2種類の流体間の薄い固相界面上における撮像方法
本明細書においては、光学顕微鏡検査ツール用の流体セルについて記載する。この顕微鏡検査ツールは、 第1側と、第2の対向する側とを有する固相メンブレンと、メンブレンの第1側に配置された第1流体チェンバであって、第1屈折率を有する第1流体を収容する、第1流体チェンバと、メンブレンの第2側に配置された第2流体チェンバであって、第2屈折率を有する第2流体を収容する第2流体チェンバとを有し、第1屈折率が第1屈折率とは異なる。また、本明細書には、1つ1つの生体分子を撮像する方法についても記載する。この方法は、異なる屈折率を有する第1流体と第2流体との間にある固相メンブレンにおいて、消衰照明の場を発生するステップと、固相メンブレンにおいて、1つ1つの生体分子に結合されている光検出器によって放出される光を検出するステップとを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互引用
[0001] 本願は、2009年3月26日に出願された米国仮特許出願第61/211,260号に対して、法によって与えられるいずれの権利をも、そして全ての権利を主張する。
政府援助
[0002] 本発明は、米国国立衛生研究所によって裁定された契約第HG−004128号の下で、政府支援によって行われた。
発明の分野
[0003] 本発明は、光学顕微鏡の分野に関する。特に、本発明は、生体分子の撮像改良のために、2種類の流体間にある薄い固相界面を利用する。
【背景技術】
【0002】
[0004] 最初の参照人ゲノム配列の完成は、ゲノム異変が直接薬剤の発見や医学的治療に影響を及ぼす時代の幕開けを印した。この新たな枠組みのために、費用がかからず非常に高速なDNA配列決定方法が早急に必要となった。近い将来、開業医は、薬剤を処方する前に、臨床設備(clinical setting)において個々の患者のDNAを日常的に分析し、あらゆる薬剤に関するゲノム情報が文書化されているオンライン・データベースとそれらを照合することが可能になるであろう。加えて、手の届く範囲の配列決定技術が、比較ゲノム学および分子生物学における研究の様相を一変させ、科学者が細胞異体(cell variants)からゲノム全体の配列を素早く決定できるようになるであろう。超高速でしかも安価なDNA配列決定を実現するためには、サンガーのジディオキシ・プロトコルに基づく古典的な方法に取って代わる新たな技術が必要とされる。これらの新たな技術は、2つの主要な障害に取り組まなければならない。(1)サンプル・サイズを最小にまで縮小し、1つのDNA細胞または少数のコピーからの配列読み出しを可能にしなければならない。(2)読み出し速度は、現在の技術的現状と比較して、数桁上昇させなければならない。
【0003】
[0005] 窒化シリコン、酸化シリコン、およびその他のような固相面が、再生医学、埋め込み可能なデバイス、および基本的な研究コンテキストを含む、種々の生化学用途において用いられている。薄い固相面は、例えば、生物検知(biosensing)およびDNA配列決定の用途において用いられるナノスリットやナノポア(nanopore)アレイのような、異なるミクロおよびナノ構造デバイスのコンテキストにおいて用いられている。窒化シリコン・メンブレンは、最近になって、生体分子検出およびDNA配列決定というような用途に合った固相ナノポアを作成するのに適した基板となることが示された。DNA転座の単一分子光学検出を必要とし、固相ナノポアを介して解決する固相デバイスが、生物検知およびゲノム配列決定にはきわめて重大であると考えられている。これらのデバイスによる光信号の単一分子生体内測定には、顕微鏡検査の消衰モード(evanescent mode)を用いることが有用である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
[0006] 生物医学研究および医療用デバイスの分野においては、対象の材料を通した撮像によって分子、細胞、および組織を研究できることが望ましい。このような撮像技法の1つに、全内部反射蛍光顕微鏡検査(TIRFMまたはTIRF)がある。しかしながら、これらのコンテキストにおいて用いられてきた固相材料は、TIRFのような技術的現状の顕微鏡検査方法とは適合性がない。既存の技法では、これらの固相材料面を、ガラス・カバースリップのような、他の表面の消衰場(evanescent field)内に持ち込むことが難しく、更に、窒化シリコン・メンブレンおよび生体サンプルをTIRF消衰場領域(regime)に持ち込むのは、とても厄介である。更に、粒子の固有密度(クリーン・ルーム環境においても)のために、これらの窒化シリコン・チップの処理最中に発生する粒子、およびこれらの窒化シリコン・メンブレン・チップの温度制約という制限のために、これらのナノポアを窒化シリコン面で密閉するのは、難しい作業となる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[0007] 本発明の実施形態は、固相メンブレン(ナノポア・デバイスまたは他の生体サンプルを保持する)を挟む2つの媒体間における屈折率整合TIRFM (全内部反射蛍光顕微鏡検査)によって、これらの固相メンブレンにおいて消衰モード励起を達成する。これによって、メンブレン上における1つ以上の生体分子の高分解能、高コントラスト、および高感度画像の取り込みが可能となる。
【0006】
[0008] 本発明の一態様によれば、光学顕微鏡検査ツール用流体セルが開示される。この流体セルは、第1側と、第2の対向する側とを有する固相メンブレンと、メンブレンの第1側に配置された第1流体チェンバであって、第1屈折率を有する第1流体を収容する、第1流体チェンバと、メンブレンの第2側に配置された第2流体チェンバであって、第2屈折率を有する第2流体を収容する第2流体チェンバとを含み、第1屈折率が第2屈折率よりも高い。
【0007】
[0009] 固相メンブレンは、窒化シリコン、酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化チタン、またはその他の誘電体材料とするとよい。
【0008】
[0010] 固相メンブレンは、シリコン・ウェハ上に堆積された窒化シリコン層を含むことができる。窒化シリコン層の厚さは、5〜60nmとするとよい。シリコン・ウェハは、ウィンドウを含むことができ、窒化シリコン層がウィンドウを覆うか、またはこのウィンドウを横切って広がる。
【0009】
[0011] 第1流体は、水性緩衝溶液または水とすることができる。第2流体は、細胞流体(cellular fluid)、細胞メンブレン、またはグリセロールとすることができる。第1流体は、第1流体は、濃縮尿素溶液またはCsClとしてもよい。
【0010】
[0012] 光学的バイオマーカに結合された生体分子が、メンブレンの第2側に供給することができる。この生体分子は、DNA分子とすることができる。この生体分子は、タンパク質分子であってもよい。光学的バイオマーカは、励起可能な蛍光体とすることができる。
【0011】
[0013] 第1流体チェンバは、マイクロチャネルとすることができる。
【0012】
[0014] 固相メンブレンは、少なくとも1つのナノポアをを含むことができ、実施形態によっては、複数のナノポアを含んでもよい。複数のナノポアは、円形または多角形アレイに配列することができる。
【0013】
[0015] 本発明の他の態様によれば、1つ1つのDNA分子を撮像するための光学顕微鏡検査ツールが開示される。この光学顕微鏡検査ツールは、シリコン・ウェハのウィンドウを覆う固相メンブレンと、固相メンブレンの一方側にある第1流体チェンバと、第1流体チェンバの中にあり第1屈折率を有する第1流体と、メンブレンの他方側にある第2流体チェンバと、第2流体チェンバの中にあり、第1屈折率よりも低い第2屈折率を有する第2流体とを備えている流体セルと、ガラス・カバースリップであって、このガラス・カバースリップが第1流体チェンバの底面を形成するように、流体セルが実装されている、カバースリップと、対物レンズと、対物レンズとガラス・カバースリップとの間にある浸入油と、対物レンズにおいて光を誘導するように構成されている光源であって、固相メンブレンが覆うウィンドウよりも小さい消衰照明の場を発生するように、対物レンズが光を合焦するように構成されている、光源と、固相メンブレンにおいて1つ1つのDNA分子によって放出される光を検出する撮像検出器とを含む。
【0014】
[0016] 光源は、少なくとも1つの励起レーザを含むことができ、実施形態によっては、異なる波長のレーザ・ビームを生成する複数のレーザを含むことができ、撮像検出器は、電子倍増電荷結合デバイス(CCD)カメラ、または光検出器を含むことができる。
【0015】
[0017] 1つ1つのDNA分子を固相メンブレン上に不動化するために、ビオチン−ストレプトアビジン化学薬品を用いることができる。
【0016】
[0018] 本発明の更に他の態様によれば、1つ1つの生体分子を撮像するための光学顕微鏡検査ツールが開示される。この光学顕微鏡検査ツールは、異なる屈折率を有する第1流体と第2流体との間にある固相メンブレンにおいて消衰照明の場を発生する手段と、固相メンブレンにおいて1つ1つの生体分子に結合されている光検出器によって放出される光を検出する手段とを含む。
【0017】
[0019] 固相メンブレンにおいて消衰照明の場を発生する手段は、励起レーザと対物レンズとを含むことができる。光学的マーカによって放出された光を検出する手段は、光検出器、または電子倍増CCDカメラを含むことができる。
【0018】
[0020] また、光学顕微鏡検査ツールは、更に、1つ1つの生体分子を固相メンブレン上に不動化する手段を含むこともできる。
【0019】
[0021] 消衰照明の場は、固相メンブレンの寸法よりも小さくするとよい。
【0020】
[0022] 本発明の更に他の態様によれば、単体の生体分子を撮像する方法が開示される。この方法は、異なる屈折率を有する第1流体と第2流体との間にある固相メンブレンにおいて、消衰照明の場を発生するステップと、固相メンブレンにおいて、1つ1つの生体分子に結合されている光検出器によって放出される光を検出するステップとを含む。
【0021】
[0023] また、この方法は、1つ1つの生体分子を固相メンブレン上に不動化するステップも含む。
【0022】
[0024] 検出された光から、画像を発生する。
【0023】
[0025] 本発明の更にまた他の態様によれば、単体DNA分子を撮像する方法が開示される。この方法は、光学顕微鏡検査ツールの対物レンズに光を誘導するステップと、第1流体を通過するように光を誘導するステップと、第2流体において消衰照明の場を発生するために、窒化シリコン・メンブレンにおいて光を反射させるステップと、消衰照明の場によって励起され単体DNA分子に結合されている光学的バイオマーカによって放出される光を、撮像検出器に誘導するステップとを含む。
【0024】
[0026] 消衰照明の場は、第2流体内において発生することができる。単体DNA分子は、第2流体内において、窒化シリコン・メンブレン上に不動化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、本発明の一実施形態による流体セル(fluid cell)の模式図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態による流体セルの界面の斜視図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態による、界面におけるTIRを示す模式図である。
【図4】図4は、本発明の一実施形態による光学顕微鏡測定ツールの模式図である。
【図5】図5は、本発明の一実施形態にしたがってTIRF下で撮像された1つのDNA分子の蛍光画像である。
【図6】図6は、本発明の一実施形態によるDNA配列決定手法を示す模式図である。
【図7】図7は、本発明の一実施形態にしたがって、1ビット(a)および2ビット(b)読み出し値を用いた、同時電気光学検出を示す模式図である。
【図8】図8は、本発明の一実施形態による多色光学顕微鏡検査ツールの設定の模式図である。
【図9】図9は、本発明の一実施形態によるポア局限カウンタ・ヒストグラムである。
【図10A】図10Aは、本発明の一実施形態による、多数のポアからの同時読み出しを含むマルチポア検出における追加ステップの図である。
【図10B】図10Bは、本発明の一実施形態による、多数のビットからの同時読み出しを含むマルチポア検出における追加ステップの図である。
【図11】図11は、本発明の一実施形態による流体セルの模式図である。
【図11A】図11Aは、本発明の一実施形態による図11の流体セルの詳細な模式図である。
【図11B】図11Bは、本発明の一実施形態による図11の界面の詳細な模式図である。
【図12】図12は、本発明の一実施形態にしたがってTIRFの下で撮像した1つのDNA分子の蛍光画像である。
【図13】図13は、本発明の一実施形態による分析ハードウェアのブロック図である。
【図14A】図14Aは、本発明の一実施形態による電気信号および光信号の同期を示す。
【図14B】図14Bは、本発明の一実施形態による電気信号および光信号の同期を示す。
【図14C】図14Cは、本発明の一実施形態による電気信号および光信号の同期を示す。
【図15A】図15Aは、本発明の一実施形態による、ナノポアを通したDNA分子のスレッディング(threading)を示す。
【図15B】図15Bは、本発明の一実施形態による、ナノポアを通したDNA分子のスレッディング(threading)を示す。
【図16A】図16Aは、図15Aのスレッディング・イベント中における電気信号および光信号の同期を示す。
【図16B】図16Bは、図15Bのスレッディング・イベント中における電気信号および光信号の同期を示す。
【図17】図17は、本発明の一実施形態による、界面におけるTIRを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[0046] 本発明の実施形態は、厚さがナノメートル単位の固相メンブレンを介した1つ1つの分子および生体材料双方の撮像方法に関する。この方法が優位であるのは、1つ1つの分子および生体材料の、従来からの電気的測定に加えて、光学的(例えば、蛍光)測定を可能にするからである。一実施形態では、2種類の混和性/非混和性流体間における薄い固相界面を介して、消衰モードで、1つの分子または生体材料を撮像する。流体セルが、屈折率が異なる2つの混和性流体間に、固相界面を形成する。この固相界面は、厚さが数ナノメートルから数十ナノメートル程度とすることができ、そして窒化シリコン、参加シリコン、および/またはその他で作ることができる。
【0027】
[0047] 固相界面におけるナノポアまたはナノポア・アレイを介した生体分子(例えば、DNA、RNA、またはタンパク質)の転座のために、2つの流体に電位を印加することができる。DNA転座では、単一撚り合わせ(single-stranded)DNA分子が、一列状にナノポアを通り抜けるように電気泳動的に駆動される。この実施形態では、ターゲットDNA配列の各塩基(base)は、生化学変換によって、最初に2または4ユニット・コード、2 10−20bpヌクレオチド配列上にマッピングされる。これら2−ユニットまたは4−ユニット・コードは、次に、交雑されて、相補的な、蛍光標識が付いた(fluorescently labeled)、そして自己消滅型分子ビーコン(self-quenching molecular beacon)となる。ナノポアを介した転座の間に分子ビーコンが順次解決されるに連れて、これらの蛍光タグが消されなくなり、単一色、または多色(例えば、2つ以上の色)全内部反射蛍光(TIRF)顕微鏡によって読み取られる。結果的に得られた単色光信号または多色光信号は、次に、ターゲットDNA配列に相関付けられる。
【0028】
[0048] 本発明の実施形態に優位性があるのは、固相界面上で不動にさせられ、「厚い」水性流体層(即ち、屈折率が大きい流体)上に位置付けられた1つ1つの生体分子または生体材料の、高分解能および高感度画像の取り込みを可能にするからである。更に具体的には、この「厚い」流体層内深くに消衰場を実現することによって、薄い固相界面における分子または生体材料の高コントラスト光学検出を、1つ1つの生体分子または生体材料を撮像するために用いることができる。
【0029】
[0049] 図1は、本発明の一実施形態による流体セルを示す。図1に示すように、流体セル100は、第1チェンバ104と第2チェンバ108とを含む。第1流体112が第1チェンバ104の中にあり、第2流体116が第2チェンバ108の中にある。2種類の流体112、116は、これらが異なる屈折率を有するように選択される。第1流体112は、第2流体116よりも屈折率が高くなるように選択される。2種類の流体112、116の屈折率は、界面120において全内部反射(TIR)を生ずるように選択されている。例えば、第1流体112は細胞質(n=1.36)またはセル・メンブレン(n=1.47)とするとよく、第2流体116は、水性緩衝液(n=1.33)とするとよい。他の例では、第1流体112は塩を含有する。流体112、116の双方は、水溶液である。
【0030】
[0050] また、流体セル100は、界面120も含む。界面120は、固相メンブレン124を含む。界面120は、第1チェンバ104と第2チェンバ108との間に、2種類の流体112、116を分離するように配置されている。2種類の流体112、116間の界面120は、全内部反射(TIR)が発生するのを可能にする。即ち、TIR照明が固相メンブレン(例えば、SiNメンブレン)124において発生し、第1チェンバ104において消衰波を生成する。界面120、特にメンブレン124は、生体分子相互作用のための基板を形成する。
【0031】
[0051] 図2は、界面120の詳細な図である。図2に示すように、界面220は、ウィンドウ224を有するチップ228を含む。チップ228は、ウィンドウ224を覆う固相メンブレンを支持する枠として作用する。このチップの寸法の一例では、5mm×5mm×300μmとすることができ、メンブレンの寸法の一例では、50μm×50μm×5〜50nmとすることができる。界面220は、化学蒸着(CVD)、ウェット・エッチング、およびフォトリソグラフィを含む従来の技法を用いて、適合性のある固相材料(例えば、シリコン系材料)であればいずれでも形成することができる。
