説明

3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチル−プロピル)−フェノール、およびパラセタモールを含む医薬の組合せ

本発明は、構成要素として(a)化合物3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチル−プロピル)−フェノールおよび(b)パラセタモールまたはその誘導体を含む組合せ、前記組合せを含む医薬製剤および剤形、ならびに構成要素(a)および(b)が哺乳動物に同時にまたは逐次的に投与されることを特徴とし、構成要素(a)は構成要素(b)の前または後に投与することができ、構成要素(a)または(b)が同じ投与経路または異なる投与経路によって哺乳動物に投与される、疼痛(例えば慢性または急性疼痛)を治療する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構成要素として(a)化合物3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチル−プロピル)−フェノール、および(b)パラセタモールまたはその誘導体を含む組合せ、前記組合せを含む医薬製剤および剤形、ならびに構成要素(a)および(b)が哺乳動物に同時にまたは逐次的に投与されることを特徴とし、構成要素(a)は構成要素(b)の前または後に投与することができ、構成要素(a)または(b)が同じ投与経路または異なる投与経路によって哺乳動物に投与される、疼痛(例えば慢性または急性疼痛)を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
慢性および急性疼痛状態の治療は医療において極めて重要である。現在、オピオイド系に限らず、新たな、極めて効果的な疼痛治療が、世界的に求められている。疼痛状態の患者指向的で意図的な治療(これは患者にとって好結果であり満足できる疼痛の治療を意味すると解釈される)のための行動が急務であることは、応用鎮痛薬の分野および侵害受容に関する基礎研究の分野において最近公表された数多くの科学論文に記述されている。
【0003】
たとえ疼痛の治療に現在使用されている鎮痛薬、例えばオピオイド、NA−および5HT−再取り込み阻害剤、NSAIDおよびCOX阻害剤が鎮痛薬として有効であるとしても、それでもなお、時には副作用が発生する。WO2004/047823には、投与時に超相加的な効果を示す、1−フェニル−3−ジメチルアミノ−プロパン化合物およびCOX−II阻害剤などといった一定の鎮痛薬を含む物質の組合せが記載されている。その超相加的効果ゆえに、総用量を減らすことができ、したがって望ましくない副作用のリスクを低減することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の目的は、疼痛の治療に適したさらなる組合せであって、好ましくは、有効量で投与された場合に、望ましくない副作用の発現がその個々の構成要素と比較して少ない組合せを見出すことである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(a)化合物3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチル−プロピル)−フェノール、および(b)パラセタモールまたはその誘導体を含む組合せは、鎮痛効果を示すことが見出された。これらの構成要素が、患者への投与後に相乗効果が観察されるような重量比で組成物中に存在すれば、望ましくない副作用の発生が少なくなるように、総投与量を低減することができる。
【0006】
したがって本発明は、構成要素として、
(a)場合により、その純粋な立体異性体(特にエナンチオマーもしくはジアステレオマー)のうちの1つの形態、ラセミ体、またはその立体異性体(特にエナンチオマーおよび/またはジアステレオマー)の任意の混合比での混合物の形態である、または対応するその酸付加塩、またはその任意の溶媒和物である、式(I)
【0007】
【化1】

【0008】
で表わされる3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチル−プロピル)−フェノール、ならびに
(b)パラセタモールまたはその誘導体
を含む医薬の組合せに関する。
【0009】
本発明の組合せの一実施形態では、構成要素(a)が
(1R,2R)−3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチル−プロピル)−フェノール、
(1S,2S)−3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチル−プロピル)−フェノール、
(1R,2S)−3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチル−プロピル)−フェノール、
