説明

3−(3−インドリル)プロピオン酸カルシウム塩およびそれから3−(3−インドリル)プロピオン酸の遊離酸を作る方法

3-(3-インドリル)プロピオン酸の遊離酸を3-(3-インドリル)プロピオン酸カルシウム塩(3-IPAカルシウム)に変換し、沈殿させて洗浄し、次いで3-IPAカルシウムを遊離酸に再変換することによって実質的に純粋な3-(3-インドリル)プロピオン酸の遊離酸を合成する。3-IPAカルシウムは、錠剤および持続放出剤形の医薬組成物で使用するのに適している。3-IPAカルシウムを使用して、細胞に対するアミロイドベータタンパク質の細胞毒性作用を阻害し、哺乳動物における原線維性疾患を治療し、かつフリーラジカルまたは酸化ストレスが関与する疾患または状態を治療することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、参照によってその全体を本明細書に取り入れている2006年8月23日に出願された仮特許出願第60/839,981号に対して、第119条(e)項の下で優先権の利益を主張するものである。
【0002】
本発明は、3-(3-インドリル)プロピオン酸のカルシウム塩、その医薬組成物、ならびに原線維性疾患またはフリーラジカルもしくは酸化ストレスが関与する他の疾患もしくは状態を治療するためにこの化合物およびその組成物を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
アルツハイマー病(「AD」)は、高齢者における認知症の最も一般的な原因である。ADを発症しているのは、65歳を超える人々の7%および80歳を超える人々の40%にのぼると推定される。高齢者は、最も急速に増大する社会階層であるので、米国におけるADを有する人々の数および彼等を介護するためにかかるコストは、今後25年間に3倍になると予測されている。それ故にADは、予見し得る未来に増大することになる主要な公衆衛生上の問題である。
【0004】
ADを特徴づけるのは、脳内の構造的な異常の出現である。これらには、ニューロン中の細胞骨格の異常および老人斑中のアミロイド沈着の出現が含まれる。「アミロイド」は、染色して偏光で観察すると複屈折性を示す凝集β-シートに配列された、ADに関係する原線維性ペプチドに対する組織学の用語である。アミロイドの主な成分は、アミロイドベータ(「Aβ」)ペプチド(それぞれAβ1-40、Aβ1-41、Aβ1-42)と呼ばれるアミノ酸40〜42個の長さのペプチドである。Aβペプチドは、アミロイド前駆体タンパク質(「APP」)として知られるより大きな前駆体に由来し、正常な細胞代謝の間にも生成する。Aβペプチドは、共通のN-末端を有するが、それぞれのC-末端が異なっている。
【0005】
現在のところ、ADに対する治療法は無い。ADの療法は、抑鬱、激越、睡眠障害、幻覚、および妄想等のこの疾患に関連する症状を軽減することに焦点を当ててきた。ADにおいてひどく損なわれる脳の領域である前脳基底核コリン作動系は、幾つかの実験的療法の主な標的になってきた。しかし、コリン作動系に影響を及ぼそうとする試みは、概して無効であった。
【0006】
ADを治療する他の試みは、Aβタンパク質の沈着を防止または改善することに焦点を当てている。Aβタンパク質はニューロンに対して有毒であり、アミロイド蓄積と神経変性との間の関係の可能性を提供している。ADと加齢との間の緊密な関連性および両方の状態の神経病理における類似性の故に、ADに特有の病変の発達に酸化ストレスが一因となっているとの提案が行われてきた。酸素フリーラジカルが、Aβタンパク質の細胞毒性に恐らく関係している。実際に酸化傷害のマーカーが、組織分布的にADの患者における神経病理学的病変に関連している。その結果、治療薬の可能性を有する薬剤として、抗酸化物質が提案されてきている。
【0007】
3-(3-インドリル)プロピオン酸(インドール-3-プロピオン酸またはOXIGON(商標)としても知られる「3-IPA」)は、酸化促進性の中間体を生成することなく遊離基補足剤として作用する、天然に存在する有力な抗酸化物質である。3-IPAは、培養されたニューロンをAβペプチドの毒性から保護することが示されており、ADのための疾患修飾性療法として現在も開発中である。米国特許第6,395,768号は、細胞へのAβタンパク質の細胞毒性作用を阻害し、原線維性疾患を治療し、細胞を酸化損傷から保護するための、遊離酸、塩、またはエステルの形態での3-IPAの使用を開示している。開示された適当な塩には、ナトリウム塩、カリウム塩、およびアンモニウム塩等の薬剤として許容し得る塩が含まれる。
【0008】
3-IPAは世界中で工業規模で製造されている。3-IPAを合成する一方法は、トリプトファンの脱アミノ化によるものである。しかし、この方法は、出発物質であるトリプトファンが高価格であり、かつ生成するジアゾ中間体に爆発の恐れがあって、工業規模での合成のためには特別な設備および装置を使用する必要があるので、商業的に採算が合わない。3-IPAを合成するために使用する別の方法には、プロリンの存在下でのMeldrum付加物中間体の初期調製が含まれる。Rajeswaren、J. Org. Chem.、199, 64, 1369参照。しかし、プロリンは、この生産規模の反応での消費量ではあまりに高価過ぎて使用できないと思われる。
【0009】
3-IPAの大規模製造に現在使用されている標準的方法は、インドール、アクリル酸、無水酢酸、および酢酸を出発物質として利用するワンステップワンポット法である。この方法には、幾つかの欠点がある。この方法は、通常、妥当な収量の3-IPAを生産するためにかなりのプロセス最適化を必要とする。その上、生産されるIPAは、比較的不純であり、それ故に精製しないと薬剤の成分として使用するには不適当である。活性薬剤成分として許容できる純度レベルまで3-IPAを精製するには多くの再結晶ステップおよび結晶化のために多量の溶媒の使用(およびそれに続く廃棄)を必要とする時間のかかる方法である。
【0010】
それ故に、製剤処方における活性薬剤成分として使用するために、高い収量でかつ許容できる純度の3-IPAを合成する、新しい採算性の向上した手段の必要性がある。
【0011】