【0032】
[0052] 一実施形態では、チップ228はシリコンであり、窒化シリコン・メンブレンで覆われている。尚、このメンブレンは、薄膜に形成することができる誘電体材料であればいずれでもよいことは認められよう。他のメンブレン材料の例には、酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化チタン等が含まれる。他のチップ材料の例には、ガラス、溶融シリカ、クオーツ等が含まれる。
【0033】
[0053] 本明細書において記載する固相メンブレンは、約5〜60nmの厚さとすることができる。例えば、固相メンブレンは約10nmとするとよい。しかしながら、メンブレンの厚さは、2種類の混和性液体間においてTIR照明から生成される消衰波の所望のサイズおよび減衰を得るために選択することができ、5nmよりも薄くするかまたは60nmよりも厚くしてもよいことは認められよう。メンブレンの厚さをナノメートル単位にすると、TIRが発生する、2種類の液体間の界面に、鋭い境界を定めるのに資する。
【0034】
[0054] 尚、実施形態によっては、固相メンブレンがナノポア、ナノスリット、またはナノポア・アレイを含んでもよいことは認められよう。これらのナノポア(1〜100nm)またはナノポア・アレイは、界面を横切る流体を接続する。固相ナノポアは、調節可能な寸法を有し、広範囲の温度、pH、および化学的異変に耐えることができる。ナノポア(1つまたは複数)は、例えば、Arイオン・ビームまたは電子ビーム彫刻を用いて、あるいは反応性イオン・エッチングによって製作することができる。
【0035】
[0055] 図3は、光学顕微鏡検査ツールを用いたTIRに基づく測定のために、通常の顕微鏡ガラス・カバースリップ240上に実装された流体セル100を示す。カバースリップ240は、対物レンズ236上に実装されており、カバースリップ240と対物レンズ236との間には、浸入油238が供給される。1つ以上の生体分子または生体材料が、蛍光体のような光学的バイオマーカに連結され、撮像のためにメンブレン224上で不動化されている。
【0036】
[0056] 光学的バイオマーカは、消衰波への露出に応答して放射線を照明または放出する材料であればいずれでも可能である。光学的バイオマーカの例には、蛍光プロパン(fluorescent propane)または蛍光共振エネルギ転移(FRET:fluorescence resonance energy transfer)タグ(例えば、蛍光体)、量子ドット(quantum dot)、および有機化合物が含まれる。当業者であれば認められるであろうが、光学的バイオマーカには、周知の技法によって、例えば、共有結合のまたは非共有結合の連携(association)によって、対象の生体分子と関連付けることができる。本発明の一実施形態では、光学的マーカを化学的に共役させることができる。本発明の代替実施形態では、再結合融合(recombinant fusion)、例えば、細胞受容体または信号分子によって、生体分子を光学的マーカと関連付けることができる。
【0037】
[0057] レーザ光242は、対物レンズ236の背後焦点面において合焦されている。浸入油238およびガラス・カバースリップ240の屈折率一致のために、光は屈折して媒体1 216に入る。メンブレン224において、光は、2種類の液体212、216の屈折率が一致していないために、全内部反射する(246)。光は、屈折率が高い方(密度が濃い)の媒体から屈折率が低い方(密度が薄い)の媒体に通過するときに、屈折して表面に対する法線から離れて行く。2種類の媒体の界面における入射角が臨界角よりも大きい場合、光は全内部反射して、密度が濃い方の媒体に入る。消衰波246が、密度の薄い方の媒体において発生する。この消衰波は、指数的に減衰する強度を有し、メンブレン224の表面において蛍光体を励起させることができる(通例、励起光の「浸透」厚さは数十nm程度である)。励起された蛍光体250によって生成された光は、ガラス・カバースリップ240の下に位置付けられている対物レンズ236によって合焦することができ、撮像デバイス、例えば、CCDカメラまたは光検出器によって測定することができる。
【0038】
[0058] 一実施形態では、消衰波246の面積がメンブレン224の面積よりも小さくなるように、光を発生する。他の実施形態では、消衰波246の面積がメンブレン224の面積と同じサイズとなるように、光を発生する。
【0039】
[0059] 尚、実施形態によっては、種々の刺激薬を用いて、生きた細胞の表面を局所的に刺激するために、メンブレン内においてナノポア、ナノスリット、またはナノポア・アレイを用いることができることは認められよう。これらの刺激に対する応答は、本明細書において記載する消衰モード撮像を用いて、細胞メンブレン上の遠端において測定することができる。
【0040】
[0060] 生体分子または生体材料(例えば、細胞)は、メンブレン224の上に直接位置付けて撮像することができる。あるいは、薄い緩衝層または中間層を、メンブレン224と撮像しようとする生体分子または生体材料との間に設けてもよい。例えば、有機ポリマー分子の薄膜を中間層として用いることもできる。
【0041】
[0061] 図4は、本発明の実施形態による光学顕微鏡検査ツールの一例400を示す。尚、顕微鏡検査ツール400のコンポーネントおよびこれらコンポーネントの配置は、図4に示すものとは異なっていてもよいことは認められよう。顕微鏡検査ツール400は、レーザ源402、x−軸平行移動ステージ406、レンズ414、レンズ418、白色光源422、偏光ビーム・スプリッタ(PBS)426、レンズ430、対物レンズ436、ダイクロイック・ミラー(DM)468、フィルタ472、ミラー476、レンズ480、およびCCDのような検出器484を含む。第1流体412、第1流体412とは異なる屈折率を有する第2流体416、および固相メンブレン424を含む流体セルが、ガラス・カバースリップ440上に位置付けられている。浸入油が、ガラス・カバースリップ440と対物レンズ436との間に供給される。
【0042】
[0062] 図示した顕微鏡検査ツール400では、レーザ光または白色光を用いて、全内部反射蛍光顕微鏡検査を行うことができる。一実施形態では、レーザ光410がレーザ源402によって発生され、レンズ414、418によって誘導され整形される。レンズ430は、レーザ・ビームのサイズを縮小するように構成されている。尚、レンズ414、418がレーザ・ビームのサイズを縮小してもよいことは認められよう。x−軸平行移動ステージ406を用いてx−軸に沿ってレーザ・ファイバ・カプラを移動させることによって、光をずらして光軸から外れるようにしてもよい。他の実施形態では、白色光源422によって白色光を発生する。更に他の実施形態では、白色光およびレーザ光双方を用いて、全内部反射蛍光顕微鏡検査を行うこともできる。ビーム・スプリッタ426は、レーザおよび/または白色光源422によって発生した光を、第1流体412の中にあるサンプル(例えば、生物分子(1つまたは複数)に向けて誘導するように構成されている。更に他の実施形態では、多数のレーザ波長を同時に、または一度に1つずつ用いて、単色または多色蛍光体を励起させることができる。
【0043】
[0063] レンズ430およびダイクロイック・ミラー468を通過した後、発生した光は、全内部反射が生ずるのに十分な光がサンプルに誘導されるように、対物レンズ436によって絞られる。尚、対物レンズ436は、更に、レーザ・ビームのサイズも縮小できることは認められよう。レーザ・ビームのサイズは、直径が約0.5mm〜1mmであるとよいことは認められよう。レンズ414、418、430、および/または436は、このビームがシリコン・メンブレンにおいて、直径が約5μmからメンブレン424のほぼ面積までのスポット・サイズ(sot size)を形成するように、ビームを収束する。例えば、メンブレン424が50×50μm2である場合、5〜50μmのスポット・サイズを形成することができる。
【0044】
[0064] 光442は、固相メンブレン424において、ガラス・カバースリップ440に向かって全内部反射し、第2流体416内に消衰場が発生する。固相メンブレン424の近傍に配置された蛍光体が、消衰波によって励起され、これによって蛍光体に蛍光光線(fluorescent light)を放出させる。この蛍光光線および反射光452は、次いで、ダイクロイック・ミラー468によってフィルタ472に向けて誘導させられる。ダイクロイック・ミラー468およびフィルタ472は、蛍光光線放出のみを通過させるように、光を濾波する。ミラー476は、蛍光光線を誘導して、レンズ480を通過させ、検出器484に向かわせる。
【0045】
[0065] 検出器484は、北アイルランド、ベルファストに本社があるAndor Technology plc.(Andor)から入手可能なiXon BV887のような、EMCCDカメラとすることができる。他の検出器484の例には、アバランシェ・フォトダイオード(APD)および光倍増管(PMT)が含まれる。検出器484は、Microsoft Windows系パーソナル・コンピュータ、およびSolisソフトウェア(これもAndorから入手可能)のような撮像ソフトウェアといった、しかるべき撮像システムに接続して、検出器484が発生したデータ信号を処理して、画像または一連の画像を生成することができる。データ信号を分析し、蛍光放出を検出し、試験対象の生体分子または生体材料の配列あるいは他の特性を判定するために、カスタム・ソフトウェアを用いることができる。
【0046】
[0066] 尚、界面におけるTIR励起のエリアは、励起ビーム特性に依存することは認められよう。レーザ・ビームは、周知のレーザ・ビーム整形技法を用いて整形し、TIRモードにおけるレーザ照明の場を制御することができる。つまり、ビームのサイズは、所望に応じて、その直径を延長または縮小したり、細長くすることができる。
【0047】
[0067] 図5は、顕微鏡検査ツール400のような顕微鏡検査ツールを用いて発生した画像の例を示す。図5では、サンプル例のTIRF照明504の視野が示されている。また、図5は、2種類の代表的流体、具体的には、7M CsCl(n=1.416)および8M Urea(n=1.416)によって、顕微鏡検査ツールを用いて撮像された単体蛍光DNA分子508も示す。しかしながら、本発明の実施形態にしたがって1つ1つの生体分子を撮像するためには、他の流体を用いてもよいことは認められよう。図5では、単体DNA分子は、窒化シリコン・メンブレン上において、毎秒5フレームの画像取り込みで、2.5までの信号対バックグラウンド比(signal to background ratio)を用いて撮像された。
【0048】
[0068] 図6から図10Bは、メンブレン124がナノポア600を含む本発明の一実施形態を示す。図6に示すように、ナノポア600を有するメンブレン124を含む実施形態は、特に、DNA転座を用いるDNA配列決定に適用可能である。尚、メンブレン124がナノポア610を含む実施形態は、DNA転座を用いるDNA配列決定に限定されるのではないことは認められよう。例えば、本実施形態は、遺伝子型決定(genotyping)、生体分子撮像、および生体分子選別にも適用可能であると考えられる。他の例では、ナノポア600を介して、タンパク質を撮像することもできる。
【0049】
[0069] DNA転座では、単一螺旋DNA分子が、電気泳動的に駆動され、一列になってナノポア600を通過する。尚、これらの実施形態では、流体セル100が、更に、DNA分子を電気泳動的に駆動してナノポア600を通過させるために、流体112、116に印加される電位を発生するように構成されているエネルギ源に結合されている電極も含むことは認められよう。
【0050】
[0070] 図6において、光学的マーカに結合(link)された検出対象の1つの生体分子は、オリゴヌクレオチドであり、交雑して(hybridize)ヌクレオチドA、T、U、C、またはGを表す配列コードになる。一実施形態では、特定的にDNA配列について報告する光学的マーカは蛍光マーカである。標識化手順の一例では、元のDNAが1群のヌクレオチド(各塩基型が3〜16ヌクレオチドの一意の配列と入れ替えられる)と入れ替えられる。次いで、光学的マーカに結合されたオリゴヌクレオチドは、ナノポア配列決定の間に配列を決定されるコード化核酸配列(coded nucleic acid sequence)からの交雑オリゴヌクレオチドの解決(unzipping)時に検出することができる。
【0051】
[0071] 例えば、DNA変換手順の1つでは、元のDNA配列における各塩基は、2つの二進コード・ユニット(0および1が、それぞれ、白丸(open circle)および黒丸(solid circle)で表される)。この場合、0および1は、各々が「S0」および「S1」である10個のヌクレオチドの一意のDNA配列として定義される。単一螺旋変換DNAは、2つのコード・ユニットに対して相補的な2タイプの分子ビーコンと交雑され、最小の断面を表示する。例えば、これらのビーコンの1つは、その5’末端に赤色蛍光体、そしてその3’末端に消光剤(quencher)Qを含有することができ、他方のビーコンは、その5’末端に緑色蛍光体、そしてその3’末端に同じ消光分子を含有することができる。広域スペクトル消光分子Qは、双方の蛍光体を消光する。2つの異なる色の蛍光体が、2つのビーコン間で区別することを可能にする。他のDNA変換手順では、元のDNA配列における各塩基は、4つの一意のコード(配列)の内1つによって表され、次いでこれら4つの一意のコードは、対応する4色分子ビーコンと交雑させられる。双方の手順において、変換されたDNA配列は、ビーコンが互いに隣接する配置を含むので、隣接するビーコン上にある消光剤は、蛍光放出を消光し、個々のコード・ユニットがDNAから順次除去されるまで(最初のビーコンを除く)、DNAは「暗い」ままになっている。本発明と共に用いることができる蛍光体の例には、TMRおよびCy5が含まれる。用いることができる他のタイプの蛍光分子には、CPM、Invitrogenからの一連の蛍光マーカ、ローダミン族、およびTexas Redがある。当業者には周知の他の信号分子も、本発明の範囲に該当するものとする。本発明では、米国特許第6,528,258号においてリストに纏められているものを含む、多数の他の蛍光体も用いることができ、この特許をここで引用したことにより、その内容全体が本願にも含まれるものとする。本発明と共に用いることができる消光分子には、Dabcyl、Dabsyl、メチル・レッド、およびElle Quencherが含まれる。当業者には知られている他の消光分子も本発明の範囲内に該当することとする。これは、隣接する分子および溶液内の自由ビーコンからの蛍光バックグラウンドを大きく減らし、その結果信号対バックグラウンド比が高くなる。
【0052】
[0072] 再度図6を参照すると、蛍光タグ付きオリゴヌクレオチドは、変換されたDNAに対して相補的であり、交雑されて(hybridize)DNAとなり、その分子は電気泳動的にメンブレン124内のナノポア600を介して供給される。ナノポア600は、添加されている蛍光体から発生する異なる色の光の閃光が検出されている間に、変換されたDNA分子から、オリゴヌクレオチドを1つずつ順次剥離させる。分子がナノポアに導入されると、ビーコンが1つずつ引きはがされる。新たなビーコンが除去される毎に、新たな蛍光体が発生する(unquench)。放出されたビーコンは自動的に閉ざされ、それ自体の蛍光を消光し、そのときに拡散してナノポアの近傍から離れる。最初のビーコンの放出時に直ちに、2番目のビーコンからの新たな蛍光体が発光する。
【0053】
[0073] DNA転座速度は、DNA解決動力学によって規制され、塩基間のコントラストは、光学プローブ(またはビーコン)の使用によって得られる。DNAをナノポア600に入れると、イオン電流が急激に遮断レベルまで低下する。DNAが他方の側から出ると、開放ポアの電流レベルが復元される。DNA解決時間(例えば、1〜10ms)を調節するには、しかるべき電圧を用いることができる。例えば、10−bpヘアピンでは、120mV電位により、約10msの解決時間(unzipping time)が得られる。この時間は、電界強度によって、信号対バックグラウンド・レベルを最適化するように調整される。
【0054】
[0074] このようにして、いずれの核酸の配列でも判定することができる。配列を決定すべき核酸のコード化配列への変換、コード化システム、およびナノポア配列決定の詳細な説明は、Soni and Meller (Soni G.V. and Meller A., Progress toward ultrafast DNA sequencing using solid-state nanopores(固相ナノポアを用いた超高速DNA配列決定に向けての進歩)、clinical Chemistry 53, 11(2007)、Meller et al., 2009(米国特許出願公開第2009/0029477号)、およびMeller and Weng(PCT出願第PCT US2009/034296号)において見いだすことができる。これらの参考文献をここで引用したことにより、その全体が本願にも含まれるものとする。尚、この方法はナノポア・アレイによって並列に用いることができることは認められよう。
【0055】
[0075] 図7は、(a)において1ビット、そして(b)において「2ビット」を用いてコード化したナノポア配列決定を示す。図7に示すように、本明細書において記載するデバイスおよび方法によって、1および2ビットDNA読み出しの同時電気および光学的検出を、高い信号/ノイズ比で、そして1回の蛍光体解明(resolution)で行うことが可能になることが示されている。
【0056】
[0076] 2ビット・カラー・コード化は、図8に示す多色TIRF顕微鏡のような、多色光学顕微鏡検査ツールを用いて行うことができる。図8に示す実施形態では、波長が異なる2つのレーザ源802a、802bを個別にまたは同時に照明させて、異なる光学的バイオマーカの個別または同時励起のために、波長が異なる2つの消衰波を生成することができる。同様に、3色以上のコード・システムでは、波長が異なる3つまたは4つのレーザ源を個別にまたは同時に照明させて、異なる光学的バイオマーカの個別または同時励起のために、波長が異なる3つ以上の消衰波を生成することができる。
