは、いわゆる単品の香料および単品の香料を複数用いて調合された香料組成物の双方をまとめて意味する。
【0010】
すなわち、本発明は、主成分の染料中間体とともに、レゾルシン、メタアミノフェノール、5−アミノオルトクレゾール、5−(2−ヒドロキシエチルアミノ)−2−メチルフェノール、ピロガロール、没食子酸、4−ニトロオルトフェニレンジアミン、2−ニトロパラフェニレンジアミンまたはそれらの塩の少なくとも1種が配合されてなる2剤型酸化染毛剤の第1剤に使用される、下記の香料群より選ばれた少なくとも1種を80質量%以上含有することを特徴とする香料である。
【0011】
香料群:
2,6,6−トリメチルシクロヘキシル−3−ヘキサノール、
2,6−ジメチルヘプタノール、
4−イソプロピルヘプタノール、
4−メチル−3−デセン−5−オール、
2−エチル−4−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−2−ブテン−1−オール、
ベンジルアルコール、
シンナミックアルコール、
シス−3−ヘキセン−1−オール、
シトロネロール、
ジヒドロミルセノール、
【0012】
ジプロピレングリコール、
エチルリナロール、
イソボルニルシクロヘキサノール、
メントール、
ネロール、
β−フェニルエチルアルコール、
2−メチル−4−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−2−ブテン−1−オール、
テルピネオール、
テトラヒドロリナロール、
アリルアミルグリコレート、
【0013】
アリルシクロヘキシルプロピオネート、
アリルヘプタノエート、
ベンジルアセテート、
ベンジルベンゾエート、
セドレニルアセテート、
シス−3−ヘキセニルアセテート、
シス−3−ヘキセニルサリシレート、
シトロネリルアセテート、
ジメチルベンジルカルビニルアセテート、
エチル−2−メチルブチレート、
【0014】
エチル−2−メチルバレレート、
エチルブチレート、
ゲラニルアセテート、
ヘキシルアセテート、
ヘキシルサリシレート、
イソボルニルアセテート、
メチルアンスラニレート、
メチルシンナメート、
メチルジヒドロジャスモネート、
ノピルアセテート、
【0015】
オルト−tert−ブチルシクロヘキシルアセテート、
フェニルエチルイソブチレート、
パラ−tert−ブチルシクロヘキシルアセテート、
テルピニルアセテート、
トリシクロデセニルアセテート、
トリシクロデセニルプロピオネート、
セドレニルメチルエーテル、
ジフェニルオキサイド、
ユゲノール、
メチルチャビコール、
【0016】
メチルイソユゲノール、
アセトフェノン、
セドリルメチルケトン、
α−ダマスコン、
β−ダマスコン、
パラヒドロキシフェニルブタノン、
α−ヨノン、
β−ヨノン、
7−アセチル−1,2,3,4,5,6,7,8−オクタヒドロ−1,1,6,7−テトラメチル−ナフタレン、
メチルヨノン、
【0017】
メチレンテトラメチルヘプタノン、
1,1−ジメトキシ−2,2,5−トリメチル−4−ヘキセン、
アセトアルデヒド−2−フェニル−2,4−ペンタンジオールアセタール、
クマリン、
γ−デカラクトン、
γ−ノナラクトン、
γ−ウンデカラクトン、
シクロペンタデカノライド、
エチレンブラシレート、
エチレンドデカンジオエート、
【0018】
シトロネリルニトリル、
ローズオキサイド、
5−メチル−3−ヘプタノンオキシム、
1,3,4,6,7,8−ヘキサヒドロ−4,6,6,7,8,8−ヘキサメチルシクロペンタ−γ−2−ベンゾピラン、
6−アセチル−1,1,2,4,4,7−ヘキサメチルテトラヒドロナフタレン。
【0019】
また、本発明は、上記香料を0.01〜5質量%含有することを特徴とする2剤型酸化染毛剤の第1剤である。
そして、香料の好適な含有量は、0.01〜3質量%である。0.01質量%未満ではアルカリ剤および基剤の十分なマスキング効果が得られなくなり、5質量%を超過するとマスキング性の飛躍的な向上が期待できず、更には香りが強すぎるために嗜好性の低下、製品の乳化安定性の低下やコスト高の懸念となり、好ましくない。
【発明の効果】
【0020】
本発明の香料を使用することにより、時間が経過しても酸化染毛剤の第1剤中に配合されたレゾルシン、メタアミノフェノール、5−アミノオルトクレゾール、5−(2−ヒドロキシエチルアミノ)−2−メチルフェノール、ピロガロール、没食子酸、4−ニトロオルトフェニレンジアミン、2−ニトロパラフェニレンジアミンまたはそれらの塩の含有量に関して、経時的変化が極めて少ない酸化染毛剤第1剤を提供することができる。その結果、ユーザーは購入した染毛剤の期待どおりの色に毛髪を染色することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下の試験を行なって、一般に使用されている多種多様の香料から、前記の特定のカップラーまたは直接染料が配合されている2剤型酸化染毛剤の第1剤に特に適したものを選出した。
〔試験例1〕染毛剤中の香料単品に対するレゾルシンの安定性試験
一般に広く使用されている92種類の香料の各々を配合した酸化染毛剤第1剤の試料92種を、下記の処方のとおり常法により調製し、各試料を30mlずつガラス瓶に入れ50℃の恒温槽に保管した。
【0022】
【表1】