(1S,2R)−3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチル−プロピル)−フェノール、およびその任意の混合物
から選択される。
【0010】
本発明の組合せの他の実施形態では、構成要素(a)が
(1R,2R)−3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチル−プロピル)−フェノール、および
(1S,2S)−3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチル−プロピル)−フェノール、ならびにその任意の混合物
から選択される。
【0011】
さらに他の実施形態では、本発明の組合せが、
(a)式(I’)
【0012】
【化2】

【0013】
で表わされる、化合物(1R,2R)−3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチル−プロピル)−フェノールまたはその酸付加塩、および
(b)パラセタモールまたはその誘導体
を含む。
【0014】
式(I)の化合物3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチル−プロピル)−フェノール、その立体異性体および対応するその塩、ならびにそれらを製造するための方法は、例えば米国特許第6,248,737号から、よく知られている。その記述の各記載箇所は参照により本明細書に組み入れられ、本開示の一部を形成する。
【0015】
本明細書で用いられる構成要素(a)の定義には、化合物3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチル−プロピル)−フェノールおよびその立体異性体が、可能な任意の形態で包含され、したがって特に、溶媒和物、酸付加塩および対応するその溶媒和物ならびに多形体が含まれる。
【0016】
構成要素(a)がエナンチオマーの混合物として存在する場合、そのような混合物はラセミ型または非ラセミ型のエナンチオマーを含有しうる。非ラセミ型は、例えば、エナンチオマーを60:40、70:30、80:20または90:10の比で含有することができるだろう。
【0017】
構成要素(a)の化合物3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチル−プロピル)−フェノールおよびその立体異性体は、本発明の医薬組成物中に、酸付加塩の形で存在することができ、その場合は、そのような付加塩を形成する能力を持つ任意の適切な酸を使用することができる。
【0018】
適切な酸との反応によって化合物3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチル−プロピル)−フェノールを対応する付加塩に変換することは、当業者に周知の方法で達成することができる。適切な酸には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、メタンスルホン酸、ギ酸、酢酸、シュウ酸、コハク酸、酒石酸、マンデル酸、フマル酸、乳酸、クエン酸、グルタミン酸および/またはアスパラギン酸があるが、これらに限定されるわけではない。塩形成は、好ましくは溶媒中で、例えばジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、酢酸アルキル、アセトンおよび/または2−ブタノン中で達成される。さらにまた、水溶液中のトリメチルクロロシランも塩酸塩の製造に適している。
【0019】
非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)の鎮痛作用が、酵素によるプロスタグランジン類の産生の阻害に起因することは、当業者には知られており、シクロオキシゲナーゼ(COX)は、細胞膜の脂質に由来するアラキドン酸がプロスタグランジン類および他のエイコサノイドに変換される際のキー酵素である。COXは、異なる発現パターンによって特徴づけられる二つの異なるアイソフォームで存在する。COX−Iは身体の多くの細胞で構成的に発現され、主としてエイコサノイドの産生を担って、正常な生理機能に役立っている。COX−II発現は炎症時に誘導され、COX−IIは中枢神経系でも発現される。
【0020】
パラセタモールおよびその誘導体は有意な抗炎症活性を示さず、したがってNSAIDであるとはみなされない。
【0021】
本明細書で使用するパラセタモール(アセトアミノフェンとも呼ばれている)およびその誘導体という用語には、これらの化合物の可能な任意の形態が包含され、したがってその溶媒和物および多形が含まれる。
【0022】
本明細書で使用する誘導体という用語には、特に、パラセタモールのエーテルおよびエステルなどのプロドラッグが包含される。所与の物質のプロドラッグを選択し製造するための適切な方法は、例えば「Textbook of Drug Design and Discovery」第3版(2002)の第14章、410〜458頁(編者:Krogsgaard-Larsenら、Taylor and Francis)に記載されている。前記文献の各記載箇所は参照により本明細書に組み入れられ、本開示の一部を形成する。