今、意外にも、3-IPAのカルシウム塩は、3-IPAの合成のための反応混合物中に存在する他の酸(例えば、アクリル酸または酢酸)のカルシウム塩に比べてはるかに水溶性が小さいことが発見された。ナトリウム塩等、多くの他の3-IPAの塩は、水溶性が高いので、3-IPAカルシウム塩の低い水溶性は意外である。3-IPAのカルシウム塩が比較的に低溶解度であるので、固体塩からより溶け易い夾雑物を容易に除去することができ、その後引き続いて、実質的に純粋な3-IPAに変換することができる。中間体としての3-IPAカルシウムで3-IPAを作る方法は、純粋な3-(3-インドリル)プロピオン酸を作る既存の方法を改良している。3-IPAを作る従前の方法は、生成物からアクリル酸および他の夾雑物を除去してシリカゲルを通す濾過による時間を要するコスト高の精製を回避しようと抽出を繰り返すために多量の溶媒の使用を必要とするが、大規模に行うには問題が多いと思われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】仮特許出願第60/839,981号
【特許文献2】米国特許第6,395,768号
【特許文献3】国際公開WO第91/11172号
【特許文献4】国際公開WO第94/02518号
【特許文献5】国際公開WO第98/55148号
【特許文献6】国際特許公開WO第02/000196号
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Rajeswaren、J. Org. Chem.、199、64、1369
【非特許文献2】「Remington The Science and Practice of Pharmacy」、第20版、(Alfonso R. Gennaro編、2000年)
【非特許文献3】H E JohnsonおよびD G Crosby、(1960年)、J. Org. Chem.、25〜56
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
幾つかの実施形態では、本発明は、3-IPAのカルシウム塩(「3-IPAカルシウム」)を提供する。幾つかの好ましい実施形態では、本発明は、実質的に純粋な形態での3-IPAカルシウムを提供する。
【0015】
幾つかの実施形態では、本発明は、3-IPA遊離酸を3-IPAカルシウムに変換し、この3-IPAカルシウムを沈殿させて洗浄し、この3-IPAカルシウムを実質的に純粋な3-IPA遊離酸に再変換することを含む、3-IPAカルシウムから実質的に純粋な3-IPA遊離酸を作る方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
更なる実施形態では、本発明は、3-IPAカルシウムを含む組成物、好ましくは実質的に純粋な3-IPAカルシウムを含む組成物、より好ましくは純粋な3-IPAカルシウムから本質的になる組成物を提供する。前記組成物が、医薬組成物であることがより好ましい。
【0017】
更なる実施形態では、本発明は、フリーラジカルまたは酸化ストレスが一因となっている原線維性疾患および他の疾患または状態を治療するために、3-IPAカルシウムおよびその組成物を使用する方法を提供する。好ましい実施形態では、3-IPAカルシウムおよびその組成物を使用して、細胞に対するアミロイドベータタンパク質の細胞毒性作用を治療することができる。
【0018】
更なる実施形態では、本発明は、3-IPAカルシウムおよびその組成物を使用し、フリーラジカルまたは酸化ストレスが一因となっている原線維性疾患および他の疾患または状態を治療するための薬物を調製する方法を提供する。好ましい実施形態では、3-IPAカルシウムおよびその組成物を、細胞に対するアミロイドベータタンパク質の細胞毒性作用を治療するための薬物を調製するために使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、以前には記述されたことがなかった3-IPAカルシウムに関する。更に、本発明は、3-IPAカルシウムを含有する医薬組成物に関し、かつ治療有効量の3-IPAカルシウムを被験者に投与することによってフリーラジカルまたは酸化ストレスが一因となっているADおよび他の状態を治療する方法に関する。遊離酸形態に比べてより高い3-IPAカルシウムの融点は、錠剤等の固体組成物を調製するための重要な利点を提供する。いかなる特定の理論にもこだわることなく、3-IPAの遊離酸形態が相対的により低い融点であることは、打錠成型の間にこの化合物の融合を生じさせる恐れがあり、それはこの化合物のカルシウム塩形態の打錠成型の間には起こらない。遊離酸形態と比較した3-IPAカルシウムの低い溶解度は、デポおよび注射による持続放出、送達用の製剤の調製に対して重要な利点を提供する。
【0020】
加えて、本発明は、3-IPAカルシウムを使用して3-IPAの遊離酸を調製する方法に関する。本発明は、部分的に、3-IPAカルシウムの予期外の驚くべき低い水溶性に基づいている。
【0021】
(用語の定義)
「3-IPA」は、3-(3-インドリル)プロピオン酸である。
【0022】
「3-IPAカルシウム」は、3-(3-インドリル)プロピオン酸のカルシウム塩を意味する。
【0023】
「約」または「およそ」という用語は、通常の当業者によって決定される特定した特定のパラメーターに関して許容範囲内であることを意味し、部分的には、測定系の限界等、値を測定または決定する方法に依拠することになる。例えば、「約」は、得られた値の20%までの範囲を意味することができる。あるいは、特に生物学的システムまたはプロセスに関しては、この用語は、ある値の10倍未満、好ましくは5倍以内、より好ましくは2倍以内を意味することができる。
【0024】
本明細書で使用する場合、「治療する」「治療すること」または「治療」という用語は、ADおよび他の原線維性疾患、即ち限定はしないがプリオン関連の疾患、フリーラジカルまたは酸化ストレスが一因となっている、例えば加齢、パーキンソン病、ハンチントン病、ダウン症、レヴィー小体認知症、筋萎縮性側索硬化症、進行性核上性麻痺、他の形態のアミロイド症、脳卒中、アテローム性動脈硬化症、気腫、および幾つかの形態の癌のような疾患もしくは状態等の低減、緩和、軽減を意味する。
【0025】
「原線維性疾患」という用語を本明細書で使用する場合、望ましくない原線維の沈着を伴ういずれの疾患または状態も含む。このような疾患または状態には、AD、他のアミロイド症、およびヒトのクロイツフェルトヤコブ病、ウシのウシ海綿状脳症、およびヒツジのスクレイピー等のプリオン病が含まれるが、これらに限定されない。
【0026】
「アミロイドベータタンパク質」または「Aβタンパク質」という用語は、アミロイド前駆体タンパク質(APP)からタンパク質分解的により生じたペプチドの関連するセットを指す。「アミロイドベータタンパク質」および「Aβタンパク質」という用語に含まれる種の例は、Aβ1-40、Aβ1-41、およびAβ1-42であり、共通のN末端残基で始まり、それぞれ40、41、および42個のアミノ酸に及ぶ。他のAPPのタンパク質分解由来の断片はアミロイド斑にも出現し、これらのペプチドも「アミロイドベータタンパク質」および「Aβタンパク質」という用語に含まれる。
【0027】