【0057】
[0077] 図8に示すように、第1レーザ源802aは第1レーザ・ビーム810aを発生し、第2レーザ源802bは第2レーザ・ビーム810bを発生する。これらのレーザ・ビーム810a、810bは、レンズLによって整形され対物レンズ836に誘導される。レンズLは、レーザ源802a、802bによって発生したレーザ・ビーム810a、810bのサイズを縮小するように構成されている。一実施形態では、レーザ源802a、802bは、青色および赤色ダイオード・レーザ(488nmおよび640nm)の組み合わせであり、サンプルを照明するために用いることができる。図4を参照して先に説明したように、光802a、802bは、メンブレン124において全内部反射し、消衰場が発生して、流体セルにおいて撮像しようとする生体分子に結合されている蛍光体を励起する。図8に示す実施形態では、メンブレン124は、先に説明したようなDNA転座を可能にするナノポア600を含む。
【0058】
[0078] 蛍光光線850は、次に、対物レンズ836を用いて集光され、ダイクロイック・ミラーDMおよびフィルタFによって濾波され、撮像用のフレーム転送冷却式電子倍増電荷結合デバイス・カメラ、または光検出器のような、検出器884に誘導される。検出器884は、Microsoft Windows系パーソナル・コンピュータ、およびSolisソフトウェア(これもAndorから入手可能)のような撮像ソフトウェアといった、しかるべき撮像システムに接続して、検出器884が発生したデータ信号を処理して、画像または一連の画像を生成することができる。データ信号を分析し、蛍光放出を検出し、試験対象の生体分子(例えば、DNA)の配列あるいは他の特性を判定するために、カスタム・ソフトウェアを用いることができる。
【0059】
[0079] 図9は、DNA解決のときに、図8の多色光学顕微鏡検査ツールのポア局限カウンタ・ヒストグラム(pore localization counter histogram)の例を示す。
【0060】
[0080] 尚、ナノポア・アレイの光学的可視化は、本明細書において記載した実施形態を用いても行えることは認められよう。例えば、本明細書において記載する光学的可視化は、図10Aに示すような、多数のポアからの同時読み出し、および/または図10Bに示すような多数のビットの同時読み出しに用いることができる。
【0061】
[0081] また、本発明の実施形態は、例えば、SiNメンブレンのような固相材料を用いて、細胞毒性および生体適合性を研究するために、細胞および組織癒着(adhesion)を可視化するために用いることもできる。
【0062】
[0082] また、本発明の実施形態は、ナノポア、ナノスリット、またはナノポア・アレイを介して界面を横切る媒体内において刺激によって細胞を局所的に励起させるため、そしてメンブレンを介して光学顕微鏡検査を用いて細胞の応答を測定するためにも用いることができる。新たな生体材料(SiNメンブレンのような生体材料)との接触または刺激物に対する応答は、細胞メンブレン上にあるバイオマーカの蛍光読み出しによって測定することができる。
【0063】
[0083] 本発明の実施形態は、固相メンブレンにおいて製作されたナノポア内におけるその通行(transit)または一時的滞留(temporal lodging)の間、単分子解明によって、蛍光標識またはバイオポリマーが付けられた核酸を撮像するために用いることができる。
【0064】
[0084] また、本発明の実施形態は、転座し一時的にナノポアに滞留するDNAのような、バイオポリマー上に化学量論的に結合され、蛍光標識が付けられたタンパク質の化学量論を検出するために用いることもできる。
【0065】
[0085] 本発明の実施形態は、多色検出に用いることができ、したがって、DNA上に結合された生物学的に別個のタンパク質の空間的局限を検出するために用いることもできる。
【0066】
[0086] 本発明の実施形態は、ナノポアおよび高スループット薬剤スクリーニングによるDNA配列決定に用いることができる。
【0067】
[0087] 尚、TIR照明の場のサイズは、入射レーザ・ビームのビーム径および/または形状を変化させることによって、用途に応じて変化させることができることは認められよう。
【0068】
[0088] 一実施形態では、図17に示すように、対物レンズ236aを、トランス・チェンバ204の下ではなく、シス・チェンバ(cis chamber)208の上に配置することができ、対物レンズ236aを撮像に用いることができる。この構成では、対物レンズ236aではなくレンズ236bを用いて、レーザ・ビーム242をメンブレン224に合焦させることができる。図3を参照して先に説明したように、浸入油238およびガラス・カバースリップ240の屈折率一致のために、レーザからの光242(レンズ236bを通過した)は屈折して媒体1 216に入る。メンブレン224において、光は、2種類の液体212、216の屈折率が一致しないことのために、全内部反射し(246)、消衰波246が、密度の低い方の媒体、即ち、媒体1 216において発生する。消衰波246は、指数的に減衰する強度を有し、メンブレン224の表面(励起光の典型的な「浸透」深さは数十nmである)において、蛍光体を励起することができる。励起された蛍光体によって生成された光は、シス・チェンバ208上に位置付けられた対物レンズ236aによって合焦し、CCDカメラ484または光検出器によって測定することができる。
実施例
実施例1
サンプルの外形形状
[0089] 中央に厚さが20〜50nmの自立窒化シリコン・ウィンドウ[50μm×50μm]を有するシリコン・チップ[5mm×5mm×300μm]を、標準的なフォトリソグラフ法によって、シリコン・ウェア上のLPCVD被覆SiN層上に作成した。ガラス・カバースリップ上にこれらのチップを実装し、図3に示したように、チップとガラス・カバースリップとの間に、厚さ2〜10μmのマイクロチャネルを形成するために、二部PTFE/CTFE流体セルを設計した。このマイクロチャネル、即ち、トランス・チェンバ204を、屈折率がより高い流体(70%グリセロール[n=1.42])で満たし、シス・チェンバ208を、サンプル緩衝水溶液[n=1.33]で満たした。
TIRFの設定および光路図
[0090] 全内部反射[TIR]顕微鏡検査を、図4に示したように設定した。レーザ・ビーム・サイズを0.7mmに縮小し、市販の倒立顕微鏡(Olympus IX-71)の特別設計したバック・ポートに発射し、外部に取り付けられた200mm焦点長のレンズを通じて、60×1.45NA油浸入TIRF対物レンズの背後焦点面において合焦させた。レーザ・ファイバ・カプラをX−軸に沿って動かすことによって、レーザ点を光軸から外れるようにずらした。光が窒化シリコン・メンブレンにおいてグリセロール−水界面に達するまで、光が油、ガラス・カバースリップ、および70%グリセロールを通ってトランス・チェンバ内で屈折するように、ガラス[n=1.52]、70%グリセロール[n=1.42]、およびサンプル緩衝剤[n=1.33]の屈折率を選択した。この界面におけるTIRモードの臨界角は、スネルの法則によって記述されるように、ガラス−水界面と同じである。
【0069】
【数1】
【0070】
ここで、nはガラス、グリセロール70%、または水の屈折率を表し、θはそれぞれの界面における入射角である。視野の中心を、屈折率が高い流体層の厚さに応じて、光伝搬方向にずらす。蛍光放出は、外部レンズによって3倍に拡大され、同じ対物レンズによって収集され、しかるべき光学フィルタを通過した後に、市販のEMCCDカメラ(Andor iXon BV887)上で撮像した。撮像は、販売業者が提供したAndor Solisソフトウェアによって、または特注で書かれたソフトウェアを用いて行われた。
サンプル不動化
[0091] 5’末端にビオチン共役があり、5’末端から20番目の位置にアミン修飾チミン塩基があるDNA分子[57bp]をIDT Techから購入した。DNA分子に、販売業者のプロトコルを用いて、ATTO647N染料分子[ATTO−tech]で標識を付けた。ストレプトアビジン・ビオチン(streptavidin-biotin)化学薬品によって、窒化シリコン上でDNA分子を不動化した。新たに用意したピラニア溶液(Piranha solution)において表面を浄化し(硫酸および過酸化水素の7:3v/v溶液において15分)、次いでDI水において徹底的に洗浄した。0.1mg/ml BSA−ビオチンにおいて一晩表面を培養し、結合緩衝剤[10mM Tris−CL、pH8.5]で洗浄し、ストレプタビディンにおいて30〜60分培養し、結合緩衝剤において洗浄し、次いでビオチンで標識を付けたDNAで15〜30分培養した。次いで、流体セルに表面を装填した。70%グリセロールを、ガラス・カバースリップとシリコン・チップとの間にあるトランス・マイクロチャネルに充填し、結合緩衝剤をシス・チェンバに充填した。次いで、TIRFMによって窒化シリコン界面において表面を撮像した。
結果
[0092] 図4に示したように、窒化シリコン・メンブレン(例えば、サイズが20×40μm2、厚さが20nm)を、ガラス・カバースリップ上に装填した。トランス・チェンバおよびシス・チェンバにおける2種類の流体を、それぞれ、グリセロール70%(v/v)(n=1.42)および水(n=1.33)に選択した。
【0071】
[0093] 励起レーザ・ビームを、図5に示したように、メンブレンの寸法よりも小さい消衰照明の場を形成するように整形した。ビーム径を0.7mmに縮小することによって、スポット・サイズがSiNメンブレン・サイズよりも小さくなった。
【0072】
[0094] 対物レンズ(n=1.55)に入射した光は伝搬して、浸入油(n=1.52)、ガラス・カバースリップ(n=1.55)、液体2(70%グリセロール)(n=1.42)を通過し、界面を横切り、最後に水(n=1.33)を通過した。光は、グリセロールを水から分離する界面において、全内部反射を発生した。
【0073】
[0095] 励起場の形状を較正するために、メンブレンのシス側に20nmTMRビーズを吸着させ、TIRFモードで撮像した。これらのTMRビーズをX軸およびY軸に沿って移動させ、撮像光学素子の倍率を用いることによって、消衰照明の場が約10×20μm2までであると計算した。
【0074】
[0096] この例では、3’末端においてビオチン化され、5’末端においてATTO647N標識が付けられた1つ1つのDNA分子が、ビオチン−ストレプトアビジン化学薬品を用いて、窒化シリコン表面のシス側で不動化された(即ち、方法および材料)。
実施例2
TIRFの設定
[0097] 実験において、ナノポア600を有する自立SiNメンブレン(20×20μm2)1124を内蔵するシリコン・チップ1128を、界面として用いた。シリコン・チップ1128をガラス・カバースリップ1140上に装填し、ガラス・カバースリップ1140を、特注で製作したクロロトリフルオロエチレン(CTFEポリマー)流体セル1138上に装填し、図11に示したような、微小流体トランス・チェンバ1100を作成した。流体セル1138は、シリコン・チップ1128を保持するインサート1138aと、流体チェンバを形成する外側セル1138bとを含む。高速硬化ポリジメトリシロキサン(PDMS:polydimethlysiloxane)を用いて、シリコン・チップ1128をCTFEインサート1138aに接合し、ガラス・カバースリップ1140を外側セル1138bに接合した。インサート1138aを有する流体チェンバはシス・チェンバであり、シリコン・チップ1128とガラス・カバースリップ1140との間の空間がトランス・チェンバとなる。流入−流出フロー・チャネルを用いて、トランス・チェンバに、屈折率緩衝剤1112を充填した。電気的測定のために、フロー・チャネルの側面開口内にトランス電極1140aを設け、インサート(Ag/AgCl双方)1116において緩衝剤の中にシス電極1140bを埋没させた。ナノポア600を用いて、図11Aに示すように、光学可視化および測定のために、流体セル1100を倒立顕微鏡1136に対して一直線上に揃えた。
【0075】
[0098] シス・チェンバ nw≒1.33(水緩衝剤、1M KClおよび10mMトリス、pH=8.5)およびトランス・チェンバ(高い屈折率nCsを有する水性緩衝溶液) において用いた緩衝剤の屈折率は、ガラスの屈折率ng=1.5よりも小さかった(nw<nCs<ng)。即ち、7M CsClおよび10mMトリス、pH=8.5(「Cs7M」、n=1.41)を含有する塩緩衝溶液を、シス・チェンバにおける緩衝剤として用いた。
【0076】
[0099] ガラス・カバースリップ側から、ガラス/トランス・チェンバ界面の反射臨界角より小さいがトランス/シス臨界角よりは多少大きな角度θgで、平行光ビームを導入し、図11Bに示すように、SiNメンブレンにおいてTIR励起を生じさせた。高開口数(NA)の対物レンズ(Olympus 60X/1.45)を用いて、入射レーザ・ビームをその背後焦点面(d)における軸外れ点(off axis point)に合焦させることによって、TIRを行い、入射角θgを制御した。TIR励起領域の面内位置を、距離d=htan(θCs)だけ変位させる。ここで、hはトランス・チェンバの高さである。
【0077】
[00100] 焦点距離が長く色収差を補正した二重レンズ(200mm)を用いて、SiNメンブレン上において照明される面積が約10×20μm2となるように、入射するレーザ・ビームの幅を整形した。単一モード偏光保存光ファイバ(single-mode polarization-preserving optical fiber)を介して、640nmレーザ(20mW)(iFlex2000, Point-Source, Hamble, UK)をシステムに結合し、直径が0.7mmの平行ガウス・レーザ・ビームを生成した。この高品質のビームによって、対物レンズの入射面にぴったり合焦したスポットを確保し、こうして望ましくない散乱を最小に抑える。普通の手順を用いて、メンブレン表面のシス側に、ストレプトアビジンを被覆した。短いビオチン化DNAオリゴに、各々、1つのATTO646N蛍光体で標識を付け、メンブレン表面上で不動化し、最大EM利得および10ms積算(integration)で動作する電子倍増CCDカメラ上に蛍光光線を投射することによって撮像した。電子倍増電荷結合デバイス(EMCCD)カメラ(Andor, iXon DU-860)を用いて、メンブレン表面からの蛍光画像を記録した。図12は、本発明の一実施形態にしたがって、TIRFの下で撮像されたメンブレン表面上で不動化された1つ1つの分子の3つの典型的な画像を表示する。図12に示すように、1つ1つの蛍光体が、高いコントラストで解明されており、これ以上の画像処理を必要としない。
【0078】
[00101] 入射角が大きくなると、TIRの臨界角のために、メンブレンのシス側から観察されていたレーザ光の突然の消失、(2)顕微鏡の接眼レンズを用いて対物レンズの背後焦点面において可視化された、変位TIRレーザ・ビームの出現、そして(3)バックグラウンド強度の急減による、信号分子撮像のためのバックグラウンドへの信号(信号対バックグラウンド比)の増大が生ずる。2倍以上の信号対バックグラウンドの増加が、エピ照明(epi-illumination)(サンプルの一方側からの照明および検出)によって、SiNメンブレン上で不動化された1つ1つの蛍光体の画像において達成された。
【0079】
光学および電気信号の同期検出
[00102] 光学信号および電気信号の同期検出のために、ハードウェア(例えば、Microsoft WindowsまたはLinux互換パーソナル・コンピュータ)とLABVIEWソフトウェアとの組み合わせを設計した。図13は、取り込みハードウェアを模式的に示す。Axopath200B増幅器1386(Molecular Devices, Inc., Sunnyvale, CA, USA)を、Ag/AgCl電極にヘッドステージ1388を介して接続し、ナノポアを横切るイオン電流信号を増幅する。外部四極バターワース・フィルタ1390を用いて、このイオン電流信号に50KHzでロー・パス・フィルタをかけ、画像取り込みボード1394(Andor iXon取り込みボード)を介してCCDカメラから画像データを受け取った 同じPC内にある多機能データ取り込みボード1392に入力する。多機能データ取り込みDAQボード1392(National Instruments, PCI-6154)を用いて、16ビット・アナログ/デジタル変換分解能で、イオン電流信号を取り込んだ。EM−CCDカメラ1384からの「発火」パルス(各露出の開始を印すTTLパルス)が、イオン電流の取り込みをトリガし、カウンタ・ボード(National Instruments, PCI-6602)上において高精度のタイム・スタンプを生成するために用いられた。カウンタ・ボードは、クロック・レートが250KHzのRTSIバスを用いて、内部でDAQボードと同期を取られていた。したがって、組み合わされたデータ・ストリームは、イオン電流のサンプリングと同期を取られているCCDフレームの各々の開始時における一意のタイム・スタンプを含んでいた。転座イベントが、イオン電流の落下によって検出されたとき、ソフトウェア1396は、カウンタ情報の中で対応するフレーム番号を検索し、この番号に対応する実際の画像をセーブした。カメラ・フレーム・レートは、約1KHz(発火パルス・レート)に設定した。
【0080】
[00103] 図14Aから図14Cは、電気信号および光信号の同期を示す。長さがミリ秒単位の電気パルスを、ファンクション・ジェネレータ(function generator)から発生し、増幅器のヘッドステージに電気的に結合した。これらの電流パルスは、ナノポア信号と形状および時間メモリが同様である。同じ信号を用いて励起レーザをON/OFF変調し、光および電気パルスの同期源を設けた。同期検査のために、蛍光ビーズをメンブレン上で不動化し、前述のようなカメラを用いて撮像した。
【0081】