【0023】
4週間後に試料を恒温槽から取り出して室温に戻し、試料中のレゾルシン安定性を染布試験によって評価した。染布試験は、製品の染毛性能を簡易に評価する試験法で、保存した酸化染毛剤第1剤サンプルと過酸化水素水(過酸化水素濃度5.0%)を1:1の比率で混合した染色液に試験用白布(JIS L0803、染色堅ろう度試験用添付白布、羊毛)を浸漬し、30℃で20分間放置する。その後、よく水洗、乾燥させて白布の染色状態(色調や色の濃淡)を観察するものであり、染料等の含有量に変化があれば、染色状態の差異として確認ができ、評価できるものである。また、染毛剤の実使用に近い条件で評価をするため、製品の使用評価との相関性が高いものである。
【0024】
染色状態は、経験のある専門パネラー10名が、目視による官能評価を行い、次の3段階で評価した。なお、比較対照品は、香料を一切添加しない香料無賦香品(以下、「香料無賦香品」という)の染色布を用いた。また、総合結果は、10名の評価を取りまとめ、最も多い評価結果を用いた。
評価○:染色状態にほとんど差はなく、問題ない。
評価△:染色状態に若干の差があり、色調によっては問題になることもある。
評価×:染色状態に差があり、問題がある。
【0025】
結果は以下のとおりであった。
(I)香料を一切添加しない香料無賦香品と比較して、下記のNo.01〜No.75の75種類は、染色状態にほとんど差がなく、評価は「○」であった。
この染色状態であれば、ほぼ問題なく染色可能なので、これらの香料は前記カップラー類を含有する2剤型酸化染毛剤の第1剤に使用する香料として好適である。
【0026】
01)2,6,6−トリメチルシクロヘキシル−3−ヘキサノール
02)2,6−ジメチルヘプタノール
03)4−イソプロピルヘプタノール
04)4−メチル−3−デセン−5−オール
05)2−エチル−4−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−2−ブテン−1−オール
06)ベンジルアルコール
07)シンナミックアルコール
08)シス−3−ヘキセン−1−オール
09)シトロネロール
10)ジヒドロミルセノール
【0027】
11)ジプロピレングリコール
12)エチルリナロール
13)イソボルニルシクロヘキサノール
14)メントール
15)ネロール
16)β−フェニルエチルアルコール
17)2−メチル−4−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−2−ブテン−1−オール
18)テルピネオール
19)テトラヒドロリナロール
20)アリルアミルグリコレート
【0028】
21)アリルシクロヘキシルプロピオネート
22)アリルヘプタノエート
23)ベンジルアセテート
24)ベンジルベンゾエート
25)セドレニルアセテート
26)シス−3−ヘキセニルアセテート
27)シス−3−ヘキセニルサリシレート
28)シトロネリルアセテート
29)ジメチルベンジルカルビニルアセテート
30)エチル−2−メチルブチレート
【0029】
31)エチル−2−メチルバレレート
32)エチルブチレート
33)ゲラニルアセテート
34)ヘキシルアセテート
35)ヘキシルサリシレート
36)イソボルニルアセテート
37)メチルアンスラニレート
38)メチルシンナメート
39)メチルジヒドロジャスモネート
40)ノピルアセテート
【0030】
41)オルト−tert−ブチルシクロヘキシルアセテート
42)フェニルエチルイソブチレート
43)パラ−tert−ブチルシクロヘキシルアセテート
44)テルピニルアセテート