「被験者」という用語は、哺乳類(例えば犬または猫等の家畜のように、任意の家畜医療の患者)、またはヒトの患者を指す。
【0028】
本発明の組成物に関連して使用する場合、「薬剤として許容し得る」という句は、生理学的に忍容性があり、通常、哺乳類(例えばヒト)に投与したときに有害な反応を引き起こさない分子物質および組成物の他の成分を指す。本明細書で使用される「薬剤として許容し得る」という用語は、哺乳類、より具体的にはヒトで使用するために、連邦もしくは州政府の監督庁によって認可され、または米国薬局方もしくは他の公認の薬局方に掲載されていることを意味していることが好ましい。
【0029】
3-IPAカルシウムを1種または複数の担体と共に投与することができる。本発明の医薬組成物に適用される「担体」という用語は、3-IPAカルシウムと共に投与する希釈剤、添加剤、または賦形剤を指す。このような医薬担体は、水、生理食塩水、デキストロース水溶液、グリセリン水溶液、およびピーナッツ油、大豆油、鉱物油、ゴマ油等の石油、動物、植物または合成物由来のものを含む油等の無菌の液体であってよい。適当な医薬担体は、「Remington The Science and Practice of Pharmacy」、第20版、(Alfonso R. Gennaro編、2000年)に記載されている。
【0030】
「薬剤として許容し得る添加剤」とは、一般に、安全で無毒、かつ生物学的にも他の面でも不適切ではない医薬組成物を調製するのに有用である添加物を意味し、ヒトの薬剤としての使用と同様に家畜への使用に対して許容できる添加物を含む。本出願において使用されている「薬剤として許容し得る添加剤」には、前述の添加剤が1種および2種以上の両方の場合を含む。
【0031】
「治療有効量」は、容態、障害または状態を治療するために哺乳動物に投与する際に、前述の治療効果をもたらすのに十分な3-IPAカルシウムの量を意味する。「治療有効量」は、疾患およびその重症度、ならびに治療される哺乳動物の年齢、体重、体調、および応答性次第で変動するであろう。
【0032】
本明細書で使用される場合、「パーセント」または「%」は、組成物全体についての重量パーセントを指す。
【0033】
「実質的に純粋な3-(3-インドリル)プロピオン酸」または「実質的に純粋な3-IPA」という用語は、純度約97%以上、好ましくは純度約98%以上、最も好ましくは純度約99%以上の3-IPA遊離酸を指す。
【0034】
(3-IPAカルシウム塩)
3-IPAカルシウムは、以下の化学式を有する二塩基性塩である:
【化1】

【0035】
一実施形態では、3-IPAカルシウムは、水和水のない状態で存在する。別の実施形態では、3-IPAカルシウムは、例えば3-IPAカルシウムセスキ水和物、二水和物、三水和物等、3-IPAカルシウム1分子当たり平均して0.25個から10個の間の水分子と会合した水和物として存在する。それ故、3-IPAカルシウムは、分子式C22H20N2O4Ca・XH2Oを有しており、式中、Xは0から10の間の値である。
【0036】
3-IPAカルシウムは、結晶または無定形の形態であってよい。その上、結晶形態の3-IPAカルシウムは、多形体として存在していてよい。
【0037】
本発明は、3-IPAカルシウムの全ての多形体および水和物を包含する。
【0038】
本発明は、哺乳動物の細胞を治療有効量の3-IPAカルシウムに曝露することを含む、前記哺乳動物の細胞へのAβタンパク質の細胞毒性作用を治療または阻害するための方法を提供する。細胞は、神経細胞であることが好ましい。この神経細胞が、脳細胞であればより好ましい。細胞毒性作用には、細胞生存率の減少、脂質過酸化反応の増加、細胞内カルシウム濃度の増加、散在性膜疱形成、細胞収縮、核膜に向かうクロマチンの異常分布、および核崩壊が含まれるが、これらだけに限定されない。
【0039】
別の態様では、本発明は、治療有効量の3-IPAカルシウムを被験者に投与して原線維の形成を阻害することを含む、被験者における原線維性疾患を治療する方法に関する。このような原線維性疾患には、AD、他のアミロイドーシス病、および前述の疾患が含まれるが、これらだけに限定されない。
【0040】
更に別の態様では、本発明は、フリーラジカルおよび/または酸化ストレスが関与する疾患または状態を治療する方法に関するものである。このような疾患または状態には、加齢、パーキンソン病、ハンチントン病、ダウン症、レヴィー小体認知症、筋萎縮性側索硬化症、進行性核上性麻痺、他の形態のアミロイド症、脳卒中、アテローム性動脈硬化症、気腫、および幾つかの形態の癌が含まれるが、これらだけに限定されない。
【0041】
(化合物および医薬組成物)
治療で使用するために、3-IPAカルシウムを化合物としてまたは医薬組成物の形で投与することができる。ある実施形態では、3-IPAカルシウムを実質的に純粋な化合物として投与することができる。他の実施形態では、3-IPAカルシウムを、純度90%、純度95%、純度99%、純度99.5%、または純度99.9%の化合物として投与することができる。ある実施形態では、組成物は、本質的に3-IPAカルシウムからなる活性成分を含む。この活性成分は、本質的に90%、95%、99%、99.5%、または99.9%の純度を有する3-IPAカルシウムからなる。他の実施形態では、組成物は、例えばADを治療するための1種または複数の追加の治療剤と組合わせた3-IPAカルシウムを含む。これらの追加の治療剤には、例えば、1種または複数のAβタンパク質の配列に特異的な抗体が含まれるが、これらだけに限定されない。
【0042】
したがって、一態様では、本発明は、薬剤として許容し得る添加剤、希釈剤および/または担体と共に3-IPAカルシウムを含む医薬組成物または製剤を提供する。この添加剤、希釈剤、および/または担体は、製剤の他の成分と適合するという意味で「許容し得る」ものでなければならず、それらの受容者に有害であってはならない。
【0043】
別の態様では、本発明は、治療法、特に、抗酸化化合物により緩和し易い状態に罹患しているヒトまたは動物の被験者の治療で使用するための、薬剤として許容し得る添加剤、希釈剤、および/または担体と共に3-IPAカルシウムを含む医薬組成物を提供する。
【0044】
別の態様では、本発明は、治療有効量の3-IPAカルシウムおよび薬剤として許容し得る添加剤、希釈剤および/または担体(それらの組合せを含めて)を含む医薬組成物を提供する。
【0045】
