説明

2波長レーザ照射装置及び同装置のフォーカス制御方法

【課題】安定したAF制御可能な2波長レーザ照射装置の提供。
【解決手段】光ディスクの記録膜に長楕円形状の初期化用レーザスポット4a及び合焦点用レーザスポット4bをオフセットして照射し、該合焦点用レーザスポット4bの被照射対象物からの反射光を用いてオートフォーカス制御を行うことによって、光ディスクの記録膜の初期化混在による反射率変動などの影響を受けない安定したオートフォーカス制御を行うことができ、安定した光ディスクの初期化を行うもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ照射スポットからの反射率が著しく低い次世代多層ディスク等においても安定したオートフォーカス制御を行うことができる2波長レーザ照射装置及び同装置のフォーカス制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に相変化型光ディスクは、製造工程において、製膜後の非晶質状態(as−depo)である膜に対してレーザスポットを照射して均一な結晶状態とする初期化工程を必須とし、この初期化を行う装置は初期化装置と呼ばれている。
【0003】
この初期化装置におけるレーザスポットを回転により揺動する光ディスクの記録膜に正確に焦点合わせを行うオートフォーカス(AF)制御は、初期化を実行するレーザスポット自身の戻光を利用するものであり、そのレーザ光源は、複数のトラックを同時に結晶化すべく高出力なλ810nm半導体レーザ素子が採用されている。
【0004】
しかしながら、近年のDVDやブルーレイディスク(BD)においては記録と再生を行う際のレーザ波長が異なるため、非晶質状態(as−depo)では充分なエネルギー量の反射光量を得られず、AF制御を行うのが困難であり、この不具合を解決するために、従来技術においては、光ディスクの記録/再生用と同じ波長のレーザを搭載し、この照射スポットの反射光を用いてAF制御を行う初期化方法及び装置が下記特許文献1により提案されている。尚、この初期化用以外のレーザ光源の波長が必ずしも記録/再生用レーザと同じ波長である必要は無い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許平11−296878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の特許文献1記載の技術は、初期化対象とする光ディスクが初期化用スレーザポットの反射光ではAF制御にとって十分な反射率が得られない場合に有効な手段である。
【0007】
しかしながら、次世代の多層光ディスクにおいては、層間隔が従来よりも狭く、その膜の性質も種々多様であり、非晶質状態(as−depo)における初期化用レーザとAF制御用レーザの反射率が著しく低い光ディスクが存在する。このため従来技術による初期化装置では、実際に記録再生膜に記録/再生を行うドライブと同じレーザ波長の半導体レーザ素子を搭載し、この半導体レーザ素子からの入射光に対する反射光を用いてAF制御を行う技術が提案されているが、図6に示す如く、初期化用の長楕円形状のレーザスポット3a上にAF用の円形状のレーザスポット3bを照射して両スポットが同一位置に重ね合わさり、初期化ビームのスポット3a内において未初期化領域と初期化直後の領域が混在するため、初期化前後の反射光量が変動してしまい、AF制御が不安定となる場合が生じると言う不具合を招いていた。
【0008】
この不具合を詳細に説明すると、従来技術においては、初期化用のスポット3aとAF制御用のスポット3bを膜面上で同一位置に重ね合わせているため、スポット領域内で結晶化した直後の状態とas−depo状態が混在し、この混在によって初期化用レーザスポット3a内の膜の状態が不安定となり、その反射光量が変動するためと考えられる。
【0009】