[00104] 2つの様式を組み合わせて、ナノポアを介したDNA転座の間に同期光および電気信号を測定した。最初に、メンブレン上においてポアの位置を特定した。ポアからの蛍光信号は、位置が固定であり、電気信号との同期時(in-sync)に発光(light up)する。つまり、ポアの位置に対応する画素は、ときの経過と共に、最も高い傾向の強度を蓄積し、画像の総和によって、CCD上のポア位置に対応するピークを明らかにする。一旦ポア位置が特定されたなら、このポアに対応する画素からの強度を、更なるデータ分析のために用いた。
実施例3
[00105] 4nmポアを介して転座する蛍光標識付きdsNDAを検出するために、同時光学および電気的測定を行った。この実験におけるサンプル濃度は、0.1nM〜0.2nMであった。図15Aおよび図15Bは、ポアの形状、および約4nmのポア例のTEM画像を模式的に示す。421bp断片(DNA−A1647)に、Alexa647蛍光体で標識を付け、重合連鎖反応(PCR)反応、それに続くアミン反応染料との共役の間、低濃度のアミノ修飾チミン塩基の合体によって用いられる。
【0082】
[00106] 図16Aおよび図16Bに示すように、9つの代表的イオン電流およびそれらの対応する蛍光強度イベントが、DNA−A1647分子をポアのシス側に添加した後に示される(200mVのバイアスによって4nAの開放ポア電流が発生し、最大EM利得で1msの蓄積毎に画像を取り込んだ)。ナノポアの位置を、前述のように判定した。図示する蛍光強度は、ナノポアを中心に配されたCCD上の3×3画素エリアから抽出されたものである。尚、電流および光データの同期取り込みが、イベント毎に内部バックグラウンド閾値を定めるのに役立つことは認められよう。電気的イベントの約5ms前のポア位置における強度を、そのイベントのバックグラウンド値として用いた。ポア位置における強度が少なくとも1標準偏差だけその対応するバックグラウンドよりも高かった光学イベントのみが分析において含められ、そのイベントが有意なバックグラウンド閾値を有し、疑似信号を排除することを確保する。
【0083】
[00107] 尚、以上の詳細な説明および以下の例は、例示に過ぎず、本発明の範囲に対する限定と見なしてはならないことは言うまでもない。開示した実施形態に対する種々の変更や修正も、当業者には明白であり、本発明の主旨および範囲から逸脱することなく行うことができる。更に、特定した全ての特許、特許出願、および刊行物は、本明細書において引用したことにより、例えば、本発明と関連付けて用いることができるそのような刊行物に記載されている方法を記載および開示するために、その内容が本願にも明示的に含まれるものとする。これらの刊行物は、本願の出願日よりも前に、それらの開示のためにのみ提供されたものである。これに関していかなるものも、先願発明のためであってもまたは他のいかなる理由であっても、本発明者がこのような開示よりも先行する資格を本発明者が有さないことの承認として解釈してはならない。日付についてのあらゆる言明またはこれらの文書の内容に関する表現は、出願人に入手可能な情報に基づいており、これらの文書の日付または内容の正確さに関していかなる承認をも構成することはない。
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互引用
[0001] 本願は、2009年3月26日に出願された米国仮特許出願第61/211,260号に対して、法によって与えられるいずれの権利をも、そして全ての権利を主張する。
政府援助
[0002] 本発明は、米国国立衛生研究所によって裁定された契約第HG−004128号の下で、政府支援によって行われた。
発明の分野
[0003] 本発明は、光学顕微鏡の分野に関する。特に、本発明は、生体分子の撮像改良のために、2種類の流体間にある薄い固相界面を利用する。
【背景技術】
【0002】
[0004] 最初の参照人ゲノム配列の完成は、ゲノム異変が直接薬剤の発見や医学的治療に影響を及ぼす時代の幕開けを印した。この新たな枠組みのために、費用がかからず非常に高速なDNA配列決定方法が早急に必要となった。近い将来、開業医は、薬剤を処方する前に、臨床設備(clinical setting)において個々の患者のDNAを日常的に分析し、あらゆる薬剤に関するゲノム情報が文書化されているオンライン・データベースとそれらを照合することが可能になるであろう。加えて、手の届く範囲の配列決定技術が、比較ゲノム学および分子生物学における研究の様相を一変させ、科学者が細胞異体(cell variants)からゲノム全体の配列を素早く決定できるようになるであろう。超高速でしかも安価なDNA配列決定を実現するためには、サンガーのジディオキシ・プロトコルに基づく古典的な方法に取って代わる新たな技術が必要とされる。これらの新たな技術は、2つの主要な障害に取り組まなければならない。(1)サンプル・サイズを最小にまで縮小し、1つのDNA細胞または少数のコピーからの配列読み出しを可能にしなければならない。(2)読み出し速度は、現在の技術的現状と比較して、数桁上昇させなければならない。
【0003】
[0005] 窒化シリコン、酸化シリコン、およびその他のような固相面が、再生医学、埋め込み可能なデバイス、および基本的な研究コンテキストを含む、種々の生化学用途において用いられている。薄い固相面は、例えば、生物検知(biosensing)およびDNA配列決定の用途において用いられるナノスリットやナノポア(nanopore)アレイのような、異なるミクロおよびナノ構造デバイスのコンテキストにおいて用いられている。窒化シリコン・メンブレンは、最近になって、生体分子検出およびDNA配列決定というような用途に合った固相ナノポアを作成するのに適した基板となることが示された。DNA転座の単一分子光学検出を必要とし、固相ナノポアを介して解決する固相デバイスが、生物検知およびゲノム配列決定にはきわめて重大であると考えられている。これらのデバイスによる光信号の単一分子生体内測定には、顕微鏡検査の消衰モード(evanescent mode)を用いることが有用である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
[0006] 生物医学研究および医療用デバイスの分野においては、対象の材料を通した撮像によって分子、細胞、および組織を研究できることが望ましい。このような撮像技法の1つに、全内部反射蛍光顕微鏡検査(TIRFMまたはTIRF)がある。しかしながら、これらのコンテキストにおいて用いられてきた固相材料は、TIRFのような技術的現状の顕微鏡検査方法とは適合性がない。既存の技法では、これらの固相材料面を、ガラス・カバースリップのような、他の表面の消衰場(evanescent field)内に持ち込むことが難しく、更に、窒化シリコン・メンブレンおよび生体サンプルをTIRF消衰場領域(regime)に持ち込むのは、とても厄介である。更に、粒子の固有密度(クリーン・ルーム環境においても)のために、これらの窒化シリコン・チップの処理最中に発生する粒子、およびこれらの窒化シリコン・メンブレン・チップの温度制約という制限のために、これらのナノポアを窒化シリコン面で密閉するのは、難しい作業となる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[0007] 本発明の実施形態は、固相メンブレン(ナノポア・デバイスまたは他の生体サンプルを保持する)を挟む2つの媒体間における屈折率整合TIRFM (全内部反射蛍光顕微鏡検査)によって、これらの固相メンブレンにおいて消衰モード励起を達成する。これによって、メンブレン上における1つ以上の生体分子の高分解能、高コントラスト、および高感度画像の取り込みが可能となる。
【0006】
[0008] 本発明の一態様によれば、光学顕微鏡検査ツール用流体セルが開示される。この流体セルは、第1側と、第2の対向する側とを有する固相メンブレンと、メンブレンの第1側に配置された第1流体チェンバであって、第1屈折率を有する第1流体を収容する、第1流体チェンバと、メンブレンの第2側に配置された第2流体チェンバであって、第2屈折率を有する第2流体を収容する第2流体チェンバとを含み、第1屈折率が第2屈折率よりも高い。
【0007】
[0009] 固相メンブレンは、窒化シリコン、酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化チタン、またはその他の誘電体材料とするとよい。
【0008】
[0010] 固相メンブレンは、シリコン・ウェハ上に堆積された窒化シリコン層を含むことができる。窒化シリコン層の厚さは、5〜60nmとするとよい。シリコン・ウェハは、ウィンドウを含むことができ、窒化シリコン層がウィンドウを覆うか、またはこのウィンドウを横切って広がる。
【0009】
[0011] 第1流体は、水性緩衝溶液または水とすることができる。第2流体は、細胞流体(cellular fluid)、細胞メンブレン、またはグリセロールとすることができる。第1流体は、第1流体は、濃縮尿素溶液またはCsClとしてもよい。
【0010】
[0012] 光学的バイオマーカに結合された生体分子が、メンブレンの第2側に供給することができる。この生体分子は、DNA分子とすることができる。この生体分子は、タンパク質分子であってもよい。光学的バイオマーカは、励起可能な蛍光体とすることができる。
【0011】
[0013] 第1流体チェンバは、マイクロチャネルとすることができる。
【0012】
[0014] 固相メンブレンは、少なくとも1つのナノポアをを含むことができ、実施形態によっては、複数のナノポアを含んでもよい。複数のナノポアは、円形または多角形アレイに配列することができる。
【0013】
[0015] 本発明の他の態様によれば、1つ1つのDNA分子を撮像するための光学顕微鏡検査ツールが開示される。この光学顕微鏡検査ツールは、シリコン・ウェハのウィンドウを覆う固相メンブレンと、固相メンブレンの一方側にある第1流体チェンバと、第1流体チェンバの中にあり第1屈折率を有する第1流体と、メンブレンの他方側にある第2流体チェンバと、第2流体チェンバの中にあり、第1屈折率よりも低い第2屈折率を有する第2流体とを備えている流体セルと、ガラス・カバースリップであって、このガラス・カバースリップが第1流体チェンバの底面を形成するように、流体セルが実装されている、カバースリップと、対物レンズと、対物レンズとガラス・カバースリップとの間にある浸入油と、対物レンズにおいて光を誘導するように構成されている光源であって、固相メンブレンが覆うウィンドウよりも小さい消衰照明の場を発生するように、対物レンズが光を合焦するように構成されている、光源と、固相メンブレンにおいて1つ1つのDNA分子によって放出される光を検出する撮像検出器とを含む。
【0014】
[0016] 光源は、少なくとも1つの励起レーザを含むことができ、実施形態によっては、異なる波長のレーザ・ビームを生成する複数のレーザを含むことができ、撮像検出器は、電子倍増電荷結合デバイス(CCD)カメラ、または光検出器を含むことができる。
【0015】
[0017] 1つ1つのDNA分子を固相メンブレン上に不動化するために、ビオチン−ストレプトアビジン化学薬品を用いることができる。
【0016】
[0018] 本発明の更に他の態様によれば、1つ1つの生体分子を撮像するための光学顕微鏡検査ツールが開示される。この光学顕微鏡検査ツールは、異なる屈折率を有する第1流体と第2流体との間にある固相メンブレンにおいて消衰照明の場を発生する手段と、固相メンブレンにおいて1つ1つの生体分子に結合されている光検出器によって放出される光を検出する手段とを含む。
【0017】
[0019] 固相メンブレンにおいて消衰照明の場を発生する手段は、励起レーザと対物レンズとを含むことができる。光学的マーカによって放出された光を検出する手段は、光検出器、または電子倍増CCDカメラを含むことができる。
【0018】
[0020] また、光学顕微鏡検査ツールは、更に、1つ1つの生体分子を固相メンブレン上に不動化する手段を含むこともできる。
【0019】
[0021] 消衰照明の場は、固相メンブレンの寸法よりも小さくするとよい。
【0020】
[0022] 本発明の更に他の態様によれば、単体の生体分子を撮像する方法が開示される。この方法は、異なる屈折率を有する第1流体と第2流体との間にある固相メンブレンにおいて、消衰照明の場を発生するステップと、固相メンブレンにおいて、1つ1つの生体分子に結合されている光検出器によって放出される光を検出するステップとを含む。
【0021】
[0023] また、この方法は、1つ1つの生体分子を固相メンブレン上に不動化するステップも含む。
【0022】
[0024] 検出された光から、画像を発生する。
【0023】
[0025] 本発明の更にまた他の態様によれば、単体DNA分子を撮像する方法が開示される。この方法は、光学顕微鏡検査ツールの対物レンズに光を誘導するステップと、第1流体を通過するように光を誘導するステップと、第2流体において消衰照明の場を発生するために、窒化シリコン・メンブレンにおいて光を反射させるステップと、消衰照明の場によって励起され単体DNA分子に結合されている光学的バイオマーカによって放出される光を、撮像検出器に誘導するステップとを含む。
【0024】
[0026] 消衰照明の場は、第2流体内において発生することができる。単体DNA分子は、第2流体内において、窒化シリコン・メンブレン上に不動化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、本発明の一実施形態による流体セル(fluid cell)の模式図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態による流体セルの界面の斜視図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態による、界面におけるTIRを示す模式図である。
【図4】図4は、本発明の一実施形態による光学顕微鏡測定ツールの模式図である。
【図5】図5は、本発明の一実施形態にしたがってTIRF下で撮像された1つのDNA分子の蛍光画像である。
【図6】図6は、本発明の一実施形態によるDNA配列決定手法を示す模式図である。
【図7】図7は、本発明の一実施形態にしたがって、1ビット(a)および2ビット(b)読み出し値を用いた、同時電気光学検出を示す模式図である。
【図8】図8は、本発明の一実施形態による多色光学顕微鏡検査ツールの設定の模式図である。
【図9】図9は、本発明の一実施形態によるポア局限カウンタ・ヒストグラムである。
【図10A】図10Aは、本発明の一実施形態による、多数のポアからの同時読み出しを含むマルチポア検出における追加ステップの図である。
【図10B】図10Bは、本発明の一実施形態による、多数のビットからの同時読み出しを含むマルチポア検出における追加ステップの図である。
【図11】図11は、本発明の一実施形態による流体セルの模式図である。
【図11A】図11Aは、本発明の一実施形態による図11の流体セルの詳細な模式図である。
【図11B】図11Bは、本発明の一実施形態による図11の界面の詳細な模式図である。
【図12】図12は、本発明の一実施形態にしたがってTIRFの下で撮像した1つのDNA分子の蛍光画像である。
【図13】図13は、本発明の一実施形態による分析ハードウェアのブロック図である。
【図14A】図14Aは、本発明の一実施形態による電気信号および光信号の同期を示す。
【図14B】図14Bは、本発明の一実施形態による電気信号および光信号の同期を示す。
【図14C】図14Cは、本発明の一実施形態による電気信号および光信号の同期を示す。
【図15A】図15Aは、本発明の一実施形態による、ナノポアを通したDNA分子のスレッディング(threading)を示す。
【図15B】図15Bは、本発明の一実施形態による、ナノポアを通したDNA分子のスレッディング(threading)を示す。
【図16A】図16Aは、図15Aのスレッディング・イベント中における電気信号および光信号の同期を示す。
【図16B】図16Bは、図15Bのスレッディング・イベント中における電気信号および光信号の同期を示す。
【図17】図17は、本発明の一実施形態による、界面におけるTIRを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[0046] 本発明の実施形態は、厚さがナノメートル単位の固相メンブレンを介した1つ1つの分子および生体材料双方の撮像方法に関する。この方法が優位であるのは、1つ1つの分子および生体材料の、従来からの電気的測定に加えて、光学的(例えば、蛍光)測定を可能にするからである。一実施形態では、2種類の混和性/非混和性流体間における薄い固相界面を介して、消衰モードで、1つの分子または生体材料を撮像する。流体セルが、屈折率が異なる2つの混和性流体間に、固相界面を形成する。この固相界面は、厚さが数ナノメートルから数十ナノメートル程度とすることができ、そして窒化シリコン、参加シリコン、および/またはその他で作ることができる。
【0027】
[0047] 固相界面におけるナノポアまたはナノポア・アレイを介した生体分子(例えば、DNA、RNA、またはタンパク質)の転座のために、2つの流体に電位を印加することができる。DNA転座では、単一撚り合わせ(single-stranded)DNA分子が、一列状にナノポアを通り抜けるように電気泳動的に駆動される。この実施形態では、ターゲットDNA配列の各塩基(base)は、生化学変換によって、最初に2または4ユニット・コード、2 10−20bpヌクレオチド配列上にマッピングされる。これら2−ユニットまたは4−ユニット・コードは、次に、交雑されて、相補的な、蛍光標識が付いた(fluorescently labeled)、そして自己消滅型分子ビーコン(self-quenching molecular beacon)となる。ナノポアを介した転座の間に分子ビーコンが順次解決されるに連れて、これらの蛍光タグが消されなくなり、単一色、または多色(例えば、2つ以上の色)全内部反射蛍光(TIRF)顕微鏡によって読み取られる。結果的に得られた単色光信号または多色光信号は、次に、ターゲットDNA配列に相関付けられる。
【0028】
[0048] 本発明の実施形態に優位性があるのは、固相界面上で不動にさせられ、「厚い」水性流体層(即ち、屈折率が大きい流体)上に位置付けられた1つ1つの生体分子または生体材料の、高分解能および高感度画像の取り込みを可能にするからである。更に具体的には、この「厚い」流体層内深くに消衰場を実現することによって、薄い固相界面における分子または生体材料の高コントラスト光学検出を、1つ1つの生体分子または生体材料を撮像するために用いることができる。