3-IPAカルシウムを、ヒトまたは家畜用の医療での使用に好都合ないかなる方法での投与用にも処方でき、したがって、本発明は、その範囲内に、ヒトまたは家畜の医療での使用に適合した3-IPAカルシウムを含む医薬組成物を含む。このような組成物を従来の方式で使用するために、1種または複数の適当な添加剤、希釈剤、および/または担体を用いて提供することができる。治療で使用するための許容し得る添加剤、希釈剤、および担体は、医薬技術分野では周知であり、例えば「Remington The Science and Practice of Pharmacy」、第20版、(Alfonso R. Gennaro編、2000年)に記載されている。医薬用添加剤、希釈剤、および/または担体の選択は、所望の投与法および標準的薬務を考慮して選んでよい。この医薬組成物は、添加剤、希釈剤、および/または担体として、またはこれらに更に加えて任意適当な結合剤(複数も)、滑沢剤(複数も)、懸濁剤(複数も)、被覆剤(複数も)、可溶化剤(複数も)を含んでもよい。
【0046】
保存剤、安定剤、着色剤、および調味料さえも、この医薬組成物中に加えてよい。保存料の例には、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、およびp-ヒドロキシ安息香酸のエステルが含まれる。抗酸化剤および懸濁剤も使用してよい。
【0047】
幾つかの実施形態に関しては、3-IPAカルシウムをシクロデキストリンと組合わせて使用してもよい。シクロデキストリンは、薬物分子と包接および非包接複合体を形成することが知られている。薬物シクロデキストリン複合体の形成は、溶解度、溶解速度、生物学的利用能および/または薬物分子の安定度特性を改変することができる。薬物シクロデキストリン複合体は、一般に、大部分の剤形および投与方法に有用である。直接的な薬物との複合体形成の代替法として、シクロデキストリンを、例えば担体、希釈剤、または可溶化剤として補助添加物のように使用することができる。アルファ、ベータ、ガンマシクロデキストリンが最も普通に使用され、適当な例は、国際公開WO第91/11172号、国際公開WO第94/02518号および国際公開WO第98/55148号に記載されている。
【0048】
3-IPAカルシウムを、湿式粉砕等の既知の粉砕処理法を使用して粉砕し、錠剤形成におよび他の製剤型に適した粒子サイズを得ることができる。3-IPAカルシウムの微粉化(ナノ粒子)製剤を、当技術分野で既知の方法によって調製することができ、例えば国際特許公開WO第02/000196号を参照されたい。
【0049】
投与(送達)方法には、1種または複数の以下のものがあるが、これらだけに限定されない:経口(例えば、錠剤、カプセルとして、または経口摂取溶液として)、局所、粘膜(例えば、吸入用スプレー式点鼻薬またはエアゾールとして)、経鼻、非経口(例えば、注射剤型による)、胃腸管、脊髄内、腹腔内、筋肉内、静脈内、子宮内、眼内、皮内、頭蓋内、気管内、膣内、脳室内、脳内、皮下、眼部(硝子体内または前房内を含めて)、経皮、直腸、頬側、硬膜外、および舌下。好ましい投与方法には、筋肉内、デポ形成、および直腸(坐薬によって)が含まれる。
【0050】
異なる送達システムに応じて異なる組成物/製剤の要件があってよい。一例として、本発明の医薬組成物を、小ポンプを使用して、または例えば吸入用スプレー式点鼻薬もしくはエアゾールまたは経口摂取溶液として粘膜経路によって送達するように処方することができ、あるいは非経口的には、この組成物を、例えば静脈内、筋肉内、または皮下経路によって送達するために注射剤形態で処方する。剤形を徐放性経口剤形として設計することもできる。
【0051】
この薬剤は、胃腸粘膜を通り、粘膜経由で送達される場合に、胃腸管を通過する間は安定を保ち得るべきであり、例えば、タンパク質分解に抵抗性があり、酸性のpHで安定であり、かつ胆汁の洗浄作用に抵抗性があるべきである。
【0052】
適している場合には、医薬組成物を、吸入によって、坐薬またはペッサリーの形態で、局所的には化粧品、ローション、溶液、クリーム、軟膏またはテンカ粉の形態で、皮膚用パッチ剤の使用によって、経口的にはデンプンまたはラクトース等の添加剤を含有する錠剤の形態で、または単独でもしくは添加剤との混合物の状態のカプセルもしくは卵形剤(ovule)、またはエリキシル剤、溶液、もしくは調味料または着色料を含有する懸濁液の形態で投与してもよく、あるいは非経口的に例えば静脈内、筋肉内、または皮下に注射してもよい。非経口投与に関しては、この組成物を無菌水性懸濁液の形態で使用できるのが最良であり、溶液を血液と等張にするために他の物質、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウムもしくは硫酸マグネシウム等の十分な塩、またはグルコース、ガラクトースもしくはフルクトース等の単糖を含有することができる。頬側または舌下の投与に関しては、この組成物を錠剤または舐剤の形態で投与することができ、従来の方式で処方することができる。
【0053】
本発明の組成物には、特殊な投与方法のために特に処方される形態のものが含まれるが、非経口、経口、または直腸投与用が好ましい。幾つかの適用に関しては、本発明の薬剤を全身的に(経口等)送達する。特に好ましい実施形態では、活性医薬成分として3-IPAカルシウムを含有する医薬組成物を経口で送達する。したがって、この薬剤は、経口送達に適する形態であることが好ましい。
【0054】
3-IPAカルシウムを非経口的に投与する場合には、このような投与の例には、以下の1つまたは複数が含まれる:薬剤の静脈内、動脈内、腹腔内、鞘内、脳室内、尿道内、胸骨内、頭蓋内、筋肉内、または皮下投与:および/または点滴技術の使用による。
【0055】
非経口投与に関しては、溶液を血液と等張にするのに十分な塩(塩化ナトリウム等の)またはグルコース等の他の物質を含有することのできる無菌水性懸濁液の形態で、3-IPAカルシウムを使用してよい。必要であれば、この水性懸濁液を適当に(好ましくはpH7〜9に)緩衝液化しておくべきである。無菌状態下での適当な非経口製剤の調製は、当業者には周知の標準的医薬技術によって容易に達成される。
【0056】
前に記載された製剤に加えて、3-IPAカルシウムを、デポ製剤として非経口投与のために処方することもできる。このような長時間作用型製剤を(例えば皮下または筋肉内に)埋め込みまたは筋肉内注射によって投与することができる。それ故に、例えば、3-IPAカルシウムを、適当なポリマーもしくは疎水性材料(例えば、適切な界面活性剤を伴った許容し得る油中の乳剤として、)またはイオン交換樹脂と共に処方することができる。
【0057】
3-IPAカルシウムを、注射(例えば、静脈内ボーラス注射もしくは点滴によって、または筋肉内、皮下もしくは鞘内投与法を通して)によってヒトまたは家畜の医療において使用するために処方することができ、単位用量形態で、アンプルもしくは他の単位用量容器で、またはもし必要ならば添加される保存剤と共に多重用量容器で提供できる。注射のための組成物は、油性または水性媒体において懸濁液、溶液、または乳剤の形態をとることができ、懸濁剤、安定剤、可溶化剤、および/または分散剤等の製剤化剤を含有することができる。あるいは、活性成分は、例えば無菌で発熱物質を含まない水等の適当な媒体で、使用前に再構成するために無菌の粉末形態であってよい。