45)トリシクロデセニルアセテート
46)トリシクロデセニルプロピオネート
47)セドレニルメチルエーテル
48)ジフェニルオキサイド
49)ユゲノール
50)メチルチャビコール
【0031】
51)メチルイソユゲノール
52)アセトフェノン
53)セドリルメチルケトン
54)α−ダマスコン
55)β−ダマスコン
56)パラヒドロキシフェニルブタノン
57)α−ヨノン
58)β−ヨノン
59)7−アセチル−1,2,3,4,5,6,7,8−オクタヒドロ−1,1,6,7−テトラメチル−ナフタレン
60)メチルヨノン
【0032】
61)メチレンテトラメチルヘプタノン
62)1,1−ジメトキシ−2,2,5−トリメチル−4−ヘキセン
63)アセトアルデヒド−2−フェニル−2,4−ペンタンジオールアセタール
64)クマリン
65)γ−デカラクトン
66)γ−ノナラクトン
67)γ−ウンデカラクトン
68)シクロペンタデカノライド
69)エチレンブラシレート
70)エチレンドデカンジオエート
【0033】
71)シトロネリルニトリル
72)ローズオキサイド
73)5−メチル−3−ヘプタノンオキシム
74)1,3,4,6,7,8−ヘキサヒドロ−4,6,6,7,8,8−ヘキサメチルシクロペンタ−γ−2−ベンゾピラン
75)6−アセチル−1,1,2,4,4,7−ヘキサメチルテトラヒドロナフタレン
【0034】
(II)香料無賦香品と比較して、染色状態に若干の差があり、問題になることもあると判断した香料は、以下のNo.76〜No.78の3種であった。これらの香料は、カップラーや染料中間体の組み合せによっては、問題になることが予想されたため、カップラー類を含有する2剤型酸化染毛剤の第1剤に使用する香料としては好適ではない。
76)アミルシンナミックアルデヒド
77)パラエチルジメチルヒドロシンナミックアルデヒド
78)ヘキシルシンナミックアルデヒド
【0035】
(III)香料無賦香品と比較して、染色状態に差があり、問題があると判断した香料は、以下No.79〜No.92の14種であった。これらの香料は前記カップラー類を含有する2剤型酸化染毛剤の第1剤に使用する香料としては適していない。
79)3−(パラ−tert−ブチルフェニル)−プロパナール
80)オクタナール
81)デカナール
82)10−ウンデセン−1−アール
83)シンナミックアルデヒド
84)アニスアルデヒド
85)ベンズアルデヒド
86)シトラール
87)サイクラメンアルデヒド
88)メチル−3,4−メチレンジオキシヒドロシンナミックアルデヒド
【0036】
89)ピペロナール
90)ジメチルテトラヒドロベンズアルデヒド
91)リリーアルデヒド
92)4(3)−(4−ヒドロキシ−4−メチルペンチル)−3−シクロヘキセン−1−カルボキシアルデヒド
【0037】
上記の試験結果より、75種の香料(上記(I)のNo.1〜No.75)は、時間が経過しても染毛剤第1剤中のレゾルシンの安定性保持に優れるので、2剤型染毛剤の第1剤用香料として適していることが明らかとなった。
これに対して、17種の香料(上記(II)、(III)のNo.76〜No.92)は、時間の経過と共に、染毛剤第1剤中のレゾルシン含有量が変化しているので、2剤型染毛剤の第1剤用香料として適していないことが明らかとなった。
【実施例】
【0038】
以下に実施例をあげて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<1> 香料の調製
〔実施例K1〜K5〕
前記(I)群の香料群から香料を選択して、以下のとおり「香料A」〜「香料E」を常法により調製した。
【0039】
【表2】