【0023】
パラセタモールおよびその誘導体、例えばプロパセタモールおよびフェニジン(Phenidine)、ならびにそれらの製造プロセスは、例えばE.Friderichsら「Analgesics and Antipyretics」(Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry、第6版、Wiley-VCH Verlag GmbH、ドイツ2000、1〜22頁)およびH.Buschmann,T.Christoph,E.Friderichs,C.Maul,B.Sundermann「Analgecis - From Chemistry and Pharmacology to Clinical Application」(2002、Part II、Wiley-VCH Verlag、ドイツ)から、当技術分野では周知である。前記文献の各記載箇所は参照により本明細書に組み入れられ、本開示の一部を形成する。
【0024】
本発明の組合せの一実施形態では、構成要素(b)のパラセタモールの誘導体が、プロパセタモールおよびフェニジンからなる群より選択される。
【0025】
本発明の特定の一実施形態は、(a)(1R,2R)−3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチル−プロピル)−フェノール、またはその塩酸付加塩、および(b)パラセタモールを含む。
【0026】
本発明の組合せの一部として、構成要素(a)および(b)はどちらも、その通常の1日量で投与することができる。パラセタモールの1日量は、成人の場合、好ましくは4gを超えないべきである。乳児および小児の場合、1日量は好ましくは90mg/kgを超えないべきである。好ましくは、化合物(1R,2R)−3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチル−プロピル)−フェノールを、25〜1000mgの1日量、特に好ましくは50〜800mgの投薬量、より一層好ましくは100〜600mgの投薬量で、患者に投与することができる。
【0027】
本発明の他の実施形態では、本発明の組合せが、構成要素(a)および(b)を基本的に同効比(in an equieffective ratio)で含有しうる。
【0028】
本発明の組合せのさらに他の実施形態では、構成要素(a)および(b)が、結果として得られる組成物が患者に投与されたときに相乗効果を発揮するような重量比で存在する。適切な重量比は、当業者には周知の方法により、例えば後述のランダルセリット試験によって決定することができる。
【0029】
構成要素(a)および(b)はどちらも、同効比からは外れた比で、本発明の組合せ中に存在していてもよい。例えば、構成要素のそれぞれは、同効量の1/5から同効量の5倍までの範囲、好ましくは同効量の1/4〜4倍、より好ましくは1/3〜3倍、さらに好ましくは1/2〜2倍の範囲で存在することができる。
【0030】
本発明の他の実施形態では、構成要素(a)および(b)を、疼痛(例えば慢性疼痛または急性疼痛)を治療するための特別な投薬レジメンで投与することができる。構成要素(a)および(b)は、互いに同時にまたは逐次的に、そしていずれの場合も、同じ投与経路または異なる投与経路で投与することができる。したがって、本発明の他の態様は、構成要素(a)および(b)が哺乳動物に同時にまたは逐次的に投与されることを特徴とし、構成要素(a)は構成要素(b)の前または後に投与することができ、構成要素(a)または(b)が同じ投与経路または異なる投与経路で哺乳動物に投与される、疼痛(例えば慢性または急性疼痛)を治療する方法である。適切な投与経路には、経口投与、静脈内投与、腹腔内投与、経皮投与、髄内投与、筋肉内投与、鼻腔内投与、経粘膜投与、皮下投与、または直腸投与などがあるが、これらに限定されるわけではない。
【0031】
本発明の組合せは毒性学的に安全であり、したがって哺乳動物、特に乳児、小児および大人を含むヒトの治療に適している。
【0032】
したがって、さらに他の態様において、本発明は、本明細書に記載する本発明の組合せと1種以上の補助剤とを含む医薬組成物に関する。
【0033】
さらに他の態様において、本発明は、本明細書に記載する本発明の組合せと1種以上の補助剤とを含む医薬剤形に関する。
【0034】
ある実施形態において、本発明の医薬剤形はさらにカフェインを含む。
【0035】
ある実施形態において、本発明の医薬剤形は、経口投与、静脈内投与、腹腔内投与、経皮投与、髄内投与、筋肉内投与、鼻腔内投与、経粘膜投与、皮下投与、または直腸投与するのに適している