本発明の目的は、オートフォーカス用レーザ素子を搭載し、オートフォーカス用レーザスポットからの反射率が著しく低い被照射対象物においても、加工直後の反射率変動などの影響を受けない安定したオートフォーカス制御を行うことができる2波長レーザ照射装置及び同装置のフォーカス制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため本発明は、被照射対象物に所定形状に形成した加工用レーザスポットを照射すると共に、前記被照射対象物に加工用レーザスポットの被照射対象物に対する焦点合わせ用の合焦点用レーザスポットを照射し、該合焦点用レーザスポットの被照射対象物からの反射光を用いてオートフォーカス制御を行う2波長レーザ照射装置において、前記合焦点用レーザスポットを、前記加工用レーザスポットの照射により加工された後の被照射対象物に照射する様に構成したことを第1の特徴とする。
【0011】
また本発明は、加工用所定波長の加工用レーザスポットを被照射対象物に照射する加工用レーザ光学系部と、前記被照射対象物に対する焦点合わせ用の所定形状の合焦点用レーザスポットを加工用レーザスポットと近接して被照射対象物に照射する合焦点用レーザ光学系部と、前記被照射対象物から反射された反射合焦点用レーザスポットの形状が所定の形状になるように前記加工用レーザ光学系部による加工用レーザスポットの焦点合わせを制御する合焦点部と、前記加工用レーザスポット及び合焦点用レーザスポットを前記被照射対象物に対して相対的に移動させる移動部と、前記各光学系部と合焦点部と移動部を制御する制御部とを備え、加工用レーザスポット及び合焦点用レーザスポットを被照射対象物に相対的に移動しながら照射する2波長レーザ照射装置において、前記制御部が、被照射対象物の加工用レーザスポットが照射された後の領域に、合焦点用レーザ光学系部により合焦点用レーザスポットを照射することを第2の特徴とする。
【0012】
また本発明は、前記加工用レーザ光学系部が前記加工用レーザスポットを長楕円形状に整形し、前記被照射対象物から反射された反射合焦点用レーザスポットの楕円長軸方向の光量を検出する長軸ラインセンサ及び反射合焦点用レーザスポットの楕円短軸方向の光量を検出する短軸ラインセンサを備えた第2の特徴の2波長レーザ照射装置において、
前記制御部が、
前記長軸ラインセンサにより検出した加工用レーザスポットの光量検出信号波形の端部と、前記短軸ラインセンサにより検出した合焦点用レーザスポットの光量検出信号のピーク位置との間隔によって、加工用レーザスポットの長軸方向に対する合焦点用レーザスポットの相対的距離を検出し、
前記短軸ラインセンサにより検出した加工用レーザスポットの光量検出信号のピーク位置と、前記短軸ラインセンサにより検出した合焦点用レーザスポットの光量検出信号のピーク位置との間隔によって、加工用レーザスポットの短軸方向に対する合焦点用レーザスポットの相対的距離を検出することを第3の特徴とする。
【0013】
また本発明は、前記被照射対象物が、加工用レーザスポットの照射により記録膜の物理特性が変化する光ディスクであって、前記加工用レーザスポットの波長を810nm、前記合焦点用レーザスポットの波長を405nmとし、前記光ディスクを回転させながら加工用レーザスポットを光ディスクの記録膜に照射して記録膜の初期化を行う第2又は3の特徴の2波長レーザ照射装置において、前記制御部が、前記加工用レーザ光学系部により回転する光ディスク記録膜の領域に加工用レーザスポットを照射させ、前記加工用レーザスポットが照射された後の記録膜領域に前記合焦点用レーザ光学系部により合焦点用レーザスポットを照射することを第4の特徴とする。
【0014】
更に本発明は、被照射対象物に所定形状に形成した加工用レーザスポットを照射すると共に、前記被照射対象物に加工用レーザスポットの被照射対象物に対する焦点合わせ用の合焦点用レーザスポットを照射し、該合焦点用レーザスポットの被照射対象物からの反射光を用いてオートフォーカス制御を行う2波長レーザ照射装置のフォーカス制御方法において、前記合焦点用レーザスポットを、前記加工用レーザスポットの照射により加工された後の被照射対象物に照射することを第5の特徴とする。
【0015】