【0029】
[0049] 図1は、本発明の一実施形態による流体セルを示す。図1に示すように、流体セル100は、第1チェンバ104と第2チェンバ108とを含む。第1流体112が第1チェンバ104の中にあり、第2流体116が第2チェンバ108の中にある。2種類の流体112、116は、これらが異なる屈折率を有するように選択される。第1流体112は、第2流体116よりも屈折率が高くなるように選択される。2種類の流体112、116の屈折率は、界面120において全内部反射(TIR)を生ずるように選択されている。例えば、第1流体112は細胞質(n=1.36)またはセル・メンブレン(n=1.47)とするとよく、第2流体116は、水性緩衝液(n=1.33)とするとよい。他の例では、第1流体112は塩を含有する。流体112、116の双方は、水溶液である。
【0030】
[0050] また、流体セル100は、界面120も含む。界面120は、固相メンブレン124を含む。界面120は、第1チェンバ104と第2チェンバ108との間に、2種類の流体112、116を分離するように配置されている。2種類の流体112、116間の界面120は、全内部反射(TIR)が発生するのを可能にする。即ち、TIR照明が固相メンブレン(例えば、SiNメンブレン)124において発生し、第1チェンバ104において消衰波を生成する。界面120、特にメンブレン124は、生体分子相互作用のための基板を形成する。
【0031】
[0051] 図2は、界面120の詳細な図である。図2に示すように、界面220は、ウィンドウ224を有するチップ228を含む。チップ228は、ウィンドウ224を覆う固相メンブレンを支持する枠として作用する。このチップの寸法の一例では、5mm×5mm×300μmとすることができ、メンブレンの寸法の一例では、50μm×50μm×5〜50nmとすることができる。界面220は、化学蒸着(CVD)、ウェット・エッチング、およびフォトリソグラフィを含む従来の技法を用いて、適合性のある固相材料(例えば、シリコン系材料)であればいずれでも形成することができる。
【0032】
[0052] 一実施形態では、チップ228はシリコンであり、窒化シリコン・メンブレンで覆われている。尚、このメンブレンは、薄膜に形成することができる誘電体材料であればいずれでもよいことは認められよう。他のメンブレン材料の例には、酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化チタン等が含まれる。他のチップ材料の例には、ガラス、溶融シリカ、クオーツ等が含まれる。
【0033】
[0053] 本明細書において記載する固相メンブレンは、約5〜60nmの厚さとすることができる。例えば、固相メンブレンは約10nmとするとよい。しかしながら、メンブレンの厚さは、2種類の混和性液体間においてTIR照明から生成される消衰波の所望のサイズおよび減衰を得るために選択することができ、5nmよりも薄くするかまたは60nmよりも厚くしてもよいことは認められよう。メンブレンの厚さをナノメートル単位にすると、TIRが発生する、2種類の液体間の界面に、鋭い境界を定めるのに資する。
【0034】
[0054] 尚、実施形態によっては、固相メンブレンがナノポア、ナノスリット、またはナノポア・アレイを含んでもよいことは認められよう。これらのナノポア(1〜100nm)またはナノポア・アレイは、界面を横切る流体を接続する。固相ナノポアは、調節可能な寸法を有し、広範囲の温度、pH、および化学的異変に耐えることができる。ナノポア(1つまたは複数)は、例えば、Arイオン・ビームまたは電子ビーム彫刻を用いて、あるいは反応性イオン・エッチングによって製作することができる。
【0035】
[0055] 図3は、光学顕微鏡検査ツールを用いたTIRに基づく測定のために、通常の顕微鏡ガラス・カバースリップ240上に実装された流体セル100を示す。カバースリップ240は、対物レンズ236上に実装されており、カバースリップ240と対物レンズ236との間には、浸入油238が供給される。1つ以上の生体分子または生体材料が、蛍光体のような光学的バイオマーカに連結され、撮像のためにメンブレン224上で不動化されている。
【0036】
[0056] 光学的バイオマーカは、消衰波への露出に応答して放射線を照明または放出する材料であればいずれでも可能である。光学的バイオマーカの例には、蛍光プロパン(fluorescent propane)または蛍光共振エネルギ転移(FRET:fluorescence resonance energy transfer)タグ(例えば、蛍光体)、量子ドット(quantum dot)、および有機化合物が含まれる。当業者であれば認められるであろうが、光学的バイオマーカには、周知の技法によって、例えば、共有結合のまたは非共有結合の連携(association)によって、対象の生体分子と関連付けることができる。本発明の一実施形態では、光学的マーカを化学的に共役させることができる。本発明の代替実施形態では、再結合融合(recombinant fusion)、例えば、細胞受容体または信号分子によって、生体分子を光学的マーカと関連付けることができる。
【0037】
[0057] レーザ光242は、対物レンズ236の背後焦点面において合焦されている。浸入油238およびガラス・カバースリップ240の屈折率一致のために、光は屈折して媒体1 216に入る。メンブレン224において、光は、2種類の液体212、216の屈折率が一致していないために、全内部反射する(246)。光は、屈折率が高い方(密度が濃い)の媒体から屈折率が低い方(密度が薄い)の媒体に通過するときに、屈折して表面に対する法線から離れて行く。2種類の媒体の界面における入射角が臨界角よりも大きい場合、光は全内部反射して、密度が濃い方の媒体に入る。消衰波246が、密度の薄い方の媒体において発生する。この消衰波は、指数的に減衰する強度を有し、メンブレン224の表面において蛍光体を励起させることができる(通例、励起光の「浸透」厚さは数十nm程度である)。励起された蛍光体250によって生成された光は、ガラス・カバースリップ240の下に位置付けられている対物レンズ236によって合焦することができ、撮像デバイス、例えば、CCDカメラまたは光検出器によって測定することができる。
【0038】
[0058] 一実施形態では、消衰波246の面積がメンブレン224の面積よりも小さくなるように、光を発生する。他の実施形態では、消衰波246の面積がメンブレン224の面積と同じサイズとなるように、光を発生する。
【0039】
[0059] 尚、実施形態によっては、種々の刺激薬を用いて、生きた細胞の表面を局所的に刺激するために、メンブレン内においてナノポア、ナノスリット、またはナノポア・アレイを用いることができることは認められよう。これらの刺激に対する応答は、本明細書において記載する消衰モード撮像を用いて、細胞メンブレン上の遠端において測定することができる。
【0040】
[0060] 生体分子または生体材料(例えば、細胞)は、メンブレン224の上に直接位置付けて撮像することができる。あるいは、薄い緩衝層または中間層を、メンブレン224と撮像しようとする生体分子または生体材料との間に設けてもよい。例えば、有機ポリマー分子の薄膜を中間層として用いることもできる。
【0041】
[0061] 図4は、本発明の実施形態による光学顕微鏡検査ツールの一例400を示す。尚、顕微鏡検査ツール400のコンポーネントおよびこれらコンポーネントの配置は、図4に示すものとは異なっていてもよいことは認められよう。顕微鏡検査ツール400は、レーザ源402、x−軸平行移動ステージ406、レンズ414、レンズ418、白色光源422、偏光ビーム・スプリッタ(PBS)426、レンズ430、対物レンズ436、ダイクロイック・ミラー(DM)468、フィルタ472、ミラー476、レンズ480、およびCCDのような検出器484を含む。第1流体412、第1流体412とは異なる屈折率を有する第2流体416、および固相メンブレン424を含む流体セルが、ガラス・カバースリップ440上に位置付けられている。浸入油が、ガラス・カバースリップ440と対物レンズ436との間に供給される。
【0042】
[0062] 図示した顕微鏡検査ツール400では、レーザ光または白色光を用いて、全内部反射蛍光顕微鏡検査を行うことができる。一実施形態では、レーザ光410がレーザ源402によって発生され、レンズ414、418によって誘導され整形される。レンズ430は、レーザ・ビームのサイズを縮小するように構成されている。尚、レンズ414、418がレーザ・ビームのサイズを縮小してもよいことは認められよう。x−軸平行移動ステージ406を用いてx−軸に沿ってレーザ・ファイバ・カプラを移動させることによって、光をずらして光軸から外れるようにしてもよい。他の実施形態では、白色光源422によって白色光を発生する。更に他の実施形態では、白色光およびレーザ光双方を用いて、全内部反射蛍光顕微鏡検査を行うこともできる。ビーム・スプリッタ426は、レーザおよび/または白色光源422によって発生した光を、第1流体412の中にあるサンプル(例えば、生物分子(1つまたは複数)に向けて誘導するように構成されている。更に他の実施形態では、多数のレーザ波長を同時に、または一度に1つずつ用いて、単色または多色蛍光体を励起させることができる。
【0043】
[0063] レンズ430およびダイクロイック・ミラー468を通過した後、発生した光は、全内部反射が生ずるのに十分な光がサンプルに誘導されるように、対物レンズ436によって絞られる。尚、対物レンズ436は、更に、レーザ・ビームのサイズも縮小できることは認められよう。レーザ・ビームのサイズは、直径が約0.5mm〜1mmであるとよいことは認められよう。レンズ414、418、430、および/または436は、このビームがシリコン・メンブレンにおいて、直径が約5μmからメンブレン424のほぼ面積までのスポット・サイズ(sot size)を形成するように、ビームを収束する。例えば、メンブレン424が50×50μm2である場合、5〜50μmのスポット・サイズを形成することができる。
【0044】
[0064] 光442は、固相メンブレン424において、ガラス・カバースリップ440に向かって全内部反射し、第2流体416内に消衰場が発生する。固相メンブレン424の近傍に配置された蛍光体が、消衰波によって励起され、これによって蛍光体に蛍光光線(fluorescent light)を放出させる。この蛍光光線および反射光452は、次いで、ダイクロイック・ミラー468によってフィルタ472に向けて誘導させられる。ダイクロイック・ミラー468およびフィルタ472は、蛍光光線放出のみを通過させるように、光を濾波する。ミラー476は、蛍光光線を誘導して、レンズ480を通過させ、検出器484に向かわせる。
【0045】
[0065] 検出器484は、北アイルランド、ベルファストに本社があるAndor Technology plc.(Andor)から入手可能なiXon BV887のような、EMCCDカメラとすることができる。他の検出器484の例には、アバランシェ・フォトダイオード(APD)および光倍増管(PMT)が含まれる。検出器484は、Microsoft Windows系パーソナル・コンピュータ、およびSolisソフトウェア(これもAndorから入手可能)のような撮像ソフトウェアといった、しかるべき撮像システムに接続して、検出器484が発生したデータ信号を処理して、画像または一連の画像を生成することができる。データ信号を分析し、蛍光放出を検出し、試験対象の生体分子または生体材料の配列あるいは他の特性を判定するために、カスタム・ソフトウェアを用いることができる。
【0046】
[0066] 尚、界面におけるTIR励起のエリアは、励起ビーム特性に依存することは認められよう。レーザ・ビームは、周知のレーザ・ビーム整形技法を用いて整形し、TIRモードにおけるレーザ照明の場を制御することができる。つまり、ビームのサイズは、所望に応じて、その直径を延長または縮小したり、細長くすることができる。
【0047】
[0067] 図5は、顕微鏡検査ツール400のような顕微鏡検査ツールを用いて発生した画像の例を示す。図5では、サンプル例のTIRF照明504の視野が示されている。また、図5は、2種類の代表的流体、具体的には、7M CsCl(n=1.416)および8M Urea(n=1.416)によって、顕微鏡検査ツールを用いて撮像された単体蛍光DNA分子508も示す。しかしながら、本発明の実施形態にしたがって1つ1つの生体分子を撮像するためには、他の流体を用いてもよいことは認められよう。図5では、単体DNA分子は、窒化シリコン・メンブレン上において、毎秒5フレームの画像取り込みで、2.5までの信号対バックグラウンド比(signal to background ratio)を用いて撮像された。
【0048】
[0068] 図6から図10Bは、メンブレン124がナノポア600を含む本発明の一実施形態を示す。図6に示すように、ナノポア600を有するメンブレン124を含む実施形態は、特に、DNA転座を用いるDNA配列決定に適用可能である。尚、メンブレン124がナノポア610を含む実施形態は、DNA転座を用いるDNA配列決定に限定されるのではないことは認められよう。例えば、本実施形態は、遺伝子型決定(genotyping)、生体分子撮像、および生体分子選別にも適用可能であると考えられる。他の例では、ナノポア600を介して、タンパク質を撮像することもできる。
【0049】
[0069] DNA転座では、単一螺旋DNA分子が、電気泳動的に駆動され、一列になってナノポア600を通過する。尚、これらの実施形態では、流体セル100が、更に、DNA分子を電気泳動的に駆動してナノポア600を通過させるために、流体112、116に印加される電位を発生するように構成されているエネルギ源に結合されている電極も含むことは認められよう。
【0050】
[0070] 図6において、光学的マーカに結合(link)された検出対象の1つの生体分子は、オリゴヌクレオチドであり、交雑して(hybridize)ヌクレオチドA、T、U、C、またはGを表す配列コードになる。一実施形態では、特定的にDNA配列について報告する光学的マーカは蛍光マーカである。標識化手順の一例では、元のDNAが1群のヌクレオチド(各塩基型が3〜16ヌクレオチドの一意の配列と入れ替えられる)と入れ替えられる。次いで、光学的マーカに結合されたオリゴヌクレオチドは、ナノポア配列決定の間に配列を決定されるコード化核酸配列(coded nucleic acid sequence)からの交雑オリゴヌクレオチドの解決(unzipping)時に検出することができる。
【0051】
[0071] 例えば、DNA変換手順の1つでは、元のDNA配列における各塩基は、2つの二進コード・ユニット(0および1が、それぞれ、白丸(open circle)および黒丸(solid circle)で表される)。この場合、0および1は、各々が「S0」および「S1」である10個のヌクレオチドの一意のDNA配列として定義される。単一螺旋変換DNAは、2つのコード・ユニットに対して相補的な2タイプの分子ビーコンと交雑され、最小の断面を表示する。例えば、これらのビーコンの1つは、その5’末端に赤色蛍光体、そしてその3’末端に消光剤(quencher)Qを含有することができ、他方のビーコンは、その5’末端に緑色蛍光体、そしてその3’末端に同じ消光分子を含有することができる。広域スペクトル消光分子Qは、双方の蛍光体を消光する。2つの異なる色の蛍光体が、2つのビーコン間で区別することを可能にする。他のDNA変換手順では、元のDNA配列における各塩基は、4つの一意のコード(配列)の内1つによって表され、次いでこれら4つの一意のコードは、対応する4色分子ビーコンと交雑させられる。双方の手順において、変換されたDNA配列は、ビーコンが互いに隣接する配置を含むので、隣接するビーコン上にある消光剤は、蛍光放出を消光し、個々のコード・ユニットがDNAから順次除去されるまで(最初のビーコンを除く)、DNAは「暗い」ままになっている。本発明と共に用いることができる蛍光体の例には、TMRおよびCy5が含まれる。用いることができる他のタイプの蛍光分子には、CPM、Invitrogenからの一連の蛍光マーカ、ローダミン族、およびTexas Redがある。当業者には周知の他の信号分子も、本発明の範囲に該当するものとする。本発明では、米国特許第6,528,258号においてリストに纏められているものを含む、多数の他の蛍光体も用いることができ、この特許をここで引用したことにより、その内容全体が本願にも含まれるものとする。本発明と共に用いることができる消光分子には、Dabcyl、Dabsyl、メチル・レッド、およびElle Quencherが含まれる。当業者には知られている他の消光分子も本発明の範囲内に該当することとする。これは、隣接する分子および溶液内の自由ビーコンからの蛍光バックグラウンドを大きく減らし、その結果信号対バックグラウンド比が高くなる。
【0052】
[0072] 再度図6を参照すると、蛍光タグ付きオリゴヌクレオチドは、変換されたDNAに対して相補的であり、交雑されて(hybridize)DNAとなり、その分子は電気泳動的にメンブレン124内のナノポア600を介して供給される。ナノポア600は、添加されている蛍光体から発生する異なる色の光の閃光が検出されている間に、変換されたDNA分子から、オリゴヌクレオチドを1つずつ順次剥離させる。分子がナノポアに導入されると、ビーコンが1つずつ引きはがされる。新たなビーコンが除去される毎に、新たな蛍光体が発生する(unquench)。放出されたビーコンは自動的に閉ざされ、それ自体の蛍光を消光し、そのときに拡散してナノポアの近傍から離れる。最初のビーコンの放出時に直ちに、2番目のビーコンからの新たな蛍光体が発光する。
【0053】
[0073] DNA転座速度は、DNA解決動力学によって規制され、塩基間のコントラストは、光学プローブ(またはビーコン)の使用によって得られる。DNAをナノポア600に入れると、イオン電流が急激に遮断レベルまで低下する。DNAが他方の側から出ると、開放ポアの電流レベルが復元される。DNA解決時間(例えば、1〜10ms)を調節するには、しかるべき電圧を用いることができる。例えば、10−bpヘアピンでは、120mV電位により、約10msの解決時間(unzipping time)が得られる。この時間は、電界強度によって、信号対バックグラウンド・レベルを最適化するように調整される。