【0040】
【表3】

【0041】
【表4】

【0042】
【表5】

【0043】
【表6】

【0044】
〔実施例K6〜K15、比較例K1〜K10〕
次いで、上記の香料A〜Eに、酸化染毛剤第1剤用の香料として適していないものとして前記(III)群に分類された香料群の1つであるベンズアルデヒドを下記の配合量で添加して20種のベンズアルデヒド含有香料を常法により調製した。
【0045】
【表7】

【0046】
<2> 染毛剤の調製
〔実施例S1〕
前記実施例K1で得られた「香料A」を配合した染毛剤第1剤を下記の処方にて常法により調製した。
【0047】
【表8】

【0048】
上記実施例S1の酸化染毛剤第1剤において「香料A」に代えて、同量の実施例K2〜K15で調製された香料をそれぞれ配合した酸化染毛剤第1剤を実施例S2〜S15のとおり調製した。
【0049】
【表9】

【0050】
前記実施例S1の酸化染毛剤第1剤において「香料A」に代えて、同量の比較例K1〜K10で調製された香料をそれぞれ配合した酸化染毛剤第1剤を比較例S1〜S10のとおり調製した。
【0051】
【表10】

【0052】
〔試験例2〕酸化染毛剤第1剤中の香料に対するレゾルシンの安定性試験
実施例S1〜S15で調製された酸化染毛剤第1剤、および比較例S1〜S10で調製された酸化染毛剤第1剤をそれぞれ30mlずつガラス瓶に入れ50℃の恒温槽に保管した。
これを4週間後に恒温槽から取り出して室温に戻し、染布試験にてレゾルシン安定性を評価した。なお、試験方法・条件は前記「試験例1」と同様である。
結果は以下のとおりであった。
【0053】
(I)香料無賦香品と比較してレゾルシン安定性の評価が「○」である酸化染毛剤第1剤は、実施例S1〜S15で調製された酸化染毛剤第1剤の15種であった。これらは、香料A、B、C、D、E、A/BA10、A/BA20、B/BA10、B/BA20、C/BA10、C/BA20、D/BA10、D/BA20、E/BA10、E/BA20のいずれかを配合した酸化染毛剤第1剤である。
【0054】
(II)香料無賦香品と比較してレゾルシン安定性の評価が「△」である酸化染毛剤第1剤は、比較例S1、比較例S3、比較例S5、比較例S7、比較例S9で調製された5種であった。これらは、香料A/BA25、B/BA25、C/BA25、D/BA25、E/BA25のいずれかを配合した酸化染毛剤第1剤である。
【0055】
(III)香料無賦香品と比較してレゾルシン安定性の評価が「×」である酸化染毛剤第1剤は、比較例S2、比較例S4、比較例S6、比較例S8、比較例S10で調製された5種であった。これらは、香料A/BA30、B/BA30、C/BA30、D/BA30、E/BA30のいずれかを配合した酸化染毛剤第1剤である。
以上からして、前記No.01〜No.75の(I)群に分類された香料を80質量%以上含有する香料を使用すれば、レゾルシンの安定性保持に優れ、カップラーとしてレゾルシンを含有する酸化染毛剤第1剤に問題なく適用できることが判明した。
【0056】
〔実施例S16〕
実施例K1で調製された「香料A」を配合した下記の処方の酸化染毛剤第1剤を調製した。この酸化染毛剤第1剤の処方は、実施例S1の酸化染毛剤第1剤中のレゾルシンに代えて同量のメタアミノフェノールを配合したものである。
【0057】
【表11】

【0058】
上記実施例S16の酸化染毛剤第1剤において「香料A」に代えて、同量の実施例K2〜K15で調製された香料をそれぞれ配合した酸化染毛剤第1剤を実施例S17〜S30のとおり調製した。
【0059】
【表12】

【0060】
前記実施例S16の酸化染毛剤第1剤において「香料A」に代えて、同量の比較例K1〜K10で調製された香料をそれぞれ配合した酸化染毛剤第1剤を比較例S11〜S20のとおり調製した。
【0061】
【表13】