また本発明は、加工用所定波長の加工用レーザスポットを被照射対象物に照射する加工用レーザ光学系部と、前記被照射対象物に対する焦点合わせ用の所定形状の合焦点用レーザスポットを加工用レーザスポットと近接して被照射対象物に照射する合焦点用レーザ光学系部と、前記被照射対象物から反射された反射合焦点用レーザスポットの形状が所定の形状になるように前記加工用レーザ光学系部による加工用レーザスポットの焦点合わせを制御する合焦点部と、前記加工用レーザスポット及び合焦点用レーザスポットを前記被照射対象物に対して相対的に移動させる移動部と、前記各光学系部と合焦点部と移動部を制御する制御部とを備え、加工用レーザスポット及び合焦点用レーザスポットを被照射対象物に相対的に移動しながら照射する2波長レーザ照射装置のフォーカス制御方法において、前記制御部に、合焦点用レーザ光学系部により被照射対象物の加工用レーザスポットが照射された後の領域に合焦点用レーザスポットを照射させることを第6の特徴とする。
【0016】
また本発明は、前記加工用レーザ光学系部が前記加工用レーザスポットを長楕円形状に整形し、前記被照射対象物から反射された反射合焦点用レーザスポットの楕円長軸方向の光量を検出する長軸ラインセンサ及び反射合焦点用レーザスポットの楕円短軸方向の光量を検出する短軸ラインセンサを備えた第6の特徴の2波長レーザ照射装置のフォーカス制御方法において、
前記制御部に、前記長軸ラインセンサにより検出した加工用レーザスポットの光量検出信号波形の端部と、前記短軸ラインセンサにより検出した合焦点用レーザスポットの光量検出信号のピーク位置との間隔によって、加工用レーザスポットの長軸方向に対する合焦点用レーザスポットの相対的距離を検出させ、
前記短軸ラインセンサにより検出した加工用レーザスポットの光量検出信号のピーク位置と、前記短軸ラインセンサにより検出した合焦点用レーザスポットの光量検出信号のピーク位置との間隔によって、加工用レーザスポットの短軸方向に対する合焦点用レーザスポットの相対的距離を検出させることを第7の特徴とする。
【0017】
また本発明は、前記被照射対象物が、加工用レーザスポットの照射により記録膜の物理特性が変化する光ディスクであって、前記加工用レーザスポットの波長を810nm、前記合焦点用レーザスポットの波長を405nmとし、前記光ディスクを回転させながら加工用レーザスポットを光ディスクの記録膜に照射して記録膜の初期化を行う第6又は7の特徴の2波長レーザ照射装置のフォーカス制御方法において、前記制御部に、前記加工用レーザ光学系部により回転する光ディスク記録膜の領域に加工用レーザスポットを照射させ、前記加工用レーザスポットが照射された後の記録膜領域に前記合焦点用レーザ光学系部により合焦点用レーザスポットを照射することを第8の特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明による2波長レーザ照射装置及び同装置のフォーカス制御方法は、被照射対象物に所定形状に形成した加工用レーザスポット及び合焦点用レーザスポットをオフセットして照射し、該合焦点用レーザスポットの被照射対象物からの反射光を用いてオートフォーカス制御を行うことによって、合焦点用レーザスポットを前記加工用レーザスポットの照射により加工された後の被照射対象物に照射し、反射率変動などの影響を受けない安定したAF制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明による2波長レーザ照射装置の原理説明図。
【図2】本発明による2波長レーザ照射装置の構成を示す図。
【図3】本実施形態による初期化用レーザスポットのラインセンサ出力信号を示す図。
【図4】本実施形態による両スポットの相対的位置の説明図。
【図5】従来及び本実施形態によるAF検出信号の説明図。
【図6】従来の初期化装置におけるレーザースポットの説明図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明によるフォーカス制御方法を適用した2波長レーザ照射装置を初期化装置に適用した実施形態を図面を参照して詳細に説明するが、まず、本発明の両レーザスポットの照射方法について説明する。