本発明の製剤および剤形は、補助剤、例えば担体、充填剤、溶媒、希釈剤、着色剤および/または結合剤を含むことができる。補助剤の選択およびその使用量は、例えば薬物がどのように投与される予定であるか、例えば経口投与されるか、静脈内投与されるか、腹腔内投与されるか、皮内投与されるか、筋肉内投与されるか、鼻腔内投与されるか、局所投与されるか、そして例えば、その目的が皮膚の感染か、粘膜の感染か、または目の感染かに依存する。
【0036】
本発明との関連で適切な補助剤は、生薬製剤の製造に有用な、当業者に知られている任意の物質である。適切な補助剤の例には以下に挙げるものがあるが、これらに限定されるわけではない:水、エタノール、2-プロパノール、グリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グルコース、フルクトース、ラクトース、サッカロース、デキストロース、糖みつ、デンプン、加工デンプン、ゼラチン、ソルビトール、イノシトール、マンニトール、微結晶セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、酢酸セルロース、シェラック、セチルアルコール、ポリビニルピロリドン、パラフィン、ロウ、天然および合成ゴム、アラビアゴム、アルギナート、デキストラン、飽和および不飽和脂肪酸、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸グリセロール、ラウリル硫酸ナトリウム、食用油、ゴマ油、ヤシ油、ラッカセイ油、ダイズ油、レシチン、乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレンおよびポリプロピレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ソルビン酸、安息香酸、クエン酸、アスコルビン酸、タンニン酸、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、二酸化ケイ素、酸化チタン、二酸化チタン、硫酸マグネシウム、硫酸亜鉛、硫酸カルシウム、カリ、リン酸カルシウム、リン酸二カルシウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、タルク、カオリン、ペクチン、クロスポビドン、寒天およびベントナイト。
【0037】
錠剤、発泡錠、咀嚼錠、糖衣丸、カプセル剤、滴剤、ジュース剤またはシロップ剤の形態をした医薬製剤(剤形)は、例えば経口投与に適している。経口医薬製剤は、錠剤に圧縮されるか、カプセルに充てんされるか、分包に充てんされるか、適切な液体媒質に懸濁されていてもよい。例えば顆粒、ペレット、球体、結晶などといった多粒子の形態をとることもできる。経口医薬製剤には腸溶コーティングを施すこともできる。
【0038】
非経口投与、局所外用および吸入投与に適した医薬製剤には、溶液剤、懸濁剤、容易に再構成することができる乾燥調製物およびスプレー剤などがあるが、これらに限定されるわけではない。
【0039】
坐剤は直腸投与用の適切な医薬製剤である。任意に皮膚透過を促進するための薬剤を添加していてもよい。例えば、例えば貼付剤中に溶解した積層製剤は、適切な経皮投与用製剤の例である。
【0040】
本発明の医薬製剤には、構成要素(a)および(b)の一方または両方が、少なくとも部分的に放出制御型で存在しうる。さらにまた、本発明の医薬製剤には、前記構成要素の放出制御型/即時放出型の任意の組合せも存在しうる。例えば、本発明の製剤からは、例えば経口投与、直腸投与または経皮投与された場合に、構成要素の一方または両方が、一定の遅延を伴って放出されうる。そのような製剤は、それぞれ1日に1回または1日に2回服用するだけでよい「1日1回型」または「1日2回型」の調製物には、とりわけ有用である。適切な放出制御材料は当業者にはよく知られている。
【0041】
本発明の医薬製剤は、例えば「Remington's Pharmaceutical Sciences」(A.R.Gennaro編、第17版、Mack Publishing Company、ペンシルバニア州イーストン(1985))、特にその第8部、第76〜93章に記述されているように、医薬製剤の先行技術においてよく知られている材料、手段、装置およびプロセスを使って製造することができる。
【0042】
錠剤などの固形医薬製剤を得るには、均質に分布した構成要素を含有する固形組成物が形成されるように、例えば、医薬組成物の構成要素を医薬担体、例えば通常の錠剤成分、例えばトウモロコシデンプン、ラクトース、サッカロース、ソルビトール、タルク、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウムまたは医薬的に許容されるゴム、および医薬希釈剤、例えば水と共に造粒することができる。「均質な分布」という用語は、構成要素が組成物全体にわたって一様に分布し、そのため、前記組成物を、錠剤、丸剤またはカプセル剤などの等しく有効な単位剤形へと容易に分割しうることを意味する。次に、固形組成物を単位剤形に分割する。本発明に係る医薬組成物の錠剤または丸剤は、放出制御された剤形を得るために、異なる方法でコーティングまたは調合することもできる。