【0062】
〔試験例3〕酸化染毛剤第1剤中の香料に対するメタアミノフェノールの安定性試験
実施例S16〜S30で調製された酸化染毛剤第1剤、および比較例S11〜S20で調製された酸化染毛剤第1剤をそれぞれ30mlずつガラス瓶に入れ50℃の恒温槽に保管した。
これを4週間後に恒温槽から取り出して室温に戻し、染布試験にてメタアミノフェノールの安定性を評価した。なお、染布条件は前記「試験例1」と同様である。
結果は以下のとおりであった。
【0063】
(I)香料無賦香品と比較してメタアミノフェノールの安定性評価が「○」である酸化染毛剤第1剤は、実施例S16〜S30で調製された酸化染毛剤第1剤の15種であった。これらは、香料A、B、C、D、E、A/BA10、A/BA20、B/BA10、B/BA20、C/BA10、C/BA20、D/BA10、D/BA20、E/BA10、E/BA20のいずれかを配合した酸化染毛剤第1剤である。
【0064】
(II)香料無賦香品と比較してメタアミノフェノールの安定性評価が「△」である酸化染毛剤第1剤は、比較例S11、比較例S13、比較例S15、比較例S17、比較例S19で調製された5種であった。これらは、香料A/BA25、B/BA25、C/BA25、D/BA25、E/BA25のいずれかを配合した酸化染毛剤第1剤である。
【0065】
(III)香料無賦香品と比較してメタアミノフェノールの安定性評価が「×」である酸化染毛剤第1剤は、比較例S12、比較例S14、比較例S16、比較例S18、比較例S20で調製された5種であった。これらは、香料A/BA30、B/BA30、C/BA30、D/BA30、E/BA30のいずれかを配合した酸化染毛剤第1剤である。
以上からして、前記No.01〜No.75の(I)群に分類された香料を80質量%以上含有する香料であればメタアミノフェノールの安定性保持に優れ、カップラーとしてメタアミノフェノールを含有する酸化染毛剤第1剤に問題なく適用できることが判明した。
【0066】
〔実施例S31〕
「香料A」を配合した下記の処方の染毛剤第1剤を調製した。この酸化染毛剤第1剤は、実施例S1の酸化染毛剤第1剤のレゾルシンに代えて同量の4−ニトロオルトフェニレンジアミンを配合したものである。
【0067】
【表14】

【0068】
上記実施例S31の酸化染毛剤第1剤において「香料A」に代えて、同量の実施例K2〜K15で調製された香料をそれぞれ配合した酸化染毛剤第1剤を実施例S32〜S45のとおり調製した。
【0069】
【表15】

【0070】
前記実施例S31の酸化染毛剤第1剤において「香料A」に代えて、同量の比較例K1〜K10で調製された香料をそれぞれ配合した酸化染毛剤第1剤を比較例S21〜S30のとおり調製した。
【0071】
【表16】