[両レーザスポット照射方法]
本実施形態によるフォーカス制御方法は、図1に示す如く、前述の従来技術による反射率が著しく低い光ディスクに対して初期化用のレーザスポット及びAF制御用レーザスポットをオフセットして配置し、スピンドル90を回転中心として光ディスクを矢印4c方向に回転させながら光ディスク初期化を行う2波長レーザ照射装置等において、長楕円形状の初期化用レーザスポット4aを、前記スピンドル90中心を通る光ディスク半径方向に延びる方向に配置すると共に、AF用レーザスポット4bを、前記初期化用レーザスポット4aに対して近接し且つ光ディスク回転方向(矢印4c)の初期化の下流側になる様にオフセットして配置し、初期化用レーザスポット4aによる初期化後の記録膜に対して必ずAF用レーザスポット4bが照射される様に構成したことによって、前述の従来技術による両スポットの同一位置の重なり合いによる反射光量の変動を防止し、AF制御が不安定となることを防止するものである。
【0021】
本実施形態による初期化用レーザスポット4aが長軸幅48μm、短軸幅が1μmの長楕円形状の場合、該スポット4aに対してAF用レーザスポット4bは、スポット4aのスピンドル側の長軸方向端部から半径方向に12μm且つ短軸方向はスポット中心から円周方向に9μmの相対的位置関係となるよう配置されている。
【0022】
このように本実施形態の如く光ディスクの回転方向4cに対して両スポットをオフセットして配置し、両スポットをディスクの内周側から外周側の方向4dへ送りながら光ディスクの初期化を実行する際、AF用スポット4bが初期化用レーザスポット4aにより常に初期化された後の記録膜面に照射させることによってAF制御が不安定となることを防止することができる。
【0023】
[構成]
上述の如き両スポットを配置し且つ光ディスクの初期化を行う初期化装置のハード構成を次に図2を参照して説明する。本実施形態による2波長レーザ照射装置である初期化装置は、加工用の初期化用レーザスポットを形成する初期化スポット用光学系と、AF用レーザスポットを形成するAFスポット用光学系と、両スポット共通の共通光学系とから構成される。尚、本実施形態における初期化装置は、光ディスクの回転機構/半導体レーザ素子の光ディスク半径方向への移動機構/半導体レーザ素子の出力制御回路/本装置の全体の制御回路等の機構回路を備えるものであるが、一般の初期化装置と同様な構成のため、省略して説明する。
【0024】
前記初期化スポット用光学系は、図2に示す如く、前記初期化スポット用光学系が、波長λ810nmの初期化用レーザビームの光源となる半導体レーザ素子5aと、該レーザ素子5aから照射されるレーザビームを平行光に偏光するコリメートレンズ5bと、該コリメートレンズ5bにより平行光に変更されたレーザビームを入射し、後述するパワー監視系への分光及びアイソレートするための偏光ビームスプリッタ5cと、光学軸に平行な偏光成分と垂直な偏光成分に分離伝搬し、その屈折率差による位相差により円偏光する1/4波長板5dと、前記偏光ビームスプリッタ5cにより分光偏向されたレーザビームを入射して初期化レーザビームの出力を監視するためのパワーモニタ素子5rと、後述する記録膜5hから反射された初期化レーザスポットの反射光を入力として偏光ビームスプリッタ5cにより偏光された反射光を入射する対物レンズ21と、該対物レンズ21により出射された反射光を90度位相が異なるように偏向する偏光ビームスプリッタ22と、該偏光ビームスプリッタ22から出射された初期化レーザスポットの反射光を入力として、初期化用レーザスポットのフォーカス制御を行うためのフォーカスディテクタ23及び24とから構成される。
【0025】