【0043】
構成要素の1つ、例えば構成要素(b)が、他の構成要素に先だって、例えば少なくとも30分早く、または1時間早く、放出されるようにする場合は、それに対応する放出プロファイルを持つ医薬製剤を製造することができる。そのような製剤の一例は、それ自体が構成要素(b)を含有するコーティングによって、構成要素(a)の遅延放出(それゆえ構成要素(b)の方が先に放出される)を達成するための浸透圧駆動式放出システムである。経口投与にとりわけ適したこの種の放出システムでは、放出システムの表面の少なくとも一部、好ましくは全部、好ましくは放出媒質と接触することになる部分が、半透性である(好ましくは半透性コーティングが施される。その表面は放出媒質に対して透過性である)が、活性成分である構成要素(a)に対しては実質的に(好ましくは全く)不透過性であり、表面および/または任意のコーティングは、活性成分である構成要素(a)を放出するための開口部を少なくとも1つは含んでいる。さらにまた、放出媒質と接触するまさにその表面には、他方の構成要素である構成要素(b)を含有し放出するコーティングが施される。これは、好ましくは、放出開口部、浸透圧医薬組成物コア、半透膜、および膨潤時に圧力を発生させるポリマー部分を含む錠剤型のシステムを意味すると解釈される。この種のシステムの適切な例としては、ALZA Corporation(米国)がOROS(登録商標)という商品名で、特にOROS(登録商標)Push−Pull(商標)システム、OROS(登録商標)Delayed Push−Pull(商標)システム、OROS(登録商標)Multi−Layer Push−Pull(商標)システム、OROS(登録商標)Push−Stickシステム、そしてまた、特定の例ではL−OROS(商標)という商品名で販売しているシステムがある。
【0044】
浸透圧駆動式放出システムの実施形態および実施例は、例えば米国特許第4,765,989号、同第4,783,337号および同第4,612,008号に開示されており、その各内容は全て、参照により本明細書に組み入れられ、本発明の開示の一部を形成する。
【0045】
適切な医薬製剤のさらなる例として、Penwest Pharmaceuticalsが(例えばTimeRXとして)開発した製品のような、ゲルマトリックス錠がある。適切な例は、米国特許第5,330,761号、同第5,399,362号、同第5,472,711号および同第5,455,046号に記載されており、その各内容は全て、参照により本明細書に組み入れられ、本発明の開示の一部を形成する。医薬活性組成物が不均質に分布している遅延マトリックス製剤はとりわけ適しており、この場合は、例えば構成要素(b)を、マトリックスの外側の領域(放出媒質と最も迅速に接触することになる部分)に分布させ、他方の構成要素(a)をマトリックスの内部に分布させることができる。放出媒質と接触すると、外側マトリックス層は、最初に(そして迅速に)膨潤し、まず第一にパラセタモール構成要素を放出し、次に、かなり(さらに)遅れて、構成要素(a)の放出が起こる。適切なマトリックスの例として、1〜80重量%の1種以上の親水性または疎水性ポリマーを医薬的に許容されるマトリックス形成剤とするマトリックスが挙げられる。適切なマトリックスのさらなる例は米国特許第4,389,393号から推測することができ、その各内容は参照により本明細書に組み入れられ、本発明の開示の一部を形成する。
【0046】
患者に投与されるべき本発明の医薬的に活性な組合せの量は、当業者に周知のさまざまな要因、例えば患者の体重、投与経路、または病気の重症度に依存して変動しうる。
【0047】
さらに他の態様において、本発明は、疼痛治療用の医薬品を製造するための、本明細書に記載する本発明の組合せの使用に関する。
【0048】
他の実施形態において、本発明は、疼痛治療用の医薬品を製造するための、本明細書に記載する本発明の組合せの使用であって、疼痛が炎症性疼痛、神経因性疼痛、急性疼痛、慢性疼痛、内臓痛、片頭痛疼痛およびがん性疼痛から選択されるものに関する。
【0049】
さらに他の態様において、本発明は、哺乳動物(好ましくはヒト)における疼痛を治療する方法であって、本明細書に記載する本発明の組合せの有効量をその哺乳動物に投与することを含む方法に関する。
【0050】
本発明のさらに他の態様において、本発明は、哺乳動物(好ましくはヒト)における疼痛を治療する方法であって、本明細書に記載する本発明の組合せの有効量をその哺乳動物に投与することを含み、疼痛が、炎症性疼痛、神経因性疼痛、急性疼痛、慢性疼痛、内臓痛、片頭痛疼痛およびがん性疼痛から選択される方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
薬理学的方法
A.ラットにおけるランダルセリット試験