【0058】
3-IPAカルシウムは、錠剤、カプセル、卵形剤、エリキシル剤、放出液、または懸濁液の形態で(例えば、経口的または局所的に)投与することができ、即時放出、遅延放出、変更放出、持続放出、パルス放出もしくは制御放出の適用のために香料または着色料を含有することができる。3-IPAの遊離酸形態に比べた3-IPAカルシウムの低い溶解度は、持続放出経口製剤における使用に特に適していて、より遅い消化管移動時間を有することになる。
【0059】
3-IPAカルシウムを、任意選択で調味料および着色料と共に、溶液、ゲル、シロップ、洗口液もしくは懸濁液、または使用前に水もしくは他の適当な媒体で構成する乾燥粉末を例として、経口または頬側投与に適当な形態でヒトまたは家畜への使用に提供することもできる。錠剤、カプセル、舐剤、トローチ、丸薬、巨丸薬、粉末、ペースト剤、顆粒剤、ブレット剤(bullet)、または予混合製剤等の固体組成物も使用することができる。経口使用のための固体および液状組成物を、当技術分野で周知の方法によって調製することができる。このような組成物は、固体または液状形態でもよい、1種または複数の薬剤として許容し得る担体または添加剤を含有することができる。
【0060】
この錠剤は、微結晶性セルロース、ラクトース、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、二塩基性リン酸カルシウム、およびグリシン等の添加剤、デンプン(好ましくは、トウモロコシ、馬鈴薯、またはタピオカデンプン)、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、および幾つかのケイ酸塩複合体等の崩壊剤、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、スクロース、ゼラチン、およびアラビアゴム等の造粒結合剤を含有することができる。
【0061】
その上、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ベヘン酸グリセリン、およびタルカムパウダー等の潤滑剤を含むことができる。
【0062】
ゼラチンカプセル内の充填剤として、類似した種類の固体組成物も用いることができる。この点で好ましい添加剤には、ラクトース、デンプン、セルロース、乳糖、または高分子量ポリエチレングリコールが含まれる。水性懸濁液および/またはエリキシル剤に関しては、様々な甘味料もしくは調味料、着色物質、または染料と、乳化剤、および/または懸濁剤と、水、エタノール、プロピレングリコール、およびグリセリン、およびそれらの組合せ等の希釈剤と3-IPAカルシウムを組合わせることができる。
【0063】
3-IPAカルシウムを、家畜の医療において薬剤として許容し得る担体または添加剤と一緒の活性成分の溶液、懸濁液、または分散液等の水薬の形態で経口的に投与することもできる。
【0064】
例えば、この化合物を、ヒトまたは家畜の医療に使用するために例えば従来の(ポリエチレングリコールポリマー、ステアリン酸ポリオキシル40、またはポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等の)坐薬基剤を含有する坐薬として、または例えば従来の(ココアバター、グリセリン/ゼラチングリコゼラチン、またはポリエチレングリコール等の)ペッサリー基剤を含有するペッサリーとして処方することもできる。
【0065】
3-IPAカルシウムを、軟膏、クリーム、ゲル、ヒドロゲル、ローション、溶液、シャンプー、粉末(スプレー粉末またはテンカ粉を含めて)、ペッサリー、タンポン、スプレー、浸液、エアゾール、点滴剤(例えば、点眼剤、点耳剤、および点鼻剤)、またはポアオン剤の形態でヒトおよび家畜の医療に使用するために局所投与用に処方することができる。
【0066】
皮膚への局所的適用に関しては、3-IPAカルシウムを、例えば以下の1つまたは複数の混合物中にこの化合物が溶解している適当な軟膏として処方することができる:鉱物油、流動ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン化合物、乳化ワックス、および水。
【0067】
3-IPAカルシウムを、例えば以下の1つまたは複数の混合物中に懸濁または溶解された適当なローションまたはクリームとして処方することもできる:鉱物油、ソルビタンモノステアリン酸エステル、ポリエチレングリコール、流動パラフィン、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2-オクチルドデカノール、ベンジルアルコール、および水。
【0068】
3-IPAカルシウムを、例えば皮膚用パッチ剤の使用によって皮膚にまたは経皮的に投与することもできる。
【0069】
指示がある場合、3-IPAカルシウムを、鼻腔内でまたは吸入によって投与することができ、好都合なことには、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFA 134AT)もしくは1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFA 227EA)等のハイドロフルオロアルカン、二酸化炭素、または他の適当なガスである適当な噴霧剤を使用した加圧容器、ポンプ、スプレーもしくは噴霧器からの乾燥粉末吸入器またはエアゾールスプレー形の形態で送達する。加圧エアゾールの場合は、バルブを設けることにより用量単位を決めて計量された量を送達することができる。加圧容器、ポンプ、スプレー、または噴霧器は、例えば溶媒としてエタノールおよび噴霧剤の混合物を使用する3-IPAカルシウムの溶液または懸濁液を含有することができ、追加で、潤滑剤、例えばトリオレイン酸ソルビタンエステルを含有することができる。
【0070】
吸入器または吸入剤投与器で使用するための(例えばゼラチン製の)カプセルおよびカートリッジを処方して、3-IPAカルシウムとラクトースもしくはデンプン等の適当な粉末基剤との粉末混合物を含有させることができる。
【0071】
(用量)
一般的に、医師が、個々の被験者に最も適当となる実際の投与量を決めることになる。特定の個体に対する具体的な用量レベルおよび投与の頻度は変えることができ、年齢、体重、総体的健康、性別、食習慣、投与の様式および時間、排出率、薬物の組合せ、特定の状態の重症度、および施術中の個々の治療法を含む様々な要因次第ということになる。