前記AFスポット用光学系は、波長λ405nmのAF用レーザビームの光源となる半導体レーザ素子5iと、該レーザ素子5iから照射されるレーザビームを平行光に偏光するコリメートレンズ5jと、該コリメートレンズ5jにより平行光に変更されたレーザビームを入射し、後述するパワー監視系への分光及びアイソレートするための偏光ビームスプリッタ5kと、光学軸に平行な偏光成分と垂直な偏光成分に分離伝搬し、その屈折率差により円偏光する1/4波長板5l(エル)と、前記偏光ビームスプリッタ5l(エル)により分光偏向されたレーザビームを入射してAF用レーザビームの出力を監視するためのパワーモニタ素子5oと、後述する記録膜5hから反射されたAF用レーザスポットの反射光を入力として偏光ビームスプリッタ5kにより偏光された反射光を入射する対物レンズ31と、該対物レンズ31により出射された反射光を90度位相が異なるように偏向する偏光ビームスプリッタ32と、該偏光ビームスプリッタ32から出射されたAF用レーザスポットの反射光を入力として、AF用レーザスポットのフォーカス制御を行うためのフォーカスディテクタ23及び24とから構成される。
【0026】
また前記初期化スポット用光学から出射される初期化用レーザスポットの記録膜5hに対する2次元的照射位置は固定され、前記AFスポット用光学系から出射されるAF用レーザスポットの記録膜5hに対する2次元的照射位置は前記初期化用レーザスポットの位置に対して所定の2次元的な間隔をもってオフセットされるように固定されているが、これら両スポット位置は各光学系のレンズ等の配置によって調整可能に構成しても良い。
【0027】
前記共通光学系は、前記1/4波長板5d及び5l(エル)から出射した両レーザビームの2波長を合成するプリズム5eと、該プリズム5eから出射したレーザビームを光ディスク記録膜5h側と後述するスポット位置監視系へ分光するプリズム5fと、該プリズム5fから出射したレーザビームを集光して膜面5h上に焦点合わせを行ったレーザスポットを形成させる2波長兼用の対物レンズ5mと、該対物レンズ5mから出射された反射光を分光するハーフビームスプリッタ5nと、該対物レンズ5mからの出射光を入射して短手ビーム及び長手ビームの膜5h上の相対的位置を監視するための一対のラインセンサ5q(短手方向用)及び5p(長手方向用)とから構成される。前記対物レンズ5mは、光軸両方向に移動可能に構成されており、この移動によって記録膜5hに対する合焦点位置を制御することができる。尚、前記光学系の呼び方は、前述のものに限られるものではない。
【0028】
[動作]
さて、本実施形態による初期化装置は、まず、長楕円形状の初期化用レーザスポット4aを照射し、該初期化用レーザスポット4aの長軸方向の幅及び位置と、短軸方向の位置を検出する。
【0029】
この初期化用レーザスポット4aの長軸方向の幅及び位置と短軸方向の位置の検出は、初期設定用の反射率が所定値に規定された光ディスクをスピンドルに装着した状態で、図示しない制御回路が、半導体レーザ素子5aから波長λ810nmの初期化用レーザビームを照射させ、該波長λ810nmの初期化用レーザビームを、コリメートレンズ5bと偏光ビームスプリッタ5cと1/4波長板5dとプリズム5eとプリズム5fと対物レンズ5gとを介して長楕円形状の初期化用レーザスポット4aを照射し、この反射光を対物レンズ5g、プリズム5f、対物レンズ5mを介してハーフビームスプリッタ5nに入射し、該ハーフビームスプリッタ5nが反射光を長軸方向及び短軸方向に分光してラインセンサ5q(短手方向用)及び5p(長手方向用)に入射させることによって、該ラインセンサ5q(短手方向用)及び5p(長手方向用)が、図3及び図4に示す如く、長軸用及び短軸用の信号波形6aを検出する。尚、図3中の符号6cにより示す長軸用ラインディテクタの信号波形6aの幅が長軸方向の長さである。
【0030】
次いで本実施形態による初期化装置は、AF円形状のAF用レーザスポット4bを照射し、前記初期化用レーザスポット4aの位置に対する長軸及び短軸方向の相対的位置を算出する。
【0031】