本発明の医薬組成物の超相加的効果(相乗効果)をもたらすであろう構成要素(a)および(b)の重量比は、炎症性疼痛のモデルであるArch. Int. Pharmacodyn., 1957, 111:409〜419に記載のRandallとSellittoの試験によって決定することができる。この文献の各記載箇所は参照により本明細書に組み入れられ、本開示の一部を形成する。
【0052】
ラットの後肢腹側に0.1mlのカラゲニン懸濁液を注射することによって浮腫を誘発し、4時間後に、そこに、スタンプ(先端径2mm)を使って加える圧力を増加させ続けることによって、疼痛を発生させる。試験物質の抗侵害受容および抗痛覚過敏活性を、その物質の投与後、さまざまな時点で判定する。判定されるべき測定値であり、同時にこの疼痛試験のエンドポイントでもある測定値は、ラットの発声反応が生じた時の圧力である。最大可能性効果に対するパーセンテージ(%MPE)を算出する。スタンプの最大圧は250gである。群サイズはn=10である。
【0053】
構成要素(a)および(b)を含む本発明の医薬組成物の超相加的効果に関する結果の解析は、理論上の相加的ED50値を、実験的に決定したいわゆる固定比組合せのED50値と統計比較することによって行う(Tallarida JT, Porreca FおよびCowan A.「Statistical analysis of drug-drug and site-site interactions with isobolograms(アイソボログラムによる薬物-薬物および部位-部位相互作用の統計解析)」Life Sci 1989;45:947-961によるアイソボログラム解析)。本明細書に示す相互作用研究は、単独で投与した場合の各構成要素のED50値の比から算出した二つの構成要素の同効用量を使って行った。
【0054】
適用経路は、(1R,2R)−3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチル−プロピル)−フェノール(A)については静脈内(i.v.)とし、パラセタモールについては腹腔内(i.p.)とした。Aを単独で適用した場合、適用後15分(第1測定時点)でピーク効果に到達し、ED50値1.878(1.694〜2.065)mg/kg i.v.というED50値が算出された。パラセタモールは189.9(181.3〜198.4)mg/kg i.p.というED50値で用量依存的な鎮痛効果を誘発し、適用後120分でピーク効果に到達した。各々のピーク効果の時点に応じて、相互作用実験の測定時点の15分前に(1R,2R)−3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチル−プロピル)−フェノールを適用し、120分前にパラセタモールを適用した(すなわちパラセタモールを(1R,2R)−3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチル−プロピル)−フェノールの105分前に適用した)。したがって、この組合せのED50算出の時点は、各化合物のピーク効果の時点に相当する。アイソボログラム解析により、本組合せの実験的ED50値は、各々の理論的ED50値よりも著しく低いことが明らかになった。したがって、この組合せの研究は(1R,2R)−3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチル−プロピル)−フェノールとパラセタモールとの有意な相乗的相互作用を示している。
【0055】
アイソボログラム解析の結果を以下の表に要約する。
【0056】
【表1】

【0057】
上記の表1から、A対パラセタモールの比は1:101と算出することができる。
【0058】
以下の実施例は、本発明を理解しやすくするためのものであって、それら実施例に本発明の主題を限定するものではない。
【実施例】
【0059】
パラセタモール複合錠剤の製造
【0060】
【表2】

【0061】
ポビドンを水1.5リットルに溶解する。パラセタモールおよび(1R,2R)−3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチル−プロピル)−フェノールを高剪断ミキサーで調合し、ポビドン溶液を添加することによって化合物を造粒した。その湿塊を3mmふるいで分粒し、50℃の乾燥器で乾燥した。その乾燥塊を微結晶セルロースおよび粉末セルロースと共に1mmふるいで分粒する。その塊を0.315mmふるいに通しておいたステアリン酸と調合する。その最終塊をKorsch EK0打錠機で直径13mmおよび重量各610mgの錠剤に圧縮する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成要素として、
(a)場合により、その純粋な立体異性体(特にエナンチオマーもしくはジアステレオマー)のうちの1つの形態、ラセミ体、またはその立体異性体(特にエナンチオマーおよび/またはジアステレオマー)の任意の混合比での混合物の形態である、または対応するその酸付加塩、またはその任意の溶媒和物である、式(I)