【0072】
ヒトへの経口および非経口投与に関しては、薬剤の1日投与量レベルは、単回または分割投与であってよい。様々な疾患または状態の治療に有効な3-IPAカルシウムの量を従来の方法によって決めることができる。
【0073】
(適応症)
3-IPAカルシウムを使用して、少なくとも部分的には酸化ストレスによって引き起こされるいずれの状態も治療することができる。好ましくは、原線維性疾患を治療するために3-IPAカルシウム含有剤形を使用する。原線維性疾患の例には、限定はしないがアミロイドーシス病、ならびにヒトのクロイツフェルトヤコブ病およびゲルストマンストロイスラーシャインカー病、ウシのウシ海綿状脳症、およびヒツジのスクレイピー等のプリオン関連疾患等、原線維の望ましくない沈着を伴ういかなる疾患または状態も含まれる。
【0074】
より好ましくは、3-IPAカルシウム含有剤形は、加齢、パーキンソン病、ハンチントン病、ダウン症、レヴィー小体認知症、筋萎縮性側索硬化症、進行性核上性麻痺、アミロイドーシス病、アテローム性動脈硬化症、気腫、幾つかの形態の癌、喘息、糖尿病およびその予後(例えば網膜症および腎症)、運動誘発性の組織損傷および身体機能、自己免疫疾患、癲癇、多発性神経障害、肝障害、AIDS、黄斑変性症、骨髄異形成症候群、化学療法によって引き起こされる損傷、毛細血管拡張性運動失調症、および欠陥DNA修復遺伝子によって引き起こされる疾患等、フリーラジカルおよび/または酸化ストレスが関与する疾患を治療するのに有用である。3-IPAカルシウム含有製剤は、電離放射線によって引き起こされる損傷に対する保護を提供する点でも有用である。3-IPAカルシウム含有剤形を、頭部傷害等の傷害由来の外傷、ならびに脳卒中等の虚血性および再灌流の傷害等の急性の病態を治療するために使用することもできる。
【0075】
制御放出性の3-IPAカルシウム含有剤形を使用してADを治療することが最も好ましい。
【0076】
(3-IPAカルシウムからの3-IPA遊離酸の合成)
3-IPA遊離酸を、出発物質であるインドール、アクリル酸、無水酢酸、および酢酸からワンステップワンポット法で大規模に合成することができる。H E Johnson および D G Crosby (1960年)、J. Org. Chem. 25:569参照。この方法の収量は貧弱で、妥当な収量を達成する前にこの方法の最適化に多大の労力を注ぎ込まなければならない。この方法で産生した3-IPAの純度は、もしこの化合物を活性医薬成分として使用するはずならば、許容し得ない。それ故、更なる精製(例えば結晶化によって)を必要とする。精製は、操作およびそれに引き続いての個体に有毒で環境に有害な再結晶用の大量の溶媒の廃棄を必要とする。
【0077】
本明細書に記載の、3-IPAカルシウムから3-IPA遊離酸を作る新しい方法は、この遊離酸を高純度で生じる。新しい方法は、3-IPA遊離酸をカルシウム塩に変換するステップを含み、このカルシウム塩はアクリル酸および酢酸出発物質のカルシウム塩の溶解度に比べて意外なほどの低い水溶解度を有している。それ故に、水溶液から沈殿する3-IPAカルシウムを濾過によって集め、水で数回洗浄して水溶性不純物、即ちアクリル酸カルシウム塩および酢酸カルシウム塩を除去する。次に、この純粋な3-IPAカルシウムを遊離酸に再変換する。
【0078】
3-IPA遊離酸を、当技術分野で既知のいずれの方法によってもカルシウム塩に変換することができる。例えば、塩化カルシウムを3-IPA遊離酸の溶液に加えてカルシウム塩を作ることができ、このカルシウム塩は溶液中に存在する他の酸のカルシウム塩より溶けにくく、溶液から沈殿することになる。他の適当なカルシウム塩には、硝酸カルシウム、酢酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、およびそれらの水和物が含まれるが、これらだけに限定されない。本発明の方法では酢酸カルシウムまたは塩化カルシウムを使用することが好ましい。
【0079】
3-IPA遊離酸を、水酸化アンモニウムの存在下、pH6〜7以上で、当技術分野で既知のいずれの方法によってもカルシウム塩に変換することができる。例えば、塩化カルシウムを、3-IPA遊離酸が水酸化アンモニウム水溶液に溶けた溶液に加えてカルシウム塩を形成させることができ、このカルシウム塩は、溶液中に存在する他の酸のカルシウム塩に比べてより低いその溶解度の故に、溶液から沈殿することになる。3-IPAのカルシウム塩を形成する方法で使用するための他の適当な塩基には、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、EDTA、水酸化テトラブチルアンモニウム、および水酸化テトラプロピルアンモニウムが含まれるが、これらだけに限定されない。
【0080】
3-IPAカルシウムを、当技術分野で既知のいずれの方法によっても分離できる。通常は、3-IPAカルシウムを、濾過によって分離し、最初に水で、次いでエタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、またはt-ブチルメチルエステルで洗浄して水ならびにアクリル酸カルシウムおよび存在する他の中性不純物等の可溶性不純物を除去し、例えば真空または風乾によって乾燥する。
【0081】
3-IPAカルシウムを当技術分野で既知のいずれの方法によっても遊離酸に変換できる。通常は、酢酸等の酸の過剰量水溶液をカルシウム塩に加えることによって、このカルシウム塩を遊離酸に変換できる。本発明の方法で使用するための他の適当な酸には、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、過塩素酸、硝酸、スルホン酸、および硫酸が含まれるが、これらだけに限定されない。酢酸を本発明の方法で使用して3-IPA酸カルシウム塩を実質的に純粋な遊離酸に変換することが好ましい。
【0082】
この実質的に純粋な3-IPA遊離酸を、酢酸エチルまたは塩化メチレン等の適当な極性有機溶媒での抽出によって、または好ましくは沈殿によって単離することができる。例えば、3-IPA遊離酸溶液を水で希釈し、エタノールまたはメタノール等の水溶性有機溶媒を引き続いて加えることにより、沈殿を誘発することができる。3-IPA遊離酸の再結晶に適当ないかなる溶媒または溶媒系も、このステップで使用することができる。例えば真空濾過による母液からの固体物の沈殿および分離後に、3-IPA遊離酸を洗浄し、その後乾燥する。
【0083】
(実施例)
(実施例1)
(アクリル酸および精製のための3-IPAカルシウム中間体を使用する3-IPAの合成)
【化2】

【0084】