この相対的位置(距離)の算出は、図示しない制御回路が、半導体レーザ素子5iから波長405nmのAF用レーザビームを照射させ、該波長λ810nmの初期化用レーザビームを、コリメートレンズ5jと偏光ビームスプリッタ5kと1/4波長板5l(エル)とプリズム5eとプリズム5fと対物レンズ5gとを介して円形状のAFレーザスポット4を記録膜5hに照射し、この記録膜5hからの反射光を前述の初期化用レーザビームと同様に、対物レンズ5gとプリズム5fと対物レンズ5mを介してハーフビームスプリッタ5nに入射し、該ハーフビームスプリッタ5nが反射光を長軸方向及び短軸方向に分光してラインセンサ5q(短手方向用)及び5p(長手方向用)に入射させ、該ラインセンサ5q(短手方向用)及び5p(長手方向用)が、図3及び図4に示す短軸用ラインディテクタの信号波形6bを検出し、図3に示すAF用信号波形6bのピーク位置と初期化用信号波形6aの端部との距離を算出することにより、初期化用レーザスポット4aとAF用レーザスポット4bとのディスク半径方向(長軸方向)における相対的位置6dを検出し、図4に示す初期化用信号波形6aとAF用信号波形6bのピーク位置との距離を算出することにより、初期化用レーザスポット4aとAF用レーザスポット4bとのディスクトラック方向(短軸方向)における相対的位置7cを検出することができる。
【0032】
これにより本実施形態による初期化装置は、前述した長楕円形状の初期化用レーザスポット4aの位置に対するAF用レーザスポット4bとの相対的位置を検出し、この相対的位置が光ディスク記録膜特性や初期化条件(光ディスク回転数/光量)を考慮した所定の位置関係、少なくとも初期化実行時にAF用スポット4bが初期化用レーザスポット4aにより常に初期化された後の記録膜面に照射するように配置していることを監視することができ、この監視は初期化実行時も継続して行うことが望ましい。
【0033】
さて、本実施形態による初期化装置は、前述の如く、AF用スポット4bが初期化用レーザスポット4aにより常に初期化された後の記録膜面に照射するようにした状態において初期化を行うものであるが、この初期化時のオートフォーカス制御を行うためのAF波形を図5を参照して説明する。図5(a)は従来のAF波形8aを示すものであり、図5(b)は、本実施形態の如く初期化用とAF用の両レーザスポットを配置した際のAF波形8bを示すものであって、該従来技術によるAF波形8aは、膜5hに焦点が一致してから初期化実行中の反射率変動が大きく、エンベロープ幅8bが広くなってしまうものであるのに対し、本実施形態による2波長半導体レーザスポットにおけるAF信号8cでは、そのエンベロープ幅8dが従来に比べて半分以下に小さくすることができ、従って本実施形態による初期化装置は光ディスクの振動に対して初期化用レーザスポットの追従精度を向上することができる。即ち、本実施形態による初期化装置は、初期化用ビームスポットにより初期化した直後の領域にAF用レーザスポットを照射し、このAF用レーザスポットの反射光を用いて初期化用ビームスポットのオートフォーカス制御を行うため、光ディスク初期化領域を安定的に初期化することができる。
【0034】
尚、前記実施形態においては、図1に示した如く、AF用レーザスポット4bが長楕円形状の初期化用レーザスポット4aの位置に対して長軸方向に対してスピンドル側且つ光ディスクの初期化下方側に位置する例を説明したが、この例は図1において符号4c及び4dにより示したディスク回転方向及び初期化時のヘッド移動方向の場合であって、ディスク回転方向及び初期化時のヘッド移動方向の組合せに応じて、初期化用ビームスポットにより初期化した直後の領域にAF用レーザスポットを照射する条件を満足するように両レーザスポットを配置することによって、前述の実施形態同様の効果を奏することができる。
【0035】
また、前述の実施形態においては本発明を次世代多層光ディスクの初期化を行う初期化装置の例を挙げたが、本発明は初期化装置に限らず、例えば被照射対象物であるシリコンパネルのアニールを行うレーザアニール装置その他のレーザスポットをオートフォーカスをかけながら照射するレーザ照射装置に適用することもできる。更には、対象ワークを照射して何らかの組成変化をもたらす加工用レーザスポットやフォーカス制御を行うAF用レーザスポットの数は前述の実施形態のものに限られるものではなく、複数であっても良い。更には、レーザスポットの波長も前述のものに限られるものではなく、例えば加工用とAF用の波長は同じであっても良い。