【0054】
[0074] このようにして、いずれの核酸の配列でも判定することができる。配列を決定すべき核酸のコード化配列への変換、コード化システム、およびナノポア配列決定の詳細な説明は、Soni and Meller (Soni G.V. and Meller A., Progress toward ultrafast DNA sequencing using solid-state nanopores(固相ナノポアを用いた超高速DNA配列決定に向けての進歩)、clinical Chemistry 53, 11(2007)、Meller et al., 2009(米国特許出願公開第2009/0029477号)、およびMeller and Weng(PCT出願第PCT US2009/034296号)において見いだすことができる。これらの参考文献をここで引用したことにより、その全体が本願にも含まれるものとする。尚、この方法はナノポア・アレイによって並列に用いることができることは認められよう。
【0055】
[0075] 図7は、(a)において1ビット、そして(b)において「2ビット」を用いてコード化したナノポア配列決定を示す。図7に示すように、本明細書において記載するデバイスおよび方法によって、1および2ビットDNA読み出しの同時電気および光学的検出を、高い信号/ノイズ比で、そして1回の蛍光体解明(resolution)で行うことが可能になることが示されている。
【0056】
[0076] 2ビット・カラー・コード化は、図8に示す多色TIRF顕微鏡のような、多色光学顕微鏡検査ツールを用いて行うことができる。図8に示す実施形態では、波長が異なる2つのレーザ源802a、802bを個別にまたは同時に照明させて、異なる光学的バイオマーカの個別または同時励起のために、波長が異なる2つの消衰波を生成することができる。同様に、3色以上のコード・システムでは、波長が異なる3つまたは4つのレーザ源を個別にまたは同時に照明させて、異なる光学的バイオマーカの個別または同時励起のために、波長が異なる3つ以上の消衰波を生成することができる。
【0057】
[0077] 図8に示すように、第1レーザ源802aは第1レーザ・ビーム810aを発生し、第2レーザ源802bは第2レーザ・ビーム810bを発生する。これらのレーザ・ビーム810a、810bは、レンズLによって整形され対物レンズ836に誘導される。レンズLは、レーザ源802a、802bによって発生したレーザ・ビーム810a、810bのサイズを縮小するように構成されている。一実施形態では、レーザ源802a、802bは、青色および赤色ダイオード・レーザ(488nmおよび640nm)の組み合わせであり、サンプルを照明するために用いることができる。図4を参照して先に説明したように、光802a、802bは、メンブレン124において全内部反射し、消衰場が発生して、流体セルにおいて撮像しようとする生体分子に結合されている蛍光体を励起する。図8に示す実施形態では、メンブレン124は、先に説明したようなDNA転座を可能にするナノポア600を含む。
【0058】
[0078] 蛍光光線850は、次に、対物レンズ836を用いて集光され、ダイクロイック・ミラーDMおよびフィルタFによって濾波され、撮像用のフレーム転送冷却式電子倍増電荷結合デバイス・カメラ、または光検出器のような、検出器884に誘導される。検出器884は、Microsoft Windows系パーソナル・コンピュータ、およびSolisソフトウェア(これもAndorから入手可能)のような撮像ソフトウェアといった、しかるべき撮像システムに接続して、検出器884が発生したデータ信号を処理して、画像または一連の画像を生成することができる。データ信号を分析し、蛍光放出を検出し、試験対象の生体分子(例えば、DNA)の配列あるいは他の特性を判定するために、カスタム・ソフトウェアを用いることができる。
【0059】
[0079] 図9は、DNA解決のときに、図8の多色光学顕微鏡検査ツールのポア局限カウンタ・ヒストグラム(pore localization counter histogram)の例を示す。
【0060】
[0080] 尚、ナノポア・アレイの光学的可視化は、本明細書において記載した実施形態を用いても行えることは認められよう。例えば、本明細書において記載する光学的可視化は、図10Aに示すような、多数のポアからの同時読み出し、および/または図10Bに示すような多数のビットの同時読み出しに用いることができる。
【0061】
[0081] また、本発明の実施形態は、例えば、SiNメンブレンのような固相材料を用いて、細胞毒性および生体適合性を研究するために、細胞および組織癒着(adhesion)を可視化するために用いることもできる。
【0062】
[0082] また、本発明の実施形態は、ナノポア、ナノスリット、またはナノポア・アレイを介して界面を横切る媒体内において刺激によって細胞を局所的に励起させるため、そしてメンブレンを介して光学顕微鏡検査を用いて細胞の応答を測定するためにも用いることができる。新たな生体材料(SiNメンブレンのような生体材料)との接触または刺激物に対する応答は、細胞メンブレン上にあるバイオマーカの蛍光読み出しによって測定することができる。
【0063】
[0083] 本発明の実施形態は、固相メンブレンにおいて製作されたナノポア内におけるその通行(transit)または一時的滞留(temporal lodging)の間、単分子解明によって、蛍光標識またはバイオポリマーが付けられた核酸を撮像するために用いることができる。
【0064】
[0084] また、本発明の実施形態は、転座し一時的にナノポアに滞留するDNAのような、バイオポリマー上に化学量論的に結合され、蛍光標識が付けられたタンパク質の化学量論を検出するために用いることもできる。
【0065】
[0085] 本発明の実施形態は、多色検出に用いることができ、したがって、DNA上に結合された生物学的に別個のタンパク質の空間的局限を検出するために用いることもできる。
【0066】
[0086] 本発明の実施形態は、ナノポアおよび高スループット薬剤スクリーニングによるDNA配列決定に用いることができる。
【0067】
[0087] 尚、TIR照明の場のサイズは、入射レーザ・ビームのビーム径および/または形状を変化させることによって、用途に応じて変化させることができることは認められよう。
【0068】
[0088] 一実施形態では、図17に示すように、対物レンズ236aを、トランス・チェンバ204の下ではなく、シス・チェンバ(cis chamber)208の上に配置することができ、対物レンズ236aを撮像に用いることができる。この構成では、対物レンズ236aではなくレンズ236bを用いて、レーザ・ビーム242をメンブレン224に合焦させることができる。図3を参照して先に説明したように、浸入油238およびガラス・カバースリップ240の屈折率一致のために、レーザからの光242(レンズ236bを通過した)は屈折して媒体1 216に入る。メンブレン224において、光は、2種類の液体212、216の屈折率が一致しないことのために、全内部反射し(246)、消衰波246が、密度の低い方の媒体、即ち、媒体1 216において発生する。消衰波246は、指数的に減衰する強度を有し、メンブレン224の表面(励起光の典型的な「浸透」深さは数十nmである)において、蛍光体を励起することができる。励起された蛍光体によって生成された光は、シス・チェンバ208上に位置付けられた対物レンズ236aによって合焦し、CCDカメラ484または光検出器によって測定することができる。
実施例
実施例1
サンプルの外形形状
[0089] 中央に厚さが20〜50nmの自立窒化シリコン・ウィンドウ[50μm×50μm]を有するシリコン・チップ[5mm×5mm×300μm]を、標準的なフォトリソグラフ法によって、シリコン・ウェア上のLPCVD被覆SiN層上に作成した。ガラス・カバースリップ上にこれらのチップを実装し、図3に示したように、チップとガラス・カバースリップとの間に、厚さ2〜10μmのマイクロチャネルを形成するために、二部PTFE/CTFE流体セルを設計した。このマイクロチャネル、即ち、トランス・チェンバ204を、屈折率がより高い流体(70%グリセロール[n=1.42])で満たし、シス・チェンバ208を、サンプル緩衝水溶液[n=1.33]で満たした。
TIRFの設定および光路図
[0090] 全内部反射[TIR]顕微鏡検査を、図4に示したように設定した。レーザ・ビーム・サイズを0.7mmに縮小し、市販の倒立顕微鏡(Olympus IX-71)の特別設計したバック・ポートに発射し、外部に取り付けられた200mm焦点長のレンズを通じて、60×1.45NA油浸入TIRF対物レンズの背後焦点面において合焦させた。レーザ・ファイバ・カプラをX−軸に沿って動かすことによって、レーザ点を光軸から外れるようにずらした。光が窒化シリコン・メンブレンにおいてグリセロール−水界面に達するまで、光が油、ガラス・カバースリップ、および70%グリセロールを通ってトランス・チェンバ内で屈折するように、ガラス[n=1.52]、70%グリセロール[n=1.42]、およびサンプル緩衝剤[n=1.33]の屈折率を選択した。この界面におけるTIRモードの臨界角は、スネルの法則によって記述されるように、ガラス−水界面と同じである。
【0069】
【数1】
【0070】
ここで、nはガラス、グリセロール70%、または水の屈折率を表し、θはそれぞれの界面における入射角である。視野の中心を、屈折率が高い流体層の厚さに応じて、光伝搬方向にずらす。蛍光放出は、外部レンズによって3倍に拡大され、同じ対物レンズによって収集され、しかるべき光学フィルタを通過した後に、市販のEMCCDカメラ(Andor iXon BV887)上で撮像した。撮像は、販売業者が提供したAndor Solisソフトウェアによって、または特注で書かれたソフトウェアを用いて行われた。
サンプル不動化
[0091] 5’末端にビオチン共役があり、5’末端から20番目の位置にアミン修飾チミン塩基があるDNA分子[57bp]をIDT Techから購入した。DNA分子に、販売業者のプロトコルを用いて、ATTO647N染料分子[ATTO−tech]で標識を付けた。ストレプトアビジン・ビオチン(streptavidin-biotin)化学薬品によって、窒化シリコン上でDNA分子を不動化した。新たに用意したピラニア溶液(Piranha solution)において表面を浄化し(硫酸および過酸化水素の7:3v/v溶液において15分)、次いでDI水において徹底的に洗浄した。0.1mg/ml BSA−ビオチンにおいて一晩表面を培養し、結合緩衝剤[10mM Tris−CL、pH8.5]で洗浄し、ストレプタビディンにおいて30〜60分培養し、結合緩衝剤において洗浄し、次いでビオチンで標識を付けたDNAで15〜30分培養した。次いで、流体セルに表面を装填した。70%グリセロールを、ガラス・カバースリップとシリコン・チップとの間にあるトランス・マイクロチャネルに充填し、結合緩衝剤をシス・チェンバに充填した。次いで、TIRFMによって窒化シリコン界面において表面を撮像した。
結果
[0092] 図4に示したように、窒化シリコン・メンブレン(例えば、サイズが20×40μm2、厚さが20nm)を、ガラス・カバースリップ上に装填した。トランス・チェンバおよびシス・チェンバにおける2種類の流体を、それぞれ、グリセロール70%(v/v)(n=1.42)および水(n=1.33)に選択した。
【0071】
[0093] 励起レーザ・ビームを、図5に示したように、メンブレンの寸法よりも小さい消衰照明の場を形成するように整形した。ビーム径を0.7mmに縮小することによって、スポット・サイズがSiNメンブレン・サイズよりも小さくなった。
【0072】
[0094] 対物レンズ(n=1.55)に入射した光は伝搬して、浸入油(n=1.52)、ガラス・カバースリップ(n=1.55)、液体2(70%グリセロール)(n=1.42)を通過し、界面を横切り、最後に水(n=1.33)を通過した。光は、グリセロールを水から分離する界面において、全内部反射を発生した。
【0073】
[0095] 励起場の形状を較正するために、メンブレンのシス側に20nmTMRビーズを吸着させ、TIRFモードで撮像した。これらのTMRビーズをX軸およびY軸に沿って移動させ、撮像光学素子の倍率を用いることによって、消衰照明の場が約10×20μm2までであると計算した。
【0074】
[0096] この例では、3’末端においてビオチン化され、5’末端においてATTO647N標識が付けられた1つ1つのDNA分子が、ビオチン−ストレプトアビジン化学薬品を用いて、窒化シリコン表面のシス側で不動化された(即ち、方法および材料)。
実施例2
TIRFの設定
[0097] 実験において、ナノポア600を有する自立SiNメンブレン(20×20μm2)1124を内蔵するシリコン・チップ1128を、界面として用いた。シリコン・チップ1128をガラス・カバースリップ1140上に装填し、ガラス・カバースリップ1140を、特注で製作したクロロトリフルオロエチレン(CTFEポリマー)流体セル1138上に装填し、図11に示したような、微小流体トランス・チェンバ1100を作成した。流体セル1138は、シリコン・チップ1128を保持するインサート1138aと、流体チェンバを形成する外側セル1138bとを含む。高速硬化ポリジメトリシロキサン(PDMS:polydimethlysiloxane)を用いて、シリコン・チップ1128をCTFEインサート1138aに接合し、ガラス・カバースリップ1140を外側セル1138bに接合した。インサート1138aを有する流体チェンバはシス・チェンバであり、シリコン・チップ1128とガラス・カバースリップ1140との間の空間がトランス・チェンバとなる。流入−流出フロー・チャネルを用いて、トランス・チェンバに、屈折率緩衝剤1112を充填した。電気的測定のために、フロー・チャネルの側面開口内にトランス電極1140aを設け、インサート(Ag/AgCl双方)1116において緩衝剤の中にシス電極1140bを埋没させた。ナノポア600を用いて、図11Aに示すように、光学可視化および測定のために、流体セル1100を倒立顕微鏡1136に対して一直線上に揃えた。
【0075】
[0098] シス・チェンバ nw≒1.33(水緩衝剤、1M KClおよび10mMトリス、pH=8.5)およびトランス・チェンバ(高い屈折率nCsを有する水性緩衝溶液) において用いた緩衝剤の屈折率は、ガラスの屈折率ng=1.5よりも小さかった(nw<nCs<ng)。即ち、7M CsClおよび10mMトリス、pH=8.5(「Cs7M」、n=1.41)を含有する塩緩衝溶液を、シス・チェンバにおける緩衝剤として用いた。
【0076】
[0099] ガラス・カバースリップ側から、ガラス/トランス・チェンバ界面の反射臨界角より小さいがトランス/シス臨界角よりは多少大きな角度θgで、平行光ビームを導入し、図11Bに示すように、SiNメンブレンにおいてTIR励起を生じさせた。高開口数(NA)の対物レンズ(Olympus 60X/1.45)を用いて、入射レーザ・ビームをその背後焦点面(d)における軸外れ点(off axis point)に合焦させることによって、TIRを行い、入射角θgを制御した。TIR励起領域の面内位置を、距離d=htan(θCs)だけ変位させる。ここで、hはトランス・チェンバの高さである。
【0077】
[00100] 焦点距離が長く色収差を補正した二重レンズ(200mm)を用いて、SiNメンブレン上において照明される面積が約10×20μm2となるように、入射するレーザ・ビームの幅を整形した。単一モード偏光保存光ファイバ(single-mode polarization-preserving optical fiber)を介して、640nmレーザ(20mW)(iFlex2000, Point-Source, Hamble, UK)をシステムに結合し、直径が0.7mmの平行ガウス・レーザ・ビームを生成した。この高品質のビームによって、対物レンズの入射面にぴったり合焦したスポットを確保し、こうして望ましくない散乱を最小に抑える。普通の手順を用いて、メンブレン表面のシス側に、ストレプトアビジンを被覆した。短いビオチン化DNAオリゴに、各々、1つのATTO646N蛍光体で標識を付け、メンブレン表面上で不動化し、最大EM利得および10ms積算(integration)で動作する電子倍増CCDカメラ上に蛍光光線を投射することによって撮像した。電子倍増電荷結合デバイス(EMCCD)カメラ(Andor, iXon DU-860)を用いて、メンブレン表面からの蛍光画像を記録した。図12は、本発明の一実施形態にしたがって、TIRFの下で撮像されたメンブレン表面上で不動化された1つ1つの分子の3つの典型的な画像を表示する。図12に示すように、1つ1つの蛍光体が、高いコントラストで解明されており、これ以上の画像処理を必要としない。
【0078】
[00101] 入射角が大きくなると、TIRの臨界角のために、メンブレンのシス側から観察されていたレーザ光の突然の消失、(2)顕微鏡の接眼レンズを用いて対物レンズの背後焦点面において可視化された、変位TIRレーザ・ビームの出現、そして(3)バックグラウンド強度の急減による、信号分子撮像のためのバックグラウンドへの信号(信号対バックグラウンド比)の増大が生ずる。2倍以上の信号対バックグラウンドの増加が、エピ照明(epi-illumination)(サンプルの一方側からの照明および検出)によって、SiNメンブレン上で不動化された1つ1つの蛍光体の画像において達成された。
【0079】
光学および電気信号の同期検出