インドール(8.015kg)、酢酸(16L)、アクリル酸(3eq、14L)、および無水酢酸(2eq、13L)を、窒素雰囲気下で64時間50℃まで加熱した(ステップ1、図式1)。インドールは、98.6%の3-IPAへの変換を示した。反応混合物を18〜20℃まで冷却し、水(22.5L)を加え、撹拌を18〜20℃で18時間継続した。生じた混合物は残余無水物が無いことを示し、3-IPAの純度は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって69.32面積%であることが分かった。ヘプタン(17.2L)を加え、45Lの酢酸/水を共沸蒸留(p=90〜140mbar、IT=28〜32℃、OT=60〜70℃)によって除去した。17Lのヘプタンを蒸留(p=54〜80mbar、OT=60℃、IT=33〜42℃)によって除去した。反応混合物の温度が20℃に達したときに、酢酸エチル(25L)および水(69L)を加えた。0〜10℃の間の温度で、30%水酸化ナトリウム(32L)を使用してpHを12に調整した。4〜7℃の温度での相分離の後で、水性層を酢酸エチル(2×25L)で抽出した。酢酸エチル(32L)を水性相に加え、4〜7℃で32%HCl(0.8L)を使用して、pHを6〜7に調整した。
【0085】
水/酢酸エチル混合物が20℃の温度に達したときに、飽和酢酸カルシウム溶液(39L)を1時間以内に加え、懸濁液を形成させた。(ステップ2、図式1)。この懸濁液を15℃で15時間撹拌した。3-IPAカルシウムを濾過によって集め、飽和酢酸カルシウム溶液(12L)、水(40L)、および酢酸エチル(40L)で洗浄した。この濡れた濾過ケーキ(HPLCによって99.5面積%の3-IPAカルシウムを含有)を、18〜20℃で酢酸(31L)に溶解し、1時間以内に水(88L)を加えた。(ステップ3、図式1)。この懸濁液を10℃で一晩撹拌した。粗製3-IPAを濾過によって集め、水(24L)で洗浄した。この濡れた濾過ケーキをイソプロピルアルコール(44L)に溶かし、水(120L)を、20〜25℃で1時間以内に加えた。この懸濁液を5℃まで冷却し、65時間撹拌した。3-IPAを濾過によって分離し、水(32L)で洗浄して乾燥した。4.7kg(収率36%、99.87面積%、98.89w/w%)であった。
【0086】
(実施例2)
(アクリル酸および精製のための3-IPAカルシウム中間体を使用する3-IPAの合成)
インドール(58.59g)、酢酸(120mL)、アクリル酸(3eq、103mL)、および無水酢酸(2eq、94mL)を、窒素雰囲気下で43時間50℃まで加熱した(ステップ1、図式1)。インドールは、97.9%の3-IPAへの変換を示した。反応混合物を20℃まで冷却し、水(164mL)を加え、撹拌を20℃で18時間継続した。生じた混合物は残余無水物が無いことを示した。3-IPAの純度は、HPLCによって72.12面積%であることが分かった。ヘプタン(126mL)を加え、230mLの酢酸/水混合物を共沸蒸留(p=119mbar、IT=21〜40℃、OT=70℃)によって除去した。92mLのヘプタンを蒸留(p=119mbar、OT=70℃、IT=40〜50℃)によって除去した。反応混合物の温度が20℃に達したときに、酢酸エチル(182mL)および水(502mL)を加えた。反応混合物の温度が5℃と11℃との間に達したときに、30%水酸化ナトリウム(109mL)を加え、1Mの塩酸(3.5mL)を使用してpHを8.5に調整した。15℃の温度で相分離が起こった後で、水性層を酢酸エチル(2×180mL)で抽出した。酢酸/水(1:1)を使用してpHを7.7に調整し、15℃で酢酸エチル(235mL)を加えた。
【0087】
水/酢酸エチル混合物が20℃の温度に達したときに、飽和塩化カルシウム溶液(224mL)を1時間以内に加え、懸濁液を形成させた。(ステップ2、図式1)。この懸濁液を15℃で15時間撹拌した。3-IPAカルシウムを濾過によって集め、飽和酢酸カルシウム溶液(70mL)、水(295mL)、および酢酸エチル(295mL)で洗浄した。生じた濡れた濾過ケーキ(HPLCによって98.7面積%の3-IPAカルシウムを含有)を、20℃で酢酸(115mL)に溶解し、5分以内に水(325mL)を加えた。(ステップ3、図式1)。この懸濁液を71℃まで加熱し、清澄な溶液を得た。この反応混合物を4時間以内に0℃まで冷却した。この懸濁液を0℃で一晩撹拌した。粗製3-IPAを濾過によって集め、水(88mL)で洗浄した。この濡れた濾過ケーキをイソプロピルアルコール(160mL)に溶かし、水(440mL)を、20〜25℃で1時間以内に加えた。この懸濁液を5℃まで冷却し、一晩撹拌した。3-IPAを濾過によって分離し、水(116mL)で洗浄して乾燥した。16.6g(収率35%、HPLCによって99.7面積%)であった。
【0088】
(実施例3)
(精製のために3-IPAカルシウム中間体を使用する3-IPAの合成)
【化3】

【0089】
14.421kgの3-IPA(HPLCによって97.4面積%)を水(51L)および水酸化アンモニウム溶液(12.6L、25%)に溶解した。生じた溶液のpHは9であった。酢酸エチル(51L)を加えた。水/酢酸エチル混合物が20℃の温度に達したときに、飽和塩化カルシウム溶液(20L)を1時間以内に加え、懸濁液を形成させた。(ステップ1、図式2)。この懸濁液を20℃で14時間撹拌した。3-IPAカルシウムを濾過によって集め、水(14.5L)および酢酸エチル(2×14.5L)で洗浄した。HPLCによって定量された99.74面積%の3-IPAカルシウムを含有するこの濡れた濾過ケーキを、18〜19℃で酢酸(50.5L)に溶解し、1時間以内に水(143L)を加えた。(ステップ2、図式2)。この懸濁液を75℃まで加熱し、清澄な溶液を得た。この反応混合物を4時間以内に0℃まで冷却した。この懸濁液を0℃で一晩撹拌した。粗製3-IPAを濾過によって集め、水(39L)で洗浄した。この濡れた濾過ケーキをイソプロピルアルコール(126L)に溶かし、水(366L)を、20〜22℃で1時間以内に加えた。この懸濁液を0℃まで冷却し、一晩撹拌した。3-IPAを濾過によって分離し、水(117L)で洗浄して乾燥した。11.677kg(回収率81%、HPLCによって99.8面積%)であった。
【0090】
本発明は、本明細書に記載の固有の実施形態による範囲に限定されるわけではない。実際に、当業者であれば前述の記載から本明細書に記載されたものに加えて本発明の様々な改変が明白になる。これらの改変は、添付の特許請求項の範囲に含まれることになる。
【0091】