【0072】
〔試験例4〕染毛剤中の香料に対する4−ニトロオルトフェニレンジアミンの安定性試験
実施例S31〜S45で調製された酸化染毛剤第1剤、および比較例S21〜S30で調製された酸化染毛剤第1剤をそれぞれ30mlずつガラス瓶に入れ50℃の恒温槽に保管した。
これを4週間後に恒温槽から取り出して室温に戻し、染布試験にて4−ニトロオルトフェニレンジアミンの安定性を評価した。なお、染布条件は前記「試験例1」と同様である。
結果は以下のとおりであった。
【0073】
(I)香料無賦香品と比較して4−ニトロオルトフェニレンジアミンの安定性評価が「○」である酸化染毛剤第1剤は、実施例S31〜S45で調製された酸化染毛剤第1剤の15種であった。これらは、香料A、B、C、D、E、A/BA10、A/BA20、B/BA10、B/BA20、C/BA10、C/BA20、D/BA10、D/BA20、E/BA10、E/BA20のいずれかを配合した酸化染毛剤第1剤である。
【0074】
(II)香料無賦香品と比較して4−ニトロオルトフェニレンジアミンの安定性評価が「△」である酸化染毛剤第1剤は、比較例S21、比較例S23、比較例S25、比較例S27、比較例S29で調製された5種であった。これらは、香料A/BA25、B/BA25、C/BA25、D/BA25、E/BA25のいずれかを配合した酸化染毛剤第1剤である。
【0075】
(III)香料無賦香品と比較して4−ニトロオルトフェニレンジアミンの安定性評価が「×」である酸化染毛剤第1剤は、比較例S22、比較例S24、比較例S26、比較例S28、比較例S30で調製された5種であった。これらは、香料A/BA30、B/BA30、C/BA30、D/BA30、E/BA30のいずれかを配合した酸化染毛剤第1剤である。
以上からして、前記No.01〜No.75の(I)群に分類された香料を80質量%以上含有する香料であれば4−ニトロオルトフェニレンジアミンの安定性保持に優れ、直接染料として4−ニトロオルトフェニレンジアミンを含有する酸化染毛剤第1剤に問題なく適用できることが判明した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主成分の染料中間体とともに、レゾルシン、メタアミノフェノール、5−アミノオルトクレゾール、5−(2−ヒドロキシエチルアミノ)−2−メチルフェノール、ピロガロール、没食子酸、4−ニトロオルトフェニレンジアミン、2−ニトロパラフェニレンジアミンまたはそれらの塩の少なくとも1種が配合されてなる2剤型酸化染毛剤の第1剤に使用される、下記の香料群より選ばれた少なくとも1種を80質量%以上含有することを特徴とする香料。
香料群:
2,6,6−トリメチルシクロヘキシル−3−ヘキサノール、
2,6−ジメチルヘプタノール、
4−イソプロピルヘプタノール、
4−メチル−3−デセン−5−オール、
2−エチル−4−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−2−ブテン−1−オール、
ベンジルアルコール、
シンナミックアルコール、
シス−3−ヘキセン−1−オール、
シトロネロール、
ジヒドロミルセノール、
ジプロピレングリコール、
エチルリナロール、
イソボルニルシクロヘキサノール、
メントール、
ネロール、
β−フェニルエチルアルコール、
2−メチル−4−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−2−ブテン−1−オール、
テルピネオール、
テトラヒドロリナロール、
アリルアミルグリコレート、
アリルシクロヘキシルプロピオネート、
アリルヘプタノエート、
ベンジルアセテート、
ベンジルベンゾエート、
セドレニルアセテート、
シス−3−ヘキセニルアセテート、
シス−3−ヘキセニルサリシレート、
シトロネリルアセテート、
ジメチルベンジルカルビニルアセテート、
エチル−2−メチルブチレート、
エチル−2−メチルバレレート、
エチルブチレート、
ゲラニルアセテート、
ヘキシルアセテート、
ヘキシルサリシレート、
イソボルニルアセテート、
メチルアンスラニレート、
メチルシンナメート、
メチルジヒドロジャスモネート、
ノピルアセテート、
オルト−tert−ブチルシクロヘキシルアセテート、
フェニルエチルイソブチレート、
パラ−tert−ブチルシクロヘキシルアセテート、
テルピニルアセテート、
トリシクロデセニルアセテート、
トリシクロデセニルプロピオネート、
セドレニルメチルエーテル、
ジフェニルオキサイド、
ユゲノール、
メチルチャビコール、
メチルイソユゲノール、
アセトフェノン、
セドリルメチルケトン、
α−ダマスコン、
β−ダマスコン、
パラヒドロキシフェニルブタノン、
α−ヨノン、
β−ヨノン、
7−アセチル−1,2,3,4,5,6,7,8−オクタヒドロ−1,1,6,7−テトラメチル−ナフタレン、
メチルヨノン、
メチレンテトラメチルヘプタノン、
1,1−ジメトキシ−2,2,5−トリメチル−4−ヘキセン、
アセトアルデヒド−2−フェニル−2,4−ペンタンジオールアセタール、
クマリン、
γ−デカラクトン、
γ−ノナラクトン、
γ−ウンデカラクトン、
シクロペンタデカノライド、
エチレンブラシレート、
エチレンドデカンジオエート、
シトロネリルニトリル、
ローズオキサイド、
5−メチル−3−ヘプタノンオキシム、
1,3,4,6,7,8−ヘキサヒドロ−4,6,6,7,8,8−ヘキサメチルシクロペンタ−γ−2−ベンゾピラン、
6−アセチル−1,1,2,4,4,7−ヘキサメチルテトラヒドロナフタレン。
【請求項2】
請求項1に記載の香料を0.01〜5質量%含有することを特徴とする2剤型酸化染毛剤の第1剤。

【公開番号】特開2007−238573(P2007−238573A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−66849(P2006−66849)
【出願日】平成18年3月13日(2006.3.13)
【出願人】(591011410)小川香料株式会社 (173)
【出願人】(000113274)ホーユー株式会社 (278)
【Fターム(参考)】