【符号の説明】
【0036】
4a:初期化用レーザスポット、4b:合焦点用レーザスポット、4c及び4d:矢印、5a:半導体レーザ素子、5b:コリメートレンズ、5c:偏光ビームスプリッタ、5d:波長板、5e:プリズム、5f:プリズム、5g:対物レンズ、5h:記録膜、5h:膜面、5i:半導体レーザ素子、5j:コリメートレンズ、5k:偏光ビームスプリッタ、5l:波長板、5l:偏光ビームスプリッタ、5m:対物レンズ、5n:ハーフビームスプリッタ、5o:パワーモニタ素子、5q:ラインセンサ、5r:パワーモニタ素子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被照射対象物に所定形状に形成した加工用レーザスポットを照射すると共に、前記被照射対象物に加工用レーザスポットの被照射対象物に対する焦点合わせ用の合焦点用レーザスポットを照射し、該合焦点用レーザスポットの被照射対象物からの反射光を用いてオートフォーカス制御を行う2波長レーザ照射装置であって、
前記合焦点用レーザスポットを、前記加工用レーザスポットの照射により加工された後の被照射対象物に照射する様に構成した2波長レーザ照射装置。
【請求項2】
加工用所定波長の加工用レーザスポットを被照射対象物に照射する加工用レーザ光学系部と、前記被照射対象物に対する焦点合わせ用の所定形状の合焦点用レーザスポットを加工用レーザスポットと近接して被照射対象物に照射する合焦点用レーザ光学系部と、前記被照射対象物から反射された反射合焦点用レーザスポットの形状が所定の形状になるように前記加工用レーザ光学系部による加工用レーザスポットの焦点合わせを制御する合焦点部と、前記加工用レーザスポット及び合焦点用レーザスポットを前記被照射対象物に対して相対的に移動させる移動部と、前記各光学系部と合焦点部と移動部を制御する制御部とを備え、加工用レーザスポット及び合焦点用レーザスポットを被照射対象物に相対的に移動しながら照射する2波長レーザ照射装置であって、
前記制御部が、被照射対象物の加工用レーザスポットが照射された後の領域に、合焦点用レーザ光学系部により合焦点用レーザスポットを照射する2波長レーザ照射装置。
【請求項3】
前記加工用レーザ光学系部が前記加工用レーザスポットを長楕円形状に整形し、前記被照射対象物から反射された反射合焦点用レーザスポットの楕円長軸方向の光量を検出する長軸ラインセンサ及び反射合焦点用レーザスポットの楕円短軸方向の光量を検出する短軸ラインセンサを備えた請求項2記載の2波長レーザ照射装置であって、
前記制御部が、
前記長軸ラインセンサにより検出した加工用レーザスポットの光量検出信号波形の端部と、前記短軸ラインセンサにより検出した合焦点用レーザスポットの光量検出信号のピーク位置との間隔によって、加工用レーザスポットの長軸方向に対する合焦点用レーザスポットの相対的距離を検出し、
前記短軸ラインセンサにより検出した加工用レーザスポットの光量検出信号のピーク位置と、前記短軸ラインセンサにより検出した合焦点用レーザスポットの光量検出信号のピーク位置との間隔によって、加工用レーザスポットの短軸方向に対する合焦点用レーザスポットの相対的距離を検出する波長レーザ照射装置。
【請求項4】
前記被照射対象物が、加工用レーザスポットの照射により記録膜の物理特性が変化する光ディスクであって、前記加工用レーザスポットの波長を810nm、前記合焦点用レーザスポットの波長を405nmとし、前記光ディスクを回転させながら加工用レーザスポットを光ディスクの記録膜に照射して記録膜の初期化を行う請求項2又は3記載の2波長レーザ照射装置であって、
前記制御部が、
前記加工用レーザ光学系部により回転する光ディスク記録膜の領域に加工用レーザスポットを照射させ、