本明細書で引用された、全ての特許、公開特許出願、および公表された科学論文を含む全ての参考文献は、あらゆる目的のために参照によりその全体が組込まれている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物3-(3-インドリル)プロピオン酸カルシウム塩またはその水和物。
【請求項2】
0から10の間の水和数を有する請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
(a)3-(3-インドリル)プロピオン酸の遊離酸をカルシウム塩に変換する工程と、
(b)前記カルシウム塩を沈殿させて洗浄する工程と、
(c)前記カルシウム塩を前記遊離酸に再変換する工程と
を含む、実質的に純粋な3-(3-インドリル)プロピオン酸の遊離酸を作る方法。
【請求項4】
前記実質的に純粋な3-(3-インドリル)プロピオン酸の遊離酸が、97%以上の純度を有する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記実質的に純粋な3-(3-インドリル)プロピオン酸の遊離酸が、99%以上の純度を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
哺乳動物の細胞を治療有効量の3-(3-インドリル)プロピオン酸カルシウム塩に曝露することを含む、哺乳動物の細胞に対するアミロイドベータタンパク質の細胞毒性作用を阻害する方法。
【請求項7】
前記哺乳動物がヒトである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記細胞毒性作用が、細胞生存率の減少、脂質過酸化反応の増加、細胞内カルシウム濃度の増加、散在性膜疱形成、細胞収縮、核膜に向かうクロマチンの異常分布、および核崩壊からなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
原線維性疾患の治療を必要とする被験者の原線維性疾患を治療する方法であり、
前記被験者に治療有効量の3-(3-インドリル)プロピオン酸カルシウム塩を投与することを含む方法。
【請求項10】
前記被験者がヒトである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記原線維性疾患が、アルツハイマー病、アミロイドーシス病、およびプリオン関連疾患からなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
治療を必要とする被験者に治療有効量の3-(3-インドリル)プロピオン酸カルシウム塩を投与することを含む、フリーラジカルおよび/または酸化ストレスが関与する疾患または状態を治療する方法。
【請求項13】
前記被験者がヒトである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記疾患または状態が、加齢、パーキンソン病、ハンチントン病、ダウン症、レヴィー小体認知症、筋萎縮性側索硬化症、進行性核上性麻痺、アミロイドーシス病、アテローム性動脈硬化症、気腫、癌、喘息、糖尿病、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、運動誘発性の組織損傷、自己免疫疾患、癲癇、多発性神経障害、肝障害、AIDS、黄斑変性症、傷害由来の外傷、脳卒中、骨髄異形成症候群、化学療法によって引き起こされる損傷、毛細血管拡張性運動失調症、欠陥DNA修復遺伝子によって引き起こされる疾患、および電離放射線によって引き起こされる損傷からなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
3-(3-インドリル)プロピオン酸カルシウム塩および薬剤として許容し得る希釈剤または担体を含む医薬組成物。
【請求項16】
請求項15に記載の医薬組成物を含む固体剤形。
【請求項17】
前記固体剤形が錠剤である、請求項16に記載の固体剤形。
【請求項18】
持続放出剤形になっている、請求項16に記載の固体剤形。
【請求項19】
前記持続放出剤形が錠剤である、請求項18に記載の固体剤形。
【請求項20】
請求項15に記載の医薬組成物を含むデポ剤形。
【請求項21】
哺乳動物の細胞に対するアミロイドベータタンパク質の細胞毒性作用を阻害するための薬剤を調製するための3-(3-インドリル)プロピオン酸カルシウム塩の使用。
【請求項22】
前記哺乳動物がヒトである、請求項21に記載の使用。
【請求項23】
前記細胞毒性作用が、細胞生存率の減少、脂質過酸化反応の増加、細胞内カルシウム濃度の増加、散在性膜疱形成、細胞収縮、核膜に向かうクロマチンの異常分布、および核崩壊からなる群から選択される、請求項21に記載の使用。
【請求項24】
被験者における原線維性疾患の治療用の薬物を調製するための3-(3-インドリル)プロピオン酸カルシウム塩の使用。
【請求項25】
前記被験者がヒトである、請求項24に記載の使用。
【請求項26】
前記原線維性疾患が、アルツハイマー病、アミロイドーシス病、およびプリオン関連疾患からなる群から選択される、請求項24に記載の使用。
【請求項27】
被験者において、フリーラジカルおよび/または酸化ストレスが一因となっている疾患または状態の治療用の薬物を調製するための3-(3-インドリル)プロピオン酸カルシウム塩の使用。
【請求項28】
前記被験者がヒトである、請求項27に記載の使用。
【請求項29】
前記疾患または状態が、加齢、パーキンソン病、ハンチントン病、ダウン症、レヴィー小体認知症、筋萎縮性側索硬化症、進行性核上性麻痺、アミロイドーシス病、アテローム性動脈硬化症、気腫、癌、喘息、糖尿病、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、運動誘発性の組織損傷、自己免疫疾患、癲癇、多発性神経障害、肝障害、AIDS、黄斑変性症、傷害由来の外傷、脳卒中、骨髄異形成症候群、化学療法によって引き起こされる損傷、毛細血管拡張性運動失調症、欠陥DNA修復遺伝子によって引き起こされる疾患、および電離放射線によって引き起こされる損傷からなる群から選択される、請求項27に記載の使用。

【公表番号】特表2010−501591(P2010−501591A)
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−525782(P2009−525782)
【出願日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際出願番号】PCT/US2007/076645
【国際公開番号】WO2008/024914
【国際公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(506000254)インテレクト・ニューロサイエンシズ・インコーポレーテッド (2)
【Fターム(参考)】