[00102] 光学信号および電気信号の同期検出のために、ハードウェア(例えば、Microsoft WindowsまたはLinux互換パーソナル・コンピュータ)とLABVIEWソフトウェアとの組み合わせを設計した。図13は、取り込みハードウェアを模式的に示す。Axopath200B増幅器1386(Molecular Devices, Inc., Sunnyvale, CA, USA)を、Ag/AgCl電極にヘッドステージ1388を介して接続し、ナノポアを横切るイオン電流信号を増幅する。外部四極バターワース・フィルタ1390を用いて、このイオン電流信号に50KHzでロー・パス・フィルタをかけ、画像取り込みボード1394(Andor iXon取り込みボード)を介してCCDカメラから画像データを受け取った 同じPC内にある多機能データ取り込みボード1392に入力する。多機能データ取り込みDAQボード1392(National Instruments, PCI-6154)を用いて、16ビット・アナログ/デジタル変換分解能で、イオン電流信号を取り込んだ。EM−CCDカメラ1384からの「発火」パルス(各露出の開始を印すTTLパルス)が、イオン電流の取り込みをトリガし、カウンタ・ボード(National Instruments, PCI-6602)上において高精度のタイム・スタンプを生成するために用いられた。カウンタ・ボードは、クロック・レートが250KHzのRTSIバスを用いて、内部でDAQボードと同期を取られていた。したがって、組み合わされたデータ・ストリームは、イオン電流のサンプリングと同期を取られているCCDフレームの各々の開始時における一意のタイム・スタンプを含んでいた。転座イベントが、イオン電流の落下によって検出されたとき、ソフトウェア1396は、カウンタ情報の中で対応するフレーム番号を検索し、この番号に対応する実際の画像をセーブした。カメラ・フレーム・レートは、約1KHz(発火パルス・レート)に設定した。
【0080】
[00103] 図14Aから図14Cは、電気信号および光信号の同期を示す。長さがミリ秒単位の電気パルスを、ファンクション・ジェネレータ(function generator)から発生し、増幅器のヘッドステージに電気的に結合した。これらの電流パルスは、ナノポア信号と形状および時間メモリが同様である。同じ信号を用いて励起レーザをON/OFF変調し、光および電気パルスの同期源を設けた。同期検査のために、蛍光ビーズをメンブレン上で不動化し、前述のようなカメラを用いて撮像した。
【0081】
[00104] 2つの様式を組み合わせて、ナノポアを介したDNA転座の間に同期光および電気信号を測定した。最初に、メンブレン上においてポアの位置を特定した。ポアからの蛍光信号は、位置が固定であり、電気信号との同期時(in-sync)に発光(light up)する。つまり、ポアの位置に対応する画素は、ときの経過と共に、最も高い傾向の強度を蓄積し、画像の総和によって、CCD上のポア位置に対応するピークを明らかにする。一旦ポア位置が特定されたなら、このポアに対応する画素からの強度を、更なるデータ分析のために用いた。
実施例3
[00105] 4nmポアを介して転座する蛍光標識付きdsNDAを検出するために、同時光学および電気的測定を行った。この実験におけるサンプル濃度は、0.1nM〜0.2nMであった。図15Aおよび図15Bは、ポアの形状、および約4nmのポア例のTEM画像を模式的に示す。421bp断片(DNA−A1647)に、Alexa647蛍光体で標識を付け、重合連鎖反応(PCR)反応、それに続くアミン反応染料との共役の間、低濃度のアミノ修飾チミン塩基の合体によって用いられる。
【0082】
[00106] 図16Aおよび図16Bに示すように、9つの代表的イオン電流およびそれらの対応する蛍光強度イベントが、DNA−A1647分子をポアのシス側に添加した後に示される(200mVのバイアスによって4nAの開放ポア電流が発生し、最大EM利得で1msの蓄積毎に画像を取り込んだ)。ナノポアの位置を、前述のように判定した。図示する蛍光強度は、ナノポアを中心に配されたCCD上の3×3画素エリアから抽出されたものである。尚、電流および光データの同期取り込みが、イベント毎に内部バックグラウンド閾値を定めるのに役立つことは認められよう。電気的イベントの約5ms前のポア位置における強度を、そのイベントのバックグラウンド値として用いた。ポア位置における強度が少なくとも1標準偏差だけその対応するバックグラウンドよりも高かった光学イベントのみが分析において含められ、そのイベントが有意なバックグラウンド閾値を有し、疑似信号を排除することを確保する。
【0083】
[00107] 尚、以上の詳細な説明および以下の例は、例示に過ぎず、本発明の範囲に対する限定と見なしてはならないことは言うまでもない。開示した実施形態に対する種々の変更や修正も、当業者には明白であり、本発明の主旨および範囲から逸脱することなく行うことができる。更に、特定した全ての特許、特許出願、および刊行物は、本明細書において引用したことにより、例えば、本発明と関連付けて用いることができるそのような刊行物に記載されている方法を記載および開示するために、その内容が本願にも明示的に含まれるものとする。これらの刊行物は、本願の出願日よりも前に、それらの開示のためにのみ提供されたものである。これに関していかなるものも、先願発明のためであってもまたは他のいかなる理由であっても、本発明者がこのような開示よりも先行する資格を本発明者が有さないことの承認として解釈してはならない。日付についてのあらゆる言明またはこれらの文書の内容に関する表現は、出願人に入手可能な情報に基づいており、これらの文書の日付または内容の正確さに関していかなる承認をも構成することはない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学顕微鏡検査ツール用流体セルであって、
第1側と、第2の対向する側とを有する固相メンブレンと、
前記メンブレンの第1側に配置された第1流体チェンバであって、第1屈折率を有する第1流体を収容する、第1流体チェンバと、
前記メンブレンの第2側に配置された第2流体チェンバであって、第2屈折率を有する第2流体を収容し、前記第1屈折率が前記第2屈折率よりも高い、第2流体チェンバと、
を備えている、流体セル。
【請求項2】
請求項1記載の流体セルにおいて、前記固相メンブレンが、窒化シリコンで構成されている、流体セル。
【請求項3】
請求項1記載の流体セルにおいて、前記固相メンブレンが、単層誘電体材料で構成されている、流体セル。
【請求項4】
請求項1記載の流体セルにおいて、前記固相メンブレンが、多層誘電体材料で構成されている、流体セル。
【請求項5】
請求項1記載の流体セルにおいて、前記固相メンブレンが、シリコン・ウェハ上に堆積された窒化シリコン層で構成されている、流体セル。
【請求項6】
請求項5記載の流体セルにおいて、前記窒化シリコン層の厚さが、5から60nmである、流体セル。
【請求項7】
請求項5記載の流体セルにおいて、前記シリコン・ウェハがウィンドウを備えており、前記窒化シリコン層が前記ウィンドウを覆う、流体セル。
【請求項8】
請求項1記載の流体セルにおいて、前記第1流体が、水性緩衝溶液、水、または尿素で構成されている、流体セル。
【請求項9】
請求項1記の流体セルにおいて、前記第2流体が、細胞流体(cellular fluid)、細胞メンブレン、グリセロール、およびCsClから成る1群から選択される、流体セル。
【請求項10】
請求項1記載の流体セルにおいて、前記第1流体および前記第2流体が、水性緩衝剤である、流体セル。
【請求項11】
請求項1記載の流体セルにおいて、光学的バイオマーカに結合された生体分子が、前記メンブレンの第2側に供給される、流体セル。
【請求項12】
請求項11記載の流体セルにおいて、前記生体分子が、DNA分子で構成されている、流体セル。
【請求項13】
請求項11記載の流体セルにおいて、前記生体分子が、RNA分子で構成されている、流体セル。
【請求項14】
請求項11記載の流体セルにおいて、前記生体分子が、タンパク質分子で構成されている、流体セル。
【請求項15】
請求項11記載の流体セルにおいて、前記光学的バイオマーカが、励起可能な蛍光体で構成されている、流体セル。
【請求項16】
請求項1記載の流体セルにおいて、前記第1流体チェンバが、マイクロチャネルである、流体セル。
【請求項17】
請求項1記載の流体セルにおいて、前記固相メンブレンが、少なくとも1つのナノポアを備えている、流体セル。
【請求項18】
請求項1記載の流体セルにおいて、前記固相メンブレンが、複数のナノポアを備えている、流体セル。
【請求項19】
請求項1記載の流体セルにおいて、前記固相メンブレンが、少なくとも1つのナノスリットを備えている、流体セル。
【請求項20】
請求項17記載の流体セルであって、更に、前記ナノポアを通して撮像しようとする生体分子を駆動するために、前記第1流体および前記第2流体の両端間に電位を印加するように構成されている第1および第2電極を備えている、流体セル。
【請求項21】
1つ1つのDNA分子を撮像するための光学顕微鏡検査ツールであって、
シリコン・ウェハのウィンドウを覆う固相メンブレンと、前記固相メンブレンの一方側にある第1流体チェンバと、前記第1流体チェンバの中にあり第1屈折率を有する第1流体と、前記メンブレンの他方側にある第2流体チェンバと、前記第2流体チェンバの中にあり、前記第1屈折率よりも低い第2屈折率を有する第2流体とを備えている流体セルと、
ガラス・カバースリップであって、このガラス・カバースリップが前記第1流体チェンバの底面を形成するように、前記流体セルが実装されている、カバースリップと、
対物レンズと、
前記TIRF対物レンズと前記ガラス・カバースリップとの間にある浸入油と、
前記対物レンズにおいて光を誘導するように構成されている光源であって、前記固相メンブレンが覆うウィンドウよりも小さい消衰照明の場を発生するように、前記対物レンズが前記光を合焦するように構成されている、光源と、
前記固相メンブレンにおいて1つ1つのDNA分子によって放出される光を検出する撮像検出器と、
を備えている、光学顕微鏡検査ツール。
【請求項22】
請求項21記載の光学顕微鏡検査ツールにおいて、前記固相メンブレンが、窒化シリコンで構成されている、光学顕微鏡検査ツール。
【請求項23】
請求項21記載の光学顕微鏡検査ツールにおいて、前記固相メンブレンが、酸化シリコンで構成されている、光学顕微鏡検査ツール。
【請求項24】
請求項21記載の光学顕微鏡検査ツールにおいて、前記固相メンブレンが、シリコン・ウェハ上に堆積された窒化シリコン層で構成されている、光学顕微鏡検査ツール。
【請求項25】
請求項24記載の光学顕微鏡検査ツールにおいて、前記窒化シリコン層の厚さが、5〜50nmである、光学顕微鏡検査ツール。
【請求項26】
請求項21記載の光学顕微鏡検査ツールにおいて、前記第1流体が、水性緩衝溶液または水を含む、光学顕微鏡検査ツール。
【請求項27】
請求項21記載の光学顕微鏡検査ツールにおいて、前記第2流体が、 細胞流体(cellular fluid)、細胞メンブレン、およびグリセロールから成る1群から選択される、光学顕微鏡検査ツール。
【請求項28】
請求項21記載の光学顕微鏡検査ツールにおいて、前記光源が、励起レーザ・ビームで構成されている、光学顕微鏡検査ツール。
【請求項29】
請求項21記載の光学顕微鏡検査ツールにおいて、ビオチン−ストレプトアビジン化学薬品が、1つ1つのDNA分子を前記固相メンブレン上に不動化するために用いられる、光学顕微鏡検査ツール。
【請求項30】
請求項21記載の光学顕微鏡検査ツールにおいて、前記1つ1つのDNA分子が、光学的バイオマーカに結合されている、光学顕微鏡検査ツール。
【請求項31】
請求項21記載の光学顕微鏡検査ツールにおいて、前記固相メンブレンが、少なくとも1つのナノポアを備えている、光学顕微鏡検査ツール。
【請求項32】
請求項21記載の光学顕微鏡検査ツールにおいて、前記固相メンブレンが、複数のナノポアを備えている、光学顕微鏡検査ツール。
【請求項33】
請求項21記載の光学顕微鏡検査ツールにおいて、 前記固相メンブレンが、少なくとも1つのナノスリットを備えている、光学顕微鏡検査ツール。
【請求項34】
請求項31記載の光学顕微鏡検査ツールであって、更に、前記ナノポアを通して撮像しようとする生体分子を駆動するために、前記第1流体および前記第2流体の両端間に電位を印加するように構成されている第1および第2電極を備えている、光学顕微鏡検査ツール。
【請求項35】
1つ1つの生体分子を撮像するための光学顕微鏡検査ツールであって、
異なる屈折率を有する第1流体と第2流体との間にある固相メンブレンにおいて消衰照明の場を発生する手段と、
前記固相メンブレンにおいて1つ1つの生体分子に結合されている光検出器によって放出される光を検出する手段と、
を備えている、光学顕微鏡検査ツール。
【請求項36】
請求項35記載の光学顕微鏡検査ツールにおいて、前記1つ1つの生体分子がDNA分子で構成されている、光学顕微鏡検査ツール。
【請求項37】
請求項35記載の光学顕微鏡検査ツールにおいて、前記固相メンブレンにおいて消衰照明の場を発生する手段が、励起レーザと対物レンズとを備えている、光学顕微鏡検査ツール。
【請求項38】
請求項35記載の光学顕微鏡検査ツールにおいて、前記固相メンブレンが、シリコン・ウェハ上に体積された窒化シリコン層で構成されている、光学顕微鏡検査ツール。
【請求項39】
請求項38記載の光学顕微鏡検査ツールにおいて、前記窒化シリコン層の厚さが、5〜50nmである、光学顕微鏡検査ツール。
【請求項40】
請求項38記載の光学顕微鏡検査ツールにおいて、前記シリコン・ウェハが、ウィンドウと、このウィンドウを覆う前記窒化シリコン層とを備えている、光学顕微鏡検査ツール。
【請求項41】
請求項35記載の光学顕微鏡検査ツールであって、更に、前記1つ1つの生体分子を前記固相メンブレン上に不動化する手段を備えている、光学顕微鏡検査ツール。
【請求項42】
請求項35記載の光学顕微鏡検査ツールにおいて、前記消衰照明の場が、前記固相メンブレンの寸法よりも小さい、光学顕微鏡検査ツール。
【請求項43】
請求項35記載の光学顕微鏡検査ツールであって、更に、前記固相メンブレンにおけるナノポアを介して、前記1つ1つの生体分子の少なくとも1つを転座させる手段を備えている、光学顕微鏡検査ツール。
【請求項44】
単体の生体分子を撮像する方法であって、
異なる屈折率を有する第1流体と第2流体との間にある固相メンブレンにおいて、消衰照明の場を発生するステップと、
前記固相メンブレンにおいて、1つ1つの生体分子に結合されている光検出器によって放出される光を検出するステップと、
を備えている、方法。
【請求項45】
請求項44記載の方法において、前記固相メンブレンが、シリコン・ウェハ上に体積された窒化シリコン層で構成されている、方法。
【請求項46】
請求項45記載の方法において、前記窒化シリコンの厚さが、5〜50nmである、方法。
【請求項47】
請求項45記載の方法において、前記シリコン・ウェハが、ウィンドウと、このウィンドウを覆う前記窒化シリコン層とを備えている、方法。
【請求項48】
請求項44記載の方法であって、更に、前記1つ1つの生体分子を前記固相メンブレン上に不動化するステップを備えている、方法。
【請求項49】
請求項44記載の方法において、前記消衰照明の場が、前記固相メンブレンの寸法よりも小さい、方法。
【請求項50】
請求項44記載の方法であって、更に、前記固相メンブレンにおけるナノポアを介して、前記1つ1つの生体分子の少なくとも1つを転座させる手段を備えている、方法。
【請求項51】
請求項50記載の方法において、前記少なくとも1つの単体生体分子がDNA分子であり、更に、
前記DNA分子をDDPに変換するステップと、
前記DDPを、ヌクレオチドA、T、U、C、またはGを表す配列コードに、前記光検出器によって交雑するステップと、
前記ナノポアを介して、前記ヌクレオチドの少なくとも1つを電気泳動的に供給するステップと、
を備えている、方法。
【請求項52】
単体DNA分子を撮像する方法であって、
光学顕微鏡検査ツールの対物レンズに光を誘導するステップと、
第1流体を通過するように前記光を誘導するステップと、
第2流体において消衰照明の場を発生するために、窒化シリコン・メンブレンにおいて前記光を反射させるステップと、
前記消衰照明の場によって励起され前記単体DNA分子に結合されている光学的バイオマーカによって放出される光を、撮像検出器に誘導するステップと、
を備えている、方法。
【請求項53】
請求項52記載の方法において、前記第1流体が、前記第2流体の屈折率よりも高い屈折率を有する、方法。
【請求項54】
請求項52記載の方法において、前記消衰照明の場が、前記第2流体内において発生される、方法。
【請求項55】
請求項52記載の方法において、前記単体DNA分子が、前記窒化シリコン・メンブレン上に不動化される、方法。
【請求項56】
請求項55記載の方法において、前記単体DNA分子が、前記第2流体内において、前記窒化シリコン・メンブレン上に不動化される、方法。
【請求項57】
請求項52記載の方法であって、更に、前記窒化シリコン・メンブレンの中にあるナノポアを介して、前記単体DNA分子を転座させるステップを備えている、方法。
【請求項58】
光学顕微鏡検査ツールであって、
シリコン・ウェハのウィンドウを覆う固相メンブレンと、前記固相メンブレンの一方側にある第1流体チェンバと、前記第1流体チェンバの中にあり第1屈折率を有する第1流体と、前記メンブレンの他方側にある第2流体チェンバと、前記第2流体チェンバの中にあり、前記第1屈折率よりも低い第2屈折率を有する第2流体とを備えている流体セルと、
ガラス・カバースリップであって、このガラス・カバースリップが前記第1流体チェンバの底面を形成するように、前記流体セルが実装されている、カバースリップと、
合焦レンズと、
前記合焦レンズにおいて光を誘導するように構成されている光源であって、前記レンズが、前記固相メンブレンが覆うウィンドウよりも小さい消衰照明の場を発生するように、前記レンズが前記光を合焦するように構成されている、光源と、
前記第2流体チェンバの上方に位置付けられており、前記光学的バイオマーカによって放出される光を前記固相メンブレンにおいて合焦するように構成されている、対物レンズと、
前記光学的バイオマーカによって放出される光を検出する撮像検出器と、
を備えている、光学顕微鏡検査ツール。
【請求項59】
請求項58記載の光学顕微鏡検査ツールにおいて、前記固相メンブレンが、窒化シリコンで構成されている、光学顕微鏡検査ツール。
【請求項60】
請求項58記載の光学顕微鏡検査ツールにおいて、前記固相メンブレンが、酸化シリコンで構成されている、光学顕微鏡検査ツール。
【請求項61】
請求項58記載の光学顕微鏡検査ツールにおいて、前記固相メンブレンが、シリコン・ウェハ上に堆積された窒化シリコン層で構成されている、光学顕微鏡検査ツール。
【請求項62】