【化1】

で表わされるの3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチル−プロピル)−フェノール少なくとも1種
および
(b)パラセタモールまたはその誘導体
を含む組合せ。
【請求項2】
構成要素(a)が
(1R,2R)−3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチル−プロピル)−フェノール、
(1S,2S)−3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチル−プロピル)−フェノール、
(1R,2S)−3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチル−プロピル)−フェノール、
(1S,2R)−3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチル−プロピル)−フェノール、およびその任意の混合物
から選択される、請求項1に記載の組合せ。
【請求項3】
構成要素(a)が
(1R,2R)−3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチル−プロピル)−フェノール、
(1S,2S)−3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチル−プロピル)−フェノール、およびその任意の混合物
から選択される、請求項2に記載の組合せ。
【請求項4】
構成要素(a)が式(I’)
【化2】

で表わされる化合物(1R,2R)−3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチル−プロピル)−フェノールまたはその酸付加塩(塩酸塩の酸付加塩が好ましい)である、請求項2または3に記載の組合せ。
【請求項5】
パラセタモールの誘導体がプロパセタモールおよびフェニジン(Phenidine)からなる群より選択される、請求項1〜4のいずれか1つに記載の組合せ。
【請求項6】
構成要素(a)および(b)が、患者への投与時に当該組成物が相乗効果を発揮するような重量比で存在する、請求項1〜5のいずれか1つに記載の組合せ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1つに記載の組合せおよび任意に1種以上の補助剤を含む医薬組成物。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1つに記載の組合せおよび任意に1種以上の補助剤を含む剤形。
【請求項9】
経口投与、静脈内投与、腹腔内投与、経皮投与、髄内投与、筋肉内投与、鼻腔内投与、経粘膜投与、皮下投与、または直腸投与に適している、請求項8に記載の剤形。
【請求項10】
構成要素(a)および(b)の一方または両方が放出調節型で存在する、請求項8または9に記載の剤形。
【請求項11】
さらにカフェインを含む、請求項8〜10のいずれか1つに記載の剤形。
【請求項12】
疼痛治療用の医薬品を製造するための、請求項1〜6のいずれか1つに記載の組合せの使用。
【請求項13】
疼痛が炎症性疼痛、神経因性疼痛、急性疼痛、慢性疼痛、内臓痛、片頭痛疼痛およびがん性疼痛から選択される、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
哺乳動物における疼痛を治療する方法であって、請求項1〜6のいずれか1つに記載の組合せの有効量を前記哺乳動物に投与することを含む方法。
【請求項15】
組合せの構成要素(a)および(b)が哺乳動物に同時にまたは逐次的に投与されることを特徴とし、化合物(a)は化合物(b)の前または後に投与することができ、化合物(a)または(b)が同じ投与経路または異なる投与経路によって哺乳動物に投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
疼痛が炎症性疼痛、神経因性疼痛、急性疼痛、慢性疼痛、内臓痛、片頭痛疼痛およびがん性疼痛から選択される、請求項14または15に記載の方法。

【公表番号】特表2009−535313(P2009−535313A)
【公表日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−506978(P2009−506978)
【出願日】平成19年4月25日(2007.4.25)
【国際出願番号】PCT/EP2007/003632
【国際公開番号】WO2007/128413
【国際公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(390035404)グリュネンタール・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (127)
【Fターム(参考)】