前記加工用レーザスポットが照射された後の記録膜領域に前記合焦点用レーザ光学系部により合焦点用レーザスポットを照射する2波長レーザ照射装置。
【請求項5】
被照射対象物に所定形状に形成した加工用レーザスポットを照射すると共に、前記被照射対象物に加工用レーザスポットの被照射対象物に対する焦点合わせ用の合焦点用レーザスポットを照射し、該合焦点用レーザスポットの被照射対象物からの反射光を用いてオートフォーカス制御を行う2波長レーザ照射装置のフォーカス制御方法であって、
前記合焦点用レーザスポットを、前記加工用レーザスポットの照射により加工された後の被照射対象物に照射する2波長レーザ照射装置のフォーカス制御方法。
【請求項6】
加工用所定波長の加工用レーザスポットを被照射対象物に照射する加工用レーザ光学系部と、前記被照射対象物に対する焦点合わせ用の所定形状の合焦点用レーザスポットを加工用レーザスポットと近接して被照射対象物に照射する合焦点用レーザ光学系部と、前記被照射対象物から反射された反射合焦点用レーザスポットの形状が所定の形状になるように前記加工用レーザ光学系部による加工用レーザスポットの焦点合わせを制御する合焦点部と、前記加工用レーザスポット及び合焦点用レーザスポットを前記被照射対象物に対して相対的に移動させる移動部と、前記各光学系部と合焦点部と移動部を制御する制御部とを備え、加工用レーザスポット及び合焦点用レーザスポットを被照射対象物に相対的に移動しながら照射する2波長レーザ照射装置のフォーカス制御方法であって、
前記制御部に、合焦点用レーザ光学系部により被照射対象物の加工用レーザスポットが照射された後の領域に合焦点用レーザスポットを照射させる2波長レーザ照射装置のフォーカス制御方法。
【請求項7】
前記加工用レーザ光学系部が前記加工用レーザスポットを長楕円形状に整形し、前記被照射対象物から反射された反射合焦点用レーザスポットの楕円長軸方向の光量を検出する長軸ラインセンサ及び反射合焦点用レーザスポットの楕円短軸方向の光量を検出する短軸ラインセンサを備えた請求項6記載の2波長レーザ照射装置のフォーカス制御方法であって、
前記制御部に、
前記長軸ラインセンサにより検出した加工用レーザスポットの光量検出信号波形の端部と、前記短軸ラインセンサにより検出した合焦点用レーザスポットの光量検出信号のピーク位置との間隔によって、加工用レーザスポットの長軸方向に対する合焦点用レーザスポットの相対的距離を検出させ、
前記短軸ラインセンサにより検出した加工用レーザスポットの光量検出信号のピーク位置と、前記短軸ラインセンサにより検出した合焦点用レーザスポットの光量検出信号のピーク位置との間隔によって、加工用レーザスポットの短軸方向に対する合焦点用レーザスポットの相対的距離を検出させる波長レーザ照射装置のフォーカス制御方法。
【請求項8】
前記被照射対象物が、加工用レーザスポットの照射により記録膜の物理特性が変化する光ディスクであって、前記加工用レーザスポットの波長を810nm、前記合焦点用レーザスポットの波長を405nmとし、前記光ディスクを回転させながら加工用レーザスポットを光ディスクの記録膜に照射して記録膜の初期化を行う請求項6又は7記載の2波長レーザ照射装置のフォーカス制御方法であって、
前記制御部に、
前記加工用レーザ光学系部により回転する光ディスク記録膜の領域に加工用レーザスポットを照射させ、
前記加工用レーザスポットが照射された後の記録膜領域に前記合焦点用レーザ光学系部により合焦点用レーザスポットを照射する2波長レーザ照射装置のフォーカス制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−48866(P2011−48866A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−194760(P2009−194760)
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【出願人】(000233033)日立コンピュータ機器株式会社 (253)
【Fターム(参考)】