請求項61記載の光学顕微鏡検査ツールにおいて、前記窒化シリコン層の厚さが、5〜50nmである、光学顕微鏡検査ツール。
【請求項63】
請求項58記載の光学顕微鏡検査ツールにおいて、前記第1流体が、水性緩衝溶液または水を含む、光学顕微鏡検査ツール。
【請求項64】
請求項58記載の光学顕微鏡検査ツールにおいて、前記第2流体が、細胞流体(cellular fluid)、細胞メンブレン、およびグリセロールから成る1群から選択される、光学顕微鏡検査ツール。
【請求項65】
請求項58記載の光学顕微鏡検査ツールにおいて、前記光源が、励起レーザ・ビームで構成されている、光学顕微鏡検査ツール。
【請求項66】
請求項58記載の光学顕微鏡検査ツールにおいて、ビオチン−ストレプトアビジン化学薬品が、前記光学的バイオマーカに結合されている1つ1つのDNA分子を前記固相メンブレン上に不動化するために用いられる、光学顕微鏡検査ツール。
【請求項67】
請求項58記載の光学顕微鏡検査ツールにおいて、前記光学的バイオマーカが、単体のDNA分子に結合されている、光学顕微鏡検査ツール。
【請求項68】
請求項58記載の流体セルにおいて、前記固相メンブレンが、少なくとも1つのナノポアを備えている、流体セル。
【請求項69】
請求項58記載の流体セルにおいて、前記固相メンブレンが、複数のナノポアを備えている、流体セル。
【請求項70】
請求項58記載の流体セルにおいて、 前記固相メンブレンが、少なくとも1つのナノスリットを備えている、流体セル。
【請求項71】
請求項68記載の流体セルであって、更に、前記ナノポアを通して撮像しようとする、前記光学的バイオマーカに結合されている生体分子を駆動するために、前記第1流体および前記第2流体の両端間に電位を印加するように構成されている第1および第2電極を備えている、流体セル。
【請求項1】
光学顕微鏡検査ツール用流体セルであって、
第1側と、第2の対向する側とを有する固相メンブレンと、
前記メンブレンの第1側に配置された第1流体チェンバであって、第1屈折率を有する第1流体を収容する、第1流体チェンバと、
前記メンブレンの第2側に配置された第2流体チェンバであって、第2屈折率を有する第2流体を収容し、前記第1屈折率が前記第2屈折率よりも高い、第2流体チェンバと、
を備えている、流体セル。
【請求項2】
請求項1記載の流体セルにおいて、前記固相メンブレンが、窒化シリコンで構成されている、流体セル。
【請求項3】
請求項1記載の流体セルにおいて、前記固相メンブレンが、単層誘電体材料で構成されている、流体セル。
【請求項4】
請求項1記載の流体セルにおいて、前記固相メンブレンが、多層誘電体材料で構成されている、流体セル。
【請求項5】
請求項1記載の流体セルにおいて、前記固相メンブレンが、シリコン・ウェハ上に堆積された窒化シリコン層で構成されている、流体セル。
【請求項6】
請求項5記載の流体セルにおいて、前記窒化シリコン層の厚さが、5から60nmである、流体セル。
【請求項7】
請求項5記載の流体セルにおいて、前記シリコン・ウェハがウィンドウを備えており、前記窒化シリコン層が前記ウィンドウを覆う、流体セル。
【請求項8】
請求項1記載の流体セルにおいて、前記第1流体が、水性緩衝溶液、水、または尿素で構成されている、流体セル。
【請求項9】
請求項1記の流体セルにおいて、前記第2流体が、細胞流体(cellular fluid)、細胞メンブレン、グリセロール、およびCsClから成る1群から選択される、流体セル。
【請求項10】
請求項1記載の流体セルにおいて、前記第1流体および前記第2流体が、水性緩衝剤である、流体セル。
【請求項11】
請求項1記載の流体セルにおいて、光学的バイオマーカに結合された生体分子が、前記メンブレンの第2側に供給される、流体セル。
【請求項12】
請求項11記載の流体セルにおいて、前記生体分子が、DNA分子で構成されている、流体セル。
【請求項13】
請求項11記載の流体セルにおいて、前記生体分子が、RNA分子で構成されている、流体セル。
【請求項14】
請求項11記載の流体セルにおいて、前記生体分子が、タンパク質分子で構成されている、流体セル。
【請求項15】
請求項11記載の流体セルにおいて、前記光学的バイオマーカが、励起可能な蛍光体で構成されている、流体セル。
【請求項16】
請求項1記載の流体セルにおいて、前記第1流体チェンバが、マイクロチャネルである、流体セル。
【請求項17】
請求項1記載の流体セルにおいて、前記固相メンブレンが、少なくとも1つのナノポアを備えている、流体セル。
【請求項18】
請求項1記載の流体セルにおいて、前記固相メンブレンが、複数のナノポアを備えている、流体セル。
【請求項19】
請求項1記載の流体セルにおいて、前記固相メンブレンが、少なくとも1つのナノスリットを備えている、流体セル。
【請求項20】
請求項17記載の流体セルであって、更に、前記ナノポアを通して撮像しようとする生体分子を駆動するために、前記第1流体および前記第2流体の両端間に電位を印加するように構成されている第1および第2電極を備えている、流体セル。
【請求項21】
1つ1つのDNA分子を撮像するための光学顕微鏡検査ツールであって、
シリコン・ウェハのウィンドウを覆う固相メンブレンと、前記固相メンブレンの一方側にある第1流体チェンバと、前記第1流体チェンバの中にあり第1屈折率を有する第1流体と、前記メンブレンの他方側にある第2流体チェンバと、前記第2流体チェンバの中にあり、前記第1屈折率よりも低い第2屈折率を有する第2流体とを備えている流体セルと、
ガラス・カバースリップであって、このガラス・カバースリップが前記第1流体チェンバの底面を形成するように、前記流体セルが実装されている、カバースリップと、
対物レンズと、
前記TIRF対物レンズと前記ガラス・カバースリップとの間にある浸入油と、
前記対物レンズにおいて光を誘導するように構成されている光源であって、前記固相メンブレンが覆うウィンドウよりも小さい消衰照明の場を発生するように、前記対物レンズが前記光を合焦するように構成されている、光源と、
前記固相メンブレンにおいて1つ1つのDNA分子によって放出される光を検出する撮像検出器と、
を備えている、光学顕微鏡検査ツール。
【請求項22】
請求項21記載の光学顕微鏡検査ツールにおいて、前記固相メンブレンが、窒化シリコンで構成されている、光学顕微鏡検査ツール。
【請求項23】
請求項21記載の光学顕微鏡検査ツールにおいて、前記固相メンブレンが、酸化シリコンで構成されている、光学顕微鏡検査ツール。
【請求項24】
請求項21記載の光学顕微鏡検査ツールにおいて、前記固相メンブレンが、シリコン・ウェハ上に堆積された窒化シリコン層で構成されている、光学顕微鏡検査ツール。
【請求項25】
請求項24記載の光学顕微鏡検査ツールにおいて、前記窒化シリコン層の厚さが、5〜50nmである、光学顕微鏡検査ツール。
【請求項26】
請求項21記載の光学顕微鏡検査ツールにおいて、前記第1流体が、水性緩衝溶液または水を含む、光学顕微鏡検査ツール。
【請求項27】
請求項21記載の光学顕微鏡検査ツールにおいて、前記第2流体が、 細胞流体(cellular fluid)、細胞メンブレン、およびグリセロールから成る1群から選択される、光学顕微鏡検査ツール。
【請求項28】
請求項21記載の光学顕微鏡検査ツールにおいて、前記光源が、励起レーザ・ビームで構成されている、光学顕微鏡検査ツール。
【請求項29】
請求項21記載の光学顕微鏡検査ツールにおいて、ビオチン−ストレプトアビジン化学薬品が、1つ1つのDNA分子を前記固相メンブレン上に不動化するために用いられる、光学顕微鏡検査ツール。
【請求項30】
請求項21記載の光学顕微鏡検査ツールにおいて、前記1つ1つのDNA分子が、光学的バイオマーカに結合されている、光学顕微鏡検査ツール。
【請求項31】
請求項21記載の光学顕微鏡検査ツールにおいて、前記固相メンブレンが、少なくとも1つのナノポアを備えている、光学顕微鏡検査ツール。
【請求項32】
請求項21記載の光学顕微鏡検査ツールにおいて、前記固相メンブレンが、複数のナノポアを備えている、光学顕微鏡検査ツール。
【請求項33】
請求項21記載の光学顕微鏡検査ツールにおいて、 前記固相メンブレンが、少なくとも1つのナノスリットを備えている、光学顕微鏡検査ツール。
【請求項34】
請求項31記載の光学顕微鏡検査ツールであって、更に、前記ナノポアを通して撮像しようとする生体分子を駆動するために、前記第1流体および前記第2流体の両端間に電位を印加するように構成されている第1および第2電極を備えている、光学顕微鏡検査ツール。
【請求項35】
1つ1つの生体分子を撮像するための光学顕微鏡検査ツールであって、
異なる屈折率を有する第1流体と第2流体との間にある固相メンブレンにおいて消衰照明の場を発生する手段と、
前記固相メンブレンにおいて1つ1つの生体分子に結合されている光検出器によって放出される光を検出する手段と、
を備えている、光学顕微鏡検査ツール。
【請求項36】
請求項35記載の光学顕微鏡検査ツールにおいて、前記1つ1つの生体分子がDNA分子で構成されている、光学顕微鏡検査ツール。
【請求項37】
請求項35記載の光学顕微鏡検査ツールにおいて、前記固相メンブレンにおいて消衰照明の場を発生する手段が、励起レーザと対物レンズとを備えている、光学顕微鏡検査ツール。
【請求項38】
請求項35記載の光学顕微鏡検査ツールにおいて、前記固相メンブレンが、シリコン・ウェハ上に体積された窒化シリコン層で構成されている、光学顕微鏡検査ツール。
【請求項39】
請求項38記載の光学顕微鏡検査ツールにおいて、前記窒化シリコン層の厚さが、5〜50nmである、光学顕微鏡検査ツール。
【請求項40】
請求項38記載の光学顕微鏡検査ツールにおいて、前記シリコン・ウェハが、ウィンドウと、このウィンドウを覆う前記窒化シリコン層とを備えている、光学顕微鏡検査ツール。
【請求項41】
請求項35記載の光学顕微鏡検査ツールであって、更に、前記1つ1つの生体分子を前記固相メンブレン上に不動化する手段を備えている、光学顕微鏡検査ツール。
【請求項42】
請求項35記載の光学顕微鏡検査ツールにおいて、前記消衰照明の場が、前記固相メンブレンの寸法よりも小さい、光学顕微鏡検査ツール。
【請求項43】
請求項35記載の光学顕微鏡検査ツールであって、更に、前記固相メンブレンにおけるナノポアを介して、前記1つ1つの生体分子の少なくとも1つを転座させる手段を備えている、光学顕微鏡検査ツール。
【請求項44】
単体の生体分子を撮像する方法であって、
異なる屈折率を有する第1流体と第2流体との間にある固相メンブレンにおいて、消衰照明の場を発生するステップと、
前記固相メンブレンにおいて、1つ1つの生体分子に結合されている光検出器によって放出される光を検出するステップと、
を備えている、方法。
【請求項45】
請求項44記載の方法において、前記固相メンブレンが、シリコン・ウェハ上に体積された窒化シリコン層で構成されている、方法。
【請求項46】
請求項45記載の方法において、前記窒化シリコンの厚さが、5〜50nmである、方法。
【請求項47】
請求項45記載の方法において、前記シリコン・ウェハが、ウィンドウと、このウィンドウを覆う前記窒化シリコン層とを備えている、方法。
【請求項48】
請求項44記載の方法であって、更に、前記1つ1つの生体分子を前記固相メンブレン上に不動化するステップを備えている、方法。
【請求項49】
請求項44記載の方法において、前記消衰照明の場が、前記固相メンブレンの寸法よりも小さい、方法。
【請求項50】
請求項44記載の方法であって、更に、前記固相メンブレンにおけるナノポアを介して、前記1つ1つの生体分子の少なくとも1つを転座させる手段を備えている、方法。
【請求項51】
請求項50記載の方法において、前記少なくとも1つの単体生体分子がDNA分子であり、更に、
前記DNA分子をDDPに変換するステップと、
前記DDPを、ヌクレオチドA、T、U、C、またはGを表す配列コードに、前記光検出器によって交雑するステップと、
前記ナノポアを介して、前記ヌクレオチドの少なくとも1つを電気泳動的に供給するステップと、
を備えている、方法。
【請求項52】
単体DNA分子を撮像する方法であって、
光学顕微鏡検査ツールの対物レンズに光を誘導するステップと、
第1流体を通過するように前記光を誘導するステップと、
第2流体において消衰照明の場を発生するために、窒化シリコン・メンブレンにおいて前記光を反射させるステップと、
前記消衰照明の場によって励起され前記単体DNA分子に結合されている光学的バイオマーカによって放出される光を、撮像検出器に誘導するステップと、
を備えている、方法。
【請求項53】
請求項52記載の方法において、前記第1流体が、前記第2流体の屈折率よりも高い屈折率を有する、方法。
【請求項54】
請求項52記載の方法において、前記消衰照明の場が、前記第2流体内において発生される、方法。
【請求項55】
請求項52記載の方法において、前記単体DNA分子が、前記窒化シリコン・メンブレン上に不動化される、方法。
【請求項56】
請求項55記載の方法において、前記単体DNA分子が、前記第2流体内において、前記窒化シリコン・メンブレン上に不動化される、方法。
【請求項57】
請求項52記載の方法であって、更に、前記窒化シリコン・メンブレンの中にあるナノポアを介して、前記単体DNA分子を転座させるステップを備えている、方法。
【請求項58】
光学顕微鏡検査ツールであって、
シリコン・ウェハのウィンドウを覆う固相メンブレンと、前記固相メンブレンの一方側にある第1流体チェンバと、前記第1流体チェンバの中にあり第1屈折率を有する第1流体と、前記メンブレンの他方側にある第2流体チェンバと、前記第2流体チェンバの中にあり、前記第1屈折率よりも低い第2屈折率を有する第2流体とを備えている流体セルと、
ガラス・カバースリップであって、このガラス・カバースリップが前記第1流体チェンバの底面を形成するように、前記流体セルが実装されている、カバースリップと、
合焦レンズと、
前記合焦レンズにおいて光を誘導するように構成されている光源であって、前記レンズが、前記固相メンブレンが覆うウィンドウよりも小さい消衰照明の場を発生するように、前記レンズが前記光を合焦するように構成されている、光源と、
前記第2流体チェンバの上方に位置付けられており、前記光学的バイオマーカによって放出される光を前記固相メンブレンにおいて合焦するように構成されている、対物レンズと、
前記光学的バイオマーカによって放出される光を検出する撮像検出器と、
を備えている、光学顕微鏡検査ツール。
【請求項59】
請求項58記載の光学顕微鏡検査ツールにおいて、前記固相メンブレンが、窒化シリコンで構成されている、光学顕微鏡検査ツール。
【請求項60】
請求項58記載の光学顕微鏡検査ツールにおいて、前記固相メンブレンが、酸化シリコンで構成されている、光学顕微鏡検査ツール。
【請求項61】
請求項58記載の光学顕微鏡検査ツールにおいて、前記固相メンブレンが、シリコン・ウェハ上に堆積された窒化シリコン層で構成されている、光学顕微鏡検査ツール。
【請求項62】
請求項61記載の光学顕微鏡検査ツールにおいて、前記窒化シリコン層の厚さが、5〜50nmである、光学顕微鏡検査ツール。
【請求項63】
請求項58記載の光学顕微鏡検査ツールにおいて、前記第1流体が、水性緩衝溶液または水を含む、光学顕微鏡検査ツール。
【請求項64】
請求項58記載の光学顕微鏡検査ツールにおいて、前記第2流体が、細胞流体(cellular fluid)、細胞メンブレン、およびグリセロールから成る1群から選択される、光学顕微鏡検査ツール。
【請求項65】
請求項58記載の光学顕微鏡検査ツールにおいて、前記光源が、励起レーザ・ビームで構成されている、光学顕微鏡検査ツール。
【請求項66】
請求項58記載の光学顕微鏡検査ツールにおいて、ビオチン−ストレプトアビジン化学薬品が、前記光学的バイオマーカに結合されている1つ1つのDNA分子を前記固相メンブレン上に不動化するために用いられる、光学顕微鏡検査ツール。
【請求項67】
請求項58記載の光学顕微鏡検査ツールにおいて、前記光学的バイオマーカが、単体のDNA分子に結合されている、光学顕微鏡検査ツール。
【請求項68】
請求項58記載の流体セルにおいて、前記固相メンブレンが、少なくとも1つのナノポアを備えている、流体セル。
【請求項69】
請求項58記載の流体セルにおいて、前記固相メンブレンが、複数のナノポアを備えている、流体セル。
【請求項70】
請求項58記載の流体セルにおいて、 前記固相メンブレンが、少なくとも1つのナノスリットを備えている、流体セル。
【請求項71】
請求項68記載の流体セルであって、更に、前記ナノポアを通して撮像しようとする、前記光学的バイオマーカに結合されている生体分子を駆動するために、前記第1流体および前記第2流体の両端間に電位を印加するように構成されている第1および第2電極を備えている、流体セル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図15A】
【図15B】
【図16A】
【図16B】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図15A】
【図15B】
【図16A】
【図16B】
【図17】
【公表番号】特表2012−522225(P2012−522225A)
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−502288(P2012−502288)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【国際出願番号】PCT/US2010/028845
【国際公開番号】WO2010/111602
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(301069856)トラスティーズ オブ ボストン ユニバーシティ (15)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【国際出願番号】PCT/US2010/028845
【国際公開番号】WO2010/111602
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(301069856)トラスティーズ オブ ボストン ユニバーシティ (15)
【Fターム(参考)】
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